説明

弾性表面波デバイスの製造方法、及び吐出装置、並びに弾性表面波デバイス、弾性表面波発振装置、及び電子機器

【課題】 弾性表面波デバイスの処理対象領域に付着した付着物に起因する不良品となる潜在的な要因を持つことで、故障する可能性がある弾性表面波デバイスが、良品として出荷され、使用されている場において故障することを抑制できる、弾性表面波デバイスの製造方法、及び吐出装置、並びに弾性表面波デバイス、弾性表面波発振装置、及び電子機器を実現する。
【解決手段】 本発明による弾性表面波デバイスの製造方法は、IDT44上の付着物の有無を調べる付着物検査工程(ステップS12)と、付着物が認められたIDT44の電極44aと電極44bとを短絡する工程(ステップS14)とを有する。また、吐出装置は、付着物検出装置と導電性材料を吐出する吐出ヘッドとを備える。弾性表面波発振装置は、当該製造方法又は吐出装置を用いて製造された弾性表面波デバイスを備え、電子機器は、当該弾性表面波発振装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波デバイスの製造方法、及び吐出装置、及び当該製造方法、又は吐出装置を用いて製造された弾性表面波デバイス、並びに当該弾性表面波デバイスを備えた弾性表面波発振装置、及び当該弾性表面波発振装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性表面波デバイスを形成するための基板上の所定の領域を選択的に処理するために、所定の領域(以降「処理対象領域」と表記する)以外の領域(以降「非処理領域」と表記する)を覆う膜パターンを形成し、基板の全面を処理しても膜パターンに覆われた非処理領域は処理されないようにすることで、所定の領域のみを選択的に処理する方法が行われている。非処理領域を覆う膜パターンを形成する方法としては、基板面の全域を覆う保護膜を形成し、フォトエッチングなどで処理対象領域を覆う保護膜を除去して、非処理領域を覆う膜パターンを形成する方法が行われている。この方法では処理対象領域の保護膜をエッチングして除去する際に、処理対象領域の面がエッチング剤の影響を受けることがあった。例えば、基板の処理対象領域に含まれる表面に形成された電極膜が、エッチング剤によって侵食される場合があった。エッチング剤の影響を排除する方法として、特許文献1に記載されたように、エッチング剤に侵され難い処理を行う方法が提案されている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載されたような方法は、基板面に対して実施するべき処理を実行するためにさらに別の処理を実行する方法である。そのため、弾性表面波デバイスのように、基板の表面に形成された電極膜の厚さの微小な変化が装置の特性に影響を与える装置においては、当該別の処理を実行することで、装置の特性が変化するという弊害が生ずる可能性があった。このような弊害がない方法として、特許文献2に記載されたようなインクジェット方式で、非処理領域にのみ選択的に保護膜の膜パターンを形成する方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−278067号公報
【特許文献2】特開2004−16916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インクジェット方式では、図13に示したように、吐出ヘッド内の液状材料から分離される液滴110が尾をひき(図13(b),(c)参照)、尾の部分が液滴(以降「主液滴111」と表記する)から分離して微小液滴(以降「副液滴112」と表記する)が発生する場合があった(図13(d),(e),(f)参照)。副液滴112は主液滴111より重量が軽いことから主液滴111より飛行速度が遅いため、主液滴111より遅れて基板面に着弾し、目標とする着弾位置から大幅にずれた位置に副液滴112が着弾する可能性が高く、非処理領域に隣接する処理対象領域に着弾する場合もあった。また、突発的に液滴110の飛行経路が変わって着弾した場合や、吐出ノズルの縁などに付着した液体が脱落して落下した場合などにも、目標とする着弾位置からずれた位置に液状材料が付着する可能性があった。
【0006】
図14(a)に示した弾性表面波デバイスパターンの交叉指電極(IDT:Inter Digital Transducer)122に絶縁層形成処理を行う際に、導電性を確保することが必要である接続電極121には、絶縁層が形成されないようにレジスト膜116を形成する。ところが上記したように、接続電極121にレジスト膜116を形成するための液状材料が、交叉指電極122に付着する場合があった。図14(b)に示すように、交叉指電極122に着弾した副液滴112などは、部分的にレジスト膜116と同様のレジスト膜片117を形成していた。ここで絶縁層124を形成する処理を実施すると、レジスト膜116とレジスト膜片117が形成された部分には、絶縁層124は形成されない(図14(c)参照)。レジスト膜116を除去する処理によって、レジスト膜片117も除去され、交叉指電極122上のレジスト膜片117が除去された跡が、絶縁層が形成されていない導通領域127となる(図14(d)参照)。
【0007】
導通領域127が在っても、弾性表面波デバイスとしては正常であるため、良品として出荷される可能性がある。しかし、導通領域127の部分では、導電性塵の付着などによって短絡が発生する可能性があり、それによって、弾性表面波デバイスが損なわれる可能性があった。即ち、潜在的に不良品となる要因を持った弾性表面波デバイスが、良品と判断されて出荷され、使用されている場において故障するという課題があった。
【0008】
そこで、本発明は、弾性表面波デバイスの処理対象領域に付着した付着物に起因する不良品となる潜在的な要因を持つことで、故障する可能性がある弾性表面波デバイスが、良品として出荷されることを抑制できる、弾性表面波デバイスの製造方法、及び吐出装置、並びに弾性表面波デバイス、弾性表面波発振装置、及び電子機器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による弾性表面波デバイスの製造方法は、弾性表面波デバイスを構成する交叉指電極上の付着物の有無を検出する検出工程と、付着物が検出された場合には、交叉指電極を構成する2個の電極に導電性材料を塗布し、当該2個の電極間を電気的に結合する塗布工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の弾性表面波デバイスの製造方法によれば、交叉指電極上に付着物があることを検出した場合には、交叉指電極を形成する2個の電極間に導電性材料を塗布して2個の電極間を短絡することで、当該弾性表面波デバイスを確実に不良品とする。交叉指電極上に付着した付着物に起因して、不良品となる要因を持った弾性表面波デバイスとなる可能性が高い弾性表面波デバイスを確実に不良品とすることで、不良品となる要因を潜在的に持った弾性表面波デバイスが良品として出荷され、使用されている場において故障することを抑制することができる。
【0011】
この場合、弾性表面波デバイスの製造方法は、交叉指電極上に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程を更に有し、塗布工程は、絶縁膜形成工程より前に実行することが好ましい。
【0012】
この弾性表面波デバイスの製造方法によれば、交叉指電極上に絶縁膜が形成する前に塗布工程を実施することで、形成された絶縁膜によって、塗布された導電性材料と2個の電極とが絶縁されることなく、塗布された導電性材料によって確実に2個の電極間を短絡することができる。
【0013】
この場合、弾性表面波デバイスの製造方法は、弾性表面波デバイスを形成するウェハ上の、絶縁膜を形成しない部分を覆うレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程を更に有し、検出工程は、当該レジスト膜形成工程を実行した後に実行することが好ましい。
【0014】
レジスト膜形成工程においては、レジスト膜材料の一部が、交叉指電極上に付着する可能性がある。交叉指電極上に付着したレジスト膜材料は、交叉指電極上の付着した部分に絶縁膜が形成されることを阻害することで、弾性表面波デバイスが不良品となる要因をつくる可能性が高い。この弾性表面波デバイスの製造方法によれば、レジスト膜形成工程の後で検出工程を実施することで、レジスト膜形成工程において発生する弾性表面波デバイスが不良品となる要因のもとである交叉指電極上に付着したレジスト膜材料を検出することができる。
【0015】
この場合、付着物が、絶縁膜を形成しない部分を覆うレジスト膜を形成するレジスト材料であることを特徴とする。
【0016】
交叉指電極上に付着したレジスト膜材料は、交叉指電極上の付着した部分に絶縁膜が形成されることを阻害することで、弾性表面波デバイスが不良品となる要因の原因となる可能性が高い。この弾性表面波デバイスの製造方法によれば、交叉指電極上に付着したレジスト膜材料を検出することができ、交叉指電極上に付着したレジスト膜材料に起因して、不良品となる要因を持った弾性表面波デバイスとなる可能性が高い弾性表面波デバイスを確実に不良品とすることで、不良品となる要因を潜在的に持った弾性表面波デバイスが良品として出荷され、使用されている場において故障することを抑制することができる。
【0017】
この場合、弾性表面波デバイスの製造方法は、導電性材料を、付着物が付着していない位置に塗布することが好ましい。
【0018】
導電性材料が付着物上に塗布されると、付着物によって導電性材料と交叉指電極とが絶縁されて、交叉指電極を形成する2個の電極が導電性材料によって短絡されることが阻害される可能性が高い。この弾性表面波デバイスの製造方法によれば、導電性材料が付着物とは異なる位置に塗布されることから、付着物によって導電性材料と交叉指電極とが絶縁されることはなく、確実に、交叉指電極を形成する2個の電極間を導電性材料によって短絡することができる。
【0019】
この場合、弾性表面波デバイスの製造方法は、導電性材料を、2個の電極間を電気的に結合可能な複数の位置に塗布することが好ましい。
【0020】
導電性材料が付着物上に塗布されると、付着物によって導電性材料と交叉指電極とが絶縁されて、交叉指電極を形成する2個の電極が導電性材料によって短絡されることが阻害される可能性が高い。この弾性表面波デバイスの製造方法によれば、導電性材料を複数の位置に塗布することで、導電性材料が付着物とは異なる位置に塗布される確率が高くなり、付着物によって導電性材料と交叉指電極とが絶縁される可能性が小さくなり、より確実に、交叉指電極を形成する2個の電極間を導電性材料によって短絡することができる。
【0021】
本発明による吐出装置は、液状材料を吐出する第1の吐出ヘッドを備え、当該吐出ヘッドを、弾性表面波デバイスパターンが形成されたウェハに対向させ、弾性表面波デバイスパターン上の膜形成領域に向けて液状材料を吐出することで、ウェハ上に液状材料から成り、所定の平面形状を有する膜を形成する吐出装置であって、導電性材料を吐出する第2の吐出ヘッドと、弾性表面波デバイスを構成する交叉指電極上の付着物の有無を検出する検出装置と、を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明の吐出装置によれば、交叉指電極上に付着物があることを検出した場合には、交叉指電極を形成する2個の電極間に導電性材料を塗布して2個の電極間を短絡することで、当該弾性表面波デバイスを確実に不良品とする。交叉指電極上に付着した付着物に起因して、不良品となる要因を持った弾性表面波デバイスとなる可能性が高い弾性表面波デバイスを確実に不良品とすることで、不良品となる要因を潜在的に持った弾性表面波デバイスが良品として出荷され、使用されている場において故障することを抑制することができる。また、導電性材料を吐出する第2の吐出ヘッドと、付着物の有無を検出する検出装置とを備えることで、吐出装置に装着したウェハを着脱することなく、付着物の検出と検出結果に応じた導電性材料の塗布とを実施することができる。
【0023】
この場合、吐出装置の第1の吐出ヘッドから吐出する液状材料は、交叉指電極上に絶縁膜を形成する前に、ウェハ上の当該絶縁膜を形成しない部分を覆うためのレジスト膜の材料であることが好ましい。
【0024】
この吐出装置によれば、第1の吐出ヘッドによってレジスト膜を形成する工程と、検出装置によってレジスト膜材料から成る付着物の有無を検出する工程と、第2の吐出ヘッドによって液状の導電性材料を吐出する工程とを、吐出装置に装着したウェハを着脱することなく、連続して効率良く実施することができる。
【0025】
本発明の弾性表面波デバイスは、前記請求項のいずれか1項に記載の弾性表面波デバイスの製造方法、又は前記請求項のいずれか1項に記載の吐出装置を用いて製造したことを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、不良品となる要因を潜在的に持った弾性表面波デバイスが良品として出荷され、使用されている場において故障することを抑制することができる弾性表面波デバイスの製造方法、または吐出装置を用いて製造したことから、弾性表面波デバイスは、潜在的に不良品となる要因を持つことがないものとなり、信頼性の高い弾性表面波デバイスを実現することができる。
【0027】
本発明の弾性表面波発振装置は、前記した請求項に記載の弾性表面波デバイスを備えることを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、信頼性の高い弾性表面波デバイスを有する、信頼性の高い弾性表面波発振装置を実現することができる。
【0029】
本発明による電子機器は、前記した請求項に記載の弾性表面波発振装置を備えることを特徴とする。
【0030】
本発明の構成によれば、信頼性の高い弾性表面波発振装置を搭載したことから、信頼性の高い電子機器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に係る弾性表面波デバイスの製造方法、及び吐出装置、並びに弾性表面波デバイス、弾性表面波発振装置、及び電子機器の一実施形態について、図面を参照して、説明する。なお、以下の図面において、各部材及び各層を認識可能な大きさとするために、各部材及び各層の縮尺を適宜変更している。
【0032】
(第1の実施形態)
最初に、本発明に係る弾性表面波デバイスを製造する際に用いられるデバイス製造装置の一例である液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、液滴吐出ヘッドから基板に対して液滴を吐出(滴下)することにより弾性表面波デバイスを形成するウェハ上に膜パターンを形成するインクジェット装置である。図1は、液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図である。
【0033】
図1において、液滴吐出装置IJは、ベース12と、ベース12上に設けられ、弾性表面波デバイスを形成するウェハ51(図7参照)を支持する基板ステージ22と、ベース12と基板ステージ22との間に介在し、基板ステージ22を移動可能に支持する第1移動装置(移動装置)14と、基板ステージ22に支持されているウェハ51に対して液状材料の液滴を吐出可能な液滴吐出ヘッド2(図2参照)と、複数の液滴吐出ヘッド2を保持するヘッドユニット3(図2参照)を移動可能に支持する第2移動装置16と、液滴吐出ヘッド2の液滴の吐出動作を制御する制御装置23とを備えている。更に、液滴吐出装置IJは、ベース12上に設けられている重量測定装置としての電子天秤(不図示)と、キャッピングユニット25と、クリーニングユニット24とを有している。また、第1移動装置14及び第2移動装置16を含む液滴吐出装置IJの動作は、制御装置23によって制御される。液滴吐出装置IJが吐出装置に相当し、液滴吐出ヘッド2が吐出ヘッドに相当する。
【0034】
第1移動装置14はベース12の上に設置されており、Y方向に沿って位置決めされている。第2移動装置16は、2本の支柱16aを用いてベース12に対して立てて取り付けられており、ベース12の後部12aにおいて取り付けられている。第2移動装置16のX方向(第2の方向)は、第1移動装置14のY方向(第1の方向)と直交する方向である。ここで、Y方向はベース12の前部12bと後部12a方向に沿った方向である。これに対してX方向はベース12の左右方向に沿った方向であり、各々水平である。また、Z方向はX方向及びY方向に垂直な方向である。
【0035】
第1移動装置14は、駆動部が例えばリニアモータによって構成され、2本のガイドレール14aと、このガイドレール14aに沿って移動可能に設けられているスライダー14bとを備えている。このスライダー14bは、ガイドレール14aに沿ってY方向に移動して位置決め可能である。
【0036】
また、スライダー14bはZ軸回り(θZ)用のモータ14cを備えている。このモータ14cは、例えばダイレクトドライブモータであり、モータ14cのロータは基板ステージ22に固定されている。これにより、モータ14cに通電することでロータと基板ステージ22とは、θZ方向に沿って回転して基板ステージ22をインデックス(回転割り出し)することができる。すなわち、第1移動装置14は、基板ステージ22をY方向(第1の方向)及びθZ方向に移動可能である。
【0037】
基板ステージ22はウェハ51を保持し、所定の位置に位置決めするものである。また、基板ステージ22は吸着保持装置(図示省略)を有しており、吸着保持装置が作動することにより、基板ステージ22の穴22aを通してウェハ51を基板ステージ22の上に吸着して保持する。
【0038】
第2移動装置16は、駆動部がリニアモータによって構成され、支柱16aに固定されたコラム16bと、このコラム16bに支持されているガイドレール16cと、ガイドレール16cに沿ってX方向に移動可能に支持されているスライダー16dとを備えている。スライダー16dはガイドレール16cに沿ってX方向に移動して位置決め可能であり、ヘッドユニット3はスライダー16dに取り付けられている。
【0039】
ヘッドユニット3は、揺動位置決め装置としてのモータ18a,18b,18c,18dを介してスライダー16dに取り付けられている。モータ18aを作動すれば、ヘッドユニット3(液滴吐出ヘッド2)は、Z軸に平行に上下動して位置決め可能である。このZ軸はX軸とY軸に対して各々直交する方向(上下方向)である。モータ18bを作動すると、ヘッドユニット3(液滴吐出ヘッド2)は、Y軸回りのβ方向に沿って揺動して位置決め可能である。モータ18cを作動すると、ヘッドユニット3(液滴吐出ヘッド2)は、X軸回りのγ方向に揺動して位置決め可能である。モータ18dを作動すると、ヘッドユニット3(液滴吐出ヘッド2)は、Z軸回りのα方向に揺動して位置決め可能である。すなわち、第2移動装置16は、ヘッドユニット3をX方向(第1の方向)及びZ方向に移動可能に支持するとともに、このヘッドユニット3をX軸回り方向、Y軸回り方向、Z軸回り方向に揺動可能に支持する。
【0040】
このように、図1のヘッドユニット3に保持された液滴吐出ヘッド2は、スライダー16dにおいて、X軸方向に直線移動して位置決め可能で、α、β、γに沿って揺動して位置決め可能であり、液滴吐出ヘッド2の液滴吐出面2Pは、基板ステージ22側のウェハ51に対して正確に位置及び姿勢をコントロールすることができる。なお、液滴吐出ヘッド2の液滴吐出面2Pには液滴を吐出する複数の吐出ノズル4が設けられている(図2(b)参照)。
【0041】
電子天秤(図示省略)は、液滴吐出ヘッド2の吐出ノズルから吐出された液滴の一滴の重量を測定して管理するために、例えば、液滴吐出ヘッド2の吐出ノズルから、5000滴分の液滴を受ける。電子天秤は、この5000滴の液滴の重量を5000の数字で割ることにより、一滴の液滴の重量を正確に測定することができる。この液滴の測定量に基づいて、液滴吐出ヘッド2から吐出する液滴の量を最適にコントロールすることができる。
【0042】
クリーニングユニット24は、液滴吐出ヘッド2の吐出ノズル等のクリーニングを製造工程中や待機時に定期的にあるいは随時に行うことができる。キャッピングユニット25は、液滴吐出ヘッド2の液滴吐出面2Pが乾燥しないようにするために、デバイスを製造しない待機時にこの液滴吐出面2Pにキャップをかぶせるものである。
【0043】
液滴吐出ヘッド2が第2移動装置16によりX方向に移動することで、液滴吐出ヘッド2を電子天秤、クリーニングユニット24あるいはキャッピングユニット25の上部に選択的に位置決めさせることができる。つまり、製造作業の途中であっても、液滴吐出ヘッド2をたとえば電子天秤の位置に移動することで、液滴の重量を測定できる。また液滴吐出ヘッド2をクリーニングユニット24上に移動することで、液滴吐出ヘッド2のクリーニングを行うことができる。液滴吐出ヘッド2をキャッピングユニット25の上に移動して、液滴吐出ヘッド2の液滴吐出面2Pにキャップを取り付けることで乾燥を防止する。
【0044】
つまり、これら電子天秤、クリーニングユニット24、およびキャッピングユニット25は、ベース12上の後端側で、液滴吐出ヘッド2の移動経路直下に、基板ステージ22と離間して配置されている。基板ステージ22に対するウェハ51の給材作業及び排材作業はベース12の前端側から行われるため、これら電子天秤、クリーニングユニット24あるいはキャッピングユニット25により作業に支障を来すことはない。
【0045】
図1に示すように、基板ステージ22のうち、ウェハ51を支持する以外の部分には、液滴吐出ヘッド2が液滴を捨打ち或いは試し打ち(予備吐出)するための予備吐出エリア(予備吐出領域)27が、クリーニングユニット24と分離して設けられている。この予備吐出エリア27は、図1に示すように、基板ステージ22の後端部側においてX方向に沿って設けられている。この予備吐出エリア27は、基板ステージ22に固着され、上方に開口する断面凹字状の受け部材と、受け部材の凹部に交換自在に設置されて、吐出された液滴を吸収する吸収材とから構成されている。
【0046】
次に、液滴吐出装置の液滴の吐出技術について説明する。液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換方式、電気熱変換方式、静電吸引方式等が挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御して吐出ノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に30kg/cm2程度の超高圧を印加して吐出ノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進して吐出ノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散して吐出ノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出して吐出ノズルから吐出させるものである。
【0047】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、吐出ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。このうち、ピエゾ方式は、液状材料に熱を加えないため、材料の組成等に影響を与えないなどの利点を有する。本実施形態では、液状材料選択の自由度の高さ、及び液滴の制御性の良さの点から上記ピエゾ方式を用いる。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。
【0048】
次に、液滴吐出ヘッド2、及び複数の液滴吐出ヘッド2を保持するヘッドユニット3の構造について説明する。図2(a)は、ヘッドユニットの平面図、図2(b)は、液滴吐出ヘッドの平面図であり、図3(a)は、液滴吐出ヘッドの構造を示す斜視図であり、図3(b)は、液滴吐出ヘッドの吐出ノズル部の詳細構造を示す液滴吐出ヘッドの断面図である。
【0049】
ヘッドユニット3は、図2(a)に示すように互いに同じ構造を有する複数の液滴吐出ヘッド2を保持している。ここで、図2(a)は、ヘッドユニット3を基板ステージ22側から観察した図である。ヘッドユニット3には6個の液滴吐出ヘッド2からなる列が、それぞれの液滴吐出ヘッド2の長手方向がX軸方向に対して角度をなすように2列配置されている。また、液状材料を吐出するための液滴吐出ヘッド2は、図2(b)に示すように、それぞれが液滴吐出ヘッド2の長手方向に延びる2つの吐出ノズル列6、6を有している。1つの吐出ノズル列6は、それぞれ180個の吐出ノズル4が一列に並んだ列のことであり、この吐出ノズル列6、6の方向に沿った吐出ノズル4の間隔は、約140μmである。2つの吐出ノズル列6、6間で吐出ノズル4はそれぞれ半ピッチ(約70μm)ずれた位置に配置されている。各液滴吐出ヘッド2は吐出ノズル4がX軸方向に一定ピッチで連続するように配置されており、液滴吐出ヘッド2のX軸方向に対する角度を調整すれば、ピッチを変えることができる。
【0050】
この液滴吐出ヘッド2及び吐出ノズル4の配列パターンは一例であり、各種の基板に対し液滴吐出ヘッド2を専用部品とすれば、当該基板に合致した吐出ノズルの配設をすれば良い。あるいは、6個の液滴吐出ヘッド2の列を一つの液滴吐出ヘッドで構成しても良い。すなわち、液滴吐出ヘッド2の個数や列数、さらに配列パターンは任意に設定できる。いずれにしても、12個の液滴吐出ヘッド2の全吐出ノズル4によるドットが、X軸方向において連続していればよい。
【0051】
図3(a),(b)に示すように、それぞれの液滴吐出ヘッド2は、振動板33と、ノズルプレート34とを備えている。振動板33と、ノズルプレート34との間には、液状材料タンク(図示省略)から孔37を介して供給される材料液が常に充填される液たまり35が位置している。また、振動板33と、ノズルプレート34との間には、複数のヘッド隔壁31が位置している。そして、振動板33と、ノズルプレート34と、1対のヘッド隔壁31とによって囲まれた部分がキャビティ30である。キャビティ30は吐出ノズル4に対応して設けられているため、キャビティ30の数と吐出ノズル4の数とは同じである。キャビティ30には、1対のヘッド隔壁31間に位置する供給口36を介して、液たまり35から材料液が供給される。
【0052】
振動板33上には、それぞれのキャビティ30に対応して、振動子32が位置する。振動子32は、ピエゾ素子32cと、ピエゾ素子32cを挟む1対の電極32a、32bとから成る。この1対の電極32a、32bに駆動電圧を与えることで、対応する吐出ノズル4から液状材料が液滴となって吐出される。
【0053】
上記した制御装置23(図1参照)は、ピエゾ素子32cへの印加電圧の制御、すなわち駆動信号を制御することにより、複数の吐出ノズル4のそれぞれに対して、液状材料の吐出制御を行う。具体的には、制御装置23は、吐出ノズル4から吐出される液滴の体積や、単位時間あたりに吐出する液滴の数、液滴同士の距離などを変化させることができる。例えば、列状に並ぶ複数の吐出ノズル4の中から、液滴を吐出させる吐出ノズル4を選択的に使用することにより、複数の液滴同士の距離を変化させることができる。なお、吐出ノズル4のそれぞれから吐出される液滴の体積は、1pl〜300pl(ピコリットル)の間で可変である。
【0054】
図4は、ピエゾ素子32cに与える駆動信号の例と、駆動信号に対応する吐出ノズル内の液状材料の状態を示す模式図である。以下、この図4に基づいて、体積の異なる3種類の液滴である、微小ドット、中ドット、大ドットを吐出する原理について説明する。図4において、駆動波形[A]は駆動信号発生回路が生成する基本波形である。波形[B]は基本波形のPart1で形成されていて、メニスカス(液体の凹凸面)を揺動させ吐出ノズル4開口近傍の増粘した液体を拡散し、微小な液滴の吐出不良を未然に防止するために用いられる。B1はメニスカスが静定している状態であり、B2はピエゾ素子32cに緩やかに充電することでキャビティ30(圧力室)の体積を拡張しメニスカスを僅か吐出ノズル4内に引き込む動作を示している。
【0055】
波形[C]は基本波形のPart2で形成されていて、微小ドットの液滴を吐出する波形である。まず静定している状態(C1)から急激にピエゾ素子32cを充電してメニスカスを素早く吐出ノズル4内に引き込む(C2)。次に一旦引き込まれたメニスカスが再び吐出ノズル4を満たす方向に振動を開始するタイミングに併せてキャビティ30を僅か縮小(C3)させることにより微小ドットの液滴が飛翔する。放電を途中休止した後の2度目の放電(C4)は吐出動作後のメニスカスやピエゾ素子の残留信号を制振させるとともに液滴の飛翔形態を制御する役目を果たしている。
【0056】
波形[D]は基本波形のPart3で形成されていて、中ドットを吐出する波形である。静定状態(D1)から緩やかに大きくメニスカスを引き込み(D2)、メニスカスが再び吐出ノズル4を満たす方向に向かうタイミングに合わせて急激にキャビティ30を収縮(D3)させることで中ドットの液滴が吐出される。D4ではピエゾ素子に充電/放電することでメニスカスやピエゾ素子の残留振動を制振させている。波形[E]は基本波形のPart2とPart3とを組み合わせて形成されていて、大ドットの液滴を吐出するための波形である。まず、E1、E2、E3に示す過程で微小ドットの液滴を吐出し、微小ドット吐出後に僅かに残留するメニスカスの振動が吐出ノズル4内を液体で満たすタイミングに合わせて中ドットを吐出する波形をピエゾ素子32cに印加する。E4、E5の過程で吐出される液滴は中ドットよりも大きい体積であり、先の微小ドットの液滴と合わせてさらに大きい大ドットの液滴が形成される。このように駆動信号を制御することにより、微小ドット、中ドット、大ドットの体積の異なる3種類の液滴を吐出することができる。
【0057】
次に、SAW(Surface Acoustic Wave)共振子38(図6参照)について説明する。SAW共振子38は、ハウジング39にSAW共振片40(図5参照)を封入し、接着剤41で接着し、ボンディングワイヤ42で導通させて形成される(図6参照)。SAW共振子38が、弾性表面波発振装置に相当し、SAW共振片40が、弾性表面波デバイスに相当する。
【0058】
図5は、SAW共振片の一例を示す平面図である。図5に示したSAW共振片40は、水晶、リチウムタンクレート、リチウムニオブベートなどの圧電体を矩形にカットしたものを基体(チップ)として構成されている。本実施形態の圧電体のチップ43は、平らな長方形にカットされており、その表面(主面)43aの中央に1組の電極44aおよび44bによって交叉指電極(IDT:Inter Digital Transducer)44が構成されている。また、このIDT44の長手方向の両側に格子状の反射器46aおよび46bが形成されている。チップ43の長手方向の縁に沿って、IDT44を形成する1組の電極44aおよび44bとそれぞれ繋がった導通用のボンディングランド45aおよび45bが、電極44aおよび44bと同じ素材を用いて形成されており、このボンディングランド45a,45bにワイヤーボンディングすることによって電気的な接続が得られるようになっている。ボンディングランド45a,45bが、接続電極に相当する。
【0059】
電極44a,44b,反射器46a,46bおよびボンディングランド45a,45bは、導電性の素材、例えば、金、アルミニウム、アルミニウム銅合金などが通常用いられ、加工およびコストの点からアルミニウム系の素材が最も多く用いられている。図5に破線で示した領域47a,47bは、後述する陽極酸化レジスト膜を形成する領域であり、塗布領域に相当する。
【0060】
図6は、SAW共振子の概要を示す断面図である。上述したように、SAW共振子38は、ハウジング39にSAW共振片40を封入して形成されている。ハウジング39は、SAW共振片40を支持するための金属部39bと、SAW共振片40を封止するケース39aと、封止ガラス39cとで構成されている。SAW共振片40は、これを支持するための金属部39bに接着剤41で固着されており、ケース39aと金属部39bとで形成される空間内に窒素雰囲気中で抵抗溶接などによって封止されている。SAW共振片40と電気的な接続を得るためのリード49が金属部39bの中の絶縁部すなわち封止ガラス39cを貫通しており、これらのリード49はSAW共振片40上のボンディングランド45a,45bとボンディングワイヤ42によって電気的に接続されている。
【0061】
このように、SAW共振片40の周囲に空間を設け、SAW共振片40が周囲の環境から影響を受け難くしてある。ところが、SAW共振片40の周囲に形成された空間がSAW共振片40を封入する際に混入する可能性のあるSUS片あるいは半田くずなどの異物の移動可能なスペースとなってしまう。そして、このような異物がSAW共振片40の電極、例えば、IDT44に食い込む可能性がある。IDT44はミクロンオーダーの精度で配置されているため、電極間に上記のような導電性の異物が存在するとショートの原因となり、SAW共振子38の安定した動作が損なわれる。しかし、このような異物の多くはミクロンオーダーの小さなものであり、混入を完全に防ぐのは困難である。さらに、SAW共振子38は様々な用途に用いられ、実装中や運搬中の衝撃、あるいは実装された角度などによってこのような異物が移動してしまうので、SAW共振子38を組み立てたり、実装する段階で上記のようなトラブルを完全に防止することは難しい。
【0062】
異物によるトラブルを防止するために、例えば、IDT44などを酸化けい素などによってコーディングすることも可能である。しかし、チップ上にコーティング層を形成することは共振周波数の変動やQ値の低下に繋がり、SAW共振子38の性能が損なわれてしまう。ところで、アルミニウム系の電極の表面に自然に形成される酸化膜は導電性が小さく、絶縁膜として機能させることができ、これらによってショートを防止することができる。しかし、自然に形成される酸化膜は厚みが10〜30オングストロームと薄いため強度が不足し、落下等の衝撃によって移動する異物から電極を完全に保護することは困難である。そこで、SAW共振片40のアルミニウム系電極を陽極酸化することによって、膜厚が280オングストローム前後、あるいはこれより厚い酸化膜を電極の表面に形成し、異物によるトラブルを防止するようにしている。
【0063】
図7は、複数のSAWパターンが形成されたウェハの平面図である。図7に示すような圧電体のウェハ51に複数のSAWパターン52が形成された状態で陽極酸化を行う。IDT44を構成する一対の電極44aおよび44bに陽極酸化を施すため、ウェハ51には、SAWパターン52に加え、陽極酸化用の電源と接続するターミナル(図示省略)と、ターミナルとIDT44の一方の電極44a及び44bとを繋ぐ接続線(図示省略)と、を設けてある。また、液滴吐出装置IJに定められた基準軸の方向に合わせてウェハ51の方向を調整するための指標とする位置決めマーク(図示省略)も設けられている。陽極酸化処理を行うことで、印加電圧に略比例した膜厚の酸化膜を電極44a,44bの表面に形成することができる。
【0064】
また、電極のうち、ボンディングランド45a,45bに相当する部分では、ボンディングワイヤ42とボンディングランド45a,45bとを低抵抗の状態で接続することが重要であり、ボンディングランド45a,45bには酸化膜が形成されないことが望ましい。そこで、ボンディングランド45a,45bを覆う領域47a,47bにはレジスト膜を形成して、酸化膜の厚みの増加を防止する。レジスト膜は、前述した液滴吐出装置IJを用いて、領域47a,47bにレジスト膜材料を吐出することで形成する。レジスト膜を形成する過程を含むSAW共振片40の製造工程の詳細は、後述する。
【0065】
なお、図7に示したウェハ51は、ウェハ51上に形成されたIDT44とボンディングランド45a,45bとの位置関係を明示するために、1枚のウェハ51上に40個のSAWパターン52が形成できるものを示している。
【0066】
次に、本実施形態のSAW共振片40の製造工程について説明する。図8は、SAW共振片の製造工程の一例を示すフローチャートである。ステップS1では、水晶のブロックからウェハ51(図7参照)の基板となる円板状のウェハを切り出す。次に、ステップS2では、切り出したウェハを洗浄する。次に、ステップS3では、ステップS2での表面の清浄度を確保した状態で、ウェハの主面に、例えば蒸着などによってアルミニウム系の素材からなる略一様な薄膜である電極膜を形成する。
【0067】
次に、ステップS4では、ステップS3で形成された電極膜上に、フォトレジスト材料を略一様に塗布しフォトレジスト膜を形成する。このとき、電極膜とフォトレジスト材料との密着性を向上させるために加熱処理してもよい。次に、ステップS5では、ステップS4で形成されたフォトレジスト膜にフォトマスクを密接させ、フォトレジストが感光する波長の平行光を照射してマスク露光し、露光したフォトレジスト材料を硬化させる。
【0068】
次に、ステップS6では、現像を実施して、ステップS5で照射された平行光によって露光し硬化された部分以外のフォトレジスト膜を取り除く。次に、ステップS7では、ステップS6でフォトレジスト膜が取り除かれた部分に露出している電極膜をエッチングして除去する。これにより、ウェハ上にSAWパターン52が形成される。次に、ステップS8では、SAWパターン52上のフォトレジスト膜を剥離して、SAWパターン52を露出させる。
【0069】
次に、ステップS9では、前述した液滴吐出装置IJを用いて、液状の陽極酸化レジスト材料を、SAWパターン52のボンディングランド45a,45bを覆う領域47a,47b(図5参照)に吐出する。このとき、図13に示すように、液滴吐出ヘッド2内の液状の陽極酸化レジスト材料から分離される液滴110が尾をひき(図13(b),(c)参照)、尾の部分が液滴(以降「主液滴111」と表記する)から分離して微小液滴(以降「副液滴112」と表記する)が発生する場合がある(図13(d),(e),(f)参照)。副液滴112は主液滴111より重量が軽いことから主液滴111より飛行速度が遅いため、主液滴111より遅れて基板面に着弾し、目標とする着弾位置である領域47a,47bから大幅にずれて、IDT44上に着弾する可能性もある。IDT44上に着弾した副液滴112は、乾燥して後述する付着物61となる。また、突発的に液滴110の飛行経路が変わって着弾した場合や、吐出ノズル4の縁などに付着した液体が脱落して落下した場合などにも、目標とする着弾位置からずれて、IDT44上に着弾する可能性がある。
【0070】
陽極酸化レジスト材料としては、フェノール樹脂等が一般的であり、特にノボラック系が好ましい。モノマーの状態で塗布した後、露光により重合させて硬化してもよいし、あらかじめ重合したポリマー状態で溶媒に溶解させた溶液を塗布してもよい。また、耐陽極酸化性を有するポリマーであれば、構造は何ら限定されるものではなく、あらゆる樹脂を適用可能である。具体的には、ポリエポキシ、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリアミドおよびポリカーボネート等のポリマーが挙げられる。また、これらのモノマーが、開始剤あるいはモノマー自身が熱または光等の刺激により重合反応を引き起こしてポリマーを形成するものであれば、同様に液状材料として使用することができる。
【0071】
溶媒についても同様に、ポリマーあるいはモノマーを可溶な溶媒であれば何ら限定されるものではない。具体的にはプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、4−メチル−2−ペンタノン(MIBK)、シクロヘキサノン、乳酸エチル、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン(PEGMEA)、2−メトキシエトキシエタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどの極性化合物、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサン、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトールなどのエーテル系化合物、さらにメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、シクロヘキサノール、α−テルピネオールなどのアルコール類を例示できる。工業用のシンナー等は多くのポリマーに適用可能である。
【0072】
次に、ステップS10では、陽極酸化レジスト材料を乾燥させて、ボンディングランド45a,45bを覆う陽極酸化レジスト膜54(図9参照)を形成する。陽極酸化レジスト材料の乾燥時間が速く、次の工程までに充分に乾燥が進行して、レジスト効果のある膜が形成できる場合には、この工程を省略してもよい。次に、ステップS11では、エア洗浄を実施し、ウェハ51上の埃などを除去する。ステップS9の工程とステップS10の工程とが、レジスト膜形成工程に相当する。
【0073】
次に、ステップS12では、IDT44上の付着物の有無を調べる付着物検査を実施する。付着物検査は、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラなどの撮像装置(図示省略)を用いて、IDT44を含む画像データを取得し、取得した画像データを画像処理して、IDT44の基準画像と比較することで、IDT44上の付着物の有無を検出する。撮像装置は、液滴吐出装置IJに取付けてもよいし、液滴吐出装置IJとは別体の独立した撮像装置を用いてもよい。
【0074】
次に、ステップS13では、ステップS12における検出結果に基づいて、IDT44上に付着物があるか否かを判定する。付着物が認められた(ステップS13でYES)場合は、ステップS14に進む。付着物が認めらない(ステップS13でNO)場合は、ステップS15に進む。ステップS12の工程とステップS13の工程とが、検出工程に相当する。
【0075】
次に、ステップS14では、付着物が認められたIDT44に向けて導電性材料を吐出し、IDT44の電極44aと電極44bとを短絡する導電片を形成する。図9は、IDT上に導電片が形成されたウェハの模式図である。図9において、ウェハ51a上に形成されたSAWパターン52上には陽極酸化レジスト膜54が形成されており、SAWパターン52のボンディングランド45a,45bが、それぞれ陽極酸化レジスト膜54a,54bで覆われている。ウェハ51a上に形成されたSAWパターン52の中で、SAWパターン52a,52b,52c,52dのIDT44には付着物61があることから、それぞれ電極44aと電極44bとを短絡する導電片71,72,73が形成されている。
【0076】
SAWパターン52aでは、付着物61に重ならない位置で、一個所に導電片71が形成されている。ステップS12で得られた画像データを記憶しておき、ステップS14では、付着物の位置と異なる位置に導電性材料の液滴を吐出することで、付着物61に重ならない位置に、導電片71が形成される。SAWパターン52bでは、3個所に導電片71が形成されている。SAWパターン52cでは、線状の導電片72が形成されている。SAWパターン52dでは、IDT44の略全面を覆う導電片73が形成されている。ステップS14の工程が、塗布工程に相当する。なお、導電片の形状を例示するために、ウェハ51aでは、1枚のウェハ51に対して、形状又は配置の異なる4種類の導電片を形成する構成としたが、通常は、1枚のウェハ51に対して、1種類の導電片を選択し、形成する。
【0077】
図8の、ステップS13又はステップS14の次に、ステップS15では、陽極酸化処理を実施して、IDT44の表面に絶縁膜としての酸化膜を形成する。ステップS15の工程が、絶縁膜形成工程に相当する。
【0078】
次に、ステップS16では、ボンディングランド45a,45bを含む領域47a,47bに形成されている陽極酸化レジスト膜を剥離する。次に、ステップS17では、ウェハ51をチップの形に切断して、SAW共振片40を形成する。ステップS17を実行して、SAW共振片40の製造工程を終了する。前述したように、ハウジング39にSAW共振片40(図5参照)を封入し、接着剤41で接着し、ボンディングワイヤ42でリード49と導通させて、SAW共振子38が形成される(図6参照)。導通検査などを行い、不良のSAW共振子38を選別する。付着物61が付いていたSAW共振片40が装着されたSAW共振子38は、SAW共振片40の電極44aと電極44bとが導電片で短絡させられており、確実に不良品として選別される。なお、SAW共振子38を形成する前に、SAW共振片40の導通検査などを行い、不良のSAW共振片40を選別することで、付着物61が付いていたSAW共振片40は、ハウジング39に装着されないようにしてもよい。
【0079】
以上説明した、第1の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)図9に示したウェハ51a上に形成されたSAWパターン52の中で、IDT44上に付着物61があるSAWパターン52a,52b,52c,52dにおいては、それぞれ電極44aと電極44bとを短絡する導電片71,72,73が形成されている。前述したように、付着物61がIDT44上に在ることで、SAW共振片40は不良品ではないが、電極44aと電極44bとが短絡されて不良品となる可能性がある。SAWパターン52a,52b,52c,52dにおいて、電極44aと電極44bとを短絡する導電片71,72,73を形成することで、SAWパターン52a,52b,52c,52dを確実に不良品にして、検査において不良品として検出され易くすることができる。これにより、不良品となる可能性のあるSAWパターン52a,52b,52c,52dから成るSAW共振片40が、良品として良品の中に混入することを抑制することができる。
【0080】
(2)図9に示したSAWパターン52aでは、ステップS12で得られた画像データを記憶しておき、付着物の位置と異なる位置に導電性材料の液滴を吐出することで、付着物61に重ならない位置に、導電片71が形成されている。付着物61に重ならない位置に、導電片71が形成されることで、導電片71が付着物61の上に形成されて、導電片71と電極44a,44bとが付着物61によって絶縁され、電極44aと電極44bとを短絡することができない可能性を低減することができる。また、導電片71が付着物61の上に形成されないことから、導電片71の大きさは、電極44aと電極44bとを短絡することができる最低限の大きさでよい。
【0081】
(3)図9に示したSAWパターン52bでは、3個所に導電片71が形成されている。導電片71が付着物61の上に形成されると、導電片71と電極44a,44bとが付着物61によって絶縁され、電極44aと電極44bとを短絡することができない可能性が高い。しかし、3個所の導電片71の全てが付着物61の上に形成され、短絡できない可能性は極めて低い。3個所に導電片71を形成することで、目的とする電極44aと電極44bとの短絡を実現できる確率を高くして、より確実に、電極44aと電極44bとを短絡させることができる。
【0082】
(4)図9に示したSAWパターン52cでは、線状の導電片72が形成されている。線状に延びる導電片72は複数の部分で、電極44aと電極44bとに接触しており、線状の導電片72の全てが付着物61の上に形成され、短絡できない可能性は極めて低い。線状に延びる導電片72を形成することで、目的とする電極44aと電極44bとの短絡を実現できる確率を高くして、より確実に、電極44aと電極44bとを短絡させることができる。
【0083】
(5)図9に示したSAWパターン52dでは、IDT44の略全面を覆う導電片73が形成されている。付着物61がIDT44の全面を覆うようなものである可能性は極めて小さいことから、IDT44の略全面を覆う導電片73を形成することで、目的とする電極44aと電極44bとの短絡を実現できる確率を高くして、より確実に、電極44aと電極44bとを短絡させることができる。
【0084】
(6)不良品となる可能性のあるSAWパターン52a,52b,52c,52dから成るSAW共振片40が、良品として良品の中に混入することを抑制することができることから、良品のSAW共振片40の信頼性を高くすることができ、より信頼性の高いSAW共振片40を実現することができる。
【0085】
(7)信頼性の高いSAW共振片40を備えることで、信頼性の高いSAW共振子38を実現することができる。
【0086】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る弾性表面波デバイスの製造方法、及び吐出装置、並びに弾性表面波デバイス、及び弾性表面波発振装置の第2の実施形態について説明する。本実施形態のSAW共振子を構成するSAW共振片は、第1の実施形態におけるSAW共振片と、基本的に同一である。本実施形態で使用する液滴吐出方法は、第1の実施形態における液滴吐出方法と、基本的に同一である。第1の実施形態とは異なる液滴吐出装置の構成、及び弾性表面波デバイスの製造方法の液滴吐出装置に関る工程について説明する。
【0087】
図10は、液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図である。本例の液滴吐出装置100は、第1の実施形態で説明した液滴吐出装置IJと基本的に同一の機能を有する構成要素からなる。液滴吐出装置IJと同様の機能を有するものは同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。液滴吐出装置100が、吐出装置に相当する。
【0088】
液滴吐出装置100は、2つのヘッドユニット3a,3bを備えている。ヘッドユニット3a,3bの構成、駆動方法、及び液滴吐出装置100への取付構造は、第1の実施形態で説明したヘッドユニット3と基本的に同一である。ヘッドユニット3aが取り付けられたスライダー16dと、ヘッドユニット3bが取り付けられたスライダー16eとは、ガイドレール16c上でX方向に並んでおり、ガイドレール16cに沿ってX方向にそれぞれが移動可能に支持されている。ヘッドユニット3aが接続される液体供給装置(図示省略)には、陽極酸化レジスト材料が充填されており、ヘッドユニット3aは、陽極酸化レジスト材料の液滴を吐出する。ヘッドユニット3bが接続される液体供給装置(図示省略)には、導電性材料が充填されており、ヘッドユニット3bは、導電性材料の液滴を吐出する。ヘッドユニット3aとヘッドユニット3bとは、制御装置102の制御のもとで、選択的に用いられる。ヘッドユニット3aを構成する液滴吐出ヘッド2が、第1の吐出ヘッドに相当し、ヘッドユニット3bを構成する液滴吐出ヘッド2が、第2の吐出ヘッドに相当する。
【0089】
スライダー16eには、CCDカメラ101が、取付けられている。スライダー16eを、ガイドレール16cに沿ってX方向に移動することで、CCDカメラ101を、基板ステージ22に対向する位置に移動することができ、その位置で、基板ステージ22上のウェハ51などを撮影することができる。CCDカメラ101で取得した画像は、制御装置102に送られ、画像処理がなされる。CCDカメラ101と制御装置102とが、検出装置に相当する。
【0090】
次に、液滴吐出装置100を用いて、SAW共振片40を製造する工程を説明する。図11は、SAW共振片の製造工程の一例を示すフローチャートである。図11のステップS21からステップS28までの工程は、第1の実施形態において、図8に基づいて説明したステップS1からステップS8までの工程と同様である。
【0091】
ステップS28の次に、ステップS29では、SAWパターン52が形成されたウェハ51(図7参照)を、液滴吐出装置100の基板ステージ22にセットする。
【0092】
次に、ステップS30では、液滴吐出装置100のヘッドユニット3aを用いて、液状の陽極酸化レジスト材料を、SAWパターン52のボンディングランド45a,45bを覆う領域47a,47b(図5参照)に吐出する。第1の実施形態で説明したように、液滴から分離した副液滴や、突発的に飛行経路が変わった液滴や、吐出ノズル4の縁などに付着した液体が脱落して落下したものなどが、IDT44(図5参照)上に着弾する可能性がある。
【0093】
次に、ステップS31では、陽極酸化レジスト材料を乾燥させて、ボンディングランド45a,45bを覆う陽極酸化レジスト膜54(図9参照)を形成する。陽極酸化レジスト材料の乾燥時間が速く、次の工程までに次の工程に支障のない程度に乾燥し、陽極酸化処理工程までに充分に乾燥が進行して、レジスト効果のある膜が形成できる場合には、この工程を省略してもよい。ステップS30の工程とステップS31の工程とが、レジスト膜形成工程に相当する。
【0094】
次に、ステップS32では、IDT44上の付着物の有無を調べる付着物検査を実施する。付着物検査は、CCDカメラ101を用いて、IDT44を含む画像データを取得し、取得した画像データを制御装置102で画像処理することで、実施する。スライダー16eを、ガイドレール16cに沿ってX方向に移動し、CCDカメラ101を、基板ステージ22にセットされたウェハ51に対向させ、CCDカメラ101でウェハ51を撮影して、IDT44を含む画像データを取得する。取得した画像データを、制御装置102に送り、画像処理して、IDT44の基準画像と比較することで、IDT44上の付着物の有無を検出する。
【0095】
次に、ステップS33では、ステップS32における検出結果に基づいて、IDT44上に付着物があるか否かを判定する。付着物が認められた(ステップS33でYES)場合は、ステップS34に進む。付着物が認めらない(ステップS33でNO)場合は、ステップS35に進む。ステップS32の工程とステップS33の工程とが、検出工程に相当する。
【0096】
ステップS33の次に、ステップS34では、ヘッドユニット3bを用いて付着物が認められたIDT44に向けて導電性材料を吐出し、IDT44の電極44aと電極44bとを短絡する導電片を形成する。導電片は、第1の実施形態で図9に基づいて説明したように、様々な形状のものを形成することができる。ステップS34の工程が、塗布工程に相当する。
【0097】
ステップS33又はステップS34の次に、ステップS35では、陽極酸化レジスト膜が形成されたウェハ51を、液滴吐出装置100の基板ステージ22から取り外す。
【0098】
次に、ステップS36では、陽極酸化処理を実施して、IDT44の表面に絶縁膜としての酸化膜を形成する。ステップS36の工程が、絶縁膜形成工程に相当する。
【0099】
次に、ステップS37では、ボンディングランド45a,45bを覆う領域47a,47bに形成されている陽極酸化レジスト膜を剥離する。次に、ステップS38では、ウェハ51をチップの形に切断して、SAW共振片40を形成する。ステップS38を実行して、SAW共振片40の製造工程を終了する。第1の実施形態で説明したように、ハウジング39にSAW共振片40(図5参照)を封入し、接着剤41で接着し、ボンディングワイヤ42で導通させて、SAW共振子38が形成される(図6参照)。
【0100】
以上説明した、第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えて以下の効果が得られる。
(1)液滴吐出装置100は、陽極酸化レジスト材料の液滴を吐出するヘッドユニット3aと、導電性材料の液滴を吐出するヘッドユニット3bと、ウェハ51の画像を取得可能なCCDカメラ101と、画像処理可能な制御装置102とを備える。これにより、ウェハ51を液滴吐出装置100に1回セットして、外すことなく、陽極酸化レジスト膜材料の吐出と、付着物検査と、導電片形成とを実施することができ、これらの工程を効率良く実施することができる。ウェハ51上の特定の範囲を処理する処理装置に、ウェハ51をセットする場合には、処理装置に対する被処理範囲の位置を明確にすることが必要であり、処理装置に定められた基準軸に合わせてウェハ51の位置及び方向を調整する必要がある。ウェハ51を、液滴吐出装置100に1回セットして複数の工程を実施することで、位置及び方向の調整を省略でき、工程を効率良く実施することができる。
【0101】
(2)また、ウェハ51を液滴吐出装置100に1回セットして、外すことなく、陽極酸化レジスト膜材料の吐出と、付着物検査と、導電片形成とを実施することができることから、これらの工程の間はウェハの取付け状態は一定であり、吐出されて着弾した陽極酸化レジスト膜材料が乾燥前に移動したりすることがない。従って、陽極酸化レジスト膜材料の乾燥状態を考慮することなく、付着物検査と、導電片形成とを実施することができ、乾燥工程を省略できる可能性が高くなる。
【0102】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る電子機器について説明する。本実施形態の電子機器は、第1の実施形態又は第2の実施形態で説明したSAW共振子を備えた電子機器である。本実施形態の電子機器の具体例について説明する。
【0103】
図12(a)は、電子機器の一例である携帯電話の一例を示した斜視図である。携帯電話600は、液晶表示部601を備えている。また、携帯電話600には、回路基板が内蔵されており、回路基板には、通信回路の構成部品として、第1の実施形態で説明したSAW共振子38が実装されている。
【0104】
図12(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図12(b)において、携帯型情報処理装置700は、情報処理装置筐体703を有し、キーボードなどの入力部701と液晶表示部702とを備えている。また、情報処理装置筐体703には、回路基板が内蔵されており、回路基板には、タイマ回路の構成部品として第1の実施形態で説明したSAW共振子38が実装されている。
【0105】
図12(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。腕時計型電子機器800は、液晶表示部801を備えている。また、腕時計型電子機器800には、回路基板が内蔵されており、回路基板には、タイマ回路の構成部品として、第1の実施形態で説明したSAW共振子38が実装されている。
【0106】
第3の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)信頼性の高いSAW共振片40を備える信頼性の高いSAW共振子38を備えるため、信頼性の高い携帯電話600や、携帯型情報処理装置700や、腕時計型電子機器800を提供することができる。
【0107】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態の例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。以下のように実施することもできる。
【0108】
(変形例1)前記実施形態においては、IDT44上に導電片71を形成する位置は、付着物61の検出画像から付着物61の位置を検出することで、付着物61の位置とは異なる位置を選んでいたが、予め定めておいてもよい。予め定めた位置に配置しても、付着物61によって導電片71と電極44a,44bとが絶縁されないようにするためには、導電片71を大きくしたり、導電片72のように形状を変えたりする処置をとる。
【0109】
(変形例2)前記実施形態においては、形状又は配置が異なる4種類の導電片を例示したが、導電片の形状又は配置は例示した形状又は配置に限らない。電極44aと電極44bとを短絡できる形状又は配置であればどのような形状又は配置でもよい。
【0110】
(変形例3)前記第2の実施形態においては、2つのヘッドユニット3a,3bを備えた液滴吐出装置100を用いて、陽極酸化レジスト膜の形成と導電片の形成とを実施していたが、2つの工程を実施するのに用いる液滴吐出装置が、2つのヘッドユニットを備えることは必須ではない。1つのヘッドユニットを構成する複数の液滴吐出ヘッドを、陽極酸化レジスト膜の形成用の液滴吐出ヘッドと導電片の形成用の液滴吐出ヘッドとに分けて使用することでも、1台の液滴吐出装置で、2つの工程を実施することができる。この場合、陽極酸化レジスト膜の形成用の液滴吐出ヘッドが、第1の吐出ヘッドに相当し、導電片の形成用の液滴吐出ヘッドが、第2の吐出ヘッドに相当する。
【0111】
(変形例4)前記実施形態においては、導電片の形成を液滴吐出装置を用いて実施していたが、液滴吐出法を用いることは必須ではない、ディスペンサを用いて導電性材料を注入する方法や、転写印刷法を用いる方法など、他にも様々な方法を用いて実施することができる。
【0112】
(変形例5)前記実施形態では、液滴吐出ヘッド2は、それぞれ180個の吐出ノズル4からなる吐出ノズル列を2列備え、360個の吐出ノズル4を有していたが、液滴吐出ヘッドの有する吐出ノズルは、360個に限らず何個でもよい。また、吐出ノズル列も2列に限らない。
【0113】
(変形例6)前記実施形態では、液滴吐出ヘッド2における吐出ノズル4のピッチ間隔は140μmであったが、吐出ノズル4のピッチ間隔は140μmに限らず、液滴吐出対象などに対応して、適切な吐出ノズルピッチ間隔の液滴吐出ヘッドを選ぶことができる。
【0114】
(変形例7)前記実施形態では、IDT44を形成する1組の電極44a,44bの両方の電極に陽極酸化膜を形成していたが、IDTを形成する1組の電極の両方の電極に陽極酸化膜を形成することは必須ではない。一方の電極に陽極酸化膜を形成することでも、1組の電極間の短絡を抑制することができる。
【0115】
(変形例8)前記実施形態では、SAW共振片40とリード49とは、ボンディングワイヤ42を介して電気的に接続されていたが、接続方法は、ボンディングワイヤを介する接続に限らない。SAW共振片の接続端子とリードとを、半田や導電性接着剤を用いて直接固定してSAW共振片を支持すると共に、SAW共振片の接続端子とリードとを電気的に接続する方法でもよい。
【0116】
(変形例9)前記実施形態では、CCDカメラ101を備える液滴吐出装置100は、陽極酸化レジスト材料を吐出するヘッドユニット3aと、導電性材料を吐出するヘッドユニット3bとを備えていたが、CCDカメラ101を備えると共に、陽極酸化レジスト材料を吐出する液滴吐出ヘッドと、導電性材料を吐出する液滴吐出ヘッドとの両方を備えることは必須ではない。1種類の液滴を吐出する液滴吐出装置が、CCDカメラ101を更に備える構成であってもよい。液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置が、CCDカメラ101のような撮像装置を備えることで、陽極酸化レジスト膜形成工程と付着物検査工程と、又は付着物検査工程と導電性材料を塗布する工程と、を1台の液滴吐出装置を使用するだけで実施することができる。
【0117】
上記した実施形態および変形例から把握される技術的思想を以下に記載する。
(技術的思想1) 液状材料を吐出する吐出ヘッドを備え、当該吐出ヘッドを、弾性表面波デバイスパターンが形成されたウェハに対向させ、前記弾性表面波デバイスパターン上の膜形成領域に向けて前記液状材料を吐出することで、前記ウェハ上に前記液状材料から成り、所定の平面形状を有する膜を形成する吐出装置であって、前記弾性表面波デバイスを構成する交叉指電極上の付着物の有無を検出する検出装置を更に備え、前記弾性表面波デバイスパターン上の膜形成領域に向けて前記液状材料を吐出した後、前記検出装置によって、前記交叉指電極上の前記付着物の有無を検出することを特徴とする吐出装置。
【0118】
この吐出装置によれば、膜形成領域に向けて液状材料を吐出して膜を形成する工程と付着物検査工程とを、1台の吐出装置で連続して実施することが可能である。従って、各工程毎にウェハを着脱することが不要であり、吐出装置に対してウェハを一回位置決めすれば2つの工程を実施することが可能で、各工程においてそれぞれ位置決めを実施する場合に比べて効率良く2つの工程を実施することができる。
【0119】
(技術的思想2) 液状の導電性材料を吐出する吐出ヘッドを備え、当該吐出ヘッドを、弾性表面波デバイスパターンが形成されたウェハに対向させ、前記弾性表面波デバイスパターン上の膜形成領域に向けて前記液状導電性材料を吐出することで、前記ウェハ上に前記導電性材料から成る膜パターンを形成する吐出装置であって、前記弾性表面波デバイスを構成する交叉指電極上の付着物の有無を検出する検出装置を更に備え、前記検出装置によって、前記交叉指電極上に前記付着物が検出された場合には、前記吐出ヘッドから前記液状導電性材料を前記交叉指電極に向けて吐出し、前記交叉指電極上に着弾した前記導電性材料によって前記交叉指電極を構成する2個の電極間を電気的に結合することを特徴とする吐出装置。
【0120】
この吐出装置によれば、付着物検査工程と、付着物検査工程の検査結果によって交叉指電極を構成する2個の電極間を電気的に結合するように導電性材料を交叉指電極に向けて吐出する工程とを、1台の吐出装置で連続して実施することが可能である。従って、各工程毎にウェハを着脱することが不要であり、吐出装置に対してウェハを一回位置決めすれば2つの工程を実施することが可能で、各工程においてそれぞれ位置決めを実施する場合に比べて効率良く2つの工程を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】第1の実施形態における液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】(a)ヘッドユニットの平面図。(b)液滴吐出ヘッドの平面図。
【図3】(a)液滴吐出ヘッドの構造を示す斜視図。(b)液滴吐出ヘッドの吐出ノズル部の詳細構造を示す断面図。
【図4】ピエゾ素子に与える駆動信号の例と、駆動信号に対応する吐出ノズル内の液状材料の状態を示す模式図。
【図5】SAW共振片の一例を示す平面図。
【図6】SAW共振子の概要を示す断面図。
【図7】SAWパターンが形成されたウェハの平面図。
【図8】SAW共振片の製造工程の一例を示すフローチャート。
【図9】IDT上に導電片が形成されたウェハの模式図。
【図10】第2の実施形態における液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図。
【図11】SAW共振片の製造工程の一例を示すフローチャート。
【図12】(a)電子機器の一例である携帯電話の一例を示す斜視図。(b)ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示す斜視図。(c)腕時計型電子機器の一例を示す斜視図。
【図13】液滴が分離する過程を示す模式図。
【図14】絶縁層が形成されていない導通領域が形成される過程を示す模式図。
【符号の説明】
【0122】
2…吐出ヘッドとしての液滴吐出ヘッド、2P…液滴吐出面、3,3a,3b…ヘッドユニット、4…吐出ノズル、6…吐出ノズル列、23…制御装置、32c…ピエゾ素子、33…振動板、34…ノズルプレート、38…弾性表面波発振装置としてのSAW共振子、39…ハウジング、40…弾性表面波デバイスとしてのSAW共振片、44…IDT(交叉指電極)、44a,44b…電極、45a,45b…ボンディングランド、46a,46b…反射器、47a,47b…塗布領域としての領域、51,51a…ウェハ、52,52a,52b,52c,52d…SAWパターン、54,54a,54b…陽極酸化レジスト膜、61…付着物、71,72,73…導電片、101…検出装置を構成するCCDカメラ、102…検出装置を構成する制御装置、600…電子機器としての携帯電話、700…電子機器としての携帯型情報処理装置、703…情報処理装置筐体、800…腕時計型電子機器、100,IJ…吐出装置としての液滴吐出装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性表面波デバイスを構成する交叉指電極上の付着物の有無を検出する検出工程と、
前記付着物が検出された場合には、前記交叉指電極を構成する2個の電極に導電性材料を塗布し、当該2個の電極間を電気的に結合する塗布工程と、を有することを特徴とする弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記交叉指電極上に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程を更に有し、
前記塗布工程は、前記絶縁膜形成工程より前に実行することを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記弾性表面波デバイスを形成するウェハ上の、前記絶縁膜を形成しない部分を覆うレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程を更に有し、
前記検出工程は、当該レジスト膜形成工程を実行した後に実行することを特徴とする、請求項1又は2に記載の弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記付着物が、前記絶縁膜を形成しない部分を覆うレジスト膜を形成するレジスト材料であることを特徴とする、請求項3に記載の弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記導電性材料を、前記付着物が付着していない位置に塗布することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記導電性材料を、前記2個の電極間を電気的に結合可能な複数の位置に塗布することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項7】
液状材料を吐出する第1の吐出ヘッドを備え、当該第1の吐出ヘッドを、弾性表面波デバイスパターンが形成されたウェハに対向させ、前記弾性表面波デバイスパターン上の膜形成領域に向けて前記液状材料を吐出することで、前記ウェハ上に前記液状材料から成り、所定の平面形状を有する膜を形成する吐出装置であって、
導電性材料を吐出する第2の吐出ヘッドと、
前記弾性表面波デバイスを構成する交叉指電極上の付着物の有無を検出する検出装置と、を備えることを特徴とする吐出装置。
【請求項8】
前記第1の吐出ヘッドから吐出する前記液状材料は、前記交叉指電極上に絶縁膜を形成する前に、前記ウェハ上の当該絶縁膜を形成しない部分を覆うためのレジスト膜の材料であることを特徴とする、請求項7に記載の吐出装置。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の弾性表面波デバイスの製造方法、又は請求項7または8に記載の吐出装置を用いて製造したことを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項10】
請求項9に記載の弾性表面波デバイスを備えることを特徴とする弾性表面波発振装置。
【請求項11】
請求項10に記載の弾性表面波発振装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−245720(P2006−245720A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55431(P2005−55431)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】