弾性表面波素子、電子デバイス及び電子機器
【課題】弾性表面波素子における挿入損失及び耐電力を向上させ、フィルタ特性に優れた高性能かつ高品質の弾性表面波素子、電子デバイス及び電子機器を提供する。
【解決手段】本発明の弾性表面波素子は、圧電材料及び対をなす櫛歯型電極10a,10b及び櫛歯型電極11a,11bからなるIDT10,11を有する単位フィルタ1−A,1−Bを、同一の圧電基板26上に形成して、複数並列接続した弾性表面波素子1であって、櫛歯型電極10a,10b,11a,11bの電極指2a,2bの長さは全て等しく、単位フィルタ1−A,1−Bの弾性表面波の波長をλ(但し、λ=V/f V:弾性表面波速度(m/s)、f:動作周波数(GHz))としたとき、IDT10,11の電極膜厚が10〜400nmの範囲内、かつ電極指2a,2bの交差長が5〜50λの範囲内で構成されている。
【解決手段】本発明の弾性表面波素子は、圧電材料及び対をなす櫛歯型電極10a,10b及び櫛歯型電極11a,11bからなるIDT10,11を有する単位フィルタ1−A,1−Bを、同一の圧電基板26上に形成して、複数並列接続した弾性表面波素子1であって、櫛歯型電極10a,10b,11a,11bの電極指2a,2bの長さは全て等しく、単位フィルタ1−A,1−Bの弾性表面波の波長をλ(但し、λ=V/f V:弾性表面波速度(m/s)、f:動作周波数(GHz))としたとき、IDT10,11の電極膜厚が10〜400nmの範囲内、かつ電極指2a,2bの交差長が5〜50λの範囲内で構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波素子、電子デバイス及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
狭帯域の弾性表面波(SAW)フィルタは、一般に、発振器に組み込まれたりなどして高精度なタイミングデバイスとして広く使われている。発振器においては、Lessonの式(式1)、(式2)に示される位相ノイズL(f)と発振器に印可されるパワーPsの関係より、Psを大きくすることでL(f)を小さくすることが可能となる。これにより高精度な発振器の提供が可能となり、通信システムにおけるビットエラーの改善に役立つ。
【0003】
【数1】
【0004】
【数2】
【0005】
しかしながらPsを大きくすると、組み込まれているSAWフィルタを通過するパワーが大きくなり、必然的にSAWフィルタの電極指で発生するジュール熱により発熱が増大する。SAWフィルタは、弾性表面波を発生させるデバイスのため表面近傍に存在する電極指に応力変動が発生し、ストレスマイグレーションにより電極粒子が移動して電極の破損を生じる。電極指で発生したジュール熱は電極粒子の移動を加速するため印可されるパワーが大きくなると更に耐電力特性は劣化する。
また、SAWフィルタにて消費される電力は、挿入損失が大きいほど増加するため、挿入損失を小さくすることで電極指で発生するジュール熱を低減する必要がある。
【0006】
そこで、800MHz帯のSAWフィルタにおいて、複数個のSAWフィルタを直列接続させて各SAW素子に印可されるパワーを分配するようにしたSAWデバイスが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、直列接続した複数のSAWフィルタをさらに並列に接続した構造も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
また、同一のIDT(Inter-Digital Transducer)における電極指同士の交差長、IDT対数、IDTピッチ、IDT間距離、反射器ピッチを有するSAWフィルタを多段並列する構造も開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平5−14118号公報
【特許文献2】特開平5−3417号公報
【特許文献3】特開平8−181566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2によれば、入力電力が大きい場合でもそれに合う数のSAWフィルタを直列に接続することで、耐電力の向上を図ることができる。しかしながら、特許文献1,2は、GHz帯で動作するSAWデバイスは電極膜厚が薄くなるため、直列接続では、SAWフィルタの電極指の交差長が接続したSAWフィルタの数だけ長くなる。すると、電極抵抗が増大して挿入損失が悪化するという問題がある。また、特許文献2では、SAW素子の数が多く、素子の小型化が難しい。
【0009】
特許文献3においては、開口長の長さによって、SAWフィルタを多段接続しても効果が得られない場合がある。また、構成する単体フィルタの(電極指の)交差長が短すぎる場合には、弾性表面波が回折現象を起こしてしまい、適正なフィルタ特性が得られないことがある。一方、単体フィルタの交差長が長過ぎる場合には、やはり電極抵抗により挿入損失が悪化するという問題がある。
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、弾性表面波素子における挿入損失及び耐電力を向上させ、フィルタ特性に優れた高性能かつ高品質の弾性表面波素子、電子デバイス及び電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の弾性表面波素子は、上記課題を解決するために、圧電材料及び少なくとも一対の櫛歯型電極からなるIDTを有する単位フィルタを、同一基板上に形成して、複数並列接続した弾性表面波素子であって、前記櫛歯型電極の電極指の長さは全て等しく、前記単位フィルタの弾性表面波の波長をλ(但し、λ=V/f V:弾性表面波速度(m/s)、f:動作周波数(GHz))としたとき、前記櫛歯型電極の電極膜厚が10〜400nmの範囲内、かつ対をなす前記櫛歯型電極の交差長が5〜50λの範囲内であることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、GHz帯の弾性表面波素子において、電極指の交差長を長くすることなく電気抵抗損の増大を緩和することができるとともに挿入損失の劣化を緩和することが可能となる。さらに、入力されたパワー(電力)を各共振子に分配できるため1つのフィルタに印加されるパワーが低減されて、各電極指において発生するジュール熱を抑えることができる。これにより、入力される電力が高くても、マイグレーションによる櫛歯型電極の劣化が防止されて耐電力を向上させることが可能となる。よって、信頼性に優れた弾性表面波素子が得られる。
また、詳しくは後述の詳細な説明に記載するが、本発明者は、電極膜厚が400nm以下であれば単位フィルタを並列接続することで電気抵抗損の増大が緩和されて挿入損失の劣化が緩和されることを見出している。一方、電極膜厚が10nmより薄くなると、その薄膜形成方法によっては、連続膜が形成できなくなる虞があることも分かった。よって、電極膜厚を10〜400nmの範囲内とすることにより、上記効果を確実に得ることが可能である。さらに、交差長を5〜50λの範囲内とすることにより、櫛歯型電極により励振された弾性表面波の回折現象を回避することができ、フィルタ特性の向上が図れる。
さらに、本発明では単位フィルタを同一の基板上に複数形成しており、これによって弾性表面波素子全体の小型化を図ることができる。
【0013】
本発明の弾性表面波素子は、上記課題を解決するために、圧電材料及び少なくとも一対の櫛歯型電極からなるIDTを有する単位フィルタを、個別基板上に形成して、複数並列接続した弾性表面波素子であって、前記櫛歯型電極の電極指の長さは全て等しく、前記単位フィルタの弾性表面波の波長をλ(但し、λ=V/f V:弾性表面波速度(m/s)、f:動作周波数(GHz))としたとき、前記櫛歯型電極の電極膜厚が10〜400nmの範囲内、かつ対をなす前記櫛歯型電極の交差長が5〜50λの範囲内であることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、GHz帯の弾性表面波素子において、電極指の交差長を長くすることなく電気抵抗損の増大を緩和することができるとともに挿入損失の劣化を緩和することが可能となる。さらに、入力されたパワー(電力)を各共振子に分配できるため1つのフィルタに印加されるパワーが低減されて、各電極指において発生するジュール熱を抑えることができる。これにより、入力される電力が高くても、マイグレーションによる櫛歯型電極の劣化が防止されて耐電力を向上させることが可能となる。よって、信頼性に優れた弾性表面波素子が得られる。
また、詳しくは後述の詳細な説明に記載するが、本発明者は、電極膜厚が400nm以下であれば単位フィルタを並列接続することで電気抵抗損の増大が緩和されて挿入損失の劣化が緩和されることを見出している。一方、電極膜厚が10nmより薄くなると、その薄膜形成方法によっては、連続膜が形成できなくなる虞があることも分かった。よって、電極膜厚を10〜400nmの範囲内とすることにより、上記効果を確実に得ることが可能である。
さらに、本発明では各単位フィルタを個別の基板に形成しており、これによって各段位フィルタにおける弾性表面波の相互干渉が防止され、フィルタ特性の劣化が防止される。
【0015】
また、電極膜厚が、30〜350nmの範囲内であることが好ましい。
本発明によれば、電気抵抗損の増大及び挿入損失の劣化をより効果的に防止することが可能となる。
【0016】
また、櫛歯型電極がアルミニウム−チタン合金であり、交差長が、5〜30λの範囲内であることが好ましい。
本発明によれば、弾性表面波の回折現象が防止され、適正なフィルタ特性を得ることが可能となる。
【0017】
また、櫛歯型電極がアルミニウム−マグネシウムであり、交差長が、5〜25λの範囲内であることが好ましい。
本発明によれば、弾性表面波の回折現象が防止され、適正なフィルタ特性を得ることが可能となる。
【0018】
また、動作周波数が、1GHz〜10GHzの範囲内であることが好ましい。
本発明によれば、弾性表面波の伝搬速度を高速化することによって弾性表面波素子の高周波化が図れ、しいては通信の高速化に対応することが可能となる。
【0019】
また、櫛歯型電極が、アルミニウム、またはアルミニウムを主成分とする合金からなることが好ましい。
本発明によれば、アルミニウム又はアルミニウムを主成分とする合金によって櫛歯型電極を安価に且つ簡単に形成することができる。
【0020】
また、櫛歯型電極が、銅、銀、金、チタン、マグネシウムまたはこれらを主成分とする合金からなることが好ましい。
本発明によれば、上記材料を用いて櫛歯型電極を構成することにより、弾性表面波の振動で発生するマイグレーションを抑制することが可能となる。
【0021】
また、圧電材料が、ダイヤモンド、水晶、ランガサイト、リン酸化ガリウム、シリコン、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、四ホウ酸リチウムのうちの少なくとも1種を主材料として構成されていることが好ましい。
本発明によれば、高い周波数精度及び周波数安定性が得られる。
【0022】
また、圧電材料が、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、チタン酸ジルコン酸塩のうちの少なくとも1種を主材料として構成されていることが好ましい。
本発明によれば、弾性表面波の伝搬媒体として好適に機能する。つまり、弾性表面波の高周波化が可能となるとともに、温度特性に優れたものとなる。
【0023】
また、単位フィルタがDMS(Double Mode SAW)型2ポート共振子であり、Q値が300以上であることが好ましい。
本発明によれば、高周波域の高安定発振器を構成することができる。
【0024】
本発明の電子デバイスは、上記弾性表面波素子を備えることを特徴とする。
本発明によれば、フィルタ特性に優れた高性能かつ高品質な電子デバイスを提供することができる。
【0025】
本発明の電子機器は、上記弾性表面波素子を備えることを特徴とする。
本発明によれば、フィルタ特性に優れた高性能かつ高品質な電子機器を提供することができる。
【0026】
本発明の電子機器は、上記電子デバイスを備えることを特徴とする。
本発明によれば、信頼性の高い弾性表面波素子を備えたことから、高信頼性の電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、隔部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
本発明に係る弾性表面波素子は、DMS(Double Mode SAW)型2Port共振子であって、2個の単位フィルタを並列に接続した並列接続弾性表面波フィルタを有する。ここで、各単位フィルタは、圧電基板、もしくは圧電膜を有する基板を有し、その基板面上に入力信号を弾性表面波に変換する入力用の櫛歯型電極と、変換された弾性表面波を電気信号に変換する出力用の櫛歯型電極とを備えてなる。
【0028】
[実施例1]
図1(a)は並列接続弾性表面波フィルタを備える弾性表面波素子の平面図であって、図1(b)は(a)のA−A’に沿う断面図である。図2は、本発明に係る弾性表面波素子の概略構成を示すブロック図である。
図1及び図2に示すように、弾性表面波素子100は、圧電基板26の表面に2つの単位フィルタ1−A,1−Bからなる並列接続弾性表面波フィルタ1が形成してある。圧電基板26は、例えばオイラー角(0、θ、ψ)で表される水晶基板からなる。該水晶基板を圧電基板26として用いることにより、電気機械結合係数の大きい弾性表面波が励振される。ここで、オイラー角(0、θ、ψ)の一般的な定義は次のようになっている。すなわち、デバイス座標系(X,Y,Z)をZ軸の周りにφだけ回転し、次にφ回転後の新しいY’軸の周りにデバイスをθだけ回転し、最後にθ回転の新しいZ’’軸の周りにψだけ回転するときの各角度のことを言う。具体的に、本実施例では、37°Yカット90°X伝搬水晶基板を用いている。
【0029】
第1の単位フィルタ1−A及び第2の単位フィルタ1−Bは、それぞれ、圧電基板26上に設けられる入力用のIDT10、出力用(受信用)のIDT11及び一対の反射器15,15を有して構成されている。そして、IDT10,11及び反射器15,15は、IDT10,11により圧電基板26の表面付近に励振される弾性表面波の伝搬方向(電極指2a,2bの延在方向に対して略直交する方向)が基板のX軸に対して90°、Y軸に対して37°となるように配置されている。
【0030】
IDT10は、Al−Tiからなる一対の櫛歯型電極10a、10bからなり、IDT11は、同じくAl−Tiからなる一対の櫛歯型電極11a、11bから構成されている。櫛歯型電極10a、10b,11a、11bは、複数の電極指2a,2bと、これら複数の電極指2a,2bの一端をそれぞれ接続する複数のバスパー2cとを有している。IDT10,11の電極膜厚や電極指2a,2bの線幅や間隔(ピッチ)等を調整することによって、弾性表面波の発振周波数の特性を所望のものに設定することができる。
【0031】
電極指2a,2bは、圧電基板26の一辺に沿って延在するとともに互いに平行してストライプ状に配列され、その配列方向に電極指2a,2bが交互に存在している。本実施形態では、各電極指2a,2bの長さは互いに等しい。また、電極指2a,2bのピッチは、フィルタリングする高周波の波長に対応しており、電極指2a,2bのピッチの2倍と同一の長さの波長を有する高周波が抽出されるようになっている。
【0032】
バスパー2cは、電極指2a,2bの延在方向両側に対向配置され、各電極指2a,2bの一端側をそれぞれ接続するように設けられている。このように、各バスパー2cによって、複数の電極指2a同士及び複数の電極指2b同士がそれぞれ接続されることで、櫛歯形状の第1の電極10a,11a及び第2の電極11a,11bが形成される。
【0033】
IDT10は、櫛歯型電極10a及び櫛歯型電極10bの電極指2a,2b同士、IDT11は、櫛歯型電極11a及び櫛歯型電極11bの電極指2a,2b同士をそれぞれ噛み合わせた状態となっている。噛み合った部分の寸法(配列方向において電極指2a,2b同士が交差している長さ)を交差長Wとすると、この交差長Wは、抽出する弾性表面波の波長をλとしたときに、5λ〜50λの範囲内の長さとなっている。また、IDT10,11の電極膜厚は、10〜400nmの範囲内が好ましい。比抵抗値は電極膜厚が薄くなると高まるため、電極膜厚に応じて交差長Wを設定する。
【0034】
各単位フィルタ1−A,1−Bにおける入力用の櫛歯型電極10aは、それぞれ圧電基板26上に設けられた共通入力端子20(図2参照)に接続され、出力用の櫛歯型電極11aは同じく圧電基板26上に設けられた共通出力端子22(図2参照)にそれぞれ接続されている。また、各フィルタ1−A,1−Bにおける櫛歯型電極10b同士及び櫛歯型電極11b同士はそれぞれ接続部Oを介して一体とされている。これら櫛歯型電極10a,10b,11a,11b及び接続端子20,22は、加工性及びコストの観点からAlまたはAlを主成分とする合金からなる電極膜で形成される。本実施例では、アルミニウム(Al)にチタン(Ti)を1%重量添加した合金膜から形成される。そして、各IDT10,11における櫛歯型電極10b、11bはそれぞれグランドに接続されている。
【0035】
そして、入力用のIDT10に交流電力(電気信号)が供給されると、この交流電力による電場によって圧電基板26にひずみが生じる。このとき、この電場を生じる電極が櫛歯形状であることにより圧電基板26に疎密が生じ、これにより弾性表面波が発生する。そして、発生した弾性表面波は出力用のIDT11に伝搬し、この弾性表面波のエネルギーは出力用のIDT11によって電気的エネルギーに変換及び出力される。
【0036】
圧電基板26上には、さらに一対の反射器15,15が設けられている。反射器15,15は、複数のIDT10,11で生成される表面波を反射するものであり、これらIDT10,11を挟むように配列方向の両側に1つずつ設けられている。これら反射器15,15は、AlやAlを主成分とする合金などの金属材料からなる複数の導体ストリップ3を有しており、導体ストリップ3の延在方向両端が接続された構成となっている。
本実施例では、各反射器15,15の導電ストリップ3が120本、IDT10,11の電極指2a,2bが80対となっている。なお、図1においては、便宜上、導電ストリップ3及び電極指2a,2bの数を少なく描いている。
【0037】
このような弾性表面波素子100の製造方法としては、まず、上記圧電基板26上に、アルミニウム(Al)にチタン(Ti)を1%重量添加した合金膜をDCマグネトロンスパッタ法にて、膜厚が350nmとなるように成膜する。そこへ、ポジレジストをスピン塗布法により塗布し、ステッパーにより、IDT10,11、反射器15,15、接続端子20,22のパターンを露光し、現像、ドライエッチングを行い、最後にマスク(レジスト)を剥離することで単位フィルタ1−A,1−B及び接続端子20,22が得られる。同時に、各単位フィルタ1−A,1−Bと接続端子20,22とを接続する接続配線(不図示)も同時に形成される。
【0038】
このように、第1の単位フィルタと第2の単位フィルタ1−Bとは、互いに近接して並列に形成され、それぞれ、交差長Wが互いに等しい一対のIDT10,11と一対の反射器15,15とを備える。ここで、IDT10,11のうち電極10aが入力信号端子、電極11aが出力信号端子、電極10b,11bがアース端子とされる。また、第1のフィルタ1−Aと第2の単位フィルタ1−Bとにおける入力信号端子10a,10a同士は、圧電基板26に信号を入力するための共通入力端子20に上記接続配線を介して接続され、第1の単位フィルタ1−Aと第2の単位フィルタ1−Bにおける出力信号端子11a,11a同士が、圧電基板26から信号を出力するための共通出力端子22に上記接続配線を介して接続される。このようにして、第1の単位フィルタ1−Aと第2の単位フィルタ1−Bとが並列に接続してなる並列接続弾性表面波フィルタ1が構成され、本実施例の弾性表面波素子100が得られる。
【0039】
(単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性)
次に、図3に示すような、1つの単位フィルタ(以下、単体弾性表面波フィルタと称する。)の挿入損失特性について述べる。
そして、ここでは、各IDT10,11の交差長Wがそれぞれ異なる(W=10λ,50λ,100λ、150λ)4つの単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性を、測定値と計算値とで比較検討する。また、弾性表面波の波長はSTW(Surface Transverse wave)を用いており、波長4μmで、周波数1.26GHzである。
【0040】
図4は、各単体弾性表面波フィルタの挿入損失(実測値)を示す図であって、(a)〜(d)は各単体弾性表面波フィルタ(W=10λ,50λ,100λ、150λ)の挿入損失(S21)特性図である。測定には、ネットワークアナライザを用い、各弾性表面波フィルタにおけるIDT10の第1の電極10aを入力信号端子、IDT11の第1の電極11aを出力信号端子、そして、各IDT10,11の第2の電極10b,11bをアース電極として測定した。
【0041】
図5は、各単体弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)を示す図であって、(a)〜(d)は各単体弾性表面波フィルタ(W=10λ,50λ,100λ、150λ)の挿入損失(S21)特性図である。計算には、IDT10,11の抵抗値を考慮していないSmithの等価回路モデルを用いた。なお、図4及び図5において、横軸は周波数[GHz]を示し、縦軸は挿入損失[dB]を示す。
【0042】
そして、1.26GHz近辺における挿入損失(実測値)と挿入損失(測定値)との比較を図6及び表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
ここで、単体弾性表面波フィルタの交差長Wが10λの場合には挿入損失差が0.3dB程度となっている。また、単体弾性表面波フィルタの交差長Wが50λの場合には挿入損失差が1.0dB程度となっている。しかし、交差長Wが長くなるに従って計算値と実測値との一致が見られなくなり、単体弾性表面波フィルタの交差長Wが100λの場合には挿入損失差が3.9dB、交差長Wが150λの場合には挿入損失差が5.8dBとなり、計算値より大幅に劣化している。
これにより、単体弾性表面波フィルタの交差長Wが50λ以下の場合において実測値と計算値との挿入損失差が1.0dB以下となり、実測値と計算値とが略一致することが分かった。
【0045】
(並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性)
次に、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性について述べる。
各単位フィルタ1−A,1−Bにおける櫛歯型電極10a、10b,11a、11bの交差長Wの長さをそれぞれ異ならせた複数の並列接続弾性表面波フィルタを用いて、それぞれの挿入損失特性を調べる。ここでは、交差長Wが、それぞれ5λ,25λ,50λ,75λとされた単体弾性表面波フィルタを各々2個並列に接続したものからなる4つの並列接続弾性表面波フィルタを上記製造方法により作製した。
図7(a)〜(d)に、ネットワークアナライザによって得た各並列接続弾性表面波フィルタ(単体弾性表面波フィルタの交差長W=5λ,25λ,50λ,75λ)の挿入損失(S21)特性を示す。
【0046】
次に、単体弾性表面波フィルタの挿入損失と並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性を比較する。
図8及び表2に、図5に示した単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性(計算値)と、図7に示した並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性(実測値)との比較を示す。なお、波長pλの単位フィルタをN個並列に接続した場合の電極指2a,2bの交差長WをN×pλとした。
【0047】
【表2】
【0048】
図8及び表2に示すように、交差長Wが10λ、50λでは、単体弾性表面波フィルタの挿入損失(実測値)と、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)との差は0.1dB、交差長Wが100λの場合は双方の挿入損失の差が0.9dBとなっている。
これにより、各単位フィルタにおける櫛歯型電極の交差長Wが50λ以下の場合において、単体弾性表面波フィルタの挿入損失(実測値)と、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)との差が1.0dB以下となり、上記単体弾性表面波フィルタ同士での比較同様、各構成の挿入損失が実測値と計算値とで略一致することが分かった。
【0049】
図9に、Al−Ti電極の電極膜厚[nm]と比抵抗値[μΩcm]との関係を示す。同図によると電極膜厚が薄いと比抵抗値が高くなっている。交差長Wが長くなるにつれて電極膜厚は薄くせざるを得ないことから、交差長Wを長くすると抵抗値が増大し(交差長Wを長くすると電極膜厚は薄くなる)、結果として図8及び表2に示すように電気抵抗損による挿入損失の劣化が生じる。しかしながら、単位フィルタを複数並列に接続することで電気抵抗損の増大が緩和され、それに伴い挿入損失の劣化が緩和されたことが分かる。図9では、電極膜厚が400nmまでは比抵抗が低下することを示しており、400nm以下であれば並列接続することで交差長を短くする効果が期待できる。電極膜厚の下限としては10nmであり、10nmより薄くなると薄膜形成方法によっては連続膜が形成できなることがある。
【0050】
(耐電力試験)
次に、耐電力試験を実施した。図10に、耐電力評価システム(室温下)を示す。
まず、ネットワークアナライザ50からの信号をアンプ51にて増幅し、弾性表面波フィルタに印加する。その後、アッテネータ52にて信号を減振させ、再度ネットワークアナライザ50に信号を取り組む。300秒間繰り返し通電を実施して通電前後の挿入損失の変動が0.5dB以内であれば投入電力に耐えたと解釈して、ネットワークアナライザ50からの信号強度を増加させ、同じ評価を繰り返した。
【0051】
表3に、単体弾性表面波フィルタと、並列接続弾性表面波フィルタとの耐電力特性の比較結果を示す。表3によれば、複数の単位フィルタを並列接続することで耐電力特性が向上することが確認できた。また、挿入損失が小さい方が耐電力特性が良好であることを確認できた。
【0052】
【表3】
【0053】
[実施例2]
図11は、実施例2における並列接続弾性表面波フィルタの概略構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図11(a),(b)に示すように、本実施例における並列接続弾性表面波フィルタ200は、例えばシリコンからなる矩形薄板の板材6aを主とする基板6を有する。基板6の主面には、下地層7としてダイヤモンド層が形成され、かつその上に例えばZnOからなる圧電膜8が積層されている。このダイヤモンド積層構造の基板を用いることにより、弾性表面波素子200は、水晶等の圧電基板の場合に比してSAW伝搬速度を高速度化でき、それにより高周波化を図ることができる。
【0054】
基板6は、シリコン以外の半導体材料や、パイレックス(登録商標)ガラス等のガラス材料、セラミックス材料、ポリイミド又はポリカーボネイト等の樹脂材料を用いることもできる。下地層7は、例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜等のように、従来公知の方法により合成される多結晶ダイヤモンドの薄膜で形成することができる。圧電膜8には、ZnO以外に、例えばAlN(窒化アルミニウム)、LiTaO3、LiNbO3、K4Nb6O17(ニオブ酸カリウム)等の様々な公知の圧電材料を用いることができる。
【0055】
基板6上には圧電膜8を介して、1対の櫛歯型電極10a、10bからなる入力用(送信用)のIDT10と、同じく1対の櫛歯型電極11a、11bからなる出力用(受信用)のIDT11と、一対の反射器15,15とをそれぞれ備える、2つの単位フィルタ2−A,2−Bが形成されている。そして、各単位フィルタ2−A,2−Bにおける入力用のIDT10の櫛歯型電極10aは、基板6上に形成された共通入力端子に接続され、かつ出力用の櫛歯型電極における櫛歯型電極11aは、基板6上に形成された共通出力端子にそれぞれ接続されている。これら櫛歯型電極10a、10b、11a、11b、反射器及び各接続端子は、加工性及びコストの観点からAl又はAlを主成分とする合金からなる電極膜で形成され、上記実施例と同様に、例えばフォトリソグラフィ技術を利用したドライエッチングにより所望のパターンに加工される。
なお、本実施例における反射器15,15の導電ストリップ3は20本、IDT10,11の電極指2a,2bが50対となっている。なお、図11においては、便宜上、導電ストリップ3及び電極指2a,2bの数を少なく描いている。
【0056】
また、基板6の最上層には、絶縁性保護膜9がIDT10,11及び反射器15,15を覆うようにして形成されている。絶縁性保護膜9でIDT10,11及び反射器15,15を被覆することにより、弾性表面波フィルタ2−A,2−Bの及び反射器15,15の表面にゴミ等の異物が付着して、隣接するIDT10,11(電極指2a,2b)間、導体ストリップ3間が電気的に短絡することを未然に防止できる。絶縁性保護膜9は、例えばSiO2をスパッタリング又は蒸着することにより、容易に所望の厚さに成膜される。絶縁性保護膜9には、SiO2以外に、例えばTa2O5のような酸化物、Si3N4、TiNのような窒化物等、様々な絶縁材料を用いることができる。特にSiO2膜を用いた場合、その下層側に形成される圧電膜8及びダイヤモンド層からなる下地層7の温度係数を打ち消すことができ、それにより優れた温度特性が得られる。
絶縁性保護膜9の膜厚は、特に限定されないが、質量の増大に伴う弾性表面波の発振周波数の低下を防止または抑制しつつ、充分な絶縁性が発揮される膜厚とする。
【0057】
(単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性)
次に、1つの単位フィルタのみを備える単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性を調べる。ここで、単位フィルタの各IDT10,11の交差長Wがそれぞれ10λ,25λ,40λ,60λと異なる4つの単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性を、測定値と計算値とで比較検討する。また、弾性表面波の波長はSTW(Surface Transverse wave)を用いており、波長2μmで、周波数2.45GHzである。
【0058】
図12(a)〜(d)に、ネットワークアナライザによって得た各単体弾性表面波フィルタ(W=10λ,25λ,40λ,60λ)の挿入損失(S21)特性を示す。
図13(a)〜(d)に、Smithの等価回路モデルによって得た各単体弾性表面波フィルタ(W=10λ,25λ,40λ,60λ)の挿入損失(S21)特性を示す。
【0059】
そして、実測結果及び測定結果における2.45GHz近辺での挿入損失の比較を図14及び表4に示す。
【0060】
【表4】
【0061】
図14及び表4に示すように、交差長Wが10λのときの実測値と計算値との差は0.5dB、交差長Wが25λのときでは差が1.7dBとなっている。さらに、交差長Wが40λになると実測値と計算値の差が3.6dBと差が大きくなり、挿入損失の劣化が大きいことが分かる。
また、図8に示す電極膜厚と比抵抗との関係より、30nmでは大きな比抵抗値であり、電気抵抗損失が甚大であることを示している。
【0062】
(挿入損失特性)
次に、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性について述べる。
単位フィルタ2−A,2−Bにおける櫛歯型電極10a,10b,11a,11bの交差長Wの長さをそれぞれ異ならせた複数の並列接続弾性表面波フィルタを用いて、それぞれの挿入損失特性を調べる。ここでは、交差長Wが、それぞれ5λ,12.5λ,20λ,30λとされた単体弾性表面波フィルタを各々2個並列に接続したものからなる4つの並列接続弾性表面波フィルタを上記製造方法により作製した。
図15(a)〜(d)に、ネットワークアナライザによって得た並列接続弾性表面波フィルタ(単体弾性表面波フィルタの交差長W=5λ,12.5λ,20λ,30λ)の挿入損失(S21)特性を示す。
【0063】
次に、単体弾性表面波フィルタの挿入損失と並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性を比較する。
図16及び表5に、単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性(計算値)と、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性(実測値)との比較を示す。なお、pλの単位フィルタをN個並列に接続した場合の電極指2a,2bの交差幅WをN×pλとした。
【0064】
【表5】
【0065】
図16及び表5に示すように、交差長Wが10λ及び25λのとき、単体弾性表面波フィルタの挿入損失(実測値)と、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)との差は0.1dB、交差長Wが40λのとき挿入損失の差が0.9dB、交差長Wが60λのとき挿入損失の差が3.6dBとなった。
これにより、各弾性表面波フィルタの交差長Wが40λ以下の場合において、単体弾性表面波フィルタの挿入損失(実測値)と、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)との差が1.0dB以下となり、上記弾性表面波フィルタ単体での比較同様、各構成の挿入損失が実測値と計算値とで略一致することが分かった。また、電極膜厚が30nmと薄く、比抵抗が高い場合にも、交差長Wを適当に選択すれば十分な効果が得られることを確認できた。
【0066】
(耐電力試験)
次に、図10に示した耐電力評価システムを用いて耐電力試験を実施した。評価方法は上述と同じである。単体弾性表面波フィルタと、並列接続弾性表面波フィルタとの比較結果を表6に示す。同表によれば、複数の単位フィルタを並列接続することで並列弾性表面波フィルタの耐電力特性が向上することを確認できた。また、挿入損失が小さい方が耐電力特性が良好であることを確認できた。
【0067】
【表6】
【0068】
[実施例3]
本実施例における並列接続弾性表面波フィルタは、上記実施例2と同様の材料を用いて構成されるが、圧電膜8、IDT10,11の電極膜厚及び絶縁性保護膜9の膜厚が、実施例2のそれよりも厚く形成されている点において異なる。
【0069】
本実施例における並列接続弾性表面波フィルタの製造方法としては、板厚400μmのシリコン基板上に、下地層7としてのダイヤモンド膜を、熱フィラメントCVD法を用いて20μmの膜厚で成膜する。その後、酸化亜鉛からなる圧電膜8を580nmの膜厚で成膜し、AlにTiを1%重量添加した合金膜をDCマグネトロンスパッタ法を用いて80nmの膜厚となるように成膜する。そこへ、ポジレジストをスピン塗布法により塗布し、ステッパーにより、各単位フィルタ2−A、2−BにおけるIDT10,11及び反射器15,15のパターンを露光し、現像、ドライエッチングを行い、最後にレジストを剥離する。そこに、酸化シリコンをRFマグネトロンスパッタ法にて680nmの膜厚で成膜する。そこに、電気信号のやり取りのために、フォトリソグラフィを用いて、端子部分に対応する部分に開口部を設ける。このようにして本実施例における並列弾性表面波フィルタが得られる。本実施例における各反射器15,15の導電ストリップ3は15本、IDT10,11の電極指2a,2bが40対となっている。
【0070】
(弾性表面波フィルタの挿入損失特性)
次に、1つの単位フィルタのみを備える単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性を調べる。ここでは、単位フィルタの各IDT10,11の交差長Wがそれぞれ異なる(W=10λ,30λ,50λ、70λ)4つの弾性表面波フィルタの挿入損失特性を、測定値と計算値とで比較検討する。また、弾性表面波の波長はSTW(Surface Transverse wave)を用いており、波長3.85μmで、周波数2.45GHzである。
【0071】
そして、実測結果及び測定結果における2.45GHz近辺での挿入損失の比較を図17及び表7に示す。
【0072】
【表7】
【0073】
図17及び表7に示すように、交差長Wが10λのときの実測値と計算値との差は0.2dB、交差長Wが30λのときでは差が1.2dBとなっている。さらに、交差長Wが50λになると実測値と計算値との挿入損失の差が2.4dB、交差長Wが70λになると挿入損失の差が3.4dB、と大きくなり挿入損失の劣化が大きいことが分かる。
【0074】
(並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性)
次に、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性について述べる。
単位フィルタ1−A,1−Bにおける櫛歯型電極10a、10b,11a、11bの交差長Wの長さをそれぞれ異ならせた複数の並列接続弾性表面波フィルタを用いて、それぞれの挿入損失特性を調べる。ここでは、交差長Wが、それぞれ5λ,15λ,25λ,35λとされた単体弾性表面波フィルタを各々2個並列に接続したものからなる4つの並列接続弾性表面波フィルタを上記製造方法により作製した。
そして、単体弾性表面波フィルタの挿入損失と並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性を比較する。
【0075】
図18及び表8に、図17に示した単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性(計算値)と、それを並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性(実測値)との比較を示す。なお、波長pλの単位フィルタをN個並列に接続した場合の電極指2a,2bの交差長WをN×pλとした。
【0076】
【表8】
【0077】
図18及び表8に示すように、交差長Wが10λ及び交差長Wが30λのとき、単体弾性表面波フィルタの挿入損失(実測値)と、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)との差は0.1dB、交差長Wが50λのとき挿入損失の差が1.0dB、交差長Wが70λで差が3.6dBとなった。
これにより、弾性表面波フィルタの交差長Wが50λ以下の場合において実測値と計算値における挿入損失差が1.0dB以下となり、上記単体での比較同様、各構成の挿入損失が実測値と計算値とが略一致することが分かった。また、図17に示したような単体弾性表面波フィルタの場合に比べて、単体弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)と、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性(実測値)との差が大幅に縮まった。
【0078】
以上、実施例1〜3の結果から、電極膜厚と、計算値と実測値における挿入損失特性が略一致する、並列接続弾性表面波フィルタを構成する単体弾性表面波フィルタの交差長Wの下限値と、の関係をグラフにすると図19の関係が得られる。
図19より、Al−Ti電極の比抵抗が大きくなる400nm以下の膜厚において、50λより交差長Wが小さければ弾性表面波フィルタを並列接続することによる効果が得られる。5λより交差長Wが小さくなると、各櫛歯型電極により励振された弾性表面波フィルタが回折現象を引き起こし、期待する特定方向以外の伝搬方向を持つために特性が劣化する。このため、回折現象を考慮すれば交差長Wが5〜50λの範囲内であれば所望の効果が得られる。特に、Al−Ti電極の場合には、並列接続弾性表面波フィルタを構成する単体弾性表面波フィルタの交差長Wが5〜30λの範囲内であることがより好ましい。
【0079】
このように、GHz帯の弾性表面波フィルタにおいて、複数の単位フィルタを並列に接続することにより、挿入損失の低減及び耐電力の向上を実現することができた。さらに、並列接続する単位フィルタの数を増やすことでより大きな効果が得られる。
【0080】
[実施例4]
上記実施例では櫛歯型電極をAl−Tiで構成したが、本実施例では櫛歯型電極をAl−Mgで構成した。Al−Mg電極の場合においても、電極膜厚が10〜400nmの範囲内、並列接続弾性表面波フィルタを構成する単体弾性表面波フィルタの交差長Wが5〜50λの範囲内で設定する。
本実施例の櫛歯型電極は、AlにMgを1%重量添加した合金からなる。図20に、Al−Mg電極の電極膜厚[Å]と比抵抗値[μΩcm]との関係を示す。同図によると電極膜厚が薄いと比抵抗値が高くなっており、上記図9に示すAl−Ti電極と同様に、交差長Wを長くすると抵抗値が増大し、電気抵抗損による挿入損失の劣化が生じる。
本実施例は、上記したようなAl−Mgで構成した櫛歯型電極を備える弾性表面波フィルタを2個並列に接続してなる弾性表面波フィルタである。
【0081】
図21に、単体弾性表面波フィルタの挿入損失と、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失との比較を示す。本実施例における弾性表面波フィルタは、4.3dBの低挿入損失特性を有する。このAl−Mg電極を用いた場合の電極膜厚と、計算値と実測値における挿入損失特性が略一致する交差長Wの下限値と、の関係をグラフにすると図22の関係が得られた。図22より、Al−Mg電極の比抵抗が大きくなる400nm以下(図20から推測可能)の膜厚において交差長Wが約50λより小さければ複数の単位フィルタを並列に接続することによる効果が得られる。Al−Ti電極のときと同様に、5λより交差長Wが小さくなると、各櫛歯型電極により励振された単位フィルタが回折現象を引き起こし、期待する特定方向以外の伝搬方向を持つために特性が劣化する。このため、回折現象を考慮すれば交差長Wが5〜50λの範囲内であれば所望の効果が得られる。特に、Al−Mg電極の場合には、並列接続弾性表面波フィルタを構成する単体弾性表面波フィルタの交差長Wが5〜25λの範囲内であることがより好ましい。
【0082】
以上述べた実施例では、並列接続される複数の単位フィルタを同一基板上に備える弾性表面波フィルタについて述べたが、他の実施例として、個別の基板に形成された複数の単位フィルタを並列接続することで本発明に係る並列接続弾性表面波フィルタを構成してもよい。この場合にも、挿入損失の低減及び耐電力の向上を実現することができる。さらに、個別の単位フィルタとすることで、各単位フィルタにおける弾性表面波の相互干渉が防止されフィルタ特性の劣化を抑制することが可能となる。また、並列フィルタ系全体の小型化を図る上では共通の基板に各単位フィルタを構成することが好ましい。
【0083】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもなく、上記各実施形態を組み合わせても良い。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0084】
例えば、上記のように構成した並列接続弾性表面波フィルタをパッケージ内に実装すれば、弾性表面波デバイス60を形成することができる。図23は弾性表面波デバイスの概略構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C’線における断面図である。有底箱状のパッケージ61の中央部に、接着剤を介して弾性表面波素子300を実装する。なお、パッケージ61の内部には電極54及び配線パターン(不図示)が形成され、パッケージ61の底面に形成した外部端子(不図示)との導通が確保されている。そこで、弾性表面波素子300の共通入力端子(不図示)及び共通出力端子(不図示)とパッケージ61の電極50とをワイヤーボンディング等で接続する。これにより、パッケージ61の底面の外部端子から、弾性表面波素子300の各IDT10,11に通電可能となる。なお、パッケージ61の上部にはリッド56を装着して、パッケージ61の内部を窒素雰囲気等に保持する。以上により、弾性表面波デバイス60が完成する。
【0085】
また、上記のような並列接続弾性表面波フィルタは、集積回路素子と組み合わせて発振回路を形成することにより、弾性表面波デバイスを形成することができる。例えば、図23に示す弾性表面波デバイスと集積回路素子(不図示)とを、配線パターンを形成したモジュール基板上に実装することにより、SAW発振器モジュールを形成することができる。また、図23に示すパッケージの内部に、並列接続弾性表面波フィルタとともに集積回路素子を実装することにより、SAW発振器パッケージを形成することができる。
なお、パッケージの内部に配置する弾性表面波素子は、複数の個別基板に単位フィルタをそれぞれ備えた構成であってもよく、この場合、フリップチップボンディングにより接続配線が形成されたパッケージ内に実装されることで、単位フィルタ同士が並列に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】(a)は並列接続弾性表面波フィルタの平面図,(b)は(a)のA−A’に沿う断面図。
【図2】実施例1に係る並列接続弾性表面波フィルタの概略構成を示すブロック図。
【図3】単体弾性表面波フィルタの平面図。
【図4】単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性図(実測値)。
【図5】単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性図(計算値)。
【図6】単体弾性表面波フィルタにおける挿入損失(実測値)と挿入損失(計算値)との比較図。
【図7】並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性図(実測値)。
【図8】単体弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)と並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失(実測値)との比較図。
【図9】電極膜厚と比抵抗との関係(Al−Ti電極)を示すグラフ。
【図10】耐電力評価システムを示す図。
【図11】(a)は実施例2に係る並列接続弾性表面波フィルタの概略構成を示す平面図,(b)は(a)のB−B’に沿う断面図。
【図12】実施例2に係る単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性図(実測値)。
【図13】実施例2に係る単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性図(計算値)。
【図14】実測値と計算値とにおける挿入損失の比較図。
【図15】実施例2に係る並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性図(実測値)。
【図16】単体弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)と並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失(実測値)との比較図。
【図17】実施例3に係る単体弾性表面波フィルタにおける挿入損失(実測値)と挿入損失(計算値)との比較図。
【図18】単体弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)と並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失(実測値)との比較図。
【図19】Al−Ti電極膜厚と交差長限界値との関係を示すグラフ。
【図20】電極膜厚と比抵抗との関係(Al−Mg電極)を示すグラフ。
【図21】実施例4に係る単体弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)と並列弾性表面波フィルタの挿入損失(実測値)との比較図。
【図22】Al−Mg電極膜厚と交差長限界値との関係を示すグラフ。
【図23】(a)は弾性表面波デバイスの概略構成を示す平面図、(b)は(a)のC−C’線断面図。
【符号の説明】
【0087】
100…弾性表面波素子、1…並列接続弾性表面波フィルタ、1−A…第1の単位フィルタ(実施例1)、1−B…第2の単位フィルタ(実施例1)、2−A…第1の単位フィルタ(実施例2,3)、2−B…第2の単位フィルタ(実施例2,3)、2a,2b…電極指、2c…バスパー、3…導体ストリップ、6…基板、6a…基材、7…下地層、8…圧電膜、9…絶縁性保護膜、10…櫛歯型電極(入力側)、11…櫛歯型電極(出力側)、10a…入力信号端子、11a…出力信号端子、10b,11b…アーク端子、15…反射器、20…共通入力端子、22…共通出力端子、26…圧電基板、40,41…櫛歯型電極(並列)、40a…電極(入力信号端子)、41a…電極(出力信号端子)、40b,41b…アース端子、50…ネットワークアナライザ、51…アンプ、52…アッテネータ、60…弾性表面波デバイス、61…パッケージ、64…電極、66…リッド、300…弾性表面波素子、W…交差長
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波素子、電子デバイス及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
狭帯域の弾性表面波(SAW)フィルタは、一般に、発振器に組み込まれたりなどして高精度なタイミングデバイスとして広く使われている。発振器においては、Lessonの式(式1)、(式2)に示される位相ノイズL(f)と発振器に印可されるパワーPsの関係より、Psを大きくすることでL(f)を小さくすることが可能となる。これにより高精度な発振器の提供が可能となり、通信システムにおけるビットエラーの改善に役立つ。
【0003】
【数1】
【0004】
【数2】
【0005】
しかしながらPsを大きくすると、組み込まれているSAWフィルタを通過するパワーが大きくなり、必然的にSAWフィルタの電極指で発生するジュール熱により発熱が増大する。SAWフィルタは、弾性表面波を発生させるデバイスのため表面近傍に存在する電極指に応力変動が発生し、ストレスマイグレーションにより電極粒子が移動して電極の破損を生じる。電極指で発生したジュール熱は電極粒子の移動を加速するため印可されるパワーが大きくなると更に耐電力特性は劣化する。
また、SAWフィルタにて消費される電力は、挿入損失が大きいほど増加するため、挿入損失を小さくすることで電極指で発生するジュール熱を低減する必要がある。
【0006】
そこで、800MHz帯のSAWフィルタにおいて、複数個のSAWフィルタを直列接続させて各SAW素子に印可されるパワーを分配するようにしたSAWデバイスが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、直列接続した複数のSAWフィルタをさらに並列に接続した構造も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
また、同一のIDT(Inter-Digital Transducer)における電極指同士の交差長、IDT対数、IDTピッチ、IDT間距離、反射器ピッチを有するSAWフィルタを多段並列する構造も開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平5−14118号公報
【特許文献2】特開平5−3417号公報
【特許文献3】特開平8−181566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2によれば、入力電力が大きい場合でもそれに合う数のSAWフィルタを直列に接続することで、耐電力の向上を図ることができる。しかしながら、特許文献1,2は、GHz帯で動作するSAWデバイスは電極膜厚が薄くなるため、直列接続では、SAWフィルタの電極指の交差長が接続したSAWフィルタの数だけ長くなる。すると、電極抵抗が増大して挿入損失が悪化するという問題がある。また、特許文献2では、SAW素子の数が多く、素子の小型化が難しい。
【0009】
特許文献3においては、開口長の長さによって、SAWフィルタを多段接続しても効果が得られない場合がある。また、構成する単体フィルタの(電極指の)交差長が短すぎる場合には、弾性表面波が回折現象を起こしてしまい、適正なフィルタ特性が得られないことがある。一方、単体フィルタの交差長が長過ぎる場合には、やはり電極抵抗により挿入損失が悪化するという問題がある。
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、弾性表面波素子における挿入損失及び耐電力を向上させ、フィルタ特性に優れた高性能かつ高品質の弾性表面波素子、電子デバイス及び電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の弾性表面波素子は、上記課題を解決するために、圧電材料及び少なくとも一対の櫛歯型電極からなるIDTを有する単位フィルタを、同一基板上に形成して、複数並列接続した弾性表面波素子であって、前記櫛歯型電極の電極指の長さは全て等しく、前記単位フィルタの弾性表面波の波長をλ(但し、λ=V/f V:弾性表面波速度(m/s)、f:動作周波数(GHz))としたとき、前記櫛歯型電極の電極膜厚が10〜400nmの範囲内、かつ対をなす前記櫛歯型電極の交差長が5〜50λの範囲内であることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、GHz帯の弾性表面波素子において、電極指の交差長を長くすることなく電気抵抗損の増大を緩和することができるとともに挿入損失の劣化を緩和することが可能となる。さらに、入力されたパワー(電力)を各共振子に分配できるため1つのフィルタに印加されるパワーが低減されて、各電極指において発生するジュール熱を抑えることができる。これにより、入力される電力が高くても、マイグレーションによる櫛歯型電極の劣化が防止されて耐電力を向上させることが可能となる。よって、信頼性に優れた弾性表面波素子が得られる。
また、詳しくは後述の詳細な説明に記載するが、本発明者は、電極膜厚が400nm以下であれば単位フィルタを並列接続することで電気抵抗損の増大が緩和されて挿入損失の劣化が緩和されることを見出している。一方、電極膜厚が10nmより薄くなると、その薄膜形成方法によっては、連続膜が形成できなくなる虞があることも分かった。よって、電極膜厚を10〜400nmの範囲内とすることにより、上記効果を確実に得ることが可能である。さらに、交差長を5〜50λの範囲内とすることにより、櫛歯型電極により励振された弾性表面波の回折現象を回避することができ、フィルタ特性の向上が図れる。
さらに、本発明では単位フィルタを同一の基板上に複数形成しており、これによって弾性表面波素子全体の小型化を図ることができる。
【0013】
本発明の弾性表面波素子は、上記課題を解決するために、圧電材料及び少なくとも一対の櫛歯型電極からなるIDTを有する単位フィルタを、個別基板上に形成して、複数並列接続した弾性表面波素子であって、前記櫛歯型電極の電極指の長さは全て等しく、前記単位フィルタの弾性表面波の波長をλ(但し、λ=V/f V:弾性表面波速度(m/s)、f:動作周波数(GHz))としたとき、前記櫛歯型電極の電極膜厚が10〜400nmの範囲内、かつ対をなす前記櫛歯型電極の交差長が5〜50λの範囲内であることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、GHz帯の弾性表面波素子において、電極指の交差長を長くすることなく電気抵抗損の増大を緩和することができるとともに挿入損失の劣化を緩和することが可能となる。さらに、入力されたパワー(電力)を各共振子に分配できるため1つのフィルタに印加されるパワーが低減されて、各電極指において発生するジュール熱を抑えることができる。これにより、入力される電力が高くても、マイグレーションによる櫛歯型電極の劣化が防止されて耐電力を向上させることが可能となる。よって、信頼性に優れた弾性表面波素子が得られる。
また、詳しくは後述の詳細な説明に記載するが、本発明者は、電極膜厚が400nm以下であれば単位フィルタを並列接続することで電気抵抗損の増大が緩和されて挿入損失の劣化が緩和されることを見出している。一方、電極膜厚が10nmより薄くなると、その薄膜形成方法によっては、連続膜が形成できなくなる虞があることも分かった。よって、電極膜厚を10〜400nmの範囲内とすることにより、上記効果を確実に得ることが可能である。
さらに、本発明では各単位フィルタを個別の基板に形成しており、これによって各段位フィルタにおける弾性表面波の相互干渉が防止され、フィルタ特性の劣化が防止される。
【0015】
また、電極膜厚が、30〜350nmの範囲内であることが好ましい。
本発明によれば、電気抵抗損の増大及び挿入損失の劣化をより効果的に防止することが可能となる。
【0016】
また、櫛歯型電極がアルミニウム−チタン合金であり、交差長が、5〜30λの範囲内であることが好ましい。
本発明によれば、弾性表面波の回折現象が防止され、適正なフィルタ特性を得ることが可能となる。
【0017】
また、櫛歯型電極がアルミニウム−マグネシウムであり、交差長が、5〜25λの範囲内であることが好ましい。
本発明によれば、弾性表面波の回折現象が防止され、適正なフィルタ特性を得ることが可能となる。
【0018】
また、動作周波数が、1GHz〜10GHzの範囲内であることが好ましい。
本発明によれば、弾性表面波の伝搬速度を高速化することによって弾性表面波素子の高周波化が図れ、しいては通信の高速化に対応することが可能となる。
【0019】
また、櫛歯型電極が、アルミニウム、またはアルミニウムを主成分とする合金からなることが好ましい。
本発明によれば、アルミニウム又はアルミニウムを主成分とする合金によって櫛歯型電極を安価に且つ簡単に形成することができる。
【0020】
また、櫛歯型電極が、銅、銀、金、チタン、マグネシウムまたはこれらを主成分とする合金からなることが好ましい。
本発明によれば、上記材料を用いて櫛歯型電極を構成することにより、弾性表面波の振動で発生するマイグレーションを抑制することが可能となる。
【0021】
また、圧電材料が、ダイヤモンド、水晶、ランガサイト、リン酸化ガリウム、シリコン、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、四ホウ酸リチウムのうちの少なくとも1種を主材料として構成されていることが好ましい。
本発明によれば、高い周波数精度及び周波数安定性が得られる。
【0022】
また、圧電材料が、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、チタン酸ジルコン酸塩のうちの少なくとも1種を主材料として構成されていることが好ましい。
本発明によれば、弾性表面波の伝搬媒体として好適に機能する。つまり、弾性表面波の高周波化が可能となるとともに、温度特性に優れたものとなる。
【0023】
また、単位フィルタがDMS(Double Mode SAW)型2ポート共振子であり、Q値が300以上であることが好ましい。
本発明によれば、高周波域の高安定発振器を構成することができる。
【0024】
本発明の電子デバイスは、上記弾性表面波素子を備えることを特徴とする。
本発明によれば、フィルタ特性に優れた高性能かつ高品質な電子デバイスを提供することができる。
【0025】
本発明の電子機器は、上記弾性表面波素子を備えることを特徴とする。
本発明によれば、フィルタ特性に優れた高性能かつ高品質な電子機器を提供することができる。
【0026】
本発明の電子機器は、上記電子デバイスを備えることを特徴とする。
本発明によれば、信頼性の高い弾性表面波素子を備えたことから、高信頼性の電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、隔部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
本発明に係る弾性表面波素子は、DMS(Double Mode SAW)型2Port共振子であって、2個の単位フィルタを並列に接続した並列接続弾性表面波フィルタを有する。ここで、各単位フィルタは、圧電基板、もしくは圧電膜を有する基板を有し、その基板面上に入力信号を弾性表面波に変換する入力用の櫛歯型電極と、変換された弾性表面波を電気信号に変換する出力用の櫛歯型電極とを備えてなる。
【0028】
[実施例1]
図1(a)は並列接続弾性表面波フィルタを備える弾性表面波素子の平面図であって、図1(b)は(a)のA−A’に沿う断面図である。図2は、本発明に係る弾性表面波素子の概略構成を示すブロック図である。
図1及び図2に示すように、弾性表面波素子100は、圧電基板26の表面に2つの単位フィルタ1−A,1−Bからなる並列接続弾性表面波フィルタ1が形成してある。圧電基板26は、例えばオイラー角(0、θ、ψ)で表される水晶基板からなる。該水晶基板を圧電基板26として用いることにより、電気機械結合係数の大きい弾性表面波が励振される。ここで、オイラー角(0、θ、ψ)の一般的な定義は次のようになっている。すなわち、デバイス座標系(X,Y,Z)をZ軸の周りにφだけ回転し、次にφ回転後の新しいY’軸の周りにデバイスをθだけ回転し、最後にθ回転の新しいZ’’軸の周りにψだけ回転するときの各角度のことを言う。具体的に、本実施例では、37°Yカット90°X伝搬水晶基板を用いている。
【0029】
第1の単位フィルタ1−A及び第2の単位フィルタ1−Bは、それぞれ、圧電基板26上に設けられる入力用のIDT10、出力用(受信用)のIDT11及び一対の反射器15,15を有して構成されている。そして、IDT10,11及び反射器15,15は、IDT10,11により圧電基板26の表面付近に励振される弾性表面波の伝搬方向(電極指2a,2bの延在方向に対して略直交する方向)が基板のX軸に対して90°、Y軸に対して37°となるように配置されている。
【0030】
IDT10は、Al−Tiからなる一対の櫛歯型電極10a、10bからなり、IDT11は、同じくAl−Tiからなる一対の櫛歯型電極11a、11bから構成されている。櫛歯型電極10a、10b,11a、11bは、複数の電極指2a,2bと、これら複数の電極指2a,2bの一端をそれぞれ接続する複数のバスパー2cとを有している。IDT10,11の電極膜厚や電極指2a,2bの線幅や間隔(ピッチ)等を調整することによって、弾性表面波の発振周波数の特性を所望のものに設定することができる。
【0031】
電極指2a,2bは、圧電基板26の一辺に沿って延在するとともに互いに平行してストライプ状に配列され、その配列方向に電極指2a,2bが交互に存在している。本実施形態では、各電極指2a,2bの長さは互いに等しい。また、電極指2a,2bのピッチは、フィルタリングする高周波の波長に対応しており、電極指2a,2bのピッチの2倍と同一の長さの波長を有する高周波が抽出されるようになっている。
【0032】
バスパー2cは、電極指2a,2bの延在方向両側に対向配置され、各電極指2a,2bの一端側をそれぞれ接続するように設けられている。このように、各バスパー2cによって、複数の電極指2a同士及び複数の電極指2b同士がそれぞれ接続されることで、櫛歯形状の第1の電極10a,11a及び第2の電極11a,11bが形成される。
【0033】
IDT10は、櫛歯型電極10a及び櫛歯型電極10bの電極指2a,2b同士、IDT11は、櫛歯型電極11a及び櫛歯型電極11bの電極指2a,2b同士をそれぞれ噛み合わせた状態となっている。噛み合った部分の寸法(配列方向において電極指2a,2b同士が交差している長さ)を交差長Wとすると、この交差長Wは、抽出する弾性表面波の波長をλとしたときに、5λ〜50λの範囲内の長さとなっている。また、IDT10,11の電極膜厚は、10〜400nmの範囲内が好ましい。比抵抗値は電極膜厚が薄くなると高まるため、電極膜厚に応じて交差長Wを設定する。
【0034】
各単位フィルタ1−A,1−Bにおける入力用の櫛歯型電極10aは、それぞれ圧電基板26上に設けられた共通入力端子20(図2参照)に接続され、出力用の櫛歯型電極11aは同じく圧電基板26上に設けられた共通出力端子22(図2参照)にそれぞれ接続されている。また、各フィルタ1−A,1−Bにおける櫛歯型電極10b同士及び櫛歯型電極11b同士はそれぞれ接続部Oを介して一体とされている。これら櫛歯型電極10a,10b,11a,11b及び接続端子20,22は、加工性及びコストの観点からAlまたはAlを主成分とする合金からなる電極膜で形成される。本実施例では、アルミニウム(Al)にチタン(Ti)を1%重量添加した合金膜から形成される。そして、各IDT10,11における櫛歯型電極10b、11bはそれぞれグランドに接続されている。
【0035】
そして、入力用のIDT10に交流電力(電気信号)が供給されると、この交流電力による電場によって圧電基板26にひずみが生じる。このとき、この電場を生じる電極が櫛歯形状であることにより圧電基板26に疎密が生じ、これにより弾性表面波が発生する。そして、発生した弾性表面波は出力用のIDT11に伝搬し、この弾性表面波のエネルギーは出力用のIDT11によって電気的エネルギーに変換及び出力される。
【0036】
圧電基板26上には、さらに一対の反射器15,15が設けられている。反射器15,15は、複数のIDT10,11で生成される表面波を反射するものであり、これらIDT10,11を挟むように配列方向の両側に1つずつ設けられている。これら反射器15,15は、AlやAlを主成分とする合金などの金属材料からなる複数の導体ストリップ3を有しており、導体ストリップ3の延在方向両端が接続された構成となっている。
本実施例では、各反射器15,15の導電ストリップ3が120本、IDT10,11の電極指2a,2bが80対となっている。なお、図1においては、便宜上、導電ストリップ3及び電極指2a,2bの数を少なく描いている。
【0037】
このような弾性表面波素子100の製造方法としては、まず、上記圧電基板26上に、アルミニウム(Al)にチタン(Ti)を1%重量添加した合金膜をDCマグネトロンスパッタ法にて、膜厚が350nmとなるように成膜する。そこへ、ポジレジストをスピン塗布法により塗布し、ステッパーにより、IDT10,11、反射器15,15、接続端子20,22のパターンを露光し、現像、ドライエッチングを行い、最後にマスク(レジスト)を剥離することで単位フィルタ1−A,1−B及び接続端子20,22が得られる。同時に、各単位フィルタ1−A,1−Bと接続端子20,22とを接続する接続配線(不図示)も同時に形成される。
【0038】
このように、第1の単位フィルタと第2の単位フィルタ1−Bとは、互いに近接して並列に形成され、それぞれ、交差長Wが互いに等しい一対のIDT10,11と一対の反射器15,15とを備える。ここで、IDT10,11のうち電極10aが入力信号端子、電極11aが出力信号端子、電極10b,11bがアース端子とされる。また、第1のフィルタ1−Aと第2の単位フィルタ1−Bとにおける入力信号端子10a,10a同士は、圧電基板26に信号を入力するための共通入力端子20に上記接続配線を介して接続され、第1の単位フィルタ1−Aと第2の単位フィルタ1−Bにおける出力信号端子11a,11a同士が、圧電基板26から信号を出力するための共通出力端子22に上記接続配線を介して接続される。このようにして、第1の単位フィルタ1−Aと第2の単位フィルタ1−Bとが並列に接続してなる並列接続弾性表面波フィルタ1が構成され、本実施例の弾性表面波素子100が得られる。
【0039】
(単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性)
次に、図3に示すような、1つの単位フィルタ(以下、単体弾性表面波フィルタと称する。)の挿入損失特性について述べる。
そして、ここでは、各IDT10,11の交差長Wがそれぞれ異なる(W=10λ,50λ,100λ、150λ)4つの単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性を、測定値と計算値とで比較検討する。また、弾性表面波の波長はSTW(Surface Transverse wave)を用いており、波長4μmで、周波数1.26GHzである。
【0040】
図4は、各単体弾性表面波フィルタの挿入損失(実測値)を示す図であって、(a)〜(d)は各単体弾性表面波フィルタ(W=10λ,50λ,100λ、150λ)の挿入損失(S21)特性図である。測定には、ネットワークアナライザを用い、各弾性表面波フィルタにおけるIDT10の第1の電極10aを入力信号端子、IDT11の第1の電極11aを出力信号端子、そして、各IDT10,11の第2の電極10b,11bをアース電極として測定した。
【0041】
図5は、各単体弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)を示す図であって、(a)〜(d)は各単体弾性表面波フィルタ(W=10λ,50λ,100λ、150λ)の挿入損失(S21)特性図である。計算には、IDT10,11の抵抗値を考慮していないSmithの等価回路モデルを用いた。なお、図4及び図5において、横軸は周波数[GHz]を示し、縦軸は挿入損失[dB]を示す。
【0042】
そして、1.26GHz近辺における挿入損失(実測値)と挿入損失(測定値)との比較を図6及び表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
ここで、単体弾性表面波フィルタの交差長Wが10λの場合には挿入損失差が0.3dB程度となっている。また、単体弾性表面波フィルタの交差長Wが50λの場合には挿入損失差が1.0dB程度となっている。しかし、交差長Wが長くなるに従って計算値と実測値との一致が見られなくなり、単体弾性表面波フィルタの交差長Wが100λの場合には挿入損失差が3.9dB、交差長Wが150λの場合には挿入損失差が5.8dBとなり、計算値より大幅に劣化している。
これにより、単体弾性表面波フィルタの交差長Wが50λ以下の場合において実測値と計算値との挿入損失差が1.0dB以下となり、実測値と計算値とが略一致することが分かった。
【0045】
(並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性)
次に、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性について述べる。
各単位フィルタ1−A,1−Bにおける櫛歯型電極10a、10b,11a、11bの交差長Wの長さをそれぞれ異ならせた複数の並列接続弾性表面波フィルタを用いて、それぞれの挿入損失特性を調べる。ここでは、交差長Wが、それぞれ5λ,25λ,50λ,75λとされた単体弾性表面波フィルタを各々2個並列に接続したものからなる4つの並列接続弾性表面波フィルタを上記製造方法により作製した。
図7(a)〜(d)に、ネットワークアナライザによって得た各並列接続弾性表面波フィルタ(単体弾性表面波フィルタの交差長W=5λ,25λ,50λ,75λ)の挿入損失(S21)特性を示す。
【0046】
次に、単体弾性表面波フィルタの挿入損失と並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性を比較する。
図8及び表2に、図5に示した単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性(計算値)と、図7に示した並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性(実測値)との比較を示す。なお、波長pλの単位フィルタをN個並列に接続した場合の電極指2a,2bの交差長WをN×pλとした。
【0047】
【表2】
【0048】
図8及び表2に示すように、交差長Wが10λ、50λでは、単体弾性表面波フィルタの挿入損失(実測値)と、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)との差は0.1dB、交差長Wが100λの場合は双方の挿入損失の差が0.9dBとなっている。
これにより、各単位フィルタにおける櫛歯型電極の交差長Wが50λ以下の場合において、単体弾性表面波フィルタの挿入損失(実測値)と、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)との差が1.0dB以下となり、上記単体弾性表面波フィルタ同士での比較同様、各構成の挿入損失が実測値と計算値とで略一致することが分かった。
【0049】
図9に、Al−Ti電極の電極膜厚[nm]と比抵抗値[μΩcm]との関係を示す。同図によると電極膜厚が薄いと比抵抗値が高くなっている。交差長Wが長くなるにつれて電極膜厚は薄くせざるを得ないことから、交差長Wを長くすると抵抗値が増大し(交差長Wを長くすると電極膜厚は薄くなる)、結果として図8及び表2に示すように電気抵抗損による挿入損失の劣化が生じる。しかしながら、単位フィルタを複数並列に接続することで電気抵抗損の増大が緩和され、それに伴い挿入損失の劣化が緩和されたことが分かる。図9では、電極膜厚が400nmまでは比抵抗が低下することを示しており、400nm以下であれば並列接続することで交差長を短くする効果が期待できる。電極膜厚の下限としては10nmであり、10nmより薄くなると薄膜形成方法によっては連続膜が形成できなることがある。
【0050】
(耐電力試験)
次に、耐電力試験を実施した。図10に、耐電力評価システム(室温下)を示す。
まず、ネットワークアナライザ50からの信号をアンプ51にて増幅し、弾性表面波フィルタに印加する。その後、アッテネータ52にて信号を減振させ、再度ネットワークアナライザ50に信号を取り組む。300秒間繰り返し通電を実施して通電前後の挿入損失の変動が0.5dB以内であれば投入電力に耐えたと解釈して、ネットワークアナライザ50からの信号強度を増加させ、同じ評価を繰り返した。
【0051】
表3に、単体弾性表面波フィルタと、並列接続弾性表面波フィルタとの耐電力特性の比較結果を示す。表3によれば、複数の単位フィルタを並列接続することで耐電力特性が向上することが確認できた。また、挿入損失が小さい方が耐電力特性が良好であることを確認できた。
【0052】
【表3】
【0053】
[実施例2]
図11は、実施例2における並列接続弾性表面波フィルタの概略構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図11(a),(b)に示すように、本実施例における並列接続弾性表面波フィルタ200は、例えばシリコンからなる矩形薄板の板材6aを主とする基板6を有する。基板6の主面には、下地層7としてダイヤモンド層が形成され、かつその上に例えばZnOからなる圧電膜8が積層されている。このダイヤモンド積層構造の基板を用いることにより、弾性表面波素子200は、水晶等の圧電基板の場合に比してSAW伝搬速度を高速度化でき、それにより高周波化を図ることができる。
【0054】
基板6は、シリコン以外の半導体材料や、パイレックス(登録商標)ガラス等のガラス材料、セラミックス材料、ポリイミド又はポリカーボネイト等の樹脂材料を用いることもできる。下地層7は、例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜等のように、従来公知の方法により合成される多結晶ダイヤモンドの薄膜で形成することができる。圧電膜8には、ZnO以外に、例えばAlN(窒化アルミニウム)、LiTaO3、LiNbO3、K4Nb6O17(ニオブ酸カリウム)等の様々な公知の圧電材料を用いることができる。
【0055】
基板6上には圧電膜8を介して、1対の櫛歯型電極10a、10bからなる入力用(送信用)のIDT10と、同じく1対の櫛歯型電極11a、11bからなる出力用(受信用)のIDT11と、一対の反射器15,15とをそれぞれ備える、2つの単位フィルタ2−A,2−Bが形成されている。そして、各単位フィルタ2−A,2−Bにおける入力用のIDT10の櫛歯型電極10aは、基板6上に形成された共通入力端子に接続され、かつ出力用の櫛歯型電極における櫛歯型電極11aは、基板6上に形成された共通出力端子にそれぞれ接続されている。これら櫛歯型電極10a、10b、11a、11b、反射器及び各接続端子は、加工性及びコストの観点からAl又はAlを主成分とする合金からなる電極膜で形成され、上記実施例と同様に、例えばフォトリソグラフィ技術を利用したドライエッチングにより所望のパターンに加工される。
なお、本実施例における反射器15,15の導電ストリップ3は20本、IDT10,11の電極指2a,2bが50対となっている。なお、図11においては、便宜上、導電ストリップ3及び電極指2a,2bの数を少なく描いている。
【0056】
また、基板6の最上層には、絶縁性保護膜9がIDT10,11及び反射器15,15を覆うようにして形成されている。絶縁性保護膜9でIDT10,11及び反射器15,15を被覆することにより、弾性表面波フィルタ2−A,2−Bの及び反射器15,15の表面にゴミ等の異物が付着して、隣接するIDT10,11(電極指2a,2b)間、導体ストリップ3間が電気的に短絡することを未然に防止できる。絶縁性保護膜9は、例えばSiO2をスパッタリング又は蒸着することにより、容易に所望の厚さに成膜される。絶縁性保護膜9には、SiO2以外に、例えばTa2O5のような酸化物、Si3N4、TiNのような窒化物等、様々な絶縁材料を用いることができる。特にSiO2膜を用いた場合、その下層側に形成される圧電膜8及びダイヤモンド層からなる下地層7の温度係数を打ち消すことができ、それにより優れた温度特性が得られる。
絶縁性保護膜9の膜厚は、特に限定されないが、質量の増大に伴う弾性表面波の発振周波数の低下を防止または抑制しつつ、充分な絶縁性が発揮される膜厚とする。
【0057】
(単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性)
次に、1つの単位フィルタのみを備える単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性を調べる。ここで、単位フィルタの各IDT10,11の交差長Wがそれぞれ10λ,25λ,40λ,60λと異なる4つの単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性を、測定値と計算値とで比較検討する。また、弾性表面波の波長はSTW(Surface Transverse wave)を用いており、波長2μmで、周波数2.45GHzである。
【0058】
図12(a)〜(d)に、ネットワークアナライザによって得た各単体弾性表面波フィルタ(W=10λ,25λ,40λ,60λ)の挿入損失(S21)特性を示す。
図13(a)〜(d)に、Smithの等価回路モデルによって得た各単体弾性表面波フィルタ(W=10λ,25λ,40λ,60λ)の挿入損失(S21)特性を示す。
【0059】
そして、実測結果及び測定結果における2.45GHz近辺での挿入損失の比較を図14及び表4に示す。
【0060】
【表4】
【0061】
図14及び表4に示すように、交差長Wが10λのときの実測値と計算値との差は0.5dB、交差長Wが25λのときでは差が1.7dBとなっている。さらに、交差長Wが40λになると実測値と計算値の差が3.6dBと差が大きくなり、挿入損失の劣化が大きいことが分かる。
また、図8に示す電極膜厚と比抵抗との関係より、30nmでは大きな比抵抗値であり、電気抵抗損失が甚大であることを示している。
【0062】
(挿入損失特性)
次に、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性について述べる。
単位フィルタ2−A,2−Bにおける櫛歯型電極10a,10b,11a,11bの交差長Wの長さをそれぞれ異ならせた複数の並列接続弾性表面波フィルタを用いて、それぞれの挿入損失特性を調べる。ここでは、交差長Wが、それぞれ5λ,12.5λ,20λ,30λとされた単体弾性表面波フィルタを各々2個並列に接続したものからなる4つの並列接続弾性表面波フィルタを上記製造方法により作製した。
図15(a)〜(d)に、ネットワークアナライザによって得た並列接続弾性表面波フィルタ(単体弾性表面波フィルタの交差長W=5λ,12.5λ,20λ,30λ)の挿入損失(S21)特性を示す。
【0063】
次に、単体弾性表面波フィルタの挿入損失と並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性を比較する。
図16及び表5に、単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性(計算値)と、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性(実測値)との比較を示す。なお、pλの単位フィルタをN個並列に接続した場合の電極指2a,2bの交差幅WをN×pλとした。
【0064】
【表5】
【0065】
図16及び表5に示すように、交差長Wが10λ及び25λのとき、単体弾性表面波フィルタの挿入損失(実測値)と、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)との差は0.1dB、交差長Wが40λのとき挿入損失の差が0.9dB、交差長Wが60λのとき挿入損失の差が3.6dBとなった。
これにより、各弾性表面波フィルタの交差長Wが40λ以下の場合において、単体弾性表面波フィルタの挿入損失(実測値)と、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)との差が1.0dB以下となり、上記弾性表面波フィルタ単体での比較同様、各構成の挿入損失が実測値と計算値とで略一致することが分かった。また、電極膜厚が30nmと薄く、比抵抗が高い場合にも、交差長Wを適当に選択すれば十分な効果が得られることを確認できた。
【0066】
(耐電力試験)
次に、図10に示した耐電力評価システムを用いて耐電力試験を実施した。評価方法は上述と同じである。単体弾性表面波フィルタと、並列接続弾性表面波フィルタとの比較結果を表6に示す。同表によれば、複数の単位フィルタを並列接続することで並列弾性表面波フィルタの耐電力特性が向上することを確認できた。また、挿入損失が小さい方が耐電力特性が良好であることを確認できた。
【0067】
【表6】
【0068】
[実施例3]
本実施例における並列接続弾性表面波フィルタは、上記実施例2と同様の材料を用いて構成されるが、圧電膜8、IDT10,11の電極膜厚及び絶縁性保護膜9の膜厚が、実施例2のそれよりも厚く形成されている点において異なる。
【0069】
本実施例における並列接続弾性表面波フィルタの製造方法としては、板厚400μmのシリコン基板上に、下地層7としてのダイヤモンド膜を、熱フィラメントCVD法を用いて20μmの膜厚で成膜する。その後、酸化亜鉛からなる圧電膜8を580nmの膜厚で成膜し、AlにTiを1%重量添加した合金膜をDCマグネトロンスパッタ法を用いて80nmの膜厚となるように成膜する。そこへ、ポジレジストをスピン塗布法により塗布し、ステッパーにより、各単位フィルタ2−A、2−BにおけるIDT10,11及び反射器15,15のパターンを露光し、現像、ドライエッチングを行い、最後にレジストを剥離する。そこに、酸化シリコンをRFマグネトロンスパッタ法にて680nmの膜厚で成膜する。そこに、電気信号のやり取りのために、フォトリソグラフィを用いて、端子部分に対応する部分に開口部を設ける。このようにして本実施例における並列弾性表面波フィルタが得られる。本実施例における各反射器15,15の導電ストリップ3は15本、IDT10,11の電極指2a,2bが40対となっている。
【0070】
(弾性表面波フィルタの挿入損失特性)
次に、1つの単位フィルタのみを備える単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性を調べる。ここでは、単位フィルタの各IDT10,11の交差長Wがそれぞれ異なる(W=10λ,30λ,50λ、70λ)4つの弾性表面波フィルタの挿入損失特性を、測定値と計算値とで比較検討する。また、弾性表面波の波長はSTW(Surface Transverse wave)を用いており、波長3.85μmで、周波数2.45GHzである。
【0071】
そして、実測結果及び測定結果における2.45GHz近辺での挿入損失の比較を図17及び表7に示す。
【0072】
【表7】
【0073】
図17及び表7に示すように、交差長Wが10λのときの実測値と計算値との差は0.2dB、交差長Wが30λのときでは差が1.2dBとなっている。さらに、交差長Wが50λになると実測値と計算値との挿入損失の差が2.4dB、交差長Wが70λになると挿入損失の差が3.4dB、と大きくなり挿入損失の劣化が大きいことが分かる。
【0074】
(並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性)
次に、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性について述べる。
単位フィルタ1−A,1−Bにおける櫛歯型電極10a、10b,11a、11bの交差長Wの長さをそれぞれ異ならせた複数の並列接続弾性表面波フィルタを用いて、それぞれの挿入損失特性を調べる。ここでは、交差長Wが、それぞれ5λ,15λ,25λ,35λとされた単体弾性表面波フィルタを各々2個並列に接続したものからなる4つの並列接続弾性表面波フィルタを上記製造方法により作製した。
そして、単体弾性表面波フィルタの挿入損失と並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性を比較する。
【0075】
図18及び表8に、図17に示した単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性(計算値)と、それを並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性(実測値)との比較を示す。なお、波長pλの単位フィルタをN個並列に接続した場合の電極指2a,2bの交差長WをN×pλとした。
【0076】
【表8】
【0077】
図18及び表8に示すように、交差長Wが10λ及び交差長Wが30λのとき、単体弾性表面波フィルタの挿入損失(実測値)と、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)との差は0.1dB、交差長Wが50λのとき挿入損失の差が1.0dB、交差長Wが70λで差が3.6dBとなった。
これにより、弾性表面波フィルタの交差長Wが50λ以下の場合において実測値と計算値における挿入損失差が1.0dB以下となり、上記単体での比較同様、各構成の挿入損失が実測値と計算値とが略一致することが分かった。また、図17に示したような単体弾性表面波フィルタの場合に比べて、単体弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)と、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性(実測値)との差が大幅に縮まった。
【0078】
以上、実施例1〜3の結果から、電極膜厚と、計算値と実測値における挿入損失特性が略一致する、並列接続弾性表面波フィルタを構成する単体弾性表面波フィルタの交差長Wの下限値と、の関係をグラフにすると図19の関係が得られる。
図19より、Al−Ti電極の比抵抗が大きくなる400nm以下の膜厚において、50λより交差長Wが小さければ弾性表面波フィルタを並列接続することによる効果が得られる。5λより交差長Wが小さくなると、各櫛歯型電極により励振された弾性表面波フィルタが回折現象を引き起こし、期待する特定方向以外の伝搬方向を持つために特性が劣化する。このため、回折現象を考慮すれば交差長Wが5〜50λの範囲内であれば所望の効果が得られる。特に、Al−Ti電極の場合には、並列接続弾性表面波フィルタを構成する単体弾性表面波フィルタの交差長Wが5〜30λの範囲内であることがより好ましい。
【0079】
このように、GHz帯の弾性表面波フィルタにおいて、複数の単位フィルタを並列に接続することにより、挿入損失の低減及び耐電力の向上を実現することができた。さらに、並列接続する単位フィルタの数を増やすことでより大きな効果が得られる。
【0080】
[実施例4]
上記実施例では櫛歯型電極をAl−Tiで構成したが、本実施例では櫛歯型電極をAl−Mgで構成した。Al−Mg電極の場合においても、電極膜厚が10〜400nmの範囲内、並列接続弾性表面波フィルタを構成する単体弾性表面波フィルタの交差長Wが5〜50λの範囲内で設定する。
本実施例の櫛歯型電極は、AlにMgを1%重量添加した合金からなる。図20に、Al−Mg電極の電極膜厚[Å]と比抵抗値[μΩcm]との関係を示す。同図によると電極膜厚が薄いと比抵抗値が高くなっており、上記図9に示すAl−Ti電極と同様に、交差長Wを長くすると抵抗値が増大し、電気抵抗損による挿入損失の劣化が生じる。
本実施例は、上記したようなAl−Mgで構成した櫛歯型電極を備える弾性表面波フィルタを2個並列に接続してなる弾性表面波フィルタである。
【0081】
図21に、単体弾性表面波フィルタの挿入損失と、並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失との比較を示す。本実施例における弾性表面波フィルタは、4.3dBの低挿入損失特性を有する。このAl−Mg電極を用いた場合の電極膜厚と、計算値と実測値における挿入損失特性が略一致する交差長Wの下限値と、の関係をグラフにすると図22の関係が得られた。図22より、Al−Mg電極の比抵抗が大きくなる400nm以下(図20から推測可能)の膜厚において交差長Wが約50λより小さければ複数の単位フィルタを並列に接続することによる効果が得られる。Al−Ti電極のときと同様に、5λより交差長Wが小さくなると、各櫛歯型電極により励振された単位フィルタが回折現象を引き起こし、期待する特定方向以外の伝搬方向を持つために特性が劣化する。このため、回折現象を考慮すれば交差長Wが5〜50λの範囲内であれば所望の効果が得られる。特に、Al−Mg電極の場合には、並列接続弾性表面波フィルタを構成する単体弾性表面波フィルタの交差長Wが5〜25λの範囲内であることがより好ましい。
【0082】
以上述べた実施例では、並列接続される複数の単位フィルタを同一基板上に備える弾性表面波フィルタについて述べたが、他の実施例として、個別の基板に形成された複数の単位フィルタを並列接続することで本発明に係る並列接続弾性表面波フィルタを構成してもよい。この場合にも、挿入損失の低減及び耐電力の向上を実現することができる。さらに、個別の単位フィルタとすることで、各単位フィルタにおける弾性表面波の相互干渉が防止されフィルタ特性の劣化を抑制することが可能となる。また、並列フィルタ系全体の小型化を図る上では共通の基板に各単位フィルタを構成することが好ましい。
【0083】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもなく、上記各実施形態を組み合わせても良い。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0084】
例えば、上記のように構成した並列接続弾性表面波フィルタをパッケージ内に実装すれば、弾性表面波デバイス60を形成することができる。図23は弾性表面波デバイスの概略構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C’線における断面図である。有底箱状のパッケージ61の中央部に、接着剤を介して弾性表面波素子300を実装する。なお、パッケージ61の内部には電極54及び配線パターン(不図示)が形成され、パッケージ61の底面に形成した外部端子(不図示)との導通が確保されている。そこで、弾性表面波素子300の共通入力端子(不図示)及び共通出力端子(不図示)とパッケージ61の電極50とをワイヤーボンディング等で接続する。これにより、パッケージ61の底面の外部端子から、弾性表面波素子300の各IDT10,11に通電可能となる。なお、パッケージ61の上部にはリッド56を装着して、パッケージ61の内部を窒素雰囲気等に保持する。以上により、弾性表面波デバイス60が完成する。
【0085】
また、上記のような並列接続弾性表面波フィルタは、集積回路素子と組み合わせて発振回路を形成することにより、弾性表面波デバイスを形成することができる。例えば、図23に示す弾性表面波デバイスと集積回路素子(不図示)とを、配線パターンを形成したモジュール基板上に実装することにより、SAW発振器モジュールを形成することができる。また、図23に示すパッケージの内部に、並列接続弾性表面波フィルタとともに集積回路素子を実装することにより、SAW発振器パッケージを形成することができる。
なお、パッケージの内部に配置する弾性表面波素子は、複数の個別基板に単位フィルタをそれぞれ備えた構成であってもよく、この場合、フリップチップボンディングにより接続配線が形成されたパッケージ内に実装されることで、単位フィルタ同士が並列に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】(a)は並列接続弾性表面波フィルタの平面図,(b)は(a)のA−A’に沿う断面図。
【図2】実施例1に係る並列接続弾性表面波フィルタの概略構成を示すブロック図。
【図3】単体弾性表面波フィルタの平面図。
【図4】単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性図(実測値)。
【図5】単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性図(計算値)。
【図6】単体弾性表面波フィルタにおける挿入損失(実測値)と挿入損失(計算値)との比較図。
【図7】並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性図(実測値)。
【図8】単体弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)と並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失(実測値)との比較図。
【図9】電極膜厚と比抵抗との関係(Al−Ti電極)を示すグラフ。
【図10】耐電力評価システムを示す図。
【図11】(a)は実施例2に係る並列接続弾性表面波フィルタの概略構成を示す平面図,(b)は(a)のB−B’に沿う断面図。
【図12】実施例2に係る単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性図(実測値)。
【図13】実施例2に係る単体弾性表面波フィルタの挿入損失特性図(計算値)。
【図14】実測値と計算値とにおける挿入損失の比較図。
【図15】実施例2に係る並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失特性図(実測値)。
【図16】単体弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)と並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失(実測値)との比較図。
【図17】実施例3に係る単体弾性表面波フィルタにおける挿入損失(実測値)と挿入損失(計算値)との比較図。
【図18】単体弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)と並列接続弾性表面波フィルタの挿入損失(実測値)との比較図。
【図19】Al−Ti電極膜厚と交差長限界値との関係を示すグラフ。
【図20】電極膜厚と比抵抗との関係(Al−Mg電極)を示すグラフ。
【図21】実施例4に係る単体弾性表面波フィルタの挿入損失(計算値)と並列弾性表面波フィルタの挿入損失(実測値)との比較図。
【図22】Al−Mg電極膜厚と交差長限界値との関係を示すグラフ。
【図23】(a)は弾性表面波デバイスの概略構成を示す平面図、(b)は(a)のC−C’線断面図。
【符号の説明】
【0087】
100…弾性表面波素子、1…並列接続弾性表面波フィルタ、1−A…第1の単位フィルタ(実施例1)、1−B…第2の単位フィルタ(実施例1)、2−A…第1の単位フィルタ(実施例2,3)、2−B…第2の単位フィルタ(実施例2,3)、2a,2b…電極指、2c…バスパー、3…導体ストリップ、6…基板、6a…基材、7…下地層、8…圧電膜、9…絶縁性保護膜、10…櫛歯型電極(入力側)、11…櫛歯型電極(出力側)、10a…入力信号端子、11a…出力信号端子、10b,11b…アーク端子、15…反射器、20…共通入力端子、22…共通出力端子、26…圧電基板、40,41…櫛歯型電極(並列)、40a…電極(入力信号端子)、41a…電極(出力信号端子)、40b,41b…アース端子、50…ネットワークアナライザ、51…アンプ、52…アッテネータ、60…弾性表面波デバイス、61…パッケージ、64…電極、66…リッド、300…弾性表面波素子、W…交差長
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料及び少なくとも一対の櫛歯型電極からなるIDTを有する単位フィルタを、同一基板上に形成して、複数並列接続した弾性表面波素子であって、
前記櫛歯型電極の電極指の長さは全て等しく、
前記単位フィルタの弾性表面波の波長をλ(但し、λ=V/f V:弾性表面波速度(m/s)、f:動作周波数(GHz))としたとき、前記櫛歯型電極の電極膜厚が10〜400nmの範囲内、かつ対をなす前記櫛歯型電極の交差長が5〜50λの範囲内であることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項2】
圧電材料及び少なくとも一対の櫛歯型電極からなるIDTを有する単位フィルタを、個別基板上に形成して、複数並列接続した弾性表面波素子であって、
前記櫛歯型電極の電極指の長さは全て等しく、
前記単位フィルタの弾性表面波の波長をλ(但し、λ=V/f V:弾性表面波速度(m/s)、f:動作周波数(GHz))としたとき、前記櫛歯型電極の電極膜厚が10〜400nmの範囲内、かつ対をなす前記櫛歯型電極の交差長が5〜50λの範囲内であることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項3】
前記電極膜厚が、30〜350nmの範囲内であることを特徴とする請求項1または2記載の弾性表面波素子。
【請求項4】
前記櫛歯型電極がアルミニウム−チタン合金であり、
前記交差長が、5〜30λの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の弾性表面波素子。
【請求項5】
前記櫛歯型電極がアルミニウム及び−マグネシウム合金であり、
前記交差長が、5〜25λの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の弾性表面波素子。
【請求項6】
前記動作周波数が、1GHz〜10GHzの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の弾性表面波素子。
【請求項7】
前記櫛歯型電極が、アルミニウム、またはアルミニウムを主成分とする合金からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の弾性表面波素子。
【請求項8】
前記櫛歯型電極が、銅、銀、金、チタン、マグネシウムまたはこれらを主成分とする合金からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の弾性表面波素子。
【請求項9】
前記圧電材料が、ダイヤモンド、水晶、ランガサイト、リン酸化ガリウム、シリコン、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、四ホウ酸リチウムのうちの少なくとも1種を主材料として構成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の弾性表面波素子。
【請求項10】
前記圧電材料が、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、チタン酸ジルコン酸塩のうちの少なくとも1種を主材料として構成されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の弾性表面波素子。
【請求項11】
前記単位フィルタがDMS(Double Mode SAW)型2ポート共振子であり、Q値が300以上であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の弾性表面波素子。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の弾性表面波素子を備えることを特徴とする電子デバイス。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の弾性表面波素子を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項14】
請求項12に記載の電子デバイスを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
圧電材料及び少なくとも一対の櫛歯型電極からなるIDTを有する単位フィルタを、同一基板上に形成して、複数並列接続した弾性表面波素子であって、
前記櫛歯型電極の電極指の長さは全て等しく、
前記単位フィルタの弾性表面波の波長をλ(但し、λ=V/f V:弾性表面波速度(m/s)、f:動作周波数(GHz))としたとき、前記櫛歯型電極の電極膜厚が10〜400nmの範囲内、かつ対をなす前記櫛歯型電極の交差長が5〜50λの範囲内であることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項2】
圧電材料及び少なくとも一対の櫛歯型電極からなるIDTを有する単位フィルタを、個別基板上に形成して、複数並列接続した弾性表面波素子であって、
前記櫛歯型電極の電極指の長さは全て等しく、
前記単位フィルタの弾性表面波の波長をλ(但し、λ=V/f V:弾性表面波速度(m/s)、f:動作周波数(GHz))としたとき、前記櫛歯型電極の電極膜厚が10〜400nmの範囲内、かつ対をなす前記櫛歯型電極の交差長が5〜50λの範囲内であることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項3】
前記電極膜厚が、30〜350nmの範囲内であることを特徴とする請求項1または2記載の弾性表面波素子。
【請求項4】
前記櫛歯型電極がアルミニウム−チタン合金であり、
前記交差長が、5〜30λの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の弾性表面波素子。
【請求項5】
前記櫛歯型電極がアルミニウム及び−マグネシウム合金であり、
前記交差長が、5〜25λの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の弾性表面波素子。
【請求項6】
前記動作周波数が、1GHz〜10GHzの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の弾性表面波素子。
【請求項7】
前記櫛歯型電極が、アルミニウム、またはアルミニウムを主成分とする合金からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の弾性表面波素子。
【請求項8】
前記櫛歯型電極が、銅、銀、金、チタン、マグネシウムまたはこれらを主成分とする合金からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の弾性表面波素子。
【請求項9】
前記圧電材料が、ダイヤモンド、水晶、ランガサイト、リン酸化ガリウム、シリコン、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、四ホウ酸リチウムのうちの少なくとも1種を主材料として構成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の弾性表面波素子。
【請求項10】
前記圧電材料が、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、チタン酸ジルコン酸塩のうちの少なくとも1種を主材料として構成されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の弾性表面波素子。
【請求項11】
前記単位フィルタがDMS(Double Mode SAW)型2ポート共振子であり、Q値が300以上であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の弾性表面波素子。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の弾性表面波素子を備えることを特徴とする電子デバイス。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の弾性表面波素子を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項14】
請求項12に記載の電子デバイスを備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2009−124345(P2009−124345A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294792(P2007−294792)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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