説明

微細気泡発生装置

【課題】微細化された気泡を浄化槽等の水中に吹き込むことにより溶存酸素濃度を高めて水質の改善を図る微細気泡発生装置を提供すること。
【解決手段】ポンプケーシング4内に収められた一対の2葉式ルーツロータ26を駆動モータ38により回転自在に設けたルーツポンプ3を備え、吸入管45に連通する管路には空気導入口46と、吸い込んだ水を衝突させる衝突部材50とを設け、ルーツポンプ3の運転により吸入管45から水を吸い込むと共に空気導入口46から取り込まれる空気が混合した水を衝突部材50に衝突させることにより多量の気泡を発生させ、かつ、ルーツポンプ3による圧縮作用により気泡が微細化され、微細化された気泡を含む水を排出管55から浄化槽又は河川の水中に吹き込むようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化槽のバッキ用又は河川や湖沼の汚染された水中に微細気泡を吹き込むことにより水質の改善に使用される微細気泡発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浄化槽における汚水の浄化は、ブロワによるバッキが一般的であり、ブロワの排気側に取り付けられたプラスチック製の円筒形散気管から気泡を噴出させることにより行なわれる。ところが、その散気管では、発生する気泡が膨張又は接触破裂を起して泡が消えてしまう欠点を有する。
【0003】
特許文献1には、吐出圧力の異なる2台のポンプの各吐出口を配管により接続し、高吐出圧力のポンプの吸引口に空気と一緒に水を供給する供給管を接続し、低吐出圧力のポンプの吸引口にノズルを設け、両ポンプの稼動時の圧力差を利用してノズルから微細な気泡を発生させる微細気泡発生装置が開示されている。この装置では、高吐出圧力のポンプに供給する水が微細気泡を吹き込む水槽とは別の水槽に貯留されており、微細気泡を吹き込まれた水槽の水は、ポンプと当該水槽との間を循環するように構成されていない。
このため、高吐出圧力のポンプに供給する水を貯留する水槽をわざわざ設置しなければならないという不都合を伴うものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3081983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、微細化された気泡を浄化槽等の水中に吹き込むことにより溶存酸素濃度を高めて水質の改善を図る微細気泡発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために請求項1に記載した発明は、浄化槽又は河川の水中に微細気泡を吹き込むことにより当該水の浄化を施す微細気泡発生装置であって、
吸込口と吐出口を設けたポンプケーシング内に収められた一対の2葉若しくは多葉式ルーツロータを駆動モータにより回転自在に設けたルーツポンプと、その吸込口に接続される吸入管と、その吐出口に接続される排出管とを備え、その吸入管に連通する管路には空気導入口と、吸い込んだ水を衝突させる衝突部材とを設け、前記ルーツポンプの運転により前記吸入管から水を吸い込むと共に前記空気導入口から取り込まれる空気が混合した水を該衝突部材に衝突させることにより多量の気泡を発生させ、かつ、前記ルーツポンプによる圧縮作用により気泡を微細化し、その微細化された気泡が含まれた水を前記排出管から浄化槽又は河川の水中に吹き込むようにしたことを特徴とする。
【0007】
同様の目的を達成するために請求項2に記載した発明は、請求項1に記載の微細気泡発生装置において、河川の100〜200mという長い区間に渡って散気する場合、吸込み側の配管長さが20〜30mの場合、吸込揚程が3〜5mの場合には、前記ルーツポンプを2台直列に配置することを特徴とするものである。
【0008】
同様の目的を達成するために請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載の微細気泡発生装置において、前記排出管の先端部に逆止弁付ノズルを設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
(請求項1の発明)
この微細気泡発生装置は、ルーツポンプの運転により空気導入口からエジェクタ作用により取り込まれる空気が混合した水を衝突部材に衝突させることにより多量の気泡を発生させ、かつ、ルーツポンプによる圧縮作用により気泡が微細化され、微細化された気泡を含む水を浄化槽又は河川の水中に吹き込むようにされており、微細化された気泡が水中に長時間存在することにより溶存酸素濃度を高めることができて水質の改善を図ることができる。
【0010】
(請求項2の発明)
河川の100〜200mという長い区間に渡って散気する場合、吸込み側の配管長さが20〜30mの場合、吸込揚程が3〜5mの場合には、ルーツポンプを2台直列に配置することにより水の浄化を安定して行なうことができる。
【0011】
(請求項3の発明)
排出管の先端部に逆止弁付ノズルを設けることにより、排出管内に気泡の一部が停滞するエアポケット状態が解消されると共に微細気泡の発生が促進され、さらに微細化された気泡を含む水をより遠方へ放出することができる。また、ルーツポンプの運転停止時には、逆止弁付ノズルの逆流防止作用によって浄化槽の汚水等が排出管内に流入することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る微細気泡発生装置
【図2】ルーツポンプの縦断側面図
【図3】ルーツポンプの一部破断正面図
【図4】3葉式ルーツポンプの要部の模式図
【図5】気泡発生管の説明図
【図6】気泡発生管の他の態様を示す説明図
【図7】本発明装置を浄化槽に設置した状態を示す説明図
【図8】本発明装置に用いるルーツポンプの特性を示すグラフ
【図9】溶存酸素量のグラフ
【図10】逆止弁付ノズルの説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の最良の形態例を図面に基づいて説明する。
【0014】
本発明に係る微細気泡発生装置Bは、浄化槽又は河川の水中に微細気泡を吹き込むことにより溶存酸素濃度を高めると共に水質の改善を施すものであり、ルーツポンプ3と、その吸込口5に接続される吸入管45と、その吐出口6に接続される排出管55とを備えている。
【0015】
図1に示すように、微細気泡発生装置Bの機台1上にはルーツポンプ3と駆動モータ38とが設置されている。ルーツポンプ3は、吸込口5と吐出口6を設けたポンプケーシング4の内部に、吸込口部8を斜め上方に、吐出口部9を斜め下方に設けたロータケーシング7が45度傾けて配置されている。ロータケーシング7の吸込口部8の上隅部7aとポンプケーシング4の吸込口5側の天部4aとは、壁10により連接されている。また、吐出口部9の下隅部7bから横方向へ凹円弧壁11が一体に形成され、その凹円弧壁11のほぼ中間部とポンプケーシング4の底部4bとは、縦壁12により連接されている。13は縦壁12に設けられたバイパス穴である。
【0016】
14,14はポンプケーシング4の周壁に設けられたドレン用穴、15はポンプケーシング4の天部4aに設けられた給水穴である。17は一方のドレン用穴14に螺着されたキャップ、21は給水穴15に螺着されたキャップである。他方のドレン用穴14に螺着されるキャップ18には、前記バイパス穴13に先端部を挿入するロッド19が中心部に突設されている。
【0017】
吸込口5には、逆止弁22を介装して配管のためのフランジ金具23が取り付けられている。また、吐出口6にも同様に、フランジ金具24が取り付けられている。
【0018】
ロータケーシング7には、一対の2葉式ルーツロータ26を収めている。図3に示すように、ルーツロータ26のロータ軸27は、ポンプケーシング4の両側に夫々固定されたハウジング30,31に装着したベアリング32,32により回転自由に支持するように設けられている。下方のロータ軸27のハウジング30から突出する一端にはプーリ34を取付け、駆動モータ装置38により伝動ベルト39を介して該プーリ34を回転駆動するように設けられている。ロータ軸27の他端にはタイミングギア35を夫々固定し、それらのタイミングギア35,35を噛合するように設けている。36はハウジング31の開口部に取り付けたギアカバーである。
【0019】
ハウジング30,31には、ロータ軸27を支持するベアリング32の奥に、公知のメカニカルシールを収納したスタッフィングボックス33が設けられている。
【0020】
ルーツロータ26については、ロータ軸27を除いて形成された芯金部26bの外側にポリウレタンゴム材(又はニトリルゴム材)によりライニング加工を施している。
【0021】
この実施例のルーツポンプ3では、2葉式ルーツロータ26を採用しているが、これに限定されることなく、図4に示す3葉式ルーツロータ41を適用することもできる。
【0022】
3葉式ルーツロータ41の場合における微細気泡の発生状況を図4に示す。この実施例では、ハウジング30の内側面の吸い込み側に相当する箇所に、ロータ軸42が挿入される軸穴30aを中心として半径方向に延びる複数の、例えば3個のせん断用溝30bを設ける。せん断用溝30bの大きさについては、幅:5〜15mm、長さ:15〜25mm、深さ:5〜10mmとする。また、せん断用溝30bの長さについては、1個目は軸穴30aの内端縁からロータケーシング7の内径の中間位置まで、2個目は軸穴30aの内端縁からロータケーシング7の内径の3/4の位置まで、3個目は軸穴30aの内端縁近くからロータケーシング7の内径から若干突出する位置までというように、ルーツロータ41の回転方向に合わせて変化させるように設けることもできる。
他方のハウジング31についても、同様のせん断用溝を設けるものとする。
【0023】
しかして、ロータケーシング7内に流入してせん断用溝30dに入り込む夾雑物は、ルーツロータ41のローブ41aの側縁と該せん断用溝30dの角縁とによるせん断作用によってせん断される。
【0024】
ルーツポンプ3に接続した吸入管45に連通する管路には、複数の空気導入口46を設ける。48は空気導入口46に接続した導入管47に取付けられた開閉弁である。
【0025】
空気導入口46よりもルーツポンプ3の吸入口5に近い箇所の管路には、気泡発生させるための衝突部材50を大径部49aに内蔵した気泡発生管49を介装している。図5に示すように、衝突部材50は、前記大径部49aの内底に載せられるリング50aから上方へ延びる4本の脚50bの上端に円形板50cを一体に固定した形態とされている。
【0026】
衝突部材50の他の態様の衝突部材53を図6に示す。その衝突部材53は、所定厚さを有する半円形状とされていて、気泡発生管52の大径部52aに互い違いに積み重ねて収められる。この気泡発生管52は、吸入する水にゴミが多く混入する場合に適する構造である。
【0027】
これにより、ルーツポンプ3の運転により吸入管45から水を吸い込むと共に空気導入口46からエジェクタ作用により取り込まれる空気が混合した水を衝突部材50に衝突させることにより多量の気泡を発生させ、かつ、ルーツポンプ3による圧縮作用により気泡が微細化され、微細化された気泡を含む水を排出管55から浄化槽又は河川の水中に吹き込むようにした本発明に係る微細気泡発生装置Bが構成される。
【0028】
つぎに、本発明の微細気泡発生装置Bを浄化槽70に設置した状態を図7に示す。図において、吸入管45には、浄化槽70の底部近くまで臨ませた吸い込みパイプ57を接続している。58は吸い込みパイプ57の先端に取り付けたフィルタである。他方、排出管55には浄化槽70に汚水を戻す放出パイプ59を接続している。
【0029】
この微細気泡発生装置Bによれば、駆動モータ装置38の駆動によりルーツポンプ3の2葉式ルーツロータ26が回転することにより、浄化槽70の汚水がフィルタ58を介して吸い込みパイプ57内に吸い込まれ、空気導入口46からエジェクタ作用により取り込まれる空気を混合した汚水が衝突部材50に衝突することにより多量の気泡が発生し、ついで、ルーツポンプ3による圧縮作用により気泡が微細化され、微細化された気泡を含む汚水が排出管55から放出パイプ59を通って浄化槽70に放出される。
そして、かかる微細気泡発生装置Bの運転を所定時間行なうことにより、浄化槽70の汚水中の溶存酸素濃度を高めることができ、水質の改善を図ることができる。
【0030】
なお、本発明に係る微細気泡発生装置を河川の100〜200mという長い区間に渡って散気する場合、吸込み側の配管長さが20〜30mの場合、吸込揚程が3〜5mの場合には、前記ルーツポンプを2台直列に配置するように構成するのが好ましい。
【0031】
また、本発明に係る微細気泡発生装置において、放出パイプ59内に気泡の一部が停滞するエアポケット状態を解消すると共に微細気泡の発生を促進するため、放出パイプ59の先端に逆止弁付ノズル65を設けることが好ましい。
【0032】
上記逆止弁付ノズル65は、円筒形ノズル本体66内のほぼ中間位置に形成された壁部66aに弁孔66bを設け、弁孔66bに連通する弁室66dに遊動可能に挿入されたゴム製の球状弁67が外に飛び出さないようにストッパ66eに当接可能に設けられている。66cは弁孔66bに形成された弁座、66fはノズル本体66の後端に形成された小径の取付け部である。ノズル本体66の取付け部66fは、放出パイプ59の先端部に挿入して固定される。
【0033】
なお、前記弁孔66bの大きさについては、排出される水の圧力が0.3〜0.5kPaを維持することができるように設けるものとする。
【0034】
しかして、逆止弁付ノズル65では、ルーツポンプ3から排出管55、放出パイプ59を通って供給される微細化気泡を含む水が、弁孔66bを通過する際に流速を増加し、その流速を増加した水が弁室66d内で遊動する球状弁67に衝突することによって気泡が再び微細化されて水中に勢いよく吹き込まれる。
また、ルーツポンプ3の運転停止時には、逆止弁付ノズル65の逆流防止作用によって浄化槽の汚水等が放出パイプ59に流入することが防止される。
【0035】
(実験1)
本発明に係る微細気泡発生装置Bのルーツポンプに関し、吸込水量に対する吸込空気量の割合について下記条件化で清水を使用して測定した。実験結果を図8のグラフに示す。
(実験条件)
ルーツポンプの口径:50mm
回転速度:630〜720rpm
モータ出力:1.5Kw
吸込圧力:−50kPa
吐出圧力:10kPa
【0036】
実験の結果、吸込水量に対する吸込空気量の割合は、10〜30%(最大)となり、エジェクタ作用により大量の空気が清水に混合されることが確認された。
【0037】
(実験2)
本発明に係る微細気泡発生装置と、比較例の気泡発生装置(ルーツ式ブロワと散気管を使用した従来の気泡発生装置)について、時間経過による清水中の溶存酸素濃度を比較する実験を行なった。その実験結果を図9のグラフに示す。
(実験方法)
無水亜硫酸ナトリウム粉末を水槽内に投入して溶存酸素濃度をほぼゼロに調整した後に、時間経過による溶存酸素濃度を溶存酸素計(飯島電子工業:DOメータ、ID−100)により測定した。なお、無水亜硫酸ナトリウム粉末の投入量は、水100リットル当たり10〜15gとした。
(実験条件)
水槽容積:2320リットル
水温:11℃
水深:1m
(本発明に係る微細気泡発生装置)
ルーツポンプの口径:50mm
回転速度:630〜720rpm
モータ出力:1.5Kw
吐出水量:200リットル/分
吸込空気量:20リットル/分、40リットル/分
(比較例の気泡発生装置)
ルーツ式ブロワの口径:20mm
回転速度:1000rpm
モータ出力:0.4Kw
吸込空気量:80リットル/分
【0038】
実験の結果、本発明に係る微細気泡発生装置で吸込空気量:40リットル/分の場合、溶存酸素濃度は20分経過後に9.2mg/リットルに達したが、比較例の装置では、40分経過しても7mg/リットルにとどまった。この結果から、本発明に係る微細気泡発生装置は、比較例の装置に比べて短時間で水中の溶存酸素濃度が上昇することが確認された。
【符号の説明】
【0039】
B・・・本発明に係る微細気泡発生装置
3・・・ルーツポンプ
4・・・ポンプケーシング
5・・・吸入口
6・・・吐出口
26・・・2葉式ルーツロータ
38・・・駆動モータ
45・・・吸入管
46・・・空気導入口
50,53・・・衝突部材
55・・・排出管
59・・・放出パイプ
65・・・逆止弁付ノズル
70・・・浄化槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化槽又は河川の水中に微細気泡を吹き込むことにより当該水の浄化を施す微細気泡発生装置であって、
吸込口と吐出口を設けたポンプケーシング内に収められた一対の2葉若しくは多葉式ルーツロータを駆動モータにより回転自在に設けたルーツポンプと、その吸込口に接続される吸入管と、その吐出口に接続される排出管とを備え、その吸入管に連通する管路には空気導入口と、吸い込んだ水を衝突させる衝突部材とを設け、前記ルーツポンプの運転により前記吸入管から水を吸い込むと共に前記空気導入口から取り込まれる空気が混合した水を該衝突部材に衝突させることにより多量の気泡を発生させ、かつ、前記ルーツポンプによる圧縮作用により気泡を微細化し、その微細化された気泡が含まれた水を前記排出管から浄化槽又は河川の水中に吹き込むようにしたことを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項2】
河川の100〜200mという長い区間に渡って散気する場合、吸込み側の配管長さが20〜30mの場合、吸込揚程が3〜5mの場合には、前記ルーツポンプを2台直列に配置することを特徴とする請求項1に記載の微細気泡発生装置。
【請求項3】
前記排出管の先端部に逆止弁付ノズルを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の微細気泡発生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−269301(P2010−269301A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188190(P2009−188190)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000127123)株式会社アンレット (41)
【Fターム(参考)】