説明

後方散乱に基くトランスポンダの位置を測定する方法

本発明は、後方散乱に基くトランスポンダの位置を測定する方法に関する。本発明に寄れば、この方法は、基地局(BS1)により不変調搬送波信号(TS)を送信し、トランスポンダ(TR1)が基地局(BS)の応答範囲へ入る時、基地局(BS1)から送信される搬送波信号(TS)の位相変調及び後方散乱により発生される位置測定信号(OS)を、トランスポンダ(TR1)により送信し、位置測定信号(OS)に基いてトランスポンダ(TR1)の位置を測定する段階を含んでいる。例えば物品経済組織における使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後方散乱に基くトランスポンダの位置を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスポンダはいわゆる無線周波識別(RFID)システムにおいて使用される。この場合1つ又は複数の基地局又は読取り装置と1つ又は複数のトランスポンダとの間で、データが無線で一方向又は双方向に伝送される。トランスポンダには、例えば温度測定用センサも統合することができる。このようなトランスポンダは遠隔センサと称される。
【0003】
トランスポンダ又はその送受信装置は、基地局へのデータ伝送用能動送信器を持っていない。能動的でないこのようなシステムは、固有のエネルギ供給部を持たない時受動システムと称され、固有のエネルギ供給部を持っている時半受動システムと称される。受動トランスポンダは、供給に必要な作動エネルギ又は作動電力を、基地局により求められる電磁界から取る。
【0004】
基地局の遠隔領域においてUHF又はマイクロ波によりトランスポンダから基地局へデータを伝送するため、一般にいわゆる後方散乱結合器が使用される。このため基地局により電磁搬送波または搬送波信号が検出され、トランスポンダの送−受信装置により、基地局へ伝送すべきデータに応じて、変調方法特に副搬送波変調方法により変調されかつ反射される。このために通常使用される変調方法は、例えば教科書、Klaus Finkenzeller, RFID−Handbuch、3.Aufl.,HANSER,2002,siehe insbesondere Kapitel 6.2.1 Amplitudentastung及び米国特許第6,046,683号明細書に記載されているように、振幅変調である。その代わりに位相変調も使用できる。
【0005】
通常使用されるデータ伝送プロトコルでは、いわゆる“Reader−talks−first”(RTF)プロトコルと“Tag−talks−first”(TTF)プロトコルが区別される。TTFプロトコルでは、基地局が変調されない搬送波信号を送信する。トランスポンダが基地局の応答範囲に入り、基地局により検出される変調されない搬送波信号をトランスポンダが検出できると、それが自発的即ち自動的に信号を送信し、この信号を基地局が受信できる。トランスポンダにより送信される信号は、例えばトランスポンダ識別信号を含むことができる。これとは異なりRTFプロトコルでは、トランスポンダから基地局へのデータ伝送は、基地局からトランスポンダへの指令の送信により開始され、即ちトランスポンダが自発的又は自動的に信号又は情報を送信しない。指令の送信のため、信号は通常基地局により符号化され、符号化された信号が搬送波の変調により伝送される。
【0006】
一方向RFIDシステムでは、情報がトランスポンダのみから読取り装置へ伝送され、即ちここでは通常TTFプロトコルのみが使用される。双方向RFIDシステムでは、情報がトランスポンダと読取り装置との間で両方向に伝送される。ここではTTFシステム及びRTFシステムが使用される。
【0007】
いわゆるつかみ−置き使用では、例えば包装物から成る物体がつかみ器により取出され、続いて特定の場所例えば印刷回路板上に置かれる。置くべき物体の最初の場所が未知であり、これは例えばパレットの場合であり、パレットはロジスティック連鎖内で、前もって精確には規定されない場所に置かれると、つかみ−置き使用の第1段階で、置くべき物体の空間的位置測定を行わねばならない。
【0008】
物体例えばパレット又はパレットの個々の包装物単位が、標識付け用トランスポンダを設けられると、トランスポンダを物品の標識付け及びその位置測定に使用することができる。この場合標識付けは、従来は例えばメモリ範囲における物品標識の記録により行われる。空間的位置測定は、トランスポンダにより送信される位置測定信号に基いて行うことができる。この場合ロボットが位置測定信号を位置ベクトルとして使用することができる。位置測定方法は、例えば米国特許第6,046,683号明細書に記載されている。
【0009】
米国特許第6,046,683号明細書では、基地局がRTFプロトコルのため最初は未知のトランスポンダに話しかけるか、又は多数のタグから隔離又は別々にして、直接又は間接に位置測定信号の送信を可能にすることによって、位置測定信号の送信が開始される。換言すれば基地局は連続的に問合せ指令を送信して、新たにその応答範囲に達するトランスポンダを見出さねばならない。このいわゆるポーリングは干渉スペクトルを生じる。
【0010】
位置測定信号に加えて、即ち能動位置測定信号の場合、トランスポンダにおけるデータ受信が可能であるようにする時、後方散乱信号の振幅変調を行うトランスポンダシステムでは、位置測定信号の持続時間を時間的に限定するか、トランスポンダにより送信される位置測定信号を、トランスポンダにおける情報受信が可能である特定の時間間隔中に、中断するか又は抑制せねばならない。
【0011】
その理由は、基地局からトランスポンダへのデータ伝送が、基地局により送信される搬送波信号の順次に続くノッチとも称される電磁界隙間又は電磁界弱め部の形の搬送波信号の振幅変調によって通常行われるからである。このようなノッチは、トランスポンダにおいて、いわゆる受信器信号強さ表示器(RSSI)回路によって検出される。
【0012】
トランスポンダの位置測定信号が、トランスポンダによる搬送波信号の振幅変調及び後方散乱によって発生され、トランスポンダの入力インピーダンスの実数部分が変化される(これに対してFinkenzeller,Kapitel 4.2.5.4有効面及び後方散乱断面も参照のこと)。入力インピーダンスの実数部分の変化は、トランスポンダのインピーダンスに関して、トランスポンダの入力インピーダンスの整合又は誤整合を生じ、それによりトランスポンダアンテナの反射特性又は受信特性が変化し、従って電力が多かれ少なからトランスポンダ又はそのアンテナにより反射されるか又は受信される。この場合変調指数は比較的大きくて、いわゆる吸収状態即ち整合状態と反射状態即ち誤整合状態との間のそれに応じて大きい電磁界強さの差を生じる。
【0013】
トランスポンダにより受信されるレベルは、基地局とトランスポンダとの間の距離の増大する際著しく低下するので、例えば125kHzRFIDシステムとは異なり、レベルをトランスポンダにおいて高めねばならない。それにより、トランスポンダ自体により引起される受信搬送波信号の入力振幅の変動が、位置測定信号の発生中に受信される搬送波信号の振幅変調及び後方散乱によって生じ、基地局により発生されるノッチ信号を著しく費やしてのみ区別され、これらのノッチ信号も同様に受信される搬送波信号の振幅の変化を引起す。これは、到達距離を大きくするためノッチ発生のための電磁界弱め(変調指数)が小さく保たれる時、特に当てはまる。その場合区別のため、トランスポンダに、余分の費用のかかる入力フィルタが必要である。フィルタによる区別を行うため、受信されかつ後方散乱される信号の側波帯が比較的大きく離れていなければならない。これはしばしば実現されない。なぜならば、そうでないと適当な規格及び/又は標準に違反することになるからである。
【0014】
要約すればこれは、既に説明したように、トランスポンダ側振幅変調のため、トランスポンダと基地局との間の通信が、半二重作動においてのみ行われるからである。トランスポンダは、それが位置測定信号を送信している間、基地局の変調信号を受信できない。その結果位置測定信号の持続時間を時間的に限定するか、又はトランスポンダにより送信される位置測定信号を、トランスポンダにおける情報受信を可能にする特定の時間中に中断するか又は抑制せねばならない。
【0015】
しかし特定の使用では、時間的に限定されない連続的な位置測定信号を発生し、同時に基地局により応答可能なトランスポンダは必要であり、トランスポンダにより送信される位置測定信号に基いて基地局により存在するものと認められて後、その識別信号を問合わせるか又はそれらをプログラミングする。
【0016】
米国特許第6,046,683号明細書に記載されている位置測定方法では、基地局が適当な問合わせ指令をトランスポンダに送信することによって、基地局による位置測定信号の送信が開始される。米国特許第6,046,683号明細書に記載されている方法はRTFプロトコルに基いているので、トランスポンダがその応答範囲にあるか否かの検出のため、基地局が連続的に問合わせ指令を送信して、新たに応答範囲へ達するトランスポンダの応答を行わねばならない。しかし基地局によるこのように永続的な情報伝送は、しばしば望ましくない干渉スペクトルを生じる。更に新たに基地局の応答範囲に達するトランスポンダを短い遅れ時間で検出可能にするため、高い周波数を持つ問合わせ指令を送信せねばならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
技術的問題として、比較的少ない干渉スペクトル及び短い検出時間を持つ後方散乱に基くトランスポンダの位置を測定するため簡単かつ安価に実行可能な方法を提供することが、本発明の基礎となっており、トランスポンダが位置測定信号を送信し、トランスポンダによるデータ受信が可能であり、トランスポンダが連続的な位置測定信号を送信する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は請求項1の特徴を持つ方法の提供により、この問題を解決する。
【0019】
本発明に寄れば、まず基地局が搬送波信号の変調により場合によってはその応答範囲に存在するトランスポンダに問合わせ指令を送信することなく、変調されない搬送波信号を送信する。トランスポンダが基地局の応答範囲に入ると、基地局から送信される搬送波信号の位相変調及び後方散乱により発生される位置測定信号を、このトランスポンダが送信する。その場合位置測定信号に基いてトランスポンダが位置を測定される。
【0020】
基地局は連続的な問合わせ信号を送信しないので、それにより生じる干渉スペクトルを回避することができる。トランスポンダが基地局の応答範囲又は到達距離に達すると、トランスポンダは直ちに位置測定信号を送信するので、トランスポンダは実際上遅れなしに基地局により検出される。この場合問合わせ指令の送信及び基地局によるトランスポンダの識別は、米国特許第6,046,683号明細書におけるように必ずしも必要ではない。なぜならば、基地局の応答範囲内におけるトランスポンの存在を知りさえすればよいからである。
【0021】
位相変調のため、後方散乱されるか又はトランスポンダで受信される信号の振幅は実質的に一定なので、このRSSI回路にあるトランスポンダによる位置測定信号の発生のため、ノッチは検出されない。データ伝送のため基地局が実際にノッチ信号を発生する時に初めて、トランスポンダが多分同時に位置測定信号を送信しても、ノッチ信号はトランスポンダにおいても検出される。こうして例えば位置測定過程の終了後、トランスポンダは記述又はプログラミングされる。位相変調を行う回路装置及び方法は、例えば出願人の以前のドイツ連邦共和国特許出願第10325396.3号に示されており、その内容がそのままここに取入れられる。
【0022】
請求項2による方法の展開では、基地局が少なくとも1つの指令をトランスポンダへ伝送し、トランスポンダが位置測定信号を送信する。指令は例えば書込み指令、読取り指令及び/又はプログラミング指令であってもより。こうしてTTFプロトコルの利点を互いに組合わせることができる。
【0023】
請求項3による展開では、トランスポンダが受動トランスポンダであり、搬送波信号がトランスポンダに作動エネルギを供給するのに充分である時、トランスポンダが位置測定信号を送信する。こうして位置測定信号の送信が電磁界強度に自動的に関係して制御される。
【0024】
請求項4による展開では、基地局により選択方法を実施し、1つより多いトランスポンダが位置測定信号を送信する時、多数のトランスポンダから位置を測定すべきトランスポンダを選択する。この場合原則的に確率論的選択方法と決定論的方法とが区別される。決定論的選択方法及び確率論的選択方法についての詳細な説明は、例えば教科書KlausFinkenzeller,FRID−Hアンd部ch、3.Aufl.,HANSER,2002(特にKapitel 7.2 Vielfachzugriffsverfahren参照)にある。基地局は、それにより受信される信号の特に時間範囲における分析により、複数の信号が重なるため複数のトランスポンダが同時に位置測定信号を送信しているか否かを知ることができる。従って1つのトランスポンダのみが位置測定信号を送信する場合と比較して、基地局に異なる入力信号推移が生じる。選択方法の開始を示すそれぞれのトランスポンダにおける選択指令の受信は、例えばトランスポンダにおけるそれぞれの位置測定信号の発生をやめることができる。選択過程が行われた後、基地局は明確な位置測定信号を、選択されたトランスポンダへ送信することができる。位置測定指令の受信後、対応するトランスポンダは改めてその位置測定信号を発生し、それにより選択されたトランスポンダの位置が測定可能である。位置測定が行われた後、例えば別の指令が選択されたトランスポンダに送信されて、その位置測定信号を再び遮断することができる。それに続いて、前に選択されたトランスポンダを除いて、再び選択過程を行うことができ、それにより別のトランスポンダの位置が測定可能である。
【0025】
請求項5による展開では、選択方法が特にスロットに基くALOHA法である。ALOHA法は、トランスポンダにより制御される確率論的方法であり、トランスポンダが時間をずらして伝送すべきデータを送信する。時間ずれは、一般にトランスポンダにおいて発生される乱数に基いて調節される。複数のトランスポンダが同じ時間スロット内に識別番号を送信すると、いわゆる衝突が起こる。通常これは、基地局が送信されたデータを誤りなく受信するのを妨げる。スロットに基くALOHA法では、単純なALOHA法に比較して、衝突の確率が著しく少なくされる。それは基地局により制御される確率論的方法であり、トランスポンダが所定の同期時点にのみ能動的になり、即ちデータの伝送を開始する。このため基地局は番号を付けられた時間スロット又はスロットを規定し、トランスポンダがそれぞれ乱数を発生し、時間スロットの番号に一致する乱数を持つ各トランスポンダが、この時間スロットにあるデータ又は識別信号を基地局に送信する。選択方法を開始するため、基地局は一般に指令をトランスポンダに送信し、この指令により選択過程の開始が示される。指令の受信後トランスポンダにおいて、例えば前にトランスポンダで計算されたそれぞれの乱数が記憶される。1つのトランスポンダのみが1つの時間スロット内に識別信号を送信すると、このトランスポンダが時間スロット内で選択されるか、又は肯定応答指令の送信により基地局によって選択される。
【0026】
請求項6による方法の展開では、選択方法が決定論的方法特に2進法であり、スリーウォーキングメカニズム又はバイナリ・スリー・サーチとも称される。更に混合確率論的−決定論的方法も可能である。このような混合方法は、出願人の以前のドイツ連邦共和国特許出願第10349647.5号明細書に示されており、その内容がここにそのまま取入れられる。
【0027】
請求項7による展開では、基地局から送信される搬送波信号の副搬送波による変調によって、位置測定信号が発生される。副搬送波による搬送波信号の変調は、例えば教科書Klaus Finkenzeller,RFID−Handbuch,3.Aufl.,HANSER.2002(特にKapitel 3.2.1.2.2Lastmodula

送波信号の変調は、基地局における後方散乱信号の簡単な評価を可能にする。なぜならば、搬送波信号と比較して著しく弱い後方散乱信号が、周波数範囲において側波帯へ移動されており、従って基地局において適当なフィルタにより搬送波信号から分離されるからである。
【0028】
請求項8による方法の展開では、トランスポンダ内部のメモリが、位置測定信号の特に周波数を調節する1つ又は複数のパラメータを含んでいる。パラメータは、例えば指令パラメータの形の指令によっても、トランスポンダに伝送することができる。選択方法が必要な場合、パラメータを規定する指令が位置測定指令であってもよい。これにより例えば、1つ又は複数の位置測定信号により生じるスペルトルが他のRFTD使用のスペクトルと衝突しないようにすることができる。位置測定信号が位置測定指令により調節される時、基地局は動的に、予め見出された周囲条件に関係して、位置測定信号のスペクトルを調節することができる。請求項9による有利な展開では、1つ又は複数のパラメータにより、搬送波信号を変調する変調信号の周波数及び/又は衝撃係数を調節する。これにより位置測定信号のほぼ任意のスペクトルが調節される。請求項10によれば、周波数及び/又は衝撃係数をトランスポンダ内部の発振器クロックから誘導する。このため例えばカウンタがトランスポンダ内部の発振器クロックで作動せしめられ、計数が位置測定信号の調節に役立つパラメータの値に達すると、変調状態が切換えられる。パルス−休止比を調節可能な2つのパラメータ値の使用により、異なるスペクトルが設定される。
【0029】
請求項11による方法の展開では、所定の最大時間が経過し、かつ/又はトランスポンダを受信する時、トランスポンダが位置測定信号の送信を終了して、TTF作動で別のトランスポンダの識別を可能にする。特定の時間後、トランスポンダの位置が測定された確率が高い。従ってトランスポンダが信号の送信を中止し、それにより別のトランスポンダの位置を測定できるのが有効である。位置測定が行われた後、別のトランスポンダの位置を測定できるようにするため、特別に設けられる指令によりトランスポンダを“無言”に切換えることもできる。
【0030】
請求項13のよる展開では、トランスポンダが、別の基地局により位置を測定される。別の基地局は、例えばトランスポンダ又はトランスポンダで特徴づけられる物品をつかむのに用いられるロボットに設けることができる。
【0031】
請求項13による展開では、搬送波信号の周波数がUHF周波数範囲にある。
【0032】
本発明の実施例が図面に示されており、以下に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1は、例えば商品経済組織内で使用できるトランスポンダに基くつかみかつ置く使用を示している。図示した使用は第1の基地局BS1、第2の基地局BS2を含むロボットRB、及びパレットPTを含み、パレットPT上に複数の物品WA1〜WAnが置かれ、それぞれ付属する受動後方散乱トランスポンダTR1〜TRnで標識付けされている。
【0034】
トランスポンダTR1〜TRnはそれぞれ1つのメモリSP、発振器OZ、カウンタZL、インピーダンス制御装置IS及びアンテナATを含んでいる。
【0035】
基地局BS1は、トランスポンダTR1〜TRnの給電に役立つUHF範囲の搬送波信号TSを放出し、トランスポンダが基地局BS1の送−受信領域に達すると、これらのトランスポンダにより搬送波信号が位置測定信号OSとして位相変調されて後方散乱される。
【0036】
図2は、位置測定信号OSを発生するため基地局BSから送信される搬送波信号TSを変調するためそれぞれのトランスポンダTR1〜TRnにおいて発生される変調信号MSの時間的経過を示している。変調信号MSは周期TP、オン期間T1及びオフ期間TP−T1を」持っている。前記の期間TP及びT1から、変調信号MSの周波数及び衝撃係数が簡単に計算される。変調信号MSはいわゆる副搬送波である。
【0037】
期間T1及びTPを調節するため、メモリSPは、カウンタZLの係数との比較に役立つ数値の形のパラメータを含んでいる。メモリはトランスポンダTR1〜TRnの製造時点に既に初期化されるか、又は適当なパラメータ値が位置測定指令又はその他の指令に含まれ、その場合メモリSPに記録されることができる。50/50衝撃係数が実行されると、1つの計数のみを記憶又は使用することができる。カウンタZLは発振器UZのクロック信号CLKで増分される。カウンタZLは例えば8ビットの幅なので、256クロック後にあふれる。
【0038】
メモリSP及びカウンタZLと接続されるインピーダンス制御装置ISは、カウンタZLの計数と記憶されている数値とを比較し、計数と数値が一致していると、変調信号MSの状態を変化する。変調信号MSの状態の変化は、トランスポンダTR1の複素入力インピーダンスZEのほぼ虚数部分の変化を伴い、この変化が後方散乱される信号又は位置測定信号OSの位相変化従って位相変調を行う。この場合後方散乱されかつトランスポンダTR1により受信される信号の負荷変化従って振幅変化従って振幅変化が実質的に行われないように、インピーダンス変化が行われる。これは、トランスポンダTR1により位置測定信号OSの発生のため、トランスポンダTR1のRSSI回路にノッチが発生されるのを防止する。従ってトランスポンダTR1は、位置測定信号OSの送信中も受信準備ができている。
【0039】
図3は位置測定過程の時間的経過の線図を示し、トランスポンダTR1が第2の基地局BS2により位置を測定され、ロボットRBによりパレットPTからつかみ出されるか又は別々にされ、続いて所定の場所に降ろされる。もちろん位置測定を基地局BS1によって行うこともできる。
【0040】
パレットPTが例えば運送業者により配達され、基地局BS1又はBS2の応答範囲に達する時、どんな物品又はどんなトランスポンダTR1〜TRnがパレットPTにあるか、基地局BS1又はBS2には一般に分かっていない。
【0041】
トランスポンダTR1〜TRnの1つが基地局BS1の応答範囲に達すると、即ち搬送波信号TSが対応するトランスポンダTR1〜TRnに作動エネルギを供給するのに充分であると、このトランスポンダが位置測定信号OSを発生又は送信する。図示した実施例では、すべてのトランスポンダTR1〜TRnが実際上同時に基地局BS1の応答範囲に達しており、それによりトランスポンダが同時にそれぞれ位置測定信号OSの送信を開始し、即ちそれぞれの位置測定信号OSが重なる。
【0042】
基地局は重畳された位置測定信号OSを受信し、時間範囲における分析に基いて、重畳された信号が存在することを知る。それから基地局は、複数のトランスポンダTR1〜TRnが同時に応答範囲へ達していることを推論することができる。トランスポンダTR1〜TRnのそれぞれの位置測定信号が、その特性において例えばそのそれぞれのパラメータT1及びTPに関して異なっていると、特別なトランスポンダTR1〜TRnの位置測定を、それにより発生される位置測定信号OSの特別な特性に基いて行うことができる。位置測定信号OSが相違していないか又は僅かしか相違していない場合、特別なトランスポンダTR1〜TRnの位置測定のため、まず選択方法が実施され、位置測定すべきトランスポンダ、図示した例ではトランスポンダTR1が選択される。
【0043】
トランスポンダTR1の選択のため、基地局BS1はスロットに基くALOHA選択法を実施する。しかし選択のため、別の従来の選択方法も適している。選択方法の開始後、例えば基地局BSからトランスポンダTR1〜TRnへ適当な指令の送信により、それぞれのトランスポンダTR1〜TRnが、その位置測定信号OSの送信を中止する。別々にされるか又は選択されたトランスポンダの位置測定のため基地局から別々にされたトランスポンダへ指令が送られ、それからこのトランスポンダが改めて位置測定信号OSを発生する。この過程を以下詳細に説明する。
【0044】
選択方法の初めに、基地局BS1が選択指令AKをトランスポンダTR1〜TRnに送信する。選択指令AKの受信後それぞれのトランスポンダTR1〜TRnにおいて、これらのトランスポンダがその位置測定信号OSの送信を中止する。続いてトランスポンダが、どのスロットにおいてトランスポンダTR1〜TRnがその識別信号を後方散乱するかを規定する乱数を、内部で発生する。
【0045】
さて基地局BS1は、第1の時間スロットS1の開始を通報する指令NSを送信する。トランスポンダTR1〜TRnは第1の時間スリットS1に割当てられた乱数を持っていないので、この時間スリットにおいて識別信号は後方散乱されない。基地局BS1は特定の待ち時間後改めて指令NSを伝送し、この指令が第2の時間スリットS2の開始を通報する。トランスポンダTR1は、第2の時間スリットS2に割当てられた乱数を持っている。従ってこのトランスポンダは、その識別信号IDを基地局BS1へ後方散乱する。基地局BS1は、ビット符号化に基いて、時間スリットS2において衝突が起こらなかったこと、即ち1つのトランスポンダのみが識別信号を後方散乱したことを知る。
【0046】
今や基地局BS1は、その位置測定を可能にするため、位置測定指令OCをトランスポンダTR1に送信する。トランスポンダTR1による位置測定信号OSの受信後、このトランスポンダは、基地局BS1から送信される搬送波信号TSの位相変調及び後方散乱により発生される位置測定信号OSを送信する。トランスポンダTR1は、位置測定指令OCの受信後、いわゆる持続作動状態に変化する。位置測定指令OCが送信されないと、持続作動状態への変化が行われず、選択されたトランスポンダが、別の指令NS又は再度の選択過程を開始する指令を受信する際、スリープ又は静止作動状態に変化し、この作動状態中にトランスポンダはもはや選択過程に関与せず、位置測定信号OSも発生しない。これに反し持続作動状態にあるトランスポンダTR1は、最大時間が経過するか又はトランスポンダがその位置測定信号OSを遮断する特別な指令を受けるまで、その位置測定信号OSを送信する。
【0047】
ロボットRBは、位置測定信号OSの電磁界強度の増大する方向への運動を行うことによって、基地局BS2により、位置測定信号OSに基いて、トランスポンダTR1の位置を測定する。トランスポンダTR1の位置が測定されると、トランスポンダはロボットRBによりつかまれ、図示しない特定の場所に置かれる。
【0048】
位置測定過程の別の経過において基地局BS1は、第3の時間スロットS3の開始を通報する別の指令NSを伝送する。この時点にトランスポンダは既に位置を測定されているので、基地局BS1は指令STをトランスポンダTR1に送信し、それからこのトランスポンダが位置測定信号OSの送信を終了する。
【0049】
図示した実施例により、後方散乱に基くトランスポンダの位置を測定するため簡単かつ安価に実行される方法が利用可能にされ、1つ又は複数のトランスポンダが位置測定信号を送信し、トランスポンダが位置測定信号を送信する間に、このトランスポンダによるデータ受信が可能である。
【0050】
上述した実施例は、トランスポンダに基くつかみかつ置く使用を示している。後方散乱に基くトランスポンダのための本発明による位置測定方法が、例えば盗難防止使用のためにも使用可能であることは、明らかである。この場合例えばトランスポンダにより自動的に発生される位置測定信号に基いて、トランスポンダにより特徴づけられる物品が、例えば百貨店の出口の範囲に設置可能な基地局の応答範囲又は電磁界に達すると、これを知ることができる。その場合基地局は、受信される位置測定信号により始動して、物品が前もって帳場で代金を支払われたか否かを示す内容を持つトランスポンダのメモリ範囲を読み出す。物品の代金が支払われていない場合、基地局は盗難警報信号を出力することができる。
【0051】
別の使用事例は、倉庫経済システムの分野である。この場合物品を特徴づけるトランスポンダは、基地局の指令により構成されて、第1の構成モードにおいて、トランスポンダが基地局の到達距離に来ると、トランスポンダは位置測定信号を発生しない。これに反し第2の構成モードにおいて、トランスポンダが基地局の到達距離に来ると、トランスポンダが自動的に位置測定信号を発生し、即ちトランスポンダが本発明による位置測定方法を実施する。例えばトランスポンダ又はそれにより特徴づけられる物品が、最終処理又は最終消費者への引渡しのため所定の倉庫へ供給されると、第2の構成モードが動作可能である。物品が規則正しくパレット上に荷造りされ、例えば最終消費者への発送の準備ができていると、トランスポンダは無接触で基地局により第1の構成モードへ移行せしめられ、従って基地局を備えている監視所を妨げられることなく通過することができる。なぜならば、この基地局の応答範囲にあるトランスポンダは、自動的には位置測定信号を発生しないからである。物品の発送準備がまだできておらず、即ちトランスポンダがまだ第2の構成モードにあり、監視所を通過すると、トランスポンダが自動的に位置測定信号を発生する。従って位置測定信号に基いて、まだ発送準備のできていない物品が倉庫管理の誤りのため意に反して引渡されるのを確かめることができる。
【0052】
本発明による位置測定方法は、更にいわゆる自走システムの周辺において使用することができる。この場合自動制御される車両例えばパレットに対する障害物は、本発明による位置測定方法を実施するトランスポンダを設けられる。自走車両は、1つ又は複数の基地局を設けられる。自走車両が、1つ又は複数のトランスポンダを備えたパレットの範囲に達すると、トランスポンダが位置測定信号を送信する。従って自走車両は障害物を自動的に回避することができる。
【0053】
トランスポンダにより発生される位置測定信号が例えば異なる副搬送周波数を持っていると、こうして簡単な案内システムを構成することができる。この場合車両は、第1の周波数を持つ第1の案内ビームに沿って、この案内ビーム又はこの位置測定信号を送信する第1のトランスポンダの所まで動く。それから車両は、所定の周波数を持つ信号を送信する第2のトランスポンダの所へ自動的に動くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】つかみかつ置く使用を示す。
【図2】基地局から送信される搬送波信号を変調する変調信号の時間的経過の線図を示す。
【図3】位置測定過程の時間的経過の線図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方散乱に基くトランスポンダの位置を測定する方法であって、
基地局(BS1)により不変調搬送波信号(TS)を送信し、
トランスポンダ(TR1)が基地局(BS)の応答範囲へ入る時、基地局(BS1)から送信される搬送波信号(TS)の位相変調及び後方散乱により発生される位置測定信号(OS)を、トランスポンダ(TR1)により送信し、
位置測定信号(OS)に基いてトランスポンダ(TR1)の位置を測定する方法。
【請求項2】
基地局(BS1)が少なくとも1つの指令をトランスポンダ(TR1)へ伝送し、トランスポンダ(TR1)が位置測定信号(OS)を送信することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
トランスポンダ(TR1)が受動トランスポンダであり、搬送波信号(TS)がトランスポンダ(TR1)に作動エネルギを供給するのに充分である時、トランスポンダ(TR1)が位置測定信号(OS)を送信することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
基地局(BS1)により選択方法を実施し、1つより多いトランスポンダ(TR1〜TRn)が位置測定信号を送信する時、多数のトランスポンダ(TR1〜TRn)から位置を測定すべきトランスポンダ(TR1)を選択することを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項5】
選択方法が特にスロットに基くALOHA法であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
選択方法が決定論的方法特に2進法であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
基地局から送信される搬送波信号(TS)の副搬送波による変調によって、位置測定信号(OS)が発生されることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項8】
トランスポンダ内部のメモリ(SP)が、位置測定信号(OS)を調節する1つ又は複数のパラメータを含んでいることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項9】
1つ又は複数のパラメータにより、搬送波信号(TS)を変調する変調信号(MS)の周波数及び/又は衝撃係数を調節することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
周波数及び/又は衝撃係数をトランスポンダ内部の発振器クロック(CLK)から誘導することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
所定の最大時間が経過し、かつ/又はトランスポンダが指令(ST)を受信する時、トランスポンダ(TR1)が位置測定信号(OS)の送信を終了することを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項12】
トランスポンダ(TR1)が、別の基地局(BS2)により位置を測定されることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項13】
搬送波信号(TS)の周波数がUHF周波数範囲にあることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項14】
後方散乱に基くトランスポンダ(TR1)の位置を測定する方法であって、
基地局(BS1)によりトランスポンダ(TR1)へ位置測定指令(OC)を送信し、
トランスポンダ(TR1)により位置測定指令(OC)を受信し、
基地局(BS1)から送信される搬送波信号(TS)の位相変調及び後方散乱により発生される位置測定信号(OS)を、トランスポンダ(TR1)により送信し、
位置測定信号(OS)に基いてトランスポンダ(TR1)の位置を測定する方法。
【請求項15】
トランスポンダ(TR1)へ位置測定指令(OC)を送信する前に、基地局(BS1)により選択方法を実施し、位置測定すべきトランスポンダ(TR1)を多数のトランスポンダ(TR1〜TRn)から選択することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
選択方法が特にスロットに基くALOHA法であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−523416(P2008−523416A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548714(P2007−548714)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013186
【国際公開番号】WO2006/063731
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(501211693)アトメル ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (28)
【氏名又は名称原語表記】ATMEL Germany GmbH
【住所又は居所原語表記】Theresienstrasse 2, D−74025 Heilbronn,Germany
【Fターム(参考)】