説明

微細加工処理剤、及びそれを用いた微細加工処理方法

【課題】 シリコン化合物含有膜と、ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜とが積層された積層膜を微細加工する際に、シリコン化合物含有膜のみを選択的に微細加工する微細加工処理剤、及びそれを用いた微細加工処理方法を提供する。
【解決手段】 本発明の微細加工処理剤は、0.05〜10重量%のフッ化水素、10〜39重量%のフッ化アンモニウム及び水を含む混合溶液に、脂肪族アミン又は脂肪族アミノハイドロフロライドの少なくとも何れかの界面活性剤を0.001〜0.1重量%添加したものであり、フッ化水素の含有量をX重量%、フッ化アンモニウムの含有量をY重量%とした場合に、X及びYは下記数式を満たし、シリコン化合物含有膜とポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜とのエッチレートの選択比(シリコン化合物含有膜/(ポリシリコン膜、又はアモルファスシリコン膜))が1000以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、液晶表示装置、マイクロマシン(micro electro mechanical systems;MEMS)デバイス等の製造に於いて、微細加工や洗浄処理等に用いる微細加工処理剤、及びそれを用いた微細加工処理方法に関し、特にシリコン化合物含有膜と、ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜とが少なくとも積層された積層膜の微細加工に用いる微細加工処理剤、及びそれを用いた微細加工処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコンウェハの機械的特性が注目され、理想的な弾性材料として、アクチュエータ、バルブ、ノズル、プリンタ用ヘッド、並びに流量、圧力及び加速度等の各種物理量を検知する半導体センサ等の種々のデバイスに応用されている。その結果、シリコンウェハに対しては、各種の用途に応じて高集積化、微細化、高感度化、高機能化が要求されている。この種のデバイスはマイクロマシンと称されており、それらの製造にはマイクロマシニング技術と呼ばれる微細加工処理技術が用いられる。
【0003】
マイクロマシンの多くはシリコン基板上に形成され、各部の加工には半導体集積回路で培われた微細加工処理技術が用いられているが、マイクロマシンは半導体集積回路とは異なり物理的な可動部を有する。その為、マイクロマシンには基板から遊離した微小部品や、梁構造を形成するための立体加工も必要である。
【0004】
マイクロマシニング技術に於いて、目的とする立体的な構造を形成するために、例えばエッチング速度に関し、シリコンの単結晶の面方位依存性を利用した異方性ウェットエッチング技術(下記、特許文献1参照)や、シリコン酸化膜及びアルミニウムに影響を与えずに窒化チタン及びチタンをエッチングするドライエッチング技術(下記、特許文献2参照)によって実現することもできる。
【0005】
しかし、マイクロマシニング技術に於いて最も特色のある固有の技術は、可動部を形成した後に犠牲層を除去する方法である。これは、微細加工により可動部となる構造体を、その構造体材料とエッチレートの選択比のとれる材料、即ち、犠牲層上に形成し、最終的に前記構造体を基板から分離する必要が生じたときに、この犠牲層を除去するものである(下記、特許文献3参照)。除去方法としては、等方的なエッチングや、加熱により昇華若しくは分解する材料を用いてウエハを加熱する方法が挙げられる。
【0006】
例えば、シリコン基板(シリコンウェハ)上に、ポリシリコン膜からなる梁状の立体構造物を形成する例を挙げる。先ず、図1(a)に示すように、シリコン基板1上にシリコン酸化膜からなる犠牲層2、ポリシリコン膜3を順次形成する。次に、これらの層が積層されたシリコン基板1をフッ化水素酸に浸漬して、前記犠牲層2をエッチング除去する。これにより、図1(b)に示すように、ポリシリコン膜3による梁状の立体構造物が得られる。この様な立体構造物を有するシリコン基板1は、アクチュエータ、圧力センサ等のマイクロマシンの一部に適用される。
【0007】
しかし、マイクロマシンに高度な機能を具備させるためには、アクチュエータ、圧力センサ、制御回路等を一体化、集積化することが不可欠である。このため、シリコンウェハの一部をフォトレジストで被い、メタル配線構造等の非エッチング箇所を保護する必要がある。この場合、従来のフッ化水素酸を用いてエッチングを行うと、フォトレジストが剥がれ、メタル配線構造等の保護すべき部分までエッチングするという問題がある。また従来のフッ化水素とフッ化アンモニウムの混合水溶液であるバッファードフッ酸溶液を用いてエッチングを行うと、立体構造を形成するポリシリコン膜をエッチングするという問題がある。
【0008】
【特許文献1】特開2006−186329号公報
【特許文献2】特開2005−105416号公報
【特許文献3】特開平6−335365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、少なくともシリコン化合物含有膜と、ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜とが積層された積層膜を微細加工する際に、シリコン化合物含有膜のみを選択的に微細加工することが可能な微細加工処理剤、及びそれを用いた微細加工処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、微細加工処理剤、及びそれを用いた微細加工処理方法について検討した。その結果、フッ化水素、フッ化アンモニウム及び特定の界面活性剤の含有量を各々調整することにより、シリコン化合物含有膜と、ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜とが少なくとも積層された積層膜を微細加工する際に、シリコン化合物含有膜のみを選択的に微細加工できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明に係る微細加工処理剤は、前記の課題を解決する為に、少なくともシリコン化合物含有膜と、ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜とが積層された積層膜を微細加工する微細加工処理剤であって、0.05〜10重量%のフッ化水素、10〜39重量%のフッ化アンモニウム及び水を含む混合溶液に、脂肪族アミン(一般式C2m+1NH;mは6〜10の整数を表す。)又は脂肪族アミノハイドロフロライド(一般式C2n+1NHF;nは6〜10の整数を表す。)の少なくとも何れか一方の界面活性剤を0.001〜0.1重量%添加したものであり、前記フッ化水素の含有量をX重量%、前記フッ化アンモニウムの含有量をY重量%とした場合に、X及びYは下記数式を満たす範囲内にあり、かつ、前記シリコン化合物含有膜と、ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜とのエッチレートの選択比(シリコン化合物含有膜/ポリシリコン膜、又はシリコン化合物含有膜/アモルファスシリコン膜)が1000以上であることを特徴とする。
【0012】
【数1】

【0013】
前記構成に於いては、フッ化水素の含有量(X重量%)と、フッ化アンモニウムの含有量(Y重量%)とが、前記数式で示す範囲内にあり、かつ、シリコン化合物含有膜と、ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜とのエッチレートの選択比(シリコン化合物含有膜/ポリシリコン膜、又はシリコン化合物含有膜/アモルファスシリコン膜)が1000以上であるので、これにより、ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜に対して、シリコン化合物含有膜のみを選択的に微細加工することができる。尚、微細加工とは、シリコン化合物含有膜のエッチングや、それらの表面のクリーニングを含む意味である。
【0014】
前記シリコン化合物含有膜は、熱シリコン酸化膜、ノンドープシリケートガラス膜、リンドープシリケートガラス膜、ボロンドープシリケートガラス膜、リンボロンドープシリケートガラス膜、TEOS膜、フッ素含有シリコン酸化膜、炭素含有シリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜、自然酸化膜からなる群より選択される1種の単層、又は任意に選択される2種以上の積層膜であることが好ましい。
【0015】
前記ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜には、リン、ボロン及び砒素からなる群より選ばれる少なくとも何れか1つがドープされていてもよい。
【0016】
前記シリコン化合物含有膜に対する25℃でのエッチレートが1〜5000nm/分の範囲であることが好ましい。これにより、シリコン化合物含有膜に対する微細加工処理の処理時間が長時間となるのを防止して生産効率の向上が図れると共に、微細加工後のシリコン化合物含有膜の膜厚及び表面粗度の制御を容易にする。
【0017】
また、本発明に係る微細加工処理方法は、前記の課題を解決する為に、前記に記載の微細加工処理剤を用いて、シリコン化合物含有膜と、ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜とが少なくとも積層された積層膜を微細加工することを特徴とする。
【0018】
前記方法では、フッ化水素の含有量(X重量%)と、フッ化アンモニウムの含有量(Y重量%)とが、前記数式で示す範囲内にあり、かつ、シリコン化合物含有膜と、ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜とのエッチレートの選択比が1000以上の微細加工処理剤を使用する。従って、シリコン化合物含有膜と、ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜とが少なくとも積層された積層膜に対し、シリコン化合物含有膜のみを選択的に微細加工処理することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シリコン化合物含有膜と、ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜とが少なくとも積層された積層膜に対し、シリコン化合物含有膜のみを選択的に微細加工処理することができるので、例えば半導体装置、液晶表示装置、マイクロマシンデバイス等の製造に於いて好適な微細加工を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の一形態について、以下に説明する。
本実施の形態に係る微細加工処理剤は、フッ化水素、フッ化アンモニウム及び水を含む混合溶液に、脂肪族アミン又は脂肪族アミノハイドロフロライドの少なくとも何れか一方の界面活性剤を添加したものである。
【0021】
フッ化水素の含有量は、0.05〜10重量%の範囲内であることが好適であり、1〜8重量%の範囲内であることがより好適である。フッ化水素の含有量が0.05重量%未満であると、フッ化水素の濃度制御が困難である為、エッチレートのバラツキが大きくなる場合がある。またフッ化水素の含有量が10重量%を超えると、シリコン化合物含有膜に対するエッチレートが大きくなり過ぎ、エッチングの制御性が低下する。
【0022】
フッ化アンモニウムの含有量は10〜39重量%の範囲内であることが好適であり、15〜25重量%の範囲内であることがより好適である。前記数値範囲内にすることにより、相対的に水分量が大きくなるのを防止し、使用時に於ける微細加工処理剤の蒸発量を抑制して、組成変化の安定化を図ると共に、フッ化アンモニウムの絶対量の減少、フッ化水素の濃度及び絶対量の増加を抑制して、エッチレートの制御を可能にする。フッ化アンモニウムの含有量が10重量%未満であると、相対的に微細加工処理剤中の水の濃度が大きくなる。この為、使用時の微細加工処理剤の蒸発量が大きくなり、蒸発による組成の変化が大きくなる場合がある。またフッ化アンモニウムの含有量が39重量%を超えると、使用の際、蒸発によりフッ化アンモニウムがフッ化水素とアンモニウムガスに分解し、アンモニウムガスが蒸発する。そのため、蒸発が進むにつれてフッ化アンモニウムの絶対量が減少し、フッ化水素の濃度及び絶対量が増加する。この為、組成及びエッチレートの制御が困難になる場合がある。
【0023】
前記界面活性剤に於ける脂肪族アミンは、一般式C2m+1NH(mは6〜10の整数を表す)で表される。より具体的には、n−ヘプチルアミン、2−アミノヘプタン、1,4−ジメチルヘプチルアミン、2−アミノオクタン、1,5−ジメチルヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−ノニルアミン等が例示できる。これらの脂肪族アミンのうち、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、n−アミノデカンが安価であり、入手し易いためより好ましい。
【0024】
前記界面活性剤に於ける脂肪族アミノハイドロフロライドは、一般式C2n+1NHF(nは6〜10の整数を表す)で表される。より具体的には、n−ヘプチルアミノハイドロフロオライド、2−アミノヘプタンハイドロフロオライド、1,4−ジメチルヘプチルアミノハイドロフロライド、2−アミノオクタンハイドロフロライド、1,5−ジメチルヘキシルアミノハイドロフロライド、2−エチルヘキシルアミノフロライド、n−ノニルアミノハイドロフロライド等が例示できる。これらの脂肪族アミノハイドロフロライドのうち、n−ヘキシルアミノハイドロフロライド、n−オクチルアミノハイドロフロライド、n−アミノデカンハイドロフロライドが原料となるn−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、n−アミノデカンが安価であり、入手し易いためより好ましい。
【0025】
前記脂肪族アミンの一般式C2m+1NHに於けるm、及び前記脂肪族アミノハイドロフロライドの一般式C2n+1NHFに於けるnは、それぞれ6〜8の範囲内であることが好ましい。m及びnが6未満の場合、多量の界面活性剤の添加を要する。その結果、微細加工処理剤中に含まれるメタルなどの不純物量が増加する恐れがある。また、m及びnが10を超える場合、その様な界面活性剤は室温で固体となる。その結果、微細加工処理剤の調製の際の操作性が低下する恐れがある。
【0026】
前記界面活性剤の添加量は、0.001〜0.1重量%の範囲内であることが好適であり、0.005〜0.05重量%の範囲内であることがより好適である。界面活性剤を前記数値範囲内の添加量で添加することにより、ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜に対するエッチレートが大きくなり過ぎるのを抑制すると共に、臨界ミセル濃度を超えてパーティクル数が増加するのを抑制し、基板の汚染を防止することができる。
【0027】
微細加工処理剤に於けるフッ化水素とフッ化アンモニウムのモル比(フッ化アンモニウム/フッ化水素)は1.5以上であり、2以上であることが好ましく、2〜3であることがより好ましい。また、重量比(フッ化アンモニウム/フッ化水素)の場合、2.78以上であり、3.7以上であることが好ましく、3.7〜5.55であることがより好ましい。
【0028】
フッ化水素とフッ化アンモニウムとのモル比、又は重量比が前記の範囲であると、例えば、シリコンウェハに於いて、メタル配線構造等の非エッチング箇所を保護する観点から、その一部をフォトレジストで被覆する場合がある。この場合、当該フォトレジストは、従来のエッチング液に対して、少なくともエッチング処理の間、エッチングされない耐性を有している。
【0029】
更に、前記フッ化水素の含有量をX重量%、前記フッ化アンモニウムの含有量をY重量%とし、残りの成分が水及び界面活性剤である場合、X及びYは下記数式を満たす範囲内にある。当該数式を満たす範囲内にある場合、本発明の微細加工処理剤は、シリコン化合物含有膜と、ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜とのエッチレートの選択比(シリコン化合物含有膜/ポリシリコン膜、又はシリコン化合物含有膜/アモルファスシリコン膜)が1000以上となる。その結果、シリコン化合物含有膜と、ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜とが積層された積層膜に対し、シリコン化合物含有膜のみを選択的に微細加工することができる。
【0030】
【数2】

【0031】
また、本実施の形態の微細加工処理剤は、25℃に於けるシリコン化合物含有膜に対するエッチレートが1〜5000nm/分の範囲内であることが好ましい。エッチレートが1nm/分未満であると、エッチング等の微細加工処理に時間を要し、生産効率の低下を招来する場合がある。また、5000nm/分を超えると、エッチング後の膜厚の制御性の低下や基板表面(シリコン化合物含有膜等の形成面とは反対側の面)の荒れが顕著になり、歩留まりが低下する場合がある。前記シリコン化合物含有膜に対するエッチレートは、1〜5000nm/分の範囲内であることがより好ましく、10〜500nm/分の範囲内であることが特に好ましい。
【0032】
本実施の形態の微細加工処理剤は、その効果を阻害しない範囲内に於いて、界面活性剤以外の添加剤を混合することも可能である。前記添加剤としては、例えば、塩酸(及びその溶液)、硫酸溶液、リン酸溶液等の酸性物質、過酸化水素、キレート剤等が例示できる。
【0033】
前記シリコン化合物含有膜としては、例えば、シリコン熱酸化膜、ノンドープシリケートガラス膜、リンドープシリケートガラス膜、ボロンドープシリケートガラス膜、リンボロンドープシリケートガラス膜、TEOS膜、フッ素含有シリコン酸化膜、炭素含有シリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜、自然酸化膜等が例示できる。エッチングを行うシリコン酸化膜は1種のみが表面に露出していてもよいし、複数種が表面に露出していてもよい。
【0034】
前記ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜はノンドープでもよく、或いは、リン、ボロン及び砒素からなる群より選ばれる少なくとも何れか1つがドープされていてもよい。また、微細加工を行うポリシリコン膜は1種のみが表面に露出していてもよいし、複数種が表面に露出していてもよい。
【0035】
求められる微細加工処理剤の純度によっては、添加する脂肪族アミン及び/又は脂肪族アミノハイドロフロライドの界面活性剤を蒸留、イオン交換樹脂、イオン交換膜、電気透析、又は濾過等により精製して用いてもよい。また、微細加工処理剤を循環濾過等により精製してもよい。
【0036】
次に、本実施の形態に係る微細加工処理剤を用いた微細加工処理方法について、ウェットエッチングを例にして説明する。
【0037】
本実施の形態の微細加工処理剤は、種々のウェットエッチング法に採用される。エッチング方法としては、浸漬式やスプレー式等があるが、いずれの方法にも本発明の微細加工処理剤は採用され得る。浸漬式は、エッチング工程での蒸発により微細加工処理剤の組成変化が少ないので好適である。
【0038】
微細加工処理剤をエッチング液として使用した場合のエッチング温度は、5〜50℃の範囲内であることが好適であり、15〜35℃の範囲内であることがより好適であり、20〜30℃の範囲内であることが更に好適である。前記範囲内であると、微細加工処理剤の蒸発を抑制することができ、組成変化を防止することができる。また、高温度ではシリコン化合物含有膜や基板表面の荒れが増大し、低温度では微細加工処理剤の粘度が上昇して洗浄効果が悪化し、均一性が低下するというデメリットを回避できる。尚、エッチング温度によっては膜毎にエッチレートが変化するので、ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜に対するエッチレートとシリコン化合物含有膜に対するエッチレートとの差も影響を受ける場合がある。よって、エッチング温度を設定する場合には、シリコン化合物含有膜と、ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜とのエッチレートの選択比(シリコン化合物含有膜/ポリシリコン膜、又はシリコン化合物含有膜/アモルファスシリコン膜)が1000以上となる様に考慮するのが望ましい。
【0039】
本実施の形態の微細加工処理剤は、シリコン化合物含有膜がフォトレジスト等により被覆されている場合にも、該フォトレジストに剥がれが生じることない。その結果、シリコン化合物含有膜に於いて微細加工が不要な部分が微細加工されるのを防止、微細化高精度を向上させることができる。本実施の形態に係る微細加工処理剤に対し、耐性を示すフォトレジストとしては特に限定されず、例えば東京応化工業(株)社製のOFPR−800等が例示できる。
【実施例】
【0040】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0041】
(a)シリコン熱酸化膜、TEOS膜、及びノンドープポリシリコン膜のエッチレート
光学式膜厚測定装置(ナノメトリクスジャパン(株)社製、Nanospec6100)を用いてエッチング前後のシリコン熱酸化膜、TEOS膜、及びノンドープポリシリコン膜の膜厚をそれぞれ測定し、エッチングによる膜厚変化を測定した。3つ以上の異なるエッチング時間に於いて前記測定を繰り返し実施し、エッチレートを算出した。
【0042】
(b)フォトレジストパターンの耐性
シリコン酸化膜上に、フォトレジスト(東京応化工業(株)社製 OFPR−800)でパターンを形成したシリコンウェハを、各エッチング液に10分間浸漬し、各微細加工処理剤によるフォトレジストパターンの剥がれを目視で観察した。尚、フォトレジストパターンの耐性の評価は、フォトレジストパターンの剥がれが確認されたものを「×」、確認されなかったものを「○」とした。
【0043】
(実施例1)
フッ化水素酸(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度50重量%)18重量部と、フッ化アンモニウム溶液(ステラケミファ社製、半導体用高純度グレード、濃度40重量%)4263重量部と、超純水5719重量部とを混合した薬液に、2重量部の界面活性剤(n−オクチルアミン)を添加し、撹拌混合した後、混合液を25℃に調温し3時間静置した。これにより、フッ化水素0.09重量%、フッ化アンモニウム17.05重量%、界面活性剤(n−オクチルアミン)0.02重量%のエッチング液(微細加工処理剤)を調製した。
【0044】
次に、前記エッチング液を、蒸発面積が78cmの容器に500gを入れ、25℃で蒸発させたときの、エッチング液の蒸発量を測定すると共に、フッ化水素及びフッ化アンモニウムの濃度及び絶対量を測定し、更にシリコン熱酸化膜に対する25℃のエッチレートを測定した。測定は、蒸発時間が0時間、24時間、72時間のときにそれぞれ行った。結果を下記表1に表す。
【0045】
(比較例1)
フッ化水素の濃度を0.51重量%、フッ化アンモニウムの濃度を0重量%、界面活性剤(n−オクチルアミン)の濃度を0重量%にしたこと以外は、前記実施例1と同様にして、本比較例に係るエッチング液を調製し、更に、実施例1と同様にして、エッチング液の蒸発量、フッ化水素及びフッ化アンモニウムの濃度及び絶対量、並びにシリコン熱酸化膜に対する25℃のエッチレートを測定した。結果を下記表1に表す。
【0046】
(比較例2)
フッ化水素の濃度を0.12重量%、フッ化アンモニウムの濃度を39.90重量%、界面活性剤(n−オクチルアミン)の濃度を0.01重量%にしたこと以外は、前記実施例1と同様にして、本比較例に係るエッチング液を調製し、更に、実施例1と同様にして、エッチング液の蒸発量、フッ化水素及びフッ化アンモニウムの濃度及び絶対量、並びにシリコン熱酸化膜に対する25℃のエッチレートを測定した。結果を下記表1に表す。
【0047】
(実施例2)
フッ化水素酸(ステラケミファ(株)製、半導体用高純度グレード、濃度50重量%)1重量部と、フッ化アンモニウム(ステラケミファ(株)社製、半導体用高純度グレード、濃度40重量%)25重量部と、超純水74重量部とを混合した薬液に、5重量部の界面活性剤(n−ヘキシルアミン(東京化成工業(株)社製)を添加し、攪拌混合した後、該混合液を25℃に調温し、3時間静置した。これにより、本実施例に係るエッチング液を調製した。
【0048】
次に、TEOS膜及びノンドープポリシリコン膜に対するエッチレートを評価した。またフォトレジストパターンの耐性を評価した。結果を下記表2に示す。
【0049】
(実施例3〜12)
実施例3〜12に於いては、表2に示す通りにフッ化水素及びフッ化アンモニウムの含有量と、脂肪族アミン及び脂肪族アミノハイドロフロライドからなる界面活性剤の含有量及び種類を変更したこと以外は、前記実施例2と同様にして微細加工処理剤を調製した。更に、各実施例で得られたエッチング液を用いて、TEOS膜及びノンドープポリシリコン膜に対するエッチレート、フォトレジストパターンの耐性を評価した。結果を下記表2に示す。
【0050】
(比較例3)
比較例3に於いては、表2に示す通りにフッ化水素及びフッ化アンモニウムの含有量と、脂肪族アミン、及び脂肪族アミノハイドロフロライドからなる界面活性剤の含有量及び種類を変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして微細加工処理剤を調製した。更に、本比較例で得られたエッチング液を用いて、TEOS膜及びノンドープポリシリコン膜に対するエッチレート、フォトレジストパターンの耐性を評価した。結果を下記表2に示す。
【0051】
(比較例4〜16)
比較例4〜16に於いては、表2に示す通りにフッ化水素及びフッ化アンモニウムの含有量を変更し、脂肪族アミン及び脂肪族アミノハイドロフロライドからなる界面活性剤を添加しなかったこと以外は、前記実施例2と同様にして微細加工処理剤を調製した。更に、各比較例で得られたエッチング液を用いて、TEOS膜及びノンドープポリシリコン膜に対するエッチレート、フォトレジストパターンの耐性を評価した。結果を下記表2に示す。
【0052】
(実施例13〜28)
本実施例13〜28に於いては、表3に示す通りにエッチング温度を17℃、35℃又は45℃に変更したこと以外は、それぞれ実施例5〜11と同様にしてエッチング液を調製し、更にTEOS膜及びノンドープポリシリコン膜に対するエッチレートの評価を行った。結果を下記表3に示す。
【0053】
(結果)
下記表1から明らかなように、フッ化アンモニウムの濃度が10重量%未満であると、相対的に微細加工処理剤中の水の濃度が大きくなるため、使用の際の微細加工処理剤の蒸発量が大きくなり、蒸発による組成の変化が大きくなった。また、フッ化アンモニウムの濃度が39重量%を超えると、使用の際、蒸発によりフッ化アンモニウムがフッ化水素とアンモニウムガスに分解し、アンモニウムガスが蒸発した。そのため、蒸発が進むにつれてフッ化アンモニウムの絶対量が減少し、かつ、フッ化水素の濃度及び絶対量が増加するため、エッチング液の組成及びシリコン熱酸化膜に対するエッチレートの制御が困難であった。
【0054】
【表1】

【0055】
下記表2から明らかなように、比較例3〜16に係る微細加工処理剤では、ノンドープポリシリコン膜に対するTEOS膜のエッチング選択比が(TEOS膜/ノンドープポリシリコン膜)が1000以上を満たしており、TEOS膜のみを選択的にエッチングできることが確認された。また、何れもフォトレジストパターンの剥がれが確認されず、フォトレジストの耐性を有していることが確認された。
【0056】
一方、比較例3、9、10に於いては、エッチレートの選択比が1000以上の値を示したものの、フォトレジストパターンが剥がれ、耐性が無いことが確認された。また、他の比較例に於いては、エッチレートの選択比が1000未満であり、TEOS膜のみを選択的にエッチングできないことが確認された。
【0057】
【表2】

【0058】
下記表3から明らかなように、エッチング温度を17、35、45℃に変化させた場合にも、エッチング選択比(TEOS膜/ノンドープポリシリコン膜)は1000を超えており、またエッチング選択比を制御できることが分かった。
【0059】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】従来のエッチング液を用いて、シリコン基板上のポリシリコン膜を微細加工処理する様子を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0061】
1 シリコン基板
2 シリコン酸化膜
3 ポリシリコン膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともシリコン化合物含有膜と、ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜とが積層された積層膜を微細加工する微細加工処理剤であって、
0.05〜10重量%のフッ化水素、10〜39重量%のフッ化アンモニウム及び水を含む混合溶液に、脂肪族アミン(一般式C2m+1NH;mは6〜10の整数を表す。)又は脂肪族アミノハイドロフロライド(一般式C2n+1NHF;nは6〜10の整数を表す。)の少なくとも何れか一方の界面活性剤を0.001〜0.1重量%添加したものであり、
前記フッ化水素の含有量をX重量%、前記フッ化アンモニウムの含有量をY重量%とした場合に、X及びYは下記数式を満たす範囲内にあり、
かつ、前記シリコン化合物含有膜と、ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜とのエッチレートの選択比(シリコン化合物含有膜/ポリシリコン膜、又はシリコン化合物含有膜/アモルファスシリコン膜)が1000以上であることを特徴とする微細加工処理剤。
【数1】

【請求項2】
前記シリコン化合物含有膜は、熱シリコン酸化膜、ノンドープシリケートガラス膜、リンドープシリケートガラス膜、ボロンドープシリケートガラス膜、リンボロンドープシリケートガラス膜、TEOS膜、フッ素含有シリコン酸化膜、炭素含有シリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜、自然酸化膜からなる群より選択される1種の単層、又は任意に選択される2種以上の積層膜であることを特徴とする請求項1に記載の微細加工処理剤。
【請求項3】
前記ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜には、リン、ボロン及び砒素からなる群より選ばれる少なくとも何れか1つがドープされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の微細加工処理剤。
【請求項4】
前記シリコン化合物含有膜に対する25℃でのエッチレートが1〜5000nm/分の範囲であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の微細加工処理剤。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の微細加工処理剤を用いて、シリコン化合物含有膜と、ポリシリコン膜又はアモルファスシリコン膜とが少なくとも積層された積層膜を微細加工することを特徴とする微細加工処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−124135(P2008−124135A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304126(P2006−304126)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000162847)ステラケミファ株式会社 (81)
【Fターム(参考)】