説明

弾性表面波素子および電子機器

【課題】耐電力特性を向上させつつ、動作周波数の高周波数化を図ることができる弾性表面波素子、および、この弾性表面波素子を備える信頼性に優れた電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明の弾性表面波素子1は、ダイヤモンドで構成された硬質層3上に、ZnOで構成された圧電体層4と、Alで構成された櫛歯状電極5、6を備える電極層10と、SiOで構成された保護層9とがこの順に積層され、電極層10の平均層厚をT、圧電体層4の平均層厚をT、保護層9の平均層厚をT、圧電体層4の3次モードの弾性表面波の波長をλ、(2π/λ)をkとしたときに、下記(1)〜(3)のそれぞれの関係式を満たすことを特徴とする弾性表面波素子。
0.001≦kT≦0.02・・・・・・・(1)
1.3≦kT≦2.0・・・・・・・・・・(2)
0.5≦kT≦1.2・・・・・・・・・・(3)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波素子および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
弾性表面波(Surface Acoustic Wave:SAW)は、伝搬媒体の表面付近に、エネルギーを集中させて伝搬する波である。
このような弾性表面波を利用する弾性表面波素子は、携帯電話等の通信機器用のバンドパスフィルター、基準クロックとしての共振子、信号処理用遅延素子(特に、フーリエ変換機能素子)、圧力センサーや温度センサーのような各種センサー、光偏向器等へ応用されている。
【0003】
例えば、フィルタや共振子として使用する弾性表面波素子は、弾性表面波の伝搬媒体としての圧電体層と、この圧電体層上に配置され、電気信号の入力用および出力用との一対の櫛歯状電極(Inter Digital Transducer:IDT)とを備えている(例えば、特許文献1参照。)。
このような弾性表面波素子では、入力用のIDTに交流電力(電気信号)が供給されると、この交流電力による電場によって圧電体層にひずみが生じる。このとき、この電場を生じる電極が櫛歯形状であることにより圧電体層に疎密が生じ、これにより弾性表面波が発生する。そして、この弾性表面波は出力用IDTに伝搬し、この弾性表面波のエネルギーは出力用IDTによって電気的エネルギーに変換・出力される。
【0004】
特許文献1にかかる弾性表面波素子では、高速化を目的として、硬質層にタイヤモンドを用いるとともに、圧電体層にZnOを用い、さらに温度補償を目的として、IDT上をSiOの保護層で覆う構成を有している。このような積層構造をもつ弾性表面波素子では、圧電体層の音速よりも硬質層の音速が大きいため、伝播速度が異なる複数の弾性表面波が励振される。ここで、励振モードは、伝播速度が小さい方から順に0次モード、1次モード、2次モード、・・・と定義される。そして、特許文献1では、2次モードの弾性表面波を用いている。
【0005】
近年、弾性表面波素子には、高周波数化が求められているが、一般に、弾性表面波素子の動作周波数fは、f=V/λで表される。ここで、Vは弾性表面波の伝播速度、λは弾性表面波の波長である。この式からも明らかなように、高周波数化には、弾性表面波の波長を小さくする方法と、弾性表面波の伝播速度を大きくする方法とがあるが、弾性表面波の波長は、IDTの電極指のピッチで決まるため、製造上小さくするのに限界がある。したがって、弾性表面波素子の高周波化には、弾性表面波の伝播速度を向上させる必要がある。
【0006】
一方、2次モードの弾性表面波はIDT付近を大きく変位させるため、ストレスマイグレーションによりIDTの劣化を招きやすく、これは、高周波化が進むほど顕著となる。
IDTが劣化すると、動作周波数や挿入損失が変動し、最終的には電極破断に至るおそれがある。一般に弾性表面波素子は高い周波数精度が求められるために動作周波数が数十ppm変動するだけで商品としての価値を失う。弾性表面波素子の中でも特に高周波特性と耐電力の双方が必要とされる放送局や携帯電話基地局に使われるSAWフィルタの場合には、高周波(1〜10GHz程度)にて、耐電力性が大きいことが非常に重要な要素である。
また、このような弾性表面波素子にあっては、温度変化による周波数変動を小さく抑えること、すなわち、1次温度係数(TCF:Temperature Coefficient of Frequency)を0ppm/℃付近に抑えることが望ましい。
【0007】
【特許文献1】特開平9−51248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、温度変化による周波数変動を小さく抑えるとともに、耐電力特性を向上させつつ、動作周波数の高周波数化を図ることができる弾性表面波素子、および、この弾性表面波素子を備える信頼性に優れた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の弾性表面波素子は、ダイヤモンドを主として構成された硬質層上に、
ZnOを主として構成された圧電体層と、
Alを主材料として構成された櫛歯状電極を備える電極層と、
SiOを主として構成された保護層とがこの順に積層され、
前記櫛歯状電極に通電することにより、前記圧電体層に弾性表面波を生じさせるように構成され、
前記電極層の平均層厚をT、前記圧電体層の平均層厚をT、前記保護層の平均層厚をT、前記圧電体層の3次モードの弾性表面波の波長をλ、(2π/λ)をkとしたときに、
下記(1)〜(3)のそれぞれの関係式を満たすことを特徴とする。
0.001≦kT≦0.02・・・・・・・(1)
1.3≦kT≦2.0・・・・・・・・・・(2)
0.5≦kT≦1.2・・・・・・・・・・(3)
これにより、温度変化による周波数変動を小さく抑えるとともに、耐電力特性を向上させつつ、動作周波数の高周波数化を図ることができる。
【0010】
本発明の弾性表面波素子では、0.001≦kT≦0.01のとき、下記(4)、(5)のぞれぞれの関係式を満たすことが好ましい。
1.3≦kT≦2.0・・・・・・・・・・(4)
0.5≦kT≦1.1・・・・・・・・・・(5)
これにより、温度変化による周波数変動をより小さく抑えるとともに、耐電力特性を向上させつつ、動作周波数の高周波数化を図ることができる。
【0011】
本発明の弾性表面波素子では、0.01≦kT≦0.02のとき、下記(6)、(7)のそれぞれの関係式を満たすことが好ましい。
1.3≦kT≦2.0・・・・・・・・・・(6)
0.6≦kT≦1.2・・・・・・・・・・(7)
これにより、温度変化による周波数変動をより小さく抑えるとともに、耐電力特性を向上させつつ、動作周波数の高周波数化を図ることができる。
【0012】
本発明の弾性表面波素子では、下記(8)、(9)のそれぞれの関係式を満たすことが好ましい。
kT≦−5/8×kT+39/20・・・(8)
kT≦−8/7×kT+18/7・・・・(9)
これにより、温度変化による周波数変動を小さく抑えるとともに、耐電力特性を向上させつつ、動作周波数の高周波数化をより確実に図ることができる。
【0013】
本発明の弾性表面波素子は、ダイヤモンドを主として構成された硬質層上に、
ZnOを主として構成された圧電体層と、
Alを主材料として構成された櫛歯状電極を備える電極層と、
SiOを主として構成された保護層とがこの順に積層され、
前記櫛歯状電極に通電することにより、前記圧電体層に弾性表面波を生じさせるように構成され、
前記電極層の平均層厚をT、前記圧電体層の平均層厚をT、前記保護層の平均層厚をT、前記圧電体層の4次モードの弾性表面波の波長をλ、(2π/λ)をkとしたときに、
下記(10)〜(12)のそれぞれの関係式を満たすことを特徴とする。
0.001≦kT≦0.02・・・・・・・・(10)
0.6≦kT≦2.0・・・・・・・・・・・(11)
0.8≦kT≦3.3・・・・・・・・・・・(12)
これにより、温度変化による周波数変動を小さく抑えるとともに、耐電力特性を向上させつつ、動作周波数の高周波数化を図ることができる。
【0014】
本発明の弾性表面波素子では、0.001≦kT≦0.01のとき、下記(13)、(14)のそれぞれの関係式を満たすことが好ましい。
0.7≦kT≦2.0・・・・・・・・・・・(13)
0.8≦kT≦3.0・・・・・・・・・・・(14)
これにより、温度変化による周波数変動をより小さく抑えるとともに、耐電力特性を向上させつつ、動作周波数の高周波数化を図ることができる。
【0015】
本発明の弾性表面波素子では、0.01≦kT≦0.02のとき、下記(15)、(16)のそれぞれの関係式を満たすことが好ましい。
0.6≦kT≦2.0・・・・・・・・・・・(15)
0.9≦kT≦3.3・・・・・・・・・・・(16)
これにより、温度変化による周波数変動をより小さく抑えるとともに、耐電力特性を向上させつつ、動作周波数の高周波数化を図ることができる。
【0016】
本発明の弾性表面波素子では、下記(17)の関係式を満たすことが好ましい。
kT≦−1/2×kT+13/5・・・・・(17)
これにより、温度変化による周波数変動を小さく抑えるとともに、耐電力特性を向上させつつ、動作周波数の高周波数化をより確実に図ることができる。
本発明の弾性表面波素子では、前記硬質層の前記圧電体層と反対側の面上には、シリコンを主材料として構成された基板が接合されていることが好ましい。
このような基板は、硬質層を形成するに際し、基板の結晶状態を利用することで、優れた特性を有する硬質層を簡単かつ確実に形成することができる。
【0017】
本発明の弾性表面波素子では、前記櫛歯状電極は、互いに間隔を隔てて噛み合うように1対設けられていることが好ましい。
これにより、発振器やフィルタとして利用可能な弾性表面波素子を提供することができる。
本発明の電子機器は、本発明の弾性表面波素子を備えることを特徴とする。
これにより、優れた信頼性を有する電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の弾性表面波素子および電子機器の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の弾性表面波素子の実施形態を模式的に示す平面図、図2は、図1中におけるA−A線断面図である。なお、以下の説明では、図1中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」と言い、図2中の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言う。
【0019】
図1および図2に示す弾性表面波素子1は、基板2の一方の面上に硬質層3と圧電体層4とがこの順に積層されているとともに、圧電体層4の硬質層3と反対側の面上に入力用のIDT5および出力用のIDT6と1対の反射器7、8とを備える電極層10と、保護層(絶縁膜)9がこの順に積層されている。
この弾性表面波素子1は、いわゆる2ポート型と呼ばれるタイプの素子であり、入力用のIDT5に電圧を印加することにより、圧電体層4に弾性表面波を励振させ、その弾性表面波を1対の反射器7、8間で反射させながら出力用のIDT6で電圧に変換して特定の周波数の電圧を出力させる。特に、この弾性表面波素子1は、後に詳述するように圧電体層4および保護層9の厚さを最適化することによって3次または4次モードでの弾性表面波の使用を実現したものである。
【0020】
以下、この弾性表面波素子1を構成する各部を順次詳細に説明する。
基板2は、硬質層3および/または圧電体層4を支持または補強する機能を有する。なお、硬質層3や圧電体層4の厚さや強度などによっては、基板2を省略することができる。
基板2の構成材料としては、例えば、Si、GaSi、SiGe、GaAs、STC、InPのような各種半導体材料、水晶、各種ガラス材料、各種セラミックス材料、ポリイミド、ポリカーボネートのような各種樹脂材料等が挙げられるが、Siが好適に用いられる。
【0021】
基板2をシリコンを主材料として構成すると、硬質層3を形成するに際し、基板2の結晶状態を利用することで、優れた特性を有する硬質層3を簡単かつ確実に形成することができる。
基板2の厚さ(平均)は、特に限定されないが、0.05〜1mm程度であるのが好ましく、0.1〜0.8mm程度であるのがより好ましい。
【0022】
また、基板2は、単層で構成されたもののみならず、複数の層の積層体で構成されたものでもよく、この場合、各層は、前述したような材料を任意に組み合わせて用いることができる。
このような基板2の上面には、主としてダイヤモンドで構成された硬質層3が接合されている。
【0023】
硬質層(下地層)3は、圧電体層4の構成材料よりも硬質な材料で構成され、圧電体層4において励振される弾性表面波の特性を設定する機能を有するものである。この特性としては、例えば、発振周波数、振幅、伝搬速度等が挙げられる。
このような硬質層3の構成材料を適宜設定することにより、弾性表面波の特性を所望のものに設定することが可能となる。
【0024】
このような硬質層3の構成材料であるダイヤモンドとしては単結晶、多結晶、アモルファス、DLC(Diamond Like Carbon)のいずれの形態であっても用いることができる。このように硬質な硬質層3を設けることで、圧電体層4での弾性表面波の伝播特性に優れた弾性表面波素子1を得ることができる。特に、弾性表面波の高周波化を容易に図ることができる。その結果、無線LANや光通信などの高速通信分野への適用を目的として要求される弾性表面波の高周波化に寄与することができる。
硬質層3の厚さ(平均)は、特に限定されないが、1〜20μm程度であるのが好ましく、3〜15μm程度であるのがより好ましく、5〜10μm程度であるのがさらに好ましい。
【0025】
また、硬質層3は、単層で構成されたもののみならず、目的とする弾性表面波の特性に応じて、複数の層の積層体で構成することもできる。
また、このような硬質層3の形成には、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、シート状部材の接合等を用いることができる。
【0026】
このような硬質層3の上面には、圧電体層4が接合されている。
圧電体層4は、弾性表面波を励振させる機能を有する。
特に、本実施形態のように硬質層3を備える弾性表面波素子1においては、圧電体層4の構成材料として酸化亜鉛(ZnO)を用いることにより、弾性表面波を効率的に発生させることができる。
【0027】
また、このような圧電体層4は、C軸配向性に優れていること、すなわち、ZnO膜の(001)面が基板2と平行となるように形成されているのが好ましい。これにより、ZnOの圧電性を効率的に利用することができる。
また、圧電体層4の厚さTは、後に詳述するように電極層10の厚さT、保護層9の厚さT、および3次モードまたは4次モードの弾性表面波の波長λとの間に所定の関係を有している。
このような圧電体層4の厚さ(平均層厚)Tは、前記関係を有していれば特に限定されないが、例えば、0.01〜5μm程度であるのが好ましく、0.1〜2μm程度であるのがより好ましい。
【0028】
また、このような圧電体層4の形成には、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射、シート状部材の接合等を用いることができる。
このような圧電体層4の硬質層3と反対側の面には、電極層10、すなわち、1対のIDT(櫛歯状電極)5、6および1対の反射器7、8が接合されている。
【0029】
入力用のIDT5は、電気信号を受け(電圧が印加され)、これにより、圧電体層4に弾性表面波を励振させる機能を与えるものである。一方、出力用のIDT6は、圧電体層4を伝搬する弾性表面波を受け、これを電気信号に変換する機能を有するものである。
したがって、IDT5に駆動電圧(電気信号)が入力されると、圧電体層4において弾性表面波が励振され、フィルタリング機能による特定の周波数帯域の電気信号が、IDT6から出力される。すなわち、このような1対のIDT5、6を有することにより、発振器やフィルタとして利用可能な弾性表面波素子1を提供することができる。
【0030】
IDT5は、1対の電極5a、5bで構成され、互いに間隔を隔てて並設された複数の電極指51を有している。これと同様に、IDT6は、1対の電極6a、6bで構成され、互いに間隔を隔てて並設された複数の電極指61を有している。このようなIDT5、6の電極指の幅、間隔、厚さ等を調整することにより、弾性表面波の発振周波数の特性を所望のものに設定することができる。
【0031】
IDT5、6は、Alを主材料として構成されている。Alは、電気抵抗が小さいため、IDT5、6をAlを主材料として構成することにより、エネルギー損失が小さくなる。このため、弾性表面波素子1では、弾性表面波の共振がより鋭くなる。
また、Alは比重が小さいので、IDT5、6の膜厚に依存した音速変化が小さく抑えられる。したがって、中心周波数のばらつきを抑えることができる。
【0032】
また、IDT5、6の膜厚の制御が容易となるので、精度の高い弾性表面波素子1を得ることができる。
さらに、Alに、Cu、Si、Ti、Mo、Sc等を添加することにより、IDT5、6のマイグレーション耐性を改善することもできる。
このようなIDT5、6は、例えば、圧電体層4上に、Alを主材料として構成された導電性材料層を形成した後、この導電性材料層に、IDT5、6に対応する形状のマスクを用いて、エッチングを施すことにより形成することができる。
【0033】
導電性材料層の形成には、例えば、ディッピング法、印刷法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、溶射、金属箔の接合等を用いることができる。
また、エッチングには、例えば、リアクティブイオンエッチング(RIE)、プラズマエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチングのようなドライエッチング、ウェットエッチング等を用いることができる。
【0034】
このような1対のIDT5、6を介して対向するように、1対の反射器7、8が配置されている。
各反射器7、8は、圧電体層4に伝搬する弾性表面波を反射して、反射器7と反射器8との間にエネルギーを閉じ込める機能を有し、弾性表面波の共振をより鋭くすることができる。
【0035】
また、反射器7は、所定間隔で並設された複数の反射体71を有し、全体としてグレーティング状をなしている。これと同様に、反射器8は、所定間隔で並設された複数の反射体81を有し、全体としてグレーティング状をなしている。これにより、各反射器7、8は、それぞれ、弾性表面波を効率よく反射することができる。
このような反射体71、81の幅、間隔、ピッチ、厚さ等を調整することにより、弾性表面波素子1において励振される弾性表面波の発振周波数等の特性を所望のものに設定することができる。
【0036】
また、各反射器7、8の構成は、互いに同じであっても異なっていてもよいが、ほぼ同じ構成とするのが好ましい。これにより、反射器7と反射器8との間に、より確実に弾性表面波を封じ込めることができ、その結果、弾性表面波をより大きく共振させることができる。
このような反射器7、8の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、Al、Ta、W、Au、Pt、Cu、Tiまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、反射器7、8の構成材料の構成材料としては、Alを主成分とするものが好ましい。
【0037】
このような反射器7、8は、前述したIDT5、6と同様の方法を用いて形成することができ、また、IDT5、6と同時に形成することができる。
このような電極層10の厚さ(特に、IDT5、6の平均厚さ)Tは、後に詳述するように保護層9の厚さT、と圧電体層4の厚さT、および3次モードまたは4次モードの弾性表面波の波長λとの間に所定の関係を有している。
【0038】
このような電極層10の厚さ(平均層厚)Tは、前記関係を有していれば特に限定されないが、例えば、0.8〜300nm程度であるのが好ましく、10〜200nm程度であるのがより好ましい。
このようなIDT5、6を覆うように、酸化シリコン(SiO)で構成された保護層9が設けられている。ここで、保護層9には、開口部11〜14が形成されていて、外部からIDT5、6への電気的導通が確保されている。この開口部11〜14は、平面視にてIDT5、6の電極指51、61以外の部分上に設けられている。
【0039】
保護層9は、IDT5、6を保護する機能を有する。これにより、IDT5、6の表面に異物が付着して電極指51間、電極指61間でショートが生じるのを防止することができる。
また、保護層9は、弾性表面波素子1の温度特性を低減させる機能をも有するものである。ここで、温度特性(周波数温度特性)とは、温度変化に伴って、発振周波数が変動する特性のことを言う。その指標としては、1次温度係数[ppm/℃]が挙げられ、この1次温度係数は、その値が0に近いほど、温度変化に伴う発振周波数の変動が少ないことを示す。特に、弾性表面波素子1では、後に詳述するように、電極層10の厚さT、保護層9の厚さT、および圧電体層4の厚さTを、3次モードまたは4次モードの弾性表面波の波長λに対し最適化することで、温度特性を優れたものとしつつ、高速な3次または4次モードの弾性表面波を利用可能とする。
【0040】
保護層9は、酸化シリコンで構成されているため、弾性表面波素子1の温度特性をより確実に低減させることができる。また、圧電体層4との密着性の向上を図ることもできる。さらに、酸化シリコンは、絶縁性にも優れ、IDT5、6におけるマイグレーションの発生等を好適に防止することができ、弾性表面波素子1の経時的劣化を抑制する観点からも好ましい。
【0041】
また、酸化シリコンで構成された保護層9は、スパッタ法やCVD法により比較的容易に形成可能であるとともに、特に高い絶縁性を有する。
さらに、酸化シリコンで構成された保護層9は、温度が高くなるほど、伝播速度が大きくなる、つまり周波数が高くなる性質がある。前述した硬質層3、圧電体層4は、温度が高くなるほど、伝播速度が小さくなる、つまり周波数が低くなる性質がある。硬質層3、圧電体層4と酸化シリコンで構成された保護層9を組み合わせることで温度特性を低減させることが可能となる。
【0042】
また、保護層9の厚さTは、後に詳述するように電極層10の厚さT、圧電体層4の厚さT、および3次モードまたは4次モードの弾性表面波の波長λとの間に所定の関係を有している。
このような保護層9の厚さ(平均層厚)Tは、前記関係を有していれば特に限定されないが、例えば、0.01〜5μm程度であるのが好ましく、0.1〜2μm程度であるのがより好ましい。
【0043】
また、このような保護層9の形成には、特に限定されないが、例えば、加熱蒸着法、CVD、PVD等を用いることができる。
ここで、前述したような弾性表面波素子1における電極層10の厚さTと圧電体層4の厚さTと保護層9の厚さTと3次モードまたは4次モードの弾性表面波の波長λとの関係を説明する。
【0044】
まず、電極層10の厚さTと圧電体層4の厚さTと保護層9の厚さTと3次モードまたは4次モードの弾性表面波の波長λとの関係の説明に先立ち、2次、3次、4次の各モードでの弾性表面波の変位量と、弾性表面波素子1の深さ(厚さ方向での位置)との関係を説明する。
図3(a)は、2次モードの弾性表面波の変位量と、弾性表面波素子の深さ(厚さ方向での位置)との関係を示すグラフ、図3(b)は、3次モードの弾性表面波の変位量と、弾性表面波素子の深さ(厚さ方向での位置)との関係を示すグラフ、図3(c)は、4次モードの弾性表面波の変位量と、弾性表面波素子の深さ(厚さ方向での位置)との関係を示すグラフである。なお、図3において、弾性表面波の変位量は、進行方向での変位u1と、深さ方向での変位u2とをベクトル和したもの(すなわち√(u1+u2))を規格化したものである。
【0045】
図3(a)に示すように、2次モードの弾性表面波は、弾性表面波素子の硬質層3と圧電体層4との界面より表面側における変位量が極めて大きい。
これに対し、図3(b)に示すように、3次モードの弾性表面波は、弾性表面波素子の硬質層3と圧電体層4との界面より表面側の変位量が比較的少なく、また、硬質層3側での変位量が比較的大きい。
【0046】
また、図3(c)に示すように、4次モードの弾性表面波は、弾性表面波素子の硬質層3と圧電体層4との界面より表面側の変位量が比較的少なく、また、硬質層3側での変位量が比較的大きい。また、図3(b)に示す3次モードの弾性表面波に比しても、弾性表面波素子の硬質層3と圧電体層4との界面より表面側の変位量が少なく、また、硬質層3側での変位量が大きい。
【0047】
このように3次または4次のような高次モードの弾性表面波では、2次モードを用いた弾性表面波に比較して、弾性表面波の振動が硬質層3により深く及ぶことで硬質層3がより多く振動に寄与しており、硬質層3と圧電体層4との界面より表面側に集中する振動エネルギーを硬質層3側により多く配分させることで、硬質層3と圧電体層4との界面より表面側における変位集中を緩和していることがわかる。
【0048】
このような3次モード以上の高速な弾性表面波に最適化した弾性表面波素子1では、弾性表面波素子1のIDT5、6付近を含む表面付近での変位集中を緩和して、弾性表面波素子1の耐電力特性を向上させることができる。
しかも、後述するように同一のT、Tで比較した場合、3次または4次モードの弾性表面波は2次モードの弾性表面波よりも高速であるため、3次または4次モードの弾性表面波を用いることにより高周波化を実現することができる。また、同一の周波数で動作する弾性表面波素子を作製する場合、電極のピッチを大きくすることができるため製造上有利であり弾性表面波素子の歩留まりを良くすることができる。
【0049】
次に、3次、4次の各モードでの弾性表面波に関し、電極層10の厚さT、圧電体層4の厚さT、および保護層9の厚さTと、1次温度係数との関係の説明を説明する。
図4および図5は、それぞれ、3次モードの弾性表面波の各1次温度係数における圧電体層の厚さと保護層の厚さとの関係を示すグラフ、図6および図7は、それぞれ、4次モードの弾性表面波の各1次温度係数における圧電体層の厚さと保護層の厚さとの関係を示すグラフである。
【0050】
なお、図4ないし図7においては、電極層の厚さとして、規格化された膜厚(無次元の規格化膜厚)kTを用い、圧電体層の厚さとして、規格化された膜厚(無次元の規格化膜厚)kTを用い、保護層の厚さとして、規格化された膜厚(無次元の規格化膜厚)kTを用いている。また、ここで、k=(2π/λ)である。
3次モードの弾性表面波では、図4に示すように、0.001≦kT≦0.01のときには、kTが、1.3〜2.0であり、かつ、kTが、0.5〜1.1である範囲において、1次温度係数を−15〜15ppm/℃とすることができる。
【0051】
また、3次モードの弾性表面波では、図5に示すように、0.01≦kT≦0.02のときには、kTが、1.3〜2.0であり、かつ、kTが、0.6〜1.2である範囲において、1次温度係数を−15〜15ppm/℃とすることができる。
そこで、本発明では、電極層10の平均層厚をT、圧電体層4の平均層厚をT、保護層9の平均層厚をT、圧電体層4の3次モードの弾性表面波の波長をλ、(2π/λ)をkとしたときに、
下記(1)〜(3)のそれぞれの関係式を満たすことを特徴とする。
0.001≦kT≦0.02・・・・・・・(1)
1.3≦kT≦2.0・・・・・・・・・・(2)
0.5≦kT≦1.2・・・・・・・・・・(3)
このように3次モードの弾性表面波を用いる場合において上記(1)〜(3)の関係式を満たすことにより、温度変化による周波数変動を小さく抑えるとともに、耐電力特性を向上させつつ、動作周波数の高周波数化を図ることができる。
【0052】
また、3次モードの弾性表面波では、図4および図5に示すように、上記の(1)〜(3)を満たすときに、kTを変更しても1次温度係数がほとんど変化しないのに対し、kTを変更すると1次温度係数が変化する。このことから、保護層9の厚さTを制御することで、1次温度係数を所望の値に制御することができる。したがって、弾性表面波素子1を製造するに際し、上記の(1)〜(3)を満たしつつ保護層9の厚さTを高精度に制御するだけで、所望の値の1次温度係数を有する弾性表面波素子1を歩留まりよく得ることができる。
【0053】
特に、3次モードの弾性表面波を用いる場合、図4に示すように、0.001≦kT≦0.01のとき、下記(4)、(5)のぞれぞれの関係式を満たすのが好ましい。
1.3≦kT≦2.0・・・・・・・・・・(4)
0.5≦kT≦1.1・・・・・・・・・・(5)
このように上記(4)、(5)の関係式を満たすことにより、より確実に1次温度係数を−15〜15ppm/℃とし、温度変化による周波数変動をより小さく抑えるとともに、耐電力特性を向上させつつ、動作周波数の高周波数化を図ることができる。
【0054】
ここで、1次温度係数が0に近いほど温度特性に優れていることから、3次モードの弾性表面波を用いる場合、0.001≦kT≦0.01のとき、kTは、0.7〜0.8であるのがさらに好ましい。これにより、1次温度係数をほぼ0ppm/℃とし、極めて優れた温度特性を有する弾性表面波素子1を提供することができる。
これに対し、kTが前記(4)の下限値未満であると、3次モードの弾性表面波を発生させることができない場合がある。一方、kTが前記(4)の上限値を超えると、高速な弾性表面波を発生させるのが困難となる。
【0055】
また、kTが前記(5)の下限値未満であると、1次温度係数が0から大きく外れて温度特性の悪化を招くだけでなく、3次モードの弾性表面波を発生させることができない場合がある。一方、kTが前記(5)の上限値を超えると、1次温度係数が0から大きく外れて温度特性の悪化を招くだけでなく、高速な弾性表面波を発生させるのが困難となる。
【0056】
また、3次モードの弾性表面波を用いる場合、図5に示すように、0.01≦kT≦0.02のとき、下記(6)、(7)のそれぞれの関係式を満たすのが好ましい。
1.3≦kT≦2.0・・・・・・・・・・(6)
0.6≦kT≦1.2・・・・・・・・・・(7)
このように上記(6)、(7)の関係式を満たすことによっても、より確実に1次温度係数を−15〜15ppm/℃とし、温度変化による周波数変動をより小さく抑えるとともに、耐電力特性を向上させつつ、動作周波数の高周波数化を図ることができる。
【0057】
ここで、1次温度係数が0に近いほど温度特性に優れていることから、3次モードの弾性表面波を用いる場合、0.01≦kT≦0.02のとき、kTは、0.85〜0.95であるのがさらに好ましい。これにより、1次温度係数をほぼ0ppm/℃とし、極めて優れた温度特性を有する弾性表面波素子1を提供することができる。
これに対し、kTが前記(6)の下限値未満であると、3次モードの弾性表面波を発生させることができない場合がある。一方、kTが前記(6)の上限値を超えると、高速な弾性表面波を発生させるのが困難となる。
【0058】
また、kTが前記(7)の下限値未満であると、1次温度係数が0から大きく外れて温度特性の悪化を招くだけでなく、3次モードの弾性表面波を発生させることができない場合がある。一方、kTが前記(7)の上限値を超えると、1次温度係数が0から大きく外れて温度特性の悪化を招くだけでなく、高速な弾性表面波を発生させるのが困難となる。
【0059】
一方、4次モードの弾性表面波では、図6に示すように、0.001≦kT≦0.01のときには、kTが、かつ、kTが、0.7〜2.0であり、0.8〜3.0である範囲において、1次温度係数を−15〜15ppm/℃とすることができる。
また、4次モードの弾性表面波では、図7に示すように、0.01≦kT≦0.02のときには、kTが、0.6〜2.0であり、かつ、kTが、0.9〜3.3である範囲において、1次温度係数を−15〜15ppm/℃とすることができる。
【0060】
そこで、本発明では、電極層10の平均層厚をT、圧電体層4の平均層厚をT、保護層9の平均層厚をT、圧電体層4の4次モードの弾性表面波の波長をλ、(2π/λ)をkとしたときに、
下記(10)〜(12)のそれぞれの関係式を満たすことを特徴とする。
0.001≦kT≦0.02・・・・・・・・(10)
0.6≦kT≦2.0・・・・・・・・・・・(11)
0.8≦kT≦3.3・・・・・・・・・・・(12)
このように4次モードの弾性表面波を用いる場合において上記(10)〜(12)の関係式を満たすことにより、温度変化による周波数変動を小さく抑えるとともに、耐電力特性を向上させつつ、動作周波数の高周波数化を図ることができる。
【0061】
また、4次モードの弾性表面波では、図6および図7に示すように、上記の(10)〜(12)を満たすときに、3次モードの弾性表面波の場合に比べ、kTを変更しても1次温度係数の変化が少ない。このことから、3次モードの弾性表面波を用いる場合に比し、保護層9の厚さTの制御に高精度を要しない。また、3次モードの弾性表面波の場合ほどではないが、kTを変更しても1次温度係数の変化が比較的少ない。したがって、弾性表面波素子1を製造するに際し、所望の値の1次温度係数を有する弾性表面波素子1を容易に得ることができる。
【0062】
特に、4次モードの弾性表面波を用いる場合、図6に示すように、0.001≦kT≦0.01のとき、下記(13)、(14)のそれぞれの関係式を満たすのが好ましい。
0.7≦kT≦2.0・・・・・・・・・・・(13)
0.8≦kT≦3.0・・・・・・・・・・・(14)
このように上記(13)、(14)の関係式を満たすことにより、より確実に1次温度係数を−15〜15ppm/℃とし、温度変化による周波数変動をより小さく抑えるとともに、耐電力特性を向上させつつ、動作周波数の高周波数化を図ることができる。
【0063】
ここで、1次温度係数が0に近いほど温度特性に優れていることから、4次モードの弾性表面波を用いる場合、0.001≦kT≦0.01のとき、kTは、1.2〜1.4であるのがさらに好ましい。これにより、1次温度係数をほぼ0ppm/℃とし、極めて優れた温度特性を有する弾性表面波素子1を提供することができる。
これに対し、kTが前記(13)の下限値未満であると、4次モードの弾性表面波を発生させることができない場合がある。一方、kTが前記(13)の上限値を超えると、高速な弾性表面波を発生させるのが困難となる。
【0064】
また、kTが前記(14)の下限値未満であると、1次温度係数が0から大きく外れて温度特性の悪化を招くだけでなく、4次モードの弾性表面波を発生させることができない場合がある。一方、kTが前記(14)の上限値を超えると、1次温度係数が0から大きく外れて温度特性の悪化を招くだけでなく、高速な弾性表面波を発生させるのが困難となる。
【0065】
また、4次モードの弾性表面波を用いる場合、図7に示すように、0.01≦kT≦0.02のとき、下記(15)、(16)のそれぞれの関係式を満たすのが好ましい。
0.6≦kT≦2.0・・・・・・・・・・・(15)
0.9≦kT≦3.3・・・・・・・・・・・(16)
このように上記(15)、(16)の関係式を満たすことにより、より確実に1次温度係数を−15〜15ppm/℃とし、温度変化による周波数変動をより小さく抑えるとともに、耐電力特性を向上させつつ、動作周波数の高周波数化を図ることができる。
【0066】
ここで、1次温度係数が0に近いほど温度特性に優れていることから、4次モードの弾性表面波を用いる場合、0.01≦kT≦0.02のとき、kTは、1.3〜1.4であるのがさらに好ましい。これにより、1次温度係数をほぼ0ppm/℃とし、極めて優れた温度特性を有する弾性表面波素子1を提供することができる。
これに対し、kTが前記(15)の下限値未満であると、4次モードの弾性表面波を発生させることができない場合がある。一方、kTが前記(15)の上限値を超えると、高速な弾性表面波を発生させるのが困難となる。
【0067】
また、kTが前記(16)の下限値未満であると、1次温度係数が0から大きく外れて温度特性の悪化を招くだけでなく、4次モードの弾性表面波を発生させることができない場合がある。一方、kTが前記(16)の上限値を超えると、1次温度係数が0から大きく外れて温度特性の悪化を招くだけでなく、高速な弾性表面波を発生させるのが困難となる。
【0068】
次に、2次、3次、4次の各モードでの弾性表面波に関し、圧電体層4の厚さTおよび保護層9の厚さTと弾性表面波の伝播速度との関係の説明を説明する。
図8は、圧電体層の厚さと保護層の厚さと2次モードの弾性表面波の伝播速度との関係を示すグラフ、図9は、圧電体層の厚さと保護層の厚さと3次モードの弾性表面波の伝播速度との関係を示すグラフ、図10は、圧電体層の厚さと保護層の厚さと4次モードの弾性表面波の伝播速度との関係を示すグラフである。なお、図8ないし図10においては、圧電体層の厚さとして、規格化された膜厚(無次元の規格化膜厚)kTを用い、保護層の厚さとして、規格化された膜厚(無次元の規格化膜厚)kTを用いている。また、ここで、k=(2π/λ)である。
【0069】
2次モードでは、図8に示すように、kTが0.4〜2.0であり、かつ、kTが0.4〜2.0である範囲において、6500〜9000m/s程度の伝播速度を得ることができる。
これに対し、3次モードでは、図9に示すように、kTが0.4〜2.0であり、かつ、kTが0.4〜2.0である範囲において、7000〜12000m/sの伝播速度を得ることができる。
【0070】
さらに、4次モードでは、図10に示すように、kTが0.4〜2.0であり、かつ、kTが0.4〜2.0である範囲において、8500〜12000m/sの伝播速度を得ることができる。
このように3次または4次モードの弾性表面波を用いると、2次モードの弾性表面波を用いるよりも、弾性表面波素子の高速化が容易であることがわかる。
【0071】
したがって、以下のように、弾性表面波素子1では、前述したような条件に加えて、2次モードの弾性表面波を用いるよりも高速となるようなkTおよびkTを設定するのが好ましい。
より具体的に説明すると、3次モードの弾性表面波を用いる場合、2次モードの弾性表面波を用いるよりも高速となるには(伝播速度を9000m/sよりも高くするには)、図9において、座標(2.0,0.7)と座標(1.2,1.2)とを通る直線と、座標(1.2,1.2)と座標(0.5,2.0)とを通る直線とのいずれかよりも下方の領域に位置するように、kTおよびkTを設定すればよい。
【0072】
ここで、座標(2.0,0.7)と座標(1.2,1.2)とを通る直線は、
kT=−5/8×kT+39/20であり、
座標(1.2,1.2)と座標(0.5,2.0)とを通る直線は、
kT=−8/7×kT+18/7である。
したがって、弾性表面波素子1においては、kTおよびkTは、下記(8)、(9)のそれぞれの関係式を満たすのが好ましい。
kT≦−5/8×kT+39/20・・・・・・・・・・(8)
kT≦−8/7×kT+18/7・・・・・・・・・・・(9)
これにより、弾性表面波素子1は、従来の2次モードの弾性表面波を用いる弾性表面波素子よりも高速なものとすることができる。そして、前述したように3次モードの弾性表面波を用いることで耐電力特性を向上させることができる。したがって、弾性表面波素子1は、耐電力特性を向上させつつ、動作周波数の高周波数化を図ることができる。
【0073】
また、4次モードの弾性表面波を用いる場合、2次モードの弾性表面波を用いるよりも高速となるには(伝播速度を9000m/sよりも高くするには)、図10において、座標(2.0,1.6)と座標(1.2,2.0)とを通る直線よりも下方の領域に位置するように、kTおよびkTを設定すればよい。
ここで、座標(2.0,1.6)と座標(1.2,2.0)とを通る直線は、
kT=−1/2×kT+13/5である。
【0074】
したがって、弾性表面波素子1においては、kTおよびkTは、下記(17)の関係式を満たすのが好ましい。
kT≦−1/2×kT+13/5・・・・・・・・・・(17)
これにより、弾性表面波素子1は、従来の2次モードの弾性表面波を用いる弾性表面波素子よりも高速なものとすることができる。そして、前述したように4次モードの弾性表面波を用いることで耐電力特性を向上させることができる。したがって、弾性表面波素子1は、耐電力特性を向上させつつ、動作周波数の高周波数化を図ることができる。
【0075】
以上説明したような弾性表面波素子1によれば、電極層10と圧電体層4と保護層9とのそれぞれの厚さの最適化が図られているため、温度特性を優れたものとしつつ3次または4次モードでの弾性表面波を利用することができ、また、高速な3次または4次モードの弾性表面波を発生させることができる。3次または4次モードの弾性表面波を用いることで、IDT5、6付近を含む硬質層3と圧電体層4の界面より表面側での変位を小さくでき、IDT5、6の損傷を防止し、耐電力特性を向上させることができる。
【0076】
このように弾性表面波素子1は、耐電力特性を向上させつつ、動作周波数の高周波数化を図ることができる。
上述したような弾性表面波素子1は、各種の電子機器に適用することができ、得られる電子機器は、信頼性の高いものとなる。
次に、本発明の弾性表面波素子を備える電子機器について、図11〜図13に示す実施形態に基づき、詳細に説明する。
【0077】
図11は、本発明の弾性表面波素子を備える電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このようなパーソナルコンピュータ1100には、フィルタ、共振器、基準クロック等として機能する弾性表面波素子1やアンテナ1101が内蔵されている。
【0078】
図12は、本発明の弾性表面波素子を備える電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、アンテナ1201、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206を備え、操作ボタン1202と受話口1204との間には、表示部が配置されている。
このような携帯電話機1200には、フィルタ、共振器等として機能する弾性表面波素子1が内蔵されている。
【0079】
図13は、本発明の弾性表面波素子を備える電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0080】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、表示部は、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
また、ケース1302の正面側(図中裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
【0081】
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、メモリ1308に転送・格納される。
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示されるように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、メモリ1308に格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
このようなディジタルスチルカメラ1300には、フィルタ、共振器等として機能する弾性表面波素子1が内蔵されている。
【0082】
なお、本発明の弾性表面波素子を備える電子機器は、図11のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図12の携帯電話機、図13のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンタ)、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ等に適用することができる。
【0083】
以上、本発明の弾性表面波素子および電子機器について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の弾性表面波素子は、用途に応じて反射器、櫛歯状電極の数を変更してもよく、また反射器を省略することもできる。
また、例えば、櫛歯状電極および反射器は、それぞれ、電極指および反射体以外の部分が絶縁膜から露出するような構成であってもよい。
また、本発明の弾性表面波素子には、各種機能を有する半導体素子が複合化されていてもよい。
【実施例】
【0084】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.弾性表面波素子の作製
(実施例1)
まず、単結晶シリコンの基板の一方の面上に、水素とメタンガスを材料とした熱フィラメントCVD法を用いてダイヤモンドの硬質層を形成した。ここで、基板としては、厚さ800μmのものを用い、硬質層の厚さは、10μmであった。
【0085】
次に、形成された硬質層の単結晶シリコン基板とは反対側の面上に、スパッタリング法を用いてZnOの圧電体層を形成した。ここで、圧電体層の厚さは、1145nm(kT=1.8)であった。
次に、形成された圧電体層の硬質層とは反対側の面上に、Alをスパッタリング法により成膜した。
【0086】
その後、形成されたAlの膜上に、g線用ポジ型フォトレジストを塗布し、図1に示すIDTおよび反射器のような形状をなすマスクパターンを用いて露光、現像することにより転写した。
そして、りん酸をPH5.5〜5.0に純水で薄めた溶液を用いてエッチング工程を行い、図1および図2に示すような1対の櫛歯形電極(IDT)および1対の反射器を形成した。このエッチング工程の処理時間は、4分間程度であった。ここで、入力用および出力用の各IDTは50対の電極指を有するもの(開口長約30波長)であり、IDTの厚さ(電極層の厚さ)は64nm(kT=0.01)であり、各IDTの電極指のピッチは1μm(すなわち3次モードの弾性表面波の波長が4μm)であり、各反射器は100本の反射体を有するものであった(ピッチ1μm)。また、得られる弾性表面波素子(SAWフィルタ)の中心周波数が2.5GHzとなるように設計した。
その後、Oプラズマによるアッシング処理により、フォトレジストを剥離した。
【0087】
次に、1対のIDTおよび1対の反射器を覆うように、スパッタリング法を用いてSiOの保護層を形成した。ここで、保護層の厚さは、382nm(kT=0.6)であった。
以上のようにして、図1および図2に示すような弾性表面波素子を作製した。得られた弾性表面波素子は、3次モードの弾性表面波を用いるものであり、3次モードの伝播速度は、10000m/sであった。
【0088】
(実施例2)
保護層の厚さを541nm(kT=0.85)とした以外は、前述した実施例1と同様にして弾性表面波素子を作製した。得られた弾性表面波素子は、3次モードの弾性表面波を用いるものであり、3次モードの伝播速度は、8800m/sであった。
(実施例3)
保護層の厚さを700nm(kT=1.1)とした以外は、前述した実施例1と同様にして弾性表面波素子を作製した。得られた弾性表面波素子は、3次モードの弾性表面波を用いるものであり、3次モードの伝播速度は、8000m/sであった。
【0089】
(実施例4)
圧電体層の厚さを1050nm(kT=1.5)、保護層の厚さを630nm(kT=0.9)、IDTの厚さ(電極層の厚さ)を70nm(kT=0.01)、IDTの電極指のピッチを1.1μm(4次モードの弾性表面波の波長を4.4μm)、IDTの電極指を70対、反射器の反射体を40本とした以外は、前述した実施例1と同様にして弾性表面波素子を作製した。得られた弾性表面波素子は、4次モードの弾性表面波を用いるものであり、4次モードの伝播速度は、10700m/sであった。
【0090】
(実施例5)
保護層の厚さを840nm(kT=1.2)とした以外は、前述した実施例4と同様にして弾性表面波素子を作製した。得られた弾性表面波素子は、4次モードの弾性表面波を用いるものであり、4次モードの伝播速度は、9800m/sであった。
(実施例6)
保護層の厚さを2030nm(kT=2.9)とした以外は、前述した実施例4と同様にして弾性表面波素子を作製した。得られた弾性表面波素子は、4次モードの弾性表面波を用いるものであり、4次モードの伝播速度は、8500m/sであった。
【0091】
(比較例)
圧電体層の厚さを560nm(kT=0.8)、保護層の厚さを665nm(kT=0.95)、IDTの電極指のピッチを1.1μm(2次モードの弾性表面波の波長を4.4μm)、IDTの電極指を30対、反射器の反射体を60本とした以外は、前述した実施例1と同様にして弾性表面波素子を作製した。得られた弾性表面波素子は、2次モードの弾性表面波を用いるものであり、2次モードの伝播速度は、9000m/sであった。
【0092】
(参考例1)
保護層の厚さを255nm(kT=0.4)とした以外は、前述した実施例1と同様にして弾性表面波素子を作製した。得られた弾性表面波素子は、3次モードの弾性表面波を用いるものであり、3次モードの伝播速度は、10600m/sであった。
(参考例2)
保護層の厚さを828nm(kT=1.3)とした以外は、前述した実施例1と同様にして弾性表面波素子を作製した。得られた弾性表面波素子は、3次モードの弾性表面波を用いるものであり、3次モードの伝播速度は、7500m/sであった。
【0093】
(参考例3)
保護層の厚さを490nm(kT=0.7)とした以外は、前述した実施例4と同様にして弾性表面波素子を作製した。得られた弾性表面波素子は、4次モードの弾性表面波を用いるものであり、4次モードの伝播速度は、11200m/sであった。
(参考例4)
保護層の厚さを2380nm(kT=3.4)とした以外は、前述した実施例4と同様にして弾性表面波素子を作製した。得られた弾性表面波素子は、4次モードの弾性表面波を用いるものであり、4次モードの伝播速度は、8000m/sであった。
【0094】
2.評価
前述したようにして得られた実施例および比較例のそれぞれの弾性表面波素子について、温度特性および耐電力の評価を行った。
<温度特性>
各実施例および各比較例の弾性表面波素子(2重モードSAWフィルタ)について、各弾性表面波素子をヒータで加熱しながら25〜55℃の範囲で温度を変化させ、ベクトルネットワークアナライザ(横河ヒューレットパッカード社製、8753c)を用いて、10℃間隔で中心周波数を測定し、1次温度係数(TCF)を求めた。
【0095】
ここで、中心周波数の測定に際し、複数あるピークのうち最も通過特性が良好なピークの周波数を中心周波数とした。その一例として、図14に、実施例1の弾性表面波素子におけるフィルタ通過特性を示す。
上記のようにして1次温度係数を求めた結果、実施例1、4では、1次温度係数が約−15ppm/℃、実施例2、5では、1次温度係数が約0ppm/℃、実施例3、6では、1次温度係数が約15ppm/℃であった。例えば、実施例1では、図15(a)に示すような温度特性を示し、実施例2では、図15(b)に示すような温度特性を示し、実施例3では、図15(c)に示すような温度特性を示した。図15では、弾性表面波素子の温度と中心周波数の変化量(Δf/f)との関係を示しており、温度変化に対し中心周波数の変化量が直線的に変化している。この直線の傾きの程度が1次温度係数に対応している。
また、比較例では、1次温度係数が5ppm/℃であった。
また、参考例1、3では、1次温度係数が約−20ppm/℃、参考例2、4では、1次温度係数が約20ppm/℃であった。
【0096】
<耐電力>
各実施例および各比較例の弾性表面波素子について、ベクトルネットワークアナライザ(横河ヒューレットパッカード社製、8753c)を用いて挿入損失を測定し、試験前から3dB損失が増加した時点で寿命と判断した。
その結果、比較例では、5時間、実施例1〜3では、20時間、実施例4〜6では、30時間であった。これにより、3次モード以上の高次の弾性表面波を用いることで、2次モードを用いた従来の弾性表面波素子に比べ、寿命が4〜6倍となり大幅な改善が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の弾性表面波素子の実施形態を模式的に示す平面図である。
【図2】図1中におけるA−A線断面図である。
【図3】各次モードの弾性表面波の変位量と、弾性表面波素子の深さ(厚さ方向での位置)との関係を示すグラフである。
【図4】3次モードの弾性表面波の各1次温度係数における圧電体層の厚さと保護層の厚さとの関係を示すグラフである。
【図5】3次モードの弾性表面波の各1次温度係数における圧電体層の厚さと保護層の厚さとの関係を示すグラフである。
【図6】4次モードの弾性表面波の各1次温度係数における圧電体層の厚さと保護層の厚さとの関係を示すグラフである。
【図7】4次モードの弾性表面波の各1次温度係数における圧電体層の厚さと保護層の厚さとの関係を示すグラフである。
【図8】圧電体層の厚さと保護層の厚さと2次モードの弾性表面波の伝播速度との関係を示すグラフである。
【図9】圧電体層の厚さと保護層の厚さと3次モードの弾性表面波の伝播速度との関係を示すグラフである。
【図10】圧電体層の厚さと保護層の厚さと4次モードの弾性表面波の伝播速度との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の弾性表面波素子を備える電子機器(ノート型パーソナルコンピュータ)である。
【図12】本発明の弾性表面波素子を備える電子機器(携帯電話機)である。
【図13】本発明の弾性表面波素子を備える電子機器(ディジタルスチルカメラ)である。
【図14】実施例1の弾性表面波素子におけるフィルタ通過特性(S21)を示すグラフである。
【図15】実施例1〜3の弾性表面波素子の1次温度特性を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
【0098】
1‥‥弾性表面波素子 2‥‥基板 3‥‥硬質層 4‥‥圧電体層 5、6‥‥IDT(櫛歯状電極) 5a、5b、6a、6b‥‥電極 51、61‥‥電極指 7、8‥‥反射器 71、81‥‥反射体 9‥‥保護層 10‥‥電極層 11〜14‥‥開口部 1100‥‥パーソナルコンピュータ 1101‥‥アンテナ 1102‥‥キーボード 1104‥‥本体部 1106‥‥表示ユニット 1200‥‥携帯電話機 1201‥‥アンテナ 1202‥‥操作ボタン 1204‥‥受話口 1206‥‥送話口 1300‥‥ディジタルスチルカメラ 1302‥‥ケース(ボディー) 1304‥‥受光ユニット 1306‥‥シャッタボタン 1308‥‥メモリ 1312‥‥ビデオ信号出力端子 1314‥‥データ通信用の入出力端子 1430‥‥テレビモニタ 1440‥‥パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤモンドを主として構成された硬質層上に、
ZnOを主として構成された圧電体層と、
Alを主材料として構成された櫛歯状電極を備える電極層と、
SiOを主として構成された保護層とがこの順に積層され、
前記櫛歯状電極に通電することにより、前記圧電体層に弾性表面波を生じさせるように構成され、
前記電極層の平均層厚をT、前記圧電体層の平均層厚をT、前記保護層の平均層厚をT、前記圧電体層の3次モードの弾性表面波の波長をλ、(2π/λ)をkとしたときに、
下記(1)〜(3)のそれぞれの関係式を満たすことを特徴とする弾性表面波素子。
0.001≦kT≦0.02・・・・・・・(1)
1.3≦kT≦2.0・・・・・・・・・・(2)
0.5≦kT≦1.2・・・・・・・・・・(3)
【請求項2】
0.001≦kT≦0.01のとき、下記(4)、(5)のぞれぞれの関係式を満たす請求項1に記載の弾性表面波素子。
1.3≦kT≦2.0・・・・・・・・・・(4)
0.5≦kT≦1.1・・・・・・・・・・(5)
【請求項3】
0.01≦kT≦0.02のとき、下記(6)、(7)のそれぞれの関係式を満たす請求項1に記載の弾性表面波素子。
1.3≦kT≦2.0・・・・・・・・・・(6)
0.6≦kT≦1.2・・・・・・・・・・(7)
【請求項4】
下記(8)、(9)のそれぞれの関係式を満たす請求項1ないし3のいずれかに記載の弾性表面波素子。
kT≦−5/8×kT+39/20・・・(8)
kT≦−8/7×kT+18/7・・・・(9)
【請求項5】
ダイヤモンドを主として構成された硬質層上に、
ZnOを主として構成された圧電体層と、
Alを主材料として構成された櫛歯状電極を備える電極層と、
SiOを主として構成された保護層とがこの順に積層され、
前記櫛歯状電極に通電することにより、前記圧電体層に弾性表面波を生じさせるように構成され、
前記電極層の平均層厚をT、前記圧電体層の平均層厚をT、前記保護層の平均層厚をT、前記圧電体層の4次モードの弾性表面波の波長をλ、(2π/λ)をkとしたときに、
下記(10)〜(12)のそれぞれの関係式を満たすことを特徴とする弾性表面波素子。
0.001≦kT≦0.02・・・・・・・・(10)
0.6≦kT≦2.0・・・・・・・・・・・(11)
0.8≦kT≦3.3・・・・・・・・・・・(12)
【請求項6】
0.001≦kT≦0.01のとき、下記(13)、(14)のそれぞれの関係式を満たす請求項5に記載の弾性表面波素子。
0.7≦kT≦2.0・・・・・・・・・・・(13)
0.8≦kT≦3.0・・・・・・・・・・・(14)
【請求項7】
0.01≦kT≦0.02のとき、下記(15)、(16)のそれぞれの関係式を満たす請求項5に記載の弾性表面波素子。
0.6≦kT≦2.0・・・・・・・・・・・(15)
0.9≦kT≦3.3・・・・・・・・・・・(16)
【請求項8】
下記(17)の関係式を満たす請求項5ないし7のいずれかに記載の弾性表面波素子。
kT≦−1/2×kT+13/5・・・・・(17)
【請求項9】
前記硬質層の前記圧電体層と反対側の面上には、シリコンを主材料として構成された基板が接合されている請求項1ないし8のいずれかに記載の弾性表面波素子。
【請求項10】
前記櫛歯状電極は、互いに間隔を隔てて噛み合うように1対設けられている請求項1ないし9のいずれかに記載の弾性表面波素子。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の弾性表面波素子を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2008−311853(P2008−311853A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156482(P2007−156482)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】