説明

心不全の処置における洞房結節If電流阻害剤およびアンギオテンシン変換酵素阻害剤の組み合わせの使用

【課題】心不全、さらに特定的には収縮機能の保持された心不全の処置を目的とする医薬の提供。
【解決手段】選択的かつ特異的な洞房結節I電流阻害剤、さらに特定的にはイバブラジンまたはN−{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}−3−(7,8−ジメトキシ−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H−3−ベンゾアゼピン−3−イル)−N−メチル−3−オキソ−1−プロパンアミン、およびアンギオテンシン変換酵素を阻害する薬剤の組み合わせからなる医薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心不全、さらに特定的には、収縮機能の保持された心不全の処置を目的とする医薬を得ることにおける、選択的かつ特異的な洞房結節I電流阻害剤およびアンギオテンシン変換酵素を阻害する薬剤(ACE阻害剤)の組み合わせの使用に関する。
【0002】
本発明は、さらに特定的には、選択的かつ特異的な洞房結節I電流阻害剤およびアンギオテンシン変換酵素を阻害する薬剤の組み合わせの使用に関し、ここで、その選択的かつ特異的な洞房結節I電流阻害剤が:
− イバブラジン、すなわち式(I):
【0003】
【化1】

【0004】
で示される3−{3−[{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}(メチル)アミノ]プロピル}−7,8−ジメトキシ−1,3,4,5−テトラヒドロ−2H−3−ベンゾアゼピン−2−オンおよび薬学的酸とのその付加塩、それらの水和物および結晶形態、
− 式(II)
【0005】
【化2】

【0006】
で示されるN−{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}−3−(7,8−ジメトキシ−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H−3−ベンゾアゼピン−3−イル)−N−メチル−3−オキソ−1−プロパンアミンおよび薬学的酸とのその付加塩、それらの水和物および結晶形態
より選択される。
【0007】
薬学的に許容されうる酸のうち、限定を全く意味することなく、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ショウノウ酸、パモ酸および1,5−ナフタレンジスルホン酸を挙げることができる。
【0008】
選択的かつ特異的な洞房結節I電流阻害剤、さらに特定的には:
− イバブラジン、および薬学的に許容されうる酸とのその付加塩、さらに特定的にはその塩酸塩、それらの水和物および結晶形態、
− N−{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}−3−(7,8−ジメトキシ−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H−3−ベンゾアゼピン−3−イル)−N−メチル−3−オキソ−1−プロパンアミン、および薬学的に許容されうる酸とのその付加塩、さらに特定的にはその塩酸塩およびそのフマル酸塩、それらの水和物および結晶形態
は、非常に有用な薬理学的および治療学的特性、特に陰性変時(心拍低下)特性を有し、そのことからそれらの化合物は、狭心症、心筋梗塞および関連する調律異常などの心筋虚血に関連する多様な心血管疾患の治療もしくは予防、または予後改善において、ならびにまた調律異常、特に上室調律異常を伴う様々な病態、および慢性心不全において有用となっている。
【0009】
イバブラジンおよび薬学的に許容されうる酸とのその付加塩、さらに特定的にはその塩酸塩の調製および治療的使用は、欧州特許明細書EP 0 534 859に記載されている。
【0010】
N−{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}−3−(7,8−ジメトキシ−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H−3−ベンゾアゼピン−3−イル)−N−メチル−3−オキソ−1−プロパンアミンおよび薬学的に許容されうる酸とのその付加塩、さらに特定的にはその塩酸塩およびそのフマル酸塩の調製および治療的使用は、欧州特許出願明細書EP 2 036 892に記載されている。
【0011】
アンギオテンシン変換酵素阻害剤は、動脈性高血圧の処置における主要な治療クラスの一つである。それらは、主にアンギオテンシンIIの合成を阻害することにより、およびブラジキニンの分解を遮断することにより作用する。
【0012】
動脈圧を低下させることに加えて、それらは、罹患率(心筋梗塞、脳血管発作)ならびに高血圧患者、糖尿病患者および先行の冠動脈疾患を有する患者の心血管死亡率を改善することが示されている。
【0013】
本出願人は、選択的かつ特異的な洞房結節I電流阻害剤、さらに特定的には:
− イバブラジン、すなわち3−{3−[{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}(メチル)アミノ]プロピル}−7,8−ジメトキシ−1,3,4,5−テトラヒドロ−2H−3−ベンゾアゼピン−2−オン、または
− N−{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}−3−(7,8−ジメトキシ−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H−3−ベンゾアゼピン−3−イル)−N−メチル−3−オキソ−1−プロパンアミン、
およびアンギオテンシン変換酵素を阻害する薬剤の組み合わせが、心不全、さらに特定的には収縮機能の保持された心不全の処置におけるその使用を可能にする有用な特性を有することを発見した。
【0014】
左心室の収縮機能不全による心不全は、心不全の唯一の形態ではない。心不全を有する患者が40%よりも大きな駆出分画率を有することがますます頻繁である。「拡張期心不全」(正しくは「収縮機能の保持された心不全」)と呼ばれる心不全の割合は、年齢と共に増加する。それは、現在のところ心不全に関する入院の30〜40%を占め、80歳を過ぎるとその頻度は、収縮機能不全による心不全の頻度を超える。拡張期心不全は、一般的に左心室の心室弛緩延長および伸展性低下の両方を特徴として備える。根本的な原因は、虚血性、高血圧性および高齢患者性心臓障害である。素因は、年齢、性別(女性)、糖尿病、肥満および動脈性高血圧である。肥大を有するまたは有さない左心室の求心性リモデリングは、一貫して拡張機能の破壊を生じる。ほとんどの場合、トリガー因子がうっ血性発作の原因であることが見出されている。「拡張期」心不全の頻度は、年齢と共に増加する。その生理病理は複雑なままであり、臨床家によってさらによく理解されるに値する。
【0015】
これまでにこの病態に有効性が実証された処置はなく、その死亡率(4年で50%)は収縮期心不全の死亡率に相当する。
【0016】
本出願人は、選択的かつ特異的な洞房結節I電流阻害剤およびアンギオテンシン変換酵素を阻害する薬剤の組み合わせの使用が、選択的かつ特異的な洞房結節I電流阻害剤単独またはアンギオテンシン変換酵素を阻害する薬剤単独のいずれかを使用した場合に観察されるよりも優れた薬理学的効果を得ることを可能にすることを発見した。さらに、選択的かつ特異的な洞房結節I電流阻害剤およびアンギオテンシン変換酵素を阻害する薬剤の組み合わせの使用は、観察された生理学的パラメーターが正常に非常に近い値まで戻ることを可能にする。これらの観察から、選択的かつ特異的な洞房結節I電流阻害剤およびアンギオテンシン変換酵素を阻害する薬剤の組み合わせを心不全、さらに特定的には収縮機能の保持された心不全の処置に使用することを予測することが可能になる。
【0017】
使用される選択的かつ特異的な洞房結節I電流阻害剤は、好ましくは:
− 塩酸塩の形態のイバブラジンまたはその水和物の形態もしくは結晶形態の一つ、および
− 塩酸塩もしくはフマル酸塩の形態のN−{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}−3−(7,8−ジメトキシ−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H−3−ベンゾアゼピン−3−イル)−N−メチル−3−オキソ−1−プロパンアミンまたはそれらの水和物もしくは結晶形態の一つ
より選択される。
【0018】
アンギオテンシン変換酵素を阻害する薬剤は、好ましくは以下の化合物より選択される:ペリンドプリル、場合によりその活性代謝物ペリンドプリラートの形態のもの、ラミプリル、場合によりその活性代謝物ラミプリラートの形態のもの、エナラプリル、場合によりその活性代謝物エナラプリラートの形態のもの、カプトプリル、リシノプリル、デラプリル、ホシノプリル、キナプリル、スピラプリル、イミダプリル、トランドラプリル、場合によりその活性代謝物トランドラプリラートの形態のもの、ベナゼプリル、シラザプリル、テモカプリル、アラセプリル、セロナプリル、モベルチプリルおよびモエキシプリル、および薬学的に許容されうる酸または塩基とのそれらの付加塩、それらの水和物およびそれらの結晶形態。
【0019】
好ましくは、使用されるアンギオテンシン変換酵素を阻害する薬剤は、ペリンドプリル、カプトプリル、エナラプリル、ラミプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、キナプリルおよびデラプリル、ならびに薬学的に許容されうる酸または塩基とのそれらの付加塩、それらの水和物および結晶形態である。
【0020】
なおさらに好ましくは、使用されるアンギオテンシン変換酵素を阻害する薬剤は、ペリンドプリル、または薬学的に許容されうる酸もしくは塩基とのその付加塩、さらに特定的にはそのtert−ブチルアミン塩またはアルギニン塩、それらの水和物および結晶形態の一つである。
【0021】
本発明は、また:
− イバブラジン、もしくはその水和物、結晶形態、および薬学的に許容されうる酸との付加塩の一つ、さらに特定的にはその塩酸塩、またはN−{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}−3−(7,8−ジメトキシ−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H−3−ベンゾアゼピン−3−イル)−N−メチル−3−オキソ−1−プロパンアミンもしくはその薬学的に許容されうる酸との付加塩、さらに特定的にはその塩酸塩もしくはそのフマル酸塩、それらの水和物もしくは結晶形態の一つ、および
− ペリンドプリル、または薬学的に許容されうる塩基とのその付加塩、さらに特定的にはそのtert−ブチルアミン塩またはアルギニン塩、それらの水和物または結晶形態の一つ
を活性成分として含む、心不全、さらに特定的には収縮機能の保持された心不全の処置に使用するための薬学的組成物に関する。
【0022】
使用されうる薬学的組成物は、経口、非経口または経鼻投与に適したもの、錠剤、糖衣錠、舌下錠、カプセル剤、トローチ剤、坐剤、クリーム剤、軟膏剤、皮膚用ゲル剤など、およびまた、プログラム放出、遅延放出、長期放出または先送り(deferred)放出を有する薬学的組成物である。
【0023】
選択的かつ特異的な洞房結節I電流阻害剤およびアンギオテンシン変換酵素を阻害する化合物以外に、該薬学的組成物は、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、吸着剤、着色料、甘味料などより選択される一つまたは複数の賦形剤または担体を含む。
【0024】
非限定的な例として:
・ 希釈剤として:ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、グリセロール、
・ 滑沢剤として:シリカ、タルク、ステアリン酸ならびにそのマグネシウムおよびカルシウム塩、ポリエチレングリコール、
・ 結合剤として:ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびポリビニルピロリドン、
・ 崩壊剤として:寒天、アルギン酸およびそのナトリウム塩、発泡性混合物
を挙げることができる。
【0025】
有用な薬用量は、患者の性別、年齢および体重、投与経路、障害および任意の関連処置の性質により変動し、24時間あたり2.5〜30mg、さらに好ましくは1日5〜15mg、なおさらに好ましくは1日10〜15mgのイバブラジンの範囲である。N−{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}−3−(7,8−ジメトキシ−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H−3−ベンゾアゼピン−3−イル)−N−メチル−3−オキソ−1−プロパンアミン(本明細書下記に化合物Aと呼ぶ)の用量は、1日あたり5〜100mgに変動しうる。アンギオテンシン変換酵素を阻害する薬剤の用量は、それのみを投与するときに採用される用量未満でありうる。
【0026】
アンギオテンシン変換酵素を阻害する薬剤がペリンドプリルである場合に、その1日用量は、好ましくは1以上10mg以下である。
【0027】
本発明は、また、N−{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}−3−(7,8−ジメトキシ−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H−3−ベンゾアゼピン−3−イル)−N−メチル−3−オキソ−1−プロパンアミン、または薬学的に許容されうる酸とのその付加塩、それらの水和物または結晶形態の一つ、およびペリンドプリル、または薬学的に許容されうる塩基とのその付加塩、さらに特定的にはそのtert−ブチルアミン塩またはアルギニン塩、それらの水和物または結晶形態の一つの組み合わせに関する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】単独またはペリンドプリルと組み合わせた化合物Aにより、心拍の有意な減少が可能になることを示す。
【図2】ペリンドプリルおよび化合物Aを用いた同時処置により、左心室分画短縮の有意な向上と、心拍の改善が可能になることを示す。
【図3】収縮機能および拡張機能に対する効果を、ペリンドプリルおよび化合物Aの組み合わせを使用して検討した結果を示す。
【図4a】収縮機能および拡張機能に対する効果を、ペリンドプリルおよびイバブラジンの組み合わせを使用して検討した結果を示す。
【図4b】拡張機能不全に関して、イバブラジン単独の効果を示す。
【0029】
以下の実施例は、本発明を例示する。
【0030】
使用する略語の一覧
dP/dtmax : 圧力最大上昇速度(毎秒)
dP/dtmin : 圧力最大減少速度(毎秒)
HF : 心不全
LVEDP : 左室拡張終末期圧
LVEDPVR : 左室拡張終末期圧容積関係
LVESP : 左室収縮終末期圧
LVESPVR : 左室収縮終末期圧容積関係
LV : 左心室
【0031】
薬理学的試験:
左冠動脈の結紮によりラットに心不全を誘導し(対照動物には手術を行ったが、結紮しなかった)、それにより、左心室壁の部分に虚血を引き起こす。動物を7日間回復させ、次に12週間それらの動物に3mg/kgの化合物A、または0.4mg/kgのペリンドプリル、またはペリンドプリルおよび化合物A(同時)のいずれかを投与する。
【0032】
手術の12週間後に、冠状動脈結紮を受けた動物が心不全(収縮期(駆出異常)および拡張期(充満異常)の両方)を発生することが見出される。
【0033】
それらの動物では、単独またはペリンドプリルと組み合わせた化合物Aにより、心拍の有意な減少が可能になる(表1および図1)。
【0034】
【表1】

【0035】
ペリンドプリルおよび化合物Aを用いた同時処置により、左心室分画短縮の有意な向上、いわばその収縮機能の改善が可能になる(表2および図2)。結果として、心拍は、処置を受けていない心不全を有する動物に比べて改善する。
【0036】
【表2】

【0037】
表3(図3)が示すように、様々な収縮期および拡張期パラメーターが心不全により改変される。左心室はあまり十分には収縮せず(健康な対照に比べてHF動物ではdP/dtmaxおよびLVESPVRが有意に低い)、収縮期障害を示している。拡張機能が大きく悪化する:拡張終末期の心室内部の圧力(LVEDP)が上昇し、弛緩時間(τ)が延長し、伸展性(心室が拡張する能力)は低い(LVEDPVRは増加)。
【0038】
【表3】

【0039】
ペリンドプリル単独であろうと、化合物A単独であろうと、心不全を有する動物の処置が収縮機能を改善することが見出され、それは唯一の負荷非依存性パラメーターであるLVESPVRから理解することができる。
【0040】
拡張終末期圧および弛緩時間は、ペリンドプリル単独または化合物A単独によって明らかに改善し、これら二つの物質を一緒に投与する場合、それらの二つのパラメーターにさらなる減少傾向が認められる。唯一の負荷非依存性パラメーターである左心室の伸展性(LVEDPVRにより測定)は、ペリンドプリルおよび化合物Aにより非常に明白に改善する。驚くことに、動物に二つの処置を同時に施す場合に、この効果は有意に増大する。
【0041】
実際、化合物Aおよびペリンドプリルの組み合わせにより、伸展性を有意に改善することが可能になり、伸展性は、対照動物の伸展性に近いレベルまで回復する。
【0042】
したがって、ペリンドプリルおよびN−{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}−3−(7,8−ジメトキシ−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H−3−ベンゾアゼピン−3−イル)−N−メチル−3−オキソ−1−プロパンアミンの組み合わせは、拡張機能の悪化を改善することを可能にする。
【0043】
次に、収縮機能および拡張機能に対するこの効果を、ペリンドプリルおよび別のI電流阻害剤イバブラジンの組み合わせを使用して検討した。
【0044】
単独またはイバブラジンと組み合わせたペリンドプリルを用いた処置が、収縮機能を改善することが見出される(表4aおよび図4a)。
【0045】
拡張機能不全に関して、ペリンドプリルおよびイバブラジンを用いた処置は、ペリンドプリル単独よりも明らかに有効である(イバブラジン単独の効果は、ペリンドプリル単独の効果に匹敵する、表4bおよび図4b参照)。左心室の伸展性は、健康な動物の伸展性と同様のレベルに戻る。
【0046】
【表4】

【0047】
【表5】

【0048】
これらの実験から、心不全のモデルにおいて選択的かつ特異的な洞房結節I電流阻害剤およびアンギオテンシン変換酵素を阻害する薬剤の組み合わせにより、それら二つの処置の一方が単独で使用されたときに得られるものよりも大きな拡張機能の改善が可能になり、この改善が正常な拡張機能への回復を可能にすることが示される。
【0049】
薬学的組成物:
活性成分として7.5mgのイバブラジンおよび2mgのペリンドプリルtert−ブチルアミンをそれぞれ含有する錠剤1000錠を調製するための処方:
イバブラジン塩酸塩 8.085g
ペリンドプリルtert−ブチルアミン 2g
ラクトース一水和物 62g
ステアリン酸マグネシウム 1.3g
ポビドン 9g
コロイド状無水シリカ 0.3g
セルロースグリコール酸ナトリウム 30g
ステアリン酸 2.6g
【0050】
活性成分として10mgの化合物Aおよび2mgのペリンドプリルtert−ブチルアミンをそれぞれ含有する錠剤1000錠を調製するための処方:
化合物Aのフマル酸塩 12.48g
ペリンドプリルtert−ブチルアミン 2g
ラクトース一水和物 62g
ステアリン酸マグネシウム 1.3g
ポビドン 9g
コロイド状無水シリカ 0.3g
セルロースグリコール酸ナトリウム 30g
ステアリン酸 2.6g
【0051】
限定を意味することなく、本発明による薬学的組成物の他の例を本明細書下記に示す:
【0052】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
心不全の処置に使用するための選択的かつ特異的な洞房結節I電流阻害剤およびアンギオテンシン変換酵素を阻害する薬剤の組み合わせ。
【請求項2】
処置される心不全が、収縮機能の保持された心不全であることを特徴とする、請求項1記載の組み合わせ。
【請求項3】
選択的かつ特異的な洞房結節I電流阻害剤が:
− イバブラジン、すなわち3−{3−[{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}(メチル)アミノ]プロピル}−7,8−ジメトキシ−1,3,4,5−テトラヒドロ−2H−3−ベンゾアゼピン−2−オン、もしくは薬学的に許容されうる酸とのその付加塩、それらの水和物および結晶形態の一つ、または
− N−{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}−3−(7,8−ジメトキシ−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H−3−ベンゾアゼピン−3−イル)−N−メチル−3−オキソ−1−プロパンアミン、もしくは薬学的に許容されうる酸とのその付加塩、それらの水和物および結晶形態の一つ
であることを特徴とする、請求項1または2の一項記載の組み合わせ。
【請求項4】
選択的かつ特異的な洞房結節I電流阻害剤が、塩酸塩の形態のイバブラジン、またはその水和物もしくは結晶形態の一つであることを特徴とする、請求項1〜3の一項記載の組み合わせ。
【請求項5】
選択的かつ特異的な洞房結節I電流阻害剤が、塩酸塩もしくはフマル酸塩の形態のN−{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}−3−(7,8−ジメトキシ−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H−3−ベンゾアゼピン−3−イル)−N−メチル−3−オキソ−1−プロパンアミン、またはそれらの水和物もしくは結晶形態の一つであることを特徴とする、請求項1〜3の一項記載の組み合わせ。
【請求項6】
アンギオテンシン変換酵素を阻害する薬剤が、ペリンドプリル、または薬学的に許容されうる塩基とのその付加塩、それらの水和物もしくは結晶形態の一つであることを特徴とする、請求項1〜5の一項記載の組み合わせ。
【請求項7】
ペリンドプリルが、tert−ブチルアミン塩もしくはアルギニン塩の形態またはそれらの水和物もしくは結晶形態の一つであることを特徴とする、請求項6記載の組み合わせ。
【請求項8】
選択的かつ特異的な洞房結節I電流阻害剤が、塩酸塩の形態のイバブラジンまたはその水和物もしくは結晶形態の一つであり、アンギオテンシン変換酵素を阻害する薬剤が、tert−ブチルアミン塩もしくはアルギニン塩の形態のペリンドプリルまたはそれらの水和物もしくは結晶形態の一つであることを特徴とする、請求項1または2の一項記載の組み合わせ。
【請求項9】
選択的かつ特異的な洞房結節I電流阻害剤が、塩酸塩もしくはフマル酸塩の形態のN−{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}−3−(7,8−ジメトキシ−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H−3−ベンゾアゼピン−3−イル)−N−メチル−3−オキソ−1−プロパンアミン、またはそれらの水和物もしくは結晶形態の一つであり、アンギオテンシン変換酵素を阻害する薬剤が、tert−ブチルアミン塩もしくはアルギニン塩の形態のペリンドプリルまたはそれらの水和物もしくは結晶形態の一つであることを特徴とする、請求項1または2の一項記載の組み合わせ。
【請求項10】
活性成分として:
− 塩酸塩の形態のイバブラジン、またはその水和物もしくは結晶形態の一つ、および
− tert−ブチルアミン塩もしくはアルギニン塩の形態のペリンドプリルまたはそれらの水和物もしくは結晶形態の一つ
をそれら自身のみでまたは一つもしくは複数の薬学的に許容されうる賦形剤と組み合わせて含む、心不全の処置に使用するための薬学的組成物。
【請求項11】
処置される心不全が、収縮機能の保持された心不全であることを特徴とする、請求項10記載の薬学的組成物。
【請求項12】
活性成分として:
− 塩酸塩もしくはフマル酸塩の形態のN−{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}−3−(7,8−ジメトキシ−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H−3−ベンゾアゼピン−3−イル)−N−メチル−3−オキソ−1−プロパンアミン、またはそれらの水和物もしくは結晶形態の一つ、および
− tert−ブチルアミン塩もしくはアルギニン塩の形態のペリンドプリルまたはそれらの水和物もしくは結晶形態の一つ
をそれら自身のみでまたは一つもしくは複数の薬学的に許容されうる賦形剤と組み合わせて含む、薬学的組成物。
【請求項13】
心不全の処置に使用するための、請求項12記載の薬学的組成物。
【請求項14】
処置される心不全が、収縮機能の保持された心不全であることを特徴とする、請求項13記載の薬学的組成物。
【請求項15】
N−{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}−3−(7,8−ジメトキシ−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H−3−ベンゾアゼピン−3−イル)−N−メチル−3−オキソ−1−プロパンアミンまたは薬学的に許容されうる酸とのその付加塩、それらの水和物もしくは結晶形態の一つ、およびtert−ブチルアミン塩もしくはアルギニン塩の形態のペリンドプリル、またはそれらの水和物もしくは結晶形態の一つの組み合わせ。
【請求項16】
N−{[(7S)−3,4−ジメトキシビシクロ[4.2.0]オクタ−1,3,5−トリエン−7−イル]メチル}−3−(7,8−ジメトキシ−1,2,4,5−テトラヒドロ−3H−3−ベンゾアゼピン−3−イル)−N−メチル−3−オキソ−1−プロパンアミンが、塩酸塩もしくはフマル酸塩の形態またはそれらの水和物もしくは結晶形態の一つであることを特徴とする、請求項15記載の組み合わせ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【公開番号】特開2012−1545(P2012−1545A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−132849(P2011−132849)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(500287019)レ ラボラトワール セルヴィエ (166)
【Fターム(参考)】