説明

建設機械におけるキャブ支持装置

【課題】構造が簡単で安価に製作することができるとともに、キャブフレームに作用する過大荷重に対抗することができる建設機械におけるキャブ支持装置を提供する。
【解決手段】車体フレーム11にダンパ16を介してキャブフレーム14を支持するように構成する。ダンパ16内には、車体フレーム11に固定されるとともに、キャブフレーム14に固定した被規制部材としての減衰板34を受けてキャブフレーム14の上方移動範囲を規制する第1規制部材としての規制板24を設ける。ダンパ16の外側における車体フレーム11とキャブフレーム14との間には、キャブフレーム14の下方移動範囲を規制する第2規制部材としての規制体41を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブルドーザや油圧ショベル等の建設機械において、車体フレーム上にキャブフレームを支持するためのキャブ支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベルにおけるキャブ支持装置としては、例えば、特許文献1に開示されるような構成のものが提案されている。すなわち、この従来装置においては、油圧ショベルの車体フレーム上にキャブフレームが4つのコーナ部にて、それぞれダンパを介して弾性的に支持されている。キャブフレームの右側方において、車体フレーム上には作業機が支持されている。4つのダンパのうちで、作業機と反対側の左側後方に位置する1つのダンパに隣接して位置するように、車体フレームとキャブフレームとの間には、キャブフレームの上方への移動を所定範囲に規制するための規制部材が設けられている。
【0003】
そして、油圧ショベルの通常の走行時においては、各ダンパによりキャブフレームに対する振動・衝撃が減衰により緩和されて、乗り心地が向上されるようになっている。また、油圧ショベルが万一転倒した場合等において、キャブフレームに対して作業機によりガードされていない作業機と反対側の左側後方のコーナ部に過大荷重が集中的に作用したときには、規制部材によりキャブフレームの所定範囲を越える上方への移動が規制される。このため、キャブフレームの変形が抑制されて、ある程度の広さ以上のキャブ内部空間が確保されるようになっている。
【特許文献1】特開2004−189089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この従来構成のキャブ支持装置では、キャブフレームの左側後方のコーナ部に上方への過大荷重が作用した場合には、規制部材の移動規制作用により、その上方への過大荷重に対抗することができるが、同コーナ部に逆方向の下方への過大荷重が作用した場合には、その下方への過大荷重に対抗することができないという問題があった。
【0005】
すなわち、この従来装置においては、規制部材に対応配置されたダンパ内に緩衝部材が設けられ、その緩衝部材の上面がキャブフレームの下面に対して所定間隔をおいて対向配置されている。そして、キャブフレームに下方への荷重が作用したとき、キャブフレームの下面が緩衝部材の上面に接触して、その緩衝部材が弾性変形し、キャブフレームへの衝撃が吸収されるようになっている。このため、キャブフレームに対して作用する下方への荷重が過大である場合には、緩衝部材やその周囲の部材が破壊されて、その下方への過大荷重に対抗することができない。
【0006】
また、キャブフレームに対する上下両方向への移動を規制するための2つの規制部材を、ダンパの内部あるいは外部に並設することも考えられるが、このように構成した場合には、ダンパの内部構造が複雑で製造コストが高くなるとともに、ダンパが大型になるという問題が生じる。例えば、ダンパのケースとは別体をなすひとつの規制部材を上下両方向の荷重を受け得るようにダンパの内側に強固に固定配置しようとすることは困難である。従って、このような要求に対しては、上下いずれかの一方の方向の力を受ける別体の規制部材をダンパの内側に固定配置するとともに、他方の方向の力を受ける規制部材はダンパケースの内側に削り出しによって形成する必要がある。従って、このように構成した場合は、前述のように、構成が複雑で加工が困難になるとともに、ダンパケースが大型化する。
【0007】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、構造が簡単で安価に製作することができるとともに、ダンパの大型化を避けることができ、そして、転倒時にキャブフレームに作用する上下両方向への過大荷重に対抗して、キャブフレームの変形を抑制することが可能な建設機械におけるキャブ支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明は、車体フレームにダンパを介してキャブフレームを支持した建設機械におけるキャブ支持装置において、前記ダンパ内には、前記車体フレームに固定されるとともに、キャブフレームに固定した被規制部材を受けてキャブフレームの上方または下方のうちの一方向の移動範囲を規制する第1規制部材を設け、前記ダンパの外側における車体フレームとキャブフレームとの間には、キャブフレームの上方または下方のうちの他方向の移動範囲を規制する第2規制部材を設けたことを特徴としている。
【0009】
従って、建設機械が万一転倒した場合等において、キャブフレームに対して上方または下方のうちの一方向への過大荷重が作用した場合には、ダンパ内に設けられた第1規制部材により、キャブフレームの所定範囲を越える一方向への移動が規制される。また、キャブフレームに対して上方または下方のうちの他方向への過大荷重が作用した場合には、ダンパ外に設けられた第2規制部材により、キャブフレームの所定範囲を越える他方向への移動が規制される。そして、この場合、上下両方向の移動範囲を規制するための規制部材をダンパ内に設けた構成とは異なり、構造が簡単で安価に製作することができるとともに、キャブフレームに作用する上方及び下方のいずれの方向への過大荷重にも対抗することができる。
【0010】
また、前記の構成において、前記ダンパ内には、前記車体フレームに固定されるとともに、前記被規制部材を受けてキャブフレームの横方向の移動範囲を規制する第3規制部材を設けるとよい。このように構成した場合には、キャブフレームに対する上下両方向への過大荷重のほかに、横方向への過大荷重に対しても対抗することができる。
【0011】
さらに、前記の構成において、前記第1規制部材は、緩衝部材を介して被規制部材を受けるように構成するとよい。このように構成した場合、建設機械の通常の走行時等においては、緩衝部材の弾性変形により、キャブフレームに作用する上下方向への振動や衝撃を緩和することができる。また、建設機械の転倒時等において、キャブフレームに上下一方向への過大荷重が作用した場合には、被規制部材の同方向移動が緩衝部材を介して第1規制部材により受け止められて、キャブフレームの所定範囲を越える上下一方向への移動を規制することができる。
【0012】
さらに、前記の構成において、前記第3規制部材は、緩衝部材を介して被規制部材を受けるように構成するとよい。このように構成した場合、建設機械の通常の走行時等においては、緩衝部材の弾性変形により、キャブフレームに作用する横方向への振動や衝撃を緩和することができる。また、建設機械の転倒時等において、キャブフレームに横方向への過大荷重が作用した場合には、被規制部材の同方向移動が緩衝部材を介して第3規制部材により受け止められて、キャブフレームの所定範囲を越える横方向への移動を規制することができる。
【0013】
さらに、前記の構成において、第1規制部材と第3規制部材とを同一部材によって構成するとよい。このように構成した場合には、ダンパ内に第1規制部材と第3規制部材とを別々に設ける必要がなく、ダンパの内部構造を簡単にすることができるとともに、ダンパを小型にすることができる。
【0014】
さらに、前記の構成において、前記第1規制部材がキャブフレームの上方移動範囲を規制し、第2規制部材がキャブフレームの下方移動範囲を規制するように構成するとよい。このように構成した場合には、第2規制部材として車体フレームとキャブフレームとのいずれか一方側に、規制部材を他方側と当接可能に突設すればよく、第2規制部材の構造を簡略化することができる。
【0015】
さらに、前記の構成において、前記ダンパをキャブフレームのコーナ部に対応して配置するとともに、前記第2規制部材を少なくともダンパよりもキャブフレームの外縁側に位置するように配置するとよい。このように構成した場合には、第2規制部材の構造が簡単であるとともに、キャブフレームに対する過大荷重を的確に受け止めることができる。
【0016】
加えて、前記の構成において、前記第2規制部材をキャブフレームにおけるリヤピラーの直下に位置させるとよい。このように構成した場合には、リヤピラーに作用する外力を第2規制部材によって効果的に受け止めることができる。なお、ここで、リヤピラーの直下とは、リヤピラーだけではなく、リヤピラーに対して溶接等によって強固に固定された部材の直下も含むものとする。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、この発明によれば、構造が簡単で安価に製作することができるとともに、キャブフレームに作用する上下方向への過大荷重に対抗することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下に、この発明の第1実施形態を、図1〜図3に基づいて説明する。
図1及び図3に示すように、この第1実施形態の建設機械としてのブルドーザにおいては、車体フレーム11上に前後各一対の支持ブラケット12,13が前後方向及び左右方向に間隔をおいて固定配置されている。前記支持ブラケット12,13上にはキャブ10のキャブフレーム14がその床フレーム15の4隅部のコーナ部において、それぞれダンパ16による緩衝機能を介して支持されている。このキャブフレーム14は、床部としての床フレーム15と、その床フレーム15上に溶接によって固定されたリヤピラー14a及びセンターピラー14bと、両ピラー14a,14bの上下間に溶接によって固定された中間フレーム14c,14dとを備えている。前記床フレーム15の前後方向中間部には段差部が形成されていて、前後方向において高低差を有するように形成され、前方側部分が低部15aになるとともに、後方側部分が高部15bになっている。
【0019】
次に、図2に基づいて、前記ダンパ16及びその関連の構成について詳細に説明する。なお、図2(a)(b)は、前部側のダンパ16の部分を示すものであるが、後部側は、図1から明らかなように、ダンパ16及びその関連構成が傾斜しているものの、前部側と同じ構造である。
【0020】
さて、図2(a)(b)に示すように、車体フレーム11上の支持ブラケット12,13の上壁部には取付孔20が形成され、その取付孔20には有底円筒状のケース21が嵌挿されている。このケース21の上端開口部の外周縁にはフランジ部21aが突出形成されるとともに、上端開口部の一部にはカシメ部21bが突出形成されている。ケース21の上端開口部上にはゴム等の弾性材よりなる円筒状の緩衝部材22が配置され、その緩衝部材22の外周には金属製の取付部材23及び規制板24が加硫接着にて一体に固定されるとともに、内周には金属製のスリーブ25が加硫接着にて一体に固定されている。
【0021】
そして、前記取付部材23及び規制板24がケース21のフランジ部21a上に重合配置された状態で、ケース21のカシメ部21bが取付部材23の外周上部にカシメ付け固定されることにより、緩衝部材22が取付部材23及び規制板24とともにケース21上に一体的に組み付け固定されている。また、取付部材23、規制板24及びケース21のフランジ部21aには等間隔をおいて複数(例えば4箇所。図2(b)においては1箇所のみ図示)のボルト挿通孔26が貫通形成されるとともに、そのボルト挿通孔26に対応して、前記取付孔20の外周縁の支持ブラケット12,13上には複数のねじ孔27が形成されている。そして、各ボルト挿通孔26からねじ孔27にボルト28が螺合されることにより、ケース21及び緩衝部材22の組立体が支持ブラケット12,13上に固定されている。従って、規制板24はボルト28により、支持ブラケット12,13に対して強固に固定されている。
【0022】
前記キャブフレーム14における床フレーム15のダンパ16の各取付位置には、ボルト挿通孔29が形成されている。キャブフレーム14の床フレーム15の下面にはスタッド30が、ボルト挿通孔29を通るボルト31に螺合されることにより固定され、床フレーム15の下面とスタッド30の上端面との間に設けられた複数の回り止めピン32によって回り止めされている。そして、前記緩衝部材22の中心のスリーブ25内がこのスタッド30に一対のシールリング33を介して上下方向へ移動可能に外嵌されている。
【0023】
前記ケース21内においてスタッド30の下端には金属製の減衰板34がボルト35により固定されている。減衰板34には複数の小孔36が形成されるとともに、減衰板34の外周面とケース21の内周面との間には隙間37が設けられている。減衰板34の下面とケース21の底部内面との間にはコイルスプリング38が圧縮状態で介装されるとともに、ケース21内にはシリコーンオイルよりなる高粘性の減衰液39が封入されている。そして、このスプリング38の弾性力及び減衰液39の粘性により、キャブフレーム14が車体フレーム11の支持ブラケット12,13上に緩衝機能を介して支持されている。
【0024】
前記スタッド30の外周において、キャブフレーム14の床フレーム15の下面には有蓋円筒状のキャップ40が固定され、そのキャップ40の下端部が緩衝部材22の外周に上下方向へ相対移動可能に被覆されている。そして、このキャップ40により、スタッド30の外周面とスリーブ25の内周面との間からケース21内に、塵埃等の異物が侵入するのを抑制するようになっている。
【0025】
図2及び図3に示すように、前記各ダンパ16の外側において、キャブフレーム14の床フレーム15の下面には、第2規制部材(下方向移動範囲規制)としてのリング状をなす金属製の規制体41がダンパ16を包囲するようにその外周位置に固定配置され、その規制体41の下端部が車体フレーム11上の支持ブラケット12,13の上面に対して所定の間隔をおいて対向配置されている。そして、キャブフレーム14が上下方向のうちの下方側に移動されたとき、第2規制部材としての規制体41が支持ブラケット12,13の上面に当接して、キャブフレーム14の下方への移動が所定範囲内に規制されるようになっている。また、この規制体41は、前記リヤピラー14aとセンターピラー14bとの間における下部の中間フレーム14cの後端部の直下に位置している。また、規制体41はその一部がダンパ16よりもキャブフレーム14の外縁側に位置している。
【0026】
そして、この実施形態においては、前記ダンパ16内の規制板24により第1規制部材(上方移動範囲規制)が構成されるとともに、減衰板34により第1規制部材に対応する被規制部材が構成されている。そして、キャブフレーム14が上下方向のうちの上方側に移動されたとき、被規制部材としての減衰板34の上方移動が緩衝部材22の下端部分を介して、第1規制部材としての規制板24の下面により受け止められて、キャブフレーム14の上方への移動が所定範囲内に規制されるようになっている。
【0027】
さらに、この第1実施形態においては、前記ダンパ16内の規制板24により前述した第1規制部材と併せて第3規制部材(横方向移動範囲規制)が構成されるとともに、スリーブ25により第3規制部材に対応する被規制部材が構成されている。そして、キャブフレーム14が横方向に移動されたとき、被規制部材としてのスリーブ25の横方向移動が緩衝部材22の内周部分を介して、第3規制部材としての規制板24の内周面により受け止められて、キャブフレーム14の横方向への移動が所定範囲内に規制されるようになっている。
【0028】
次に、前記のように構成されたブルドーザのキャブ支持装置について動作を説明する。
さて、このブルドーザの走行時等において、車体フレーム11に振動や衝撃が発生した場合、各ダンパ16内においてスタッド30が上下方向及び横方向に相対移動されて、減衰板34が同方向へ一体的に移動される。減衰板34が上下方向に移動されたときには、それにともなってコイルスプリング38が上下方向に弾性変形する。また、減衰液39により減衰板34に対して粘性抵抗が作用する。加えて、減衰液39が減衰板34の小孔36及び減衰板34とケース21との隙間37を介して、ケース21内の上部室C1と下部室C2との間で移動されて、その減衰液39に流動抵抗が発生する。そして、減衰板34が緩衝部材22の下面に当接した場合には、緩衝部材22が上下方向に弾性変形される。また、前記スタッド30が横方向に移動されたときには、スリーブ25を介して緩衝部材22が半径方向に弾性変形される。そして、これらの減衰液39の粘性抵抗,流動抵抗及び緩衝部材22の弾性変形により、キャブフレーム14に対する振動や衝撃が減衰緩和される。従って、キャブフレーム14内における良好な乗り心地を確保することができる。
【0029】
これに対して、ブルドーザが万一転倒した場合等において、キャブフレーム14に対して上下方向や横方向への過大荷重が作用した場合には、それらの過大荷重が各ダンパ16の内側及び外側に設けられた規制構造によって受け止められる。
【0030】
すなわち、キャブフレーム14に対して上方向への過大荷重が作用した場合には、ダンパ16内において減衰板34の上方移動が、緩衝部材22を介して規制板24により受け止められて、キャブフレーム14の所定範囲を越える上方移動が規制される。
【0031】
さらに、キャブフレーム14に対して横方向への過大荷重が作用した場合には、ダンパ16内においてスリーブ25の横方向移動が、緩衝部材22を介して規制板24により受け止められて、キャブフレーム14の所定範囲を越える横方向移動が規制される。
【0032】
また、キャブフレーム14に対して下方向への過大荷重が作用した場合には、ダンパ16の外側において規制体41が車体フレーム11上の支持ブラケット12,13の上面に当接して、キャブフレーム14の所定範囲を越える下方移動が規制される。
【0033】
以上のように、キャブフレーム14に作用する上下両方向及び横方向のいずれの方向への過大荷重にも対抗することができる。
そして、この第1実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
【0034】
(1) キャブフレーム14の上方への移動範囲を規制するための第1規制部材としての規制板24と、キャブフレーム14の下方への移動範囲を規制するための第2規制部材としての規制体41とが、ダンパ16の内側と外側とに分けて設けられている。そのため、キャブフレーム14の上下両方向の移動範囲を規制するための規制部材のいずれもダンパ内に設ける構成とは異なり、ダンパ内に規制部材を削り出しによって形成すような必要がなく、装置の構造を簡単にすることができるとともに、安価に製作することができる。また、ダンパ16内に上下両方向に対する規制構造を設ける必要がないため、ダンパ16を小型化できる。
【0035】
(2) ダンパ16内に1つの規制板24が設けられ、この規制板24がキャブフレーム14の上方への移動範囲を規制するための第1規制部材と、キャブフレーム14の横方向への移動範囲を規制するための第3規制部材との両機能を発揮するようになっている。このため、ダンパ内に第1規制部材と第3規制部材とを別々に設ける必要がなく、前記と同様にダンパ16の内部構造を簡単にすることができるとともに、ダンパ16を小型にすることができる。
【0036】
(3) ダンパ16の外側に設けられた第2規制部材としての規制体41によりキャブフレーム14の下方移動範囲が規制される。そして、この規制体41は車体フレーム11側の支持ブラケット12,13と当接するだけの簡単な構造でよく、第2規制部材の構造を簡略化することができる。
【0037】
(4) 第2規制部材としての規制体41をキャブフレーム14におけるリヤピラー14aの直下に位置させたことにより、リヤピラー14aに作用する外力を規制体41によって効果的に受け止めることができる。すなわち、実施形態のように、キャブフレーム14の床フレーム15の後部側が高く形成されている構成においては、ブルドーザの転倒時において、キャブフレーム14の後部側に大きな外力が作用して、特にリヤピラー14aに外力負荷が集中する可能性があるが、このような場合、規制体41がリヤピラー14aの直下に位置しているため、この負荷集中に対して高い抗堪性を発揮することができる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を説明する。なお、この第2実施形態以降の各実施形態においては、前記第1実施形態と異なる構成及び作用を中心に説明する。
【0039】
さて、この第2実施形態においては、図4に示すように、キャブフレーム14の下方への移動範囲を規制するための第2規制部材が各4本のピン状の規制体41から構成されている。そして、これらの規制体41が各ダンパ16の外側の前後及び左右の四隅に対応配置されるように、キャブフレーム14の床フレーム15におけるコーナ部の下面に突設されている。
【0040】
従って、この第2実施形態においても、前記第1実施形態に記載の効果とほぼ同様の効果を得ることができる。
(第3実施形態)
次に、この発明の第3実施形態を説明する。
【0041】
さて、この第3実施形態においては、図5に示すように、キャブフレーム14の下方への移動範囲を規制するための第2規制部材が各1本または2本のピン状の規制体41から構成されている。そして、この規制体41が各ダンパ16に対してキャブフレーム14の外縁側に対応配置され、キャブフレーム14の中央側には設けられていない。
【0042】
従って、この第3実施形態においても、前記第1実施形態に記載の効果とほぼ同様の効果を得ることができる。なお、前述のように、ブルドーザの転倒時には、図3に矢印で示すように、キャブフレーム14の後部側に対して過大荷重が作用するため、ダンパ16よりも外縁側に規制体41が配置されていれば、その過大荷重に抗することができる。
【0043】
(第4実施形態)
次に、この発明の第4実施形態を説明する。
さて、この第4実施形態では、図6に示すように、各ダンパ16に対応するピン状の規制体41をダンパ16よりもキャブフレーム14の外縁側において、キャブフレーム14の各ダンパ16間の任意の位置に図示しないブラケットを介して設けたものである。
【0044】
この場合も、前記第3実施形態のような作用を得ることができる。
(第5実施形態)
次に、この発明の第5実施形態を説明する。
【0045】
さて、この第5実施形態では、図7に示すように、ピン状の規制体41を後部側の一対のダンパ16に対応して設け、前部のダンパ16側には設けられていない。ただし、前述のように、ブルドーザの転倒時における過大荷重は後部側に作用し、さらにはリヤピラー14aに集中するため、前部のダンパ16側に規制体41が設けられていなくても、過大荷重に対して後部側の規制体41のみでも十分に堪えることが可能である。
【0046】
(第6実施形態)
次に、この発明の第6実施形態を説明する。
さて、この第6実施形態では、図8に示すように、バケット等を有する作業機44を有する建設機械としての油圧ショベルにおいて、車体フレーム11上にキャブフレーム14が4つのコーナ部にてダンパ16を介して緩衝的に支持されている。キャブフレーム14の右側において、車体フレーム11上には作業機44のアーム44aが支軸45を介して回動可能に支持されている。そして、この実施形態では、作業機44に隣接してキャブフレーム14の右側前方に配置されたダンパ16に、規制体41が設けられている。この場合、ピン状の1本の規制体41が右前部及び右後部のダンパ16に対してキャブフレーム14の外縁側、すなわちダンパ16の右側に対応配置されている。他のダンパ16に対して規制体41は設けられていない。
【0047】
すなわち、油圧ショベルにおいては、転倒時における過大荷重が、矢印で示すように後方及び左方から作用するため、規制体41が右前部及び右後部のダンパ16の右側に設けられることによって、規制体41により過大荷重に抗することができる。
【0048】
(第7実施形態)
次に、この発明の第7実施形態を説明する。
さて、この第7実施形態では、図9に示すように、ピン状の1本の規制体41が右前部のダンパ16のみに対してキャブフレーム14の外縁側、すなわちダンパ16の右側に対応配置されるように設けられている。他のダンパ16に対応する規制体41は設けられていない。
【0049】
すなわち、油圧ショベルの転倒時における前記過大荷重に対して、規制体41が右前部ダンパの右側に設けられていれば、その規制体41により過大荷重に抗することができる。
【0050】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記各実施形態において、第2規制部材としての規制体41を車体フレーム11側の支持ブラケット12,13上に、キャブフレーム14の床フレーム15と所定間隔をおいた状態で突設すること。
【0051】
・ 前記各実施形態において、ダンパ16内に設けられた第1規制部材によりキャブフレーム14の下方への移動範囲を規制するとともに、ダンパ16の外側に設けられた第2規制部材によりキャブフレーム14の上方への移動範囲を規制するように構成すること。このためには、例えば、ダンパ側の被規制部材としての減衰板34を規制板24の上面側に対向させるとともに、規制体41を支持ブラケット12,13の下面に当接するように構成する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1実施形態のキャブ支持装置を備えたブルドーザを示す側面図。
【図2】(a)はダンパの簡略平面図、(b)は(a)図のA−A線断面図。
【図3】図1のブルドーザにおけるキャブ支持装置の配置構成を示す概略平面図。
【図4】第2実施形態のブルドーザにおけるキャブ支持装置の配置構成を示す概略平面図。
【図5】第3実施形態のブルドーザにおけるキャブ支持装置の配置構成を示す概略平面図。
【図6】第4実施形態のブルドーザにおけるキャブ支持装置の配置構成を示す概略平面図。
【図7】第5実施形態のブルドーザにおけるキャブ支持装置の配置構成を示す概略平面図。
【図8】第6実施形態の油圧ショベルにおけるキャブ支持装置の配置構成を示す概略平面図。
【図9】第7実施形態の油圧ショベルにおけるキャブ支持装置の配置構成を示す概略平面図。
【符号の説明】
【0053】
11…車体フレーム、12,13…支持ブラケット、14…キャブフレーム、14a…リヤピラー、16…ダンパ、21…ケース、22…緩衝部材、24…第1規制部材及び第3規制部材を構成する規制板、25…第3規制部材に対向する被規制部材を構成するスリーブ、30…スタッド、34…第1規制部材に対向する被規制部材を構成する減衰板、38…スプリング、39…減衰液、41…第2規制部材を構成する規制体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームにダンパを介してキャブフレームを支持した建設機械におけるキャブ支持装置において、
前記ダンパ内には、前記車体フレームに固定されるとともに、キャブフレームに固定した被規制部材を受けてキャブフレームの上方または下方のうちの一方向の移動範囲を規制する第1規制部材を設け、
前記ダンパの外側における車体フレームとキャブフレームとの間には、キャブフレームの上方または下方のうちの他方向の移動範囲を規制する第2規制部材を設けたことを特徴とする建設機械におけるキャブ支持装置。
【請求項2】
前記ダンパ内には、前記車体フレームに固定されるとともに、前記被規制部材を受けてキャブフレームの横方向の移動範囲を規制する第3規制部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の建設機械におけるキャブ支持装置。
【請求項3】
前記第1規制部材は、緩衝部材を介して被規制部材を受けることを特徴とする請求項1または2に記載の建設機械におけるキャブ支持装置。
【請求項4】
前記第3規制部材は、緩衝部材を介して被規制部材を受けることを特徴とする請求項2または3に記載の建設機械におけるキャブ支持装置。
【請求項5】
第1規制部材と第3規制部材とが同一部材により構成されていることを特徴とする請求項2〜4のうちのいずれか一項に記載の建設機械におけるキャブ支持装置。
【請求項6】
前記第1規制部材がキャブフレームの上方移動範囲を規制し、第2規制部材がキャブフレームの下方移動範囲を規制することを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の建設機械におけるキャブ支持装置。
【請求項7】
前記ダンパをキャブフレームのコーナ部に対応して配置するとともに、前記第2規制部材をダンパよりもキャブフレームの外縁側に位置するように配置したことを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の建設機械におけるキャブ支持装置。
【請求項8】
前記第2規制部材をキャブフレームにおけるリヤピラーの直下に位置させたことを特徴とする請求項6または7に記載の建設機械におけるキャブ支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−105635(P2008−105635A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292489(P2006−292489)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】