説明

弁装置

【課題】使用流体によって生ずる寸法変化に伴うメイン弁の摺動性の低下を抑制して、流体の流入出を制御する機能を適正に発揮し得る弁装置を提供する。
【解決手段】作動弁13により第三流路8を流体が流入出可能な状態と流入出不能な状態とに変換することによって、メイン弁3に作用する力のバランスを変化させ、該メイン弁3を弁座部材9に当接または弁座部材9から離間するようにシリンダ2内で摺動させ、第一流路6と第二流路7との間で流体の流入出を制御する弁装置1であって、メイン弁3の摺動面16aが金属材料により形成されているから使用流体に曝されることによって生ずる膨潤や収縮等に伴う寸法変化を抑制し、メイン弁3の摺動性の低下を抑制できる。また、メイン弁3は、弁座部材9と当接する部位が樹脂材料またはゴム材料により形成されているから、弁座部材9と当接する部位のシール性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メイン弁の摺動によって流体の流入出を制御する弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液化石油ガス(以下、LPGという)やジメチルエーテル(以下、DMEという)等の液化ガス燃料を貯留する燃料タンクには、過充填防止装置や燃料供給装置等が配設されている。
【0003】
上記の過充填防止装置や燃料供給装置に適用される弁装置としては、例えば、特許文献1のように、電磁弁を作動制御することによって、メイン弁にその摺動方向両側から作用する力のバランスを変化させてメイン弁を摺動し、これに伴って燃料タンク内の燃料を該燃料タンク外へ供給可能な状態と供給不能な状態とに変換可能とするものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2010/146968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した過充填防止装置や燃料供給装置等の弁装置は、メイン弁の摺動によって所望の働きをするものであることから、作動弁や電磁弁の作動に伴ってメイン弁がスムーズに摺動することが必要である。そのため、メイン弁には、作動弁や電磁弁の作動に対して反応性が良くスムーズに摺動できるように、軽量な樹脂製のものが適用されている。しかし、メイン弁は流体に曝されることから、樹脂製のメイン弁の場合には、使用される流体によって膨潤や収縮等の寸法変化を生じ易く、これに伴ってメイン弁の摺動性の低下が懸念される。例えば、樹脂製のメイン弁を配した過充填防止装置や燃料供給装置を備える燃料タンクに上記したDME燃料を貯留する場合には、該DME燃料に曝されたメイン弁が膨潤して寸法変化を生じ、前記した摺動性の低下が生じ易い。これに伴って、流体の流入出を制御する弁装置としての機能が低下してしまう。
【0006】
本発明は、使用する流体によって生ずる寸法変化に伴うメイン弁の摺動性の低下を抑制して、流体の流入出を制御する機能を適正に発揮し得る弁装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の弁装置は、内部空域を有する筒状のシリンダと、前記シリンダの内部空域に摺動可能に配されて該内部空域を第一空域と第二空域とに隔てるプレート状のメイン弁であって、該第一空域と第二空域とを連通するオリフィス孔を備えたメイン弁と、前記メイン弁の摺動方向に沿って前記第一空域から第二空域へ向かって該メイン弁を付勢する付勢手段と、前記オリフィス孔の第二空域側の開口部を臨むように第二空域に接続されて該第二空域と連通する第一流路と、前記第二空域に接続されて該第二空域と連通する第二流路と、前記第二空域側へ摺動する前記メイン弁が当接することによりこの当接位置よりも第二空域側へメイン弁が摺動しないように設けられた弁座部材であって、前記メイン弁が該弁座部材に当接した状態で前記第一流路と第二流路との間で流体を流入出不能とし、該メイン弁が弁座部材と離間した状態で第一流路と第二流路との間で流体を流入出可能とするように設けられた弁座部材と、前記第一空域に接続されて該第一空域と連通する第三流路と、前記第三流路を、流体を流入出可能な状態と流入出不能な状態とに変換する作動弁とを備えた弁装置であって、前記メイン弁は、前記シリンダの内側壁面と対向する摺動面が金属材料により形成されていると共に前記弁座部材と当接する部位が樹脂材料またはゴム材料により形成されていることを特徴とする。
【0008】
かかる構成の弁装置では、第一空域および第二空域の流体圧や付勢手段による付勢力といったメイン弁に作用する力のバランスが変化することによって、メイン弁がシリンダ内で摺動し、第一流路と第二流路との間で流体の流入出を制御する。すなわち、作動弁により第三流路を流体が流入出可能な状態に変換すると、第一空域内に生ずる流体の圧力は第三流路を介してシリンダの外部へ開放される。この状態で、第一流路の内圧と第二流路の内圧とによりメイン弁に作用する力が付勢手段の付勢力よりも大きくなると、メイン弁が第一空域側へ摺動し、第二空域を介して第一流路と第二流路との間で流体が流入出可能となる。一方、作動弁により第三流路を流体が流入出不能な状態に変換すると、メイン弁のオリフィス孔を介して第一空域の内圧と第二空域の第一流路側の内圧とが略等しくなる。この状態で、第二空域の第二流路側の内圧よりも第一流路側の内圧が高い場合には、必ずメイン弁には第一空域側から第二空域側へ作用する力が大きくなることから、メイン弁が第一空域側に摺動しないで弁座部材に当接し、高圧の第一流路から低圧の第二流路への流体の流出が不能となる。また、作動弁により第三流路を流体が流入出不能な状態で、第二空域の第一流路側の内圧よりも第二流路側の内圧が高い場合には、第一流路の内圧と第二流路の内圧とによりメイン弁に作用する力が付勢手段の付勢力よりも大きくなれば、メイン弁が第一空域側へ摺動し、高圧の第二流路から低圧の第一流路への流体の流出が可能となる。
【0009】
そして、この弁装置において、メイン弁は、使用流体によって膨潤や収縮等を生じ難い金属材料により摺動面が形成されていることから、膨潤や収縮等を生じ易い樹脂材料やゴム材料により摺動面が形成されているものに比して、該摺動面に生ずる膨潤や収縮等に伴う寸法変化を抑制できる。これにより、メイン弁の摺動性の低下を抑制して、上記した流体の流入出を制御する機能を適正に発揮できる。また、メイン弁は、弁座部材に当接する部位が樹脂材料またはゴム材料により構成されていることから、該当接部位が金属材料により構成されているものに比して、メイン弁と弁座部材とが当接する部位のシール性を向上できる。さらに、本発明のメイン弁は、金属材料のみから構成されているものに比して軽量化されることから、作動弁の作動によって第一空域に生ずる圧力変化に対する反応性が良く、よりスムーズに摺動することができる。したがって、流体の流入出を制御する弁装置としての機能を一層適正に発揮することができる。
【0010】
上述した本発明の弁装置において、メイン弁は、第一空域に臨んで開口する断面コ字形状に形成されている構成が提案される。
【0011】
かかる構成の弁装置は、メイン弁の外形寸法を大きくすることなく第一空域の容積を大きくできるから、作動弁の作動によって生ずる第一空域内の圧力変化の速度を遅くすることができる。ここで、作動弁により第三流路を流体が流入出可能な状態から第三流路を流体が流入出不能な状態に変換したときに、メイン弁が急激に第二空域側に摺動して弁座部材に当接すると、第一流路から第二流路へ流れる流体の流速が速い程この流体の慣性によって第一流路内の圧力が急上昇するウォーターハンマー現象が生ずる。しかしながら、本構成の弁装置によれば、第一空域内の圧力上昇の速度を遅くすることができるため、メイン弁の急激な摺動を抑制してウォーターハンマー現象の程度を抑制することができる。
【0012】
上述した本発明の弁装置において、燃料タンクに配設される弁装置であって、第一流路は燃料タンク外に連通するように設けられ、第二流路および第三流路は燃料タンク内に連通するように設けられ、作動弁は燃料タンク内に貯留する燃料が所定量未満の場合に第三流路を流体が流入出可能な状態に変換し、燃料タンク内に貯留する燃料が所定量を超えた場合に第三流路を流体が流入出不能な状態に変換するものである構成が提案される。
【0013】
かかる構成の弁装置は、燃料タンク内の燃料が所定量未満であれば第一流路から第二流路を介して燃料タンク内へ燃料を充填することができ、燃料が所定量となると、第一流路から第二流路へ燃料が流れずに燃料の充填を強制的に停止できる。すなわち、本構成の弁装置を、燃料タンクへ充填する燃料の過充填を防止するための過充填防止装置として適用することができる。
【0014】
上述した本発明の弁装置において、燃料タンクに配設される弁装置であって、第一流路は燃料タンク内に連通するように設けられ、第二流路はエンジンの燃料ポンプに連通するように設けられ、第三流路は第二流路と連通するように設けられ、作動弁は電磁弁として構成されているものである構成が提案される。
【0015】
かかる構成の弁装置は、電磁弁である作動弁を作動制御することにより、エンジンの燃料ポンプへ供給される燃料の供給と供給停止とに切り換えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の弁装置は、上述したように、作動弁により第三流路を流体が流入出可能な状態と流入出不能な状態とに変換することによって、メイン弁に第一空域側から作用する力と第二空域側から作用する力のバランスを変化させ、該メイン弁を弁座部材に当接または弁座部材から離間するようにシリンダ内で摺動させ、第一流路と第二流路との間で流体の流入出を制御する弁装置であって、メイン弁は、その摺動面が金属材料により形成されているから使用流体に曝されることによって摺動面に生ずる膨潤や収縮等に伴う寸法変化を抑制し、メイン弁の摺動性の低下を抑制できる。また、メイン弁は、弁座部材と当接する部位が樹脂材料またはゴム材料により形成されているから、該当接部材が金属材料により構成されているものに比して、メイン弁と弁座部材とが当接する部位のシール性を向上できる。そして、こうした作用により、前記した流体の流入出を制御する機能をより適正に発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の弁装置1を示す説明図である。
【図2】メイン弁3に作用する力の様子を示す説明図である。
【図3】作動弁13を開弁して第一流路6から第二流路7へ流体が流れている状態を示す説明図である。
【図4】第一流路6から第二流路7へ流体が流れている状態で作動弁13を閉弁したときの状態を示す説明図である。
【図5】作動弁13を閉弁して第一流路6から第二流路7へ流体が流出不能になった状態を示す説明図である。
【図6】実施例2の過充填防止装置21を示す断面図である。
【図7】実施例3の弁装置51における、電磁弁63を開弁して第一流路6から第二流路7へ流体が流れている状態を示す説明図である。
【図8】実施例3の弁装置51における、電磁弁63を閉弁して第一流路6から第二流路7へ流体が流出不能になった状態を示す説明図である。
【図9】実施例4の燃料供給装置71の、(A)縦断面図と(B)横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0018】
実施例1の弁装置1は、図1のように、円筒状のシリンダ2の内部空域にプレート状のメイン弁3が摺動可能に配され、該メイン弁3によって前記内部空域が第一空域4と第二空域5とに隔てられている。また、シリンダ2には、第二空域5に連通する管状の第一流路6と、第二空域5に連通する管状の第二流路7と、第一空域4に連通する管状の第三流路8とが夫々接続されている。また、シリンダ2の第二空域5側には、該第二空域5側へ摺動するメイン弁3が当接する弁座部材9が設けられている。この弁座部材9にメイン弁3が当接することにより、この当接位置よりも該メイン弁3が第二空域5側へ摺動できないと共に第一流路6と第二流路7とを遮蔽してこれら流路間で流体の流入出を制限できる。さらにまた、弁装置1には、第三流路8を流体が流入出可能な開放状態と流入出不能な閉鎖状態とに変換作動する作動弁13が配設されている。
【0019】
上記のメイン弁3は、円筒状の胴部16と該胴部16の片側端部に設けられた円板状の底部17とから構成された断面コ字形状を成し、胴部16が金属材料により形成され且つ底部17が樹脂材料により形成されている。すなわち、メイン弁3は、シリンダ2の内側壁面2aに対向する摺動面16aが金属材料により形成され、弁座部材9に当接する部位が樹脂材料により形成される。そして、断面コ字形状のメイン弁3は、第一空域4側に臨んで開口するように、シリンダ2の内部空域に配される。また、メイン弁3は、第一空域4内に配設された弾性バネ10により、弁座部材9側へ付勢されている。さらに、メイン弁3には、第一空域4と第二空域5とを連通するオリフィス孔11が形成されている。このオリフィス孔11は、メイン弁3と弁座部材9とが当接した状態で、第一空域4と第一流路6側とを連通するように形成されている。
【0020】
このような本実施例1の弁装置1は、第一空域4および第二空域5(第一流路6と第二流路7)の流体圧や弾性バネ10による付勢力といったメイン弁3に作用する力のバランスが変化することによってメイン弁3がシリンダ2内で摺動し、第一流路6と第二流路7との間で流体の流入出を制御する。図2にメイン弁3に作用する力の様子を示す。図2中で、実線の矢印は流体の流れを表し、白抜きの矢印はメイン弁3に作用する力を表している。図2のように、メイン弁3には、第一流路6の流体圧による上向きの力、第二流路7の流体圧による上向きの力、第一空域4の流体圧による下向きの力、弾性バネ10による下向きの力が作用する。
【0021】
次に、弁装置1が、第一流路6側から第二流路7側へ流れる流体の流入出を制御する動作について説明する。
図3に、作動弁13を開弁して第一流路6から第二流路7へ流体が流れている状態を示す。この状態では、第一空域4が第三流路8を介して開放されていることから、第一空域4の流体圧と弾性バネ10とによってメイン弁3に作用する下向きの力に比して、第一流路6の流体圧と第二流路7の流体圧とによってメイン弁3に作用する上向きの力が大きくなっている。これにより、メイン弁3が第一空域5側へ摺動し、流体が第一流路6から第二空域5を介して第二流路7へ流れる。
【0022】
続いて、このように第一流路6から第二流路7へ流体が流れている状態で作動弁13を閉弁したときの状態を図4に示す。この状態では、作動弁13が閉弁したことにより、メイン弁3のオリフィス孔11を介して第一空域4に流入した流体によって第一空域4の流体圧が上昇して、該第一空域4の流体圧と第一流路6の流体圧とが略等しくなる。また、流体の下流側である第二流路7の流体圧は第一流路6の流体圧に比して低いことから、第一空域4の流体圧によってメイン弁3に作用する下向きの力が、第一流路6と第二流路7との流体圧によってメイン弁3に作用する上向きの力に比して大きくなる。これにより、メイン弁3は、下向きに作用する力が大きくなって下向きに摺動する。
【0023】
こうしてメイン弁3が下向きに摺動すると、メイン弁3は弁座部材9に当接し、第一流路6から第二流路7へ流体が流出不能となる。このように、作動弁13を閉弁して第一流路6から第二流路7へ流体が流出不能になった状態を図5に示す。この状態では、第一流路6の流体圧が変化しても第一空域4の流体圧と第一流路6の流体圧とは略等しくなる。したがって、第二流路7の流体圧が第一流路6の流体圧に比して低くなっている限り、第一流路6と第二流路7との流体圧によってメイン弁3に作用する上向きの力に比して、第一空域4の流体圧と弾性バネ10の付勢力とによってメイン弁3に作用する下向きの力が常に大きくなる。これにより、メイン弁3が弁座部材9に当接した状態が継続するため、第一流路6から第二流路7へ流体が流出不能となる。
【0024】
このように、本実施例1の弁装置1によれば、作動弁13を開閉してメイン弁に作用する力のバランスを変化させてメイン弁3を摺動させることによって、第一流路6から第二流路7へ流れる流体の流入出を適正に制御することができる。
【0025】
ここで、作動弁13を閉弁したときに、メイン弁3が急激に第二空域5側に摺動して弁座部材9に当接すると、第一流路6から第二流路7へ流れる流体の流速が速くなる程この流体の慣性によって第一流路6内の圧力が急上昇するウォーターハンマー現象が生ずる。しかしながら、本実施例1の弁装置1によれば、断面コ字形状のメイン弁3によって第一空域4の容積が大きくなっていることから、該第一空隙4内の圧力変化の速度を遅くすることができ、メイン弁3に作用する下向きの力が比較的ゆっくりと大きくなる。これにより、メイン弁3の急激な摺動を抑制してウォーターハンマー現象の程度を抑制することができる。
【0026】
このような弁装置1では、メイン弁3が流体に曝されるが、摺動面16aを構成する胴部16が金属材料により形成されていることから、流体による膨潤や収縮等の寸法変化を抑制できる。これにより、メイン弁3の摺動性の低下を抑制できる。また、メイン弁3は、弁座部材9に当接する底部17が樹脂材料により構成されていることから、該底部17が金属材料により構成されているものに比して、弁座部材9と底部17とのシール性を向上できる。以上のことから、本実施例1の弁装置1は、上述した流体の流入出を制御する機能をより適正に発揮できる。
【0027】
さらに、メイン弁3は、金属材料のみにより形成されているものに比して軽量化できる。加えて、メイン弁3は断面コ字形状に形成されていることによっても軽量化されている。こうしたメイン弁3の軽量化によって、メイン弁3は、作動弁13の作動によって第一空域4に生ずる圧力変化に対する反応性が良く、よりスムーズに摺動することができる。したがって、本実施例1の弁装置1は、上述した流体の流入出を制御する機能がより適正に発揮できる。
【実施例2】
【0028】
実施例2は、上述した実施例1の弁装置1を適用した過充填防止装置21である。過充填防止装置21は、液化ガス燃料により駆動するエンジンを動力としたトラックなどの車両に配設される燃料タンクの内部に設けられ、液化ガス燃料の充填口として弁の開閉を行うバルブ装置に接続される。そして、過充填防止装置21は、バルブ装置から充填される液化ガス燃料が燃料タンク内に所定量以上充填されることを防止するためのものである。ここで、液化ガス燃料には、例えばLPG(液化石油ガス)燃料やDME(ジメチルエーテル)燃料が用いられる。
【0029】
過充填防止装置21は、図6のように、筒状のシリンダ22の内部空域に断面コ字形状のメイン弁23を摺動可能に配し、該メイン弁23により内部空域が第一空域24と第二空域25に隔てられている。第二空域25には、上記したバルブ装置から供給される液化ガス燃料が流入する第一流路26を構成する管41が接続されている。さらに、第二空域25には、シリンダ22の内部空域に突出するように筒状壁部42が設けられており、該筒状壁部42の一端が第二空域25に開口し且つ他端が燃料タンク内に開口する。そして、この筒状壁部42の内側により第二流路27が構成されると共に、筒状壁部42の第二空域25側の端部により、第二空域25側に摺動したメイン弁23と当接する弁座部材29が構成されている。また、メイン弁23は、第一流路26を臨む部位に開口するオリフィス孔31を複数備えている。そして、メイン弁23は、第一空域24内に配設された弾性バネ30により第二空域25側へ付勢されている。また、過充填防止装置21には、前記第一空域24と燃料タンク内とを連通する第三流路28が設けられており、さらに、第三流路28を開放状態と閉鎖状態とに変換する作動弁33が配設されている。この作動弁33は、弾性バネ44により第三流路28を閉鎖する方向に付勢されている。そして、この作動弁33は、燃料タンク内に貯留する液化ガス燃料の液面に従って浮動するフロート45に連動して、前記開放状態と閉鎖状態とに変換作動する。すなわち、燃料タンク内の液化ガス燃料が所定量未満であれば、図6(A)のように、フロート45の浮動に基づいて作動弁33に作用する力によって、作動弁33が弾性バネ44の付勢力に抗して開弁する。一方、燃料タンク内の液化ガス燃料が所定量となると、図6(B)のように、フロート45の浮動に基づいて作動弁33に作用する力が解除されて、作動弁33が弾性バネ44の付勢力に従って閉弁する。このように、作動弁33は、フロート45の浮動により機械的に開閉作動する。
【0030】
過充填防止装置21は、上述した実施例1の弁装置1と同様に、液化ガス燃料を第一流路26から第二流路27へ流入出を制御する動作を行う。すなわち、燃料タンク内の液化ガス燃料が所定量未満であれば、図6(A)のように、作動弁33が開弁していることから、メイン弁23に作用する力のバランスによって該メイン弁23と弁座部材29とが離間して、上記バルブ装置から流入した液化ガス燃料が第一流路26から第二流路27を介して燃料タンク内に流出する。一方、充填により燃料タンク内の液化ガス燃料が所定量となると、図6(B)のように、作動弁33が閉弁することから、メイン弁23が第二空域25側に摺動して弁座部材29と当接するため、第一流路26から第二流路27へ液化ガス燃料が流れず、燃料タンク内への液化ガス燃料の充填を強制的に停止する。このように、本実施例2の過充填防止装置21によれば、フロート45の浮動による作動弁33の開閉作動によって液化ガス燃料の燃料タンク内への充填を適正に制御できると共に、液化ガス燃料の過充填を防ぐことができる。
【0031】
また、本実施例2の過充填防止装置21は、断面コ字形状のメイン弁23によって第一空域24の容積が大きくなっている。これにより、上述した実施例1の弁装置1と同様に、第一空隙24内の圧力変化の速度を遅くすることができるので、メイン弁23の急激な摺動を抑制してウォーターハンマー現象の程度を抑制することができる。
【0032】
また、本実施例2の過充填防止装置21は、上述した実施例1の弁装置1と同様に、メイン弁23の外周面である摺動面を構成する胴部36が金属材料から形成され且つ底部37が樹脂材料から形成されている。そのため、メイン弁23が液化ガス燃料に曝されることによって生ずる膨潤や収縮等の寸法変化を抑制できると共に、メイン弁23と弁座部材29とのシール性を向上できる。これにより、本実施例2の過充填防止装置21によれば、上記した液化ガス燃料の流入出を制御する機能をより適正に発揮できる。
【実施例3】
【0033】
実施例3の弁装置51は、実施例1の弁装置1に対してメイン弁3、第三流路8、作動弁13以外は実施例1と同様の構成であり、同じ構成要素には同じ符号を記してその説明を省略する。実施例3の弁装置51は、図7のように、シリンダ2の第一空域4と第二流路7とを連通するように第三流路58が設けられていると共に、シリンダ2の内部空域に円柱状のメイン弁53が摺動可能に配されている。そして、この弁装置51には、第三流路58を流体が流入出可能な開放状態と流入出不能な閉鎖状態とに変換する作動弁としての電磁弁63が配設されている。また、メイン弁53は、円筒状の胴部66と該胴部66に内嵌された円柱状の中実部67とから構成されており、胴部66が金属材料により形成され且つ中実部67が樹脂材料により形成されている。尚、メイン弁53の中実部67には、実施例1と同様に、第一流路6を臨む部位に開口して第一空域4と第二空域5とを連通するオリフィス孔61が形成されている。また、電磁弁63は、ソレノイドを作動制御することにより開閉されるものであり、従来から用いられているものを適用できるため、その詳細は省略する。
【0034】
この弁装置51は、上述した実施例1の弁装置1と同様に、流体を第一流路6から第二流路7へ流入出を制御する動作を行う。すなわち、電磁弁63を作動制御して開弁した状態では、図7のように、メイン弁53に作用する力のバランスによって該メイン弁53と弁座部材9とが離間して、流体が第一流路6から第二流路7へ流れる。一方、電磁弁63を作動制御して閉弁した状態では、図8のように、メイン弁53が第二空域5側に摺動して弁座部材9と当接するため、第一流路6から第二流路7へ流体が流出不能となる。このように、本実施例3の弁装置51によれば、電磁弁73の作動制御によって第一流路6から第二流路7へ流れる流体の流入出を適正に制御できる。
【0035】
また、メイン弁53は、胴部66が金属材料であることから、上述した実施例1と同様に、該胴部66の摺動面66aが流体に曝されることによって生ずる膨潤や収縮等の寸法変化を抑制できるため、メイン弁53の摺動性の低下を抑制できる。さらに、中実部67が樹脂材料であることから、弁座部材9と当接した状態でシール性を向上できる。さらにまた、メイン弁53は、金属材料のみにより形成されているものに比して軽量化できることから、電磁弁63の作動によって第一空域4に生ずる圧力変化に対する反応性が良く、よりスムーズに摺動することができる。以上のことから、本実施例3の弁装置51によれば、流体の流入出を制御する機能がより適正に発揮できる。
【実施例4】
【0036】
実施例4は、上述した実施例3の弁装置51と同様の弁装置としての構成を備えた燃料供給装置71である。燃料供給装置71は、実施例2の過充填防止装置21と同様に、トラックなどの車両に配設される燃料タンクに設けられ、エンジンへ燃料を供給するための燃料ポンプに接続される。そして、燃料供給装置71は、燃料ポンプへ供給する液化ガス燃料を制御するためのものである。
【0037】
燃料供給装置71には、図9のように、装置本体70に、シリンダ72、第一流路76、第二流路77、第三流路78が形成されている。そして、第一流路76が燃料タンク内に連通し、第二流路77が燃料ポンプに接続されている。シリンダ72の内部空域には、メイン弁73が摺動可能に配されており、該メイン弁73により第一空域74と第二空域75とを隔てている。第二空域75には第一流路76と第二流路77とが連通しており、第二流路77が接続する開口縁に弁座部材79が第二空域75内へ突出するように形成されている。また、第一空域74内には弾性バネ80が配設されており、該弾性バネ80によってメイン弁73が第二空域75側へ付勢されている。このメイン弁73には、第一空域74と第二空域75とを連通するオリフィス孔81が、第二空域75側で第一流路76に臨むように形成されている。そして、メイン弁73は、実施例3と同様に、金属材料により形成された円筒状の胴部86と樹脂材料により形成された中実部87とから構成されている。また、第三流路78は、第一空域74と第二流路77とを連通するように形成されている。そして、燃料供給装置71は、第三流路78を開放状態と閉鎖状態とに変換する電磁弁83を備えると共に、該電磁弁83を作動制御するための制御装置89を備えている。
【0038】
この燃料供給装置71は、上述した実施例3と同様に、制御装置89によって電磁弁83を開閉作動制御することにより、液化ガス燃料を第一流路76から第二流路77への流入出を制御する動作を行う。すなわち、電磁弁83を開弁した状態では、メイン弁73に作用する力のバランスによって該メイン弁73と弁座部材79とが離間して、上記燃料ポンプの駆動によって燃料タンク内の液化ガス燃料が第一流路76から第二流路77へ流れる。一方、電磁弁83を閉弁した状態では、燃料ポンプの駆動により第二流路77の内圧が第一流路76の内圧よりも低くなることから、メイン弁73が第二空域75側へ摺動して弁座部材79と当接する。これにより、第一流路76から第二流路77への液化ガス燃料が流出不能となる。
【0039】
本実施例4の燃料供給装置71は、上述した実施例3と同様に、メイン弁73の摺動面を構成する胴部86が金属材料により形成され且つ弁座部材79に当接する中実部87が樹脂材料により形成されている。これにより、液化ガス燃料に曝されることによってメイン弁73の摺動面に生ずる膨潤や収縮等の寸法変化を抑制でき、メイン弁73の摺動性の低下を抑制できると共に、弁座部材79と当接した状態でシール性を向上できる。また、メイン弁73は、金属材料のみにより形成されているものに比して軽量化できることから、電磁弁83の作動によって第一空域74に生ずる圧力変化に対する反応性が良く、よりスムーズに摺動することができる。以上のことから、本実施例4の燃料供給装置71の弁装置によれば、液化ガス燃料の流入出を制御する機能がより適正に発揮できる。
【0040】
上述した実施例1〜4の構成にあって、それぞれの弾性バネ10,30,80により本発明にかかる付勢手段が構成されている。
【0041】
本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、実施例以外の構成についても本発明の趣旨の範囲内で適宜実施可能である。例えば、メイン弁は、弁座部材と当接する部位(底部または中実部)を樹脂材料に換えてゴム材料により形成したものとすることもできる。
【符号の説明】
【0042】
1,51 弁装置
2,22,72 シリンダ
2a 内側壁面
3,23,53,73 メイン弁
4,24,74 第一空域
5,25,75 第二空域
6,26,76 第一流路
7,27,77 第二流路
8,28,58,78 第三流路
9,29,79 弁座部材
10,30,80 弾性バネ(付勢手段)
11,31,61,81 オリフィス孔
13,33 作動弁
16a,66a 摺動面
21 過充填防止装置(弁装置)
63,83 電磁弁(作動弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空域を有する筒状のシリンダと、
前記シリンダの内部空域に摺動可能に配されて該内部空域を第一空域と第二空域とに隔てるプレート状のメイン弁であって、該第一空域と第二空域とを連通するオリフィス孔を備えたメイン弁と、
前記メイン弁の摺動方向に沿って前記第一空域から第二空域へ向かって該メイン弁を付勢する付勢手段と、
前記オリフィス孔の第二空域側の開口部を臨むように第二空域に接続されて該第二空域と連通する第一流路と、
前記第二空域に接続されて該第二空域と連通する第二流路と、
前記第二空域側へ摺動する前記メイン弁が当接することによりこの当接位置よりも第二空域側へメイン弁が摺動しないように設けられた弁座部材であって、前記メイン弁が該弁座部材に当接した状態で前記第一流路と第二流路との間で流体を流入出不能とし、該メイン弁が弁座部材と離間した状態で第一流路と第二流路との間で流体を流入出可能とするように設けられた弁座部材と、
前記第一空域に接続されて該第一空域と連通する第三流路と、
前記第三流路を、流体を流入出可能な状態と流入出不能な状態とに変換する作動弁と
を備えた弁装置であって、
前記メイン弁は、前記シリンダの内側壁面と対向する摺動面が金属材料により形成されていると共に前記弁座部材と当接する部位が樹脂材料またはゴム材料により形成されていることを特徴とする弁装置。
【請求項2】
メイン弁は、第一空域に臨んで開口する断面コ字形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
燃料タンクに配設される弁装置であって、
第一流路は燃料タンク外に連通するように設けられ、
第二流路および第三流路は燃料タンク内に連通するように設けられ、
作動弁は燃料タンク内に貯留する燃料が所定量未満の場合に第三流路を流体が流入出可能な状態に変換し、燃料タンク内に貯留する燃料が所定量以上の場合に第三流路を流体が流入出不能な状態に変換するものである、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の弁装置。
【請求項4】
燃料タンクに配設される弁装置であって、
第一流路は燃料タンク内に連通するように設けられ、
第二流路はエンジンの燃料ポンプに連通するように設けられ、
第三流路は第二流路と連通するように設けられ、
作動弁は電磁弁として構成されているものである、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−24361(P2013−24361A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161607(P2011−161607)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(391006430)中央精機株式会社 (128)
【Fターム(参考)】