説明

弾性波フィルタ装置及びこれを用いたデュプレクサ及び電子機器

【課題】本発明は、弾性波フィルタ装置及びこれを用いたデュプレクサ及び電子機器の帯域高域部分の挿入損失劣化を低減させることを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するために、本発明の弾性波フィルタ装置10は、第1の弾性波フィルタ15と第2の弾性波フィルタ16とを備え、第1の弾性波フィルタ15は、第1の縦結合型弾性波フィルタ15aと第2の縦結合型弾性波フィルタ15eとを備え、第1の不平衡信号入力部15b及び第2の不平衡信号入力部15fは入力部12と電気的に接続され、第1の平衡信号出力部15c及び第3の平衡信号出力部15gは入出力部13aと電気的に接続され、第2の平衡信号出力部15d及び第4の平衡信号出力部15hは入出力部13bと電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等に用いられる弾性波フィルタ装置及びこれを用いたデュプレクサ及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の弾性波フィルタ装置は、図12に示すごとく、入力部2と、入出力部3a、3bと、出力部4a、4bと、入力部2から不平衡信号が入力されて入出力部3a、3bに平衡信号を出力する第1の弾性波フィルタ5と、入出力部3a、3bから平衡信号が入力されて出力部4a、4bに平衡信号を出力する第2の弾性波フィルタ6とを備えていた。
【0003】
また、第1の弾性波フィルタ5及び第2の弾性波フィルタ6は圧電基板1上に形成されていた。
【0004】
また、第1の弾性波フィルタ5は、第1の不平衡信号入力部5bと第1の平衡信号出力部5cと第2の平衡信号出力部5dとを有する第1の縦結合型弾性波フィルタ5aと、第2の不平衡信号入力部5fと第3の平衡信号出力部5gと第4の平衡信号出力部5hとを有する第2の縦結合型弾性波フィルタ5eとを備えていた。
【0005】
第1の平衡信号出力部5cと第2の平衡信号出力部5dからは互いに同位相(位相差が略0°)の信号が入出力され、第3の平衡信号出力部5gと第4の平衡信号出力部5hからは互いに同位相の信号が入出力されていた。また、第1の平衡信号出力部5c及び第2の平衡信号出力部5dから出力される信号と、第3の平衡信号出力部5g及び第4の平衡信号出力部5hから出力される信号とは互いに逆位相(位相差が略180°)であった。
【0006】
この弾性波フィルタ装置において、第1の平衡信号出力部5cと第2の平衡信号出力部5dとが結線されて入出力部3aに電気的に接続されていた。また、第3の平衡信号出力部5gと第4の平衡信号出力部5hとが結線されて入出力部3bに電気的に接続されていた。
【0007】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−314371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の弾性波フィルタ装置は、帯域高域部分の挿入損失劣化が大きいことが問題となっていた。
【0010】
図13は、従来の弾性波フィルタ装置における第1の弾性波フィルタ5の通過帯域特性を示す図である。このように、初段に位置する第1の弾性波フィルタ5において、所望の通過帯域PB0における高域部分にスプリアスSが発生する。その結果として、従来の弾性波フィルタ装置の挿入損失劣化が大きくなっていた。
【0011】
そこで、本発明の弾性波フィルタ装置は、スプリアスの発生を抑制し、挿入損失劣化を低減することができる弾性波フィルタ装置ならびにこれを用いたデュプレクサ及び電子機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明の弾性波フィルタ装置は、入力部と、1対の入出力部と、入力部から不平衡信号が入力されて1対の入出力部に平衡信号を出力する第1の弾性波フィルタと、1対の入出力部から平衡信号が入力される第2の弾性波フィルタとを備えた弾性波フィルタ装置であって、第1の弾性波フィルタは、第1の不平衡信号入力部と第1の平衡信号出力部と第2の平衡信号出力部とを有する第1の縦結合型弾性波フィルタと、第2の不平衡信号入力部と第3の平衡信号出力部と第4の平衡信号出力部とを有する第2の縦結合型弾性波フィルタとを備え、第1の不平衡信号入力部及び第2の不平衡信号入力部は入力部と電気的に接続され、第1の平衡信号出力部及び第3の平衡信号出力部は1対の入出力部の一方と電気的に接続され、第2の平衡信号出力部及び第4の平衡信号出力部は1対の入出力部の他方と電気的に接続された構成とする。
【0013】
この構成により、スプリアスの発生を抑制し、挿入損失劣化を低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の弾性波フィルタ装置は、スプリアスの発生を抑制し、挿入損失劣化を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1における弾性波フィルタ装置の説明図
【図2】実施の形態1における第1の弾性波フィルタの通過特性を示す図
【図3】実施の形態1における弾性波フィルタ装置の通過特性を示す図
【図4】実施の形態1における弾性波フィルタ装置、およびこの弾性波フィルタ装置を用いた受信フィルタ及びデュプレクサの説明図
【図5】実施の形態1における弾性波フィルタ装置の説明図
【図6】実施の形態1における弾性波フィルタ装置の説明図
【図7】実施の形態1における弾性波フィルタ装置の説明図
【図8】実施の形態2における第1の弾性波フィルタの説明図
【図9】実施の形態2におけるキャパシタンス成分を設けた部分の具体的な構成上面図
【図10】実施の形態2におけるキャパシタンス成分を設けた部分の要部斜視図
【図11】実施の形態3における第1の弾性波フィルタの説明図
【図12】従来の弾性波フィルタ装置の説明図
【図13】従来の第1の弾性波フィルタの通過特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明はこれら実施の形態によって限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
本実施の形態の弾性波フィルタ装置10は、図1に示すごとく、入力部12と、第1の弾性波フィルタ15と、1対の入出力部13a、13bと、第2の弾性波フィルタ16と、1対の出力部14a、14bとを備えている。
【0018】
第1の弾性波フィルタ15は、入力部12から不平衡信号が入力されて1対の入出力部13a、13bに平衡信号を出力する。第1の弾性波フィルタ15は、第1の不平衡信号入力部15bと第1の平衡信号出力部15cと第2の平衡信号出力部15dとを有する第1の縦結合型弾性波フィルタ15aと、第2の不平衡信号入力部15fと第3の平衡信号出力部15gと第4の平衡信号出力部15hとを有する第2の縦結合型弾性波フィルタ15eとを備えている。
【0019】
また、第1の不平衡信号入力部15b及び第2の不平衡信号入力部15fは入力部12と電気的に接続されている。第1の平衡信号出力部15cと第3の平衡信号出力部15gとは接続点15iを介して入出力部13aと電気的に接続されている。第2の平衡信号出力部15dと第4の平衡信号出力部15hとは接続点15jを介して入出力部13bと電気的に接続されている。
【0020】
ここで、入出力部13aからの入出力信号の位相は入出力部13bからの入出力信号の位相に対して180°ずれた逆位相の構成としている。なお、実際には、設計精度やばらつきを考慮すると、入出力部13aと入出力部13bの入出力信号の位相差は180°±10°程度の幅を有する。
【0021】
さらに、第1の縦結合型弾性波フィルタ15aは、IDT電極17c、17d、17e、17f、17gを有する。IDT電極17c、17d、17e、17f、17gの弾性波伝搬方向の両側にはグレーティング型の反射器17a、17bを有している。
【0022】
同様に、第2の縦結合型弾性波フィルタ15eは、IDT電極18c、18d、18e、18f、18gを有する。IDT電極18c、18d、18e、18f、18gの弾性波伝搬方向の両側にはグレーティング型の反射器18a、18bを有している。
【0023】
IDT電極17c、17e、17gの一端は、第1の不平衡信号入力部15bに電気的に接続されると共に、その他端はグランドに接続されている。同様に、IDT電極18c、18e、18gの一端は第2の不平衡信号入力部15fに電気的に接続されると共に、その他端はグランドに接続されている。
【0024】
すなわち、IDT電極17c、17e、17gは、それぞれ、第1の不平衡信号入力部15bに電気的に接続された櫛歯電極指と、グランドに接続された櫛歯電極指とが交差するように対向配置されている。同様に、IDT電極18c、18e、18gは、それぞれ、第2の不平衡信号入力部15fに電気的に接続された櫛歯電極指と、グランドに接続された櫛歯電極指が交差するように対向配置されている。
【0025】
IDT電極17dの一端はグランドに接続されると共に、その他端は第1の平衡信号出力部15cに電気的に接続されている。IDT電極18dの一端はグランドに接続されると共に、その他端は第3の平衡信号出力部15gに電気的に接続されている。また、上述の通り、第1の平衡信号出力部15cと第3の平衡信号出力部15gとは接続点15iを介して入出力部13aと電気的に接続されている。
【0026】
一方、IDT電極17fの一端はグランドに接続されると共に、その他端は第2の平衡信号出力部15dに電気的に接続されている。IDT電極18fの一端はグランドに接続されると共に、その他端は第4の平衡信号出力部15hに電気的に接続されている。また、上述の通り、第2の平衡信号出力部15dと第4の平衡信号出力部15hとは接続点15jを介して入出力部13bと電気的に接続されている。
【0027】
すなわち、IDT電極17d、17f、18d、18fは、それぞれ、第1、第2、第3、第4の平衡信号出力部15c、15d、15g、15hと電気的に接続された櫛歯電極指と、グランドと接続された櫛歯電極指が交差するように対向配置されている。
【0028】
このように第1の弾性波フィルタ15を構成することにより、第1の平衡信号出力部15cからの出力される信号の位相と第2の平衡信号出力部15dから出力される信号の位相とを逆位相にすることができる。さらに、第3の平衡信号出力部15gから出力される信号の位相と第4の平衡信号出力部15hから出力される信号の位相とを逆位相にすることができる。また、第1の平衡信号出力部15cから出力される信号の位相と第3の平衡信号出力部15gから出力される信号の位相とを同位相にすることができる。さらに、第2の平衡信号出力部15dから出力される信号の位相と第4の平衡信号出力部15hから出力される信号の位相とを同位相にすることができる。
【0029】
この構成により、入出力部13aからの入出力信号の位相と入出力部13bからの入出力信号の位相とを逆位相とすることができる。
【0030】
第2の弾性波フィルタ16は、1対の入出力部13a、13bから平衡信号が入力されて1対の出力部14a、14bに平衡信号を出力する。第2の弾性波フィルタ16は、1対の平衡信号入力部16b、16cと1対の平衡信号出力部16d、16eとを有する第3の縦結合型弾性波フィルタ16aを備えている。第2の弾性波フィルタ16は、IDT電極19c、19d、19e、19f、19g、19hを有し、これらのIDT電極19c、19d、19e、19f、19g、19hの弾性波伝搬方向の両側にはグレーティング型の反射器19a、19bを有している。
【0031】
また、1対の平衡信号入力部16b、16cはそれぞれ1対の入出力部13a、13bと電気的に接続されている。1対の平衡信号出力部16d、16eはそれぞれ1対の出力部14a、14bと電気的に接続されている。
【0032】
このような構成の弾性波フィルタ装置10により、所望の帯域における高域部のスプリアスを抑制し、挿入損失劣化を低減させることができる。
【0033】
図2は第1の弾性波フィルタ15の通過特性を示す図である。横軸に周波数を、縦軸にその周波数におけるフィルタの通過特性を示している。
【0034】
図2において、第1の弾性波フィルタ15の特性201と、従来の弾性波フィルタ装置における第1の弾性波フィルタ5の特性202とを示している。
【0035】
図2に示すように、所望の通過帯域PBが2.11GHz〜2.17GHzの周波数範囲において、本実施の形態の特性201(太線)は、その高域部におけるスプリアスSが抑制され、挿入損失劣化が低減されていることがわかる。具体的には、高域部である2.17GHzの挿入損失が従来の特性202(細線)では1.8dBであるのに対し、本実施の形態の特性201によれば1.4dBにまで改善されていることがわかる。
【0036】
図2に示す特性を有する第1の弾性波フィルタ15に対して、第2の弾性波フィルタ16とを縦列に接続した弾性波フィルタ装置10は、帯域外の減衰特性を改善することができる。
【0037】
図3は、弾性波フィルタ装置10の通過特性を示す図である。図3において、弾性波フィルタ装置10の特性301と、第1の弾性波フィルタ15の特性302とを示している。
【0038】
図3に示すように、所望の阻止帯域EBである1.92GHz〜1.98GHzの周波数範囲において、弾性波フィルタ装置10の特性301は、第1の弾性波フィルタ15の特性302と比べて十分に減衰特性を確保できていることがわかる。
【0039】
このように、本実施の形態における弾性波フィルタ装置10は、所望の帯域PBにおける高域部のスプリアスを抑制し、挿入損失劣化を低減させるとともに、所望の阻止帯域EBにおける減衰特性を確保することができる。
【0040】
なお、第1の縦結合型弾性波フィルタ15aが有する各IDT電極17c、17d、17e、17f、17gにおける最外端の電極指の極性と、第2の縦結合型弾性波フィルタ15eが有する各IDT電極18c、18d、18e、18f、18gの最外端の電極指の極性とを同じにすることが望ましい。これは、第1の縦結合型弾性波フィルタ15aが有する各IDT電極17c、17d、17e、17f、17gの櫛歯電極の組み合わせ方と、第2の縦結合型弾性波フィルタ15eが有する各IDT電極18c、18d、18e、18f、18gの櫛歯電極の組み合わせ方を同一とすることにより実現することができる。これにより、第1の平衡信号出力部15cから出力される信号と第3の平衡信号出力部15gから出力される信号を同位相とすることができ、第2の平衡信号出力部15dから出力される信号と第4の平衡信号出力部15hから出力される信号とを同位相とすることができる。このように第1の弾性波フィルタ15を構成することにより、本実施の形態における弾性波フィルタ装置10を容易に実現することが可能となる。
【0041】
なお、図1に示した圧電基板11には、YカットX伝播LiNbO3基板や、その他のカット角を有するLiNbO3基板、LiTaO3基板、水晶などの圧電性を有する圧電基板を用いることができる。
【0042】
また、圧電基板11上に形成するIDT電極や反射器は、アルミニウム、銅、銀、金、チタン、タングステン、白金、クロム、モリブデンの少なくとも一種からなる単体金属、又はこれらを主成分とする合金又はそれらの金属が積層された構成である。
【0043】
なお、第1の縦結合型弾性波フィルタ15aの交差幅L1を、第2の縦結合型弾性波フィルタ15eの交差幅L2よりも大きくすることにより、横モードスプリアスの発生周波数を効果的に分散させることができる。
【0044】
なお、図1に示した弾性波フィルタ装置10において、第1、第2、第3の縦結合型弾性波フィルタ15a、15e、16aは、いずれも弾性波伝播方向に沿って配置された5個のIDT電極を有する構成としたが、IDT電極の数はこれに限定されない。
【0045】
図4は、3個のIDT電極を有する縦結合型弾性波フィルタを用いた弾性波フィルタ装置40、およびこの弾性波フィルタ装置40を用いた受信フィルタ42及びデュプレクサ44の説明図である。
【0046】
図4において、弾性波フィルタ装置40は、第1、第2の縦結合型弾性波フィルタ45a、45bを有する第1の弾性波フィルタ45と、第3の縦結合型弾性波フィルタ46aを有する第2の弾性波フィルタ46を備えている。
【0047】
第1の縦結合型弾性波フィルタ45aは、3個のIDT電極47c、47d、47eを有し、これらのIDT電極47c、47d、47eの弾性波伝搬方向の両側にはグレーティング型の反射器47a、47bを有している。また、第2の縦結合型弾性波フィルタ45bは、3個のIDT電極48c、48d、48eを有し、これらのIDT電極48c、48d、48eの弾性波伝搬方向の両側にはグレーティング型の反射器48a、48bを有している。第3の縦結合型弾性波フィルタ46aは、図1の弾性波フィルタ装置10における第3の縦結合型弾性波フィルタ16aと同じ構成としている。この構成により、弾性波フィルタ装置40を小型に形成することができる。
【0048】
また、弾性波フィルタ装置40の前段に共振器41を設けて受信フィルタ42を構成している。この受信フィルタ42は、アンテナ49から入力された不平衡信号を濾波するとともに、1対の平衡信号に変換して1対の出力部44a、44bから出力している。これにより、所望の帯域における高域部のスプリアスを抑制し、挿入損失劣化を低減させた受信フィルタを構成することができる。
【0049】
また、受信フィルタ42と送信フィルタ43とを組み合わせることにより、デュプレクサ44を構成している。このデュプレクサ44は、アンテナ49から入力された信号を受信フィルタ42で濾波して1対の出力部44a、44bから出力するとともに、入力部44cから入力された信号を送信フィルタ43で濾波してアンテナ49に出力することができる。送信フィルタ43は、例えば、複数の共振器を梯子状に接続したラダー型フィルタを用いることができる。
【0050】
また、図1の弾性波フィルタ装置10において、入出力部13aからの入出力信号の位相と入出力部13bからの入出力信号の位相とを逆位相となる構成とした。しかし、入出力信号の位相を同位相となる構成としてもよい。この構成により、入出力部13aに接続される配線と入出力部13bに接続される配線とがクロスする部分の寄生容量成分を小さくすることができる。
【0051】
図5は、入出力部からの入出力信号の位相とが同位相となる構成の一例である弾性波フィルタ装置50の説明図である。
【0052】
図5の(a)に示す弾性波フィルタ装置50は、第1、第2の縦結合型弾性波フィルタ55a、55bを有する第1の弾性波フィルタ55と、第3の縦結合型弾性波フィルタ56aを有する第2の弾性波フィルタ56を備えている。
【0053】
図4に示した弾性波フィルタ装置40との違いは以下の点である。すなわち、IDT電極57eのグランドに接続された櫛歯電極指が、IDT電極57dのグランドに接続された櫛歯電極指と隣接して形成されており、同様に、IDT電極58eのグランドに接続された櫛歯電極指が、IDT電極58dのグランドに接続された櫛歯電極指と隣接して形成されている。また、IDT電極59gのグランドに接続された櫛歯電極指が、IDT電極59f及びIDT電極59hの出力部44bに接続された櫛歯電極指と隣接して形成されている。
【0054】
この構成により、入出力部53aからの入出力信号の位相と入出力部53bからの入出力信号の位相とを同位相とするとともに、出力部44aから出力される信号の位相と出力部44bから出力される信号の位相とを逆位相とすることができる。
【0055】
また、図5の(b)に示す弾性波フィルタ装置50bは、図5の(a)における第3の縦結合型弾性波フィルタ56aに対して、櫛歯電極の組み合わせ方を反転した第3の縦結合型弾性波フィルタ56bとした構成である。このように第3の縦結合型弾性波フィルタ56bを構成することにより、インピーダンス整合をとり易くなる。
【0056】
また、図6は、不平衡信号を出力する構成の一例である弾性波フィルタ装置60の説明図である。図6に示すように、第1の弾性波フィルタ55と第2の弾性波フィルタ46を組み合わせることにより、入出力部53aからの入出力信号の位相と入出力部53bからの入出力信号の位相とを同位相とするとともに、出力部64aから不平衡信号を出力させることができる。この構成により、所望の帯域における高域部のスプリアスを抑制し、挿入損失劣化を低減させた不平衡出力型の弾性波フィルタ装置とすることができる。
【0057】
また、図7は、第1の弾性波フィルタの出力配線に加え、第2の弾性波フィルタの出力配線もクロスさせる構成の一例である弾性波フィルタ装置70の説明図である。図7に示す如く、弾性波フィルタ装置70は、第1の弾性波フィルタ75において、第1の縦結合型弾性波フィルタ75aからの1対の平衡出力と、第2の縦結合型弾性波フィルタ75bから1対の平衡出力とをクロスするように接続して1対の入出力部73a、73bに接続している。また、第2の弾性波フィルタ76において、第3の縦結合型弾性波フィルタ76aが有する4つの出力76b、76c、76d、76eのうち、出力76bと76dとを結合して出力部74aに接続し、出力76cと76eとを結合して出力部74bに接続している。この構成により、さらに所望の帯域における高域部のスプリアスを抑制し、挿入損失劣化を低減させることができる。
【0058】
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2における弾性波フィルタ装置が備える第1の弾性波フィルタ85の説明図である。図8において、弾性波フィルタ装置における入力部12、第1の弾性波フィルタ85及び入出力部13a、13bのみを図示し、第2の弾性波フィルタ16及び1対の出力部14a、14bは図示を省略している。第1の弾性波フィルタ85は、実施の形態1の第1の弾性波フィルタ15に対して、接続点15iと第3の平衡信号出力部15gとを接続する配線と、接続点15jと第2の平衡信号出力部15dとを接続する配線との間にキャパシタンス成分81を設けている。なお、この構成に限らず、図1に示すような第2の弾性波フィルタ16に対して、平衡信号出力部16dと出力部14aとを接続する配線と、平衡信号出力部16eと出力部14bとを接続する配線との間にキャパシタンス成分を設けてもよい。
【0059】
図8に示す構成は、例えば、図9、図10に具体的に示すようにして得られる。図9は図8のキャパシタンス成分81を設けた部分の具体的な構成上面図であり、図10はその要部斜視図である。すなわち、第1の配線91と第2の配線92とを圧電基板11上にて交差させる。第1の配線91と第2の配線92との間には誘電体膜93を形成する。この構成により、図8に示す如く、接続点15iと第3の平衡信号出力部15gとを接続する配線と、接続点15jと第2の平衡信号出力部15dとを接続する配線との間にキャパシタンス成分81を設けることができる。
【0060】
このような構成とすることにより、1対の入出力部13a、13bから見たインピーダンスを整合させることができる。
【0061】
なお、誘電体膜93としては酸化ケイ素膜を用いることが望ましい。酸化ケイ素膜は、低温で製造することができるので、素子へのダメージを回避することができる。これと共に、精度良く、膜質の良い、厚み制御の容易な誘電体膜93を得ることができる。
【0062】
さらに、誘電体膜93が第1の縦結合型弾性波フィルタ15aおよび第2の縦結合型弾性波フィルタ15eの内少なくとも一方の上面を覆う構成にする。さらに、第1の縦結合型弾性波フィルタ15aおよび第2の縦結合型弾性波フィルタ15eの内少なくとも一方に対する機能膜として作用する構成とすることが望ましい。
【0063】
例えば、具体的には、第1の配線91と第2の配線92との間に介在する誘電体膜93により、IDT電極17c、17d、17e、17f、17g、および/またはIDT電極18c、18d、18e、18f、18gを覆う構成としそれらの機能膜として作用する構成とする。
【0064】
すなわち、例えば、これらのIDT電極17c、17d、17e、17f、17g、18c、18d、18e、18f、18g上に、例えば、酸化ケイ素からなる機能膜を形成することにより、IDT電極の保護膜とすることができる。これとともに、共振周波数付近に発生する不要なスプリアスを低減し、さらに周波数温度特性を改善することができる。この機能膜を、IDT電極とは異なる位置に存在する第1の配線91と第2の配線92との間へも拡大して形成することにより、機能膜と誘電体膜93を共用化することができ、生産性高く実現することができる。
【0065】
また、圧電基板11としてLiTaO3を用いた場合などは、共振周波数付近に発生する不要なスプリアスが小さいため、加工性の良いポリイミド等の樹脂系材料を用いて、機能膜と誘電体膜93を共用化することができる。
【0066】
(実施の形態3)
図11は、本発明の実施の形態3における弾性波フィルタ装置が備える第1の弾性波フィルタ115の説明図である。図11において、弾性波フィルタ装置における入力部12、第1の弾性波フィルタ115及び入出力部13a、13bのみを図示し、第2の弾性波フィルタ16及び1対の出力部14a、14bは図示を省略している。第1の弾性波フィルタ115は、実施の形態2の第1の弾性波フィルタ85に対して、接続点15iと入出力部13aとを接続する配線と、接続点15jと入出力部13bとを接続する配線との間にインダクタンス成分111を設けている。なお、この構成に限らず、図1に示すような第2の弾性波フィルタ16に対して、平衡信号出力部16dと出力部14aとを接続する配線と、平衡信号出力部16eと出力部14bとを接続する配線との間にインダクタンス成分を設けてもよい。
【0067】
例えば、入出力部13aと入出力部13bの間に、両端が電気的に接続されるように積層インダクタや薄膜インダクタを設けることにより、インダクタンス成分111を介在させる。
【0068】
入出力部13aと入出力部13bとの間にインダクタンス成分111を介在させることにより、このインダクタンス成分111によりインピーダンス整合を図ることができる。そのため、インピーダンス整合をとるために必要なキャパシタンス値を低減させることができる。その結果として、図9、図10に示した第1の配線91と第2の配線92との交差面積を小さくすることができ、フィルタの小型化を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の弾性波フィルタ装置は、スプリアスの発生を抑制し、挿入損失劣化を低減することができるという効果を有し、移動体通信機器などの電子機器に有用である。
【符号の説明】
【0070】
1 圧電基板
2 入力部
3a、3b 入出力部
4a、4b 出力部
5 第1の弾性波フィルタ
5a 第1の縦結合型弾性波フィルタ
5b 第1の不平衡信号入力部
5c 第1の平衡信号出力部
5d 第2の平衡信号出力部
5e 第2の縦結合型弾性波フィルタ
5f 第2の不平衡信号入力部
5g 第3の平衡信号出力部
5h 第4の平衡信号出力部
6 第2の弾性波フィルタ
10、40、50、60、70 弾性波フィルタ装置
11 圧電基板
12 入力部
13a、13b、53a、53b、73a、73b 入出力部
14a、14b、44a、44b、64a、74a、74b 出力部
15、45、55、75、85、115 第1の弾性波フィルタ
15a、45a、55a、75a 第1の縦結合型弾性波フィルタ
15b 第1の不平衡信号入力部
15c 第1の平衡信号出力部
15d 第2の平衡信号出力部
15e、45b、55b、75b 第2の縦結合型弾性波フィルタ
15f 第2の不平衡信号入力部
15g 第3の平衡信号出力部
15h 第4の平衡信号出力部
16、46、56、76 第2の弾性波フィルタ
16a、46a、56a、76a 第3の縦結合型弾性波フィルタ
16b、16c 平衡信号入力部
16d、16e 平衡信号出力部
17a、17b、18a、18b、19a、19b、47a、47b、48a、48b 反射器
17c、17d、17e、17f、17g、18c、18d、18e、18f、18g、19c、19d、19e、19f、19g、19h、47c、47d、47e、48c、48d、48e、57d、57e、58d、58e、59f、59h IDT電極
41 共振器
42 受信フィルタ
43 送信フィルタ
44 デュプレクサ
49 アンテナ
81 キャパシタンス成分
91 第1の配線
92 第2の配線
93 誘電体膜
111 インダクタンス成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部と、
1対の入出力部と、
前記入力部から不平衡信号が入力されて前記1対の入出力部に平衡信号を出力する第1の弾性波フィルタと、
前記1対の入出力部から平衡信号が入力される第2の弾性波フィルタとを備えた弾性波フィルタ装置であって、
前記第1の弾性波フィルタは、第1の不平衡信号入力部と第1の平衡信号出力部と第2の平衡信号出力部とを有する第1の縦結合型弾性波フィルタと、
第2の不平衡信号入力部と第3の平衡信号出力部と第4の平衡信号出力部とを有する第2の縦結合型弾性波フィルタとを備え、
前記第1の不平衡信号入力部及び前記第2の不平衡信号入力部は前記入力部と電気的に接続され、
前記第1の平衡信号出力部及び前記第3の平衡信号出力部は前記1対の入出力部の一方と電気的に接続され、
前記第2の平衡信号出力部及び前記第4の平衡信号出力部は前記1対の入出力部の他方と電気的に接続された弾性波フィルタ装置。
【請求項2】
平衡信号が出力される1対の出力部をさらに備えるとともに、
前記第2の弾性波フィルタは、前記1対の入出力部及び前記1対の出力部と電気的に接続された第3の縦結合型弾性波フィルタを備えた請求項1に記載の弾性波フィルタ装置。
【請求項3】
平衡信号が出力される1対の出力部をさらに備えるとともに、
前記第2の弾性波フィルタは、前記1対の入出力部の一方及び前記1対の出力部の一方と電気的に接続された第3の縦結合型弾性波フィルタと、
前記1対の入出力部の他方及び前記1対の出力部の他方と電気的に接続された第4の縦結合型弾性波フィルタと、を備えた請求項1に記載の弾性波フィルタ装置。
【請求項4】
不平衡信号が出力される出力部をさらに備えるとともに、
前記第2の弾性波フィルタは、前記1対の入出力部及び前記出力部と電気的に接続された第3の縦結合型弾性波フィルタを備えた請求項1に記載の弾性波フィルタ装置。
【請求項5】
前記1対の入出力部は互いに逆位相の信号を入出力する請求項1に記載の弾性波フィルタ装置。
【請求項6】
前記1対の入出力部は互いに同位相の信号を入出力する請求項1に記載の弾性波フィルタ装置。
【請求項7】
前記第1の縦結合型弾性波フィルタおよび前記第2の縦結合型弾性波フィルタは、それぞれ同数のIDT電極を有し、前記第1の縦結合型弾性波フィルタが有する前記各IDT電極の最外端の電極指の極性は、前記第2の縦結合型弾性波フィルタが有する前記各IDT電極の最外端の電極指の極性と同じである請求項1に記載の弾性波フィルタ装置。
【請求項8】
前記第1の縦結合型弾性波フィルタが有する前記各IDT電極の交差幅は、前記第2の縦結合型弾性波フィルタが有する前記各IDT電極の交差幅よりも大きい請求項7に記載の弾性波フィルタ装置。
【請求項9】
前記1対の出力部の間にキャパシタンス成分を介在させた請求項2又は請求項3に記載の弾性波フィルタ装置。
【請求項10】
前記第1の平衡信号出力部と前記第3の平衡信号出力部とが第1の接続点で接続され、
前記第2の平衡信号出力部と前記第4の平衡信号出力部とが第2の接続点で接続され、
前記第1の接続点と前記第3の平衡信号出力部とが第1の配線により接続され、
前記第2の接続点と前記第2の平衡信号出力部とが第2の配線により接続され、
前記第1の配線と前記第2の配線とを交差させるとともに、前記第1の配線と前記第2の配線との間には誘電体膜を介在させた請求項5に記載の弾性波フィルタ装置。
【請求項11】
前記誘電体膜は酸化ケイ素を用いて形成した請求項10に記載の弾性波フィルタ装置。
【請求項12】
前記誘電体膜が、前記第1の縦結合型弾性波フィルタおよび前記第2の縦結合型弾性波フィルタの内少なくとも一方の上面を覆うとともに、前記第1の縦結合型弾性波フィルタおよび前記第2の縦結合型弾性波フィルタの内少なくとも一方に対する機能膜として作用する請求項10に記載の弾性波フィルタ装置。
【請求項13】
前記誘電体膜は樹脂系材料を用いて形成した請求項10に記載の弾性波フィルタ装置。
【請求項14】
前記1対の出力部の間にインダクタンス成分を介在させた請求項2又は請求項3に記載の弾性波フィルタ装置。
【請求項15】
請求項1に記載の弾性波フィルタ装置を用いたデュプレクサ。
【請求項16】
請求項1に記載の弾性波フィルタ装置を用いた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−61570(P2011−61570A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210068(P2009−210068)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】