弾性波素子
【課題】 高周波を直接発振させることができると共に、ATカット振動子並みの周波数精度が得られ、発振器を構成した場合において位相雑音やジッタ特性が良好な弾性波素子を提供することである。
【解決手段】 基板内部を板波が伝搬するようにオイラー角(0±2°、35〜40°、0±2°)によってカット形成された水晶基板12と、この水晶基板12の表面に板波を励振させる少なくとも1つの櫛形励振電極13と、裏面に周波数の調整を行う周波数調整膜14とを備え、位相速度が4500〜6000m/sの範囲にある板波の温度特性が25℃付近に変曲点を持つ略3次温度特性になるように櫛形励振電極13と周波数調整膜14の膜厚を調整した。
【解決手段】 基板内部を板波が伝搬するようにオイラー角(0±2°、35〜40°、0±2°)によってカット形成された水晶基板12と、この水晶基板12の表面に板波を励振させる少なくとも1つの櫛形励振電極13と、裏面に周波数の調整を行う周波数調整膜14とを備え、位相速度が4500〜6000m/sの範囲にある板波の温度特性が25℃付近に変曲点を持つ略3次温度特性になるように櫛形励振電極13と周波数調整膜14の膜厚を調整した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータや通信機器等における高周波発振源に用いられる弾性波素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、各種の電子機器に搭載されている発振源としては、主にATカットの水晶振動子が多く用いられ、高周波で使用する場合はPLLによって所定の周波数に逓倍して使用している。また、高周波でノイズ等の少ない信号を必要とする場合は、弾性表面波を利用した共振子を直接発振源として使用する場合もある。
【0003】
ATカットによる水晶振動子は、安定した周波数特性が得られることから、多くの電子機器の発振源として用いられているが、高速動作するコンピュータや通信機器などの高周波発振源として用いる場合は、厚みを薄くしたり、平坦度を上げたりするなどの高精度の加工技術が必要とされている。
【0004】
一方、弾性表面波は、圧電基板の表層面に発生する縦波あるいは横波を利用したものであり、その周波数は速度に比例し、波長に反比例する特性を有している。この弾性表面波を用いたデバイスは、所定のカット角で形成された圧電基板の表面に複数の電極指を櫛形状に配置してなる櫛形励振電極を形成し、この櫛形励振電極の膜厚や各電極指のピッチを調整することによって、所定の発振周波数を得るようになっている。
【0005】
特許文献1に開示されている圧電デバイスは、回転Yカット水晶基板に生じる弾性表面波の中のラム波モードを用いたものであり、水晶基板の表面に櫛形励振電極を有し、裏面に周波数調整用の薄膜を有した構造となっている。この圧電振動子は、温度特性が従来型のSTカット共振子と同じ2次温度特性を有している。
【0006】
特許文献2,3には、ラム波を発振させるための振動子が開示されている。このラム波型の振動子は、3次温度特性が得られる点で、ATカットのような厚みすべり振動子よりも周波数特性の改善が図られている。しかしながら、水晶基板のカット角が2回回転であることから、作製のしやすさや温度特性のばらつき等に課題がある。
【0007】
また、特許文献4には、オイラー角表示で規定された回転Y板を用いて構成された高周波振動子が開示されている。
【0008】
なお、上記特許文献2乃至4に開示されている振動子は、圧電基板の表面に櫛形励振電極を配置した構造となっており、圧電基板の裏面には周波数調整目的の薄膜等は設けられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭57−68925号公報
【特許文献2】特開2003−258596号公報
【特許文献3】特許第4465464号公報
【特許文献4】特許第4306668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記ATカットによる水晶振動子にあっては、周波数精度は高いが、所定の周波数に逓倍する際に、位相雑音や信号の時間的なズレや揺らぎなどによるジッタが発生するなどの問題がある。一方、弾性波素子では、高周波を直接発振することが可能であるため、位相雑音やジッタ特性は良好であるが、発振周波数精度がATカット振動子に比べて劣るといった問題がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、高周波を直接発振させることができると共に、ATカット振動子並みの周波数精度が得られ、発振器を構成した場合において位相雑音やジッタ特性が良好な弾性波素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の弾性波素子は、基板内部を板波が伝搬するようにオイラー角(0±2°、35〜40°、0±2°)によってカット形成された水晶基板を備え、前記水晶基板から位相速度が4500〜6000m/sの範囲の板波を選択して振動モードとしたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の弾性波素子は、基板内部を板波が伝搬するようにオイラー角(0±2°、35〜40°、0±2°)によってカット形成された水晶基板と、この水晶基板の表面に板波を励振させる少なくとも1つの櫛形励振電極と、裏面に周波数の調整を行う周波数調整膜とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の弾性波素子によれば、水晶基板が従来にない新規なオイラー角(0±2°、35〜40°、0±2°)によってカット形成されている。このカット角で形成された水晶基板を用い、表面に櫛形励振電極、裏面に周波数調整膜をそれぞれ所定厚みに形成することで、高周波による板波を発生させることができる。また、前記水晶基板の板厚、櫛形励振電極及び周波数調整膜の膜厚を調整することで、3次温度特性を有するとともに、ATカットと略同程度の周波数精度を備えた高周波の発振を基本波で得ることができる。これによって、位相雑音やジッタ特性が良好なATカットと同等の周波数精度を備えた弾性波素子の提供が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る弾性波素子の斜視図である。
【図2】水晶基板をカット形成するオイラー角座標図である。
【図3】本発明のオイラー角における水晶基板単体での板波の位相速度の分散を示すグラフである。
【図4】上記オイラー角によって形成される水晶基板に所定厚みの櫛形励振電極及び周波数調整膜を形成した場合の板波の位相速度の分散を示すグラフである。
【図5】オイラー角と1次及び2次の温度係数との関係を示すグラフである。
【図6】オイラー角と電気機械結合係数との関係を示すグラフである。
【図7】水晶基板の板厚とAuによる櫛形励振電極の膜厚との関係における温度特性を示すグラフである。
【図8】水晶基板の板厚と板波の位相速度との関係を計算値と実験値で示したグラフである。
【図9】周波数調整膜と板波の位相速度との関係を計算値と実験値で示したグラフである。
【図10】水晶基板の板厚と1次温度係数との関係を計算値と実験値で示したグラフである。
【図11】水晶基板の板厚と2次温度係数との関係を計算値と実験値で示したグラフである。
【図12】周波数調整膜の膜厚と1次温度係数との関係を計算値と実験値で示したグラフである。
【図13】周波数調整膜の膜厚と2次温度係数との関係を計算値と実験値で示したグラフである。
【図14】本発明の弾性波素子と他のカット角による振動子の温度特性を比較したグラフである。
【図15】水晶基板の板厚とAlによる櫛形励振電極の膜厚との関係における温度特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の弾性波素子の実施形態を添付図面に基づいて説明する。本実施形態の弾性波素子11は、図1に示すように、薄板状の水晶基板12と、この水晶基板12の表面12aに形成される櫛形励振電極(励振電極)13と、水晶基板12の裏面12bに形成される周波数調整膜14とを備えて構成されている。
【0017】
前記水晶基板12は、オイラー角(0°,37.85°,0°)によって、所定の板厚にカット形成されている。前記励振電極13は、櫛歯状のIDT(Interdigital Transducer)電極15,16を対にして構成される。前記IDT電極15,16は、水晶基板12の長手方向に沿って延びるベース電極部15a,16aと、このベース電極部15a,16aの一側面から延びる複数の電極指15b,16bとを備えている。このように、励振電極13は、一方のベース電極部15aから延びる電極指15bと、他方のベース電極部16aから延びる電極指16bとが非接触状態で交差するようにして配置される。前記電極指15b,16bの電極指間距離(ピッチ)は、励振させる弾性波の波長λに合わせて設定される。また、隣接する電極指のピッチは、前記波長λに対してλ/2程度である。この励振電極13は、IDT電極15,16それぞれに極性の異なる電圧を印加することによって、隣接する電極指間に交番電界が発生し、板波が水晶基板12内に励起される。
【0018】
前記水晶基板12は、板厚Hが波長λと略同程度まで薄くした回転Yカットによって形成されている。前記板厚Hは、励振電極13及び周波数調整膜14の膜厚とによって、後述するように3次温度特性を有するように調整される。
【0019】
前記励振電極13は、図1に示されるように、水晶基板12の表面12aの略中央部に形成される金(Au)あるいはアルミニウム(Al)を主成分とする金属膜であり、所定の膜厚となるように成膜して形成される。また、この励振電極13を挟んだ両側に反射器(図示せず)を設けることもできる。反射器を設けることで、前記励振電極13で励起させた板波を両反射器間に閉じ込めて大きな共振を得ることができる。
【0020】
周波数調整膜14は、前記励振電極13と対向する水晶基板12の裏面12bに形成される。この周波数調整膜14は、水晶基板12の裏面12bにAuなどの金属材料、あるいは、誘電材料を所定の膜厚となるように成膜して形成される。前記金属材料は、Au以外にAl、Ta、Cuなどが使用でき、誘電材料にはSiO2、ZnO、Ta2O5などが使用できる。このような材料で形成される周波数調整膜14は、膜厚によって発振周波数の微調整を行うと共に、前記励振電極13との膜厚との関係によって、3次温度特性を保持する。
【0021】
図2は前記水晶基板12のカット角を右手系のオイラー角の座標系を用いて示したものである。以下、弾性波素子11の各種解析並びにカット角の定義に関してはこの座標系を用いて説明する。図3ではオイラー角表記(0°,37.85°,0°)で表わされる水晶基板12内を伝搬する板波について、規格化された励振電極膜厚Hs/λ=0、規格化された周波数調整膜厚Hb/λ=0における分散曲線を示す。また、図4では、励振電極13にAuを用いて、Hs/λ=Hb/λ=0.013とした場合の分散曲線をそれぞれ示す。ここで、横軸は波数kと板厚Hの積、縦軸は位相速度である。
【0022】
図3、図4で示される分散曲線は、縦波と横波が結合した板波あるいはラム波と呼ばれる振動モードである。これらの振動モードは表面波とは異なり板厚に対しても周波数分散性を示す。本実施形態にあっては、位相速度が4500〜6000m/sに存在する板波を共振子に用いる。
【0023】
図5はオイラー角(0°,θ,0°)の水晶基板12内を伝搬する振動モードの温度特性(1次温度係数α、2次温度係数β)とθとの関係を計算によって求めた結果である。ここでは、規格化板厚H/λ=1.194とし、励振電極と周波数調整膜の膜厚は無視して計算している。図6は右手系オイラー角表記(0°,θ,0°)の水晶基板12内を伝搬する振動モードの電気機械結合係数K2とθとの関係を計算によって求めた結果である。
【0024】
図5について検討すると、1次温度係数α=0となる切断角度がθ=38°又はθ=106°近辺に存在する。2次温度係数βはθ=38°の方が小さく、α=0のときにβ=0.5x10−8程度となるため、本発明においては、θ=38°近辺のカット角を採用した。ただし、βの方がやや大きいため、このままでは3次温度特性を得ることはできない。しかしながら、θが35°<θ<40°の条件を満たし、規格化板厚H/λ、規格化励振電極膜厚Hs/λ、規格化周波数調整膜厚Hb/λの組み合わせを後述するように最適化することで、25℃付近に変曲点を持つ略3次温度特性を得ることができる。
【0025】
図6について検討すると、電気機械結合係数K2は、θ=35〜40°の範囲において約0.08%であり、やや小さめではあるが共振子として用いるには問題ない数値となっている。
【0026】
次に、規格化板厚H/λ、規格化励振電極膜厚Hs/λ、規格化周波数調整膜厚Hb/λの最適な組み合わせ例を以下に示す。図7は、水晶基板のカット角及び板波の伝搬方向を(0°,37.85°,0°)とし、励振電極及び周波数調整膜にAuを用いて同じ膜厚(Hb/λ=Hs/λ)とした場合における規格化板厚H/λと、Au膜厚HAu/λの−20℃〜+80℃の温度変化に対する周波数変化量(+25℃基準)との関係を計算によって求めた結果である。
【0027】
図7に示した計算結果を検討すると、−25℃〜+80℃に対する周波数変化量が±10ppm以内となる領域が存在することが確認できる。量産時における温度特性のバラツキを考慮すると、±10ppm以内となる領域の面積が可能な限り広い部分で設計するのが好ましい。例えば、板厚Hに対する製作許容誤差を大きくしたい場合では、横軸に広い部分を目標値とし、励振電極13及び周波数調整膜14による製作許容誤差を大きくしたい場合は、縦軸に広い部分を目標値にするとよい。また、3次温度曲線を旋回させたい場合は、ATカット水晶振動子と同様にカット角を僅かにずらすことによって行うことができる。
【0028】
3次温度特性となるカット角度θ、規格化板厚H/λ、規格化励振電極膜厚Hs/λ、規格化周波数調整膜厚Hb/λによる組み合わせは無数にあり、また、Hs/λ≠Hb/λとしても3次温度曲線となる組み合わせも多数存在する。したがって、上記の計算結果に解析誤差も考慮すると、
1.000<H/λ<1.350
0.003<Hs/λ<0.020
0.001<Hb/λ<0.020
の範囲で温度特性が最適となる組み合わせを探すことができる。
【0029】
次に、位相速度の実験値と解析値について比較した結果を示す。図8は、励振電極及び周波数調整膜にAuを用い、規格化励振電極膜厚Hs/λ=0.006、規格化周波数調整膜厚Hb/λ=0にて共振子の試作を行い、位相速度と規格化板厚H/λの関係についての計算値と実験値の比較を行った結果である。図9は、励振電極及び周波数調整膜にAuを用い、規格化励振電極膜厚Hs/λ=0.012、規格化板厚H/λ=1.139にて共振子の試作を行い、位相速度と規格化周波数調整膜厚Hb/λの関係についての計算値と実験値の比較を行った結果である。
【0030】
図8と図9の結果から両者ともに計算値と実験値は略一致しており、位相速度に関して精度が良好であることが確認できた。
【0031】
次に、温度特性の実験値と解析値について比較した結果を示す。ここでは、励振電極及び周波数調整膜にAuを用い、Hs/λ=0.011、Hb/λ=0として共振子の試作を行い、温度特性の測定を行った。図10に1次温度係数α、図11に2次温度係数βの板厚依存性についての計算値と実験値を比較した結果を示す。1次温度係数α、2次温度係数β共に、計算値と実験値は略一致している。
【0032】
図10に示されるように、1次温度係数αは、Hs/λに対して2次曲線状に変化している。そのため、2次曲線の頂点付近がα=0となるように設計することで、Hs/λによる温度特性のバラツキを低減することができる。2次温度係数は板厚Hに大きく影響され、その他のパラメータには影響されにくい。したがって、図11の実験値からもわかるように、3次温度特性を得るためには電気機械結合係数K2が小さくなりすぎない範囲でH/λを大きく設計する必要がある。
【0033】
次に、励振電極及び周波数調整膜にAuを用いて、H/λ=1.084、Hs/λ=0.011として圧電振動子の試作を行い、温度特性の測定を行った。図12に1次温度係数α、図13に2次温度係数βの板厚依存性についての計算値と実験値を比較した結果を示す。
【0034】
図12に示されるように、1次温度係数αは周波数調整膜の膜厚に対して2次曲線状に変化している。したがって、図10に示した板厚依存性の場合と同様に、2次曲線の頂点がα=0となるような条件で設計することで、周波数調整膜のトリミングによる周波数調整後の温度特性の変化を最小にすることができる。2次温度係数に関しては、板厚ほどではないが、周波数調整膜の膜厚が厚くなるほどβ=0に近づく傾向がある。
【0035】
図14は計算結果に基づいて、カット角及び伝搬方向が(0°,37.85°,0°)、H/λ=1.14、Hs/λ=0.010、Hb/λ=0.007として共振子の試作を行い、温度特性の測定を行った結果である。温度特性は3次温度特性となり、従来のSTカットSAW共振子よりも優れた温度特性になっている。また、ATカット振動子と比較しても同等以上の温度特性が得られることが確認できた。
【0036】
次に励振電極13の材質としてAlを用いた場合について説明する。励振電極13をAlで形成した場合は、Auに対する密度比に応じて規格化励振電極膜厚Hs/λが求められる。一般にAuとAlの密度比は約7.2となる。したがって、Auの規格化励振電極膜厚Hs/λが、0.003<Hs/λ<0.020の範囲であるので、Alの規格化励振電極膜厚Hs/λは、約7.2倍の
0.020<Hs/λ<0.150の範囲となる。
【0037】
図15は励振電極13及び周波数調整用膜14にAlを用いた場合における温度特性を示したものである。図7に示したAuの場合と分布パターンは異なるものの、周波数変化量が±10ppm以内となる領域(中央部の濃い部分)が存在していることが確認できる。なお、共振子の温度特性は、励振電極及び周波数調整用膜の重さのみならず、弾性定数や線膨張係数の影響も受けるため、カット角をずらして3次温度特性になるように調整する必要がある。図15ではオイラー角(0°、37.3°、0°)にすることでこれらの影響を補正している。また、周波数調整膜にAuやAlといった金属材料だけではなく誘電材料を用いた場合においても膜厚とカット角の調整により3次温度特性を得ることが出来る。
【0038】
以上説明したように、本発明の弾性波素子によれば、オイラー角(0±2°、35〜40°、0±2°)によってカット形成された水晶基板が3次の温度特性を有し、且つ、位相速度が4500〜6000m/sの範囲の板波を生じさせることが実証された。また、前記水晶基板の表面に櫛形励振電極、裏面に周波数調整膜を配置した構成されているため、櫛形励振電極及び周波数調整膜の膜厚を所定の範囲で調整することによって、ATカット振動子並みの周波数精度が得られ、発振器を構成した場合において位相雑音やジッタ特性が良好な安定した高周波発振源となる。
【符号の説明】
【0039】
11 弾性波素子
12 水晶基板
13 櫛形励振電極
14 周波数調整膜
15,16 IDT電極
15a,16a ベース電極部
15b,16b 電極指
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータや通信機器等における高周波発振源に用いられる弾性波素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、各種の電子機器に搭載されている発振源としては、主にATカットの水晶振動子が多く用いられ、高周波で使用する場合はPLLによって所定の周波数に逓倍して使用している。また、高周波でノイズ等の少ない信号を必要とする場合は、弾性表面波を利用した共振子を直接発振源として使用する場合もある。
【0003】
ATカットによる水晶振動子は、安定した周波数特性が得られることから、多くの電子機器の発振源として用いられているが、高速動作するコンピュータや通信機器などの高周波発振源として用いる場合は、厚みを薄くしたり、平坦度を上げたりするなどの高精度の加工技術が必要とされている。
【0004】
一方、弾性表面波は、圧電基板の表層面に発生する縦波あるいは横波を利用したものであり、その周波数は速度に比例し、波長に反比例する特性を有している。この弾性表面波を用いたデバイスは、所定のカット角で形成された圧電基板の表面に複数の電極指を櫛形状に配置してなる櫛形励振電極を形成し、この櫛形励振電極の膜厚や各電極指のピッチを調整することによって、所定の発振周波数を得るようになっている。
【0005】
特許文献1に開示されている圧電デバイスは、回転Yカット水晶基板に生じる弾性表面波の中のラム波モードを用いたものであり、水晶基板の表面に櫛形励振電極を有し、裏面に周波数調整用の薄膜を有した構造となっている。この圧電振動子は、温度特性が従来型のSTカット共振子と同じ2次温度特性を有している。
【0006】
特許文献2,3には、ラム波を発振させるための振動子が開示されている。このラム波型の振動子は、3次温度特性が得られる点で、ATカットのような厚みすべり振動子よりも周波数特性の改善が図られている。しかしながら、水晶基板のカット角が2回回転であることから、作製のしやすさや温度特性のばらつき等に課題がある。
【0007】
また、特許文献4には、オイラー角表示で規定された回転Y板を用いて構成された高周波振動子が開示されている。
【0008】
なお、上記特許文献2乃至4に開示されている振動子は、圧電基板の表面に櫛形励振電極を配置した構造となっており、圧電基板の裏面には周波数調整目的の薄膜等は設けられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭57−68925号公報
【特許文献2】特開2003−258596号公報
【特許文献3】特許第4465464号公報
【特許文献4】特許第4306668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記ATカットによる水晶振動子にあっては、周波数精度は高いが、所定の周波数に逓倍する際に、位相雑音や信号の時間的なズレや揺らぎなどによるジッタが発生するなどの問題がある。一方、弾性波素子では、高周波を直接発振することが可能であるため、位相雑音やジッタ特性は良好であるが、発振周波数精度がATカット振動子に比べて劣るといった問題がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、高周波を直接発振させることができると共に、ATカット振動子並みの周波数精度が得られ、発振器を構成した場合において位相雑音やジッタ特性が良好な弾性波素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の弾性波素子は、基板内部を板波が伝搬するようにオイラー角(0±2°、35〜40°、0±2°)によってカット形成された水晶基板を備え、前記水晶基板から位相速度が4500〜6000m/sの範囲の板波を選択して振動モードとしたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の弾性波素子は、基板内部を板波が伝搬するようにオイラー角(0±2°、35〜40°、0±2°)によってカット形成された水晶基板と、この水晶基板の表面に板波を励振させる少なくとも1つの櫛形励振電極と、裏面に周波数の調整を行う周波数調整膜とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の弾性波素子によれば、水晶基板が従来にない新規なオイラー角(0±2°、35〜40°、0±2°)によってカット形成されている。このカット角で形成された水晶基板を用い、表面に櫛形励振電極、裏面に周波数調整膜をそれぞれ所定厚みに形成することで、高周波による板波を発生させることができる。また、前記水晶基板の板厚、櫛形励振電極及び周波数調整膜の膜厚を調整することで、3次温度特性を有するとともに、ATカットと略同程度の周波数精度を備えた高周波の発振を基本波で得ることができる。これによって、位相雑音やジッタ特性が良好なATカットと同等の周波数精度を備えた弾性波素子の提供が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る弾性波素子の斜視図である。
【図2】水晶基板をカット形成するオイラー角座標図である。
【図3】本発明のオイラー角における水晶基板単体での板波の位相速度の分散を示すグラフである。
【図4】上記オイラー角によって形成される水晶基板に所定厚みの櫛形励振電極及び周波数調整膜を形成した場合の板波の位相速度の分散を示すグラフである。
【図5】オイラー角と1次及び2次の温度係数との関係を示すグラフである。
【図6】オイラー角と電気機械結合係数との関係を示すグラフである。
【図7】水晶基板の板厚とAuによる櫛形励振電極の膜厚との関係における温度特性を示すグラフである。
【図8】水晶基板の板厚と板波の位相速度との関係を計算値と実験値で示したグラフである。
【図9】周波数調整膜と板波の位相速度との関係を計算値と実験値で示したグラフである。
【図10】水晶基板の板厚と1次温度係数との関係を計算値と実験値で示したグラフである。
【図11】水晶基板の板厚と2次温度係数との関係を計算値と実験値で示したグラフである。
【図12】周波数調整膜の膜厚と1次温度係数との関係を計算値と実験値で示したグラフである。
【図13】周波数調整膜の膜厚と2次温度係数との関係を計算値と実験値で示したグラフである。
【図14】本発明の弾性波素子と他のカット角による振動子の温度特性を比較したグラフである。
【図15】水晶基板の板厚とAlによる櫛形励振電極の膜厚との関係における温度特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の弾性波素子の実施形態を添付図面に基づいて説明する。本実施形態の弾性波素子11は、図1に示すように、薄板状の水晶基板12と、この水晶基板12の表面12aに形成される櫛形励振電極(励振電極)13と、水晶基板12の裏面12bに形成される周波数調整膜14とを備えて構成されている。
【0017】
前記水晶基板12は、オイラー角(0°,37.85°,0°)によって、所定の板厚にカット形成されている。前記励振電極13は、櫛歯状のIDT(Interdigital Transducer)電極15,16を対にして構成される。前記IDT電極15,16は、水晶基板12の長手方向に沿って延びるベース電極部15a,16aと、このベース電極部15a,16aの一側面から延びる複数の電極指15b,16bとを備えている。このように、励振電極13は、一方のベース電極部15aから延びる電極指15bと、他方のベース電極部16aから延びる電極指16bとが非接触状態で交差するようにして配置される。前記電極指15b,16bの電極指間距離(ピッチ)は、励振させる弾性波の波長λに合わせて設定される。また、隣接する電極指のピッチは、前記波長λに対してλ/2程度である。この励振電極13は、IDT電極15,16それぞれに極性の異なる電圧を印加することによって、隣接する電極指間に交番電界が発生し、板波が水晶基板12内に励起される。
【0018】
前記水晶基板12は、板厚Hが波長λと略同程度まで薄くした回転Yカットによって形成されている。前記板厚Hは、励振電極13及び周波数調整膜14の膜厚とによって、後述するように3次温度特性を有するように調整される。
【0019】
前記励振電極13は、図1に示されるように、水晶基板12の表面12aの略中央部に形成される金(Au)あるいはアルミニウム(Al)を主成分とする金属膜であり、所定の膜厚となるように成膜して形成される。また、この励振電極13を挟んだ両側に反射器(図示せず)を設けることもできる。反射器を設けることで、前記励振電極13で励起させた板波を両反射器間に閉じ込めて大きな共振を得ることができる。
【0020】
周波数調整膜14は、前記励振電極13と対向する水晶基板12の裏面12bに形成される。この周波数調整膜14は、水晶基板12の裏面12bにAuなどの金属材料、あるいは、誘電材料を所定の膜厚となるように成膜して形成される。前記金属材料は、Au以外にAl、Ta、Cuなどが使用でき、誘電材料にはSiO2、ZnO、Ta2O5などが使用できる。このような材料で形成される周波数調整膜14は、膜厚によって発振周波数の微調整を行うと共に、前記励振電極13との膜厚との関係によって、3次温度特性を保持する。
【0021】
図2は前記水晶基板12のカット角を右手系のオイラー角の座標系を用いて示したものである。以下、弾性波素子11の各種解析並びにカット角の定義に関してはこの座標系を用いて説明する。図3ではオイラー角表記(0°,37.85°,0°)で表わされる水晶基板12内を伝搬する板波について、規格化された励振電極膜厚Hs/λ=0、規格化された周波数調整膜厚Hb/λ=0における分散曲線を示す。また、図4では、励振電極13にAuを用いて、Hs/λ=Hb/λ=0.013とした場合の分散曲線をそれぞれ示す。ここで、横軸は波数kと板厚Hの積、縦軸は位相速度である。
【0022】
図3、図4で示される分散曲線は、縦波と横波が結合した板波あるいはラム波と呼ばれる振動モードである。これらの振動モードは表面波とは異なり板厚に対しても周波数分散性を示す。本実施形態にあっては、位相速度が4500〜6000m/sに存在する板波を共振子に用いる。
【0023】
図5はオイラー角(0°,θ,0°)の水晶基板12内を伝搬する振動モードの温度特性(1次温度係数α、2次温度係数β)とθとの関係を計算によって求めた結果である。ここでは、規格化板厚H/λ=1.194とし、励振電極と周波数調整膜の膜厚は無視して計算している。図6は右手系オイラー角表記(0°,θ,0°)の水晶基板12内を伝搬する振動モードの電気機械結合係数K2とθとの関係を計算によって求めた結果である。
【0024】
図5について検討すると、1次温度係数α=0となる切断角度がθ=38°又はθ=106°近辺に存在する。2次温度係数βはθ=38°の方が小さく、α=0のときにβ=0.5x10−8程度となるため、本発明においては、θ=38°近辺のカット角を採用した。ただし、βの方がやや大きいため、このままでは3次温度特性を得ることはできない。しかしながら、θが35°<θ<40°の条件を満たし、規格化板厚H/λ、規格化励振電極膜厚Hs/λ、規格化周波数調整膜厚Hb/λの組み合わせを後述するように最適化することで、25℃付近に変曲点を持つ略3次温度特性を得ることができる。
【0025】
図6について検討すると、電気機械結合係数K2は、θ=35〜40°の範囲において約0.08%であり、やや小さめではあるが共振子として用いるには問題ない数値となっている。
【0026】
次に、規格化板厚H/λ、規格化励振電極膜厚Hs/λ、規格化周波数調整膜厚Hb/λの最適な組み合わせ例を以下に示す。図7は、水晶基板のカット角及び板波の伝搬方向を(0°,37.85°,0°)とし、励振電極及び周波数調整膜にAuを用いて同じ膜厚(Hb/λ=Hs/λ)とした場合における規格化板厚H/λと、Au膜厚HAu/λの−20℃〜+80℃の温度変化に対する周波数変化量(+25℃基準)との関係を計算によって求めた結果である。
【0027】
図7に示した計算結果を検討すると、−25℃〜+80℃に対する周波数変化量が±10ppm以内となる領域が存在することが確認できる。量産時における温度特性のバラツキを考慮すると、±10ppm以内となる領域の面積が可能な限り広い部分で設計するのが好ましい。例えば、板厚Hに対する製作許容誤差を大きくしたい場合では、横軸に広い部分を目標値とし、励振電極13及び周波数調整膜14による製作許容誤差を大きくしたい場合は、縦軸に広い部分を目標値にするとよい。また、3次温度曲線を旋回させたい場合は、ATカット水晶振動子と同様にカット角を僅かにずらすことによって行うことができる。
【0028】
3次温度特性となるカット角度θ、規格化板厚H/λ、規格化励振電極膜厚Hs/λ、規格化周波数調整膜厚Hb/λによる組み合わせは無数にあり、また、Hs/λ≠Hb/λとしても3次温度曲線となる組み合わせも多数存在する。したがって、上記の計算結果に解析誤差も考慮すると、
1.000<H/λ<1.350
0.003<Hs/λ<0.020
0.001<Hb/λ<0.020
の範囲で温度特性が最適となる組み合わせを探すことができる。
【0029】
次に、位相速度の実験値と解析値について比較した結果を示す。図8は、励振電極及び周波数調整膜にAuを用い、規格化励振電極膜厚Hs/λ=0.006、規格化周波数調整膜厚Hb/λ=0にて共振子の試作を行い、位相速度と規格化板厚H/λの関係についての計算値と実験値の比較を行った結果である。図9は、励振電極及び周波数調整膜にAuを用い、規格化励振電極膜厚Hs/λ=0.012、規格化板厚H/λ=1.139にて共振子の試作を行い、位相速度と規格化周波数調整膜厚Hb/λの関係についての計算値と実験値の比較を行った結果である。
【0030】
図8と図9の結果から両者ともに計算値と実験値は略一致しており、位相速度に関して精度が良好であることが確認できた。
【0031】
次に、温度特性の実験値と解析値について比較した結果を示す。ここでは、励振電極及び周波数調整膜にAuを用い、Hs/λ=0.011、Hb/λ=0として共振子の試作を行い、温度特性の測定を行った。図10に1次温度係数α、図11に2次温度係数βの板厚依存性についての計算値と実験値を比較した結果を示す。1次温度係数α、2次温度係数β共に、計算値と実験値は略一致している。
【0032】
図10に示されるように、1次温度係数αは、Hs/λに対して2次曲線状に変化している。そのため、2次曲線の頂点付近がα=0となるように設計することで、Hs/λによる温度特性のバラツキを低減することができる。2次温度係数は板厚Hに大きく影響され、その他のパラメータには影響されにくい。したがって、図11の実験値からもわかるように、3次温度特性を得るためには電気機械結合係数K2が小さくなりすぎない範囲でH/λを大きく設計する必要がある。
【0033】
次に、励振電極及び周波数調整膜にAuを用いて、H/λ=1.084、Hs/λ=0.011として圧電振動子の試作を行い、温度特性の測定を行った。図12に1次温度係数α、図13に2次温度係数βの板厚依存性についての計算値と実験値を比較した結果を示す。
【0034】
図12に示されるように、1次温度係数αは周波数調整膜の膜厚に対して2次曲線状に変化している。したがって、図10に示した板厚依存性の場合と同様に、2次曲線の頂点がα=0となるような条件で設計することで、周波数調整膜のトリミングによる周波数調整後の温度特性の変化を最小にすることができる。2次温度係数に関しては、板厚ほどではないが、周波数調整膜の膜厚が厚くなるほどβ=0に近づく傾向がある。
【0035】
図14は計算結果に基づいて、カット角及び伝搬方向が(0°,37.85°,0°)、H/λ=1.14、Hs/λ=0.010、Hb/λ=0.007として共振子の試作を行い、温度特性の測定を行った結果である。温度特性は3次温度特性となり、従来のSTカットSAW共振子よりも優れた温度特性になっている。また、ATカット振動子と比較しても同等以上の温度特性が得られることが確認できた。
【0036】
次に励振電極13の材質としてAlを用いた場合について説明する。励振電極13をAlで形成した場合は、Auに対する密度比に応じて規格化励振電極膜厚Hs/λが求められる。一般にAuとAlの密度比は約7.2となる。したがって、Auの規格化励振電極膜厚Hs/λが、0.003<Hs/λ<0.020の範囲であるので、Alの規格化励振電極膜厚Hs/λは、約7.2倍の
0.020<Hs/λ<0.150の範囲となる。
【0037】
図15は励振電極13及び周波数調整用膜14にAlを用いた場合における温度特性を示したものである。図7に示したAuの場合と分布パターンは異なるものの、周波数変化量が±10ppm以内となる領域(中央部の濃い部分)が存在していることが確認できる。なお、共振子の温度特性は、励振電極及び周波数調整用膜の重さのみならず、弾性定数や線膨張係数の影響も受けるため、カット角をずらして3次温度特性になるように調整する必要がある。図15ではオイラー角(0°、37.3°、0°)にすることでこれらの影響を補正している。また、周波数調整膜にAuやAlといった金属材料だけではなく誘電材料を用いた場合においても膜厚とカット角の調整により3次温度特性を得ることが出来る。
【0038】
以上説明したように、本発明の弾性波素子によれば、オイラー角(0±2°、35〜40°、0±2°)によってカット形成された水晶基板が3次の温度特性を有し、且つ、位相速度が4500〜6000m/sの範囲の板波を生じさせることが実証された。また、前記水晶基板の表面に櫛形励振電極、裏面に周波数調整膜を配置した構成されているため、櫛形励振電極及び周波数調整膜の膜厚を所定の範囲で調整することによって、ATカット振動子並みの周波数精度が得られ、発振器を構成した場合において位相雑音やジッタ特性が良好な安定した高周波発振源となる。
【符号の説明】
【0039】
11 弾性波素子
12 水晶基板
13 櫛形励振電極
14 周波数調整膜
15,16 IDT電極
15a,16a ベース電極部
15b,16b 電極指
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板内部を板波が伝搬するようにオイラー角(0±2°、35〜40°、0±2°)によってカット形成された水晶基板を備え、前記水晶基板から位相速度が4500〜6000m/sの範囲の板波を選択して振動モードとしたことを特徴とする弾性波素子。
【請求項2】
基板内部を板波が伝搬するようにオイラー角(0±2°、35〜40°、0±2°)によってカット形成された水晶基板と、この水晶基板の表面に板波を励振させる少なくとも1つの櫛形励振電極と、裏面に周波数の調整を行う周波数調整膜とを備えたことを特徴とする弾性波素子。
【請求項3】
前記水晶基板の板厚をH、板波の波長をλとした場合に、
規格化された板厚H/λが、1.000<H/λ<1.350の範囲である請求項2に記載の弾性波素子。
【請求項4】
前記櫛形励振電極がAuを主成分とする材料からなり、
この櫛形励振電極の膜厚をHs、板波の波長をλとした場合に、
規格化された櫛形励振電極の膜厚Hs/λが、0.003<Hs/λ<0.020の範囲である請求項2に記載の弾性波素子。
【請求項5】
前記櫛形励振電極がAlを主成分とする材料からなり、
この櫛形励振電極の膜厚をHs、板波の波長をλとした場合に、
規格化された櫛形励振電極の膜厚Hs/λが、0.020<Hs/λ<0.150の範囲である請求項2に記載の弾性波素子。
【請求項6】
前記周波数調整膜がAuを主成分とする材料からなり、
この周波数調整膜の膜厚をHb、板波の波長をλとした場合に、
規格化された周波数調整膜の膜厚Hb/λが、0.001<Hb/λ<0.020の範囲である請求項2に記載の弾性波素子。
【請求項7】
前記周波数調整膜が金属材料又は誘電材料からなり、
前記周波数調整膜の膜厚をHb、板波の波長をλ、周波数調整膜の密度をρ(kg/m3)とした場合に、
規格化された周波数調整膜の膜厚密度ρHb/λが、0<ρHb/λ≦386.4の範囲である請求項2に記載の弾性波素子。
【請求項1】
基板内部を板波が伝搬するようにオイラー角(0±2°、35〜40°、0±2°)によってカット形成された水晶基板を備え、前記水晶基板から位相速度が4500〜6000m/sの範囲の板波を選択して振動モードとしたことを特徴とする弾性波素子。
【請求項2】
基板内部を板波が伝搬するようにオイラー角(0±2°、35〜40°、0±2°)によってカット形成された水晶基板と、この水晶基板の表面に板波を励振させる少なくとも1つの櫛形励振電極と、裏面に周波数の調整を行う周波数調整膜とを備えたことを特徴とする弾性波素子。
【請求項3】
前記水晶基板の板厚をH、板波の波長をλとした場合に、
規格化された板厚H/λが、1.000<H/λ<1.350の範囲である請求項2に記載の弾性波素子。
【請求項4】
前記櫛形励振電極がAuを主成分とする材料からなり、
この櫛形励振電極の膜厚をHs、板波の波長をλとした場合に、
規格化された櫛形励振電極の膜厚Hs/λが、0.003<Hs/λ<0.020の範囲である請求項2に記載の弾性波素子。
【請求項5】
前記櫛形励振電極がAlを主成分とする材料からなり、
この櫛形励振電極の膜厚をHs、板波の波長をλとした場合に、
規格化された櫛形励振電極の膜厚Hs/λが、0.020<Hs/λ<0.150の範囲である請求項2に記載の弾性波素子。
【請求項6】
前記周波数調整膜がAuを主成分とする材料からなり、
この周波数調整膜の膜厚をHb、板波の波長をλとした場合に、
規格化された周波数調整膜の膜厚Hb/λが、0.001<Hb/λ<0.020の範囲である請求項2に記載の弾性波素子。
【請求項7】
前記周波数調整膜が金属材料又は誘電材料からなり、
前記周波数調整膜の膜厚をHb、板波の波長をλ、周波数調整膜の密度をρ(kg/m3)とした場合に、
規格化された周波数調整膜の膜厚密度ρHb/λが、0<ρHb/λ≦386.4の範囲である請求項2に記載の弾性波素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図7】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図7】
【図15】
【公開番号】特開2011−259348(P2011−259348A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133838(P2010−133838)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000237444)リバーエレテック株式会社 (24)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000237444)リバーエレテック株式会社 (24)
【Fターム(参考)】
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