説明

弾性接触子

【課題】 電子部品の外部電極と適度な接圧を有して接続することができ、外部電極に接しても変形しにくい突出部を備えた弾性接触子を提供する。
【解決手段】 弾性接触子20はその先端部22bに突出部23を備える。弾性接触子20は内部の弾性層がNiまたはNiを含む合金で形成されており、電子部品40の外部電極42との間で適度な接圧を有して接続される。弾性層を覆う表面層はAuで形成されており、突出部23はCuとNiの合金、NiまたはAuのいずれかで形成される。CuとNiの合金及びNiは、表面層を形成するAuより高い硬度を有するため、弾性接触子20が外部電極42に大きな押圧力で当接しても突出部23が容易に変形することがなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの外部電極に接続される弾性接触子に係わり、特に外部電極に対して良好な接圧で接触することが可能な弾性接触子に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1には、弾性腕の先端に設けられた当接部23の一方の面に当接凸部23aが、他方の面に当接凸部23bが、互いに重ならない位置に形成されてなるスパイラル型の接続端子20が開示されている。この接続端子20は、Niの表面に金メッキを施すことにより形成されている。
【0003】
ICパッケージなどの電子部品の底面には複数の平面電極1aが設けられており、それぞれの平面電極1aを基台11上に設けられたスパイラル状の接続端子20に弾圧させると、一方の当接凸部23aが平面電極1aに接触し、他方の当接凸部23bが基台11側の上側接続部17aに接触するため、平面電極1aと上側接続部17aとの間を短い経路で接続できるようになっている。
【0004】
特許文献1記載のものは、スパイラル型の接続端子20が有するインダクタンス成分を低く抑えることを目的とするものであり、このため接側端子の先端の両面に設けられた一方の当接凸部23aと他方の当接凸部23bを、平面電極1aと上側接続部17aとの間に強固に挟み込んで接側端子20が弾性機能を失わせた状態で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−71518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなスパイラル型の接続端子は、例えば電子部品の検査用ソケットやバーンイン装置用のソケットなどに使用される。電子部品を保持するために必要となる押圧力は、電子部品1のピン数が増えるにしたがって増大するところ、ピン数の増加が顕著な電子部品においては、今後もより大きな押圧力を発生させるソケットが必要になる。
【0007】
しかし、大きな押圧力を発生させるソケットは、全体的に堅牢な作りとする必要があることから大型化しやすくなり、コスト的にも安価とすること難しいという問題がある。
【0008】
このため、接続端子の弾性腕を曲げ弾性係数の低い材料で形成すること、すなわち接続端子全体を曲げ弾性係数の高いNiなどの材料を使用せずにそれよりも曲げ弾性係数の低い材料(Cuなど)を用いて形成することが考えられる。しかしながら、接続端子全体を曲げ弾性係数の低い材料で形成した場合には、押圧力を受けたときに当接凸部が変形しやすくなり、平面電極1aと上側接続部17aとの間で接続不良が起きやすくなるという問題がある。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、電子部品の外部電極と適度な接圧を有して接触することができ、接触後も容易に変形することのない突出部(当接凸部)を備えた弾性接触子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電子部品の外部電極に当接して電気的に接続される弾性腕を備えた弾性接触子において、
前記弾性腕の先端に、前記外部電極に突き当たる突出部が、前記弾性腕の表面を形成する第1の材料と同じ材料、または前記第1の材料よりも硬度の高い第2の材料で形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明では、前記弾性腕の先端の突出部が、弾性腕よりも硬度の高い材料で形成されているため、弾性腕が適度な弾性力を発揮して先端の突出部が電子部品の外部電極に当接しても突出部自体の変形を防止できる。このため、電子部品側の外部電極と弾性接触子との間の接続を良好にすることができる。
【0012】
例えば、前記第1の材料がAuで形成されており、前記第2の材料がCuとNiの合金、NiまたはAuのいずれかで形成されているものとして構成できる。
【0013】
また前記突出部が、バンプボンダーで形成されたバンプとすることができる。
さらには、前記突出部の頂部が、平坦面で形成されているものが好ましい。
【0014】
上記手段では、平面型の外部電極と突出部との接触状態を安定させることができる。
例えば、前記突出部は、頂部の面積よりも底部の面積の方が広い裁頭円錐形状である。
【0015】
上記手段では、当接後も変形しにくい突出部とすることができる。
また前記弾性腕が渦巻き形状に形成されるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、電子部品側の外部電極に対し、弾性腕の先端部に設けられた突出部が適度な弾性力を有して接触することができる。しかも接触後において突出部の変形を防止することができるため、電気的に良好な接続状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態としての弾性接触子を拡大して示す平面図、
【図2】弾性腕の断面図、
【図3】弾性接触子を備えた接続装置の部分断面図、
【図4】図3に示す接続装置の弾性接触子付近を示す拡大断面図、
【図5】電子部品側の平面電極と接触した状態を示す図4同様の拡大断面図、
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明の実施形態としての弾性接触子を拡大して示す平面図、図2は弾性腕の断面図、図3は図1の弾性接触子を備えた接続装置の部分断面図、図4は図3に示す接続装置の弾性接触子付近を示す拡大断面図、図5は電子部品側の平面電極と接触した状態を示す図4同様の拡大断面図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の弾性接触子20は、支持部21と弾性腕22が一体に連続して形成されている。弾性腕22は例えば渦巻き形状に形成されており、弾性腕22の巻き始端である基端部22aが、支持部21と一体化されている。弾性腕22の巻き終端である先端部22bは、渦巻きのほぼ中心部に位置している。先端部22bの表面には、上方(図4のZ1方向)に突出する突出部23が形成されている。
【0020】
図4及び図5に示すように、弾性接触子20は先端部22bが基端部22aよりも上方に突出するように立体成形されており、基端部22aを基準として先端部22bがZ方向に弾性変形可能である。
【0021】
なお、本発明では、弾性腕22の形状は渦巻き形状であることに限定されない。例えば、弾性腕22は帯状(直線状)や湾曲形状等であってもよい。
【0022】
図2に断面図で示すように、弾性腕22は、芯部22Aと芯部22Aの周囲を覆う弾性層22Bと、弾性層22Bの表面を覆う表面層22Cを有している。芯部22Aは、例えば、銅(Cu)または銅を含む合金の単層である。銅合金は、高い電気導電度と高い機械的強度を有するCu,Si,Niを有するコルソン合金が好ましく使用される。コルソン合金は、例えばCu−Ni−Si−Mgで、Cuが96.2質量%、Niが3.0質量%、Si(ケイ素)が0.65質量%、Mg(マグネシウム)が0.15質量%のものが使用される。
【0023】
弾性層22Bは、導電性であり且つ高い機械的強度と高い曲げ弾性係数を発揮する金属材料であり、ニッケル(Ni)層またはNiを含む合金層である。Ni合金は、Ni−X合金(ただしXは、P(リン)、W(タングステン)、Mn(マンガン)、Ti、Be(ベリリウム)、Co(コバルト)、B(ホウ素)のいずれか一種以上)が使用される。
【0024】
弾性層22Bは、芯部22Aの周囲に電解メッキまたは無電解メッキを施すことで形成される。弾性層22Bは、好ましくは無電解メッキで形成されたNi−P合金である。Ni−P合金では、リン(P)の濃度を10at%以上で30at%以下(より好ましくは17〜25at%)とすることにより、少なくとも一部が非晶質となり(好ましくは全体が非晶質)、高い弾性係数と高い引っ張り強度を得ることができる。あるいは、弾性層22BはNi−W合金で形成される。この場合もタングステン(W)の濃度を10at%以上で30at%以下とすることにより、少なくとも一部が非晶質となり(好ましくは全体が非晶質)、高い弾性係数と高い引っ張り強度を得ることができる。
【0025】
図2において、弾性層22Bの断面積は、芯部22Aの断面積の20%以上で80%以下であることが好ましい。この範囲であると、芯部22Aが導電性とばね性(弾性)の双方の機能を発揮できる。また図2の断面図において、芯部22Aの厚さ寸法および幅寸法は、共に10μm以上で100μm以下であることが好適である。
【0026】
ただし、弾性層22Bが導電性および弾性を有するため、芯部22Aが形成されず、弾性層22Bのみで形成されてもよい。
【0027】
また表面層22Cの材料(第1の材料)としては、弾性腕22の導電性を高めるAuが好適に使用される。
【0028】
弾性接触子20は、例えば、薄い導電性金属板を打ち抜いて芯部22Aを形成し、この芯部22Aの表面に弾性層22B、さらには表面層22Cを上述のメッキ処理で形成される。あるいは、弾性接触子20は、芯部22Aを形成する工程を含むすべての工程をメッキ工程(電鋳)により形成することもできる。
【0029】
例えば、後述する基材シート16とは別個のシートの表面に複数の弾性接触子20が複数のメッキ工程を経て形成され、シートが、基材シート16に重ね合わされて、それぞれの弾性接触子20が、導電性接着剤などで接続ランド17aに接合される(図4参照)。
【0030】
なお、それぞれの弾性接触子20は、基材シート16に設置された後に、例えば、外力が与えられて立体形状に形成される。このとき、加熱処理で内部の残留応力が除去され、弾性接触子20は立体形状で弾性力を発揮できるようになる。
【0031】
突出部23の形成は、例えばバンプボンダーを用いて形成することができる。すなわち、弾性接触子20をボンディングステージ上面の規定位置に保持し、所定の金属ワイヤの先端部を溶かして形成したボールを毛細管によって、弾性接触子20の先端部22bの表面に移動させ、前記ボールを弾性接触子20の先端部22bの表面に接合することにより、バンプから形成される突出部23を得ることができる。
【0032】
突出部23を形成する金属ワイヤの材料(第2の材料)はAuを使用することができる。これにより、バンプボンダーを用いて、弾性腕22の先端部22bの表面層22Cに対し、突出部23を同じAu(第2の材料)を用いて容易に形成することが可能となる。
【0033】
また突出部23は、先端部22b上に電鋳法を用いて形成することもできる。この場合、突出部23を形成する第2の材料としては、表面層22Cを形成するAu(第1の材料)よりも硬度の高い材料、例えばCuとNiの合金、あるいはNi単体などが好適に使用される。
【0034】
このように、突出部23を硬度の高い第2の材料で形成しておくと、突出部23が電子部品1側の外部電極42に強く突き当たったとしても容易に変形することを防止することができる。このため、外部電極42と弾性接触子20との間に接触不良が生じにくくなり、良好な接続状態とすることができる。
【0035】
突出部23の形状としては、頂部23aが平坦面で形成された凸形状が好ましく、より好ましくは底部23b側の面積が頂部23a側の面積よりも広い裁頭円錐形状である。なお、頂部23aの直径は、おおよそ20〜30μmである。
【0036】
このように、突出部23の頂部23aが平坦面で形成されていると、平面型の外部電極(平面電極)42に対して突出部23の頂部23aが安定して接触することが可能となる。よって、外部電極42から受ける力が突出部23に均等に作用しやすくなり、突出部23自体の変形を防止することが可能となる。
【0037】
さらに突出部23が裁頭円錐形状で形成されていると、弾性接触子20に大きな押圧力が作用したとしても突出部23が押し潰され難くすることができる。このため、外部電極42と弾性接触子20との間の電気的な接続を良好な状態を維持することができ、接触不良の問題を解消することが可能となる。
【0038】
次に、上記弾性接触子20を用いた接続装置について説明する。
図3に示す接続装置10は、基台11を有している。基台11の平面形状は例えば四角形状であり、基台11の4辺のそれぞれにはほぼ垂直に立ち上がる側壁部10aが形成されている。4辺の側壁部10aで囲まれた領域は凹部であり、その底部10bの上面が支持面12である。支持面12の上には、接続シート15が設置されている。接続シート15は、例えば、可撓性の基材シート16の表面に複数の弾性接触子20が設けられた構成である。
【0039】
図4に示すように、基材シート16には、多数のスルーホール16aが形成され、それぞれのスルーホール16aの内周面には導電体層17がメッキなどの手段で形成されている。基材シート16の表面には、導電体層17に導通する表側接続ランド17aが形成され、基材シート16の裏面には、導電体層17に導通する裏側接続ランド17bが形成されている。
【0040】
そして、個々の弾性接触子20の支持部21が、表側接続ランド17aの表面に導電性接着剤などで接合されている。
【0041】
図4に示すように、基材シート16の裏面側では、裏側接続ランド17bに個別に接続する導電性材料のバンプ電極18が形成されている。図3に示すように、接続シート15が基台10Aの底部10bの表面である支持面12に設置されると、バンプ電極18が、支持面12に設けられた導電部(図示せず)に接続される。
【0042】
支持面12上での弾性接触子20の配列ピッチは、例えば2mm以下であり、あるいは1mm以下である。弾性接触子20の外形寸法の最大値も2mm以下であり、あるいは1mm以下である。
【0043】
なお上記の接続シート15の構成は一例である。例えば、図4では基材シート16にスルーホール16aが設けられているが、スルーホール16aが形成されず、基材シート16の表面に弾性接触子20と導通する配線パターンが形成された構成でもよい。
【0044】
図3に示すように、接続装置10は電子部品40が設置される。電子部品40はICパッケージ(半導体デバイス)などであり、ICベアチップなどの各種電子素子が本体部41内に密閉されている。本体部41の底面41aには、外部電極42として複数の平面型の電極(平面電極)が設けられており、それぞれの外部電極42が本体部41内の回路に導通している。この実施の形態の電子部品40は外部電極42が平面型の電極(平面電極)であるが、その他例えば球状電極、あるいは裁頭円錐形状の電極などの場合もある。
【0045】
接続装置10は、例えば、電子部品40の検査用ソケットであり、図3に示すように、被検査物である電子部品40が、基台11の凹部11A内に装着される。このとき、電子部品40は、本体部41の底面41aに設けられた個々の外部電極42が弾性接触子20の上に設置されるように位置決めされる。基台11の上には図示しない押圧用の蓋体が設けられており、この蓋体を基台11上に被せると、この蓋体により電子部品40が矢印方向へ押圧される。
【0046】
図5に示すように、この押圧力により、それぞれの外部電極42が弾性接触子20に押し付けられる。このとき、外部電極42が弾性腕22の先端に設けられた突出部23に突き当たり、立体形状の弾性腕22が圧縮されて、外部電極42と弾性接触子20とが個別に導通させられ、電子部品40の本体部41内の回路が断線しているか否か、本体部41内の回路の動作試験が行われる。
【0047】
弾性接触子20は、弾性腕22が弾性層22Bを有しており、突出部23は表面層22Cを形成する第1の材料(Au)と同じ硬度か、それよりも高い硬度の第2の材料で形成されている。このため、弾性接触子20は、適度な弾性(ばね定数)と高い導電性を有するとともに、突出部23は大きな押圧力によっても押し潰されにくい。
【0048】
よって、押圧力により外部電極42が弾性接触子20に押し付けられても、弾性接触子20は外部電極42を押し返し、この間に適度な接圧を確保することができ、さらには突出部23と外部電極42との間の接続状態が安定するため、電気的に良好な接続状態とすることができる。
【0049】
上記実施の形態では、先端部22bに突出部23を1つ設けた構成を示して説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、複数の突出部23を先端部22bに形成する構成であってもよい。このような構成では押圧力を各突出部23に分散させることができるため、より効果的に突出部23の変形を防止することが可能となり、電気的な接続をより確実なものとすることができる。
【0050】
また上記実施の形態では、突出部23を先端部22bのみに設けた構成を示して説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、先端部22b以外の弾性腕22上のいずれかの位置に突出部23を1ヶ、または弾性腕22に沿ってその表面に複数形成する構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0051】
10 接続装置
10a 基台の側壁部
10b 基台の底部
11 基台
12 支持面
15 接続シート
16 基材シート
16a スルーホール
17 導電体層
17b 接続ランド
18 バンプ電極
20 弾性接触子
21 支持部
22 弾性腕
22a 基端部
22b 先端部
23 突出部
23a 突出部の頂部
23b 突出部の底部
22A 芯部
22B 弾性層
22C 表面層
40 電子部品
41 電子部品の本体部
41a 本体部の底面
42 外部電極(平面電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の外部電極に当接して電気的に接続される弾性腕を備えた弾性接触子において、
前記弾性腕の先端に、前記外部電極に突き当たる突出部が、前記弾性腕の表面を形成する第1の材料と同じ材料、または前記第1の材料よりも硬度の高い第2の材料で形成されていることを特徴とする弾性接触子。
【請求項2】
前記第1の材料がAuで形成されており、前記第2の材料がCuとNiの合金、NiまたはAuのいずれかで形成されている請求項1記載の弾性接触子。
【請求項3】
前記突出部が、バンプボンダーで形成されたバンプである請求項1または2記載の弾性接触子。
【請求項4】
前記突出部の頂部が、平坦面で形成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の弾性接触子。
【請求項5】
前記突出部は、頂部の面積よりも底部の面積の方が広い裁頭円錐形状である請求項4記載の弾性接触子。
【請求項6】
前記弾性腕が渦巻き形状に形成されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の弾性接触子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−212091(P2010−212091A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57039(P2009−57039)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】