説明

強化繊維シート及びその製造方法

【課題】 強化繊維シートの端部バラケを防止し、取扱い性及び施工性に優れた強化繊維シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 強化繊維層2の側面2aに設けた樹脂透過性支持体シート3Aの、強化繊維層2より幅方向に突出した両端縁部3aを強化繊維層2の他側の面2bに折り返して強化繊維層2の他側の面2bに接着する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、繊維強化プラスチックにより橋梁や高架道路などを初めとする構築物の補強をするに際し、補強現場で施工性良く補強を行なうことができ且つ補強強度も向上することを可能とした強化繊維シート及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、繊維強化プラスチックにより橋梁や高架道路などのコンクリート構造物の補強をするための強化繊維シートが種々提案されている。現在実際に使用されている強化繊維シートの一例を挙げれば、図6に示す構成とされている。
【0003】つまり、強化繊維シート1Aは、図6に示すように、強化繊維fを一方向に配列して強化繊維層2を形成し、取り扱い及び施工性を容易とするために、その両面を、例えば直径2〜50μmのガラス繊維或いは有機繊維にて作製したメッシュ状の支持体シート3(3A、3B)により支持した構成とされる。
【0004】メッシュ状支持体シート3(3A、3B)にて強化繊維層2を保持する方法としては、例えば、メッシュ状支持体シート3(3A、3B)を構成する縦糸6及び横糸7の表面に低融点タイプの熱可塑性樹脂を予め含浸させておき、メッシュ状支持体シート3を強化繊維層2の両面に積層して加熱加圧し、メッシュ状支持体シート3(3A、3B)の縦糸6及び横糸7の部分を強化繊維層2に溶着する方法などが採用されている。
【0005】このような構成の強化繊維シート1Aでは、強化繊維層2の長手方向両端縁部のバラケを防止するために、図7に示すように、強化繊維層2の両面に配置されたメッシュ状支持体シート3(3A、3B)の横糸7を強化繊維シート1Aの長手方向に直交する幅方向より所定の長さだけ突出させ、この突出した横糸部分7aを互いに接合して、所謂、耳部8が形成されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、強化繊維シート1Aの長手方向両端縁部に沿って突出した横糸部分7aを互いに接合して耳部8を形成する、所謂、耳処理作業は、作業自体が極めて煩雑で、強化繊維シート1Aの製造効率を著しく損なう原因となっている。
【0007】更に、この強化繊維シート1Aの両端縁部に形成された耳部8は、強化繊維シート1Aをコンクリート構造物の補強個所に複数枚互いに隣接して貼付する場合には邪魔となり、切除するか、又は貼付後に除去することになる。そのために、補強作業効率が低下する。もし、耳部8を切除せず、耳部8を有した状態で強化繊維シート1Aを補強個所に貼付した場合には、耳部除去作業が必要となり、工程が増え、又、耳部8の補強個所に対する接着が不完全となり易く、所期の補強効果が得られないといった問題も引き起こす可能性がある。
【0008】従って、強化繊維シート1Aの両端縁部から突出して耳部8を形成する代わりに強化繊維シート1Aの長手方向両端縁に沿ってサイドステッチングを施すことによって繊維強化層2の両端縁部のバラケを防止し、上記問題をも解決することが考えられる。
【0009】しかしながら、このサイドステッチング方法は、ステッチングされる強化繊維層2の両端部領域幅が狭く、通常10mm以下の幅とされ、強化繊維シート1Aの取扱い時或いは施工時における強化繊維層2の端部ホツレを完全に防止することはできない。更に、サイドステッチングを施した強化繊維シートは、強化繊維シートを緊張してコンクリート構造物の補強個所に貼付する緊張接着工法よる補強方法を実施する場合にはサイドステッチングが強化繊維シートの幅方向の均一な緊張力導入を阻害し、そのために緊張接着工法には使用することができないといった問題を有している。
【0010】従って、本発明の目的は、強化繊維シートの端部バラケを防止し、取扱い性及び施工性に優れた強化繊維シート及びその製造方法を提供することである。
【0011】本発明の他の目的は、製造が容易で、補強効果の低下をもきたさない強化繊維シート及びその製造方法を提供することである。
【0012】本発明の他の目的は、上記本発明の強化繊維シートを効率良く製造することのできる製造方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的は本発明に係る強化繊維シート及びその製造方法にて達成される。要約すれば、第1の本発明によれば、強化繊維を一方向に配列して形成された強化繊維層の両面に樹脂透過性支持体シートを設けた強化繊維シートにおいて、前記強化繊維層の少なくともいずれかの側面に設けた前記樹脂透過性支持体シートの、強化繊維シートの長手方向に対して直交する幅方向の大きさを前記強化繊維層の幅より大きくし、この前記強化繊維層より幅方向に突出した前記樹脂透過性支持体シートの両端縁部を前記強化繊維層の他側の面に折り返して前記強化繊維層の他側の面に接着することを特徴とする強化繊維シートが提供される。
【0014】第1の本発明にて一実施態様によれば、前記樹脂透過性支持体シートは、ガラス繊維或いは有機繊維で形成されたメッシュ状体或いはクロスである。前記メッシュ状支持体シートは、前記強化繊維シートの長手方向と同一方向の縦糸と、この縦糸と直交する横糸とにて形成された2軸メッシュ状体とすることができる。
【0015】第1の本発明にて他の実施態様によると、前記強化繊維層を形成する強化繊維は、PAN系或いはピッチ系炭素繊維、ガラス繊維、又は、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維、更には、金属繊維などを一種、又は、複数種混入して使用する。
【0016】第2の本発明によれば、(a)強化繊維を連続して供給し、シート状の強化繊維層を形成する工程、(b)前記強化繊維層の長手方向に対して直交する幅方向の大きさが前記強化繊維層より大きくされた第1の樹脂透過性支持体シートを、前記強化繊維層の第1の面に積層するように連続して供給する工程、(c)前記強化繊維層より幅方向に突出した前記第1の樹脂透過性支持体シートの両端縁部を前記強化繊維層の前記第1の面とは反対側の第2の面に折り返す工程、(d)第2の樹脂透過性支持体シートを、前記第1の樹脂透過性支持体シートの両端縁部が折り返された前記強化繊維層の第2の面に積層するように連続して供給する工程、(e)積層された前記第1の樹脂透過性支持体シート、前記強化繊維層及び前記第2の樹脂透過性支持体シートを加熱圧着する工程、を有することを特徴とする強化繊維シートの製造方法が提供される。
【0017】第3の本発明によれば、(a)強化繊維を連続して供給し、シート状の強化繊維層を形成する工程、(b)前記強化繊維層の長手方向に対して直交する幅方向の大きさが前記強化繊維層より大きくされた第1の樹脂透過性支持体シートを、前記強化繊維層の第1の面に積層するように連続して供給し、同時に、第2の樹脂透過性支持体シートを、前記強化繊維層の前記第1の面とは反対側の第2の面に積層するように連続して供給する工程、(c)前記強化繊維層より幅方向に突出した前記第1の樹脂透過性支持体シートの両端縁部を前記強化繊維層の前記第2の面に折り返す工程、(d)積層された前記第1の樹脂透過性支持体シート、前記強化繊維層及び前記第2の樹脂透過性支持体シートを加熱圧着する工程、を有することを特徴とする強化繊維シートの製造方法が提供される。
【0018】第2及び第3の本発明にて一実施態様によると、前記樹脂透過性支持体シートは、ガラス繊維或いは有機繊維で形成されたメッシュ状体或いはクロスである。前記メッシュ状支持体シートは、前記強化繊維シートの長手方向と同一方向の縦糸と、この縦糸と直交する横糸とにて形成された2軸メッシュ状体とすることができる。又、前記メッシュ状支持体シートを構成する縦糸及び横糸の表面に低融点タイプの熱可塑性樹脂が予め含浸することができる。
【0019】第2及び第3の本発明にて他の実施態様によれば、前記強化繊維層を形成する強化繊維は、PAN系或いはピッチ系炭素繊維、ガラス繊維、又は、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維、更には、金属繊維などを一種、又は、複数種混入して使用する。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る強化繊維シート及びその製造方法を図面に則して更に詳しく説明する。
【0021】図1及び図2(A)に、本発明に係る強化繊維シートの一実施例の概略構成を示す。
【0022】本発明によると、強化繊維シート1は、基本構成においては従来の図6に示す強化繊維シート1Aと同様の構成とされ、強化繊維fを一方向に配列して強化繊維層2を形成し、その両面を、樹脂透過性支持体シート3(3A、3B)により支持した構成とされる。図1R>1では、理解を容易とするために樹脂透過性支持体シート3Bは強化繊維層2の表面には接着されていない状態で示されている。
【0023】強化繊維層2を形成する強化繊維fは、PAN系或いはピッチ系炭素繊維、ガラス繊維、又は、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維、更には、鋼繊維などの金属繊維、などを一種、又は、複数種混入して使用することができる。又、強化繊維層の繊維目付は、任意に設定し得るが、例えば100〜600g/m2とし得る。
【0024】上記樹脂透過性支持体シート3(3A、3B)は、2軸又は3軸などのメッシュ状体或いはクロスとすることができるが、本実施例では図示するように、例えば直径2〜50μmのガラス繊維或いは有機繊維にて作製した2軸のメッシュ状の支持体シートを使用した。2軸メッシュ状支持体シート3(3A、3B)の縦糸6及び横糸7の間隔(w1、w2)は、通常1〜100mm程度であるが、好ましくは2〜50mmである。メッシュ状支持体シート3A、3Bは、通常、同じ構成とされるが、異なるものとすることも可能である。
【0025】メッシュ状支持体シート3(3A、3B)にて強化繊維層2を保持する方法としては、例えば、メッシュ状支持体シート3を構成する縦糸6及び横糸7の表面に低融点タイプの熱可塑性樹脂を予め含浸させておき、メッシュ状支持体シート3を強化繊維層2の両面に積層して加熱加圧し、メッシュ状支持体シート3の縦糸6及び横糸7の部分を強化繊維層2に溶着する方法などが採用されている。
【0026】樹脂透過性支持体シート2としてクロスを使用した場合にも同様の方法にて、強化繊維層2を保持することができる。
【0027】ここで、従来の強化繊維シート1Aでは、図6、図7に示すように、強化繊維層2の両面に配置されたメッシュ状の支持体シート3(3A、3B)は、同じ寸法、形状とされ、強化繊維層2の長手方向両端縁部より突出した横糸7aが互いに接合されて耳部8を形成する構成とされたが、本発明の強化繊維シート1では、図1及び図2に示すように、図面上では強化繊維層2の下側の第1の面2aに設けられた第1の支持体シート3Aは、強化繊維層2の長手方向に直交する幅方向の寸法が強化繊維層2の幅より大きくされ、従って強化繊維層2の両端縁部より突出し、この突出端縁部3aが、第2の支持体シート3B側へと折り返されて強化繊維層2の上側面2bに接着される。
【0028】第2支持体シート3Bは、本実施例では、その幅寸法が強化繊維層2の長手方向両端縁部より突出しない大きさとされ、第1支持体シート3Aが接着された強化繊維層2の上側面2bに接着される。
【0029】従って、本発明の強化繊維シート1によれば、図1に示すように、強化繊維層2の長手方向両端縁部は、第1支持体シート3Aの突出端縁部3aを折り返す(即ち、折り込む)ことにより保持され、バラケが防止される。
【0030】強化繊維層2の長手方向両端縁部に折り返される第1支持体シート3Aの突出端縁部3aの大きさは、図1及び図2(A)に示すように、強化繊維層2の長手方向両端縁部に折り返された幅(H)が10〜30mmとなるようにする。
【0031】上記実施例では、第2支持体シート3Bは、第1の支持体シート3Aの強化繊維層長手方向両端縁部より突出した突出端縁部3aが、第2の支持体シート3B側へと折り返されて強化繊維層2の上側面2bに重ねられた後に、強化繊維層2の上側面2bに重ねされるものとしたが、これに限定されるものではない。
【0032】他の実施例によれば、図2(B)に示すように、先ず、第2支持体シート3Bを強化繊維層2の上側面2bに重ね、その後に、第1の支持体シート3Aの強化繊維層長手方向両端縁部より突出した突出端縁部3aを、第2の支持体シート3B側へと折り返して強化繊維層2の上側面2bに重ねられる。
【0033】又、他の実施例によれば、図2(C)に示すように、先の実施例と同様に、第1の支持体シート3Aは強化繊維層長手方向両端縁部より突出した突出端縁部3aを有し、又、第2の支持体シート3Bもまた第1の支持体シート3Aと同様に強化繊維層2の両端縁部より突出した突出端縁部3bを有している。従って、第1の支持体シート3Aの突出端縁部3aが、第2の支持体シート3B側へと折り返されると、同時に第2の支持体シート3Bの突出端縁部3bも折り返され、第1の支持体シート3Aの突出端縁部3aと共に強化繊維層2の上側面2bに重ねられる。
【0034】更に、他の実施例によれば、図2(D)に示すように、第1の支持体シート3Aは強化繊維層長手方向両端縁部より突出した突出端縁部3aを有し、特に、この突出端縁部3aは、第2の支持体シート3B側へと折り返されると、強化繊維層2の上側面2bにてその両端部が強化繊維層2の上側面2b上にて互いに重なり合う大きさとされる。従って、この実施例では、第1の支持体シート3Bとは別体とされた第2の支持体シート3Bは不要とされる。
【0035】上記説明した図2(B)〜(D)に示す各実施例においても、第1支持体シート3Aの突出端縁部3aを折り返すことにより強化繊維層2の長手方向両端縁部は、第1支持体シート3Aの突出端縁部3aにより保持され、両端縁部のバラケが防止される。
【0036】上記実施例にて、第1及び第2の支持体シート3(3A、3B)の突出端縁部3a、3bは、縦糸6及び横糸7にて形成されるものとして図示し、説明したが、縦糸6を含まず、横糸7のみにて構成することも可能である。
【0037】次に、図3及び図4を参照して、本発明に係る強化繊維シート1の製造方法の一実施例を説明する。
【0038】本実施例によると、クリールスタンド30より強化繊維が連続的に供給され一方向に配列されて強化繊維層2を形成する。
【0039】この強化繊維層2は、供給ロール31から供給される第1の支持体シート3Aと積層され、案内ロール32によりシート折り返し手段40へと案内される。本実施例では、第1の支持体シート3Aは、強化繊維層2の下側面(第1の面)2aへと案内され、積層されるものとする。
【0040】本実施例によると、図4を参照するとより良く理解されるように、シート折り返し手段40は、シート折り曲げロール41を備えている。シート折り曲げロール41は、強化繊維層2と略同じ幅を有しており、案内ロール32により案内されてくる強化繊維層2と第1の支持体シート3Aとの積層体を下方へと押圧する。これにより、強化繊維層2の長手方向両端縁部より幅方向に突出した第1の支持体シート3Aの突出端縁部3aが、図4にて上方へと折り曲げられる。
【0041】シート折り返し手段40は、シート折り返しガイド42を備えている。シート折り返しガイド42は、断面がコの字形状とされ、強化繊維層2と第1の支持体シート3Aとの積層体の上下に位置した対をなす上下板部材43、44と、上下板部材43、44を連結する垂直板部材45とを有する。上下板部材43、44は、積層体の移動方向上流側入口では広くなっており、下流側へと狭くなり、出口ではほぼ積層体の厚さと同程度の間隙とされている。
【0042】従って、シート折り曲げロール41により上方へと折り曲げられた第1の支持体シート3Aの突出端縁部3aは、上方に折り曲げられた状態にてシート折り返しガイド43へと案内されるが、上下板部材43、44の間を移動するにつれて突出端縁部3aは、強化繊維層2の上側面(第2の面)2bの方へと折り返される。
【0043】次いで、強化繊維層2の上側面2bには、供給ロール32から第2の支持体シート3Bが供給されて積層され、加熱加圧ロール33へと案内される。
【0044】本実施例では、繊維強化層2は、強化繊維fとして平均径7μm、収束本数12000本のPAN系炭素繊維ストランドを用い、繊維目付300g/m2にて配列した。メッシュ状支持体シート3(3A、3B)は、縦糸6及び横糸7としてガラス繊維(番手300d、打ち込み本数1本/10mm)を用いた2軸メッシュ状体であった。2軸メッシュ状体の糸条の間隔(w1、w2)は、10mmとした。
【0045】メッシュ状支持体シート3(3A、3B)の縦糸6及び横糸7には、低融点タイプの熱可塑性樹脂を、含有量30重量%の割合で含浸させたものであった。
【0046】従って、第1のメッシュ状支持体シート3A、強化繊維層2、第2のメッシュ状支持体シート3Bとは加熱加圧ロール33にて加熱加圧されることにより、メッシュ状支持体シート3(3A、3B)の縦糸6及び横糸7の部分が強化繊維層2に溶着する。
【0047】このようにして製造された強化繊維シートは、先に説明した図1及び図2(A)に示す構成とされる。
【0048】上記実施例では、強化繊維シート1は50cm幅のものとされ、強化繊維層2の上側面(第2の面)2bの方へと折り返された第1のメッシュ状支持体シート3Aの幅(H)は20mmであった。強化繊維シート1は、極めて効率良く製造することができ、しかも、製造された強化繊維シート1の両端端部は、バラケルことがなく、取扱い性及び施工性に優れていた。
【0049】図2(B)に示す強化繊維シート1を作製する場合には、図5に示す構成の製造方法にて実施し得る。
【0050】この実施例では、強化繊維層2を挟持する態様で第1及び第2の支持体シート3A、3Bを配置して、第1の支持体シート3A、強化繊維層2、第2の支持体シート3Bの積層体を形成し、この積層体をシート折り返し手段40へと供給する。これにより、第1の支持体シート3Aは、第2の支持体シート3Bが積層されている強化繊維層2の上側面2b上へと折り返され、ついで、加熱加圧ローラ33により、強化繊維層2の両面に第1のメッシュ状支持体シート3A、第2のメッシュ状支持体シート3Bの縦糸6及び横糸7の部分が溶着する。
【0051】図2(C)及び図2(D)に示す構成の強化繊維シート1も図5に示す構成の製造方法にて製造することが可能である。
【0052】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る強化繊維シートは、強化繊維を一方向に配列して形成された強化繊維層の両面に樹脂透過性支持体シートを設けた強化繊維シートにおいて、強化繊維層の少なくともいずれかの側面に設けた樹脂透過性支持体シートの、強化繊維シートの長手方向に対して直交する幅方向の大きさを強化繊維層の幅より大きくし、この強化繊維層より幅方向に突出した樹脂透過性支持体シートの両端縁部を強化繊維層の他側の面に折り返して強化繊維層の他側の面に接着する構成とされるので、(1)強化繊維シートの端部バラケを防止し、取扱い性及び施工性に優れている。
(2)製造が容易で、補強効果の低下をもきたさない。
といった効果を奏し得る。
【0053】又、本発明に係る強化繊維シートの製造方法は、A.(a)強化繊維を連続して供給し、シート状の強化繊維層を形成する工程、(b)強化繊維層の長手方向に対して直交する幅方向の大きさが強化繊維層より大きくされた第1の樹脂透過性支持体シートを、強化繊維層の第1の面に積層するように連続して供給する工程、(c)強化繊維層より幅方向に突出した第1の樹脂透過性支持体シートの両端縁部を強化繊維層の前記第1の面とは反対側の第2の面に折り返す工程、(d)第2の樹脂透過性支持体シートを、第1の樹脂透過性支持体シートの両端縁部が折り返された強化繊維層の第2の面に積層するように連続して供給する工程、(e)積層された第1の樹脂透過性支持体シート、強化繊維層及び第2の樹脂透過性支持体シートを加熱圧着する工程、を有する構成とされるか、又は、B.(a)強化繊維を連続して供給し、シート状の強化繊維層を形成する工程、(b)強化繊維層の長手方向に対して直交する幅方向の大きさが強化繊維層より大きくされた第1の樹脂透過性支持体シートを、強化繊維層の第1の面に積層するように連続して供給し、同時に、第2の樹脂透過性支持体シートを、強化繊維層の第1の面とは反対側の第2の面に積層するように連続して供給する工程、(c)強化繊維層より幅方向に突出した第1の樹脂透過性支持体シートの両端縁部を強化繊維層の前記第2の面に折り返す工程、(d)積層された第1の樹脂透過性支持体シート、強化繊維層及び第2の樹脂透過性支持体シートを加熱圧着する工程、を有する構成とされるので、上記本発明の強化繊維シートを効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る強化繊維シートの一実施例の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る強化繊維シートの種々の実施例を示す断面概略構成図である。
【図3】本発明に係る強化繊維シートの製造方法の一実施例を説明するための概略構成図である。
【図4】強化繊維シートの製造にて使用されるシート折り返し手段の一実施例を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る強化繊維シートの製造方法の他の実施例を説明するための概略構成図である。
【図6】従来の強化繊維シートの概略構成を示す斜視図である。
【図7】従来の強化繊維シートの長手方向両端部の耳部の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1 強化繊維シート
2 強化繊維層
3 樹脂透過性支持体シート
3A 第1の支持体シート
3B 第2の支持体シート
3a 突出端縁部
6 支持体シートの縦糸
7 支持体シートの横糸
33 加熱加圧ロール
40 シート折り返し手段
41 シート折り曲げロール
42 シート折り返しガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】 強化繊維を一方向に配列して形成された強化繊維層の両面に樹脂透過性支持体シートを設けた強化繊維シートにおいて、前記強化繊維層の少なくともいずれかの側面に設けた前記樹脂透過性支持体シートの、強化繊維シートの長手方向に対して直交する幅方向の大きさを前記強化繊維層の幅より大きくし、この前記強化繊維層より幅方向に突出した前記樹脂透過性支持体シートの両端縁部を前記強化繊維層の他側の面に折り返して前記強化繊維層の他側の面に接着することを特徴とする強化繊維シート。
【請求項2】 前記樹脂透過性支持体シートは、ガラス繊維或いは有機繊維で形成されたメッシュ状体或いはクロスであることを特徴とする請求項1の強化繊維シート。
【請求項3】 前記メッシュ状支持体シートは、前記強化繊維シートの長手方向と同一方向の縦糸と、この縦糸と直交する横糸とにて形成された2軸メッシュ状体であることを特徴とする請求項1又は2の強化繊維シート。
【請求項4】 前記強化繊維層を形成する強化繊維は、PAN系或いはピッチ系炭素繊維、ガラス繊維、又は、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維、更には、金属繊維などを一種、又は、複数種混入して使用することを特徴とする請求項1、2又は3の強化繊維シート。
【請求項5】 (a)強化繊維を連続して供給し、シート状の強化繊維層を形成する工程、(b)前記強化繊維層の長手方向に対して直交する幅方向の大きさが前記強化繊維層より大きくされた第1の樹脂透過性支持体シートを、前記強化繊維層の第1の面に積層するように連続して供給する工程、(c)前記強化繊維層より幅方向に突出した前記第1の樹脂透過性支持体シートの両端縁部を前記強化繊維層の前記第1の面とは反対側の第2の面に折り返す工程、(d)第2の樹脂透過性支持体シートを、前記第1の樹脂透過性支持体シートの両端縁部が折り返された前記強化繊維層の第2の面に積層するように連続して供給する工程、(e)積層された前記第1の樹脂透過性支持体シート、前記強化繊維層及び前記第2の樹脂透過性支持体シートを加熱圧着する工程、を有することを特徴とする強化繊維シートの製造方法。
【請求項6】 (a)強化繊維を連続して供給し、シート状の強化繊維層を形成する工程、(b)前記強化繊維層の長手方向に対して直交する幅方向の大きさが前記強化繊維層より大きくされた第1の樹脂透過性支持体シートを、前記強化繊維層の第1の面に積層するように連続して供給し、同時に、第2の樹脂透過性支持体シートを、前記強化繊維層の前記第1の面とは反対側の第2の面に積層するように連続して供給する工程、(c)前記強化繊維層より幅方向に突出した前記第1の樹脂透過性支持体シートの両端縁部を前記強化繊維層の前記第2の面に折り返す工程、(d)積層された前記第1の樹脂透過性支持体シート、前記強化繊維層及び前記第2の樹脂透過性支持体シートを加熱圧着する工程、を有することを特徴とする強化繊維シートの製造方法。
【請求項7】 前記樹脂透過性支持体シートは、ガラス繊維或いは有機繊維で形成されたメッシュ状体或いはクロスであることを特徴とする請求項5又は6の強化繊維シートの製造方法。
【請求項8】 前記メッシュ状支持体シートは、前記強化繊維シートの長手方向と同一方向の縦糸と、この縦糸と直交する横糸とにて形成された2軸メッシュ状体であることを特徴とする請求項5、6又は7の強化繊維シートの製造方法。
【請求項9】 前記メッシュ状支持体シートを構成する縦糸及び横糸の表面に低融点タイプの熱可塑性樹脂が予め含浸されていることを特徴と請求項8の強化繊維シートの製造方法。
【請求項10】 前記強化繊維層を形成する強化繊維は、PAN系或いはピッチ系炭素繊維、ガラス繊維、又は、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維、更には、金属繊維などを一種、又は、複数種混入して使用することを特徴とする請求項5〜9のいずれかの項に記載の強化繊維シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2002−254537(P2002−254537A)
【公開日】平成14年9月11日(2002.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−53099(P2001−53099)
【出願日】平成13年2月27日(2001.2.27)
【出願人】(599104369)日鉄コンポジット株式会社 (51)
【Fターム(参考)】