説明

弁構造およびその弁構造を適用した軟質膨張物

【課題】軟質膨張物の内部空間に備えられて該軟質膨張物の内側空間の気密を保つとともに、弁部に触れることなく気体の注入排出が可能な弁構造およびその弁構造を適用した軟質膨張物を提供する。
【解決手段】軟質膨張物本体24に固着して軟質膨張物20を構成し、軟質膨張物本体の内部空間に弁部14を内装して気密を保つとともに、気体の注入排出が可能な弁構造10であって、一端12が所定の厚みDで閉塞され、他端13が開放された筒状の弁本体11と、一端の閉塞部分の厚みを一端の外面12aから弁本体の内部空間S側の内面12bにわたって切り込み、切り込みの一方の対向面が前記筒状の弁本体の長さ方向に移動可能に形成した弁部14と、切り込みの一方側に内部空間に向けて突出した隆起部12cを備え、隆起部が弁本体の長さ方向に押されることによって、弁部の密着した一方の対向面が移動して閉塞部分の外面側空間と弁本体の内部空間Sが連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質膨張物に備えられて該軟質膨張物に気体を注入排出する軟質材料で成形された弁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば従来から、軟質材料で形成された軟質膨張物には、空気などの気体を、軟質膨張物本体の内部空間に注入あるいは内部空間から排出するための軟質材からなる弁構造が備えられている。
このような弁構造として、例えば、一端側に着脱可能な栓部材を備えた両端開放の筒状体で、その他端側を軟質膨張物本体に溶着してその本体の内部空間と筒状体内を連通させて備え、筒状体の内部には逆止弁を内在した構造のものが知られている。(例えば特許文献1の符号52参照)。ところが、このような弁構造は、前記軟質膨張物本体の外側から溶着されていることから、弁構造が軟質膨張物本体の外側にヘソ状に突出するので、軟質膨張物の美観を損ねるだけでなく、軟質膨張物を使用中において、弁構造に強い外力が働くと弁構造の溶着が外れて軟質膨張物の内側空間の気密が保てなくなる虞があった。
【0003】
そこで、軟質膨張物の内部空間に収容した弁構造が特許文献2に開示されている。このような弁構造は、軟質材料で扁平に潰れるチューブ状に形成され、該チューブの一方の開放端が、軟質膨張物の穴部の内側に固定されている。この場合には、軟質膨張物の内部空間に空気が充填されている場合には、その内気圧によって、チューブの他方の開放端が扁平に潰れることで互いに密着して弁構造を構成し、軟質膨張物の内部空間の気密が保たれている。
さらに、軟質膨張物の内部空間と外部とが連通した状態として空気を注入排出する場合には、軟質膨張物の外部からチューブの密着部分に棒状体を差込んで、該棒状体の厚みでチューブの密着部分に隙間を作る。
【0004】
ところが、チューブの密着部分に棒状体が差し込まれて直接触れることにより、チューブの密着部分の可撓性が損なわれ、チューブには棒状体の変形痕が残って密着不能となり、軟質膨張物の内側空間の気密性が損なわれるという問題があった。
【特許文献1】実登3072193号公報
【特許文献2】実開昭57−126298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、軟質膨張物の内部空間に備えられて該軟質膨張物の内側空間の気密を保つとともに、弁部に触れることなく気体の注入排出が可能な弁構造およびその弁構造を適用した軟質膨張物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために本発明がなした技術的手段は、所定の内部空間を有する軟質膨張物本体に固着して該軟質膨張物本体とともに軟質膨張物を構成し、該軟質膨張物本体の内部空間に弁部を内装して該内部空間の気密を保つとともに、気体の注入排出が可能な弁構造であって、一端が所定の厚みで閉塞され、他端が開放された筒状の弁本体と、該弁本体の外周面の他端側に配され、前記軟質膨張物本体と固着する固着部と、該一端の閉塞部分の厚みを一端の外面から弁本体の内部空間側の内面にわたって切り込み、該切り込みの一方の対向面を前記筒状の弁本体の長さ方向に移動可能に形成した弁部と、前記切り込みの一方側に内部空間に向けて突出した隆起部を備え、該隆起部が弁本体の長さ方向に押されることによって、弁部の切り込みの密着した一方の対向面が移動して閉塞部分の外面側空間と弁本体の内部空間が連通することを特徴とした弁構造としたことである。その弁本体の隆起部よりも他端側の内周面には、該内周面から内部空間へと膨出した突起部を備えている場合もあり、切り込みは、一端の外面の外周側から弁本体の内部空間側の内面の中心側に向けて斜めに切り込まれていてもよい。
【0007】
また、所定の内部空間を有する軟質膨張物本体に固着して該軟質膨張物本体とともに軟質膨張物を構成し、該軟質膨張物本体の内部空間に弁部を内装して該内部空間の気密を保つとともに、気体の注入排出が可能な弁構造であって、一端が所定の厚みで閉塞され、他端が開放された筒状の弁本体と、該弁本体の外周面の他端側に配され、前記軟質膨張物本体と固着する固着部と、該一端の閉塞部分の厚みを一端の外面から弁本体の内部空間側の内面にわたって切り込み、該切り込みの一対の対向面が前記筒状の弁本体の長さ方向と直交する方向に移動可能に形成した弁部と、該内部空間の内周面から内部空間へと膨出した突起部を備え、該突起部が外周面方向に押されることによって、弁部の切り込みの密着した一対の対向面が移動して閉塞部分の外面側空間と弁本体の内部空間が連通することを特徴とした弁構造としても良い。
【0008】
上記弁構造の突起部は、内部空間の内周面の周方向に所定の間隔で複数備えられている場合もあり、内部空間の内周面の周方向に連続して備えられている場合もある。さらに、 弁本体の固着部は、軟質膨張物本体に弁構造を係止する鍔部を、該固着部の外周縁から延出して、弁本体の外周面の周方向に連続して備えていても良い。また、弁本体の固着部は、軟質膨張物本体に弁構造を係止する係止部を、弁本体の他端から一端方向に所定の間隔を有するとともに弁本体の外周面から延出し、弁本体の外周面の周方向に連続して備えていても良い。
さらに、軟質膨張物本体は、内外面を貫通した穴部を有し、該穴部に上述した弁構造の弁本体の固着部を嵌合したことを特徴とする軟質膨張物としても良い。その軟質膨張物本体は、回転成形により一体に形成されていても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軟質膨張物の内部空間に備えられて該軟質膨張物の内側空間の気密を保つとともに、弁部に触れることなく気体の注入排出が可能な弁構造およびその弁構造を適用した軟質膨張物を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態に係る弁構造について、添付図面に基づいて説明する。
なお、図1は、軟質膨張物本体24に備えた実施例1による弁構造10の形状を示し、(a)はその側面図であり、(b)は弁構造10と軟質膨張物本体24の一部の断面図であり、(c)は弁構造10を一端側から見た図である。また、図2は、軟質膨張物本体24に備えた実施例1による弁構造10の弁本体11にノズル40を挿入した状態を示し、(a)はノズル40挿入時の断面図であり、(b)はノズル40が案内される状態を示す断面図であり、(c)は弁構造10が開弁した状態を示す断面図である。
また、図3は、軟質膨張物本体24に備えた実施例2による弁構造10の形状を示し、(a)はその側面図であり、(b)は弁構造10と軟質膨張物本体24の一部の断面図であり、(c)は弁構造10を一端側から見た図である。また、図4は、軟質膨張物本体24に備えた実施例2による弁構造10の弁部14が開弁した状態を示し、(a)は弁構造と軟質膨張物本体24の一部の断面図であり、(b)は弁構造を一端側から見た図であり、(c)は(a)のA−A線による断面図である。
さらに、図5は弁構造10と軟質膨張物本体24の他の嵌合形態を示す断面図であり、図6は弁構造の筒部の他の形態を示す断面図であり、図7は突起部の他の形態を示す説明図であり、図8は弁構造10と軟質膨張物本体24との関係を示す斜視図であり、図9は軟質膨張物20の使用形態の一例を示した斜視図である。
また、本発明に係る弁構造10によって軟質膨張物20に注入排出される空気は、大気はもとより、広く気体全般を含む概念である。例えば、ヘリウム等のガスであっても本発明の範囲内である。
【実施例1】
【0011】
本実施例による弁構造10は、軟質材料、例えばシリコン等の樹脂材料やゴム材料をインジェクション成形で略円筒状に形成され、図8に示すような、例えば回転成形で成形された略直方体の軟質膨張物本体24(図中破線参照)の穴部21に嵌め合わされて使用されるものである。
その弁構造10の形状は、図1に示すように、円筒状に形成された弁本体11と、弁本体11を軟質膨張物本体24に係止する固着部Fと、軟質膨張物20に空気を注入排出するとともに気密を保持する弁部14と、その弁部14の合わせ面を開閉するための隆起部12cと、該隆起部12cにノズル40の先端部40aを案内する突起部30とを備えている。またそれらの構成に加えて、本実施例では、固着部Fには鍔部15と係止部16を備えている。
【0012】
前記円筒状に形成された弁本体11の一端12は所定の厚みDをもって閉塞され、他端13は開放されている。従って、弁本体11には、他端13が開放された内部空間Sが形成されている。
なお弁本体11の筒形状として、本実施形態では断面形状が円形の円筒形状に形成されているが、筒の断面形状は円形に限定されるものではなく、例えば楕円形状や四角形であっても良い。
【0013】
また、固着部Fは、弁本体11の外周面の他端13側に備えられている。さらに、本実施例では、固着部Fとして、鍔部15と係止部16を備えている。
前記鍔部15は、弁本体11の他端13の外周縁13aから、該弁本体11に直交する外向きに延出するとともに、周方向に連続した円環状に形成されている。前記係止部16は、弁本体11の他端13から一端12の方向に所定の間隔Pを有した外周面11aに備えられている。その係止部16は、該外周面11aから、該弁本体11に直交する外向きに前記鍔部15よりも小径に延出するとともに、周方向に連続した円環状に形成されている。
【0014】
図1(b)に示すように、軟質膨張物本体24の穴部21には周溝22が形成されており、該周溝22に前記鍔部15が嵌まり合うことにより、弁構造10が穴部21に固着されて係止される。この場合には、後述する弁部14が軟質膨張物20に内装された状態となる。
さらに、周溝22の軟質膨張物20内面側は穴部21の中心方向に向けて突出した顎部23を形成している。
顎部23は、その内径面が、筒状に形成された弁本体11の外周面の径よりも僅かに小径の空間を形成するように突出するとともに、前記所定の間隔Pと同じ厚みを有している。従って、軟質膨張物本体24の顎部23と弁本体11の外周面とが密着して緊迫力が作用するとともに、鍔部15と係止部16に顎部23が挟み込まれるように密着することにより、弁構造10が穴部21の所定位置に強固に係止される。
【0015】
なお、本実例では、固着部Fとして鍔部15と係止部16を備えたが、弁本体11が軟質膨張物本体24の所定位置に係止固定される限りにおいて、固着部Fは鍔部15と係止部16を備えない場合もある。その場合には、軟質膨張物本体24の穴部21を弁本体11の外周面の径よりも僅かに小径に形成するとともに、該穴部21の厚みは、弁本体11と穴部21の接触面積を大きくなるように、十分な厚みで形成されることが好ましい。これにより、固着部Fと穴部21とが広い面積で密着するとともに、固着部Fに穴部21の緊迫力が作用して、弁構造10が穴部21の所定位置に強固に係止される。
【0016】
弁部14は前記弁本体11の一端12に形成されている。具体的には、前記一端12の閉塞部分の厚みDが一端12の外面12aから内部空間S側の内面12bにわたって切り込まれている。なお、切り込みは、本実施例では、弁本体11の一端12の外面12aの外周側から、弁本体11の内部空間Sの中心側に向けて斜めに切り込まれて形成されている(図1(b)および図1(c)参照)。
また、該切り込みによって形成された一対の対向面14a,14bは隙間無く密着(閉弁状態)することにより軟質膨張物20内部の気密を保持するとともに、切り込みによって形成された一対の対向面14a,14bのうち、切り込みの傾斜面の外面12a側となる一方の対向面14aが弁本体の長さ方向(図中上下方向)に移動(開弁状態)することにより、弁本体11の内部空間Sと一端12の外面側の空間が連通する。
【0017】
突起部30は、後述する弁本体11の隆起部12cよりも他端13側の内周面に備えられ、その内周面から内部空間Sへと膨出して形成されている。本実施例では、切り込みの一方側(移動する対向面14a側)の内周面の周方向に3つの突起部30a,30b,30cが備えられ、切り込みの他方側(対向面14b側)の内周面に1つの突起部30dが備えられている。なお、4つの突起部30a,30b,30c,30dは互いに周方向に略90度の間隔で配されている。
なお、突起部30a,30b,30c,30dは、本実施例では断面四角形に形成されるとともに、その上端側には、内部空間Sに向けた面取りが施されている。
【0018】
これら4つの突起部30a,30b,30c,30dは、後述するノズル40の先端部40aを所定位置に案内するガイドとして作用する。本実施例では、前記所定位置としてノズル40の先端部40aを各突起部30a,30b,30c,30dの内周方向端部で内部空間Sの略中心軸上に案内するように配列している。また、ノズル40の先端部40aは、上記面取りによって突起部30a,30b,30c,30dに引っ掛かることなく円滑に案内される。
なお、突起部30(30a,30b,30c,30d)は、弁構造10を成形する際の金型に所定の突起を設けることによって形成することができる。
本実施例では、突起部30a,30b,30c,30dを断面四角形状に形成したが、これに限定されることなく、他の形状であっても良い。例えば、内部空間Sの周面から半楕円形に膨出して形成されていても良い。
【0019】
隆起部12cは、前記切り込みの一方側(移動する対向面14a側)の内面12bから内部空間Sに向けて所定長さで隆起して形成されている。本実施例では、前記突起部30aと対向面14aとの間に、平面視該対向面14aと並行に弁本体11の内周面に架け渡されて形成されている(図1(c)参照)。なお、隆起部12cの両端部の上面と突起部30b,30cの下端とが連続して形成されている。
【0020】
このように形成した弁構造10は、軟質膨張物20に空気が充填されている場合には、その気圧によって、切り込み部(弁部14)を閉じる(対向面14a,14b同士が重なり合う)方向に押圧され、切り込み部(弁部14)の対向面14a,14bが隙間無く密着して軟質膨張物20の内側空間Rの気密を保つことができる。
また、軟質膨張物20に空気を注入排出する場合には、ノズル40を弁本体11の開放された他端13から弁本体11の内部空間Sに向けて挿入する(図2(a)参照)。なお、本実施例では、ノズル40は、その軸芯線に沿ってノズル穴40bを備えるとともに、ノズル40の先端部40aは先細り形状に形成されている。
ノズル40の先端部40aが突起部30a,30b,30c,30dに当接するまで挿入されると、ノズル40の先端部40aは突起部30a,30b,30c,30dに案内されて、ノズル40の先端部40aの位置が内部空間Sの中心寄りに修正される(図2(b)参照)。
【0021】
さらに、ノズル40を挿入していくと、ノズル40のノズル穴40bの外周側が隆起部12cに当接する。このとき、ノズル40の先端部40aは、突起部30a,30b,30c,30dによって案内されているので、隆起部12cのない領域(図2(b)符号S1参照)に嵌まり込んで隆起部12cに当接しなくなってしまう状態や、隆起部12cにノズル穴40bが塞がれるように当接してしまう状態となることが回避される。
【0022】
このように、前記突起部30(30a,30b,30c,30d)と隆起部12cとの配置関係は、突起部30がノズル40の先端部40aを案内した結果、ノズル40の先端部40aが隆起部12cと確実に当接し、なおかつ、該隆起部12cでノズル40のノズル穴40bが塞がれることのないように配されていることを要する。本実施例では、ノズル40の先端部40aを弁本体11の内部領域Sの略中心軸上に案内するように隆起部12cを備えるとともに、隆起部12cを弁本体11の内部領域Sの略中心軸上からずれるように配している。
【0023】
この場合において、さらにノズル40を押し込むと、ノズル40の先端部40aが、隆起部12cを弁本体11の長さ方向に押し出すように作用する。
隆起部12cを弁本体11の長さ方向に押し出そうとする力によって、隆起部12c側の弁本体11の側面部分12dが弁本体11の長さ方向に伸長させられて、隆起部12cと一体に形成された弁本体11の一端12が弁本体11の長さ方向に押し出される。
このとき、弁部14の対向面14aが弁本体の長さ方向に移動する。これにより、弁部14の対向面14aの対向面14bと密着した関係(閉弁状態)が解かれて、対向面14a,14b間に隙間が生じることで、弁本体11の閉塞した一端12の外面12aと内部空間Sが連通して開弁状態となる(図2(c)参照)。
【0024】
弁部14を開弁させた状態において、ノズル40の先端部40aは隆起部12cを介して弁部14の対向面14a,14b間を開けているので、弁部14の対向面14a,14bには異物(例えばノズル40の先端部40a)が触れることがない。
従って、弁部14の対向面14a,14bが荒れたり変形したりすることがないので、弁部14を閉弁させた状態では、長期間にわたって、弁部14の対向面14aの対向面14bとの良好な密着状態を得ることができる。
【0025】
また、ノズル40の先端部40aは先細り形状に形成されているので、弁本体11の他端13側では、ノズル40の先細りに縮径されていない周面が、内部空間Sの他端13の開口を塞ぐように他端13の縁部と密着する。
これにより、ノズル40と他端13との密着部で軟質膨張物20の内部空間Rと外部との気密が保たれるので、前記ノズル40のノズル穴40bに送気することにより、軟質膨張物20に空気が充填される。
【0026】
なお、本実施例では、先端部40aが先細り形状をしたノズル40を採用したが、ノズル40の形状はこれに限定されず、先端部40aが隆起部12cを押し出すことが可能であれば他の形状であっても良い。例えば、ノズル40は先端部40aが段差をもって縮径され、ノズル40の縮径されていない周面と弁本体11の他端13側とが密着しても良い。あるいは、ノズル40は、先端部40aを含めて一定の径で形成されていても良い。この場合には、弁本体11の他端13側にノズル40との径差を埋める密着部材(例えば、リング状の薄膜など)を備えれば良い。
また、軟質膨張物20に空気を充填する方法として、前記ノズル40に代えて、図示しない中実な棒状体を使用しても良い。この場合には、弁本体11に棒状体を差し込んで、隆起部12cを押し出すことで弁部14を開弁するとともに、弁本体11の他端13側の開口を覆うように送風パイプを被せて空気を送り込んでも良い。
【0027】
軟質膨張物20に充填されていた空気を排気する場合には、ノズル40のノズル穴40bを大気に開放すれば良い。また、ノズル40を用いない場合には、図示しない棒状体を差し込んで隆起部12cを押し込んで弁部14を開弁することによっても、弁本体11の一端12a側と内部空間Sとが連通した状態となり、軟質膨張物20に充填された空気の排気が可能となる。
【実施例2】
【0028】
本実施例による弁構造10は、弁本体11の外形形状において、上記実施例1で説明した弁構造10の外形形状と同一であり、その弁部14と弁部14を開閉弁する構造に特徴を有する。従って、以下はその特徴部分を中心に説明し、弁本体11の外形形状に関する説明を省略する。
弁構造10の内側形状は、図3(a)および図3(b)に示すように、円筒状に形成された弁本体11と、軟質膨張物20に空気を注入排出するとともに気密を保持する弁部14と、その弁部14の拡開作用をする突起部30を備えている。
【0029】
前記円筒状に形成された弁本体11の一端12は所定の厚みDをもって閉塞され、他端13は開放されている。従って、弁本体11には、他端13が開放された内部空間Sが形成されている。また、その内部空間Sの一端12側は先細りに形成されている。
なお弁本体11の筒形状として、本実施例では断面形状が円形の円筒形状に形成されているが、筒の断面形状は円形に限定されるものではなく、例えば楕円形状や四角形であっても良い。
【0030】
さらに、弁部14は前記弁本体11の一端12に形成されている。具体的には、前記一端12の閉塞部分の厚みDが一端12の外面12aから内部空間S側の内面12bにわたって切り込まれている。
また、該切り込みは、図3(c)に示すように、弁本体11の一端12の端面を横切って切り込まれている。このように切り込まれることによって、一端12の切り込み部分(弁部14)が、筒状の弁本体11の長さ方向(図中上下方向)と直交する方向に離間するように移動可能となっている。なお、切り込み部(弁部14)の対向面14a,14bは閉弁時(非拡開時)には隙間無く密着している。
【0031】
またさらに、突起部30は、弁本体11の内部空間Sに備えられ、その内周面から内部空間Sへと半楕円形状に膨出して形成されている。その突起部30は、内部空間Sの内周面の周方向に所定の間隔で複数備えられており、本実施形態では一例として4つの突起部30a,30b,30c,30dを備えている。なお、突起部30は、弁構造10を成形する際の金型に所定の突起を設けることによって形成することができる。
本実施例では、突起部30a,30b,30c,30dを半楕円形状に膨出して形成したが、これに限定されることなく、他の形状であっても良い。例えば、断面四角形状に形成されていても良い。
【0032】
このように形成した弁構造10は、軟質膨張物20に空気が充填されている場合には、その気圧によって、対向面14a,14b(弁部14)を閉じる方向に押圧され、弁部14の対向面14a,14bが隙間無く密着して軟質膨張物20の内側空間Rの気密を保つことができる。
また、軟質膨張物20に空気を注入排出する場合には、図4(a)に示すように、弁本体11の開放された他端13からノズル40を挿入する。なお、本実施例では、ノズル40の先端部40aは先細り形状に形成されている。
このとき、ノズル40の先端部40aが突起部30a,30b,30c,30dをそれぞれ外周面方向に押し出すことにより、該突起部30a,30bと一体に形成されている弁部14の対向面14aが外周面方向図中左側に押し出されるとともに、該突起部30c,30dと一体に形成されている弁部14の対向面14bが外周面方向図中右側に押し出される。これにより、対向面14a,14bの密着状態が解かれ、該対向面14a,14bが離間するように移動して開弁する。
【0033】
このとき、図4(a)乃至図4(c)に示すように、切り込みの内部空間S側の内面12bが拡開方向(図中左右方向)に引っ張られることにより、前記先細りに形成された内部空間Sの該先細りの先端部(内部空間S側の内面12b)から一端12の外面12aにわたった切り込みが穴Hを形成する。この場合において、弁部14の対向面14a,14b間を通して弁本体11の一端12の外面側の空間とが穴Hによって連通する。
すなわち、穴Hの大きさは、切り込みの深さよって調節することができ、深く切り込む程、開弁時の穴Hの大きさが大きくなる。なお、この穴Hの大きさは、弁構造10が使用される軟質膨張物20のサイズや使用環境によって自由に設定されればよい。
【0034】
なお、弁部14を開弁させた状態において、ノズル40の先端部40aは突起部30a,30bを介して弁部14の対向面14a,14b間を開けているので、弁部14の対向面14a,14bには異物(例えばノズル40の先端部40a)が触れることがない。
従って、弁部14の対向面14a,14bが荒れたり変形したりすることがないので、弁部14を閉弁させた状態では、長期間にわたって、弁部14の対向面14aの対向面14bとの良好な密着状態を得ることができる。
【0035】
また、上述した各実施例では、軟質膨張物本体24と弁本体11の嵌め合いにおいて、軟質膨張物本体24の穴部21の周溝22が弁本体11の鍔部15と嵌まり合うとともに、周溝22の軟質膨張物20内面方向に形成された顎部23が、弁本体11の鍔部15と係止部16とに挟み込まれる構成としたが、軟質膨張物本体24の穴部21は、図5に示すように、上記鍔部15と嵌まり合う周溝22に加えて、係止部16と嵌まり合う周溝25を備える構成としても良い。この場合には、弁本体11は軟質膨張物本体24の穴部21により強固に係止される。
また、本実施形態において、弁本体11を円筒状に形成しているが、一端12が所定の厚みDをもって閉塞され、他端13が開放されていれば他の形状であっても良い。例えば、図6に示すように、弁本体11の一端12側が先細りの形状に形成されていても良い。
【0036】
さらに、上述した各実施例による弁本体11の内部空間Sには、その内周面から内部空間Sへと膨出し、内部空間Sの内周面の周方向に4つの突起部30a,30b,30c,30dを備えているが、その突起部30a,30b,30c,30dは他の配列であっても良い。
例えば、2つの突起部30a,30bが対向して配されていても良いし(図7(a)参照)、3つの突起部30a,30b,30cが周方向に所定の間隔で配されていても良い(図7(b)参照)。あるいは、突起部30aがひとつだけ配されていても良いし(図7(c)参照)、または、突起部30は、内部空間Sの内周面の周方向に連続した円環状の突起部30aとして備えられていても良い(図7(d)参照)。
これらの配置であっても、ノズル40の先端部40aを突起部30で隆起部12cに案内して、弁部14を開弁することができる(実施例1参照)。またあるいは、ノズル40の先端部40aで突起部を外周方向に押し出して弁部14を開弁することができる(実施例2参照)。従って、本実施例による弁本体11はインジェクション成形だけでなく、ゾルスラッシュ成形(回転成形)によっても成形することができる。
【0037】
さらに、上述の各実施例の弁構造10によれば、弁構造10は、軟質膨張物本体24の穴部21に嵌め合わされて使用されているので、弁構造10が軟質膨張物本体24の外面に露出することが無く、軟質膨張物20の美観を損ねず、かつ、軟質膨張物20を使用中に強い外力が働いたとしても弁構造10が破損して軟質膨張物20の内側空間Rの気密が保てなくなるようなことも無くなった。
【0038】
また、上述の各実施例では、略直方体に成形された軟質膨張物本体24に弁構造10が嵌め合わされた場合を説明したが、軟質膨張物本体24の形状は、前記略直方体に限られず、使用環境の要求に応じて自由に選択可能である。軟質膨張物本体24は、回転成形によって成形することができるので、例えば、図9に示すような片側の厚みが薄く形成された楔形状の軟質膨張物本体24であっても容易に成形可能である。
【0039】
図9に示すような楔形状の軟質膨張物本体24に弁構造10を嵌め合わせた軟質膨張物20は、特に寝たきりの人を介護する場合に需要が高く、その使用形態の一例を挙げれば、空気を抜いた軟質膨張物20を被介護者の体の下に差し入れた後に、弁構造10に送気して軟質膨張物20を膨張させることにより、被介護者の体を横向きに起こして、着衣の着替え等の介護をすることが可能となる。
これにより、従来、介護人が腕力で被介護者の体を起こしていた労力を軽減させるとともに、被介護者の体を広範囲で支えるので、被介護者の体の一部分に強い外力が作用することも無く、例えば床ずれを起こしている被介護者であっても苦痛を与えることが少なくなった。
【0040】
さらに、介護を終了する場合には、軟質膨張物本体24に嵌め合わせた弁構造10から容易かつ穏やかに排気させることが可能であるので、被介護者に苦痛を与えずに被介護者の体を介護前の位置に戻すことができる。
なお、上記使用形態の一例では、空気を抜いた軟質膨張物20を被介護者の体の下に差し入れた後に、弁構造10に送気して軟質膨張物20を膨張させているが、この使用形態に限らず、例えば、膨張させた軟質膨張物20を体の下に差し込んでクッションとして使用しても良い。
【0041】
また、軟質膨張物20の他の使用形態として、例えば、干渉梱包材としての使用形態が挙げられる。軟質膨張物本体24は回転成形により一体に形成され、その形状の自由度が非常に高いことから、被梱包物の形状に合わせた干渉梱包材を成形することができる。
この場合には、被梱包物の梱包時には、弁構造10から空気を注入して軟質膨張物20を膨張させて干渉梱包材として使用する。また、梱包を解いた場合には、軟質膨張物20の内部空間Rの空気を弁構造10から排気して小さく畳むことができるので、保管場所のスペースを有効に利用することができる。さらに、小さく畳んだ軟質膨張物20は出荷元に返却され(リターナブル)、出荷元では返却された軟質膨張物20を再び膨張させて干渉梱包材として再使用(リユース)することができる。
【0042】
これにより、従来、解梱後は細かく分断して不燃ゴミとして廃棄されていた干渉梱包材に比べて、再使用することで資源を有効に活用することができるほか、不燃ゴミとすることもないので環境の保護にも役立つ。
また、弁構造10の弁部14は軟質膨張物本体24に内装された状態であるので、度重なる使用過程において、軟質膨張物20の表面が激しくこすれた場合であっても弁部14が破損して気密が漏れるようなこともなく、干渉梱包材としての用途を確保することができる。
さらに、弁部14に触れることなく弁部14を開弁したり閉弁したりすることが可能であるので、度重なる使用によって空気の注入排出が繰り返された場合であっても、弁部14の機能が低下することなく、軟質膨張物20の気密を保つことができる。
【0043】
なお、軟質膨張物本体24が回転成形以外の成形方法により一体に形成されている場合であって、本発明による弁構造10を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】軟質膨張物本体に備えた実施例1による弁構造の形状を示し、(a)はその側面図であり、(b)は弁構造と軟質膨張物本体の一部の断面図であり、(c)は弁構造を一端側から見た図である。
【図2】軟質膨張物本体に備えた実施例1による弁構造10の弁本体11にノズル40を挿入した状態を示し、(a)はノズル40挿入時の断面図であり、(b)はノズル40が案内される状態を示す断面図であり、(c)は弁構造10が開弁舌状態を示す断面図である。
【図3】軟質膨張物本体に備えた実施例2による弁構造の形状を示し、(a)はその側面図であり、(b)は弁構造と軟質膨張物本体の一部の断面図であり、(c)は弁構造を一端側から見た図である。
【図4】軟質膨張物本体に備えた実施例2による弁構造の弁部が開弁した状態を示し、(a)は弁構造と軟質膨張物本体の一部の断面図であり、(b)は弁構造を一端側から見た図であり、(c)は(a)のA−A線による断面図である。
【図5】弁構造と軟質膨張物本体の他の嵌合形態を示す断面図である。
【図6】弁構造の筒部の他の形態を示す断面図である。
【図7】突起部の他の形態を示す説明図である。
【図8】弁構造と軟質膨張物本体との関係を示す斜視図である。
【図9】軟質膨張物の使用形態の一例を示した斜視図。
【符号の説明】
【0045】
10 弁構造
11 弁本体
12 一端
12a 一端の外面
13 他端
20 軟質膨張物
24 軟質膨張物本体
30 突起部
S 弁構造の内部空間
R 軟質膨張物の内側空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の内部空間を有する軟質膨張物本体に固着して該軟質膨張物本体とともに軟質膨張物を構成し、該軟質膨張物本体の内部空間に弁部を内装して該内部空間の気密を保つとともに、気体の注入排出が可能な弁構造であって、
一端が所定の厚みで閉塞され、他端が開放された筒状の弁本体と、
該弁本体の外周面の他端側に配され、前記軟質膨張物本体と固着する固着部と、
該一端の閉塞部分の厚みを一端の外面から弁本体の内部空間側の内面にわたって切り込み、該切り込みの一方の対向面を前記筒状の弁本体の長さ方向に移動可能に形成した弁部と、
前記切り込みの一方側に内部空間に向けて突出した隆起部を備え、
該隆起部が弁本体の長さ方向に押されることによって、弁部の切り込みの密着した一方の対向面が移動して閉塞部分の外面側空間と弁本体の内部空間が連通することを特徴とした弁構造。
【請求項2】
弁本体の隆起部よりも他端側の内周面には、該内周面から内部空間へと膨出した突起部を備えていることを特徴とした請求項1に記載の弁構造。
【請求項3】
切り込みは、一端の外面の外周側から弁本体の内部空間側の内面の中心側に向けて斜めに切り込まれていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の弁構造。
【請求項4】
所定の内部空間を有する軟質膨張物本体に固着して該軟質膨張物本体とともに軟質膨張物を構成し、該軟質膨張物本体の内部空間に弁部を内装して該内部空間の気密を保つとともに、気体の注入排出が可能な弁構造であって、
一端が所定の厚みで閉塞され、他端が開放された筒状の弁本体と、
該弁本体の外周面の他端側に配され、前記軟質膨張物本体と固着する固着部と、
該一端の閉塞部分の厚みを一端の外面から弁本体の内部空間側の内面にわたって切り込み、該切り込みの一対の対向面が前記筒状の弁本体の長さ方向と直交する方向に移動可能に形成した弁部と、
該内部空間の内周面から内部空間へと膨出した突起部を備え、
該突起部が外周面方向に押されることによって、弁部の切り込みの密着した一対の対向面が移動して閉塞部分の外面側空間と弁本体の内部空間が連通することを特徴とした弁構造。
【請求項5】
突起部は、内部空間の内周面の周方向に所定の間隔で複数備えられていることを特徴とした請求項2〜請求項4のいずれかに記載の弁構造。
【請求項6】
突起部は、内部空間の内周面の周方向に連続して備えられていることを特徴とした請求項2〜請求項4のいずれかに記載の弁構造。
【請求項7】
弁本体の固着部は、軟質膨張物本体に弁構造を係止する鍔部を、該固着部の外周縁から延出して、弁本体の外周面の周方向に連続して備えていることを特徴とした請求項1〜請求項6のいずれかに記載の弁構造。
【請求項8】
弁本体の固着部は、軟質膨張物本体に弁構造を係止する係止部を、弁本体の他端から一端方向に所定の間隔を有するとともに弁本体の外周面から延出し、弁本体の外周面の周方向に連続して備えていることを特徴とした請求項1〜請求項7のいずれかに記載の弁構造。
【請求項9】
軟質膨張物本体は、内外面を貫通した穴部を有し、該穴部に請求項1〜請求項8のいずれかに記載の弁構造の弁本体の固着部を嵌合したことを特徴とする軟質膨張物。
【請求項10】
軟質膨張物本体は、
回転成形により一体に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の軟質膨張物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−196664(P2008−196664A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35040(P2007−35040)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(391053917)株式会社オビツ製作所 (9)
【Fターム(参考)】