微粒子分散体
【課題】微粒子の配列構造が安定的に維持され、特定の波長の光を反射することができ、光の入射角の変化によって反射光のピーク波長が変化する反射光の角度依存性を十分に低減することが可能な微粒子分散体を提供すること。
【解決手段】平均粒子径が50nm〜10μmの範囲にあり且つ粒子径のCv値が10%以下である第一微粒子が媒質中に分散してなる微粒子分散体であって、
前記分散体中における前記第一微粒子の配列構造が、アモルファス構造であり且つ下記条件(A)及び(B):
[条件(A)]
前記分散体の走査型電子顕微鏡写真に基いて下記式:
g(r)={1/〈ρ〉}×{dn/da}
[式中、g(r)は動径分布関数を示し、〈ρ〉は平面内の平均粒子密度を示し、dnは任意の第一微粒子からの距離rの円と距離r+drの円との間の領域中に存在する第一微粒子の数を示し、daは前記領域の面積(2πr・dr)を示す。]
を計算して求められる平面内の動径分布関数において、前記動径分布関数の第一の極大値における前記距離rの値が前記第一微粒子の平均粒子径の1〜2倍の値であること、
[条件(B)]
前記動径分布関数の前記第一の極大値と前記第一の極大値に隣接する第二の極大値との間にある前記動径分布関数の極小値が0.5以下の値であること、
を満たす短距離秩序構造を有していること、
を特徴とする微粒子分散体。
【解決手段】平均粒子径が50nm〜10μmの範囲にあり且つ粒子径のCv値が10%以下である第一微粒子が媒質中に分散してなる微粒子分散体であって、
前記分散体中における前記第一微粒子の配列構造が、アモルファス構造であり且つ下記条件(A)及び(B):
[条件(A)]
前記分散体の走査型電子顕微鏡写真に基いて下記式:
g(r)={1/〈ρ〉}×{dn/da}
[式中、g(r)は動径分布関数を示し、〈ρ〉は平面内の平均粒子密度を示し、dnは任意の第一微粒子からの距離rの円と距離r+drの円との間の領域中に存在する第一微粒子の数を示し、daは前記領域の面積(2πr・dr)を示す。]
を計算して求められる平面内の動径分布関数において、前記動径分布関数の第一の極大値における前記距離rの値が前記第一微粒子の平均粒子径の1〜2倍の値であること、
[条件(B)]
前記動径分布関数の前記第一の極大値と前記第一の極大値に隣接する第二の極大値との間にある前記動径分布関数の極小値が0.5以下の値であること、
を満たす短距離秩序構造を有していること、
を特徴とする微粒子分散体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
媒質中に単分散な微粒子が分散された分散体として、微粒子が規則配列したコロイド結晶が知られている。このようなコロイド結晶はBragg反射し構造発色することが知られており、これを色材に応用する技術や赤外線反射膜に応用する技術が研究されてきた。しかしながら、このようなコロイド結晶を利用した色材においては、Bragg回折に起因して発色することから、入射光の入射角と観察角の変化によって、その発色が変化してしまうという問題があった。このような反射光のピーク波長が入射光の入射角によって変化してしまう現象は、オパールの遊色効果として知られているコロイド結晶の特性ではあるが、特定の色を表示するための色材として利用する場合には問題となってしまう。また、コロイド結晶を赤外線反射膜として用いる場合においては、上述のようにコロイド結晶が入射光の入射角によって反射光の波長が変化するものであることから、入射光の角度によって反射特性が異なることとなり、赤外線反射膜の本来の目的である断熱効果が太陽の角度により変化してしまうという問題があり、特に、反射ピーク波長が可視光域にずれてしまった場合には、十分な断熱効果が発現しなくなるという問題があった。このように、コロイド結晶においては、反射光の角度依存性を十分に低減することができず、入射光の入射角の変化によって反射光の特性が変化していた。
【0003】
また、従来から、媒質中に微粒子がランダムに配列した構造を有する微粒子の分散体においても、その構造により光のレイリー散乱やチンダル散乱が生じ、光の反射現象が生じることが知られている。しかしながら、このようなレイリー散乱やチンダル散乱等の光の反射現象を利用して発色する分散体は、青空や夕焼け、あるいは牛乳を灯りに透かした場合に赤っぽく見えることなどからわかるように、散乱による青色、透過による赤色の発色を生じさせる(これらの色は補色の関係)ことができるだけであった。そのため、レイリー散乱やチンダル散乱を利用して発色する分散体においては、特定の色を発色することが困難であり、可視光を透過し赤外光のみを反射することは原理的に不可能であった。
【0004】
一方、近年では媒質中に微粒子等がランダムに配列した分散体であって光のレイリー散乱によらない反射現象を示す分散体が報告されてきた。例えば、2004年に発行されたThe Journal of Experimental Biologyの2157〜2172頁(非特許文献1)においては、マンドリルの皮膚がコラーゲンのquasi‐ordered arrayによって発色を示すことが開示されている。また、2005年に発行された応用物理、第74巻、第2号の202〜207頁(非特許文献2)においては、円柱のアモルファス構造体により光の反射が生じ得ることが開示されている。更に、2008年1月9日の東京大学生産技術研究所第66回定例記者会見の資料(非特許文献3)においては、長距離秩序をもたないアモルファス構造でも光の3次元閉じ込め効果が発現することが開示されている。しかしながら、非特許文献1に記載のマンドリルの皮膚は自然界に見られるものであり、これを特定の波長の光を反射させる色材や赤外線反射膜に応用することはできなかった。また、非特許文献2〜3の記載はシミュレーションによる結果が示されているのみであり、これらの文献に記載の構造体も未だ人工的に実現されたものではなかった。なお、非特許文献3においては、コロイド溶液が相分離を示す際に光の反射現象を示すのに必要な特殊なランダム構造をとることを示唆する記載があるが、このような状態を安定的に維持することは困難であり、このようなランダム構造が安定的に保持された分散体は未だ得られていなかった。なお、このようなランダムな構造により特定の波長の光を反射できる理由は、非特許文献1〜2では短距離的な秩序構造を起源としているのに対して非特許文献3では局所的な4配位構造を起源としており、必ずしも明確になっていない。
【非特許文献1】Richard O.Prum.et al.,「Structural colouration of mammalian skin:convergent evolution of coherently scattering dermal collagen arrays」,The Journal of Experimental Biology,207,2004年発行,2157‐2172頁
【非特許文献2】宮嵜博司著、「アモルファス構造におけるフォトニックギャップ」、応用物理、第74巻、第2号、2005年発行、202〜207頁
【非特許文献3】枝川圭一ら著、「フォトニック・アモルファス・ダイヤモンド」、2008年1月9日、東京大学生産技術研究所 第66回 定例記者会見資料、インターネットURL(http://www.iis.u-tokyo.ac.jp/publication/topics/2008/080109press.pdf)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、微粒子の配列構造が安定的に維持され、特定の波長の光を反射することができ、光の入射角の変化によって反射光のピーク波長が変化する反射光の角度依存性を十分に低減することが可能な微粒子分散体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、平均粒子径が50nm〜10μmの範囲にあり且つ粒子径のCv値が10%以下である第一微粒子が媒質中に分散してなる微粒子分散体において、前記分散体中における前記第一微粒子の配列構造を、アモルファス構造とし且つ後述する条件(A)及び(B)を満たす短距離秩序構造とすることにより、その分散体が微粒子の配列構造を安定的に維持しながら特定の波長の光を反射することができ、しかも光の入射角の変化によって反射光のピーク波長が変化する反射光の角度依存性を十分に低減することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の微粒子分散体は、平均粒子径が50nm〜10μmの範囲にあり且つ粒子径のCv値が10%以下である第一微粒子が媒質中に分散してなる微粒子分散体であって、
前記分散体中における前記第一微粒子の配列構造が、アモルファス構造であり且つ下記条件(A)及び(B):
[条件(A)]
前記分散体の走査型電子顕微鏡写真に基いて下記式:
g(r)={1/〈ρ〉}×{dn/da}
[式中、g(r)は動径分布関数を示し、〈ρ〉は平面内の平均粒子密度を示し、dnは任意の第一微粒子からの距離rの円と距離r+drの円との間の領域中に存在する第一微粒子の数を示し、daは前記領域の面積(2πr・dr)を示す。]
を計算して求められる平面内の動径分布関数において、前記動径分布関数の第一の極大値における前記距離rの値が前記第一微粒子の平均粒子径の1〜2倍の値であること、
[条件(B)]
前記動径分布関数の前記第一の極大値と前記第一の極大値に隣接する第二の極大値との間にある前記動径分布関数の極小値が0.5以下の値であること、
を満たす短距離秩序構造を有していることを特徴とするものである。
【0008】
また、上記本発明の微粒子分散体においては、前記媒質中に、前記第一微粒子の平均粒子径(d)のα倍(αは0.5以上0.8以下の数値あるいは1.2以上2.6以下の数値を示す。)の大きさ(α×d)の平均粒子径を有し且つ粒子径のCv値が10%以下の第二微粒子を、第一微粒子100個に対して5個〜100/α3個の割合で更に分散していることが好ましい。
【0009】
さらに、上記本発明の微粒子分散体においては、前記第一微粒子が無機微粒子からなることが好ましい。また、上記本発明の微粒子分散体においては、前記媒質が高分子化合物からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、微粒子の配列構造が安定的に維持され、特定の波長の光を反射することができ、光の入射角の変化によって反射光のピーク波長が変化する反射光の角度依存性を十分に低減することが可能な微粒子分散体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0012】
本発明の微粒子分散体は、平均粒子径が50nm〜10μmの範囲にあり且つ粒子径のCv値が10%以下である第一微粒子が媒質中に分散してなる微粒子分散体であって、
前記分散体中における前記第一微粒子の配列構造が、アモルファス構造であり且つ下記条件(A)及び(B):
[条件(A)]
前記分散体の走査型電子顕微鏡写真に基いて下記式:
g(r)={1/〈ρ〉}×{dn/da}
[式中、g(r)は動径分布関数を示し、〈ρ〉は平面内の平均粒子密度を示し、dnは任意の第一微粒子からの距離rの円と距離r+drの円との間の領域中に存在する第一微粒子の数を示し、daは前記領域の面積(2πr・dr)を示す。]
を計算して求められる平面内の動径分布関数において、前記動径分布関数の第一の極大値における前記距離rの値が前記第一微粒子の平均粒子径の1〜2倍の値であること、
[条件(B)]
前記動径分布関数の前記第一の極大値と前記第一の極大値に隣接する第二の極大値との間にある前記動径分布関数の極小値が0.5以下の値であること、
を満たす短距離秩序構造を有していること、
を特徴とするものである。
【0013】
このような第一微粒子の平均粒子径は50nm〜10μm(より好ましくは100nm〜1μm、更に好ましくは150nm〜500nm)である。このような第一微粒子の平均粒子径が前記下限未満では、可視光域から赤外光域に反射ピークを有する構造色を呈する微粒子分散体の作成が困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、反射ピーク波長が太陽光に含まれる赤外線の波長を大きく超え、赤外線反射膜に要求される波長を超えてしまう傾向にある。
【0014】
また、このような第一微粒子としては、粒子径のCv値が10%以下(より好ましくは5%以下、更に好ましくは1〜3%)である必要がある。このような粒子径のCv値が10%を超える微粒子は、粒径のばらつきが大きいため、アモルファス構造を形成した際の短距離秩序構造を形成することが困難となる傾向にある。また、ここにいう「粒子径のCv値」は、下記式:
[Cv値]=([粒子径の標準偏差]/[平均粒子径])×100
で定義される値(単位:%)をいう。このような第一微粒子の平均粒子径及び粒子径の標準偏差は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて200個以上の微粒子の粒子径の測定値に基づいて算出する。さらに、ここにいう粒子径とは、粒子が球形でない場合には外接円の最大直径をいう。
【0015】
さらに、このような第一微粒子としては特に制限されず、無機微粒子、高分子微粒子、ゲル微粒子等の各種微粒子を適宜用いることができる。このような無機微粒子としては、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物の粒子、窒化ケイ素、窒化アルミ、窒化ホウ素等の無機窒化物の粒子等が挙げられる。また、このような第一微粒子の中でも、耐久性及び安定性がより向上するという観点から、無機微粒子がより好ましく、無機酸化物の粒子が更に好ましく、シリカ粒子が特に好ましい。
【0016】
このような第一微粒子の製造方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、合成方法としてStober法を採用し、得られる微粒子が第一微粒子となるように製造条件を適宜変更しながら製造してもよい。また、市販の微粒子を利用してもよい。
【0017】
また、前記媒質としては、液体状態のものであってもゲル状態のものであっても固体状態のものであってもよく、特に制限されないが、色材や赤外線防止膜に用いるといった用途の観点からは、固体状態のものがより好ましく、高分子化合物からなるものが特に好ましい。また、このような高分子化合物としては特に制限されず、公知の高分子化合物を適宜用いることができ、例えば、色材や赤外線防止膜等に用いることが可能な公知の高分子化合物を適宜用いることができる。このような高分子化合物としては、例えば、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル)、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ(ジエチレングリコールビスアリルカーボネート)、ポリウレタン等が挙げられ、中でも、前記微粒子がシリカ粒子である場合に微粒子の凝集を抑制し、比較的容易に微粒子分散体が得られるという観点から、アクリル樹脂がより好ましい。
【0018】
また、本発明の微粒子分散体中における前記第一微粒子の配列構造は、アモルファス構造である。ここにいう「アモルファス構造」とは、前記微粒子分散体が基材上に形成されたものである場合には基材の表面に対して平行な面内のあらゆる方向において、また、前記分散体が容器内において形成されている場合には容器の底面あるいは側面に対して平行な面内のあらゆる方向において、微粒子の規則配列の周期が粒子20個を超えない非結晶状又は微結晶状の構造をいい、微粒子の規則配列が長距離的な秩序性を有していないことを示す。本発明においては、第一の微粒子の配列構造がアモルファス構造であるため、Bragg回折による反射が生じなくなる。なお、このような構造は、前記分散体が基材上に形成されたものである場合には基材の表面に対して平行な面又は前記分散体が容器内において形成されている場合には容器の底面あるいは側面に対して平行な面を、走査型電子顕微鏡により観測することにより確認できる。
【0019】
本発明の微粒子分散体中における前記第一微粒子の配列構造は、前記分散体の走査型電子顕微鏡写真に基いて下記式:
g(r)={1/〈ρ〉}×{dn/da}
[式中、g(r)は動径分布関数を示し、〈ρ〉は平面内の平均粒子密度を示し、dnは任意の第一微粒子からの距離rの円と距離r+drの円との間の領域(円殻)中に存在する第一微粒子の数を示し、daは前記領域の面積(2πr・dr)を示す。]
を計算して求められる平面内の動径分布関数において、前記動径分布関数の第一の極大値における前記距離rの値が前記第一微粒子の平均粒子径の1〜2倍の値であるという条件を満たす(条件(A))。本発明においては、前記動径分布関数は以下に示す方法により求める。すなわち、先ず、前記分散体が基材上に形成されたものである場合には基材の表面に対して平行な面又は前記分散体が容器内において形成されている場合には容器の底面あるいは側面に対して平行な面において、少なくとも第一微粒子を500個以上含有している領域を走査型電子顕微鏡により観測する。次に、得られる走査型電子顕微鏡の画像(写真)中の任意の1つの第一微粒子を選択し、その第一微粒子を中心として第一微粒子が少なくとも200個以上含まれる円を描き、かかる円の内部の領域内に含まれる微粒子の個数を求める。次いで、求められた微粒子の個数を前記円の面積で除することにより、平均粒子密度〈ρ〉(単位:個/cm2)を求める。次いで、画像解析ソフト(例えばMedia Cybernetics社製の商品名「Image pro」)を用いて、前記円内の各第一微粒子の座標を求める。そして、その座標を用いて、前記円の中心に定めた第一微粒子と、前記円内の他の第一微粒子との距離rを求める。そして、drとしてr0/20〜r0/10(r0は第一微粒子の平均半径示す。)程度の値を取り且つ距離rを0から[前記円の半径−dr]までの変数として、中心の第一微粒子から距離(半径)rの円と距離(半径)r+drの円との間の領域(円殻)中にある粒子の数dn、及び前記領域(円殻)の面積da(da=2πr・dr)を求める。そして、このようにして求められる〈ρ〉、dn、daの値を用いて、下記式:
g(r)={1/〈ρ〉}×{dn/da}
を計算することにより動径分布関数g(r)を求める。
【0020】
また、前記第一の極大値とは、縦軸をg(r)、横軸をr又はr/r0(r0は第一微粒子の平均半径を示す。)としたグラフに現れる複数のピークのうち、そのピークの位置におけるr又はr/r0の値が最小となるピークをいう。また、ここにいうピークとは明確な凸型の曲線であって、距離rを基準とした半値幅がr0/10以上r0以下(r0は第一微粒子の平均半径を示す。)のものをいう。このような第一の極大値における距離rの値としては、前記第一微粒子の平均粒子径の1〜2倍(より好ましくは1.1〜1.8倍)の値である必要がある。このような第一の極大値における距離rの値が、前記下限未満の値では粒子同士の重なりが多いことを意味し、短距離秩序が形成されなくなる傾向にあり、他方、前記微粒子の平均粒子径の2倍を超えると、粒子間の静電的相互作用が十分に及ばなくなり、やはり短距離秩序が形成されなくなる傾向にある。
【0021】
また、本発明の微粒子分散体中における前記第一微粒子の配列構造は、前記動径分布関数の前記第一の極大値と前記第一の極大値に隣接する第二の極大値との間にある前記動径分布関数の極小値が0.5以下(より好ましくは0.4以下)の値であるという条件を満たす(条件(B))。このような極小値が0.5を越えると、分散体が短距離的な秩序構造を有さないものとなり、目的とする反射性能が得られなくなる。
【0022】
このように、本発明の微粒子分散体中における前記第一微粒子の配列構造は、アモルファス構造であって長距離的な秩序構造を有さないが、上記条件(A)及び条件(B)を満たし、短距離的な秩序構造を有するものである。本発明の微粒子分散体が角度依存性(入射光の入射角の変化により反射光のピーク波長が変化する性質)を十分に低減しながら構造発色を呈することができる理由は必ずしも定かではないが、微粒子の配列構造がアモルファス構造であり且つ上記条件(A)及び条件(B)を満たすような短距離秩序構造を有していることにより、反射光の角度依存性が十分に低減されるものと本発明者らは推察する。なお、本発明の微粒子分散体においては、動径分布関数g(r)と距離r又はr/r0との関係を示すグラフにおいて、基本的に、g(r)の値の第一のピークが現れる位置における距離r(又はr/r0)の整数倍の距離r(又はr/r0)の位置にg(r)の値の他のピークが観測され、第一のピークにおける距離の2倍の位置に第二のピークが現れる。このように第一のピーク(第一の極大値)が現れる位置における距離r(又はr/r0)の整数倍の距離r(又はr/r0)の位置に他のピークが現れることは、微粒子の配列構造がある程度の短距離秩序性を有することを意味する。なお、完全性の高いコロイド結晶の場合には、g(r)の値の第一のピークが現れる位置におけるr(又はr/r0)の整数倍以外の位置にも他のピークが観測される。他方、g(r)の値の第一のピークが現れる位置におけるr(又はr/r0)の2倍のr(又はr/r0)の位置に第二のピークが観測される分散体であっても、第一のピークと第二のピークとの間の極小値が0.5を超える数値となる場合には、構造色が観測されない(後述の比較例2参照)。従って、構造色を示すような短距離秩序性を有する分散体においては、第一のピークと、これに隣接する第二のピーク(第一のピークにおける距離r(r1)の2倍の位置(2×r1)において観測されるピーク)との間の極小値が0.5以下となる必要がある。このような観点から、本発明においては、微粒子分散体の短距離秩序構造の有無の判断を、動径分布関数g(r)の値(特に前記極小値)を基準にして行う。そして、上述の条件(A)及び条件(B)を満たす場合に短距離的な秩序構造を有するものと判断する。なお、このような短距離的な秩序構造は、微粒子分散体の粒子配列を共焦点レーザー顕微鏡や電子顕微鏡などの手段により粒子配列の状態の画像を取得し、その画像をFourier変換し、リング状パターンが得られることによっても確認することができる。
【0023】
また、本発明の微粒子分散体は、前記媒質中に、前記第一微粒子とともに、前記第一微粒子の平均粒子径(d)のα倍(αは0.5以上0.8以下の数値あるいは1.2以上2.6以下の数値を示す。)の大きさ(α×d)の平均粒子径を有し且つ粒子径のCv値が10%以下の第二微粒子を、第一微粒子100個に対して5個〜100/α3個の割合で更に分散してもよい。このような異径粒子(第二微粒子)を第一微粒子と混合して前記媒質中に分散させることにより、より容易に、微粒子の配列構造をアモルファス構造としつつ前記条件(A)及び(B)を満たす構造とすることが可能となる傾向にある。
【0024】
このような第二微粒子は、第一微粒子の平均粒子径(d)のα倍[αは0.5以上0.8以下の数値あるいは1.2以上2.6以下(より好ましくは1.5以上2.5以下)の数値を示す。]の大きさ(α×d)の平均粒子径を有するという条件を満たす微粒子である。このようなαの値が、0.8<α<1.2で表される範囲の数値である場合には、第一微粒子と第二微粒子の平均粒子径が近くなって、第一微粒子と第二微粒子とを混合しても微粒子の粒子径の分布のばらつきが十分に大きくならない傾向にあり、規則的な配列が形成されやすくなる傾向にある。また、αの値が0.5未満では、含有比率の上限まで第二微粒子を含有させても構造を乱す効果が十分なものではなくなる傾向にあり、他方、2.6を超えると、第二微粒子の体積分率が第一微粒子の体積分率を超えないようにするためには5個未満の粒子しか加えることができなくなり、構造を乱す効果が十分なものではなくなる傾向にある。
【0025】
また、前記第二微粒子の含有比率は、前記混合物中の第二微粒子の粒子数が第一微粒子の粒子数100個に対して5個〜100/α3個(αは、前述の数値を示す。)の範囲となるようにする必要がある。このような第一微粒子の粒子数100個に対する前記混合物中の第二微粒子の粒子数が5個未満では、第二微粒子を用いる効果が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、第二微粒子の体積分率が第一微粒子の体積分率を超えて、第一微粒子と第二微粒子の関係が逆転してしまう傾向にある。なお、このような第二微粒子としては、上述の第二微粒子の条件を満たす微粒子の1種を単独で用いてもよく、上記第二微粒子の条件を満たす微粒子を2種以上混合してもよい。
【0026】
このような第二微粒子の製造方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、合成方法としてStober法を採用し、得られる微粒子が第二微粒子となるように製造条件を適宜変更しながら製造してもよい。また、市販の微粒子を利用してもよい。
【0027】
さらに、本発明の微粒子分散体は、基材上に形成させてもあるいは容器中に形成させてもよく、各種用途に応じて適宜基材等を用いて形成させればよい。このような基材としては、例えば、アクリル樹脂やポリカーボネート等の樹脂シート、ポリエステル、ポリカーボネート等の樹脂フィルム、ガラス基板等が挙げられる。また、前記容器としては、例えば、ガラスや樹脂製のビンやセル等が挙げられる。また、このような微粒子分散体の用途としては、各種色材、赤外線反射膜等が挙げられる。
【0028】
次に、本発明の微粒子分散体を製造するのに好適な方法を説明する。本発明の微粒子分散体を製造する方法は、上記本発明の微粒子分散体を形成できる方法であればよく特に制限されない。このような本発明の微粒子分散体を製造するのに好適な方法としては、例えば、モノマー中に前記第一微粒子を分散させた後に、ゼータ電位が5mV〜10mVとなるようにして微粒子分散液を得る工程と、前記微粒子分散液中のモノマーを硬化させて、高分子化合物からなる媒質中に前記第一微粒子が分散された上記本発明の微粒子分散体を得る工程とを含む方法(I)が挙げられる。
【0029】
このような方法(I)においては、先ず、モノマー中に前記第一微粒子を分散させた後に、ゼータ電位が5mV〜10mVとなるようにして微粒子分散液を得る。このような方法(I)に用いる第一微粒子は、前述のものと同様のものである。
【0030】
このようなモノマーとしては、これを硬化させることにより高分子化合物からなる媒質を形成できるものであればよく特に制限されず、公知のモノマーを適宜用いることができ、モノマー中における第一微粒子の分散性の観点から、非イオン性の親水基を含むモノマーを用いることが好ましい。このような親水性モノマーとしては特に制限されず、公知の親水性ポリマーを適宜利用することができ、例えば、エチレングリコール鎖長が異なるポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、あるいは、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。また、このような親水性モノマーの中でも、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。このようなポリエチレングリコールアクリレート類又はポリプロピレングリコールアクリレート類は、エチレン又はプロピレングリコール鎖長が異なる種々のモノマーを利用することができ、鎖長によって親水性を制御でき、これを用いることで第一微粒子の配列状態をより効率よく制御できる傾向にある。なお、このような親水性モノマーは1種類を単独で、あるいは2種類以上混合して用いてもよい。また、このような方法(I)においては前記モノマーを少なくとも1種含めばよく、前記モノマーのみを含有するものであっても又はモノマーと溶媒とを含有するものであってもよい。また、このような溶媒としては、公知の溶媒(例えば、アルコール類等)を適宜用いることができる。また、このようなモノマー中に第一微粒子を分散させる方法は特に制限されず、超音波を印加する方法、撹拌による方法等公知の方法を適宜採用することができる。
【0031】
さらに、前記微粒子分散液は、そのゼータ電位を5mV〜10mVとする必要がある。このようなゼータ電位が10mVを超えると、微粒子が規則配列してコロイド結晶が形成される傾向にあり、他方、5mV未満では、液中にて第一微粒子が凝集して分散状態を維持できなくなる傾向にある。また、このように微粒子分散液のゼータ電位を5mV〜10mVとすることによって、分散液中において微粒子がランダムに分散し、平均として特定の最近接粒子間距離を保った状態で微粒子が配列された構造が安定的に維持され、液中での微粒子の配列構造をアモルファス構造としつつ上記条件(A)及び条件(B)を満たす短距離秩序構造とすることが達成できる。そのため、このような微粒子分散液中のモノマーを硬化させることで、高分子化合物からなる媒質中に第一微粒子が分散された微粒子分散体を容易に製造することが可能となる。
【0032】
また、前記微粒子分散液のゼータ電位を5mV〜10mVに調製する方法としては特に制限されないが、例えば、モノマー中に前記第一微粒子を分散させながら適宜ゼータ電位を測定し、ゼータ電位が5mV〜10mVとなるようにNaOH水溶液、KOH水溶液等の塩基性水溶液やNaCl水溶液のような電解質等のゼータ電位調整剤を適宜添加する方法が挙げられる。なお、ここにいう微粒子分散液のゼータ電位は、前記微粒子分散液を、その分散液中のモノマーで500倍に希釈した希釈液を用いてゼータ電位測定装置(例えば、マイクロテック・ニチオン株式会社製の「ZEECOM」)により測定した値をいう。また、ゼータ電位調整剤の種類や使用量は、ゼータ電位が5mV〜10mVとなるように、用いたモノマーの種類や量等に応じて適宜選択することができる。
【0033】
また、方法(I)においては、次に、前記微粒子分散液中のモノマーを硬化させて、高分子化合物からなる媒質中に前記第一微粒子が分散された上記本発明の微粒子分散体を得る。このようにして得られる微粒子分散体は、分散体中における前記第一微粒子の配列構造がアモルファス構造であり且つ上記条件(A)及び(B)を満たす短距離秩序構造を有するものとなる。
【0034】
このようなモノマーを硬化させる方法(条件等)としては、特に制限されず、公知の方法(条件等)を適宜採用することができる。また、モノマーを硬化させる前に、前記微粒子分散液を基材上に供給し、基材上に微粒子分散体を形成してもよい。このような微粒子分散液を基材に供給する方法は特に制限されず、例えば、スピンコート法、ディッピング法、ナイフエッジ法等の公知の方法を適宜採用することができる。
【0035】
以上、本発明の微粒子分散体を製造する好適な方法を、方法(I)を例に挙げて説明したが、本発明の微粒子分散体を製造する方法は上記方法(I)に制限されるものではなく、他の方法を採用してもよい。このような他の方法としては、例えば、前記第一微粒子と、前記第一微粒子の平均粒子径(d)のα倍(αは0.5以上0.8以下の数値あるいは1.2以上2.6以下の数値を示す。)の大きさ(α×d)の平均粒子径を有し且つ粒子径のCv値が10%以下の第二微粒子とを第二微粒子の含有割合が第一微粒子100個に対して5個〜100/α3個となるようにして混合した混合物をモノマー中に分散させて微粒子分散液を得る工程と、前記微粒子分散液中のモノマーを硬化させて高分子化合物からなる媒質中に前記第一微粒子が分散された上記本発明の微粒子分散体を得る工程とを含む方法(II)が挙げられる。このように第一微粒子と第二微粒子との混合物を用いて、これをモノマー中に分散させることで、モノマー中の微粒子全体の粒径にバラツキが生じて、分散液中における前記微粒子の配列構造がアモルファス構造となるとともに上記条件(A)及び(B)を満たす短距離秩序構造を有するものとなる。そのため、このような第一微粒子と第二微粒子との混合物を用いる方法(II)においても本発明の微粒子分散体を製造することが可能となる。なお、このようなモノマーとしては方法(I)において説明したものと同様のものを用いることができ、また、微粒子の分散方法およびモノマーの硬化方法としては方法(I)で説明した方法と同様の方法を採用できる。
【0036】
また、上記方法(I)及び方法(II)においては、微粒子分散体の媒質が固体状態の高分子化合物である場合の微粒子分散体の製造方法を説明したが、媒質を液状のまま使用してもよい。この場合には、媒質として上記モノマー以外に水や有機溶媒等のコロイド結晶の製造に用いられる公知の溶媒を用い、モノマーを硬化させる工程を行わない以外は上記方法(I)又は(II)と同様の方法を採用してもよい。また、媒質をゲル状とする場合においては、例えば、特開2005−338243号公報に記載されているゲル化の方法等を採用して、媒質をゲル化すればよい。このような製造方法により、人工的に且つ安定的に角度依存性の低減された光の反射現象を示すランダム構造を実現することが可能となり、微粒子の配列構造がアモルファス構造であり且つ上記条件(A)及び(B)を満たす短距離秩序構造を有する本発明の微粒子分散体を製造することが可能となる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
先ず、Stober法にて合成された単分散シリカ微粒子(平均粒子径200nm、Cv値3.6%)の水分散液を乾燥させて得たシリカ微粒子の粉末を、1.5倍の重量のアクリルモノマー(東亞合成製の商品名「M−350」)に加え、超音波を印加してシリカ微粒子がアクリルモノマーに分散した微粒子分散液(A)を得た。なお、このような微粒子分散液(A)は、虹彩色を示し、分散液中でシリカ微粒子が規則配列したコロイド結晶が形成されていることが確認された。また、分散液(A)を一部、別の容器に移し、更にアクリルモノマー(東亞合成製の商品名「M−350」)を加えて500倍に希釈し、この希釈液についてゼータ電位測定装置ZEECOM(マイクロテック・ニチオン株式会社製)を用いてゼータ電位の測定を行った。これにより微粒子分散液(A)のゼータ電位は−16mVの値であることが確認された。
【0039】
次に、前記微粒子分散液(A)100mlに1mol/LのNaOH水溶液を0.5ml加えて十分攪拌して微粒子分散液(B)を得た。なお、前記微粒子分散液(B)は、懐中電灯などの光を当てると赤色を呈するが、前記微粒子分散液(A)において見られた虹彩色は観察されなかった。また、微粒子分散液(B)の一部を取り出し、これにアクリルモノマー(東亞合成製の商品名「M−350」)を加えて500倍に希釈し、ゼータ電位測定装置ZEECOM(マイクロテック・ニチオン株式会社製)を用いてゼータ電位の測定を行った。これにより、微粒子分散液(B)のゼータ電位は−8mVの値であることが確認された。
【0040】
次いで、前記微粒子分散液(B)を、あらかじめUV/オゾンクリーナーにて表面クリーニングを行った100mm角のガラス基板表面上に滴下し、スピンコーターを用いて200rpmで120秒、引き続き600rpmで120秒の条件でガラス基板表面の全面に塗布した。次に、このようにして前記微粒子分散液(B)を塗布した基板を、窒素雰囲気のグローブボックスに搬送し、グローブボックス内でUVキュアランプを1分間照射して光重合によりアクリルモノマーを硬化させ、ガラス基板上に、アクリルポリマー中にシリカ微粒子が分散した微粒子分散体(薄膜)を製造した。
【0041】
(実施例2)
先ず、Stober法にて合成された単分散シリカ微粒子(平均粒子径200nm、Cv値3.6%)の水分散液を乾燥させて得た第一のシリカ微粒子の粉末に、第二のシリカ微粒子粉末(日本触媒製の商品名「KE−P50」、平均粒子径510nm、Cv値3.2%)を、粒子数比(第一粒子:第二粒子)が20:1になるよう混合し、微粒子の混合物を得た。次に、前記混合物に1.5倍の重量のアクリルモノマー(東亞合成製,M−350)を加え、超音波を印加してシリカ微粒子がアクリルモノマーに分散した微粒子分散液を得た。
【0042】
次に、前記微粒子分散液を、あらかじめUV/オゾンクリーナーにて表面クリーニングを行った100mm角のガラス基板表面上に滴下し、スピンコーターを用いて200rpmで120秒、引き続き600rpmで120秒の条件でガラス基板表面の全面に塗布した。次いで、前記微粒子分散液を塗布した基板を、窒素雰囲気のグローブボックスに搬送し、グローブボックス内でUVキュアランプを1分間照射して光重合によりアクリルモノマーを硬化させ、ガラス基板上に、アクリルポリマー中にシリカ微粒子が分散した微粒子分散体(薄膜)を製造した。
【0043】
(比較例1)
微粒子分散液(A)を製造した後にNaOHを添加せず、微粒子分散液(A)をそのままガラス基板上にスピンコートした以外は、実施例1と同様の方法を採用して、アクリルポリマー中にシリカ微粒子が分散した比較のための分散体(薄膜)を得た。
【0044】
(比較例2)
先ず、実施例1で採用した方法と同様の方法を採用して微粒子分散液(B)を製造した後に、その分散液(B)100ml中に更に1mol/lのNaOH水溶液1ml加え、十分攪拌して微粒子分散液(C)を製造した。なお、微粒子分散液(C)においては、沈殿こそ示さないものの目視にて凝集物の存在が確認された。また、微粒子分散液(C)に懐中電灯などの光を当てても乳白色のままであった。さらに、微粒子分散液(C)の一部を取り出し、これにアクリルモノマー(東亞合成製の商品名「M−350」)を加えて500倍に希釈し、ゼータ電位測定装置ZEECOM(マイクロテック・ニチオン株式会社製)を用いてゼータ電位の測定を行った。これにより、微粒子分散液(C)のゼータ電位は−2mVの値であることが確認された。
【0045】
次に、微粒子分散液(C)をガラス基板上にスポイトにて滴下し、室温にて乾燥させて、ガラス基板上に白色の微粒子凝集体が分散された比較のための分散体(薄膜)を得た。
【0046】
[実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた分散体の評価]
<走査型顕微鏡による測定>
実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた分散体を走査型顕微鏡により測定した。実施例1〜2及び比較例1で得られた分散体の走査型顕微鏡(SEM)写真を、それぞれ図1(実施例1)、図2(実施例2)、図3(比較例1)に示す。また、このような走査型顕微鏡による測定により得られた画像に基いて、画像中の任意の一つの粒子を中心として、実施例1においては約1000個の微粒子が含まれる円(図1中において白い線でかかれた円)内における動径分布関数g(r)を、実施例2及び比較例1においては約400個の微粒子が含まれる円(図2〜3中において白い線でかかれた円)内における動径分布関数g(r)を、それぞれ計算した。動径分布関数とr/r0(rは前記円の中心からの任意の距離を示し、r0はシリカ微粒子の平均粒子半径を示す。)との関係を示すグラフを、それぞれ図4(実施例1)、図5(実施例2)、図6(比較例1)、図7(比較例2:g(r)は任意の一つの粒子を中心とした約600個の微粒子が含まれる円を基準に算出した。)に示す。更に、このような走査型顕微鏡による測定により得られた画像に基いて、画像中の400〜1000個の微粒子が含まれる白い線でかかれた正方形内の領域に関して、二次元フーリエ変換してフーリエパターンを得た。このようにして得られた各薄膜のフーリエパターンを、それぞれ図8(実施例1)、図9(実施例2)、図10(比較例1)に示す。
【0047】
図1及び図2に示す結果からも明らかなように、実施例1及び実施例2で得られた分散体は、長距離的な規則構造が存在しないことが確認され、アモルファス構造を有することが確認された。また、図4に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた分散体は、最近接粒子間距離の平均値に相当するr/r0が2.4となる位置において動径分布関数g(r)の第一の極大値が観測され、更に、前記第一の極大値におけるr/r0の値(2.4:rの値が粒子径の1.2倍の値に相当)を2倍したr/r0の位置(4.8)に第二の極大値が観測された。このような結果から、第二の極大値のrの値が第一の極大値のrの値の整数倍となることが確認された。また、前記第一の極大値におけるrの値が粒子径の1.2倍であることが確認され、粒子が凝集することなく、良好な分散状態であることが分かった。更に、実施例1で得られた分散体は、第一の極大値とそれに隣接する第二の極大値との間に観測される極小値が0.5より小さくなっていることが確認された。また、図8に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた分散体は、粒子配列画像の二次元フーリエ変換によって得られるフーリエパターンがリング状になっていることが確認され、短距離的な規則構造を有していることが確認された。
【0048】
また、図5に示す結果からも明らかなように、実施例2で得られた分散体はr/r0が2.6(rの値が粒子径の1.3倍の値に相当)となる位置において動径分布関数g(r)の第一の極大値が観測され、更に、前記第一の極大値におけるr/r0の値(2.6)を2倍したr/r0の位置(5.2)に第二の極大値が観測された。このような結果から、第二の極大値のrの値が第一の極大値のrの値の整数倍となることが確認された。また、前記第一の極大値におけるrの値が粒子径の1.3倍であることが確認され、粒子が凝集することなく、良好な分散状態であることが分かった。また、実施例2で得られた分散体は、第一の極大値とそれに隣接する第二の極大値との間に観測される極小値が0.3程度であり、0.5より小さな値となっていることが確認された。更に、図9に示す結果からも明らかなように、実施例2で得られた分散体は、粒子配列画像の二次元フーリエ変換によって得られるフーリエパターンがリング状になっていることが確認され、短距離的な規則構造を有していることが確認された。
【0049】
一方、図3に示す結果からも明らかなように、比較例1で得られた分散体においては、六方晶状の規則配列が数十粒子分以上(粒子数20個以上)の領域において確認され、コロイド結晶が形成されていることが確認された。また、図6に示す結果からも明らかなように、比較例1で得られた分散体においては、第一の極大値と、第一の極大値におけるr/r0の値の整数倍のr/r0の位置において第二の極大値とが観測されたが、その他にも多くの極大値が観測され、整数倍以外の位置にも極大値が観測された。このような結果から、比較例1で得られた分散体においてはコロイド結晶が形成されていることが分かった。また、図10に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた分散体は、粒子配列画像の二次元フーリエ変換によって得られるフーリエパターンがリング状となっておらず、スポットパターンが観測され、コロイド結晶における長距離的な秩序構造が存在することが確認された。
【0050】
また、比較例2で得られた分散体においては、走査型顕微鏡による測定により微粒子がランダムに配列されているとともに、約半数の粒子が、粒子同士が接触した凝集体になっていることが確認された。また、図7に示す結果からも明らかなように、比較例2で得られた分散体においては、第一の極大値におけるr/r0の値がほぼ2となっており、ほぼ粒子径(d)に等しい距離r(r/r0=2)の位置に極大値が観測されることが分かった。このような結果は、粒子同士の凝集が著しいことに起因するものである。また、比較例2で得られた分散体においては、r/r0の値が4の位置に第二の極大値が観測されたが、第一の極大値と第二の極大値の間の極小値が1程度の値であることが確認され、r/r0が2となる距離rと、r/r0が4となる距離rとの間の領域に多くの粒子が存在することが分かった。
【0051】
<構造色の確認>
実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた分散体の構造色を目視にて観測した。このような観測の結果、実施例1及び実施例2で得られた分散体は、ともに、極端に斜めの方向から見ると緑色がかって見えたが、基板に対して垂直から45°の角度の範囲内で見ると見た目の色変化を示さず、赤色が観測された。このような結果から、実施例1及び実施例2で得られた分散体は、反射特性の角度依存性が十分に低減されていることが確認された。一方、比較例1で得られた分散体においては、基板に対して垂直な方向から見た場合には赤色が観測されたが45°程度の角度から斜めに見ると色の変化が見られ、緑色が観測された。また、比較例2で得られた分散体においては、構造色が観測されなかった。
【0052】
なお、このような構造色を示さない分散体(比較例2)に着目すると、上述の動径分布関数において、その分散体(比較例2)の動径分布関数の第一の極大値と第二の極大値の間の極小値の値は十分に小さい値(0.5以下)とならず、1に近い値を示していたことが分かる(図7)。このような結果から、構造色を生じる構造の起源は、理論的には必ずしも明らかになってはいないが、動径分布関数において第一の極大値と第二の極大値との間の極小値が0.5以下の小さな値となることが必要であることが分かった。
【0053】
<角度分解反射スペクトルの測定>
実施例1及び比較例1で得られた分散体の角度分解反射スペクトルを測定した。このような測定には、光源にハロゲンランプを用い、分光器にマルチチャンネル式分光器(相馬光学製の商品名「S−2650」)を用いた。更に、反射スペクトルは、ガラス基板の表面に対して垂直な方向を0°として、入射角と検出角が等しくなる鏡面反射条件にて9°〜45°の範囲において測定した。各分散体の反射スペクトルを示すグラフを図11(実施例1)及び図12(比較例1)にそれぞれ示す。
【0054】
図11に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた分散体においては、720nm付近に反射ピークが観測され、且つ、入射角を変化させても反射ピークがほとんどシフトしないことが確認された。このような結果から、実施例1で得られた分散体においては、反射光の角度依存性が十分に低減された反射現象を示すことが確認された。一方、図12に示す結果からも明らかように、比較例1で得られた分散体においては、鋭い反射ピークが観測されるが、その反射ピーク波長は入射角が9°の場合には702nmであり、入射角が45°の場合には615nmであり、ピーク波長が大きくシフトしていることが確認された。このような結果から、比較例1で得られた分散体においては、反射光の角度依存性が高いことが分かった。
【0055】
上述のような結果から、微粒子の配列構造が、アモルファス構造であり且つ前記動径分布関数の第一の極大値における距離rの値が前記第一微粒子の平均粒子径の1〜2倍の値であるという条件(A)及び第一の極大値と第二の極大値の間の極小値の値が0.5以下であるという条件(B)を満たす構造である本発明の微粒子分散体(実施例1及び2)においては、入射光の入射角の変化による反射光のピーク波長の変化が十分に低減されることが確認された。また、本発明の微粒子分散体(実施例1及び2)においては、上述のような構造を安定的に維持できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明によれば、微粒子の配列構造が安定的に維持され、特定の波長の光を反射することができ、光の入射角の変化によって反射光のピーク波長が変化する反射光の角度依存性を十分に低減することが可能な微粒子分散体を提供することが可能となる。このように、本発明の微粒子分散体は、角度依存性の低い反射現象を示すため、特定の波長の光を反射する用途(例えば色材や赤外線反射膜等)に用いる材料として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1で得られた分散体の表面の微粒子の分散状態を示す走査型顕微鏡(SEM)写真である。
【図2】実施例2で得られた分散体の表面の微粒子の分散状態を示す走査型顕微鏡(SEM)写真である。
【図3】比較例1で得られた分散体の表面の微粒子の分散状態を示す走査型顕微鏡(SEM)写真である。
【図4】実施例1で得られた分散体の動径分布関数とr/r0(rは前記円の中心からの任意の距離を示し、r0はシリカ微粒子の平均粒子半径を示す。)との関係を示すグラフである。
【図5】実施例2で得られた分散体の動径分布関数とr/r0との関係を示すグラフである。
【図6】比較例1で得られた分散体の動径分布関数とr/r0との関係を示すグラフである。
【図7】比較例2で得られた分散体の動径分布関数とr/r0との関係を示すグラフである。
【図8】実施例1で得られた分散体の表面の微粒子の分散状態を示す走査型顕微鏡(SEM)写真内の領域を二次元フーリエ変換して得られたフーリエパターンである。
【図9】実施例2で得られた分散体の表面の微粒子の分散状態を示す走査型顕微鏡(SEM)写真内の領域を二次元フーリエ変換して得られたフーリエパターンである。
【図10】比較例1で得られた分散体の表面の微粒子の分散状態を示す走査型顕微鏡(SEM)写真内の領域を二次元フーリエ変換して得られたフーリエパターンである。
【図11】実施例1で得られた分散体の角度分解反射スペクトルを示すグラフである。
【図12】比較例1で得られた分散体の角度分解反射スペクトルを示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
媒質中に単分散な微粒子が分散された分散体として、微粒子が規則配列したコロイド結晶が知られている。このようなコロイド結晶はBragg反射し構造発色することが知られており、これを色材に応用する技術や赤外線反射膜に応用する技術が研究されてきた。しかしながら、このようなコロイド結晶を利用した色材においては、Bragg回折に起因して発色することから、入射光の入射角と観察角の変化によって、その発色が変化してしまうという問題があった。このような反射光のピーク波長が入射光の入射角によって変化してしまう現象は、オパールの遊色効果として知られているコロイド結晶の特性ではあるが、特定の色を表示するための色材として利用する場合には問題となってしまう。また、コロイド結晶を赤外線反射膜として用いる場合においては、上述のようにコロイド結晶が入射光の入射角によって反射光の波長が変化するものであることから、入射光の角度によって反射特性が異なることとなり、赤外線反射膜の本来の目的である断熱効果が太陽の角度により変化してしまうという問題があり、特に、反射ピーク波長が可視光域にずれてしまった場合には、十分な断熱効果が発現しなくなるという問題があった。このように、コロイド結晶においては、反射光の角度依存性を十分に低減することができず、入射光の入射角の変化によって反射光の特性が変化していた。
【0003】
また、従来から、媒質中に微粒子がランダムに配列した構造を有する微粒子の分散体においても、その構造により光のレイリー散乱やチンダル散乱が生じ、光の反射現象が生じることが知られている。しかしながら、このようなレイリー散乱やチンダル散乱等の光の反射現象を利用して発色する分散体は、青空や夕焼け、あるいは牛乳を灯りに透かした場合に赤っぽく見えることなどからわかるように、散乱による青色、透過による赤色の発色を生じさせる(これらの色は補色の関係)ことができるだけであった。そのため、レイリー散乱やチンダル散乱を利用して発色する分散体においては、特定の色を発色することが困難であり、可視光を透過し赤外光のみを反射することは原理的に不可能であった。
【0004】
一方、近年では媒質中に微粒子等がランダムに配列した分散体であって光のレイリー散乱によらない反射現象を示す分散体が報告されてきた。例えば、2004年に発行されたThe Journal of Experimental Biologyの2157〜2172頁(非特許文献1)においては、マンドリルの皮膚がコラーゲンのquasi‐ordered arrayによって発色を示すことが開示されている。また、2005年に発行された応用物理、第74巻、第2号の202〜207頁(非特許文献2)においては、円柱のアモルファス構造体により光の反射が生じ得ることが開示されている。更に、2008年1月9日の東京大学生産技術研究所第66回定例記者会見の資料(非特許文献3)においては、長距離秩序をもたないアモルファス構造でも光の3次元閉じ込め効果が発現することが開示されている。しかしながら、非特許文献1に記載のマンドリルの皮膚は自然界に見られるものであり、これを特定の波長の光を反射させる色材や赤外線反射膜に応用することはできなかった。また、非特許文献2〜3の記載はシミュレーションによる結果が示されているのみであり、これらの文献に記載の構造体も未だ人工的に実現されたものではなかった。なお、非特許文献3においては、コロイド溶液が相分離を示す際に光の反射現象を示すのに必要な特殊なランダム構造をとることを示唆する記載があるが、このような状態を安定的に維持することは困難であり、このようなランダム構造が安定的に保持された分散体は未だ得られていなかった。なお、このようなランダムな構造により特定の波長の光を反射できる理由は、非特許文献1〜2では短距離的な秩序構造を起源としているのに対して非特許文献3では局所的な4配位構造を起源としており、必ずしも明確になっていない。
【非特許文献1】Richard O.Prum.et al.,「Structural colouration of mammalian skin:convergent evolution of coherently scattering dermal collagen arrays」,The Journal of Experimental Biology,207,2004年発行,2157‐2172頁
【非特許文献2】宮嵜博司著、「アモルファス構造におけるフォトニックギャップ」、応用物理、第74巻、第2号、2005年発行、202〜207頁
【非特許文献3】枝川圭一ら著、「フォトニック・アモルファス・ダイヤモンド」、2008年1月9日、東京大学生産技術研究所 第66回 定例記者会見資料、インターネットURL(http://www.iis.u-tokyo.ac.jp/publication/topics/2008/080109press.pdf)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、微粒子の配列構造が安定的に維持され、特定の波長の光を反射することができ、光の入射角の変化によって反射光のピーク波長が変化する反射光の角度依存性を十分に低減することが可能な微粒子分散体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、平均粒子径が50nm〜10μmの範囲にあり且つ粒子径のCv値が10%以下である第一微粒子が媒質中に分散してなる微粒子分散体において、前記分散体中における前記第一微粒子の配列構造を、アモルファス構造とし且つ後述する条件(A)及び(B)を満たす短距離秩序構造とすることにより、その分散体が微粒子の配列構造を安定的に維持しながら特定の波長の光を反射することができ、しかも光の入射角の変化によって反射光のピーク波長が変化する反射光の角度依存性を十分に低減することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の微粒子分散体は、平均粒子径が50nm〜10μmの範囲にあり且つ粒子径のCv値が10%以下である第一微粒子が媒質中に分散してなる微粒子分散体であって、
前記分散体中における前記第一微粒子の配列構造が、アモルファス構造であり且つ下記条件(A)及び(B):
[条件(A)]
前記分散体の走査型電子顕微鏡写真に基いて下記式:
g(r)={1/〈ρ〉}×{dn/da}
[式中、g(r)は動径分布関数を示し、〈ρ〉は平面内の平均粒子密度を示し、dnは任意の第一微粒子からの距離rの円と距離r+drの円との間の領域中に存在する第一微粒子の数を示し、daは前記領域の面積(2πr・dr)を示す。]
を計算して求められる平面内の動径分布関数において、前記動径分布関数の第一の極大値における前記距離rの値が前記第一微粒子の平均粒子径の1〜2倍の値であること、
[条件(B)]
前記動径分布関数の前記第一の極大値と前記第一の極大値に隣接する第二の極大値との間にある前記動径分布関数の極小値が0.5以下の値であること、
を満たす短距離秩序構造を有していることを特徴とするものである。
【0008】
また、上記本発明の微粒子分散体においては、前記媒質中に、前記第一微粒子の平均粒子径(d)のα倍(αは0.5以上0.8以下の数値あるいは1.2以上2.6以下の数値を示す。)の大きさ(α×d)の平均粒子径を有し且つ粒子径のCv値が10%以下の第二微粒子を、第一微粒子100個に対して5個〜100/α3個の割合で更に分散していることが好ましい。
【0009】
さらに、上記本発明の微粒子分散体においては、前記第一微粒子が無機微粒子からなることが好ましい。また、上記本発明の微粒子分散体においては、前記媒質が高分子化合物からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、微粒子の配列構造が安定的に維持され、特定の波長の光を反射することができ、光の入射角の変化によって反射光のピーク波長が変化する反射光の角度依存性を十分に低減することが可能な微粒子分散体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0012】
本発明の微粒子分散体は、平均粒子径が50nm〜10μmの範囲にあり且つ粒子径のCv値が10%以下である第一微粒子が媒質中に分散してなる微粒子分散体であって、
前記分散体中における前記第一微粒子の配列構造が、アモルファス構造であり且つ下記条件(A)及び(B):
[条件(A)]
前記分散体の走査型電子顕微鏡写真に基いて下記式:
g(r)={1/〈ρ〉}×{dn/da}
[式中、g(r)は動径分布関数を示し、〈ρ〉は平面内の平均粒子密度を示し、dnは任意の第一微粒子からの距離rの円と距離r+drの円との間の領域中に存在する第一微粒子の数を示し、daは前記領域の面積(2πr・dr)を示す。]
を計算して求められる平面内の動径分布関数において、前記動径分布関数の第一の極大値における前記距離rの値が前記第一微粒子の平均粒子径の1〜2倍の値であること、
[条件(B)]
前記動径分布関数の前記第一の極大値と前記第一の極大値に隣接する第二の極大値との間にある前記動径分布関数の極小値が0.5以下の値であること、
を満たす短距離秩序構造を有していること、
を特徴とするものである。
【0013】
このような第一微粒子の平均粒子径は50nm〜10μm(より好ましくは100nm〜1μm、更に好ましくは150nm〜500nm)である。このような第一微粒子の平均粒子径が前記下限未満では、可視光域から赤外光域に反射ピークを有する構造色を呈する微粒子分散体の作成が困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、反射ピーク波長が太陽光に含まれる赤外線の波長を大きく超え、赤外線反射膜に要求される波長を超えてしまう傾向にある。
【0014】
また、このような第一微粒子としては、粒子径のCv値が10%以下(より好ましくは5%以下、更に好ましくは1〜3%)である必要がある。このような粒子径のCv値が10%を超える微粒子は、粒径のばらつきが大きいため、アモルファス構造を形成した際の短距離秩序構造を形成することが困難となる傾向にある。また、ここにいう「粒子径のCv値」は、下記式:
[Cv値]=([粒子径の標準偏差]/[平均粒子径])×100
で定義される値(単位:%)をいう。このような第一微粒子の平均粒子径及び粒子径の標準偏差は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて200個以上の微粒子の粒子径の測定値に基づいて算出する。さらに、ここにいう粒子径とは、粒子が球形でない場合には外接円の最大直径をいう。
【0015】
さらに、このような第一微粒子としては特に制限されず、無機微粒子、高分子微粒子、ゲル微粒子等の各種微粒子を適宜用いることができる。このような無機微粒子としては、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア等の無機酸化物の粒子、窒化ケイ素、窒化アルミ、窒化ホウ素等の無機窒化物の粒子等が挙げられる。また、このような第一微粒子の中でも、耐久性及び安定性がより向上するという観点から、無機微粒子がより好ましく、無機酸化物の粒子が更に好ましく、シリカ粒子が特に好ましい。
【0016】
このような第一微粒子の製造方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、合成方法としてStober法を採用し、得られる微粒子が第一微粒子となるように製造条件を適宜変更しながら製造してもよい。また、市販の微粒子を利用してもよい。
【0017】
また、前記媒質としては、液体状態のものであってもゲル状態のものであっても固体状態のものであってもよく、特に制限されないが、色材や赤外線防止膜に用いるといった用途の観点からは、固体状態のものがより好ましく、高分子化合物からなるものが特に好ましい。また、このような高分子化合物としては特に制限されず、公知の高分子化合物を適宜用いることができ、例えば、色材や赤外線防止膜等に用いることが可能な公知の高分子化合物を適宜用いることができる。このような高分子化合物としては、例えば、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル)、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ(ジエチレングリコールビスアリルカーボネート)、ポリウレタン等が挙げられ、中でも、前記微粒子がシリカ粒子である場合に微粒子の凝集を抑制し、比較的容易に微粒子分散体が得られるという観点から、アクリル樹脂がより好ましい。
【0018】
また、本発明の微粒子分散体中における前記第一微粒子の配列構造は、アモルファス構造である。ここにいう「アモルファス構造」とは、前記微粒子分散体が基材上に形成されたものである場合には基材の表面に対して平行な面内のあらゆる方向において、また、前記分散体が容器内において形成されている場合には容器の底面あるいは側面に対して平行な面内のあらゆる方向において、微粒子の規則配列の周期が粒子20個を超えない非結晶状又は微結晶状の構造をいい、微粒子の規則配列が長距離的な秩序性を有していないことを示す。本発明においては、第一の微粒子の配列構造がアモルファス構造であるため、Bragg回折による反射が生じなくなる。なお、このような構造は、前記分散体が基材上に形成されたものである場合には基材の表面に対して平行な面又は前記分散体が容器内において形成されている場合には容器の底面あるいは側面に対して平行な面を、走査型電子顕微鏡により観測することにより確認できる。
【0019】
本発明の微粒子分散体中における前記第一微粒子の配列構造は、前記分散体の走査型電子顕微鏡写真に基いて下記式:
g(r)={1/〈ρ〉}×{dn/da}
[式中、g(r)は動径分布関数を示し、〈ρ〉は平面内の平均粒子密度を示し、dnは任意の第一微粒子からの距離rの円と距離r+drの円との間の領域(円殻)中に存在する第一微粒子の数を示し、daは前記領域の面積(2πr・dr)を示す。]
を計算して求められる平面内の動径分布関数において、前記動径分布関数の第一の極大値における前記距離rの値が前記第一微粒子の平均粒子径の1〜2倍の値であるという条件を満たす(条件(A))。本発明においては、前記動径分布関数は以下に示す方法により求める。すなわち、先ず、前記分散体が基材上に形成されたものである場合には基材の表面に対して平行な面又は前記分散体が容器内において形成されている場合には容器の底面あるいは側面に対して平行な面において、少なくとも第一微粒子を500個以上含有している領域を走査型電子顕微鏡により観測する。次に、得られる走査型電子顕微鏡の画像(写真)中の任意の1つの第一微粒子を選択し、その第一微粒子を中心として第一微粒子が少なくとも200個以上含まれる円を描き、かかる円の内部の領域内に含まれる微粒子の個数を求める。次いで、求められた微粒子の個数を前記円の面積で除することにより、平均粒子密度〈ρ〉(単位:個/cm2)を求める。次いで、画像解析ソフト(例えばMedia Cybernetics社製の商品名「Image pro」)を用いて、前記円内の各第一微粒子の座標を求める。そして、その座標を用いて、前記円の中心に定めた第一微粒子と、前記円内の他の第一微粒子との距離rを求める。そして、drとしてr0/20〜r0/10(r0は第一微粒子の平均半径示す。)程度の値を取り且つ距離rを0から[前記円の半径−dr]までの変数として、中心の第一微粒子から距離(半径)rの円と距離(半径)r+drの円との間の領域(円殻)中にある粒子の数dn、及び前記領域(円殻)の面積da(da=2πr・dr)を求める。そして、このようにして求められる〈ρ〉、dn、daの値を用いて、下記式:
g(r)={1/〈ρ〉}×{dn/da}
を計算することにより動径分布関数g(r)を求める。
【0020】
また、前記第一の極大値とは、縦軸をg(r)、横軸をr又はr/r0(r0は第一微粒子の平均半径を示す。)としたグラフに現れる複数のピークのうち、そのピークの位置におけるr又はr/r0の値が最小となるピークをいう。また、ここにいうピークとは明確な凸型の曲線であって、距離rを基準とした半値幅がr0/10以上r0以下(r0は第一微粒子の平均半径を示す。)のものをいう。このような第一の極大値における距離rの値としては、前記第一微粒子の平均粒子径の1〜2倍(より好ましくは1.1〜1.8倍)の値である必要がある。このような第一の極大値における距離rの値が、前記下限未満の値では粒子同士の重なりが多いことを意味し、短距離秩序が形成されなくなる傾向にあり、他方、前記微粒子の平均粒子径の2倍を超えると、粒子間の静電的相互作用が十分に及ばなくなり、やはり短距離秩序が形成されなくなる傾向にある。
【0021】
また、本発明の微粒子分散体中における前記第一微粒子の配列構造は、前記動径分布関数の前記第一の極大値と前記第一の極大値に隣接する第二の極大値との間にある前記動径分布関数の極小値が0.5以下(より好ましくは0.4以下)の値であるという条件を満たす(条件(B))。このような極小値が0.5を越えると、分散体が短距離的な秩序構造を有さないものとなり、目的とする反射性能が得られなくなる。
【0022】
このように、本発明の微粒子分散体中における前記第一微粒子の配列構造は、アモルファス構造であって長距離的な秩序構造を有さないが、上記条件(A)及び条件(B)を満たし、短距離的な秩序構造を有するものである。本発明の微粒子分散体が角度依存性(入射光の入射角の変化により反射光のピーク波長が変化する性質)を十分に低減しながら構造発色を呈することができる理由は必ずしも定かではないが、微粒子の配列構造がアモルファス構造であり且つ上記条件(A)及び条件(B)を満たすような短距離秩序構造を有していることにより、反射光の角度依存性が十分に低減されるものと本発明者らは推察する。なお、本発明の微粒子分散体においては、動径分布関数g(r)と距離r又はr/r0との関係を示すグラフにおいて、基本的に、g(r)の値の第一のピークが現れる位置における距離r(又はr/r0)の整数倍の距離r(又はr/r0)の位置にg(r)の値の他のピークが観測され、第一のピークにおける距離の2倍の位置に第二のピークが現れる。このように第一のピーク(第一の極大値)が現れる位置における距離r(又はr/r0)の整数倍の距離r(又はr/r0)の位置に他のピークが現れることは、微粒子の配列構造がある程度の短距離秩序性を有することを意味する。なお、完全性の高いコロイド結晶の場合には、g(r)の値の第一のピークが現れる位置におけるr(又はr/r0)の整数倍以外の位置にも他のピークが観測される。他方、g(r)の値の第一のピークが現れる位置におけるr(又はr/r0)の2倍のr(又はr/r0)の位置に第二のピークが観測される分散体であっても、第一のピークと第二のピークとの間の極小値が0.5を超える数値となる場合には、構造色が観測されない(後述の比較例2参照)。従って、構造色を示すような短距離秩序性を有する分散体においては、第一のピークと、これに隣接する第二のピーク(第一のピークにおける距離r(r1)の2倍の位置(2×r1)において観測されるピーク)との間の極小値が0.5以下となる必要がある。このような観点から、本発明においては、微粒子分散体の短距離秩序構造の有無の判断を、動径分布関数g(r)の値(特に前記極小値)を基準にして行う。そして、上述の条件(A)及び条件(B)を満たす場合に短距離的な秩序構造を有するものと判断する。なお、このような短距離的な秩序構造は、微粒子分散体の粒子配列を共焦点レーザー顕微鏡や電子顕微鏡などの手段により粒子配列の状態の画像を取得し、その画像をFourier変換し、リング状パターンが得られることによっても確認することができる。
【0023】
また、本発明の微粒子分散体は、前記媒質中に、前記第一微粒子とともに、前記第一微粒子の平均粒子径(d)のα倍(αは0.5以上0.8以下の数値あるいは1.2以上2.6以下の数値を示す。)の大きさ(α×d)の平均粒子径を有し且つ粒子径のCv値が10%以下の第二微粒子を、第一微粒子100個に対して5個〜100/α3個の割合で更に分散してもよい。このような異径粒子(第二微粒子)を第一微粒子と混合して前記媒質中に分散させることにより、より容易に、微粒子の配列構造をアモルファス構造としつつ前記条件(A)及び(B)を満たす構造とすることが可能となる傾向にある。
【0024】
このような第二微粒子は、第一微粒子の平均粒子径(d)のα倍[αは0.5以上0.8以下の数値あるいは1.2以上2.6以下(より好ましくは1.5以上2.5以下)の数値を示す。]の大きさ(α×d)の平均粒子径を有するという条件を満たす微粒子である。このようなαの値が、0.8<α<1.2で表される範囲の数値である場合には、第一微粒子と第二微粒子の平均粒子径が近くなって、第一微粒子と第二微粒子とを混合しても微粒子の粒子径の分布のばらつきが十分に大きくならない傾向にあり、規則的な配列が形成されやすくなる傾向にある。また、αの値が0.5未満では、含有比率の上限まで第二微粒子を含有させても構造を乱す効果が十分なものではなくなる傾向にあり、他方、2.6を超えると、第二微粒子の体積分率が第一微粒子の体積分率を超えないようにするためには5個未満の粒子しか加えることができなくなり、構造を乱す効果が十分なものではなくなる傾向にある。
【0025】
また、前記第二微粒子の含有比率は、前記混合物中の第二微粒子の粒子数が第一微粒子の粒子数100個に対して5個〜100/α3個(αは、前述の数値を示す。)の範囲となるようにする必要がある。このような第一微粒子の粒子数100個に対する前記混合物中の第二微粒子の粒子数が5個未満では、第二微粒子を用いる効果が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、第二微粒子の体積分率が第一微粒子の体積分率を超えて、第一微粒子と第二微粒子の関係が逆転してしまう傾向にある。なお、このような第二微粒子としては、上述の第二微粒子の条件を満たす微粒子の1種を単独で用いてもよく、上記第二微粒子の条件を満たす微粒子を2種以上混合してもよい。
【0026】
このような第二微粒子の製造方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、合成方法としてStober法を採用し、得られる微粒子が第二微粒子となるように製造条件を適宜変更しながら製造してもよい。また、市販の微粒子を利用してもよい。
【0027】
さらに、本発明の微粒子分散体は、基材上に形成させてもあるいは容器中に形成させてもよく、各種用途に応じて適宜基材等を用いて形成させればよい。このような基材としては、例えば、アクリル樹脂やポリカーボネート等の樹脂シート、ポリエステル、ポリカーボネート等の樹脂フィルム、ガラス基板等が挙げられる。また、前記容器としては、例えば、ガラスや樹脂製のビンやセル等が挙げられる。また、このような微粒子分散体の用途としては、各種色材、赤外線反射膜等が挙げられる。
【0028】
次に、本発明の微粒子分散体を製造するのに好適な方法を説明する。本発明の微粒子分散体を製造する方法は、上記本発明の微粒子分散体を形成できる方法であればよく特に制限されない。このような本発明の微粒子分散体を製造するのに好適な方法としては、例えば、モノマー中に前記第一微粒子を分散させた後に、ゼータ電位が5mV〜10mVとなるようにして微粒子分散液を得る工程と、前記微粒子分散液中のモノマーを硬化させて、高分子化合物からなる媒質中に前記第一微粒子が分散された上記本発明の微粒子分散体を得る工程とを含む方法(I)が挙げられる。
【0029】
このような方法(I)においては、先ず、モノマー中に前記第一微粒子を分散させた後に、ゼータ電位が5mV〜10mVとなるようにして微粒子分散液を得る。このような方法(I)に用いる第一微粒子は、前述のものと同様のものである。
【0030】
このようなモノマーとしては、これを硬化させることにより高分子化合物からなる媒質を形成できるものであればよく特に制限されず、公知のモノマーを適宜用いることができ、モノマー中における第一微粒子の分散性の観点から、非イオン性の親水基を含むモノマーを用いることが好ましい。このような親水性モノマーとしては特に制限されず、公知の親水性ポリマーを適宜利用することができ、例えば、エチレングリコール鎖長が異なるポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、あるいは、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。また、このような親水性モノマーの中でも、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコールトリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。このようなポリエチレングリコールアクリレート類又はポリプロピレングリコールアクリレート類は、エチレン又はプロピレングリコール鎖長が異なる種々のモノマーを利用することができ、鎖長によって親水性を制御でき、これを用いることで第一微粒子の配列状態をより効率よく制御できる傾向にある。なお、このような親水性モノマーは1種類を単独で、あるいは2種類以上混合して用いてもよい。また、このような方法(I)においては前記モノマーを少なくとも1種含めばよく、前記モノマーのみを含有するものであっても又はモノマーと溶媒とを含有するものであってもよい。また、このような溶媒としては、公知の溶媒(例えば、アルコール類等)を適宜用いることができる。また、このようなモノマー中に第一微粒子を分散させる方法は特に制限されず、超音波を印加する方法、撹拌による方法等公知の方法を適宜採用することができる。
【0031】
さらに、前記微粒子分散液は、そのゼータ電位を5mV〜10mVとする必要がある。このようなゼータ電位が10mVを超えると、微粒子が規則配列してコロイド結晶が形成される傾向にあり、他方、5mV未満では、液中にて第一微粒子が凝集して分散状態を維持できなくなる傾向にある。また、このように微粒子分散液のゼータ電位を5mV〜10mVとすることによって、分散液中において微粒子がランダムに分散し、平均として特定の最近接粒子間距離を保った状態で微粒子が配列された構造が安定的に維持され、液中での微粒子の配列構造をアモルファス構造としつつ上記条件(A)及び条件(B)を満たす短距離秩序構造とすることが達成できる。そのため、このような微粒子分散液中のモノマーを硬化させることで、高分子化合物からなる媒質中に第一微粒子が分散された微粒子分散体を容易に製造することが可能となる。
【0032】
また、前記微粒子分散液のゼータ電位を5mV〜10mVに調製する方法としては特に制限されないが、例えば、モノマー中に前記第一微粒子を分散させながら適宜ゼータ電位を測定し、ゼータ電位が5mV〜10mVとなるようにNaOH水溶液、KOH水溶液等の塩基性水溶液やNaCl水溶液のような電解質等のゼータ電位調整剤を適宜添加する方法が挙げられる。なお、ここにいう微粒子分散液のゼータ電位は、前記微粒子分散液を、その分散液中のモノマーで500倍に希釈した希釈液を用いてゼータ電位測定装置(例えば、マイクロテック・ニチオン株式会社製の「ZEECOM」)により測定した値をいう。また、ゼータ電位調整剤の種類や使用量は、ゼータ電位が5mV〜10mVとなるように、用いたモノマーの種類や量等に応じて適宜選択することができる。
【0033】
また、方法(I)においては、次に、前記微粒子分散液中のモノマーを硬化させて、高分子化合物からなる媒質中に前記第一微粒子が分散された上記本発明の微粒子分散体を得る。このようにして得られる微粒子分散体は、分散体中における前記第一微粒子の配列構造がアモルファス構造であり且つ上記条件(A)及び(B)を満たす短距離秩序構造を有するものとなる。
【0034】
このようなモノマーを硬化させる方法(条件等)としては、特に制限されず、公知の方法(条件等)を適宜採用することができる。また、モノマーを硬化させる前に、前記微粒子分散液を基材上に供給し、基材上に微粒子分散体を形成してもよい。このような微粒子分散液を基材に供給する方法は特に制限されず、例えば、スピンコート法、ディッピング法、ナイフエッジ法等の公知の方法を適宜採用することができる。
【0035】
以上、本発明の微粒子分散体を製造する好適な方法を、方法(I)を例に挙げて説明したが、本発明の微粒子分散体を製造する方法は上記方法(I)に制限されるものではなく、他の方法を採用してもよい。このような他の方法としては、例えば、前記第一微粒子と、前記第一微粒子の平均粒子径(d)のα倍(αは0.5以上0.8以下の数値あるいは1.2以上2.6以下の数値を示す。)の大きさ(α×d)の平均粒子径を有し且つ粒子径のCv値が10%以下の第二微粒子とを第二微粒子の含有割合が第一微粒子100個に対して5個〜100/α3個となるようにして混合した混合物をモノマー中に分散させて微粒子分散液を得る工程と、前記微粒子分散液中のモノマーを硬化させて高分子化合物からなる媒質中に前記第一微粒子が分散された上記本発明の微粒子分散体を得る工程とを含む方法(II)が挙げられる。このように第一微粒子と第二微粒子との混合物を用いて、これをモノマー中に分散させることで、モノマー中の微粒子全体の粒径にバラツキが生じて、分散液中における前記微粒子の配列構造がアモルファス構造となるとともに上記条件(A)及び(B)を満たす短距離秩序構造を有するものとなる。そのため、このような第一微粒子と第二微粒子との混合物を用いる方法(II)においても本発明の微粒子分散体を製造することが可能となる。なお、このようなモノマーとしては方法(I)において説明したものと同様のものを用いることができ、また、微粒子の分散方法およびモノマーの硬化方法としては方法(I)で説明した方法と同様の方法を採用できる。
【0036】
また、上記方法(I)及び方法(II)においては、微粒子分散体の媒質が固体状態の高分子化合物である場合の微粒子分散体の製造方法を説明したが、媒質を液状のまま使用してもよい。この場合には、媒質として上記モノマー以外に水や有機溶媒等のコロイド結晶の製造に用いられる公知の溶媒を用い、モノマーを硬化させる工程を行わない以外は上記方法(I)又は(II)と同様の方法を採用してもよい。また、媒質をゲル状とする場合においては、例えば、特開2005−338243号公報に記載されているゲル化の方法等を採用して、媒質をゲル化すればよい。このような製造方法により、人工的に且つ安定的に角度依存性の低減された光の反射現象を示すランダム構造を実現することが可能となり、微粒子の配列構造がアモルファス構造であり且つ上記条件(A)及び(B)を満たす短距離秩序構造を有する本発明の微粒子分散体を製造することが可能となる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
先ず、Stober法にて合成された単分散シリカ微粒子(平均粒子径200nm、Cv値3.6%)の水分散液を乾燥させて得たシリカ微粒子の粉末を、1.5倍の重量のアクリルモノマー(東亞合成製の商品名「M−350」)に加え、超音波を印加してシリカ微粒子がアクリルモノマーに分散した微粒子分散液(A)を得た。なお、このような微粒子分散液(A)は、虹彩色を示し、分散液中でシリカ微粒子が規則配列したコロイド結晶が形成されていることが確認された。また、分散液(A)を一部、別の容器に移し、更にアクリルモノマー(東亞合成製の商品名「M−350」)を加えて500倍に希釈し、この希釈液についてゼータ電位測定装置ZEECOM(マイクロテック・ニチオン株式会社製)を用いてゼータ電位の測定を行った。これにより微粒子分散液(A)のゼータ電位は−16mVの値であることが確認された。
【0039】
次に、前記微粒子分散液(A)100mlに1mol/LのNaOH水溶液を0.5ml加えて十分攪拌して微粒子分散液(B)を得た。なお、前記微粒子分散液(B)は、懐中電灯などの光を当てると赤色を呈するが、前記微粒子分散液(A)において見られた虹彩色は観察されなかった。また、微粒子分散液(B)の一部を取り出し、これにアクリルモノマー(東亞合成製の商品名「M−350」)を加えて500倍に希釈し、ゼータ電位測定装置ZEECOM(マイクロテック・ニチオン株式会社製)を用いてゼータ電位の測定を行った。これにより、微粒子分散液(B)のゼータ電位は−8mVの値であることが確認された。
【0040】
次いで、前記微粒子分散液(B)を、あらかじめUV/オゾンクリーナーにて表面クリーニングを行った100mm角のガラス基板表面上に滴下し、スピンコーターを用いて200rpmで120秒、引き続き600rpmで120秒の条件でガラス基板表面の全面に塗布した。次に、このようにして前記微粒子分散液(B)を塗布した基板を、窒素雰囲気のグローブボックスに搬送し、グローブボックス内でUVキュアランプを1分間照射して光重合によりアクリルモノマーを硬化させ、ガラス基板上に、アクリルポリマー中にシリカ微粒子が分散した微粒子分散体(薄膜)を製造した。
【0041】
(実施例2)
先ず、Stober法にて合成された単分散シリカ微粒子(平均粒子径200nm、Cv値3.6%)の水分散液を乾燥させて得た第一のシリカ微粒子の粉末に、第二のシリカ微粒子粉末(日本触媒製の商品名「KE−P50」、平均粒子径510nm、Cv値3.2%)を、粒子数比(第一粒子:第二粒子)が20:1になるよう混合し、微粒子の混合物を得た。次に、前記混合物に1.5倍の重量のアクリルモノマー(東亞合成製,M−350)を加え、超音波を印加してシリカ微粒子がアクリルモノマーに分散した微粒子分散液を得た。
【0042】
次に、前記微粒子分散液を、あらかじめUV/オゾンクリーナーにて表面クリーニングを行った100mm角のガラス基板表面上に滴下し、スピンコーターを用いて200rpmで120秒、引き続き600rpmで120秒の条件でガラス基板表面の全面に塗布した。次いで、前記微粒子分散液を塗布した基板を、窒素雰囲気のグローブボックスに搬送し、グローブボックス内でUVキュアランプを1分間照射して光重合によりアクリルモノマーを硬化させ、ガラス基板上に、アクリルポリマー中にシリカ微粒子が分散した微粒子分散体(薄膜)を製造した。
【0043】
(比較例1)
微粒子分散液(A)を製造した後にNaOHを添加せず、微粒子分散液(A)をそのままガラス基板上にスピンコートした以外は、実施例1と同様の方法を採用して、アクリルポリマー中にシリカ微粒子が分散した比較のための分散体(薄膜)を得た。
【0044】
(比較例2)
先ず、実施例1で採用した方法と同様の方法を採用して微粒子分散液(B)を製造した後に、その分散液(B)100ml中に更に1mol/lのNaOH水溶液1ml加え、十分攪拌して微粒子分散液(C)を製造した。なお、微粒子分散液(C)においては、沈殿こそ示さないものの目視にて凝集物の存在が確認された。また、微粒子分散液(C)に懐中電灯などの光を当てても乳白色のままであった。さらに、微粒子分散液(C)の一部を取り出し、これにアクリルモノマー(東亞合成製の商品名「M−350」)を加えて500倍に希釈し、ゼータ電位測定装置ZEECOM(マイクロテック・ニチオン株式会社製)を用いてゼータ電位の測定を行った。これにより、微粒子分散液(C)のゼータ電位は−2mVの値であることが確認された。
【0045】
次に、微粒子分散液(C)をガラス基板上にスポイトにて滴下し、室温にて乾燥させて、ガラス基板上に白色の微粒子凝集体が分散された比較のための分散体(薄膜)を得た。
【0046】
[実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた分散体の評価]
<走査型顕微鏡による測定>
実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた分散体を走査型顕微鏡により測定した。実施例1〜2及び比較例1で得られた分散体の走査型顕微鏡(SEM)写真を、それぞれ図1(実施例1)、図2(実施例2)、図3(比較例1)に示す。また、このような走査型顕微鏡による測定により得られた画像に基いて、画像中の任意の一つの粒子を中心として、実施例1においては約1000個の微粒子が含まれる円(図1中において白い線でかかれた円)内における動径分布関数g(r)を、実施例2及び比較例1においては約400個の微粒子が含まれる円(図2〜3中において白い線でかかれた円)内における動径分布関数g(r)を、それぞれ計算した。動径分布関数とr/r0(rは前記円の中心からの任意の距離を示し、r0はシリカ微粒子の平均粒子半径を示す。)との関係を示すグラフを、それぞれ図4(実施例1)、図5(実施例2)、図6(比較例1)、図7(比較例2:g(r)は任意の一つの粒子を中心とした約600個の微粒子が含まれる円を基準に算出した。)に示す。更に、このような走査型顕微鏡による測定により得られた画像に基いて、画像中の400〜1000個の微粒子が含まれる白い線でかかれた正方形内の領域に関して、二次元フーリエ変換してフーリエパターンを得た。このようにして得られた各薄膜のフーリエパターンを、それぞれ図8(実施例1)、図9(実施例2)、図10(比較例1)に示す。
【0047】
図1及び図2に示す結果からも明らかなように、実施例1及び実施例2で得られた分散体は、長距離的な規則構造が存在しないことが確認され、アモルファス構造を有することが確認された。また、図4に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた分散体は、最近接粒子間距離の平均値に相当するr/r0が2.4となる位置において動径分布関数g(r)の第一の極大値が観測され、更に、前記第一の極大値におけるr/r0の値(2.4:rの値が粒子径の1.2倍の値に相当)を2倍したr/r0の位置(4.8)に第二の極大値が観測された。このような結果から、第二の極大値のrの値が第一の極大値のrの値の整数倍となることが確認された。また、前記第一の極大値におけるrの値が粒子径の1.2倍であることが確認され、粒子が凝集することなく、良好な分散状態であることが分かった。更に、実施例1で得られた分散体は、第一の極大値とそれに隣接する第二の極大値との間に観測される極小値が0.5より小さくなっていることが確認された。また、図8に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた分散体は、粒子配列画像の二次元フーリエ変換によって得られるフーリエパターンがリング状になっていることが確認され、短距離的な規則構造を有していることが確認された。
【0048】
また、図5に示す結果からも明らかなように、実施例2で得られた分散体はr/r0が2.6(rの値が粒子径の1.3倍の値に相当)となる位置において動径分布関数g(r)の第一の極大値が観測され、更に、前記第一の極大値におけるr/r0の値(2.6)を2倍したr/r0の位置(5.2)に第二の極大値が観測された。このような結果から、第二の極大値のrの値が第一の極大値のrの値の整数倍となることが確認された。また、前記第一の極大値におけるrの値が粒子径の1.3倍であることが確認され、粒子が凝集することなく、良好な分散状態であることが分かった。また、実施例2で得られた分散体は、第一の極大値とそれに隣接する第二の極大値との間に観測される極小値が0.3程度であり、0.5より小さな値となっていることが確認された。更に、図9に示す結果からも明らかなように、実施例2で得られた分散体は、粒子配列画像の二次元フーリエ変換によって得られるフーリエパターンがリング状になっていることが確認され、短距離的な規則構造を有していることが確認された。
【0049】
一方、図3に示す結果からも明らかなように、比較例1で得られた分散体においては、六方晶状の規則配列が数十粒子分以上(粒子数20個以上)の領域において確認され、コロイド結晶が形成されていることが確認された。また、図6に示す結果からも明らかなように、比較例1で得られた分散体においては、第一の極大値と、第一の極大値におけるr/r0の値の整数倍のr/r0の位置において第二の極大値とが観測されたが、その他にも多くの極大値が観測され、整数倍以外の位置にも極大値が観測された。このような結果から、比較例1で得られた分散体においてはコロイド結晶が形成されていることが分かった。また、図10に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた分散体は、粒子配列画像の二次元フーリエ変換によって得られるフーリエパターンがリング状となっておらず、スポットパターンが観測され、コロイド結晶における長距離的な秩序構造が存在することが確認された。
【0050】
また、比較例2で得られた分散体においては、走査型顕微鏡による測定により微粒子がランダムに配列されているとともに、約半数の粒子が、粒子同士が接触した凝集体になっていることが確認された。また、図7に示す結果からも明らかなように、比較例2で得られた分散体においては、第一の極大値におけるr/r0の値がほぼ2となっており、ほぼ粒子径(d)に等しい距離r(r/r0=2)の位置に極大値が観測されることが分かった。このような結果は、粒子同士の凝集が著しいことに起因するものである。また、比較例2で得られた分散体においては、r/r0の値が4の位置に第二の極大値が観測されたが、第一の極大値と第二の極大値の間の極小値が1程度の値であることが確認され、r/r0が2となる距離rと、r/r0が4となる距離rとの間の領域に多くの粒子が存在することが分かった。
【0051】
<構造色の確認>
実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた分散体の構造色を目視にて観測した。このような観測の結果、実施例1及び実施例2で得られた分散体は、ともに、極端に斜めの方向から見ると緑色がかって見えたが、基板に対して垂直から45°の角度の範囲内で見ると見た目の色変化を示さず、赤色が観測された。このような結果から、実施例1及び実施例2で得られた分散体は、反射特性の角度依存性が十分に低減されていることが確認された。一方、比較例1で得られた分散体においては、基板に対して垂直な方向から見た場合には赤色が観測されたが45°程度の角度から斜めに見ると色の変化が見られ、緑色が観測された。また、比較例2で得られた分散体においては、構造色が観測されなかった。
【0052】
なお、このような構造色を示さない分散体(比較例2)に着目すると、上述の動径分布関数において、その分散体(比較例2)の動径分布関数の第一の極大値と第二の極大値の間の極小値の値は十分に小さい値(0.5以下)とならず、1に近い値を示していたことが分かる(図7)。このような結果から、構造色を生じる構造の起源は、理論的には必ずしも明らかになってはいないが、動径分布関数において第一の極大値と第二の極大値との間の極小値が0.5以下の小さな値となることが必要であることが分かった。
【0053】
<角度分解反射スペクトルの測定>
実施例1及び比較例1で得られた分散体の角度分解反射スペクトルを測定した。このような測定には、光源にハロゲンランプを用い、分光器にマルチチャンネル式分光器(相馬光学製の商品名「S−2650」)を用いた。更に、反射スペクトルは、ガラス基板の表面に対して垂直な方向を0°として、入射角と検出角が等しくなる鏡面反射条件にて9°〜45°の範囲において測定した。各分散体の反射スペクトルを示すグラフを図11(実施例1)及び図12(比較例1)にそれぞれ示す。
【0054】
図11に示す結果からも明らかなように、実施例1で得られた分散体においては、720nm付近に反射ピークが観測され、且つ、入射角を変化させても反射ピークがほとんどシフトしないことが確認された。このような結果から、実施例1で得られた分散体においては、反射光の角度依存性が十分に低減された反射現象を示すことが確認された。一方、図12に示す結果からも明らかように、比較例1で得られた分散体においては、鋭い反射ピークが観測されるが、その反射ピーク波長は入射角が9°の場合には702nmであり、入射角が45°の場合には615nmであり、ピーク波長が大きくシフトしていることが確認された。このような結果から、比較例1で得られた分散体においては、反射光の角度依存性が高いことが分かった。
【0055】
上述のような結果から、微粒子の配列構造が、アモルファス構造であり且つ前記動径分布関数の第一の極大値における距離rの値が前記第一微粒子の平均粒子径の1〜2倍の値であるという条件(A)及び第一の極大値と第二の極大値の間の極小値の値が0.5以下であるという条件(B)を満たす構造である本発明の微粒子分散体(実施例1及び2)においては、入射光の入射角の変化による反射光のピーク波長の変化が十分に低減されることが確認された。また、本発明の微粒子分散体(実施例1及び2)においては、上述のような構造を安定的に維持できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明によれば、微粒子の配列構造が安定的に維持され、特定の波長の光を反射することができ、光の入射角の変化によって反射光のピーク波長が変化する反射光の角度依存性を十分に低減することが可能な微粒子分散体を提供することが可能となる。このように、本発明の微粒子分散体は、角度依存性の低い反射現象を示すため、特定の波長の光を反射する用途(例えば色材や赤外線反射膜等)に用いる材料として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1で得られた分散体の表面の微粒子の分散状態を示す走査型顕微鏡(SEM)写真である。
【図2】実施例2で得られた分散体の表面の微粒子の分散状態を示す走査型顕微鏡(SEM)写真である。
【図3】比較例1で得られた分散体の表面の微粒子の分散状態を示す走査型顕微鏡(SEM)写真である。
【図4】実施例1で得られた分散体の動径分布関数とr/r0(rは前記円の中心からの任意の距離を示し、r0はシリカ微粒子の平均粒子半径を示す。)との関係を示すグラフである。
【図5】実施例2で得られた分散体の動径分布関数とr/r0との関係を示すグラフである。
【図6】比較例1で得られた分散体の動径分布関数とr/r0との関係を示すグラフである。
【図7】比較例2で得られた分散体の動径分布関数とr/r0との関係を示すグラフである。
【図8】実施例1で得られた分散体の表面の微粒子の分散状態を示す走査型顕微鏡(SEM)写真内の領域を二次元フーリエ変換して得られたフーリエパターンである。
【図9】実施例2で得られた分散体の表面の微粒子の分散状態を示す走査型顕微鏡(SEM)写真内の領域を二次元フーリエ変換して得られたフーリエパターンである。
【図10】比較例1で得られた分散体の表面の微粒子の分散状態を示す走査型顕微鏡(SEM)写真内の領域を二次元フーリエ変換して得られたフーリエパターンである。
【図11】実施例1で得られた分散体の角度分解反射スペクトルを示すグラフである。
【図12】比較例1で得られた分散体の角度分解反射スペクトルを示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が50nm〜10μmの範囲にあり且つ粒子径のCv値が10%以下である第一微粒子が媒質中に分散してなる微粒子分散体であって、
前記分散体中における前記第一微粒子の配列構造が、アモルファス構造であり且つ下記条件(A)及び(B):
[条件(A)]
前記分散体の走査型電子顕微鏡写真に基いて下記式:
g(r)={1/〈ρ〉}×{dn/da}
[式中、g(r)は動径分布関数を示し、〈ρ〉は平面内の平均粒子密度を示し、dnは任意の第一微粒子からの距離rの円と距離r+drの円との間の領域中に存在する第一微粒子の数を示し、daは前記領域の面積(2πr・dr)を示す。]
を計算して求められる平面内の動径分布関数において、前記動径分布関数の第一の極大値における前記距離rの値が前記第一微粒子の平均粒子径の1〜2倍の値であること、
[条件(B)]
前記動径分布関数の前記第一の極大値と前記第一の極大値に隣接する第二の極大値との間にある前記動径分布関数の極小値が0.5以下の値であること、
を満たす短距離秩序構造を有していること、
を特徴とする微粒子分散体。
【請求項2】
前記媒質中に、前記第一微粒子の平均粒子径(d)のα倍(αは0.5以上0.8以下の数値あるいは1.2以上2.6以下の数値を示す。)の大きさ(α×d)の平均粒子径を有し且つ粒子径のCv値が10%以下の第二微粒子を、第一微粒子100個に対して5個〜100/α3個の割合で更に分散していることを特徴とする請求項1に記載の微粒子分散体。
【請求項3】
前記第一微粒子が無機微粒子からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の微粒子分散体。
【請求項4】
前記媒質が高分子化合物からなることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の微粒子分散体。
【請求項1】
平均粒子径が50nm〜10μmの範囲にあり且つ粒子径のCv値が10%以下である第一微粒子が媒質中に分散してなる微粒子分散体であって、
前記分散体中における前記第一微粒子の配列構造が、アモルファス構造であり且つ下記条件(A)及び(B):
[条件(A)]
前記分散体の走査型電子顕微鏡写真に基いて下記式:
g(r)={1/〈ρ〉}×{dn/da}
[式中、g(r)は動径分布関数を示し、〈ρ〉は平面内の平均粒子密度を示し、dnは任意の第一微粒子からの距離rの円と距離r+drの円との間の領域中に存在する第一微粒子の数を示し、daは前記領域の面積(2πr・dr)を示す。]
を計算して求められる平面内の動径分布関数において、前記動径分布関数の第一の極大値における前記距離rの値が前記第一微粒子の平均粒子径の1〜2倍の値であること、
[条件(B)]
前記動径分布関数の前記第一の極大値と前記第一の極大値に隣接する第二の極大値との間にある前記動径分布関数の極小値が0.5以下の値であること、
を満たす短距離秩序構造を有していること、
を特徴とする微粒子分散体。
【請求項2】
前記媒質中に、前記第一微粒子の平均粒子径(d)のα倍(αは0.5以上0.8以下の数値あるいは1.2以上2.6以下の数値を示す。)の大きさ(α×d)の平均粒子径を有し且つ粒子径のCv値が10%以下の第二微粒子を、第一微粒子100個に対して5個〜100/α3個の割合で更に分散していることを特徴とする請求項1に記載の微粒子分散体。
【請求項3】
前記第一微粒子が無機微粒子からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の微粒子分散体。
【請求項4】
前記媒質が高分子化合物からなることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の微粒子分散体。
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図8】
【図9】
【図10】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−58091(P2010−58091A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228856(P2008−228856)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】
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