建設機械の油圧回路
【課題】切換弁の大きさを従来程度に保ちながら、油圧アクチュエータからの戻り油がタンクに排出されるまでの通過圧損を安価に低減させることができる建設機械の油圧回路を提供する。
【解決手段】第二作業機用第2切換弁22は、第一作業機用油圧アクチュエータ80からの戻り油をタンクTに排出させるための排出通路22cを備え、また、油圧回路10は、第二作業機用第2切換弁22の切り換え位置を制御する第二作業機用第2切換弁制御機構30、32、34を備え、第一作業機84の動作がなされる作業状態であって所定の条件に合致する特定の作業状態のときに、第二作業機用第2切換弁22を排出通路22cが連通するように切り換える。
【解決手段】第二作業機用第2切換弁22は、第一作業機用油圧アクチュエータ80からの戻り油をタンクTに排出させるための排出通路22cを備え、また、油圧回路10は、第二作業機用第2切換弁22の切り換え位置を制御する第二作業機用第2切換弁制御機構30、32、34を備え、第一作業機84の動作がなされる作業状態であって所定の条件に合致する特定の作業状態のときに、第二作業機用第2切換弁22を排出通路22cが連通するように切り換える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械の油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルは、下部走行体(基体)、上部旋回体、ブーム、アームおよびバケットなどの複数の作動部位を備え、建設作業等に広く用いられている。
【0003】
油圧ショベルのこれら複数の作動部位は同時に作動させられることも多い。例えば、油圧ショベルの一般的な作業である掘削作業や床掘り作業を行う際においては、ブームとアームを同時に操作する同時操作(複合操作)がなされることが多い。このような同時操作を円滑に行えるようにするために、油圧ポンプを複数設けるとともに、各油圧ポンプにブーム用切換弁とアーム用切換弁をそれぞれタンデム接続して、タンデム接続された通路をパラレルに設けた油圧回路が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような油圧回路としては、例えば図5に示す油圧回路がある。この油圧回路100は、油圧アクチュエータ駆動用の複数の油圧ポンプ(第1油圧ポンプ102、第2油圧ポンプ104)をパラレルに備えている。第1油圧ポンプ102の上流から下流に向かって、ブームシリンダ106への駆動用圧油の方向と流量を調整するためのブーム用第2切換弁112と、アームシリンダ108への駆動用圧油の方向と流量を調整するためのアーム用第1切換弁114とがタンデムに設けられている。また、第2油圧ポンプ104の上流から下流に向かって、ブームシリンダ106への駆動用圧油の方向と流量を調整するためのブーム用第1切換弁110と、アームシリンダ108への駆動用圧油の方向と流量を調整するためのアーム用第2切換弁116とがタンデムに設けられている。これにより、油圧回路100では、タンデム接続されたブーム用切換弁とアーム用切換弁とが、油圧ポンプ102、104ごとにタンデム接続されて、パラレルに設けられている。
【0005】
図5に示す油圧回路100を備えた油圧ショベル150において、一般的な作業であるアーム開き動作を行う場合、アーム用リモコンレバー装置120のアーム用操作レバー120Aを操作して、アーム用第1切換弁114およびアーム用第2切換弁116の切り換えを行わせる。具体的には、アーム用リモコンレバー装置120のアーム用操作レバー120Aを図1において右方向に倒し、アーム用第1切換弁114をp側に、アーム用第2切換弁116をq側に切り換えて、アームシリンダ108のロッド側に圧油を供給する通路114a、116aを開いて、第1油圧ポンプ102および第2油圧ポンプ104からアームシリンダ108のロッド側に圧油を供給する。また、アーム用第1切換弁114をp側に、アーム用第2切換弁116をq側に切り換えると、アームシリンダ108のボトム側からの戻り油をタンクTへ導通させる排出路114b、116bが開放されて、アームシリンダ108のボトム側からの戻り油がタンクTへ排出可能となり、アームシリンダ108は収縮することが可能となる。
【0006】
したがって、アーム用リモコンレバー装置120のアーム用操作レバー120Aを図5において右方向に倒し、アーム用第1切換弁114をp側、アーム用第2切換弁116をq側に切り換えると、アームシリンダ108のロッド側に圧油が供給されるとともにアームシリンダ108のボトム側からの戻り油がタンクTに排出されて、アームシリンダ108が収縮し、アーム152は開き動作を行う。
【0007】
アームシリンダ108のボトム側から排出される戻り油は、アームシリンダ108のボトム側からの通路108a、アーム用切換弁114、116、通路114b、116bを通過してタンクTに排出される。したがって、従来例である図5に示す油圧回路の場合、アームシリンダ108のボトム側から排出される戻り油がタンクTに戻る通路は、アーム用第1切換弁114を経由する通路114bおよびアーム用第2切換弁116を経由する通路116bの2つの通路が存在する。
【0008】
なお、ブーム用第2切換弁112は、ブーム154の立ち上げ時において、ブームシリンダ106の駆動を助けるための圧油を第1油圧ポンプ102からブームシリンダ106のボトム側へ送り込む役割を有しており、3つの切り換え位置r、s、tのうち、ブームシリンダ106のボトム側へ送り込む切り換え位置rと、ブームシリンダ106へ圧油は供給せずに下流側へ圧油を通過させるだけの切り換え位置sの2つの切り換え位置のみを使用しており、切り換え位置tは使用されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−4339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述したように、アーム152を開く作業ではアームシリンダ108のボトム側から作動油が排出されるが、この戻り油は、アーム用第1、第2切換弁114、116を通過するため、この部分での戻り油の通路が十分に確保されていないと、通過圧損が高くなりやすく、アーム開き動作におけるエネルギ損失が大きくなりやすい。
【0011】
この通過圧損を低減するための方策としては、アーム用第1切換弁114およびアーム用第2切換弁116のサイズ(戻り油の通路のサイズ)を大きくすることが考えられる。しかしながら、この方法では、アーム用第1切換弁114およびアーム用第2切換弁116の製造コストが増加してしまう問題や、機体への搭載性が悪くなるという問題が別に生じてしまう。
【0012】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、切換弁の大きさを従来程度に保ちながら、油圧アクチュエータからの戻り油がタンクに排出されるまでの通過圧損を安価に低減させることができる建設機械の油圧回路を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、第1の油圧ポンプに接続され、第一作業機を駆動する第一作業機用油圧アクチュエータへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるための第一作業機用第1切換弁と、第2の油圧ポンプに接続され、第二作業機を駆動する第二作業機用油圧アクチュエータへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるための第二作業機用第1切換弁と、前記第1の油圧ポンプに前記第一作業機用第1切換弁とタンデム接続され、前記第二作業機用油圧アクチュエータへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるための第二作業機用第2切換弁と、を備えた建設機械の油圧回路において、前記第二作業機用第2切換弁は、前記第一作業機用油圧アクチュエータからの戻り油をタンクに排出させるための排出通路を備え、また、前記油圧回路は、前記第二作業機用第2切換弁の切り換え位置を制御する第二作業機用第2切換弁制御機構を備え、前記第一作業機の動作がなされる作業状態であって所定の条件に合致する特定の作業状態のときに、前記第二作業機用第2切換弁を前記排出通路が連通するように切り換えることにより、前記課題を解決したものである。
【0014】
本発明では、第二作業機用第2切換弁は、第一作業機用油圧アクチュエータからの戻り油をタンクに排出させるための排出通路を備え、また、第二作業機用第2切換弁の切り換え位置を制御する第二作業機用第2切換弁制御機構を備えており、第一作業機の動作がなされる作業状態であって所定の条件に合致する特定の作業状態のときに、第二作業機用第2切換弁を排出通路が連通するように切り換える。このため、本発明では、第一作業機用第1切換弁のほかに、第二作業機用第2切換弁をも介して第一作業機用油圧アクチュエータの戻り油をタンクに導くことができる。そのため、該第一作業機用切換弁のサイズを大きくする必要がなく、第一作業機用切換弁の製造コストが増加してしまう問題や、機体への搭載性が悪くなるという問題を発生させずに、第一作業機用油圧アクチュエータからの戻り油がタンクに排出されるまでの通過圧損を低減させることができる。即ち、本発明では、第一作業機用切換弁の大きさを従来程度に保ちながら、第一作業機用油圧アクチュエータからの戻り油がタンクに排出されるまでの通過圧損を安価に低減させることができる。
【0015】
前記油圧回路において、更に、前記第2の油圧ポンプに前記第二作業機用第1切換弁とタンデム接続され、前記第一作業機用油圧アクチュエータへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるための第一作業機用第2切換弁を備えさせてもよい。
【0016】
以上の油圧回路において、前記第一作業機がアームで、前記第一作業機用第1切換弁および第一作業機用第2切換弁がアーム用第1切換弁およびアーム用第2切換弁であり、また、前記第一作業機用油圧アクチュエータがアームシリンダであり、また、前記第二作業機がブームで、前記第二作業機用第1切換弁および第二作業機用第2切換弁がブーム用第1切換弁およびブーム用第2切換弁であり、また、前記ブーム用油圧アクチュエータがブームシリンダである場合、前記特定の作業状態か否かを、前記アームの開き動作の程度を示すアーム開きパラメータの少なくとも1つが所定の閾値より大きいか否かを比較することによって判断することができる。
【0017】
この場合、前記アーム用第1切換弁および前記アーム用第2切換弁を操作するアーム用操作レバーを備えるときには、前記アーム開きパラメータの1つを前記アーム用操作レバーの操作量とすることができる。
【0018】
また、前記アーム用第1切換弁を切り換えるパイロット圧および前記アーム用第2切換弁を切り換えるパイロット圧のうちの少なくとも一方を検出するアーム用パイロット圧検出手段を備えるときには、前記アーム開きパラメータの1つを前記アーム用第1切換弁を切り換えるパイロット圧または前記アーム用第2切換弁を切り換えるパイロット圧とすることができる。
【0019】
また、前記アームシリンダのロッド収縮時の推力を検出するアームシリンダロッド収縮推力検出手段を備えるときには、前記アーム開きパラメータの1つを前記アームシリンダのロッド収縮時の推力とすることができる。
【0020】
また、前記アームシリンダのロッド側の圧油とボトム側の圧油との圧力差を検出するアームシリンダ圧力差検出手段を備えるときには、前記アーム開きパラメータの1つを前記アームシリンダにおける前記圧力差とすることができる。
【0021】
また、前記アームシリンダのロッドの収縮速度を検出するアームシリンダロッド収縮速度検出手段を備えるときには、前記アーム開きパラメータの1つを前記アームシリンダのロッド収縮速度とすることができる。
【0022】
また、前記アームと前記ブームとのなす角の増加速度を検出するアーム角速度検出手段を備えるときには、前記アーム開きパラメータの1つを前記アームと前記ブームとのなす角の増加速度とすることができる。
【0023】
さらに、前記特定の作業状態か否かを、前記ブームの上げ動作の程度を示すブーム上げパラメータの少なくとも1つが所定の閾値より小さいか否かを比較した結果も含めて判断するようにしてもよい。
【0024】
この場合、前記ブーム用第1切換弁および前記ブーム用第2切換弁を操作するブーム用操作レバーを備えるときには、前記ブーム上げパラメータの1つを前記ブーム用操作レバーの操作量とすることができる。
【0025】
また、前記ブーム用第1切換弁を切り換えるパイロット圧および前記ブーム用第2切換弁を切り換えるパイロット圧のうちの少なくとも一方を検出するブーム用パイロット圧検出手段を備えるときには、前記ブーム上げパラメータの1つを前記ブーム用第1切換弁を切り換えるパイロット圧または前記ブーム用第2切換弁を切り換えるパイロット圧とすることができる。
【0026】
また、前記ブームシリンダのロッド伸長時の推力を検出するブームシリンダロッド伸長推力検出手段を備えるときには、前記ブーム上げパラメータの1つを前記ブームシリンダのロッド伸長時の推力とすることができる。
【0027】
また、前記ブームシリンダのロッド側の圧油とボトム側の圧油との圧力差を検出するブームシリンダ圧力差検出手段を備えるときには、前記ブーム上げパラメータの1つを前記ブームシリンダにおける前記圧力差とすることができる。
【0028】
また、前記ブームシリンダのロッドの伸長速度を検出するブームシリンダロッド伸長速度検出手段を備えるときには、前記ブーム上げパラメータの1つを前記ブームシリンダのロッド伸長速度とすることができる。
【0029】
また、前記ブームの水平方向からの立ち上がり角の増加速度を検出するブーム角度速度検出手段を備えるときには、前記ブーム上げパラメータの1つを前記ブームの水平方向からの立ち上がり角の増加速度とすることができる。
【0030】
また、本発明は、第1の油圧ポンプに接続され、アームを駆動するアームシリンダへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるためのアーム用第1切換弁と、第2の油圧ポンプに接続され、前記アームシリンダへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるためのアーム用第2切換弁と、前記第2の油圧ポンプに前記アーム用第2切換弁とタンデム接続され、ブームを駆動するブームシリンダへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるためのブーム用第1切換弁と、前記第1の油圧ポンプに前記アーム用第1切換弁とタンデム接続され、前記ブームシリンダへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるためのブーム用第2切換弁と、を備えた建設機械の油圧回路において、前記ブーム用第2切換弁は、前記アームシリンダのボトム側からの戻り油をタンクに排出させるための排出通路を備え、また、前記油圧回路は、アーム開き方向に前記アーム用第1切換弁または前記アーム用第2切換弁を切り換えるアーム開きパイロット圧を前記ブーム用第2切換弁の一端のパイロットポートに導く第1のパイロット通路と、ブーム上げ方向に前記ブーム用第1切換弁を切り換えるブーム上げパイロット圧を前記ブーム用第2切換弁の他端のパイロットポートに導く第2のパイロット通路と、を備えるように構成することにより、前記課題を解決することもできる。
【0031】
ここで更に、前記第1のパイロット通路に、前記アーム開きパイロット圧および前記ブーム上げパイロット圧に応じて該第1のパイロット通路の連通の程度を切り換えるパイロット用切換弁を設けることにより、ブームの上げ動作の円滑性をより確保しやすくなる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、切換弁の大きさを従来程度に保ちながら、油圧アクチュエータからの戻り油がタンクに排出されるまでの通過圧損を安価に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路の構成を示す図
【図2】本発明の第2実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路の構成を示す図
【図3】本発明の第3実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路の構成を示す図
【図4】本発明の第4実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路の構成を示す図
【図5】従来の油圧ショベルの油圧回路の構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下図面に基づいて、本発明に係る油圧ショベルの油圧回路の好適な実施形態の例について詳細に説明する。
【0035】
図1は、本発明の第1実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路の構成を示す図である。
【0036】
この油圧回路10は、第1油圧ポンプ12と、第2油圧ポンプ14と、アーム用第1切換弁(第一作業機用第1切換弁)16と、アーム用第2切換弁(第一作業機用第2切換弁)18と、ブーム用第1切換弁(第二作業機用第1切換弁)20と、ブーム用第2切換弁(第二作業機用第2切換弁)22と、アーム用リモコンレバー装置24と、ブーム用リモコンレバー装置26と、パイロット圧センサ28と、コントローラ30と、電磁比例弁32と、パイロット油圧ポンプ34と、を備え、アームシリンダ(第一作業機用油圧アクチュエータ)80およびブームシリンダ(第二作業機用油圧アクチュエータ)82に圧油を供給して、アーム(第一作業機)84およびブーム(第二作業機)86を作動させて、掘削作業や床掘り作業等の各種作業を油圧ショベル78に行わせる。符号88はバケットである。なお、掘削や床掘りを行う際には、その準備動作として、ブーム86の上げ動作を伴わないアーム84の開き動作や、アーム84の開きとブーム86の下げの同時操作を行って、アーム84を所定の位置まで開いておくとともにブーム86を必要に応じて所定の位置まで下げておく必要がある。本実施形態では、アームの開き動作がなされる作業状態であって所定の条件に合致する作業状態を、「特定の作業状態」と称する。「所定の条件」については、以下の説明の中で適宜具体的に説明する。
【0037】
第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ14はパラレルに配置されている。第1油圧ポンプ12にはタンデム通路38が接続されており、第1油圧ポンプ12からタンデム通路38を経て供給される圧油は、アームシリンダ80および/またはブームシリンダ82に供給される。タンデム通路38には、上流側にブーム用第2切換弁22が設けられ、下流側にアーム用第1切換弁16が設けられており、アーム用第1切換弁16とブーム用第2切換弁22とはタンデム接続されている。
【0038】
第2油圧ポンプ14にはタンデム通路42が接続されており、第2油圧ポンプ14からタンデム通路42を経て供給される圧油は、アームシリンダ80および/またはブームシリンダ82に供給される。タンデム通路42には、上流側にブーム用第1切換弁20が設けられ、下流側にアーム用第2切換弁18が設けられており、アーム用第2切換弁18とブーム用第1切換弁20とはタンデム接続されている。
【0039】
アーム用第1切換弁16は、3位置6ポートの切換弁であり、3つの切り換え位置A、B、Cを備えており、第1油圧ポンプ12からアームシリンダ80へ向かう圧油の方向と流量を制御する。アーム用第1切換弁16のスプールの両端には、それぞれパイロットポート16a、16bが設けられており、それぞれパイロット通路24a、24bからパイロット圧が供給される。
【0040】
アーム用第1切換弁16のスプールは、オペレータがアーム用リモコンレバー装置24を操作することによって移動し、第1油圧ポンプ12からアームシリンダ80に供給される圧油の方向と流量を制御する。第1油圧ポンプ12からアームシリンダ80に供給される圧油は、パラレル通路40、またはタンデム通路38およびパラレル通路40から、アーム用第1切換弁16を経て、アーム用通路80a、80bを通ってアームシリンダ80に供給される。
【0041】
また、アーム用第1切換弁16には、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油をタンクTに排出するための排出通路16cが備えられている。アーム用第1切換弁16が切り換え位置Aのとき、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油は、アーム用通路80b、排出通路16c、タンク通路16dを経由してタンクTに排出される。
【0042】
また、アーム用第1切換弁16と並列にバイパス通路80hが設けられている。バイパス通路80hは、アームシリンダ80のボトム側に連結するアーム用通路80b上の分岐点80gと、ブーム用第2切換弁22の下流側のポートであるポート22dとを連結する通路である。バイパス通路80hは、ブーム用第2切換弁22が切り換え位置Iのときに、ブーム用第2切換弁22の排出通路22cを介してタンクTに通じるタンク通路22eと連通する。これにより、ブーム用第2切換弁22が切り換え位置Iのとき、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油は、アーム用通路80b、バイパス通路80h、排出通路22c、タンク通路22eを経由してタンクTに排出される。
【0043】
アーム用第2切換弁18は、3位置6ポートの切換弁であり、3つの切り換え位置D、E、Fを備えており、第2油圧ポンプ14からアームシリンダ80へ向かう圧油の方向と流量を制御する。アーム用第2切換弁18のスプールの両端には、それぞれパイロットポート18a、18bが設けられており、それぞれパイロット通路24a、24bからパイロット圧が供給される。
【0044】
アーム用第2切換弁18のスプールもアーム用第1切換弁16のスプールと同様に、オペレータがアーム用リモコンレバー装置24を操作することによって移動し、アームシリンダ80に供給される圧油の方向と流量を制御する。第2油圧ポンプ14からアームシリンダ80に供給される圧油は、パラレル通路44、またはタンデム通路42およびパラレル通路44から、アーム用第2切換弁18を経て、アーム用合流通路80c、80dを通り、合流点80e、80fでアーム用通路80a、80bに合流してアームシリンダ80に供給される。
【0045】
また、アーム用第2切換弁18には、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油をタンクTに排出するための排出通路18cが備えられている。アーム用第2切換弁18が切り換え位置Dのとき、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油は、アーム用通路80b、排出通路18c、タンク通路18dを経由してタンクTに排出される。
【0046】
ブーム用第1切換弁20は、3位置6ポートの切換弁であり、3つの切り換え位置J、K、Lを備えており、第2油圧ポンプ14からブームシリンダ82へ向かう圧油の方向と流量を制御する。ブーム用第1切換弁20のスプールの両端には、それぞれパイロットポート20a、20bが設けられており、それぞれパイロット通路26a、26bからパイロット圧が供給される。
【0047】
ブーム用第1切換弁20のスプールは、オペレータがブーム用リモコンレバー装置26を操作することによって移動し、第2油圧ポンプ14からブームシリンダ82に供給される圧油の方向と流量を制御する。第2油圧ポンプ14からブームシリンダ82に供給される圧油は、タンデム通路42からブーム用第1切換弁20を経てブーム用通路82a、82bを通ってブームシリンダ82に供給される。
【0048】
ブーム用第2切換弁22は、3位置6ポートの切換弁であり、3つの切り換え位置G、H、Iを備えており、第1油圧ポンプ12からブームシリンダ82へ向かう圧油の方向と流量を制御する。ブーム用第2切換弁22のスプールの両端には、それぞれパイロットポート22a、22bが設けられており、パイロットポート22aにはパイロット通路26aからパイロット圧が供給され、パイロットポート22bにはパイロット通路34aからパイロット圧が供給される。
【0049】
切り換え位置Gのとき、ブーム用合流通路82cが連通し、第1油圧ポンプ12からの圧油はブームシリンダ82のボトム側に供給される。また、ブームシリンダ82のロッド側からの戻り油はそれほど多くなく、この戻り油がタンクTへの戻る通路はブーム用第1切換弁20を経由する通路のみで十分なので、この戻り油の排出通路は切り換え位置Gには設けられていない。
【0050】
切り換え位置Hのとき、第1油圧ポンプ12からの圧油はタンデム通路38をそのまま下流側に流れ、ブームシリンダ82には第1油圧ポンプ12からの圧油は供給されない。また、切り換え位置Hには、タンクTへの戻り油が通過する通路は設けられていない。
【0051】
切り換え位置Iのとき、第1油圧ポンプ12からの圧油はタンデム通路38をそのまま下流側に流れ、ブームシリンダ82には第1油圧ポンプ12からの圧油は供給されない。
【0052】
切り換え位置Iには、アームシリンダ80のボトム側からタンクTへの戻り油が通過する排出通路22cが設けられている。このため、ブーム用第2切換弁22が切り換え位置Iのとき、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油の一部は、通路80b、分岐点80g、バイパス通路80h、排出通路22c、タンク通路22eを経てタンクTへ排出される。
【0053】
ブーム用第2切換弁22のスプールもブーム用第1切換弁20のスプールと同様に、オペレータがブーム用リモコンレバー装置26を操作することによって移動し、第1油圧ポンプ12からブームシリンダ82に供給される圧油の方向と流量を制御する。第1油圧ポンプ12からブームシリンダ82に供給される圧油は、タンデム通路38からブーム用第2切換弁22(切換位置G)を経てブーム用合流通路82cを通り、合流点82dでブーム用通路82aに合流してブームシリンダ82のボトム側に供給される。ただし、後で詳述するように、ブーム用第2切換弁22の切換位置は、オペレータによってなされるブーム用リモコンレバー装置26の操作レバー26Aの操作量によって決まるパイロット圧によってのみ決定されるのではなく、アーム用リモコンレバー装置24の操作レバー24Aの操作量によって決まるパイロット圧も加味してコントローラ30により決定される。
【0054】
パイロット圧センサ(アーム用パイロット圧検出手段)28は、アーム用第1切換弁16のパイロットポート16aおよびアーム用第2切換弁18のパイロットポート18aに供給されるパイロット通路24aのパイロット圧を測定する役割を有し、得られた圧力データは電気信号線28aを介してコントローラ30に送られる。
【0055】
コントローラ30は、パイロット圧センサ28から送られた圧力データに基づき、油圧ショベル78の作業状態がアームの開き動作がなされる作業状態であって所定の条件に合致する特定の作業状態であるか否かを判断するとともに、その判断結果に基づき電気信号線30aを介して電磁比例弁32を操作して、パイロット通路34aの開度を調整し、ブーム用第2切換弁のパイロットポート22bにパイロット油圧ポンプ34から供給されるパイロット圧を調整して、ブーム用第2切換弁22の切換位置を調整する。
【0056】
ここで、パイロット圧センサ28から送られた圧力データが大きいパイロット圧を示しているときは、アーム用第1切換弁16の位置A側への切換量およびアーム用第2切換弁18の位置D側への切換量が大きく、アームシリンダ80のロッド側への供給油量は多くなり、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油量も多くなっている。
【0057】
また、油圧シリンダの構造から、ボトム側の受圧面積の方がロッド側の受圧面積よりも大きく、ボトム側から排出される油量は、ロッド側の受圧面積に対するボトム側の受圧面積の比である(ボトム側の受圧面積)/(ロッド側の受圧面積)をロッド側に供給される油量に乗じた量となる。したがって、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油量はアームシリンダ80のロッド側への供給油量よりもさらに多くなる。
【0058】
そこで、コントローラ30は、パイロット圧センサ28から送られた圧力データが大きいパイロット圧を示している場合、電気信号線30aを介して電磁比例弁32のソレノイド部32aに指令を送り、パイロット通路34aの開度を大きくして、ブーム用第2切換弁22のパイロットポート22bに加えるパイロット圧を大きくして、ブーム用第2切換弁22を位置I側へ切り換える。ブーム用第2切換弁22が位置I側へ切り換えられると、バイパス通路80h、排出通路22c、タンク通路22eが連通する。これにより、アーム用通路80bを流れる、アームシリンダ80のボトム側から排出された戻り油は、分岐点80gでバイパス通路80hにも一部流れ込み、排出通路22c、タンク通路22eを経てタンクTに排出される。
【0059】
電磁比例弁32は、コントローラ30からの指令を受けて、パイロット通路34aの開度を調整して、ブーム用第2切換弁22のパイロットポート22bに供給するパイロット圧を調整し、ブーム用第2切換弁22の切換位置を調整する役割を有する。電磁比例弁32のソレノイド部32aにコントローラ30から電気信号線30aを介して電気信号が送られると、電磁比例弁32はその電気信号に応じて電磁比例弁32のスプールを切り換え、パイロット通路34aの開度を調整する。これにより、ブーム用第2切換弁22のパイロットポート22bに供給されるパイロット圧が調整され、ブーム用第2切換弁22の切換位置が調整される。
【0060】
なお、コントローラ30、電磁比例弁32、パイロット油圧ポンプ34は、前記のようにブーム用第2切換弁22の切換位置を制御するので、ブーム用第2切換弁制御機構(第二作業機用第2切換弁制御機構)ということができる。
【0061】
ここで、以上説明した本実施形態の構成の特徴的な点は、アーム用第1切換弁16と並列にバイパス通路80hが設けられていることと、ブーム用第2切換弁22に排出通路22cが設けられていることである。
【0062】
これにより、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油がタンクTに排出される通路は、本実施形態においては、アーム用第1切換弁16の排出通路16cを経由してタンクTに通じる第1の通路、アーム用第2切換弁18の排出通路18cを経由してタンクTに通じる第2の通路に加えて、バイパス通路80hおよびブーム用第2切換弁22の排出通路22cを経由してタンクTに通じる第3の通路が存在することとなり、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油がタンクTに排出されるまでの通過圧損を低減させることができる。なお、バイパス通路80hを設けること、およびブーム用第2切換弁22に排出通路22cを設けることは、大きなコストアップとはならず、また、油圧ショベル78への搭載性を損ねることもない。
【0063】
次に、上述のように構成された第1実施形態に係る油圧回路10の動作および作用について説明する。
【0064】
オペレータが、図1において、アーム用リモコンレバー装置24の操作レバー24Aを左に傾けて、パイロット通路24aを介してパイロットポート16a、18aにパイロット圧を加えると、アーム用第1切換弁16は位置Aに切り換わり、アーム用第2切換弁18は位置Dに切り換わる。これにより、第1油圧ポンプ12からの圧油は、パラレル通路40、またはタンデム通路38およびパラレル通路40から、アーム用第1切換弁16(切換位置A)を経て、アーム用通路80aを通ってアームシリンダ80のロッド側に供給され、第2油圧ポンプ14からの圧油は、パラレル通路44、またはタンデム通路42およびパラレル通路44から、アーム用第2切換弁18(切換位置D)を経て、アーム用合流通路80c、合流点80e、アーム用通路80aを通ってアームシリンダ80のロッド側に供給される。これにより、第1油圧ポンプ12および第2油圧ポンプ14の両方から圧油がアームシリンダ80のロッド側に供給され、アームシリンダ80のロッドは大きく収縮することができ、アーム84は大きな開き動作を行うことができる。
【0065】
一方、前述したように、油圧シリンダの構造から、ボトム側の受圧面積の方がロッド側の受圧面積よりも大きく、ボトム側から排出される戻り油量は、ロッド側の受圧面積に対するボトム側の受圧面積の比である(ボトム側の受圧面積)/(ロッド側の受圧面積)をロッド側に供給される油量に乗じた量となる。したがって、アーム84が開き動作を行うと、アームシリンダ80のロッド側に供給される油量を超える多量の戻り油がボトム側から排出されることとなる。
【0066】
このため、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油がタンクTに排出されるまでの通過圧損は大きくなりやすいが、本実施形態では、前述のように、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油がタンクTに排出される通路は、アーム用第1切換弁16の排出通路16cを経由してタンクTに通じる第1の通路、アーム用第2切換弁18の排出通路18cを経由してタンクTに通じる第2の通路に加えて、バイパス通路80hおよびブーム用第2切換弁22の排出通路22cを経由してタンクTに通じる第3の通路が存在する。本実施形態では、これら3つの通路を同時に用いて、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油をタンクに排出させることにより、通過圧損を低減させることができる。
【0067】
このときの動作を具体的に説明する。
【0068】
アーム用リモコンレバー装置24の操作レバー24Aを図1において左に傾けて、パイロット通路24aを介してパイロットポート16a、18aにパイロット圧を加えると、前述のように、アーム用第1切換弁16は位置A側に切り換わり、アーム用第2切換弁18は位置D側に切り換わり、第1油圧ポンプ12および第2油圧ポンプ14の両方から圧油がアームシリンダ80のロッド側に供給され、アームシリンダ80のロッドは大きく収縮する。それと同時に、アームシリンダ80のロッド側に供給される油量を超える多量の戻り油がボトム側から排出される。
【0069】
ここで、アーム用第1切換弁16は位置A側に、アーム用第2切換弁18は位置D側に切り換わっているので、アームシリンダ80のボトム側から排出される戻り油は、アーム用通路80b、アーム用第1切換弁16の排出通路16c、タンク通路16dを経由してタンクTに排出されるとともに、アーム用通路80b、アーム用第2切換弁18の排出通路18c、タンク通路18dを経由してタンクTに排出される。
【0070】
パイロット圧センサ28は、パイロット通路24aのパイロット圧データを測定してコントローラ30に送るが、アーム用第1切換弁16を完全に位置Aに、アーム用第2切換弁18を完全に位置Dに切り換えるようなパイロット圧がパイロットポート16a、18aに加えられているような場合、コントローラ30に送られるパイロット圧データは大きなパイロット圧を示し、所定の閾値を上回ることとなる(該パイロット圧よりも小さな適当な値を所定の閾値としている)。
【0071】
このような場合、コントローラ30は、電気信号線30aを介して電磁比例弁32のソレノイド部32aに指令を送り、パイロット通路34aの開度を大きくして、ブーム用第2切換弁22のパイロットポート22bに加えるパイロット圧を大きくして、ブーム用第2切換弁22を位置I側へ切り換える。ブーム用第2切換弁22が位置I側へ切り換えられると、バイパス通路80h、排出通路22c、タンク通路22eが連通する。これにより、アーム用通路80bを流れる、アームシリンダ80のボトム側から排出された戻り油は、分岐点80gでバイパス通路80hにも一部流れ込み、排出通路22c、タンク通路22eを経てタンクTに排出される。
【0072】
このようにして、本実施形態では、アーム用第1切換弁16の排出通路16cを経由してタンクTに通じる第1の通路、アーム用第2切換弁18の排出通路18cを経由してタンクTに通じる第2の通路に加えて、バイパス通路80hおよびブーム用第2切換弁22の排出通路22cを経由してタンクTに通じる第3の通路も同時に用いて、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油をタンクTに排出させることにより、通過圧損を低減させることができる。
【0073】
なお、本実施形態では、パイロット圧センサ28により測定されたパイロット圧データをパラメータとして、特定の作業状態であるか否かを判断するようにしたが、アーム84の開き動作の状況を判断することができるパラメータ(アーム開きパラメータ)であれば、他の指標をパラメータとしてもよい。例えば、アーム用操作レバー24Aの操作量(図1において左方向への操作量)をアーム開きパラメータとしてもよい。また、例えば、アームシリンダ80のロッドの収縮速度を検出するアームシリンダロッド収縮速度検出センサを設け、アームシリンダ80のロッド収縮速度をアーム開きパラメータとしてもよい。また、例えば、アーム84とブーム86とのなす角の増加速度を検出するアーム角速度検出センサを設け、アーム84とブーム86とのなす角の増加速度をアーム開きパラメータとしてもよい。
【0074】
次に、本実施形態においてアーム84の開き動作とブーム86の上げ動作が同時に行われた場合、即ち、アーム用リモコンレバー装置24のアーム用操作レバー24Aを図1において左側に倒すとともに、ブーム用リモコンレバー装置26のブーム用操作レバー26Aを図1において右側に倒した場合の動作について説明する。
【0075】
オペレータが、図1において、ブーム用リモコンレバー装置26の操作レバー26Aを右に傾けて、パイロット通路26aを介してブーム用第1切換弁20のパイロットポート20aにパイロット圧を加えると、ブーム用第1切換弁20は位置J側に切り換わり、第2油圧ポンプ14からの圧油は、タンデム通路42およびブーム用通路82aを経てブームシリンダ82のボトム側に供給され、ブームシリンダ82のロッドは伸長し、ブーム86は立ち上がる。
【0076】
また、パイロット通路26aのパイロット圧は、ブーム用第2切換弁22のパイロットポート22aにも加わり、ブーム用第2切換弁22を位置G側に切り換えようとする。ブーム用第2切換弁22が位置G側に切り換われば、第1油圧ポンプ12からも圧油がブームシリンダ82のボトム側に供給され、ブームシリンダ82のロッド伸長速度は増大する。一方、ブーム用第2切換弁22の他方のパイロットポート22bにはパイロット通路34aのパイロット圧が加わっている。したがって、ブーム用第2切換弁22の切換位置は、パイロットポート22a、22bに加わるパイロット圧の大小で決定されることとなる。
【0077】
ここで、コントローラ30には、圧力センサ28が測定したパイロット通路24aのパイロット圧データ(パイロットポート16a、18aに加わるパイロット圧データ)が電気信号線28aを介して送られる。そして、コントローラ30は、アーム用切換弁16、18のパイロットポート16a、18aに加わるパイロット圧が所定の閾値を超える場合には、ブーム用第2切換弁22のパイロットポート22bに加わるパイロット圧が大きくなるように(ブーム用第2切換弁22が位置I側に切り換わるように)電磁比例弁32を制御する一方、パイロットポート22bに加わるパイロット圧に所定の上限を設けて制御する。このため、この所定の上限のパイロット圧を超えるパイロット圧がブーム用第2切換弁22のパイロットポート22aに加わるようなブーム86の大きな立ち上がり動作時は、ブーム用第2切換弁22は位置G側に切り換わり、第1油圧ポンプ12からの圧油をブームシリンダ82のボトム側に供給することができる。この結果、ブームシリンダ82のボトム側には第1油圧ポンプ12および第2油圧ポンプ14の両方から圧油が供給されることとなり、大きな立ち上がり動作であってもブーム86の立ち上がり動作を円滑に行うことができる。
【0078】
次に、本発明の第2実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路70について説明する。
【0079】
図2は、本発明の第2実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路70の構成を示す図である。第1実施形態に係る油圧回路10と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明は省略する。
【0080】
第2実施形態に係る油圧回路70は、第1実施形態に係る油圧回路10の構成に、アームシリンダ80のロッド側の圧油の圧力を検出するアームシリンダ圧センサ52と、アームシリンダ80のボトム側の圧油の圧力を検出するアームシリンダ圧センサ54とを追加した構成である。アームシリンダ圧センサ52が検出したシリンダ圧データは電気信号線52aを介してコントローラ50に送られ、アームシリンダ圧センサ54が検出したシリンダ圧データは電気信号線54aを介してコントローラ50に送られる。コントローラ50は、送られた2つのシリンダ圧データに基づき、アームシリンダ80のロッド収縮時の推力を算出する。
【0081】
算出されたアームシリンダ80のロッド収縮時の推力が所定の閾値を上回る場合、コントローラ50は特定の作業状態(アームの開き動作がなされる作業状態であって所定の条件に合致する作業状態)であると判断し、パイロット通路34aの開度が大きくなるように電磁比例弁32に電気信号線30aを介して指令を送り、ブーム用第2切換弁22のパイロットポート22bに加えるパイロット圧を大きくする。これにより、ブーム用第2切換弁22は位置I側に切り換わり、バイパス通路80h、排出通路22c、タンク通路22eが連通する。これにより、アーム用通路80bを流れる、アームシリンダ80のボトム側から排出された戻り油は、分岐点80gでバイパス通路80hにも一部流れ込み、排出通路22c、タンク通路22eを経てタンクTに排出されるので、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油をタンクTに排出させる際の通過圧損を低減させることができる。
【0082】
また、コントローラ50には、第1実施形態と同様に、パイロット圧センサ28が測定したパイロット通路24aのパイロット圧データも送られるので、このデータをアームシリンダ80のロッド収縮時の推力に加味して、特定の作業状態であるか否かをコントローラ50が判断するようにしてもよい。
【0083】
なお、第2実施形態に係る油圧回路70では、アームシリンダ圧センサ52、54が検出したシリンダ圧データ(ロッド側およびボトム側の圧油の圧力についてのデータ)に基づき、コントローラ50がアームシリンダ80のロッド収縮時の推力を算出するので、アームシリンダ圧センサ52、54およびコントローラ50は、アームシリンダロッド収縮推力検出手段ということができる。
【0084】
また、第2実施形態に係る油圧回路70では、アームシリンダ圧センサ52、54が検出したシリンダ圧データに基づき、コントローラ50がアームシリンダ80のロッド収縮時の推力を算出し、算出されたアームシリンダ80のロッド収縮時の推力が所定の閾値を上回る場合、コントローラ50は特定の作業状態(アームの開き動作がなされる作業状態であって所定の条件に合致する作業状態)であると判断するようにしたが、アームシリンダ80のロッド収縮時の推力を算出せずに、アームシリンダ80のロッド側の圧油とボトム側の圧油との圧力差(ロッド側の圧油の圧力からボトム側の圧油の圧力を減じた差分)が所定の閾値より大きいか否か比較して、特定の作業状態であるか否かを判断するようにしてもよい。この場合、アームシリンダ圧センサ52、54およびコントローラ50は、アームシリンダ圧力差検出手段ということができる。
【0085】
次に、本発明の第3実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路72について説明する。
【0086】
図3は、本発明の第3実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路72の構成を示す図である。第1実施形態に係る油圧回路10と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明は省略する。
【0087】
第3実施形態に係る油圧回路72は、第1実施形態に係る油圧回路10の構成に、ブーム用第1切換弁20のパイロットポート20aおよびブーム用第2切換弁22のパイロットポート22aに加わるパイロット圧(パイロット通路26aのパイロット圧)を検出するパイロット圧センサ56を追加した構成である。パイロット圧センサ56が検出したパイロット圧データは電気信号線56aを介してコントローラ58に送られる。また、コントローラ58には、第1実施形態と同様に、パイロット圧センサ28が検出したパイロット通路24aのパイロット圧データも送られる。
【0088】
コントローラ58は、パイロット圧センサ28が検出したパイロット圧データに基づきアーム84の開き動作の状態を把握するとともに、パイロット圧センサ56が検出したパイロット圧データに基づきブーム86の上げ動作の状態を把握して、特定の作業状態に該当するかどうか判断する。具体的には、パイロット圧センサ28が検出したパイロット圧データに基づくパイロット圧が所定の閾値を上回っているかどうか判断するとともに、パイロット圧センサ56が検出したパイロット圧データに基づくパイロット圧が所定の閾値を上回っているかどうかを判断する。
【0089】
パイロット圧センサ28が検出したパイロット圧データに基づくパイロット圧が所定の閾値を上回っている場合には、アーム84の開き動作が大きくなされていると判断できるが、パイロット圧センサ56が検出したパイロット圧データに基づくパイロット圧が所定の閾値を上回っている場合には、ブーム86の上げ動作も大きくなされていると判断できる。このような場合に、ブーム用第2切換弁22を位置I側に切り換えると、第1油圧ポンプからブームシリンダ82に圧油が供給されなくなってしまい、ブーム86の上げ動作がスムーズに行えなくなるおそれがあるので、コントローラ58は、パイロット圧センサ28が検出したパイロット圧データに基づくパイロット圧が所定の閾値を上回っていても、パイロット圧センサ56が検出したパイロット圧データに基づくパイロット圧が所定の閾値を上回っている場合には、「特定の作業状態」に該当するとは判断せず、電磁比例弁32をパイロット通路34aが連通しないように制御し、ブーム用第2切換弁22のパイロットポート22bにパイロット圧が供給されないようにする。これにより、ブーム用第2切換弁22は位置G側に切り換わり、第1油圧ポンプ12からの圧油もブームシリンダ82のボトム側に送られ、ブーム86の上げ動作をスムーズに行うことができる。
【0090】
即ち、第3実施形態に係る油圧回路72では、アーム84の開き動作の状況だけでなく、ブーム86の上げ動作の状況も加味して、「特定の作業状態」に該当するか否かを判断し、ブーム86の上げ動作に支障を来たさない場合(ブーム86が停止状態または下げ動作状態の場合)に、ブーム用第2切換弁22を位置I側に切り換えるようにしているので、ブーム86の動作に支障を来たさない範囲内で、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油をタンクTに排出させる際の通過圧損を低減させることができる。
【0091】
なお、本実施形態では、パイロット圧センサ56により測定されたパイロット圧データもパラメータとして加えて、特定の作業状態であるか否かを判断するようにしたが、ブーム86の上げ動作の状況を判断することができるパラメータ(ブーム上げパラメータ)であれば、他の指標をパラメータとしてもよい。例えば、ブーム用操作レバー26Aの操作量(図1において右方向への操作量)をブーム上げパラメータとしてもよい。また、例えば、ブームシリンダ82のロッドの伸長速度を検出するブームシリンダロッド伸長速度検出センサを設け、ブームシリンダ82のロッド伸長速度をブーム上げパラメータとしてもよい。また、例えば、ブーム86の水平方向からの立ち上がり角の増加速度を検出するブーム角速度検出センサを設け、ブーム86の水平方向からの立ち上がり角の増加速度をブーム上げパラメータとしてもよい。また、例えば、ブームシリンダ82のロッド伸長時の推力を検出するブームシリンダロッド伸長推力検出手段を設け、ブームシリンダ82のロッド伸長時の推力をブーム上げパラメータとしてもよい。また、例えば、ブームシリンダ82のロッド側の圧油とボトム側の圧油との圧力差を検出するブームシリンダ圧力差検出手段を設け、ブームシリンダ82における前記圧力差をブーム上げパラメータとしてもよい。
【0092】
次に、本発明の第4実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路74について説明する。
【0093】
図4は、本発明の第4実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路74の構成を示す図である。第1実施形態に係る油圧回路10と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明は省略する。
【0094】
第4実施形態に係る油圧回路74では、第1〜第3実施形態で用いたパイロット圧センサ28、56、シリンダ圧センサ52、54、コントローラ30、50、58、電磁比例弁32、パイロット油圧ポンプ34の替わりに、ブーム用第2切換弁のパイロットポート22bにアーム開き方向のパイロット圧を加えるパイロット通路24cを設けるとともに、該パイロット通路24cにパイロット通路24cの連通の程度を切り換えるパイロット用切換弁60を設けている。
【0095】
パイロット用切換弁60は、2位置3ポートの切換弁であり、2つの切換位置M、Nを備えており、アーム開き方向のパイロット通路24aのパイロット圧をパイロット通路24cを介してブーム用第2切換弁のパイロットポート22bに加える程度を切り換える役割を有する。パイロット用切換弁60のスプールの両端には、パイロットポート60a、60bが設けられている。また、パイロットポート60bの側の端部にはバネ60cが設けられている。
【0096】
切換位置Mのとき、パイロット通路24cは連通せず、ブーム用第2切換弁のパイロットポート22bにはパイロット圧は加わらない。切換位置Nのとき、パイロット通路24cが連通して、ブーム用第2切換弁のパイロットポート22bには、アーム開き方向のパイロット通路24aのパイロット圧(アーム用第1切換弁16のパイロットポート16aおよびアーム用第2切換弁18のパイロットポート18aに加わるパイロット圧)がパイロット通路24cを介して加わる。
【0097】
パイロット用切換弁60のパイロットポート60aには、パイロット通路24aのパイロット圧がパイロット通路24cを介して加わり、パイロット用切換弁60のパイロットポート60bには、パイロット通路26aのパイロット圧がパイロット通路26cを介して加わる。また、パイロット用切換弁60のパイロットポート60bの側の端部に設けられたバネ60cは、パイロット用切換弁60を位置M側に切り換えるように付勢されている。したがって、パイロット用切換弁60の切換位置は、パイロットポート60aに加わるパイロット圧による力と、パイロットポート60bに加わるパイロット圧による力にバネ60cの付勢力を加えた力の大小関係で決まる。したがって、アーム用リモコンレバー装置24の操作レバー24Aのアーム開き方向の操作量およびブーム用リモコンレバー装置26の操作レバー26Aのブーム開き方向の操作量が同程度場合は、バネ60cの付勢力によりパイロット用切換弁60は位置M側に切り換わる。
【0098】
このため、ブーム86の上げ動作が行われているときは、アーム84の上げ方向のパイロット圧が特に大きい場合を除き、パイロット用切換弁60は位置M側に切り換わり、ブーム用第2切換弁22のパイロットポート22bにはパイロット圧は加わらず、ブーム用第2切換弁22は位置G側に切り換わる。このため、ブームシリンダ82のボトム側に第1油圧ポンプからも圧油が供給され、ブーム86の上げ動作はスムーズに行われる。
【0099】
ブーム86の上げ動作が行われていないときは、パイロットポート60bにパイロット圧は加わらないので、アーム用操作レバー24Aをアーム上げ方向(図4において左方向)に傾けてバネ60cの付勢力に打ち勝つパイロット圧がパイロットポート60aに加われば、パイロット用切換弁60は位置N側に切り換わり、ブーム用第2切換弁22のパイロットポート22bにパイロット圧が加わり、ブーム用第2切換弁22は位置I側に切り換わる。
【0100】
これにより、バイパス通路80h、排出通路22c、タンク通路22eが連通するので、アーム用通路80bを流れる、アームシリンダ80のボトム側から排出された戻り油は、分岐点80gでバイパス通路80hにも一部流れ込み、排出通路22c、タンク通路22eを経てタンクTに排出される。このため、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油をタンクTに排出させる際の通過圧損を低減させることができる。
【0101】
なお、運転者がマニュアルで特定の作業状態(アームの開き動作がなされる作業状態であって所定の条件に合致する作業状態)であることを指定可能なスイッチ等を設けたときには、このスイッチが入ったか否かを見るだけで本発明に係る特定の作業状態か否かを判断できるので、このスイッチが入ったときには、アームの開き動作がなされていることさえ確認すれば、上記パラメータの実際の値を検出するセンサ等の作動を停止させて、ブーム用第2切換弁を位置I側に切り換えるようにしてもよい。
【0102】
また、以上説明した実施形態では、タンデム通路38において、アーム用第1切換弁16をブーム用第2切換弁22の下流側に設けたが、アーム用第1切換弁16をブーム用第2切換弁22の上流側に設けてもよい。また、タンデム通路42において、アーム用第2切換弁18をブーム用第1切換弁20の下流側に設けたが、アーム用第2切換弁18をブーム用第1切換弁20の上流側に設けてもよい。
【0103】
また、アーム用切換弁として、アーム用第1切換弁16およびアーム用第2切換弁18の2つの切換弁を用いたが、アーム用切換弁がアーム用第1切換弁16の1つだけの油圧回路にも本発明は適用することができる。この場合、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油がタンクTに排出される通路は、アーム用第1切換弁16の排出通路16cを経由してタンクTに通じる通路に加えて、バイパス通路80hおよびブーム用第2切換弁22の排出通路22cを経由してタンクTに通じる通路が、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油がタンクTに排出される通路となる。なお、本発明を適用しない場合、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油がタンクTに排出される通路は、アーム用第1切換弁16の排出通路16cを経由してタンクTに通じる通路のみである。
【0104】
また、本発明は、ポジコン、ネガコン、オープンセンタ等のポンプ制御方式には依存せず、適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0105】
例えば、タンデム接続された通路をパラレルに設けた油圧ショベルの油圧回路に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0106】
10、70、72、74…油圧回路
12…第1油圧ポンプ
14…第2油圧ポンプ
16…アーム用第1切換弁(第一作業機用第1切換弁)
18…アーム用第2切換弁(第一作業機用第2切換弁)
20…ブーム用第1切換弁(第二作業機用第1切換弁)
22…ブーム用第2切換弁(第二作業機用第2切換弁)
16c、18c、22c…排出通路
24…アーム用リモコンレバー装置
24A…アーム用操作レバー
26…ブーム用リモコンレバー装置
26A…ブーム用操作レバー
28…パイロット圧センサ(アーム用パイロット圧検出手段)
30、50、58…コントローラ
32…電磁比例弁
34…パイロット油圧ポンプ
38、42…タンデム通路
40、44、80h…パラレル通路
52、54…シリンダ圧センサ(アームシリンダ圧検出手段)
56…パイロット圧センサ(ブーム用パイロット圧検出手段)
60…パイロット用切換弁
78…油圧ショベル
80…アームシリンダ(第一作業機用油圧アクチュエータ)
82…ブームシリンダ(第二作業機用油圧アクチュエータ)
84…アーム(第一作業機)
86…ブーム(第二作業機)
88…バケット
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械の油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルは、下部走行体(基体)、上部旋回体、ブーム、アームおよびバケットなどの複数の作動部位を備え、建設作業等に広く用いられている。
【0003】
油圧ショベルのこれら複数の作動部位は同時に作動させられることも多い。例えば、油圧ショベルの一般的な作業である掘削作業や床掘り作業を行う際においては、ブームとアームを同時に操作する同時操作(複合操作)がなされることが多い。このような同時操作を円滑に行えるようにするために、油圧ポンプを複数設けるとともに、各油圧ポンプにブーム用切換弁とアーム用切換弁をそれぞれタンデム接続して、タンデム接続された通路をパラレルに設けた油圧回路が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような油圧回路としては、例えば図5に示す油圧回路がある。この油圧回路100は、油圧アクチュエータ駆動用の複数の油圧ポンプ(第1油圧ポンプ102、第2油圧ポンプ104)をパラレルに備えている。第1油圧ポンプ102の上流から下流に向かって、ブームシリンダ106への駆動用圧油の方向と流量を調整するためのブーム用第2切換弁112と、アームシリンダ108への駆動用圧油の方向と流量を調整するためのアーム用第1切換弁114とがタンデムに設けられている。また、第2油圧ポンプ104の上流から下流に向かって、ブームシリンダ106への駆動用圧油の方向と流量を調整するためのブーム用第1切換弁110と、アームシリンダ108への駆動用圧油の方向と流量を調整するためのアーム用第2切換弁116とがタンデムに設けられている。これにより、油圧回路100では、タンデム接続されたブーム用切換弁とアーム用切換弁とが、油圧ポンプ102、104ごとにタンデム接続されて、パラレルに設けられている。
【0005】
図5に示す油圧回路100を備えた油圧ショベル150において、一般的な作業であるアーム開き動作を行う場合、アーム用リモコンレバー装置120のアーム用操作レバー120Aを操作して、アーム用第1切換弁114およびアーム用第2切換弁116の切り換えを行わせる。具体的には、アーム用リモコンレバー装置120のアーム用操作レバー120Aを図1において右方向に倒し、アーム用第1切換弁114をp側に、アーム用第2切換弁116をq側に切り換えて、アームシリンダ108のロッド側に圧油を供給する通路114a、116aを開いて、第1油圧ポンプ102および第2油圧ポンプ104からアームシリンダ108のロッド側に圧油を供給する。また、アーム用第1切換弁114をp側に、アーム用第2切換弁116をq側に切り換えると、アームシリンダ108のボトム側からの戻り油をタンクTへ導通させる排出路114b、116bが開放されて、アームシリンダ108のボトム側からの戻り油がタンクTへ排出可能となり、アームシリンダ108は収縮することが可能となる。
【0006】
したがって、アーム用リモコンレバー装置120のアーム用操作レバー120Aを図5において右方向に倒し、アーム用第1切換弁114をp側、アーム用第2切換弁116をq側に切り換えると、アームシリンダ108のロッド側に圧油が供給されるとともにアームシリンダ108のボトム側からの戻り油がタンクTに排出されて、アームシリンダ108が収縮し、アーム152は開き動作を行う。
【0007】
アームシリンダ108のボトム側から排出される戻り油は、アームシリンダ108のボトム側からの通路108a、アーム用切換弁114、116、通路114b、116bを通過してタンクTに排出される。したがって、従来例である図5に示す油圧回路の場合、アームシリンダ108のボトム側から排出される戻り油がタンクTに戻る通路は、アーム用第1切換弁114を経由する通路114bおよびアーム用第2切換弁116を経由する通路116bの2つの通路が存在する。
【0008】
なお、ブーム用第2切換弁112は、ブーム154の立ち上げ時において、ブームシリンダ106の駆動を助けるための圧油を第1油圧ポンプ102からブームシリンダ106のボトム側へ送り込む役割を有しており、3つの切り換え位置r、s、tのうち、ブームシリンダ106のボトム側へ送り込む切り換え位置rと、ブームシリンダ106へ圧油は供給せずに下流側へ圧油を通過させるだけの切り換え位置sの2つの切り換え位置のみを使用しており、切り換え位置tは使用されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−4339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述したように、アーム152を開く作業ではアームシリンダ108のボトム側から作動油が排出されるが、この戻り油は、アーム用第1、第2切換弁114、116を通過するため、この部分での戻り油の通路が十分に確保されていないと、通過圧損が高くなりやすく、アーム開き動作におけるエネルギ損失が大きくなりやすい。
【0011】
この通過圧損を低減するための方策としては、アーム用第1切換弁114およびアーム用第2切換弁116のサイズ(戻り油の通路のサイズ)を大きくすることが考えられる。しかしながら、この方法では、アーム用第1切換弁114およびアーム用第2切換弁116の製造コストが増加してしまう問題や、機体への搭載性が悪くなるという問題が別に生じてしまう。
【0012】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、切換弁の大きさを従来程度に保ちながら、油圧アクチュエータからの戻り油がタンクに排出されるまでの通過圧損を安価に低減させることができる建設機械の油圧回路を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、第1の油圧ポンプに接続され、第一作業機を駆動する第一作業機用油圧アクチュエータへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるための第一作業機用第1切換弁と、第2の油圧ポンプに接続され、第二作業機を駆動する第二作業機用油圧アクチュエータへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるための第二作業機用第1切換弁と、前記第1の油圧ポンプに前記第一作業機用第1切換弁とタンデム接続され、前記第二作業機用油圧アクチュエータへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるための第二作業機用第2切換弁と、を備えた建設機械の油圧回路において、前記第二作業機用第2切換弁は、前記第一作業機用油圧アクチュエータからの戻り油をタンクに排出させるための排出通路を備え、また、前記油圧回路は、前記第二作業機用第2切換弁の切り換え位置を制御する第二作業機用第2切換弁制御機構を備え、前記第一作業機の動作がなされる作業状態であって所定の条件に合致する特定の作業状態のときに、前記第二作業機用第2切換弁を前記排出通路が連通するように切り換えることにより、前記課題を解決したものである。
【0014】
本発明では、第二作業機用第2切換弁は、第一作業機用油圧アクチュエータからの戻り油をタンクに排出させるための排出通路を備え、また、第二作業機用第2切換弁の切り換え位置を制御する第二作業機用第2切換弁制御機構を備えており、第一作業機の動作がなされる作業状態であって所定の条件に合致する特定の作業状態のときに、第二作業機用第2切換弁を排出通路が連通するように切り換える。このため、本発明では、第一作業機用第1切換弁のほかに、第二作業機用第2切換弁をも介して第一作業機用油圧アクチュエータの戻り油をタンクに導くことができる。そのため、該第一作業機用切換弁のサイズを大きくする必要がなく、第一作業機用切換弁の製造コストが増加してしまう問題や、機体への搭載性が悪くなるという問題を発生させずに、第一作業機用油圧アクチュエータからの戻り油がタンクに排出されるまでの通過圧損を低減させることができる。即ち、本発明では、第一作業機用切換弁の大きさを従来程度に保ちながら、第一作業機用油圧アクチュエータからの戻り油がタンクに排出されるまでの通過圧損を安価に低減させることができる。
【0015】
前記油圧回路において、更に、前記第2の油圧ポンプに前記第二作業機用第1切換弁とタンデム接続され、前記第一作業機用油圧アクチュエータへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるための第一作業機用第2切換弁を備えさせてもよい。
【0016】
以上の油圧回路において、前記第一作業機がアームで、前記第一作業機用第1切換弁および第一作業機用第2切換弁がアーム用第1切換弁およびアーム用第2切換弁であり、また、前記第一作業機用油圧アクチュエータがアームシリンダであり、また、前記第二作業機がブームで、前記第二作業機用第1切換弁および第二作業機用第2切換弁がブーム用第1切換弁およびブーム用第2切換弁であり、また、前記ブーム用油圧アクチュエータがブームシリンダである場合、前記特定の作業状態か否かを、前記アームの開き動作の程度を示すアーム開きパラメータの少なくとも1つが所定の閾値より大きいか否かを比較することによって判断することができる。
【0017】
この場合、前記アーム用第1切換弁および前記アーム用第2切換弁を操作するアーム用操作レバーを備えるときには、前記アーム開きパラメータの1つを前記アーム用操作レバーの操作量とすることができる。
【0018】
また、前記アーム用第1切換弁を切り換えるパイロット圧および前記アーム用第2切換弁を切り換えるパイロット圧のうちの少なくとも一方を検出するアーム用パイロット圧検出手段を備えるときには、前記アーム開きパラメータの1つを前記アーム用第1切換弁を切り換えるパイロット圧または前記アーム用第2切換弁を切り換えるパイロット圧とすることができる。
【0019】
また、前記アームシリンダのロッド収縮時の推力を検出するアームシリンダロッド収縮推力検出手段を備えるときには、前記アーム開きパラメータの1つを前記アームシリンダのロッド収縮時の推力とすることができる。
【0020】
また、前記アームシリンダのロッド側の圧油とボトム側の圧油との圧力差を検出するアームシリンダ圧力差検出手段を備えるときには、前記アーム開きパラメータの1つを前記アームシリンダにおける前記圧力差とすることができる。
【0021】
また、前記アームシリンダのロッドの収縮速度を検出するアームシリンダロッド収縮速度検出手段を備えるときには、前記アーム開きパラメータの1つを前記アームシリンダのロッド収縮速度とすることができる。
【0022】
また、前記アームと前記ブームとのなす角の増加速度を検出するアーム角速度検出手段を備えるときには、前記アーム開きパラメータの1つを前記アームと前記ブームとのなす角の増加速度とすることができる。
【0023】
さらに、前記特定の作業状態か否かを、前記ブームの上げ動作の程度を示すブーム上げパラメータの少なくとも1つが所定の閾値より小さいか否かを比較した結果も含めて判断するようにしてもよい。
【0024】
この場合、前記ブーム用第1切換弁および前記ブーム用第2切換弁を操作するブーム用操作レバーを備えるときには、前記ブーム上げパラメータの1つを前記ブーム用操作レバーの操作量とすることができる。
【0025】
また、前記ブーム用第1切換弁を切り換えるパイロット圧および前記ブーム用第2切換弁を切り換えるパイロット圧のうちの少なくとも一方を検出するブーム用パイロット圧検出手段を備えるときには、前記ブーム上げパラメータの1つを前記ブーム用第1切換弁を切り換えるパイロット圧または前記ブーム用第2切換弁を切り換えるパイロット圧とすることができる。
【0026】
また、前記ブームシリンダのロッド伸長時の推力を検出するブームシリンダロッド伸長推力検出手段を備えるときには、前記ブーム上げパラメータの1つを前記ブームシリンダのロッド伸長時の推力とすることができる。
【0027】
また、前記ブームシリンダのロッド側の圧油とボトム側の圧油との圧力差を検出するブームシリンダ圧力差検出手段を備えるときには、前記ブーム上げパラメータの1つを前記ブームシリンダにおける前記圧力差とすることができる。
【0028】
また、前記ブームシリンダのロッドの伸長速度を検出するブームシリンダロッド伸長速度検出手段を備えるときには、前記ブーム上げパラメータの1つを前記ブームシリンダのロッド伸長速度とすることができる。
【0029】
また、前記ブームの水平方向からの立ち上がり角の増加速度を検出するブーム角度速度検出手段を備えるときには、前記ブーム上げパラメータの1つを前記ブームの水平方向からの立ち上がり角の増加速度とすることができる。
【0030】
また、本発明は、第1の油圧ポンプに接続され、アームを駆動するアームシリンダへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるためのアーム用第1切換弁と、第2の油圧ポンプに接続され、前記アームシリンダへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるためのアーム用第2切換弁と、前記第2の油圧ポンプに前記アーム用第2切換弁とタンデム接続され、ブームを駆動するブームシリンダへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるためのブーム用第1切換弁と、前記第1の油圧ポンプに前記アーム用第1切換弁とタンデム接続され、前記ブームシリンダへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるためのブーム用第2切換弁と、を備えた建設機械の油圧回路において、前記ブーム用第2切換弁は、前記アームシリンダのボトム側からの戻り油をタンクに排出させるための排出通路を備え、また、前記油圧回路は、アーム開き方向に前記アーム用第1切換弁または前記アーム用第2切換弁を切り換えるアーム開きパイロット圧を前記ブーム用第2切換弁の一端のパイロットポートに導く第1のパイロット通路と、ブーム上げ方向に前記ブーム用第1切換弁を切り換えるブーム上げパイロット圧を前記ブーム用第2切換弁の他端のパイロットポートに導く第2のパイロット通路と、を備えるように構成することにより、前記課題を解決することもできる。
【0031】
ここで更に、前記第1のパイロット通路に、前記アーム開きパイロット圧および前記ブーム上げパイロット圧に応じて該第1のパイロット通路の連通の程度を切り換えるパイロット用切換弁を設けることにより、ブームの上げ動作の円滑性をより確保しやすくなる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、切換弁の大きさを従来程度に保ちながら、油圧アクチュエータからの戻り油がタンクに排出されるまでの通過圧損を安価に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路の構成を示す図
【図2】本発明の第2実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路の構成を示す図
【図3】本発明の第3実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路の構成を示す図
【図4】本発明の第4実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路の構成を示す図
【図5】従来の油圧ショベルの油圧回路の構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下図面に基づいて、本発明に係る油圧ショベルの油圧回路の好適な実施形態の例について詳細に説明する。
【0035】
図1は、本発明の第1実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路の構成を示す図である。
【0036】
この油圧回路10は、第1油圧ポンプ12と、第2油圧ポンプ14と、アーム用第1切換弁(第一作業機用第1切換弁)16と、アーム用第2切換弁(第一作業機用第2切換弁)18と、ブーム用第1切換弁(第二作業機用第1切換弁)20と、ブーム用第2切換弁(第二作業機用第2切換弁)22と、アーム用リモコンレバー装置24と、ブーム用リモコンレバー装置26と、パイロット圧センサ28と、コントローラ30と、電磁比例弁32と、パイロット油圧ポンプ34と、を備え、アームシリンダ(第一作業機用油圧アクチュエータ)80およびブームシリンダ(第二作業機用油圧アクチュエータ)82に圧油を供給して、アーム(第一作業機)84およびブーム(第二作業機)86を作動させて、掘削作業や床掘り作業等の各種作業を油圧ショベル78に行わせる。符号88はバケットである。なお、掘削や床掘りを行う際には、その準備動作として、ブーム86の上げ動作を伴わないアーム84の開き動作や、アーム84の開きとブーム86の下げの同時操作を行って、アーム84を所定の位置まで開いておくとともにブーム86を必要に応じて所定の位置まで下げておく必要がある。本実施形態では、アームの開き動作がなされる作業状態であって所定の条件に合致する作業状態を、「特定の作業状態」と称する。「所定の条件」については、以下の説明の中で適宜具体的に説明する。
【0037】
第1油圧ポンプ12と第2油圧ポンプ14はパラレルに配置されている。第1油圧ポンプ12にはタンデム通路38が接続されており、第1油圧ポンプ12からタンデム通路38を経て供給される圧油は、アームシリンダ80および/またはブームシリンダ82に供給される。タンデム通路38には、上流側にブーム用第2切換弁22が設けられ、下流側にアーム用第1切換弁16が設けられており、アーム用第1切換弁16とブーム用第2切換弁22とはタンデム接続されている。
【0038】
第2油圧ポンプ14にはタンデム通路42が接続されており、第2油圧ポンプ14からタンデム通路42を経て供給される圧油は、アームシリンダ80および/またはブームシリンダ82に供給される。タンデム通路42には、上流側にブーム用第1切換弁20が設けられ、下流側にアーム用第2切換弁18が設けられており、アーム用第2切換弁18とブーム用第1切換弁20とはタンデム接続されている。
【0039】
アーム用第1切換弁16は、3位置6ポートの切換弁であり、3つの切り換え位置A、B、Cを備えており、第1油圧ポンプ12からアームシリンダ80へ向かう圧油の方向と流量を制御する。アーム用第1切換弁16のスプールの両端には、それぞれパイロットポート16a、16bが設けられており、それぞれパイロット通路24a、24bからパイロット圧が供給される。
【0040】
アーム用第1切換弁16のスプールは、オペレータがアーム用リモコンレバー装置24を操作することによって移動し、第1油圧ポンプ12からアームシリンダ80に供給される圧油の方向と流量を制御する。第1油圧ポンプ12からアームシリンダ80に供給される圧油は、パラレル通路40、またはタンデム通路38およびパラレル通路40から、アーム用第1切換弁16を経て、アーム用通路80a、80bを通ってアームシリンダ80に供給される。
【0041】
また、アーム用第1切換弁16には、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油をタンクTに排出するための排出通路16cが備えられている。アーム用第1切換弁16が切り換え位置Aのとき、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油は、アーム用通路80b、排出通路16c、タンク通路16dを経由してタンクTに排出される。
【0042】
また、アーム用第1切換弁16と並列にバイパス通路80hが設けられている。バイパス通路80hは、アームシリンダ80のボトム側に連結するアーム用通路80b上の分岐点80gと、ブーム用第2切換弁22の下流側のポートであるポート22dとを連結する通路である。バイパス通路80hは、ブーム用第2切換弁22が切り換え位置Iのときに、ブーム用第2切換弁22の排出通路22cを介してタンクTに通じるタンク通路22eと連通する。これにより、ブーム用第2切換弁22が切り換え位置Iのとき、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油は、アーム用通路80b、バイパス通路80h、排出通路22c、タンク通路22eを経由してタンクTに排出される。
【0043】
アーム用第2切換弁18は、3位置6ポートの切換弁であり、3つの切り換え位置D、E、Fを備えており、第2油圧ポンプ14からアームシリンダ80へ向かう圧油の方向と流量を制御する。アーム用第2切換弁18のスプールの両端には、それぞれパイロットポート18a、18bが設けられており、それぞれパイロット通路24a、24bからパイロット圧が供給される。
【0044】
アーム用第2切換弁18のスプールもアーム用第1切換弁16のスプールと同様に、オペレータがアーム用リモコンレバー装置24を操作することによって移動し、アームシリンダ80に供給される圧油の方向と流量を制御する。第2油圧ポンプ14からアームシリンダ80に供給される圧油は、パラレル通路44、またはタンデム通路42およびパラレル通路44から、アーム用第2切換弁18を経て、アーム用合流通路80c、80dを通り、合流点80e、80fでアーム用通路80a、80bに合流してアームシリンダ80に供給される。
【0045】
また、アーム用第2切換弁18には、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油をタンクTに排出するための排出通路18cが備えられている。アーム用第2切換弁18が切り換え位置Dのとき、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油は、アーム用通路80b、排出通路18c、タンク通路18dを経由してタンクTに排出される。
【0046】
ブーム用第1切換弁20は、3位置6ポートの切換弁であり、3つの切り換え位置J、K、Lを備えており、第2油圧ポンプ14からブームシリンダ82へ向かう圧油の方向と流量を制御する。ブーム用第1切換弁20のスプールの両端には、それぞれパイロットポート20a、20bが設けられており、それぞれパイロット通路26a、26bからパイロット圧が供給される。
【0047】
ブーム用第1切換弁20のスプールは、オペレータがブーム用リモコンレバー装置26を操作することによって移動し、第2油圧ポンプ14からブームシリンダ82に供給される圧油の方向と流量を制御する。第2油圧ポンプ14からブームシリンダ82に供給される圧油は、タンデム通路42からブーム用第1切換弁20を経てブーム用通路82a、82bを通ってブームシリンダ82に供給される。
【0048】
ブーム用第2切換弁22は、3位置6ポートの切換弁であり、3つの切り換え位置G、H、Iを備えており、第1油圧ポンプ12からブームシリンダ82へ向かう圧油の方向と流量を制御する。ブーム用第2切換弁22のスプールの両端には、それぞれパイロットポート22a、22bが設けられており、パイロットポート22aにはパイロット通路26aからパイロット圧が供給され、パイロットポート22bにはパイロット通路34aからパイロット圧が供給される。
【0049】
切り換え位置Gのとき、ブーム用合流通路82cが連通し、第1油圧ポンプ12からの圧油はブームシリンダ82のボトム側に供給される。また、ブームシリンダ82のロッド側からの戻り油はそれほど多くなく、この戻り油がタンクTへの戻る通路はブーム用第1切換弁20を経由する通路のみで十分なので、この戻り油の排出通路は切り換え位置Gには設けられていない。
【0050】
切り換え位置Hのとき、第1油圧ポンプ12からの圧油はタンデム通路38をそのまま下流側に流れ、ブームシリンダ82には第1油圧ポンプ12からの圧油は供給されない。また、切り換え位置Hには、タンクTへの戻り油が通過する通路は設けられていない。
【0051】
切り換え位置Iのとき、第1油圧ポンプ12からの圧油はタンデム通路38をそのまま下流側に流れ、ブームシリンダ82には第1油圧ポンプ12からの圧油は供給されない。
【0052】
切り換え位置Iには、アームシリンダ80のボトム側からタンクTへの戻り油が通過する排出通路22cが設けられている。このため、ブーム用第2切換弁22が切り換え位置Iのとき、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油の一部は、通路80b、分岐点80g、バイパス通路80h、排出通路22c、タンク通路22eを経てタンクTへ排出される。
【0053】
ブーム用第2切換弁22のスプールもブーム用第1切換弁20のスプールと同様に、オペレータがブーム用リモコンレバー装置26を操作することによって移動し、第1油圧ポンプ12からブームシリンダ82に供給される圧油の方向と流量を制御する。第1油圧ポンプ12からブームシリンダ82に供給される圧油は、タンデム通路38からブーム用第2切換弁22(切換位置G)を経てブーム用合流通路82cを通り、合流点82dでブーム用通路82aに合流してブームシリンダ82のボトム側に供給される。ただし、後で詳述するように、ブーム用第2切換弁22の切換位置は、オペレータによってなされるブーム用リモコンレバー装置26の操作レバー26Aの操作量によって決まるパイロット圧によってのみ決定されるのではなく、アーム用リモコンレバー装置24の操作レバー24Aの操作量によって決まるパイロット圧も加味してコントローラ30により決定される。
【0054】
パイロット圧センサ(アーム用パイロット圧検出手段)28は、アーム用第1切換弁16のパイロットポート16aおよびアーム用第2切換弁18のパイロットポート18aに供給されるパイロット通路24aのパイロット圧を測定する役割を有し、得られた圧力データは電気信号線28aを介してコントローラ30に送られる。
【0055】
コントローラ30は、パイロット圧センサ28から送られた圧力データに基づき、油圧ショベル78の作業状態がアームの開き動作がなされる作業状態であって所定の条件に合致する特定の作業状態であるか否かを判断するとともに、その判断結果に基づき電気信号線30aを介して電磁比例弁32を操作して、パイロット通路34aの開度を調整し、ブーム用第2切換弁のパイロットポート22bにパイロット油圧ポンプ34から供給されるパイロット圧を調整して、ブーム用第2切換弁22の切換位置を調整する。
【0056】
ここで、パイロット圧センサ28から送られた圧力データが大きいパイロット圧を示しているときは、アーム用第1切換弁16の位置A側への切換量およびアーム用第2切換弁18の位置D側への切換量が大きく、アームシリンダ80のロッド側への供給油量は多くなり、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油量も多くなっている。
【0057】
また、油圧シリンダの構造から、ボトム側の受圧面積の方がロッド側の受圧面積よりも大きく、ボトム側から排出される油量は、ロッド側の受圧面積に対するボトム側の受圧面積の比である(ボトム側の受圧面積)/(ロッド側の受圧面積)をロッド側に供給される油量に乗じた量となる。したがって、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油量はアームシリンダ80のロッド側への供給油量よりもさらに多くなる。
【0058】
そこで、コントローラ30は、パイロット圧センサ28から送られた圧力データが大きいパイロット圧を示している場合、電気信号線30aを介して電磁比例弁32のソレノイド部32aに指令を送り、パイロット通路34aの開度を大きくして、ブーム用第2切換弁22のパイロットポート22bに加えるパイロット圧を大きくして、ブーム用第2切換弁22を位置I側へ切り換える。ブーム用第2切換弁22が位置I側へ切り換えられると、バイパス通路80h、排出通路22c、タンク通路22eが連通する。これにより、アーム用通路80bを流れる、アームシリンダ80のボトム側から排出された戻り油は、分岐点80gでバイパス通路80hにも一部流れ込み、排出通路22c、タンク通路22eを経てタンクTに排出される。
【0059】
電磁比例弁32は、コントローラ30からの指令を受けて、パイロット通路34aの開度を調整して、ブーム用第2切換弁22のパイロットポート22bに供給するパイロット圧を調整し、ブーム用第2切換弁22の切換位置を調整する役割を有する。電磁比例弁32のソレノイド部32aにコントローラ30から電気信号線30aを介して電気信号が送られると、電磁比例弁32はその電気信号に応じて電磁比例弁32のスプールを切り換え、パイロット通路34aの開度を調整する。これにより、ブーム用第2切換弁22のパイロットポート22bに供給されるパイロット圧が調整され、ブーム用第2切換弁22の切換位置が調整される。
【0060】
なお、コントローラ30、電磁比例弁32、パイロット油圧ポンプ34は、前記のようにブーム用第2切換弁22の切換位置を制御するので、ブーム用第2切換弁制御機構(第二作業機用第2切換弁制御機構)ということができる。
【0061】
ここで、以上説明した本実施形態の構成の特徴的な点は、アーム用第1切換弁16と並列にバイパス通路80hが設けられていることと、ブーム用第2切換弁22に排出通路22cが設けられていることである。
【0062】
これにより、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油がタンクTに排出される通路は、本実施形態においては、アーム用第1切換弁16の排出通路16cを経由してタンクTに通じる第1の通路、アーム用第2切換弁18の排出通路18cを経由してタンクTに通じる第2の通路に加えて、バイパス通路80hおよびブーム用第2切換弁22の排出通路22cを経由してタンクTに通じる第3の通路が存在することとなり、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油がタンクTに排出されるまでの通過圧損を低減させることができる。なお、バイパス通路80hを設けること、およびブーム用第2切換弁22に排出通路22cを設けることは、大きなコストアップとはならず、また、油圧ショベル78への搭載性を損ねることもない。
【0063】
次に、上述のように構成された第1実施形態に係る油圧回路10の動作および作用について説明する。
【0064】
オペレータが、図1において、アーム用リモコンレバー装置24の操作レバー24Aを左に傾けて、パイロット通路24aを介してパイロットポート16a、18aにパイロット圧を加えると、アーム用第1切換弁16は位置Aに切り換わり、アーム用第2切換弁18は位置Dに切り換わる。これにより、第1油圧ポンプ12からの圧油は、パラレル通路40、またはタンデム通路38およびパラレル通路40から、アーム用第1切換弁16(切換位置A)を経て、アーム用通路80aを通ってアームシリンダ80のロッド側に供給され、第2油圧ポンプ14からの圧油は、パラレル通路44、またはタンデム通路42およびパラレル通路44から、アーム用第2切換弁18(切換位置D)を経て、アーム用合流通路80c、合流点80e、アーム用通路80aを通ってアームシリンダ80のロッド側に供給される。これにより、第1油圧ポンプ12および第2油圧ポンプ14の両方から圧油がアームシリンダ80のロッド側に供給され、アームシリンダ80のロッドは大きく収縮することができ、アーム84は大きな開き動作を行うことができる。
【0065】
一方、前述したように、油圧シリンダの構造から、ボトム側の受圧面積の方がロッド側の受圧面積よりも大きく、ボトム側から排出される戻り油量は、ロッド側の受圧面積に対するボトム側の受圧面積の比である(ボトム側の受圧面積)/(ロッド側の受圧面積)をロッド側に供給される油量に乗じた量となる。したがって、アーム84が開き動作を行うと、アームシリンダ80のロッド側に供給される油量を超える多量の戻り油がボトム側から排出されることとなる。
【0066】
このため、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油がタンクTに排出されるまでの通過圧損は大きくなりやすいが、本実施形態では、前述のように、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油がタンクTに排出される通路は、アーム用第1切換弁16の排出通路16cを経由してタンクTに通じる第1の通路、アーム用第2切換弁18の排出通路18cを経由してタンクTに通じる第2の通路に加えて、バイパス通路80hおよびブーム用第2切換弁22の排出通路22cを経由してタンクTに通じる第3の通路が存在する。本実施形態では、これら3つの通路を同時に用いて、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油をタンクに排出させることにより、通過圧損を低減させることができる。
【0067】
このときの動作を具体的に説明する。
【0068】
アーム用リモコンレバー装置24の操作レバー24Aを図1において左に傾けて、パイロット通路24aを介してパイロットポート16a、18aにパイロット圧を加えると、前述のように、アーム用第1切換弁16は位置A側に切り換わり、アーム用第2切換弁18は位置D側に切り換わり、第1油圧ポンプ12および第2油圧ポンプ14の両方から圧油がアームシリンダ80のロッド側に供給され、アームシリンダ80のロッドは大きく収縮する。それと同時に、アームシリンダ80のロッド側に供給される油量を超える多量の戻り油がボトム側から排出される。
【0069】
ここで、アーム用第1切換弁16は位置A側に、アーム用第2切換弁18は位置D側に切り換わっているので、アームシリンダ80のボトム側から排出される戻り油は、アーム用通路80b、アーム用第1切換弁16の排出通路16c、タンク通路16dを経由してタンクTに排出されるとともに、アーム用通路80b、アーム用第2切換弁18の排出通路18c、タンク通路18dを経由してタンクTに排出される。
【0070】
パイロット圧センサ28は、パイロット通路24aのパイロット圧データを測定してコントローラ30に送るが、アーム用第1切換弁16を完全に位置Aに、アーム用第2切換弁18を完全に位置Dに切り換えるようなパイロット圧がパイロットポート16a、18aに加えられているような場合、コントローラ30に送られるパイロット圧データは大きなパイロット圧を示し、所定の閾値を上回ることとなる(該パイロット圧よりも小さな適当な値を所定の閾値としている)。
【0071】
このような場合、コントローラ30は、電気信号線30aを介して電磁比例弁32のソレノイド部32aに指令を送り、パイロット通路34aの開度を大きくして、ブーム用第2切換弁22のパイロットポート22bに加えるパイロット圧を大きくして、ブーム用第2切換弁22を位置I側へ切り換える。ブーム用第2切換弁22が位置I側へ切り換えられると、バイパス通路80h、排出通路22c、タンク通路22eが連通する。これにより、アーム用通路80bを流れる、アームシリンダ80のボトム側から排出された戻り油は、分岐点80gでバイパス通路80hにも一部流れ込み、排出通路22c、タンク通路22eを経てタンクTに排出される。
【0072】
このようにして、本実施形態では、アーム用第1切換弁16の排出通路16cを経由してタンクTに通じる第1の通路、アーム用第2切換弁18の排出通路18cを経由してタンクTに通じる第2の通路に加えて、バイパス通路80hおよびブーム用第2切換弁22の排出通路22cを経由してタンクTに通じる第3の通路も同時に用いて、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油をタンクTに排出させることにより、通過圧損を低減させることができる。
【0073】
なお、本実施形態では、パイロット圧センサ28により測定されたパイロット圧データをパラメータとして、特定の作業状態であるか否かを判断するようにしたが、アーム84の開き動作の状況を判断することができるパラメータ(アーム開きパラメータ)であれば、他の指標をパラメータとしてもよい。例えば、アーム用操作レバー24Aの操作量(図1において左方向への操作量)をアーム開きパラメータとしてもよい。また、例えば、アームシリンダ80のロッドの収縮速度を検出するアームシリンダロッド収縮速度検出センサを設け、アームシリンダ80のロッド収縮速度をアーム開きパラメータとしてもよい。また、例えば、アーム84とブーム86とのなす角の増加速度を検出するアーム角速度検出センサを設け、アーム84とブーム86とのなす角の増加速度をアーム開きパラメータとしてもよい。
【0074】
次に、本実施形態においてアーム84の開き動作とブーム86の上げ動作が同時に行われた場合、即ち、アーム用リモコンレバー装置24のアーム用操作レバー24Aを図1において左側に倒すとともに、ブーム用リモコンレバー装置26のブーム用操作レバー26Aを図1において右側に倒した場合の動作について説明する。
【0075】
オペレータが、図1において、ブーム用リモコンレバー装置26の操作レバー26Aを右に傾けて、パイロット通路26aを介してブーム用第1切換弁20のパイロットポート20aにパイロット圧を加えると、ブーム用第1切換弁20は位置J側に切り換わり、第2油圧ポンプ14からの圧油は、タンデム通路42およびブーム用通路82aを経てブームシリンダ82のボトム側に供給され、ブームシリンダ82のロッドは伸長し、ブーム86は立ち上がる。
【0076】
また、パイロット通路26aのパイロット圧は、ブーム用第2切換弁22のパイロットポート22aにも加わり、ブーム用第2切換弁22を位置G側に切り換えようとする。ブーム用第2切換弁22が位置G側に切り換われば、第1油圧ポンプ12からも圧油がブームシリンダ82のボトム側に供給され、ブームシリンダ82のロッド伸長速度は増大する。一方、ブーム用第2切換弁22の他方のパイロットポート22bにはパイロット通路34aのパイロット圧が加わっている。したがって、ブーム用第2切換弁22の切換位置は、パイロットポート22a、22bに加わるパイロット圧の大小で決定されることとなる。
【0077】
ここで、コントローラ30には、圧力センサ28が測定したパイロット通路24aのパイロット圧データ(パイロットポート16a、18aに加わるパイロット圧データ)が電気信号線28aを介して送られる。そして、コントローラ30は、アーム用切換弁16、18のパイロットポート16a、18aに加わるパイロット圧が所定の閾値を超える場合には、ブーム用第2切換弁22のパイロットポート22bに加わるパイロット圧が大きくなるように(ブーム用第2切換弁22が位置I側に切り換わるように)電磁比例弁32を制御する一方、パイロットポート22bに加わるパイロット圧に所定の上限を設けて制御する。このため、この所定の上限のパイロット圧を超えるパイロット圧がブーム用第2切換弁22のパイロットポート22aに加わるようなブーム86の大きな立ち上がり動作時は、ブーム用第2切換弁22は位置G側に切り換わり、第1油圧ポンプ12からの圧油をブームシリンダ82のボトム側に供給することができる。この結果、ブームシリンダ82のボトム側には第1油圧ポンプ12および第2油圧ポンプ14の両方から圧油が供給されることとなり、大きな立ち上がり動作であってもブーム86の立ち上がり動作を円滑に行うことができる。
【0078】
次に、本発明の第2実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路70について説明する。
【0079】
図2は、本発明の第2実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路70の構成を示す図である。第1実施形態に係る油圧回路10と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明は省略する。
【0080】
第2実施形態に係る油圧回路70は、第1実施形態に係る油圧回路10の構成に、アームシリンダ80のロッド側の圧油の圧力を検出するアームシリンダ圧センサ52と、アームシリンダ80のボトム側の圧油の圧力を検出するアームシリンダ圧センサ54とを追加した構成である。アームシリンダ圧センサ52が検出したシリンダ圧データは電気信号線52aを介してコントローラ50に送られ、アームシリンダ圧センサ54が検出したシリンダ圧データは電気信号線54aを介してコントローラ50に送られる。コントローラ50は、送られた2つのシリンダ圧データに基づき、アームシリンダ80のロッド収縮時の推力を算出する。
【0081】
算出されたアームシリンダ80のロッド収縮時の推力が所定の閾値を上回る場合、コントローラ50は特定の作業状態(アームの開き動作がなされる作業状態であって所定の条件に合致する作業状態)であると判断し、パイロット通路34aの開度が大きくなるように電磁比例弁32に電気信号線30aを介して指令を送り、ブーム用第2切換弁22のパイロットポート22bに加えるパイロット圧を大きくする。これにより、ブーム用第2切換弁22は位置I側に切り換わり、バイパス通路80h、排出通路22c、タンク通路22eが連通する。これにより、アーム用通路80bを流れる、アームシリンダ80のボトム側から排出された戻り油は、分岐点80gでバイパス通路80hにも一部流れ込み、排出通路22c、タンク通路22eを経てタンクTに排出されるので、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油をタンクTに排出させる際の通過圧損を低減させることができる。
【0082】
また、コントローラ50には、第1実施形態と同様に、パイロット圧センサ28が測定したパイロット通路24aのパイロット圧データも送られるので、このデータをアームシリンダ80のロッド収縮時の推力に加味して、特定の作業状態であるか否かをコントローラ50が判断するようにしてもよい。
【0083】
なお、第2実施形態に係る油圧回路70では、アームシリンダ圧センサ52、54が検出したシリンダ圧データ(ロッド側およびボトム側の圧油の圧力についてのデータ)に基づき、コントローラ50がアームシリンダ80のロッド収縮時の推力を算出するので、アームシリンダ圧センサ52、54およびコントローラ50は、アームシリンダロッド収縮推力検出手段ということができる。
【0084】
また、第2実施形態に係る油圧回路70では、アームシリンダ圧センサ52、54が検出したシリンダ圧データに基づき、コントローラ50がアームシリンダ80のロッド収縮時の推力を算出し、算出されたアームシリンダ80のロッド収縮時の推力が所定の閾値を上回る場合、コントローラ50は特定の作業状態(アームの開き動作がなされる作業状態であって所定の条件に合致する作業状態)であると判断するようにしたが、アームシリンダ80のロッド収縮時の推力を算出せずに、アームシリンダ80のロッド側の圧油とボトム側の圧油との圧力差(ロッド側の圧油の圧力からボトム側の圧油の圧力を減じた差分)が所定の閾値より大きいか否か比較して、特定の作業状態であるか否かを判断するようにしてもよい。この場合、アームシリンダ圧センサ52、54およびコントローラ50は、アームシリンダ圧力差検出手段ということができる。
【0085】
次に、本発明の第3実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路72について説明する。
【0086】
図3は、本発明の第3実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路72の構成を示す図である。第1実施形態に係る油圧回路10と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明は省略する。
【0087】
第3実施形態に係る油圧回路72は、第1実施形態に係る油圧回路10の構成に、ブーム用第1切換弁20のパイロットポート20aおよびブーム用第2切換弁22のパイロットポート22aに加わるパイロット圧(パイロット通路26aのパイロット圧)を検出するパイロット圧センサ56を追加した構成である。パイロット圧センサ56が検出したパイロット圧データは電気信号線56aを介してコントローラ58に送られる。また、コントローラ58には、第1実施形態と同様に、パイロット圧センサ28が検出したパイロット通路24aのパイロット圧データも送られる。
【0088】
コントローラ58は、パイロット圧センサ28が検出したパイロット圧データに基づきアーム84の開き動作の状態を把握するとともに、パイロット圧センサ56が検出したパイロット圧データに基づきブーム86の上げ動作の状態を把握して、特定の作業状態に該当するかどうか判断する。具体的には、パイロット圧センサ28が検出したパイロット圧データに基づくパイロット圧が所定の閾値を上回っているかどうか判断するとともに、パイロット圧センサ56が検出したパイロット圧データに基づくパイロット圧が所定の閾値を上回っているかどうかを判断する。
【0089】
パイロット圧センサ28が検出したパイロット圧データに基づくパイロット圧が所定の閾値を上回っている場合には、アーム84の開き動作が大きくなされていると判断できるが、パイロット圧センサ56が検出したパイロット圧データに基づくパイロット圧が所定の閾値を上回っている場合には、ブーム86の上げ動作も大きくなされていると判断できる。このような場合に、ブーム用第2切換弁22を位置I側に切り換えると、第1油圧ポンプからブームシリンダ82に圧油が供給されなくなってしまい、ブーム86の上げ動作がスムーズに行えなくなるおそれがあるので、コントローラ58は、パイロット圧センサ28が検出したパイロット圧データに基づくパイロット圧が所定の閾値を上回っていても、パイロット圧センサ56が検出したパイロット圧データに基づくパイロット圧が所定の閾値を上回っている場合には、「特定の作業状態」に該当するとは判断せず、電磁比例弁32をパイロット通路34aが連通しないように制御し、ブーム用第2切換弁22のパイロットポート22bにパイロット圧が供給されないようにする。これにより、ブーム用第2切換弁22は位置G側に切り換わり、第1油圧ポンプ12からの圧油もブームシリンダ82のボトム側に送られ、ブーム86の上げ動作をスムーズに行うことができる。
【0090】
即ち、第3実施形態に係る油圧回路72では、アーム84の開き動作の状況だけでなく、ブーム86の上げ動作の状況も加味して、「特定の作業状態」に該当するか否かを判断し、ブーム86の上げ動作に支障を来たさない場合(ブーム86が停止状態または下げ動作状態の場合)に、ブーム用第2切換弁22を位置I側に切り換えるようにしているので、ブーム86の動作に支障を来たさない範囲内で、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油をタンクTに排出させる際の通過圧損を低減させることができる。
【0091】
なお、本実施形態では、パイロット圧センサ56により測定されたパイロット圧データもパラメータとして加えて、特定の作業状態であるか否かを判断するようにしたが、ブーム86の上げ動作の状況を判断することができるパラメータ(ブーム上げパラメータ)であれば、他の指標をパラメータとしてもよい。例えば、ブーム用操作レバー26Aの操作量(図1において右方向への操作量)をブーム上げパラメータとしてもよい。また、例えば、ブームシリンダ82のロッドの伸長速度を検出するブームシリンダロッド伸長速度検出センサを設け、ブームシリンダ82のロッド伸長速度をブーム上げパラメータとしてもよい。また、例えば、ブーム86の水平方向からの立ち上がり角の増加速度を検出するブーム角速度検出センサを設け、ブーム86の水平方向からの立ち上がり角の増加速度をブーム上げパラメータとしてもよい。また、例えば、ブームシリンダ82のロッド伸長時の推力を検出するブームシリンダロッド伸長推力検出手段を設け、ブームシリンダ82のロッド伸長時の推力をブーム上げパラメータとしてもよい。また、例えば、ブームシリンダ82のロッド側の圧油とボトム側の圧油との圧力差を検出するブームシリンダ圧力差検出手段を設け、ブームシリンダ82における前記圧力差をブーム上げパラメータとしてもよい。
【0092】
次に、本発明の第4実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路74について説明する。
【0093】
図4は、本発明の第4実施形態に係る油圧ショベルの油圧回路74の構成を示す図である。第1実施形態に係る油圧回路10と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明は省略する。
【0094】
第4実施形態に係る油圧回路74では、第1〜第3実施形態で用いたパイロット圧センサ28、56、シリンダ圧センサ52、54、コントローラ30、50、58、電磁比例弁32、パイロット油圧ポンプ34の替わりに、ブーム用第2切換弁のパイロットポート22bにアーム開き方向のパイロット圧を加えるパイロット通路24cを設けるとともに、該パイロット通路24cにパイロット通路24cの連通の程度を切り換えるパイロット用切換弁60を設けている。
【0095】
パイロット用切換弁60は、2位置3ポートの切換弁であり、2つの切換位置M、Nを備えており、アーム開き方向のパイロット通路24aのパイロット圧をパイロット通路24cを介してブーム用第2切換弁のパイロットポート22bに加える程度を切り換える役割を有する。パイロット用切換弁60のスプールの両端には、パイロットポート60a、60bが設けられている。また、パイロットポート60bの側の端部にはバネ60cが設けられている。
【0096】
切換位置Mのとき、パイロット通路24cは連通せず、ブーム用第2切換弁のパイロットポート22bにはパイロット圧は加わらない。切換位置Nのとき、パイロット通路24cが連通して、ブーム用第2切換弁のパイロットポート22bには、アーム開き方向のパイロット通路24aのパイロット圧(アーム用第1切換弁16のパイロットポート16aおよびアーム用第2切換弁18のパイロットポート18aに加わるパイロット圧)がパイロット通路24cを介して加わる。
【0097】
パイロット用切換弁60のパイロットポート60aには、パイロット通路24aのパイロット圧がパイロット通路24cを介して加わり、パイロット用切換弁60のパイロットポート60bには、パイロット通路26aのパイロット圧がパイロット通路26cを介して加わる。また、パイロット用切換弁60のパイロットポート60bの側の端部に設けられたバネ60cは、パイロット用切換弁60を位置M側に切り換えるように付勢されている。したがって、パイロット用切換弁60の切換位置は、パイロットポート60aに加わるパイロット圧による力と、パイロットポート60bに加わるパイロット圧による力にバネ60cの付勢力を加えた力の大小関係で決まる。したがって、アーム用リモコンレバー装置24の操作レバー24Aのアーム開き方向の操作量およびブーム用リモコンレバー装置26の操作レバー26Aのブーム開き方向の操作量が同程度場合は、バネ60cの付勢力によりパイロット用切換弁60は位置M側に切り換わる。
【0098】
このため、ブーム86の上げ動作が行われているときは、アーム84の上げ方向のパイロット圧が特に大きい場合を除き、パイロット用切換弁60は位置M側に切り換わり、ブーム用第2切換弁22のパイロットポート22bにはパイロット圧は加わらず、ブーム用第2切換弁22は位置G側に切り換わる。このため、ブームシリンダ82のボトム側に第1油圧ポンプからも圧油が供給され、ブーム86の上げ動作はスムーズに行われる。
【0099】
ブーム86の上げ動作が行われていないときは、パイロットポート60bにパイロット圧は加わらないので、アーム用操作レバー24Aをアーム上げ方向(図4において左方向)に傾けてバネ60cの付勢力に打ち勝つパイロット圧がパイロットポート60aに加われば、パイロット用切換弁60は位置N側に切り換わり、ブーム用第2切換弁22のパイロットポート22bにパイロット圧が加わり、ブーム用第2切換弁22は位置I側に切り換わる。
【0100】
これにより、バイパス通路80h、排出通路22c、タンク通路22eが連通するので、アーム用通路80bを流れる、アームシリンダ80のボトム側から排出された戻り油は、分岐点80gでバイパス通路80hにも一部流れ込み、排出通路22c、タンク通路22eを経てタンクTに排出される。このため、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油をタンクTに排出させる際の通過圧損を低減させることができる。
【0101】
なお、運転者がマニュアルで特定の作業状態(アームの開き動作がなされる作業状態であって所定の条件に合致する作業状態)であることを指定可能なスイッチ等を設けたときには、このスイッチが入ったか否かを見るだけで本発明に係る特定の作業状態か否かを判断できるので、このスイッチが入ったときには、アームの開き動作がなされていることさえ確認すれば、上記パラメータの実際の値を検出するセンサ等の作動を停止させて、ブーム用第2切換弁を位置I側に切り換えるようにしてもよい。
【0102】
また、以上説明した実施形態では、タンデム通路38において、アーム用第1切換弁16をブーム用第2切換弁22の下流側に設けたが、アーム用第1切換弁16をブーム用第2切換弁22の上流側に設けてもよい。また、タンデム通路42において、アーム用第2切換弁18をブーム用第1切換弁20の下流側に設けたが、アーム用第2切換弁18をブーム用第1切換弁20の上流側に設けてもよい。
【0103】
また、アーム用切換弁として、アーム用第1切換弁16およびアーム用第2切換弁18の2つの切換弁を用いたが、アーム用切換弁がアーム用第1切換弁16の1つだけの油圧回路にも本発明は適用することができる。この場合、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油がタンクTに排出される通路は、アーム用第1切換弁16の排出通路16cを経由してタンクTに通じる通路に加えて、バイパス通路80hおよびブーム用第2切換弁22の排出通路22cを経由してタンクTに通じる通路が、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油がタンクTに排出される通路となる。なお、本発明を適用しない場合、アームシリンダ80のボトム側からの戻り油がタンクTに排出される通路は、アーム用第1切換弁16の排出通路16cを経由してタンクTに通じる通路のみである。
【0104】
また、本発明は、ポジコン、ネガコン、オープンセンタ等のポンプ制御方式には依存せず、適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0105】
例えば、タンデム接続された通路をパラレルに設けた油圧ショベルの油圧回路に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0106】
10、70、72、74…油圧回路
12…第1油圧ポンプ
14…第2油圧ポンプ
16…アーム用第1切換弁(第一作業機用第1切換弁)
18…アーム用第2切換弁(第一作業機用第2切換弁)
20…ブーム用第1切換弁(第二作業機用第1切換弁)
22…ブーム用第2切換弁(第二作業機用第2切換弁)
16c、18c、22c…排出通路
24…アーム用リモコンレバー装置
24A…アーム用操作レバー
26…ブーム用リモコンレバー装置
26A…ブーム用操作レバー
28…パイロット圧センサ(アーム用パイロット圧検出手段)
30、50、58…コントローラ
32…電磁比例弁
34…パイロット油圧ポンプ
38、42…タンデム通路
40、44、80h…パラレル通路
52、54…シリンダ圧センサ(アームシリンダ圧検出手段)
56…パイロット圧センサ(ブーム用パイロット圧検出手段)
60…パイロット用切換弁
78…油圧ショベル
80…アームシリンダ(第一作業機用油圧アクチュエータ)
82…ブームシリンダ(第二作業機用油圧アクチュエータ)
84…アーム(第一作業機)
86…ブーム(第二作業機)
88…バケット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の油圧ポンプに接続され、第一作業機を駆動する第一作業機用油圧アクチュエータへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるための第一作業機用第1切換弁と、
第2の油圧ポンプに接続され、第二作業機を駆動する第二作業機用油圧アクチュエータへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるための第二作業機用第1切換弁と、
前記第1の油圧ポンプに前記第一作業機用第1切換弁とタンデム接続され、前記第二作業機用油圧アクチュエータへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるための第二作業機用第2切換弁と、
を備えた建設機械の油圧回路において、
前記第二作業機用第2切換弁は、前記第一作業機用油圧アクチュエータからの戻り油をタンクに排出させるための排出通路を備え、
また、前記油圧回路は、前記第二作業機用第2切換弁の切り換え位置を制御する第二作業機用第2切換弁制御機構を備え、
前記第一作業機の動作がなされる作業状態であって所定の条件に合致する特定の作業状態のときに、前記第二作業機用第2切換弁を前記排出通路が連通するように切り換えることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項2】
請求項1において、更に、
前記第2の油圧ポンプに前記第二作業機用第1切換弁とタンデム接続され、前記第一作業機用油圧アクチュエータへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるための第一作業機用第2切換弁を備えることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第一作業機がアームで、前記第一作業機用第1切換弁および第一作業機用第2切換弁がアーム用第1切換弁およびアーム用第2切換弁であり、また、前記第一作業機用油圧アクチュエータがアームシリンダであり、
また、前記第二作業機がブームで、前記第二作業機用第1切換弁および第二作業機用第2切換弁がブーム用第1切換弁およびブーム用第2切換弁であり、また、前記ブーム用油圧アクチュエータがブームシリンダであり、
前記特定の作業状態か否かを、前記アームの開き動作の程度を示すアーム開きパラメータの少なくとも1つが所定の閾値より大きいか否かを比較することによって判断することを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項4】
請求項3において、更に、
前記アーム用第1切換弁および前記アーム用第2切換弁を操作するアーム用操作レバーを備え、
前記アーム開きパラメータの1つが前記アーム用操作レバーの操作量であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項5】
請求項3または4において、更に、
前記アーム用第1切換弁を切り換えるパイロット圧および前記アーム用第2切換弁を切り換えるパイロット圧のうちの少なくとも一方を検出するアーム用パイロット圧検出手段を備え、
前記アーム開きパラメータの1つが前記アーム用第1切換弁を切り換えるパイロット圧または前記アーム用第2切換弁を切り換えるパイロット圧であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかにおいて、更に、
前記アームシリンダのロッド収縮時の推力を検出するアームシリンダロッド収縮推力検出手段を備え、
前記アーム開きパラメータの1つが前記アームシリンダのロッド収縮時の推力であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかにおいて、更に、
前記アームシリンダのロッド側の圧油とボトム側の圧油との圧力差を検出するアームシリンダ圧力差検出手段を備え、
前記アーム開きパラメータの1つが前記アームシリンダにおける前記圧力差であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれかにおいて、更に、
前記アームシリンダのロッドの収縮速度を検出するアームシリンダロッド収縮速度検出手段を備え、
前記アーム開きパラメータの1つが前記アームシリンダのロッド収縮速度であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれかにおいて、更に、
前記アームと前記ブームとのなす角の増加速度を検出するアーム角速度検出手段を備え、
前記アーム開きパラメータの1つが前記アームと前記ブームとのなす角の増加速度であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項10】
請求項3〜9のいずれかにおいて、
前記特定の作業状態か否かを、前記ブームの上げ動作の程度を示すブーム上げパラメータの少なくとも1つが所定の閾値より小さいか否かを比較した結果も含めて判断することを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項11】
請求項10において、更に、
前記ブーム用第1切換弁および前記ブーム用第2切換弁を操作するブーム用操作レバーを備え、
前記ブーム上げパラメータの1つが前記ブーム用操作レバーの操作量であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項12】
請求項10または11において、更に、
前記ブーム用第1切換弁を切り換えるパイロット圧および前記ブーム用第2切換弁を切り換えるパイロット圧のうちの少なくとも一方を検出するブーム用パイロット圧検出手段を備え、
前記ブーム上げパラメータの1つが前記ブーム用第1切換弁を切り換えるパイロット圧または前記ブーム用第2切換弁を切り換えるパイロット圧であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれかにおいて、更に、
前記ブームシリンダのロッド伸長時の推力を検出するブームシリンダロッド伸長推力検出手段を備え、
前記ブーム上げパラメータの1つが前記ブームシリンダのロッド伸長時の推力であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれかにおいて、更に、
前記ブームシリンダのロッド側の圧油とボトム側の圧油との圧力差を検出するブームシリンダ圧力差検出手段を備え、
前記ブーム上げパラメータの1つが前記ブームシリンダにおける前記圧力差であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれかにおいて、更に、
前記ブームシリンダのロッドの伸長速度を検出するブームシリンダロッド伸長速度検出手段を備え、
前記ブーム上げパラメータの1つが前記ブームシリンダのロッド伸長速度であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項16】
請求項10〜15のいずれかにおいて、更に、
前記ブームの水平方向からの立ち上がり角の増加速度を検出するブーム角度速度検出手段を備え、
前記ブーム上げパラメータの1つが前記ブームの水平方向からの立ち上がり角の増加速度であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項17】
第1の油圧ポンプに接続され、アームを駆動するアームシリンダへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるためのアーム用第1切換弁と、
第2の油圧ポンプに接続され、前記アームシリンダへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるためのアーム用第2切換弁と、
前記第2の油圧ポンプに前記アーム用第2切換弁とタンデム接続され、ブームを駆動するブームシリンダへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるためのブーム用第1切換弁と、
前記第1の油圧ポンプに前記アーム用第1切換弁とタンデム接続され、前記ブームシリンダへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるためのブーム用第2切換弁と、
を備えた建設機械の油圧回路において、
前記ブーム用第2切換弁は、前記アームシリンダのボトム側からの戻り油をタンクに排出させるための排出通路を備え、
また、前記油圧回路は、アーム開き方向に前記アーム用第1切換弁または前記アーム用第2切換弁を切り換えるアーム開きパイロット圧を前記ブーム用第2切換弁の一端のパイロットポートに導く第1のパイロット通路と、ブーム上げ方向に前記ブーム用第1切換弁を切り換えるブーム上げパイロット圧を前記ブーム用第2切換弁の他端のパイロットポートに導く第2のパイロット通路と、
を備えることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項18】
請求項17において、更に、
前記第1のパイロット通路に、前記アーム開きパイロット圧および前記ブーム上げパイロット圧に応じて該第1のパイロット通路の連通の程度を切り換えるパイロット用切換弁が設けられていることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項1】
第1の油圧ポンプに接続され、第一作業機を駆動する第一作業機用油圧アクチュエータへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるための第一作業機用第1切換弁と、
第2の油圧ポンプに接続され、第二作業機を駆動する第二作業機用油圧アクチュエータへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるための第二作業機用第1切換弁と、
前記第1の油圧ポンプに前記第一作業機用第1切換弁とタンデム接続され、前記第二作業機用油圧アクチュエータへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるための第二作業機用第2切換弁と、
を備えた建設機械の油圧回路において、
前記第二作業機用第2切換弁は、前記第一作業機用油圧アクチュエータからの戻り油をタンクに排出させるための排出通路を備え、
また、前記油圧回路は、前記第二作業機用第2切換弁の切り換え位置を制御する第二作業機用第2切換弁制御機構を備え、
前記第一作業機の動作がなされる作業状態であって所定の条件に合致する特定の作業状態のときに、前記第二作業機用第2切換弁を前記排出通路が連通するように切り換えることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項2】
請求項1において、更に、
前記第2の油圧ポンプに前記第二作業機用第1切換弁とタンデム接続され、前記第一作業機用油圧アクチュエータへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるための第一作業機用第2切換弁を備えることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第一作業機がアームで、前記第一作業機用第1切換弁および第一作業機用第2切換弁がアーム用第1切換弁およびアーム用第2切換弁であり、また、前記第一作業機用油圧アクチュエータがアームシリンダであり、
また、前記第二作業機がブームで、前記第二作業機用第1切換弁および第二作業機用第2切換弁がブーム用第1切換弁およびブーム用第2切換弁であり、また、前記ブーム用油圧アクチュエータがブームシリンダであり、
前記特定の作業状態か否かを、前記アームの開き動作の程度を示すアーム開きパラメータの少なくとも1つが所定の閾値より大きいか否かを比較することによって判断することを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項4】
請求項3において、更に、
前記アーム用第1切換弁および前記アーム用第2切換弁を操作するアーム用操作レバーを備え、
前記アーム開きパラメータの1つが前記アーム用操作レバーの操作量であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項5】
請求項3または4において、更に、
前記アーム用第1切換弁を切り換えるパイロット圧および前記アーム用第2切換弁を切り換えるパイロット圧のうちの少なくとも一方を検出するアーム用パイロット圧検出手段を備え、
前記アーム開きパラメータの1つが前記アーム用第1切換弁を切り換えるパイロット圧または前記アーム用第2切換弁を切り換えるパイロット圧であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかにおいて、更に、
前記アームシリンダのロッド収縮時の推力を検出するアームシリンダロッド収縮推力検出手段を備え、
前記アーム開きパラメータの1つが前記アームシリンダのロッド収縮時の推力であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかにおいて、更に、
前記アームシリンダのロッド側の圧油とボトム側の圧油との圧力差を検出するアームシリンダ圧力差検出手段を備え、
前記アーム開きパラメータの1つが前記アームシリンダにおける前記圧力差であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれかにおいて、更に、
前記アームシリンダのロッドの収縮速度を検出するアームシリンダロッド収縮速度検出手段を備え、
前記アーム開きパラメータの1つが前記アームシリンダのロッド収縮速度であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれかにおいて、更に、
前記アームと前記ブームとのなす角の増加速度を検出するアーム角速度検出手段を備え、
前記アーム開きパラメータの1つが前記アームと前記ブームとのなす角の増加速度であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項10】
請求項3〜9のいずれかにおいて、
前記特定の作業状態か否かを、前記ブームの上げ動作の程度を示すブーム上げパラメータの少なくとも1つが所定の閾値より小さいか否かを比較した結果も含めて判断することを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項11】
請求項10において、更に、
前記ブーム用第1切換弁および前記ブーム用第2切換弁を操作するブーム用操作レバーを備え、
前記ブーム上げパラメータの1つが前記ブーム用操作レバーの操作量であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項12】
請求項10または11において、更に、
前記ブーム用第1切換弁を切り換えるパイロット圧および前記ブーム用第2切換弁を切り換えるパイロット圧のうちの少なくとも一方を検出するブーム用パイロット圧検出手段を備え、
前記ブーム上げパラメータの1つが前記ブーム用第1切換弁を切り換えるパイロット圧または前記ブーム用第2切換弁を切り換えるパイロット圧であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれかにおいて、更に、
前記ブームシリンダのロッド伸長時の推力を検出するブームシリンダロッド伸長推力検出手段を備え、
前記ブーム上げパラメータの1つが前記ブームシリンダのロッド伸長時の推力であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれかにおいて、更に、
前記ブームシリンダのロッド側の圧油とボトム側の圧油との圧力差を検出するブームシリンダ圧力差検出手段を備え、
前記ブーム上げパラメータの1つが前記ブームシリンダにおける前記圧力差であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれかにおいて、更に、
前記ブームシリンダのロッドの伸長速度を検出するブームシリンダロッド伸長速度検出手段を備え、
前記ブーム上げパラメータの1つが前記ブームシリンダのロッド伸長速度であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項16】
請求項10〜15のいずれかにおいて、更に、
前記ブームの水平方向からの立ち上がり角の増加速度を検出するブーム角度速度検出手段を備え、
前記ブーム上げパラメータの1つが前記ブームの水平方向からの立ち上がり角の増加速度であることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項17】
第1の油圧ポンプに接続され、アームを駆動するアームシリンダへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるためのアーム用第1切換弁と、
第2の油圧ポンプに接続され、前記アームシリンダへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるためのアーム用第2切換弁と、
前記第2の油圧ポンプに前記アーム用第2切換弁とタンデム接続され、ブームを駆動するブームシリンダへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるためのブーム用第1切換弁と、
前記第1の油圧ポンプに前記アーム用第1切換弁とタンデム接続され、前記ブームシリンダへ供給される圧油の方向と流量を切り換えるためのブーム用第2切換弁と、
を備えた建設機械の油圧回路において、
前記ブーム用第2切換弁は、前記アームシリンダのボトム側からの戻り油をタンクに排出させるための排出通路を備え、
また、前記油圧回路は、アーム開き方向に前記アーム用第1切換弁または前記アーム用第2切換弁を切り換えるアーム開きパイロット圧を前記ブーム用第2切換弁の一端のパイロットポートに導く第1のパイロット通路と、ブーム上げ方向に前記ブーム用第1切換弁を切り換えるブーム上げパイロット圧を前記ブーム用第2切換弁の他端のパイロットポートに導く第2のパイロット通路と、
を備えることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【請求項18】
請求項17において、更に、
前記第1のパイロット通路に、前記アーム開きパイロット圧および前記ブーム上げパイロット圧に応じて該第1のパイロット通路の連通の程度を切り換えるパイロット用切換弁が設けられていることを特徴とする建設機械の油圧回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2011−64015(P2011−64015A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216179(P2009−216179)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】
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