説明

建設機械

【課題】 ドアの外観美を高める。
【解決手段】 右側面ドア18を構成するドア本体19と補強材24との間に、ドア本体19の板厚以下の板厚を有する中間板材22を設け、ドア本体19と中間板材22との間をスポット溶接によって接合し、中間板材22と補強材24との間をすみ肉溶接によって接合することにより、ドア本体19の内側面19Aに、中間板材22を介して補強材24を接合する。これにより、ドア本体19と中間板材22とを溶接によって接合するときに、ドア本体19よりも強度が低い中間板材22が優先的に歪むことにより、外観品質に関わるドア本体19に歪が発生するのを抑え、ドア本体19の外観美を良好に保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、油圧クレーン等の建設機械に関し、特に、建屋カバーの一部を構成する開閉可能なドアを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより構成され、この作業装置を俯仰動させることにより土砂の掘削作業等を行うものである。
【0003】
また、上部旋回体は、ベースとなる旋回フレームと、該旋回フレームの左前部に配設され運転室を画成するキャブと、旋回フレームの後端部に配設され作業装置との重量バランスをとるカウンタウエイトと、該カウンタウエイトの前側に配設されエンジン、油圧ポンプ等の搭載機器を収容する建屋カバーとにより大略構成されている。
【0004】
ここで、建屋カバーは、例えば上面カバー、エンジンカバー、左,右の側面カバー等の複数枚のカバーにより構成され、側面カバーは、通常、搭載機器に対する点検作業を行うために開閉可能なドアによって構成されている。そして、建屋カバーを構成するドアは、通常、薄肉な鋼板材を用いて形成されたドア本体と、このドア本体の内側面に接合され該ドア本体の強度を高める補強材とにより構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2007−170130号公報
【0006】
ところで、近年では、建設機械の外観美(デザイン)に対する要求が高まっており、建屋カバーを構成するドアについても、3次元曲面形状を有するドアが主流になりつつある。このため、ドアを構成するドア本体と補強材とは、それぞれプレス型を用いてプレス成形された後、スポット溶接によって互いに接合される構成となっている。
【0007】
しかし、補強材を成形するためにプレス型を用いた場合には、このプレス型に多大な費用が必要となり、ドアの製造コストが増大してしまう。これに対し、従来技術では、ドアの製造コストを低減するため、ドア本体のみをプレス型を用いてプレス成形し、補強材に対してはプレス型を用いない曲げ加工によって成形した状態で、これらドア本体と補強材とをすみ肉溶接によって接合する方法が採用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述の如くプレス型を用いて3次元曲面形状にプレス成形したドア本体と、曲げ加工によって成形した補強材とを当接させた状態では、3次元曲面と平面との相違によって両者間に僅かな隙間が生じてしまう。このため、ドア本体の内側面に補強材を溶接した場合には、両者間に形成された僅かな隙間の分だけ、剛性(強度)が高い補強材に対して剛性が低いドア本体が引張られるようになる。この結果、油圧ショベルの外観を決めるドア本体が歪みを生じてしまい、油圧ショベル全体の外観美が低下してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、ドアの外観美を高めることができ、かつ、ドアの製造コストを低減することができるようにした建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため本発明は、自走可能な車体と、該車体に搭載されるエンジンを含む搭載機器と、該搭載機器を収容し、内部を点検するときに開,閉されるドアを有する建屋カバーとからなり、前記建屋カバーのドアは、板材を用いて形成されたドア本体と、該ドア本体の内側面に接合され該ドア本体の強度を高める補強材とを備えてなる建設機械に適用される。
【0011】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記ドア本体と前記補強材との間には、前記ドア本体の板厚以下の板厚を有する中間板材を設けたことにある。
【0012】
請求項2の発明は、前記補強材は前記ドア本体の前,後方向の一側に片寄せて配置し、該補強材には前記車体側の部材に取付けられるヒンジを設ける構成としたことにある。
【0013】
請求項3の発明は、前記ドア本体はプレス型を用いて3次元曲面形状に成形し、前記補強材は断面コ字型ないしU字型の枠状に成形し、前記中間板材は平板状に成形する構成としたことにある。
【0014】
請求項4の発明は、前記ドア本体と前記中間板材とはスポット溶接によって接合し、前記中間板材と前記補強材とはすみ肉溶接によって接合する構成としたことにある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、ドア本体と補強材とを、両者の間に設けられた中間板材を介して接合することができる。この場合、中間板材にはドア本体の板厚以下の薄板が用いられ、中間板材の面積はドア本体の面積に比較して小さいので、中間板材はドア本体に比較して剛性(強度)が低くなる。このため、ドア本体と中間板材とを溶接等によって接合した場合には、ドア本体の剛性(強度)が中間板材の剛性よりも大きいため、剛性(強度)が低い中間板材に接合時の歪みが発生するようになる。このように、ドア本体と補強材とを接合するときの歪みを、両者の間に設けた中間板材に発生させることにより、ドア本体に歪みが発生するのを抑えることができる。
【0016】
この結果、プレス型を用いずに安価に成形した補強材を用いることにより、補強材とドア本体との間に微小な隙間が形成される場合でも、これら補強材とドア本体との間に中間板材を設けることにより、ドア本体に歪みが発生するのを確実に抑えることができる。従って、ドアを含む建屋カバーの外観美を高めることができ、かつ、安価な補強材を用いることによりドアの製造コストを低減することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、ドア本体の前,後方向の一側に片寄せて配置した補強材にヒンジを設け、当該ヒンジを車体側の部材に取付けることにより、このヒンジを中心としてドア本体を開,閉することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、ドア本体をプレス型を用いて3次元曲面形状に成形することにより、ドア本体の外観美を高めることができる。また、補強材を断面コ字型ないしU字型の枠状に成形することにより、補強材自体の強度を高めることができるので、中間板材を介して補強材が接合されたドア本体の強度を高めることができる。さらに、補強材を断面コ字型ないしU字型の枠状に成形し、中間板材を平板状に成形することにより、これら補強材および中間板材を成形するときに高価なプレス型を用いる必要がなく、ドア全体の製造コストを低減することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、中間板材と補強材とをすみ肉溶接によって接合することにより、中間板材と補強材とを強固に接合することができ、ドア本体と中間板材とをスポット溶接によって接合することにより、ドア本体に歪みが生じるのを抑えることができ、良好な外観美を保ことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る建設機械の実施の形態を、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0021】
図中、1は建設機械の代表例としての油圧ショベルを示し、この油圧ショベル1の車体は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより大略構成されている。そして、上部旋回体3の前部側には作業装置4が俯仰動可能に設けられ、この作業装置4によって土砂の掘削作業等を行うようになっている。
【0022】
5は上部旋回体3のベースとなる旋回フレームで、該旋回フレーム5は、図4に示すように、前,後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる底板5Aと、該底板5A上に立設され、左,右方向で所定の間隔をもって対面しつつ前,後方向に延びた左,右の縦板5B,5Cと、左縦板5Bの左側に配置され前,後方向に延びた左サイドフレーム5Dと、右縦板5Cの右側に配置され前,後方向に延びた右サイドフレーム5Eと、底板5Aと左,右のサイドフレーム5D,5Eとの間を連結する複数の張出しビーム5Fとにより大略構成され、強固な支持構造体をなしている。
【0023】
そして、底板5Aから山形状に隆起した左,右の縦板5B,5Cの前部側には、作業装置4の基端側が回動可能に支持され、左,右の縦板5B,5Cの後部側には、後述のエンジン7、カウンタウエイト10等が取付けられる構成となっている。また、左縦板5Bと左サイドフレーム5Dとの間には、後述のキャブ6を支持するキャブ支持枠5Gが設けられ、該キャブ支持枠5Gの後側には、後述の熱交換器8を支持する熱交換器支持台5Hが設けられている。
【0024】
6は旋回フレーム5の前部左側に配設されたキャブで、該キャブ6は、旋回フレーム5のキャブ支持枠5G上に支持され、運転室を画成するものである。そして、キャブ6内には、オペレータが着席する運転席、走行用の操作レバー、作業用の操作レバー等(いずれも図示せず)が配設されている。
【0025】
7は旋回フレーム5の後部側に搭載されたエンジンで、該エンジン7は、左,右方向に延びる横置き状態に配置されている。また、エンジン7の左側には、エンジン冷却水、作動油等を冷却する熱交換器8が配設され、エンジン7の右側には、該エンジン7によって駆動されることにより、油圧ショベル1に設けられた各種油圧アクチュエータに作動用の圧油を吐出する油圧ポンプ9が取付けられている。そして、これらエンジン7、熱交換器8、油圧ポンプ9等は、旋回フレーム5に搭載される搭載機器を構成し、後述の建屋カバー14内に収容される構成となっている。
【0026】
10はエンジン7の後側に位置して旋回フレーム5の後端部に設けられたカウンタウエイトで、該カウンタウエイト10は、作業装置4との重量バランスをとるものである。ここで、カウンタウエイト10は、エンジン7の後側に配置されたウエイト本体部10Aと、ウエイト本体部10Aの左下側から旋回フレーム5の左サイドフレーム5Dに向けて前方に延びる左前ウエイト部10Bと、ウエイト本体部10Aの右下側から旋回フレーム5の右サイドフレーム5Eに向けて前方に延びる右前ウエイト部10Cとにより、全体として円弧状に形成されている。そして、ウエイト本体部10Aは旋回フレーム5から上方に立上り、エンジン7等の一部を後方から覆う構成となっている。
【0027】
11は油圧ポンプ9の前側に位置して旋回フレーム5の右端部に配設された燃料タンクで、該燃料タンク11は、エンジン7に供給される燃料を貯溜するものである。また、燃料タンク11は、後述の右側面ドア18が付けられる車体側の部材を構成するものである。ここで、図5に示すように、燃料タンク11の後面11Aには、上,下方向に延びるドア支持ブラケット12が固着して設けられ、このドア支持ブラケット12には、後述の右側面ドア18が開閉可能に取付けられる構成となっている。
【0028】
13は燃料タンク11の左側に隣接して配設された作動油タンクで、該作動油タンク13は、油圧ショベル1に設けられた油圧アクチュエータに供給される作動油を貯溜するものである。
【0029】
14はキャブ6および燃料タンク11とカウンタウエイト10との間に位置して旋回フレーム5上に配設された建屋カバーで、該建屋カバー14は、エンジン7、熱交換器8、油圧ポンプ9等の搭載機器を収容するものである。ここで、建屋カバー14は、図1ないし図3に示すように、後述のエンジンカバー15、左上面カバー16、右上面カバー17、右側面ドア18、左側面ドア27等により構成されている。
【0030】
15はエンジンカバーで、該エンジンカバー15は、エンジン7、熱交換器8、油圧ポンプ9等を上方および後方から開閉可能に覆うものである。ここで、エンジンカバー15は、エンジン7等の上方を覆った状態で左,右方向に延びる上面板15Aと、該上面板15Aの後端側から下向きに折曲げられ、カウンタウエイト10後面に沿って円弧状に湾曲した後面板15Bとにより大略構成されている。そして、上面板15Aの前端側は、旋回フレーム5上に配設された支持ブラケットにヒンジ(いずれも図示せず)を介して上,下方向に回動可能に取付けられている。従って、エンジンカバー15は、エンジン7等に対する点検作業を行うときに、図1中に実線で示す閉位置と二点鎖線で示す開位置との間で開閉する構成となっている。
【0031】
16はエンジンカバー15の左側に配設された左上面カバーで、該左上面カバー16は、ほぼ三角形の平板状に形成されている。そして、左上面カバー16は、エンジンカバー15を構成する上面板15Aの左側に隣接して固定され、エンジンカバー15と一緒に熱交換器8等を上方から覆うものである。
【0032】
17はエンジンカバー15の右側に配設された右上面カバーで、該右上面カバー17は、ほぼ三角形の平板状に形成されている。そして、右上面カバー17は、エンジンカバー15を構成する上面板15Aの右側に隣接して固定され、エンジンカバー15と一緒に油圧ポンプ9等を上方から覆うものである。
【0033】
18は右上面カバー17の下側に位置してカウンタウエイト10と燃料タンク11との間に配設された右側面ドアで、該右側面ドア18は、油圧ポンプ9等を右側方から開閉可能に覆うものである。ここで、図6ないし図9に示すように、右側面ドア18は、後述のドア本体19と、中間板材22と、補強材24とにより大略構成され、図3中の実線で示す閉位置と二点鎖線で示す開位置との間で開,閉するものである。
【0034】
19は右側面ドア18の外殻をなすドア本体で、該ドア本体19は、例えば薄肉な鋼板材にプレス型を用いてプレス加工を施すことにより、前,後方向に円弧状に湾曲すると共に上,下方向に緩やかに湾曲した3次元曲面形状に成形されている。これにより、右側面ドア18が、カウンタウエイト10および燃料タンク11と滑らかに連続し、油圧ショベル1全体の外観美を高めることができる構成となっている。
【0035】
ここで、ドア本体19の内側面19Aには、後述の中間板材22を介して補強材24が接合されている。また、ドア本体19の上,下方向の両端部と前,後方向の両端部とは、それぞれ内側面19A側に折返された折返し片19Bとなっている。そして、これらの各折返し片19Bと補強材24とにより、ドア本体19の剛性(強度)を保つことができる構成となっている。また、ドア本体19の後部側には、右側面ドア18を閉位置にロックするドアロック装置20が取付けられている。さらに、ドア本体19の下端側の折返し片19Bには、略コ字状に折曲げられた棒材からなるドア保持ステー21が取付けられ、該ドア保持ステー21によって右側面ドア18を開位置に保持する構成となっている。
【0036】
22はドア本体19と後述の補強材24との間に設けられた中間板材で、該中間板材22は、ドア本体19の板厚以下の板厚を有する薄肉な鋼板材を用いて上,下方向に延びる帯状の平板として成形され、ドア本体19の上,下方向の湾曲に沿って緩やかに湾曲している。また、中間板材22は、プレス型を用いることなく、例えばローラ装置を用いることにより、上,下方向(長さ方向)に緩やかに湾曲するように成形されている。
【0037】
この場合、図9に示すように、ドア本体19の板厚をAとし、中間板材22の板厚をBとすると、中間板材22の板厚Bは、ドア本体19の板厚A以下の値で、例えば下記数1の範囲に設定されている。
【0038】
【数1】

【0039】
さらに、中間板材22の板厚Bは、好ましくは下記数2の範囲に設定されている。
【0040】
【数2】

【0041】
そして、図7ないし図9に示すように、中間板材22は、ドア本体19の内側面19Aに上,下方向に延びた状態で当接し、例えばスポット溶接によってドア本体19に接合され、ドア本体19と中間板材22との間には、長さ方向に適当な間隔をもって複数のスポット溶接部23が形成されている(図8,図9参照)。この場合、中間板材22の板厚Bは、ドア本体19の板厚A以下に設定され、中間板材22の面積はドア本体19の面積よりも小さいため、中間板材22の剛性(強度)はドア本体19の剛性(強度)よりも低くなっている。このため、仮にドア本体19の内側面19Aと中間板材22との間に僅かな隙間が生じた状態で両者をスポット溶接によって接合したとしても、剛性の低い中間板材22のみに歪みが生じ、剛性が高いドア本体19側に中間板材22が引っ張られた状態で両者が接合されるようになるので、ドア本体19の外観美を良好に保つことができる構成となっている。
【0042】
このように、ドア本体19が2次元曲面形状、あるいは3次元曲面形状を有している場合でも、強度が低い中間板材22は、強度が高いドア本体19の形状に対応して変形しつつ当該ドア本体19に接合される。従って、3次元曲面形状を有するドア本体19に対し、平板状の中間板材22を隙間なく接合することができるので、中間板材22に対し、ドア本体19の形状に応じた曲げ加工等を施す必要がなく、この分、中間板材22の製造コストを低減することができる構成となっている。
【0043】
24はドア本体19の前,後方向の一側(前部側)に片寄せて配設された補強材で、該補強材24は、中間板材22を介してドア本体19の内側面19Aに接合され、ドア本体19の強度を高めるものである。ここで、補強材24は、ドア本体19の板厚Aよりも大きな板厚を有する鋼板材に対し、プレス型を用いることなく、曲げ加工装置(ベンダー)等を用いて折曲げ加工を施すことにより、断面コ字型ないしU字型の枠状に成形されている。また、補強材24の長さ寸法と幅寸法とは、それぞれ中間板材22よりも一回り小さく設定されている。
【0044】
そして、図8および図9に示すように、補強材24は、中間板材22との間に閉空間を形成した状態で、例えばすみ肉溶接によって中間板材22に接合され、補強材24と中間板材22との間には、長さ方向に一定の間隔をもって複数のすみ肉溶接部25が形成されている。
【0045】
このようにして、右側面ドア18を構成するドア本体19と、該ドア本体19の強度を高める補強材24との間に、ドア本体19の板厚A以下の板厚Bを有する中間板材22を設け、ドア本体19と中間板材22との間をスポット溶接によって接合し、中間板材22と補強材24との間をすみ肉溶接によって接合することにより、ドア本体19の内側面19Aに、中間板材22を介して補強材24を接合する構成としている。
【0046】
これにより、ドア本体19と中間板材22とを溶接によって接合するときに、ドア本体19よりも剛性の低い中間板材22が優先的に歪むことにより、例えばドア本体19の内側面19Aに補強材24を直接的に溶接する場合に比較して、ドア本体19の外観美を良好に保つことができる構成となっている。
【0047】
26,26は補強材24に取付けられた上,下のヒンジで、これら各ヒンジ26は、燃料タンク11のドア支持ブラケット12と補強材24との間に設けられ、右側面ドア18を燃料タンク11に対して開閉可能に支持するものである。従って、油圧ポンプ9等に対する点検作業を行うときには、右側面ドア18は、各ヒンジ26を中心として、図3中の実線で示す閉位置と二点鎖線で示す開位置との間で開,閉する構成となっている。
【0048】
27は左上面カバー16の下側に位置してカウンタウエイト10とキャブ6との間に配設された左側面ドアで、該左側面ドア27は、熱交換器8等を左側方から開閉可能に覆うものである。
【0049】
そして、左側面ドア27も、右側面ドア18と同様に、プレス型を用いてプレス成形されたドア本体28と、該ドア本体28の内側面に接合された中間板材および補強材(いずれも図示せず)とによって構成することにより、ドア本体28の歪みを抑えて良好な外観美を保つことができるものである。
【0050】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、この油圧ショベル1は、下部走行体2によって作業現場を自走し、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4を用いて土砂の掘削作業等を行う。
【0051】
そして、油圧ショベル1の作業前には、エンジンカバー15、右側面ドア18等を開位置に移動させることにより、建屋カバー14内に収容されたエンジン7、熱交換器8、油圧ポンプ9等の搭載機器に対する点検、修理作業等を行う。そして、点検、修理作業等が終了した後には、エンジンカバー15、右側面ドア18等を開位置から閉位置に移動させることにより、エンジン7等の搭載機器を覆う。
【0052】
この場合、本実施の形態では、右側面ドア18を構成するドア本体19と、該ドア本体19の強度を高める補強材24との間に、ドア本体19の板厚A以下の板厚Bを有する中間板材22を設け、ドア本体19と中間板材22との間をスポット溶接によって接合し、中間板材22と補強材24との間をすみ肉溶接によって接合することにより、ドア本体19の内側面19Aに、中間板材22を介して補強材24を接合する構成としている。
【0053】
この場合、中間板材22の板厚Bは、ドア本体19の板厚A以下に設定され、中間板材22の面積はドア本体19の面積よりも小さいため、中間板材22の強度はドア本体19の強度よりも低くなっている。このため、仮にドア本体19の内側面19Aと中間板材22との間に僅かな隙間が生じた状態で両者をスポット溶接によって接合したとしても、強度が低い中間板材22のみに歪みが生じ、強度が高いドア本体19側に中間板材22が引っ張られた状態で両者が隙間なく接合されるので、外観品質に関わるドア本体19に歪が発生するのを抑え、ドア本体19の外観美を良好に保つことができる。
【0054】
そして、ドア本体19に隙間なく接合された中間板材22に対し、補強材24をすみ肉溶接によって強固に接合することにより、例えばドア本体19の内側面19Aに補強材24を直接的に溶接する場合に比較して、ドア本体19の外観美を良好に保つことができ、油圧ショベル1全体の外観美を高めることができる。
【0055】
また、右側面ドア18を構成するドア本体19、中間板材22、補強材24のうち、ドア本体19のみをプレス型を用いて3次元曲面形状に成形し、中間板材22はプレス型を用いることなく平板状に成形し、補強材24はプレス型を用いることなく断面コ字型ないしU字型の枠状に成形している。これにより、中間板材22および補強材24を成形するときに高価なプレス型を用いる必要がなく、ドア本体19の外観美を維持しつつ右側面ドア18の製造コストを低減することができる。
【0056】
しかも、補強材24を断面コ字型ないしU字型の枠状に成形することにより、補強材24自体の強度を高めることができるので、中間板材22を介して補強材24が接合されたドア本体19の強度を高めることができ、右側面ドア18の信頼性を高めることができる。
【0057】
なお、上述した実施の形態では、ドア本体19の前,後方向の一側のみに中間板材22を介して補強材24を設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば前,後方向の両側に、それぞれ中間板材22を介して補強材24を設ける構成としてもよい。
【0058】
また、上述した実施の形態では、建設機械として油圧ショベル1を例に挙げたが、本発明はこれに限るものではなく、例えば油圧クレーン、ホイールローダ等の他の建設機械の建屋カバーを構成するドアに広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態による油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】油圧ショベルの背面図である。
【図3】油圧ショベルを上方からみた平面図である。
【図4】旋回フレーム、燃料タンク、右側面ドア等を示す斜視図である。
【図5】図4中の燃料タンク、右側面ドアを拡大して示す要分拡大の斜視図である。
【図6】右側面ドアを単体で示す斜視図である。
【図7】ドア本体、中間板材、補強材を分解した状態で示す分解斜視図である。
【図8】ドア本体に中間板材を介して補強材を接合した状態を示す斜視図である。
【図9】ドア本体、中間板材、補強材を図8中の矢示IX−IX方向からみた拡大断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
7 エンジン(搭載機器)
8 熱交換器(搭載機器)
9 油圧ポンプ(搭載機器)
11 燃料タンク(車体側の部材)
14 建屋カバー
18 右側面ドア(ドア)
19,28 ドア本体
19A 内側面
22 中間板材
23 スポット溶接部
24 補強材
25 すみ肉溶接部
26 ヒンジ
27 左側面ドア(ドア)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、該車体に搭載されるエンジンを含む搭載機器と、該搭載機器を収容し、内部を点検するときに開,閉されるドアを有する建屋カバーとからなり、前記建屋カバーのドアは、板材を用いて形成されたドア本体と、該ドア本体の内側面に接合され該ドア本体の強度を高める補強材とを備えてなる建設機械において、
前記ドア本体と前記補強材との間には、前記ドア本体の板厚以下の板厚を有する中間板材を設ける構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記補強材は前記ドア本体の前,後方向の一側に片寄せて配置し、該補強材には前記車体側の部材に取付けられるヒンジを設ける構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記ドア本体はプレス型を用いて3次元曲面形状に成形し、前記補強材は断面コ字型ないしU字型の枠状に成形し、前記中間板材は平板状に成形する構成としてなる請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記ドア本体と前記中間板材とはスポット溶接によって接合し、前記中間板材と前記補強材とはすみ肉溶接によって接合する構成としてなる請求項1,2または3に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−31552(P2010−31552A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194994(P2008−194994)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】