説明

強磁性材料の磁気特性測定方法および磁気特性測定装置

【課題】
保磁力が大きなNd系などの強磁性材料でも、小規模な設備により低コストで且つ簡便に磁性材料の特性のばらつきを測定し、熱減磁特性が劣性な磁石を判別する。
【解決手段】
磁界発生機構を有し、当該磁界発生機構により発生する磁束108を被測定物である強磁性材料105に注入し、強磁性材料の磁気特性を測定する装置において、前記被測定物である強磁性材料105と隙間を設けて配置される前記磁界発生機構の磁極107と、前記被測定物である強磁性材料と連結される荷重伝達機構102と、前記荷重伝達機構を介して伝達される、前記被測定物である強磁性材料が前記磁束により受ける力を測定する荷重センサ101とを有し、磁界発生機構の磁極107の先端部の面積が前記被測定物である強磁性材料105の面積以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強磁性材料の熱減磁特性などの磁気特性の測定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などに使用される高出力モータでは、Nd系などの保磁力の大きい強磁性体(永久磁石)を用いてモータの出力増加を図ることが一般的になってきている。しかし、Nd系などの保磁力の大きい強磁性体は、熱により磁気特性が劣化することが知られている。例えば、強磁性体を組み込んだモータにおいて、モータを駆動すると、モータ駆動中にモータ内部に発生する渦電流により強磁性体の温度が上昇し、磁気特性が非可逆的に劣化した部位が発生する。これにより、モータの出力が劣化する。このため、例えば、モータの製造工程では、高温でも熱劣化の少ない強磁性体の選別が重要になってきている。モータなどに使用される強磁性体は、磁石焼結体を着磁して使用される。特に、Nd系磁石焼結体の着磁には、大きな磁界が必要であり、磁石焼結体を完全に着磁するには、15kエルステッド以上の大きな磁界が必要といわれている。
【0003】
図13に、Nd系磁石焼結体の着磁後の断面構造の一例を示す。強磁性体の磁石焼結体の材料あるいは着磁状態が悪いと、図13に示すような、着磁されていない多磁区状態の部位が存在する。このような強磁性体が熱により温度が上昇すると、多磁区部位を起点に多磁区部位が伝播し磁化特性が劣化する。このため、このような多磁区部位の多い強磁性体を製品から取り除くことが、製品の磁気特性の品質を向上させるための重要な因子となる。
【0004】
強磁性体の磁気特性評価に関する技術として、特許文献1がある。この公報には、図12に示すように、永久磁石等の強磁性材料の被測定物105の磁気特性測定を、コイル103に電流を流して発生させた磁束を被測定物105に注入し、Bコイル1201とHコイル1202により、被測定物に生じるB−H特性を測定することが開示されている。この場合、電磁石の磁極107と被測定物105の間に空隙があると、被測定物105の着磁面に発生した磁極の反磁界により、測定に誤差を生じる。この空隙を極力小さくするため、被測定物と磁極との接する面上に厚さの薄い圧力センサのひずみゲージを設置し、ひずみゲージの出力をひずみ測定器と変換器を介し検出した検出信号を駆動用モータにフィードバックして被測定物に加わる圧力を自動的に制御した磁気特性測定装置が記載されている。
【0005】
また、特許文献2では、天秤の一方のさおに吊り下げられた試料に空芯の電磁石により、一定時間磁場を印加して磁気力を作用させ、磁場が消滅した後の天秤の自由振動の振幅をレーザ微小距離計により検出し、印加した磁界強度との関係から、試料の磁化率を測定する、B−H特性測定以外の測定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−289112号公報
【特許文献2】特開平4―346087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のようなB−H特性による磁石の磁気特性測定方法では、保磁力の大きなNd系などの磁性材料を測定する場合には、大きな磁界を発生する電磁石が必要になるため、大掛かりな設備が必要になる。また、測定前の調整に時間が掛かるので、低コストで簡易な測定には不向きである。更に、ホール素子などの磁気センサは、120℃以上の高温で使用することができない。Nd系磁石は、温度上昇に伴い、磁気特性が100度近傍から熱減磁が発生し、キュリー温度である約300度で強磁性体から常磁性体に変化する。近年の材料開発の結果、加熱により熱減磁が開始する温度がより高温側になってきており、この熱減磁現象を、ホール素子などの磁気センサで直接測定することが難しくなってきている。
【0008】
また、特許文献2の方法は、外部磁界が無いときは磁性を持たず、磁界を印加するとその方向に弱く磁化する常磁性材料の磁気特性の測定には適しているが、永久磁石など常に内部が磁化された状態になっている強磁性材料の磁気特性は測定できない。
【0009】
本発明は、保磁力が大きなNd系などの強磁性材料でも、小規模な設備により低コストで且つ簡便に磁性材料の磁気特性のばらつきを評価し、熱減磁特性が劣性な磁性材料を判別する磁気特性測定方法および磁気特性測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の磁気特性測定方法は、磁界発生機構により発生する磁束を被測定物である強磁性材料に注入し、強磁性材料の磁気特性を測定する方法において、前記磁界発生機構の磁極と前記被測定物である強磁性材料とを隙間を設けて配置し、磁極に対向する前記強磁性材料の面の外形寸法以下の面積の磁束を前記磁界発生機構から強磁性材料に注入し、前記強磁性材料が受ける力を測定することにより、磁気特性を測定することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の磁気特性測定方法は、磁界発生機構により発生する磁束を被測定物である強磁性材料に注入し、強磁性材料の磁気特性を測定する方法において、前記磁界発生機構の磁極と前記被測定物である強磁性材料とを隙間を設けて配置し、磁極に対向する前記強磁性材料の面の外形寸法以下の面積の磁束を、前記磁界発生機構から強磁性材料に注入し、前記強磁性材料が受ける力を、温度を変化させて測定することにより、熱減磁特性を測定することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の磁気特性測定装置は、磁界発生機構を有し、当該磁界発生機構により発生する磁束を被測定物である強磁性材料に注入し、強磁性材料の磁気特性を測定する装置において、前記被測定物である強磁性材料と隙間を設けて配置される前記磁界発生機構の磁極と、前記被測定物である強磁性材料と連結される荷重伝達機構と、前記荷重伝達機構を介して伝達される、前記被測定物である強磁性材料が前記磁束により受ける力を測定する荷重センサとを有し、磁界発生機構の磁極の先端部の面積が前記被測定物である強磁性材料の面積以下であることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の磁気特性測定装置は、上記の強磁性材料の磁気特性測定装置において、更に、前記被測定物である強磁性材料を加熱する加熱機構を有し、強磁性材料の熱減磁特性を測定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、保磁力が大きな強磁性材料でも、小規模な設備により低コストで且つ簡便に熱減磁特性などの磁気特性を測定できるため、強磁性材料を用いるモータなどの電動部品の品質及び信頼性の向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1の磁気特性測定装置の構成図である。
【図2】本発明による磁気特性測定の説明図である。
【図3】本発明の実施例1の磁気特性測定装置により測定した結果の1例である。
【図4】本発明の実施例1の磁気特性測定装置により温度を変化させて測定した結果の1例である。
【図5】本発明の磁束発生部に印加する電流波形の一例である。
【図6】本発明の実施例2の磁気特性測定装置により測定した結果の1例である。
【図7】本発明の実施例2の磁気特性測定装置により測定した結果の1例である。
【図8】本発明の実施例1の磁気特性測定装置により測定した結果の1例である。
【図9】本発明の実施例3の磁気特性測定装置の構成図である。
【図10】本発明の実施例4の磁気特性測定装置の構成図である。
【図11】本発明の実施例5の磁気特性測定装置の構成図である。
【図12】従来の磁気特性測定装置の構成図の1例である。
【図13】強磁性材料断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0017】
本実施例では、図1に示した電磁石によって磁性材料の磁気特性を測定する装置100を用いて、強磁性材料の熱減磁特性を簡易に測定する測定方法を説明する。
【0018】
図1は、本実施例の強磁性材料の熱減磁特性を測定する装置の構成図である。
本実施例で用いた装置は、荷重センサ101、荷重伝達機構102、コイル103、ヨーク104、被測定物105、加熱機構部106、磁極107、磁束108、磁極可動機構109からなる。符号110は、荷重伝達機構の支点を表す。被測定物105は、着磁済の強磁性材料であり、本実施例では、ネオジム、鉄、ボロンを主成分とし、NdFe14Bを主相とする、いわゆるNd系磁石を使用しているが、他の主相のNd系磁石、あるいは、Sm-Co系磁石、アルニコ磁石、Fe-Cr-Co系磁石、フェライト磁石、フェライトボンド磁石などでも良い。
【0019】
本装置を用いて、被測定物105の磁気特性を測定した例について、図1および図2を用いて詳細に説明する。図1において、被測定物105は、銅製の加熱機構106の中に設置した状態で2つの対向する磁極107の間に配置される。加熱機構106と磁極107との間隔は、磁極可動機構109とスペーサなどを用いて(図示せず)調整した後、ネジ止めなどにより磁極107を固定して位置決めを行う。
【0020】
図2に、磁極107と被測定物105の関係を詳細に記載する。本発明は、意図的に磁極と被測定物に一定の隙間を作り、磁極から生じる磁束により被測定物が受ける荷重を測定する。図2(a)に、磁極107の外形寸法が被測定物105の外形寸法よりも大きい場合を示す。この場合、磁極107に発生する磁束201の方向と、被測定物の磁束202の方向は逆向きである。このため、磁極107の中央部では、磁極107の磁束201と被測定物105の磁束202は、反発する。一方、磁極107の外周部では、被測定物の端部で生じる形成される磁束のループ203の一部と磁極107の発生する磁束201が干渉し、磁極外周部と被測定物は吸引する。このため、図2(a)に示すような磁極と被測定物の関係の場合、被測定物105が磁極107から磁束201を注入されても磁気力が相殺され、被測定物105に荷重は発生しない。一方、図2(b)に示すように、磁極107の外形寸法が被測定物105の外形寸法以下の場合、被測定物が形成する磁束のループ203との干渉が小さくなるため、磁極107の磁束201と被測定物105の磁束202が反発し、被測定物105は、磁極107の磁束201により荷重を発生する。すなわち、磁極107の外形寸法を被測定物105の外形寸法以下にすることにより、磁極107が発生する磁束201により被測定物105に荷重を発生させ、その荷重を測定することができる。
【0021】
被測定物の磁化方向と反対の磁束108をコイル103に電流を流して磁極107間に発生させ、反発力を発生させる場合、磁束の大きさは、強磁性材料の表面を通過する磁束以下であればよい。具体的には、強磁性材料の磁束密度に、磁極と対向する強磁性材料の面の面積を掛けた磁束以下であればよい。実際には、図2(b)に記載したように、被測定物105と磁極107が対抗する面の面積は略同一であるので、被測定物105と同程度の表面磁束密度を磁極107が発生するようにコイル103に電流を流す。本実施例で用いたNd系磁石の表面磁束密度は、1kガウス程度であった。このため、被測定物105の残留磁束密度は10kエルステッド程度である。本実施例で使用したコイル103は、外形Φ300mm、内径Φ120mmで、10Aの直流電流をコイルに流した場合に磁極が被測定位置に作る磁界強度が10kエルステッドであった。本実施例では、コイルに流す電流を0から10Aの範囲で測定を行った。この条件で、被測定物105に発生する荷重を測定した例を図3に示す。印加磁界と磁束108により受ける荷重は線形の相関を示しており、印加磁界が10kエルステッドで、被測定物105が磁束108により受ける荷重は12Nであった。このとき、被測定物105が磁束108により受ける荷重は、荷重伝達機構106を介して荷重センサ101に伝播され、荷重センサ101によって測定される構造になっている。本実施例では、歪ゲージ式の荷重センサを用いたが、1N程度の測定分解能があれば、ピエゾを用いた方式など他の方式の荷重センサでもかまわない。したがって、本装置は、磁性材料である被測定物105の磁界に対する荷重を測定する装置である。
【0022】
図1において、上側から下側に向かう方向を重力の方向とし、磁極107から磁束が、被測定物105に、重力と直交するように注入し、かつ重力と直交する左右方向に被測定物105が受ける力を測定するように、磁極107、被測定物105、荷重伝達機構102などを配置してもよい。
【0023】
本実施例では、コイル103に電流を流して被測定物105の持つ磁化の方向と反対方向の磁束108を発生させ、被測定物105が受ける荷重を荷重センサ101で測定している。一方、荷重センサ101は、荷重伝達機構102を介して、荷重伝達機構102の駆動方向に直交する方向に配置されている。このため、図2に示した場合とは反対に、被測定物105の磁化と同じ方向の磁束を磁極107に発生させて、被測定物105が磁束108から受ける引力を測定してもよい。上記に記載した場合のように、磁極107から発生する磁束108の向きが、被測定物105の磁化と反対方向の場合でも、同一方向の場合でも、被測定物に発生する力を測定することができる。
【0024】
また、加熱機構106は、ヒータを内部に埋め込んだ構造になっており、磁極107の磁束の発生機構とは独立に制御できる構造になっている。このため、加熱機構106を使って、被測定物の温度を任意に制御しながら、磁極107からの磁束108に対して被測定物105に発生する荷重を測定できる。尚、本実施例では、ヒータによる加熱方式を開示しているが、例えば、ハロゲンランプやレーザ光を熱源に使った加熱方式など、Nd系磁石のキュリー点である約300℃まで加熱できる能力を有する加熱方式であれば特に問題は発生しない。
【0025】
本装置を用いて、印加磁界を10kエルステッド一定にし、被測定物105の温度を上昇させながら、被測定物105に生じる荷重を測定した場合の測定結果の一例を図4に示す。本実施例の場合では、被測定物105の温度上昇に伴い、約100℃で荷重の減少が確認できる。100℃以上になると、荷重は急激に減少する。このように、本測定方法によって、インプロセスで磁石の熱減磁現象を観測することが可能になる。これにより、例えば、熱減磁現象が開始する温度を評価することができ、熱減磁しやすい磁石を判別することができるので、簡易に熱減磁特性の点から、磁石を選別することが可能になる。
【実施例2】
【0026】
上記図1に示した電磁石によって磁性材料の磁気特性を測定する装置100を用いて、磁石の熱減磁特性を簡易に測定する測定方法の別の実施例を説明する。
【0027】
本実施例では、被測定物105に印加する磁界を、図5に示したような、交番電流501を印加することにより、磁極107間に交番磁界を発生させ、この交番磁界で生じる交番磁束により、被測定物105が受ける力を荷重センサ101で測定することによって、被測定物105の磁化特性あるいは磁化特性の繰返し特性を測定する。実施例1に記載した場合のように、磁極107から発生する磁束108の向きが、被測定物105の磁化と反対方向の場合でも、同一方向の場合でも、被測定物に発生する力を測定することができる。
【0028】
図6に本実施例の測定結果の一例を示す。
図6(a)は、室温にて、交番磁界に対する被測定物105に生じる荷重を測定した一例である。荷重は交番磁界の強度と線形の相関を示している。図6(b)は、被測定物105の温度を100℃にした場合の交番磁界に対する荷重の変化を示す。この場合は、(a)と比較し、同一磁界に対する荷重が小さくなる。また、加熱により、交番磁界の強度と荷重間の線形性が劣化し、ヒステリシス波形を示す。更に加熱し、被測定物105の温度が130℃の場合を図6(c)に示す。この場合も、ヒステリシス波形を示しつつ磁界に対する感度が更に低減する。これは、加熱により、図13に示したような多磁区粒子が増えることによって、外部磁界の向きに従う粒子が増えるために発生するためと考えられる。
【0029】
一方、別の被測定物105’に、交番磁界を印加し、荷重-磁界波形を測定した一例を図7に示す、この被測定物105’の場合は、磁束108により受ける荷重は、被測定物105の場合と同等であるが、室温での測定時でもヒステリシス波形を示していた。この被測定物105’の熱減磁特性を、実施例1に示した方法で測定した結果を図8に示す。図8中、実線801が被測定物105’の熱減磁特性を示す。また、図中、点線401で、実施例1に示した荷重-磁界曲線が線形を示す被測定物105の減磁特性を示す。図8より、室温での荷重-磁界曲線でヒステリシス波形を示した被測定物105’は、荷重-磁界曲線が線形を示した被測定物105と比較し熱減磁特性が劣勢であることが確認された。これは、測定物105’は、多磁区粒子が多く存在し、熱減磁特性が悪いことが室温の測定でも類推できることを示している。したがって、被測定物105の熱減磁現象は、着磁の状態によっては、室温で交番磁界を印加した場合の荷重-磁界波形を測定することによっても、評価することができる。
【実施例3】
【0030】
本実施例では、被測定物に磁束を与える手段がコイルに電流を流す電磁石でなく、強磁性体である永久磁石を使って測定する場合の強磁性材料の荷重測定装置の例を説明する。
図9は、永久磁石901によって被測定物105に磁束108を印加し、そのとき発生する力204を測定する装置900を示す構成図の例である。
【0031】
図9に示す装置構成のうち、既に説明した図1に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。図9に示す装置900では、永久磁石901が永久磁石可動機構903およびコントローラ904によって、永久磁石901が発生する磁束と同一方向に駆動する。本実施例では、サーボモータによって制御を行ったが、1mm程度の制御が可能な方式であれば特に制限されることはない。被測定物105と永久磁石901との距離をコントローラ904によって制御することにより、被測定物105に及ぼす磁束108の大きさを制御させることができる。この永久磁石可動機構903を駆動させながら、磁束108に対する被測定物105の荷重を、荷重センサ101を使って測定することにより、簡易且つ高精度に測定することが可能になる。また、装置100と同様に、加熱機構106を有しており、被測定物105を加熱しながら、磁束108により被測定物105に発生する荷重を測定することが可能になる。また、装置105と同様に、装置900においても、磁極107の外形寸法が、被測定物105の外形以下にすることによって、高感度に荷重204を測定することが可能になる。
【実施例4】
【0032】
本実施例では、被測定物105に磁束を与える手段がコイル103に電流を流し磁極107から磁束108を発生させる、いわゆる、電磁石の場合であって、被測定物105を介して両側に2個設置して、磁束108を各々が被測定物105の発する磁束方向と逆の方向に磁束を発生させ、磁束108に対応して被測定物105に生じる力を測定する装置の例を説明する。
図10は、実施例1の装置構成に、電磁石をもう1個追加し、磁極107を通過する磁束108を増加し、測定感度を増加させた場合の装置1000を示す。
【0033】
図10の構成のうち、既に説明した図1に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。図10に示す装置1000では、磁極107が、被測定物105を介して2個設置されている。このため、実施例1で記載した装置100の2倍の磁束108を被測定物105に与えることができる。このため、保磁力が大きい磁性材料が被測定部である場合に有効な装置構成となる。また、装置100と同様に、加熱機構106を有しており、被測定物105を加熱しながら、荷重を測定することが可能である。また、更に、この場合も、磁極107の外形寸法が、被測定物105の外形以下にすることによって、高感度に荷重を測定することが可能になる。
【実施例5】
【0034】
本実施例では、被測定物105が磁束108から受ける荷重を拡大する機構が、図1で示した棒状のてこ方式ではなく、ヒンジを利用したてこ方式の構造である磁性材料の荷重測定装置の例を説明する。
図11は、実施例5における磁極からの磁束によって被測定物105に発生する力を測定する装置1100を示す構成図である。
【0035】
図11の装置構成のうち、既に説明した図1に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。図11に示す装置1100では、磁極107から発する磁束108により被測定物105に生じる荷重を伝達する荷重伝達機構1101がヒンジを利用した構造になっている。この場合も、てこの原理によって、被測定物の荷重を伝達して高精度に測定することができる。更に、ヒンジ構造の荷重伝達機構1101の場合、小型化および高速応答性が改善され、コイルへ、交番電流を高周波数で印加した場合の被測定物の荷重を高精度に測定することに有利になる。
【0036】
装置100と同様に、加熱機構106を有しており、被測定物105を加熱しながら、荷重を測定することが可能である。また、更に、この場合も、磁極107の外形寸法が、被測定物105の外形以下にすることによって、高感度に荷重を測定することが可能になる。
【符号の説明】
【0037】
100 磁気特性測定装置
101 荷重センサ
102 荷重伝達機構
103 コイル
104 ヨーク
105 被測定物
106 加熱機構部
107 磁極
108 磁束
109 磁極可動機構
110 荷重伝達機構の支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界発生機構により発生する磁束を被測定物である強磁性材料に注入し、強磁性材料の磁気特性を測定する方法において、
前記磁界発生機構の磁極と前記被測定物である強磁性材料とを隙間を設けて配置し、前記強磁性材料の外形寸法以下の面積の磁束を強磁性材料の対向する面に注入し、前記磁界発生機構から生じる磁束により前記強磁性材料が受ける力を測定することにより、磁気特性を測定することを特徴とする強磁性材料の磁気特性測定方法。
【請求項2】
磁界発生機構により発生する磁束を被測定物である強磁性材料に注入し、強磁性材料の磁気特性を測定する方法において、
前記磁界発生機構の磁極と前記被測定物である強磁性材料とを隙間を設けて配置し、前記強磁性材料の外形寸法以下の面積の磁束を強磁性材料の対向する面に注入し、前記磁界発生機構から生じる磁束により前記強磁性材料が受ける力を、温度を変化させて測定することにより、熱減磁特性を測定することを特徴とする強磁性材料の磁気特性測定方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の強磁性材料の磁気特性測定方法において、
前記磁界発生機構により交番磁束を発生し、交番磁束を前記被測定物である強磁性材料の対向する面に注入し、ヒステリシス波形を測定することを特徴とする強磁性材料の磁気特性測定方法。
【請求項4】
磁界発生機構を有し、当該磁界発生機構により発生する磁束を被測定物である強磁性材料に注入し、強磁性材料の磁気特性を測定する装置において、
前記被測定物である強磁性材料と隙間を設けて配置される前記磁界発生機構の磁極と、前記被測定物である強磁性材料と連結される荷重伝達機構と、前記荷重伝達機構を介して伝達される、前記被測定物である強磁性材料が前記磁束により受ける力を測定する荷重センサとを有し、
磁界発生機構の磁極の先端部の面積が前記被測定物である強磁性材料の対向する面の面積以下であることを特徴とする強磁性材料の磁気特性測定装置。
【請求項5】
請求項4記載の強磁性材料の磁気特性測定装置において、更に、
前記被測定物である強磁性材料を加熱する加熱機構を有し、強磁性材料の熱減磁特性を測定することを特徴とする強磁性材料の磁気特性測定装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5記載の強磁性材料の磁気特性測定装置において、
前記磁界発生機構が、コイルおよびヨークからなることを特徴とする強磁性材料の磁気特性測定装置。
【請求項7】
請求項6記載の強磁性材料の磁気特性測定装置において、
前記コイルに、交番電流を印加するように構成したことを特徴とする強磁性材料の磁気特性測定装置。
【請求項8】
請求項6記載の強磁性材料の磁気特性測定装置において、
前記コイルおよびヨークからなる磁界発生機構が、前記被測定物である強磁性材料の両側に配置されることを特徴とする強磁性材料の磁気特性測定装置。
【請求項9】
請求項4または請求項5記載の強磁性材料の磁気特性測定装置において、
前記磁界発生機構が、永久磁石からなることを特徴とする強磁性材料の磁気特性測定装置。
【請求項10】
請求項9記載の強磁性材料の磁気特性測定装置において、
前記永久磁石を、当該永久磁石が発生する磁束と同一方向に駆動する永久磁石可動機構を有することを特徴とする強磁性材料の磁気特性測定装置。
【請求項11】
請求項4記載の強磁性材料の磁気特性測定装置において、
前記荷重伝達機構が、ヒンジ構造の荷重伝達機構であることを特徴とする強磁性材料の磁気特性測定装置。
【請求項12】
請求項4記載の強磁性材料の磁気特性測定装置において、
前記磁界発生機構の磁極から磁束が、前記強磁性材料に、重力と直交するように注入され、かつ重力と直交する方向に前記磁性材料が受ける力を測定することを特徴とする強磁性材料の磁気特性測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−145533(P2012−145533A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5823(P2011−5823)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】