説明

形鋼の耳状突起物除去方法

【課題】形鋼に発生した耳状突起物を確実に除去することのできる形鋼の耳状突起物除去方法を提供する。
【解決手段】研削加工ヘッド5aを有する耳状突起物除去装置5を用いて不等辺不等厚山形鋼1の端部に発生した耳状突起物2を除去するに際して、耳状突起物に接触する研削加工ヘッドの接触圧を検出し、研削加工ヘッドの接触圧が一定となるように耳状突起物除去装置の位置を制御しながら耳状突起物2を除去するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不等辺不等厚山形鋼などの形鋼に発生した耳状突起物を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、船体の防撓材などに使用される不等辺不等厚山形鋼は横断面が矩形の山形鋼素材を熱間圧延して製造されるため、山形鋼素材を熱間圧延するときに素材の噛み出しが圧延ロール間に発生すると、図11に示すような耳状突起物2が不等辺不等厚山形鋼1の短辺部1aや長辺部1bの端部に発生する。そして、耳状突起物2が不等辺不等厚山形鋼1の短辺部1aや長辺部1bの端部に発生すると、不等辺不等厚山形鋼1を構造物として用いる際に、この端部を他の部材と溶接する場合には、溶け込み不足などの溶接欠陥が発生したり、また塗装を行う場合には塗装むらが発生したりすることがあるため、不等辺不等厚山形鋼などの形鋼に発生した耳状突起物2を取り除く必要がある。
不等辺不等厚山形鋼などの形鋼に発生した耳状突起物を除去する方法としては、周面部にワイヤが植設されたワイヤブラシを耳状突起物に接触させ、このワイヤブラシを回転させて耳状突起物を削り落す方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−134653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、形鋼に発生した耳状突起物の高さが形鋼の長手方向に一定の場合には耳状突起物が発生した形鋼の表面を平滑に研削することが可能であるが、耳状突起物の高さが形鋼の長手方向に不定の場合や形鋼に曲がりや反りなどがある場合には耳状突起物が形鋼に残存したり、耳状突起物が発生した形鋼の表面を削り過ぎたりすることがあった。
本発明は上述した点に着目してなされたものであり、その目的は、形鋼に発生した耳状突起物を確実に除去することのできる形鋼の耳状突起物除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明に係る形鋼の耳状突起物除去方法は、研削加工ヘッドを有する耳状突起物除去装置を用いて形鋼の端部に発生した耳状突起物を除去するに際して、前記耳状突起物に接触する研削加工ヘッドの接触圧を検出し、前記研削加工ヘッドの接触圧が一定となるように前記耳状突起物除去装置の位置を制御しながら前記耳状突起物を除去するようにしたことを特徴とする。
請求項2記載の発明に係る形鋼の耳状突起物除去方法は、研削加工ヘッドを有する耳状突起物除去装置を用いて形鋼の端部に発生した耳状突起物を除去するに際して、前記研削加工ヘッドを前記耳状突起物に弾性的に押し付けて前記耳状突起物を除去するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1及び2記載の発明に係る形鋼の耳状突起物除去方法では、耳状突起物の高さに応じて研削加工ヘッドの位置が耳状突起物の高さ方向に変化するため、形鋼に発生した耳状突起物を確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の発明に係る形鋼の耳状突起物除去方法によって耳状突起物を除去する場合に用いられる耳状突起物除去装置の一例を示す図である。
【図2】図1のII−II断面を示す図である。
【図3】図1のIII−III断面を示す図である。
【図4】本発明に用いる端部位置検出器の一例を示す図である。
【図5】第1の発明に係る形鋼の耳状突起物除去方法によって耳状突起物を除去する場合に用いられる耳状突起物除去装置の別の例を示す図である。
【図6】第1の発明に係る形鋼の耳状突起物除去方法によって耳状突起物を除去する場合に用いられる耳状突起物除去装置のさらに別の例を示す図である。
【図7】第2の発明に係る形鋼の耳状突起物除去方法によって耳状突起物を除去する場合に用いられる耳状突起物除去装置の一例を示す図である。
【図8】第2の発明に係る形鋼の耳状突起物除去方法によって耳状突起物を除去する場合に用いられる耳状突起物除去装置の別の例を示す図である。
【図9】第2の発明に係る形鋼の耳状突起物除去方法によって耳状突起物を除去する場合に用いられる耳状突起物除去装置の一例を示す図である。
【図10】第3の発明に係る形鋼の耳状突起物除去方法によって耳状突起物を除去する場合に用いられる耳状突起物除去装置の別の例を示す図である。
【図11】不等辺不等厚山形鋼に発生した耳状突起物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は第1の発明に係る形鋼の耳状突起物除去方法によって耳状突起物を除去する場合に用いられる耳状突起物除去装置の一例を示す図であり、同図に示されるように、不図示の仕上圧延機、場合によっては仕上圧延後に矯正機を通過した不等辺不等厚山形鋼1を複数の搬送ローラ3により矢印方向に搬送する搬送ラインの左右両側には、不等辺不等厚山形鋼1をガイドする複数の開度変更可能なローラガイド4が設けられている。
【0009】
図2は図1のII−II断面を示す図であり、同図に示されるように、搬送ローラ3により搬送される不等辺不等厚山形鋼1の上方には、不等辺不等厚山形鋼1の短辺部1aの端部に発生した耳状突起物2を除去する耳状突起物除去装置5が設けられている。
耳状突起物除去装置5は円筒状の研削加工ヘッド5aを有しており、この研削加工ヘッド5aを駆動モータ5bにより回転駆動して不等辺不等厚山形鋼1の短辺部1aに発生した耳状突起物2を除去するように構成されている。また、耳状突起物除去装置5は駆動モータ5bを耳状突起物2の高さ方向に進退駆動するアクチュエータ5cを有しており、このアクチュエータ5cには、研削加工ヘッド5aの高さ位置を制御するコントローラ6から制御信号が供給されるようになっている。
【0010】
図3は図1のIII−III断面を示す図であり、同図に示されるように、搬送ローラ3により搬送される不等辺不等厚山形鋼1の上方には、耳状突起物除去装置5により除去される前の短辺部1aの端部位置を検出する端部位置検出器7が設けられている。
端部位置検出器7は高さ検出用ローラ7aを有しており、この高さ検出用ローラ7aの周面部を短辺部1aの先端部に上方から接触させて短辺部1aの端部の高さを検出する構成となっている。また、端部位置検出器7は高さ検出用ローラ7aの上下方向の変位を検出する変位センサ7bを有しており、この変位センサ7bで検出された高さ検出用ローラ7aの変位は、短辺部1aの端部の高さ情報としてコントローラ6に供給されるようになっている。
【0011】
このような構成において、不等辺不等厚山形鋼1の短辺部1aに発生した耳状突起物2に耳状突起物除去装置5の研削加工ヘッド5aを接触させて耳状突起物2を研削しているときに研削加工される前の短辺部1aの端部の高さが変化すると、端部位置検出器7の高さ検出用ローラ7aが高さ方向に変位する。そして、高さ検出用ローラ7aが高さ方向に変位すると、高さ検出用ローラ7aの変位量が端部位置検出器7の変位センサ7bによって検出される。
【0012】
このようにして、高さ検出用ローラ7aの変位量が変位センサ7bによって検出されると、変位センサ7bで検出された高さ検出用ローラ7aの変位量が端部位置情報として変位センサ7bからコントローラ6に供給される。そして、高さ検出用ローラ7aの変位量が端部位置情報として変位センサ7bからコントローラ6に供給されると、コントローラ6は、研削加工ヘッド5aの研削加工位置を変更するヘッド位置変更信号を耳状突起物除去装置5のアクチュエータ5cに送出する。これにより、耳状突起物2の発生した部分が耳状突起物除去装置5の研削加工ヘッド5aによって平滑に研削されるため、図1〜図3に示した実施の形態では、不等辺不等厚山形鋼1に発生した耳状突起物2を確実に除去することができる。
【0013】
以上説明した、実施形態において、形鋼が上下方向に変形している場合に、形鋼の搬送に伴い、耳状突起物を除去すべき端部が上下方向に変位するので、端部位置検出器7では端部の上下方向位置を検出し、この検出結果にもとづきアクチュエータ5cは、研削加工ヘッド5aの上下方向位置を変更するようにしているが、形鋼が左右方向への変形がある場合には、搬送に伴い端部は左右方向にも変位するので、端部の水平方向(左右方向)位置を検出する検出ローラを設けて、さらに、研削加工ヘッド5aの水平方向位置を変更するアクチュエータを設けるようにしてもよい。
【0014】
図4は、短辺部の水平方向位置についても検出できるようにした端部位置検出器7を示す図である。この例では、図3に示した検出器7に対して、高さ検出用ローラ7aに加えて、水平位置検出用ローラ7cをさらに有しており、この水平位置検出用ローラ7cの周面部を短辺部1aの先端部に水平方向(図3の例では右方向)から接触させて短辺部1aの端部の水平方向の位置を検出する構成となっている。また、水平位置検出用ローラ7cの変位を検出する変位センサ7dを有しており、この変位センサ7dで検出された高さ検出用ローラ7cの変位についても、短辺部1aの水平位置情報としてコントローラ6に供給されるようになっている。
【0015】
図5は、図2に示した耳状突起物除去装置5に対して、研削加工ヘッド5aの水平方向位置を変更するアクチュエータ5dをさらに設けた例である。図5に示したように構成することで、研削加工ヘッド5aを上下方向および水平方向のいずれにも短辺部1aが変位した場合にも、研削加工ヘッド5aを短辺部1aの端部位置に追従させることができ、確実に耳状突起物を除去することができるようになる。
【0016】
図6は第1の発明に係る別の実施形態を示す図である。図6に示す実施形態では、略円柱状の研削加工ヘッド15aの底面部にて耳状突起物を研削する構成となっており、短辺部1aの端部の斜め上方より研削加工ヘッド15aを押付ける構成となっている。
研削加工ヘッド15aは、駆動モータ15bにより回転駆動される。駆動モータ15bは、搬送ラインに対して固定位置に配置された支持部材(ヘッドホルダ)15eに、搬送ラインに対して斜め上方から進退自在となるよう、支持部材(ヘッドホルダ)15eから搬送ラインへ向けて斜め下方へ延びたスライド軸15gにスライド可能に支持されている。さらに、支持部材15eに加工ヘッドの進退用のアクチュエータとしてモータ15cが固定配置されており、該モータ15cにより回転駆動されるねじ軸15fには、ナット部材15dを介して駆動モータ15bが取り付けられている。よって、モータ15cによりねじ軸15fを回転させることにより、加工ヘッド15aが搬送ラインに対して進退動作を行う。加工ヘッドの進退用のモータ15cの制御はコントローラ6が行う。コントローラ6は、図4に示した端部位置検出器7から供給された、短辺部1aの端部の位置情報に基づき、加工ヘッドの進退位置を決定し、加工ヘッドを決定した進退位置に合わせるようモータ15cを駆動させる。
【0017】
図中破線で示した短辺部1aのように上下方向および水平方向のいずれにも短辺部1aが変位した場合にも、研削加工ヘッド15aを短辺部1aの端部位置に追従させることができ、確実に耳状突起物を除去することができるようになる。本実施形態の場合には、図5に示した実施形態に対してアクチュエータは1つにしても、短辺部1aの上下方向および水平方向の変位に追従可能となる。但し、略円柱状の加工ヘッド15aの研削面(底面部)の大きさが小さいと、短辺部1aの変位量が大きい場合に、耳状突起物が生ずる短辺部1aの端部に加工ヘッドを接触させることができなくなるため、短辺部1aの変位量の経験値から、どのような変位量の形鋼が搬送されてきても、加工ヘッド15aの研削面を短辺部1aの端部に接触させることができるよう、加工ヘッド15aの大きさを決定しておけばよい。
【0018】
図1〜図6に示した実施の形態では、短辺部1aの端部位置を端部位置検出器7によって検出し、この端部位置検出器7で検出された短辺部1aの端部位置に応じて研削加工ヘッドの位置を制御しながら耳状突起物2を削り落すようにしたが、例えば、図2に示す耳状突起物除去装置に対しては、図7に示すように、端部に接触する研削加工ヘッド5aの接触圧を圧力センサ8で検出し、研削加工ヘッド5aの接触圧が一定となるように研削加工ヘッド5aの位置をコントローラ6で制御しながら耳状突起物2を削り落すようにしてもよい(第2の発明の実施形態)。
【0019】
また、図6に示す耳状突起物除去装置に対しては、端部に接触する研削加工ヘッド15aの接触圧を、例えば図8に示すように、ナット部材15dと駆動モータ15bとの間に配置したセンサ18で検出し、研削加工ヘッド15aの接触圧が一定となるように研削加工ヘッド15aの位置をコントローラ6で制御しながら耳状突起物2を削り落すようにしてもよい(第2の発明の別の実施形態)。
【0020】
また、図2に示した耳状突起物除去装置に対して、図9に示すように、研削加工ヘッド5aとこれを保持するヘッドホルダ5eとの間にバネ等の弾性体9を設け、この弾性体9の弾性力により研削加工ヘッド5aの周面部を耳状突起物2の先端部に押し当てて耳状突起物2を削り落すようにしてもよい(第3の発明の実施形態)。
図6に示す耳状突起物除去装置に対しても同様に、図10に示すように、研削加工ヘッド15aとこれを保持するヘッドホルダ15eとの間にバネ等の弾性体9を設け、この弾性体9の弾性力により研削加工ヘッド15aの底面部を耳状突起物2の先端部に押し当てて耳状突起物2を削り落すようにしてもよい(第3の発明の別の実施形態)。この場合、図6に示したモータ(アクチュエータ)15cは必要なく、また、ねじ軸15fはスライド軸15gと同様にしておけばよく、単に駆動モータ15bとスライド軸とを、スライド可能に接続しておけばよい。
【0021】
上述した各実施の形態では不等辺不等厚山形鋼1の短辺部1aの端部に発生した耳状突起物2を除去する場合を例示したが、不等辺不等厚山形鋼1の長辺部1bの端部に発生した耳状突起物を除去する場合にも適用することが可能である。また、耳状突起物2が発生する形鋼として不等辺不等厚山形鋼1を例示したが、等辺等厚山形鋼などの形鋼に発生した耳状突起物についても確実に除去することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 不等辺不等厚山形鋼
1a 短辺部
1b 長辺部
2 耳状突起物
3 搬送ローラ
4 ローラガイド
5 耳状突起物除去装置
5a 研削加工ヘッド
5b 駆動モータ
5c アクチュエータ
5d アクチュエータ
5e ヘッドホルダ
6 コントローラ
7 端部位置検出器
7a 高さ検出用ローラ
7b 変位センサ
7c 水平位置検出用ローラ
7d 変位センサ
8 圧力センサ
9 弾性体
15 耳状突起物除去装置
15a 研削加工ヘッド
15b 駆動モータ
15c モータ(アクチュエータ)
15d ナット部材
15e 支持部材(ヘッドホルダ)
15f ねじ軸
15g スライド軸
18 圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削加工ヘッドを有する耳状突起物除去装置を用いて形鋼の端部に発生した耳状突起物を除去するに際して、前記耳状突起物に接触する研削加工ヘッドの接触圧を検出し、前記研削加工ヘッドの接触圧が一定となるように前記耳状突起物除去装置の位置を制御しながら前記耳状突起物を除去するようにしたことを特徴とする形鋼の耳状突起物除去方法。
【請求項2】
研削加工ヘッドを有する耳状突起物除去装置を用いて形鋼の端部に発生した耳状突起物を除去するに際して、前記研削加工ヘッドを前記耳状突起物に弾性的に押し付けて前記耳状突起物を除去するようにしたことを特徴とする形鋼の耳状突起物除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−166341(P2012−166341A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−136147(P2012−136147)
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【分割の表示】特願2007−138013(P2007−138013)の分割
【原出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】