説明

弁体アッセンブリーの調整治具および弁体アッセンブリーの調整方法

【課題】弁体ホルダーに装着したOリングのストレスを除去することができる弁体アッセンブリーの調整治具および弁体アッセンブリーの調整方法を提供することである。
【解決手段】弁体として使用するOリング33を弁体ホルダー34に装着した弁体アッセンブリー23に対し、弁体ホルダー34との間の摩擦により生ずるOリング33の捻り方向および周方向のストレスを除去する弁体アッセンブリー23の調整治具41であって、少なくとも1の面を平坦面に形成した治具本体42と、治具本体42に貫通形成され、平坦面側から弁体アッセンブリー23が挿入されると共に、弁体アッセンブリー23のOリング33が圧入される円形断面のリング圧入部52を有する調整孔44と、調整孔44から平坦面側に、弁体アッセンブリー23を押し出すためのプッシャー43と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体として使用するOリングを弁体ホルダーに装着した弁体アッセンブリーに対し、弁体ホルダーとの間の摩擦により生ずるストレスを除去する弁体アッセンブリーの調整治具および弁体アッセンブリーの調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の弁体(弁体アッセンブリー)として、段付き部(胴部)を有する鍔部(Oリング受け部)と、段付き部側の鍔部の中心から断面「T」字状を為すように一方向に延びる軸部(操作ピン部)と、段付き部にはめ込まれたゴム製のOリングと、を有するものが知られている(特許文献1参照)。
この弁体は、段付き部にOリングの一部を引っ掛けて、Oリングの引っ掛けた部分を押えながら、段付き部に乗り上げるようにOリングの平面形状に沿って押圧することで、Oリングを装着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−343123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような弁体では、Oリングの一部をあてがった状態で、これを段付き部に乗り上げるように押圧して装着するため、Oリングには、段付き部を乗り上げる際に捻り方向のストレスがかかると共に、Oリングの平面形状に沿って押圧する際に周方向のストレスがかかる。一方、Oリングと段付き部との間には大きな摩擦力が作用するため、Oリングは、捻り方向および周方向のストレスが残留したまま装着されてしまう。よって、弁体を弁座に着座させたときに、弁体のシール部分(Oリング)および弁座の間に微小な間隙が生じ易く、弁体としてのシール性を確保することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、弁体ホルダーに装着したOリングのストレスを除去することができる弁体アッセンブリーの調整治具および弁体アッセンブリーの調整方法を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の弁体アッセンブリーの調整治具は、弁体として使用するOリングを弁体ホルダーに装着した弁体アッセンブリーに対し、弁体ホルダーとの間の摩擦により生ずるOリングの捻り方向および周方向のストレスを除去する弁体アッセンブリーの調整治具であって、少なくとも1の面を平坦面に形成した治具本体と、治具本体に貫通形成され、平坦面側から弁体アッセンブリーが挿入されると共に、弁体アッセンブリーのOリングが圧入される円形断面のリング圧入部を有する調整孔と、調整孔から平坦面側に、弁体アッセンブリーを押し出すためのプッシャーと、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の弁体アッセンブリーの調整方法は、弁体として使用するOリングを弁体ホルダーに装着した弁体アッセンブリーに対し、弁体ホルダーとの間の摩擦により生ずるOリングの捻り方向および周方向のストレスを除去する弁体アッセンブリーの調整方法であって、Oリングのリング外径より僅かに小径に形成された円形断面のリング圧入部に、弁体ホルダーに装着したOリングを圧入することを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、弁体アッセンブリーを調整孔に挿入すると、Oリングには、リング圧入部との間で押し出し方向の摩擦力および径方向の圧縮力が作用する。Oリングは、この摩擦力および圧縮力により、弁体ホルダーに対して微小に動くことになる。これにより、Oリングおよび弁体ホルダーの接触部分に作用している摩擦力は、静摩擦から動摩擦に瞬時に移行する。このとき、Oリングのストレスを解放して自由状態に戻ろうとする力が、摩擦力に勝ってOリングは自由状態に戻る。すなわち、Oリングから捻り方向および周方向のストレスが解放される。また、弁体アッセンブリーを調整孔から押し出す場合も、Oリングは弁体ホルダーに対して微小に動くため、同様にOリングのストレスが開放される。
【0009】
この場合、弁体ホルダーは、同軸上において、Oリングが装着される胴部、胴部の先端から延在する操作ピン部、胴部の先端部に形成した抜止め部および抜止め部に対峙し胴部の基端に連なるOリング受け部から成り、調整孔は、弁体アッセンブリーの挿入を操作ピン部側から受容することが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、Oリング受け部は、調整孔に対する弁体アッセンブリーの挿入時において、Oリングを位置規制することができる。また、弁体アッセンブリーの押し出し時において、抜止め部によりOリングが弁体ホルダーから外れることがない。
【0011】
この場合、調整孔は、弁体アッセンブリーの挿入時にOリング受け部が僅かに突出した状態で当接する段付き孔部を有していることが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、Oリング受け部が段付き孔部に当接することで、調整孔に対する弁体アッセンブリーの挿入完了を体感することができる。すなわち、Oリングを、リング圧入部に確実に挿入することができる。
【0013】
この場合、プッシャーは、操作ピン部を押圧して弁体アッセンブリーを押し出すように構成され、プッシャーの先端は、凹状に窪入形成されていることが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、プッシャーを操作ピン部に対して位置規制することができるため、弁体アッセンブリー(Oリング)を、径方向の圧縮力のみをかけた状態で押し出すことができる。すなわち、Oリングに新たにストレスをかけることなく、押し出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】圧力調整弁の側面図である。
【図2】圧力調整弁の(a)はA−A断面図であり、(b)はB−B断面図である。
【図3】第1実施形態に係る治具本体の(a)は外観斜視図であり、(b)は、断面図である。
【図4】調整孔への弁体アッセンブリーの挿入を説明するための説明図である。
【図5】調整孔からの弁体アッセンブリーの押し出しを説明するための説明図である。
【図6】第2実施形態に係る調整治具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付した図面を参照して、弁体アッセンブリーの調整治具(以下、「調整治具」という。)および弁体アッセンブリーの調整方法について説明する。この弁体アッセンブリーは、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液流路に介設される圧力調整弁の弁体部分を構成する部品である。そこで、上記の調整治具や調整方法の説明に先立ち、圧力調整弁について説明する。
【0017】
図1に示すように、圧力調整弁1は、機能液滴吐出ヘッドに機能液を大気圧基準(一定圧)で減圧供給するものであり、主要部を成す調整弁本体2と、調整弁本体2の流入側に差込み接合した流入コネクター3と、調整弁本体2の流出側に差込み接合した流出コネクター4と、を備えている。そして、流入コネクター3には、流入側押えナット5を介して、図外の機能液タンクに連なるチューブ7が接続され、同様に流出コネクター4には、流出側押えナット6を介して、図外の機能液滴吐出ヘッドに連なるチューブ7が接続される。
【0018】
図2に示すように、調整弁本体2は、略円板状で、かつ前面および後面の中央部が凹型形成されたバルブケーシング11と、バルブケーシング11と共に1次室14を画成する蓋体12と、バルブケーシング11に受圧膜体15を固定することでバルブケーシング11と共に2次室16を画成する膜体押え部材13と、で構成されており、バルブケーシング11、蓋体12および膜体押え部材13は、ステンレス等の耐食性材料で形成されている。また、バルブケーシング11の中心部には、1次室14および2次室16を連通する連通流路17が形成されている。
【0019】
膜体押え部材13および蓋体12は、バルブケーシング11に対し、前後方向から挟み込むようにねじ止めして組み込まれており、いずれも円形の受圧膜体15の中心を通る軸線と同心円となる円形の外形を有している。バルブケーシング11および膜体押え部材13は、受圧膜体15の周縁部および膜体側シールリング18を挟込み込んで相互に液密に突合せ接合されている。同様に、蓋体12は、蓋体側シールリング19を介してバルブケーシング11に対し相互に液密に突合せ接合されている。これにより、1次室14および2次室16は、液密に保持されている。
【0020】
1次室14は、バルブケーシング11の後面と、バルブケーシング11の開放端を閉蓋する蓋体12と、により、受圧膜体15と同心となる略円柱形状に形成されている。また、1次室14の上部には、1次室14から径方向斜めに延びる流入ポート21が形成され、中心部には、連通流路17に連なる1次室側開口部22が開口している。そして、この1次室側開口部22には、1次室14側から連通流路17を開閉する弁体アッセンブリー23が臨む一方、これに対応して、1次室側開口部22の周縁部により、弁体アッセンブリー23が離接する弁座24が構成されている。また、弁体アッセンブリー23は、これと蓋体12との間に介設した弁体付勢ばね25によって、閉弁方向(2次室16側)に弱い力で付勢されている。
【0021】
2次室16は、バルブケーシング11の前面と、バルブケーシング11の開放端を閉蓋する受圧膜体15と、で円錐台形状に形成されており、受圧膜体15は、膜体押え部材13によりバルブケーシング11に取り付けられている。また、2次室16の下部には、2次室16から真下に延びる流出ポート26が形成され、中心部には、連通流路17に連なる2次室側開口部27が開口している。そして、この2次室側開口部27の周縁部と受圧膜体15との間には、受圧膜体15を前方向に向かって付勢する膜体付勢ばね28が介設されている。
【0022】
受圧膜体15は、樹脂フィルムで構成した膜体本体31と、膜体本体31の中央部に接着した樹脂製の受圧板32と、で構成されている。受圧板32は、膜体本体31と同心の円板状に、且つ膜体本体31に対し十分に小さい径に形成されており、その中央に弁体アッセンブリー23の操作ピン部36が離接するようになっている。
【0023】
弁体アッセンブリー23は、弁体の機能を奏する環状のOリング33と、Oリング33を保持する弁体ホルダー34と、を備えている。弁体ホルダー34は、同軸上において、Oリング33が装着される胴部35と、胴部35の先端から延在する操作ピン部36と、胴部35の先端部に形成した抜止め部37と、抜止め部37に対峙し胴部35の基端に連なるOリング受け部38と、からなっている。弁体ホルダー34にOリング33を装着する場合には、胴部35にOリング33の一部を引っ掛けて、その一部を押さえつつ、Oリング33の平面形状に沿って、抜止め部37を乗り越えるようにして装着する。そして、後述する調整治具41によりOリング33のストレスを除去した後に、圧力調整弁1に組み込まれる。また、組み込まれたOリング33は、受圧膜体15による大気圧基準で、弁座24となる1次室側開口部22の周縁部に離接することで1次室14から2次室16に間欠的に機能液を流入する。
【0024】
Oリング33は、断面円形のリング形状を有しており、耐薬品性のパーフルオロゴムで構成され、通常に用いられるシリコンゴム製のOリング33に比して硬質なものとなっている。そして、弁体ホルダー34に装着したOリング33の前端部分が、弁座24に離接して弁の機能を奏するようになっている。
【0025】
胴部35は、Oリング33の内径より僅かに太径に形成されており、且つOリング33の装着時において、Oリング33の前端より突出しない長さに形成されている。
【0026】
抜止め部37は、胴部35の前端に連なり、Oリング33が弁座24に当接する部位を僅かに残して、Oリング33を弁座24側から抜止め状態に保持する。すなわち、抜止め部37の前端は、Oリング33の前端部分より後退した位置にあり、Oリング33の内径より僅かに太径に形成されている。
【0027】
Oリング受け部38は、胴部35の後端に連なり、円形の板状に形成されている。Oリング受け部38は、1次室14側の受圧部を構成すると共に、その背面には、弁体付勢ばね25が当接する環状ばね受け部39が形成されている。
【0028】
操作ピン部36は、断面円形で連通流路17より僅かに短径に形成されている。また、操作ピン部36は、弁体付勢ばね25によって2次室16側に付勢されたときに、上記した受圧板32に当接する長さに形成されている。
【0029】
このように構成された圧力調整弁1では、例えば機能液滴吐出ヘッドの液滴吐出により2次室16の圧力が下がってゆくと、大気圧により受圧膜体15が凹変形してゆき、受圧板32が弁体アッセンブリー23を1次室14側に押圧する。これにより、弁体アッセンブリー23が開弁し、連通流路17を介して1次室14から2次室16に機能液が流入する。機能液の流入がすすむと、やがて2次室16の圧力が高まってゆき、受圧膜体15が外部に向かって凸変形してゆく。これにより、受圧板32が弁体アッセンブリー23から離れるように前進し、同時に弁体付勢ばね25により弁体アッセンブリー23が前進して閉弁状態となる。
【0030】
すなわち、圧力調整弁1は、大気圧と機能液滴吐出ヘッドに連なる2次室16との内部圧力のバランスにより受圧膜体15が変形することで連通流路17を開閉する。その際、弁体付勢ばね25および膜体付勢ばね28に力が分散して作用し、且つOリング33の弾性力により、弁体アッセンブリー23は極めてゆっくり開閉動作する。このため、弁体アッセンブリー23の開閉による圧力変動(キャビテーション)が抑制され、機能液滴吐出ヘッドの吐出駆動に影響を与えないようになっている。もちろん、1次室14側で発生する脈動等も、弁体アッセンブリー23で縁切りされるため、これを吸収(ダンパー機能)することができる。
【0031】
次に、図3を参照して、Oリング33が装着される調整治具41について説明する。実施形態の弁体アッセンブリー23は、作業者が手作業によりOリング33を弁体ホルダー34に組み込むようになっている。その際、Oリング33の一部を抜止め部37に引っ掛けておいてから、全体を抜止め部37を越えて胴部35に押し入れるようにして装着している。このため、Oリング33は、押込み変形したときに生じた捻り方向および周方向のストレスが残留したまま胴部35に装着されてしまう。実施形態の調整治具41は、このOリング33に残留したストレスを解放するものである。
【0032】
同図に示すように、調整治具41は、複数の弁体アッセンブリー23を挿入するための複数(図示のものでは4個)の調整孔44を有する治具本体42と、挿入した弁体アッセンブリー23を各調整孔44から押し出すプッシャー43(図5参照)と、を備えている。また、治具本体42の裏面46には、3つの脚状突起47が取り付けられている。弁体アッセンブリー23は、治具本体42の調整孔44に挿入され、続いてプッシャー43によって調整孔44から押し出されることにより、Oリング33に残留しているストレスが除去されるようになっている。
【0033】
治具本体42は、金属製の素材で扁平な略円柱状に形成され、外周面の両端部に、手持ちしたときの滑り止めとなる一対の環状突出部48が形成されている。治具本体42の裏面46は、平坦に形成され(平坦面)、その中央部には4個の調整孔44が形成されている。4個の調整孔44は、中心に1つ、これを囲むように周方向に等間隔に3つ、配設されている。治具本体42の表面45は、平坦に形成され、同様に4個の調整孔44が貫通している。3つの脚状突起47は、治具本体42の裏面46の周縁部において周方向に等間隔に配設されており、各脚状突起47は、治具本体42にねじ込まれるボルト49と、これに螺合したナット50と、でアジャストボルトの形態を有している。なお、3つの脚状突起47による治具本体42の高さは、弁体アッセンブリー23の高さより高く調整されていることが好ましい。
【0034】
各調整孔44は、治具本体42の裏面46に開口し、弁体アッセンブリー23の挿入時にOリング受け部38が僅かに突出した状態で当接する段付き孔部51と、弁体アッセンブリー23のOリング33が圧入される円形断面のリング圧入部52と、Oリング33を段付き孔部51からリング圧入部52に導くリングガイド部53と、リング圧入部52に連なり、操作ピン部36が挿入される挿通部54と、操作ピン部36を挿通部54に導くピンガイド部55と、挿通部54に連通し、治具本体42の表面45に開口するプッシャー導入部56と、を有している。
【0035】
段付き孔部51は、弁体ホルダー34のOリング受け部38の外形より僅かに太径に形成され、且つ、Oリング受け部38の厚さより浅く形成されている。具体的には、弁体アッセンブリー23を調整孔44に挿入したときに、Oリング受け部38のOリング33側周縁部が段付き孔部51の底面に当接すると共に、上記した環状ばね受け部39が裏面46と面一になるようになっている。すなわち、段付き孔部51は、弁体アッセンブリー23の調整孔44への挿入に際し、弁体アッセンブリー23の平面方向および挿入方向の移動を位置規制する。これにより、弁体アッセンブリー23の挿入完了を体感できると共に、Oリング33を、リング圧入部52に確実に挿入することができる。
【0036】
リングガイド部53は、断面アール形状に形成されており、挿入された弁体アッセンブリー23のOリング33をリング圧入部52に導く。リング圧入部52は、Oリング33の外径より僅かに小径に形成されており、且つOリング33の厚さより深く形成されている。リングガイド部53により導かれたOリング33には、リング圧入部52によって押し出し方向の摩擦力および径方向の圧縮力が作用する。これにより、捻り方向および周方向のストレスが解放される(詳細は、後述する。)。
【0037】
ピンガイド部55は、先細りのテーパ状に形成されており、挿入された弁体アッセンブリー23の操作ピン部36を挿通部54に導くようになっている。これにより、弁体アッセンブリー23は、調整孔44と略同一軸方向に位置決めされた状態で挿入される。なお、弁体アッセンブリー23を調整孔44に挿入すると、最初に操作ピン部36が挿通部54に入り込み、弁体アッセンブリー23の調整孔44への挿入がガイドされる(図4(a)参照)。
【0038】
挿通部54は、プッシャー43より僅かに太径に形成され、治具本体42の表面45側に向って延在している。また、挿通部54は、弁体アッセンブリー23の挿入時においてはリング圧入部52側から操作ピン部36が挿入される一方、押し出し時においてはプッシャー導入部56側からプッシャー43が挿入される。プッシャー導入部56は、治具本体42の表面45に向って円錐状に拡開しており、プッシャー43の挿入を許容する。なお、言うまでもないが、プッシャー導入部56は、表面45の中心部に1個、その中心部を囲うように同心円上に3個、等間隔に形成されている。
【0039】
プッシャー43は、挿通部54より僅かに小径(操作ピン部36と略同径)の丸棒状に形成されており、その先端(面)には、凹状に窪入形成された係合部57が形成されている。係合部57は、操作ピン部36の先端に係合し、プッシャー43の押圧力(押出し力)を弁体アッセンブリー23に伝える。弁体アッセンブリー23を治具本体42から押し出す場合には、プッシャー43をプッシャー導入部56から挿通部54に挿入し、係合部57を操作ピン部36に突き当てて押圧するようにする。
【0040】
次に、図4および図5を参照して、調整治具41を用いたOリング33のストレス除去方法(弁体アッセンブリー23の調整方法)について説明する。このOリング33のストレス除去方法は、Oリング33のリング外径より僅かに小径に形成された円形断面のリング圧入部52に、弁体ホルダー34に装着したOリング33を圧入することによりなされる。具体的には、脚状突起47を取り付けた治具本体42を、裏面46が上側に向くようにして机上に置き、この状態で弁体アッセンブリー23を操作ピン部36側から調整孔44に挿入する(図4(a)参照)。これにより、挿通部54に操作ピン部36が挿入され、Oリング33がリング圧入部52に圧入され、さらにOリング受け部38が段付き孔部51の段部に突き当たって、弁体アッセンブリー23の挿入が完了する(図4(c)参照)。これを、計4個の弁体アッセンブリー23について行う。
【0041】
この弁体アッセンブリー23の調整孔44への挿入では、リング圧入部52に圧入されたOリング33に、リング圧入部52による押出し方向の摩擦力および径方向の圧縮力が作用する。Oリング33に摩擦力および圧縮力が作用すると、Oリング33は弁体ホルダー34に対して微小に動くことになる(図4(b)参照)。これにより、Oリング33および弁体ホルダー34の接触部分の摩擦力は静摩擦から動摩擦に瞬時に移行し、Oリング33のストレスを解放して自由状態に戻ろうとする力が、摩擦力より強く作用するため、Oリング33は自由状態に戻ることで捻り方向および周方向のストレスを解放する。
【0042】
弁体アッセンブリー23の挿入完了後、治具本体42を表面45が上側に向くように表裏反転して机上に置き直すことで、治具本体42は、脚状突起47により支持された状態となる。ここで、調整孔44にプッシャー導入部56側(上側)からプッシャー43を挿入し、その係合部57を操作ピン部36の先端に突き当てる(図5(a)参照)。さらに、プッシャー43を深く押し込み、治具本体42の裏面46に向って弁体アッセンブリー23を治具本体42から押し出すようにする(図5(b)参照)。これにより、弁体アッセンブリー23は、調整孔44から抜け落ち机上に落下する。そして、この押出し作業も、計4個の弁体アッセンブリー23について行う。
【0043】
この弁体アッセンブリー23の調整孔44からの押し出しでも、Oリング33は弁体ホルダー34に対して微小に動くことになるため、挿入時の解放しきれなかったストレスが残っていても、これを解放することができる。もっとも、Oリング33にかかっているストレスの解放を担保するのであれば、弁体アッセンブリー23の挿入および押出しを複数回繰り返すようにしてもよい。
【0044】
次に、図6を参照して、第2実施形態に係る調整治具41について説明する。なお、重複する記載を避けるべく第1実施形態と異なる部分を中心に記載する。この調整治具41は、弁体アッセンブリー23に装着されたOリング33のストレスを1個ずつ除去するものである。係る場合の治具本体42は、段付きの円筒状に形成されており、内部にリング圧入部52が形成された太径のストレス除去部61と、内部に挿通部54が形成された小径の押出し部62と、で一体に形成されている。すなわち、調整治具41の軸心部には、弁体アッセンブリー23が挿入される調整孔44が貫通形成されている。なお、治具本体42の段付き部分が、手持ちしたときの滑止めとして機能する。
【0045】
調整孔44は、第1実施形態と同様に、段付き孔部51と、リングガイド部53と、リング圧入部52と、挿通部54と、プッシャー導入部56と、を有している。本実施形態の調整孔44には、ピンガイド部55が形成されていないため、挿通部54は、操作ピン部36が傾いた状態でも挿入することができるように、余裕をもった径で形成されている。但し、弁体アッセンブリー23は、治具本体42と同軸上に装填される。プッシャー43は、挿通部54より僅かに小径(操作ピン部36より太径)の丸棒状に形成されており、その先端(面)には、凹状に窪入形成された係合部57が形成されている。プッシャー43は、挿通部54にガイドされながら挿入され、係合部57で操作ピン部36を位置規制する。
【0046】
この場合の治具本体42は、作業者が手持ちした状態で、弁体アッセンブリー23の操作ピン部36側から調整孔44への挿入と、プッシャー43による弁体アッセンブリー23の押し出しが行われる。そしてこの場合も、弁体アッセンブリー23の調整孔44への挿入により、Oリング33およびリング圧入部52との間で生じた摩擦力および圧縮力により、Oリング33は弁体ホルダー34に対して微小に動くことになる。その際、Oリング33と弁体ホルダー34との接触部分は静摩擦から動摩擦に瞬時に移行し、Oリング33のストレスを解放して自由状態に戻ろうとする力が、摩擦力より強く作用するため、Oリング33は自由状態に戻ることで捻り方向および周方向のストレスを解放することができる。また、弁体アッセンブリー23の調整孔44からの押し出しにおいても、第1実施形態と同様である。
【0047】
なお、プッシャー43を挿通部54に挿入した状態で、弁体アッセンブリー23を調整孔44に挿入するようにしてもよい。これにより、プッシャー43の係合部57に操作ピン部36の先端部が位置決めされるため、Oリング33をリング圧入部52に対して垂直に圧入することができ、Oリング33のストレスをさらに精度よく除去することができる。また、押出し部62は、弁体アッセンブリー23の挿入および押し出し時において、把持して位置固定するため、滑り止め加工が施されていることが好ましい。
【0048】
以上の構成によれば、弁体アッセンブリー23を調整孔44に挿入すると、リング圧入部52との間で生じた押し出し方向の摩擦力および径方向の圧縮力により、Oリング33は弁体ホルダー34に対して微小に動くことになる。これにより、Oリング33と弁体ホルダー34との接触部分は静摩擦から動摩擦に瞬時に移行し、Oリング33のストレスを解放して自由状態に戻ろうとする力が、摩擦力より強く作用するため、Oリング33は自由状態に戻ることで、捻り方向および周方向のストレスを解放することができる。
【符号の説明】
【0049】
23…弁体アッセンブリー 33…Oリング 34…弁体ホルダー 35…胴部 36…操作ピン部 37…抜止め部 38…Oリング受け部 41…調整治具 42…治具本体 43…プッシャー 51…段付き孔部 52…リング圧入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体として使用するOリングを弁体ホルダーに装着した弁体アッセンブリーに対し、前記弁体ホルダーとの間の摩擦により生ずる前記Oリングの捻り方向および周方向のストレスを除去する弁体アッセンブリーの調整治具であって、
少なくとも1の面を平坦面に形成した治具本体と、
前記治具本体に貫通形成され、前記平坦面側から前記弁体アッセンブリーが挿入されると共に、前記弁体アッセンブリーの前記Oリングが圧入される円形断面のリング圧入部を有する調整孔と、
前記調整孔から前記平坦面側に、前記弁体アッセンブリーを押し出すためのプッシャーと、を備えたことを特徴とする弁体アッセンブリーの調整治具。
【請求項2】
前記弁体ホルダーは、同軸上において、前記Oリングが装着される胴部、前記胴部の先端から延在する操作ピン部、前記胴部の先端部に形成した抜止め部および前記抜止め部に対峙し前記胴部の基端に連なるOリング受け部から成り、
前記調整孔は、前記弁体アッセンブリーの挿入を前記操作ピン部側から受容することを特徴とする請求項1に記載の弁体アッセンブリーの調整治具。
【請求項3】
前記調整孔は、前記弁体アッセンブリーの挿入時に前記Oリング受け部が僅かに突出した状態で当接する段付き孔部を有していることを特徴とする請求項2に記載の弁体アッセンブリーの調整治具。
【請求項4】
前記プッシャーは、前記操作ピン部を押圧して前記弁体アッセンブリーを押し出すように構成され、
前記プッシャーの先端は、凹状に窪入形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の弁体アッセンブリーの調整治具。
【請求項5】
弁体として使用するOリングを弁体ホルダーに装着した弁体アッセンブリーに対し、前記弁体ホルダーとの間の摩擦により生ずる前記Oリングの捻り方向および周方向のストレスを除去する弁体アッセンブリーの調整方法であって、
前記Oリングのリング外径より僅かに小径に形成された円形断面のリング圧入部に、前記弁体ホルダーに装着した前記Oリングを圧入することを特徴とする弁体アッセンブリーの調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−164114(P2010−164114A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6431(P2009−6431)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】