説明

建設機械

【課題】 ドアカバー保持機構を取付けるときの作業性を高め、かつ、ドアカバー保持機構の寿命を延ばす。
【解決手段】 ドアカバー保持機構24を、前サポート部材14に突設され突出端側が先細りとなったストッパ25と、左後ドアカバー22に設けられたストッパ挿入孔28と、ストッパ25の突起部25Fに弾性的に係合する係合部29Dを有する掛止め部材29とにより構成する。これにより、ストッパ25の突出端側をストッパ挿入孔28内に確実に挿入することができ、ストッパ25とストッパ挿入孔28とを位置合わせする作業を不要とし、ドアカバー保持機構24を取付けるときの作業性を高めることができる。また、掛止め部材29の係合部29Dがストッパ25の突起部25Fに弾性的に係合することにより、ストッパ25等が摩耗するのを抑えることができ、ドアカバー保持機構24の寿命を延ばすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、ホイールローダ等の建設機械に関し、特に、搭載機器用の建屋カバーを構成するドアカバーを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前部側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより大略構成されている。
【0003】
ここで、上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、該旋回フレームの前部左側に設けられ運転室を画成するキャブと、旋回フレームの後端側に設けられ作業装置との重量バランスをとるカウンタウエイトと、カウンタウエイトの前側に位置して旋回フレーム上に設けられた建屋カバーとにより大略構成されている。そして、建屋カバーは、旋回フレームに搭載されたエンジン、熱交換装置等の搭載機器を覆うものである。
【0004】
この場合、旋回フレーム上に設けられる建屋カバーは、通常、旋回フレームに固定して設けられたサポート部材と、搭載機器の周囲に配置されサポート部材にヒンジを介して開,閉可能に取付けられるドアカバーとにより大略構成されている。
【0005】
そして、ドアカバーを開扉位置とした状態で、建屋カバー内に収容されたエンジン等の搭載機器に対する保守、点検等のメンテナンス作業を行い、メンテナンス作業が終了した後には、ドアカバーを閉扉位置に保持する構成となっている。このため、建設機械には、ドアカバーを閉扉位置に保持するためのドアカバー保持機構が設けられている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−100351号公報
【特許文献2】特開2001−262618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1の従来技術は、建屋カバーと、該建屋カバーに対して開,閉可能に配置されたエンジンカバーとの間に、エンジンカバーを閉扉位置に保持するドアカバー保持機構を設けたもので、「く」字型に屈曲した建屋カバー側のストッパ受けと、「し」字型に屈曲したエンジンカバー側のストッパ部材とにより構成されている。そして、ストッパ部材の屈曲部とストッパ受けの屈曲部とが弾性変形しつつ係合し、ストッパ部材がストッパ受けに掛止めされることにより、エンジンカバーを閉扉位置に保持することができるものである。
【0008】
しかし、特許文献1の従来技術では、ストッパ部材の屈曲部とストッパ受けの屈曲部とが1個所で係合する構成であるため、建屋カバーに対するエンジンカバーの取付位置に誤差が生じた場合には、ストッパ部材の屈曲部とストッパ受けの屈曲部とを、互いに適度な弾性をもって係合するように位置調整する必要がある。この結果、建屋カバーに対するストッパ部材の取付作業と、エンジンカバーに対するストッパ部材の取付作業に多大な時間が費やされることになり、ドアカバー保持機構の取付時の作業性が低下してしまうという問題がある。
【0009】
一方、特許文献2の従来技術は、旋回台(旋回フレーム)に設けられた仕切板と、該仕切板に対して開,閉可能に設けられたドアとの間に、閉扉したドアの振動を抑えるための振止め装置を設けたもので、仕切板に固定された台形状の係止部材と、ドアに形成された矩形状の係止孔とにより構成されている。そして、ドアを閉扉位置に移動させて係止孔を係止部材に嵌入することにより、建設機械の作業時に閉扉したドアが振動するのを防止することができるものである。また、ドアを閉扉位置に移動させたときに係止孔が係止部材に嵌入することにより、ドアを閉扉位置に位置決めし、他のロック機構を用いてドアを確実に閉扉位置にロックすることができるものである。
【0010】
しかし、特許文献2の従来技術では、仕切板に設けた係止部材が台形状をなしているため、ドアを閉扉位置に移動させて係止孔を係止部材に嵌入させたとしても、係止孔が係止部材から離脱し易い。このため、他のロック機構を用いてドアをロックするまでの間、ドアを閉扉位置に保持しておくことができないという問題がある。また、係止部材が係止孔内に嵌入するときには、台形状をなす係止部材の外周面が係止孔の周縁部に摺動するため、係止部材が早期に摩耗してしまうという問題がある。
【0011】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、ドアカバー保持機構を取付けるときの作業性を高めることができ、かつ、ドアカバー保持機構の寿命を延ばすことができるようにした建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するため本発明は、支持構造体をなすフレームと、該フレームに搭載されるエンジンを含む搭載機器と、該搭載機器を覆って前記フレームに設けられた建屋カバーとを備え、前記建屋カバーは、前記フレーム上に互いに離間して立設された第1,第2のサポート部材と、該第1,第2のサポート部材間に配置され基端側がヒンジ部材を介して前記第1のサポート部材に回動可能に支持され先端側が前記第2のサポート部材に対して重り合う状態で開,閉可能となったドアカバーと、前記ドアカバーと前記第2のサポート部材との間に設けられ前記ドアカバーを閉扉位置に保持するドアカバー保持機構とにより構成してなる建設機械に適用される。
【0013】
そして、請求項1の発明の特徴は、前記ドアカバー保持機構は、前記ドアカバーと前記第2のサポート部材のうちのいずれか一方の部材に他方の部材側に突出して設けられ、突出端側が先細りになると共に外側面に突起部を有するストッパと、前記ドアカバーと前記第2のサポート部材のうちの他方の部材に設けられ、前記ドアカバーが閉扉位置となったときに前記ストッパが挿入されるストッパ挿入孔と、前記ストッパ挿入孔の位置で前記他方の部材に設けられ、前記ストッパの突起部に弾性的に係合することにより前記ストッパを前記ストッパ挿入孔内に掛止めする掛止め部材とにより構成したことにある。
【0014】
請求項2の発明は、前記ストッパの突起部は、当該ストッパの挿入方向と直交する方向に突出して設けられ、前記掛止め部材は、前記ストッパ挿入孔を挟んで前記他方の部材に取付けられた一対の取付板部と、該一対の取付板部間に配置され前記ストッパ挿入孔からΩ状に突出した湾曲板部とからなる板体により構成し、前記掛止め部材の湾曲板部は、前記ストッパを前記ストッパ挿入孔に挿入した状態で前記ストッパの突起部を収容する収容部と、該収容部に収容された前記ストッパの突起部に弾性的に係合してこれを掛止めする係合部とを備える構成としたことにある。
【0015】
請求項3の発明は、前記ストッパの挿入方向と直交する方向を幅方向としたときに、前記ストッパの突起部の幅方向寸法をAとし、前記掛止め部材の係合部の幅方向寸法をBとすると、前記係合部の幅方向寸法Bは前記突起部の幅方向寸法Aよりも小さく設定し、前記係合部は、前記ストッパを前記ストッパ挿入孔に挿入するときに前記突起部によって幅方向に広がるように弾性変形する構成としたことにある。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、第1のサポート部材にヒンジ部材を介して取付けられたドアカバーを開扉位置から閉扉位置に移動させると、ドアカバーと第2のサポート部材のうちの一方の部材に設けられたストッパの突出端側が、ドアカバーと第2のサポート部材のうちの他方の部材に設けられたストッパ挿入孔に挿入される。このとき、前記他方の部材に設けられた掛止め部材が、ストッパの突起部に弾性をもって係合することにより、該ストッパをストッパ挿入孔内に掛止めすることができ、ドアカバーを確実に閉扉位置に保持することができる。
【0017】
この場合、ストッパの突出端側は先細りとなっているので、ストッパをストッパ挿入孔内に確実に挿入することができる。従って、ストッパとストッパ挿入孔とを予め正確に位置合わせする必要がなく、ドアカバーと第2のサポート部材のうちの一方の部材にストッパを取付ける作業等の作業性を高めることができる。
【0018】
また、前記他方の部材のうちストッパ挿入孔の位置に設けた掛止め部材は、ストッパの外側面に設けた突起部に弾性的に係合するので、ストッパ挿入孔の周縁部にストッパの外側面が直接的に摺接することがなく、ストッパの摩耗を確実に抑えることができる。この結果、ストッパ等の寿命を延ばすことができ、ドアカバー保持機構によってドアカバーを長期に亘って確実に閉扉位置に保持することができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、ストッパをストッパ挿入孔に挿入すると、ストッパの外側面に設けた突起部は、掛止め部材の湾曲板部を構成する収容部に収容された状態で、湾曲板部の係合部に弾性的に係合する。これにより、ストッパを掛止め部材によって確実にストッパ挿入孔内で掛止めすることができ、ドアカバーを閉扉位置に安定して保持することができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、掛止め部材の係合部の幅方向寸法Bを、ストッパの突起部の幅方向寸法Aよりも小さく設定したので、ドアカバーを閉扉位置としたときに、掛止め部材の係合部をストッパの突起部に係合させることができ、ストッパを確実に掛止めしておくことができる。また、掛止め部材の係合部が、ストッパの突起部によって幅方向に広がるように弾性変形することにより、ドアカバーを開扉位置から閉扉位置に移動させるときには、ストッパの突起部を掛止め部材の収容部に容易に収容することができ、ドアカバーを閉扉位置から開扉位置に移動させるときには、ストッパの突起部を掛止め部材の収容部から容易に離脱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態による建設機械としての油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】上部旋回体を、左前ドアカバーと左後ドアカバーを開いた状態で示す斜視図である。
【図3】上部旋回体を、左前ドアカバーと左後ドアカバーを取外した状態で示す斜視図である。
【図4】熱交換装置を単体で示す斜視図である。
【図5】旋回フレーム上に後サポート部材、前サポート部材、左後ドアカバーを配置した状態を示す斜視図である。
【図6】図5中の後サポート部材、前サポート部材、左後ドアカバー、ドアカバー保持機構等を示す要部拡大図である。
【図7】図6中の左後ドアカバーを開いた状態を示す要部拡大図である。
【図8】ドアカバー保持機構のストッパ、ストッパ挿入孔、掛止め部材を示す分解斜視図である。
【図9】前サポート部材、左後ドアカバー、ストッパ、ストッパ挿入孔、掛止め部材を図6中の矢示IX−IX方向からみた断面図である。
【図10】ストッパが掛止め部材から離脱した状態を示す図9と同様な断面図である。
【図11】ストッパの突起部が掛止め部材の係合部を通過する状態を示す図9と同様な断面図である。
【図12】第1の変形例による後サポート部材、前サポート部材、左後ドアカバー、ドアカバー保持機構等を示す図7と同様な要部拡大図である。
【図13】第2の変形例による掛止め部材を示す図9と同様な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る建設機械の実施の形態を、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、図1ないし図11を参照しつつ詳細に説明する。
【0023】
図中、1は建設機械の代表例としての油圧ショベルを示している。ここで、油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前部側に俯仰動可能に設けられた作業装置4とにより大略構成され、土砂の掘削作業等に好適に用いられるものである。そして、上部旋回体3は、後述の旋回フレーム5、キャブ6、カウンタウエイト7、エンジン8、建屋カバー16等により構成されている。
【0024】
5は上部旋回体3のベースとなる旋回フレームで、該旋回フレーム5は、図5等に示すように、厚肉な鋼板を用いて形成され前,後方向に延びた底板5Aと、該底板5A上に立設され前,後方向に延びた左縦板5B、右縦板5Cと、底板5Aと左縦板5Bとに複数の張出しビーム5Dを介して接続され前,後方向に延びた左サイドフレーム5Eと、底板5Aと右縦板5Cとに複数の張出しビーム5Fを介して接続され前,後方向に延びた右サイドフレーム5Gとにより大略構成され、強固な支持構造体をなしている。
【0025】
ここで、旋回フレーム5を構成する左,右の縦板5B,5Cの前端部には、作業装置4の基端側が回動可能に取付けられ、左,右の縦板5B,5Cの後端部には、後述のカウンタウエイト7が取付けられる構成となっている。また、左,右の縦板5B,5C間の後端側にはエンジン支持ブラケット5Hが設けられ、該エンジン支持ブラケット5H上には後述のエンジン8が取付けられる構成となっている。
【0026】
6は旋回フレーム5の前部左側に配設されたキャブで、該キャブ6は、オペレータが搭乗する運転室を画成するものである。そして、キャブ6の内部には、オペレータが着席する運転席、オペレータによって操作される各種の操作レバー等(いずれも図示せず)が配設されている。
【0027】
7は旋回フレーム5の後端側に設けられたカウンタウエイトで、該カウンタウエイト7は、旋回フレーム5を構成する左,右の縦板5B,5Cの後端部に取付けられている。そして、カウンタウエイト7は、作業装置4との重量バランスをとるものである。
【0028】
8はカウンタウエイト7の前側に位置して旋回フレーム5上に搭載された搭載機器としてのエンジンで、該エンジン8は、図2および図3に示すように、旋回フレーム5のエンジン支持ブラケット5H上に左,右方向に延在する横置き状態で取付けられている。そして、エンジン8は油圧ポンプ(図示せず)を駆動するもので、エンジン8によって駆動された油圧ポンプは、油圧ショベル1に搭載された各種の油圧アクチュエータに向けて作動用の圧油を吐出する構成となっている。
【0029】
9はエンジン8の左側に位置して旋回フレーム5上に搭載された搭載機器としての熱交換装置で、該熱交換装置9は、図4に示す如く1つのユニットとして形成され、旋回フレーム5に着脱可能に取付けられている。そして、熱交換装置9は、後述の支持枠体12と、該支持枠体12に支持された各種の熱交換器、例えばエンジン冷却水を冷却するラジエータ10、作動油を冷却するオイルクーラ11等により構成されている。
【0030】
12は熱交換装置9のベースとなる支持枠体で、該支持枠体12は、カウンタウエイト7の左前側に位置して旋回フレーム5の張出しビーム5D上に取付けられ、ラジエータ10、オイルクーラ11等を一体的に支持すると共に、後述する建屋カバー16の一部を構成するものである。
【0031】
ここで、支持枠体12は、図2ないし図4に示すように、鋼板材等を用いてほぼ矩形状をなす板体として形成され、カウンタウエイト7と対面した状態で旋回フレーム5上に立設された後サポート部材13と、該後サポート部材13とほぼ同様な矩形状をなす板体として形成され、後サポート部材13から前方に離間して旋回フレーム5上に立設された前サポート部材14と、後サポート部材13と前サポート部材14の上端部間を連結して前,後方向に延びる上連結部材15とにより大略構成されている。なお、本実施の形態では、支持枠体12の後サポート部材13を第1のサポート部材として用い、前サポート部材14を第2のサポート部材として用いる構成となっている。
【0032】
また、後サポート部材13の左端側は、前,後方向に折曲げられたフランジ部13Aとなり、該フランジ部13Aには、後述する左後ドアカバー22の後端側が、ヒンジ部材23を介して回動可能に支持される構成となっている。一方、前サポート部材14の左端側も、前,後方向に折曲げられたフランジ部14Aとなり、該フランジ部14Aには後述のストッパ25が取付けられている。
【0033】
16はカウンタウエイト7の前側に位置して旋回フレーム5上に設けられた建屋カバーで、該建屋カバー16は、図2および図3に示すように、旋回フレーム5上に搭載されたエンジン8、熱交換装置9等の搭載機器を覆うものである。ここで、建屋カバー16は、熱交換装置9(支持枠体12)の後サポート部材13、前サポート部材14、上面カバー16A、ボンネット16B(図1参照)、右ドアカバー16C、後述の左前ドアカバー20、左後ドアカバー22、ドアカバー保持機構24等により構成されている。
【0034】
そして、建屋カバー16の上側は上面カバー16Aとボンネット16Bとによって仕切られ、建屋カバー16の右側は右ドアカバー16Cによって仕切られ、建屋カバー16の左側は左前ドアカバー20と左後ドアカバー22とによって仕切られている。また、建屋カバー16の後側は、熱交換装置9(支持枠体12)の後サポート部材13とカウンタウエイト7の前面とによって仕切られ、建屋カバー16の前側は、作動油を貯留する作動油タンク17(図3参照)と後述の前仕切板18とによって仕切られる構成となっている。
【0035】
18キャブ6の後側に設けられた前仕切板で、該前仕切板18は、熱交換装置9の後サポート部材13、前サポート部材14等と共に建屋カバー16の一部を構成するものである。ここで、前仕切板18は、鋼板材等を用いてほぼ矩形状をなす板体として形成され、キャブ6の後面と熱交換装置9の前サポート部材14とに対面しつつ旋回フレーム5上に立設されている。また、前仕切板18の左端側は、前,後方向に折曲げられたフランジ部18Aとなり、該フランジ部18Aの上,下方向の両端側には、上,下のヒンジ部材19を介して後述の左前ドアカバー20が取付けられる構成となっている。
【0036】
20は前仕切板18に開,閉可能に取付けられた左前ドアカバーで、該左前ドアカバー20は、後述する左後ドアカバー22と共に建屋カバー16の左側面を構成するものである。ここで、左前ドアカバー20は、例えば鋼板材等を用いて全体として矩形な平板状に形成され、その基端側(前端側)が前仕切板18に上,下のヒンジ部材19を介して回動可能に支持されている。そして、左前ドアカバー20は、その後端側がヒンジ部材19を中心として回動することにより、後述のユーティリティ室21を開,閉する構成となっている。
【0037】
21は熱交換装置9の前側に位置して建屋カバー16内に形成されたユーティリティ室で、該ユーティリティ室21は、熱交換装置9の前サポート部材14と、前仕切板18と、左前ドアカバー20とによって画成されている。そして、このユーティリティ室21は、エンジン8のエアクリーナ8Aの他に、例えばグリースガン、工具類(いずれも図示せず)等を収容し、左前ドアカバー20によって開,閉されるものである。
【0038】
22は熱交換装置9の支持枠体12を構成する後サポート部材13に開,閉可能に取付けられた左後ドアカバーで、該左後ドアカバー22は、左前ドアカバー20の後側に隣接して配置され、建屋カバー16内に収容された熱交換装置9に対する保守、点検等のメンテナンス作業時に開,閉されるものである。
【0039】
ここで、左後ドアカバー22は、例えば鋼板材等を用いて全体として矩形な平板状に形成され、後サポート部材13とほぼ等しい高さ寸法をもって旋回フレーム5から上方に立上っている。そして、左後ドアカバー22の後端側(基端側)には上,下のヒンジ部材23が取付けられ、左後ドアカバー22の後端側は、これら各ヒンジ部材23を介して後サポート部材13に回動可能に支持される構成となっている。また、左後ドアカバー22の前端側(先端側)には、上,下方向に延びる板状のフランジ部22Aが設けられ、該フランジ部22Aには、後述のストッパ挿入孔28が形成されている。
【0040】
そして、左後ドアカバー22は、ヒンジ部材23を中心として回動することにより、前端側のフランジ部22Aが、前サポート部材14のフランジ部14Aと重り合う閉扉位置と、前サポート部材14のフランジ部14Aから離間する開扉位置との間で開,閉され、左後ドアカバー22を開扉位置とした状態で、建屋カバー16内に収容された熱交換装置9に対するメンテナンス作業を行う構成となっている。
【0041】
次に、24は本実施の形態に用いるドアカバー保持機構を示している。このドアカバー保持機構24は、左後ドアカバー22の前端側と前サポート部材14のフランジ部14Aとの間に設けられ、後ドアカバー22を閉扉位置に保持するものである。そして、ドアカバー保持機構24は、図6ないし図11に示すように、後述のストッパ25と、ストッパ挿入孔28と、掛止め部材29とにより大略構成されている。
【0042】
25は前サポート部材14のフランジ部14Aに設けられたストッパで、該ストッパ25は、左後ドアカバー22が閉扉位置となったときに、後述のストッパ挿入孔28に対し、図10中の矢示Fで示す方向(挿入方向)に挿入されるものである。ここで、ストッパ25は、例えばADC12等のアルミニウム合金を用いて鋳造されることにより、底面25Aと、該底面25Aに対してほぼ平行な上面25Bと、底面25Aに対してほぼ直交する2面の平行側面25Cと、底面25Aに対して傾斜した2面の傾斜側面25Dとによって囲まれた等脚台形状のブロック体として形成され、各傾斜面25Dには、後述の突起部25Fが一体形成されている。
【0043】
また、ストッパ25には、底面25Aから上面25Bを貫通する2個のボルト挿通孔25Eが穿設され、図8ないし図10に示すように、前サポート部材14のフランジ部14Aに穿設した2個のボルト挿通孔14Bと、ストッパ25のボルト挿通孔25Eとにボルト26を挿通してナット27を螺合することにより、ストッパ25は、底面25Aが前サポート部材14のフランジ部14Aに当接し、上面25Bが左後ドアカバー22に向けて突出した状態で前サポート部材14に取付けられている。この場合、ストッパ25の各ボルト挿通孔25Eは、上,下方向に延びる長溝状に形成され、前サポート部材14に対するストッパ25の取付位置を、この長溝状のボルト挿通孔25Eに沿って上,下方向に調整することができる構成となっている。
【0044】
このようにして、ストッパ25は、前サポート部材14のフランジ部14Aから左後ドアカバー22に向けて突設され、突出端となる上面25B側は、固定端となる底面25A側よりも先細りとなっている。
【0045】
25Fはストッパ25の各傾斜側面25Dにそれぞれ設けられた一対の突起部で、図8ないし図11に示すように、各突起部25Fは、後述のストッパ挿入孔28に対するストッパ25の挿入方向(図10中の矢示F方向)と直交する方向(上,下方向)に突出して設けられている。そして、各突起部25Fは、ストッパ挿入孔28にストッパ25を挿入したときに、後述する掛止め部材29の各係合部29Dに係合するものである。なお、図2〜図7中のストッパ25は、突起部25F、ボルト26等を省略して記載している。
【0046】
28は左後ドアカバー22のフランジ部22Aに設けられたストッパ挿入孔で、該ストッパ挿入孔28は、左後ドアカバー22を閉扉位置としたときに、熱交換装置9の前サポート部材14に設けたストッパ25が挿入されるものである。ここで、ストッパ挿入孔28は、左後ドアカバー22を図6に示す閉扉位置としたときに、前サポート部材14のストッパ25と対応する部位に配置され、ストッパ25の底面25Aよりも大きな面積を有する長方形の角孔として形成されている。そして、ストッパ挿入孔28内には、後述の掛止め部材29が配置される構成となっている。
【0047】
29はストッパ挿入孔28の位置で左後ドアカバー22のフランジ部22Aに設けられた掛止め部材で、該掛止め部材29は、ストッパ25に弾性的に係合することにより該ストッパ25をストッパ挿入孔28内に掛止めするものである。ここで、掛止め部材29は、例えばSS400等の圧延鋼板に折曲げ加工を施すことにより、図8ないし図10に示すように、長さ方向の両端側に位置する平板状をなす一対の取付板部29A,29Aと、これら一対の取付板部29A間に配置されほぼΩ状に屈曲した湾曲板部29Bとからなる薄肉な板体として形成されている。
【0048】
また、掛止め部材29の湾曲板部29Bは、図9に示すように、ストッパ25の外形よりも一回り大きな等脚台形状の枠状に形成され、ストッパ25の各突起部25Fを収容する広幅な収容部29Cと、この収容部29Cと一対の取付板部29Aとの間を連結し、収容部29C内に収容されたストッパ25の各突起部25Fに弾性的に係合する狭幅な係合部29D,29Dとを有している。この場合、各係合部29Dは、収容部29Cと取付板部29Aとの間を円弧状に折曲げることにより形成され、各取付板部29Aと各係合部29Dとの境界部は、ストッパ25が円滑に挿入されるためのガイドとなる円弧面部29Eとなっている。
【0049】
そして、掛止め部材29の各取付板部29Aは、左後ドアカバー22のフランジ部22Aのうちストッパ25と対面する内側面に上,下方向に延びる状態で配置され、ストッパ挿入孔28を上,下方向から挟む2箇所に溶接等の手段を用いて固着されている。これにより、取付板部29A間に位置するΩ状の湾曲板部29Bは、ストッパ挿入孔28を通じてフランジ部22Aから外側へと突出している。
【0050】
ここで、図10に示すように、ストッパ挿入孔28に対するストッパ25の挿入方向(矢示F方向)と直交する方向(上,下方向)を幅方向としたときに、ストッパ25の各突起部25Fの突出端間の幅方向寸法をAとし、掛止め部材29の各係合部29D間の幅方向寸法をBとすると、各係合部29D間の幅方向寸法Bは、各突起部25Fの突出端間の幅方向寸法Aよりも小さく設定されている(B<A)。
【0051】
これにより、左後ドアカバー22を開扉位置から閉扉位置へと移動させたときには、図11に示すように、前サポート部材14のフランジ部14Aに設けたストッパ25の各突起部25Fが、掛止め部材29の各係合部29Dに当接してこれを幅方向に広げることにより、掛止め部材29の湾曲板部29Bが弾性変形しつつストッパ25を受入れる。そして、左後ドアカバー22が閉扉位置となったときには、図9に示すように、ストッパ25の各突起部25Fは、掛止め部材29の収容部29C内に収容された状態で、掛止め部材29の各係合部29Dに弾性的に係合する。このようにして、掛止め部材29の各係合部29Dをストッパ25の各突起部25Fに係合させ、ストッパ25を掛止め部材29に掛止めすることにより、左後ドアカバー22を閉扉位置に保持しておくことができる構成となっている。
【0052】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如きドアカバー保持機構24を有するもので、この油圧ショベル1は、下部走行体2によって作業現場まで自走し、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4を用いて土砂の掘削作業等を行う。
【0053】
そして、例えば油圧ショベル1を稼働させる前に、熱交換装置9のメンテナンス作業を行う場合には、左後ドアカバー22を図2に示す開扉位置とした状態でラジエータ10、オイルクーラ11等に対する保守、点検を行った後、左後ドアカバー22を開扉位置から閉扉位置へと移動させ、ドアカバー保持機構24によって左後ドアカバー22を閉扉位置に保持する。そこで、本実施の形態によるドアカバー保持機構24が、左後ドアカバー22を閉扉位置に保持する動作について説明する。
【0054】
まず、左後ドアカバー22を開扉位置から図6に示す閉扉位置へと移動させると、図11に示すように、前サポート部材14のフランジ部14Aに設けたストッパ25の突出端側(上面25B側)が、左後ドアカバー22のフランジ部22Aに設けたストッパ挿入孔28内に挿入される。このとき、ストッパ挿入孔28内には、フランジ部22Aに固着された掛止め部材29の湾曲板部29Bが配置されているので、ストッパ25の突出端側が、湾曲板部29Bの収容部29C内に挿入される。
【0055】
この場合、ストッパ25は、突出端となる上面25B側が底面25A側よりも先細りとなっているので、ストッパ25の突出端側を、掛止め部材29(湾曲板部29B)の収容部29C内に確実に挿入することができる。
【0056】
そして、ストッパ25の各突起部25Fが、掛止め部材29の各係合部29Dに当接してこれを幅方向に広げることにより、掛止め部材29の湾曲板部29Bが弾性変形する。これにより、ストッパ25の各突起部25Fが、掛止め部材29の各係合部29Dを通過し、図10に示すように、掛止め部材29の収容部29C内にストッパ25の各突起部25Fを収容することができ、掛止め部材29の各係合部29Dをストッパ25の各突起部25Fに弾性的に係合させることができる。
【0057】
この場合、掛止め部材29の各取付板部29Aと各係合部29Dとの境界部は、滑らかな円弧面部29Eとなっているので、ストッパ25の突起部25Fが、取付板部29Aと係合部29Dとの境界部に引掛かるのを抑えることができ、ストッパ25の各突起部25Fを、円弧面部29Eに沿って円滑に係合部29Dへと導くことができる。
【0058】
また、掛止め部材29の各係合部29D間の幅方向寸法Bは、ストッパ25の各突起部25Fの突出端間の幅方向寸法Aよりも小さく設定されているので、図10に示すように、ストッパ25の各突起部25Fが、掛止め部材29の各係合部29Dを通過して収容部29C内に収容された状態においては、掛止め部材29の各係合部29Dをストッパ25の各突起部25Fに確実に係合させることができる。
【0059】
かくして、左後ドアカバー22に取付けた掛止め部材29の各係合部29Dが、前サポート部材14に取付けたストッパ25の各突起部25Fに弾性的に係合することにより、該ストッパ25を、左後ドアカバー22のストッパ挿入孔28内に掛止めすることができ、左後ドアカバー22を閉扉位置に確実に保持しておくことができる。
【0060】
この場合、前サポート部材14に突設されたストッパ25の突出端側(上面25B側)は先細りとなっているので、ストッパ25の突出端側を、左後ドアカバー22に設けたストッパ挿入孔28内に確実に挿入することができる。この結果、前サポート部材14側のストッパ25と、左後ドアカバー22側のストッパ挿入孔28とを予め正確に位置合わせする作業を不要とすることができ、前サポート部材14にストッパ25を取付ける作業、および後サポート部材13にヒンジ部材23を介して左後ドアカバー22を取付ける作業の作業性を高めることができる。
【0061】
しかも、左後ドアカバー22のうちストッパ挿入孔28の位置に掛止め部材29を取付け、この掛止め部材29の各係合部29Dがストッパ25の各突起部25Fに弾性的に係合する構成としたので、ストッパ挿入孔28の周縁部にストッパ25の外側面が直接的に摺接することがなく、ストッパ25またはストッパ挿入孔28が摩耗するのを確実に抑えることができる。この結果、ドアカバー保持機構24の寿命を延ばすことができ、ドアカバー保持機構24によって左後ドアカバー22を長期に亘って確実に閉扉位置に保持することができる。
【0062】
なお、上述した実施の形態では、前サポート部材14側にストッパ25を取付け、左後ドアカバー22側にストッパ挿入孔28と掛止め部材29とを設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図12に示す第1の変形例のように、左後ドアカバー22側にストッパ25を取付け、前サポート部材14側にストッパ挿入孔28と掛止め部材29とを設ける構成としてもよい。
【0063】
また、上述した実施の形態では、掛止め部材29の湾曲板部29Bを、ストッパ25の外形よりも一回り大きな等脚台形状の枠状に形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図13に示す第2の変形例のような掛止め部材30を用いてもよい。即ち、一対の取付板部30Aと、長方形状の枠状をなす湾曲板部30Bとからなり、湾曲板部30Bが、ストッパ25の各突起部25Fを収容する収容部30Cと、各突起部25Fに係合する係合部30Dとを有する掛止め部材30を用いてもよい。
【0064】
また、上述した実施の形態では、熱交換装置9の支持枠体12を構成する後サポート部材13を第1のサポート部材として用い、前サポート部材14を第2のサポート部材として用いた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば熱交換装置9とは別部材からなる第1,第2のサポート部材を旋回フレーム5上に立設する構成としてもよい。
【0065】
また、上述した実施の形態では、前サポート部材14と左後ドアカバー22との間にドアカバー保持機構24を設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば左前ドアカバー20と前サポート部材14との間にドアカバー保持機構を設ける構成としてもよい。
【0066】
さらに、上述した実施の形態では建設機械として油圧ショベル1を例に挙げている。しかし、本発明はこれに限らず、例えば油圧クレーン、ホイールローダ、ブルドーザ等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 油圧ショベル
5 旋回フレーム
8 エンジン(搭載機器)
9 熱交換装置(搭載機器)
12 支持枠体
13 後サポート部材(第1のサポート部材)
14 前サポート部材(第2のサポート部材)
16 建屋カバー
19,23 ヒンジ部材
20 左前ドアカバー
22 左後ドアカバー
24 ドアカバー保持機構
25 ストッパ
25F 突起部
28 ストッパ挿入孔
29,30 掛止め部材
29A,30A 取付板部
29B,30B 湾曲板部
29C,30C 収容部
29D,30D 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体をなすフレームと、該フレームに搭載されるエンジンを含む搭載機器と、該搭載機器を覆って前記フレームに設けられた建屋カバーとを備え、
前記建屋カバーは、前記フレーム上に互いに離間して立設された第1,第2のサポート部材と、該第1,第2のサポート部材間に配置され基端側がヒンジ部材を介して前記第1のサポート部材に回動可能に支持され先端側が前記第2のサポート部材に対して重り合う状態で開,閉可能となったドアカバーと、前記ドアカバーと前記第2のサポート部材との間に設けられ前記ドアカバーを閉扉位置に保持するドアカバー保持機構とにより構成してなる建設機械において、
前記ドアカバー保持機構は、
前記ドアカバーと前記第2のサポート部材のうちのいずれか一方の部材に他方の部材側に突出して設けられ、突出端側が先細りになると共に外側面に突起部を有するストッパと、
前記ドアカバーと前記第2のサポート部材のうちの他方の部材に設けられ、前記ドアカバーが閉扉位置となったときに前記ストッパが挿入されるストッパ挿入孔と、
前記ストッパ挿入孔の位置で前記他方の部材に設けられ、前記ストッパの突起部に弾性的に係合することにより前記ストッパを前記ストッパ挿入孔内に掛止めする掛止め部材とにより構成したことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記ストッパの突起部は、当該ストッパの挿入方向と直交する方向に突出して設けられ、
前記掛止め部材は、前記ストッパ挿入孔を挟んで前記他方の部材に取付けられた一対の取付板部と、該一対の取付板部間に配置され前記ストッパ挿入孔からΩ状に突出した湾曲板部とからなる板体により構成し、
前記掛止め部材の湾曲板部は、前記ストッパを前記ストッパ挿入孔に挿入した状態で前記ストッパの突起部を収容する収容部と、該収容部に収容された前記ストッパの突起部に弾性的に係合してこれを掛止めする係合部とを備える構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記ストッパの挿入方向と直交する方向を幅方向としたときに、前記ストッパの突起部の幅方向寸法をAとし、前記掛止め部材の係合部の幅方向寸法をBとすると、
前記係合部の幅方向寸法Bは前記突起部の幅方向寸法Aよりも小さく設定し、
前記係合部は、前記ストッパを前記ストッパ挿入孔に挿入するときに前記突起部によって幅方向に広がるように弾性変形する構成としてなる請求項2に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−12509(P2011−12509A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159968(P2009−159968)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】