心肺機能測定装置及び心肺機能測定方法
【課題】電荷を放出する動作の前後で発生する信号強度の振幅の誤りを、容易に抑制することが可能な、心肺機能測定装置及び心肺機能測定方法を提供する。
【解決手段】被測定者が接触する圧電フィルムセンサから検出した第一信号のうち、圧電フィルムセンサに蓄積した電荷を放出する部分を含む信号である電荷放出部の範囲を判定し、第一信号のうち電荷放出部の直前の信号と電荷放出部の直後の信号とを、電荷放出部における信号強度の変化を反映せずに連続させる補間信号を生成し、電荷放出部の信号を補間信号に置き換えて、電荷放出部の直前の信号と、補間信号と、電荷放出部の直後の信号とを連続させた第二信号を生成し、第二信号に基づいて被測定者の心肺機能を測定する。
【解決手段】被測定者が接触する圧電フィルムセンサから検出した第一信号のうち、圧電フィルムセンサに蓄積した電荷を放出する部分を含む信号である電荷放出部の範囲を判定し、第一信号のうち電荷放出部の直前の信号と電荷放出部の直後の信号とを、電荷放出部における信号強度の変化を反映せずに連続させる補間信号を生成し、電荷放出部の信号を補間信号に置き換えて、電荷放出部の直前の信号と、補間信号と、電荷放出部の直後の信号とを連続させた第二信号を生成し、第二信号に基づいて被測定者の心肺機能を測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者に対して、呼吸や心拍の状態を検出して心肺機能を測定する心肺機能測定装置及び心肺機能測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両、列車、航空機、船舶や作業機械等を運転する運転者(操縦者)の健康状態が悪化した場合、その運転者は、居眠り運転や誤操作を行ってしまうおそれがある。
上記のような健康状態の悪化は、睡眠時無呼吸症候群に起因するものが多い。このような健康状態の悪化を早期に発見するための対策として、例えば、特許文献1に記載されている装置を用いて、被測定者である運転者の心肺機能を測定する方法がある。
特許文献1に記載されている心肺機能測定装置は、運転者が接触する圧電フィルムセンサを用いて運転者の心肺機能を測定する装置であり、心肺機能を測定するための情報として、運転者の呼吸に基づく情報及び心拍に基づく情報を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2007/094464号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の心肺機能測定装置では、心肺機能の測定時において、圧電フィルムセンサに蓄積した電荷を放出する動作を行う。このため、電荷を放出する動作の前と後で信号強度の振幅がずれて、心肺機能の誤診断を行ってしまうという問題が発生するおそれがある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、圧電フィルムセンサに蓄積した電荷を放出する動作の前と後で発生する信号強度の振幅の誤りを抑制することが可能な、心肺機能測定装置及び心肺機能測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、被測定者が接触する圧電フィルムセンサからの信号を第一信号として検出し、さらに、少なくとも圧電フィルムセンサに蓄積した電荷を放出する部分を含む信号である電荷放出部の範囲を判定する。そして、第一信号のうち、電荷放出部の直前の信号と、補間信号と、電荷放出部の直後の信号とを連続させて生成した第二信号に基づいて、被測定者の心肺機能を測定する。ここで、第二信号は、電荷放出部の信号を補間信号に置き換えて生成する。また、補間信号は、電荷放出部の直前の信号と直後の信号とを、電荷放出部における信号強度の変化を反映せずに連続させる信号である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電荷放出部の信号を補間信号に置き換えて、電荷放出部における信号強度の変化を反映せずに第二信号を生成する。これにより、電荷放出部の直前の信号と、補間信号と、電荷放出部の直後の信号とを滑らかに連続させた信号である、第二信号を生成する。
このため、本発明によれば、圧電フィルムセンサに蓄積した電荷を放出する動作に伴う、動作の前後における信号強度の振幅のずれを抑制して、電荷を放出する動作の前後で発生する信号強度の振幅の誤りを、容易に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第一実施形態の心肺機能測定装置の概略構成を示す図である。
【図2】心肺機能測定装置を備えた車両の概略構成を示す図である。
【図3】ディジタル回路が行う処理を示すタイムチャートである。
【図4】ディジタル回路が行う処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第一実施形態の心肺機能測定装置の動作例を示すタイムチャートである。
【図6】本発明の第一実施形態の変形例を示す図であり、第一信号の状態を示すタイムチャートである。
【図7】本発明の第二実施形態の心肺機能測定装置の概略構成を示す図である。
【図8】ディジタル回路が行う処理を示すタイムチャートである。
【図9】補間信号の詳細を示すグラフである。
【図10】ディジタル回路が行う処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第二実施形態の心肺機能測定装置の動作例を示すタイムチャートである。
【図12】本発明の第二実施形態の変形例における、ディジタル回路が行う処理を示すタイムチャートである。
【図13】本発明の第二実施形態の変形例における、補間信号の詳細を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、本実施形態と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1は、本実施形態の心肺機能測定装置1の概略構成を示す図である。また、図2は、心肺機能測定装置1を備えた車両Vの概略構成を示す図である。
図1及び図2中に示すように、心肺機能測定装置1は、圧電フィルムセンサ2と、アナログ回路4と、ディジタル回路6を備える。
【0009】
圧電フィルムセンサ2は、外部から加えられた圧力に応じた電圧を出力するセンサであり、被測定者(被験者)が操作する操作子SWに設けることにより、被測定者が接触する位置に配置している。ここで、操作子SWとは、例えば、図2中に示すように、心肺機能測定装置1が車両Vに備えられている場合、ステアリングホイールとする。この場合、被測定者が接触する位置とは、ステアリングホイールのうち、車両の運転中に被測定者が把持する時間が長い部分(例えば、中立位置にあるステアリングホイールの、2時方向の部分及び10時方向の部分)とする。また、被測定者とは、図2中に示すように、心肺機能測定装置1が車両Vに備えられている場合、車両の運転者(ドライバー)とする。
【0010】
また、圧電フィルムセンサ2は、陽極(+)及び陰極(−)を有し、陽極及び陰極を介して、後述する増幅回路8及びアナログスイッチ12に接続する。そして、圧電フィルムセンサ2は、被測定者が加えた圧力を電圧に変換し、この変換した電圧を含む情報信号を、増幅回路8へ出力する。
アナログ回路4は、増幅回路8と、フィルター回路10と、アナログスイッチ12を備える。
【0011】
増幅回路8は、圧電フィルムセンサ2が出力した情報信号が含む電圧を、予め設定した所定の倍率で増幅し、この増幅した電圧(以下、「増幅電圧」と記載する場合がある)を含む情報信号を、フィルター回路10へ出力する。
フィルター回路10は、増幅回路8が出力した情報信号が含む増幅電圧に対して、雑音成分の除去(フィルタリング)を行い、この雑音成分を除去した増幅電圧を含む情報信号を、ディジタル回路6へ出力する。
【0012】
本実施形態では、フィルター回路10が行うフィルタリングにより、増幅回路8が出力した情報信号が含む増幅電圧から除去する雑音成分を、被測定者の心肺機能の状態に基づく呼吸信号以外の成分とする。
アナログスイッチ12は、後述するディジタル出力部14が出力した電荷放出用パルス信号PSの入力を受けると、スイッチング状態を「OFF」から「ON」へ切り換える。ここで、スイッチング状態を「ON」に切り換えたアナログスイッチ12は、圧電フィルムセンサ2の両極(陽極、陰極)をグラウンド回路(GND)に接続する。そして、圧電フィルムセンサ2の両極をグラウンド回路に接続すると、圧電フィルムセンサ2内に蓄積している電荷が放出される。
【0013】
ディジタル回路6は、AD(アナログ‐ディジタル)コンバータ16と、ディジタル出力部14と、記憶領域18を備える。また、ディジタル回路6においては、マイクロコンピュータ(図示せず)が、全体の動作をコントロールする。
ADコンバータ16は、フィルター回路10が出力した情報信号が含む、雑音成分を除去した増幅電圧を、予め設定した所定時間毎にディジタル変換する。そして、ADコンバータ16は、ディジタル変換した増幅電圧を示す情報信号を、第一信号Y1(u)としてディジタル出力部14及び記憶領域18へ出力する。ここで、「u」は、1個〜U個の、所定のデータ数とする。
【0014】
ここで、本実施形態では、上述したように、フィルター回路10が行うフィルタリングにより除去する雑音成分を、被測定者の心肺機能の状態に基づく呼吸信号以外の成分とする。すなわち、本実施形態では、第一信号Y1(u)を、被測定者の心肺機能の状態に基づく呼吸信号とする。
ディジタル出力部14は、ADコンバータ16が出力した第一信号Y1(u)が含む増幅電圧のレベルに応じて、圧電フィルムセンサ2内に蓄積した電荷を放出するための電荷放出用パルス信号PSを、アナログスイッチ12へ出力する。
ここで、電荷放出用パルス信号PSの出力は、予め設定した所定の時間間隔で行う。
【0015】
本実施形態では、ディジタル出力部14が電荷放出用パルス信号PSを出力する時間間隔(所定の時間間隔)を、被測定者の一呼吸の時間周期よりも短い時間間隔とする。すなわち、本実施形態の圧電フィルムセンサ2は、被測定者の一呼吸の時間周期よりも短い時間間隔で、蓄積した電荷を放出する。
なお、被測定者の一呼吸の時間は、例えば、被測定者が過去に行った呼吸を計測し、この計測値の履歴を蓄積し、この蓄積した履歴を用いた演算等の方法を用いて設定する。
また、ディジタル出力部14は、電荷放出用パルス信号PSの入力に応じた、アナログスイッチ12のスイッチング状態(「OFF」または「ON」)を示す情報信号である、電荷放出状態X(u)を、第一信号Y1(u)と同期させて、記憶領域18へ出力する。
【0016】
記憶領域18は、ディジタル回路6の動作に必要なソフトウェア部であり、ディジタル回路6に必要量搭載する。
また、記憶領域18は、ソフトウェアとして、電荷放出部判定部20と、補間信号生成部22と、第二信号生成部24と、心肺機能測定部26を備える。
電荷放出部判定部20は、ADコンバータ16が出力した第一信号Y1(u)の中から、圧電フィルムセンサ2内に蓄積した電荷を放出する部分の信号(以下、「電荷放出部」と記載する場合がある)の範囲を判定する。ここで、電荷放出部の判定は、ディジタル出力部14が出力した電荷放出状態X(u)に基づいて行う。
【0017】
なお、本実施形態では、後述するように、アナログスイッチ12のスイッチング状態が「ON」である部分の信号の範囲のみを、電荷放出部とする。
また、電荷放出部判定部20は、判定した電荷放出部を含む情報信号を、補間信号生成部22及び第二信号生成部24へ出力する。
補間信号生成部22は、第一信号のうち、電荷放出部の直前の信号と電荷放出部の直後の信号とを、電荷放出部における信号強度の変化を反映せずに連続させる補間信号を生成する。ここで、補間信号の生成は、電荷放出部判定部20が出力した情報信号が含む電荷放出部に基づき、第一信号Y1(u)のうち、電荷放出部の直前の信号を用いて行う。
【0018】
また、補間信号生成部22は、生成した補間信号を含む情報信号を、第二信号生成部24へ出力する。
第二信号生成部24は、電荷放出部判定部20及び補間信号生成部22が出力した情報信号に基づき、電荷放出部の直前の信号と、補間信号と、電荷放出部の直後の信号とを連続させた第二信号Y2(u)を生成する。ここで、第二信号Y2(u)の生成は、電荷放出部判定部20が判定した電荷放出部の信号を、補間信号生成部22が生成した補間信号に置き換えて行う。
【0019】
また、第二信号生成部24は、生成した第二信号Y2(u)を含む情報信号を、心肺機能測定部26へ出力する。
心肺機能測定部26は、第二信号生成部24が出力した情報信号が含む第二信号Y2(u)に基づき、被測定者の心肺機能を測定する。ここで、心肺機能測定部26による心肺機能の測定結果は、特に図示しないが、例えば、表示装置(ディスプレイ等)に警告メッセージ等として表示する。なお、心肺機能測定部26による心肺機能の測定結果は、例えば、音響装置(スピーカー)から警告(警告音、音声メッセージ)として出力してもよい。
また、被測定者の心肺機能の測定は、具体的には、第二信号Y2(u)に基づいて、被測定者の呼吸・心拍振幅や、呼吸・心拍数等、被測定者の心肺機能に関する量(値)を算出し、この算出した被測定者の心肺機能に関する量を用いて行う。
(ディジタル回路6が行う具体的な処理)
【0020】
以下、図1及び図2を参照しつつ、図3及び図4を用いて、ディジタル回路6が行う処理について、詳細に説明する。
なお、以下の説明では、簡略化のために、ADコンバータ16がディジタル変換した第一信号Y1(u)の総データ数をU個とする。また、U個のデータのうち、アナログスイッチ12のスイッチング状態が「ON」、すなわち、ディジタル出力部14が出力した電荷放出状態X(u)が「ON」であり、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部と判定した部分で連続するデータ数を、M個とする。また、U個のデータのうち、電荷放出状態X(u)が「ON」となる前の「OFF」であり、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部と判定した部分の前で連続するデータ数を、K個とする。同様に、U個のデータのうち、電荷放出状態X(u)が「ON」となった後の「OFF」であり、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部と判定した部分の後で連続するデータ数を、N個とする。
【0021】
以上により、第一信号Y1(u)の総データ数を、上述したM個+K個+N個の合計であるU個とする。この総データ数(U個)は、第一信号Y1(u)のデータとして、確実に得られている個数として扱う。
したがって、以下の説明は、第一信号Y1(u)及び電荷放出状態X(u)として、共に、U個のデータが記憶領域18に保存されていることを前提に行う。
【0022】
図3は、ディジタル回路6が行う処理を示すタイムチャートであり、図4は、ディジタル回路6が行う処理を示すフローチャートである。
図4中に示すように、ディジタル回路6が処理を開始(START)すると、まず、ステップS10において、記憶領域18が、第一信号Y1(u)と電荷放出状態X(u)を取得する。ステップS10において、記憶領域18が第一信号Y1(u)と電荷放出状態X(u)を取得すると、ディジタル回路6が行う処理は、ステップS12へ移行する。
【0023】
ここで、第一信号Y1(u)は、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)と、電荷放出部Y12(m)と、電荷放出部よりも後の信号Y13(n)からなる信号である。なお、第一信号Y1(u)は、図3中において、実線で示す線(Y11(k)からY12(m)を経由してY13(n)まで連続する線)に対応する。
第一信号Y1(u)の信号波形は、図3中に示すように、電荷放出状態X(u)の状態が「OFF」から「ON」となると、第一信号Y1(u)の信号強度が「0」レベルまで低下する波形となる。そして、電荷放出状態X(u)の状態が「ON」から「OFF」となると、第一信号Y1(u)の信号強度が「0」レベルから立ち上がる波形となる。すなわち、電荷放出部の信号強度は、常に「0」レベルである。
【0024】
このように、電荷放出状態X(u)の状態が「OFF」から「ON」となると、第一信号Y1(u)の信号強度が「0」レベルまで低下する。このため、電荷放出部(Y12(m))の前と後(Y11(k)とY13(n))の間において、信号強度が大幅に低下して、第一信号Y1(u)が滑らかに連続する信号では無くなり、第一信号Y1(u)の振幅がずれることとなる。
ステップS12では、電荷放出状態X(u)として保存されているU個のデータ(上述した「ON」及び「OFF」のデータ)に基づいて、第一信号Y1(u)のデータの中から、電荷放出部と電荷放出部ではない部分とを判別する。
【0025】
さらに、ステップS12では、電荷放出部よりも前のデータであるK個のデータを、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも前の信号Y11(k)として生成する。同様に、電荷放出部よりも後のデータであるN個のデータを、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも後の信号Y13(n)として生成する。ステップS12において、電荷放出部と電荷放出部ではない部分とを判別して、K個のデータを信号Y11(k)として生成し、N個のデータを信号Y13(n)として生成すると、ディジタル回路6が行う処理は、ステップS14へ移行する。
【0026】
ステップS14では、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)のうち、電荷放出部Y12(m)の直前の値(信号強度)を用いて、M個のデータを持つ補間信号Y22(m)を生成する。ステップS14において、補間信号Y22(m)を生成すると、ディジタル回路6が行う処理は、ステップS16へ移行する。
ステップS16では、電荷放出部よりも後の信号Y13(n)のうち電荷放出部Y12(m)の直後のデータを生成しているN個のデータに、補間信号Y22(m)のうち最後尾のデータを生成しているM個のデータを加算する。これにより、第二信号Y2(u)のうち、補間信号Y22(m)よりも後の信号Y23(n)を生成する。
【0027】
さらに、ステップS16では、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)に、補間信号Y22(m)と、補間信号Y22(m)よりも後の信号Y23(n)を順番に連続させて、第二信号Y2(u)を生成する。すなわち、第二信号Y2(u)の総データ数を、第一信号Y1(u)と同様、上述したM個+K個+N個の合計であるU個とする。
以上により、ステップS16では、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)と、補間信号Y22(m)と、電荷放出部よりも後の信号Y13(n)の合計U個(U=K+M+N)のデータを用いて、信号強度が滑らかに連続する第二信号Y2(u)を生成する。ステップS16において、第二信号Y2(u)を生成すると、ディジタル回路6が行う処理は終了(END)する。
ここで、第二信号Y2(u)は、図3中において、実線で示す信号Y11(k)と、点線で示す補間信号Y22(m)と、一点鎖線で示す信号Y23(n)を順番に連続する線に対応する。
【0028】
(作用)
次に、図1から図4を参照しつつ、図5を用いて、本実施形態の心肺機能測定装置1が行なう作用について説明する。
図5は、本実施形態の心肺機能測定装置1の動作例を示すタイムチャートである。なお、図5中では、横軸に経過時間(図中では、「時間[sec]」と記載する)を示し、縦軸に第一信号Y1(u)及び第二信号Y2(u)の電圧(図中では、「電圧[V]」と記載する)を示す。さらに、図5中には、電荷放出用パルス信号PSの入力に応じた、アナログスイッチ12のスイッチング状態(図中では、「電荷放出状態」と記載する)を、「OFF」及び「ON」として示している。
【0029】
図5のタイムチャートは、車両の走行時、すなわち、心肺機能の被測定者である運転者が車両を運転している状態における、第一信号Y1(u)及び第二信号Y2(u)の電圧の経時的な変化を示している。
ここで、第一信号Y1(u)は、ADコンバータ16が検出した信号であり、図5中では、実線により示している。また、図5中に示す第一信号Y1(u)は、被測定者の心肺機能の状態に基づく呼吸信号の振幅を一部分ずつ切り出し、これらの切り出した部分を連続させた波形信号である。このような呼吸信号の振幅の切り出しは、被測定者の心肺機能の状態に基づく呼吸信号を、アナログスイッチ12のスイッチング状態に応じて時間的に分割して行う。
【0030】
また、第二信号Y2(u)は、以下の処理によって検出した信号であり、図5中では、破線により示している。また、図5中に示す第二信号Y2(u)は、上述したステップS14及びS16の処理を、第一信号Y1(u)の切り出した各部分に対応させて行うことにより生成した波形信号である。
車両の走行時には、ステアリングホイールに設けた圧電フィルムセンサ2に接触している運転者の呼吸に伴って、圧電フィルムセンサ2に運転者からの圧力が加わる。
【0031】
ここで、本実施形態では、上述したように、第一信号を、被測定者の心肺機能の状態に基づく呼吸信号としており、圧電フィルムセンサ2が、被測定者の一呼吸の時間周期よりも短い時間間隔で、蓄積した電荷を放出する。
したがって、ディジタル回路6が行う処理(図4参照)を、被測定者の一呼吸の時間周期よりも短い時間間隔に応じて繰返し行うことにより、第二信号Y2(u)を検出する。
【0032】
そして、図5中に示すように、第二信号Y2(u)の最大振幅A2は、第一信号Y1(u)の最大振幅A1よりも大きい値となる。したがって、本実施形態の心肺機能測定装置1、すなわち、第二信号Y2(u)を検出する心肺機能測定装置1であれば、第一信号Y1(u)を検出するADコンバータ16単体の電圧分解能よりも高い分解能を得ることが可能となる。このため、より詳細な信号の振幅を計測することが可能となる。
【0033】
なお、上述したように、本実施形態の心肺機能測定装置1の動作で実施する心肺機能測定方法は、被測定者が接触する圧電フィルムセンサ2からの信号に基づいて、被測定者の心肺機能を測定する方法である。
ここで、被測定者が接触する圧電フィルムセンサ2からの信号は、送信手段により検出して送信し、送信手段が検出して送信した信号は、受信手段により受信して処理する。
【0034】
具体的には、上記の送信手段が、圧電フィルムセンサ2からの信号を第一信号として検出して送信し、上記の受信手段が、送信手段から送信された第一信号を受信する。さらに、受信手段が受信した第一信号のうち電荷放出部の範囲を判定する。
そして、電荷放出部の直前の信号と直後の信号とを、電荷放出部における信号強度の変化を反映せずに連続させる補間信号Y22(m)を生成する方法である。これに加え、電荷放出部の信号を補間信号Y22(m)に置き換えて、電荷放出部の直前の信号と、補間信号と、電荷放出部の直後の信号とを連続させて生成した第二信号Y2(u)に基づいて、被測定者の心肺機能を測定する方法である。この方法において、送信手段及び受信手段は、上述した電荷放出部判定部20及びステップS12が有している。
【0035】
以上により、ADコンバータ16は、第一信号検出手段に対応する。また、電荷放出部判定部20及びステップS12は、電荷放出部判定手段に対応する。また、補間信号生成部22及びステップS14は、補間信号生成手段に対応する。同様に、第二信号生成部24及びステップS16は、第二信号生成手段に対応する。また、心肺機能測定部26は、心肺機能測定手段に対応する。
【0036】
(第一実施形態の効果)
(1)補間信号生成部22が、電荷放出部の直前の信号と電荷放出部の直後の信号とを、電荷放出部における信号強度の変化を反映せずに連続させる、補間信号を生成する。これに加え、第二信号生成部24が、電荷放出部の信号を補間信号に置き換えて、電荷放出部の直前の信号と、補間信号と、電荷放出部の直後の信号とを連続させた第二信号を生成する。
【0037】
このため、第二信号として、電荷放出部における第一信号の強度の変化を反映せず、且つ、電荷放出部の直前の信号と、補間信号と、電荷放出部の直後の信号とを滑らかに連続させた信号を生成することが可能となる。
その結果、圧電フィルムセンサ2に蓄積した電荷を放出する動作に伴う、動作の前後における信号強度の振幅のずれを抑制して、電荷を放出する動作の前後で発生する信号強度の振幅の誤りを、容易に抑制することが可能となる。
これにより、被測定者に対する心肺機能の誤診断を抑制することが可能となり、被測定者に対する心肺機能の診断精度を向上させることが可能となる。
【0038】
(2)被測定者の心肺機能の状態に基づく第一信号を、被測定者の心肺機能の状態に基づく呼吸信号とすることにより、第一信号として被測定者の心肺機能の状態に基づく呼吸信号を用いた心肺機能測定装置1を形成することが可能となる。
その結果、圧電フィルムセンサ2等、従来からある構成を用いて、心肺機能測定装置1を形成することが可能となる。
【0039】
(3)圧電フィルムセンサ2が、被測定者の一呼吸の時間周期よりも短い時間間隔で、蓄積した電荷を放出する。
このため、被測定者の心肺機能の状態に基づく呼吸信号を時間的に分割し、呼吸信号の振幅の一部分をADコンバータ16の検出範囲に割り当てることが可能となるため、高い分解能を得ることが可能となる。
その結果、より詳細な呼吸信号の振幅を測定することが可能となる。
【0040】
(4)本実施形態の心肺機能測定方法では、ステップS14において、電荷放出部の直前の信号と電荷放出部の直後の信号とを、電荷放出部における信号強度の変化を反映せずに連続させる、補間信号を生成する。これに加え、ステップS16において、電荷放出部の信号を補間信号に置き換えて、電荷放出部の直前の信号と、補間信号と、電荷放出部の直後の信号とを連続させた第二信号を生成する。
【0041】
このため、第二信号として、電荷放出部における信号強度の変化を反映せず、且つ、電荷放出部の直前の信号と、補間信号と、電荷放出部の直後の信号とを滑らかに連続させた信号を生成することが可能となる。
その結果、圧電フィルムセンサ2に蓄積した電荷を放出する動作に伴う、動作の前後における信号強度の振幅のずれを抑制して、電荷を放出する動作の前後で発生する信号強度の振幅の誤りを、容易に抑制することが可能となる。
これにより、被測定者に対する心肺機能の誤診断を抑制することが可能となり、被測定者に対する心肺機能の診断精度を向上させることが可能となる。
【0042】
(変形例)
(1)本実施形態の心肺機能測定装置1では、電荷放出部を、アナログスイッチ12のスイッチング状態が「ON」である部分のみ(図3参照)、すなわち、圧電フィルムセンサ2に蓄積した電荷を放出する部分のみとしたが、これに限定するものではない。すなわち、電荷放出部を、例えば、図6中に示すように、アナログスイッチ12のスイッチング状態が「ON」である部分に、スイッチング状態が「ON」である部分よりも後の部分を加えたものとしてもよい。また、特に図示しないが、電荷放出部を、例えば、スイッチング状態が「ON」である部分に、スイッチング状態が「ON」である部分よりも前の部分を加えたものとしてもよい。なお、図6は、本実施形態の変形例を示す図であり、第一信号の状態を示すタイムチャートである。
【0043】
ここで、スイッチング状態が「ON」である部分に、スイッチング状態が「ON」である部分よりも前及び後のうち少なくとも一方を加える処理は、例えば、フィルター回路10の特性に起因して、第一信号に波形歪が発生している場合に行う。この場合、スイッチング状態が「ON」である部分に加える部分の設定は、例えば、所定の時間間隔における一律なデータ数を用いて設定してもよい。また、例えば、第一信号の波形形状の変化点等を算出し、この算出した値に基づいて設定してもよい。
以上により、電荷放出部は、圧電フィルムセンサ2に蓄積した電荷を放出する部分のみに限定するものではなく、少なくとも圧電フィルムセンサ2に蓄積した電荷を放出する部分を含む連続した信号としてもよい。
【0044】
(2)本実施形態の心肺機能測定装置1では、被測定者の心肺機能の状態に基づく第一信号を、被測定者の心肺機能の状態に基づく呼吸信号としたが、これに限定するものではない。すなわち、被測定者の心肺機能の状態に基づく第一信号を、被測定者の心肺機能の状態に基づく心拍信号としてもよい。
これは、上述したように、圧電フィルムセンサ2は、外部から加えられた圧力に応じた電圧を出力するセンサであり、被測定者の人体表面に表れる、心拍に基づく振動を検出することが可能であるため実現可能となる。この場合、第一信号として被測定者の心肺機能の状態に基づく心拍信号を用いた心肺機能測定装置1を形成することが可能となり、圧電フィルムセンサ2等、従来からある構成を用いて、心肺機能測定装置1を形成することが可能となる。
【0045】
(3)本実施形態の心肺機能測定装置1では、圧電フィルムセンサ2が、被測定者の一呼吸の時間周期よりも短い時間間隔で、蓄積した電荷を放出するが、圧電フィルムセンサ2の構成は、これに限定するものではない。すなわち、上記のように、被測定者の心肺機能の状態に基づく第一信号を、被測定者の心肺機能の状態に基づく心拍信号とした場合、圧電フィルムセンサ2の構成を、被測定者の一心拍の時間周期よりも短い時間間隔で、蓄積した電荷を放出する。
この場合、被測定者の心肺機能の状態に基づく心拍信号を時間的に分割し、心拍信号の振幅の一部分をADコンバータ16の検出範囲に割り当てることが可能となるため、高い分解能を得ることが可能となり、より詳細な心拍信号の振幅を測定することが可能となる。
【0046】
(4)本実施形態の心肺機能測定装置1では、心肺機能測定装置1を備える対象を車両としたが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば、作業機械、電車、航空機、船舶等を、心肺機能測定装置1を備える対象としてもよい。更に言えば、圧電フィルムセンサを用いた心肺機能測定装置であれば適用可能である。
【0047】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態(以下、本実施形態と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図7は、本実施形態の心肺機能測定装置1の概略構成を示す図である。
図7中に示すように、心肺機能測定装置1は、圧電フィルムセンサ2と、アナログ回路4と、ディジタル回路6を備える。
圧電フィルムセンサ2及びアナログ回路4の構成は、上述した第一実施形態と同様の構成とするため、その説明を省略する。
ディジタル回路6は、ADコンバータ16と、ディジタル出力部14と、記憶領域18を備える。また、ディジタル回路6においては、マイクロコンピュータ(図示せず)が、全体の動作をコントロールする。
【0048】
ADコンバータ16及びディジタル出力部14の構成は、上述した第一実施形態と同様の構成とするため、その説明を省略する。
記憶領域18は、ディジタル回路6の動作に必要なソフトウェア部であり、ディジタル回路6に必要量搭載する。
また、記憶領域18は、ソフトウェアとして、電荷放出部判定部20と、増減度合算出部28と、補間信号生成部22と、第二信号生成部24と、心肺機能測定部26を備える。なお、電荷放出部判定部20と、補間信号生成部22と、第二信号生成部24と、心肺機能測定部26の構成は、上述した第一実施形態と同様の構成とするため、詳細な説明を省略する。
【0049】
電荷放出部判定部20は、ADコンバータ16が出力した第一信号Y1(u)の中から、上述した電荷放出部の範囲を判定し、この判定した電荷放出部を含む情報信号を、増減度合算出部28及び第二信号生成部24へ出力する。
増減度合算出部28は、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも前の信号と、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも後の信号との増減度合を算出し、この算出した増減度合を含む情報信号を、補間信号生成部22へ出力する。
【0050】
ここで、本実施形態では、一例として、増減度合算出部28の構成を、第一の傾きと第二の傾きを、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも前の信号と、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも後の信号との増減度合として算出する構成とする場合を説明する。この場合、第一の傾きは、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも前の信号から算出する傾きであり、第二の傾きは、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも後の信号から算出する傾きである。
【0051】
また、本実施形態では、一例として、増減度合算出部28の構成を、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも後の信号との増減度合として、前側増減度合と後側増減度合を算出する構成とする場合を説明する。ここで、前側増減度合は、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも前の信号の増減度合に基づく増減度合である。また、後側増減度合は、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも後の信号の増減度合に基づく増減度合である。
【0052】
補間信号生成部22は、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部の直前の信号と電荷放出部の直後の信号とを、電荷放出部における信号強度の変化を反映せずに連続させる補間信号を生成する。ここで、補間信号の生成は、電荷放出部判定部20が出力した情報信号が含む電荷放出部に基づき、第一信号Y1(u)のうち、電荷放出部の直前の信号を用いて行う。これに加え、本実施形態では、補間信号を、増減度合算出部28が算出した増減度合に基づいて生成する。
【0053】
ここで、本実施形態では、上述したように、増減度合算出部28の構成を、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも後の信号との増減度合として、前側増減度合と後側増減度合を算出する構成とする。このため、本実施形態では、一例として、補間信号生成部22の構成を、前側増減度合と後側増減度合との平均を用いて、補間信号を生成する構成とする場合を説明する。
また、補間信号生成部22は、生成した補間信号を含む情報信号を、第二信号生成部24へ出力する。
【0054】
第二信号生成部24は、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部の直前の信号と、補間信号と、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部の直後の信号とを連続させた第二信号Y2(u)を生成する。本実施形態の第二信号生成部24は、電荷放出部判定部20及び補間信号生成部22が出力した情報信号に基づいて、第二信号Y2(u)を生成する。
また、第二信号生成部24は、生成した第二信号Y2(u)を含む情報信号を、心肺機能測定部26へ出力する。
心肺機能測定部26は、第二信号生成部24が出力した情報信号が含む第二信号Y2(u)に基づき、被測定者の心肺機能を測定する。
【0055】
(ディジタル回路6が行う具体的な処理)
以下、図7を参照しつつ、図8から図10を用いて、ディジタル回路6が行う処理について、詳細に説明する。
なお、以下の説明では、上述した第一実施形態と同様、簡略化のために、ADコンバータ16がディジタル変換した第一信号Y1(u)の総データ数をU個とする。同様に、ディジタル出力部14が出力した電荷放出状態X(u)が「ON」であり、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部と判定した部分で連続するデータ数を、M個とする。また、U個のデータのうち、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部と判定した部分の前で連続するデータ数を、K個とする。さらに、U個のデータのうち、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部と判定した部分の後で連続するデータ数を、N個とする。
【0056】
以上により、上述した第一実施形態と同様、第一信号Y1(u)の総データ数を、上述したM個+K個+N個の合計であるU個とする。この総データ数(U個)は、上述した第一実施形態と同様、第一信号Y1(u)のデータとして、確実に得られている個数として扱う。
したがって、以下の説明は、上述した第一実施形態と同様、第一信号Y1(u)及び電荷放出状態X(u)として、共に、U個のデータが記憶領域18に保存されていることを前提に行う。
【0057】
図8は、ディジタル回路6が行う処理を示すタイムチャートであり、図9は、補間信号Y22(m)の詳細を示すグラフであり、図10は、ディジタル回路6が行う処理を示すフローチャートである。
図10中に示すように、ディジタル回路6が処理を開始(START)すると、まず、ステップS20において、記憶領域18が、第一信号Y1(u)と電荷放出状態X(u)を取得する。ステップS20において、記憶領域18が第一信号Y1(u)と電荷放出状態X(u)を取得すると、ディジタル回路6が行う処理は、ステップS22へ移行する。
【0058】
ここで、第一信号Y1(u)は、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)と、電荷放出部Y12(m)と、電荷放出部よりも後の信号Y13(n)からなる信号である。なお、第一信号Y1(u)は、図8中において、実線で示す線(Y11(k)からY12(m)を経由してY13(n)まで連続する線)に対応する。
第一信号Y1(u)の信号波形は、図8中に示すように、電荷放出状態X(u)の状態が「OFF」から「ON」となると、第一信号Y1(u)の信号強度が「0」レベルまで低下する波形となる。そして、電荷放出状態X(u)の状態が「ON」から「OFF」となると、第一信号Y1(u)の信号強度が「0」レベルから立ち上がる波形となる。すなわち、電荷放出部の信号強度は、常に「0」レベルである。
【0059】
このように、電荷放出状態X(u)の状態が「OFF」から「ON」となると、第一信号Y1(u)の信号強度が「0」レベルまで低下する。このため、電荷放出部(Y12(m))の前と後(Y11(k)とY13(n))の間において、信号強度が大幅に低下して、第一信号Y1(u)が滑らかに連続する信号では無くなり、第一信号Y1(u)の振幅がずれることとなる。
ステップS22では、電荷放出状態X(u)として保存されているU個のデータ(上述した「ON」及び「OFF」のデータ)に基づいて、第一信号Y1(u)のデータの中から、電荷放出部と電荷放出部ではない部分とを判別する。
【0060】
さらに、ステップS22では、電荷放出部よりも前のデータであるK個のデータを、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも前の信号Y11(k)として生成する。同様に、電荷放出部よりも後のデータであるN個のデータを、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも後の信号Y13(n)として生成する。ステップS22において、電荷放出部と電荷放出部ではない部分とを判別して、K個のデータを信号Y11(k)として生成し、N個のデータを信号Y13(n)として生成すると、ディジタル回路6が行う処理は、ステップS24へ移行する。
【0061】
ステップS24では、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)の増減度合(前側増減度合)と、電荷放出部よりも後の信号Y13(n)の増減度合(後側増減度合)を算出する。
ここで、本実施形態では、上述したように、電荷放出部よりも前の信号から算出する第一の傾きと、電荷放出部よりも後の信号から算出する第二の傾きを、増減度合として算出する。
したがって、本実施形態では、前側増減度合を、第一の傾きから算出し、後側増減度合を、第二の傾きから算出する。なお、第一の傾きを算出する際には、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)の最初と最後のデータを用いる。同様に、第二の傾きを算出する際には、電荷放出部よりも後の信号Y13(n)の最初と最後のデータを用いる。
【0062】
すなわち、第一の傾きSaを、以下の式(1)に示す値とし、第二の傾きSbを、以下の式(2)に示す値とする。
Sa=[Y11(K)−Y11(1)]/(K−1) … (1)
Sb=[Y13(N)−Y13(1)]/(N−1) … (2)
ここで、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)の最後のデータとは、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)のうち、電荷放出部Y12(m)の直前の値であり、上述したK個のデータである。ステップS24において、第一の傾きSa及び第二の傾きSbを算出すると、ディジタル回路6が行う処理は、ステップS26へ移行する。
【0063】
ステップS26では、ステップS24で算出した第一の傾きSa及び第二の傾きSbを用いて、M個のデータを持つ補間信号Y22(m)を生成する。
ここで、本実施形態では、上述したように、補間信号生成部22の構成を、前側増減度合と後側増減度合との平均を用いて、補間信号を生成する構成とする。したがって、ステップS26では、図9中に示すように、第一の傾きSaと第二の傾きSbとの平均の傾きであるScを算出し、この算出した平均の傾きScを用いて、補間信号Y22(m)を生成する。なお、平均の傾きScは、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)と、電荷放出部よりも後の信号Y13(n)の、両信号の特性を反映する値である。
【0064】
図9中に示すように、平均の傾きScを用いて生成した補間信号Y22(m)は、時間の経過に伴って信号強度が増加する信号である。なお、図9中に示すように、第一の傾きSaを用いて生成した補間信号Y22(m)と、第二の傾きSbを用いて生成した補間信号Y22(m)も、平均の傾きScを用いて生成した補間信号Y22(m)と同様、時間の経過に伴って信号強度が増加する信号である。
したがって、本実施形態の心肺機能測定装置1であれば、上述した第一実施形態の心肺機能測定装置1と比較して、時間の経過に伴う信号強度の増加度合いが大きい補間信号Y22(m)を生成することが可能となる(図3参照)。
【0065】
ステップS26において、補間信号Y22(m)を生成すると、ディジタル回路6が行う処理は、ステップS28へ移行する。
ステップS28では、電荷放出部よりも後の信号Y13(n)のうち電荷放出部Y12(m)の直後のデータを生成しているN個のデータに、補間信号Y22(m)のうち最後尾のデータを生成しているM個のデータを加算する。これにより、第二信号Y2(u)のうち、補間信号Y22(m)よりも後の信号Y23(n)を生成する。
さらに、ステップS28では、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)に、補間信号Y22(m)と、補間信号Y22(m)よりも後の信号Y23(n)を順番に連続させて、第二信号Y2(u)を生成する。すなわち、第二信号Y2(u)の総データ数を、第一信号Y1(u)と同様、上述したM個+K個+N個の合計であるU個とする。
【0066】
ここで、本実施形態の心肺機能測定装置1では、ステップS26において、上述した第一実施形態の心肺機能測定装置1よりも、時間の経過に伴う信号強度の増加度合いが大きい補間信号Y22(m)を生成する(図3参照)。これにより、本実施形態の心肺機能測定装置1では、上述した第一実施形態の心肺機能測定装置1と比較して、時間の経過に伴って信号強度が増加する第二信号Y2(u)を生成することが可能となる(図3参照)。
【0067】
以上により、ステップS28では、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)と、補間信号Y22(m)と、電荷放出部よりも後の信号Y13(n)の合計U個(U=K+M+N)のデータを用いて、信号強度が滑らかに連続する第二信号Y2(u)を生成する。ステップS28において、第二信号Y2(u)を生成すると、ディジタル回路6が行う処理は終了(END)する。
ここで、第二信号Y2(u)は、図8中において、実線で示す信号Y11(k)と、点線で示す補間信号Y22(m)と、一点鎖線で示す信号Y23(n)を順番に連続する線に対応する。
【0068】
(作用)
次に、図7から図10を参照しつつ、図11を用いて、本実施形態の心肺機能測定装置1が行なう作用について説明する。
図11は、本実施形態の心肺機能測定装置1の動作例を示すタイムチャートである。なお、図11中に示す各種の要素は、上述した第一実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
図11のタイムチャートは、上述した第一実施形態と同様、車両の走行時、における、第一信号Y1(u)及び第二信号Y2(u)の電圧の経時的な変化を示している。
【0069】
また、第一信号Y1(u)及び第二信号Y2(u)の検出方法と構成は、上述した第一実施形態と同様であるため、その説明を省略する。また、図11中における第一信号Y1(u)及び第二信号Y2(u)の示し方も、上述した第一実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
図11中に示すように、第二信号Y2(u)の最大振幅A2は、上述した第一実施形態と同様、第一信号Y1(u)の最大振幅A1よりも大きい値となる。
【0070】
ここで、本実施形態の心肺機能測定装置1であれば、上述した第一実施形態の心肺機能測定装置1よりも、時間の経過に伴う信号強度の増加度合いが大きい補間信号Y22(m)を生成することが可能である。これにより、本実施形態の心肺機能測定装置1では、上述した第一実施形態の心肺機能測定装置1と比較して、時間の経過に伴って信号強度が増加する第二信号Y2(u)を生成することが可能となる。
【0071】
したがって、本実施形態の心肺機能測定装置1であれば、上述した第一実施形態の心肺機能測定装置1よりも、第二信号Y2(u)の最大振幅A2を拡大することが可能となる(図5参照)。これにより、本実施形態の心肺機能測定装置1であれば、上述した第一実施形態の心肺機能測定装置1よりも高い分解能を得ることが可能となり、より詳細な信号の振幅を計測することが可能となる。
【0072】
以上により、ADコンバータ16は、第一信号検出手段に対応する。また、電荷放出部判定部20及びステップS22は、電荷放出部判定手段に対応する。また、増減度合算出部28及びステップS24は、増減度合算出手段に対応する。同様に、補間信号生成部22及びステップS26は、補間信号生成手段に対応する。また、第二信号生成部24及びステップS28は、第二信号生成手段に対応する。また、心肺機能測定部26は、心肺機能測定手段に対応する。
【0073】
(第二実施形態の効果)
本実施形態の心肺機能測定装置1であれば、上述した第一実施形態の効果に加え、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)増減度合算出部28が、電荷放出部よりも前の信号と電荷放出部よりも後の信号との増減度合を算出し、補間信号生成部22が、増減度合算出部28が算出した増減度合に基づいて、補間信号Y22(m)を生成する。
このため、上述した第一実施形態の心肺機能測定装置1よりも、時間の経過に伴う信号強度の増加度合いが大きい補間信号Y22(m)を生成することが可能となる。
その結果、上述した第一実施形態の心肺機能測定装置1と比較して、時間の経過に伴って信号強度が増加する第二信号Y2(u)を生成することが可能となる。これにより、比較的簡易かつ正確に、電荷を放出する動作の前後で発生する信号強度の振幅の誤りを、容易に抑制することが可能となる。
【0074】
(2)増減度合算出部28が、電荷放出部よりも前の信号から算出する第一の傾きSaと、電荷放出部よりも後の信号から算出する第二の傾きSbを、増減度合として算出する。
その結果、補間信号生成部22が生成する補間信号Y22(m)の正確性を向上させることが可能となる。
(3)増減度合算出部28が、電荷放出部よりも前の信号の増減度合に基づく前側増減度合と、電荷放出部よりも後の信号の増減度合に基づく後側増減度合を算出する。これに加え、補間信号生成部22が、前側増減度合と後側増減度合との平均を用いて、補間信号Y22(m)を生成する。
その結果、前側増減度合と後側増減度合との平均を用いずに補間信号Y22(m)を生成する場合よりも、補間信号生成部22が生成する補間信号Y22(m)の正確性を向上させることが可能となる。
【0075】
(変形例)
(1)本実施形態の心肺機能測定装置1では、増減度合算出部28が、前側増減度合と後側増減度合を算出し、補間信号生成部22が、前側増減度合と後側増減度合との平均を用いて、補間信号Y22(m)を生成する。しかしながら、補間信号生成部22の構成は、これに限定するものではない。すなわち、補間信号生成部22の構成を、例えば、図12及び図13中に示すように、前側増減度合(第一の傾きSa)と後側増減度合(第二の傾きSb)とを電荷放出部で接続して、補間信号Y22(m)を生成する構成としてもよい。なお、図12は、本実施形態の変形例における、ディジタル回路6が行う処理を示すタイムチャートである。また、図13は、本実施形態の変形例における、補間信号Y22(m)の詳細を示すグラフである。
この場合、前側増減度合と後側増減度合とを電荷放出部で接続せずに補間信号Y22(m)を生成する場合よりも、補間信号生成部22が生成する補間信号Y22(m)の正確性を向上させることが可能となる。
【0076】
(2)本実施形態の心肺機能測定装置1では、増減度合算出部28が、電荷放出部よりも前の信号から算出する第一の傾きSaと、電荷放出部よりも後の信号から算出する第二の傾きSbを、増減度合として算出する。しかしながら、増減度合算出部28の構成は、これに限定するものではない。すなわち、増減度合算出部28の構成を、第一の傾きSaの多項式近似式と、第二の傾きSbの多項式近似式を、増減度合として算出する構成としてもよい。すなわち、増減度合算出部28の構成は、第一の傾きSa、第一の傾きSaの多項式近似式、第二の傾きSb及び第二の傾きSbの多項式近似式のうち少なくとも一つを、増減度合として算出する構成であればよい。
【0077】
(3)本実施形態の心肺機能測定装置1では、第一の傾きSaを算出する際に、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)の最初と最後のデータを用いたが、これに限定するものではない。すなわち、第一の傾きSaを算出する際に、例えば、信号Y11(k)の最後のデータと、最後のデータよりも前の近傍のデータを用いてもよい。同様に、第二の傾きを算出する際に、信号Y13(n)の最初のデータと、最初のデータよりも後の近傍のデータを用いてもよい。
【0078】
(4)本実施形態の心肺機能測定装置1では、第一の傾きSaと第二の傾きSbとの平均の傾きであるScを算出し、この算出した平均の傾きScを用いて、補間信号Y22(m)を生成したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、第一の傾きSaまたは第二の傾きSbのみを用いて、補間信号Y22(m)を生成してもよい。
また、測定方法についても、自宅のパソコン等の受信手段にソフトウェアをインストールして、計測する装置に、計測した信号をパソコンに送信する信号送信手段を有するように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 心肺機能測定装置
2 圧電フィルムセンサ
4 アナログ回路
6 ディジタル回路
8 増幅回路
10 フィルター回路
12 アナログスイッチ
14 ディジタル出力部
16 ADコンバータ(第一信号検出手段)
18 記憶領域
20 電荷放出部判定部(電荷放出部判定手段、送信手段及び受信手段)
22 補間信号生成部(補間信号生成手段)
24 第二信号生成部(第二信号生成手段)
26 心肺機能測定部(心肺機能測定手段)
28 増減度合算出部(増減度合算出手段)
V 車両
SW 操作子
PS 電荷放出用パルス信号
Y1(u) 第一信号
X(u) 電荷放出状態
Y2(u) 第二信号
A1 第一信号Y1(u)の最大振幅
A2 第二信号Y2(u)の最大振幅
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者に対して、呼吸や心拍の状態を検出して心肺機能を測定する心肺機能測定装置及び心肺機能測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両、列車、航空機、船舶や作業機械等を運転する運転者(操縦者)の健康状態が悪化した場合、その運転者は、居眠り運転や誤操作を行ってしまうおそれがある。
上記のような健康状態の悪化は、睡眠時無呼吸症候群に起因するものが多い。このような健康状態の悪化を早期に発見するための対策として、例えば、特許文献1に記載されている装置を用いて、被測定者である運転者の心肺機能を測定する方法がある。
特許文献1に記載されている心肺機能測定装置は、運転者が接触する圧電フィルムセンサを用いて運転者の心肺機能を測定する装置であり、心肺機能を測定するための情報として、運転者の呼吸に基づく情報及び心拍に基づく情報を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2007/094464号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の心肺機能測定装置では、心肺機能の測定時において、圧電フィルムセンサに蓄積した電荷を放出する動作を行う。このため、電荷を放出する動作の前と後で信号強度の振幅がずれて、心肺機能の誤診断を行ってしまうという問題が発生するおそれがある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、圧電フィルムセンサに蓄積した電荷を放出する動作の前と後で発生する信号強度の振幅の誤りを抑制することが可能な、心肺機能測定装置及び心肺機能測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、被測定者が接触する圧電フィルムセンサからの信号を第一信号として検出し、さらに、少なくとも圧電フィルムセンサに蓄積した電荷を放出する部分を含む信号である電荷放出部の範囲を判定する。そして、第一信号のうち、電荷放出部の直前の信号と、補間信号と、電荷放出部の直後の信号とを連続させて生成した第二信号に基づいて、被測定者の心肺機能を測定する。ここで、第二信号は、電荷放出部の信号を補間信号に置き換えて生成する。また、補間信号は、電荷放出部の直前の信号と直後の信号とを、電荷放出部における信号強度の変化を反映せずに連続させる信号である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電荷放出部の信号を補間信号に置き換えて、電荷放出部における信号強度の変化を反映せずに第二信号を生成する。これにより、電荷放出部の直前の信号と、補間信号と、電荷放出部の直後の信号とを滑らかに連続させた信号である、第二信号を生成する。
このため、本発明によれば、圧電フィルムセンサに蓄積した電荷を放出する動作に伴う、動作の前後における信号強度の振幅のずれを抑制して、電荷を放出する動作の前後で発生する信号強度の振幅の誤りを、容易に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第一実施形態の心肺機能測定装置の概略構成を示す図である。
【図2】心肺機能測定装置を備えた車両の概略構成を示す図である。
【図3】ディジタル回路が行う処理を示すタイムチャートである。
【図4】ディジタル回路が行う処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第一実施形態の心肺機能測定装置の動作例を示すタイムチャートである。
【図6】本発明の第一実施形態の変形例を示す図であり、第一信号の状態を示すタイムチャートである。
【図7】本発明の第二実施形態の心肺機能測定装置の概略構成を示す図である。
【図8】ディジタル回路が行う処理を示すタイムチャートである。
【図9】補間信号の詳細を示すグラフである。
【図10】ディジタル回路が行う処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第二実施形態の心肺機能測定装置の動作例を示すタイムチャートである。
【図12】本発明の第二実施形態の変形例における、ディジタル回路が行う処理を示すタイムチャートである。
【図13】本発明の第二実施形態の変形例における、補間信号の詳細を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、本実施形態と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1は、本実施形態の心肺機能測定装置1の概略構成を示す図である。また、図2は、心肺機能測定装置1を備えた車両Vの概略構成を示す図である。
図1及び図2中に示すように、心肺機能測定装置1は、圧電フィルムセンサ2と、アナログ回路4と、ディジタル回路6を備える。
【0009】
圧電フィルムセンサ2は、外部から加えられた圧力に応じた電圧を出力するセンサであり、被測定者(被験者)が操作する操作子SWに設けることにより、被測定者が接触する位置に配置している。ここで、操作子SWとは、例えば、図2中に示すように、心肺機能測定装置1が車両Vに備えられている場合、ステアリングホイールとする。この場合、被測定者が接触する位置とは、ステアリングホイールのうち、車両の運転中に被測定者が把持する時間が長い部分(例えば、中立位置にあるステアリングホイールの、2時方向の部分及び10時方向の部分)とする。また、被測定者とは、図2中に示すように、心肺機能測定装置1が車両Vに備えられている場合、車両の運転者(ドライバー)とする。
【0010】
また、圧電フィルムセンサ2は、陽極(+)及び陰極(−)を有し、陽極及び陰極を介して、後述する増幅回路8及びアナログスイッチ12に接続する。そして、圧電フィルムセンサ2は、被測定者が加えた圧力を電圧に変換し、この変換した電圧を含む情報信号を、増幅回路8へ出力する。
アナログ回路4は、増幅回路8と、フィルター回路10と、アナログスイッチ12を備える。
【0011】
増幅回路8は、圧電フィルムセンサ2が出力した情報信号が含む電圧を、予め設定した所定の倍率で増幅し、この増幅した電圧(以下、「増幅電圧」と記載する場合がある)を含む情報信号を、フィルター回路10へ出力する。
フィルター回路10は、増幅回路8が出力した情報信号が含む増幅電圧に対して、雑音成分の除去(フィルタリング)を行い、この雑音成分を除去した増幅電圧を含む情報信号を、ディジタル回路6へ出力する。
【0012】
本実施形態では、フィルター回路10が行うフィルタリングにより、増幅回路8が出力した情報信号が含む増幅電圧から除去する雑音成分を、被測定者の心肺機能の状態に基づく呼吸信号以外の成分とする。
アナログスイッチ12は、後述するディジタル出力部14が出力した電荷放出用パルス信号PSの入力を受けると、スイッチング状態を「OFF」から「ON」へ切り換える。ここで、スイッチング状態を「ON」に切り換えたアナログスイッチ12は、圧電フィルムセンサ2の両極(陽極、陰極)をグラウンド回路(GND)に接続する。そして、圧電フィルムセンサ2の両極をグラウンド回路に接続すると、圧電フィルムセンサ2内に蓄積している電荷が放出される。
【0013】
ディジタル回路6は、AD(アナログ‐ディジタル)コンバータ16と、ディジタル出力部14と、記憶領域18を備える。また、ディジタル回路6においては、マイクロコンピュータ(図示せず)が、全体の動作をコントロールする。
ADコンバータ16は、フィルター回路10が出力した情報信号が含む、雑音成分を除去した増幅電圧を、予め設定した所定時間毎にディジタル変換する。そして、ADコンバータ16は、ディジタル変換した増幅電圧を示す情報信号を、第一信号Y1(u)としてディジタル出力部14及び記憶領域18へ出力する。ここで、「u」は、1個〜U個の、所定のデータ数とする。
【0014】
ここで、本実施形態では、上述したように、フィルター回路10が行うフィルタリングにより除去する雑音成分を、被測定者の心肺機能の状態に基づく呼吸信号以外の成分とする。すなわち、本実施形態では、第一信号Y1(u)を、被測定者の心肺機能の状態に基づく呼吸信号とする。
ディジタル出力部14は、ADコンバータ16が出力した第一信号Y1(u)が含む増幅電圧のレベルに応じて、圧電フィルムセンサ2内に蓄積した電荷を放出するための電荷放出用パルス信号PSを、アナログスイッチ12へ出力する。
ここで、電荷放出用パルス信号PSの出力は、予め設定した所定の時間間隔で行う。
【0015】
本実施形態では、ディジタル出力部14が電荷放出用パルス信号PSを出力する時間間隔(所定の時間間隔)を、被測定者の一呼吸の時間周期よりも短い時間間隔とする。すなわち、本実施形態の圧電フィルムセンサ2は、被測定者の一呼吸の時間周期よりも短い時間間隔で、蓄積した電荷を放出する。
なお、被測定者の一呼吸の時間は、例えば、被測定者が過去に行った呼吸を計測し、この計測値の履歴を蓄積し、この蓄積した履歴を用いた演算等の方法を用いて設定する。
また、ディジタル出力部14は、電荷放出用パルス信号PSの入力に応じた、アナログスイッチ12のスイッチング状態(「OFF」または「ON」)を示す情報信号である、電荷放出状態X(u)を、第一信号Y1(u)と同期させて、記憶領域18へ出力する。
【0016】
記憶領域18は、ディジタル回路6の動作に必要なソフトウェア部であり、ディジタル回路6に必要量搭載する。
また、記憶領域18は、ソフトウェアとして、電荷放出部判定部20と、補間信号生成部22と、第二信号生成部24と、心肺機能測定部26を備える。
電荷放出部判定部20は、ADコンバータ16が出力した第一信号Y1(u)の中から、圧電フィルムセンサ2内に蓄積した電荷を放出する部分の信号(以下、「電荷放出部」と記載する場合がある)の範囲を判定する。ここで、電荷放出部の判定は、ディジタル出力部14が出力した電荷放出状態X(u)に基づいて行う。
【0017】
なお、本実施形態では、後述するように、アナログスイッチ12のスイッチング状態が「ON」である部分の信号の範囲のみを、電荷放出部とする。
また、電荷放出部判定部20は、判定した電荷放出部を含む情報信号を、補間信号生成部22及び第二信号生成部24へ出力する。
補間信号生成部22は、第一信号のうち、電荷放出部の直前の信号と電荷放出部の直後の信号とを、電荷放出部における信号強度の変化を反映せずに連続させる補間信号を生成する。ここで、補間信号の生成は、電荷放出部判定部20が出力した情報信号が含む電荷放出部に基づき、第一信号Y1(u)のうち、電荷放出部の直前の信号を用いて行う。
【0018】
また、補間信号生成部22は、生成した補間信号を含む情報信号を、第二信号生成部24へ出力する。
第二信号生成部24は、電荷放出部判定部20及び補間信号生成部22が出力した情報信号に基づき、電荷放出部の直前の信号と、補間信号と、電荷放出部の直後の信号とを連続させた第二信号Y2(u)を生成する。ここで、第二信号Y2(u)の生成は、電荷放出部判定部20が判定した電荷放出部の信号を、補間信号生成部22が生成した補間信号に置き換えて行う。
【0019】
また、第二信号生成部24は、生成した第二信号Y2(u)を含む情報信号を、心肺機能測定部26へ出力する。
心肺機能測定部26は、第二信号生成部24が出力した情報信号が含む第二信号Y2(u)に基づき、被測定者の心肺機能を測定する。ここで、心肺機能測定部26による心肺機能の測定結果は、特に図示しないが、例えば、表示装置(ディスプレイ等)に警告メッセージ等として表示する。なお、心肺機能測定部26による心肺機能の測定結果は、例えば、音響装置(スピーカー)から警告(警告音、音声メッセージ)として出力してもよい。
また、被測定者の心肺機能の測定は、具体的には、第二信号Y2(u)に基づいて、被測定者の呼吸・心拍振幅や、呼吸・心拍数等、被測定者の心肺機能に関する量(値)を算出し、この算出した被測定者の心肺機能に関する量を用いて行う。
(ディジタル回路6が行う具体的な処理)
【0020】
以下、図1及び図2を参照しつつ、図3及び図4を用いて、ディジタル回路6が行う処理について、詳細に説明する。
なお、以下の説明では、簡略化のために、ADコンバータ16がディジタル変換した第一信号Y1(u)の総データ数をU個とする。また、U個のデータのうち、アナログスイッチ12のスイッチング状態が「ON」、すなわち、ディジタル出力部14が出力した電荷放出状態X(u)が「ON」であり、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部と判定した部分で連続するデータ数を、M個とする。また、U個のデータのうち、電荷放出状態X(u)が「ON」となる前の「OFF」であり、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部と判定した部分の前で連続するデータ数を、K個とする。同様に、U個のデータのうち、電荷放出状態X(u)が「ON」となった後の「OFF」であり、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部と判定した部分の後で連続するデータ数を、N個とする。
【0021】
以上により、第一信号Y1(u)の総データ数を、上述したM個+K個+N個の合計であるU個とする。この総データ数(U個)は、第一信号Y1(u)のデータとして、確実に得られている個数として扱う。
したがって、以下の説明は、第一信号Y1(u)及び電荷放出状態X(u)として、共に、U個のデータが記憶領域18に保存されていることを前提に行う。
【0022】
図3は、ディジタル回路6が行う処理を示すタイムチャートであり、図4は、ディジタル回路6が行う処理を示すフローチャートである。
図4中に示すように、ディジタル回路6が処理を開始(START)すると、まず、ステップS10において、記憶領域18が、第一信号Y1(u)と電荷放出状態X(u)を取得する。ステップS10において、記憶領域18が第一信号Y1(u)と電荷放出状態X(u)を取得すると、ディジタル回路6が行う処理は、ステップS12へ移行する。
【0023】
ここで、第一信号Y1(u)は、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)と、電荷放出部Y12(m)と、電荷放出部よりも後の信号Y13(n)からなる信号である。なお、第一信号Y1(u)は、図3中において、実線で示す線(Y11(k)からY12(m)を経由してY13(n)まで連続する線)に対応する。
第一信号Y1(u)の信号波形は、図3中に示すように、電荷放出状態X(u)の状態が「OFF」から「ON」となると、第一信号Y1(u)の信号強度が「0」レベルまで低下する波形となる。そして、電荷放出状態X(u)の状態が「ON」から「OFF」となると、第一信号Y1(u)の信号強度が「0」レベルから立ち上がる波形となる。すなわち、電荷放出部の信号強度は、常に「0」レベルである。
【0024】
このように、電荷放出状態X(u)の状態が「OFF」から「ON」となると、第一信号Y1(u)の信号強度が「0」レベルまで低下する。このため、電荷放出部(Y12(m))の前と後(Y11(k)とY13(n))の間において、信号強度が大幅に低下して、第一信号Y1(u)が滑らかに連続する信号では無くなり、第一信号Y1(u)の振幅がずれることとなる。
ステップS12では、電荷放出状態X(u)として保存されているU個のデータ(上述した「ON」及び「OFF」のデータ)に基づいて、第一信号Y1(u)のデータの中から、電荷放出部と電荷放出部ではない部分とを判別する。
【0025】
さらに、ステップS12では、電荷放出部よりも前のデータであるK個のデータを、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも前の信号Y11(k)として生成する。同様に、電荷放出部よりも後のデータであるN個のデータを、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも後の信号Y13(n)として生成する。ステップS12において、電荷放出部と電荷放出部ではない部分とを判別して、K個のデータを信号Y11(k)として生成し、N個のデータを信号Y13(n)として生成すると、ディジタル回路6が行う処理は、ステップS14へ移行する。
【0026】
ステップS14では、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)のうち、電荷放出部Y12(m)の直前の値(信号強度)を用いて、M個のデータを持つ補間信号Y22(m)を生成する。ステップS14において、補間信号Y22(m)を生成すると、ディジタル回路6が行う処理は、ステップS16へ移行する。
ステップS16では、電荷放出部よりも後の信号Y13(n)のうち電荷放出部Y12(m)の直後のデータを生成しているN個のデータに、補間信号Y22(m)のうち最後尾のデータを生成しているM個のデータを加算する。これにより、第二信号Y2(u)のうち、補間信号Y22(m)よりも後の信号Y23(n)を生成する。
【0027】
さらに、ステップS16では、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)に、補間信号Y22(m)と、補間信号Y22(m)よりも後の信号Y23(n)を順番に連続させて、第二信号Y2(u)を生成する。すなわち、第二信号Y2(u)の総データ数を、第一信号Y1(u)と同様、上述したM個+K個+N個の合計であるU個とする。
以上により、ステップS16では、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)と、補間信号Y22(m)と、電荷放出部よりも後の信号Y13(n)の合計U個(U=K+M+N)のデータを用いて、信号強度が滑らかに連続する第二信号Y2(u)を生成する。ステップS16において、第二信号Y2(u)を生成すると、ディジタル回路6が行う処理は終了(END)する。
ここで、第二信号Y2(u)は、図3中において、実線で示す信号Y11(k)と、点線で示す補間信号Y22(m)と、一点鎖線で示す信号Y23(n)を順番に連続する線に対応する。
【0028】
(作用)
次に、図1から図4を参照しつつ、図5を用いて、本実施形態の心肺機能測定装置1が行なう作用について説明する。
図5は、本実施形態の心肺機能測定装置1の動作例を示すタイムチャートである。なお、図5中では、横軸に経過時間(図中では、「時間[sec]」と記載する)を示し、縦軸に第一信号Y1(u)及び第二信号Y2(u)の電圧(図中では、「電圧[V]」と記載する)を示す。さらに、図5中には、電荷放出用パルス信号PSの入力に応じた、アナログスイッチ12のスイッチング状態(図中では、「電荷放出状態」と記載する)を、「OFF」及び「ON」として示している。
【0029】
図5のタイムチャートは、車両の走行時、すなわち、心肺機能の被測定者である運転者が車両を運転している状態における、第一信号Y1(u)及び第二信号Y2(u)の電圧の経時的な変化を示している。
ここで、第一信号Y1(u)は、ADコンバータ16が検出した信号であり、図5中では、実線により示している。また、図5中に示す第一信号Y1(u)は、被測定者の心肺機能の状態に基づく呼吸信号の振幅を一部分ずつ切り出し、これらの切り出した部分を連続させた波形信号である。このような呼吸信号の振幅の切り出しは、被測定者の心肺機能の状態に基づく呼吸信号を、アナログスイッチ12のスイッチング状態に応じて時間的に分割して行う。
【0030】
また、第二信号Y2(u)は、以下の処理によって検出した信号であり、図5中では、破線により示している。また、図5中に示す第二信号Y2(u)は、上述したステップS14及びS16の処理を、第一信号Y1(u)の切り出した各部分に対応させて行うことにより生成した波形信号である。
車両の走行時には、ステアリングホイールに設けた圧電フィルムセンサ2に接触している運転者の呼吸に伴って、圧電フィルムセンサ2に運転者からの圧力が加わる。
【0031】
ここで、本実施形態では、上述したように、第一信号を、被測定者の心肺機能の状態に基づく呼吸信号としており、圧電フィルムセンサ2が、被測定者の一呼吸の時間周期よりも短い時間間隔で、蓄積した電荷を放出する。
したがって、ディジタル回路6が行う処理(図4参照)を、被測定者の一呼吸の時間周期よりも短い時間間隔に応じて繰返し行うことにより、第二信号Y2(u)を検出する。
【0032】
そして、図5中に示すように、第二信号Y2(u)の最大振幅A2は、第一信号Y1(u)の最大振幅A1よりも大きい値となる。したがって、本実施形態の心肺機能測定装置1、すなわち、第二信号Y2(u)を検出する心肺機能測定装置1であれば、第一信号Y1(u)を検出するADコンバータ16単体の電圧分解能よりも高い分解能を得ることが可能となる。このため、より詳細な信号の振幅を計測することが可能となる。
【0033】
なお、上述したように、本実施形態の心肺機能測定装置1の動作で実施する心肺機能測定方法は、被測定者が接触する圧電フィルムセンサ2からの信号に基づいて、被測定者の心肺機能を測定する方法である。
ここで、被測定者が接触する圧電フィルムセンサ2からの信号は、送信手段により検出して送信し、送信手段が検出して送信した信号は、受信手段により受信して処理する。
【0034】
具体的には、上記の送信手段が、圧電フィルムセンサ2からの信号を第一信号として検出して送信し、上記の受信手段が、送信手段から送信された第一信号を受信する。さらに、受信手段が受信した第一信号のうち電荷放出部の範囲を判定する。
そして、電荷放出部の直前の信号と直後の信号とを、電荷放出部における信号強度の変化を反映せずに連続させる補間信号Y22(m)を生成する方法である。これに加え、電荷放出部の信号を補間信号Y22(m)に置き換えて、電荷放出部の直前の信号と、補間信号と、電荷放出部の直後の信号とを連続させて生成した第二信号Y2(u)に基づいて、被測定者の心肺機能を測定する方法である。この方法において、送信手段及び受信手段は、上述した電荷放出部判定部20及びステップS12が有している。
【0035】
以上により、ADコンバータ16は、第一信号検出手段に対応する。また、電荷放出部判定部20及びステップS12は、電荷放出部判定手段に対応する。また、補間信号生成部22及びステップS14は、補間信号生成手段に対応する。同様に、第二信号生成部24及びステップS16は、第二信号生成手段に対応する。また、心肺機能測定部26は、心肺機能測定手段に対応する。
【0036】
(第一実施形態の効果)
(1)補間信号生成部22が、電荷放出部の直前の信号と電荷放出部の直後の信号とを、電荷放出部における信号強度の変化を反映せずに連続させる、補間信号を生成する。これに加え、第二信号生成部24が、電荷放出部の信号を補間信号に置き換えて、電荷放出部の直前の信号と、補間信号と、電荷放出部の直後の信号とを連続させた第二信号を生成する。
【0037】
このため、第二信号として、電荷放出部における第一信号の強度の変化を反映せず、且つ、電荷放出部の直前の信号と、補間信号と、電荷放出部の直後の信号とを滑らかに連続させた信号を生成することが可能となる。
その結果、圧電フィルムセンサ2に蓄積した電荷を放出する動作に伴う、動作の前後における信号強度の振幅のずれを抑制して、電荷を放出する動作の前後で発生する信号強度の振幅の誤りを、容易に抑制することが可能となる。
これにより、被測定者に対する心肺機能の誤診断を抑制することが可能となり、被測定者に対する心肺機能の診断精度を向上させることが可能となる。
【0038】
(2)被測定者の心肺機能の状態に基づく第一信号を、被測定者の心肺機能の状態に基づく呼吸信号とすることにより、第一信号として被測定者の心肺機能の状態に基づく呼吸信号を用いた心肺機能測定装置1を形成することが可能となる。
その結果、圧電フィルムセンサ2等、従来からある構成を用いて、心肺機能測定装置1を形成することが可能となる。
【0039】
(3)圧電フィルムセンサ2が、被測定者の一呼吸の時間周期よりも短い時間間隔で、蓄積した電荷を放出する。
このため、被測定者の心肺機能の状態に基づく呼吸信号を時間的に分割し、呼吸信号の振幅の一部分をADコンバータ16の検出範囲に割り当てることが可能となるため、高い分解能を得ることが可能となる。
その結果、より詳細な呼吸信号の振幅を測定することが可能となる。
【0040】
(4)本実施形態の心肺機能測定方法では、ステップS14において、電荷放出部の直前の信号と電荷放出部の直後の信号とを、電荷放出部における信号強度の変化を反映せずに連続させる、補間信号を生成する。これに加え、ステップS16において、電荷放出部の信号を補間信号に置き換えて、電荷放出部の直前の信号と、補間信号と、電荷放出部の直後の信号とを連続させた第二信号を生成する。
【0041】
このため、第二信号として、電荷放出部における信号強度の変化を反映せず、且つ、電荷放出部の直前の信号と、補間信号と、電荷放出部の直後の信号とを滑らかに連続させた信号を生成することが可能となる。
その結果、圧電フィルムセンサ2に蓄積した電荷を放出する動作に伴う、動作の前後における信号強度の振幅のずれを抑制して、電荷を放出する動作の前後で発生する信号強度の振幅の誤りを、容易に抑制することが可能となる。
これにより、被測定者に対する心肺機能の誤診断を抑制することが可能となり、被測定者に対する心肺機能の診断精度を向上させることが可能となる。
【0042】
(変形例)
(1)本実施形態の心肺機能測定装置1では、電荷放出部を、アナログスイッチ12のスイッチング状態が「ON」である部分のみ(図3参照)、すなわち、圧電フィルムセンサ2に蓄積した電荷を放出する部分のみとしたが、これに限定するものではない。すなわち、電荷放出部を、例えば、図6中に示すように、アナログスイッチ12のスイッチング状態が「ON」である部分に、スイッチング状態が「ON」である部分よりも後の部分を加えたものとしてもよい。また、特に図示しないが、電荷放出部を、例えば、スイッチング状態が「ON」である部分に、スイッチング状態が「ON」である部分よりも前の部分を加えたものとしてもよい。なお、図6は、本実施形態の変形例を示す図であり、第一信号の状態を示すタイムチャートである。
【0043】
ここで、スイッチング状態が「ON」である部分に、スイッチング状態が「ON」である部分よりも前及び後のうち少なくとも一方を加える処理は、例えば、フィルター回路10の特性に起因して、第一信号に波形歪が発生している場合に行う。この場合、スイッチング状態が「ON」である部分に加える部分の設定は、例えば、所定の時間間隔における一律なデータ数を用いて設定してもよい。また、例えば、第一信号の波形形状の変化点等を算出し、この算出した値に基づいて設定してもよい。
以上により、電荷放出部は、圧電フィルムセンサ2に蓄積した電荷を放出する部分のみに限定するものではなく、少なくとも圧電フィルムセンサ2に蓄積した電荷を放出する部分を含む連続した信号としてもよい。
【0044】
(2)本実施形態の心肺機能測定装置1では、被測定者の心肺機能の状態に基づく第一信号を、被測定者の心肺機能の状態に基づく呼吸信号としたが、これに限定するものではない。すなわち、被測定者の心肺機能の状態に基づく第一信号を、被測定者の心肺機能の状態に基づく心拍信号としてもよい。
これは、上述したように、圧電フィルムセンサ2は、外部から加えられた圧力に応じた電圧を出力するセンサであり、被測定者の人体表面に表れる、心拍に基づく振動を検出することが可能であるため実現可能となる。この場合、第一信号として被測定者の心肺機能の状態に基づく心拍信号を用いた心肺機能測定装置1を形成することが可能となり、圧電フィルムセンサ2等、従来からある構成を用いて、心肺機能測定装置1を形成することが可能となる。
【0045】
(3)本実施形態の心肺機能測定装置1では、圧電フィルムセンサ2が、被測定者の一呼吸の時間周期よりも短い時間間隔で、蓄積した電荷を放出するが、圧電フィルムセンサ2の構成は、これに限定するものではない。すなわち、上記のように、被測定者の心肺機能の状態に基づく第一信号を、被測定者の心肺機能の状態に基づく心拍信号とした場合、圧電フィルムセンサ2の構成を、被測定者の一心拍の時間周期よりも短い時間間隔で、蓄積した電荷を放出する。
この場合、被測定者の心肺機能の状態に基づく心拍信号を時間的に分割し、心拍信号の振幅の一部分をADコンバータ16の検出範囲に割り当てることが可能となるため、高い分解能を得ることが可能となり、より詳細な心拍信号の振幅を測定することが可能となる。
【0046】
(4)本実施形態の心肺機能測定装置1では、心肺機能測定装置1を備える対象を車両としたが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば、作業機械、電車、航空機、船舶等を、心肺機能測定装置1を備える対象としてもよい。更に言えば、圧電フィルムセンサを用いた心肺機能測定装置であれば適用可能である。
【0047】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態(以下、本実施形態と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図7は、本実施形態の心肺機能測定装置1の概略構成を示す図である。
図7中に示すように、心肺機能測定装置1は、圧電フィルムセンサ2と、アナログ回路4と、ディジタル回路6を備える。
圧電フィルムセンサ2及びアナログ回路4の構成は、上述した第一実施形態と同様の構成とするため、その説明を省略する。
ディジタル回路6は、ADコンバータ16と、ディジタル出力部14と、記憶領域18を備える。また、ディジタル回路6においては、マイクロコンピュータ(図示せず)が、全体の動作をコントロールする。
【0048】
ADコンバータ16及びディジタル出力部14の構成は、上述した第一実施形態と同様の構成とするため、その説明を省略する。
記憶領域18は、ディジタル回路6の動作に必要なソフトウェア部であり、ディジタル回路6に必要量搭載する。
また、記憶領域18は、ソフトウェアとして、電荷放出部判定部20と、増減度合算出部28と、補間信号生成部22と、第二信号生成部24と、心肺機能測定部26を備える。なお、電荷放出部判定部20と、補間信号生成部22と、第二信号生成部24と、心肺機能測定部26の構成は、上述した第一実施形態と同様の構成とするため、詳細な説明を省略する。
【0049】
電荷放出部判定部20は、ADコンバータ16が出力した第一信号Y1(u)の中から、上述した電荷放出部の範囲を判定し、この判定した電荷放出部を含む情報信号を、増減度合算出部28及び第二信号生成部24へ出力する。
増減度合算出部28は、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも前の信号と、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも後の信号との増減度合を算出し、この算出した増減度合を含む情報信号を、補間信号生成部22へ出力する。
【0050】
ここで、本実施形態では、一例として、増減度合算出部28の構成を、第一の傾きと第二の傾きを、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも前の信号と、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも後の信号との増減度合として算出する構成とする場合を説明する。この場合、第一の傾きは、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも前の信号から算出する傾きであり、第二の傾きは、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも後の信号から算出する傾きである。
【0051】
また、本実施形態では、一例として、増減度合算出部28の構成を、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも後の信号との増減度合として、前側増減度合と後側増減度合を算出する構成とする場合を説明する。ここで、前側増減度合は、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも前の信号の増減度合に基づく増減度合である。また、後側増減度合は、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも後の信号の増減度合に基づく増減度合である。
【0052】
補間信号生成部22は、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部の直前の信号と電荷放出部の直後の信号とを、電荷放出部における信号強度の変化を反映せずに連続させる補間信号を生成する。ここで、補間信号の生成は、電荷放出部判定部20が出力した情報信号が含む電荷放出部に基づき、第一信号Y1(u)のうち、電荷放出部の直前の信号を用いて行う。これに加え、本実施形態では、補間信号を、増減度合算出部28が算出した増減度合に基づいて生成する。
【0053】
ここで、本実施形態では、上述したように、増減度合算出部28の構成を、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも後の信号との増減度合として、前側増減度合と後側増減度合を算出する構成とする。このため、本実施形態では、一例として、補間信号生成部22の構成を、前側増減度合と後側増減度合との平均を用いて、補間信号を生成する構成とする場合を説明する。
また、補間信号生成部22は、生成した補間信号を含む情報信号を、第二信号生成部24へ出力する。
【0054】
第二信号生成部24は、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部の直前の信号と、補間信号と、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部の直後の信号とを連続させた第二信号Y2(u)を生成する。本実施形態の第二信号生成部24は、電荷放出部判定部20及び補間信号生成部22が出力した情報信号に基づいて、第二信号Y2(u)を生成する。
また、第二信号生成部24は、生成した第二信号Y2(u)を含む情報信号を、心肺機能測定部26へ出力する。
心肺機能測定部26は、第二信号生成部24が出力した情報信号が含む第二信号Y2(u)に基づき、被測定者の心肺機能を測定する。
【0055】
(ディジタル回路6が行う具体的な処理)
以下、図7を参照しつつ、図8から図10を用いて、ディジタル回路6が行う処理について、詳細に説明する。
なお、以下の説明では、上述した第一実施形態と同様、簡略化のために、ADコンバータ16がディジタル変換した第一信号Y1(u)の総データ数をU個とする。同様に、ディジタル出力部14が出力した電荷放出状態X(u)が「ON」であり、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部と判定した部分で連続するデータ数を、M個とする。また、U個のデータのうち、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部と判定した部分の前で連続するデータ数を、K個とする。さらに、U個のデータのうち、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部と判定した部分の後で連続するデータ数を、N個とする。
【0056】
以上により、上述した第一実施形態と同様、第一信号Y1(u)の総データ数を、上述したM個+K個+N個の合計であるU個とする。この総データ数(U個)は、上述した第一実施形態と同様、第一信号Y1(u)のデータとして、確実に得られている個数として扱う。
したがって、以下の説明は、上述した第一実施形態と同様、第一信号Y1(u)及び電荷放出状態X(u)として、共に、U個のデータが記憶領域18に保存されていることを前提に行う。
【0057】
図8は、ディジタル回路6が行う処理を示すタイムチャートであり、図9は、補間信号Y22(m)の詳細を示すグラフであり、図10は、ディジタル回路6が行う処理を示すフローチャートである。
図10中に示すように、ディジタル回路6が処理を開始(START)すると、まず、ステップS20において、記憶領域18が、第一信号Y1(u)と電荷放出状態X(u)を取得する。ステップS20において、記憶領域18が第一信号Y1(u)と電荷放出状態X(u)を取得すると、ディジタル回路6が行う処理は、ステップS22へ移行する。
【0058】
ここで、第一信号Y1(u)は、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)と、電荷放出部Y12(m)と、電荷放出部よりも後の信号Y13(n)からなる信号である。なお、第一信号Y1(u)は、図8中において、実線で示す線(Y11(k)からY12(m)を経由してY13(n)まで連続する線)に対応する。
第一信号Y1(u)の信号波形は、図8中に示すように、電荷放出状態X(u)の状態が「OFF」から「ON」となると、第一信号Y1(u)の信号強度が「0」レベルまで低下する波形となる。そして、電荷放出状態X(u)の状態が「ON」から「OFF」となると、第一信号Y1(u)の信号強度が「0」レベルから立ち上がる波形となる。すなわち、電荷放出部の信号強度は、常に「0」レベルである。
【0059】
このように、電荷放出状態X(u)の状態が「OFF」から「ON」となると、第一信号Y1(u)の信号強度が「0」レベルまで低下する。このため、電荷放出部(Y12(m))の前と後(Y11(k)とY13(n))の間において、信号強度が大幅に低下して、第一信号Y1(u)が滑らかに連続する信号では無くなり、第一信号Y1(u)の振幅がずれることとなる。
ステップS22では、電荷放出状態X(u)として保存されているU個のデータ(上述した「ON」及び「OFF」のデータ)に基づいて、第一信号Y1(u)のデータの中から、電荷放出部と電荷放出部ではない部分とを判別する。
【0060】
さらに、ステップS22では、電荷放出部よりも前のデータであるK個のデータを、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも前の信号Y11(k)として生成する。同様に、電荷放出部よりも後のデータであるN個のデータを、第一信号Y1(u)のうち電荷放出部よりも後の信号Y13(n)として生成する。ステップS22において、電荷放出部と電荷放出部ではない部分とを判別して、K個のデータを信号Y11(k)として生成し、N個のデータを信号Y13(n)として生成すると、ディジタル回路6が行う処理は、ステップS24へ移行する。
【0061】
ステップS24では、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)の増減度合(前側増減度合)と、電荷放出部よりも後の信号Y13(n)の増減度合(後側増減度合)を算出する。
ここで、本実施形態では、上述したように、電荷放出部よりも前の信号から算出する第一の傾きと、電荷放出部よりも後の信号から算出する第二の傾きを、増減度合として算出する。
したがって、本実施形態では、前側増減度合を、第一の傾きから算出し、後側増減度合を、第二の傾きから算出する。なお、第一の傾きを算出する際には、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)の最初と最後のデータを用いる。同様に、第二の傾きを算出する際には、電荷放出部よりも後の信号Y13(n)の最初と最後のデータを用いる。
【0062】
すなわち、第一の傾きSaを、以下の式(1)に示す値とし、第二の傾きSbを、以下の式(2)に示す値とする。
Sa=[Y11(K)−Y11(1)]/(K−1) … (1)
Sb=[Y13(N)−Y13(1)]/(N−1) … (2)
ここで、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)の最後のデータとは、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)のうち、電荷放出部Y12(m)の直前の値であり、上述したK個のデータである。ステップS24において、第一の傾きSa及び第二の傾きSbを算出すると、ディジタル回路6が行う処理は、ステップS26へ移行する。
【0063】
ステップS26では、ステップS24で算出した第一の傾きSa及び第二の傾きSbを用いて、M個のデータを持つ補間信号Y22(m)を生成する。
ここで、本実施形態では、上述したように、補間信号生成部22の構成を、前側増減度合と後側増減度合との平均を用いて、補間信号を生成する構成とする。したがって、ステップS26では、図9中に示すように、第一の傾きSaと第二の傾きSbとの平均の傾きであるScを算出し、この算出した平均の傾きScを用いて、補間信号Y22(m)を生成する。なお、平均の傾きScは、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)と、電荷放出部よりも後の信号Y13(n)の、両信号の特性を反映する値である。
【0064】
図9中に示すように、平均の傾きScを用いて生成した補間信号Y22(m)は、時間の経過に伴って信号強度が増加する信号である。なお、図9中に示すように、第一の傾きSaを用いて生成した補間信号Y22(m)と、第二の傾きSbを用いて生成した補間信号Y22(m)も、平均の傾きScを用いて生成した補間信号Y22(m)と同様、時間の経過に伴って信号強度が増加する信号である。
したがって、本実施形態の心肺機能測定装置1であれば、上述した第一実施形態の心肺機能測定装置1と比較して、時間の経過に伴う信号強度の増加度合いが大きい補間信号Y22(m)を生成することが可能となる(図3参照)。
【0065】
ステップS26において、補間信号Y22(m)を生成すると、ディジタル回路6が行う処理は、ステップS28へ移行する。
ステップS28では、電荷放出部よりも後の信号Y13(n)のうち電荷放出部Y12(m)の直後のデータを生成しているN個のデータに、補間信号Y22(m)のうち最後尾のデータを生成しているM個のデータを加算する。これにより、第二信号Y2(u)のうち、補間信号Y22(m)よりも後の信号Y23(n)を生成する。
さらに、ステップS28では、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)に、補間信号Y22(m)と、補間信号Y22(m)よりも後の信号Y23(n)を順番に連続させて、第二信号Y2(u)を生成する。すなわち、第二信号Y2(u)の総データ数を、第一信号Y1(u)と同様、上述したM個+K個+N個の合計であるU個とする。
【0066】
ここで、本実施形態の心肺機能測定装置1では、ステップS26において、上述した第一実施形態の心肺機能測定装置1よりも、時間の経過に伴う信号強度の増加度合いが大きい補間信号Y22(m)を生成する(図3参照)。これにより、本実施形態の心肺機能測定装置1では、上述した第一実施形態の心肺機能測定装置1と比較して、時間の経過に伴って信号強度が増加する第二信号Y2(u)を生成することが可能となる(図3参照)。
【0067】
以上により、ステップS28では、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)と、補間信号Y22(m)と、電荷放出部よりも後の信号Y13(n)の合計U個(U=K+M+N)のデータを用いて、信号強度が滑らかに連続する第二信号Y2(u)を生成する。ステップS28において、第二信号Y2(u)を生成すると、ディジタル回路6が行う処理は終了(END)する。
ここで、第二信号Y2(u)は、図8中において、実線で示す信号Y11(k)と、点線で示す補間信号Y22(m)と、一点鎖線で示す信号Y23(n)を順番に連続する線に対応する。
【0068】
(作用)
次に、図7から図10を参照しつつ、図11を用いて、本実施形態の心肺機能測定装置1が行なう作用について説明する。
図11は、本実施形態の心肺機能測定装置1の動作例を示すタイムチャートである。なお、図11中に示す各種の要素は、上述した第一実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
図11のタイムチャートは、上述した第一実施形態と同様、車両の走行時、における、第一信号Y1(u)及び第二信号Y2(u)の電圧の経時的な変化を示している。
【0069】
また、第一信号Y1(u)及び第二信号Y2(u)の検出方法と構成は、上述した第一実施形態と同様であるため、その説明を省略する。また、図11中における第一信号Y1(u)及び第二信号Y2(u)の示し方も、上述した第一実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
図11中に示すように、第二信号Y2(u)の最大振幅A2は、上述した第一実施形態と同様、第一信号Y1(u)の最大振幅A1よりも大きい値となる。
【0070】
ここで、本実施形態の心肺機能測定装置1であれば、上述した第一実施形態の心肺機能測定装置1よりも、時間の経過に伴う信号強度の増加度合いが大きい補間信号Y22(m)を生成することが可能である。これにより、本実施形態の心肺機能測定装置1では、上述した第一実施形態の心肺機能測定装置1と比較して、時間の経過に伴って信号強度が増加する第二信号Y2(u)を生成することが可能となる。
【0071】
したがって、本実施形態の心肺機能測定装置1であれば、上述した第一実施形態の心肺機能測定装置1よりも、第二信号Y2(u)の最大振幅A2を拡大することが可能となる(図5参照)。これにより、本実施形態の心肺機能測定装置1であれば、上述した第一実施形態の心肺機能測定装置1よりも高い分解能を得ることが可能となり、より詳細な信号の振幅を計測することが可能となる。
【0072】
以上により、ADコンバータ16は、第一信号検出手段に対応する。また、電荷放出部判定部20及びステップS22は、電荷放出部判定手段に対応する。また、増減度合算出部28及びステップS24は、増減度合算出手段に対応する。同様に、補間信号生成部22及びステップS26は、補間信号生成手段に対応する。また、第二信号生成部24及びステップS28は、第二信号生成手段に対応する。また、心肺機能測定部26は、心肺機能測定手段に対応する。
【0073】
(第二実施形態の効果)
本実施形態の心肺機能測定装置1であれば、上述した第一実施形態の効果に加え、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)増減度合算出部28が、電荷放出部よりも前の信号と電荷放出部よりも後の信号との増減度合を算出し、補間信号生成部22が、増減度合算出部28が算出した増減度合に基づいて、補間信号Y22(m)を生成する。
このため、上述した第一実施形態の心肺機能測定装置1よりも、時間の経過に伴う信号強度の増加度合いが大きい補間信号Y22(m)を生成することが可能となる。
その結果、上述した第一実施形態の心肺機能測定装置1と比較して、時間の経過に伴って信号強度が増加する第二信号Y2(u)を生成することが可能となる。これにより、比較的簡易かつ正確に、電荷を放出する動作の前後で発生する信号強度の振幅の誤りを、容易に抑制することが可能となる。
【0074】
(2)増減度合算出部28が、電荷放出部よりも前の信号から算出する第一の傾きSaと、電荷放出部よりも後の信号から算出する第二の傾きSbを、増減度合として算出する。
その結果、補間信号生成部22が生成する補間信号Y22(m)の正確性を向上させることが可能となる。
(3)増減度合算出部28が、電荷放出部よりも前の信号の増減度合に基づく前側増減度合と、電荷放出部よりも後の信号の増減度合に基づく後側増減度合を算出する。これに加え、補間信号生成部22が、前側増減度合と後側増減度合との平均を用いて、補間信号Y22(m)を生成する。
その結果、前側増減度合と後側増減度合との平均を用いずに補間信号Y22(m)を生成する場合よりも、補間信号生成部22が生成する補間信号Y22(m)の正確性を向上させることが可能となる。
【0075】
(変形例)
(1)本実施形態の心肺機能測定装置1では、増減度合算出部28が、前側増減度合と後側増減度合を算出し、補間信号生成部22が、前側増減度合と後側増減度合との平均を用いて、補間信号Y22(m)を生成する。しかしながら、補間信号生成部22の構成は、これに限定するものではない。すなわち、補間信号生成部22の構成を、例えば、図12及び図13中に示すように、前側増減度合(第一の傾きSa)と後側増減度合(第二の傾きSb)とを電荷放出部で接続して、補間信号Y22(m)を生成する構成としてもよい。なお、図12は、本実施形態の変形例における、ディジタル回路6が行う処理を示すタイムチャートである。また、図13は、本実施形態の変形例における、補間信号Y22(m)の詳細を示すグラフである。
この場合、前側増減度合と後側増減度合とを電荷放出部で接続せずに補間信号Y22(m)を生成する場合よりも、補間信号生成部22が生成する補間信号Y22(m)の正確性を向上させることが可能となる。
【0076】
(2)本実施形態の心肺機能測定装置1では、増減度合算出部28が、電荷放出部よりも前の信号から算出する第一の傾きSaと、電荷放出部よりも後の信号から算出する第二の傾きSbを、増減度合として算出する。しかしながら、増減度合算出部28の構成は、これに限定するものではない。すなわち、増減度合算出部28の構成を、第一の傾きSaの多項式近似式と、第二の傾きSbの多項式近似式を、増減度合として算出する構成としてもよい。すなわち、増減度合算出部28の構成は、第一の傾きSa、第一の傾きSaの多項式近似式、第二の傾きSb及び第二の傾きSbの多項式近似式のうち少なくとも一つを、増減度合として算出する構成であればよい。
【0077】
(3)本実施形態の心肺機能測定装置1では、第一の傾きSaを算出する際に、電荷放出部よりも前の信号Y11(k)の最初と最後のデータを用いたが、これに限定するものではない。すなわち、第一の傾きSaを算出する際に、例えば、信号Y11(k)の最後のデータと、最後のデータよりも前の近傍のデータを用いてもよい。同様に、第二の傾きを算出する際に、信号Y13(n)の最初のデータと、最初のデータよりも後の近傍のデータを用いてもよい。
【0078】
(4)本実施形態の心肺機能測定装置1では、第一の傾きSaと第二の傾きSbとの平均の傾きであるScを算出し、この算出した平均の傾きScを用いて、補間信号Y22(m)を生成したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、第一の傾きSaまたは第二の傾きSbのみを用いて、補間信号Y22(m)を生成してもよい。
また、測定方法についても、自宅のパソコン等の受信手段にソフトウェアをインストールして、計測する装置に、計測した信号をパソコンに送信する信号送信手段を有するように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 心肺機能測定装置
2 圧電フィルムセンサ
4 アナログ回路
6 ディジタル回路
8 増幅回路
10 フィルター回路
12 アナログスイッチ
14 ディジタル出力部
16 ADコンバータ(第一信号検出手段)
18 記憶領域
20 電荷放出部判定部(電荷放出部判定手段、送信手段及び受信手段)
22 補間信号生成部(補間信号生成手段)
24 第二信号生成部(第二信号生成手段)
26 心肺機能測定部(心肺機能測定手段)
28 増減度合算出部(増減度合算出手段)
V 車両
SW 操作子
PS 電荷放出用パルス信号
Y1(u) 第一信号
X(u) 電荷放出状態
Y2(u) 第二信号
A1 第一信号Y1(u)の最大振幅
A2 第二信号Y2(u)の最大振幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者が接触する圧電フィルムセンサからの信号に基づいて前記被測定者の心肺機能を測定する心肺機能測定装置であって、
前記圧電フィルムセンサからの信号を第一信号として検出する第一信号検出手段と、
前記第一信号検出手段が検出した前記第一信号のうち、少なくとも前記圧電フィルムセンサに蓄積した電荷を放出する部分を含む信号である電荷放出部の範囲を判定する電荷放出部判定手段と、
前記第一信号検出手段が検出した前記第一信号のうち、前記電荷放出部判定手段が判定した前記電荷放出部の直前の信号と電荷放出部の直後の信号とを、前記電荷放出部における信号強度の変化を反映せずに連続させる補間信号を生成する補間信号生成手段と、
前記電荷放出部判定手段が判定した前記電荷放出部の信号を前記補間信号生成手段が生成した補間信号に置き換えて、前記直前の信号と前記補間信号と前記直後の信号とを連続させた第二信号を生成する第二信号生成手段と、
前記第二信号生成手段が生成した第二信号に基づいて前記被測定者の心肺機能を測定する心肺機能測定手段と、を備えることを特徴とする心肺機能測定装置。
【請求項2】
前記第一信号検出手段が検出した前記第一信号のうち前記電荷放出部よりも前の信号と第一信号検出手段が検出した第一信号のうち電荷放出部よりも後の信号との増減度合を算出する増減度合算出手段を備え、
前記補間信号生成手段は、前記増減度合算出手段が算出した増減度合に基づいて前記補間信号を生成することを特徴とする請求項1に記載した心肺機能測定装置。
【請求項3】
前記増減度合算出手段は、前記第一信号検出手段が検出した前記第一信号のうち前記電荷放出部よりも前の信号から算出する第一の傾き、当該第一の傾きの多項式近似式、前記第一信号検出手段が検出した前記第一信号のうち前記電荷放出部よりも後の信号から算出する第二の傾き及び当該第二の傾きの多項式近似式のうち、少なくとも一つを前記増減度合として算出することを特徴とする請求項2に記載した心肺機能測定装置。
【請求項4】
前記増減度合算出手段は、前記第一信号検出手段が検出した前記第一信号のうち前記電荷放出部よりも前の信号の増減度合に基づく前側増減度合と、前記第一信号検出手段が検出した前記第一信号のうち前記電荷放出部よりも後の信号の増減度合に基づく後側増減度合と、を算出し、
前記補間信号生成手段は、前記前側増減度合と前記後側増減度合との平均を用いて前記補間信号を生成することを特徴とする請求項2または請求項3に記載した心肺機能測定装置。
【請求項5】
前記増減度合算出手段は、前記第一信号検出手段が検出した前記第一信号のうち前記電荷放出部よりも前の信号の増減度合に基づく前側増減度合と、前記第一信号検出手段が検出した前記第一信号のうち前記電荷放出部よりも後の信号の増減度合に基づく後側増減度合と、を算出し、
前記補間信号生成手段は、前記前側増減度合と前記後側増減度合とを前記電荷放出部で接続して前記補間信号を生成することを特徴とする請求項2または請求項3に記載した心肺機能測定装置。
【請求項6】
前記第一信号を、前記心肺機能の状態に基づく呼吸信号または心拍信号としたことを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載した心肺機能測定装置。
【請求項7】
前記圧電フィルムセンサは、前記被測定者の一呼吸の時間周期よりも短い時間間隔で前記蓄積した電荷を放出することを特徴とする請求項6に記載した心肺機能測定装置。
【請求項8】
前記圧電フィルムセンサは、前記被測定者の一心拍の時間周期よりも短い時間間隔で前記蓄積した電荷を放出することを特徴とする請求項6に記載した心肺機能測定装置。
【請求項9】
被測定者が接触する圧電フィルムセンサからの信号を検出して送信する送信手段と、送信された信号を受信して処理する受信手段と、に基づいて前記被測定者の心肺機能を測定する心肺機能測定方法であって、
前記送信手段は、前記圧電フィルムセンサからの信号を第一信号として検出して送信し、
前記受信手段は、前記送信手段から送信された第一信号を受信し、
前記第一信号のうち、少なくとも前記圧電フィルムセンサに蓄積した電荷を放出する部分を含む信号である電荷放出部の範囲を判定し、
前記第一信号のうち、前記電荷放出部の直前の信号と電荷放出部の直後の信号とを、前記電荷放出部における信号強度の変化を反映せずに連続させる補間信号を生成し、
前記電荷放出部の信号を前記補間信号に置き換えて、前記直前の信号と前記補間信号と前記直後の信号とを連続させた第二信号を生成し、
前記第二信号に基づいて前記被測定者の心肺機能を測定することを特徴とする心肺機能測定方法。
【請求項1】
被測定者が接触する圧電フィルムセンサからの信号に基づいて前記被測定者の心肺機能を測定する心肺機能測定装置であって、
前記圧電フィルムセンサからの信号を第一信号として検出する第一信号検出手段と、
前記第一信号検出手段が検出した前記第一信号のうち、少なくとも前記圧電フィルムセンサに蓄積した電荷を放出する部分を含む信号である電荷放出部の範囲を判定する電荷放出部判定手段と、
前記第一信号検出手段が検出した前記第一信号のうち、前記電荷放出部判定手段が判定した前記電荷放出部の直前の信号と電荷放出部の直後の信号とを、前記電荷放出部における信号強度の変化を反映せずに連続させる補間信号を生成する補間信号生成手段と、
前記電荷放出部判定手段が判定した前記電荷放出部の信号を前記補間信号生成手段が生成した補間信号に置き換えて、前記直前の信号と前記補間信号と前記直後の信号とを連続させた第二信号を生成する第二信号生成手段と、
前記第二信号生成手段が生成した第二信号に基づいて前記被測定者の心肺機能を測定する心肺機能測定手段と、を備えることを特徴とする心肺機能測定装置。
【請求項2】
前記第一信号検出手段が検出した前記第一信号のうち前記電荷放出部よりも前の信号と第一信号検出手段が検出した第一信号のうち電荷放出部よりも後の信号との増減度合を算出する増減度合算出手段を備え、
前記補間信号生成手段は、前記増減度合算出手段が算出した増減度合に基づいて前記補間信号を生成することを特徴とする請求項1に記載した心肺機能測定装置。
【請求項3】
前記増減度合算出手段は、前記第一信号検出手段が検出した前記第一信号のうち前記電荷放出部よりも前の信号から算出する第一の傾き、当該第一の傾きの多項式近似式、前記第一信号検出手段が検出した前記第一信号のうち前記電荷放出部よりも後の信号から算出する第二の傾き及び当該第二の傾きの多項式近似式のうち、少なくとも一つを前記増減度合として算出することを特徴とする請求項2に記載した心肺機能測定装置。
【請求項4】
前記増減度合算出手段は、前記第一信号検出手段が検出した前記第一信号のうち前記電荷放出部よりも前の信号の増減度合に基づく前側増減度合と、前記第一信号検出手段が検出した前記第一信号のうち前記電荷放出部よりも後の信号の増減度合に基づく後側増減度合と、を算出し、
前記補間信号生成手段は、前記前側増減度合と前記後側増減度合との平均を用いて前記補間信号を生成することを特徴とする請求項2または請求項3に記載した心肺機能測定装置。
【請求項5】
前記増減度合算出手段は、前記第一信号検出手段が検出した前記第一信号のうち前記電荷放出部よりも前の信号の増減度合に基づく前側増減度合と、前記第一信号検出手段が検出した前記第一信号のうち前記電荷放出部よりも後の信号の増減度合に基づく後側増減度合と、を算出し、
前記補間信号生成手段は、前記前側増減度合と前記後側増減度合とを前記電荷放出部で接続して前記補間信号を生成することを特徴とする請求項2または請求項3に記載した心肺機能測定装置。
【請求項6】
前記第一信号を、前記心肺機能の状態に基づく呼吸信号または心拍信号としたことを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載した心肺機能測定装置。
【請求項7】
前記圧電フィルムセンサは、前記被測定者の一呼吸の時間周期よりも短い時間間隔で前記蓄積した電荷を放出することを特徴とする請求項6に記載した心肺機能測定装置。
【請求項8】
前記圧電フィルムセンサは、前記被測定者の一心拍の時間周期よりも短い時間間隔で前記蓄積した電荷を放出することを特徴とする請求項6に記載した心肺機能測定装置。
【請求項9】
被測定者が接触する圧電フィルムセンサからの信号を検出して送信する送信手段と、送信された信号を受信して処理する受信手段と、に基づいて前記被測定者の心肺機能を測定する心肺機能測定方法であって、
前記送信手段は、前記圧電フィルムセンサからの信号を第一信号として検出して送信し、
前記受信手段は、前記送信手段から送信された第一信号を受信し、
前記第一信号のうち、少なくとも前記圧電フィルムセンサに蓄積した電荷を放出する部分を含む信号である電荷放出部の範囲を判定し、
前記第一信号のうち、前記電荷放出部の直前の信号と電荷放出部の直後の信号とを、前記電荷放出部における信号強度の変化を反映せずに連続させる補間信号を生成し、
前記電荷放出部の信号を前記補間信号に置き換えて、前記直前の信号と前記補間信号と前記直後の信号とを連続させた第二信号を生成し、
前記第二信号に基づいて前記被測定者の心肺機能を測定することを特徴とする心肺機能測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−120586(P2012−120586A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271736(P2010−271736)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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