説明

強制風冷式半導体冷却装置

【課題】冷却性能を高め、冷却装置を小型化にすることにより電力変換装置の小型化、軽量化を可能とする半導体冷却装置を提供することである。
【解決手段】冷却器7、冷却器8、冷却器9は発熱量が同じである半導体素子3、半導体素子4、半導体素子5を実装し、各冷却器に間隔をおいて設置することにより熱交換のないよう配置され、同一風洞内に収納されている。各冷却器のベース板が、吸気側の冷却器から排気側の冷却器に向かって順次の厚くなるよう構成されており、ベース板の厚さ以外の部分は同様のものとしている。半導体素子を個別に冷却器に実装することにより、冷却器の温度勾配を低減でき、冷却器の熱処理能力を十分に生かせ、冷却風の温度上昇に対し冷却器のベース板厚さを調整することにより、半導体素子の温度は均等に抑えられ、半導体素子の最大使用温度条件に対し、温度の余裕を改善し、半導体冷却装置の小型化と軽量化を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道車両の屋根上や床下に設置される電力変換装置内の強制風冷式半導体冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の電力変換装置は、半導体素子から発生する熱を大気へ放散し、半導体素子の温度上昇を抑えるための冷却装置が必要になる。特に路面電車や新交通車両の場合は、冷却構造の小型化のため、走行風を利用せず冷却ファンを用いて強制的に送風冷却を行う強制風冷方式が採用されているのが一般的である。
【0003】
従来の強制風冷式電力変換装置の半導体冷却装置の構造は、一般的に図2に示されるような方式がある。図2に示される冷却方式により、電力変換回路を構成する半導体素子は、一体型の冷却器に載せられ、冷却ファンによる冷却風と熱交換を行う。また、半導体素子が冷却風向に並べられ、冷却ファンによる冷却風と一体型の冷却器を介して熱交換を行う。冷却構造設計が比較的簡単となる構造のため、採用されることの多い方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−023768号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄道車両の電力変換器は力行での電力変換を行うのみではなく、省エネや保守低減への配慮から、ブレーキ時に運動エネルギーを電力に変換して架線へ回生する電気制動(回生制動)を極力使用し、回生失効の時にもブレーキ抵抗に電力を消費させて電気制動(発電制動)を行う等が行われるため、電力変換装置の発熱は増加している。更に、モータの大容量化に伴い、電力変換装置の容量は増加し、発熱は更に増加している。その一方、電力変換装置の小型化・軽量化も要求されている。
【0006】
図2に示すような従来の冷却方式の場合は、各半導体の放熱により、冷却器は冷却風の吸気側から排気側に向かって温度が徐々に上昇する温度勾配が発生し、排気側に近い半導体の温度は吸気側に近い半導体より高くなる。冷却器の冷却風向長が延びるほど温度勾配が大きくなり、冷却器の熱容量を十分に生かせず冷却効率の悪いものとなる。無論冷却器性能は最も冷却条件の悪い排気側に配置される半導体の温度で決まるため、冷却器の形状は大きくなり、冷却装置の小型化、軽量化、コストに不利になる。
【0007】
本発明は、上記状況に対処するためになされたもので、その課題は、冷却性能を高め、冷却装置を小型化にすることにより電力変換装置の小型化、軽量化を可能とする半導体冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明によれば、冷却ファンにより冷却風が通風される風洞体を有し、該風洞体外側に冷却器のベース板を接合し、該ベース板に配設される放熱フィンが前記風洞体の冷却風通風路内に収まるように配設される強制風冷式半導体冷却装置において、前記風洞体に取り付けられる冷却器の前記ベース板の位置により前記ベース板の厚さを変化させることを特徴とする。
【0009】
すなわち、ベース板に放熱フィン構造を設置してなる半導体素子の冷却器と、複数の当該冷却器を冷却風がフィン構造部を貫通するよう配置し、冷却風向に対する冷却器の位置によって冷却器のベース板厚さを変えることを特徴とする。
【0010】
また、冷却ファン等による冷却風が同一風洞内に収納された複数の冷却器を流れ、冷却器に実装された半導体素子の温度上昇を抑えるために熱放散を行う。
【0011】
請求項2の発明によれば、前記冷却器のベース板の厚さにおいて、冷却風の風下側に順次前記ベース板の厚みを大とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の強制風冷式半導体冷却装置によれば、冷却器の熱性能を十分に生かすことができ、冷却器の温度勾配の影響を受けずに各半導体の温度を均等に抑えられ、半導体冷却装置の小型化、軽量化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係わる半導体冷却装置を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図2】従来の半導体冷却装置を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明する。図1(a)に本発明の実施形態に係わる半導体冷却装置の平面図を示し、図1(b)に半導体冷却装置の正面図を示す。
【実施例】
【0015】
図1の示すように、本実施形態の半導体冷却装置では、冷却器7、冷却器8、冷却器9は発熱量が同じである半導体素子3、半導体素子4、半導体素子5を実装し、各冷却器に間隔をおいて設置することにより熱交換のないよう配置され、同一風洞内に収納されている。各冷却器のベース板が、吸気側の冷却器から排気側の冷却器に向かって順次の厚くなるよう構成されており、ベース板の厚さ以外の部分は同様のものとしている。
【0016】
ここで、ベース板に放熱フィン構造を設置してなる半導体素子の冷却器は、ベース板厚方向に熱が伝わり放熱フィン部にて放散することで機能するが、ベース板の厚い方が熱拡散が広くなり、多くの放熱フィンに伝熱することが可能となるので、放熱効率が上がり冷却性能が良くなる。同じ放熱フィン構造を持つ冷却器でも、ベース板を厚くすることで性能を向上させることが可能である。
【0017】
次に、本実施形態の作用を説明する。図2に示す従来の一体型冷却器6と比べ、図1に示すように、半導体素子を個別の冷却器7、冷却器8、冷却器9に実装し、熱交換のないよう配置する。冷却ファン1による冷却風は風洞2に収納される冷却器7、冷却器8、冷却器9を介して半導体素子3、半導体素子4、半導体素子5の発熱を放散する。
【0018】
本構成によれば、個別の冷却器に半導体素子が実装されることによって、一体型冷却器のように風上におかれた半導体素子の発熱で生じるベース板部の温度勾配は発生しない。また、吸気側から排気側に向かって、半導体素子の発熱により冷却風の温度は徐々に上昇していくが、冷却器のベース板を冷却風の風下側に順次厚くして冷却器の熱性能を改善していくことにより、冷却風の温度が上昇しても各冷却器の温度を均等にする、すなわち半導体素子の温度を均等に抑えることが可能となる。
【0019】
以上の実施の形態より、半導体素子を個別に冷却器に実装することにより、冷却器の温度勾配を低減でき、冷却器の熱処理能力を十分に生かせ、冷却風の温度上昇に対し冷却器のベース板厚さを調整することにより、半導体素子の温度は均等に抑えられ、半導体素子の最大使用温度条件に対し、温度の余裕を改善することができ、半導体冷却装置の小型化と軽量化が図れる。
【0020】
以上、本発明の請求項2について具体的な実施例を示したものであるが、冷却対象となる半導体素子の発熱が異なる場合には、その発熱量に応じて冷却器のブロック厚さを冷却方向に関わらず適宜選択することにより、上記同様の効果が得られることは容易に理解できる。
【符号の説明】
【0021】
1 冷却ファン
2 風洞
3 半導体
4 半導体
5 半導体
6 冷却器
7 冷却器
8 冷却器
9 冷却器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却ファンにより冷却風が通風される風洞体を有し、該風洞体外側に冷却器のベース板を接合し、該ベース板に配設される放熱フィンが前記風洞体の冷却風通風路内に収まるように配設される強制風冷式半導体冷却装置において、前記風洞体に取り付けられる冷却器の前記ベース板の位置により前記ベース板の厚さを変化させることを特徴とする強制風冷式半導体冷却装置。
【請求項2】
前記冷却器のベース板の厚さにおいて、冷却風の風下側に順次前記ベース板の厚みを大とすることを特徴とする請求項1記載の強制風冷式半導体冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−256767(P2012−256767A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129664(P2011−129664)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】