説明

弾性波装置

【課題】高い品質係数(Q値が数千以上)を有し、かつ、k2が2〜6%の範囲である境界弾性波装置を実現することのできる技術を提供する。
【解決手段】所定のカット角θを有するθYX−LN単結晶圧電基板1の表面に、境界弾性波の波長λの交差指形変換器(IDT)、酸化珪素膜5、および窒化アルミニウム膜6が形成された境界弾性波共振器において、酸化珪素膜5の膜厚hおよびカット角θ等を最適化する。例えば127.5°≦θ≦129.5°かつ20%≦h/λ≦100%とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波装置に関し、特に、圧電性物質と境界弾性波用交差指形変換器(Inter-Digital Transducer;IDT)とを備え、高周波用通信機器の共振器やフィルタ等の固体回路素子を構成する境界弾性波装置に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
境界弾性波装置は、中空パッケージを不要にできるため、また温度補償膜として酸化珪素を用いることができるため、小型で優れた温度安定性を有する。
【0003】
例えば国際特許公開WO 98/052279号パンフレット(特許文献1)には、漏洩境界弾性波を対象に、ニオブ酸リチウム圧電単結晶を主成分とし、θ回転Yカットに切り出され、弾性波の伝搬方向をX軸方向とした基板(以下、θYX−LN単結晶圧電基板と略す)上に、IDT、酸化珪素膜、および多結晶珪素膜を具備した境界弾性波共振器において、伝搬損失とカット角、および伝搬損失と多結晶珪素膜の膜厚との関係が開示されている。また、多結晶珪素膜の代わりに窒化アルミニウム膜を用いることができることも開示されている。
【0004】
また、特開平10−84247号公報(特許文献2)には、漏洩境界弾性波を対象に、θYX−LN単結晶圧電基板上にIDT、酸化珪素膜、および単結晶珪素基板を具備した境界弾性波装置において、伝搬損失とカット角との関係が開示されている。
【0005】
また、国際特許公開WO 05/069485号パンフレット(特許文献3)および国際特許公開WO 06/114930号パンフレット(特許文献4)には、境界弾性波を対象とする、伝搬損失の小さい境界弾性波装置が開示されている。
【0006】
また、J. J. Campbell and W. R. Jones, “A method for estimating optimal cuts and propagation directions for excitation of piezoelectric surface waves”, IEEE Trans. Sonics and Ultrason., Vol. SU-15 pp. 209-217 (1968)(非特許文献1)には、境界弾性波の伝搬損失を推測する手法が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際特許公開WO 98/052279号パンフレット
【特許文献2】特開平10−84247号公報
【特許文献3】国際特許公開WO 05/069485号パンフレット
【特許文献4】国際特許公開WO 06/114930号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J. J. Campbell and W. R. Jones, “A method for estimating optimal cuts and propagation directions for excitation of piezoelectric surface waves”, IEEE Trans. Sonics and Ultrason., Vol. SU-15 pp. 209-217 (1968)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、高周波フィルタには、高い品質係数(Q値)および製造の容易さが要求される。特に、携帯電話に代表される通信機器用途では数千以上のQ値が求められている。
【0010】
本発明者らが検討しているIDTにおいて励振/共振する主な境界弾性波は、漏洩境界弾性波である。境界弾性波共振器では、スプリアス弾性波として、ストンリー波型境界弾性波、遅い横波バルク波、速い横波バルク波、および縦波バルク波が発生する。密度の小さい金属によってIDTを構成した境界弾性波共振器では、漏洩境界弾性波は遅い横波バルク波の音速と速い横波バルク波の音速との間の音速を有する。概ね4000〜4800m/sの間の音速を有する。つまり、低周波側の比較的近くに遅い横波バルク波が、それよりさらに低周波にストンリー波型境界弾性波が、高周波側の比較的近くに速い横波バルク波が、それよりさらに高周波に縦波バルク波が発生する。そのため高周波フィルタを実現する場合は、主信号の近くに発生する遅い横波バルク波および速い横波バルク波を抑圧する必要がある。さらに、θYX−LN単結晶圧電基板を用いた境界弾性波共振器の電気特性を調べたところ、遅い横波バルク波は音速4000m/s近傍であり、そのため遅い横波バルク波は漏洩境界弾性波の直列共振周波数の直下に発生し、かつ、IDTと強く結合しているという結果が得られた。遅い横波バルク波と漏洩境界弾性波との音速差が小さいほどフィルタ特性に悪影響を与えるため、高周波フィルタを実現するには、漏洩境界弾性波を遅い横波バルク波より充分高い音速にする必要がある。
【0011】
また、本発明者らが検討しているIDTにおいて励振/共振する主な境界弾性波は、漏洩境界弾性波であり、弾性的な伝搬損失を有する。従って、境界弾性波装置において充分高いQ値を得るためには、材料、膜厚、カット角等の境界弾性波共振器の構造を最適化することにより、IDTにおける伝搬損失を最小(弾性的なQ値を最大)にする必要がある。
【0012】
さらに、UMTS携帯電話システムでは、RF帯において急峻なフィルタ特性を有する分波器が必要とされている。最も送受信間隔の狭いバンド2(送受信間隔1%程度)から最も広いバンド4(送受信間隔17%程度)まで、さまざまバンドがあり、それらに適した電気機械結合係数(以下k2と略す)を有する境界弾性波を必要とする。k2が送受信間隔の2倍と一致するとき、最も急峻なフィルタ特性を実現することができる。例えば上記特許文献1および2に記載された境界弾性波は8%以上の大きいk2を有する。しかしながら、k2が2〜8%の境界弾性波が必要とされているにもかかわらず、未だ2〜8%のk2を有する境界弾性波は実現されていない。
【0013】
上記特許文献1には、図24に示すようなθYX−LN単結晶圧電基板51上にIDT52、酸化珪素膜53、および多結晶珪素膜54を具備した境界弾性波共振器において、図25(上記特許文献1の第10図(c))に示すように、弾性的なQ値が千以上(伝搬損失が0.056dB以下の範囲)となるカット角θおよび多結晶珪素膜の膜厚hの値が記されている。すなわち、0.585λ≦hかつ23°≦θ≦95°(本願発明における表記では103°≦θ≦185°)とした境界弾性波装置が開示されている。ここで、λは境界弾性波の波長である。しかしながら、前提としてQ値を千以上としたこの範囲では、用途が最近の通信機器に代表される、例えば2GHzクラスの高周波フィルタにおいて十分な精度は得られない。
【0014】
また、上記特許文献1で対象としている多結晶珪素膜は、導電性と低い抵抗値を有する。そのため、図25に示したカット角θおよび多結晶珪素膜の膜厚hの値をそのまま用いたとしても、弾性的なQ値を最近の境界弾性波装置に要求される数千〜1万程度まで高めることはできない。
【0015】
また、上記特許文献1の12頁には、多結晶珪素膜に代えて窒化アルミニウム膜を用いることができることも開示されている。しかし、窒化アルミニウム膜を用いた境界弾性波共振器における弾性的なQ値が数千以上となるカット角θおよび多結晶珪素膜の膜厚hの関係については記載されていない。窒化アルミニウムや窒化珪素に代表される窒化物質を主成分とする膜の弾性定数は多結晶珪素膜の弾性定数より格段に大きいため、上記特許文献1の多結晶珪素膜に関する記載からこの関係を類推することは不可能である。
【0016】
また、上記特許文献2には、最上層に単結晶珪素基板を用いており、単結晶珪素基板は導電性と低い抵抗値を有するため、境界弾性波装置のQ値を高めることはできない。また、単結晶珪素基板を最上層に形成するには特殊な製造装置を必要とするため、その製造においてコストの増加やTATの増加などの課題が生じる。
【0017】
本発明の目的は、高い品質係数(Q値が数千以上)を有し、かつ、k2が2〜6%の範囲である境界弾性波装置を実現することのできる技術を提供することにある。
【0018】
また、本発明の目的は、高い品質係数(Q値が数千以上)を有し、かつ、k2が2〜6%の範囲である境界弾性波装置を容易に製造することのできる技術を提供することにある。
【0019】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの一実施の形態を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0021】
この実施の形態は、ニオブ酸リチウム圧電単結晶を主成分とし、θ回転Yカットに切り出された平面を有し、弾性波の伝搬方向をX軸と平行な方向とするθYX−LN単結晶圧電基板上に、IDT、酸化珪素膜、および多結晶珪素膜を具備した境界弾性波共振器を有する弾性波装置である。
【0022】
IDTは主に境界弾性波を励振し、境界弾性波の波長をλ、酸化珪素膜の厚さをh、IDTの厚さをhとしたとき、1%≦h/λ≦8%であること、さらに、124.5°≦θ<125.5°かつ20%≦h/λ≦45%、125.5°≦θ<126.5°かつ20%≦h/λ≦45%、126.5°≦θ<127.5°かつ20%≦h/λ≦47%、126.5°≦θ<127.5°かつ87%≦h/λ≦100%、127.5°≦θ<128.5°かつ20%≦h/λ≦100%、128.5°≦θ<129.5°かつ20%≦h/λ≦100%、129.5°≦θ<130.5°かつ20%≦h/λ≦75%、130.5°≦θ<131.5°かつ20%≦h/λ≦61%、131.5°≦θ≦132.5°かつ33%≦h/λ≦57%の不等号式群のひとつに当てはまることを特徴とするものである。
【0023】
また、IDTは主に境界弾性波を励振し、境界弾性波の波長をλ、酸化珪素膜の厚さをh、IDTの厚さをhとしたとき、1%≦h/λ≦8%であること、さらに、124.5°≦θ<125.5°かつ55%≦h/λ≦73%、125.5°≦θ<126.5°かつ59%≦h/λ≦83%、126.5°≦θ<127.5°かつ63%≦h/λ≦100%、127.5°≦θ<128.5°かつ67%≦h/λ≦100%、128.5°≦θ<129.5°かつ75%≦h/λ≦100%、129.5°≦θ<130.5°かつ85%≦h/λ≦100%、130.5°≦θ<131.5°かつ93%≦h/λ≦100%、131.5°≦θ≦132.5°かつ95%≦h/λ≦100%の不等号式群のひとつに当てはまることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの一実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0025】
高い品質係数(Q値が数千以上)を有し、かつ、k2が2〜6%の範囲である境界弾性波装置を実現することができる。また、高い品質係数(Q値が数千以上)を有し、かつ、k2が2〜6%の範囲である境界弾性波装置を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1による境界弾性波共振器の要部平面図である。
【図2】図1のI−I′線に沿った要部断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1による電極指の膜厚、酸化珪素膜の膜厚、窒化アルミニウム膜の膜厚、界面の起伏量、電極指の線幅、電極指の間隙、および励起される境界弾性波の波長の定義を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態1による3媒質構造の境界弾性波共振器の解析に用いたモデル図である。
【図5】(a)および(b)はそれぞれ本発明の実施の形態1による境界弾性波共振器のθ=125°の場合の1/Qとh/λとの関係を示すグラフ図およびk2とh/λとの関係を示すグラフ図である。
【図6】(a)および(b)はそれぞれ本発明の実施の形態1による境界弾性波共振器のθ=126°の場合の1/Qとh/λとの関係を示すグラフ図およびk2とh/λとの関係を示すグラフ図である。
【図7】(a)および(b)はそれぞれ本発明の実施の形態1による境界弾性波共振器のθ=127°の場合の1/Qとh/λとの関係を示すグラフ図およびk2とh/λとの関係を示すグラフ図である。
【図8】(a)および(b)はそれぞれ本発明の実施の形態1による境界弾性波共振器のθ=128°の場合の1/Qとh/λとの関係を示すグラフ図およびk2とh/λとの関係を示すグラフ図である。
【図9】(a)および(b)はそれぞれ本発明の実施の形態1による境界弾性波共振器のθ=129°の場合の1/Qとh/λとの関係を示すグラフ図およびk2とh/λとの関係を示すグラフ図である。
【図10】(a)および(b)はそれぞれ本発明の実施の形態1による境界弾性波共振器のθ=130°の場合の1/Qとh/λとの関係を示すグラフ図およびk2とh/λとの関係を示すグラフ図である。
【図11】(a)および(b)はそれぞれ本発明の実施の形態1による境界弾性波共振器のθ=131°の場合の1/Qとh/λとの関係を示すグラフ図およびk2とh/λとの関係を示すグラフ図である。
【図12】(a)および(b)はそれぞれ本発明の実施の形態1による境界弾性波共振器のθ=132°の場合の1/Qとh/λとの関係を示すグラフ図およびk2とh/λとの関係を示すグラフ図である。
【図13】本発明の実施の形態2による境界弾性波の存在するh/λおよびカット角θの範囲を示したグラフ図である。
【図14】本発明の実施の形態2による境界弾性波共振器のh/λ=10%の場合の境界弾性波のk2を示すグラフ図である。
【図15】本発明の実施の形態2による境界弾性波共振器のh/λ=20%の場合の境界弾性波のk2を示すグラフ図である。
【図16】本発明の実施の形態2による境界弾性波共振器のh/λ=30%の場合の境界弾性波のk2を示すグラフ図である。
【図17】本発明の実施の形態2による境界弾性波共振器のh/λ=40%の場合の境界弾性波のk2を示すグラフ図である。
【図18】本発明の実施の形態2による境界弾性波共振器のh/λ=50%の場合の境界弾性波のk2を示すグラフ図である。
【図19】本発明の実施の形態2による境界弾性波共振器のh/λ=60%の場合の境界弾性波のk2を示すグラフ図である。
【図20】本発明の実施の形態2による境界弾性波共振器のh/λ=70%の場合の境界弾性波のk2を示すグラフ図である。
【図21】本発明の実施の形態2による境界弾性波共振器のh/λ=80%の場合の境界弾性波のk2を示すグラフ図である。
【図22】本発明の実施の形態2による境界弾性波共振器のh/λ=90%の場合の境界弾性波のk2を示すグラフ図である。
【図23】短絡型反射器の反射率と開放型反射器の反射率とを比較したグラフ図である。
【図24】本発明者らが検討した境界弾性波共振器の一例を示す要部断面図である。
【図25】本発明者らが検討した弾性的なQ値が千以上(伝搬損失が0.056dB以下の範囲)となるカット角θの範囲を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の実施の形態において、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0028】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0029】
また、以下の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】
(実施の形態1)
本実施の形態1による境界弾性波装置について図1〜図12を用いて説明する。図1は境界弾性波共振器の要部平面図、図2は図1のI−I′線に沿った要部断面図、図3は電極指の膜厚、酸化珪素膜の膜厚、窒化アルミニウム膜の膜厚、界面の起伏量、電極指の線幅、電極指の間隔、および励起される境界弾性波の波長の定義を説明する図、図4は3媒質構造の境界弾性波共振器の解析に用いたモデル図、図5はθ=125°の場合の境界弾性波の伝搬特性を示すグラフ図、図6はθ=126°の場合の境界弾性波の伝搬特性を示すグラフ図、図7はθ=127°の場合の境界弾性波の伝搬特性を示すグラフ図、図8はθ=128°の場合の境界弾性波の伝搬特性を示すグラフ図、図9はθ=129°の場合の境界弾性波の伝搬特性を示すグラフ図、図10はθ=130°の場合の境界弾性波の伝搬特性を示すグラフ図、図11はθ=131°の場合の境界弾性波の伝搬特性を示すグラフ図、図12はθ=132°の場合の境界弾性波の伝搬特性を示すグラフ図である。
【0031】
図1および図2に示すように、本実施の形態1による境界弾性波共振器は、一開口共振器であって、櫛形電極上に形成された2種類の膜の存在を除いて、従来の表面弾性波共振器の構成と同じである。すなわち、θYX−LN単結晶圧電基板(第1の媒質)1の表面に、アルミニウムを主成分とする金属膜により櫛形の2つのIDT(櫛形電極)14がパターニングされている。それぞれのIDT14はバスバー2および電極指3により構成されており、電極指3が互いに間挿された2つのIDT14間に高周波信号が加えられる。隣接する電極指3の間には所定の幅の間隙Sが設けられている。IDT14の両側にはアルミニウムを主成分とする金属膜で形成された反射器4a,4bが設置されている。IDT14および反射器4a,4bの上には酸化珪素膜(第2の媒質)5が形成されており、酸化珪素膜5の上には窒化アルミニウム膜(第3の媒質)6が形成されている。
【0032】
IDT14を構成する電極指3の膜厚は、例えば0.070μm、電極指3の線幅Lは、例えば0.5μm、電極指3の間隔Sは、例えば0.5μm、電極ピッチ(電極指3の周期)λは、例えば2μm、電極指3の対数は、例えば100対である。また、開口長は、例えば10λである。また、酸化珪素膜5の膜厚は、例えば1.4μm、窒化アルミニウム膜6の膜厚は、例えば6μmである。
【0033】
本実施の形態1による境界弾性波共振器の特徴は、θYX−LN単結晶圧電基板1、酸化珪素膜5、および窒化アルミニウム膜6の3媒質構造を成し、境界弾性波が閉じこめられる媒質(酸化珪素膜5)と、電気信号と機械信号との変換を行う媒質(θYX−LN単結晶圧電基板1)とを分けて、境界弾性波が閉じこめられる媒質に非圧電非金属膜を用い、酸化珪素膜5の膜厚、およびカット角等を以下に述べるように所定の範囲とすることにある。なお、本願発明が、IDT14の構造または個数、あるいは電極指3の膜厚に関して限定されるものではないことはいうまでもない。
【0034】
次に、境界弾性波共振器シミュレーション技術を用いて、本実施の形態1による境界弾性波装置の境界弾性波の伝搬特性を求める手法について説明する。
【0035】
まず、図3に示すように、境界弾性波共振器の電極指3の膜厚をh、電極指3の線幅をL、電極指3の間隔をS、酸化珪素膜5の膜厚をh、窒化アルミニウム膜6の膜厚をh、および界面7の起伏量をhΔとし、さらに励起される境界弾性波の波長(電極ピッチと一致)をλと定義する。
【0036】
酸化珪素膜5と窒化アルミニウム膜6との界面7は電極指3の膜厚hに依存して波打っている。そのため、ここでは、酸化珪素膜5の膜厚hを電極指3の上面から界面7の最下面までの距離、窒化アルミニウム膜6の膜厚hを界面7の最上面から窒化アルミニウム膜6の表面の最下面までの距離で定義した。
【0037】
境界弾性波共振器の共振周波数は、境界弾性波の伝搬速度および電極ピッチλの比で決まる。θYX−LN単結晶圧電基板1上に存在する境界弾性波の音速は4300m/s前後であり、2GHz帯で電極ピッチλは約2μmになる。このときの電極指3の線幅Lと電極指3の間隔Sは比較的自由に設定できる。しかし、量産性を考慮すると電極指3の線幅Lおよび電極指3の間隔Sは共に大きい方がよい。すなわち、電極指3の線幅Lおよび電極指3の間隔Sが0.5μmのとき、最小加工寸法が最も大きくなり、量産性に優れる。
【0038】
境界弾性波の伝搬損失は、電極指3の間隔Sの影響を強く受ける。例えば前述した非特許文献1に記載された計算手法では、電極を一様な金属膜で近似するため、電極の総重量が2倍となり質量負荷を過剰に取り込んでしまう、電極指3の端部での境界弾性波の反射/局在が考慮できない、酸化珪素膜5と窒化アルミニウム膜6との界面7の形状が考慮できない等の問題がある。そこで、本発明者らは、前述した特許文献1に記載された境界弾性波共振器シミュレーション技術を用いて、IDT14の形状等、全ての効果を考慮して、境界弾性波の伝搬特性を詳細に検討した。
【0039】
ところで、最近の境界弾性波装置に要求される弾性的な高いQ値を得るためには、市販の成膜装置を用いた酸化珪素膜5の成膜工程において発生する酸化珪素膜5の表面の起伏量、換言すると界面7の起伏量hΔの大きさを無視することができない。
【0040】
そこで、本発明者らは、界面7の起伏量hΔは、酸化珪素膜5の成膜条件により0<hΔ<hの範囲で変化することから、実際の境界弾性波共振器では、界面7の起伏量hΔが0(hΔ=0)のときの形状と界面7の起伏量hΔがh(hΔ=h)のときの形状との間で弾性特性を示すことに着目し、また、界面7の起伏量hΔは小さい方が低損失であることに着目した。そして、図4に示すように、最も悪い条件であるhΔ=hにおいて、Q値の良くなるカット角θおよびh/λの値を求めた。これらの結果を用いることにより、酸化珪素膜5や窒化アルミニウム膜6の形成に特殊な成膜条件や成膜装置を用いる必要がなくなるため、境界弾性波共振器を容易に製造することができる。
【0041】
この他、高いQ値を得るためには、導波路膜の膜質劣化についても配慮する必要がある。また、境界弾性波共振器は、直列共振周波数および並列共振周波数の両方で高Q値であることが望ましい。本発明者らはこれらの点を考慮して、その両端周波数でのQ値、つまり、直列共振Qおよび並列共振Qにおいて境界弾性波を評価した。
【0042】
また、成膜装置で形成される酸化珪素膜5は、通常多孔質膜である。多孔質膜の膜質を評価するパラメータは、前述した特許文献1に記載されている密度減少率δを用いた。酸化珪素膜5の弾性定数C11,C44および密度pは、
11=Co11×e−3×δ
44=Co44×e−3.9×δ
p=po×(1−δ)
で表わされる。ここで、Co11、Co44、およびpoには最も緻密な酸化珪素である石英ガラスの弾性定数および密度の値を用いた。
【0043】
酸化珪素膜5の密度減少率δは、成膜温度およびガス比率を最適化してスパッタリング法により酸化珪素膜5を形成することにより、概ねδ=0.015程度まで小さくすることができる。本発明者らはこの点を考慮して、密度減少率δ=0.015の場合の境界弾性波を検討した。また電極指3の線幅Lと電極指3の間隔Sの比は1とした。
【0044】
前述のように定義した電極指3の膜厚h、酸化珪素膜5の膜厚h、カット角θ、酸化珪素膜5の密度減少率δ、および界面7の起伏量hΔを考慮して、境界弾性波装置の境界弾性波の共振特性を境界弾性波共振器シミュレーション技術により求めた。その結果の一例を図5〜図12に示す。図5〜図12には、δ=0.015およびh/λ=8%の場合に、カット角θを変えて、共振/反共振が1/Q≦0.0001の条件を満たすh/λの範囲を求めた結果を示している。
【0045】
図5に示すθ=125°の場合、直列共振Qは、55%≦h/λ≦73%において、10000以上である。また、並列共振Qは、20%≦h/λ≦45%において、10000以上である。k2は、全てのh/λにおいて、2%より大きい。
【0046】
図6に示すθ=126°の場合、直列共振Qは、59%≦h/λ≦83%において、10000以上である。また、並列共振Qは、20%≦h/λ≦45%において、10000以上である。k2は、全てのh/λにおいて、2%より大きい。
【0047】
図7に示すθ=127°の場合、直列共振Qは、63%≦h/λ≦100%において、10000以上である。また、並列共振Qは、20%≦h/λ≦47%および87%≦h/λ≦100%において、10000以上である。k2は、全てのh/λにおいて、2%より大きい。
【0048】
図8に示すθ=128°の場合、直列共振Qは、67%≦h/λ≦100%において、10000以上である。また、並列共振Qは、全てのh/λ(20%≦h/λ≦100%)において、10000以上である。k2は、全てのh/λにおいて、2%より大きい。
【0049】
図9に示すθ=129°の場合、直列共振Qは、75%≦h/λ≦100%において、10000以上である。また、並列共振Qは、全てのh/λ(20%≦h/λ≦100%)において、10000以上である。k2は、全てのh/λにおいて、2%より大きい。
【0050】
図10に示すθ=130°の場合、直列共振Qは、85%≦h/λ≦100%において、10000以上である。また、並列共振Qは、20%≦h/λ≦75%において、10000以上である。k2は、全てのh/λにおいて、2%より大きい。
【0051】
図11に示すθ=131°の場合、直列共振Qは、93%≦h/λ≦100%において、10000以上である。また並列共振Qは、20%≦h/λ≦61%において、10000以上である。k2は、全てのh/λにおいて、2%より大きい。
【0052】
図12に示すθ=132°の場合、直列共振Qは、95%≦h/λ≦100%において、10000以上である。また、並列共振Qは、33%≦h/λ≦57%において、10000以上である。k2は、全てのh/λにおいて、2%より大きい。
【0053】
図5〜図12における評価点は離散的ではあるが、Q値およびk2はこれらのパラメータに対して連続に変化するため、評価点間でも内挿することにより、容易にQ値を知ることができる。
【0054】
このように、本実施の形態1によれば、所定のカット角θを有するθYX−LN単結晶圧電基板1を用いて、酸化珪素膜5の膜厚hおよびカット角θ等を最適化することにより、高い品質係数(Q値が数千以上)で、かつ、k2が2〜6%を有する境界弾性波装置を提供することができる。また、境界弾性波共振器の製造に汎用の製造装置等を用いることができるので、境界弾性波装置を容易に製造することができる。
【0055】
(実施の形態2)
本実施の形態2による境界弾性波装置について図13〜図23を用いて説明する。図13は境界弾性波の存在するh/λおよびカット角θの範囲を示したグラフ図、図14はh/λ=10%の場合の境界弾性波のk2を示したグラフ図、図15はh/λ=20%の場合の境界弾性波のk2を示したグラフ図、図16はh/λ=30%の場合の境界弾性波のk2を示したグラフ図、図17はh/λ=40%の場合の境界弾性波のk2を示したグラフ図、図18はh/λ=50%の場合の境界弾性波のk2を示したグラフ図、図19はh/λ=60%の場合の境界弾性波のk2を示したグラフ図、図20はh/λ=70%の場合の境界弾性波のk2を示したグラフ図、図21はh/λ=80%の場合の境界弾性波のk2を示したグラフ図、図22はh/λ=90%の場合の境界弾性波のk2を示したグラフ図、図23は短絡型反射器の反射率と開放型反射器の反射率とを比較したグラフ図である。
【0056】
本実施の形態2による境界弾性波共振器は、ニオブ酸リチウム圧電単結晶を主成分とし、θ回転Yカットに切り出され、弾性波の伝搬方向をX軸と直交する方向とした基板(以下θYZ′−LN単結晶圧電基板と略す)を用いていることを除いては、前述した実施の形態1による境界弾性波共振器の構成と同じである。
【0057】
本実施の形態2による境界弾性波共振器の特徴は、θYZ′−LN単結晶圧電基板、酸化珪素膜、および窒化アルミニウム膜の3媒質構造を成し、境界弾性波が閉じこめられる媒質(酸化珪素膜)と、電気信号と機械信号との変換を行う媒質(θYZ′−LN単結晶圧電基板)とを分けて、境界弾性波が閉じこめられる媒質に非圧電非金属膜を用い、酸化珪素膜の膜厚、およびカット角等を以下に述べるような所定の範囲とすることにある。本願発明が、IDTの構造または個数、あるいは電極指の膜厚に関して限定されるものではないことはいうまでもない。
【0058】
次に、境界弾性波共振器シミュレーション技術により得られた境界弾性波装置の境界弾性波の伝搬特性の一例を説明する。
【0059】
図13は、δ=0.00およびh/λ=4%の場合に、直列共振点および並列共振点におけるQ値が共に10000以上となる境界弾性波の存在するh/λおよびカット角θの範囲を示したグラフ図である。縦軸を音速とし、境界弾性波が存在する場合、その音速を○印で示している。比較のため、2個の横波バルク波の音速を一点破線で図13に記入している。図13に示すように、h/λが大きくなるに従い、徐々に高いQ値の境界弾性波が存在するカット角θの範囲が広くなる。なお、図13に記載した境界弾性波は全てストンリー波型境界弾性波であり、高いQ値、かつ、k2>2%の漏洩境界弾性波は存在しなかった。
【0060】
図14〜図22は、境界弾性波のk2のカット角θ依存性を示したグラフ図である。
【0061】
図14に示すh/λ=10%の場合、k2は、75°≦θ≦85°において、2%以上である。また、直列共振Qおよび並列共振Qは、共に65°≦θ≦95°において、10000以上である。
【0062】
図15に示すh/λ=20%の場合、k2は、75°≦θ≦85°において、2%以上である。また、直列共振Qおよび並列共振Qは、共に35°≦θ≦135°において、10000以上である。
【0063】
図16に示すh/λ=30%の場合、k2は、65°≦θ≦95°において、2%以上である。また、直列共振Qおよび並列共振Qは、共に25°≦θ≦145°において、10000以上である。
【0064】
図17に示すh/λ=40%の場合、k2は、65°≦θ≦95°において、2%以上である。また、直列共振Qおよび並列共振Qは、共に25°≦θ≦145°において、10000以上である。
【0065】
図18に示すh/λ=50%の場合、k2は、65°≦θ≦95°において、2%以上である。また直列共振Qおよび並列共振Qは、共に25°≦θ≦145°において、10000以上である。
【0066】
図19に示すh/λ=60%の場合、k2は、65°≦θ≦95°において、2%以上である。また、直列共振Qおよび並列共振Qは、共に25°≦θ≦145°において、10000以上である。
【0067】
図20に示すh/λ=70%の場合、k2は、65°≦θ≦95°において、2%以上である。また、直列共振Qおよび並列共振Qは、共に25°≦θ≦145°において、10000以上である。
【0068】
図21に示すh/λ=80%の場合、k2は、65°≦θ≦95°において、2%以上である。また、直列共振Qおよび並列共振Qは、共に25°≦θ≦145°において、10000以上である。
【0069】
図22に示すh/λ=90%の場合、k2は、65°≦θ≦95°において、2%以上である。また、直列共振Qおよび並列共振Qは、共に25°≦θ≦145°において、10000以上である。
【0070】
図14〜図22における評価点は離散的ではあるが、Q値およびk2はこれらのパラメータに対して連続に変化するため、評価点間でも内挿することにより、容易にQ値を知ることができる。
【0071】
このように、本実施の形態2によれば、所定のカット角θを有するθYZ′−LN単結晶圧電基板を用いることにより、高い品質係数(Q値が数千以上)で、かつ、k2が2〜6%を有する境界弾性波装置を提供することができる。
【0072】
なお、窒化アルミニウム膜の結晶のC軸の向きは、ランダムであることが望ましい。これは、IDTで発生させた機械振動の主成分であるSH(Shear Horizontal)波成分を、窒化アルミニウム膜6内でSV(Shear Vertical)波成分に変換させないためである。そのため、アモルファス状態の膜でも全く同様の効果を有する。また、配向膜または単結晶膜でも、窒化アルミウム膜6のC軸が、基板面にほぼ垂直である場合では、SV成分とSH成分とが直交するため、同様の効果を有する。酸化珪素膜に関しても同じである。
【0073】
また、h/2が境界弾性波の波長λの半分より小さい場合、窒化アルミニウム膜の表面の機械振動エネルギーが存在することから、表面弾性波が励振される。この表面弾性波の表面の機械振動エネルギーは、従来の表面弾性波の表面の機械振動エネルギーよりも極めて小さいことから、境界弾性波の優れた特性を一部有する。例えばハンドリングミスによる窒化アルミニウム膜の表面の損傷や不純物の付着に対して、損失または周波数ずれ等の電気特性の劣化が小さい。これにより、本願発明を表面弾性波装置に適用した場合、従来の表面弾性波装置よりも信頼性の高い表面弾性波装置を提供することができる。しかし、窒化アルミニウム膜を薄くするに従い、損傷や不純物に起因する伝搬損失は徐々に増加するため、共振器上では充分に厚くしたほうが望ましい。
【0074】
また、本実施の形態2による圧電境界弾性波装置は、アルミニウムを主成分とする金属でIDTを形成したが、電極材料をアルミニウムに限定するものではない。アルミニウムに銅、珪素、チタン等を混ぜた合金、またはそれらの多層膜であっても同様の効果が得られる。アルミニウムを主成分とする密度の小さい金属を用いることで、金属膜の膜厚や加工寸法等の製造ばらつきに起因する境界弾性波装置の動作周波数のばらつきを小さくすることができる。
【0075】
図23に、開放型反射器の反射率と短絡型反射器の反射率とを比較したグラフ図を示す。両者のカット角θは128°であり、また、反射器の材料はアルミニウムである。全ての膜厚で開放型反射器の方が短絡型反射器より大きい反射率を示した。このことから、カット角θが128°近傍の漏洩型の境界弾性波では、短絡型反射器を用いることにより、実効反射帯域幅を大きくすることができる。すなわち、前述した実施の形態1で説明した境界弾性波共振器では反射係数の大きい開放型反射器の反射器4a,4bを用いたが、短絡型反射器を用いることにより、いっそう損失の小さい境界弾性波共振器を提供することができる。
【0076】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0077】
例えば前述した実施の形態1および2では、境界弾性波を閉じこめる媒質として窒化アルミニウム膜を例にして説明したが、窒化物質を主成分とする窒化膜または高音速な酸化物質を主成分とする酸化膜であれば、同じ特性および効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、高周波用通信機器の共振器やフィルタ等の固体回路素子に用いられる弾性波装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 θYX−LN単結晶圧電基板(第1の媒質)
2 バスバー
3 電極指
4a,4b 反射器
5 酸化珪素膜(第2の媒質)
6 窒化アルミニウム膜(第3の媒質)
7 界面
14 交差指形変換器(IDT)
51 θYX−LN単結晶圧電基板
52 交差指形変換器(IDT)
53 酸化珪素膜
54 多結晶珪素膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニオブ酸リチウム圧電単結晶を主成分とし、θ回転Yカットに切り出された平面を有する第1の媒質と、
窒化物質を主成分とする第3の媒質と、
前記第1の媒質と前記第3の媒質とに挟まれ、酸化珪素を主成分とする第2の媒質と、
前記第1の媒質と前記第2の媒質とに挟まれ、かつ、前記第1の媒質の前記平面上に形成された交差指形変換器および反射器と、
を有し、前記交差指形変換器は主に境界弾性波を励振する弾性波装置であって、
前記境界弾性波の波長をλ、前記第2の媒質の厚さをh、前記交差指形変換器の厚さをhとしたとき、1%≦h/λ≦8%であること、さらに、
124.5°≦θ<125.5°かつ20%≦h/λ≦45%、
125.5°≦θ<126.5°かつ20%≦h/λ≦45%、
126.5°≦θ<127.5°かつ20%≦h/λ≦47%、
126.5°≦θ<127.5°かつ87%≦h/λ≦100%、
127.5°≦θ<128.5°かつ20%≦h/λ≦100%、
128.5°≦θ<129.5°かつ20%≦h/λ≦100%、
129.5°≦θ<130.5°かつ20%≦h/λ≦75%、
130.5°≦θ<131.5°かつ20%≦h/λ≦61%、
131.5°≦θ≦132.5°かつ33%≦h/λ≦57%
の不等号式群のひとつに当てはまることを特徴とする弾性波装置。
【請求項2】
ニオブ酸リチウム圧電単結晶を主成分とし、θ回転Yカットに切り出された平面を有する第1の媒質と、
窒化物質を主成分とする第3の媒質と、
前記第1の媒質と前記第3の媒質とに挟まれ、酸化珪素を主成分とする第2の媒質と、
前記第1の媒質と前記第2の媒質とに挟まれ、かつ、前記第1の媒質の前記平面上に形成された交差指形変換器および反射器と、
を有し、前記交差指形変換器は主に境界弾性波を励振する弾性波装置であって、
前記境界弾性波の波長をλ、前記第2の媒質の厚さをh、前記交差指形変換器の厚さをhとしたとき、1%≦h/λ≦8%であること、さらに、
124.5°≦θ<125.5°かつ55%≦h/λ≦73%、
125.5°≦θ<126.5°かつ59%≦h/λ≦83%、
126.5°≦θ<127.5°かつ63%≦h/λ≦100%、
127.5°≦θ<128.5°かつ67%≦h/λ≦100%、
128.5°≦θ<129.5°かつ75%≦h/λ≦100%、
129.5°≦θ<130.5°かつ85%≦h/λ≦100%、
130.5°≦θ<131.5°かつ93%≦h/λ≦100%、
131.5°≦θ≦132.5°かつ95%≦h/λ≦100%
の不等号式群のひとつに当てはまることを特徴とする弾性波装置。
【請求項3】
ニオブ酸リチウム圧電単結晶を主成分とし、θ回転Yカットに切り出された平面を有する第1の媒質と、
窒化物質を主成分とする第3の媒質と、
前記第1の媒質と前記第3の媒質とに挟まれ、酸化珪素を主成分とする第2の媒質と、
前記第1の媒質と前記第2の媒質とに挟まれ、かつ、前記第1の媒質の前記平面上に形成された交差指形変換器および反射器と、
を有し、前記交差指形変換器は主に境界弾性波を励振する弾性波装置であって、
前記境界弾性波の波長をλ、前記第2の媒質の厚さをh、前記交差指形変換器の厚さをhとしたとき、1%≦h/λ≦8%であること、さらに、
5%≦h/λ<15%かつ65°≦θ≦95°、
15%≦h/λ<25%かつ35°≦θ≦135°、
25%≦h/λ≦95%かつ25°≦θ≦145°
の不等号式群のひとつに当てはまることを特徴とする弾性波装置。
【請求項4】
請求項3記載の弾性波装置において、さらに、
5%≦h/λ<25%かつ75°≦θ≦85°、
25%≦h/λ≦95%かつ65°≦θ≦95°
の不等号式群のひとつに当てはまることを特徴とする弾性波装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性波装置において、前記交差指形変換器はアルミニウムを主成分とする金属で構成されていることを特徴とする弾性波装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性波装置において、前記反射器は開放型反射器であることを特徴とする弾性波装置。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性波装置において、前記反射器は短絡型反射器であることを特徴とする弾性波装置。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性波装置において、前記第3の媒質の結晶のC軸の向きは、ランダムであることを特徴とする弾性波装置。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性波装置において、前記第3の媒質はアモルファス状態であることを特徴とする弾性波装置。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性波装置において、前記第3の媒質は窒化アルミニウム膜であることを特徴とする弾性波装置。
【請求項11】
請求項1または2記載の弾性波装置において、前記境界弾性波は漏洩境界弾性波であることを特徴とする弾性波装置。
【請求項12】
請求項3または4記載の弾性波装置において、前記境界弾性波は非漏洩境界弾性波であることを特徴とする弾性波装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−41127(P2011−41127A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188475(P2009−188475)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】