建設機械の排気管構造
【課題】作業姿勢と輸送姿勢との間の変更を容易にかつ迅速に行うことができ、また、輸送時に部品の取り外しが不要でその紛失の防止化を図り得る建設機械の排気管構造を提供する。
【解決手段】建設機械は、車体4にエンジン及びマフラー13が搭載されているとともに、車体の上部に、エンジンの排気ガスをマフラーから導入して大気に排出するための排気管15が立設されてなる。排気管を、その下端又は途中に回動軸16を有する構成にし、かつこの回動軸を中心に折り曲げ可能に設ける。好ましくは、回動軸を、2つのプレートを回動可能に結合してなる蝶番20の結合ピンにより構成し、この蝶番の一方のプレートを車体側37に固定する一方、蝶番の他方のプレートを、ブラケット19を介して排気管に連結する。
【解決手段】建設機械は、車体4にエンジン及びマフラー13が搭載されているとともに、車体の上部に、エンジンの排気ガスをマフラーから導入して大気に排出するための排気管15が立設されてなる。排気管を、その下端又は途中に回動軸16を有する構成にし、かつこの回動軸を中心に折り曲げ可能に設ける。好ましくは、回動軸を、2つのプレートを回動可能に結合してなる蝶番20の結合ピンにより構成し、この蝶番の一方のプレートを車体側37に固定する一方、蝶番の他方のプレートを、ブラケット19を介して排気管に連結する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラクレーンなどの建設機械の排気管構造に関し、特にトレーラーなどによる輸送時の高さ制限に対応したものの改良に係わる。
【背景技術】
【0002】
一般に、クローラクレーンなどの建設機械においては、クローラにより走行する下部走行体上に、上部旋回体が旋回自在に設けられ、この上部旋回体に、クレーンなどの作業アタッチメントが取り外し可能に装着されているとともに、動力源としてのエンジンが搭載されていて、このエンジンにより油圧ポンプを駆動することにより、走行及び作業に必要な油圧を得る構成になっている。また、上部旋回体には、エンジンより排出される排気ガスを通すマフラーが搭載されているとともに、このマフラーから排気ガスを導入して大気に排出するための排気管が略垂直に立てて設けられている。
【0003】
そして、この種の建設機械は公道を走行することができないことから、作業現場を移動するときには、作業アタッチメントなどを取り外した上でトレーラーなどに載置して輸送することが行われている。このとき、大型の建設機械では、上部旋回体に立設された排気管なども高さ制限に対応するために取り外す必要があるが、特許文献1には、この輸送時の高さ制限に対応しかつマフラー内に雨水などが浸入するのを防止するための排気管構造が提案されている。
【0004】
すなわち、この提案の排気管構造は、排気管を、排気管本体と、雨水などの浸入を防止するフードとによって構成し、かつ排気管本体の下端側を、車体に設置されたマフラーの排気口に着脱自在に嵌合するとともに、排気管本体の上端側に上記フードを着脱自在に嵌合するものである。そして、建設機械の輸送時には、マフラーの排気口から排気管本体を取り外すことにより、高さ制限を受けることなく輸送ができるようにし、また、排気管本体から取り外したフードをマフラーの排気口に嵌合することにより、マフラー内に雨水などが浸入するのを防止できるようにするものである。
【特許文献1】特開2002−276360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記提案の排気管構造では、作業時の姿勢と輸送時の姿勢との間で変更するたびに排気管本体、フード及び締結手段の組み替えが必要になるため、作業効率が悪いという問題がある。また、輸送時に取り外した排気管本体及び1つの締結手段を保管する必要があり、紛失の虞もある。さらに、エンジンを切った直後は、排気管本体及びフードは高温であるため、安全性の観点から温度が十分に下がるまで組み替え作業を行うことができず、この点からも作業効率が悪くなる。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、輸送時の高さ規制に対応するための排気管構造を改良し、作業姿勢と輸送姿勢との間の変更を容易にかつ迅速に行うことができ、また、輸送時に部品の取り外しが不要でその紛失の防止化を図り得る建設機械の排気管構造を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、車体にエンジン及びマフラーが搭載されているとともに、車体の上部に、上記エンジンの排気ガスをマフラーから導入して大気に排出するための排気管が立設された建設機械において、上記排気管を、その下端又は途中に回動軸を有する構成にし、かつこの回動軸を中心に折り曲げ可能に設ける構成にする。
【0008】
この構成では、作業姿勢と輸送姿勢との間の変更は、単に排気管を回動軸回りに折り曲げたり、垂直に戻したりするだけで足りるため、その作業を容易にかつ迅速に行うことができる。また、輸送時に部品を取り外して保管する必要がないので、紛失の虞もなくなる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の建設機械の排気管構造において、上記回動軸を、2つのプレートを回動可能に結合してなる蝶番の結合ピンにより構成し、また、この蝶番の一方のプレートを車体側に固定する一方、蝶番の他方のプレートを、ブラケットを介して排気管に連結する構成にする。この構成では、折り曲げ可能な排気管は、ブラケット及び蝶番を介して車体側に支持されているため、排気管の折り曲げなどに伴ってマフラー側に異常な荷重が作用することはない。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の建設機械の排気管構造において、上記ブラケットに取っ手を設ける構成にする。この構成では、作業姿勢と輸送姿勢との間の変更の際に取っ手を用いることにより、排気管の折り曲げ又は垂直戻しを容易に行うことができる。しかも、取っ手は、吸気管に直接設けられたものではなく、折り曲げ可能な排気管を車体側に支持するためのブラケットに設けられているため、エンジンを切った直後でも取っ手の温度はそれ程高くはなく、作業者が取っ手を握って排気管の折り曲げ作業をすることができる。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3記載の建設機械の排気管構造において、上記排気管を、上部排気管と下部排気管とに分割し、上部排気管を、上記ブラケットを介して蝶番に連結する一方、下部排気管に、上部排気管を蝶番の結合ピンを中心に折り曲げたとき下部排気管の開口を塞ぐカバーを開閉可能に取り付け、このカバーを、排気ガスの圧力で開くように設ける構成にする。この構成では、輸送時に上部排気管を蝶番の結合ピンを中心に折り曲げたときには、下部排気管に取り付けたカバーが閉じて下部排気管の開口を塞ぐため、雨水などが下部排気管を通してマフラー内に浸入することはない。しかも、この状態でエンジンを作動させた場合でも排気ガスの圧力でカバーが開くため、排気ガスがスムーズに排出されることになる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明における建設機械の排気管構造によれば、作業姿勢と輸送姿勢との間の変更は、単に排気管を回動軸回りに折り曲げたり、垂直に戻したりするだけで足りるため、その作業を容易にかつ迅速に行うことができる。また、輸送時に部品を取り外して保管する必要がないので、部品の紛失の虞もなく、実用性に優れた効果を奏するものである。
【0013】
特に、請求項2に係る発明では、折り曲げ可能な排気管がブラケット及び蝶番を介して車体側に支持されているため、排気管の折り曲げなどに伴ってマフラー側に異常な荷重が作用することはなく、マフラーなどの変形や破損の防止化をも図ることができる。
【0014】
また、請求項3に係る発明では、作業姿勢と輸送姿勢との間の変更の際に取っ手を用いることにより、排気管の折り曲げ又は垂直戻しを容易に行うことができる上、取っ手が排気管を車体側に支持するためのブラケットに設けられているため、エンジンを切った直後でも取っ手の温度はそれ程高くはなく、作業者が取っ手を握って作業をすることができ、作業の安全性の確保と作業効率の向上とを共に図ることができる。
【0015】
さらに、請求項4に係る発明では、輸送時に上部排気管を蝶番の結合ピンを中心に折り曲げたときには、下部排気管に取り付けたカバーが閉じて下部排気管の開口を塞ぐため、雨水などのマフラー内への浸入を防止することができる。しかも、この状態でエンジンを作動させた場合でも排気ガスの圧力でカバーが開くため、排気ガスのスムーズな排出を確保することができるという効果を併有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態である実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係る排気管構造を備えた建設機械としてのクローラクレーンを示し、1はクローラ2により走行する下部走行体であって、この下部走行体1上には旋回装置3を介在して車体としての上部旋回体4が旋回可能に設けられている。この上部旋回体4の前部には、キャブ5が設けられているとともに、作業アタッチメントとしてのクレーンのブーム6の基端及びマスト7の基端がそれぞれ回動可能に支持されている。また、上部旋回体4の後部には、動力源としてのエンジン、油圧ポンプ(共に図示せず)及びカウンタウエイト8などが搭載されていて、このエンジンにより油圧ポンプを駆動することにより、走行及び作業に必要な油圧を得るようになっている。
【0018】
上記キャブ5の周囲及び上部旋回体4の中央側壁部4aの外側面には、図2に拡大詳示するように、作業者pが歩行しかつ作業するための手摺り11付きの歩行床12が取り付けられている。また、上部旋回体4の中央側壁部4aの内側(つまりエンジンや油圧ポンプなどの配置側)には、図2ないし図4に示すように、エンジンより排出される排気ガスを通して消音するためのマフラー13が中央側壁部4aに沿って水平な状態で取付台14を介して取り付けられているとともに、このマフラー13の排気口13aからエンジンの排気ガスを導入して大気に放出するための排気管15が中央側壁部4aに沿いかつその上方にまで略垂直に延びて立設されている。
【0019】
そして、本発明の特徴点として、上記排気管15は、クローラクレーンの輸送時の高さ制限に対応するために、図5ないし図7に示すように、その高さ方向(長さ方向)の途中で中央側壁部4aの上端面に近い個所に回動軸16を有し、この回動軸16を中心に折り曲げ可能に設けられている。特に、本実施形態の場合、排気管15は、中央側壁部4aの上端面に近い個所で上側の上部排気管17と下側の下部排気管18とに分割されており、上部排気管17は、ブラケット19及び蝶番20などを介して中央側壁部4aの上端面に取り付けられ、蝶番20の結合ピンからなる回動軸16を中心に回動して、下部排気管18の上端から離れて中央側壁部4aの上端面と略平行に横倒れした輸送姿勢の状態に折り曲げられるようになっている。
【0020】
上記下部排気管18は、図8及び図9に拡大詳示するように、下側で略直角に折れ曲がったL字形に形成されており、この下部排気管18の一端(下端)は、マフラー13の排気口13aに対しバンドやボルトなどからなる締結金具21(図5ないし図7参照)によって結合されている。下部排気管18の下端寄りの部位には、その内部に上端側から浸入した雨水などを堰き止めるための堰板22が設けられているとともに、この堰板22により堰き止めた雨水などを外部に排水する排水口23が設けられ、この排水口23にはドレーンパイプ24(図2及び図3参照)が接続されている。また、下部排気管18の上部には下部排気管18を中央側壁部4aの内面に取り付けるための取付プレート25が固着されているとともに、下部排気管18の上端部には、図10に明示するように矩形皿状の上端部材26が固着されている。この上端部材26には、後述するカバー51を取り付けるための取付プレート27が固着されているとともに、上端部材26内に溜まった雨水などを外部に排水する排水口28が設けられ、この排水口28にはドレーンパイプ29(図2及び図3参照)が接続されている。
【0021】
一方、上記上部排気管17は、図11及び図12に示すように、垂直に延びる下部側の直管部17aと、傾斜して延びる上部側のフード部17bとからなり、直管部17aには、図13にも示すように、フード部17bの傾斜する側に取付プレート31が固着されている。そして、図2に示すように、この取付プレート31をブラケット19の後述する取付面部43にボルト止めすることにより、上部排気管17がブラケット19を介して蝶番20に連結されている。また、直管部17aの下端には、直径が上部排気管17及び下部排気管18のそれよりも大きい覆い管32が設けられており、上部排気管17が下部排気管18と同一軸線上に略垂直に位置する作業姿勢のときには、図18に拡大詳示するように、覆い管32により下部排気管18の上端外周を覆った状態で下部排気管18と上部排気管17とが連通するようになっている。
【0022】
上記ブラケット19及び蝶番20の構造は、図14ないし図17に詳示している。すなわち、蝶番20は、2つのプレート34,35を結合ピンつまり回動軸16により回動可能に結合してなり、この蝶番20の一方のプレート34は、固定プレート36に固着され、図6及び図7に示す如くこの固定プレート36を介して、中央側壁部4aの上端面に設けた取付台37上にボルト止めにより固定されている。固定プレート36の蝶番20と反対側の端部にはスペーサー38が固着され、このスペーサー38にはネジ穴39が設けられている。また、蝶番20の他方のプレート35にはブラケット19が固着されており、このブラケット19は、プレート35に固着されかつ蝶番20の2つのプレート34,35同士を向かい合わせたとき(つまり上部排気管17が作業姿勢のとき)スペーサー38を介在して固定プレート36に対向するベース部41と、このベース部41上に蝶番20の回動軸16と平行に立設された垂直面部42と、この垂直面部42の傾斜する一辺に固着された取付面部43とを有し、この取付面部43に上記上部排気管17の取付プレート31がボルト止めにより固定されるようになっている。
【0023】
上記ブラケット19のベース部41の蝶番20と反対側の端部には切り欠き部44が設けられており、上部排気管17が作業姿勢のとき、図2に示すようなボルト45を、この切り欠き部44を通して上記スペーサー38のネジ穴39にねじ込むことにより、ブラケット19のベース部41が固定プレート36を介在して取付台37上に固定され、上部排気管17が作業姿勢に保持されるようになっている。また、ブラケット19の垂直面部42の上部には取っ手46が設けられているとともに、この取っ手46に囲まれた部位に長孔47が設けられており、上部排気管17が蝶番20の回動軸16を中心に折り曲げられた輸送姿勢のとき、図6及び図7に示すように、ブラケット19の垂直面部42が中央側壁部4aの上端面に設けた固定台48上に当接し、この垂直面部42の長孔47にボルト45を通して垂直面部42を固定台48に固定することにより、上部排気管17が輸送姿勢に保持されるようになっている。
【0024】
さらに、上記下部排気管18の上端部材26側の取付プレート27には、図18ないし図21に拡大詳示するように、上部排気管17が輸送姿勢のとき下部排気管18の上端開口18aを塞ぐカバー51が支軸52回りに開閉可能に取り付けられている。このカバー51は、下部排気管18の上端開口18aより一回り大きい円形プレートよりなるカバー本体53と、このカバー本体53に一端部が固着され、中間部が支軸52を介して取付プレート27に回動可能に支持されたアーム部54と、このアーム部54の他端に固着された棒状の重り55とからなり、重り55の重量調整などによって、図22に示すように排気ガスの圧力によりカバー51が開くように設けられている。カバー51のアーム部54には第1の挿入孔56と第2の挿入孔57とが設けられており、上部排気管17の輸送姿勢から作業姿勢への変更に先立ってカバー51を、下部排気管18の上端開口18aを開くように起立させたとき、
第1の挿入孔56が取付プレート27に設けた挿入孔58(図20参照)と一致し、この両挿入孔56,58にスプリングピン59を挿入することにより、カバー51を起立状態に保持するようになっている。スプリングピン59は、上部排気管17が輸送姿勢のとき第2の挿入孔57に挿入して保管されるようになっている。
【0025】
次に、上記実施形態の作動、特に排気管15の上部排気管17を作業姿勢と輸送姿勢との間で変更するときの作業手順について説明する。
【0026】
今、図2ないし図4に示すように、排気管15の上部排気管17がその下部排気管18と同一軸線上に略垂直に位置する作業姿勢にある。このとき、ブラケット19のベース部41は、その切り欠き部44を通してスペーサー38のネジ穴39にねじ込まれたボルト45により固定プレート36を介在して上部旋回体4の中央側壁部4a上端面の取付台37上に固定されており、これにより、上部排気管17が上記ブラケット19及び蝶番20を介して取付台37に支持され、作業姿勢に保持される。また、下部排気管18の上端に設けたカバー51は、図18及び図19に詳示するように、下部排気管18の上端開口18aを開くように起立した状態にあり、かつアーム部54の第1の挿入孔56と取付プレート27の挿入孔58とにスプリングピン59を挿入することにより起立状態に保持されている。
【0027】
そして、このような作業姿勢からクローラクレーンの輸送に際して排気管15の上部排気管17を輸送姿勢に変更するときには、先ず、ブラケット19のベース部41を取付台37に固定したボルト45を取り外した後、ブラケット19に設けた取っ手46を握って蝶番20の回動軸16回りに上部排気管17をブラケット19と一体に回動させて、ブラケット19の垂直面部42が上部旋回体4の中央側壁部4a上の固定台48に当接する横倒し状態にまで、つまり上部排気管17の輸送姿勢にまで折り曲げる。続いて、先に取り外したボルト45を用いてブラケット42の垂直面部42を固定台48に固定することにより、上部排気管17が輸送姿勢に保持される。このボルト45による固定と前後して、カバー51のアーム部54の第1の挿入孔56などからスプリングピン59を取り外し、カバー51を支軸52回りに閉じる方向に回動させて下部排気管18の上端開口18aを塞ぐ。その後、取り外したスプリングピン59をカバー51のアーム部54の第2の挿入孔57に挿入して保管する(図20及び図21参照)。
【0028】
以上によって、排気管15の上部排気管17を作業姿勢から輸送姿勢に変更するときの一連の作業が終了する。また一方、排気管15の上部排気管17を輸送姿勢から作業姿勢に変更するときの作業手順は、上述した作業姿勢から輸送姿勢への変更のときと逆の手順である。
【0029】
このように、排気管15の上部排気管17を作業姿勢と輸送姿勢との間で変更するときには、単に上部排気管17を蝶番20の回動軸16回りに折り曲げたり、垂直に戻したりするだけで足りため、その作業を容易にかつ迅速に行うことができ、作業効率を高めることができる。しかも、上部排気管17は、輸送姿勢のときでも取り外されるものではなく、ブラケット19と共に横倒しに折り曲げた状態で固定台48に固定されるものであるため、輸送時に上部排気管17を紛失することはない。
【0030】
特に、本実施形態の場合、上部排気管17が作業姿勢のときにブラケット19のベース部41を取付台37に固定したボルト45は、上部排気管17が輸送姿勢のときにはブラケット19の垂直面部42を固定台48に固定するのに用いられるため、輸送時にこのボルト45を紛失することはない。また、上部排気管17が作業姿勢のときにカバー51を起立状態に保持するためにカバー51のアーム部54の第1の挿入孔56と取付プレート27の挿入孔58とに挿入されたスプリングピン59は、上部排気管17が輸送姿勢のときには第1の挿入孔56などから取り外されるが、同じアーム部54の第2の挿入孔57に挿入して保管されるため、輸送時にこのスプリングピン59を紛失することもなく、部品紛失の防止化を確実に図ることができる。
【0031】
その上、上記上部排気管17は、ブラケット19及び蝶番20を介して上部旋回体4の中央側壁部4a上端面の取付台37に支持されているため、上部排気管17の作業姿勢と輸送姿勢との間の変更のときなどに下部排気管18ないしマフラー13の排気口13a側に異常な荷重が作用することはなく、それらの変形や損傷の防止化を図ることができる。
【0032】
さらに、上部排気管17の作業姿勢と輸送姿勢との間の変更のときには、取っ手46を握って作業をすることができるので、上部排気管17の姿勢変更を容易に行うことができる。しかも、取っ手46は、上部吸気管17に直接設けられたものではなく、上部排気管17を上部旋回体4側の取付台37に支持するためのブラケット19に設けられているため、エンジンを切った直後でも取っ手46の温度はそれ程高くはなく、作業者pが取っ手46を握って作業をすることができ、作業効率の向上を一層図ることができる。
【0033】
加えて、上部排気管17の輸送姿勢のときには、下部排気管18に取り付けたカバー51が下部排気管18の上端開口18aを塞ぐため、雨水などが下部排気管18を通してマフラー13内に収入するのを防止することができる。しかも、この状態でエンジンを作動させた場合には、図22に示す如く排気ガスの圧力でカバー51が開くため、排気ガスをスムーズに排出させることができる。
【0034】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の形態を包含するものである。例えば上記実施形態では、排気管15の上部排気管17をブラケット19及び蝶番20を介して上部旋回体4の中央側壁部4a上端面の取付台37に取り付け、蝶番20の結合ピンである回動軸16を中心に上部排気管17を折り曲げ可能に設ける構成にしたが、本発明は、これに限らず、蝶番20の代わり、回動軸を有する構造を用いて、上部排気管17を回動軸回りに折り曲げ可能に、取付台37又は下部排気管18に取り付ける構成にしてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、マフラー13の排気口13aから中央側壁部4aに沿いかつその上方にまで略垂直に延びて立設された排気管15を、中央側壁部4aの上端面に近い個所で上部排気管17と下部排気管18とに分割し、上部排気管17を回動軸16回りに折り曲げ可能に設ける構成にしたが、本発明は、排気管全体を、その下端又は途中に設けた回動軸回りに折り曲げ可能に設けるように構成してもよい。
【0036】
さらに、本発明は、上記実施形態の如きクローラクレーンの排気管構造に限らず、トレーラーなどによる輸送時に高さ規制に対応する必要がある大型の建設機械の排気管構造に広く適用することができるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る排気管構造を備えたクローラクレーンの車体側中心の側面図である。
【図2】図1のX−X線に沿って見た排気管構造付近の矢視図である。
【図3】図2のY方向から見た矢視図である。
【図4】図2のZ方向から見た矢視図である。
【図5】上部排気管の輸送姿勢の状態を示す図2相当図である。
【図6】同じく図3相当図である。
【図7】同じく図4相当図である。
【図8】下部排気管の取付面と反対側から見た正面図である。
【図9】下部排気管の一部を切開した右側面図である。
【図10】図8のE−E線に沿って見た拡大矢視図である。
【図11】上部排気管の取付面側から見た正面図である。
【図12】上部排気管の一部を切開した左側面図である。
【図13】図11のF−F線における拡大断面図である。
【図14】ブラケット及び蝶番の構造を示す正面図である。
【図15】同じく左側面図である。
【図16】図14のG−G線における断面図である。
【図17】図14のH−H線における断面図である。
【図18】図2のI付近の拡大図である。
【図19】図18のJ方向から見た矢視図である。
【図20】図5のM付近の拡大図である。
【図21】図20のN方向から見た矢視図である。
【図22】カバーが排気ガスの圧力で開いた状態を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0038】
4 上部旋回体(車体)
13 マフラー
15 排気管
16 回動軸(結合ピン)
17 上部排気管
18 下部排気管
19 ブラケット
20 蝶番
34,35 プレート
46 取っ手
51 カバー
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラクレーンなどの建設機械の排気管構造に関し、特にトレーラーなどによる輸送時の高さ制限に対応したものの改良に係わる。
【背景技術】
【0002】
一般に、クローラクレーンなどの建設機械においては、クローラにより走行する下部走行体上に、上部旋回体が旋回自在に設けられ、この上部旋回体に、クレーンなどの作業アタッチメントが取り外し可能に装着されているとともに、動力源としてのエンジンが搭載されていて、このエンジンにより油圧ポンプを駆動することにより、走行及び作業に必要な油圧を得る構成になっている。また、上部旋回体には、エンジンより排出される排気ガスを通すマフラーが搭載されているとともに、このマフラーから排気ガスを導入して大気に排出するための排気管が略垂直に立てて設けられている。
【0003】
そして、この種の建設機械は公道を走行することができないことから、作業現場を移動するときには、作業アタッチメントなどを取り外した上でトレーラーなどに載置して輸送することが行われている。このとき、大型の建設機械では、上部旋回体に立設された排気管なども高さ制限に対応するために取り外す必要があるが、特許文献1には、この輸送時の高さ制限に対応しかつマフラー内に雨水などが浸入するのを防止するための排気管構造が提案されている。
【0004】
すなわち、この提案の排気管構造は、排気管を、排気管本体と、雨水などの浸入を防止するフードとによって構成し、かつ排気管本体の下端側を、車体に設置されたマフラーの排気口に着脱自在に嵌合するとともに、排気管本体の上端側に上記フードを着脱自在に嵌合するものである。そして、建設機械の輸送時には、マフラーの排気口から排気管本体を取り外すことにより、高さ制限を受けることなく輸送ができるようにし、また、排気管本体から取り外したフードをマフラーの排気口に嵌合することにより、マフラー内に雨水などが浸入するのを防止できるようにするものである。
【特許文献1】特開2002−276360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記提案の排気管構造では、作業時の姿勢と輸送時の姿勢との間で変更するたびに排気管本体、フード及び締結手段の組み替えが必要になるため、作業効率が悪いという問題がある。また、輸送時に取り外した排気管本体及び1つの締結手段を保管する必要があり、紛失の虞もある。さらに、エンジンを切った直後は、排気管本体及びフードは高温であるため、安全性の観点から温度が十分に下がるまで組み替え作業を行うことができず、この点からも作業効率が悪くなる。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、輸送時の高さ規制に対応するための排気管構造を改良し、作業姿勢と輸送姿勢との間の変更を容易にかつ迅速に行うことができ、また、輸送時に部品の取り外しが不要でその紛失の防止化を図り得る建設機械の排気管構造を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、車体にエンジン及びマフラーが搭載されているとともに、車体の上部に、上記エンジンの排気ガスをマフラーから導入して大気に排出するための排気管が立設された建設機械において、上記排気管を、その下端又は途中に回動軸を有する構成にし、かつこの回動軸を中心に折り曲げ可能に設ける構成にする。
【0008】
この構成では、作業姿勢と輸送姿勢との間の変更は、単に排気管を回動軸回りに折り曲げたり、垂直に戻したりするだけで足りるため、その作業を容易にかつ迅速に行うことができる。また、輸送時に部品を取り外して保管する必要がないので、紛失の虞もなくなる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の建設機械の排気管構造において、上記回動軸を、2つのプレートを回動可能に結合してなる蝶番の結合ピンにより構成し、また、この蝶番の一方のプレートを車体側に固定する一方、蝶番の他方のプレートを、ブラケットを介して排気管に連結する構成にする。この構成では、折り曲げ可能な排気管は、ブラケット及び蝶番を介して車体側に支持されているため、排気管の折り曲げなどに伴ってマフラー側に異常な荷重が作用することはない。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の建設機械の排気管構造において、上記ブラケットに取っ手を設ける構成にする。この構成では、作業姿勢と輸送姿勢との間の変更の際に取っ手を用いることにより、排気管の折り曲げ又は垂直戻しを容易に行うことができる。しかも、取っ手は、吸気管に直接設けられたものではなく、折り曲げ可能な排気管を車体側に支持するためのブラケットに設けられているため、エンジンを切った直後でも取っ手の温度はそれ程高くはなく、作業者が取っ手を握って排気管の折り曲げ作業をすることができる。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3記載の建設機械の排気管構造において、上記排気管を、上部排気管と下部排気管とに分割し、上部排気管を、上記ブラケットを介して蝶番に連結する一方、下部排気管に、上部排気管を蝶番の結合ピンを中心に折り曲げたとき下部排気管の開口を塞ぐカバーを開閉可能に取り付け、このカバーを、排気ガスの圧力で開くように設ける構成にする。この構成では、輸送時に上部排気管を蝶番の結合ピンを中心に折り曲げたときには、下部排気管に取り付けたカバーが閉じて下部排気管の開口を塞ぐため、雨水などが下部排気管を通してマフラー内に浸入することはない。しかも、この状態でエンジンを作動させた場合でも排気ガスの圧力でカバーが開くため、排気ガスがスムーズに排出されることになる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明における建設機械の排気管構造によれば、作業姿勢と輸送姿勢との間の変更は、単に排気管を回動軸回りに折り曲げたり、垂直に戻したりするだけで足りるため、その作業を容易にかつ迅速に行うことができる。また、輸送時に部品を取り外して保管する必要がないので、部品の紛失の虞もなく、実用性に優れた効果を奏するものである。
【0013】
特に、請求項2に係る発明では、折り曲げ可能な排気管がブラケット及び蝶番を介して車体側に支持されているため、排気管の折り曲げなどに伴ってマフラー側に異常な荷重が作用することはなく、マフラーなどの変形や破損の防止化をも図ることができる。
【0014】
また、請求項3に係る発明では、作業姿勢と輸送姿勢との間の変更の際に取っ手を用いることにより、排気管の折り曲げ又は垂直戻しを容易に行うことができる上、取っ手が排気管を車体側に支持するためのブラケットに設けられているため、エンジンを切った直後でも取っ手の温度はそれ程高くはなく、作業者が取っ手を握って作業をすることができ、作業の安全性の確保と作業効率の向上とを共に図ることができる。
【0015】
さらに、請求項4に係る発明では、輸送時に上部排気管を蝶番の結合ピンを中心に折り曲げたときには、下部排気管に取り付けたカバーが閉じて下部排気管の開口を塞ぐため、雨水などのマフラー内への浸入を防止することができる。しかも、この状態でエンジンを作動させた場合でも排気ガスの圧力でカバーが開くため、排気ガスのスムーズな排出を確保することができるという効果を併有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態である実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係る排気管構造を備えた建設機械としてのクローラクレーンを示し、1はクローラ2により走行する下部走行体であって、この下部走行体1上には旋回装置3を介在して車体としての上部旋回体4が旋回可能に設けられている。この上部旋回体4の前部には、キャブ5が設けられているとともに、作業アタッチメントとしてのクレーンのブーム6の基端及びマスト7の基端がそれぞれ回動可能に支持されている。また、上部旋回体4の後部には、動力源としてのエンジン、油圧ポンプ(共に図示せず)及びカウンタウエイト8などが搭載されていて、このエンジンにより油圧ポンプを駆動することにより、走行及び作業に必要な油圧を得るようになっている。
【0018】
上記キャブ5の周囲及び上部旋回体4の中央側壁部4aの外側面には、図2に拡大詳示するように、作業者pが歩行しかつ作業するための手摺り11付きの歩行床12が取り付けられている。また、上部旋回体4の中央側壁部4aの内側(つまりエンジンや油圧ポンプなどの配置側)には、図2ないし図4に示すように、エンジンより排出される排気ガスを通して消音するためのマフラー13が中央側壁部4aに沿って水平な状態で取付台14を介して取り付けられているとともに、このマフラー13の排気口13aからエンジンの排気ガスを導入して大気に放出するための排気管15が中央側壁部4aに沿いかつその上方にまで略垂直に延びて立設されている。
【0019】
そして、本発明の特徴点として、上記排気管15は、クローラクレーンの輸送時の高さ制限に対応するために、図5ないし図7に示すように、その高さ方向(長さ方向)の途中で中央側壁部4aの上端面に近い個所に回動軸16を有し、この回動軸16を中心に折り曲げ可能に設けられている。特に、本実施形態の場合、排気管15は、中央側壁部4aの上端面に近い個所で上側の上部排気管17と下側の下部排気管18とに分割されており、上部排気管17は、ブラケット19及び蝶番20などを介して中央側壁部4aの上端面に取り付けられ、蝶番20の結合ピンからなる回動軸16を中心に回動して、下部排気管18の上端から離れて中央側壁部4aの上端面と略平行に横倒れした輸送姿勢の状態に折り曲げられるようになっている。
【0020】
上記下部排気管18は、図8及び図9に拡大詳示するように、下側で略直角に折れ曲がったL字形に形成されており、この下部排気管18の一端(下端)は、マフラー13の排気口13aに対しバンドやボルトなどからなる締結金具21(図5ないし図7参照)によって結合されている。下部排気管18の下端寄りの部位には、その内部に上端側から浸入した雨水などを堰き止めるための堰板22が設けられているとともに、この堰板22により堰き止めた雨水などを外部に排水する排水口23が設けられ、この排水口23にはドレーンパイプ24(図2及び図3参照)が接続されている。また、下部排気管18の上部には下部排気管18を中央側壁部4aの内面に取り付けるための取付プレート25が固着されているとともに、下部排気管18の上端部には、図10に明示するように矩形皿状の上端部材26が固着されている。この上端部材26には、後述するカバー51を取り付けるための取付プレート27が固着されているとともに、上端部材26内に溜まった雨水などを外部に排水する排水口28が設けられ、この排水口28にはドレーンパイプ29(図2及び図3参照)が接続されている。
【0021】
一方、上記上部排気管17は、図11及び図12に示すように、垂直に延びる下部側の直管部17aと、傾斜して延びる上部側のフード部17bとからなり、直管部17aには、図13にも示すように、フード部17bの傾斜する側に取付プレート31が固着されている。そして、図2に示すように、この取付プレート31をブラケット19の後述する取付面部43にボルト止めすることにより、上部排気管17がブラケット19を介して蝶番20に連結されている。また、直管部17aの下端には、直径が上部排気管17及び下部排気管18のそれよりも大きい覆い管32が設けられており、上部排気管17が下部排気管18と同一軸線上に略垂直に位置する作業姿勢のときには、図18に拡大詳示するように、覆い管32により下部排気管18の上端外周を覆った状態で下部排気管18と上部排気管17とが連通するようになっている。
【0022】
上記ブラケット19及び蝶番20の構造は、図14ないし図17に詳示している。すなわち、蝶番20は、2つのプレート34,35を結合ピンつまり回動軸16により回動可能に結合してなり、この蝶番20の一方のプレート34は、固定プレート36に固着され、図6及び図7に示す如くこの固定プレート36を介して、中央側壁部4aの上端面に設けた取付台37上にボルト止めにより固定されている。固定プレート36の蝶番20と反対側の端部にはスペーサー38が固着され、このスペーサー38にはネジ穴39が設けられている。また、蝶番20の他方のプレート35にはブラケット19が固着されており、このブラケット19は、プレート35に固着されかつ蝶番20の2つのプレート34,35同士を向かい合わせたとき(つまり上部排気管17が作業姿勢のとき)スペーサー38を介在して固定プレート36に対向するベース部41と、このベース部41上に蝶番20の回動軸16と平行に立設された垂直面部42と、この垂直面部42の傾斜する一辺に固着された取付面部43とを有し、この取付面部43に上記上部排気管17の取付プレート31がボルト止めにより固定されるようになっている。
【0023】
上記ブラケット19のベース部41の蝶番20と反対側の端部には切り欠き部44が設けられており、上部排気管17が作業姿勢のとき、図2に示すようなボルト45を、この切り欠き部44を通して上記スペーサー38のネジ穴39にねじ込むことにより、ブラケット19のベース部41が固定プレート36を介在して取付台37上に固定され、上部排気管17が作業姿勢に保持されるようになっている。また、ブラケット19の垂直面部42の上部には取っ手46が設けられているとともに、この取っ手46に囲まれた部位に長孔47が設けられており、上部排気管17が蝶番20の回動軸16を中心に折り曲げられた輸送姿勢のとき、図6及び図7に示すように、ブラケット19の垂直面部42が中央側壁部4aの上端面に設けた固定台48上に当接し、この垂直面部42の長孔47にボルト45を通して垂直面部42を固定台48に固定することにより、上部排気管17が輸送姿勢に保持されるようになっている。
【0024】
さらに、上記下部排気管18の上端部材26側の取付プレート27には、図18ないし図21に拡大詳示するように、上部排気管17が輸送姿勢のとき下部排気管18の上端開口18aを塞ぐカバー51が支軸52回りに開閉可能に取り付けられている。このカバー51は、下部排気管18の上端開口18aより一回り大きい円形プレートよりなるカバー本体53と、このカバー本体53に一端部が固着され、中間部が支軸52を介して取付プレート27に回動可能に支持されたアーム部54と、このアーム部54の他端に固着された棒状の重り55とからなり、重り55の重量調整などによって、図22に示すように排気ガスの圧力によりカバー51が開くように設けられている。カバー51のアーム部54には第1の挿入孔56と第2の挿入孔57とが設けられており、上部排気管17の輸送姿勢から作業姿勢への変更に先立ってカバー51を、下部排気管18の上端開口18aを開くように起立させたとき、
第1の挿入孔56が取付プレート27に設けた挿入孔58(図20参照)と一致し、この両挿入孔56,58にスプリングピン59を挿入することにより、カバー51を起立状態に保持するようになっている。スプリングピン59は、上部排気管17が輸送姿勢のとき第2の挿入孔57に挿入して保管されるようになっている。
【0025】
次に、上記実施形態の作動、特に排気管15の上部排気管17を作業姿勢と輸送姿勢との間で変更するときの作業手順について説明する。
【0026】
今、図2ないし図4に示すように、排気管15の上部排気管17がその下部排気管18と同一軸線上に略垂直に位置する作業姿勢にある。このとき、ブラケット19のベース部41は、その切り欠き部44を通してスペーサー38のネジ穴39にねじ込まれたボルト45により固定プレート36を介在して上部旋回体4の中央側壁部4a上端面の取付台37上に固定されており、これにより、上部排気管17が上記ブラケット19及び蝶番20を介して取付台37に支持され、作業姿勢に保持される。また、下部排気管18の上端に設けたカバー51は、図18及び図19に詳示するように、下部排気管18の上端開口18aを開くように起立した状態にあり、かつアーム部54の第1の挿入孔56と取付プレート27の挿入孔58とにスプリングピン59を挿入することにより起立状態に保持されている。
【0027】
そして、このような作業姿勢からクローラクレーンの輸送に際して排気管15の上部排気管17を輸送姿勢に変更するときには、先ず、ブラケット19のベース部41を取付台37に固定したボルト45を取り外した後、ブラケット19に設けた取っ手46を握って蝶番20の回動軸16回りに上部排気管17をブラケット19と一体に回動させて、ブラケット19の垂直面部42が上部旋回体4の中央側壁部4a上の固定台48に当接する横倒し状態にまで、つまり上部排気管17の輸送姿勢にまで折り曲げる。続いて、先に取り外したボルト45を用いてブラケット42の垂直面部42を固定台48に固定することにより、上部排気管17が輸送姿勢に保持される。このボルト45による固定と前後して、カバー51のアーム部54の第1の挿入孔56などからスプリングピン59を取り外し、カバー51を支軸52回りに閉じる方向に回動させて下部排気管18の上端開口18aを塞ぐ。その後、取り外したスプリングピン59をカバー51のアーム部54の第2の挿入孔57に挿入して保管する(図20及び図21参照)。
【0028】
以上によって、排気管15の上部排気管17を作業姿勢から輸送姿勢に変更するときの一連の作業が終了する。また一方、排気管15の上部排気管17を輸送姿勢から作業姿勢に変更するときの作業手順は、上述した作業姿勢から輸送姿勢への変更のときと逆の手順である。
【0029】
このように、排気管15の上部排気管17を作業姿勢と輸送姿勢との間で変更するときには、単に上部排気管17を蝶番20の回動軸16回りに折り曲げたり、垂直に戻したりするだけで足りため、その作業を容易にかつ迅速に行うことができ、作業効率を高めることができる。しかも、上部排気管17は、輸送姿勢のときでも取り外されるものではなく、ブラケット19と共に横倒しに折り曲げた状態で固定台48に固定されるものであるため、輸送時に上部排気管17を紛失することはない。
【0030】
特に、本実施形態の場合、上部排気管17が作業姿勢のときにブラケット19のベース部41を取付台37に固定したボルト45は、上部排気管17が輸送姿勢のときにはブラケット19の垂直面部42を固定台48に固定するのに用いられるため、輸送時にこのボルト45を紛失することはない。また、上部排気管17が作業姿勢のときにカバー51を起立状態に保持するためにカバー51のアーム部54の第1の挿入孔56と取付プレート27の挿入孔58とに挿入されたスプリングピン59は、上部排気管17が輸送姿勢のときには第1の挿入孔56などから取り外されるが、同じアーム部54の第2の挿入孔57に挿入して保管されるため、輸送時にこのスプリングピン59を紛失することもなく、部品紛失の防止化を確実に図ることができる。
【0031】
その上、上記上部排気管17は、ブラケット19及び蝶番20を介して上部旋回体4の中央側壁部4a上端面の取付台37に支持されているため、上部排気管17の作業姿勢と輸送姿勢との間の変更のときなどに下部排気管18ないしマフラー13の排気口13a側に異常な荷重が作用することはなく、それらの変形や損傷の防止化を図ることができる。
【0032】
さらに、上部排気管17の作業姿勢と輸送姿勢との間の変更のときには、取っ手46を握って作業をすることができるので、上部排気管17の姿勢変更を容易に行うことができる。しかも、取っ手46は、上部吸気管17に直接設けられたものではなく、上部排気管17を上部旋回体4側の取付台37に支持するためのブラケット19に設けられているため、エンジンを切った直後でも取っ手46の温度はそれ程高くはなく、作業者pが取っ手46を握って作業をすることができ、作業効率の向上を一層図ることができる。
【0033】
加えて、上部排気管17の輸送姿勢のときには、下部排気管18に取り付けたカバー51が下部排気管18の上端開口18aを塞ぐため、雨水などが下部排気管18を通してマフラー13内に収入するのを防止することができる。しかも、この状態でエンジンを作動させた場合には、図22に示す如く排気ガスの圧力でカバー51が開くため、排気ガスをスムーズに排出させることができる。
【0034】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の形態を包含するものである。例えば上記実施形態では、排気管15の上部排気管17をブラケット19及び蝶番20を介して上部旋回体4の中央側壁部4a上端面の取付台37に取り付け、蝶番20の結合ピンである回動軸16を中心に上部排気管17を折り曲げ可能に設ける構成にしたが、本発明は、これに限らず、蝶番20の代わり、回動軸を有する構造を用いて、上部排気管17を回動軸回りに折り曲げ可能に、取付台37又は下部排気管18に取り付ける構成にしてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、マフラー13の排気口13aから中央側壁部4aに沿いかつその上方にまで略垂直に延びて立設された排気管15を、中央側壁部4aの上端面に近い個所で上部排気管17と下部排気管18とに分割し、上部排気管17を回動軸16回りに折り曲げ可能に設ける構成にしたが、本発明は、排気管全体を、その下端又は途中に設けた回動軸回りに折り曲げ可能に設けるように構成してもよい。
【0036】
さらに、本発明は、上記実施形態の如きクローラクレーンの排気管構造に限らず、トレーラーなどによる輸送時に高さ規制に対応する必要がある大型の建設機械の排気管構造に広く適用することができるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る排気管構造を備えたクローラクレーンの車体側中心の側面図である。
【図2】図1のX−X線に沿って見た排気管構造付近の矢視図である。
【図3】図2のY方向から見た矢視図である。
【図4】図2のZ方向から見た矢視図である。
【図5】上部排気管の輸送姿勢の状態を示す図2相当図である。
【図6】同じく図3相当図である。
【図7】同じく図4相当図である。
【図8】下部排気管の取付面と反対側から見た正面図である。
【図9】下部排気管の一部を切開した右側面図である。
【図10】図8のE−E線に沿って見た拡大矢視図である。
【図11】上部排気管の取付面側から見た正面図である。
【図12】上部排気管の一部を切開した左側面図である。
【図13】図11のF−F線における拡大断面図である。
【図14】ブラケット及び蝶番の構造を示す正面図である。
【図15】同じく左側面図である。
【図16】図14のG−G線における断面図である。
【図17】図14のH−H線における断面図である。
【図18】図2のI付近の拡大図である。
【図19】図18のJ方向から見た矢視図である。
【図20】図5のM付近の拡大図である。
【図21】図20のN方向から見た矢視図である。
【図22】カバーが排気ガスの圧力で開いた状態を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0038】
4 上部旋回体(車体)
13 マフラー
15 排気管
16 回動軸(結合ピン)
17 上部排気管
18 下部排気管
19 ブラケット
20 蝶番
34,35 プレート
46 取っ手
51 カバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体にエンジン及びマフラーが搭載されているとともに、車体の上部に、上記エンジンの排気ガスをマフラーから導入して大気に排出するための排気管が立設された建設機械において、
上記排気管は、その下端又は途中に回動軸を有し、この回動軸を中心に折り曲げ可能に設けられていることを特徴とする建設機械の排気管構造。
【請求項2】
上記回動軸は、2つのプレートを回動可能に結合してなる蝶番の結合ピンであり、この蝶番の一方のプレートは車体側に固定されている一方、蝶番の他方のプレートは、ブラケットを介して排気管に連結されている請求項1記載の建設機械の排気管構造。
【請求項3】
上記ブラケットには取っ手が設けられている請求項2記載の建設機械の排気管構造。
【請求項4】
上記排気管は、上部排気管と下部排気管とに分割されており、上部排気管は上記ブラケットを介して蝶番に連結されている一方、下部排気管には、上部排気管を蝶番の結合ピンを中心に折り曲げたとき下部排気管の開口を塞ぐカバーが開閉可能に取り付けられ、このカバーは、排気ガスの圧力で開くように設けられている請求項2又は3記載の建設機械の排気管構造。
【請求項1】
車体にエンジン及びマフラーが搭載されているとともに、車体の上部に、上記エンジンの排気ガスをマフラーから導入して大気に排出するための排気管が立設された建設機械において、
上記排気管は、その下端又は途中に回動軸を有し、この回動軸を中心に折り曲げ可能に設けられていることを特徴とする建設機械の排気管構造。
【請求項2】
上記回動軸は、2つのプレートを回動可能に結合してなる蝶番の結合ピンであり、この蝶番の一方のプレートは車体側に固定されている一方、蝶番の他方のプレートは、ブラケットを介して排気管に連結されている請求項1記載の建設機械の排気管構造。
【請求項3】
上記ブラケットには取っ手が設けられている請求項2記載の建設機械の排気管構造。
【請求項4】
上記排気管は、上部排気管と下部排気管とに分割されており、上部排気管は上記ブラケットを介して蝶番に連結されている一方、下部排気管には、上部排気管を蝶番の結合ピンを中心に折り曲げたとき下部排気管の開口を塞ぐカバーが開閉可能に取り付けられ、このカバーは、排気ガスの圧力で開くように設けられている請求項2又は3記載の建設機械の排気管構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2008−267156(P2008−267156A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107185(P2007−107185)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]