説明

形状測定装置

【課題】測定子の位置を適切に制御することができ、測定子が非接触か否かを適切に判断することができる形状測定装置の提供。
【解決手段】三次元測定機1は、測定子を有するプローブ21と、プローブ21を移動させる移動機構22と、ホストコンピュータ5とを備える。ホストコンピュータ5は、測定子の移動量を取得する移動量取得部52と、測定子を非接触とした状態における基準位置からの測定子の移動量を偏差として取得する偏差取得部54と、偏差取得部54にて取得される偏差が第1の閾値より大きいか否かを判定する判定部55と、判定部55にて偏差が第1の閾値より大きいと判定されると、基準位置と、偏差とを合成した位置に基準位置を更新する更新部56とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物を測定するための測定子を有し、測定子を一定の範囲内で移動可能とするプローブと、プローブを移動させる移動機構と、移動機構を制御する制御装置とを備え、測定子を被測定物に接触させることで被測定物の形状を測定する形状測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の三次元測定機(形状測定装置)は、プローブと、移動機構と、制御装置とを備えている。
このような形状測定装置では、測定子を非接触とした状態における測定子の位置を基準位置とし、測定子を被測定物に接触させたときの基準位置からの測定子の移動量を取得している。そして、測定子の移動量を一定とするように、プローブを被測定物に押し込んだ状態で被測定物の表面に倣ってプローブを移動させることによって被測定物を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−288227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、形状測定装置を使用する環境の温度変化や、形状測定装置の経時変化などの影響で測定子を非接触とした状態であっても基準位置からの測定子の移動量が0にならなくなる場合がある。このような場合には、形状測定装置は、測定子の位置を適切に制御することができなくなるので、測定誤差を生じるという問題がある。また、このような場合には、形状測定装置は、測定子を非接触とした状態であるにも関わらず被測定物に接触していると誤って判断してしまうことがあるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、測定子の位置を適切に制御することができ、測定子が非接触か否かを適切に判断することができる形状測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の形状測定装置は、被測定物を測定するための測定子を有し、前記測定子を一定の範囲内で移動可能とするプローブと、前記プローブを移動させる移動機構と、前記移動機構を制御する制御装置とを備え、前記測定子を前記被測定物に接触させることで前記被測定物の形状を測定する形状測定装置であって、前記制御装置は、基準位置からの前記測定子の移動量を取得する移動量取得部と、前記測定子を非接触とした状態における前記基準位置からの前記測定子の移動量を偏差として取得する偏差取得部と、前記偏差取得部にて取得される偏差が第1の閾値より大きいか否かを判定する判定部と、前記判定部にて前記偏差が前記第1の閾値より大きいと判定されると、前記基準位置と、前記偏差とを合成した位置に前記基準位置を更新する更新部とを備えることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、形状測定装置は、偏差取得部を備えるので、測定子を非接触とした状態における基準位置からの測定子の移動量を偏差として取得することができる。そして、更新部は、判定部にて偏差が第1の閾値より大きいと判定されると、基準位置と、偏差とを合成した位置に基準位置を更新するので、更新後に移動量取得部にて取得される基準位置からの測定子の移動量は0になる。
したがって、測定子の位置を適切に制御することができ、測定子が非接触か否かを適切に判断することができる。
【0008】
本発明では、前記偏差取得部は、前記測定子が非接触となる位置に前記プローブを移動させることで前記偏差を取得することが好ましい。
【0009】
このような構成によれば、偏差取得部は、プローブを移動させて偏差を取得するので、制御装置は、測定子を非接触とした状態における測定子の移動量を確実に0とすることができる。なお、測定子が非接触となる位置は、制御装置に予め記憶させておけばよい。
【0010】
本発明では、前記制御装置は、前記プローブを移動させるための位置指令値を出力する移動指令部と、前記移動量取得部にて取得される前記測定子の移動量を、補正関数を用いて補正することで測定値を算出する測定値算出部とを備え、前記移動量取得部は、前記更新部にて前記基準位置が更新されると、前記基準位置の初期値からの前記測定子の移動量と、前記基準位置からの前記測定子の移動量とを取得し、前記移動指令部は、前記基準位置からの前記測定子の移動量に基づいて前記位置指令値を出力し、前記測定値算出部は、前記基準位置の初期値からの前記測定子の移動量に基づいて前記測定値を算出することが好ましい。
【0011】
ここで、例えば、特許第2798873号に記載の運動機械のように、測定子の移動量を補正関数を用いて補正することで測定値を算出する形状測定装置が知られている。
また、補正関数は、基準位置の初期値からの測定子の移動量に基づいて決定されている。したがって、基準位置の更新後に移動量取得部にて取得される測定子の移動量を、補正関数を用いて補正することで測定値を算出すると、適切な測定値を算出することができないという問題がある。
本発明によれば、移動指令部は、基準位置からの測定子の移動量に基づいて位置指令値を出力し、測定値算出部は、基準位置の初期値からの測定子の移動量に基づいて測定値を算出するので、基準位置の更新後であっても測定子の位置を適切に制御することができるとともに、適切な測定値を算出することができる。
【0012】
本発明では、前記偏差取得部は、前記基準位置の初期値からの前記測定子の移動量を偏差として取得し、前記判定部は、前記偏差取得部にて取得される偏差が第2の閾値より大きいか否かを判定し、前記更新部は、前記判定部にて前記偏差が前記第2の閾値より大きいと判定されると、前記基準位置の初期値、及び前記補正関数を更新することが好ましい。
【0013】
ここで、偏差取得部にて取得される偏差が非常に大きい場合には、形状測定装置を使用する環境の温度変化や、形状測定装置の経時変化などの影響が非常に大きいと考えられるので、基準位置の初期値、及び補正関数を更新することが望ましい。
本発明によれば、更新部は、判定部にて偏差が第2の閾値より大きいと判定されると、基準位置の初期値、及び補正関数を更新するので、形状測定装置を使用する環境の温度変化や、形状測定装置の経時変化などの影響が非常に大きい場合には、基準位置の初期値、及び補正関数を更新することができる。
【0014】
本発明では、前記制御装置は、前記更新部にて前記補正関数が更新されると、更新前に前記測定値算出部にて補正された前記測定子の移動量を、更新前における前記補正関数の逆関数を用いて補正前の状態とする逆補正部と、前記逆補正部にて補正前の状態とされた前記測定子の移動量と、前記偏差とを合成し、再度、更新後における前記補正関数を用いて補正することで測定値を算出する再補正部とを備えることが好ましい。
【0015】
ここで、更新部にて補正関数が更新されると、測定値は、更新前における基準位置の初期値からの測定子の移動量を、更新前における補正関数を用いて補正したものであるので、更新後における基準位置の初期値からの測定子の移動量を再測定し、更新後における補正関数を用いて補正することが望ましい。
本発明によれば、制御装置は、逆補正部と、再補正部とを備えるので、更新後における基準位置の初期値からの測定子の移動量を再測定することなく、適切な測定値を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る三次元測定機の概略構成を示すブロック図。
【図2】本発明の一実施形態に係る三次元測定機本体を示す全体模式図。
【図3】本発明の一実施形態に係る基準位置の更新処理のフローチャートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
〔三次元測定機の概略構成〕
図1は、本発明の一実施形態に係る三次元測定機1の概略構成を示すブロック図である。
形状測定装置としての三次元測定機1は、図1に示すように、三次元測定機本体2と、三次元測定機本体2の駆動制御を実行するモーションコントローラ3と、操作レバー等を介してモーションコントローラ3に指令を与え、三次元測定機本体2を手動で操作するための操作手段4と、モーションコントローラ3に所定の指令を与えるとともに、演算処理を実行するホストコンピュータ5とを備える。
【0018】
図2は、三次元測定機本体2を示す全体模式図である。なお、図2では、上方向を+Z軸方向とし、このZ軸に直交する2軸をそれぞれX軸、及びY軸として説明する。
三次元測定機本体2は、図2に示すように、被測定物Wを測定するための測定子211Aを有するプローブ21と、プローブ21を移動させる移動機構22と、移動機構22が立設される定盤23とを備える。なお、定盤23には、三次元測定機本体2のキャリブレーションをするための半径既知の基準球231が設置され、この基準球231は、定盤23上の複数位置に設置することができる。
移動機構22は、プローブ21を保持するとともに、プローブ21の移動を可能とするスライド機構24と、スライド機構24を駆動することでプローブ21を駆動する駆動機構25とを備える。
【0019】
スライド機構24は、定盤23におけるX軸方向の両端から+Z軸方向に延出し、Y軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられる2つのコラム241と、各コラム241にて支持され、X軸方向に沿って延出するビーム242と、Z軸方向に沿って延出する筒状に形成され、ビーム242上をX軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられるスライダ243と、スライダ243の内部に挿入されるとともに、スライダ243内をZ軸方向に沿ってスライド移動可能に設けられるラム244とを備える。
【0020】
駆動機構25は、図1、及び図2に示すように、各コラム241のうち、−X軸方向側のコラム241を支持するとともに、Y軸方向に沿って駆動するY軸駆動機構251Yと、ビーム242上をスライドさせてスライダ243をX軸方向に沿って駆動するX軸駆動機構251X(図2において図示略)と、スライダ243内をスライドさせてラム244をZ軸方向に沿って駆動するZ軸駆動機構251Z(図2において図示略)とを備える。
【0021】
X軸駆動機構251X、Y軸駆動機構251Y、及びZ軸駆動機構251Zには、図1に示すように、スライダ243、各コラム241、及びラム244の各軸方向の位置を検出するためのX軸スケールセンサ252X、Y軸スケールセンサ252Y、及びZ軸スケールセンサ252Zがそれぞれ設けられている。なお、各スケールセンサ252は、スライダ243、各コラム241、及びラム244の移動量に応じたパルス信号を出力する位置センサである。
【0022】
プローブ21は、測定子211Aを先端側(−Z軸方向側)に有するスタイラス211と、スタイラス211の基端側(+Z軸方向側)を支持する支持機構212とを備える。
支持機構212は、スタイラス211をX,Y,Z軸の各軸方向に付勢することで所定位置に位置決めするように支持するとともに、外力が加わった場合、例えば測定子211Aが被測定物Wに当接した場合には、スタイラス211を一定の範囲内でX,Y,Z軸の各軸方向に移動可能としている。すなわち、支持機構212は、測定子211Aを一定の範囲内で移動可能としている。
この支持機構212は、図1に示すように、測定子211Aの各軸方向の位置を検出するためのX軸プローブセンサ213X、Y軸プローブセンサ213Y、及びZ軸プローブセンサ213Zを備える。なお、各プローブセンサ213は、測定子211Aの各軸方向の移動量に応じたパルス信号を出力する位置センサである。
【0023】
モーションコントローラ3は、図1に示すように、操作手段4、またはホストコンピュータ5からの指令に応じて駆動機構25を制御する駆動制御部31と、各スケールセンサ252、及び各プローブセンサ213から出力されるパルス信号を計数するカウンタ部32とを備える。
カウンタ部32は、各スケールセンサ252から出力されるパルス信号をカウントしてスライド機構24の移動量を計測するスケールカウンタ321と、各プローブセンサ213から出力されるパルス信号をカウントして測定子211Aの移動量を計測するプローブカウンタ322とを備える。そして、スケールカウンタ321、及びプローブカウンタ322にて計測されたスライド機構24の移動量、及び測定子211Aの移動量は、ホストコンピュータ5に出力される。
【0024】
制御装置としてのホストコンピュータ5は、CPU(Central Processing Unit)や、メモリ等を備えて構成され、モーションコントローラ3に所定の指令を与えることで三次元測定機本体2を制御するものであり、移動指令部51と、移動量取得部52と、測定値算出部53と、偏差取得部54と、判定部55と、更新部56と、逆補正部57と、再補正部58と、ホストコンピュータ5で用いられるデータや、後述する基準位置更新プログラムなどを記憶する記憶部59とを備える。
【0025】
移動指令部51は、モーションコントローラ3の駆動制御部31に所定の指令を与え、三次元測定機本体2のスライド機構24を駆動する。具体的に、移動指令部51は、測定子211Aの移動量を一定とするように、プローブ21を被測定物Wに押し込んだ状態で被測定物Wの表面に倣ってプローブ21を移動させるための位置指令値を出力する。なお、被測定物Wの表面形状を示す輪郭データは、記憶部59に記憶されている。
【0026】
移動量取得部52は、カウンタ部32にて計測された測定子211Aの移動量(x,y,z)、及び移動機構22の移動量(x,y,z)を取得する。ここで、移動量取得部52にて取得される測定子211Aの移動量は、基準位置からの測定子211Aの移動量である。
ここで、基準位置の初期値は、例えば、三次元測定機1の電源を投入した後、図2に示すように、プローブ21を所定の領域Rに移動させて測定子211Aを非接触とした状態に設定され、記憶部59に記憶される。なお、所定の領域Rの位置は、記憶部59に予め記憶されている。
【0027】
測定値算出部53は、移動量取得部52にて取得された測定子211Aの移動量、及び移動機構22の移動量を合成し、補正関数を用いて補正することで測定値、すなわち測定子211Aの位置を算出する。
ここで、補正関数は、測定子211Aを基準球231に接触させることで基準球231における表面上の複数の点を測定し、各点を基準球231における既知の表面上に位置させるように、最小自乗法を用いて決定され、記憶部59に記憶されている。なお、以下の説明では、基準位置の初期値を設定し、補正関数を決定することをキャリブレーションというものとする。
【0028】
偏差取得部54は、所定の領域R、すなわち測定子211Aが非接触となる位置にプローブ21を定期的に移動させる。そして、偏差取得部54は、測定子211Aを非接触とした状態における基準位置の初期値からの測定子211Aの移動量を偏差として取得する。
判定部55は、偏差取得部54にて取得される偏差が第1の閾値、及び第2の閾値より大きいか否かを判定する。なお、各閾値は、記憶部59に記憶されている。
【0029】
更新部56は、判定部55にて偏差が第1の閾値より大きく、第2の閾値以下と判定されると、基準位置と、偏差とを合成した位置に基準位置を更新する。
なお、更新後における基準位置は、基準位置の初期値とは別に記憶部59に記憶される。したがって、記憶部59には、キャリブレーションを実行することで設定される基準位置の初期値と、更新後における基準位置とが記憶される。
【0030】
ここで、更新部56にて基準位置が更新されると、移動量取得部52は、基準位置の初期値からの測定子211Aの移動量と、更新後における基準位置からの測定子211Aの移動量とを取得する。
そして、移動指令部51は、更新後における基準位置からの測定子211Aの移動量に基づいて位置指令値を出力し、測定値算出部53は、基準位置の初期値からの測定子211Aの移動量に基づいて測定値を算出する。
【0031】
また、更新部56は、判定部55にて偏差が第2の閾値より大きいと判定されると、キャリブレーションを実行する。すなわち、更新部56は、判定部55にて偏差が第2の閾値より大きいと判定されると、基準位置の初期値、及び補正関数を更新する。
逆補正部57は、更新部56にて補正関数が更新されると、更新前に測定値算出部53にて補正された測定子211Aの移動量を、更新前における補正関数の逆関数を用いて補正前の状態とする。
再補正部58は、逆補正部57にて補正前の状態とされた測定子211Aの移動量と、偏差取得部54にて取得される偏差とを合成し、再度、更新後における補正関数を用いて補正することで測定値を算出する。
【0032】
〔基準位置の更新処理〕
次に、基準位置の更新処理について説明する。
図3は、基準位置の更新処理のフローチャートを示す図である。
ホストコンピュータ5は、記憶部59に記憶された基準位置更新プログラムが実行されると、以下のステップS1〜S5を実行する。
【0033】
具体的に、基準位置更新プログラムが実行されると、偏差取得部54は、所定の領域Rにプローブ21を定期的に移動させることで偏差を取得する(S1:偏差取得ステップ)。
偏差取得ステップS1にて偏差が取得されると、判定部55は、偏差が第1の閾値より大きいか否かを判定する(S21:第1判定ステップ)。
第1判定ステップS21にて偏差が第1の閾値より大きいと判定されると、判定部55は、偏差が第2の閾値より大きいか否かを判定する(S22:第2判定ステップ)。なお、第1判定ステップS21にて偏差が第1の閾値以下と判定されると、ホストコンピュータ5は、偏差取得ステップS1を再実行する。
【0034】
第2判定ステップS22にて偏差が第2の閾値以下と判定されると、更新部56は、基準位置と、偏差とを合成した位置に基準位置を更新する(S31:基準位置更新ステップ)。
これに対して、第2判定ステップS22にて偏差が第2の閾値より大きいと判定されると、更新部56は、キャリブレーションを実行する(S32:キャリブレーション実行ステップ)。
【0035】
キャリブレーション実行ステップS32にてキャリブレーションの実行がされると、逆補正部57は、キャリブレーションの実行前に測定値算出部53にて補正された測定子211Aの移動量を、更新前における補正関数の逆関数を用いて補正前の状態とする(S4:逆補正ステップ)。
逆補正ステップS4にて測定子211Aの移動量が補正前の状態とされると、再補正部58は、補正前の状態とされた測定子211Aの移動量と、偏差取得部54にて取得される偏差とを合成し、再度、更新後における補正関数を用いて補正することで測定値を算出する(S5:再補正ステップ)。
以上のステップS1〜S5を実行することで、ホストコンピュータ5は、基準位置の更新処理を実行する。
【0036】
このような本実施形態によれば以下の効果がある。
(1)三次元測定機1は、偏差取得部54を備えるので、測定子211Aを非接触とした状態における基準位置からの測定子211Aの移動量を偏差として取得することができる。そして、更新部56は、判定部55にて偏差が第1の閾値より大きく第2の閾値以下と判定されると、基準位置と、偏差とを合成した位置に基準位置を更新するので、更新後に移動量取得部52にて取得される基準位置からの測定子の移動量は0になる。したがって、測定子211Aの位置を適切に制御することができ、測定子211Aが非接触か否かを適切に判断することができる。
【0037】
(2)偏差取得部54は、プローブ21を移動させて偏差を取得するので、ホストコンピュータ5は、測定子211Aを非接触とした状態における測定子211Aの移動量を確実に0とすることができる。
(3)移動指令部51は、更新後における基準位置からの測定子211Aの移動量に基づいて位置指令値を出力し、測定値算出部53は、基準位置の初期値からの測定子211Aの移動量に基づいて測定値を算出するので、基準位置の更新後であっても測定子211Aの位置を適切に制御することができるとともに、適切な測定値を算出することができる。
【0038】
(4)更新部56は、判定部55にて偏差が第2の閾値より大きいと判定されると、キャリブレーションを実行するので、三次元測定機1を使用する環境の温度変化や、三次元測定機1の経時変化などの影響が非常に大きい場合には、基準位置の初期値、及び補正関数を更新することができる。
(5)ホストコンピュータ5は、逆補正部57と、再補正部58とを備えるので、更新後における基準位置の初期値からの測定子211Aの移動量を再測定することなく、適切な測定値を算出することができる。
【0039】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、偏差取得部54は、所定の領域Rにプローブ21を定期的に移動させることで偏差を取得していたが、所定の領域R以外の領域で偏差を取得してもよい。また、偏差取得部は、任意のタイミングで偏差を取得してもよく、例えば、プローブの回転を行った後や、プローブの交換を行った後などに偏差を取得してもよい。
さらに、前記実施形態では、偏差取得部54は、測定子211Aを非接触とした状態における基準位置の初期値からの測定子211Aの移動量を偏差として取得していたが、更新後における基準位置からの測定子の移動量を偏差として取得してもよい。要するに、偏差取得部は、測定子を非接触とした状態における基準位置からの測定子の移動量を偏差として取得すればよい。
【0040】
前記実施形態では、測定値算出部53は、基準位置の初期値からの測定子211Aの移動量に基づいて測定値を算出していたが、更新後における基準位置からの測定子の移動量に基づいて測定値を算出してもよい。
前記実施形態では、更新部56は、判定部55にて偏差が第2の閾値より大きいと判定されると、キャリブレーションを実行していたが、キャリブレーションを実行する機能を有していなくてもよい。
前記実施形態では、ホストコンピュータ5は、逆補正部57と、再補正部58とを備えていたが、これらの機能を備えていなくてもよい。
【0041】
前記実施形態では、形状測定装置として三次元測定機1を例示していたが、他の形状測定装置に本発明を適用してもよい。要するに、形状測定装置は、被測定物を測定するための測定子を有し、測定子を一定の範囲内で移動可能とするプローブと、プローブを移動させる移動機構と、移動機構を制御する制御装置とを備え、測定子を被測定物に接触させることで被測定物の形状を測定するものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、形状測定装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…三次元測定機(形状測定装置)
5…ホストコンピュータ(制御装置)
21…プローブ
22…移動機構
52…移動量取得部
53…測定値算出部
54…偏差取得部
55…判定部
56…更新部
57…逆補正部
58…再補正部
211A…測定子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を測定するための測定子を有し、前記測定子を一定の範囲内で移動可能とするプローブと、前記プローブを移動させる移動機構と、前記移動機構を制御する制御装置とを備え、前記測定子を前記被測定物に接触させることで前記被測定物の形状を測定する形状測定装置であって、
前記制御装置は、
基準位置からの前記測定子の移動量を取得する移動量取得部と、
前記測定子を非接触とした状態における前記基準位置からの前記測定子の移動量を偏差として取得する偏差取得部と、
前記偏差取得部にて取得される偏差が第1の閾値より大きいか否かを判定する判定部と、
前記判定部にて前記偏差が前記第1の閾値より大きいと判定されると、前記基準位置と、前記偏差とを合成した位置に前記基準位置を更新する更新部とを備えることを特徴とする形状測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の形状測定装置において、
前記偏差取得部は、
前記測定子が非接触となる位置に前記プローブを移動させることで前記偏差を取得することを特徴とする形状測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の形状測定装置において、
前記制御装置は、
前記プローブを移動させるための位置指令値を出力する移動指令部と、
前記移動量取得部にて取得される前記測定子の移動量を、補正関数を用いて補正することで測定値を算出する測定値算出部とを備え、
前記移動量取得部は、前記更新部にて前記基準位置が更新されると、前記基準位置の初期値からの前記測定子の移動量と、前記基準位置からの前記測定子の移動量とを取得し、
前記移動指令部は、前記基準位置からの前記測定子の移動量に基づいて前記位置指令値を出力し、
前記測定値算出部は、前記基準位置の初期値からの前記測定子の移動量に基づいて前記測定値を算出することを特徴とする形状測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の形状測定装置において、
前記偏差取得部は、前記基準位置の初期値からの前記測定子の移動量を偏差として取得し、
前記判定部は、前記偏差取得部にて取得される偏差が第2の閾値より大きいか否かを判定し、
前記更新部は、前記判定部にて前記偏差が前記第2の閾値より大きいと判定されると、前記基準位置の初期値、及び前記補正関数を更新することを特徴とする形状測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の形状測定装置において、
前記制御装置は、
前記更新部にて前記補正関数が更新されると、更新前に前記測定値算出部にて補正された前記測定子の移動量を、更新前における前記補正関数の逆関数を用いて補正前の状態とする逆補正部と、
前記逆補正部にて補正前の状態とされた前記測定子の移動量と、前記偏差とを合成し、再度、更新後における前記補正関数を用いて補正することで測定値を算出する再補正部とを備えることを特徴とする形状測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−13426(P2012−13426A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147406(P2010−147406)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】