微小流体用途のための分相複合物
本発明は、微小流体用途のための分相複合物に関し、当該複合物の安定性を保証するために当該複合物の高さに対する或る比率の頂部層を得るように重合/相分離が行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば生体分子のクロマトグラフィのような微小流体用途のための装置の分野を指向するものである。
【背景技術】
【0002】
微小流体装置は、分子診断センサにおけるが如き種々の用途のための重要な役割を担うものである。通常は、これら装置は、1ミリメートルを下回る寸法を持つチャネルを含む。このようなチャネルシステムを製造するために幾つかの技術が用いられる。構成された基板は、モールディング又はエンボス加工によりエッチング及び複製との組み合わせでリソグラフィ技術により形成される。チャネルシステムの形成のため、この構成された基板は、当該システムを閉じるためにカバーと組み合わされる必要がある。このカバーは、チャネルの幾何学的配置形状に支障を来たすことなく封止がなされるように非常に注意深く当該基板に結合される必要がある。チャネル寸法を小さくした状態では、当該アライメント及び結合処理は、特に接着剤による結合の場合に、より困難になる。結合状態は、当該基板上に存在する生体材料及び特定表面処理と両立していなければならない。これにより、熱的結合のような結合処理の有効性が限定される。
【0003】
このような微小流体用途の装置を形成する方法は、例えば米国特許出願に係る文献のUS2006/006006A1に開示されており、参照によりここで全てが編入される。これは、基板上にポリマ層を形成するための方法であって、基板と少なくとも一部が透明な要素との間に光重合可能なポリマ前駆体を有する液体の層を形成するステップa)と、当該少なくとも一部が透明な要素を通じて当該液体層を露光させ、これにより当該液体層の1つ又は複数の領域を重合してポリマ層を形成するステップb)と、重合されていない領域又は当該液体層の領域を除去するステップc)とを有するものを開示している。
【0004】
当該技術においては同様の方法が数多く知られている。但し、これら処理のうちの全ては次の短所を有するものである。
・大抵は、「封止された」チャネル、すなわち被覆を有するチャネルを一度に形成することができない。
・これらの方法のほぼ全ては、モノマ、例えば(メタ)アクリレート、メタ(メタ)アクリレート又はエポキシドモノマの部分的重合化を含む。重合化されていないモノマは、除去されなければならない。但し、これらの無反応モノマは、極めて反応性に富む状態を維持するので、当該プロセスを制御することができず、依然として極めて反応性に富む種類が当該ポリマ層内に留まるリスクがある。
・犠牲の層を除去するステップは、しばしば、化学廃棄物が生成されるので、環境に優しくないと判断しなければならない。
・広範な用途に対して、緊密封止されたチャネルについて大抵は非常に低いチャネル密度しか得られない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、上述した短所のうちの幾つかを少なくとも一部克服することができて、微小流体の用途に対する使用を提供する複合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明の請求項1に記載の複合物により達成される。したがって、チャネル状構造を形成する少なくとも1つの領域を有するポリマ分相複合物であって、前記領域は、当該チャネルが設けられた少なくとも1つの頂部層を有し、前記頂部層の厚さt(チャネルの中心において測定される)は、当該複合物の高さ(チャネルの中心において測定される)の50%以上90%以下である、複合物である。
【0007】
本発明によれば、チャネルは特に、底部基板、側壁部及び頂部/被覆層により取り囲まれるキャビティを意味及び/又は包含し、かかるキャビティにおいて、生体液が通じ流れることができる一方、当該液が当該基板、壁部及び頂部/被覆層を通じて流れることができないものである。
【0008】
このチャネルは、開口し、又は固体又はゲル状材料により一部又は全部が充填されうるものである。
【0009】
さらに、「チャネル」なる文言は、当該チャネルが第1の短い寸法(チャネル幅)と第2のこれより相当に長い寸法(チャネル長)とを有することを特に意味及び/又は包含する。
【0010】
このような複合物を用いることによって、多くの用途に対して、次の利点のうちの少なくとも1つを達成することができる。
・当該複合物は、「頂部層」と共に一度に製造され、これにより、安定性を向上させ製造を容易にする。
・相分離のために、重合可能なモノマの大きな割合(或る種の用途では100%に近い)を用いることができる。
【0011】
分相複合物の製造は、当該技術において、例えば、国際特許出願に係る文献のWO2005/015295及びWO02/42832から知られており、これら双方は、参照によりここで編入されるものである。
【0012】
しかしながら、これら文献(及び関連文献)は、閉鎖された室部の製造を教示するに過ぎない。これは、実際、これら文献に開示されている技術はチャネルの製造のために適用可能なものではなく、当該複合物は、当該分相のために用いられる液体が除去されるとき、又は例えば検体のような生体サンプルを有する第3の液体がチャネルを満たすときに崩壊することになることを示している。
【0013】
当該チャネルの幾何学的配置形状を変え或いは最終的には静止摩擦、すなわち当該トップコートの底部基板に対する非可逆的接着とさえなる非常に強力な力とともに当該チャネルを引き寄せる気体と液体との界面において発生する特に毛細管力であることが判明している。
【0014】
驚くべきことに、本発明者らは、チャネル状構造を備えた領域を有する分相された複合物が請求項1の条件の下で形成可能であることを判明した。これら構造は、本発明における多くの用途に対して、相分離のために用いられた予備的液体の除去後であっても安定したものであることが判明され、これにより、微小流体用途に使用可能なものである。
【0015】
本発明の実施例によれば、頂部層の厚さt(チャネルの中心において測定される)は、当該複合物の高さ(チャネルの中心において測定される)の55%以上80%以下であり、より好ましくは60%以上70%以下である。
【0016】
本発明の実施例によれば、頂部層の弾性率E(相分離過程を終了した後)は、E≧500MPa(特に予備的液体を除去した後に乾燥状態で測定される)。広範な用途において、これは当該構造の安定性をさらに増加させるのに役立つことが分かっている。
【0017】
本発明の一実施例によれば、頂部層(相分離過程終了後)の弾性率EはE≧1GPaであり、或る実施例によれば5GPa以上であり、或る実施例によれば10GPa以上である。
【0018】
本発明の実施例によれば、頂部層(相分離過程終了後)の厚さtは3μm以上100μm以下である。このようにすることによって、当該複合物は、本発明の広範な用途において、さらに安定化されるとともに、適切に形成されたチャネル状構造ともなる。本発明の実施例によれば、頂部層(相分離過程終了後)の厚さtは、5μm以上70μm以下であり、或る実施例によれば、10μm以上50μm以下である。
【0019】
本発明の実施例によれば、チャネルの幅及び/又は当該チャネルにおける2つの柱状体形成要素の間の幅は、300μm以下である。これはまた、広範な用途において、当該構造の安定性をさらに向上するのに役立つことを示すものでもある。
【0020】
本発明の実施例によれば、チャネルの幅及び/又は当該チャネルにおける2つの柱状体形成要素の間の幅は200μm以下とされ、或る実施例によれば100μm以下とされ、或る実施例によれば50μm以下とされる。
【0021】
本発明の実施例によれば、チャネル壁部の幅(基板の近く、すなわち当該壁部が最も薄い箇所で測定される)及び/又は当該チャネルにおける柱状体形成要素の幅が2μm以上500μm以下とされる。これはまた、広範な用途において、当該構造の安定性をさらに向上させかつ当該封止を改善する一方で高いチャネル密度を許容することに寄与することも分かっている。
【0022】
本発明の実施例によれば、チャネル壁部の幅及び/又は当該チャネルにおける柱状体形成要素の幅は、5μm以上100μm以下であり、或る実施例によれば、10μm以上50μm以下である。
【0023】
本発明の実施例によれば、複合物は、1°以上40°以下、好ましくは2°以上30°以下、最も好ましくは5°以上20°以下の接触角αを有するチャネルを持つ基板に設けられる。
【0024】
本発明の実施例によれば、複合物は、1mm2当たり10以上、好ましくは20以上、より好ましくは50以上、最も好ましくは100以上のチャネルを有する。
【0025】
本発明の実施例によれば、当該チャネルの平均幅の、2つのチャネルの間の壁部の平均幅に対する比は、1:1以上20:1以下とされる。こうすることによって、本発明における広範な用途に対してより小型の複合物を提供することができる。好ましくは、2つのチャネルの間の壁部の平均幅に対するチャネルの平均幅の比は、2:1以上10:1以下、より好ましくは3:1以上8:1以下とされる。
【0026】
本発明の実施例によれば、当該複合物は、ポリ(メタ)アクリル材料を有する。
【0027】
本発明の実施例によれば、複合物は、少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマ及び少なくとも1つの多官能性(メタ)アクリルモノマの重合化により形成されるポリ(メタ)アクリル材料を有する。
【0028】
本発明の実施例によれば、当該(メタ)アクリルモノマは、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルメタ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニルメタ(メタ)アクリレート又はこれらの混合物を有するグループから選ばれる。
【0029】
本発明の実施例によれば、多官能性(メタ)アクリルモノマは、ビス(メタ)アクリル及び/又はトリ(メタ)アクリル及び/又はテトラ(メタ)アクリル及び/又はペンタ(メタ)アクリルモノマである。
【0030】
本発明の実施例によれば、多官能性(メタ)アクリルモノマは、ビス(メタ)アクリルアミド、トリプロピルエングリコール・ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール・トリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート又はこれらの混合物を有するグループから選択される。
【0031】
本発明の実施例によれば、ポリ(メタ)アクリル材料の架橋密度は、0.05以上1以下である。
【0032】
本発明の意義において、「架橋密度」なる文言は、特に次の規定を意味又は包含する。すなわち、架橋密度δXは、ここではδX=X/(L+X)と規定される。ここで、Xは、多官能性モノマのモル分率であり、Lは直鎖(=非多官能性)形成モノマのモル分率である。線状ポリマにおいてδX=0であり、全部が架橋された系ではδX=1である。
【0033】
本発明の実施例によれば、当該複合物はさらに、ナノ多孔性及び/又はゲルの材料が設けられこれに付加的又は代替え的に当該材料にチャネル状構造が設けられるようにした少なくとも1つの領域をさらに有する。
【0034】
本発明の実施例によれば、当該ゲル材料は、ヒドロゲルである。
【0035】
このナノ多孔性及び/又はゲル状の材料は、様々な方法で適用可能であり、これには次のものが含まれる。
・重合化とともに相分離を通じて複合物を設けた後、予備的液体(これはここではチャネル状構造にある)は除去可能となり、当該チャネルは、重合化によりナノ多孔性又はゲルの構造を形成する第2の反応混合物で再び満たされることができる。オプションとして、かかる多孔性又はゲルの構造は、マスク照射によってパターン化されるようにしてもよい。
・但し、予備的液体として、チャネル状構造の形成の後に(例えば重合、ゲル化などにより)所望の形状及び/又は特性に変換されることのできる溶剤及び(第3の)前駆体材料の混合物を用いることもできる。この点において、当該(第3の)前駆体材料は、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、フェニールアシルスルホニウム塩若しくはアルコキシピリジニウム塩又はこれらの混合物の如き適切な陽イオン光開始剤と組み合わされる基のエポキシ(例えばヒドロキシエチルグリシジルエーテル)、オキタセン又はビニルエーテルから選択される反応性前駆体であるか、或いは当該(第3の)前駆体は、脂肪酸誘導体(例えばヒドロキシオクタデカン酸)、長nアルカン、ステロイド誘導体、アントリル誘導体、ソルビトール及びポリオール誘導体、ビスウレア及びビスウレタン誘導体、有機金属化合物及び複合ゲル化剤又はこれらの混合物のグループから選択される無反応性低分子量ゲル化剤である。好ましいのは、当該溶剤が、水又は炭化水素を有するグループから選択され、特に、デカン、シクロヘキサン、キシレン、エタノール又はこれらの混合物を有するグループから選択されることである。これら材料は、実際に、それら自体、本発明による広範な用途において用いられるものであることを証明している。
【0036】
本発明はさらに、本発明による複合物を製造する方法であって、
a)第1の重合可能なポリマ前駆体材料及び第2の予備的液体材料並びに少なくとも1つの光吸収体材料を有する液体の層を形成するステップと、
b)ポリマ層を形成するために前記第1の重合可能なポリマ前駆体材料を重合させるステップと、
c)ステップb)の間又はステップb)の後、前記ポリマ材料及び前記第2の予備的液体材料の相分離を生じさせるステップと、
を有する方法に関する。
【0037】
本発明の実施例によれば、少なくとも1つの光吸収体材料は、照射の波長において5000lmol−1cm−1以上40000lmol−1cm−1以下の吸光度を有する。さらに、特に好ましいのは、少なくとも1つの光吸収体材料が、1μmの高さを持つ層の吸収が0.05以上1.5以下であるような濃度で設けられることである。
【0038】
本発明の実施例によれば、液体の層は、基板材料上に設けられ、基板材料を好ましくはガラス材料としている。
【0039】
本発明の実施例によれば、当該予備的液体層を形成する液体は、基板との接触角θを、θ≦π/2、好ましくはθ≦60°、より好ましくはθ≦45°、最も好ましくはθ≦30°としている。これにより、本発明における広範な用途に対して当該層の簡単な加工(処理)が可能になる。
【0040】
或る実施例によれば、かかる層の形成は、ブレーディング又はナイフコーティング及び/又はスピンコーティングにより達成される。
【0041】
本発明の実施例によれば、第1の重合可能なポリマ前駆体材料は、光重合可能な材料、好ましくは(メタ)アクリル材料とされる。
【0042】
「(メタ)アクリル材料」なる文言は、特に、上述したような少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマ及び少なくとも1つの多官能性(メタ)アクリルモノマを意味及び/又は包含する。
【0043】
本発明の実施例によれば、少なくとも1つのチャネル状構造を形成するために、マスクパターン及び/又は少なくとも一部が透光性の要素も設けられる。そこでは、当該重合は、当該少なくとも一部が透光性の要素及び/又はマスクパターンを通じて液体層を露光させることにより達成され、これにより、当該液体層の1つ又は複数の領域を重合化して第1の重合可能なポリマ前駆体材料のポリマ層を形成するようにしている。
【0044】
本発明の実施例によれば、当該複合物は、少なくとも一部が次の方法に従って設けられる。
a)第1の重合可能なポリマ前駆体材料、第2の予備的液体材料及び少なくとも1つの光吸収材料を有する液体の層を形成する。
b)好ましくはマスクパターン及び/又は少なくとも一部が透光性の要素を用いて、壁部を形成すべきところの当該複合物の部分において、第1の重合可能ポリマ前駆体材料が重合するようにする。
c)当該「壁部」の形成の後、ポリマ層を形成するために当該第1の重合可能ポリマ前駆体材料が重合するようにする。
d)ステップc)の間又はステップc)の後、チャネルを形成するために、ポリマ材料及び第2の予備的液体材料の相分離を生じさせる。
【0045】
チャネルの形成は、この特定の方法においては、光吸収体が液体層に設けられることに起因して行われる。光吸収体は、上から照射されると、液体層の下側領域における重合速度を低下させ、これにより、重合は、基本的に液体層の上部領域において生じることになる。かかる重合の過程で、相分離が生じ、これによりチャネルの形成を生じさせることになる。この点については後述する。
【0046】
この特定の方法は、参照により全てが編入される米国特許出願に係る文献のUS6818152及びその中の引用文献においてさらに詳しく説明されている。
【0047】
本発明の実施例によれば、当該複合物は、少なくとも一部が次の方法に従って設けられる。
a)第1の重合可能なポリマ前駆体材料と、第2の予備的液体材料と、少なくとも1つの光吸収体材料とを有する液体の層を、当該第1の重合可能材料に対して高い親和性を持つ少なくとも1つの領域と、当該第1の重合可能材料に対して低い親和性を持つ少なくとも1つの領域とを有する表面を備えた基板材料の上に形成する。
b)第1の重合可能なポリマ前駆体材料が重合するようにする。
c)ステップb)の間又はステップb)の後、チャネルを形成するために、ポリマ材料及び第2の予備的液体材料の相分離をなす。
【0048】
この方法において、チャネルの形成の一般的原理は、上に示した方法のものと本質的に一致する。実際、本発明における用途に対して有用である場合には、どちらの方法も随意に組み合わせることができることが当業者には分かることになることを注記すべきである。
【0049】
但し、「壁部」の形成は、この方法においては、主として、当該基板材料が当該第1の重合可能な材料に対して高い親和性を持つ領域と当該第1の重合可能な材料に対して低い親和性を持つ領域とを有して「予め構成」されているという点によるものである。その高い親和性を持つ領域においては、重合が増強させられることになり、「壁部」をもたらし、これにより、当該第2の領域では、「チャネル」が形成されるように相分離が起こることになる。したがって、マスクを省略することができる。
【0050】
この方法は、さらに、国際特許出願に係る文献のWO2005/015295及びそこで引用されている文献において詳細に説明されており、ここで参照により全てが編入されるものである。
【0051】
本発明の実施例によれば、当該液体層はさらに、第1の重合可能なポリマ前駆体材料の重合化を向上させるために光開始材料を有する。当業者には、当該少なくとも1つのチャネル状構造の形成も、当該液体層内の光開始材料の濃度を変えることによって行われることが可能であることが分かる。
【0052】
好ましくは、当該開始材料は、ジアゾ材料、特に、オプションとしてアミンのような光開始剤補助剤の混合したAIBN、過酸化物、ベンジルジメチル・ケタール、又はこれら化合物の混合物を有するグループから選択される。
【0053】
本発明の実施例によれば、当該液体層はさらに、特に当該複合物が当該少なくとも1つのチャネル状構造を形成するところの領域において、第1の重合可能なポリマ前駆体材料の重合を禁止又は軽減するために光阻害材料を有する。
【0054】
好ましくは、この光阻害材料は、二硫化物、キノン、ニトロソ化合物、フェノール、チオフェノール及びこれらの混合物を有するグループから選択される。
【0055】
本発明の実施例によれば、第2の予備的液体材料は、水、炭化水素を有するグループから選択され、特に、デカン、シクロヘキサン、キシレン、エタノール又はこれらの混合物を有するグループから選択される。これら材料は、これら自体が、本発明による広範な用途において用いられることを証明している。
【0056】
本発明の実施例によれば、ステップc)の開始前に当該頂部層の弾性率Eは、E≦1GPaであり、或る実施例によれば、E≦100MPaであり、或る実施例によれば、E≦10MPaである。本発明における多くの応用例において、本発明者らは、当該頂部層の少なくとも或る程度の部分が既に形成されたときに相分離(ステップc)が行われることを見出した。広範な用途において、本発明者らは、説明したようにこの段階において当該頂部層の弾性率Eを維持することによってチャネル状構造が適切に整形される態様で形成されることになることを見出した。
【0057】
但し、最終的な複合物では、当該頂部層の弾性率Eが、例えば上述したように相対的に高くなる可能性があることを注記すべきである。
【0058】
上述したように、或る実施例によれば、複合物はさらに、ナノ多孔性及び/又はゲルの材料が当該チャネル状構造の中及び/又は当該構造とともに設けられる少なくとも1つの領域を有する。このように、本発明の一実施例によれば、当該方法はさらに、次の処理のうちの1つ又は複数によるような少なくとも1つの領域を設けるための少なくとも1つのステップを有する。
・チャネル及び壁部の形成の間に重合しないか又は少しだけしか重合しない他の(例えば第3の)前駆体材料を設け、その後にこの材料が重合され、かかる重合に付加的又は代替的にナノ多孔性構造及び/又はゲルを形成するよう別の化学的な変化がもたらされるようにする。
・他の重合可能材料の形態で他の前駆体材料を設け、その重合は、少なくとも1つの光吸収体が透明及び/又は本質的に透明である波長領域で開始させられることのできるようなものとする。このようにすることによって、チャネル及び壁部の形成の後に他の重合可能な材料を重合することができる。
・好ましくは、脂肪酸誘導体(例えばヒドロキシオクタデカン酸)、長nアルカン、ステロイド誘導体、アントリル誘導体、ソルビトール及びポリオール誘導体、ビスウレア及びビスウレタン誘導体、有機金属化合物並びに複合ゲル化剤又はチャネルの形成の後にゲル化されるこれらの混合物のグループから選択される低分子量ゲル化剤の形態で、他の前駆体材料を設ける。
・第1の重合可能材料の重合と、他の前駆体材料の重合及び/又はゲル化との間に運動学的な相違(すなわち温度の変化による)を用いる。本発明の好適実施例の場合の適切な例は、例えば第1の重合可能な材料としての(メタ)アクリレート及び(第3の)前駆体材料のための2−ヒドロキシ−エチル−グリシジル−エーテルのようなエポキシ材料を用いることである。(メタ)アクリレートの重合は、多くの用途において非常に高速であり、これにより、当該エポキシ材料は、多くの用途において、当該チャネル及び壁部の形成後に重合することになる。
・初期液体層(第1の重合可能な材料、第2の予備的液体及び他の(第3の)前駆体材料を有する)と、チャネル及び壁部の形成の後にチャネルに設けられかつ本質的に第2の予備的液体及び他の(第3の)前駆体材料だけを有することになる液体材料との間における溶媒化及び/又は極性の相違を用いる。
・上記状況において、好ましい実施例は、第1の重合可能な材料により禁止又は妨害させられる重合化及び/又はゲル化の反応を用いることである。重合によるこの材料の「除去」の後、他の(第3の)前駆体材料の重合及び/又はゲル化反応が生じることができる。
【0059】
本発明の好適実施例によれば、他の(第3の)前駆体材料は、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、フェニールアシルスルホニウム塩又はアルコキシピリジニウム塩又はこれらの混合物のような適切な陽イオン光開始剤と組み合わせられるエポキシド、オキセタン又はビニルエーテルのグループから選ばれる。
【0060】
本発明の実施例によれば、他の層は、特に当該複合物の剛性を増大させるよう、第1の材料から形成される層の上へ加えられるようにしてもよい。これら層は、上述した適切な方法のいずれかによって、例えば熱的又は光化学的に重合によっても形成可能である。
【0061】
本発明による複合物、方法及び/又は装置は、多様なシステム及び/又は用途において用いられることができ、中でも次のうちの1つ又は複数のために用いられる。
・分子診断学のために用いられるバイオセンサ
・例えば血液又は唾液のような複合の生物学的混合物における蛋白質及び核酸の迅速かつ高感度の検出
・化学、薬学又は分子生物学のための高スループットスクリーニング装置
・集中化した研究所又は科学研究における診断のための(病院における)現場試験のための例えば犯罪学における例えばDNA又は蛋白質の試験装置
・心臓病学、伝染病及び腫瘍学、食物、及び環境診断学のためのDNA又は蛋白質診断のための器具
・組み合わせ化学のための器具
・分析装置
【0062】
上述した構成品目の他、請求項記載の構成品目及び説明される実施例における本発明により用いられることとなる構成品目は、それらのサイズ、形状、材料選択、及び当該関連分野において知られる選択基準が限定を伴うことなく適用可能であるといった技術概念に関しての特別な例外を受けるものではない。
【0063】
本発明の目的にかかる付加的な詳細、特徴、特性及び利点は、従属請求項、図面及びそれぞれの図及び具体例の次の説明において開示されるものであり、かかる従属請求項等は、"模範的な態様で"本発明による分離媒体及び装置の幾つかの実施例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図4における線II−IIに沿う図と等価な本発明の第1の実施例によるチャネル状構造を有する複合物を示す非常に概略的な一部断面図。
【図2】本発明の第2の実施例による複合物の形成の前の基板、液体層及びマスクパターンの非常に概略的な断面図。
【図3】第1の重合ステップの後の図2による非常に概略的な断面図。
【図4】相分離を示す第2の重合ステップの間における図2による非常に概略的な断面図。
【図5】本発明の実施例による液体層及び複数のチャネル状構造体を形成するための複数のマスクパターンの非常に概略的な上面図。
【図6】複数のチャネルを備えた図5における線II−IIに沿う図に等価な本発明の第1の実施例によるチャネル状構造体を有する複合物を示す非常に概略的な一部断面図。
【図7】本発明の他の実施例による液体層及びナノ多孔性材料によるチャネル状構造を提供するためのマスクパターンの非常に概略的な一部上面図。
【図8】図5における液体層から製造された複合物及びナノ多孔性材料を設ける前の第2のマスクパターンの非常に概略的な一部上面図。
【図9】図5における液体層から製造された複合物及びナノ多孔性材料を設ける前の代替えのマスクパターンの非常に概略的な一部上面図。
【図10】チャネル状構造及びナノ多孔性材料を持つ部分を有する準備完了の複合物の非常に概略的な一部上面図。
【図11】本発明の他の実施例による複合物のチャネル状構造内での使用のための柱状体形成要素の非常に概略的な透視図。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1は、図4における線II−IIに沿う図に等価な本発明の第1の実施例によるチャネル状構造を有する複合物1を示す非常に概略的な一部断面図を示している。この複合物は、基板20上に設けられたポリ(メタ)アクリル材料10を有する。「t」により示されるような頂部層の高さの比(チャネルの中心で測定される)から、「T」により示されるような当該複合物の高さの比(当該チャネルの中心で測定される)は、上述した通りである。
【0066】
図1は非常に概略的であるが、チャネル状構造が四角い断面を有せず、むしろ半楕円形の断面を有することが分かる。実際、本発明者らは、実際に本発明により形成された殆どの複合物が図1のもののような同様の構造を使うものとなることを見出している。
【0067】
さらに、角α(図1に示されるようなもの)は、上述したようにするのが好ましく、本発明における広範な用途に対してさらなる安定性を導くことができる。
【0068】
図2は、本発明の第2の実施例による複合物の形成の前の基板20、液体層100及びマスクパターン30の非常に概略的な断面図を示している。当該液体層は、第1の重合可能なポリマ前駆体材料(特定の実施例では(メタ)アクリル材料)、第2の予備的液体材料(特定の実施例ではキシレンのような炭化水素)及び光吸収体材料(図4に示されるステップでは重要になるもの)の混合物を有する。
【0069】
図3は、第1の重合ステップの後の図2による非常に概略的な断面図を示している。「x」により示されるように、マスクパターンの宛がわれていない当該液体層の部分は、壁部を形成するよう光重合された。
【0070】
図4は、相分離の方法を示す第2の重合の開始の後の図2による非常に概略的な断面図を示している。上から照射される場合、光吸収体は、当該液体層の下側領域における重合速度を、単に、これら下側領域に届くことのできる光量を減少させるその吸収能力のために減らすこととなる。
【0071】
このため、重合は、本質的に当該液体層の頂部領域において生じることになる。当該重合の過程において、(矢印により示されるように)そこで壁部の形成をもたらす相分離が生じることになる。本発明者らは、重合がほぼ終了したときに本発明の多くの用途において実際の相分離が生じることになることを見出した。
【0072】
なお、図2ないし図4の処理は、非常に概略的であり、詳細については、当業者は例えば米国特許出願に係る文献のUS6818152及びそこでの引用文献を参照するのがよい。
【0073】
図2ないし図4はさらに、当該複合物の形成の実現可能な処理を1つだけ示している。当業者は、国際特許出願に係る文献のWO2005/015295による処理(又は2つの処理の自由な組み合わせ)もこの複合物の形成のために用いることができることが簡単に分かる筈である。
【0074】
なお、本発明に従って「t」及び「T」の比が選ばれると、当該予備的液体は、当該複合物のポリマ領域の劣化を伴うことなく本発明の最大で全ての用途において除去されることが可能である。したがって、本発明による複合物及びこれを形成する方法は、一度に被覆されるチャネル状構造の形成を可能にする。
【0075】
図5は、本発明の実施例による液体層100及び複数のチャネル状構造を形成するための複数のマスクパターン30の非常に概略的な上面図を示している。図4からは、複数のチャネル状構造を単一の重合及び相分離プロセスにおいて設けることができることが明確に分かる。
【0076】
図6は、複数のチャネルを備えた図5における線II−IIに沿う図に等価な本発明の第1の実施例によるチャネル状構造を有する複合物を示す非常に概略的な一部断面図を示している。図6も非常に概略的であるが、本発明による複合物はチャネル間の比較的小さな壁部だけを持つチャネルを有することができ、実際、チャネル間の壁部幅に対するチャネル幅の比は、好ましくは上述したようにするのが良い。
【0077】
図7ないし図10は、チャネル状構造を有するだけでなく、当該チャネル構造がナノ多孔性及び/又はゲルの材料を具備しているところの領域50も有する本発明の他の実施例による複合物10´の製造を示している。なお、図8及び図9は2つの代替例を示している。
【0078】
図7ないし図10に示されるような処理は、3ステップ処理であるが、上述したような多かれ少なかれ共同の処理で図10の構造を得ることもできる。
【0079】
図7及び図8において、チャネル状構造は、既に説明したように、液体層100´と第1のマスクパターン30´とを用いて形成される。但し、図8において、第2のマスクパターン35が使われ、第2の処理例えば第2の重合が開始され、それによりナノ多孔性及び/又はゲルの材料を有する領域70を導いている。
【0080】
図9は、図5における液体層から製造される複合物及びナノ多孔性材料を設ける前の代替マスクパターンの非常に概略的な一部上面図を示している。この図において、マスクパターンは、図8のものの或る意味で「ネガティブ」とされる。
【0081】
この特定の実施例において、ナノ多孔性領域の形成は、次のようにして達成される。
【0082】
このさらなるステップにおいて、チャネルが形成されることになる領域は、少し照射されるが全部が重合されない。再び、重合誘導拡散が行われ、領域50における予備的液体の量が増加する。そして、第3のUVステップにおいて、当該サンプルは、光吸収剤により部分的に吸収される光がフラッド照射される。
【0083】
本発明者らは、予備的液体の濃度が高い領域(これは図9におけるマスクパターンにより被覆される領域となる)においては、ナノ多孔性領域が形成されることになることを見出した。当該濃度が低い領域(すなわち図9におけるマスクパターンにより被覆されないが初期時に図7におけるマスクパターンにより被覆される領域)においては、チャネルが形成される。
【0084】
図8及び図9の両方において、この第2の処理は、他の重合を含むが、当業者には、上述したものを含む様々な他の処理も用いることができることが明らかである。
【0085】
なお、第1の重合と第2の処理との間では、第1の重合の予備的液体を除去することができ、後に領域70が形成される元の第2の液体により置換されるようにすることができる点を注記すべきである。但し、当業者には、当該予備的液体が適正に選ばれた場合には、これは必要がなく、どちらの処理も、例えば他の前駆体成分も当該初期の液体層にある場合には、このような除去を伴うことなく行うことができる。
【0086】
さらに、多くの用途における相分離が重合の完全な終了時に起きるので関連の両ステップを行うことができる点、すなわち、マスクパターン30´が重合/相分離ステップの終了前に除去され第2の処理(図8、図9及び図10に示されるようなもの)が重合/相分離の完了と同時とされる点を注記すべきである。
【0087】
図11は、本発明の他の実施例による複合物のチャネル状構造において用いられる柱状体形成要素70の非常に概略的な透視図を示している。上述したように、本発明における幾つかの用途に対しては、チャネルの幅が過剰に広くならないことが好ましい。但し、より広いチャネル構造は、このような柱状体形成要素を導入することによって達成可能であり、一例としては図11の柱状体形成要素70がある。このようにすることによって、複合物の安定性をこれら用途において維持することができる。
【0088】
この柱状体は、例えば、次の処理の一方又は双方を用いて形成可能である。
・マスクを使い、第1の照射ステップにおいて柱状体領域を照射する。
・当該柱状体を形成しなければならない箇所において接着促進剤の単一ドットを堆積する。
【0089】
これまで詳述した実施例における要素及び特徴の特定の組み合わせは、典型的なものに過ぎない。これら教示内容の本願及び参照により編入された特許/出願における他の教示内容との交換及び代替も明確に想定されるところである。当業者であれば分かるように、ここで説明したものの変形例、変更例及び他の実現例は、請求項に記載の本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく当業者により実現可能である。したがって、上述した内容は、例示に過ぎず、限定することを意図していない。本発明の範囲は、添付の請求項及びその等価範囲により規定されるものである。さらに、詳細な説明及び請求項に用いられる参照符号は、請求項に記載の発明の範囲を限定するものではない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば生体分子のクロマトグラフィのような微小流体用途のための装置の分野を指向するものである。
【背景技術】
【0002】
微小流体装置は、分子診断センサにおけるが如き種々の用途のための重要な役割を担うものである。通常は、これら装置は、1ミリメートルを下回る寸法を持つチャネルを含む。このようなチャネルシステムを製造するために幾つかの技術が用いられる。構成された基板は、モールディング又はエンボス加工によりエッチング及び複製との組み合わせでリソグラフィ技術により形成される。チャネルシステムの形成のため、この構成された基板は、当該システムを閉じるためにカバーと組み合わされる必要がある。このカバーは、チャネルの幾何学的配置形状に支障を来たすことなく封止がなされるように非常に注意深く当該基板に結合される必要がある。チャネル寸法を小さくした状態では、当該アライメント及び結合処理は、特に接着剤による結合の場合に、より困難になる。結合状態は、当該基板上に存在する生体材料及び特定表面処理と両立していなければならない。これにより、熱的結合のような結合処理の有効性が限定される。
【0003】
このような微小流体用途の装置を形成する方法は、例えば米国特許出願に係る文献のUS2006/006006A1に開示されており、参照によりここで全てが編入される。これは、基板上にポリマ層を形成するための方法であって、基板と少なくとも一部が透明な要素との間に光重合可能なポリマ前駆体を有する液体の層を形成するステップa)と、当該少なくとも一部が透明な要素を通じて当該液体層を露光させ、これにより当該液体層の1つ又は複数の領域を重合してポリマ層を形成するステップb)と、重合されていない領域又は当該液体層の領域を除去するステップc)とを有するものを開示している。
【0004】
当該技術においては同様の方法が数多く知られている。但し、これら処理のうちの全ては次の短所を有するものである。
・大抵は、「封止された」チャネル、すなわち被覆を有するチャネルを一度に形成することができない。
・これらの方法のほぼ全ては、モノマ、例えば(メタ)アクリレート、メタ(メタ)アクリレート又はエポキシドモノマの部分的重合化を含む。重合化されていないモノマは、除去されなければならない。但し、これらの無反応モノマは、極めて反応性に富む状態を維持するので、当該プロセスを制御することができず、依然として極めて反応性に富む種類が当該ポリマ層内に留まるリスクがある。
・犠牲の層を除去するステップは、しばしば、化学廃棄物が生成されるので、環境に優しくないと判断しなければならない。
・広範な用途に対して、緊密封止されたチャネルについて大抵は非常に低いチャネル密度しか得られない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、上述した短所のうちの幾つかを少なくとも一部克服することができて、微小流体の用途に対する使用を提供する複合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明の請求項1に記載の複合物により達成される。したがって、チャネル状構造を形成する少なくとも1つの領域を有するポリマ分相複合物であって、前記領域は、当該チャネルが設けられた少なくとも1つの頂部層を有し、前記頂部層の厚さt(チャネルの中心において測定される)は、当該複合物の高さ(チャネルの中心において測定される)の50%以上90%以下である、複合物である。
【0007】
本発明によれば、チャネルは特に、底部基板、側壁部及び頂部/被覆層により取り囲まれるキャビティを意味及び/又は包含し、かかるキャビティにおいて、生体液が通じ流れることができる一方、当該液が当該基板、壁部及び頂部/被覆層を通じて流れることができないものである。
【0008】
このチャネルは、開口し、又は固体又はゲル状材料により一部又は全部が充填されうるものである。
【0009】
さらに、「チャネル」なる文言は、当該チャネルが第1の短い寸法(チャネル幅)と第2のこれより相当に長い寸法(チャネル長)とを有することを特に意味及び/又は包含する。
【0010】
このような複合物を用いることによって、多くの用途に対して、次の利点のうちの少なくとも1つを達成することができる。
・当該複合物は、「頂部層」と共に一度に製造され、これにより、安定性を向上させ製造を容易にする。
・相分離のために、重合可能なモノマの大きな割合(或る種の用途では100%に近い)を用いることができる。
【0011】
分相複合物の製造は、当該技術において、例えば、国際特許出願に係る文献のWO2005/015295及びWO02/42832から知られており、これら双方は、参照によりここで編入されるものである。
【0012】
しかしながら、これら文献(及び関連文献)は、閉鎖された室部の製造を教示するに過ぎない。これは、実際、これら文献に開示されている技術はチャネルの製造のために適用可能なものではなく、当該複合物は、当該分相のために用いられる液体が除去されるとき、又は例えば検体のような生体サンプルを有する第3の液体がチャネルを満たすときに崩壊することになることを示している。
【0013】
当該チャネルの幾何学的配置形状を変え或いは最終的には静止摩擦、すなわち当該トップコートの底部基板に対する非可逆的接着とさえなる非常に強力な力とともに当該チャネルを引き寄せる気体と液体との界面において発生する特に毛細管力であることが判明している。
【0014】
驚くべきことに、本発明者らは、チャネル状構造を備えた領域を有する分相された複合物が請求項1の条件の下で形成可能であることを判明した。これら構造は、本発明における多くの用途に対して、相分離のために用いられた予備的液体の除去後であっても安定したものであることが判明され、これにより、微小流体用途に使用可能なものである。
【0015】
本発明の実施例によれば、頂部層の厚さt(チャネルの中心において測定される)は、当該複合物の高さ(チャネルの中心において測定される)の55%以上80%以下であり、より好ましくは60%以上70%以下である。
【0016】
本発明の実施例によれば、頂部層の弾性率E(相分離過程を終了した後)は、E≧500MPa(特に予備的液体を除去した後に乾燥状態で測定される)。広範な用途において、これは当該構造の安定性をさらに増加させるのに役立つことが分かっている。
【0017】
本発明の一実施例によれば、頂部層(相分離過程終了後)の弾性率EはE≧1GPaであり、或る実施例によれば5GPa以上であり、或る実施例によれば10GPa以上である。
【0018】
本発明の実施例によれば、頂部層(相分離過程終了後)の厚さtは3μm以上100μm以下である。このようにすることによって、当該複合物は、本発明の広範な用途において、さらに安定化されるとともに、適切に形成されたチャネル状構造ともなる。本発明の実施例によれば、頂部層(相分離過程終了後)の厚さtは、5μm以上70μm以下であり、或る実施例によれば、10μm以上50μm以下である。
【0019】
本発明の実施例によれば、チャネルの幅及び/又は当該チャネルにおける2つの柱状体形成要素の間の幅は、300μm以下である。これはまた、広範な用途において、当該構造の安定性をさらに向上するのに役立つことを示すものでもある。
【0020】
本発明の実施例によれば、チャネルの幅及び/又は当該チャネルにおける2つの柱状体形成要素の間の幅は200μm以下とされ、或る実施例によれば100μm以下とされ、或る実施例によれば50μm以下とされる。
【0021】
本発明の実施例によれば、チャネル壁部の幅(基板の近く、すなわち当該壁部が最も薄い箇所で測定される)及び/又は当該チャネルにおける柱状体形成要素の幅が2μm以上500μm以下とされる。これはまた、広範な用途において、当該構造の安定性をさらに向上させかつ当該封止を改善する一方で高いチャネル密度を許容することに寄与することも分かっている。
【0022】
本発明の実施例によれば、チャネル壁部の幅及び/又は当該チャネルにおける柱状体形成要素の幅は、5μm以上100μm以下であり、或る実施例によれば、10μm以上50μm以下である。
【0023】
本発明の実施例によれば、複合物は、1°以上40°以下、好ましくは2°以上30°以下、最も好ましくは5°以上20°以下の接触角αを有するチャネルを持つ基板に設けられる。
【0024】
本発明の実施例によれば、複合物は、1mm2当たり10以上、好ましくは20以上、より好ましくは50以上、最も好ましくは100以上のチャネルを有する。
【0025】
本発明の実施例によれば、当該チャネルの平均幅の、2つのチャネルの間の壁部の平均幅に対する比は、1:1以上20:1以下とされる。こうすることによって、本発明における広範な用途に対してより小型の複合物を提供することができる。好ましくは、2つのチャネルの間の壁部の平均幅に対するチャネルの平均幅の比は、2:1以上10:1以下、より好ましくは3:1以上8:1以下とされる。
【0026】
本発明の実施例によれば、当該複合物は、ポリ(メタ)アクリル材料を有する。
【0027】
本発明の実施例によれば、複合物は、少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマ及び少なくとも1つの多官能性(メタ)アクリルモノマの重合化により形成されるポリ(メタ)アクリル材料を有する。
【0028】
本発明の実施例によれば、当該(メタ)アクリルモノマは、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルメタ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニルメタ(メタ)アクリレート又はこれらの混合物を有するグループから選ばれる。
【0029】
本発明の実施例によれば、多官能性(メタ)アクリルモノマは、ビス(メタ)アクリル及び/又はトリ(メタ)アクリル及び/又はテトラ(メタ)アクリル及び/又はペンタ(メタ)アクリルモノマである。
【0030】
本発明の実施例によれば、多官能性(メタ)アクリルモノマは、ビス(メタ)アクリルアミド、トリプロピルエングリコール・ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール・トリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート又はこれらの混合物を有するグループから選択される。
【0031】
本発明の実施例によれば、ポリ(メタ)アクリル材料の架橋密度は、0.05以上1以下である。
【0032】
本発明の意義において、「架橋密度」なる文言は、特に次の規定を意味又は包含する。すなわち、架橋密度δXは、ここではδX=X/(L+X)と規定される。ここで、Xは、多官能性モノマのモル分率であり、Lは直鎖(=非多官能性)形成モノマのモル分率である。線状ポリマにおいてδX=0であり、全部が架橋された系ではδX=1である。
【0033】
本発明の実施例によれば、当該複合物はさらに、ナノ多孔性及び/又はゲルの材料が設けられこれに付加的又は代替え的に当該材料にチャネル状構造が設けられるようにした少なくとも1つの領域をさらに有する。
【0034】
本発明の実施例によれば、当該ゲル材料は、ヒドロゲルである。
【0035】
このナノ多孔性及び/又はゲル状の材料は、様々な方法で適用可能であり、これには次のものが含まれる。
・重合化とともに相分離を通じて複合物を設けた後、予備的液体(これはここではチャネル状構造にある)は除去可能となり、当該チャネルは、重合化によりナノ多孔性又はゲルの構造を形成する第2の反応混合物で再び満たされることができる。オプションとして、かかる多孔性又はゲルの構造は、マスク照射によってパターン化されるようにしてもよい。
・但し、予備的液体として、チャネル状構造の形成の後に(例えば重合、ゲル化などにより)所望の形状及び/又は特性に変換されることのできる溶剤及び(第3の)前駆体材料の混合物を用いることもできる。この点において、当該(第3の)前駆体材料は、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、フェニールアシルスルホニウム塩若しくはアルコキシピリジニウム塩又はこれらの混合物の如き適切な陽イオン光開始剤と組み合わされる基のエポキシ(例えばヒドロキシエチルグリシジルエーテル)、オキタセン又はビニルエーテルから選択される反応性前駆体であるか、或いは当該(第3の)前駆体は、脂肪酸誘導体(例えばヒドロキシオクタデカン酸)、長nアルカン、ステロイド誘導体、アントリル誘導体、ソルビトール及びポリオール誘導体、ビスウレア及びビスウレタン誘導体、有機金属化合物及び複合ゲル化剤又はこれらの混合物のグループから選択される無反応性低分子量ゲル化剤である。好ましいのは、当該溶剤が、水又は炭化水素を有するグループから選択され、特に、デカン、シクロヘキサン、キシレン、エタノール又はこれらの混合物を有するグループから選択されることである。これら材料は、実際に、それら自体、本発明による広範な用途において用いられるものであることを証明している。
【0036】
本発明はさらに、本発明による複合物を製造する方法であって、
a)第1の重合可能なポリマ前駆体材料及び第2の予備的液体材料並びに少なくとも1つの光吸収体材料を有する液体の層を形成するステップと、
b)ポリマ層を形成するために前記第1の重合可能なポリマ前駆体材料を重合させるステップと、
c)ステップb)の間又はステップb)の後、前記ポリマ材料及び前記第2の予備的液体材料の相分離を生じさせるステップと、
を有する方法に関する。
【0037】
本発明の実施例によれば、少なくとも1つの光吸収体材料は、照射の波長において5000lmol−1cm−1以上40000lmol−1cm−1以下の吸光度を有する。さらに、特に好ましいのは、少なくとも1つの光吸収体材料が、1μmの高さを持つ層の吸収が0.05以上1.5以下であるような濃度で設けられることである。
【0038】
本発明の実施例によれば、液体の層は、基板材料上に設けられ、基板材料を好ましくはガラス材料としている。
【0039】
本発明の実施例によれば、当該予備的液体層を形成する液体は、基板との接触角θを、θ≦π/2、好ましくはθ≦60°、より好ましくはθ≦45°、最も好ましくはθ≦30°としている。これにより、本発明における広範な用途に対して当該層の簡単な加工(処理)が可能になる。
【0040】
或る実施例によれば、かかる層の形成は、ブレーディング又はナイフコーティング及び/又はスピンコーティングにより達成される。
【0041】
本発明の実施例によれば、第1の重合可能なポリマ前駆体材料は、光重合可能な材料、好ましくは(メタ)アクリル材料とされる。
【0042】
「(メタ)アクリル材料」なる文言は、特に、上述したような少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマ及び少なくとも1つの多官能性(メタ)アクリルモノマを意味及び/又は包含する。
【0043】
本発明の実施例によれば、少なくとも1つのチャネル状構造を形成するために、マスクパターン及び/又は少なくとも一部が透光性の要素も設けられる。そこでは、当該重合は、当該少なくとも一部が透光性の要素及び/又はマスクパターンを通じて液体層を露光させることにより達成され、これにより、当該液体層の1つ又は複数の領域を重合化して第1の重合可能なポリマ前駆体材料のポリマ層を形成するようにしている。
【0044】
本発明の実施例によれば、当該複合物は、少なくとも一部が次の方法に従って設けられる。
a)第1の重合可能なポリマ前駆体材料、第2の予備的液体材料及び少なくとも1つの光吸収材料を有する液体の層を形成する。
b)好ましくはマスクパターン及び/又は少なくとも一部が透光性の要素を用いて、壁部を形成すべきところの当該複合物の部分において、第1の重合可能ポリマ前駆体材料が重合するようにする。
c)当該「壁部」の形成の後、ポリマ層を形成するために当該第1の重合可能ポリマ前駆体材料が重合するようにする。
d)ステップc)の間又はステップc)の後、チャネルを形成するために、ポリマ材料及び第2の予備的液体材料の相分離を生じさせる。
【0045】
チャネルの形成は、この特定の方法においては、光吸収体が液体層に設けられることに起因して行われる。光吸収体は、上から照射されると、液体層の下側領域における重合速度を低下させ、これにより、重合は、基本的に液体層の上部領域において生じることになる。かかる重合の過程で、相分離が生じ、これによりチャネルの形成を生じさせることになる。この点については後述する。
【0046】
この特定の方法は、参照により全てが編入される米国特許出願に係る文献のUS6818152及びその中の引用文献においてさらに詳しく説明されている。
【0047】
本発明の実施例によれば、当該複合物は、少なくとも一部が次の方法に従って設けられる。
a)第1の重合可能なポリマ前駆体材料と、第2の予備的液体材料と、少なくとも1つの光吸収体材料とを有する液体の層を、当該第1の重合可能材料に対して高い親和性を持つ少なくとも1つの領域と、当該第1の重合可能材料に対して低い親和性を持つ少なくとも1つの領域とを有する表面を備えた基板材料の上に形成する。
b)第1の重合可能なポリマ前駆体材料が重合するようにする。
c)ステップb)の間又はステップb)の後、チャネルを形成するために、ポリマ材料及び第2の予備的液体材料の相分離をなす。
【0048】
この方法において、チャネルの形成の一般的原理は、上に示した方法のものと本質的に一致する。実際、本発明における用途に対して有用である場合には、どちらの方法も随意に組み合わせることができることが当業者には分かることになることを注記すべきである。
【0049】
但し、「壁部」の形成は、この方法においては、主として、当該基板材料が当該第1の重合可能な材料に対して高い親和性を持つ領域と当該第1の重合可能な材料に対して低い親和性を持つ領域とを有して「予め構成」されているという点によるものである。その高い親和性を持つ領域においては、重合が増強させられることになり、「壁部」をもたらし、これにより、当該第2の領域では、「チャネル」が形成されるように相分離が起こることになる。したがって、マスクを省略することができる。
【0050】
この方法は、さらに、国際特許出願に係る文献のWO2005/015295及びそこで引用されている文献において詳細に説明されており、ここで参照により全てが編入されるものである。
【0051】
本発明の実施例によれば、当該液体層はさらに、第1の重合可能なポリマ前駆体材料の重合化を向上させるために光開始材料を有する。当業者には、当該少なくとも1つのチャネル状構造の形成も、当該液体層内の光開始材料の濃度を変えることによって行われることが可能であることが分かる。
【0052】
好ましくは、当該開始材料は、ジアゾ材料、特に、オプションとしてアミンのような光開始剤補助剤の混合したAIBN、過酸化物、ベンジルジメチル・ケタール、又はこれら化合物の混合物を有するグループから選択される。
【0053】
本発明の実施例によれば、当該液体層はさらに、特に当該複合物が当該少なくとも1つのチャネル状構造を形成するところの領域において、第1の重合可能なポリマ前駆体材料の重合を禁止又は軽減するために光阻害材料を有する。
【0054】
好ましくは、この光阻害材料は、二硫化物、キノン、ニトロソ化合物、フェノール、チオフェノール及びこれらの混合物を有するグループから選択される。
【0055】
本発明の実施例によれば、第2の予備的液体材料は、水、炭化水素を有するグループから選択され、特に、デカン、シクロヘキサン、キシレン、エタノール又はこれらの混合物を有するグループから選択される。これら材料は、これら自体が、本発明による広範な用途において用いられることを証明している。
【0056】
本発明の実施例によれば、ステップc)の開始前に当該頂部層の弾性率Eは、E≦1GPaであり、或る実施例によれば、E≦100MPaであり、或る実施例によれば、E≦10MPaである。本発明における多くの応用例において、本発明者らは、当該頂部層の少なくとも或る程度の部分が既に形成されたときに相分離(ステップc)が行われることを見出した。広範な用途において、本発明者らは、説明したようにこの段階において当該頂部層の弾性率Eを維持することによってチャネル状構造が適切に整形される態様で形成されることになることを見出した。
【0057】
但し、最終的な複合物では、当該頂部層の弾性率Eが、例えば上述したように相対的に高くなる可能性があることを注記すべきである。
【0058】
上述したように、或る実施例によれば、複合物はさらに、ナノ多孔性及び/又はゲルの材料が当該チャネル状構造の中及び/又は当該構造とともに設けられる少なくとも1つの領域を有する。このように、本発明の一実施例によれば、当該方法はさらに、次の処理のうちの1つ又は複数によるような少なくとも1つの領域を設けるための少なくとも1つのステップを有する。
・チャネル及び壁部の形成の間に重合しないか又は少しだけしか重合しない他の(例えば第3の)前駆体材料を設け、その後にこの材料が重合され、かかる重合に付加的又は代替的にナノ多孔性構造及び/又はゲルを形成するよう別の化学的な変化がもたらされるようにする。
・他の重合可能材料の形態で他の前駆体材料を設け、その重合は、少なくとも1つの光吸収体が透明及び/又は本質的に透明である波長領域で開始させられることのできるようなものとする。このようにすることによって、チャネル及び壁部の形成の後に他の重合可能な材料を重合することができる。
・好ましくは、脂肪酸誘導体(例えばヒドロキシオクタデカン酸)、長nアルカン、ステロイド誘導体、アントリル誘導体、ソルビトール及びポリオール誘導体、ビスウレア及びビスウレタン誘導体、有機金属化合物並びに複合ゲル化剤又はチャネルの形成の後にゲル化されるこれらの混合物のグループから選択される低分子量ゲル化剤の形態で、他の前駆体材料を設ける。
・第1の重合可能材料の重合と、他の前駆体材料の重合及び/又はゲル化との間に運動学的な相違(すなわち温度の変化による)を用いる。本発明の好適実施例の場合の適切な例は、例えば第1の重合可能な材料としての(メタ)アクリレート及び(第3の)前駆体材料のための2−ヒドロキシ−エチル−グリシジル−エーテルのようなエポキシ材料を用いることである。(メタ)アクリレートの重合は、多くの用途において非常に高速であり、これにより、当該エポキシ材料は、多くの用途において、当該チャネル及び壁部の形成後に重合することになる。
・初期液体層(第1の重合可能な材料、第2の予備的液体及び他の(第3の)前駆体材料を有する)と、チャネル及び壁部の形成の後にチャネルに設けられかつ本質的に第2の予備的液体及び他の(第3の)前駆体材料だけを有することになる液体材料との間における溶媒化及び/又は極性の相違を用いる。
・上記状況において、好ましい実施例は、第1の重合可能な材料により禁止又は妨害させられる重合化及び/又はゲル化の反応を用いることである。重合によるこの材料の「除去」の後、他の(第3の)前駆体材料の重合及び/又はゲル化反応が生じることができる。
【0059】
本発明の好適実施例によれば、他の(第3の)前駆体材料は、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、フェニールアシルスルホニウム塩又はアルコキシピリジニウム塩又はこれらの混合物のような適切な陽イオン光開始剤と組み合わせられるエポキシド、オキセタン又はビニルエーテルのグループから選ばれる。
【0060】
本発明の実施例によれば、他の層は、特に当該複合物の剛性を増大させるよう、第1の材料から形成される層の上へ加えられるようにしてもよい。これら層は、上述した適切な方法のいずれかによって、例えば熱的又は光化学的に重合によっても形成可能である。
【0061】
本発明による複合物、方法及び/又は装置は、多様なシステム及び/又は用途において用いられることができ、中でも次のうちの1つ又は複数のために用いられる。
・分子診断学のために用いられるバイオセンサ
・例えば血液又は唾液のような複合の生物学的混合物における蛋白質及び核酸の迅速かつ高感度の検出
・化学、薬学又は分子生物学のための高スループットスクリーニング装置
・集中化した研究所又は科学研究における診断のための(病院における)現場試験のための例えば犯罪学における例えばDNA又は蛋白質の試験装置
・心臓病学、伝染病及び腫瘍学、食物、及び環境診断学のためのDNA又は蛋白質診断のための器具
・組み合わせ化学のための器具
・分析装置
【0062】
上述した構成品目の他、請求項記載の構成品目及び説明される実施例における本発明により用いられることとなる構成品目は、それらのサイズ、形状、材料選択、及び当該関連分野において知られる選択基準が限定を伴うことなく適用可能であるといった技術概念に関しての特別な例外を受けるものではない。
【0063】
本発明の目的にかかる付加的な詳細、特徴、特性及び利点は、従属請求項、図面及びそれぞれの図及び具体例の次の説明において開示されるものであり、かかる従属請求項等は、"模範的な態様で"本発明による分離媒体及び装置の幾つかの実施例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図4における線II−IIに沿う図と等価な本発明の第1の実施例によるチャネル状構造を有する複合物を示す非常に概略的な一部断面図。
【図2】本発明の第2の実施例による複合物の形成の前の基板、液体層及びマスクパターンの非常に概略的な断面図。
【図3】第1の重合ステップの後の図2による非常に概略的な断面図。
【図4】相分離を示す第2の重合ステップの間における図2による非常に概略的な断面図。
【図5】本発明の実施例による液体層及び複数のチャネル状構造体を形成するための複数のマスクパターンの非常に概略的な上面図。
【図6】複数のチャネルを備えた図5における線II−IIに沿う図に等価な本発明の第1の実施例によるチャネル状構造体を有する複合物を示す非常に概略的な一部断面図。
【図7】本発明の他の実施例による液体層及びナノ多孔性材料によるチャネル状構造を提供するためのマスクパターンの非常に概略的な一部上面図。
【図8】図5における液体層から製造された複合物及びナノ多孔性材料を設ける前の第2のマスクパターンの非常に概略的な一部上面図。
【図9】図5における液体層から製造された複合物及びナノ多孔性材料を設ける前の代替えのマスクパターンの非常に概略的な一部上面図。
【図10】チャネル状構造及びナノ多孔性材料を持つ部分を有する準備完了の複合物の非常に概略的な一部上面図。
【図11】本発明の他の実施例による複合物のチャネル状構造内での使用のための柱状体形成要素の非常に概略的な透視図。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1は、図4における線II−IIに沿う図に等価な本発明の第1の実施例によるチャネル状構造を有する複合物1を示す非常に概略的な一部断面図を示している。この複合物は、基板20上に設けられたポリ(メタ)アクリル材料10を有する。「t」により示されるような頂部層の高さの比(チャネルの中心で測定される)から、「T」により示されるような当該複合物の高さの比(当該チャネルの中心で測定される)は、上述した通りである。
【0066】
図1は非常に概略的であるが、チャネル状構造が四角い断面を有せず、むしろ半楕円形の断面を有することが分かる。実際、本発明者らは、実際に本発明により形成された殆どの複合物が図1のもののような同様の構造を使うものとなることを見出している。
【0067】
さらに、角α(図1に示されるようなもの)は、上述したようにするのが好ましく、本発明における広範な用途に対してさらなる安定性を導くことができる。
【0068】
図2は、本発明の第2の実施例による複合物の形成の前の基板20、液体層100及びマスクパターン30の非常に概略的な断面図を示している。当該液体層は、第1の重合可能なポリマ前駆体材料(特定の実施例では(メタ)アクリル材料)、第2の予備的液体材料(特定の実施例ではキシレンのような炭化水素)及び光吸収体材料(図4に示されるステップでは重要になるもの)の混合物を有する。
【0069】
図3は、第1の重合ステップの後の図2による非常に概略的な断面図を示している。「x」により示されるように、マスクパターンの宛がわれていない当該液体層の部分は、壁部を形成するよう光重合された。
【0070】
図4は、相分離の方法を示す第2の重合の開始の後の図2による非常に概略的な断面図を示している。上から照射される場合、光吸収体は、当該液体層の下側領域における重合速度を、単に、これら下側領域に届くことのできる光量を減少させるその吸収能力のために減らすこととなる。
【0071】
このため、重合は、本質的に当該液体層の頂部領域において生じることになる。当該重合の過程において、(矢印により示されるように)そこで壁部の形成をもたらす相分離が生じることになる。本発明者らは、重合がほぼ終了したときに本発明の多くの用途において実際の相分離が生じることになることを見出した。
【0072】
なお、図2ないし図4の処理は、非常に概略的であり、詳細については、当業者は例えば米国特許出願に係る文献のUS6818152及びそこでの引用文献を参照するのがよい。
【0073】
図2ないし図4はさらに、当該複合物の形成の実現可能な処理を1つだけ示している。当業者は、国際特許出願に係る文献のWO2005/015295による処理(又は2つの処理の自由な組み合わせ)もこの複合物の形成のために用いることができることが簡単に分かる筈である。
【0074】
なお、本発明に従って「t」及び「T」の比が選ばれると、当該予備的液体は、当該複合物のポリマ領域の劣化を伴うことなく本発明の最大で全ての用途において除去されることが可能である。したがって、本発明による複合物及びこれを形成する方法は、一度に被覆されるチャネル状構造の形成を可能にする。
【0075】
図5は、本発明の実施例による液体層100及び複数のチャネル状構造を形成するための複数のマスクパターン30の非常に概略的な上面図を示している。図4からは、複数のチャネル状構造を単一の重合及び相分離プロセスにおいて設けることができることが明確に分かる。
【0076】
図6は、複数のチャネルを備えた図5における線II−IIに沿う図に等価な本発明の第1の実施例によるチャネル状構造を有する複合物を示す非常に概略的な一部断面図を示している。図6も非常に概略的であるが、本発明による複合物はチャネル間の比較的小さな壁部だけを持つチャネルを有することができ、実際、チャネル間の壁部幅に対するチャネル幅の比は、好ましくは上述したようにするのが良い。
【0077】
図7ないし図10は、チャネル状構造を有するだけでなく、当該チャネル構造がナノ多孔性及び/又はゲルの材料を具備しているところの領域50も有する本発明の他の実施例による複合物10´の製造を示している。なお、図8及び図9は2つの代替例を示している。
【0078】
図7ないし図10に示されるような処理は、3ステップ処理であるが、上述したような多かれ少なかれ共同の処理で図10の構造を得ることもできる。
【0079】
図7及び図8において、チャネル状構造は、既に説明したように、液体層100´と第1のマスクパターン30´とを用いて形成される。但し、図8において、第2のマスクパターン35が使われ、第2の処理例えば第2の重合が開始され、それによりナノ多孔性及び/又はゲルの材料を有する領域70を導いている。
【0080】
図9は、図5における液体層から製造される複合物及びナノ多孔性材料を設ける前の代替マスクパターンの非常に概略的な一部上面図を示している。この図において、マスクパターンは、図8のものの或る意味で「ネガティブ」とされる。
【0081】
この特定の実施例において、ナノ多孔性領域の形成は、次のようにして達成される。
【0082】
このさらなるステップにおいて、チャネルが形成されることになる領域は、少し照射されるが全部が重合されない。再び、重合誘導拡散が行われ、領域50における予備的液体の量が増加する。そして、第3のUVステップにおいて、当該サンプルは、光吸収剤により部分的に吸収される光がフラッド照射される。
【0083】
本発明者らは、予備的液体の濃度が高い領域(これは図9におけるマスクパターンにより被覆される領域となる)においては、ナノ多孔性領域が形成されることになることを見出した。当該濃度が低い領域(すなわち図9におけるマスクパターンにより被覆されないが初期時に図7におけるマスクパターンにより被覆される領域)においては、チャネルが形成される。
【0084】
図8及び図9の両方において、この第2の処理は、他の重合を含むが、当業者には、上述したものを含む様々な他の処理も用いることができることが明らかである。
【0085】
なお、第1の重合と第2の処理との間では、第1の重合の予備的液体を除去することができ、後に領域70が形成される元の第2の液体により置換されるようにすることができる点を注記すべきである。但し、当業者には、当該予備的液体が適正に選ばれた場合には、これは必要がなく、どちらの処理も、例えば他の前駆体成分も当該初期の液体層にある場合には、このような除去を伴うことなく行うことができる。
【0086】
さらに、多くの用途における相分離が重合の完全な終了時に起きるので関連の両ステップを行うことができる点、すなわち、マスクパターン30´が重合/相分離ステップの終了前に除去され第2の処理(図8、図9及び図10に示されるようなもの)が重合/相分離の完了と同時とされる点を注記すべきである。
【0087】
図11は、本発明の他の実施例による複合物のチャネル状構造において用いられる柱状体形成要素70の非常に概略的な透視図を示している。上述したように、本発明における幾つかの用途に対しては、チャネルの幅が過剰に広くならないことが好ましい。但し、より広いチャネル構造は、このような柱状体形成要素を導入することによって達成可能であり、一例としては図11の柱状体形成要素70がある。このようにすることによって、複合物の安定性をこれら用途において維持することができる。
【0088】
この柱状体は、例えば、次の処理の一方又は双方を用いて形成可能である。
・マスクを使い、第1の照射ステップにおいて柱状体領域を照射する。
・当該柱状体を形成しなければならない箇所において接着促進剤の単一ドットを堆積する。
【0089】
これまで詳述した実施例における要素及び特徴の特定の組み合わせは、典型的なものに過ぎない。これら教示内容の本願及び参照により編入された特許/出願における他の教示内容との交換及び代替も明確に想定されるところである。当業者であれば分かるように、ここで説明したものの変形例、変更例及び他の実現例は、請求項に記載の本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく当業者により実現可能である。したがって、上述した内容は、例示に過ぎず、限定することを意図していない。本発明の範囲は、添付の請求項及びその等価範囲により規定されるものである。さらに、詳細な説明及び請求項に用いられる参照符号は、請求項に記載の発明の範囲を限定するものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネル状構造を形成する少なくとも1つの領域を有するポリマ分相複合物であって、前記領域は、当該チャネルが設けられた少なくとも1つの頂部層を有し、前記頂部層の厚さtは、前記チャネルの高さの50%以上90%以下である、複合物。
【請求項2】
請求項1に記載の複合物であって、当該相分離処理を終了した後の前記頂部層の弾性率Eは、E≧100MPaである、複合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の複合物であって、前記チャネルの幅及び/又は前記チャネルにおける2つの柱状体形成要素の間の幅は、300μm以下である、複合物。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちいずれか1つに記載の複合物であって、当該分離媒体は、ポリ(メタ)アクリル材料を有する、複合物。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちいずれか1つに記載の複合物であって、前記ポリ(メタ)アクリル材料の架橋密度は、0.0001以上0.5以下である、複合物。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちいずれか1つに記載の複合物であって、少なくとも1つの領域をさらに有し、ナノ多孔性及び/又はゲルの材料は、前記チャネル状構造に設けられ及び/又は前記チャネル状構造が付与される、複合物。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちいずれか1つに記載の複合物を製造する方法であって、
a)第1の重合可能なポリマ前駆体材料及び第2の予備的液体材料並びに少なくとも1つの光吸収体材料を有する液体の層を形成するステップと、
b)ポリマ層を形成するために前記第1の重合可能なポリマ前駆体材料を重合させるステップと、
c)ステップb)の間又はステップb)の後、前記ポリマ材料及び前記第2の予備的液体材料の相分離を生じさせるステップと、
を有する方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記第1の重合可能なポリマ前駆体材料は、(メタ)アクリル材料を含む光重合可能な材料である、方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の方法であって、前記第2の予備的液体材料は、炭化水素を有するグループから選択され、又はデカン、シクロヘキサン、キシレン又はこれらの混合物を有するグループ、水、エタノール又はこれらの混合物から選択される、方法。
【請求項10】
請求項1ないし6のうちいずれか1つに記載の複合物を導入するシステム又は請求項7ないし9のうちいずれか1つに従って形成される複合物であって、
・分子診断学のために用いられるバイオセンサ
・血液、唾液その他の複合の生物学的混合物における蛋白質及び核酸の迅速かつ高感度の検出
・化学、薬学又は分子生物学のための高スループットスクリーニング装置
・集中化した研究所又は科学研究における診断のための(病院における)現場試験のための犯罪学その他の分野におけるDNA、蛋白質その他の物質の試験装置
・心臓病学、伝染病及び腫瘍学、食物並びに環境診断学のためのDNA又は蛋白質診断のための器具
・組み合わせ化学のための器具
・分析装置
のうちの1つ又は複数において用いられるシステム又は複合物。
【請求項1】
チャネル状構造を形成する少なくとも1つの領域を有するポリマ分相複合物であって、前記領域は、当該チャネルが設けられた少なくとも1つの頂部層を有し、前記頂部層の厚さtは、前記チャネルの高さの50%以上90%以下である、複合物。
【請求項2】
請求項1に記載の複合物であって、当該相分離処理を終了した後の前記頂部層の弾性率Eは、E≧100MPaである、複合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の複合物であって、前記チャネルの幅及び/又は前記チャネルにおける2つの柱状体形成要素の間の幅は、300μm以下である、複合物。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちいずれか1つに記載の複合物であって、当該分離媒体は、ポリ(メタ)アクリル材料を有する、複合物。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちいずれか1つに記載の複合物であって、前記ポリ(メタ)アクリル材料の架橋密度は、0.0001以上0.5以下である、複合物。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちいずれか1つに記載の複合物であって、少なくとも1つの領域をさらに有し、ナノ多孔性及び/又はゲルの材料は、前記チャネル状構造に設けられ及び/又は前記チャネル状構造が付与される、複合物。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちいずれか1つに記載の複合物を製造する方法であって、
a)第1の重合可能なポリマ前駆体材料及び第2の予備的液体材料並びに少なくとも1つの光吸収体材料を有する液体の層を形成するステップと、
b)ポリマ層を形成するために前記第1の重合可能なポリマ前駆体材料を重合させるステップと、
c)ステップb)の間又はステップb)の後、前記ポリマ材料及び前記第2の予備的液体材料の相分離を生じさせるステップと、
を有する方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記第1の重合可能なポリマ前駆体材料は、(メタ)アクリル材料を含む光重合可能な材料である、方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の方法であって、前記第2の予備的液体材料は、炭化水素を有するグループから選択され、又はデカン、シクロヘキサン、キシレン又はこれらの混合物を有するグループ、水、エタノール又はこれらの混合物から選択される、方法。
【請求項10】
請求項1ないし6のうちいずれか1つに記載の複合物を導入するシステム又は請求項7ないし9のうちいずれか1つに従って形成される複合物であって、
・分子診断学のために用いられるバイオセンサ
・血液、唾液その他の複合の生物学的混合物における蛋白質及び核酸の迅速かつ高感度の検出
・化学、薬学又は分子生物学のための高スループットスクリーニング装置
・集中化した研究所又は科学研究における診断のための(病院における)現場試験のための犯罪学その他の分野におけるDNA、蛋白質その他の物質の試験装置
・心臓病学、伝染病及び腫瘍学、食物並びに環境診断学のためのDNA又は蛋白質診断のための器具
・組み合わせ化学のための器具
・分析装置
のうちの1つ又は複数において用いられるシステム又は複合物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−500598(P2010−500598A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524293(P2009−524293)
【出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【国際出願番号】PCT/IB2007/053217
【国際公開番号】WO2008/020397
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【国際出願番号】PCT/IB2007/053217
【国際公開番号】WO2008/020397
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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