説明

建設機械用シート

【課題】建設機械用シートにおいて、背凭れと座とが連動して傾動しながら操作者の変化する作業姿勢に追従することを可能とする。
【解決手段】メインフレーム2と、座板支持部3aと背凭れ支持部3bとからなり座板支持部3aがメインフレーム2に揺動自在に連結される背凭れフレーム3と、座20を支持する座板支持部材4と、座板支持部材4に揺動自在に連結されると共に座板支持部3aに揺動自在に連結される前リンク部材5,5と、座板支持部材4に揺動自在に連結されると共に座板支持部3aに揺動自在に連結される後リンク部材6,6と、メインフレーム2と背凭れフレーム3との間に介在してメインフレーム2に対して背凭れフレーム3の座板支持部3aの後部を上方に押し上げ且つ背凭れ支持部3bを前方に押し出す付勢力を発揮する傾動動力源7とを有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械用シートに関する。さらに詳述すると、本発明は、例えばクレーン等の建設機械の操作者が着座する椅子として用いて好適なシートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばクレーン等の建設機械の操作者の作業姿勢は目線が作業対象物に対して上から下へ,下から上へと連続的に変化する。また、作業状況によって特に上体の姿勢も上向きから下向き,下向きから上向きへと連続的に変化する。
【0003】
従来の車両用シートは、図4に示すように、リクライニング機構101が背凭れ102と座103との連結部にあり、当該連結部を支点に背凭れ102の角度は変化する一方で、座103は傾動しない(特許文献1)。また、従来の車両用シートでは、背凭れ102の角度は任意の角度に調整された後に当該角度で固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2691345号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の車両用シートでは、建設機械操作者の常に変化する作業姿勢に連続的に追従することができないので、作業状況に合わせて作業姿勢を変えるたびに背凭れ102の角度を調整しなければならないという問題がある。このため、建設機械の操作者にとって快適であるとは言い難い。
【0006】
また、建設機械では手元のレバーを前後左右に倒すことで機械の動きを操作する場合が多い。しかしながら、従来の建設機械に装備されている肘受けはシートに固定されて取り付けられて動かないので機械操作者がレバー操作によって肘を動かすたびに肘受けの上面を肘を滑らせながら操作しなければならないという問題がある。また、背凭れの角度を変えた場合に肘受けの位置を手動で調整しなければならないという問題がある。このため、建設機械の操作者にとって快適であるとは言い難い。
【0007】
そして、上述の問題のために建設機械操作者の作業姿勢と操作者の身体を支えるシートポジションとが作業中に一致しないので操作者の身体的(具体的には、腰,肩,首,肘など)な疲労を増加させる要因になっている。
【0008】
そこで、本発明は、一般的に作業状況に合わせて操作者の作業姿勢が常に変化する建設機械に取り付けられるシートであって背凭れと座とが連動して傾動しながら建設機械操作者の変化する作業姿勢に追従することができる建設機械用シートを提供することを目的とする。また、本発明は、一般的に手元のレバーを前後左右に倒すことで操作を行う場合が多い建設機械に取り付けられるシートに備えるられる肘受けであって操作者が手元のレバーを操作する際の肘の動きに追従することができる肘受けを更に有する建設機械用シートを提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の建設機械用シートは、別体として構成された座と背凭れとを有して建設機械に取り付けられるシートであって、メインフレームと、座を支持する座板支持部材と、座板支持部材を支持するために前方に張り出した座板支持部と背凭れを支持するために上方に延出する背凭れ支持部とからなり座板支持部がメインフレームに揺動自在に連結される背凭れフレームと、上部が座板支持部材の前部に揺動自在に連結されると共に下部が座板支持部の前部に揺動自在に連結される前リンク部材と、上部が座板支持部材の後部に揺動自在に連結されると共に下部が座板支持部の後部に揺動自在に連結される後リンク部材と、メインフレームと背凭れフレームとの間に介在してメインフレームに対して座板支持部の後部を上方に押し上げ且つ背凭れ支持部を前方に押し出す付勢力を発揮する傾動動力源とを有するようにしている。
【0010】
したがって、この建設機械用シートによると、背凭れと座とが連動して傾動すると共に、背凭れが傾動動力源による反力を受けながら建設機械操作者の作業姿勢の変化に追従して傾動する。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の建設機械用シートにおいて、肘受け部が少なくとも上下に移動すると共に前後にスライドする肘受けを更に有するようにしている。この場合には、建設機械操作者のレバー操作に伴う肘の動きに追従して肘受けが動く。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の建設機械用シートによれば、建設機械の操作においては一般的に作業状況に合わせて操作者の作業姿勢が常に変化するところ、建設機械操作者の作業姿勢の変化に追従させて背凭れを傾動させることができると共に背凭れの傾動に連動して座を傾動させることができるので、操作者の作業姿勢が変化した場合にも操作者の姿勢に密着させてシートポジションを変えて操作者の身体を安定的に支えることができ、操作者の身体的な負担・疲労の軽減を図ることが可能になる。
【0013】
また、請求項2記載の建設機械用シートによれば、建設機械の操作においては一般的に手元のレバーを前後左右に倒すことで操作を行う場合が多いところ、建設機械操作者の肘の動きに追従させて肘受けを動かすことができるので、操作者の肘が動いた場合にも当該操作者の肘を安定的に支えることができ、操作者の身体的な負担・疲労の更なる軽減を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の建設機械用シートの実施形態の一例を示す側面図であって、背凭れが後傾していない状態を示す側面図である。
【図2】本発明の建設機械用シートの実施形態の一例を示す側面図であって、背凭れが後傾している状態を示す側面図である。
【図3】本発明の建設機械用シートが肘受けを更に有する場合の実施形態の一例を示す側面図であって、背凭れが後傾していない状態を示す側面図である。
【図4】従来の車両用シートを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1から図3に、本発明の建設機械用シートの実施形態の一例を示す。ここで、本発明の建設機械用シートは、例えばクレーン等の建設機械の操作室(運転室)に操作者が着座する座を取り付けるために設けられている脚柱や基台に取り付けられて用いられる。また、本明細書においては、建設機械用シート1に着座する操作者を基準にして上下,前後,左右を定義する。
【0017】
本実施形態の建設機械用シート1は、別体として構成された座20と背凭れ21とを有して建設機械に取り付けられるシートであって、建設機械の操作室(運転室)に設けられている脚柱や基台(図示省略)の上端に取り付けられるメインフレーム2と、座20を支持するために前方に張り出した座板支持部3aと背凭れ21を支持するために上方に延出する背凭れ支持部3bとからなり座板支持部3aの中間部がメインフレーム2の中間部に揺動自在に連結される背凭れフレーム3と、座20を支持する座板支持部材4と、上部が座板支持部材4の前部に揺動自在に連結されると共に下部が背凭れフレーム3の座板支持部3aの前部に揺動自在に連結される前リンク部材5,5と、上部が座板支持部材4の後部に揺動自在に連結されると共に下部が背凭れフレーム3の座板支持部3aの後部に揺動自在に連結される後リンク部材6,6と、メインフレーム2と背凭れフレーム3との間に介在してメインフレーム2に対して背凭れフレーム3の座板支持部3aの後部を上方に押し上げ且つ背凭れ支持部3bを前方に押し出す付勢力を発揮する傾動動力源7とで構成されている。
【0018】
座20は、例えば、芯材となる座板とその上に載置されるクッション材と当該クッション材を覆う上張地とから構成され、座板が座板支持部材4に固定されることによって当該座板支持部材4に備え付けられる。
【0019】
また、背凭れ21は、例えば、芯材となる背板とその前面に取り付けられるクッション材と当該クッション材を覆う上張地とから構成され、背板が背凭れ支持部3bに固定されることによって当該背凭れ支持部3bに備え付けられる。
【0020】
なお、座20や背凭れ21に力が加えられていない状態では、傾動動力源7が付勢力を発揮することによって座20の後端の傾斜面と背凭れ21の下端の傾斜面とが当接し、本実施形態では、座20は若干前下がりであると共に背凭れ21は概ね直立している(以下、初期位置と呼ぶ)。すなわち、力が加えられていない状態において傾動動力源7の付勢力に抗して座20と背凭れ21との位置決めをするストッパの役割を果たす傾斜面が座20の後端と背凭れ21の下端とに形成されている。
【0021】
メインフレーム2は、左右方向に貫通する前連結シャフト10を支持する貫通孔を前部に有すると共に左右方向に貫通する中央連結シャフト11を支持する貫通孔を中央付近に有して対向する左右の側壁と底板とからなる。そして、底板が建設機械の操作室(運転室)に設けられている脚柱や基台(図示省略)の上端に例えばボルト締めされることによってメインフレーム2が取り付けられる。なお、本実施形態では、前連結シャフト10及び中央連結シャフト11はスリーブを介して軸回転可能にメインフレーム2の左右の側壁に支持される。
【0022】
背凭れフレーム3は全体として側面視L字形に形成され、座20側(即ち前方)に張り出した座板支持部3aと背凭れ21を支持するために上方に延出する背凭れ支持部3bとからなる。
【0023】
座板支持部3aは、左右方向に貫通する中央連結シャフト11を貫通させる貫通孔を中央付近に有して対向する左右の側壁からなり、メインフレーム2を左右から挟むように、すなわち座板支持部3aを形成する左右の側壁がメインフレーム2の両側壁の左右外側にそれぞれ配置される幅に形成される。
【0024】
座板支持部3aを形成する左右の側壁は、また、それぞれ、左右方向に貫通する前リンク下ピン12,12を貫通させる貫通孔を前部に有すると共に、左右方向に貫通する後リンク下ピン14,14を貫通させる貫通孔を後部に有する。なお、前リンク下ピン12を貫通させる貫通孔は前方に向かって上向きに傾斜した長孔として形成される。また、本実施形態では、前リンク下ピン12及び後リンク下ピン14はスリーブを介して軸回転可能に座板支持部3aを形成する左右の側壁に支持される。
【0025】
背凭れ支持部3bは、座板支持部3aを形成する左右の側壁それぞれの後端から左右対向して後ろ向きやがて上向きに延出し上端で繋がって正面視逆U字形に形成される。
【0026】
メインフレーム2及び座板支持部3aの上方には座板支持部材4が配設される。座板支持部材4は、対向する左右の側壁と天板とからなり、左右の側壁が、座板支持部3aを形成する両側壁の左右外側にそれぞれ位置する幅に形成される。
【0027】
座板支持部材4の左右の側壁は、それぞれ、左右方向に貫通する前リンク上シャフト13を貫通させる貫通孔を前部に有すると共に、左右方向に貫通する後リンク上シャフト15を貫通させる貫通孔を後部に有する。なお、本実施形態では、前リンク上シャフト13及び後リンク上シャフト15はスリーブを介して軸回転可能に座板支持部材4の左右の側壁に支持される。
【0028】
本実施形態の前リンク部材5,5は、三角形の板状に形成され、座板支持部3aを形成する左右の側壁と座板支持部材4の左右の側壁との間に立てられて座板支持部3aを挟んで対向して配設される。なお、前リンク部材5,5の形状は三角形に限られるものではなく、例えばL字形であっても構わない。
【0029】
前リンク部材5は、三角形の各角部に貫通孔を有し、当該貫通孔それぞれに、座板支持部3aを形成する側壁の前部を貫通する前リンク下ピン12を貫通させ、座板支持部材4の左右の側壁の前部を貫通する前リンク上シャフト13を貫通させ、メインフレーム2の左右の側壁の前部を貫通する前連結シャフト10を貫通させる。そして、前リンク部材5は、前連結シャフト10を支点として、背凭れフレーム3の傾動を伝達して座板支持部材4を傾動させる。
【0030】
一方、本実施形態の後リンク部材6,6は、細長の板状に形成され、座板支持部3aを形成する左右の側壁と座板支持部材4の左右の側壁との間に立てられて座板支持部3aを挟んで対向して配設される。
【0031】
そして、後リンク部材6は、長手方向の両端部に貫通孔を有し、当該貫通孔それぞれに、座板支持部3aを形成する側壁の後部を貫通する後リンク下ピン14を貫通させ、座板支持部材4の左右の側壁の後部を貫通する後リンク上シャフト15を貫通させる。
【0032】
これら前リンク部材5と後リンク部材6とにより、背凭れフレーム3の背凭れ支持部3bを前後に傾動させると中央連結シャフト11を軸として座板支持部3aが揺動し、当該座板支持部3aの揺動に連動して座板支持部材4が傾動する。すなわち、初期位置から背凭れ21が後方に傾動した場合には座20の後部が下がり、背凭れ21が初期位置に戻る場合には座20の後部が上がる。
【0033】
そして、このように背凭れ21の角度の変化(即ち傾動)に連動して座20の角度も変化(即ち傾動)することにより、建設機械操作者の特に上体の姿勢変化に応答して座20も傾動することになり、操作者の身体をより安定的に支えることができ、操作者の身体的な負担・疲労を効果的に軽減することができる。
【0034】
なお、座20及び背凭れ21の傾動範囲は本発明の建設機械用シートが取り付けられる建設機械に合わせて適宜調整される。具体的には例えば、座20が若干前下がりであると共に背凭れ21が概ね直立している位置から、背凭れ21が13〜23度程度後傾しその際に座20が概ね水平若しくは若干前上がりになる範囲で座20と背凭れ21とを傾動させるようにすることが考えられる。
【0035】
傾動動力源7はメインフレーム2と背凭れフレーム3との間に介在してメインフレーム2に対して背凭れフレーム3の座板支持部3aの後部を上方に押し上げ且つ背凭れ支持部3bを前傾させるように前方に押し出す付勢力を発揮するものである。そして、座20や背凭れ21に力が加えられていない場合には、傾動動力源7が付勢力を発揮することによって建設機械用シート1は初期位置を保つ。
【0036】
なお、傾動動力源7はメインフレーム2に対して背凭れフレーム3の座板支持部3aの後部を上方に押し上げ且つ背凭れ支持部3bを前傾させるように前方に押し出す付勢力を発揮する動力源となる装置であれば良く、本実施形態では、ロック機構付きガススプリングが用いられる。
【0037】
ロック機構付きガススプリング7(以下、単にスプリング7と表記する)は、下端が下端連結軸7aを介してメインフレーム2の後部に揺動自在に連結されると共に、上端が上端連結軸7bを介して背凭れ支持部3bの中間部に揺動自在に連結される。このため、メインフレーム2の後部には下端連結軸7aを摺動自在に保持するための貫通孔が設けられ、本実施形態では、当該貫通孔は前後方向の長孔として形成される。
【0038】
本実施形態のスプリング7は、シリンダー7c内にシャフト7dと連結したピストンを内蔵し、シリンダー7c内のピストンの両側の空間を連通路によって連通させた構造を有する。また、スプリング7は、シャフト7dのシリンダー7cから突出する方の先端部に操作機構7eを備える。ガススプリングの操作機構並びにその取り付け態様自体は周知の技術であるのでここでは詳細については省略する(例えば、特開2000−139604号や特開2008−125561号参照)。
【0039】
そして、傾動動力源として本実施形態のようにロック機構を有するスプリング7を用いた場合には図示していないレバーの操作によって操作機構7eを介して充填ガスの流路を閉じて出入りするシャフト7dを任意の長さでロックすることが可能であり、これによって背凭れフレーム3の傾動を制限して任意の傾斜角度で座20と背凭れ21とを固定することが可能である。
【0040】
本実施形態では、スプリング7の下端とメインフレーム2の後部とを揺動自在に連結する下端連結軸7aの軸心位置を移動させて初期位置におけるメインフレーム2及び背凭れ支持部3bとスプリング7とのなす角の大きさを変えることにより、スプリング7によって背凭れフレーム3に付与される付勢力の大きさを調整するようにしている。
【0041】
具体的には、本実施形態では、後グリップ8aと下端連結軸7aとによって角度調整反力調整機構8が構成される。そして、後グリップ8aを廻すとメインフレーム2に対するねじ込みの程度が変化して下端連結軸7aがメインフレーム2後部の長孔に案内されて前後方向に移動する。具体的には、傾動動力源であるスプリング7に垂直に負荷をかけた場合に反力が最も大きくなるので、後グリップ8aを廻して下端連結軸7aを前方に移動させた場合にはそれに伴って傾動動力源であるスプリング7の角度が次第に横たわる角度になってスプリング7の反力は小さくなる。このように、メインフレーム2及び背凭れ支持部3bに対するスプリング7の角度を調整して得られる反力の大きさを調整する構造である角度調整反力調整機構8を備えるようにすることによって背凭れフレーム3に付与される反力を調整することができる。
【0042】
そして、傾動動力源として本実施形態のようにロック機構を有するスプリング7を用いることにより、作業状況に合わせての作業姿勢の変化がない若しくは殆どない場合にはスプリング7をロックすることによって背凭れフレーム3の傾動を制限して機械操作を行うことができると共に、作業姿勢が頻繁に変化する場合にはスプリング7のロックを解除して背凭れフレーム3を揺動自在にすることにより、上体を後ろに反らすときにはスプリング7の反力によって背凭れ21の急激な傾動が回避され安定的に支えられた状態で姿勢を変化させて機械操作を行うことができ且つ上体を元に戻すときには背凭れ21を介してスプリング7の付勢力を受けながら姿勢を変えることができる。
【0043】
さらに、本実施形態では、つる巻きばね9aと前グリップ9bとからなる前部反力調整機構9を備えるようにしている。具体的には、つる巻きばね9aは、一端がメインフレーム2の前端部に取り付けられた前グリップ9bの軸に係止され、中間部分が前連結シャフト10に巻かれ(言い換えると、前連結シャフト10を貫通させ)、他端が座板支持部材4の前部を左右に貫通する前リンク上シャフト13に係止される。そして、つる巻きばね9aは、前連結シャフト10に巻かれた部分を支点として前リンク上シャフト13をメインフレーム2に対して後方上向きに付勢する。
【0044】
また、前グリップ9bの軸には雄ねじが形成されていると共にメインフレーム2の底板の前端部には雌ねじが形成された貫通孔が設けられており、当該雄ねじと雌ねじとの働きによってメインフレーム2に対するねじ込みの程度が調整可能であり、当該ねじ込みの程度を調整することによってつる巻きばね9aの締め付けの程度が調整されて当該つる巻きばね9aによって発揮される付勢力が調整される。
【0045】
これらつる巻きばね9aと前グリップ9bとにより、前連結シャフト10に巻かれた部分を支点として前リンク上シャフト13をメインフレーム2に対して後方上向きに付勢する力を調整することが可能であり、前リンク部材5を介して背凭れフレーム3の傾動に連動して座板支持部材4が傾動する際の背凭れフレーム3の傾動への座板支持部材4の追従の程度を調整することができる。
【0046】
本実施形態の建設機械用シート1は、図3に示すように、肘受け17を更に有する。本実施形態の肘受け17は、座20の後端寄りの位置に直立するように備えられたポール18に取り付けられる。なお、ポール18は、円柱形状であり、建設機械用シート1が備えられている操作室(運転室)の例えば床面に固定して取り付けられる。
【0047】
肘受け17は、建設機械操作者が肘を載せる肘受け部としての肘パッド17aと、当該肘パッド17aが取り付けられている水平スライダ17bと、当該水平スライダ17bが取り付けられている水平スライダガイド17cと、当該水平スライダガイド17cの後端が取り付けられている垂直スライダ17eと、水平スライダガイド17cと垂直スライダ17eとの間に介在するように取り付けられている反力装置17dとからなる。
【0048】
肘パッド17aは、本実施形態では後側よりも前側の方が薄肉のかまぼこ形に形成され、水平スライダ17bの上面に取り付けられる。
【0049】
水平スライダ17bは、下面が開口している正面視断面コ字形に形成されると共に、側壁内面の下端部に帯状の凸部が形成されている。一方、水平スライダガイド17cは正面視断面T字形の細長棒状に形成される。
【0050】
そして、水平スライダガイド17cの上から水平スライダ17bが嵌められるように備えられる。このとき、水平スライダ17b側壁内面下端部の凸部が断面T字形をなす水平スライダガイド17cの下側部分に嵌め合わされて、両者は軸方向(即ち前後方向)に摺動自在に組み合わされる。
【0051】
垂直スライダ17eは、軸心方向の貫通孔を有する円筒状に形成され、貫通孔にポール18を貫通させて当該ポール18に軸方向(即ち上下方向)に摺動可能に取り付けられる。
【0052】
垂直スライダ17eは、また、周壁を貫通するねじ17fを備え、当該ねじ17fをねじ込んで先端面をポール18の外周面に当接させることによってポール18の任意の高さに固定される。
【0053】
そして、本実施形態の垂直スライダ17eは、ポール18の任意の高さに固定された状態においても当該ポール18の軸心に対して軸回転可能であり、初期位置として前方に張り出している肘パッド17aをポール18の軸心を中心として左右に旋回させることができる。
【0054】
水平スライダガイド17cの後端はピンを介して垂直スライダ17eの周壁外周面に対して揺動自在に取り付けられる。
【0055】
反力装置17dは、一端が水平スライダガイド17cの下端面にピンを介して揺動自在に取り付けられると共に、他端が垂直スライダ17eの周壁外周面に対して揺動自在に取り付けられる。
【0056】
以上の構成によって肘パッド17aは、例として図3において一点鎖線で示すように、ポール18と垂直スライダ17eとによって上下方向に移動可能であると共に任意の高さ位置に固定可能であり且つポール18の軸心を中心として左右に旋回可能であり、水平スライダガイド17cと水平スライダ17bとによって前後方向にスライド可能であり、さらに、水平スライダガイド17cと垂直スライダ17eとの取付構造によって水平スライダガイド17cの後端を支点として上下に揺動自在であり、建設機械操作者の肘の動きに追従して動いて当該操作者の肘を安定的に支えることができる。また、水平スライダガイド17cの後端を支点とする上下の揺動に対しては反力装置17dの反力によって急激な揺動が回避される。なお、建設機械操作者の腕を固定するベルト(図示していない)を肘パッド17aに取り付けて当該肘パッド17aに腕を固定するようにした場合には、水平状態から前端側を持ち上げた状態で肘パッド17aに腕を支持させることもできる。
【0057】
以上の構成を有する本発明の建設機械用シート1によれば、建設機械の操作においては一般的に作業状況に合わせて操作者の作業姿勢が常に変化するところ、建設機械操作者の作業姿勢の変化に追従させて背凭れ21を傾動させることができると共に背凭れ21の傾動に連動して座20を傾動させることができるので、操作者の作業姿勢が変化した場合にも操作者の姿勢に密着させてシートポジションを変えて操作者の身体を安定的に支えることができ、操作者の身体的な負担・疲労の軽減を図ることが可能になる。また、本発明の建設機械用シート1によれば、作業姿勢の変化に追従して座20及び背凭れ21が動作するので、作業状況に合わせて作業姿勢を変えるたびに背凭れ21の角度などのシートポジションを調整する必要がなく、作業効率の向上を図ることが可能になる。
【0058】
本発明の建設機械用シート1によれば、さらに、建設機械の操作においては一般的に手元のレバーを前後左右に倒すことで操作を行う場合が多いところ、操作者の肘の動きに追従させて肘受けパッド17aを動かすことができるので、操作者の肘が動いた場合にも当該操作者の肘を安定的に支えることができ、操作者の身体的な負担・疲労の更なる軽減を図ることが可能になる。
【0059】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態では、角度調整反力調整機構8を備えるようにしているが、当該機構は本発明の建設機械用シートにとって必須のものではなく、当該機構を有しない構成にしても良い。
【0060】
また、本実施形態では、前部反力調整機構9を備えるようにしているが、当該機構は本発明の建設機械用シートにとって必須のものではなく、当該機構を有しない構成にしても良い。
【0061】
また、本実施形態では、肘受け17及びポール18を備えるようにしているが、これらは本発明の建設機械用シートにとって必須のものではなく、肘受け17及びポール18を有しない構成にしても良い。
【0062】
なお、上述の説明においては本発明が適用され得るものとしてクレーン等の建設機械を挙げているが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではなく、他にも例えば油圧ショベルやブルドーザやフォークリフト等のように特に作業中の操作者の姿勢・目線が上から下へ,下から上へ連続的に変化する建設機械や産業用車両全般に対して適用が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 建設機械用シート
2 メインフレーム
3 背凭れフレーム
4 座板支持部材
5 前リンク部材
6 後リンク部材
7 傾動動力源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
別体として構成された座と背凭れとを有して建設機械に取り付けられるシートであって、メインフレームと、前記座を支持する座板支持部材と、該座板支持部材を支持するために前方に張り出した座板支持部と前記背凭れを支持するために上方に延出する背凭れ支持部とからなり前記座板支持部が前記メインフレームに揺動自在に連結される背凭れフレームと、上部が前記座板支持部材の前部に揺動自在に連結されると共に下部が前記座板支持部の前部に揺動自在に連結される前リンク部材と、上部が前記座板支持部材の後部に揺動自在に連結されると共に下部が前記座板支持部の後部に揺動自在に連結される後リンク部材と、前記メインフレームと前記背凭れフレームとの間に介在して前記メインフレームに対して前記座板支持部の後部を上方に押し上げ且つ前記背凭れ支持部を前方に押し出す付勢力を発揮する傾動動力源とを有することを特徴とする建設機械用シート。
【請求項2】
肘受け部が少なくとも上下に移動すると共に前後にスライドする肘受けを更に有することを特徴とする請求項1記載の建設機械用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−37380(P2011−37380A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186638(P2009−186638)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】