説明

微粒子の明度識別方法

【課題】性状に大きな分布を有する微粒子群を測定対象とした場合に、微粒子群中の個々の粒子の各種特性特に、粒子の明度を簡易かつ確実に識別することが可能な明度識別方法を提供する。
【解決手段】不透明な微粒子の明度を識別する明度識別方法において、複数の微粒子からなる識別対象微粒子群からの透過光を撮像した画像と、識別対象微粒子群中の各粒子の位置関係及び撮像範囲を透過光の撮像の場合と同様に設定して微粒子からの反射光のうちで特定波長領域内の反射光のみを撮像した画像と、を所定の方法で対応付けることで、識別対象微粒子群中の各粒子の明度を識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不透明な微粒子の明度を識別する微粒子の明度識別方法および明度識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種検体粒子の形状、寸法、品質等を評価する方法として、当該検体粒子を撮像装置により撮像して得られた画像に画像処理を施すことにより、検体粒子の形状、寸法、明度等を測定する方法(粒子画像処理計測)が広く採用されている。
【0003】
このような粒子画像処理計測においては、同一の測定対象の微粒子群のサンプルを異なる撮像条件で撮像して得られた画像を用いて、個々のサンプルの特性(例えば、粒子の明度)を識別することが頻繁に行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、測定対象の微粒子群の下方から照明を照射し、微粒子群を透過した透過光を用いて撮像された画像を画像処理して得られた粒子画像(透過光画像)を得るとともに、測定対象の微粒子群の上方から照明を照射し、微粒子群で反射した反射光を用いて撮像された画像を画像処理して得られた粒子画像(反射光画像)を得た後に、透過光画像中の粒子画像と反射光画像中の粒子画像を対応付けることで、粒子に関する情報を個々の粒子について統合し、個々の粒子の品質を判定する(粒子の欠けの有無や色味が判定基準)方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−180369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、測定対象の粒子が大きく、かつ、その数も少なく、さらには、各粒子間の性状の均一性も高いので、透過光画像と反射光画像との間での粒子の対応はほぼ自明である。これは、透過光画像と反射光画像のいずれかの画像のみで欠損する粒子はほとんど発生しないので、一方の画像での特定の粒子の位置に対応するもう一方の画像上には、ほぼ常に対応する粒子が1つだけ存在する状態となる。
【0007】
これに対して、各粒子間の性状の分布の大きな微粒子に対する粒子画像処理計測では、通常は、透過光画像と反射光画像との間で、対応する粒子が存在しなかったり、1つの粒子に複数の粒子が対応付けられたりすることが頻繁に発生し、2つの画像間の粒子が1対1に対応する状況は、例外的にしか生じない。これは、通常の微粒子では、各画像における1つの粒子内の明度の変動が激しいことや、1つの粒子に対応する画素数が少ないので、誤差の影響が大きくなるためである。このため、透過光画像と反射光画像との間で、それぞれの画像における粒子を対応付けるための工夫が必要となり、このような工夫がなければ、個々のサンプルの特性(例えば、粒子の明度)を識別することはできない、という問題があった。
【0008】
また、このような透過光画像と反射光画像との間での粒子の対応付けの簡易な方法は、これまで提案されていなかった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、性状に大きな分布を有する微粒子群を測定対象とした場合に、微粒子群中の個々の粒子の各種特性特に、粒子の明度を簡易かつ確実に識別することが可能な明度識別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、測定対象を不透明な微粒子群に限定し、透過光を用いて微粒子群を撮像した透過光画像と、反射光を用いて微粒子群を撮像した反射光画像とに基づき、透過光画像中に存在する透過光粒子と反射光画像中に存在する反射光粒子とを対応付ける新たな手法を提案することにより、測定対象の微粒子群が性状に大きな分布を有する場合であっても、粒子の明度を簡易かつ確実に識別できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明によれば、不透明な微粒子の明度を識別する明度識別方法であって、複数の前記微粒子からなる識別対象微粒子群からの透過光を撮像してモノクロ画像B0を得た後、前記画像B0を第1の明度しきい値を用いて二値化した画像B1を生成する第1の工程と、前記識別対象微粒子群中の各粒子の位置関係及び撮像範囲を前記第1の工程と同様に設定し、かつ、前記撮像範囲内の背景の明度を、粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも低い明度となるように設定する条件で、前記微粒子からの反射光のうちで特定波長領域内の反射光のみを撮像してモノクロ画像F0を得た後、前記画像F0を第2の明度しきい値を用いて二値化した画像の明暗を反転させる明度反転処理を行って画像F1を生成する第2の工程と、前記画像F1において連続して位置する暗色の画素群のうち、明色の画素との境界に位置する暗色の画素の一部または全部を明色化する縮退処理を行って得られた画像に、前記明度反転処理を行って画像F2を生成する第3の工程と、前記画像B1と前記画像F2とに対して論理和演算を行うことにより、前記画像B1中に存在する1または2以上の暗色の画素群の一部または全部に、明色の画素群による刻印が施された画像F3を生成する第4の工程と、前記刻印が施された前記暗色の画素群に含まれる画素の全てを明色化して得られた画像に、前記明度反転処理を行って画像F4を生成した後に、前記画像B1と前記画像F4とに対して論理和演算を行って画像F5を生成し、前記画像F5中において連続して位置する暗色の画素群を、前記粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも高い明度を有する微粒子である明色粒子として識別する第5の工程と、前記画像F5に前記明度反転処理を行って得られた画像F6を生成した後に、前記画像B1と前記画像F6とに対して論理和演算を行って画像F7を生成し、前記画像F7中において連続して位置する暗色の画素群を、前記粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも低い明度を有する微粒子である暗色粒子として識別する第6の工程と、を含む明度識別方法が提供される。
【0012】
ここで、前記明度識別方法において、前記第5の工程では、前記画像F3中の前記暗色の画素群のうち、暗色の画素に囲まれた閉領域内に所定数以上の明色の画素を含む画素群、または、前記暗色の画素群の外周を連結して得られる閉曲線の形状特性値と円形の形状特性値との差が所定量以上である画素群を、前記刻印が施された前記暗色の画素群と判定するようにしてもよい。
【0013】
また、前記明度識別方法において、前記第2の工程で、前記特定波長領域を異なるn種(nは2以上)の範囲に設定してn個のモノクロ画像F0(1)〜F0(n)を撮像した後、前記画像F0(1)〜F0(n)をそれぞれ、第2の明度しきい値を用いて二値化した画像の明暗を反転させる明度反転処理を行って画像F1(1)〜F1(n)を生成し、前記第3の工程で、前記画像F1(1)〜F1(n)のそれぞれにおいて、連続して位置する暗色の画素群のうち、明色の画素との境界に位置する暗色の画素の一部または全部を明色化する縮退処理を行って得られた画像に、前記明度反転処理を行って画像F2(1)〜F2(n)を生成し、前記第4の工程で、前記画像F2(1)〜F2(n)のそれぞれに対して、前記画像B1と論理和演算を行うことにより、前記画像B1中に存在する1または2以上の暗色の画素群の一部または全部に、明色の画素群による刻印が施された画像F3(1)〜F3(n)を生成し、前記第5の工程で、前記刻印が施された前記暗色の画素群に含まれる画素の全てを明色化して得られた画像に、前記明度反転処理を行って画像F4(1)〜F4(n)を生成した後に、前記画像F4(1)〜F4(n)のそれぞれに対して、前記画像B1と論理和演算を行って画像F5(1)〜F5(n)を生成し、前記画像F5(1)〜F5(n)のそれぞれにおいて連続して位置する暗色の画素群を、前記粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも高い明度を有する微粒子である明色粒子として識別するとともに、前記画像F5(1)〜F5(n)のいずれかで明色粒子と識別された暗色の画素群に対応する前記微粒子の色を、当該微粒子について明色粒子と識別された際の全ての前記特定波長領域内の反射光のスペクトルを合成したスペクトルに対応する色相と判断し、前記第6の工程で、前記画像F5(1)〜F5(n)のいずれにおいても明色粒子として識別されなかった前記画像B1中の暗色の画素群に対応する前記微粒子の色を、黒色と判断してもよい。
【0014】
また、本発明によれば、不透明な微粒子の明度を識別する明度識別方法であって、複数の前記微粒子からなる識別対象微粒子群からの透過光を撮像してモノクロ画像B0を得た後、前記画像B0を第1の明度しきい値を用いて二値化した画像B1を生成する第1の工程と、前記識別対象微粒子群中の各粒子の位置関係及び撮像範囲を前記第1の工程と同様に設定し、かつ、前記撮像範囲内の背景の明度を、粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも高い明度となるように設定する条件で、前記微粒子からの反射光のうちで特定波長領域内の反射光のみを撮像してモノクロ画像D0を得た後、前記画像D0を第3の明度しきい値を用いて二値化した画像D1を生成する第2の工程と、前記画像D1において連続して位置する暗色の画素群のうち、明色の画素との境界に位置する暗色の画素の一部または全部を明色化する縮退処理を行って得られた画像に、当該画像の明暗を反転させる明度反転処理を行って画像D2を生成する第3の工程と、前記画像B1と前記画像D2とに対して論理和演算を行うことにより、前記画像B1中に存在する1または2以上の暗色の画素群の一部または全部に、明色の画素群による刻印が施された画像D3を生成する第4の工程と、前記刻印が施された前記暗色の画素群に含まれる画素の全てを明色化して得られた画像に、前記明度反転処理を行って画像D4を生成した後に、前記画像B1と前記画像D4とに対して論理和演算を行って画像D5を生成し、前記画像D5中において連続して位置する暗色の画素群を、前記粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも低い明度を有する微粒子である暗色粒子として識別する第5の工程と、前記画像D5に前記明度反転処理を行って得られた画像D6を生成した後に、前記画像B1と前記画像D6とに対して論理和演算を行って画像D7を生成し、前記画像D7中において連続して位置する暗色の画素群を、前記粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも高い明度を有する微粒子である明色粒子として識別する第6の工程と、を含む明度識別方法が提供される。
【0015】
ここで、前記明度識別方法において、前記第5の工程では、前記画像D3中の前記暗色の画素群のうち、暗色の画素に囲まれた閉領域内に所定数以上の明色の画素を含む画素群、または、前記暗色の画素群の外周を連結して得られる閉曲線の形状特性値と円形の形状特性値との差が所定量以上である画素群を、前記刻印が施された前記暗色の画素群と判定するようにしてもよい。
【0016】
また、本発明によれば、上述した明度識別方法により前記画像F5を生成して前記明色粒子を識別するとともに、上述した明度識別方法により前記画像D5を生成して前記暗色粒子を識別する第1の工程と、前記画像F5と前記画像D5とに対して論理積演算を行って画像E0を生成した後に、前記画像E0の明暗を反転させる明度反転処理を行って画像E1を生成する第2の工程と、前記第1の工程で生成された前記画像B1と前記画像E1とに対して論理和演算を行って画像E2を生成する第3の工程と、前記画像E2中において連続して位置する暗色の画素群を、前記明色粒子と前記暗色粒子との中間の明度を有する微粒子である中間色粒子として識別する第4の工程と、を含む明度識別方法が提供される。
【0017】
また、前記明度識別方法において、前記微粒子は、例えば、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る明度識別方法によれば、透過光を用いて不透明な微粒子群を撮像した透過光画像と、反射光を用いて不透明な微粒子群を撮像した反射光画像とに基づき、透過光画像中に存在する透過光粒子と反射光画像中に存在する反射光粒子とを所定の方法により対応付けることにより、性状に大きな分布を有する微粒子群を測定対象とした場合に、微粒子群中の個々の粒子の各種特性特に、粒子の明度を簡易かつ確実に識別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵の各煤塵種における着磁性と明度との概略的な関係を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る明度識別装置の構成を模式的に示す説明図である。
【図3】同実施形態に係る画像処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【図4】同実施形態に係る明度識別方法における処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】同実施形態に係る明度識別方法の各処理における処理画像を示す説明図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る画像処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【図7】同実施形態に係る明度識別方法における処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】同実施形態に係る明度識別方法の各処理における処理画像を示す説明図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る明度識別方法における処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】同実施形態に係る明度識別方法の各処理における処理画像を示す説明図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る明度識別方法における処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】同実施形態に係る明度識別方法の各処理における処理画像を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
[本発明の概要および優位性]
本発明は、各種の産業で生成する微粒子の分析装置および分析方法に関するものである。具体的には、本発明は、不透明な微粒子が散布された透明な基板が載置されるステージと、基板に載置された微粒子を撮像する撮像装置と、ステージの下方からステージに向けて所定輝度の光を照射する透過光用照明装置と、ステージの上方からステージに向けて所定輝度の光を照射する反射光用照明装置と、を有し、微粒子の明度を識別する明度識別装置、及び、この明度識別装置を利用して微粒子の明度を識別する明度識別方法である。このような本発明の好適な実施の形態について説明する前に、まず、本発明の基本となる技術思想や本発明の優位性について説明する。
【0022】
(分析の精度)
<測定対象>
本発明では、測定対象を不透明な微粒子(概ね(円相当)直径が10μm以上数百μm以下の粒子)に限定することにより、サンプルの作成や測定作業上避けることのできない汚染物質、すなわち、基板上の有色透明の汚れや、写界内だが検査面と離れた位置に存在する汚染粒子を、測定対象の粒子と誤認識する可能性を著しく低下させることができる。特に、微粒子の撮像時に存在する汚染粒子は、化学繊維屑のような半透明の物質が多いので、これらの汚染粒子についても画像処理を施すことにより、測定対象の微粒子の候補から除去することができる。このようなことが可能となるのは、汚染物質は、透明や半透明の物質が多いことから、本発明では、測定対象を不透明な微粒子に限定し、さらに、透過光照明装置によるステージ下方からの照明(透過光)のみで撮像したときに撮像画像中で粒子(透過光粒子)として認識されるのは不透明な粒子のみであり、この粒子を測定対象の真の微粒子と判断できるためである。一方、透明または不透明の汚染物質は、透過光のみで撮像した場合には、汚染物質の撮像画像の明度が背景の明度と同一となり、粒子として認識することはできない。
【0023】
<透過光粒子と反射光粒子との対応付け>
また、本発明では、透過光のみを用いて撮像した画像中で認識される粒子(透過光粒子)と、所定輝度の透過光の他にステージ上方からの照明(反射光)も用いて撮像した画像中で認識される粒子(反射光粒子)とを対応付けるロジックを規定している。従って、測定対象が、大きさや明度等に大きな分布を有する微粒子であっても、透過光粒子から得られる情報(主に、微粒子の形状や寸法等の情報)と、反射光粒子から得られる情報(主に、微粒子の明度の情報)とを組み合わせて、測定対象の微粒子の総合的な特性情報を算出することが可能となる。
【0024】
このような透過光粒子と反射光粒子との対応付けの具体例としては、以下のようなものが挙げられる。
【0025】
第1に、透過光粒子としては認識されず、反射光粒子としてのみ認識されるものについては、透明または半透明の物質であると考えられることから、上述したように、汚染物質等として、測定対象の微粒子の候補から除外する。
【0026】
第2に、複数の反射光粒子に対して1つの透過光粒子が対応付けられる場合には、実際の微粒子の数は1つであり、1つの反射光粒子を除いた残りの反射光粒子は、ハイライト等であると考えられることから、透過光粒子と最も適合性の高い(詳細は後述する。)反射光粒子の代表明度を、測定対象の微粒子の明度として算出する。
【0027】
第3に、1つの反射光粒子に対して複数の透過光粒子が対応付けられる場合には、実際の微粒子の数は透過光粒子の数と同数であり、全ての微粒子の位置が近く、明度が同程度であることから、反射光粒子としては1つの粒子として認識されているものと考えられる。従って、1つの反射光粒子の代表明度を、全ての透過光粒子に対応する微粒子の明度として算出する。
【0028】
第4に、反射光粒子としては認識されず、透過光粒子としてのみ認識されるものについては、不透明の物質であると考えられることから、測定対象の微粒子であると判断する。また、反射光粒子として認識されないということは、反射光を用いて撮像した画像中の背景と同程度の明度であったと考えられることから、測定対象の微粒子の明度は所定明度(背景の明度と同程度の明度)であるとして、当該微粒子の明度を算出する。
【0029】
以上のように、測定対象の微粒子を透過光のみを用いて撮像した画像(透過光画像)を処理することにより、当該微粒子の形状や寸法等に関する情報を得るとともに、測定対象の微粒子を透過光とともに反射光を用いて撮像した画像(反射光画像)を処理することにより、当該微粒子の明度に関する情報を得ることができる。また、本発明に係る明度識別方法および明度識別装置では、透過光粒子と反射光粒子との対応付けのロジックを規定していることから、透過光画像と反射光画像を用いて画像処理を行うことにより、測定対象の微粒子の総合的な特性情報を算出することができるので、分析(測定)の精度を向上させることができる。
【0030】
(対応付けの具体的な手法について)
上記のような透過光粒子と反射光粒子との対応付けの手法としては、例えば、透過光画像と反射光画像のそれぞれで粒子のラベリングを行って、個々の粒子(透過光粒子と反射光粒子)の位置と粒子の形状を認識し、認識された透過光粒子と反射光粒子との間で、1粒子ずつ、対応付けされるか否かの妥当性を吟味して(例えば、透過光粒子と反射光粒子との間で粒子の中心位置間の距離や各粒子の大きさの差の大小等を評価して)、各粒子を個別に対応付けるという方法が考えられる。
【0031】
この対応付けの手法は、透過光粒子と反射光粒子とを確実に対応付けることができる方法であるが、対応付けの際の処理(計算)手順が複雑で任意性も高い。
【0032】
そこで、本発明者は、簡便かつ自動的に対応付けを実施するために、同一の測定対象の微粒子群のサンプルを異なる撮像条件で撮像して得られた画像群を用いて、個々のサンプルの特性を容易に識別できる手法を検討し、本発明に想到した。
【0033】
具体的には、本発明では、測定対象の微粒子群からの透過光を利用して撮像した透過光画像と、当該微粒子群からの反射光を利用して撮像した反射光画像とを用いて、単純な演算、例えば、二値化処理、論理演算等のみを組み合わせることによって上記の対応づけを実現する。従って、本発明によれば、複数の画像間で同一粒子の対応づけを行う際に、個々の画像において個別粒子位置を算出して画像間でこれらを照合するといった複雑な処理が不要になる。
【0034】
一般に、粒子画像処理計測で行われる全演算中で、透過光画像や反射光画像中に存在する粒子の位置や大きさ等の算出、及び、その結果に基づいて行われる各画像間での粒子の照合処理(例えば、透過光画像中の透過光粒子と反射光画像中の反射光粒子との照合処理)で、最も処理の負荷が高くなる。これに対して、本発明では、明色または暗色に識別された粒子のみの画像を得てから、得られた画像に対して、粒子の位置・大きさ等を算出する処理を1回ずつ(明色粒子、暗色粒子(場合によっては、中間色粒子)のそれぞれに対して1回ずつ)実施すればよく、各画像間の粒子位置の照合処理も不要であるので、処理(計算)の効率が高く、分析の生産性も高い。
【0035】
(製鉄プラント由来の降下煤塵の煤塵種の特定への適用)
また、本発明に係る明度識別方法および明度識別装置は、特に、高炉法に基づく製鉄プラントで発生する降下煤塵の煤塵種を特定する際に有用である。高炉法に基づく製鉄プラントで発生する降下煤塵は、製鉄プラント構内に乗り入れる車両を汚損する等の問題を引き起こすが、このような降下煤塵の煤塵種を特定することができれば、降下煤塵の発生源を特定することができ、降下煤塵の発生を抑制する対策を講じることが可能となる。
【0036】
ここで、図1を参照しながら、本発明を製鉄プラント由来の降下煤塵の煤塵種の特定に適用した場合の利点について説明する。図1は、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵の各煤塵種における着磁性と明度との概略的な関係を示す説明図である。
【0037】
一般に、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵は、主に、石炭やコークス等を含む石炭系煤塵、鉄鉱石、焼結鉱、酸化鉄粉等を含む鉄系煤塵、高炉水砕スラグ、高炉徐冷スラグ等を含む高炉スラグ系煤塵、及び、転炉スラグ、溶銑予備処理スラグ等を含む製鋼スラグ系煤塵の4種類の煤塵種に分類される。
【0038】
これら4種類の煤塵種のうち、通常は、高炉スラグ系煤塵や製鋼スラグ系煤塵は白色系の明度の高い粒子(明色粒子)であり、石炭系煤塵や鉄系煤塵は黒色系の明度の低い粒子(暗色粒子)であることから、低倍率の光学顕微鏡を用いて撮影した画像に画像処理を施し、個々の煤塵粒子の明度の高低を識別することにより、高炉スラグ系煤塵及び製鋼スラグ系煤塵とからなる煤塵種と、石炭系煤塵及び鉄系煤塵からなる煤塵種とに判別することができる。
【0039】
ただし、このような明色粒子と暗色粒子との分類のみでは、同程度の明度の粒子の判別、例えば、高炉スラグ系煤塵と製鋼スラグ系煤塵との判別をすることができない。すなわち、上記のように、単に撮影画像に画像処理を施して明度の高低のみによる分類では、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵の4種の煤塵種(ひいては降下煤塵の発生源)のうちのいずれか1種を特定することまではできない。
【0040】
そこで、本発明者は、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵(以降、「製鉄由来降下煤塵」と称する場合がある。)の煤塵種を特定するために、煤塵粒子の明度の高低のみではなく、着磁性の有無に着目した。その結果、本発明者は、明度の高低と着磁性の有無との組み合わせにより煤塵特性を規定することができ、この煤塵特性に基づいて、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵の煤塵種を特定できることを見出した。より詳細には、本発明者は、低倍率の光学顕微鏡撮影画像を単に画像処理しただけでは判別できない製鉄由来降下煤塵の煤塵種を、図1に示すように、明度の高低と着磁性の有無の組み合わせにより、石炭系煤塵、鉄系煤塵、高炉スラグ系煤塵及び製鋼スラグ系煤塵の4種類に判別することができることを見出した。
【0041】
なお、本発明における着磁性とは、対象とする煤塵粒子に所定の磁力を付与することにより、着磁する(磁性を有するようになり、磁石に吸着される)性質を意味し、本発明では、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵を、磁力の付与により着磁する着磁性降下煤塵と、磁力を付与しても着磁しない非着磁性降下煤塵とに分類し、さらに、この着磁性降下煤塵と非着磁性降下煤塵のそれぞれを、明度の高低により明色粒子と暗色粒子とに分類している。
【0042】
具体的には、石炭系煤塵は、明度が低く(暗色で)非着磁性の非着磁性暗色粒子、鉄系煤塵は、明度が低く(暗色で)着磁性の着磁性暗色粒子、高炉スラグ系煤塵は、明度が高く(明色で)非着磁性の非着磁性明色粒子、製鋼スラグ系煤塵は、明度が高く(明色で)着磁性の着磁性明色粒子、というように分類することができる。
【0043】
以上のように、本発明者によって見出された知見によれば、煤塵特性に応じて、製鉄由来降下煤塵の煤塵種を特定することが可能となるが、この際、明度の高低を識別する技術として、本発明に係る明度識別方法および明度識別装置を適用することができる。
【0044】
[第1の実施形態]
(明度識別装置)
以上、本発明の概要および先行技術に対する優位性について説明したが、続いて、図2を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る明度識別装置について詳細に説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る明度識別装置の構成を模式的に示す説明図である。
【0045】
図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る明度識別装置100は、不透明な微粒子の明度を識別し、さらには、当該微粒子の位置や大きさ等を測定可能な装置であって、撮影装置101と画像処理装置130とを主に備える。また、撮影装置101は、ステージ105と、撮像装置110と、反射光用照明装置121と、透過光用照明装置123と、照明制御装置125と、を主に備える。
【0046】
ここで、本実施形態では、撮影装置101を2台用意し、それぞれを、透過光画像の撮像用と反射光画像の撮像用に用いてもよい。この場合、透過光画像撮像用の撮影装置101には、反射光用照明装置121を設ける必要はなく、反射光画像撮像用の撮影装置101には、透過光用照明装置123を設ける必要はない。
【0047】
<ステージ105>
ステージ105は、明度の識別対象である不透明な微粒子Pが散布された透明な基板1が載置されるか、あるいは、明度の識別対象の微粒子Pが直接散布される透明な平板である。このステージ105の材質としては、透明で、ある程度剛性があれば特に限定はされないが、例えば、フロートガラス板や透明アクリル板等を使用することができる。また、粒子測定の操作時に、ステージ105が剛性を保持し、かつ、透明性を損なわないようにするという観点から、ステージ105の厚みは、1mm〜100mm程度であることが好ましい。
【0048】
なお、本実施形態では、反射光画像(後述する画像F0)の背景の明度としては、粒子の明暗を区別するための明度しきい値よりも低い明度(暗背景)を用いるので、透過光用照明装置123からの光を照射して背景の明度を調整しなくてもよい場合があり、この場合には、必ずしも透明なステージ105を設ける必要はない。また、同様の理由から、基板1も必ずしも透明でなくてもよい。
【0049】
<撮像装置110>
撮像装置110は、ステージ105の上方、すなわち、ステージ105に対して、基板1が載置される面(以下、「基板載置面」とも記載する。)側に設けられ、微粒子Pを撮像する。この撮像装置110は、例えば、透過光用照明装置123から微粒子Pに向けて照明を照射した際の微粒子Pからの透過光や、反射光用照明装置121から微粒子Pに向けて照明を照射した際の微粒子Pからの反射光を受光し、撮像画像として、透過光画像(後述する画像B0)及び反射光画像(後述する画像F0)を生成する。
【0050】
このような撮像装置110としては、CCD(Charge Coupled Device)式やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)式のディジタルカメラを使用することができる。また、各微粒子Pの明度(代表明度)は、各粒子画像の対応する個々のCCD素子のサイズ内で平均化されるので、カメラの画素数が多いことが微粒子Pの明度の測定精度上望ましい。具体的には、測定対象とする微粒子Pを少なくとも9画素以上(モノクロカメラ)で撮像できる密度の画素を有する撮像装置110を使用することが好ましい。微粒子Pの明度を正確に記録する観点からは、モノクロカメラであることが好ましい。撮像装置110として単板式カラーカメラ(通常、隣り合うCCD素子には異なるカラーフィルタが施されている。)を用いる場合には、少なくとも4画素分の明度を用いて補間された明度値(CCDがベイヤー配列の場合)を測定すべき明度として使用する等の測定精度上の処理が必要であることから、対象とする微粒子Pを少なくとも36画素以上で撮像できる密度の画素を有する撮像装置110を使用することが好ましい。また、対象とする粒子の撮像に必要な画素密度を確保するために、必要であれば顕微鏡等のレンズ119を介して粒子を拡大して撮像してもよい。なお、本実施形態に係る撮影装置101では、ディジタルカメラを用いた撮像が基本であるが、銀塩フィルム式カメラで得られたアナログ画像を市販のディジタイザ等を用いてディジタル化するなどしてもよい。
【0051】
また、本実施形態に係る撮像装置110は、内部構成として、撮像素子111と、透過光画像生成部113と、反射光画像生成部115とを有する。撮像素子111は、例えば、上述したCCDやCMOSである。
【0052】
透過光画像生成部113は、透過光用照明装置123の輝度を0ではない所定輝度とし、かつ、反射光照明装置121が設けられている場合には、反射光用照明装置121の輝度を0とするように、照明制御装置125により制御された状態で微粒子Pを撮像して得られる透過光画像(モノクロ画像B0)を生成する。
【0053】
反射光画像生成部115は、透過光用照明装置123が設けられている場合には、透過光用照明装置123の輝度を1または2以上の条件で設定された所定輝度とし、かつ、反射光用照明装置121の輝度を0ではない所定輝度とするように、照明制御装置125により制御された状態で微粒子Pを撮像して得られる反射光画像(モノクロ画像F0)を生成する。このとき、明度の識別対象の微粒子群中の各微粒子Pの位置関係および撮像範囲を、モノクロ画像B0の撮像の際と同様に設定する。
【0054】
上記のように、照明制御装置125により反射光用照明装置121および透過光用照明装置125を制御する際、透過光画像生成部113および反射光画像生成部115が、照明制御装置125に、所望の透過光用照明装置123および反射光用照明装置121の設定輝度を指示する信号を送信してもよいし、他の外部機器が照明制御装置125に設定輝度を指示する信号を送信してもよいし、照明装置125に設けられた入力デバイスをユーザが操作することにより、当該入力デバイスから設定輝度を指示する信号を伝送するようにしてもよい。
【0055】
特に、本実施形態では、反射光画像生成部115は、反射光画像上における反射光粒子の背景の明度が、粒子の明暗を区別するための明度しきい値よりも低い明度となるように、照明制御装置125により透過光用照明装置123の輝度が設定された状態、あるいは、透過光用照明装置123が無い状態で、反射光画像を生成する。
【0056】
「粒子の明暗を区別するための明度しきい値」は、例えば、以下のようにして算出することができる。まず、粒子の明度を「明(明度が高い)」と「暗(明度が低い)」とに識別したい測定対象の微粒子Pに対する境界反射率を備えた較正サンプル粒子を準備する。次に、反射光用照明装置121を所定輝度とし、かつ、透過光用照明装置123をOFF(消灯)とする条件で、あるいは、透過光用照明装置123がなく、反射光用照明装置121のみを備える撮影装置101を用いて、較正サンプル粒子を撮像して得られた画像を画像処理し、較正サンプル粒子に対応する画素領域に含まれる全画素の平均明度を算出する。このようにして算出した較正サンプル粒子の平均明度を、「粒子の明暗を区別するための明度しきい値」として用いることができる。
【0057】
上記粒子の明暗を区別するための明度しきい値を算出する際の境界反射率とは、この反射率(境界反射率)よりも高い反射率を有する粒子を明色と判断し、この反射率よりも低い反射率を有する粒子を暗色と判断するための反射率の境界値、すなわち、粒子の明度を明色と暗色とに区分する際の境界となる反射率のことを意味する。ここで、粒子表面における反射率は、照明条件によらない粒子固有の性質である。従って、境界反射率は、測定対象のサンプル(微粒子群)に含まれる微粒子Pの種類によって、適宜定めることができる。
【0058】
また、境界反射率を備えた粒子を準備できない場合には、明色粒子と判断するための基準となる明色較正粒子と、暗色粒子と判断するための基準となる暗色較正粒子とを準備し、それぞれの粒子を撮像して得られた画像を画像処理し、明色較正粒子の平均明度と暗色較正粒子の平均明度をそれぞれ求め、さらに、求められた両者の平均明度の平均値を、粒子の明暗を区別するための明度しきい値として用いてもよい。
【0059】
さらに、上記の較正サンプル粒子や、明色較正粒子・暗色較正粒子を準備する代わりに、境界反射率を備えた灰色の色見本紙を撮像して得られた画像を画像処理し、撮像画像二含まれる全画素の平均明度を算出し、算出された平均明度を、粒子の明暗を区別するための明度しきい値として用いてもよい。
【0060】
また、本実施形態に係る明度識別装置では、反射光画像(画像F0)を撮像する際に、微粒子Pからの反射光のうち、特定波長領域の反射光のみのスペクトルを撮像して画像F0を得る。このときの「特定波長領域の反射光のみのスペクトル」を得る方法としては、(1)上記特定波長領域の光のスペクトルを備えた反射光用照明装置121を使用する方法、(2)上記特定波長領域の光にのみ反応する撮像素子(CCD等)を備えた撮像装置110(カメラ)を使用する方法、および、(3)反射光用照明装置121として汎用の白色照明を使用し、この照明からの微粒子Pからの反射光の光路の途中(例えば、微粒子Pが散布された基板1(またはステージ105)と撮像素子111との間)に、上記特定波長領域の光のみを透過するフィルタを設ける方法などがある。
【0061】
また、本実施形態において望ましい「特定波長範囲」は、CCDやCMOS等の光電素子で検出可能なスペクトル範囲であり、例えば、紫外光、可視光、近赤外光、遠赤外光等を用いることができる。また、測定対象粒子での反射光の主波長範囲を予め把握している場合には、検出波長をこの範囲に設定することによって、画像データへの外乱を低減することができる。
【0062】
なお、撮像装置110は、生成した透過光画像および反射光画像のデータを、画像処理装置130に伝送する。また、撮影装置101が、所定の記憶装置(図示せず。)を備える場合には、撮像装置110は、生成した透過光画像(以下、「画像B0」と記載する場合もある。)および反射光画像(以下、「画像F0」と記載する場合もある。)のデータを記憶装置に記録してもよい。
【0063】
<反射光用照明装置121>
反射光用照明装置121は、ステージ105の上方、すなわち、ステージ105に対して、ステージ105の基板載置面側に設けられ、ステージ105に向けて所定輝度の光を照射する。この反射光用照明装置121としては、例えば、市販の顕微鏡用のリング状照明(ハロゲン電球)、LED照明、蛍光管等を用いることができる。また、適宜、拡散板、偏光フィルタ103等を透過して反射光用照明装置121から照明してよい。さらに、反射光用照明装置121を複数設け、ここの反射光用照明装置121を平面配列して、平面照明としてもよい。このような平面照明は、鏡面反射光による画像品質の劣化(ハイライト等)を避けるために有効である。なお、本実施形態に係る明度識別装置100では、粒子画像の明度測定を行うために、微粒子Pの撮像時の照明条件は、撮像面上で常に一定の照度となるように設定することが好ましい。
【0064】
なお、上述のように、撮影装置101を2台用意する場合には、透過光画像撮像用の撮影装置101には、反射光用照明装置121を設ける必要はない。
【0065】
<透過光用照明装置123>
透過光用照明装置123は、ステージ105の下方、すなわち、ステージ105に対して、ステージ105の基板載置面と反対側に設けられ、ステージ105に向けて所定輝度の光を照射する。この反射光用照明装置121としては、例えば、市販のハロゲン電球(単灯式、複数灯式のいずれも可)、LED照明、蛍光管等を用いることができる。また、適宜、拡散板、偏光フィルタ103等を透過して透過光用照明装置123から照明してよい。さらに、透過光用照明装置123を複数設け、ここの透過光用照明装置123を平面配列して、平面照明としてもよい。このような平面照明は、鏡面反射光による画像品質の劣化(ハイライト等)を避けるために有効である。なお、本実施形態に係る明度識別装置100では、粒子画像の明度測定を行うために、微粒子Pの撮像時の照明条件は、撮像面上で常に一定の照度となるように設定することが好ましい。
【0066】
なお、上述のように、撮影装置101を2台用意する場合には、反射光画像撮像用の撮影装置101には、透過光用照明装置123を設ける必要はない。
【0067】
<照明制御装置125>
照明制御装置125は、反射光用照明装置121の輝度と透過光用照明装置123の輝度とをそれぞれ独立に設定するように、反射光用照明装置121及び透過光用照明装置123を制御する。この照明制御装置125としては、市販のものを使用できる。具体的には、照明制御装置125として、例えば、外部信号によって、反射光用照明装置121及び透過光用照明装置123を独立にON/OFFできるものや、さらに、反射光用照明装置121及び透過光用照明装置123の輝度をそれぞれ独立に変更できるものを使用することができる。
【0068】
具体的には、照明制御装置125は、透過光用照明装置123から照射された光が微粒子Pを透過した透過光を用いて撮像される場合には、透過光用照明装置123の輝度を0ではない所定輝度とし、かつ、反射光用照明装置121の輝度を0とするように制御する。ここで、撮影装置101を2台用意する場合には、透過光画像撮像用の撮影装置101には反射光用照明装置121は設けられていないため、透過光画像撮像用の撮影装置101に設けられる照明制御装置125は、透過光用照明装置123のみを制御できるものであればよい。
【0069】
また、照明制御装置125は、反射光用照明装置121から照射された光が微粒子Pの表面に反射した反射光を用いて撮像される場合には、透過光用照明装置123の輝度を1または2以上の条件で設定された所定輝度とし、かつ、反射光用照明装置121の輝度を0ではない所定輝度とするように制御する。ここで、撮影装置101を2台用意する場合には、反射光画像撮像用の撮影装置101には透過光用照明装置123は設けられていないため、反射光画像撮像用の撮影装置101に設けられる照明制御装置125は、反射光用照明装置121のみを制御できるものであればよい。
【0070】
以上のように、本実施形態に係る照明制御装置125は、撮影装置101が2台用意される場合には、反射光用照明装置121と透過光用照明装置125のいずれか一方の身を制御できるものであればよいが、反射光用照明装置121と透過光用照明装置123の双方を備える1台の撮影装置101により、透過光画像と反射光画像の両方を撮像する場合には、照明制御装置125は、反射光用照明装置121と透過光用照明装置123の双方を制御できる必要がある。この場合、後述するように、測定対象の微粒子群を2台の撮影装置101間で移動させる必要がないので、樹脂等により測定対象の微粒子群の位置を固定する必要がなくなる。
【0071】
<画像処理装置130>
次に、図3を参照しながら、本実施形態に係る画像処理装置130の詳細な構成について説明する。図3は、本実施形態に係る画像処理装置130の機能構成を示すブロック図である。
【0072】
画像処理装置130は、透過光を用いて不透明な微粒子群を撮像した透過光画像と、反射光を用いて不透明な微粒子群を撮像した反射光画像とに基づき、透過光画像中に存在する透過光粒子と反射光画像中に存在する反射光粒子とを所定の方法により対応付けることにより、明色粒子と暗色粒子とを識別する。
【0073】
具体的には、図3に示すように、二値化処理部131と、刻印処理部133と、明色粒子識別部135と、暗色粒子識別部137と、粒子情報算出部139と、を主に有する。
【0074】
〔二値化処理部131〕
二値化処理部131は、透過光画像生成部113により生成されたモノクロ画像B0を第1のしきい値を用いて二値化した画像B1を生成する。このときの第1のしきい値としては、透過光照明装置123による照明時に透明な粒子を透過する光の明度に相当する明度しきい値よりも低い明度のしきい値を用いる。「透過光照明装置123による照明時に透明な粒子を透過する光の明度に相当する明度しきい値」としては、例えば、予め透明または半透明の粒子(ガラス微粒子など)を撮像して得られた粒子画像を処理することにより求められた個々の粒子の代表明度のうち、最も低い明度とすればよい。このようにして決定された明度しきい値は、不透明な粒子の透過光画像上での粒子として識別される画素領域の代表明度よりも高い明度となる。
【0075】
なお、「代表明度」とは、粒子として識別される画素領域全体を代表する明度のことであり、「代表明度」としては、例えば、当該画素領域中の各画素の明度の平均値、各画素の明度の中央値等を用いることができる。また、上記画素領域中に存在する画素の明度の異常値を除去することを目的として、最大明度の画素と最低明度の画素を除いた各画素の明度の平均値を「代表明度」として用いてもよい。さらに、粒子として識別される画素領域の周縁部では、ハイライト等により一般に明度が急変することが多いので、このような画素を除外して、このようなハイライト等の影響を取り除くことを目的として、周縁部の画素を除いた各画素の明度の平均値を「代表明度」として用いてもよい。
【0076】
また、第1のしきい値の設定方法は、上記のような方法には限られず、透過光を用いた撮像画像中で、不透明な粒子を認識可能な方法であれば、どのような方法であってもよい。
【0077】
さらに、撮像装置110の視野内の全域で完全に均一な照度を得ることは実際には困難であることから、二値化の前に、記録された画素の明度に、画素の二次元位置の関数である補正値を増減して、画像内での照度のバラツキを補正してもよい。この場合の補正値算出方法としては、例えば、予め散乱光反射率値が知られている灰色のテストピースを本実施形態で使用する撮像装置110で撮影しておき、このとき記録された画像での全画素の平均明度値から各画素の明度を減じたものを、各画素での明度補正値として用いることができる。補正値が画素のダイナミックレンジに比べて十分小さければ、この補正方法での誤差は小さくなる。また、この補正値が小さくなるように、撮影面上での照度をできる限り均一にすることが望ましい。
【0078】
以上のようにして得られた画像B1は、高明度(白色の領域として図示)の画素と低明度(斜線の領域として図示)の画素とからなり、この画像B1中では、粒子が存在している領域が低明度の画素として認識される。従って、画像B1中における隣り合う画素の二値化明度の接続関係から、同一の二値化明度の画素(本実施形態では、低明度の画素)が連続し、かつ、他の領域(本実施形態では高明度の画素が存在する領域)と独立した領域が微粒子Pが存在する領域、すなわち、透過光粒子P1p、P2p、P3p、P4pが存在する領域)として特定される。
【0079】
また、二値化処理部131は、反射光画像生成部115により生成されたモノクロ画像F0を第2のしきい値を用いて二値化した画像F1’を生成する。このときの第2のしきい値としては、例えば、上述した「粒子の明暗を区別するための明度しきい値」を用いることができる。また、二値化の前に、画像内での照度のバラツキを補正してもよい点については、画像B0の二値化の場合と同様である。さらに、二値化処理部131は、得られた画像F1’における高明度の画素と低明度の画素の明暗を反転させる明度反転処理を行って画像F1を生成する。この明度反転処理は、所謂論理否定演算を行うものであり、高明度の画素を真(1)、低明度の画素を偽(0)としたときに、二値化された画像F1’中の高明度の画素(1)を低明度の画素(0)に変換し、低明度の画素(0)を高明度の画素(1)に変換する処理である。
【0080】
〔刻印処理部133〕
刻印処理部133は、まず、二値化処理部131により生成された画像F1において連続して位置する暗色の画素群のうち、明色の画素との境界に位置する暗色の画素の一部または全部を明色化する縮退処理を行って画像F2’を生成する。ここで、「明色の画素との境界に位置する暗色の画素の一部または全部を明色化する」とは、当該暗色(低明度)の画素の一部または全部に対して、上述した明度反転処理を施して明色(高明度)の画素に変換することを意味する。また、本実施形態に係る縮退処理とは、幾何学的な形状を大きく変更しないように、暗色の画素群(暗色のパターン領域)を縮小する処理のことであり、明色化する暗色の画素の選択は、暗色の画素群の幾何学的な形状を大きく変更しないように行われる。例えば、同一粒子として認識された画素群において、外周部の画素を一列分、明色化すればよい。
【0081】
また、刻印処理部133は、上記のようにして得られた画像F2’に対して、上述した明度反転処理を行って画像F2を生成する。
【0082】
さらに、刻印処理部133は、二値化処理部131により生成された画像B1と、上記のようにして生成された画像F2とに対して、論理和演算を行うことにより、画像B1中に存在する1または2以上の暗色の画素群の一部または全部に、明色の画素群による刻印が施された画像F3を生成する。このときの論理和演算では、高明度の画素を真(1)、低明度の画素を偽(0)として、画像B1中の画素の明度と画像F2中の画素の明度とが論理和される。従って、画像B1と画像F2の双方で高明度(1)である画素の場合、および、画像B1と画像F2のいずれか一方で高明度(1)、かつ、他方で低明度(0)である画素の場合には、画像F3中では高明度(1)の画素となり(「真」同士の論理和および「真」と「偽」の論理和は「真」となる。)、画像B1と画像F2の双方で低明度(0)である画素の場合にのみ、画像F3中では低明度(0)の画素となる(「偽」同士の論理和は「偽」となる。)。
【0083】
なお、後述するように、画像F3中で刻印が施された透過光粒子は、明度の高い明色粒子に対応するものである。
【0084】
〔明色粒子識別部135〕
明色粒子識別部135は、画像F3中において刻印が施された暗色の画素群に含まれる画素の全てを明色化(暗色の画素を明色の画素に変換)することにより画像F4’を得た後に、この画像F4’全体に対して明度反転処理を行って、明色粒子以外の粒子(本実施形態では暗色粒子)に対応する画素群が明色の画素で表された画像F4を生成する。さらに、明色粒子識別部135は、上記のようにして生成された画像F4と、二値化処理部131により生成された画像B1とに対して論理和演算を行って画像F5を生成し、この画像F5中において連続して位置する暗色の画素群を、粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも高い明度を有する微粒子である明色粒子として識別する。
【0085】
なお、明色粒子識別部135は、粒子明度の識別結果を粒子情報算出部139に伝送する。
【0086】
〔暗色粒子識別部137〕
暗色粒子識別部137は、明色粒子識別部135によって生成された画像F5に対して明度反転処理を行って画像F6を得る。さらに、暗色粒子識別部137は、このようにして生成された画像F6と、二値化処理部131により生成された画像B1とに対して論理和演算を行って画像F7を生成し、この画像F7中において連続して位置する暗色の画素群を、粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも低い明度を有する微粒子である暗色粒子として識別する。
【0087】
なお、暗色粒子識別部137は、粒子明度の識別結果を粒子情報算出部139に伝送する。
【0088】
〔粒子情報算出部139〕
粒子情報算出部139は、明色粒子識別部135および暗色粒子識別部137から伝送された粒子明度の識別結果に基づいて、画像F5中の粒子画像の位置および大きさを明色粒子の位置および大きさとして算出するとともに、画像F7中の粒子画像の位置および大きさを暗色粒子の位置および大きさとして算出する。
【0089】
より詳細には、粒子情報算出部139は、画像F5および画像F7中における隣り合う画素の二値化明度の接続関係から、同一の二値化明度の画素(本実施形態では、低明度の画素)が連続し、かつ、他の領域(本実施形態では高明度の画素が存在する領域)と独立した領域を微粒子Pが存在する領域として特定する。さらに、粒子情報算出部139は、特定された微粒子Pの存在領域内の画素の位置座標を検出し、この位置座標に基づいて、微粒子Pの位置(例えば、中心位置)および大きさ(例えば、面積や直径)を算出し、必要に応じて、画像処理装置130に設けられている記憶部(図示せず。)に記録する。
【0090】
また、粒子情報算出部139は、微粒子Pに関する情報として、微粒子Pを球と仮定した場合の体積を予め求めておいた微粒子Pの粒径から算出して記録してもよい。さらに、粒子情報算出部139は、必要に応じて、適宜、粒子の明度ごとに(本実施形態では、暗色粒子と明色粒子のそれぞれについて)、粒度構成率や総体積、暗色粒子と明色粒子との総体積の比率等を算出して記録してもよい。
【0091】
<遮光板127>
また、本実施形態に係る明度識別装置100は、必要に応じて、遮光板127をさらに備えていてもよい。遮光板127は、例えば、ステージ105の下面(基板載置面と反対側)に上端が接し、かつ、透過光用照明装置123の周囲を覆うように配置すればよい。また、遮光板127の下端は、開放されていてもよく、閉塞されていてもよい。この遮光板127の役割は、透過光用照明装置123による照明を消灯したときに、透過光用照明装置123の周囲からの入光を防止して、ステージ105の背面が暗色になるようにすることである。従って、微粒子Pの位置、大きさ及び明度等の測定における全作業を暗室内で実施する場合には、遮光板127を設ける必要はない。
【0092】
(明度識別方法)
以上、本実施形態に係る明度識別装置100について詳細に説明したが、続いて、図4および図5を参照しながら、上述した明度識別装置100を用いた本実施形態に係る明度識別方法について詳細に説明する。図4は、本実施形態に係る明度識別方法における処理の流れを示すフローチャートである。図5は、本実施形態に係る明度識別方法の各処理における処理画像を示す説明図である。
【0093】
本実施形態に係る明度識別方法は、上述した明度識別装置100を用いて、平坦な基板1上またはステージ105上に散布された微粒子Pの明度を識別する方法であり、図4に示すように、主に、分析用サンプルを加工した後に、以下に説明する第1〜第6の工程を含む。
【0094】
<分析用サンプルの加工>
まず、分析(粒子測定)用のサンプルを加工する。具体的には、検体となる微粒子P(例えば、製鉄所内の特定の場所で捕集された降下煤塵粒子)を基板1上に散布して、この基板1をステージ105上に載置するか、または、微粒子Pをステージ105上に直接散布する(S101)。この際、各粒子同士がなるべく接触しないように、散布量を調整し、さらに、適宜、ヘラ等により散布された微粒子Pをならす。なお、基板1上に散布する微粒子Pの個数は特に限定されない(捕集された降下煤塵を用いる場合にはその全量を分析用サンプルとして加工する必要はない)が、試料のばらつきの影響を評価するためには、少なくとも100個以上の微粒子Pを分析用サンプルとして供用することが好ましい。
【0095】
また、検体として、製鉄プラント由来の降下煤塵を用いる場合には、降下煤塵は、通常φ10μm以上の粗大な粒子であるので、降下煤塵粒子を散布する際には、降下煤塵粒子の大気中での自由落下を利用することができる。具体的には、例えば、捕集された降下煤塵を匙ですくって基板上に上方から落下させることにより、降下煤塵粒子を基板上に散布することができる。
【0096】
以上のようにして作成された分析用サンプルを用いて以下の第1〜第6の工程を実施する。
【0097】
<第1の工程>
第1の工程では、撮影装置101が、複数の微粒子Pからなる識別対象の微粒子群からの透過光を撮像して(電気信号に変換して)モノクロ画像B0を得る(S103)。ここで、モノクロ画像B0の撮像条件としては、透過光用照明装置123の輝度を0ではない所定輝度とし、かつ、撮影装置101に反射光照明装置121が設けられている場合には、反射光用照明装置121の輝度を0とする。
【0098】
次いで、画像処理装置130の二値化処理部131が、この画像B0を第1の明度しきい値を用いて二値化し、図5に示すような画像B1を生成する(S105:二値化処理)。このときの第1のしきい値としては、透過光照明装置123による照明時に透明な粒子を透過する光の明度に相当する明度しきい値よりも低い明度のしきい値を用いる。「透過光照明装置123による照明時に透明な粒子を透過する光の明度に相当する明度しきい値」としては、例えば、予め透明または半透明の粒子(ガラス微粒子など)を撮像して得られた粒子画像を処理することにより求められた個々の粒子の代表明度のうち、最も低い明度とすればよい。このようにして決定された明度しきい値は、不透明な粒子の透過光画像上での粒子として識別される画素領域の代表明度よりも高い明度となる。
【0099】
なお、「代表明度」については、上述した通りであるので詳しい説明を省略する。また、第1のしきい値の設定方法は、上記のような方法には限られず、透過光を用いた撮像画像中で、不透明な粒子を認識可能な方法であれば、どのような方法であってもよい。
【0100】
さらに、撮像装置110の視野内の全域で完全に均一な照度を得ることは実際には困難であることから、二値化の前に、記録された画素の明度に、画素の二次元位置の関数である補正値を増減して、画像内での照度のバラツキを補正してもよい。この場合の補正値算出方法としては、例えば、予め散乱光反射率値が知られている灰色のテストピースを本実施形態で使用する撮像装置110で撮影しておき、このとき記録された画像での全画素の平均明度値から各画素の明度を減じたものを、各画素での明度補正値として用いることができる。補正値が画素のダイナミックレンジに比べて十分小さければ、この補正方法での誤差は小さくなる。また、この補正値が小さくなるように、撮影面上での照度をできる限り均一にすることが望ましい。
【0101】
また、二値化処理の際には、適宜、微小な(明度識別対象の微粒子の一般的な大きさよりも小さな)暗色の画素群を除去する等のノイズ除去処理を実施してもよい。
【0102】
以上のようにして得られた画像B1は、高明度(白色の領域として図示)の画素と低明度(斜線の領域として図示)の画素とからなり、この画像B1中では、粒子が存在している領域が低明度の画素として認識される。従って、画像B1中における隣り合う画素の二値化明度の接続関係から、同一の二値化明度の画素(本実施形態では、低明度の画素)が連続し、かつ、他の領域(本実施形態では高明度の画素が存在する領域)と独立した領域が微粒子Pが存在する領域、例えば、図5に示す透過光粒子P1p、P2p、P3p、P4pが存在する領域)として特定される。
【0103】
<第2の工程>
第2の工程では、撮影装置101が、識別対象の微粒子群中の各微粒子Pの位置関係及び撮像範囲を第1の工程と同様に設定し、かつ、撮像範囲内の背景の明度を、粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも低い明度となるように設定する条件で、微粒子Pからの反射光のうちで特定波長領域内の反射光のスペクトルのみを撮像してモノクロ画像F0を得る(S107)。ここで、モノクロ画像F0の撮像条件としては、撮影装置101に透過光用照明装置123が設けられている場合には、透過光用照明装置123の輝度を1または2以上の条件で設定された所定輝度とし、かつ、反射光用照明装置121の輝度を0ではない所定輝度とする。
【0104】
なお、「粒子の明暗を識別するための明度しきい値」については、上述した通りであるので、詳しい説明を省略する。
【0105】
また、本実施形態に係る明度識別方法では、画像F0を撮像する際に、微粒子Pからの反射光のうち、特定波長領域の反射光のみのスペクトルを撮像して画像F0を得る。このときの「特定波長領域の反射光のみのスペクトル」を得る方法としては、(1)上記特定波長領域の光のスペクトルを備えた反射光用照明装置121を使用する方法、(2)上記特定波長領域の光にのみ反応する撮像素子(CCD等)を備えた撮像装置110(カメラ)を使用する方法、および、(3)反射光用照明装置121として汎用の白色照明を使用し、この照明からの微粒子Pからの反射光の光路の途中(例えば、微粒子Pが散布された基板1(またはステージ105)と撮像素子111との間)に、上記特定波長領域の光のみを透過するフィルタを設ける方法などがある。
【0106】
また、本実施形態に係る明度識別方法では、撮影装置101として、透過光画像撮像用の第1の撮影装置と反射光画像撮像用の第2の撮影装置の2種類を使用する場合には、同一の識別対象の微粒子群を、第1の撮影装置で撮像して画像B0を得た後に、第2の撮影装置で撮像して画像F0を得る。この場合、識別対象の微粒子群を第1の撮影装置と第2の撮影装置との間で移動させる必要があることから、識別対象の微粒子群中の各微粒子Pの位置と画素座標との対応が、第1の撮影装置と第2の撮影装置との間で一致するように、各撮影装置における撮像条件を設定する。
【0107】
このように、微粒子Pの位置と画素座標との対応を第1の撮影装置と第2の撮影装置との間で一致させるためには、微粒子Pが散布されている基板等における微粒子Pの位置が固定されるように、例えば、識別対象の微粒子Pを液状の透明な樹脂中に分散させて沈降させた後、樹脂を固化させて各微粒子P間の位置関係を固定すればよい。このとき、各微粒子Pが互いに接触しないように注意する。
【0108】
また、撮影装置101として、反射光用照明装置121と透過光用照明装置123の双方を備える1種類の装置を使用して、画像B0と画像F0の双方を撮像してもよく、この場合には、識別対象の微粒子群を第1の撮影装置と第2の撮影装置との間で移動させる必要はないことから、上記のように、識別対象の微粒子Pの位置を樹脂等で固定する必要はない。
【0109】
次に、二値化処理部131が、画像F0を第2の明度しきい値を用いて二値化した画像F1’を生成する(S109:二値化処理)。このときの第2のしきい値としては、例えば、上述した「粒子の明暗を区別するための明度しきい値」を用いることができる。また、二値化の前に、画像内での照度のバラツキを補正してもよい点や、ノイズ除去処理を実施してもよい点については、画像B0の二値化の場合と同様である。
【0110】
さらに、二値化処理部131が、得られた画像F1’における高明度の画素と低明度の画素の明暗を反転させる明度反転処理を行うことにより、図5に示すような画像F1を生成する(S111:明度反転処理)。図5では、例えば、微粒子Pに対応する画素群として、透過光粒子P3p、P4pに対応する反射光粒子P3r、P4rが得られた例を示している。この明度反転処理は、上述したように、論理否定演算を行うものであり、高明度(明色)の画素を真、低明度(暗色)の画素を偽と定義したときに、二値化された画像F1’中の高明度の画素を低明度の画素に変換し、低明度の画素を高明度の画素に変換する処理である。かかる処理の論理演算式は、「F1=not F1’」である。
【0111】
なお、画像F1を生成する際に、画素の明度を反転させるのは、画像B1(透過光画像を二値化した画像)中の微粒子Pに対応する粒子画像の色(暗色)と一致させるためである。
【0112】
<第3の工程>
第3の工程では、まず、刻印処理部133が、上述したようにして生成された画像F1において連続して位置する暗色の画素群のうち、明色の画素との境界に位置する暗色の画素の一部または全部を明色化する縮退処理を行って画像F2’を生成する(S113:縮退処理)。ここで、「明色化」および「縮退処理」については、上述した通りであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0113】
ここで、第3の工程を行う前提として、画像F1(反射光画像を二値化した画像)における任意の微粒子Pに対応する画素群を構成する画素数が、当該微粒子Pに対応する画像B1(透過光画像を二値化した画像)における画素群を構成する画素数以下であることが必要である。これは、主に、(1)反射光用照明装置121による照明時には、撮像画像中にハイライトが存在して、微粒子Pに対応する有効な画素をその分減じることと、(2)反射光用照明装置121による照明時の粒子画像の外縁部は、透過光照明装置123による照明時の粒子画像の外縁部よりも明度変化がシャープではないことの2つの理由による。従って、画像F0を二値化する際の明度しきい値をやや低明度側に設定して、反射光用照明装置121による照明時の粒子に対応する画素群の面積を、透過光用照明装置123による照明の粒子に対応する画素群の面積よりも大きくならないように設定すべきである。
【0114】
以上のような前提から、本実施形態に係る明度識別方法では、後述する画像F3上で、明色粒子に対応する粒子画像に認識可能な刻印を施すために、反射光用照明装置121による照明時の粒子画像に対応する画素群の面積を、当該粒子に対応する透過光照明装置123による照明時の粒子画像での画素群の面積よりも確実に小さくするため、画像F1における粒子画像に対応する暗色の画素群の大きさを縮小する縮退処理を行っている。
【0115】
また、刻印処理部133が、上記のようにして得られた画像F2’に対して、明度反転処理を行って図5に示すような画像F2を生成する(S115:明度反転処理)。図5では、画像F2上に、反射光粒子P3r、P4rに対応する刻印P3m、P4m(明色の画素)が生成された例を示している。このように、反射光用照明装置121による照明時の粒子に対応する画素群の画素を明色化することにより、画像B1における粒子に対応する暗色の画素群に、認識可能な刻印を施すことができる。かかる処理の論理演算式は、「F2=not F2’」である。
【0116】
<第4の工程>
第4の工程では、刻印処理部133が、第1の工程で生成された画像B1と、上記のようにして生成された画像F2とに対して、論理和演算を行うことにより、画像B1中に存在する1または2以上の暗色の画素群(P1p、P2p、P3p、P4p)の一部または全部(図5の例では、P3p、P4p)に、明色の画素群による刻印(図5の例では、P3m、P4m)が施された画像F3を生成する(S117:刻印処理)。このときの論理和演算では、高明度(明色)の画素を真、低明度(暗色)の画素を偽と定義した場合に、画像B1中の画素の明度と画像F2中の画素の明度とが論理和される。従って、画像B1と画像F2の双方で明色の画素の場合、および、画像B1と画像F2のいずれか一方で明色の画素、かつ、他方で暗色の画素の場合には、画像F3中では明色の画素となり(「真」同士の論理和および「真」と「偽」の論理和は「真」となる。)、画像B1と画像F2の双方で暗色の画素の場合にのみ、画像F3中では暗色の画素となる(「偽」同士の論理和は「偽」となる。)。かかる処理の論理演算式は、「F3=F2 or B1」である。
【0117】
ここで、本実施形態においては、反射光画像は、背景を粒子の明暗を区別するための明度しきい値よりも低い低明度の背景で撮像されているので、画像F1中における反射光粒子(P3r、P4r)は明色粒子に対応するものである。従って、画像F2における刻印(P3m、P4m)も明色粒子に対応するものとなるので、画像F3中で刻印が施された透過光粒子(P3p、P4p)は、明色粒子に対応するものである。
【0118】
以上のように、本実施形態では、縮小させた反射光を用いて撮像された画像中における粒子(本実施形態では明色粒子)に対応する画素群を、この明色粒子に対応する透過光を用いて撮像された画像中の画素群と論理和(OR)演算することにより、明色粒子に対応する透過光粒子中の画素群の中心部が明色化するため、明色粒子には対応しない粒子(暗色粒子)の画素群から区別できる。このように、暗色の画素群の中心部に明色部(刻印)を形成することは、明色粒子であることの印を暗色の画素群に付与したことになる。
【0119】
刻印後の暗色の画素群の形状は、刻印(P3m、P4m)の部位(画素群)が、透過光粒子(P3p、P4p)の周縁部に達しない場合には、リング状となる。また、刻印(P3m、P4m)の部位(画素群)が、透過光粒子(P3p、P4p)の周縁部に達する場合には、刻印後の暗色の画素群の形状は、三日月状、棒状等となる。いずれの場合でも、刻印前の暗色の画素群の形状である略円形とは大きく異なる形状となるため、刻印が施された暗色の画素群と、刻印が施されていない暗色の画素群とを区別することができる。
【0120】
<第5の工程>
第5の工程では、明色粒子識別部135が、画像F3中において刻印が施された暗色の画素群に含まれる画素の全てを明色化(暗色の画素を明色の画素に変換)することにより画像F4’を得た(S119)後に、この画像F4’全体に対して明度反転処理を行って画像F4を生成する(S121)。さらに、明色粒子識別部135が、上記のようにして生成された画像F4と、第1の工程で生成された画像B1とに対して論理和演算を行って画像F5を生成し(S123)、この画像F5中において連続して位置する暗色の画素群(図5のP3p、P4p)を、粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも高い明度を有する微粒子である明色粒子として識別する(S125:明色粒子識別処理)。かかる処理の論理演算式は、「F5=(not F4’) or B1」である。もし、事前にF4’のノイズが除去されている場合には、「F5=not(F4’ xor B1)」という論理演算式を利用してもよい。
【0121】
ここで、第5の工程のステップS119では、画像F3中の暗色の画素群のうち、暗色の画素に囲まれた閉領域内に所定数以上の明色の画素を含む画素群(例えば、リング状の形状を有する暗色の画素群)、または、暗色の画素群の外周を連結して得られる閉曲線の形状特性値と円形の形状特性値との差が所定量以上である画素群(例えば、三日月状や棒状等の形状を有する暗色の画素群)を、刻印が施された暗色の画素群と判定し、当該画素群に含まれる暗色の画素の全てを明色化する。
【0122】
この場合、「暗色の画素に囲まれた閉領域内に所定数以上の明色の画素を含む画素群」であるか否かの判定の際の「所定数」としては、例えば、当該暗色画素数と同数以上の値を用いることができる。
【0123】
また、「色の画素群の外周を連結して得られる閉曲線の形状特性値と円形の形状特性値との差が所定量以上である」か否かの判定は、例えば、JIS B0621−1984で規定されている「真円度」を使用して行うことができる。なお、「真円度」は、円形形体の幾何学的に正しい円からの狂いの大きさ、より具体的には、円形形体を2つの同心の幾何学的円で挟んだとき、同心円の間隔が最小となる場合の2円の半径の差で表される。上記の判定の具体的な方法としては、画像F3上に存在する暗色の画素群のそれぞれについて、当該暗色の画素群に含まれる各画素の画素座標に基づいて真円度を求め、この真円度が大きいもの(例えば、真円度が3以上)のものを、刻印が施された暗色の画素群と判定する。
【0124】
また、第5の工程では、必要に応じて、各明色粒子の粒子諸特性(位置、面積、円相当径等)を求めてもよい。具体的には、粒子情報算出部139が、第5の工程で得られた粒子明度の識別結果に基づいて、画像F5中の粒子画像の位置および大きさを明色粒子の位置および大きさとして算出する(S127)。
【0125】
より詳細には、粒子情報算出部139が、画像F5中における隣り合う画素の二値化明度の接続関係から、同一の二値化明度の画素(本実施形態では、低明度の画素)が連続し、かつ、他の領域(本実施形態では高明度の画素が存在する領域)と独立した領域を微粒子Pが存在する領域として特定する。さらに、粒子情報算出部139が、特定された微粒子Pの存在領域内の画素の位置座標を検出し、この位置座標に基づいて、微粒子P(明色粒子)の位置(例えば、中心位置)および大きさ(例えば、面積や直径)を算出し、必要に応じて、画像処理装置130に設けられている記憶部(図示せず。)に記録する。
【0126】
また、第5の工程では、粒子情報算出部139が、微粒子P(明色粒子)に関する情報として、微粒子Pを球と仮定した場合の体積を予め求めておいた微粒子Pの粒径から算出して記録してもよい。
【0127】
なお、明色粒子のみを識別できればよい場合には、この第5の工程で処理を終了してもよい。
【0128】
<第6の工程>
第6の工程では、暗色粒子識別部137が、第5の工程で得られた画像F5に対して明度反転処理を行うことにより画像F6を生成する(S129)。さらに、暗色粒子識別部137が、ステップS129で生成された画像F6と、第1の工程で生成された画像B1とに対して論理和演算を行って画像F7を生成し(S131)、この画像F7中において連続して位置する暗色の画素群(図5のP1p、P2p)を、粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも低い明度を有する微粒子である暗色粒子として識別する(S133:暗色粒子識別処理)。かかる処理の論理演算式は、「F7=(not F5) or B1、または、「F7=not F4」である。もし、事前にF5のノイズが除去されている場合には、「F7=not(F5 xor B1)という論理演算式を利用してもよい。
【0129】
また、第6の工程では、必要に応じて、各暗色粒子の粒子諸特性(位置、面積、円相当径等)を求めてもよい。具体的には、粒子情報算出部139が、第6の工程で得られた粒子明度の識別結果に基づいて、画像F7中の粒子画像の位置および大きさを暗色粒子の位置および大きさとして算出する(S135)。
【0130】
より詳細には、粒子情報算出部139が、画像F7中における隣り合う画素の二値化明度の接続関係から、同一の二値化明度の画素(本実施形態では、低明度の画素)が連続し、かつ、他の領域(本実施形態では高明度の画素が存在する領域)と独立した領域を微粒子Pが存在する領域として特定する。さらに、粒子情報算出部139が、特定された微粒子Pの存在領域内の画素の位置座標を検出し、この位置座標に基づいて、微粒子P(暗色粒子)の位置(例えば、中心位置)および大きさ(例えば、面積や直径)を算出し、必要に応じて、画像処理装置130に設けられている記憶部(図示せず。)に記録する。
【0131】
また、第6の工程では、粒子情報算出部139が、微粒子P(暗色粒子)に関する情報として、微粒子Pを球と仮定した場合の体積を予め求めておいた微粒子Pの粒径から算出して記録してもよい。
【0132】
さらに、第6の工程では、粒子情報算出部139が、必要に応じて、適宜、粒子の明度ごとに(本実施形態では、暗色粒子と明色粒子のそれぞれについて)、粒度構成率や総体積、暗色粒子と明色粒子との総体積の比率等を算出して記録してもよい。
【0133】
なお、以上説明したような画像処理は、例えば、“ImageProPlus”のような市販の画像処理ソフトに標準的に搭載されている粒子画像処理計測機能を利用して実施することができる。
【0134】
(本実施形態に係る明度識別装置および明度識別方法の利点)
以上説明した本実施形態に係る明度識別装置100およびこれを用いた明度識別方法によれば、透過光を用いて不透明な微粒子群を撮像した透過光画像と、反射光を用いて不透明な微粒子群を撮像した反射光画像とに基づき、透過光画像中に存在する透過光粒子と反射光画像中に存在する反射光粒子とを、上述した二値化処理、刻印処理、明色粒子識別処理および暗色粒子識別処理により対応付けることで、性状に大きな分布を有する微粒子群を測定対象とした場合に、微粒子群中の個々の粒子の各種特性特に、粒子の明度を簡易かつ確実に識別することが可能となる。
【0135】
特に、本発明では、反射光粒子に縮退処理を行って粒子画素範囲が対応する透過光粒子範囲内に確実に収まる処置を施すことによって、刻印処理時に透過光粒子範囲からはみ出した反射光粒子画素範囲に起因する画像への外乱を回避できる。また、刻印処理された粒子ではリング状や三日月状といった特徴的な粒子形状に必ずなるため、刻印粒子を画像中の多数の粒子の中から容易に識別できるという利点がある。
【0136】
また、本実施形態によれば、反射光用照明装置により識別対象の微粒子Pの上方から照明し、この微粒子Pからの反射光を用いて微粒子Pを撮像した粒子画像に、主に、明度の低い外乱が多数予測される場合に、精度の高い粒子画像処理計測を行うことができる。
【0137】
明度の低い外乱の代表例としては、識別対象の微粒子Pが散布された基板1が載置されるか、あるいは、微粒子Pが直接散布される透明なステージ上の半透明な汚れがある。透明ステージ上には、しばしば油や指紋などの半透明な汚れが存在する場合があり、このような汚れが撮像されることがある。識別対象の微粒子Pが主に高明度であり、相対的に低明度の暗色粒子との識別のための明度しきい値を比較的高明度に設定する場合、上方からの照明を用いて撮像した画像のみの粒子の識別では、ステージ上の半透明な汚れを粒子として誤認識する可能性がある。これに対して、本実施形態によれば、下方からの照明を用いて撮像した画像を二値化して画像処理する際に、このようなステージ上の汚れを粒子の測定の対象から除外するので、ステージ上の汚れを粒子として誤認識することはない。
【0138】
以上述べた実施形態は、上記の方法に限定されるものではない。例えば、上記に記載した各論理演算式と等価、または、実質的に等価な処理と部分的に交換したものであってもよい。例えば、実質的に等価な処理の例として、上記の実施形態では粒子を暗色と定義して処理を行うが、明度反転処理を前提として、粒子を明色と定義し、以下、上記実施例と同様の考え方で処理を行う場合が含まれる。また、本実施形態において、明色画素群を粒子と認識するものとして、F6を用いて、直接、明色粒子識別を行う場合も含まれる。さらに、F1での粒子の縮退を行う代わりに、B1で粒子の膨張処理を行った上でF1の明度反転画像との論理和演算を行うことによって刻印処理を行う場合も含まれる。
【0139】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る明度識別装置および明度識別方法について説明するが、主に、上述した第1の実施形態と異なる構成について詳細に説明する。
【0140】
(明度識別装置)
まず、図6を参照しながら、本実施形態に係る明度識別装置について説明する。図6は、本実施形態に係る画像処理装置230の機能構成を示すブロック図である。
【0141】
本実施形態に係る明度識別装置は、上述した第1の実施形態に係る明度識別装置100と、反射光画像生成部および画像処理装置の機能が異なる。
【0142】
具体的には、本実施形態に係る反射光画像生成部は、反射光画像上における反射光粒子の背景の明度が、第1の実施形態とは逆に、粒子の明暗を区別するための明度しきい値よりも高い明度となるように、照明制御装置により透過光用照明装置の輝度が設定された状態で、反射光画像(モノクロ画像D0)を生成する。
【0143】
また、本実施形態に係る画像処理装置230は、二値化処理部231と、刻印処理部233と、暗色粒子識別部235と、明色粒子識別部237と、粒子情報算出部239と、を主に有する。
【0144】
二値化処理部231は、反射光画像生成部により生成されたモノクロ画像D0を第2のしきい値を用いて二値化した画像D1を生成する。このときの第2のしきい値としては、例えば、上述した「粒子の明暗を区別するための明度しきい値」を用いることができる。また、二値化の前に、画像内での照度のバラツキを補正してもよい点については、画像B0の二値化の場合と同様である。
【0145】
ここで、本実施形態では、反射光画像(画像D0)の背景を粒子の明暗を区別するための明度しきい値よりも高い明度となるように設定しているため、この反射光画像を二値化して得られる画像D1で粒子として認識される画素群は、暗色の画素群となる。そのため、本実施形態では、第1の実施形態のように、反射光画像を二値化して得られた画像の明暗を反転する明度反転処理は必要ない。
【0146】
刻印処理部233の機能は、第1の実施形態に係る刻印処理部133の機能と同様であるが、第1の実施形態の場合と異なるのは、刻印が付された透過光粒子が、粒子の明暗を区別するための明度しきい値よりも明度の低い暗色粒子に対応するという点である。従って、本実施形態の粒子明度の識別においては、第1の実施形態と異なり、初めに暗色粒子が識別された後に、明色粒子が識別される。
【0147】
具体的には、暗色粒子識別部235は、刻印が施された暗色の画素群に含まれる画素の全てを明色化(暗色の画素を明色の画素に変換)した後に、明度反転処理を行って暗色粒子以外の粒子(本実施形態では明色粒子)に対応する画素群が明色の画素で表された画像D4を生成する。さらに、暗色粒子識別部235は、上記のようにして生成された画像D4と、二値化処理部231により生成された画像B1とに対して論理和演算を行って画像D5を生成し、この画像D5中において連続して位置する暗色の画素群を、粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも低い明度を有する微粒子である暗色粒子として識別する。
【0148】
なお、暗色粒子識別部235は、粒子明度の識別結果を粒子情報算出部239に伝送する。
【0149】
また、明色粒子識別部237は、暗色粒子識別部235によって生成された画像D5に対して明度反転処理を行って画像D6を得る。さらに、明色粒子識別部237は、このようにして生成された画像D6と、二値化処理部231により生成された画像B1とに対して論理和演算を行って画像D7を生成し、この画像D7中において連続して位置する暗色の画素群を、粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも高い明度を有する微粒子である明色粒子として識別する。
【0150】
なお、明色粒子識別部237は、粒子明度の識別結果を粒子情報算出部239に伝送する。
【0151】
粒子情報算出部239は、第1の実施形態に係る粒子情報算出部139と同様にして、暗色粒子識別部235および明色粒子識別部237から伝送された粒子明度の識別結果に基づいて、画像D5中の粒子画像の位置および大きさを暗色粒子の位置および大きさとして算出するとともに、画像D7中の粒子画像の位置および大きさを明色粒子の位置および大きさとして算出する。
【0152】
(明度識別方法)
以上、本実施形態に係る明度識別装置について詳細に説明したが、続いて、図7および図8を参照しながら、上述した明度識別装置を用いた本実施形態に係る明度識別方法について詳細に説明する。図7は、本実施形態に係る明度識別方法における処理の流れを示すフローチャートである。図8は、本実施形態に係る明度識別方法の各処理における処理画像を示す説明図である。
【0153】
本実施形態に係る明度識別方法は、上述した本実施形態に係る明度識別装置を用いて、平坦な基板上またはステージ上に散布された微粒子Pの明度を識別する方法であり、図7に示すように、主に、分析用サンプルを加工した後に、以下に説明する第1〜第6の工程を含む。
【0154】
<分析用サンプルの加工>
まず、分析(粒子測定)用のサンプルを加工する。具体的には、検体となる微粒子P(例えば、製鉄所内の特定の場所で捕集された降下煤塵粒子)を基板1上に散布して、この基板1をステージ105上に載置するか、または、微粒子Pをステージ105上に直接散布する(S201)。微粒子Pの散布方法の詳細については、第1の実施形態と同様である。
【0155】
以上のようにして作成された分析用サンプルを用いて以下の第1〜第6の工程を実施する。
【0156】
<第1の工程>
第1の工程では、第1の実施形態と同様にして、撮影装置101が、複数の微粒子Pからなる識別対象の微粒子群からの透過光を撮像して(電気信号に変換して)モノクロ画像B0を得た(S203)後に、画像処理装置230の二値化処理部231が、この画像B0を第1の明度しきい値を用いて二値化し、図8に示すような画像B1を生成する(S205:二値化処理)。
【0157】
以上のようにして得られた画像B1は、高明度(白色の領域として図示)の画素と低明度(斜線の領域として図示)の画素とからなり、この画像B1中では、粒子が存在している領域が低明度の画素として認識される。従って、画像B1中における隣り合う画素の二値化明度の接続関係から、同一の二値化明度の画素(本実施形態では、低明度の画素)が連続し、かつ、他の領域(本実施形態では高明度の画素が存在する領域)と独立した領域が微粒子Pが存在する領域、例えば、図8に示す透過光粒子P1p、P2p、P3p、P4pが存在する領域)として特定される。
【0158】
<第2の工程>
第2の工程では、撮影装置101が、識別対象の微粒子群中の各微粒子Pの位置関係及び撮像範囲を第1の工程と同様に設定し、かつ、撮像範囲内の背景の明度を、粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも高い明度となるように設定する条件で、微粒子Pからの反射光のうちで特定波長領域内の反射光のスペクトルのみを撮像してモノクロ画像D0を得る(S207)。ここで、モノクロ画像D0の撮像条件は、第1の実施形態に係るモノクロ画像F0の撮像条件と同様であり、「粒子の明暗を識別するための明度しきい値」については、上述した通りであるので、詳しい説明を省略する。
【0159】
また、本実施形態に係る明度識別方法では、画像D0を撮像する際に、微粒子Pからの反射光のうち、特定波長領域の反射光のみのスペクトルを撮像して画像D0を得る。このときの「特定波長領域の反射光のみのスペクトル」を得る方法としても、第1の実施形態の場合と同様である。
【0160】
また、本実施形態に係る明度識別方法では、撮影装置101として、透過光画像撮像用の第1の撮影装置と反射光画像撮像用の第2の撮影装置の2種類を使用する場合には、同一の識別対象の微粒子群を、第1の撮影装置で撮像して画像B0を得た後に、第2の撮影装置で撮像して画像D0を得る。この場合、識別対象の微粒子群を第1の撮影装置と第2の撮影装置との間で移動させる必要があることから、識別対象の微粒子群中の各微粒子Pの位置と画素座標との対応が、第1の撮影装置と第2の撮影装置との間で一致するように、各撮影装置における撮像条件を設定する点や、微粒子Pの位置と画素座標との対応を一致させるための方法、撮影装置101として、反射光用照明装置121と透過光用照明装置123の双方を備える1種類の装置を使用する場合等についても、第1の実施形態と同様である。
【0161】
次に、二値化処理部231が、画像D0を第2の明度しきい値を用いて二値化した画像D1を生成する(S209:二値化処理)。このときの第2のしきい値を設定する方法や、二値化の前に画像内での照度のバラツキを補正してもよい点や、ノイズ除去処理を実施してもよい点については、画像B0の二値化の場合と同様である。
【0162】
なお、本実施形態では、ステップS209の処理によって、微粒子Pに対応する画素群(図5の例では、透過光粒子P2pに対応する反射光粒子P2rが存在する画素領域)として、微粒子Pに対応する粒子画像の色が既に暗色となっているため、第1の実施形態におけるステップS111に対応する処理は必要ない。
【0163】
<第3の工程>
第3の工程では、まず、刻印処理部233が、上述したようにして生成された画像D1において連続して位置する暗色の画素群のうち、明色の画素との境界に位置する暗色の画素の一部または全部を明色化する縮退処理を行って画像D2’を生成する(S213:縮退処理)。ここで、「明色化」および「縮退処理」については、上述した通りであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0164】
また、刻印処理部233が、上記のようにして得られた画像D2’に対して、明度反転処理を行って図8に示すような画像D2を生成する(S215:明度反転処理)。図8では、画像D2上に、反射光粒子P2rに対応する刻印P2m(明色の画素)が生成された例を示している。
【0165】
<第4の工程>
第4の工程では、刻印処理部233が、第1の工程で生成された画像B1と、上記のようにして生成された画像D2とに対して、論理和演算を行うことにより、画像B1中に存在する1または2以上の暗色の画素群(P1p、P2p、P3p、P4p)の一部または全部(図8の例では、P2p)に、明色の画素群による刻印(図8の例では、P2m)が施された画像D3を生成する(S217:刻印処理)。
【0166】
ここで、本実施形態においては、反射光画像は、背景を粒子の明暗を区別するための明度しきい値よりも高い低明度の背景で撮像されているので、画像D1中における反射光粒子(P2r)は暗色粒子に対応するものである。従って、画像D2における刻印(P2m)も明色粒子に対応するものとなるので、画像D3中で刻印が施された透過光粒子(P2p)は、明色粒子に対応するものである。
【0167】
以上のように、本実施形態では、縮小させた反射光を用いて撮像された画像中における粒子(本実施形態では暗色粒子)に対応する画素群を、この暗色粒子に対応する透過光を用いて撮像された画像中の画素群と論理和(OR)演算することにより、暗色粒子に対応する透過光粒子中の画素群の中心部が明色化するため、暗色粒子には対応しない粒子(明色粒子)の画素群から区別できる。このように、暗色の画素群の中心部に明色部(刻印)を形成することは、暗色粒子であることの印を暗色の画素群に付与したことになる。
【0168】
<第5の工程>
第5の工程では、暗色粒子識別部235が、画像D3中において刻印が施された暗色の画素群に含まれる画素の全てを明色化(暗色の画素を明色の画素に変換)することにより画像D4’を得た(S219)後に、この画像D4’全体に対して明度反転処理を行って画像D4を生成する(S221)。さらに、暗色粒子識別部235が、上記のようにして生成された画像D4と、第1の工程で生成された画像B1とに対して論理和演算を行って画像D5を生成し(S223)、この画像D5中において連続して位置する暗色の画素群(図8のP2p)を、粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも低い明度を有する微粒子である暗色粒子として識別する(S225:暗色粒子識別処理)。
【0169】
ここで、第5の工程のステップS219における刻印が施された暗色の画素群の判定は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0170】
また、第5の工程では、必要に応じて、各暗色粒子の粒子諸特性(位置、面積、円相当径等)を求めてもよい。具体的には、粒子情報算出部239が、第5の工程で得られた粒子明度の識別結果に基づいて、画像D5中の粒子画像の位置および大きさを暗色粒子の位置および大きさとして算出する(S227)。
【0171】
より詳細には、粒子情報算出部239が、画像D5中における隣り合う画素の二値化明度の接続関係から、同一の二値化明度の画素(本実施形態では、低明度の画素)が連続し、かつ、他の領域(本実施形態では高明度の画素が存在する領域)と独立した領域を微粒子Pが存在する領域として特定する。さらに、粒子情報算出部239が、特定された微粒子Pの存在領域内の画素の位置座標を検出し、この位置座標に基づいて、微粒子P(暗色粒子)の位置(例えば、中心位置)および大きさ(例えば、面積や直径)を算出し、必要に応じて、画像処理装置230に設けられている記憶部(図示せず。)に記録する。
【0172】
また、第5の工程では、粒子情報算出部239が、微粒子P(暗色粒子)に関する情報として、微粒子Pを球と仮定した場合の体積を予め求めておいた微粒子Pの粒径から算出して記録してもよい。
【0173】
なお、暗色粒子のみを識別できればよい場合には、この第5の工程で処理を終了してもよい。
【0174】
<第6の工程>
第6の工程では、明色粒子識別部237が、第5の工程で得られた画像D5に対して明度反転処理を行うことにより画像D6を生成する(S229)。さらに、明色粒子識別部237が、ステップS229で生成された画像D6と、第1の工程で生成された画像B1とに対して論理和演算を行って画像D7を生成し(S231)、この画像D7中において連続して位置する暗色の画素群(図8のP1p、P3p、P4p)を、粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも高い明度を有する微粒子である明色粒子として識別する(S233:明色粒子識別処理)。
【0175】
また、第6の工程では、必要に応じて、各暗色粒子の粒子諸特性(位置、面積、円相当径等)を求めてもよい。具体的には、粒子情報算出部239が、第6の工程で得られた粒子明度の識別結果に基づいて、画像D7中の粒子画像の位置および大きさを明色粒子の位置および大きさとして算出する(S235)。
【0176】
より詳細には、粒子情報算出部239が、画像D7中における隣り合う画素の二値化明度の接続関係から、同一の二値化明度の画素(本実施形態では、低明度の画素)が連続し、かつ、他の領域(本実施形態では高明度の画素が存在する領域)と独立した領域を微粒子Pが存在する領域として特定する。さらに、粒子情報算出部239が、特定された微粒子Pの存在領域内の画素の位置座標を検出し、この位置座標に基づいて、微粒子P(明色粒子)の位置(例えば、中心位置)および大きさ(例えば、面積や直径)を算出し、必要に応じて、画像処理装置230に設けられている記憶部(図示せず。)に記録する。
【0177】
また、第6の工程では、粒子情報算出部239が、微粒子P(明色粒子)に関する情報として、微粒子Pを球と仮定した場合の体積を予め求めておいた微粒子Pの粒径から算出して記録してもよい。
【0178】
さらに、第6の工程では、粒子情報算出部239が、必要に応じて、適宜、粒子の明度ごとに(本実施形態では、暗色粒子と明色粒子のそれぞれについて)、粒度構成率や総体積、暗色粒子と明色粒子との総体積の比率等を算出して記録してもよい。
【0179】
なお、以上説明したような画像処理は、例えば、“ImageProPlus”のような市販の画像処理ソフトに標準的に搭載されている粒子画像処理計測機能を利用して実施することができる。
【0180】
(本実施形態に係る明度識別装置および明度識別方法の利点)
以上説明した本実施形態に係る明度識別装置およびこれを用いた明度識別方法によれば、透過光を用いて不透明な微粒子群を撮像した透過光画像と、反射光を用いて不透明な微粒子群を撮像した反射光画像とに基づき、透過光画像中に存在する透過光粒子と反射光画像中に存在する反射光粒子とを、上述した二値化処理、刻印処理、明色粒子識別処理および暗色粒子識別処理により対応付けることで、性状に大きな分布を有する微粒子群を測定対象とした場合に、微粒子群中の個々の粒子の各種特性特に、粒子の明度を簡易かつ確実に識別することが可能となる。
【0181】
また、本実施形態によれば、反射光照明装置121により微粒子Pの上方から照明し、この微粒子Pからの反射光を用いて微粒子Pを撮像した粒子画像に、主に、明度の高い外乱が多数予測される場合に、精度の高い粒子画像処理計測を行うことができる。
【0182】
明度の高い外乱の第1の代表例としては、上方からの照明(反射光照明装置121からの照明)の鏡面反射によるハイライトがある。このようなハイライトが存在する粒子画像中で、微粒子Pに対応する画素数に占めるハイライト部分の画素数の割合は、一般に、10%以上50%未満である。上方からの照明(反射光)を用いて撮像した画像のみを用いて微粒子の明度を判断する場合には、本来、明度の低い暗色の粒子であっても、ハイライト部分での明度が高いので、この暗色の粒子を明色粒子と誤認識する可能性がある。これに対して、本実施形態によれば、ハイライト部分が存在しても、粒子の暗色部分のみで粒子本来の明度を判断できる。さらに、粒子の面積を下方からの照明(透過光)を用いて撮像した画像から算出しているので、上方からの照明(反射光)を用いて撮像した画像において、暗色粒子がハイライト部分の欠けた形状として粒子として認識されることによる粒子の面積の測定誤差は生じない。
【0183】
また、上記と同様の理由で、本実施形態によれば、粒子以外の鏡面反射(例えば、ステージ表面からの鏡面反射)による撮像物も粒子として誤認識されることはない。
【0184】
また、明度の高い外乱の第2の代表例としては、焦点距離範囲外に存在する識別対象外の粒子(例えば、顕微鏡レンズの汚れ)がある。ステージ105上に存在しない識別対象外の粒子(例えば、汚れ)であっても、撮像範囲内に存在すれば画像として記録される場合がある。このような粒子は、撮像手段(カメラ)の焦点があっていないので、ピンボケして全体が大きく、かつ、やや高い明度の画素として記録される。これは、上方からの照明(反射光)を用いて撮像した画像でも、下方からの照明(透過光)を用いて撮像した画像でも同様である。上方からの照明を用いて撮像した画像のみで、このような粒子の明度を判断した場合、単に明度の低い粒子なのか、識別対象外の粒子なのかを判断することができない。これに対して、本実施形態では、下方からの照明を用いて撮像した画像を二値化して画像処理を行う際に、このようなピンボケによる高明度の粒子を、粒子の測定の対象から除外するので(ピントの合った粒子の下方からの照明を用いて撮像した画像では、粒子に対応する画素領域は、常に所定値以下の低明度となる。)、識別対象外の粒子を誤認識することはない。
【0185】
以上述べた実施形態は、上記の方法に限定されるものではない。例えば、上記に記載した各論理演算式と等価、または、実質的に等価な処理と部分的に交換したものであってもよい。例えば、実質的に等価な処理の例として、上記の実施形態では粒子を暗色と定義して処理を行うが、明度反転処理を前提として、粒子を明色と定義し、以下、上記実施例と同様の考え方で処理を行う場合が含まれる。また、本実施形態において、明色画素群を粒子と認識するものとして、F6を用いて、直接、明色粒子識別を行う場合も含まれる。さらに、F1での粒子の縮退を行う代わりに、B1で粒子の膨張処理を行った上でF1の明度反転画像との論理和演算を行うことによって刻印処理を行う場合も含まれる。
【0186】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る明度識別装置および明度識別方法について説明するが、主に、上述した第1の実施形態と異なる構成について詳細に説明する。
【0187】
(明度識別装置)
まず、本実施形態に係る明度識別装置について説明する。本実施形態に係る明度識別装置は、上述した第1の実施形態に係る明度識別装置100と、反射光画像の撮像条件および画像処理装置の機能が異なる。
【0188】
具体的には、本実施形態では、反射光画像を撮像する際に、撮像に用いる反射光の波長領域(特定波長領域)を異なるn種(nは2以上)の範囲に設定し、本実施形態に係る反射光画像生成部は、それぞれの特定波長範囲において撮像されたn個のモノクロ画像F0(1)〜F0(n)を生成する。
【0189】
ここで、特定波長領域を異なるn種(nは2以上)の範囲に設定する方法としては、例えば、複数種類の異なる色フィルタ(赤色フィルタ、緑色フィルタ、青色フィルタ等)を用意し、それぞれの色フィルタを撮像装置(カメラ)に装着した状態で、識別対象の微粒子群を撮像する方法等が考えられるが、この方法以外でも、特定波長領域を異なるn種(nは2以上)の範囲に設定することができる方法であれば、任意の方法を利用することができる。例えば、撮像素子自体を異なる波長領域の光を受光可能な撮像素子に交換したり、反射光用照明装置を異なる波長領域の光を照射可能な照明装置に交換したりすることによっても、特定波長領域を異なるn種(nは2以上)の範囲に設定することができる。
【0190】
また、本実施形態に係る画像処理装置は、第1の実施形態に係る画像処理装置130と同様に、二値化処理部と、刻印処理部と、明色粒子識別部と、暗色粒子識別部とを有するが、これらの機能構成による具体的な処理の内容は、第1の実施形態の場合と若干異なる。
【0191】
本実施形態に係る二値化処理部は、反射光画像生成部により生成されたn個のモノクロ画像F0(1)〜F0(n)のそれぞれを、第2のしきい値を用いて二値化したn個の画像F1’(1)〜F1’(n)を生成する。このときの第2のしきい値としては、例えば、上述した「粒子の明暗を区別するための明度しきい値」を用いることができる。また、二値化の前に、画像内での照度のバラツキを補正してもよい点については、画像B0の二値化の場合と同様である。さらに、二値化処理部は、得られた画像F1’(1)〜F1’(n)における高明度の画素と低明度の画素の明暗を反転させる明度反転処理を行うことにより、n個の画像F1(1)〜F1(n)を生成する。
【0192】
本実施形態に係る刻印処理部の機能は、第1の実施形態に係る刻印処理部133の機能と同様であるが、第1の実施形態の場合と異なるのは、透過光粒子に刻印が付された画像を、F3(1)〜F3(n)のn個生成するという点である。従って、本実施形態では、後述する明色粒子の識別は、これらのn個の画像F3(1)〜F3(n)に対して、それぞれ行われる。
【0193】
本実施形態に係る明色粒子識別部は、第1の実施形態に係る明色粒子識別部135と同様にして、n個の画像F4(1)〜F4(n)を生成した後に、当該画像F4(1)〜F4(n)のそれぞれに対して、透過光画像生成部により生成された画像B1と論理和演算を行うことにより、n個の画像F5(1)〜F5(n)を生成し、これらの画像F5(1)〜F5(n)のそれぞれにおいて連続して位置する暗色の画素群を明色粒子として識別する。さらに、本実施形態に係る明色粒子識別部は、n個の画像F5(1)〜F5(n)のいずれかで明色粒子と識別された暗色の画素群に対応する微粒子の色を、当該微粒子について明色粒子と識別された際の全ての特定波長領域内の反射光のスペクトルを合成したスペクトルに対応する色相と判断する。
【0194】
例えば、特定波長領域を異なるn種(nは2以上)の範囲に設定する方法として、複数種類の異なる色フィルタ(赤色フィルタ、緑色フィルタ、青色フィルタ)を使用したとすると、赤色フィルタを使用して撮像した場合に明色粒子として識別された微粒子が、青色フィルタを使用して撮像した場合にも明色粒子として識別された場合には、本実施形態に係る明色粒子識別部は、当該微粒子の色を、赤色フィルタを透過した反射光のスペクトルと、青色フィルタを透過した反射光のスペクトルを合成したスペクトルに対応する色相であると判断する。
【0195】
また、本実施形態に係る暗色粒子識別部は、n個の画像F5(1)〜F5(n)のいずれにおいても明色粒子として識別されなかった画像B1中の暗色の画素群に対応する微粒子Pの色を、黒色と判断する。
【0196】
(明度識別方法)
以上、本実施形態に係る明度識別装置について詳細に説明したが、続いて、図9および図10を参照しながら、上述した明度識別装置を用いた本実施形態に係る明度識別方法について詳細に説明する。図9は、本実施形態に係る明度識別方法における処理の流れを示すフローチャートである。図10は、本実施形態に係る明度識別方法の各処理における処理画像を示す説明図である。
【0197】
本実施形態に係る明度識別方法は、上述した本実施形態に係る明度識別装置を用いて、平坦な基板上またはステージ上に散布された微粒子Pの明度を識別する方法であり、図9に示すように、主に、分析用サンプルを加工した後に、以下に説明する第1〜第6の工程を含む。
【0198】
まず、分析(粒子測定)用のサンプルを加工する。具体的には、検体となる微粒子P(例えば、製鉄所内の特定の場所で捕集された降下煤塵粒子)を基板1上に散布して、この基板1をステージ105上に載置するか、または、微粒子Pをステージ105上に直接散布する(S301)。微粒子Pの散布方法の詳細については、第1の実施形態と同様である。
【0199】
以上のようにして作成された分析用サンプルを用いて以下の第1〜第6の工程を実施する。
【0200】
<第1の工程>
第1の工程では、第1の実施形態と同様にして、撮影装置101が、複数の微粒子Pからなる識別対象の微粒子群からの透過光を撮像して(電気信号に変換して)モノクロ画像B0を得た(S303)後に、画像処理装置の二値化処理部が、この画像B0を第1の明度しきい値を用いて二値化し、図10に示すような画像B1を生成する(S305:二値化処理)。
【0201】
以上のようにして得られた画像B1は、高明度(白色の領域として図示)の画素と低明度(斜線の領域として図示)の画素とからなり、この画像B1中では、粒子が存在している領域が低明度の画素として認識される。従って、画像B1中における隣り合う画素の二値化明度の接続関係から、同一の二値化明度の画素(本実施形態では、低明度の画素)が連続し、かつ、他の領域(本実施形態では高明度の画素が存在する領域)と独立した領域が微粒子Pが存在する領域、例えば、図10に示す透過光粒子P1p、P2p、P3p、P4pが存在する領域)として特定される。
【0202】
<第2の工程>
第2の工程では、撮影装置101が、識別対象の微粒子群中の各微粒子Pの位置関係及び撮像範囲を第1の工程と同様に設定し、かつ、撮像範囲内の背景の明度を、粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも低い明度となるように設定する条件で、微粒子Pからの反射光のうちで特定波長領域内の反射光のスペクトルのみを撮像してモノクロ画像を得る。この際、本実施形態では、特定波長領域を異なるn種(nは2以上)の範囲に設定してn個のモノクロ画像F0(1)〜F0(n)を撮像する(S307)。ここで、モノクロ画像F0(1)〜F0(n)の撮像条件としては、特定波長領域を複数設定する以外は、第1の実施形態と同様である。
【0203】
ここで、「粒子の明暗を識別するための明度しきい値」や、「特定波長領域の反射光のみのスペクトル」を得る方法等、さらには、特定波長領域を異なるn種(nは2以上)の範囲に設定する方法については、上述した通りであるので、詳しい説明を省略する。なお、図10には、特定波長領域を異なる3種(n=3)の範囲に設定した例を示しており、この設定方法としては、赤色フィルタ、緑色フィルタ、青色フィルタの3種のフィルタを交換して用いる方法を採用し、これら3種のフィルタを用いて同一の識別対象微粒子群を撮影した例を示している。また、図10の例では、画像F0(1)を赤色フィルタを用いて撮像した画像(以下、「赤色フィルタ画像」とも記載する。)、画像F0(2)を緑色フィルタを用いて撮像した画像(以下、「緑色フィルタ画像」とも記載する。)、画像F0(3)を青色フィルタを用いて撮像した画像(以下、「青色フィルタ画像」とも記載する。)とする。
【0204】
次に、本実施形態に係る二値化処理部が、画像F0(1)〜F0(n)を第2の明度しきい値を用いて二値化した画像F1’(1)〜F1’(n)を生成する(S309:二値化処理)。このときの第2のしきい値としては、例えば、上述した「粒子の明暗を区別するための明度しきい値」を用いることができる。また、二値化の前に、画像内での照度のバラツキを補正してもよい点や、ノイズ除去処理を実施してもよい点については、画像B0の二値化の場合と同様である。
【0205】
さらに、二値化処理部が、得られた画像F1’(1)〜F1’(n)における高明度の画素と低明度の画素の明暗を反転させる明度反転処理を行うことにより、図10に示すような画像F1(1)〜F1(n)を生成する(S311:明度反転処理)。図10には、n=3の場合の例を示しており、画像F1(1)では、微粒子Pに対応する画素群として、透過光粒子P2pに対応する反射光粒子P2rが得られ、画像F1(2)では、微粒子Pに対応する画素群として、透過光粒子P2p、P3pに対応する反射光粒子P2r、P3rが得られ、画像F1(3)では、微粒子Pに対応する画素群として、透過光粒子P2p、P4pに対応する反射光粒子P2r、P4rが得られた例を示している。
【0206】
<第3の工程>
第3の工程では、まず、本実施形態に係る刻印処理部が、上述したようにして生成された画像F1(1)〜F1(n)のそれぞれにおいて、連続して位置する暗色の画素群のうち、明色の画素との境界に位置する暗色の画素の一部または全部を明色化する縮退処理を行って画像F2’(1)〜F2’(n)を生成する(S313:縮退処理)。ここで、「明色化」および「縮退処理」については、上述した通りであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0207】
また、刻印処理部が、上記のようにして得られた画像F2’(1)〜F2’(n)に対して、明度反転処理を行って画像F2(1)〜F2(n)を生成する(S315:明度反転処理)。
【0208】
<第4の工程>
第4の工程では、本実施形態に係る刻印処理部が、上記のようにして生成された画像F2(1)〜F2(n)のそれぞれに対して、第1の工程で生成された画像B1と論理和演算を行うことにより、画像B1中に存在する1または2以上の暗色の画素群(P1p、P2p、P3p、P4p)の一部または全部に、明色の画素群による刻印が施された画像F3(1)〜F3(n)を生成する(S317:刻印処理)。
【0209】
ここで、本実施形態においては、反射光画像は、背景を粒子の明暗を区別するための明度しきい値よりも低い低明度の背景で撮像されているので、画像F1(1)〜F1(n)中における反射光粒子は明色粒子に対応するものである。従って、画像F2(1)〜F2(n)における刻印も明色粒子に対応するものとなるので、画像F3(1)〜F3(n)中で刻印が施された透過光粒子は、それぞれ、明色粒子に対応するものである。
【0210】
以上のように、本実施形態では、縮小させた反射光を用いて撮像された画像中における粒子(本実施形態では明色粒子)に対応する画素群を、この明色粒子に対応する透過光を用いて撮像された画像中の画素群と論理和(OR)演算することにより、明色粒子に対応する透過光粒子中の画素群の中心部が明色化するため、明色粒子には対応しない粒子(暗色粒子)の画素群から区別できる。このように、暗色の画素群の中心部に明色部(刻印)を形成することは、明色粒子であることの印を暗色の画素群に付与したことになる。
【0211】
<第5の工程>
第5の工程では、本実施形態に係る明色粒子識別部が、画像F3(1)〜F3(n)中において刻印が施された暗色の画素群に含まれる画素の全てを明色化(暗色の画素を明色の画素に変換)することにより画像F4’(1)〜F4’(n)を得た(S319)後に、この画像F4’(1)〜F4’(n)全体に対して明度反転処理を行うことにより、図10に示すような画像F4(1)〜F4(n)を生成する(S321)。また、明色粒子識別部が、上記のようにして生成された画像F4(1)〜F4(n)のそれぞれに対して、第1の工程で生成された画像B1と論理和演算を行って画像F5(1)〜F5(n)を生成し(S323)、この画像F5(1)〜F5(n)のそれぞれにおいて、連続して位置する暗色の画素群を、粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも高い明度を有する微粒子である明色粒子として識別する(S325:明色粒子識別処理)。さらに、本実施形態に係る明色粒子識別部は、画像F5(1)〜F5(n)のいずれかで明色粒子と識別された暗色の画素群に対応する微粒子の色を、当該微粒子について明色粒子と識別された際の全ての特定波長領域内の反射光のスペクトルを合成したスペクトルに対応する色相と判断する(S327)。
【0212】
ここで、第5の工程のステップS319における刻印が施された暗色の画素群の判定は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0213】
ここで、F5(i)は単なる二値化画像であり、二値化に用いる2色は、どのような組み合わせであってもよい。そこで、本実施形態では、撮像時の色フィルタとの対応を考慮して、この2色を、F5(1)に関しては白−赤、F5(2)に関しては白−緑、F5(3)に関しては白−青、と、それぞれ定義した。ここで、白色はいずれも明色に対応する。このように色相別に定義された二値化画像を、それぞれF5’(1)、F5’(2)、F5’(3)と定義する。
【0214】
また、第5の工程では、必要に応じて、各明色粒子の粒子諸特性(位置、面積、円相当径等)を、その色ごとに分類して求めてもよい。具体的には、本実施形態に係る粒子情報算出部が、第5の工程で得られた粒子明度の識別結果に基づいて、画像F5(1)〜F5(n)中の粒子画像の位置および大きさを、各微粒子の色ごとの位置および大きさとして算出する(S329)。
【0215】
<第6の工程>
第6の工程では、本実施形態に係る暗色粒子識別部が、上記第5の工程で、画像F5(1)〜F5(n)のいずれにおいても明色粒子として識別されなかった画像B1中の暗色の画素群に対応する微粒子の色を、黒色と判断する(S331)。
【0216】
より詳細には、全てのF5’(i)を加色混合して、色相情報を有した画像C5を得る。このC5にカラー画像処理計測を施して粒子を識別し、各粒子の大きさと色相を認識する。次に、彩度を有した有色部を暗色に定義し白色を明色に定義した上でC5を二値化処理して、二値化画像C5’を得る。さらに、C5’とB1の排他的論理和演算を行って画像F6を得、これを反転した画像F7を用いて粒子画像処理計測を行うことにより黒色粒子を識別し、その大きさを求める。
【0217】
また、第6の工程では、必要に応じて、黒色粒子の粒子諸特性(位置、面積、円相当径等)を求めてもよい。具体的には、本実施形態に係る粒子情報算出部が、第6の工程で得られた粒子明度の識別結果に基づいて、上記のようにして生成された画像F7中の粒子画像の位置および大きさを黒色粒子の位置および大きさとして算出する(S333)。
【0218】
(本実施形態に係る明度識別装置および明度識別方法の利点)
以上説明した本実施形態に係る明度識別装置およびこれを用いた明度識別方法によれば、透過光を用いて不透明な微粒子群を撮像した透過光画像と、反射光を用いて不透明な微粒子群を撮像した反射光画像とに基づき、透過光画像中に存在する透過光粒子と反射光画像中に存在する反射光粒子とを、上述した二値化処理、刻印処理、明色粒子識別処理および暗色粒子識別処理により対応付けることで、性状に大きな分布を有する微粒子群を測定対象とした場合に、微粒子群中の個々の粒子の各種特性特に、粒子の明度を簡易かつ確実に識別することが可能となる。
【0219】
本実施形態によれば、反射光粒子画像を用いて識別対象粒子を色相別に分類することができるとともに、透過光粒子画像を用いて個々の粒子の大きさや形状の情報を高精度で求めることができる。また、反射光粒子画像と透過光粒子画像を組み合わせて画像処理することによって、画像中の汚れといった外乱を粒子と誤認識する確立を低減できる。さらに、モノクロカメラを用いるため、単板式カラーCCDカメラ等を使用した場合に比べて、粒子認識できる画素分解能が高く、より小径な粒子をより高精度に画像処理計測することができる。
【0220】
以上述べた実施形態は、上記の方法に限定されるものではない。例えば、上記に記載した各論理演算式と等価、または、実質的に等価な処理と部分的に交換したものであってもよい。例えば、実質的に等価な処理の例として、上記の実施形態では粒子を暗色と定義して処理を行うが、明度反転処理を前提として、粒子を明色と定義し、以下、上記実施例と同様の考え方で処理を行う場合が含まれる。また、本実施形態において、明色画素群を粒子と認識するものとして、F6を用いて、直接、明色粒子識別を行う場合も含まれる。さらに、F1での粒子の縮退を行う代わりに、B1で粒子の膨張処理を行った上でF1の明度反転画像との論理和演算を行うことによって刻印処理を行う場合も含まれる。
【0221】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態に係る明度識別装置および明度識別方法について説明するが、主に、上述した第1の実施形態と異なる構成について詳細に説明する。
【0222】
(明度識別装置)
まず、本実施形態に係る明度識別装置について説明する。本実施形態に係る明度識別装置は、上述した第1の実施形態に係る明度識別装置100と、反射光画像生成部の機能および画像処理装置130の機能が異なる。
【0223】
本実施形態に係る反射光画像生成部は、上述した第1の実施形態に係る反射光画像生成部115と第2の実施形態に係る反射光画像生成部の双方の機能を有している。すなわち、本実施形態に係る反射光画像生成部は、反射光画像上における反射光粒子の背景の明度が粒子の明暗を区別するための明度しきい値よりも低い明度となるように設定された状態で、反射光画像を生成するとともに、反射光画像上における反射光粒子の背景の明度が粒子の明暗を区別するための明度しきい値よりも高い明度となるように設定された状態で、反射光画像を生成する。
【0224】
また、本実施形態に係る画像処理装置は、第1の実施形態に係る画像処理装置130と第2の実施形態に実施形態に係る画像処理装置230の双方の機能を有する他に、明色粒子と暗色粒子との中間の明度を有する中間色粒子を識別する中間色粒子識別部を有する。
【0225】
この中間色粒子識別部は、明色粒子識別部により生成された画像F5と、暗色粒子識別部により生成された画像D5とに対して、論理積演算を行うことにより画像E0を生成した後に、この画像E0の明暗を反転させる明度反転処理を行って画像E1を生成する。
【0226】
ここで、画像F5と画像D5との論理積演算は、高明度(明色)の画素を真、低明度(暗色)の画素を偽と定義した場合に、画像F5中の画素の明度と画像D5中の画素の明度とが論理積される。従って、画像F5と画像D5の双方で明色の画素の場合にのみ画像E0中で明色の画素となり、画像F5と画像D5のいずれか一方で明色の画素、かつ、他方で暗色の画素の場合、および、画像F5と画像D5の双方で暗色の画素の場合には、画像E0中では暗色の画素となる(「真」同士の論理積は「真」となり、「真」と「偽」の論理積、および、「偽」同士の論理積は「偽」となる。)。
【0227】
次いで、中間色粒子識別部は、上記のようにして生成した画像E1と、本実施形態に係る二値化処理部により生成された画像B1とに対して論理和演算を行ってE2を生成する。ここで、画像E0中において連続して位置する暗色の画素群は、明色粒子または暗色粒子に対応するものである。従って、この画像E0を明度反転した画像E1と、識別対象の全ての微粒子に対応する暗色の画素群を含む画像B1とを論理和した画像E2には、明色粒子と暗色粒子のいずれにも識別されない微粒子に対応する暗色の画素群のみが残ることとなる。
【0228】
そこで、本実施形態では、画像E2中において連続して位置する暗色の画素群を、明色粒子と暗色粒子のいずれにも識別されない微粒子、すなわち、明色粒子と暗色粒子との中間の明度を有する微粒子である中間色粒子に対応するものとして識別することとし、個の識別を中間色粒子識別が行っている。
【0229】
(明度識別方法)
以上、本実施形態に係る明度識別装置について詳細に説明したが、続いて、図11および図12を参照しながら、上述した明度識別装置を用いた本実施形態に係る明度識別方法について詳細に説明する。図11は、本実施形態に係る明度識別方法における処理の流れを示すフローチャートである。図12は、本実施形態に係る明度識別方法の各処理における処理画像を示す説明図である。
【0230】
本実施形態に係る明度識別方法は、上述した本実施形態に係る明度識別装置を用いて、平坦な基板上またはステージ上に散布された微粒子Pの明度を識別する方法であり、図11に示すように、主に、分析用サンプルを加工した後に、以下に説明する第1〜第4の工程を含む。
【0231】
まず、分析(粒子測定)用のサンプルを加工する。具体的には、検体となる微粒子P(例えば、製鉄所内の特定の場所で捕集された降下煤塵粒子)を基板1上に散布して、この基板1をステージ105上に載置するか、または、微粒子Pをステージ105上に直接散布する(S401)。微粒子Pの散布方法の詳細については、第1の実施形態と同様である。
【0232】
以上のようにして作成された分析用サンプルを用いて以下の第1〜第4の工程を実施する。
【0233】
<第1の工程>
第1の工程では、上述した第1の実施形態に係る明度識別方法と同様にして、画像B0および画像F5を生成して明色粒子を識別する(S403)。また、第1の工程では、上述した第2の実施形態に係る明度識別方法と同様にして、画像B0および画像D5を生成して暗色粒子を識別する(S405)。これらのステップS403およびS405については、上述した第1および第2の実施形態の場合と全く同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0234】
また、第1の工程では、必要に応じて、各明色粒子および各暗色粒子の粒子諸特性(位置、面積、円相当径等)を求めてもよい。具体的には、本実施形態に係る粒子情報算出部が、第1の工程で得られた粒子明度の識別結果に基づいて、画像F5および画像D5中の粒子画像の位置および大きさを、それぞれ、明色粒子および暗色粒子の位置および大きさとして算出する(S407)。
【0235】
<第2の工程>
第2の工程では、第1の工程で生成された画像F5と画像D5とに対して論理積演算を行って画像E0を生成した(S409)後に、この画像E0の明暗を反転させる明度反転処理を行って画像E1を生成する(S411)。ここで、画像F5と画像D5との論理積演算は、明色の画素を真、暗色の画素を偽と定義した場合に、画像F5中の画素の明度と画像D5中の画素の明度とが論理積される。従って、画像F5と画像D5の双方で明色の画素の場合にのみ画像E0中で明色の画素となり、画像F5と画像D5のいずれか一方で明色の画素、かつ、他方で暗色の画素の場合、および、画像F5と画像D5の双方で暗色の画素の場合には、画像E0中では暗色の画素となる。
【0236】
<第3の工程>
第3の工程では、第1の工程のステップS403またはS405の少なくともいずれか一方で生成された画像B1と、第2の工程のステップS409で生成された画像E1とに対して論理和演算を行って画像E2を生成する(S413)。
【0237】
<第4の工程>
第4の工程では、第3の工程で生成された画像E2中において連続して位置する暗色の画素群を、明色粒子と暗色粒子との中間の明度を有する微粒子である中間色粒子として識別する(S415)。ここで、画像E2中において連続して位置する暗色の画素群を中間色粒子と識別できるのは、以下の理由による。すなわち、画像E0中において連続して位置する暗色の画素群は、明色粒子または暗色粒子に対応するものであることから、この画像E0を明度反転した画像E1と、識別対象の全ての微粒子に対応する暗色の画素群を含む画像B1とを論理和した画像E2には、明色粒子と暗色粒子のいずれにも識別されない微粒子(中間色粒子)に対応する暗色の画素群のみが残ることとなるためである。
【0238】
また、第4の工程では、必要に応じて、各中間色粒子の粒子諸特性(位置、面積、円相当径等)を求めてもよい。具体的には、本実施形態に係る粒子情報算出部が、第4の工程で得られた粒子明度の識別結果に基づいて、画像E2中の粒子画像の位置および大きさを、中間色粒子の位置および大きさとして算出する(S417)。
【0239】
(本実施形態に係る明度識別装置および明度識別方法の利点)
以上説明した本実施形態に係る明度識別装置およびこれを用いた明度識別方法によれば、透過光を用いて不透明な微粒子群を撮像した透過光画像と、反射光を用いて不透明な微粒子群を撮像した反射光画像とに基づき、透過光画像中に存在する透過光粒子と反射光画像中に存在する反射光粒子とを、上述した二値化処理、刻印処理、明色粒子識別処理および暗色粒子識別処理により対応付けることで、性状に大きな分布を有する微粒子群を測定対象とした場合に、微粒子群中の個々の粒子の各種特性特に、粒子の明度を簡易かつ確実に識別することが可能となる。
【0240】
また、本実施形態によれば、第1に、反射光照明装置により測定対象の微粒子の上方から照明し、この微粒子からの反射光を用いて微粒子を撮像した粒子画像に、主に、上述した各実施形態で説明したように、明度の高い外乱や明度低い外乱が多数予測される場合に、精度の高い粒子画像処理計測を行うことができる。
【0241】
第2に、本実施形態に係る明度識別装置およびこれを用いた明度識別方法によれば、測定対象の微粒子の明度を、上述した第1および第2の実施形態の場合より細かく(明色粒子、暗色粒子および中間色粒子の3種類)に識別することができる。
【0242】
第3に、本実施形態に係る明度識別装置およびこれを用いた明度識別方法によれば、微粒子の撮像時の条件変動に関わらず、微粒子の明度の識別を精度よく行うことができる。撮像対象が均一の反射率を有する同一の微粒子であった場合でも、画素間や各回の撮影ごとに明度が変動し得る。このような明度が変動する理由としては、例えば、照明装置の輝度や撮像手段(カメラ)の撮像素子(例えば、CCD素子)特性のドリフト等によるものや、撮影空間内において照明が不均一になったり、各CCD素子間の特性の差によるものなどがあり、明度の変動を完全に防止することが現実的にほとんど不可能である。
【0243】
従って、上方からの照明(反射光)を用いて撮像した際に明度を識別する対象である微粒子の画像の平均明度が背景の明度に近い場合、撮像時の明度の変動によって、微粒子の周縁部で背景の画素との明度差が識別できなくなる画素領域が変動し得る。極端な場合、背景の明度が変動して微粒子の平均明度が背景の明度に一致してしまうと、微粒子が認識されなくなるのに対し、背景の明度が逆方向に変動して微粒子の平均明度が背景の明度との差が生じると、当該微粒子は粒子として認識され得る。すなわち、上方からの照明を用いて撮像した粒子(反射光粒子)の面積が撮像条件によって変動することとなる。
【0244】
ここで、一般に、下方からの照明(透過光)を用いて撮像した粒子の画像処理計測時の撮像条件の差による粒子の面積の変動は小さいので、下方から照明を用いて撮像した粒子と、上方からの照明を用いて撮像した粒子との面積比により粒子の明度の識別を行う場合には、上方からの照明を用いて撮像した粒子の面積の変動によって、同一の粒子に対する明度(明/暗)の判定も変動していまい、粒子の明度識別の誤差となる。
【0245】
一方、上方からの照明を用いて撮像した際に、明度の識別対象の微粒子の画像の平均明度と背景の明度との差が大きい場合、撮像時の明度の変動があっても、粒子が存在する領域がより明確であるので、粒子の面積の変動は少ない(撮像条件が多少変動しても、粒子の平均明度が背景の明度に一致することはない)。従って、撮像条件の変動に対する粒子の明度識別の誤差は小さい。
【0246】
しかし、この場合でも、背景の明度を1種類とした条件では、粒子の明度によっては、この1種類の背景明度に近いものが存在し得る。
【0247】
そこで、本実施形態では、明背景と暗背景の2種類の背景を用いて測定対象の微粒子を撮像し、暗色粒子の識別は明背景反射光画像を用いて、明色粒子の識別は暗背景反射光画像を用いて行うことにより、常に、背景と明度の識別対象の微粒子との間の明度差を大きく確保することができる。従って、どのような条件でも、常に、撮像条件の変動に対する粒子の明度識別の誤差を小さくすることができる。
【0248】
以上述べた実施形態は、上記の方法に限定されるものではない。例えば、上記に記載した各論理演算式と等価、または、実質的に等価な処理と部分的に交換したものであってもよい。例えば、実質的に等価な処理の例として、上記の実施形態では粒子を暗色と定義して処理を行うが、明度反転処理を前提として、粒子を明色と定義し、以下、上記実施例と同様の考え方で処理を行う場合が含まれる。また、本実施形態において、明色画素群を粒子と認識するものとして、F6を用いて、直接、明色粒子識別を行う場合も含まれる。さらに、F1での粒子の縮退を行う代わりに、B1で粒子の膨張処理を行った上でF1の明度反転画像との論理和演算を行うことによって刻印処理を行う場合も含まれる。
【0249】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態に係る明度識別装置および明度識別方法について説明するが、主に、上述した実施形態と異なる構成について詳細に説明する。
【0250】
(明度識別装置)
まず、本実施形態に係る明度識別装置について説明する。本実施形態に係る明度識別装置は、上述した第2の実施形態に係る明度識別装置と、反射光画像生成部、照明制御装置および画像処理装置の機能が異なる。
【0251】
具体的には、本実施形態に係る照明制御装置は、反射光画像上における反射光粒子の背景の明度が、粒子の明暗を区別するための明度しきい値よりも高い明度であり、かつ、第1の明度<第2の明度<・・・<第Nの明度(Nは自然数)となる第1〜第Nの輝度を透過光用照明装置に設定可能となっている。
【0252】
また、本実施形態に係る反射光画像生成部は、透過光用照明装置の輝度が第1〜第Nの輝度に設定された状態で、それぞれ、第1〜第Nの反射光画像、すなわち、画像B0(1)〜B(N)(背景の明度は、画像B0(1)<画像B0(2)<・・・<画像B0(N)である。)を生成する。
【0253】
また、本実施形態に係る二値化処理部は、粒子の明暗を区別するための明度しきい値を用いて画像B0(1)〜B0(N)をそれぞれ二値化して得られる画像B1(1)〜B1(N)を生成する。
【0254】
また、本実施形態に係る画像処理装置は、上述した第2の実施形態と同様にして、画像D4を生成し、この画像D4を、二値化処理部により生成された画像B1(1)〜B1(N)のそれぞれと論理和演算し、画像D5(1)〜D5(N)を生成する。さらに、本実施形態に係る画像処理装置は、画像D5(1)〜D5(N)において連続して位置する暗色の画素群を暗色粒子と識別するとともに、画像D5(1)〜D5(N)で暗色粒子と識別された微粒子の明度を、それぞれ、第1〜第Nの明度(第1の明度<第2の明度<・・・<第Nの明度)と識別する。一方、本実施形態に係る画像処理装置は、画像D5(1)〜D5(N)のいずれにおいても暗色粒子と識別されなかった微粒子を、最も明度の高い最明色粒子として識別する。
【0255】
(明度識別方法)
以上、本実施形態に係る明度識別装置について説明したが、続いて、本実施形態に係る明度識別方法について説明する。
【0256】
本実施形態に係る明度識別方法は、上述した第2の実施形態に係る明度識別方法と、透過光画像(画像B0)をN種類の背景明度を用いて撮像している点が異なっている。
【0257】
具体的には、本実施形態に係る明度識別方法では、第1の工程において、透過光用照明装置の輝度が第1〜第Nの輝度に設定された状態で、それぞれ、第1〜第Nの反射光画像、すなわち、画像B0(1)〜B(N)(背景の明度は、第1の反射光画像<第2の反射光画像<・・・<第Nの反射光画像である。)を撮像した後に、粒子の明暗を区別するための明度しきい値を用いて画像B0(1)〜B0(N)をそれぞれ二値化して得られる画像B1(1)〜B1(N)を生成する。
【0258】
このように、透過光画像を二値化した画像が、画像B1(1)〜B1(N)のN個生成されるため、暗色粒子の識別に用いられる第2実施形態の画像D5に対応する画像も、画像D5(1)〜D5(N)のN個生成される。
【0259】
さらに、画像B0(1)〜B0(N)の背景の明度は、画像B0(1)<画像B0(2)<・・・<画像B0(N)であることから、画像D5(1)〜D5(N)のそれぞれで識別された第1〜第Nの暗色粒子の明度は、第1の暗色粒子<第2の暗色粒子<・・・<第Nの暗色粒子と識別される。一方、画像D5(1)〜D5(N)のいずれにおいても暗色粒子と識別されなかった微粒子は、最も明度の高い最明色粒子として識別される。
【0260】
(本実施形態に係る明度識別装置および明度識別方法の利点)
以上説明した本実施形態に係る明度識別装置およびこれを用いた明度識別方法によれば、第1に、反射光照明装置により識別対象の微粒子の上方から照明し、この微粒子からの反射光を用いて微粒子を撮像した粒子画像に、主に、上述した各実施形態で説明したように、明度の高い外乱や明度低い外乱が多数予測される場合に、精度の高い粒子画像処理計測を行うことができる。
【0261】
第2に、本実施形態に係る明度識別装置およびこれを用いた明度識別方法によれば、識別対象の微粒子を、単に明暗の2種類ではなく、他段階の明度で識別することができる。また、本実施形態では、反射光画像を二値化しているので、微粒子に対応する領域の画素にハイライトが存在しても、明度を判断するために使用される画素からは除外されるので、識別対象の微粒子本来の代表明度を比較的精度よく判定することができる。
【0262】
[本発明における測定対象]
上述した各実施形態を含む本発明における測定対象としては、様々な明度の微粒子を含む微粒子群であって、ここの微粒子の明度を識別することが必要なものであれば特に限定されるものではないが、代表的な例として下記のような例が挙げられる。
【0263】
(第1の例)
本発明に係る明度識別方法および明度識別装置における測定対象の第1の例としては、高純度アルミナ粉が挙げられる。
【0264】
この高純度アルミナ粉は、概ね、粒径が10〜1000μm程度で白色の粒子であるが、高純度アルミナ粉中に不純物を含む粒子(不純物粒子)は非白色となる。このような粒子の明度の違いがあることから、高純度のアルミナ粉と不純物粒子とを粒子の明度によって識別することができる。
【0265】
従って、高純度アルミナ粉製品中の不純物粒子の含有率を調査するために、本発明に係る明度識別方法および明度識別装置を使用して、高純度アルミナ粉と不純物粒子とを粒子明度によって識別し、この識別結果に基づき、高純度アルミナ粉と不純物粒子との粒子構成率を求めることが可能である。
【0266】
(第2の例)
本発明に係る明度識別方法および明度識別装置における測定対象の第2の例としては、高炉法による製鉄プラント由来の降下煤塵が挙げられる。
【0267】
このような降下煤塵は、製鉄プラント構内に乗り入れる車両を汚損する等の問題があり、このような問題への対策が必要となる。そのためには、特定の地点で捕集された降下煤塵の発生源を特定する技術が必要であり、降下煤塵の発生源を特定するための手法として、捕集された降下煤塵の煤塵種を特定することが有力であると考えられる。
【0268】
ここで、降下煤塵とは、大気中を浮遊する固体粒子のうち、大気中を平均的に沈降し得る比較的大径(概ねφ10μm以上)の粒子のことをいう。また、本発明における「煤塵種」とは、特に限定はされないが、上述した降下煤塵の発生源や構成成分等によって分類される煤塵の種類をいう。例えば、発生源によって分類する場合には、煤塵種は、鉄鉱石の原料ヤードから発生する鉄鉱石由来の煤塵、石炭の原料ヤードから発生する石炭由来の煤塵、高炉から発生する高炉スラグ由来の煤塵、転炉から発生する転炉スラグ由来の煤塵等に分類される。
【0269】
このような分類によると、高炉法による製鉄プラント由来の降下煤塵の煤塵種としては、主として、(1)主成分が炭素で共通する石炭やコークス等の石炭系煤塵や、(2)主成分が酸化鉄で共通する鉄鉱石と焼結鉱、酸化鉄粉(例えば、製鋼ダスト)等の鉄系煤塵や、(3)主成分が酸化ケイ素及び酸化カルシウムで共通し、かつ、溶融した原料から不純物を液体または固体として分離する点で工程が共通する高炉水砕スラグや高炉徐冷スラグ等の高炉スラグ系煤塵や、(4)主成分が酸化ケイ素、酸化カルシウム及び酸化鉄で共通し、かつ、溶融した原料から不純物を液体または固体として分離する点で工程が共通する転炉スラグや溶銑予備処理スラグ等の製鋼スラグ系煤塵がある。現代の高炉法による製鉄プラントにおける降下煤塵となり得る煤塵種は、上述した石炭系煤塵、鉄系煤塵、高炉スラグ系煤塵及び製鋼スラグ系煤塵でほぼ網羅することができる。
【0270】
以上のような製鉄プラント由来の降下煤塵の煤塵種を特定するためには、異なる煤塵種ごとに分離する必要があるが、この分離の方法として、本発明の明度識別方法および明度識別装置が有効である。上述した4種類の煤塵のうち、鉄系煤塵や石炭系煤塵は、黒色系の明度の低い粒子(暗色粒子)である一方で、高炉スラグ系煤塵や製鋼スラグ系煤塵は白色系の明度の高い粒子(明色粒子)であることから、本発明の明度識別方法および明度識別装置を用いて個々の煤塵粒子の明度の高低を識別することにより、鉄系煤塵および石炭系煤塵からなる微粒子群と、高炉スラグ系煤塵および製鋼スラグ系煤塵からなる微粒子群とを識別することができる。
【0271】
なお、一般に、鉄系煤塵や製鋼スラグ系煤塵は、強磁性または強い常磁性(例えば、0.1T〜0.4T程度の磁束密度を有する磁石に着磁する。)を有する微粒子であり、石炭系煤塵や高炉スラグ系煤塵は、強磁性または強い常磁性を有しない微粒子であることから、これらの微粒子を所定の磁束密度を有する磁石を用いて磁力選別することにより、鉄系煤塵と石炭系煤塵との判別や、製鋼スラグ系煤塵と高炉スラグ系煤塵との判別をすることができる。
【0272】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0273】
例えば、反射光粒子への外乱が少なく、識別対象の全粒子の明度が背景明度と大きく異なる場合には、画像処理において二値化処理をせず、撮影画像(反射光画像)をそのまま用いて粒子の識別を行うことができる(市販ソフトの粒子画像処理機能を用いれば可能)。このとき、透過光粒子の画素座標に対応する反射光粒子が存在する領域の画素での明度の平均値を当該透過光粒子に対応する微粒子の明度として算出することができる。
【実施例】
【0274】
次に、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
【0275】
(実施例1)
<分析サンプルの作成>
まず、煤塵種が既知の標準試料として、鉄鉱石、石炭、高炉水砕スラグ及び転炉スラグを準備し、各々の試料500μgを匙ですくって、白色アルマイト処理した第1のアルミ板上に匙で散布し、ステンレス製のへらを用いて、各粒子が互いに重ならないようにアルミ板に拡げた。拡げた粒子群は、直径約10mmの範囲に存在していた。
【0276】
次に、直径10mmの市販の円柱状の電磁石を中心軸が鉛直方向となるように設置し、磁石の先端面(下端面)での平均磁束密度が0.3Tとなるように電磁石に供給する電流を調整した。この状態で、作業者が電磁石を手で保持してアルミ基板上に散布された粒子の上方から垂直に下降させ、粒子に電磁石を接触させた。この状態で1秒間静止させた後、電磁石を上方に持ち上げて、着磁した粒子を電磁石とともに移動させ、別途準備しておいた白色アルマイト処理した第2のアルミ板上に、上方から垂直に電磁石を下降させて電磁石を第2のアルミ板上に載置した。次いで、電磁石に消磁電流を与えた後、電磁石への電流の供給を止め、電磁石を上方に持ち上げて第2のアルミ板上から離隔させた。
【0277】
なお、使用した第1のアルミ板及び第2のアルミ板の寸法は、ともに、大きさが30mm×30mmで、厚みが3mmであった。また、電磁石の消磁方法としては、市販の電磁石用消磁コントローラを使用した。
【0278】
以上の操作の結果、第1のアルミ板上に残留した粒子を非着磁性降下煤塵(磁石に着磁しない降下煤塵)のサンプルとし、第2のアルミ板上に残留した粒子を着磁性降下煤塵(磁石に着磁する降下煤塵)のサンプルとした。
【0279】
<微粒子の撮像>
次に、市販の三眼式実体顕微鏡(対物レンズ倍率:0.5倍)に、市販のリング状白色LED照明(以下、「反射光用照明装置」と称する。)をレンズ鏡筒に装着し、また、市販の白色LED平面配列照明(以下、「透過光用照明装置」と称する。)をステージの下方に配置した。また、市販のモノクロディジタルカメラ(CCD600万画素、画素寸法は3μm角)をカメラ装着口に装着した。また、反射光用照明装置及びレンズとステージとの間に円偏光フィルタ板を設置するとともに、鉄板を板金加工してステージの下面に上端が接し、かつ、透過光用照明装置の周囲を覆うように、遮光板を配置した。また、反射光用照明装置と透過光用照明装置とを制御する照明制御装置としては、市販の装置で、外部信号によって、反射光用照明装置と透過光用照明装置とを独立にON/OFFできるものを用いた。次いで、透明フロートガラス板(10mm厚)のステージ上に顕微鏡用スライドグラスを基板として配置し、当該基板上に、上記のようにして得られた非着磁性降下煤塵のサンプルと着磁性降下煤塵のサンプルとを、それぞれ散布し、照明条件を同一にするとともに、カメラの絞り及び露出を同一条件として順に撮影し、着磁性煤塵と非着磁性煤塵のそれぞれについて、透過光画像(画像B0)および反射光画像(画像F0)を得た。
【0280】
このときの透過光画像および反射光画像の撮像条件は以下の通りである。まず、透過光画像の撮像条件は、反射光用照明装置を消灯し、かつ、透過光用照明装置からの照明の輝度を、透過光画像上での背景の平均明度が120(明度256階調、カンマ値1.5、明度の定義は以下同様とする。)となるような輝度となるように設定して、着磁性煤塵と非着磁性煤塵のそれぞれを撮像した。また、反射光画像の撮像条件は、反射光用照明装置からの照明の輝度を、マンセル値N4.0の色見本を撮影した際の画像上での平均明度が60となるような輝度となるに設定するとともに、透過光用照明装置からの照明の輝度を、透過光画像の撮像時と同様の条件とした。このとき、粒子の明暗を区別するための明度しきい値は70とした。
【0281】
なお、顕微鏡の倍率は、測定対象の粒子の実寸法がカメラのCCD素子上で同一の寸法に結像するように調整した。また、顕微鏡で認識する対象の粒子は、降下煤塵であり粒子が粗大であることから、φ10μm以上の大きさの粒子とした。なお、本実施例において、当該粒子の大きさは、CCDの9画素以上に対応するものである。
【0282】
<画像処理>
上述したようにして得られた着磁性煤塵画像と非着磁性煤塵画像に対し、市販の粒子画像処理ソフトであるIMAGRPRO PLUS VER.5を用いて粒子画像処理計測を行った。このとき、計測の対象としては、各粒子の中心位置、各粒子の円等価直径及び各粒子の平均明度(粒子として認識される画素領域に存在する各画素の明度の平均値)とした。
【0283】
具体的には、上述した本発明の第1の実施形態における画像処理の手法を用いて、着磁性煤塵と非着磁性煤塵のそれぞれについて、各粒子を明色粒子と暗色粒子とに識別した。また、明度の識別結果に基づいて、各粒子の中心位置、平均明度及び円等価直径を算出し、算出結果を記録した。
【0284】
さらに、上述のようにして算出した各粒子の円等価直径を用いて、予め境界値を定めた粒度区分別に各粒子を分類し、粒度区分ごとの粒子構成率を明度区分(暗色粒子と明色粒子)ごとに求めた。
【0285】
以上の操作により求めた標準試料の煤塵特性は、以下の表1の通りである。
【0286】
【表1】

【0287】
また、表1に記載された標準試料のうち、鉄鉱石(着磁性暗色粒子)に関し、粒度区分ごとの粒子構成率を求めた例を以下に示す。
鉄鉱石:<φ30μm:20% <φ100μm:70% ≧φ100μm:10%
【0288】
<捕集された降下煤塵の分析>
次に、高炉法による製鉄プラントの敷地内で降下煤塵を市販のデポジットゲージで1週間捕集し、100mgの降下煤塵を得た。この降下煤塵を屋内で3日間自然乾燥した後、降下煤塵の全量のうち500μgを用いて、上述した標準試料と同様の方法により処理して、降下煤塵粒子の煤塵特性を得た。その結果を下記の表2に示す。
【0289】
【表2】

【0290】
このようにして得られた捕集された降下煤塵試料の煤塵特性と、上記表1に示された標準試料の煤塵特性とを比較し、降下煤塵試料が主に着磁性暗色粒子で構成されていることから、捕集された降下煤塵は、同様に主に着磁性暗色粒子で構成されている鉄鉱石であったものと特定した。
【0291】
なお、捕集された降下煤塵試料の粒度区分ごとの粒子構成率は、以下のようであった。
降下煤塵:<φ30μm:50% <φ100μm:45% ≧φ100μm:5%
【0292】
この結果を見ると、上に示した鉄鉱石の粒度分布とは異なっているが、この結果から、本実施例における試料である降下煤塵が捕集された場所が、発塵源(鉄鉱石が保存されているヤード等)から遠く離れていたため、捕集場所に届くまでの間に、大径の粒子が途中で落下し、大径の粒子の構成率が減少してしまったものと推測できる。
【0293】
(実施例2)
本実施例では、識別対象の粒子として高純度アルミナ粉(不純物粒子を含む。)を用い、実施例1と同様の撮像装置を用いて撮像し、高純度アルミナ粉について、透過光画像(B0)および反射光画像(画像D0)を得た。
【0294】
このときの透過光画像および反射光画像の撮像条件は以下の通りである。まず、透過光画像の撮像条件は、反射光用照明装置を消灯し、かつ、透過光用照明装置からの照明の輝度を、透過光画像上での背景の平均明度が120となるような輝度となるように設定して、高純度アルミナ粉を撮像した。また、反射光画像の撮像条件は、反射光用照明装置からの照明の輝度を、マンセル値N7.0の色見本を撮影した際の画像上での平均明度が160となるような輝度となるに設定するとともに、透過光用照明装置からの照明を消灯して高純度アルミナ粉を撮像した。このとき、粒子の明暗を区別するための明度しきい値は130とした。
【0295】
上述したようにして得られた高純度アルミナ粉の透過光画像および反射光画像に対し、市販の粒子画像処理ソフトであるIMAGRPRO PLUS VER.5を用いて粒子画像処理計測を行った。このとき、計測の対象としては、各粒子の中心位置、各粒子の円等価直径及び各粒子の平均明度(粒子として認識される画素領域に存在する各画素の明度の平均値)とした。
【0296】
具体的には、上述した本発明の第2の実施形態における画像処理の手法を用いて、高純度アルミナ粉中の各粒子を明色粒子と暗色粒子とに識別した。また、各粒子の明度の識別結果に基づいて、各粒子の中心位置、平均明度及び円等価直径を算出し、算出結果を記録した。
【0297】
さらに、上述のようにして算出した各粒子の円等価直径を用いて、予め境界値を定めた粒度区分別に各粒子を分類し、粒度区分ごとの粒子構成率を明度区分(暗色粒子と明色粒子)ごとに求めた。
【0298】
その結果、撮像した高純度アルミナ粉粒子の平均粒径は30μm、粒径の標準偏差は8μmで、合計で2600個の粒子の明度を識別した。これらの粒子のうち、個数比率で0.5%の粒子が暗色粒子として識別された。このことから、実施例2において使用した高純度アルミナ粉中には、個数比率で0.5%の不純物が含まれていることがわかった。
【0299】
(実施例3)
本実施例3では、実施例2と同一の試料を用い、明色粒子の識別方法は、実施例2と同様の方法とした。暗色粒子の識別方法として、撮像に関しては、マンセル値N7.0の色見本を撮影した際の平均明度が200となるような輝度となるように設定して明背景画像を得た。明度しきい値を90として実施形態1と同様の方法で、暗色粒子を識別した。その際用いた、透過光粒子と反射光粒子との中心位置間限界距離や限界面積比率範囲については、実施例2と同様にした。また、粒子の対応づけの方法には、実施形態3の方法を用いた。
【0300】
その結果、個数比率で0.2%の暗色粒子と0.3%の中間色粒子を識別した(残りは明色粒子)。この結果から、不純物にも明度の異なる複数種類が含まれていることがわかった。
【0301】
(実施例4)
本実施例4では、実施例3と同様の試料と同様の撮影を行い、粒子識別のみ実施形態4の方法を用いて、粒子識別を行った。明度しきい値として、暗背景画像に対しては明度90を、明背景画像に対しては明度160を用いた。その結果、個数比率で0.2%の暗色粒子と0.3%の中間色粒子を識別した(残りは明色粒子)。
【符号の説明】
【0302】
1 基板
100 明度識別装置
101 撮影装置
105 ステージ
110 撮像装置
111 撮像素子
113 透過光画像生成部
115 反射光画像生成部
119 レンズ
121 反射光用照明装置
123 透過光用照明装置
125 照明制御装置
127 遮光板
130、230 画像処理装置
131、231 二値化処理部
133、233 刻印処理部部
135、237 明色粒子識別部
137、235 暗色粒子識別部
139、239 粒子情報算出部
P 識別対象の微粒子



【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透明な微粒子の明度を識別する明度識別方法であって、
複数の前記微粒子からなる識別対象微粒子群からの透過光を撮像してモノクロ画像B0を得た後、前記画像B0を第1の明度しきい値を用いて二値化した画像B1を生成する第1の工程と、
前記識別対象微粒子群中の各粒子の位置関係及び撮像範囲を前記第1の工程と同様に設定し、かつ、前記撮像範囲内の背景の明度を、粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも低い明度となるように設定する条件で、前記微粒子からの反射光のうちで特定波長領域内の反射光のみを撮像してモノクロ画像F0を得た後、前記画像F0を第2の明度しきい値を用いて二値化した画像の明暗を反転させる明度反転処理を行って画像F1を生成する第2の工程と、
前記画像F1において連続して位置する暗色の画素群のうち、明色の画素との境界に位置する暗色の画素の一部または全部を明色化する縮退処理を行って得られた画像に、前記明度反転処理を行って画像F2を生成する第3の工程と、
前記画像B1と前記画像F2とに対して論理和演算を行うことにより、前記画像B1中に存在する1または2以上の暗色の画素群の一部または全部に、明色の画素群による刻印が施された画像F3を生成する第4の工程と、
前記刻印が施された前記暗色の画素群に含まれる画素の全てを明色化して得られた画像に、前記明度反転処理を行って画像F4を生成した後に、前記画像B1と前記画像F4とに対して論理和演算を行って画像F5を生成し、前記画像F5中において連続して位置する暗色の画素群を、前記粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも高い明度を有する微粒子である明色粒子として識別する第5の工程と、
前記画像F5に前記明度反転処理を行って得られた画像F6を生成した後に、前記画像B1と前記画像F6とに対して論理和演算を行って画像F7を生成し、前記画像F7中において連続して位置する暗色の画素群を、前記粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも低い明度を有する微粒子である暗色粒子として識別する第6の工程と、
を含むことを特徴とする、明度識別方法。
【請求項2】
前記第5の工程では、前記画像F3中の前記暗色の画素群のうち、暗色の画素に囲まれた閉領域内に所定数以上の明色の画素を含む画素群、または、前記暗色の画素群の外周を連結して得られる閉曲線の形状特性値と円形の形状特性値との差が所定量以上である画素群を、前記刻印が施された前記暗色の画素群と判定することを特徴とする、請求項1に記載の明度識別方法。
【請求項3】
前記第2の工程で、前記特定波長領域を異なるn種(nは2以上)の範囲に設定してn個のモノクロ画像F0(1)〜F0(n)を撮像した後、前記画像F0(1)〜F0(n)をそれぞれ、第2の明度しきい値を用いて二値化した画像の明暗を反転させる明度反転処理を行って画像F1(1)〜F1(n)を生成し、
前記第3の工程で、前記画像F1(1)〜F1(n)のそれぞれにおいて、連続して位置する暗色の画素群のうち、明色の画素との境界に位置する暗色の画素の一部または全部を明色化する縮退処理を行って得られた画像に、前記明度反転処理を行って画像F2(1)〜F2(n)を生成し、
前記第4の工程で、前記画像F2(1)〜F2(n)のそれぞれに対して、前記画像B1と論理和演算を行うことにより、前記画像B1中に存在する1または2以上の暗色の画素群の一部または全部に、明色の画素群による刻印が施された画像F3(1)〜F3(n)を生成し、
前記第5の工程で、前記刻印が施された前記暗色の画素群に含まれる画素の全てを明色化して得られた画像に、前記明度反転処理を行って画像F4(1)〜F4(n)を生成した後に、前記画像F4(1)〜F4(n)のそれぞれに対して、前記画像B1と論理和演算を行って画像F5(1)〜F5(n)を生成し、前記画像F5(1)〜F5(n)のそれぞれにおいて連続して位置する暗色の画素群を、前記粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも高い明度を有する微粒子である明色粒子として識別するとともに、前記画像F5(1)〜F5(n)のいずれかで明色粒子と識別された暗色の画素群に対応する前記微粒子の色を、当該微粒子について明色粒子と識別された際の全ての前記特定波長領域内の反射光のスペクトルを合成したスペクトルに対応する色相と判断し、
前記第6の工程で、前記画像F5(1)〜F5(n)のいずれにおいても明色粒子として識別されなかった前記画像B1中の暗色の画素群に対応する前記微粒子の色を、黒色と判断することを特徴とする、請求項1または2に記載の明度識別方法。
【請求項4】
不透明な微粒子の明度を識別する明度識別方法であって、
複数の前記微粒子からなる識別対象微粒子群からの透過光を撮像してモノクロ画像B0を得た後、前記画像B0を第1の明度しきい値を用いて二値化した画像B1を生成する第1の工程と、
前記識別対象微粒子群中の各粒子の位置関係及び撮像範囲を前記第1の工程と同様に設定し、かつ、前記撮像範囲内の背景の明度を、粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも高い明度となるように設定する条件で、前記微粒子からの反射光のうちで特定波長領域内の反射光のみを撮像してモノクロ画像D0を得た後、前記画像D0を第3の明度しきい値を用いて二値化した画像D1を生成する第2の工程と、
前記画像D1において連続して位置する暗色の画素群のうち、明色の画素との境界に位置する暗色の画素の一部または全部を明色化する縮退処理を行って得られた画像に、当該画像の明暗を反転させる明度反転処理を行って画像D2を生成する第3の工程と、
前記画像B1と前記画像D2とに対して論理和演算を行うことにより、前記画像B1中に存在する1または2以上の暗色の画素群の一部または全部に、明色の画素群による刻印が施された画像D3を生成する第4の工程と、
前記刻印が施された前記暗色の画素群に含まれる画素の全てを明色化して得られた画像に、前記明度反転処理を行って画像D4を生成した後に、前記画像B1と前記画像D4とに対して論理和演算を行って画像D5を生成し、前記画像D5中において連続して位置する暗色の画素群を、前記粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも低い明度を有する微粒子である暗色粒子として識別する第5の工程と、
前記画像D5に前記明度反転処理を行って得られた画像D6を生成した後に、前記画像B1と前記画像D6とに対して論理和演算を行って画像D7を生成し、前記画像D7中において連続して位置する暗色の画素群を、前記粒子の明暗を識別するための明度しきい値よりも高い明度を有する微粒子である明色粒子として識別する第6の工程と、
を含むことを特徴とする、明度識別方法。
【請求項5】
前記第5の工程では、前記画像D3中の前記暗色の画素群のうち、暗色の画素に囲まれた閉領域内に所定数以上の明色の画素を含む画素群、または、前記暗色の画素群の外周を連結して得られる閉曲線の形状特性値と円形の形状特性値との差が所定量以上である画素群を、前記刻印が施された前記暗色の画素群と判定することを特徴とする、請求項4に記載の明度識別方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の明度識別方法により前記画像F5を生成して前記明色粒子を識別するとともに、請求項3または4に記載の明度識別方法により前記画像D5を生成して前記暗色粒子を識別する第1の工程と、
前記画像F5と前記画像D5とに対して論理積演算を行って画像E0を生成した後に、前記画像E0の明暗を反転させる明度反転処理を行って画像E1を生成する第2の工程と、
前記第1の工程で生成された前記画像B1と前記画像E1とに対して論理和演算を行って画像E2を生成する第3の工程と、
前記画像E2中において連続して位置する暗色の画素群を、前記明色粒子と前記暗色粒子との中間の明度を有する微粒子である中間色粒子として識別する第4の工程と、
を含むことを特徴とする、明度識別方法。
【請求項7】
前記微粒子は、高炉法による製鉄プラントに由来する降下煤塵であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の明度識別方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−203118(P2011−203118A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70809(P2010−70809)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】