説明

建造物の壁面等に取り付ける太陽光利用機器

【課題】建造物の壁面等に設置して、太陽光を受ける面の一定仰角も保持して太陽光利用機器の性能を落とさずに、パネルの張出面の嵩を低くし階下に陰を落とさず、かつ、パネルが風圧等を受けにくくした太陽光利用機器を提供すること。
【解決手段】建造物等の壁面の外方に突出して取り付け可能な架台2と、この架台2の外方に設けられた太陽光を受光するための天方向への一定仰角を保持した小パネル20を複数個集合させた受光パネル3とからなり、少なくとも1つの小パネル20の受光面を他の小パネル20の受光面とずらして配置した構成の建造物の壁面等に取り付ける太陽光利用機器1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ソーラーパネル等の太陽光利用機器を、各種構造物のベランダの腰壁、外壁、柵、高速道路防音壁等の壁面に取り付けることができ、ヒートアイランド現象の緩和と軽減、及び都市景観や環境の向上にも配慮することができると共に、階下に影を作らず、風に対しても耐性を有するようにして普及を促進し、地球温暖化防止策の一環として二酸化炭素の排出量を削減し、環境負荷の低減を目指す太陽光利用機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電力は現代社会においては必須のものであるが、地球温暖化の防止のための二酸化炭素排出量削減の一環として、化石燃料に基づく発電を抑制するため、化石燃料以外の原子力を利用した発電や、水力、風力等の自然エネルギーを利用した発電が推進されている。
【0003】
自然エネルギーを利用した発電のうち、太陽光をパネルに設けた太陽電池素子にて直接電力に変換するソーラーパネルが開発され、直接電力を得られる手軽さから、ビルの屋上等、又は広い土地の地面に設置されている。
【0004】
また、ソーラーパネルは電力会社の発電所での化石燃料による発電量を抑え、地球温暖化防止への参加意識を高めるため、各家庭にその家庭専用のソーラーパネルが導入されてきており、各家庭の屋根に設置され、各家庭で使用する電力の一部に使用したり、発電により余った電気は電力会社に売電する等がなされている。
【0005】
ところで、太陽光は時間、季節、天候によりその日差しの強さや照射角度は常に変化しており、所定の場所における太陽光受光量は常に変化することになり、更に、ソーラーパネルの設置場所によっては周りの建物、地形等により太陽光受光量も制限を受けることになる。
【0006】
このような受光量が変化する太陽光を、少しでも効率よく受光するためには、まず太陽光は南向きの斜め上方向から照射している時間が長いため、例えば、傾斜した民家の屋根に設置する場合は、南向きの傾斜した屋根に沿ってソーラーパネルを設置する。(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
一方、地面やビルの屋上等の水平面にソーラーパネルを設置する場合は、斜め上からの太陽光を効率よく受光するために、ソーラーパネルの受光面が斜め上向きの仰角を有するように器具を用いて設置し、更に、季節によって変化する太陽光の照射角度に合わせてソーラーパネルの受光面の仰角を変化させることより効率的に太陽光を受光するようにしたものもある(例えば、特許文献2,特許文献3参照)。
【0008】
また、1つの支柱に複数のソーラーパネルを水平状態にして多段階に取り付け、各ソーラーパネルの隙間に斜め方向から入り込む太陽光を少ない占有面積にて効率的に取り入れ、発電機能を増大させたソーラーパネルの実装方法も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
また、屋根や地面等の水平面や傾斜面に設置する以外に、ベランダ等の手すり部分や壁面等の太陽光が当たる部分に取り付ける方法も開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【0010】
更に、太陽光を直接電気に変換するソーラーパネルとは手段は異なるが、同じく太陽光を利用して水を温めて温水を作り、ガスや電気の消費を抑える目的のソーラ温水器等も屋根に設置されており、前述のソーラーパネルやこのソーラ温水器等の、いわゆる太陽光利用機器が、電力会社の発電量やガス供給量を削減させて、化石燃料を使わない地球温暖化の防止に貢献しているエコロジーな機器として普及してきている。
【特許文献1】特開2000−274037号公報(図1,図5)
【特許文献2】特開2005−64147号公報(図1,図5)
【特許文献3】登録実用新案第3060887号公報(図1)
【特許文献4】特開2005−252163号公報(図1,図2)
【特許文献5】特開2005−197489号公報(段落0005,図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、ソーラーパネルは大量に設置すればするほど、発電量が増加し、電力量を削減する効果が高く、大規模な建造物であれば屋根部分や壁面に大量に敷設することができ、例えば特許文献5のように、建物の東、南、西向きの3面に向けて複数パネルを設置すれば、個々のパネルの受光率は低くても日の出から日の入りまで全体として太陽光受光による発電を行うことができる。
【0012】
一方、家庭用ソーラーパネルは、晴れの時の太陽光により発電を行い、家庭での消費電力の一部に供し、場合によっては電力会社に売電を行うことが行われており、このような場合、ソーラーパネル個々の受光効率が低いと商品的価値が得られないので、受光効率を向上させないと個人のソーラーパネルの購買による家庭への導入が促進されない。
【0013】
ところで、マンション等の共同住宅では、ソーラパネルやソーラ温水器等を屋根に取り付けることができず、太陽光が差す場所として窓に設置したりベランダの平面に設置するか、もしくはベランダの腰壁の外側に設置するなどしか方法がない。
【0014】
しかしながら、太陽光利用機器を窓に設置すると、今まではこれらが窓から部屋に差す太陽光を遮り生活に支障を来し、ベランダ等に設置するにしても平面部分にしか置くことができないので、該当部分の平面の柵以外の大部分は転落防止用の腰壁のために太陽光線の陰になり、しかも各個ベランダ等は上階のベランダによる天井部が有るため、太陽光が陰になる部分が多く、実用的ではない。
【0015】
一方、太陽光利用機器を、ベランダの腰壁の外部や窓の下側に設置する場合は、生活上今まで受けていた太陽光を遮ることもなく、ベランダの向きによっては十分に太陽光を受けることができるようになる。
【0016】
しかし、太陽光利用機器は効率的に太陽光を取り入れるために斜め上方向に向く仰角が必要であり、ベランダの外側に太陽光利用機器をそのまま設置するのは、外壁よりの張出幅が大きくなり、その下部に影ができてしまい、マンション等の共同住宅の場合、設置階の階下部に張出部の陰が投影されることになる。
【0017】
また、太陽光利用機器の大きさにもよるが、太陽光を受けるパネル面積が大きく、これらのパネルが壁面にぴったりと設置されずに、特許文献2や3のように仰角を有して設置されていたり、特許文献4のように空中に浮いた状態で設置されていたりすると、パネルが強風にあおられて落下するおそれもあるという問題点もあった。
【0018】
また、特許文献4の配置だと、太陽光が斜め方向から射す時間帯以外では、上のパネルの影に下のパネルが入り、太陽光変換効率が著しく低下するし、間隔を空けずに多数を隣会って配置しても隣のパネルの陰に入ってしまい変換効率が低下する。
【0019】
更に、ソーラパネルとやソーラ温水器等では、太陽光線をより取り入れるため又は素子自体の色合いによって、受光面が暗黒色又は暗濃紺色であるがゆえ、建造物全体が暗い色に覆われ、前述の下部に影が出来ることと共に重苦しい景観となってしまう。
【0020】
また、建造物の例としての高速道路は、近年騒音公害を防ぐために大部分に高速道路防音壁が設けられており、この防音壁は外側から見た場合、壁面が延々と連なっているだけであり、これら大規模な壁面に太陽光利用機器を強風の影響を与えずに設置することができれば、これらの設備の利用効率が向上することとなる。
【0021】
そこで、この発明は、高速道路防音壁、及び、マンション、ビル等のベランダや窓や外壁等に設置して、太陽光を受光できる状態で設置できると共に、太陽光を受ける面の一定仰角も保持して太陽光利用機器の性能を落とさずに、パネルの張出面の嵩を低くし階下に陰を落とさず、かつ、パネルが風圧等を受けにくくした太陽光利用機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記のような目的を解決するため、請求項1の発明は、建造物等の壁面の外方に突出して取り付け可能な架台と、この架台の外方に設けられた太陽光を受光するための天方向への一定仰角を保持した小パネルを複数個集合させた受光パネルとからなり、少なくとも1つの小パネルの受光面を他の小パネルの受光面とずらして配置した構成を採用した建造物の壁面等に取り付ける太陽光利用機器である。
【0023】
ここで、建造物等とは、マンション、ビル、高速道路防音壁、その他の建造物も含み、少なくとも壁面を有するものであればその種類は問わず、マンションのベランダ、橋梁等、建造物の一部を構成するものも建造物等に含まれる。
【0024】
また、太陽光を受光するための天方向への一定仰角とは、斜め上向き方向であれば特に限定されるものではないが、その面の法線が水平方向に対して30〜60°程度の範囲であれば良く、要するに、パネル面が、春夏秋冬を問わず、太陽が出ている日中の時間帯に、なるべく太陽光に対して直角近くに向く時間帯が長く、効率的に太陽光を受光できる角度であれば良い。
【0025】
ここで、少なくとも1つの小パネルの受光面を他の小パネルの受光面とずらして配置するとは、例えば各小パネルを上下方向に見て階段状に配置することで、全ての小パネルが同一平面となる配置に比べて、小パネルの集合体となる受光パネルの外部突出寸法を抑えることができるようにすることである。
【0026】
もちろん、階段状でなくとも、受光パネルに対して大きさや形状をランダムとして各小パネルを分割し、これら大きさや形状がランダムな各小パネルの受光面をずらして配置するようしても良い。
【0027】
請求項2の発明は、上記請求項1に記載の建造物等に取り付ける太陽光利用機器において、受光パネルの一部又は全部を、カラー化や透明化することによりデザインした構成を採用したものである。
【0028】
ここで、受光パネルのカラー化とは受光パネルに色彩を付与することで、その色彩にはソーラーパネル等が本来持つ色である暗黒色や暗濃紺色も含まれ、透明化とはガラス様の透明のみならず半透明も含まれ、いずれにせよ太陽光受光素子の機能を著しく阻害しない範囲で行われる。
【0029】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2に記載の建造物等に取り付ける太陽光利用機器において、受光パネル又は各小パネルは、架台に対して着脱自在に設けてある構成を採用したものである。
【0030】
請求項4の発明は、上記請求項1乃至3のいずれか1項に記載の建造物等に取り付ける太陽光利用機器において、架台の適所に緑化容器が着脱自在に設けられた構成を採用したものである。
【0031】
請求項5の発明は、上記請求項4に記載の建造物等に取り付ける太陽光利用機器において、緑化容器は、架台の頂部等に設けた上方緑化容器と、架台の外向き外側に設けた外方緑化容器と、架台の内向き外側に設けた内方緑化容器とからなり、外方緑化容器と内方緑化容器の一方又は両方の緑化面が傾斜状又は階段状に形成されている構成を採用したものである。
【発明の効果】
【0032】
請求項1の発明によれば、太陽光を受ける面の天方向への一定仰角を保持して配置された小パネルにより太陽光利用機器の性能を落とすことが無く、各小パネルをずらして配置することにより受光パネル全体の外部への突出寸法を抑えることができ、張出面の嵩を低くし階下に陰を落とさない。
【0033】
また、複数の小パネルを集合させて1つの受光パネルを形成しているので、受光パネルが太陽光の方角を向いた際、各小パネルが他の小パネルの影に入るということがなく、太陽光を受ける効率が低下することがない。
【0034】
更に、受光パネル全体の外部への突出寸法を抑えることで、受光パネルが壁面に近づいて設置されることにより、風圧等を受けにくくなり落下事故等を防ぐことができる。
【0035】
請求項2の発明によれば、受光パネルの一部又は全部が(暗黒色や暗濃紺色も含めて)カラー化又は透明化によりデザインされることで、外壁やベランダ、窓等の人目に付く所に取り付けても、従来の暗黒色又は暗濃紺色の単色のような重苦しい雰囲気にならず景観の向上となり、特に透明化することで、窓に使用することができ、また建物の壁面を外側に対してそのまま表現でき、外観がデザインされた建造物に使用することも可能となる。
【0036】
請求項3の発明によれば、太陽光利用機器の受光パネル又は各小パネルが着脱自在であるため、機器のメンテナンスが容易となり、特に小パネルを着脱自在としたものは、一部の小パネルに故障が生じても、不良小パネルを取り替えるだけで続けて運用することができる利点がある。
【0037】
請求項4の発明によれば、従来のフラワーポット・プランター等はベランダの内側の平面にしか置けなく、しかも例えばベランダ等の壁内側で有り腰壁等の陰になり、しかも各個ベランダ等は上階の天井部が有り太陽光、雨、風等を受けるには上部階の天井部、腰壁の陰等を除ける事をしなければならず、太陽光、雨、風等を受けるには用具を持ち移動させても、その都度いろいろな作業を行わなければならなかったのであるが、太陽光利用機器の設置に伴い緑化容器が風雨や太陽光を十分に受けることができる建造物のベランダや壁面に設置することが出来るので、これらの煩わしい作業が必要なくなった。
【0038】
また、緑化容器を併設することで、太陽光利用機器の太陽光受光面の暗黒色又は暗濃紺色を緑化容器の緑化面により目立たなくすることができ、太陽光利用機器の設置にともなう景観の悪化を防止することや、温度上昇を抑えることも出来る。
【0039】
請求項5の発明によると、緑化容器は、緑化部は手摺上を跨いだ前面、頂面、後面となる架台の頂部と外向き外側と内向き外側に設けられているので、建造物等の外側と内側のいずれの方向から見ても緑化面が目に入り、緑化の効果が建造物の内外にかかわらず得られることが出来る。
【0040】
また、外部より建造物を見た時に各ベランダ又はビル壁面に緑化部が大きく見える事により目にやさしく情感に訴え心の癒しにもつながり、しかも植物の為太陽熱は温度上昇を抑えられヒートアイランド現象を抑える事になると共に、内方緑化容器が存在することにより、室内側から見た場合にも緑化面積が大きく見える。
【0041】
更に、緑化容器の緑化面が階段状又は傾斜なることで、前面及び内方より見た時に緑化面を大きく見せる効果があり、しかも手摺等の内方部にも一定角又は平面に於いて太陽光、雨水、風等を受ける事ができるので、植物育成に適した環境を作り出せる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
図1は、この発明の第1実施形態の太陽光利用機器の分解斜視図であり、図2は、同じく第1実施形態の太陽光利用機器1の完成した斜視図であり、金属製又は合成樹脂製、複合材等の部材を複数本組み合わせて架台2と、架台2の前方に適宜手段にて着脱自在に固定されるソーラパネル等の受光パネル3と、同架台2の上部に着脱自在に固定される緑化容器4とからなる。
【0043】
上記架台2は、その両側部に一対の縦方向の部材5と、各部材5の上端部から水平方向かつ後方に延設され、その延長後端部で下方へ延設されて逆L字状となり、建造物のベランダ等の立ち上がり壁や腰壁の上縁に架けて固定するための係合片6と、前記両部材5の下端部から若干前方に突出した部材7と、両端の部材7を結ぶ水平方向かつ横方向に設けられた部材8を有しており、更に、前方の緑化容器を取り付けるための斜め方向及び水平幅方向の部材からなる前方容器取付枠9が部材5の上側に、後方の緑化容器を取り付けるための同じく斜め方向及び水平幅方向の部材からなる後方容器取付枠10が係合片6の後方に取り付けてある。
【0044】
前記緑化容器4は、架台2に取り付けられる位置により種類が上方緑化容器11、前方緑化容器12、内方緑化容器13の三種類に分けられ、架台2の両係合片6上に、嵌め込みや適宜係合手段にて上方緑化容器11が緑化面を水平方向に保ったまま着脱自在に設けられ、架台2の前方容器取付枠9には同様の手段により前方緑化容器12がその緑化面を斜め前方に向けた状態で着脱自在に設けられ、架台2の後方容器取付枠10にも同様の手段により内方緑化容器13がその緑化面を斜め後ろ方向に向けた状態で着脱自在に設けられている。
【0045】
各緑化容器4(11,12,13)内では、図示しないが植物の生育に必要な培土及び植物が植栽されて緑化面が形成され、緑化の目的を果たすようになっている。
【0046】
なお、緑化容器4の設置位置としては図示した上方緑化容器11、前方緑化容器12、内方緑化容器13に限定されることなく、架台2の適所に設けることができ、例えば、架台2の下方に設けたりすること等もできる。
【0047】
架台2の下方の両端の部材5、部材7、部材8とに囲まれた部分には、太陽光利用機器1の、太陽光を利用して起電力を発生し発電を行う受光パネル3が設けられる部分であり、本実施形態では、部材5、部材7、部材8に嵌め込まれるか適宜の系合手段により着脱自在に取り付けられている。
【0048】
この受光パネル3は複数段の階段状に分割されており、ソーラパネル機能を有する各小パネル20は、その角度が上向きに傾斜した仰角を有しており、太陽光を効率よく受けることができ、その起電出力等は分割されていない一枚の受光パネルのものに遜色が無いが、階段状の受光パネル3は全体の前方突出寸法が小さくなり、受光パネル3の下部にできる影の面積が小さくなり、例えばベランダ等に設置した際の下階への太陽光を遮るといった迷惑を与えることがなくなる。
【0049】
図3は受光パネルを小パネルに分割し、外方への突出寸法を小さくする構成を説明する側面図であり、(A)は通常の仰角を有する分割されない受光パネルを示し、その場合の外方への突出寸法をT1としたもので、(B)のように受光パネルの上下方向に1つの区切りを設けて上下2つの小パネル20,20に分割し、下方の小パネル20を内側に移動すれば、突出寸法T2はT1の約1/2となり、(C)のように受光パネルの上下方向に2つの区切りを設けて上下3つの小パネル20,20,20に分割し、下方と中央の小パネル20と20を内側に移動すれば、突出寸法T3はT1の約1/3となる。
【0050】
実際には、各小パネル20の上側のパネルの突出部による影ができないようにして、下方の小パネル23の太陽光利用率を100%近く受ける配置とするために、パネル全体の上下寸法を拡大して各小パネル20を上下に引き離して各小パネル20が下部のパネルに影を落とさないような(図示のような)角度で繋ぎ、上の小パネル20の影の影響を与えないようにする。
【0051】
図4は、図1及び図2で示した第1実施形態の受光パネル3の斜視図であり、長尺状の部材を組み立てるか、或いは一体成形され階段状に形成された支持枠14の、上向き仰角を有する面に、小面積の小パネル20を固定してゆくことで形成され、各小パネル20の発電量は小さいが、これら小パネル20を合計した面積は支持枠14と同等の面積の1枚パネルのソーラパネルと等しく、合計した発電量も同等のものとなる。
【0052】
図5は、ソーラパネルの分割方法に他の方法を用いた第2実施形態の受光パネル3′を示すもので、この実施形態で使用する支持枠15は、不規則な凹凸形状を有するが、横方向の各位置で、受光パネルの上下方向の少なくとも1箇所以上に横方向に走る区切りが設けてあり、各凸部分に一定の仰角を有する面を設けたもので、各該当面にソーラパネル機能を有する小パネル20を固定してゆくことで形成され、この実施形態の受光パネル3′は、各小パネル20の面積や形状も各種雑多であるが、第1実施形態と同様、受光パネル3′全体の前方突出寸法が小さくなり、かつ、各小パネル20の発電量を合計した発電量は全体を1枚パネルとしたものに比べても遜色が無い。
【0053】
なお、図5のような小パネル20の組み合わせの場合、隣接部の小パネル20に影の影響を与えない程度の凹凸は有ってもよい。
【0054】
また、受光パネルの実施形態としては、図4や図5で示した受光パネル3や3′に限られず、分割の段数や分割する形状等は特に限定されるものではなく、太陽光を効率良く受けながら受光パネルの外側への突出寸法を小さくするというこの発明の目的の範囲内で適宜設計変更して実施することができる。
【0055】
この発明の太陽光利用機器の構成は、上記のようなものであり、この太陽光利用機器を建造物の立ち上がり壁や腰壁に設置するには、架台2の部材5を立ち上がり壁や腰壁の外側にして、立ち上がり壁や腰壁の上側に架台2の係合片6を架けて固定する。
【0056】
図6は、第1乃至第2実施形態における太陽光利用機器を設置する立ち上がり壁や腰壁の幅に合わせて、係合片6の部材5との間隔を調整する機構を取り入れた太陽光利用機器の一例を要部拡大して示すものであり、係合片6の水平方向の片を外筒31と内筒32の2重構造とし、内筒32を外筒31に対して摺動させて任意の長さにのばせるようにし、この調整を外筒31と内筒32の内側に貫通させたボルト33を両端部のナット34を回転させて調整固定できるようにしたものである。
【0057】
図7は、第1実施形態の太陽光利用機器1を、上にパイプ手摺を設けた腰壁35への設置例を示すものであり、腰壁35上端部からパイプ手摺36を保持するための柱37が等間隔で立ち上がっており、上方緑化容器11を設置する際、この柱37が邪魔になる。
【0058】
しかし、図8に示すように、上方緑化容器11にこの柱37と緩衝しないように切り欠き16を入れて、この位置にパイプ手摺保持用の柱37が来るようにすれば、柱37に邪魔されずに架台2の上部を緑化することが出来る。
【0059】
また、図9に示すように、上方緑化容器11を分割しておき、分割された容器が向かい合う辺でパイプ手摺保持用の柱37の位置に切り欠き17を入れておくことで、パイプ手摺保持用の柱37を挟むように分割された容器を設置することで、柱37に邪魔されずに架台2の上部を緑化することが出来る。
【0060】
図10は、ベランダの床面から細幅のパイプからなるパイプ手摺38にこの発明の太陽光利用機器を設置する場合の例であり、図6で示したような機構によって係合片6の幅を調整してもパイプ手摺38よりも広幅で、太陽光利用機器をそのままパイプ手摺38に設置してもガタが生じてしまう場合、例えば板状のスペーサー39を適宜方法により架台2の適宜部分に固定して、このスペーサー39によりパイプ手摺38を挟み込み、ガタを生じないようにすることもできる。
【0061】
図11は、マンション等のベランダの腰壁35に第1実施形態の太陽光利用機器1を2連併設した状態を外部から見た状態を示す正面図であり、前方に傾斜している前方緑化容器12の緑化面が外部から見られ、また、上方緑化容器11の緑化面もその上側に見て取れ、これらがマンション等の建造物の外見上の緑化や温度上昇防止に貢献する。
【0062】
また、前方緑化容器12と上方緑化容器11により緑化された下部には、受光パネル3が設けられ、ベランダ外側に照りつける太陽光を利用して発電を行うことができ、またこの受光パネル3は、その直上の前方緑化容器12の緑化面の緑化により目立たなくなり、通常の受光パネル3単体を用いた場合のように、受光面が暗黒色又は暗濃紺色であるために建造物外観を暗いイメージとすることがない。
【0063】
加えて、この受光パネル3の外観色を通常の暗黒色又は暗濃紺色に代えて、カラフルな色、または落ち着いた色調等、建造物の外観に合わせてデザイン変更することで、更に建造物の外観を損なわないようにすることが出来る。
【0064】
また、受光パネル3を、支持枠14と各パネル20の一部又は全部を透明とすることで、透明部分を窓ガラスに適用したり、また透明部分にて建物の壁面等(腰壁35)の色彩等の意匠をそのまま表現することができる。
【0065】
また、マンションの建造物内から見た場合、後方に傾斜した内方緑化容器13の緑化面、及び上方緑化容器11の緑化面頂部を見ることが出来、建造物内から見た緑化にも貢献することができる。
【0066】
そして、これら上方緑化容器11,前方緑化容器12,内方緑化容器13は、ベランダの腰壁35の頂部付近に設けられているので、ベランダの床面に設置したプランター等に比べて外部からの太陽光を十分に受けることができ、また、雨水も十分に受けることができるので、ベランダ床面での天候によって設置位置を変えたりする手間をかけずに、植物の生育に十分な水と光を受けることができる。
【0067】
図12は、この発明の第3実施形態の太陽光利用機器であって、第1実施形態の太陽光利用機器における緑化容器4を階段状にしたものを示すものであり、前方緑化容器12,内方緑化容器13の緑化面が水平を維持したまま階段状となったものであり、このように前方緑化容器12,内方緑化容器13を傾斜させずに階段状とすることによっても、建造物外方及び内方から見た場合の緑化面積の増大効果が期待できる。
【0068】
図13は、この発明の第4実施形態の太陽光利用機器を示すものであり、高速道路防音壁42ソーラパネル等の太陽光利用機器を設置しつつ緑化容器を併設する例を示し、第2実施形態で示した受光パネル3を用いて太陽光を利用した発電及び緑化を行うものであり、また、緑化容器10は前方緑化容器12のみとする。
【0069】
図13のように、広大な建造物である高速道路防音壁42に対して、このような太陽光利用機器を用いれば、例えば太陽光利用機器の使用によって得られた電気を適宜手段で蓄電しておき、夜間に高速道路の照明43用の電気として用いれば、省エネ、省コストにも繋がることとなる。
【0070】
図14は、この発明の第5実施形態の太陽光利用機器を示すものであり、ベランダの無いビルの壁面40に太陽光利用機器を設置したものであり、ビルの窓41に太陽光利用機器の係合片を適宜手段により取り付けて、窓41の下方の緑化を図るものである。
【0071】
この場合、緑化容器4は、上方緑化容器11と前方緑化容器12のみとし、内方緑化容器13は省略しておくと共に、係合片6は、水平状のもののみとしておき、逆L字状のものは用いない。この場合、図5で示した外筒31から内筒32を抜き取り、外筒31のみで係合片6として用いれば良い。
【0072】
図15は、この発明の第6実施形態の太陽光利用機器を示すものであり、窓の無い壁面40に適宜手段にてこの発明の太陽光利用機器を設置を固定し、壁面40全体の緑化を図るものであり、この場合、係合片6を取り去り、部材5を壁面40に固定し、また、緑化容器4は前方緑化容器12のみとする。
【0073】
図16は、第1実施形態の太陽光利用機器を用いた場合の、各季節による南向きベランダへの太陽光の入射状態を示すものであり、(A)は冬至頃、(B)は春分又は秋分頃、(C)は夏至頃の正午の大阪地方における太陽光の入射光を示しているものであり、太陽の入射角は(A)の冬至頃では31°50’43”、(B)の春分又は秋分頃では55°23’40”、(C)の夏至頃では78°41’24”となる。
【0074】
(A)(B)(C)各季節において、内方緑化容器13に対して一番太陽光が差さない冬至頃(A)においても、内方緑化容器13の傾斜により緑化面には若干の日差しが入っており、夏至(C)の内方緑化容器も13にも、正午を除く時間帯には太陽光が差すものと推測され、全季節を通じ緑化容器11,12,13には植物の生育に必要な太陽光が差しており、かつ、当該位置では植物の生育に必要な雨水も十分にかかることとなる。
【0075】
また、各季節において、この発明の太陽光利用機器がある場合と無い場合の影の出来具合の差の部分は記号Xで示すが、各季節において明確な影の差Xは生じておらず、特に、夏至(C)の頃に、受光パネル3の突出量が少ないため、階下への影響がない。
【0076】
尚、上記実施形態では、太陽光利用機器の例としてソーラパネルを用いたものを示したが、太陽光利用機器としてはパネル等にて太陽光を受けて利用する機器であれば発電を行うソーラパネルに限定されることなく、例えば太陽光を受けた際の熱を利用したソーラ温水器等、その適用範囲は限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】この発明の第1実施形態の太陽光利用機器の分解斜視図である。
【図2】この発明の第1実施形態の太陽光利用機器の斜視図である。
【図3】(A)(B)(C)は受光パネルを小パネルに分割した状態を示す説明図である。
【図4】この発明の第1実施形態のソーラパネルの斜視図である。
【図5】この発明の第2実施形態のソーラパネルの斜視図である。
【図6】この発明の第1又は第2実施形態の太陽光利用機器の一部拡大側面図である。
【図7】この発明の第1実施形態の太陽光利用機器の使用状態を示す側面断面図である。
【図8】上方緑化容器の一例を示す斜視図である。
【図9】上方緑化容器の他の例を示す斜視図である。
【図10】この発明の第1実施形態の太陽光利用機器の使用状態の一例を示す側面断面図である。
【図11】この発明の第1実施形態の太陽光利用機器の使用状態の一例を示す正面図である。
【図12】この発明の第3実施形態を示す側面断面図である。
【図13】この発明の第4実施形態を示す側面断面図である。
【図14】この発明の第5実施形態を示す側面断面図である。
【図15】この発明の第6実施形態を示す側面断面図である。
【図16】(A)(B)(C)は季節による太陽光の入射角度を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 太陽光利用機器
2 架台
3 受光パネル
4 緑化容器
5 部材
6 係合片
7 部材
8 部材
9 前方容器保持枠
10 後方容器保持枠
11 上方緑化容器
12 前方緑化容器
13 内方緑化容器
14 支持枠
15 支持枠
16 切り欠け
17 切り欠け
20 小パネル
31 外筒
32 内筒
33 ボルト
34 ナット
35 腰壁
36 パイプ手摺
37 柱
38 パイプ手摺
39 スペーサー
40 壁面
41 窓
42 高速道路防音壁
43 照明

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物等の壁面の外方に突出して取り付け可能な架台(2)と、この架台(2)の外方に設けられた太陽光を受光するための天方向への一定仰角を保持した小パネル(20)を複数個集合させた受光パネル(3)とからなり、少なくとも1つの小パネルの受光面を他の小パネルの受光面とずらして配置したことを特徴とする建造物の壁面等に取り付ける太陽光利用機器。
【請求項2】
受光パネル(3)の一部又は全部を、カラー化や透明化することによりデザインしたことを特徴とする請求項1に記載の建造物等に取り付ける太陽光利用機器。
【請求項3】
受光パネル(3)又は各小パネル(20)は、架台(2)に対して着脱自在に設けてあることを特徴とする請求項1又は2に記載の建造物等に取り付ける太陽光利用機器。
【請求項4】
架台(2)の適所に緑化容器(4)が着脱自在に設けられたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の建造物等に取り付ける太陽光利用機器。
【請求項5】
緑化容器(4)は、架台(2)の頂部等に設けた上方緑化容器(11)と、架台(2)の外向き外側に設けた外方緑化容器(12)と、架台(2)の内向き外側に設けた内方緑化容器(13)とからなり、外方緑化容器(12)と内方緑化容器(13)の一方又は両方の緑化面が傾斜状又は階段状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の建造物等に取り付ける太陽光利用機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−291455(P2008−291455A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136134(P2007−136134)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(306043932)
【出願人】(592004482)
【Fターム(参考)】