説明

心機能診断装置

【課題】心機能診断装置において、形態診断情報と機能診断情報との比較診断を支援すること。
【解決手段】心機能診断装置10は、被検体Pの心臓に関するフレーム毎の連続した画像データを取得するX線CT装置の撮影系と、所要フレームの画像データから左心室容積値を計算する左心室容積値計算手段42と、この左心室容積値計算手段42で計算した過去のフレームから所要フレームまでの画像データを基に左心室容積値の時系列推移である左心室容積値波形のグラフを生成するグラフ生成手段43と、撮影系及びグラフ生成手段43の出力信号を基にした信号を、所要フレームの画像データと、左心室容積値波形のグラフとを同一画面上に表示する表示フォーマットの標準TV信号に変換するDSC46と、このDSC46の出力信号を基に、所要フレームの画像データと、左心室容積値波形のグラフとを同一画面上に表示する表示手段47とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像診断装置に搭載される心機能診断装置に係り、特に、画像診断装置で取得する被検体の心臓に関する動画像と、その動画像から計算される左心室容積値波形と、動画像及び心電図波形から計算される心機能パラメータとを同一画面上に表示する心機能診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代と称される公知のX線CT(Computerized Tomography)装置は、患者(被検体)を間にして、X線管と多チャンネルのX線検出素子を列状に備えるX線検出器とを対向配置し、これらを、被検体の周りに360°に亘って回転させながら、X線管からX線ビームを患者の所定部位に照射する。そして、所定部位を透過したX線量をX線検出器により投影データとして計測し、このデータを基にコンピュータを用いて画像再構成処理することによって、所定部位の断層データ及びボリュームデータを得ている。
【0003】
続いて、ヘリカルスキャンの高速化及び2次元検出器を使ったボリュームスキャンの開発が進み、X線CT装置の概念を、単なる断層画像化装置からボリューム映像化装置へ大きく移行させた。つまり、これらスキャン形式を備えたX線CT装置により、被検体のボリュームを短い時間分解能で高速にスキャンすることが可能になった。このような機能を備えたX線CT装置の実用化と共に、これまで使われていなかった多くの診断分野への進出が試みられ、また全く新しい診断方法を模索する動きが始まっている。
【0004】
その一つの方向性として、X線CT装置に心機能診断機能を搭載し、そのX線CT装置によって心臓の心拍運動に関する評価診断が行なわれている(例えば、特許文献1参照。)。ボリュームスキャンは、セグメントスキャン方式とあいまって、心臓全体を短いサイクルで連続的にスキャンすることを実質的に実現している。それにより、心臓に関する動画像を表示したり、例えば左心室の拡張末期(ED:End diastole)及び収縮末期(ES:End systole)に限定した心臓の立体像を生成したりできる。さらに、拡張末期から収縮末期までの心壁厚の変化率等の心機能パラメータを心臓全体にわたって求めることも可能となる。
【特許文献1】特開2004−141245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、表示のために画像処理を要するX線CT装置及びMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置に心機能診断機能を搭載する場合は、形態診断情報(画像データ)と連動した機能診断情報(左心室の容積値変化や心機能パラメータ)を表示していなかった。よって、医者等が診断時に、形態診断情報とそれと連動した機能診断情報とを整合させる必要があり、医者等の診断の作業性に問題があった。さらに、形態診断情報と機能診断情報との表示が同一画面上にされていない点にも作業上の問題があった。
【0006】
また、計算した心臓機能パラメータが異常値であるか否かを医師が瞬時に把握することができなかった。
【0007】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、形態診断情報と機能診断情報との比較診断を支援することができる心機能診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る心機能診断装置は、上述した課題を解決するために、被検体の心臓に関するフレーム毎の連続した画像データを取得する撮影系と、所要フレームの画像データから左心室容積値を計算する左心室容積値計算手段と、前記左心室容積値計算手段で計算した過去のフレームから前記所要フレームまでの画像データを基に左心室容積値の時系列推移である左心室容積値波形のグラフを生成するグラフ生成手段と、前記撮影系及び前記グラフ生成手段の出力信号を基にした信号を、前記所要フレームの画像データと前記左心室容積値波形のグラフとを同一画面上に表示する表示フォーマットの標準TV信号に変換する信号変換手段と、前記信号変換手段の出力信号を基に、前記所要フレームの画像データと前記左心室容積値波形のグラフとを同一画面上に表示する表示手段とを設けた。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る心機能診断装置によると、形態診断情報と機能診断情報との比較診断を支援することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る心機能診断装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明に係る心機能診断装置の実施の形態を示す概略図である。
【0012】
図1は、心機能診断装置10を示し、この心機能診断装置10は、X線コンピュータ断層撮影(CT:Computerized Tomography)装置等の画像診断装置の撮影系で取得する被検体の心臓に関するフレーム毎の画像データをリアルタイムの動画像として表示する。また、心機能診断装置10は、表示された所要フレームの画像データから左心室容積値を計算して、過去のフレームから所要フレームまでの画像データの各左心室容積値から左心室容積値波形のグラフを生成し、その左心室容積値波形のグラフを動画像と同一画面上に表示する。さらに、心機能診断装置10は、第1心周期で計算した心機能パラメータを、第1心周期に続く第2心周期における動画像と同一画面上に表示する。なお、画像データはX線CT装置の撮影系で取得する場合に限定されるものではなく、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等の撮影系で取得してもよい。
【0013】
心機能診断装置10には、コントローラ15、高電圧発生装置16、スリップリング17、X線管18、回転駆動部19、回転リング20、X線検出器22、データ収集回路(DAS:Data Acquisition System)23、非接触データ伝送装置24、前処理装置25、補助記憶装置26、画像処理装置27、心電計31、A/D変換器32、ECG(Electro Cardio Gram)メモリ33、左心室容積値計算手段42、グラフ生成手段43、心機能パラメータ管理手段44、パラメータ正常範囲設定手段45、DSC(Digital Scan Converter)46、表示手段47及び操作手段48が設けられる。
【0014】
高電圧発生装置16は、コントローラ15の制御により連続的又は周期的に発生される高電圧を、スリップリング17を介してX線管18に印加する。それにより、X線管18は、被検体P方向にX線を曝射する。
【0015】
回転リング20は、コーンビーム形の線源としてのX線管18と、マルチスライス形又は二次元アレイ形のX線検出器22とを被検体Pを隔てて対向して配置する。回転駆動部19は、コントローラ15の制御により被検体Pの周囲1周、360°分又は180°+ビュー角分の投影データを収集できるように回転リング20を回転させる。ここに示す心機能診断装置10としてのX線CT装置では、X線管18とX線検出器22とが一体として被検体Pの周囲を回転する回転/回転(ROTATE/ROTATE)タイプの場合を示すが、この場合に限定されるものではない。X線CT装置は、例えば、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線管18のみが被検体Pの周囲を回転する固定/回転(STATIONARY/ROTATE)タイプ等であってもよい。
【0016】
X線検出器22は、同時に複数スライス分の投影データを検出できるように、X線管18の焦点(コーンビームの頂点)を中心として円弧状に形成された多チャンネル型の検出素子列が、回転リング20の回転軸と略平行な方向(スライス方向)に沿って複数並列されてなる。又はX線検出器22は、平面的又は球部分形にコーンビームの頂点を中心として複数のX線検出素子がマトリクス状に配列されている。
【0017】
データ収集回路23には、X線検出器22の各チャンネルの電流信号を電圧に変換するI−V変換器(図示しない)と、電圧信号をX線の曝射周期に同期して周期的に積分する積分器(図示しない)と、この積分器の出力信号を増幅するプリアンプ(図示しない)と、このプリアンプの出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換器(図示しない)とがチャンネル毎に具備される。
【0018】
非接触データ伝送装置24は、データ収集回路23の出力であるデジタル信号(純生データ)を光又は磁気を媒介して非接触のデータ伝送を実現する。
【0019】
前処理装置25は、非接触データ伝送装置24を介して受け取った純生データに対して、チャンネル間の感度不均一を補正したり、また、X線強吸収体、主に金属部による極端な信号強度の低下又は信号脱落を補正したりする等の前処理を実行し、デジタル量としての投影データ(生データ)を生成する。
【0020】
補助記憶装置26は、前処理装置25から出力されたデジタル量としての投影データを記憶する。
【0021】
画像処理装置27は、コントローラ15の制御に従って補助記憶装置26から投影データを読み出し、この投影データのセットに基づいてフェルドカンプ法又は他の再構成法に従って断層又はボリュームに関する各フレームの画像データを再構成する。画像処理装置27は、画像データを補助記憶装置26に送ると共に、左心室容積値計算手段42、心機能パラメータ管理手段44及びDSC46に送る。
【0022】
心電計31は、被検体Pの心臓に配置された電極(図示しない)から、心臓の電気現象の時間変化を記録したECGを収集する。
【0023】
A/D変換器32は、心電計31からのECGを、X線撮影周期に応じて予め設定されたサンプリング周期毎にデジタル量に変換する。A/D変換器32は、ECGをECGメモリ33に送ると共に、心機能パラメータ管理手段44及びDSC46に送る。
【0024】
ECGメモリ33は、A/D変換器32から出力されたECGを記憶する。このように、各フレームの画像データの時相と、ECG波形のサンプリング点の時相とが相互に対応付けられるようになっている。
【0025】
左心室容積値計算手段42は、各フレームの画像データから左心室の容積値を計算する。左心室容積値の計算は一般的な手順、例えばACT(Automated Contour Tracking)法にて左心室を抽出し、MS(Modified Simpson)法にて容積を計算することによって行なう。
【0026】
グラフ生成手段43は、左心室容積値計算手段42で各フレームの画像データから計算した左心室容積値の時系列推移である左心室容積値波形のグラフを生成する。フレーム間の左心室容積値波形は、例えば、時系列で隣り合う2枚のフレームにおける画像データから計算した左心室容積値をスプライン補間して形成する。
【0027】
心機能パラメータ管理手段44には、画像処理装置27及びA/D変換器32の出力信号から心機能パラメータとしての左心室の拡張末期容積値(EDV:End diastolic Volume)を管理(計算及び記憶)する拡張末期容積値管理手段51と、心機能パラメータとしての左心室の収縮末期容積値(ESV:End Systolic Volume)を管理する収縮末期容積値管理手段52と、心機能パラメータとしての左心室の駆出率(EF:Ejection Fraction)を管理する駆出率管理手段53とが備えられる。
【0028】
パラメータ正常範囲設定手段45は、心機能パラメータの正常範囲を予め設定するものである。例えば、心機能パラメータとしての左心室の拡張末期容積値の正常範囲を50〜75ml/mと、同じく収縮末期容積値の正常範囲を20〜35ml/mと、同じく駆出率の正常範囲を60〜75%と設定する。
【0029】
DSC46は信号変換手段であり、画像処理装置27、グラフ生成手段43及び心機能パラメータ管理手段44の出力信号を、各フレームの画像データから構成される動画像と、左心室容積値波形のグラフと、心機能パラメータとを同一画面上に表示する表示フォーマットの標準TV信号に合成・変換する。又は、DSC46は、画像処理装置27、A/D変換器32、グラフ生成手段43及び心機能パラメータ管理手段44の出力信号を、動画像と、左心室容積値波形及びECG波形のグラフと、心機能パラメータとを同一画面上に表示する表示フォーマットの標準TV信号に合成・変換する。DSC46は、標準TV信号を表示手段47に送る。
【0030】
表示手段47には、RBG(Red Green Blue)変換器56、D/A変換器57及び表示器としてのTVモニタ58が具備される。各フレームの画像データから構成される動画像と、左心室容積値波形のグラフと、心機能パラメータとの各表示色に合わせて、RBG変換器56はDSC46から出力した標準TV信号を変換処理する。又は、動画像と、左心室容積値波形及びECG波形のグラフと、心機能パラメータとの各表示色に合わせて、RBG変換器56はDSC46から出力した標準TV信号を変換処理する。RBG変換器56は、処理後の信号をD/A変換器57に送る。
【0031】
表示手段47のD/A変換器57は、RBG変換器56の出力信号をアナログ変換して、変換後の信号をTVモニタ58に供給する。TVモニタ58は、D/A変換器57の出力信号を基に、各フレームの画像データから構成される動画像と、左心室容積値波形のグラフと、心機能パラメータとを同一画面上に表示する。又は、TVモニタ58は、D/A変換器57の出力信号を基に、動画像と、左心室容積値波形及びECG波形のグラフと、心機能パラメータとを同一画面上に表示する。
【0032】
操作手段48は、オペレータが操作可能なキーボード、マウス、トラックボール及びジョイスティック等の入力デバイスや表示パネル、又は各種スイッチ等を具備したインタラクティブなインターフェイスである。操作手段48からの入力信号はコントローラ15に送られる。
【0033】
続いて、本発明に係る心機能診断装置10の動作について、図2に示したフローチャートを用いて説明する。
【0034】
予め、図1に示した心機能診断装置10に設けたパラメータ正常範囲設定手段45では、心機能パラメータの正常範囲が予め設定される(ステップS1)。例えば、心機能パラメータとしての左心室の拡張末期容積値の正常範囲が50〜75ml/mと、同じく収縮末期容積値の正常範囲が20〜35ml/mと、同じく駆出率の正常範囲が60〜75%と設定される。
【0035】
次いで、撮影のタイミングで、コントローラ15の制御により高電圧発生装置16で連続的又は周期的に発生される高電圧がスリップリング17を介してX線管18に印加される。それにより、X線管18から被検体P方向にX線が曝射され、X線検出器22では、被検体Pを透過したX線が検出される。
【0036】
データ収集回路23のI−V変換器(図示しない)では、X線検出器22の各チャンネルの電流信号が電圧に変換され、同じく積分器(図示しない)では、電圧信号がX線の曝射周期に同期して周期的に積分される。データ収集回路23のプリアンプ(図示しない)では、積分器の出力信号が増幅され、同じくA/D変換器(図示しない)では、プリアンプの出力信号がデジタル信号に変換される。
【0037】
非接触データ伝送装置24では、データ収集回路23の出力である純生データを光又は磁気を媒介して非接触のデータ伝送が実現される。
【0038】
前処理装置25では、非接触データ伝送装置24を介して受け取られた純生データに対して、チャンネル間の感度不均一を補正したり、また、X線強吸収体、主に金属部による極端な信号強度の低下又は信号脱落を補正したりする等の前処理が実行され、投影データが生成される。前処理装置25で生成される投影データは、被検体Pの周囲1周、360°分又は180°+ビュー角分の投影データである。この投影データは補助記憶装置26に記憶される。
【0039】
コントローラ15の制御に従って補助記憶装置26から画像処理装置27に投影データが読み出される。画像処理装置27では、読み出した投影データのセットに基づいてフェルドカンプ法又は他の再構成法に従って、フレーム毎の断層又はボリュームの画像データが再構成される。再構成された画像データは補助記憶装置26に記憶されると共に、左心室容積値計算手段42、心機能パラメータ計算手段44及びDSC46に送られる。
【0040】
一方、心電計31では、被検体Pに配置された電極(図示しない)からECGが収集される。心電計31からのECG信号は、A/D変換器32によって、X線撮影周期に応じて予め設定されたサンプリング周期毎にデジタル量に変換される。A/D変換器32からのECGは、ECGメモリ33に記憶されると共に、心機能パラメータ計算手段44及びDSC46に送られる。よって、各フレーム画像の画像データの時相と、ECG波形のサンプリング点の時相とが相互に対応付けられる。
【0041】
次いで、左心室容積計算手段42では、画像処理装置27から出力される所要フレームの画像データから左心室の容積値が計算される(ステップS2)。左心室容積値の計算は一般的な手順、例えばACT法にて左心室を抽出し、MS法にて容積を計算することによって行なわれる。
【0042】
グラフ生成手段43では、左心室容積計算手段42で計算した過去のフレームから所要フレームまでの画像データの各左心室容積値から左心室容積値波形のグラフが生成される(ステップS3)。フレーム間の左心室容積値波形は、例えば、時系列で隣り合う2枚のフレームの画像データから計算された左心室容積値をスプライン補間することによって形成される。
【0043】
また、心機能パラメータ管理手段44では、A/D変換器32及び画像処理装置27の出力信号から心周期毎に心機能パラメータが計算され記憶される(ステップS4)。ここで、拡張末期容積値管理手段51では、ECG波形を基に心周期毎の拡張末期が検出され、その拡張末期における画像データから左心室の拡張末期容積値が計算され、その拡張末期容積値が記憶される。同様に、収縮末期容積値管理手段52では、ECG波形を基に心周期毎に収縮末期が検出され、その収縮末期における画像データから左心室の収縮末期容積値が計算され、その収縮末期容積値が記憶される。
【0044】
また、駆出率管理手段53では、左心室の拡張末期容積値EDV及び収縮末期容積値ESVを用いて心周期毎の左心室の駆出率EFが、
[数1]
EF(%)={(EDV−ESV)/EDV}×100
によって計算され、その駆出率EFが記憶される。
【0045】
心機能パラメータ管理手段44の拡張末期容積値管理手段51では、各心周期の拡張末期の経過後に左心室の拡張末期容積値が、収縮末期容積値計算手段53では、各心周期の収縮末期の経過後に左心室の収縮末期容積値が、また、駆出率管理手段54では、一心周期の経過後に左心室の駆出率がそれぞれ計算され記憶される。
【0046】
左心室の拡張期(T波乃至R波)と収縮期(R波乃至T波)は交互に現れるので、左心室の拡張期から被検体Pの心拍動の計測を行なった場合は、その拡張期における拡張末期の容積値と、その拡張末期に連続する収縮末期の容積値との一心周期から駆出率が計算される。よって、収縮末期容積値の計算後に新たに駆出率が計算されることになる。一方、左心室の収縮期から被検体Pの心拍動の計測を行なった場合は、その収縮期における収縮末期の容積値と、その収縮末期に連続する拡張末期の容積値との一心周期から駆出率が計算される。よって、拡張末期容積値の計算後に新たに駆出率が計算されることになる。
【0047】
次いで、DSC46では、画像処理装置27、グラフ生成手段43及び心機能パラメータ管理手段44の出力信号が、各フレームの画像データから構成される動画像と、左心室容積値波形のグラフと、心機能パラメータとを同一画面上に表示する表示フォーマットの標準TV信号に合成・変換される。又は、DSC46では、画像処理装置27、A/D変換器32、グラフ生成手段43及び心機能パラメータ管理手段44の出力信号が、動画像と、左心室容積値波形及びECG波形のグラフと、心機能パラメータとを同一画面上に表示する表示フォーマットの標準TV信号に合成・変換される(ステップS5)。
【0048】
次いで、ステップS4で管理した心機能パラメータが、ステップS1で予め設定された正常範囲内であるか否かが判断される(ステップS6)。例えば、ステップS4で管理した左心室の拡張末期容積値、収縮末期容積値及び駆出率が、ステップS1で予め設定された正常範囲内であるか否かがそれぞれ判断される。
【0049】
ステップS6の判断にてYes、すなわち、ステップS4で計算した心機能パラメータが、ステップS1で予め設定された正常範囲内である場合、RGB変換器56では、心機能パラメータが非視認色にて表示されるようにDSC46の出力信号が変換される(ステップS7)。RGB変換器56の出力信号はD/A変換器57に送られる。
【0050】
一方、ステップS6の判断にてNo、すなわち、ステップS4で計算した心機能パラメータが、ステップS1で予め設定された正常範囲外である場合、RGB変換器56では、正常範囲外の心機能パラメータが視認色で表示されるようにDSC46の出力信号が変換される(ステップS8)。例えば、心機能パラメータとしての左心室の拡張末期容積値、収縮末期容積値及び駆出率のうち、収縮末期容積値及び駆出率のみが正常範囲外である場合、RGB変換器56では、拡張末期容積値が非視認色としての白色で、収縮末期容積値及び駆出率が視認色としての赤色で表示されるように信号変換される。よって、一周期前の心周期において、収縮末期容積値及び駆出率に異常があったことが一目で識別可能となる。RGB変換器56の出力信号はD/A変換器57に送られる。
【0051】
RGB変換器56の出力信号はD/A変換器57でアナログ変換され、D/A変換器57の出力信号がTVモニタ58に供給される。TVモニタ58には、各フレームの画像データから構成される動画像と、左心室容積値波形のグラフと、心機能パラメータとが同一画面上で表示される。又は、TVモニタ58には、D/A変換器57の出力信号を基に、動画像と、左心室容積値波形及びECG波形のグラフと、心機能パラメータが同一画面上で表示される(ステップS9)。
【0052】
図3は、動画像と、左心室容積値波形及びECG波形のグラフと、心機能パラメータとの同一画面上における表示例を示す図である。
【0053】
図3(a)乃至(e)は、被検体Pの心拍動の計測を左心室の拡張期D1から行なった場合の表示画面を示す。図3(a)乃至(e)の各上段は、被検体Pの心臓を撮像して取得する動画像のうち、ある時相のフレーム画像を模擬した画像を示している。一方、各下段は、左心室容積値波形及びECG波形(ともに、過去から上段表示のフレーム画像に同期した時相までの時系列波形)のグラフと、心機能パラメータと、左心室容積値(上段表示のフレーム画像に同期した値)とをそれぞれ示している。また、上段表示のフレーム画像に同期した左心室容積値波形の時相にマーク、例えばマーク線を表示している。
【0054】
図3(a)の画面上段には、拡張期D1に続く収縮期S1で取得されたフレーム画像を模擬した画像が表示されている。また、画面下段には、上段表示のフレーム画像に同期した左心室容積値(lv)の68ml/mと、拡張末期容積値管理手段51に記憶され、収縮期S1に先行する心周期の拡張末期である拡張末期ED1の拡張末期容積値(lvedv)の71ml/mとがそれぞれ表示される。
【0055】
図3(b)の画面上段には、収縮期S1に続く拡張期D2で取得されたフレーム画像を模擬した画像が表示されている。また、画面下段には、上段表示のフレーム画像に同期した左心室容積値(lv)の15ml/mと、拡張末期容積値管理手段51に記憶され、拡張期D2に先行する心周期の拡張末期である拡張末期ED1の拡張末期容積値(lvedv)の71ml/m(図3(a)と同値)と、収縮末期容積値管理手段52に記憶され、拡張期D2に先行する心周期の収縮末期である収縮末期ES1の収縮末期容積値(lvesv)の20ml/mと、駆出率管理手段53に記憶され、拡張末期ED1及び収縮末期ES1から計算した駆出率(ef)の73%とがそれぞれ表示される。
【0056】
図3(c)の画面上段には、図3(b)の時相から一定時間経過の拡張期D2で取得されたフレーム画像を模擬した画像が表示されている。また、画面下段には、上段表示のフレーム画像に同期した左心室容積値(lv)の60ml/mが表示される。この表示では、拡張期D2に先行する心周期の拡張末期容積値と収縮末期容積値と駆出率とを非表示とする。
【0057】
図3(d)の画面上段には、拡張期D2に続く収縮期S2で取得されたフレーム画像を模擬した画像が表示されている。また、画面下段には、上段表示のフレーム画像に同期した左心室容積値(lv)の68ml/mと、収縮末期容積値管理手段52に記憶され、収縮期S2に先行する心周期の拡張末期である拡張末期ED2の拡張末期容積値(lvedv)の70ml/mとがそれぞれ表示される。
【0058】
図3(e)の画面上段には、収縮期S2に続く拡張期D3で取得されたフレーム画像を模擬した画像が表示されている。また、画面下段には、上段表示のフレーム画像に同期した左心室容積値(lv)の20ml/mと、拡張末期容積値管理手段51に記憶され、拡張期D3に先行する心周期の拡張末期である拡張末期ED2の拡張末期容積値(lvedv)の70ml/m(図3(d)と同値)と、収縮末期容積値管理手段52に記憶され、拡張期D3に先行する心周期の収縮末期である収縮末期ES2の収縮末期容積値(lvesv)の15ml/mと、駆出率管理手段53に記憶され、拡張末期ED2及び収縮末期ES2から計算した駆出率(ef)の79%とがそれぞれ表示される。ここで、収縮末期容積値及び駆出率は図1に示したパラメータ正常範囲設定手段45で設定した正常範囲外であり、RGB変換器56の信号変換によって、正常範囲内の拡張末期容積値は非視認色で、正常範囲外の収縮末期容積値及び駆出率は視認色(図中では便宜上、黒太字で示す)でそれぞれ表示されている。
【0059】
次いで、画面上に表示されたフレーム画像の次のタイミングにおけるフレーム画像の表示を行なうか否かが判断される(ステップS10)。ステップS10の判断にてYes、すなわち、画面上に表示されたフレーム画像の次のタイミングにおけるフレーム画像の表示を行なう場合、画像処理装置27から出力される次のタイミングにおけるフレームの画像データから左心室の容積値が計算される(ステップS2)
一方、ステップS10の判断にてNo、すなわち、画面上に表示されたフレーム画像の次のタイミングにおけるフレーム画像の表示を行なわない場合、心機能診断装置10の動作を終了する。
【0060】
また、図1に示した画像処理装置27で行なわれる処理としては、SVR(Shaded Volume Rendering)処理、MaxIP(Maximum Intensity Projection)処理、MinIP(Minimum Intensity Projection)処理、IP(X-ray Intensity Projection)処理及びMPR(Multiple Plane Rendering)処理等がある。
【0061】
図4は、動画像を構成するMPR画像と、左心室容積値波形及びECG波形のグラフと、心機能パラメータとの同一画面上における表示例を示す図である。
【0062】
図4は、図3に示した表示の変形例であり、図3の表示と同様に、被検体Pの心拍動の計測を左心室の拡張期から行なった場合の表示画面を示す。上段及び下段左側は、被検体Pの心臓を撮像して取得する動画像のうち、ある時相のフレーム画像としてのMPR画像(アクシャル像、コロナル像及びサジタル像)を示している。一方、下段右側は、左心室容積値波形及びECG波形のグラフと心機能パラメータと左心室容積値とをそれぞれ示している。また、表示されたフレーム画像に同期した左心室容積値波形の時相にマークを表示している。
【0063】
また、検査終了後において医者等が操作手段48を操作して、図3(a)乃至(e)、図4に示した表示画面上のマーク線を過去時相に平行移動(ドラッグ)させるとその移動に連動してTVモニタ58に、過去時相のフレームの画像データを表示させる。加えて、過去時相に前記マークを移動させるとその移動に連動してTVモニタ58に、過去時相のフレームの画像データを基に計算した左心室容積値と、過去時相のフレームを含む心周期に先行する心周期における心機能パラメータとを表示させてもよい。又は、過去時相に前記マークを移動させるとその移動に連動してTVモニタ58に、過去時相のフレームの画像データを基に計算した左心室容積値と、過去時相のフレームを含む心周期の心機能パラメータとを表示させてもよい。
【0064】
本実施の形態の心機能診断装置10によると、心臓に関する動画像と左心室容積値波形のグラフと心機能パラメータとを同一画面上に表示することで、形態診断情報と機能診断情報との比較診断を支援することができる。
【0065】
また、本実施の形態の心機能診断装置10によると、心臓に関する動画像と左心室容積値波形のグラフと心機能パラメータとを同一画面上に表示する際、設定範囲外の心機能パラメータを視認色にて表示することで、形態診断情報と機能診断情報との比較診断を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る心機能診断装置の実施の形態を示す概略図。
【図2】本発明に係る心機能診断装置の動作を示すフローチャート。
【図3】(a),(b),(c),(d),(e)は動画像と、左心室容積値波形及びECG波形のグラフと、心機能パラメータとの同一画面上における表示例を示す図。
【図4】動画像を構成するMPR画像と、左心室容積値波形及びECG波形のグラフと、心機能パラメータとの同一画面上における表示例を示す図。
【符号の説明】
【0067】
10 心機能診断装置
27 画像処理装置
31 心電計
42 左心室容積値計算手段
43 グラフ生成手段
44 心機能パラメータ管理手段
45 パラメータ正常範囲設定手段
46 DSC
47 表示手段
48 操作手段
51 拡張末期容積値管理手段
52 収縮末期容積値管理手段
53 駆出率管理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の心臓に関するフレーム毎の連続した画像データを取得する撮影系と、
所要フレームの画像データから左心室容積値を計算する左心室容積値計算手段と、
前記左心室容積値計算手段で計算した過去のフレームから前記所要フレームまでの画像データを基に左心室容積値の時系列推移である左心室容積値波形のグラフを生成するグラフ生成手段と、
前記撮影系及び前記グラフ生成手段の出力信号を基にした信号を、前記所要フレームの画像データと前記左心室容積値波形のグラフとを同一画面上に表示する表示フォーマットの標準TV信号に変換する信号変換手段と、
前記信号変換手段の出力信号を基に、前記所要フレームの画像データと前記左心室容積値波形のグラフとを同一画面上に表示する表示手段とを設けたことを特徴とする心機能診断装置。
【請求項2】
前記グラフ生成手段は、隣り合う2枚のフレーム間の左心室容積値波形を、前記2枚のフレームの左心室容積値をスプライン補間して形成することを特徴とする請求項1に記載の心機能診断装置。
【請求項3】
前記信号変換手段は、前記撮影系、前記グラフ生成手段及び前記左心室容積値計算手段の出力信号を基にした信号を、前記所要フレームの画像データと前記左心室容積値波形のグラフと前記左心室容積値とを同一画面上に表示する表示フォーマットの標準TV信号に変換することを特徴とする請求項1に記載の心機能診断装置。
【請求項4】
前記信号変換手段は、前記撮影系、前記グラフ生成手段及び心電計の出力信号を基にした信号を、前記所要フレームの画像データと前記左心室容積値波形及び心電図波形のグラフとを同一画面上に表示する表示フォーマットの標準TV信号に変換することを特徴とする請求項1に記載の心機能診断装置。
【請求項5】
前記表示手段は、前記所要フレーム画像に同期した前記左心室容積値波形の時相にマークを表示することを特徴とする請求項1に記載の心機能診断装置。
【請求項6】
前記マークを画面上で移動操作できる操作手段を設け、この操作手段を用いて過去時相に前記マークを移動させるとその移動に連動して前記表示手段は、前記過去時相のフレームの画像データを表示することを特徴とする請求項5に記載の心機能診断装置。
【請求項7】
前記マークを画面上で移動操作できる操作手段を設け、この操作手段を用いて過去時相に前記マークを移動させるとその移動に連動して前記表示手段は、前記過去時相のフレームの画像データとその画像データを基に計算した前記左心室容積値とを同一画面上に表示することを特徴とする請求項5に記載の心機能診断装置。
【請求項8】
第1心周期における前記画像データ及び心電図波形を基に心機能パラメータを計算して記憶する心機能パラメータ計算手段を備え、前記第1心周期に続く第2心周期における前記信号変換手段は、前記撮影系、前記グラフ生成手段及び前記心機能パラメータ計算手段の出力信号を基にした信号を、前記所要フレームの画像データと前記左心室容積値波形のグラフと前記第1心周期における前記心機能パラメータとを同一画面上に表示する表示フォーマットの標準TV信号に変換することを特徴とする請求項1に記載の心機能診断装置。
【請求項9】
前記第1心周期における前記画像データ及び前記心電図波形を基に前記心機能パラメータとしての拡張末期容積値を計算して記憶する拡張末期容積値管理手段を備え、前記拡張末期を含む前記第1心周期に続く前記第2心周期における前記信号変換手段は、前記撮影系、前記グラフ生成手段及び前記拡張末期容積値管理手段の出力信号を基にした信号を、前記所要フレームの画像データと前記左心室容積値波形のグラフと前記第1心周期における前記拡張末期容積値とを同一画面上に表示する表示フォーマットの標準TV信号に変換することを特徴とする請求項8に記載の心機能診断装置。
【請求項10】
前記第1心周期における前記画像データ及び前記心電図波形を基に前記心機能パラメータとしての収縮末期容積値を計算して記憶する収縮末期容積値管理手段を備え、前記収縮末期を含む前記第1心周期に続く前記第2心周期における前記信号変換手段は、前記撮影系、前記グラフ生成手段及び前記収縮末期容積値管理手段の出力信号を基にした信号を、前記所要フレームの画像データと前記左心室容積値波形のグラフと前記第1心周期における前記収縮末期容積値とを同一画面上に表示する表示フォーマットの標準TV信号に変換することを特徴とする請求項8に記載の心機能診断装置。
【請求項11】
前記第1心周期における前記画像データ及び前記心電図波形を基に前記心機能パラメータとしての拡張末期容積値を計算して記憶する拡張末期容積値管理手段と、前記第1心周期における前記画像データ及び前記心電図信号を基に前記心機能パラメータとしての収縮末期容積値を計算して記憶する収縮末期容積値管理手段と、前記拡張末期容積値及び前記収縮末期容積値から前記心機能パラメータとしての左心室の駆出率を計算して記憶する駆出率管理手段とを備え、前記拡張末期及び前記収縮末期を含む前記第1心周期に続く前記第2心周期における前記信号変換手段は、前記撮影系、前記グラフ生成手段、前記拡張末期容積値管理手段、前記収縮末期容積値管理手段及び前記駆出率管理手段の出力信号を基にした信号を、前記所要フレームの画像データと前記左心室容積値波形のグラフと前記第1心周期における前記拡張末期容積値及び前記収縮末期容積値と前記駆出率とを同一画面上に表示する表示フォーマットの標準TV信号に変換することを特徴とする請求項8に記載の心機能診断装置。
【請求項12】
前記心機能パラメータの正常範囲を予め設定するパラメータ正常範囲設定手段を設け、前記心機能パラメータが前記正常範囲外であった場合、前記表示手段は、前記心機能パラメータを視認色で表示させることを特徴とする請求項8に記載の心機能診断装置。
【請求項13】
前記撮影系で取得した画像データを画像処理して、SVR画像、MaxIP画像、MinIP画像、IP画像及びMPR画像のうち少なくとも1つの画像データを生成し、前記表示手段は、前記画像データを前記所要フレームの画像データとして表示することを特徴とする請求項1に記載の心機能診断装置。
【請求項14】
前記マークを画面上で移動操作できる操作手段を設け、この操作手段を用いて過去時相に前記マークを移動させるとその移動に連動して前記表示手段は、前記過去時相のフレームの画像データとその画像データを基に計算した前記左心室容積値と前記過去時相のフレームを含む心周期に先行する心周期における心機能パラメータとを表示することを特徴とする請求項5又は8に記載の心機能診断装置。
【請求項15】
前記マークを画面上で移動操作できる操作手段を設け、この操作手段を用いて過去時相に前記マークを移動させるとその移動に連動して前記表示手段は、前記過去時相のフレームの画像データとその画像データを基に計算した前記左心室容積値と前記過去時相のフレームを含む心周期の心機能パラメータとを表示することを特徴とする請求項5又は8に記載の心機能診断装置。
【請求項16】
前記撮影系として、X線コンピュータ断層撮影装置又は磁気共鳴イメージング装置を用いたことを特徴とする請求項1に記載の心機能診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−68726(P2007−68726A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258181(P2005−258181)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】