説明

微粉の少ない合成樹脂ペレットの製造方法及び合成樹脂ペレットの微粉除去装置

【課題】合成樹脂ペレットに付着した切り粉や破砕片等の微粉を除去し、微粉の少ない高品質のペレット及び微粉除去装置を提供することにある。
【解決手段】タンク内に収容された合成樹脂ペレットを、ペレット循環配管を経て気流搬送によりタンクの下部近傍から抜き出してタンク上部近傍から戻すように移動させ、移動中の合成樹脂ペレットにイオン発生器からのイオンを接触させることにより静電気を除去し、合成樹脂ペレットに帯電付着している微粉を離脱させてタンク内で浮遊状態とし、浮遊状態の微粉をタンク上方近傍に設けた開口から空気に同伴させてタンク外に導くことを特徴とする、合成樹脂ペレットの微粉除去方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂ペレットから、付着している切り粉や破砕片等の微粉を除去して、微粉の少ない合成樹脂ペレット(以下、「合成樹脂ペレット」を単に「ペレット」ということがある)を製造する方法に関する。詳しくは、ペレットに帯電付着している微粉をペレットから離脱させて除去する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱可塑性樹脂は、所望により配合される種々の添加物と一緒に押出機中で加熱下に混練したのちストランド状に押出し、冷却、固化させて切断し、長さが数ミリのペレットとして製品化し、出荷される。ところでペレット化に際しては微細な切り粉が発生し、またペレットの運搬その他の取り扱いに際してもペレットが破砕される等により微粉が発生してペレット表面に付着する。
ペレットに付着しているこれらの微粉は、押出機や射出成形機等の材料供給タンクへペレットを空気輸送する際や成形時の計量の際に、安定した輸送や計量を阻害したり、成形サイクルなどに悪影響を与える場合がある。従って、ペレットに付着している微粉を除去する方法や装置が種々提案されている。
【0003】
例えば、円筒状のケーシング内の中央部に円錐体を配置し、この円錐体の円錐面に沿ってペレットを落下させながら、ケーシングと円錐体との間に上昇空気を送りペレットから微粉等を分離、除去する方法(特許文献1)、ペレットを連続して落下させながら、これに高速の高圧清浄空気を噴出させて、ペレット表面またはペレット間に混在する微小異物(微分)を除去する方法(特許文献2)等、物理的に微粉を分離、除去する方法や装置が提案されている。
【0004】
また、合成樹脂は本来的に静電気を帯び易く、微粉は静電気によりペレットに付着しており物理的手段だけでは除去が困難であるので、静電気除去装置と物理的分離装置とを併用した装置や方法も種々提案されている。
例えば、ペレットに帯電している静電気を中和する静電気除去装置と、内部に傾斜分離板と誘導板を交互に多段に、かつ、各段毎に落下間隔を有するように設けて、ペレットをジグザグ状に誘導しつつ落下させる分離塔とを併用したペレットの微粉除去装置が提案されている(特許文献3)。該特許文献には、分離塔の一側に設けた吸気口から塔内に吸引した空気を各傾斜分離板の斜面に沿って上昇させて、静電気除去装置により帯電が中和(除去)されたペレットから微粉を分離浮上させ、分離した微粉を分離塔の他側に開口する通気口から塔外に吸引し、分離塔の下側の排出口から微粉が除去されたペレットを得ることが記載されている。また、特許文献3と同様の装置において、傾斜分離板と誘導板から成る器体を側面の開口部から塔外に取り出して、作業に便利な別の場所に移して器体の清掃をすることのできる装置も提案されている(特許文献4)。
【0005】
また、成形機に供給する原料ペレットにイオン化した空気を吹き付けて除電し、かつ、この原料ペレットを旋回させながらケーシング内を降下させ、原料ペレットから分離した微粉をケーシング内に設けたメッシュフィルターを通してケージング内から除去することが可能な、微粉除去装置(特許文献5)、ペレットの静電気を中和(除去)する静電気除去装置、ペレットと微粉を分離するための微粉分離装置、分離された微粉を収納するための微粉収納装置と、微粉の取り除かれたペレットを収納するためのペレット収納装置を有していて、ペレットを落下させながら静電気除去装置から出るイオン化エアーにより静電気を除去すると共に、分離された微粉を吹き飛ばして微粉とペレットとを分離する装置(特許文献6)等も提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2007−30359号公報
【特許文献2】特開平8−196997号公報
【特許文献3】特開平10−620号公報
【特許文献4】特開2002−282791号公報
【特許文献5】特開2007−50354号公報
【特許文献6】特開平8−39550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように合成樹脂はそれ自体帯電し易い性質があり、本発明者らの検討によれば、ペレットの帯電量は、合成樹脂の種類や配合されている添加物によっても異なるが、例えばポリカーボネート樹脂であれば、通常8〜15kvである。このように高い帯電量を有するペレットに微粉が静電気を帯びて付着しているため、付着した微粉は簡単には除去され難く、上記のような分離装置により分離した場合でも、ペレットには一般的に相当量の微粉が依然として付着していることがわかった。また、微粉を除去したペレットでも、その後の取り扱いに際しての摩擦や衝撃により、再び微粉が付着することがある。これはペレットを製造する際に、ヒゲ状やバリ状などの突起を有するペレットが生ずることがあり、取り扱いに際してこれらの部分が破砕されて微粉が発生したり、ペレット相互の摩擦により表面が剥離して微粉を生じたりすることによる。
【0008】
本発明は、前記した事情に鑑み、微粉の少ない、高品質のペレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、タンクに収容されたペレットをペレット循環配管を経て空気流で移動させ、且つこの過程でペレットの除電を行うことにより、ペレットに帯電付着している微粉を合成樹脂ペレットから離脱させてタンク内に浮遊している微粉をタンク上方近傍に設けた排気口から空気に同伴させてタンクから排出することによって、微粉の少ない高品質なペレットが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、タンク内に収容された合成樹脂ペレットを、タンクの下部近傍から抜き出してタンク上部近傍でタンクに戻すようにペレット循環配管を経て空気流により移動させ、且つ移動中の合成樹脂ペレットにイオン発生器で発生させたイオンを接触させて、合成樹脂ペレットに帯電付着している微粉を合成樹脂ペレットから離脱させ、合成樹脂ペレットから離脱してタンク内で浮遊している微粉をタンク上部近傍に設けた排気口から空気に同伴させて排出することを特徴とする、微粉の少ない合成樹脂ペレットの製造方法に存する。
【0011】
また、本発明の他の要旨は、合成樹脂ペレットを収容するタンク、タンクに合成樹脂ペレットを供給する供給口、タンク上部近傍に設けられた排気管、タンク下部近傍に設けられた合成樹脂ペレット取出管、タンク下部近傍とタンク上部近傍とを連絡するペレット循環配管、ペレット循環配管に接続された圧力空気導入管及びペレット循環配管に設けられたイオン発生器とからなることを特徴とする、合成樹脂ペレットの微粉除去装置にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、微粉の付着量の極めて少ない高品質のペレットを得ることができる。このようなペレットを用いることにより、成形加工に際しペレット中の微粉が要因となって生じる種々の問題、例えば、製品成形時の計量性、成形サイクル性、成形品表面外観の低下等を防ぐことができ、また、本発明によれば、ペレットはペレット循環配管内を繰り返し気流搬送されるので、この間の摩擦や衝撃によりペレットから微粉となり易い部分(ヒゲ状、バリ状の部分)が除去される。従って本発明により微粉を除去したペレットは、その後の取り扱いに際して微粉の発生が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においては、タンク内に収容されたペレットを、気流搬送によりペレット循環配管を経てタンクの下部近傍から抜き出してタンク上部近傍でタンクに戻すように循環移動させ、この移動中のペレットにイオン発生器からのイオンを接触させることによりペレットの帯びている静電気を中和除去する。これによりペレットに帯電付着している微粉がペレットから離脱する。離脱した微粉はタンク内で浮遊するので、浮遊状態の微粉をタンク上方近傍に設けた排気口から空気に同伴させてタンク外に導く。これによりタンク内のペレットから付着していた微粉が除去される。
【0014】
ペレットの静電気を中和除去するために使用するイオン発生器は、プラスイオン及び/又はマイナスイオンを発生させるものであればいずれのものも使用できるが、好ましくは電極針とこれに印加する電源とを有し、1つ又は複数の電極針から、プラスイオン及び/又はマイナスイオンを周期的に発生させるパルス方式のイオン発生器を使用する。このイオン発生器からの発生されるイオン量は除電対象物の表面電位を検知しこれにより電圧を印加し対象物の表面電位が0になる点を自動的に算出し除電に必要なイオン量が発生する。このイオン発生器を用いると極めて短時間で電荷の中和除去を行うことができる。中でも、1本の電極針からプラスイオンとマイナスイオンとが周期的に交互に発生するパルスAC方式ものが、イオンバランスが良く好ましい。イオン発生器の種類としては、ブロワータイプ、バータイプ、スポットタイプ等いずれのものも使用し得るが、スポットタイプのものが比較的狭いペレット循環配管に設置しやすいため好ましい。このようなイオン発生器としては、例えば、株式会社キーエンスから市販されているパルスAC方式でバータイプのSJ−Rシリーズ、パルスAC方式でスポットタイプのSJ−Mシリーズ等が挙げられ、特に、イオン発生量が多い点から、パルスAC方式でスポットタイプのSJ−Mシリーズが好ましい。
【0015】
本発明においてペレットの静電気の中和除去は、このイオン発生器から発生したイオンと、ペレットとをペレット循環配管中で接触させることにより行われる。
イオン発生器は、ペレット循環配管中のペレットにイオンを効率的に供給できる場所であれば任意の場所に設置することができる。通常は径の大きなタンク内よりも処理効率が良い点で、タンクよりも径の小さいペレット循環配管に設置される。
イオン発生器の設置は1箇所に限定されず、所望により2箇所以上、例えば、ペレット循環配管の下部近傍と上部近傍の2箇所に設置することもできるし、ペレット循環配管の中間にも設けることもできる。好ましくはイオン発生器は、タンク上部近傍のペレット循環配管の出口近くに設置する。これにより、中和除電されたペレットは直ちに狭いペレット循環配管からタンクの広い空間に放出されるので、ペレットがペレット循環配管内で摩擦や衝撃により再び帯電して、微粉を吸着するのを防止することができる。イオン発生器は、イオンとペレットとが接触してから3秒以内、好ましくは1秒以内、さらには0.5秒以内、特に0.1秒以内でペレットがタンク内に放出されるように設置するのが好ましい。その位置はペレットの流速にもよるが、一般にタンク上部近傍のペレット循環配管の出口から100cm以内、さらには50cm以内、特に20〜50cmの位置である。
【0016】
本発明におけるペレットの微粉除去方法の一例について、図1を参照して説明する。
図1に、本発明で用いるペレットの微粉除去装置の一例を示す。微粉除去装置は、ペレットを収容するタンク10と、タンク10の上部近傍に設けられた排気管20、タンク10の上部近傍に設けられたペレット供給管102、タンク10の下部近傍に設けられたペレット取出管30、タンク10下部近傍とタンク10上部近傍とを連絡するペレット循環配管101、ペレット循環配管101に設けられた圧力空気導入管103及びペレット循環配管101に設けられたイオン発生器40とを備えている。
【0017】
タンク10内のペレットは、圧力空気導入管103からペレット循環配管101に上向きに供給される圧力空気により、ペレット循環配管101内を気流搬送されて、タンク10上部近傍でタンク10内に放出される。この間にペレットには、イオン発生器40からのイオンが接触して電荷を中和、除去し、付着している微粉が付着力を失ってペレットから離脱する。イオン発生器40による電荷の中和は、タンク10内のペレットの帯電量が5kv以下、特に3kv以下となるように行うのが好ましい。ペレット循環配管101は図示するように、タンク10から斜め下方に伸びる下部配管とその下端部から上方に伸びる上部配管とから成り、上部配管の下端部に圧力空気導入管103が接続しているのが好ましい。このようにすると、ペレットはタンク10から下部配管を落下するようにペレット循環配管101に達し、落下したペレットは圧力空気流により速やかに上部方向に搬送されるので、ペレット循環配管101へのペレットの供給が円滑に行われ好ましい。前記タンク10から斜め下方に伸びる下部配管は、タンク10下方の傾斜部と下部配管とがなす鋭角の角度が好ましくは60度以下、より好ましくは50〜25度となるように取付ける。
【0018】
タンク10、ペレット循環配管101、圧力空気導入配管103及びペレット取出管30の材質、並びにタンク10へのペレット供給管102の材質は特に制限はないが、ステンレス鋼が好ましい。例えば、JIS規格における、SUS304、SUS316、SUS403等が挙げられる。ペレット循環配管101内の空気流速はペレットが気流搬送される速度であればよいが、通常は秒速10〜30mである。また、微粉の除去を十分に行うには、タンク内のペレットをペレット循環配管101を反復して通過させるべきであり、通常は3〜4回の反復で十分な微粉の除去を行うことができる。また、このようにペレットの循環を行うことにより、タンク内のペレットを混合する効果があり、経時的変動を均一化することができる。ペレット循環配管101の内径は循環されるペレットの量や搬送させる流速、およびイオン発生器40からのイオンとの接触効率等を考慮して適宜選択される。例えば、上記の速度で搬送される場合内径は50〜110mmであることが好ましく、60〜80mmであることがより好ましい。また空気導入管は通常はペレット循環配管101と同等の内径であるが、圧縮機の能力や導入空気圧等を考慮して適宜選択される。
【0019】
本発明の好ましい一態様では、常法によるペレットの製造工程に組み込んで本発明による微粉の除去を行う。即ち常法によるペレットの製造では、合成樹脂に所望により種々の添加物を配合したものを、溶融混練して押出機からストランド状に押出し、切断してペレットとする。得られたペレットは、必要に応じて乾燥したり、異物や規格外品の除去を行った後、製品としてタンクに送られる。本発明の好ましい一態様では、図1の微粉除去装置を用い、ペレット供給管102からタンク10に連続的にペレットを供給し、且つペレット取出管30からペレットを連続的に取り出して製品タンクに送る。タンク10には、タンク10に1時間当たり供給される量の1.5〜3倍量のペレットを滞留させ、このペレットに本発明方法により微粉の除去操作を施す。なお、この連続操作の場合には、ペレット供給管102をペレット循環配管101にイオン発生器40の手前で合流させ、タンク10へ供給されるペレットにもイオン発生器40からのイオンが接触するようにするのも好ましい。
【0020】
本発明では任意の合成樹脂から成るペレットに付着している微粉を除去することができる。例えばポリエチレンやポリプロピレン等の汎用の熱可塑性樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂等のいわゆるエンジニアリングプラスチックス及びこれら樹脂のアロイ等からなるペレットを対象とすることができる。また、これらの樹脂にガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、金属繊維(例えば、チタン酸カリウムウイスカー)、マイカ、タルクなどの強化充填材、酸化チタン、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、炭酸カルシウムなどの無機充填材等、さらには所望により、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、耐衝撃性改良剤、滑材、磨耗防止剤、帯電防止剤等の熱可塑樹脂に一般的に用いられる添加剤を配合したものも対象とすることができる。
【0021】
ペレットの微粉の付着量は、少ない方が好ましいことはもちろんであるが、本発明の微粉除去装置を用いれば、ガラス繊維や炭素繊維を含む強化繊維含有ペレットの場合には、ペレットの0.1重量%以下とすることができる。組成にもよるが0.05重量%以下とすることも可能である。また、非強化ペレットの場合には通常、強化繊維含有ペレットに比べて微粉の付着量は少ないので、付着量は0.03重量%以下とすることが可能であり、組成にもよるが0.01重量%以下とすることもできる。このような微粉量とすることにより、成形時の計量性、成形サイクルの悪化を抑制することができ、得られる成形品の外観も優れたものとなる傾向にある。
【0022】
ガラス繊維、炭素繊維、ガラスフレーク等の強化充填材や、酸化チタン、シリカ等の無機充填材を含む強化熱可塑性樹脂組成物からなるペレット、特にこれらの充填材の含有量が多いペレットは、ペレット製造時のストランド切断、タンクへの搬送中のペレット同士又はペレットと配管との接触等により、ペレットの切断面にある微細な充填材片が剥離するなどして微粉が発生しやすく、充填材を含まない非強化熱可塑性樹脂組成物に比べ微粉の発生量が多いので、特に本発明の効果が発揮される。
【実施例】
【0023】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものでない。
実施例及び比較例に使用した微粉除電装置は下記(1)のものを使用し、ペレットの除電は下記(2)のイオン発生器を使用した。またペレットの帯電量、ペレット中の微粉量の測定はそれぞれ下記(3)及び(4)によった。
【0024】
(1)微粉除去装置:
図1と同様の微粉除去装置を使用した。すなわち、ペレットを収容するタンク10、タンク10の上部に設けられた排気管20、タンク10の下部近傍に設けられたペレット取出管30、タンク10下部近傍とタンク10上部とを連絡する内径65mmのペレット循環配管101、タンク10下部近傍の循環配管101に設けられた圧力空気導入管103、ペレット循環配管101のタンク10上部の開口部から20cm手前に設けられたイオン発生器40、及びタンク10の上部に開口するペレット供給管102からなるものである。
【0025】
(2)ペレット除電方法:
イオン発生器として、株式会社キーエンス製、SJ−M020(1本の電極針を有するパルスAC方式のスポットタイプ)を用い、出力電圧5.5kv、パルス周期33Hzで、プラスイオンとマイナスイオンを周期的に交互に発生させ、このイオンをペレット循環配管101内を移動するペレットに供給、接触させて除電した。
【0026】
(3)ペレット帯電量の測定方法:
株式会社キーエンス製、高精度静電気センサSK−030を用いた。表面電位センサに電圧を階段状に変化させながら印加し、対象物との電位差が0になるポイントを算出するV.S.S.方式で測定しており、測定距離に影響を受けず、精度が高い。
【0027】
(4)ペレット中の微粉量の測定方法:
ペレット取出管30より抜き出した除電後のペレット200gをスクリーン式自動振動ふるい機にかけ、ペレットと微粉を分離し、微粉が除去されたペレットと分離された微粉の重さをそれぞれ測定した。得られた両者の重さから、除電後のペレットの微粉付着量を求めた。また、除電前のペレットに関しては、除電前の微粉の付着したペレットの重さと、上記方法で算出した除電後の微粉の除去されたペレットの重さを差し引いた値を微粉重さとし、微粉付着量を求めた。
【0028】
実施例1
ポリカーボネート樹脂69重量部、ガラス繊維30重量部、及び添加剤(安定剤、離型剤及び着色剤)1重量部から成る樹脂組成物を、押出機中で260〜320℃の温度で混練して複合化し、押出機先端のダイからストランド状に押し出し、切断してペレット化した。ガラス繊維は、押出機の途中からサイドフィードした。得られたペレットは、3mm及び1.5mmのパンチングメタルを備えたペレット選別器により、規格外の形や大きさのペレットと切り粉や破砕片等の微粉を除去し、ペレット長さ3.0±0.4mm、ペレット径2.9±0.4mmのペレットとした。次いで、このペレットを2〜3mmのパンチングメタルを備えた振動ふるいにより、さらに微粉を除去後、金属除去器を通して金属成分を除去し、空気圧送によりペレット供給管102からタンク10に搬送した。ペレット供給量は330kg/時間で、タンク10内のペレット量は常時550kgとなるように調整した。
【0029】
上記(1)に示した微粉除去装置を使用し、5.5m/分の速度で圧力空気導入管103から循環配管101に空気を導入し、ペレットを16.7kg/分で循環させた。循環するペレットに、上記(2)に示した条件で、イオン発生器40から発生するイオンを接触させ、中和除電した。ペレット供給管102からタンク10中へ搬送される除電前のペレットと、ペレット取出管30から取り出された除電後のペレットの帯電量を測定すると、除電前のペレットは11kvであったのに対し、除電後のペレットの帯電量は3kvであった。また、ペレット供給管102から供給されるタンク10入り口での除電前のペレットの微粉付着量は0.0875重量%であった。ペレット取出管30から取り出された除電後のペレットの微粉付着量は0.0202重量%であり、微粉の77重量%が除去されたことがわかった。
【0030】
比較例1
実施例1において、イオン発生器40を設置しない以外は、実施例1と同様に行った。ペレット供給管102からタンク10中へ供給されるペレットの帯電量は11kvであり、ペレット取出管30から取出されたペレットの帯電量も11kvであった。また、供給されるペレットの微粉付着量は0.0875重量%であり、ペレット取出管30から取り出されたペレットの微粉付着量は0.0692重量%であり、空気循環のみではペレット付着微粉の21重量%しか除去されないことがわかった。
【0031】
実施例2
ポリカーボネート樹脂99重量部、及び添加剤(安定剤、離型剤及び着色剤)1重量部から成る樹脂組成物を実施例1と同様の方法でペレット長さ3.0±0.4mm、ペレット径2.9±0.4mmのペレットを製造し、このペレットを実施例1と同様の方法で微粉を除去した。ペレット供給管102からタンク10中へ供給される除電前のペレットの帯電量は9kvであり、ペレット取出管30から取り出された除電後のペレットの帯電量は3kvであった。また、タンク10へペレット供給管102から供給されるペレットの微粉付着量は0.0176重量%であり、ペレット取出管30から取り出されたペレットの微粉付着量は0.0033重量%であり、微粉の81重量%が除去されたことがわかった。
【0032】
比較例2
実施例2において、イオン発生器40を設置しない以外は、実施例2と同様に行った。ペレット供給管102からタンク10中へ供給されるペレットの帯電量は9kvであり、ペレット取出管30から取り出されたペレットの帯電量も9kvであった。また、供給されるペレットの微粉付着量は0.022重量%であり、ペレット取出管30から取り出されたペレットの微粉付着量は0.019重量%であり、空気循環のみではペレット付着微粉の14重量%しか除去されないことがわかった。
【0033】
実施例3
実施例1において、イオン発生器40からのイオン供給場所を、ペレット循環配管101のタンク10上部の開口部から230cm手前に設けた以外は、実施例1と同様に行った。ペレット供給管102からタンク10中へ供給されるペレットの帯電量は10.5kvであり、ペレット取出管30から取り出された除電後のペレットの帯電量は5kvであった。また、供給されるペレットの微粉付着量は0.0809重量%であり、ペレット取出管30から取り出された除電後のペレットの微粉付着量は0.0376重量%であり、微粉の54重量%が除去されたことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明における微粉除去装置の概略図。
【符号の説明】
【0035】
10:タンク
20:排気管
30:ペレット取出管
40:イオン発生器
101:ペレット循環配管
102:ペレット供給管
103:圧力空気導入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内に収容された合成樹脂ペレットを、タンクの下部近傍から抜き出してタンク上部近傍でタンクに戻すようにペレット循環配管を経て空気流により移動させ、移動中の合成樹脂ペレットにイオン発生器で発生させたイオンを接触させて、合成樹脂ペレットに帯電付着している微粉を合成樹脂ペレットから離脱させ、合成樹脂ペレットから離脱してタンク内で浮遊している微粉をタンク上方近傍に設けた排気口から空気に同伴させてタンク外に導くことを特徴とする、微粉の少ない合成樹脂ペレットの製造方法。
【請求項2】
押出機から溶融状態で押出された合成樹脂を、冷却、固化させて合成樹脂ペレットとし、これをタンクに供給し、該タンクから微粉の除去された合成樹脂ペレットを取り出す一連の操作を連続的に行う微粉の少ない合成樹脂ペレットの製造方法であって、該タンクに収容されている合成樹脂ペレットを、タンクの下部近傍から抜き出してタンク上部近傍でタンクに戻すようにペレット循環配管を経て空気流により移動させ、移動中の合成樹脂ペレットにイオン発生器で発生させたイオンを接触させて、合成樹脂ペレットに帯電付着している微粉を合成樹脂ペレットから離脱させ、合成樹脂ペレットから離脱してタンク内で浮遊している微粉をタンク上部近傍に設けた排気口から空気に同伴させてタンク外に導くことを特徴とする、微粉の少ない合成樹脂ペレットの製造方法。
【請求項3】
ペレット循環配管には、タンク下部近傍との接続部の近くに圧力空気導入管が取り付けられており、この圧力空気導入管から供給されてペレット循環配管内を上方に流れる圧力空気により、合成樹脂ペレットをペレット循環配管内を移動させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の微粉の少ない合成樹脂ペレットの製造方法。
【請求項4】
ペレット循環配管が、タンク下部近傍との接続部から斜め下方に伸びる下部配管と、下部配管の下端から上方に伸びてタンク上部近傍に接続する上部配管とから成っており、圧力空気導入管が上部配管の下端部に取り付けられていることを特徴とする、請求項3に記載の微粉の少ない合成樹脂ペレットの製造方法。
【請求項5】
イオン発生器で発生させたイオンと移動している合成樹脂ペレットとが接触してから0.5秒以内にペレットがタンクに放出されるように、イオン発生器がペレット循環配管に設置されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の微粉の少ない合成樹脂ペレットの製造方法。
【請求項6】
イオン発生器が、電極針とこれに印加する電源とを有していて、電極針からプラスイオンとマイナスイオンとが周期的に交互に発生するパルスAC方式のスポットタイプであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の微粉の少ない合成樹脂ペレットの製造方法。
【請求項7】
合成樹脂ペレットがガラス繊維または炭素繊維を含有していることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の微粉の少ない合成樹脂ペレットの製造方法。
【請求項8】
合成樹脂ペレットを収容するタンク、タンクに合成樹脂ペレットを供給する供給口、タンク上部近傍に設けられた排気管、タンク下部近傍に設けられた合成樹脂ペレット取出管、タンク下部近傍とタンク上部近傍とを連結するペレット循環配管、ペレット循環配管に接続された圧力空気導入管及びペレット循環配管に設けられたイオン発生器とからなることを特徴とする、合成樹脂ペレットの微粉除去装置。
【請求項9】
イオン発生器は、タンク上部近傍のペレット循環配管の出口から20〜50cmの位置に設けられていることを特徴とする、請求項8に記載の合成樹脂ペレットの微粉除去装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−279773(P2009−279773A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131497(P2008−131497)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】