説明

弾性表面波装置の温度特性調整方法および弾性表面波装置の製造方法、弾性表面波装置

【課題】温度特性の調整を可能とする弾性表面波装置の温度特性調整方法および弾性表面波装置の製造方法、弾性表面波装置を提供する。
【解決手段】オイラー角が(0°,113°≦θ≦135°,40°≦|ψ|≦49°)の水晶基板にRayleigh型弾性表面波を励振させる多数の電極指を設けたシングル型のIDT電極と、該IDT電極の両側に反射器を備え、前記弾性表面波のストップバンドの下限モードを励振させる弾性表面波装置の温度特性調整方法であって、IDT電極の対数を変化させて前記弾性表面波装置における温度特性の頂点温度を調整することで温度特性を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶基板にRayleigh型弾性表面波を励振させるシングル型のIDT電極を備えた、弾性表面波装置の温度特性調整方法および弾性表面波装置の製造方法、弾性表面波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
STカットに代表される水晶基板を用いた弾性表面波装置は、水晶が持つ高い温度安定性を利用し高精度化が図られ、発振器用途などに用いられている。近年、携帯通信機器等の普及により、高周波化、小型化に対応し、さらに温度に対して安定である高精度な弾性表面波装置が要求されている。
【0003】
このSTカット水晶基板を利用した弾性表面波装置は、非特許文献1に示すように、IDT電極の厚みにより温度特性(温度変化に対する周波数変動量の特性)が変化することが知られている。
また、面内回転STカット水晶基板を利用した弾性表面波装置は、特許文献1および非特許文献2にあるように、水晶基板のカット角、IDT電極厚み、基準化電極幅(IDT電極幅/IDT電極ピッチ)の変化に対応して、温度特性が変化することも知られている。そして、これらの設計要素を考慮しながら、温度特性が所望の特性となるように弾性表面波装置の設計が行われている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−152487号公報
【非特許文献1】信学技報、社団法人電子情報通信学会、US99−20(1999―06)、p.37−42
【非特許文献2】「Temperature Stability of Surface Acoustic Wave Resonators on In-Plane Rotated 33° Y-Cut Quartz」JJAP、Vol.42(2003)pp.3136−3138
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水晶基板のカット角、IDT電極厚み、基準化電極幅などは弾性表面波装置の設計上で設定され、IDT電極を形成した後では、これらの設計要素を大きく変化させることは困難であり、温度特性の調整はほとんど行われていなかった。
このように、設計およびIDT電極を形成した後の製造工程の両者において、弾性表面波装置の温度特性を調整できる知見は少ない。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、設計およびIDT電極を形成した後の製造工程の両者において温度特性の調整を可能とする弾性表面波装置の温度特性調整方法および弾性表面波装置の製造方法、弾性表面波装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、オイラー角が(0°,113°≦θ≦135°,40°≦|ψ|≦49°)の水晶基板にRayleigh型弾性表面波を励振させる多数の電極指を設けたシングル型のIDT電極と、該IDT電極の両側に反射器を備え、前記弾性表面波のストップバンドの下限モードを励振させる弾性表面波装置の温度特性調整方法であって、前記IDT電極の対数を変化させて前記弾性表面波装置における温度特性の頂点温度を調整することを特徴とする。
【0007】
この弾性表面波装置の温度特性調整方法によれば、面内回転STカット水晶基板を用い、シングル型のIDT電極を備えた、弾性表面波のストップバンドの下限モードを励振させる弾性表面波装置において、従来知られていなかったIDT電極の対数を変化させることで温度特性の頂点温度を調整し、弾性表面波装置の温度特性を調整することができる。また、この水晶基板のカット角では、STカット水晶基板を用いる場合に比較して、温度に対する周波数変動量を小さくすることができ、優れた温度特性を備えた弾性表面波装置を提供できる。
【0008】
また本発明では、前記弾性表面波装置に前記IDT電極と前記反射器との間に櫛形電極をさらに備え、前記IDT電極を切断してIDT電極の対数を減ずること、または前記IDT電極に前記櫛形電極を接続してIDT電極の対数を増すことで、前記IDT電極の対数を変化させることが望ましい。
【0009】
この弾性表面波装置の温度特性調整方法によれば、IDT電極を形成した後の製造工程の中で、IDT電極に櫛形電極を接続すること、またはIDT電極を切断することでIDT電極の対数を増減することができる。そして、温度特性の頂点温度を調整し、弾性表面波装置の温度特性を調整することができる。このことから、製造工程における温度特性のばらつきを抑えることができ、より高安定な弾性表面波装置を得ることができる。
【0010】
本発明では、前記IDT電極の一部にレーザ光を照射することで前記IDT電極を切断して、前記IDT電極の電極指の対数を減ずることが望ましい。
【0011】
この弾性表面波装置の温度特性調整方法によれば、IDT電極にレーザ光を照射することで容易にIDT電極を切断でき、IDT電極の電極指の対数を減ずることができる。
【0012】
本発明では、前記IDT電極と前記櫛形電極とをインクジェット法により導電性材料を塗布して接続することが望ましい。
【0013】
この弾性表面波装置の温度特性調整方法によれば、IDT電極と櫛形電極の間にインクジェット法により導電性材料を塗布することで、容易にIDT電極と櫛形電極を接続することができる。
【0014】
本発明では、オイラー角が(0°,0°≦θ≦180°,9°≦|ψ|≦46°)の水晶基板にRayleigh型弾性表面波を励振させる多数の電極指を設けたシングル型のIDT電極と、該IDT電極の両側に反射器を備え、前記弾性表面波のストップバンドの上限モードを励振させる弾性表面波装置の温度特性調整方法であって、前記IDT電極の対数を変化させて前記弾性表面波装置における3次関数の温度特性の1次温度係数を調整することを特徴とする。
【0015】
この弾性表面波装置の温度特性調整方法によれば、面内回転STカット水晶基板を用い、シングル型のIDT電極を備えた、弾性表面波のストップバンドの上限モードを励振させる弾性表面波装置において、従来知られていなかったIDT電極の対数を変化させることで弾性表面波装置における3次関数の温度特性の1次温度係数を調整することができ、弾性表面波装置の温度特性を調整することが可能である。そして、この水晶基板のカット角では、STカット水晶基板を用いる場合に比較して、温度に対する周波数変動量を小さくすることができ、優れた温度特性を備えた弾性表面波装置を提供できる。
【0016】
本発明では、オイラー角が(0°,95°≦θ≦155°,33°≦|ψ|≦46°)の水晶基板にRayleigh型弾性表面波を励振させる多数の電極指を設けたシングル型のIDT電極と、該IDT電極の両側に反射器を備え、前記弾性表面波のストップバンドの上限モードを励振させる弾性表面波装置の温度特性調整方法であって、前記IDT電極の対数を変化させて前記弾性表面波装置における3次関数の温度特性の1次温度係数を調整することが望ましい。
【0017】
この弾性表面波装置の温度特性調整方法によれば、面内回転STカット水晶基板を用い、シングル型のIDT電極を備えた、弾性表面波のストップバンドの上限モードを励振させる弾性表面波装置において、従来知られていなかったIDT電極の対数を変化させることで弾性表面波装置における3次関数の温度特性の1次温度係数を調整することができ、弾性表面波装置の温度特性を調整することが可能である。また、この水晶基板のカット角では、面内回転STカット水晶基板を用い、ストップバンドの下限モードを利用した場合に比較して、温度に対する周波数変動量を小さくすることができ、高精度な温度特性を備えた弾性表面波装置を提供できる。
【0018】
本発明では、前記弾性表面波装置に前記IDT電極と前記反射器との間に櫛形電極をさらに備え、前記IDT電極を切断してIDT電極の対数を減ずること、または前記IDT電極に前記櫛形電極を接続してIDT電極の対数を増すことで、前記IDT電極の対数を変化させることが望ましい。
【0019】
この弾性表面波装置の温度特性調整方法によれば、IDT電極を形成した後の製造工程の中で、IDT電極に前記櫛形電極を接続すること、またはIDT電極を切断することでIDT電極の対数を増減することができる。そして、弾性表面波装置における3次関数の温度特性の1次温度係数を調整し、弾性表面波装置の温度特性を調整することができる。このことから、製造工程における温度特性のばらつきを抑えることができ、より高安定な弾性表面波装置を得ることができる。
【0020】
本発明では、前記IDT電極の一部にレーザ光を照射することで前記IDT電極を切断して、前記IDT電極の対数を減ずることが望ましい。
【0021】
この弾性表面波装置の温度特性調整方法によれば、IDT電極にレーザ光を照射することで容易にIDT電極を切断でき、IDT電極の電極指の対数を減ずることができる。
【0022】
本発明では、前記IDT電極と前記櫛形電極とをインクジェット法により導電性材料を塗布して接続することが望ましい。
【0023】
この弾性表面波装置の温度特性調整方法によれば、IDT電極と櫛形電極の間にインクジェット法により導電性材料を塗布することで、容易にIDT電極と櫛形電極を接続することができる。
【0024】
本発明の弾性表面波装置は、上記弾性表面波装置の温度特性調整方法により製造されたことを特徴とする。
【0025】
この弾性表面波装置によれば、IDT電極の対数を変化させることで弾性表面波装置の温度特性が調整され、優れた温度特性を有する弾性表面波装置を提供できる。
【0026】
本発明では、水晶基板にRayleigh型弾性表面波を励振させるシングル型のIDT電極と、前記IDT電極の両側にIDT電極とは独立して形成された複数の櫛形電極と、前記櫛形電極の外側に形成された反射器と、を備え、前記IDT電極と少なくとも一つの前記櫛形電極とが導電性材料にて接続されていることが望ましい。
【0027】
この弾性表面波装置によれば、IDT電極と櫛形電極が導電性材料にて接続されてIDT電極の対数が増し、温度特性が調整されて、優れた温度特性を有する弾性表面波装置を得ることができる。
【0028】
本発明では、水晶基板にRayleigh型弾性表面波を励振させるシングル型のIDT電極と、前記IDT電極の両側にIDT電極とは独立して形成された複数の櫛形電極と、前記櫛形電極の外側に形成された反射器と、を備え、前記反射器と少なくとも一つの前記櫛形電極とが導電性材料にて接続されていることが望ましい。
【0029】
この弾性表面波装置によれば、IDT電極の対数がIDT電極と櫛形電極の接続またはIDT電極の切断により増減され、温度特性が調整され、櫛形電極が反射器に接続されている。このようにすることで、反射器の弾性表面波の反射係数を大きくすることができ、温度特性に優れ良好な特性を備えた弾性表面波装置を提供することができる。
【0030】
本発明は、オイラー角が(0°,113°≦θ≦135°,40°≦|ψ|≦49°)の水晶基板にRayleigh型弾性表面波を励振させる多数の電極指を設けたシングル型のIDT電極と、該IDT電極の両側に配置する反射器を形成する工程を有し、前記弾性表面波のストップバンドの下限モードを励振させる弾性表面波装置の製造方法であって、前記IDT電極の対数を変化させて前記弾性表面波装置における温度特性の頂点温度を調整する温度特性調整工程を含むことを特徴とする。
【0031】
この弾性表面波装置の製造方法によれば、面内回転STカット水晶基板を用い、シングル型のIDT電極を備えた、弾性表面波のストップバンドの下限モードを励振させる弾性表面波装置において、従来知られていなかったIDT電極の対数を変化させることで温度特性の頂点温度を調整し、弾性表面波装置の温度特性を調整することができる。また、この水晶基板のカット角では、STカット水晶基板を用いる場合に比較して、温度に対する周波数変動量を小さくすることができ、優れた温度特性を備えた弾性表面波装置の製造方法を提供できる。
【0032】
また、本発明では、前記弾性表面波装置に前記IDT電極と前記反射器との間に櫛形電極を有し、前記温度特性調整工程が、前記IDT電極を切断してIDT電極の対数を減ずること、または前記IDT電極に前記櫛形電極を接続してIDT電極の対数を増すことで、前記IDT電極の対数を変化させる工程であることが望ましい。
【0033】
この弾性表面波装置の製造方法によれば、IDT電極を形成した後の製造工程の中で、IDT電極に櫛形電極を接続すること、またはIDT電極を切断することでIDT電極の対数を増減することができる。そして、温度特性の頂点温度を調整し、弾性表面波装置の温度特性を調整することができる。このことから、製造工程における温度特性のばらつきを抑えることができ、より高安定な弾性表面波装置の製造方法を提供できる。
【0034】
本発明では、前記温度特性調整工程が、前記IDT電極の一部にレーザ光を照射することで前記IDT電極を切断して前記IDT電極の電極指の対数を減ずる工程であることが望ましい。
【0035】
この弾性表面波装置の製造方法によれば、IDT電極にレーザ光を照射することで容易にIDT電極を切断でき、IDT電極の電極指の対数を減ずることができる。
【0036】
本発明では、前記温度特性調整工程が、前記IDT電極と前記櫛形電極とをインクジェット法により導電性材料を塗布して接続する工程であることが望ましい。
【0037】
この弾性表面波装置の製造方法によれば、IDT電極と櫛形電極の間にインクジェット法により導電性材料を塗布することで、容易にIDT電極と櫛形電極を接続することができる。
【0038】
また、本発明は、オイラー角が(0°,0°≦θ≦180°,9°≦|ψ|≦46°)の水晶基板にRayleigh型弾性表面波を励振させる多数の電極指を設けたシングル型のIDT電極と、該IDT電極の両側に配置する反射器を形成する工程を有し、前記弾性表面波のストップバンドの上限モードを励振させる弾性表面波装置の製造方法であって、前記IDT電極の対数を変化させて前記弾性表面波装置における3次関数の温度特性の1次温度係数を調整する温度特性調整工程を含むことを特徴とする。
【0039】
この弾性表面波装置の製造方法によれば、面内回転STカット水晶基板を用い、シングル型のIDT電極を備えた、弾性表面波のストップバンドの上限モードを励振させる弾性表面波装置において、従来知られていなかったIDT電極の対数を変化させることで弾性表面波装置における3次関数の温度特性の1次温度係数を調整することができ、弾性表面波装置の温度特性を調整することが可能である。そして、この水晶基板のカット角では、STカット水晶基板を用いる場合に比較して、温度に対する周波数変動量を小さくすることができ、優れた温度特性を備えた弾性表面波装置の製造方法を提供できる。
【0040】
本発明では、オイラー角が(0°,95°≦θ≦155°,33°≦|ψ|≦46°)の水晶基板にRayleigh型弾性表面波を励振させる多数の電極指を設けたシングル型のIDT電極と、該IDT電極の両側に配置する反射器を形成する工程を有し、前記弾性表面波のストップバンドの上限モードを励振させる弾性表面波装置の製造方法であって、前記IDT電極の対数を変化させて前記弾性表面波装置における3次関数の温度特性の1次温度係数を調整する温度特性調整工程を含むことが望ましい。
【0041】
この弾性表面波装置の製造方法によれば、面内回転STカット水晶基板を用い、シングル型のIDT電極を備えた、弾性表面波のストップバンドの上限モードを励振させる弾性表面波装置において、従来知られていなかったIDT電極の対数を変化させることで弾性表面波装置における3次関数の温度特性の1次温度係数を調整することができ、弾性表面波装置の温度特性を調整することが可能である。また、この水晶基板のカット角では、面内回転STカット水晶基板を用い、ストップバンドの下限モードを利用した場合に比較して、温度に対する周波数変動量を小さくすることができ、高精度な温度特性を備えた弾性表面波装置の製造方法を提供できる。
【0042】
本発明では、前記弾性表面波装置に前記IDT電極と前記反射器との間に櫛形電極を有し、前記温度特性調整工程が、前記IDT電極を切断してIDT電極の対数を減ずること、または前記IDT電極に前記櫛形電極を接続してIDT電極の対数を増すことで、前記IDT電極の対数を変化させる工程であることが望ましい。
【0043】
この弾性表面波装置の製造方法によれば、IDT電極を形成した後の製造工程の中で、IDT電極に前記櫛形電極を接続すること、またはIDT電極を切断することでIDT電極の対数を増減することができる。そして、弾性表面波装置における3次関数の温度特性の1次温度係数を調整し、弾性表面波装置の温度特性を調整することができる。このことから、製造工程における温度特性のばらつきを抑えることができ、より高安定な弾性表面波装置の製造方法を提供できる。
【0044】
本発明では、前記温度特性調整工程が、前記IDT電極の一部にレーザ光を照射することで前記IDT電極を切断して、前記IDT電極の対数を減ずる工程であることが望ましい。
【0045】
この弾性表面波装置の製造方法によれば、IDT電極にレーザ光を照射することで容易にIDT電極を切断でき、IDT電極の電極指の対数を減ずることができる。
【0046】
本発明では、前記温度特性調整工程が、前記IDT電極と前記櫛形電極とをインクジェット法により導電性材料を塗布して接続する工程であることが望ましい。
【0047】
この弾性表面波装置の製造方法によれば、IDT電極と櫛形電極の間にインクジェット法により導電性材料を塗布することで、容易にIDT電極と櫛形電極を接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
(第1の実施形態)
【0049】
まず、本発明における実施形態の説明に先立ち、水晶基板の切り出し角(カット角)及び弾性表面波の伝搬方向を特定するために、オイラー角(φ,θ,ψ)表示について説明する。
図1は、オイラー角について説明するための図である。
水晶の結晶軸はX軸(電気軸)、Y軸(機械軸)およびZ軸(光軸)によって定義され、オイラー角(0°,0°,0°)はZ軸に垂直な水晶板となる。本発明において、Z軸を回転軸としてX軸およびY軸を回転させる角度φはφ=0°として固定する。
【0050】
X軸を回転軸としてY軸およびZ軸を反時計方向に角度θだけ回転させたとき、新たに生ずる座標軸を、それぞれY´軸およびZ´軸とする。このZ´軸を法線としてX軸とY´軸を含む面方位でカットしたものを、水晶基板1とする。そして、この面方位にカットした水晶基板1において、Z´軸を回転軸としてX軸およびY´軸を角度ψだけ回転させたとき、新たに生ずる座標軸を、それぞれX´軸およびY″軸とする。このX´軸を弾性表面波装置2の弾性表面波伝搬方向とする。なお、この水晶基板1における角度ψを、面内回転角と呼び、面内回転のないときにはψ=0°である。
このように、水晶基板の切り出し角度及び弾性表面波伝搬方向をオイラー角(φ,θ,ψ)で表示して特定することができる。
【0051】
次に、本発明の弾性表面波装置の温度特性調整方法および弾性表面波装置に至る経緯について説明する。
図2は弾性表面波装置の構成を説明する説明図である。図2(a)は、弾性表面波装置の模式平面図、図2(b)は、同図(a)のA−A断線に沿う模式断面図である。
【0052】
弾性表面波装置10は水晶基板11の表面にIDT電極20を備えている。IDT電極20は多数の電極指21を設けた電極12と、多数の電極指22を設けた電極13から構成され、それぞれの電極指21,22が噛み合うように配置されている。電極指21,22は厚さH、電極幅dにて形成され、電極指21と電極指22の間隔(ピッチ)Pは等間隔で連続し形成されている。また、弾性表面波の1波長λ中に電極指21,22が1本ずつ設けられている。一般に、この構成のIDT電極20はシングル型IDT電極と呼ばれている。また、一つの電極指21と一つの電極指22で1対のIDT電極と呼び、この1対のIDT電極の数がIDT電極全体の対数として表現される。そして、電極12,13はお互いに逆相となるように駆動される。
また、水晶基板11は、あるカット角となるように水晶から切り出され、矢印Eの方向が図1で説明した弾性表面波の伝搬方向であるX´軸に合致するように構成されている。
【0053】
水晶などの圧電基板に設けたIDT電極により励振されるRayleigh型弾性表面波において、ストップバンドと呼ばれる2つの周波数解が計算で得られることが知られており、この2つの周波数解である低い周波数(下限モード)あるいは、高い周波数(上限モード)のどちらか一方が励振に利用されている。上記のように、弾性表面波の1波長中に2本の電極指を設けたシングル型IDT電極をSTカット水晶基板に備えた場合、ストップバンドの下限モードで弾性表面波が励振されることがわかっている。
【0054】
ここで、本発明者は、IDT電極の対数に着目し、このIDT電極の対数を変化させたとき、弾性表面波装置の温度特性の変化について解析を行った。
まず、STカット水晶基板を用いた場合の、IDT電極の対数と温度特性の変化について解析した。
図3はSTカット水晶基板を用い、IDT電極の対数を変化させたときの温度特性を示すグラフである。
【0055】
図3では、詳しくは、STカット水晶基板としてオイラー角表示(0°,123°,0°)の基板を用いてシングル型IDT電極を構成し、電極指の厚さHを波長λで除した基準化電極厚みH/λ=0.03、電極指の幅dを電極指のピッチPで除した基準化電極幅η(d/P)=0.5、電極指の交差する交差幅=32λ(λ=10μm)としたとき、IDT電極の対数を90対と265対の温度特性を示している。また、図3のグラフでは、20℃のときの周波数を基準にした周波数偏差を縦軸にとり、温度を横軸にとり示している。
図3によれば、IDT電極の対数が90対と265対とでは温度特性の変化はなく、STカット水晶基板を用いた場合、IDT電極の対数は温度特性に影響を与えない。
【0056】
次に、面内回転STカット水晶基板を用いた場合の、IDT電極の対数と温度特性の変化について解析した。面内回転STカット水晶基板は、特許文献1にあるようにオイラー角表示(0°,113°≦θ≦135°,40°≦|ψ|≦49°)のカット角が使用されている。この面内回転STカット水晶基板を用いた弾性表面波装置では、非特許文献2にあるようにストップバンドの下限モードが利用されている。
【0057】
図4は面内回転STカット水晶基板を用い、IDT電極の対数を変化させたときの温度特性を示すグラフである。
図4では、詳しくは、面内回転STカット水晶基板としてオイラー角表示(0°,123°,43°)の基板を用いてシングル型IDT電極を構成し、電極指の厚さHを波長λで除した基準化電極厚みH/λ=0.04、電極指の幅dを電極指のピッチPで除した基準化電極幅η(d/P)=0.5、電極指の交差する交差幅=32λ(λ=10μm)のとき、IDT電極の対数が70対、90対、150対、265対の温度特性を示している。また、図4のグラフでは、20℃のときの周波数を基準にした周波数偏差を縦軸にとり、温度を横軸にとり示している。
【0058】
図4によれば、それぞれのIDT電極の対数では2次関数の温度特性曲線を示し、ある温度で周波数(周波数偏差)が最大となる頂点温度を有している。また、IDT電極の対数が多くなるに従って、この頂点温度が低い温度に移動するのがわかる。
例えば、IDT電極の対数が90対では頂点温度がおよそ50℃であり、IDT電極の対数が265対では頂点温度がおよそ15℃である。また、このとき、弾性表面波装置の使用温度範囲が−40℃〜90℃であれば、IDT電極の対数が90対では約110ppm、IDT電極の対数が265対では約75ppmの周波数変動量が得られる。
【0059】
このように、IDT電極の対数を変化させて頂点温度を調整することで、温度特性を調整することが可能である。この面内回転STカット水晶基板を用い、シングル型IDT電極を設けた弾性表面波のストップバンドの下限モードを利用する弾性表面波装置において、IDT電極の対数により温度特性が変化することは、従来知られていなかったことである。
このことを利用して、弾性表面波装置の設計においてIDT電極の対数を考慮することで、弾性表面波装置の温度特性を調整することができる。
また、STカット水晶基板の2次温度係数は一般に−3.4×10-8(1/℃2)であり、温度範囲を−40℃〜90℃とした場合、周波数変動量は約144ppmである。これに対して、面内回転STカット水晶基板を用いストップバンドの下限モードの2次温度係数は−1.4×10-8(1/℃2)であり、温度範囲を−40℃〜90℃とした場合、周波数変動量は約59ppmである。
このように、本発明に係る水晶基板のカット角(0°,113°≦θ≦135°,40°≦|ψ|≦49°)では、STカット水晶基板を用いる場合に比較して、温度に対する周波数変動量を小さくすることが可能であり、優れた温度特性を備えた弾性表面波装置を提供できる。
【0060】
次に、上記で説明したIDT電極の対数により温度特性が変化することを利用して、IDT電極を形成した後の製造工程において、温度特性を調整する方法について説明する。
図5は、本実施形態の弾性表面波装置の構成を示す模式図であり、図5(a)は模式平面図、図5(b)は同図(a)のA−A断線に沿う模式断面図である。
【0061】
弾性表面波装置30は、水晶基板31の表面にIDT電極32、その両側に櫛形電極35,36,37,38、さらにその外側に反射器33,34を備えている。IDT電極32は電極指32b,32dが噛み合うように配置されている。電極指32bはバスバー32aに連結され、電極指32dはバスバー32cに連結されている。電極指32b,32dは厚さH、電極幅dにて形成され、電極指32bと電極指32dの間隔(ピッチ)Pは等間隔で連続し形成されている。また、弾性表面波の1波長λ中に電極指32b,32dが1本ずつ設けられ、シングル型のIDT電極32が構成されている。
【0062】
IDT電極32の一方の側には、IDT電極32とは独立した、櫛形電極35,36が形成されている。櫛形電極35は電極指35b,35dを備え、それぞれバスバー35a、35cに連結されている。同様に、櫛形電極36は電極指36b,36dを備え、それぞれバスバー36a、36cに連結されている。
IDT電極32の他方の側には、IDT電極32とは独立した、櫛形電極37,38が形成されている。櫛形電極37は電極指37b,37dを備え、それぞれバスバー37a、37cに連結されている。同様に、櫛形電極38は電極指38b,38dを備え、それぞれバスバー38a、38cに連結されている。
【0063】
これらの櫛形電極35,36,37,38はIDT電極32の電極指32b,32dから連続して同じピッチとなるように電極指35b、35d、36b、36d、37b、37d、38b、38dが配置されている。
なお、本実施形態では1対の電極指を備えた櫛形電極35,36,37,38を形成しているが、例えば5対の電極指を備えた櫛形電極としてもよく、その対数は適宜変更しても良い。
【0064】
さらに、IDT電極32、櫛形電極35,36,37,38を両側から挟むように反射器33,34が形成されている。
また、水晶基板31は、オイラー角表示(0°,113°≦θ≦135°,40°≦|ψ|≦49°)のカット角となるように水晶から切り出され、矢印Eの方向が図1で説明した弾性表面波の伝搬方向であるX´軸に合致するように構成されている。
【0065】
次に、上記の弾性表面波装置30を用い、温度特性を調整する手順について説明する。
図6は、弾性表面波装置における温度特性調整方法の手順を説明するフローチャート図である。また、図7、図8はその温度特性調整方法について説明する模式平面図である。ここでは図6のフローチャート図に従い、図7、図8を参照して温度特性調整方法について説明する。
【0066】
まず、ステップS1にて図5で説明した弾性表面波装置30の温度特性を測定する。次にステップS2で、測定した温度特性に基づき温度特性の頂点温度が所望の範囲に入っているかどうかを確認する。温度特性の頂点温度が所望の範囲に入っていない場合には、ステップS3に進み、測定した温度特性の頂点温度が所望の範囲に対して高いかどうかを判断する。そして、頂点温度が所望の範囲に対して低い場合には、ステップS4に進み、IDT電極32を切断する作業に入る。
【0067】
ここで、IDT電極32の切断は図7(a)に示すように、IDT電極32の両側から切断線B−B、C−Cに沿って、所望の対数のIDT電極を切断する。IDT電極32の切断にあたっては、レーザ光をIDT電極32のバスバー32a,32cに照射して、このバスバー32a,32cを切断する。この切断により、電極指がバスバー41a,41c,42a,42cに連結された櫛形電極41,42がIDT電極32から切り離される。
なお、弾性表面波装置30のIDT電極32を中心に左右の対称性を維持するために、IDT電極32の両側から同じ対数を切り離すのが好ましい。
【0068】
次に、ステップS1に戻り、再度温度特性の測定が行われる。そして、頂点温度が所望の範囲に入るまでステップS1、S2、S3、S4が繰り返され、ステップS2で頂点温度が所望の範囲に入ると、弾性表面波装置の温度特性調整が終了しステップS6に進み、反射器33,34に独立している櫛形電極を接続する作業に入る。
【0069】
反射器33,34に櫛形電極を接続する作業は、図7(b)に示すように、まず、反射器33と櫛形電極36のバスバー36a,36cの間にインクジェット法により導電性粒子を含む溶液からなる液滴45を塗布する。続いて櫛形電極36のバスバー36a,36cと櫛形電極35のバスバー35a,35cの間に液滴45をインクジェット法により塗布する。そして、櫛形電極35のバスバー35a,35cと櫛形電極41のバスバー41a,41cの間に液滴45をインクジェット法により塗布する。
また、反射器34と櫛形電極38、37、42の接続においても、同様に、それぞれのバスバーの間に液滴45をインクジェット法により塗布する。
液滴45の塗布後、液滴45を乾燥させることで、反射器33と櫛形電極36,35,41および反射器34と櫛形電極38,37,42の接続がなされ、弾性表面波装置30が完成する。
【0070】
また、図6のステップS3において、頂点温度が所望の範囲に対して高い場合には、ステップS5に進み、IDT電極32に櫛形電極を接続する作業に入る。
この櫛形電極を接続する作業は、所望のIDT電極の対数に相当する櫛形電極をIDT電極32に、接続する作業である。図8(a)に示すように、まず、IDT電極32のバスバー32a,32cと櫛形電極35のバスバー35a,35cの間にインクジェット法により導電性粒子を含む溶液からなる液滴45を塗布する。次に、IDT電極32のバスバー32a,32cと櫛形電極37のバスバー37a,37cの間にインクジェット法により液滴45を塗布する。その後、液滴45を乾燥させることで、IDT電極32と櫛形電極35,37が接続され、電気的な導通がなされる。
なお、弾性表面波装置30のIDT電極32を中心に左右の対称性を維持するために、IDT電極32の両側から同じ対数となる櫛形電極を接続するのが好ましい。
【0071】
次に、ステップS1に戻り、再度温度特性の測定が行われる。そして、頂点温度が所望の範囲に入るまでステップS1、S2、S3、S5が繰り返され、ステップS2で頂点温度が所望の範囲に入ると、弾性表面波装置の温度特性調整が終了しステップS6に進み、反射器33,34に独立している櫛形電極を接続する作業に入る。
反射器33,34に櫛形電極を接続する作業は、図8(b)に示すように、まず、反射器33と櫛形電極36のバスバー36a,36cの間にインクジェット法により導電性粒子を含む溶液からなる液滴45を塗布する。次に、同様に、反射器34と櫛形電極38のバスバー38a,38cの間にインクジェット法により液滴45を塗布する。その後、液滴45を乾燥させることで、反射器33と櫛形電極36および反射器34と櫛形電極38の接続がなされ、弾性表面波装置30が完成する。
【0072】
以上のように、本実施形態では、IDT電極32を形成した後の製造工程の中で、IDT電極32を切断してIDT電極32の対数を減らすことで、温度特性の頂点温度を高温側に調整でき、また、IDT電極32に櫛形電極を接続することで温度特性の頂点温度を低温側に調整することができる。このようにして、面内回転STカット水晶基板31を用い、シングル型のIDT電極32を備えた、弾性表面波のストップバンドの下限モードを励振させる弾性表面波装置30において、従来知られていなかったIDT電極32の対数を変化させることで温度特性の頂点温度を調整し、弾性表面波装置30の温度特性を調整することができる。このことから、製造工程における温度特性のばらつきを抑えることができ、より高安定な弾性表面波装置30を得ることができる。
【0073】
また、IDT電極32にレーザ光を照射することで容易にIDT電極32を切断でき、IDT電極32の電極指の対数を減ずることができる。さらに、IDT電極32と櫛形電極の間にインクジェット法により導電性材料を塗布することで、容易にIDT電極32と櫛形電極を接続することができる。
そして、反射器33,34に櫛形電極を接続することで、櫛形電極を反射器として利用することができるため、反射器の反射係数を大きくでき、良好な特性の弾性表面波装置30を得ることができる。
(第2の実施形態)
【0074】
続いて、面内回転STカット水晶基板を用い、シングル型IDT電極を設けた弾性表面波のストップバンドの上限モードを利用する弾性表面波装置における実施形態について説明する。
従来より知られたSTカット水晶基板はオイラー角表示で、例えば(0°,123°,0°)があり、この基板を用いてシングル型IDT電極を構成した場合、弾性表面波が励振されるのはストップバンドにおける下限モードである。
シングル型IDT電極において、弾性表面波のストップバンドの上限モード、下限モードが励振されるかどうかは、それぞれのモードの周波数での短絡条件と開放条件における周波数の差により決まり、周波数差があれば、そのモードは励振されることが分かっている。
【0075】
表1は、シングル型IDT電極を用いたSTカット水晶基板および本発明に係るカット角の水晶基板において、上限モードでの短絡条件と開放条件における周波数の差を示す表である。
この表1では、弾性表面波の波長λ=10μmとし、電極指の幅dを電極指のピッチPで除した基準化電極幅η(d/P)、及び電極指の厚さHを波長λで除した基準化電極厚みH/λの条件を変えて示している。また、上限モードにおける短絡条件の周波数をfus、上限モードにおける開放条件の周波数をfuoとし、その差を絶対値で示している。
【0076】
【表1】

【0077】
表1において、条件AはSTカット水晶基板を用い、η=0.5,H/λ=0.03の場合であり、上限モードにおける短絡条件の周波数と開放条件の周波数の差は0となっている。また、条件BはSTカット水晶基板を用い、η=0.7,H/λ=0.10の場合であり、上限モードにおける短絡条件の周波数と開放条件の周波数の差は0となっている。
このように、STカット水晶基板を用いた場合には、IDT電極における電極指の寸法が変わってもストップバンドの上限モードでは弾性表面波を励振できないことがわかる。
【0078】
次に、本発明で利用するカット角であるオイラー角(0°,123°,41°)の水晶基板を例にとり説明する。
条件Cでは本発明に係るカット角の水晶基板を用い、η=0.5,H/λ=0.03の場合であり、上限モードにおける短絡条件の周波数と開放条件の周波数の差は0.0015MHzとなっている。
また、同様に条件Dでは本発明に係るカット角の水晶基板を用い、η=0.7,H/λ=0.10の場合であり、上限モードにおける短絡条件の周波数と開放条件の周波数の差は0.1667MHzとなっている。
このように、上記のような水晶基板を用いた場合には、ストップバンドの上限モードで弾性表面波を励振できることがわかる。このことは、水晶の結晶における対称性についてカット角をずらすことで非対称とし、上限モードの弾性表面波を励振可能としている。
【0079】
次に、ストップバンドの上限モードを利用し、本実施形態のカット角の水晶基板を用いた場合の温度に対する周波数変動について説明する。
図9は、本実施形態における弾性表面波装置の温度に対する周波数変動量を示すグラフである。なお、周波数変動量=周波数偏差の最大値−周波数偏差の最小値であり、周波数偏差=(各温度における周波数−25℃における周波数)/25℃における周波数である。
条件として、温度範囲を−40℃〜90℃、シングル型IDT電極における基準化電極幅d/P=0.7、基準化電極厚みH/λ=0.10としている。そして、水晶基板のカット角をφ=0°に固定し、θ=0°〜180°間で面内回転角ψ=0°〜90°を変化させたときに周波数変動量が最適値(最小値)となる周波数変動量を黒丸印で示している。また、そのときの面内回転角ψを三角印で示している。例えば、φ=0°,θ=40°のとき、ψ=0°〜90°間で変化させた場合の、周波数変動量の最小値はおよそ80ppmであり、そのときの面内回転角ψはおよそ12°である。
なお、ψは水晶結晶の対称性から、プラス及びマイナスのどちら側の角度を用いても結果は同じであり、実施可能である。また、オイラー角による表記にこだわらず、結晶学的に等価なカット角の水晶基板を用いても良い。
【0080】
このように、カット角及び弾性表面波伝搬方向を(0°,0°≦θ≦180°,9°≦|ψ|≦46°)とした水晶基板において、弾性表面波の伝搬方向を水晶基板における結晶の対称位置から離れた位置に移動させることができ、シングル型IDT電極を用いて弾性表面波のストップバンドの上限モードを励振させることができる。
また、図9よりカット角及び弾性表面波伝搬方向を(0°,0°≦θ≦180°,9°≦|ψ|≦46°)とした水晶基板において、STカット水晶基板を用いた場合より周波数変動量が小さくすることができる。さらにカット角及び弾性表面波伝搬方向を(0°,95°≦θ≦155°,33°≦|ψ|≦46°)とした水晶基板において、面内回転STカット水晶基板を用い、下限モードを利用した場合より周波数変動量が小さいことがわかる。
【0081】
図10は面内回転STカット水晶基板を用い、ストップバンドの上限モードを励振する弾性表面波装置のIDT電極の対数を変化させたときの温度特性を示すグラフである。
図10では、詳しくは、面内回転STカット水晶基板としてオイラー角表示(0°,123°,41°)の基板を用いてシングル型IDT電極を構成し、電極指の厚さHを波長λで除した基準化電極厚みH/λ=0.10、電極指の幅dを電極指のピッチPで除した基準化電極幅η(d/P)=0.7、電極指の交差する交差幅=32λ(λ=10μm)のとき、IDT電極の対数が50対、70対、90対、150対、265対の温度特性を示している。また、図10のグラフでは、20℃のときの周波数を基準にした周波数偏差を縦軸にとり、温度を横軸にとり示している。
【0082】
図10によれば、それぞれのIDT電極の対数では3次関数の温度特性を示している。IDT電極の対数が少なくなると温度特性曲線が右回転したように現れる。これは温度特性曲線をテーラー展開したときの1次温度係数が減少したことに相当する。例えば、IDT電極の対数が265対の場合、1次温度係数はほぼ0であるのに対して、90対の場合、1次温度係数は負の値を持っている。また、このとき、弾性表面波装置の使用温度範囲が−40℃〜90℃であれば、IDT電極の対数が90対では約67ppm、IDT電極の対数が265対では約10ppmの周波数変動量が得られる。
【0083】
このように、IDT電極の対数を変化させて3次関数の1次温度係数を調整することで、温度特性を調整することが可能である。この面内回転STカット水晶基板を用い、シングル型IDT電極を設けた弾性表面波のストップバンドの上限モードを利用する弾性表面波装置において、IDT電極の対数により温度特性が変化することは、従来知られていなかったことである。
このことを利用して、弾性表面波装置の設計においてIDT電極の対数を考慮することで、弾性表面波装置の温度特性を調整することができる。
また、この水晶基板のカット角(0°,95°≦θ≦155°,33°≦|ψ|≦46°)では、面内回転STカット水晶基板を用いストップバンドの下限モード場合に比較して、温度に対する周波数変動量を小さくすることが可能であり、優れた温度特性を備えた弾性表面波装置を提供できる。
【0084】
次に、上記で説明したIDT電極の対数により温度特性が変化することを利用して、IDT電極を形成した後の製造工程において、温度特性を調整する方法について説明する。
本実施形態で用いる弾性表面波装置は第1の実施形態の図5で説明した弾性表面波装置30と同様な構成を備え、水晶基板31のカット角のみ異なるため、構成の説明を省略する。
本実施形態の弾性表面波装置30は、水晶基板31のカット角及び弾性表面波伝搬方向を(0°,0°≦θ≦180°,9°≦|ψ|≦46°)としており、ストップバンドの上限モードを励振する。
【0085】
このような弾性表面波装置30を用い、温度特性を調整する手順について説明する。
図11は、弾性表面波装置における温度特性調整方法の手順を説明するフローチャート図である。また、第1の実施形態において温度特性調整方法について説明した図7、図8についても同様な調整作業を行うため、これらの図を用いて説明する。ここでは図11のフローチャート図に従い、図7、図8を参照して温度特性調整方法について説明する。
【0086】
まず、ステップS11にて弾性表面波装置30の温度特性を測定する。次にステップS12で、測定した温度特性に基づき温度特性の1次温度係数が所望の範囲に入っているかどうかを確認する。温度特性の1次温度係数が所望の範囲に入っていない場合には、ステップS13に進み、測定した温度特性の1次温度係数が所望の範囲に対して小さいかどうかを判断する。そして、1次温度係数が所望の範囲に対して大きい場合には、ステップS14に進み、IDT電極32を切断する作業に入る。
ここで、IDT電極32の切断は図7(a)に示すように、IDT電極32の両側から切断線B−B、C−Cに沿って、所望の対数のIDT電極を切断する。IDT電極32の切断にあたってはレーザ光をIDT電極32のバスバー32a,32cに照射して、このバスバー32a,32cを切断する。この切断により、電極指がバスバー41a,41c,42a,42cに連結された櫛形電極41,42がIDT電極32から切り離される。
なお、弾性表面波装置30のIDT電極32を中心に左右の対称性を維持するために、IDT電極32の両側から同じ対数を切り離すのが好ましい。
【0087】
次に、ステップS11に戻り、再度温度特性の測定が行われる。そして、1次温度係数が所望の範囲に入るまでステップS11以降、ステップS12、S13、S14が繰り返され、ステップS12で1次温度係数が所望の範囲に入ると、弾性表面波装置の温度特性調整が終了しステップS16に進み、反射器33,34に櫛形電極を接続する作業に入る。
反射器33,34に櫛形電極を接続する作業は、図7(b)に示すように、まず、反射器33と櫛形電極36のバスバー36a,36cの間にインクジェット法により導電性粒子を含む溶液からなる液滴45を塗布する。続いて櫛形電極36のバスバー36a,36cと櫛形電極35のバスバー35a,35cの間に液滴45をインクジェット法により塗布する。そして、櫛形電極35のバスバー35a,35cと櫛形電極41のバスバー41a,41cの間に液滴45をインクジェット法により塗布する。
また、反射器34と櫛形電極38、37、42の接続においても、同様に、それぞれのバスバーの間に液滴45をインクジェット法により塗布する。
液滴45の塗布後、液滴45を乾燥させることで、反射器33と櫛形電極36,35,41および反射器34と櫛形電極38,37,42の接続がなされ、弾性表面波装置30が完成する。
【0088】
また、図11のステップS13において、1次温度係数が所望の範囲に対して小さい場合には、ステップS15に進み、IDT電極32に櫛形電極を接続する作業に入る。
この櫛形電極を接続する作業は、所望のIDT電極の対数に相当する櫛形電極をIDT電極32に、接続する作業である。図8(a)に示すように、まず、IDT電極32のバスバー32a,32cと櫛形電極35のバスバー35a,35cの間にインクジェット法により導電性粒子を含む溶液からなる液滴45を塗布する。次に、IDT電極32のバスバー32a,32cと櫛形電極37のバスバー37a,37cの間にインクジェット法により液滴45を塗布する。その後、液滴45を乾燥させることで、IDT電極32と櫛形電極35,37が接続され、電気的な導通がなされる。
なお、弾性表面波装置30のIDT電極32を中心に左右の対称性を維持するために、IDT電極32の両側から同じ対数となる櫛形電極を接続するのが好ましい。
【0089】
次に、ステップS11に戻り、再度温度特性の測定が行われる。そして、1次温度係数が所望の範囲に入るまでステップS11、S12、S13、S15が繰り返され、ステップS12で1次温度係数が所望の範囲に入ると、弾性表面波装置の温度特性調整が終了しステップS16に進み、反射器33,34に櫛形電極を接続する作業に入る。反射器33,34に櫛形電極を接続する作業は、図8(b)に示すように、まず、反射器33と櫛形電極36のバスバー36a,36cの間にインクジェット法により導電性粒子を含む溶液からなる液滴45を塗布する。次に、同様に、反射器34と櫛形電極38のバスバー38a,38cの間にインクジェット法により液滴45を塗布する。その後、液滴45を乾燥させることで、反射器33と櫛形電極36および反射器34と櫛形電極38の接続がなされ、弾性表面波装置30が完成する。
【0090】
以上のように、本実施形態では、IDT電極32を形成した後の製造工程の中で、IDT電極32を切断してIDT電極32の対数を減らすことで、温度特性の1次温度係数を小さくして、温度特性曲線を右回転させるように調整でき、また、IDT電極32に櫛形電極を接続することで温度特性の1次温度係数を大きくして、温度特性曲線を左回転させるように調整することができる。
このようにして、面内回転STカット水晶基板31を用い、シングル型のIDT電極32を備えた、弾性表面波のストップバンドの上限モードを励振させる弾性表面波装置30において、従来知られていなかったIDT電極32の対数を変化させることで温度特性の1次温度係数を調整し、弾性表面波装置30の温度特性を調整することができる。このことから、製造工程における温度特性のばらつきを抑えることができ、より高安定な弾性表面波装置30を得ることができる。
また、IDT電極32にレーザ光を照射することで容易にIDT電極32を切断でき、IDT電極32の電極指の対数を減ずることができる。さらに、IDT電極32と櫛形電極の間にインクジェット法により導電性材料を塗布することで、容易にIDT電極32と櫛形電極を接続することができる。
そして、反射器33,34に櫛形電極を接続することで、櫛形電極を反射器として利用することができるため、反射器の反射係数を大きくでき、良好な特性の弾性表面波装置30を得ることができる。
また、水晶基板のカット角及び弾性表面波伝搬方向を(0°,95°≦θ≦155°,33°≦|ψ|≦46°)とすれば、面内回転STカット水晶基板を用いストップバンドの下限モードを利用する場合に比較して、温度に対する周波数変動量を小さくすることが可能であり、優れた温度特性を備えた弾性表面波装置を提供できる。
(第3の実施形態)
【0091】
次に、弾性表面波装置の製造方法について説明する。
図12は弾性表面波装置の製造工程を説明するフローチャート図である。
弾性表面波装置の製造方法は、まず、水晶基板の表面にAlなどの金属膜を所定の厚みで形成し、この金属膜にフォトリソグラフィ技術を用いて、IDT電極および反射器の形状を形成する(ステップS21)。次に、IDT電極の電極をエッチングまたは、IDT電極周辺の水晶基板をエッチングして弾性表面波装置の周波数を調整する(ステップS22)。続いて、第1の実施形態、第2の実施形態で説明した温度特性調整方法で弾性表面波装置の温度特性の調整を行う(ステップS23)。このようにして、各工程を流動して弾性表面波装置の製造がなされている。
【0092】
以上のように、本実施形態の弾性表面波装置の製造方法によれば、面内回転STカット水晶基板を用い、シングル型のIDT電極を備えた、弾性表面波のストップバンドの下限モードまたは上限モードを励振させる弾性表面波装置において、従来知られていなかったIDT電極の対数を変化させることで温度特性の頂点温度または3次関数の温度特性の1次温度係数を調整し、弾性表面波装置の温度特性を調整することができる。また、この水晶基板のカット角では、STカット水晶基板を用いる場合に比較して、温度に対する周波数変動量を小さくすることができ、優れた温度特性を備えた弾性表面波装置の製造方法を提供できる。
【0093】
なお、本発明は、弾性表面波装置としてSAW共振子または共振子型弾性表面波フィルタなどに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】オイラー角について説明するための図。
【図2】弾性表面波装置の構成を説明する説明図であり、(a)は弾性表面波装置の模式平面図、(b)は、同図(a)のA−A断線に沿う模式断面図。
【図3】STカット水晶基板を用い、IDT電極の対数を変化させたときの温度特性を示すグラフ。
【図4】面内回転STカット水晶基板を用い、下限モードを励振させるIDT電極の対数を変化させたときの温度特性を示すグラフ。
【図5】第1の実施形態に係る弾性表面波装置の構成を示す模式図であり、(a)は模式平面図、(b)は同図(a)のA−A断線に沿う模式断面図。
【図6】第1の実施形態に係る温度特性調整方法の手順を示すフローチャート図。
【図7】第1および第2の実施形態の温度特性調整方法について説明する模式平面図。
【図8】第1および第2の実施形態の温度特性調整方法について説明する模式平面図。
【図9】第2の実施形態における弾性表面波装置の周波数変動量および基板切り出し角度θおよびψを示すグラフ。
【図10】面内回転STカット水晶基板を用い、上限モードを励振させるIDT電極の対数を変化させたときの温度特性を示すグラフ。
【図11】第2の実施形態に係る温度特性調整方法の手順を示すフローチャート図。
【図12】第3の実施形態における弾性表面波装置の製造方法を説明するフローチャート図。
【符号の説明】
【0095】
30…弾性表面波装置、31…水晶基板、32…IDT電極、32b,32d…電極指、33,34…反射器、35,36,37,38…櫛形電極、45…導電性材料を含む液滴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイラー角が(0°,113°≦θ≦135°,40°≦|ψ|≦49°)の水晶基板にRayleigh型弾性表面波を励振させる多数の電極指を設けたシングル型のIDT電極と、該IDT電極の両側に反射器を備え、前記弾性表面波のストップバンドの下限モードを励振させる弾性表面波装置の温度特性調整方法であって、
前記IDT電極の対数を変化させて前記弾性表面波装置における温度特性の頂点温度を調整することを特徴とする弾性表面波装置の温度特性調整方法。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性表面波装置の温度特性調整方法において、
前記弾性表面波装置に前記IDT電極と前記反射器との間に櫛形電極をさらに備え、
前記IDT電極を切断してIDT電極の対数を減ずること、または前記IDT電極に前記櫛形電極を接続してIDT電極の対数を増すことで、前記IDT電極の対数を変化させることを特徴とする弾性表面波装置の温度特性調整方法。
【請求項3】
請求項2に記載の弾性表面波装置の温度特性調整方法において、
前記IDT電極の一部にレーザ光を照射することで前記IDT電極を切断して、
前記IDT電極の電極指の対数を減ずることを特徴とする弾性表面波装置の温度特性調整方法。
【請求項4】
請求項2に記載の弾性表面波装置の温度特性調整方法において、
前記IDT電極と前記櫛形電極とをインクジェット法により導電性材料を塗布して接続することを特徴とする弾性表面波装置の温度特性調整方法。
【請求項5】
オイラー角が(0°,0°≦θ≦180°,9°≦|ψ|≦46°)の水晶基板にRayleigh型弾性表面波を励振させる多数の電極指を設けたシングル型のIDT電極と、該IDT電極の両側に反射器を備え、前記弾性表面波のストップバンドの上限モードを励振させる弾性表面波装置の温度特性調整方法であって、
前記IDT電極の対数を変化させて前記弾性表面波装置における3次関数の温度特性の1次温度係数を調整することを特徴とする弾性表面波装置の温度特性調整方法。
【請求項6】
請求項5に記載の弾性表面波装置の温度特性調整方法において、
オイラー角が(0°,95°≦θ≦155°,33°≦|ψ|≦46°)の水晶基板であることを特徴とする弾性表面波装置の温度特性調整方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の弾性表面波装置の温度特性調整方法において、
前記弾性表面波装置に前記IDT電極と前記反射器との間に櫛形電極をさらに備え、
前記IDT電極を切断してIDT電極の対数を減ずること、または前記IDT電極に前記櫛形電極を接続してIDT電極の対数を増すことで、前記IDT電極の対数を変化させることを特徴とする弾性表面波装置の温度特性調整方法。
【請求項8】
請求項7に記載の弾性表面波装置の温度特性調整方法において、
前記IDT電極の一部にレーザ光を照射することで前記IDT電極を切断して、
前記IDT電極の対数を減ずることを特徴とする弾性表面波装置の温度特性調整方法。
【請求項9】
請求項7に記載の弾性表面波装置の温度特性調整方法において、
前記IDT電極と前記櫛形電極とをインクジェット法により導電性材料を塗布して接続することを特徴とする弾性表面波装置の温度特性調整方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の弾性表面波装置の温度特性調整方法により製造されたことを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項11】
請求項10に記載の弾性表面波装置において、
水晶基板にRayleigh型弾性表面波を励振させるシングル型のIDT電極と、前記IDT電極の両側にIDT電極とは独立して形成された複数の櫛形電極と、前記櫛形電極の外側に形成された反射器と、を備え、
前記IDT電極と少なくとも一つの前記櫛形電極とが導電性材料にて接続されていることを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項12】
請求項10に記載の弾性表面波装置において、
水晶基板にRayleigh型弾性表面波を励振させるシングル型のIDT電極と、前記IDT電極の両側にIDT電極とは独立して形成された複数の櫛形電極と、前記櫛形電極の外側に形成された反射器と、を備え、
前記反射器と少なくとも一つの前記櫛形電極とが導電性材料にて接続されていることを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項13】
オイラー角が(0°,113°≦θ≦135°,40°≦|ψ|≦49°)の水晶基板にRayleigh型弾性表面波を励振させる多数の電極指を設けたシングル型のIDT電極と、該IDT電極の両側に配置する反射器を形成する工程を有し、前記弾性表面波のストップバンドの下限モードを励振させる弾性表面波装置の製造方法であって、
前記IDT電極の対数を変化させて前記弾性表面波装置における温度特性の頂点温度を調整する温度特性調整工程を含むことを特徴とする弾性表面波装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の弾性表面波装置の製造方法において、
前記弾性表面波装置に前記IDT電極と前記反射器との間に櫛形電極を有し、
前記温度特性調整工程が、前記IDT電極を切断してIDT電極の対数を減ずること、または前記IDT電極に前記櫛形電極を接続してIDT電極の対数を増すことで、前記IDT電極の対数を変化させる工程であることを特徴とする弾性表面波装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の弾性表面波装置の製造方法において、
前記温度特性調整工程が、前記IDT電極の一部にレーザ光を照射することで前記IDT電極を切断して前記IDT電極の電極指の対数を減ずる工程であることを特徴とする弾性表面波装置の製造方法。
【請求項16】
請求項14に記載の弾性表面波装置の製造方法において、
前記温度特性調整工程が、前記IDT電極と前記櫛形電極とをインクジェット法により導電性材料を塗布して接続する工程であることを特徴とする弾性表面波装置の製造方法。
【請求項17】
オイラー角が(0°,0°≦θ≦180°,9°≦|ψ|≦46°)の水晶基板にRayleigh型弾性表面波を励振させる多数の電極指を設けたシングル型のIDT電極と、該IDT電極の両側に配置する反射器を形成する工程を有し、前記弾性表面波のストップバンドの上限モードを励振させる弾性表面波装置の製造方法であって、
前記IDT電極の対数を変化させて前記弾性表面波装置における3次関数の温度特性の1次温度係数を調整する温度特性調整工程を含むことを特徴とする弾性表面波装置の製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の弾性表面波装置の製造方法において、
オイラー角が(0°,95°≦θ≦155°,33°≦|ψ|≦46°)の水晶基板であることを特徴とする弾性表面波装置の製造方法。
【請求項19】
請求項17または18に記載の弾性表面波装置の製造方法において、
前記弾性表面波装置に前記IDT電極と前記反射器との間に櫛形電極を有し、
前記温度特性調整工程が、前記IDT電極を切断してIDT電極の対数を減ずること、または前記IDT電極に前記櫛形電極を接続してIDT電極の対数を増すことで、前記IDT電極の対数を変化させる工程であることを特徴とする弾性表面波装置の製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載の弾性表面波装置の製造方法において、
前記温度特性調整工程が、前記IDT電極の一部にレーザ光を照射することで前記IDT電極を切断して、前記IDT電極の対数を減ずる工程であることを特徴とする弾性表面波装置の製造方法。
【請求項21】
請求項19に記載の弾性表面波装置の製造方法において、
前記温度特性調整工程が、前記IDT電極と前記櫛形電極とをインクジェット法により導電性材料を塗布して接続する工程であることを特徴とする弾性表面波装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−259414(P2007−259414A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345375(P2006−345375)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】