心電信号検出装置、心臓治療装置および心電信号検出システム
【課題】正確な心電波形を記録するとともに、データ量を削減して消費電力を低減する。
【解決手段】心臓に配置された電極を介して検出された心電信号をディジタル信号に変換するA/D変換部14と、該A/D変換部14により変換された心電信号の特徴を抽出する特徴抽出部15と、該特徴抽出部15により抽出された心電信号の特徴に基づいてA/D変換部14のサンプリング周波数を変更するサンプリング制御部18と、A/D変換部14により変換された心電信号を記憶する記憶部22とを備える心電信号検出装置7を提供する。
【解決手段】心臓に配置された電極を介して検出された心電信号をディジタル信号に変換するA/D変換部14と、該A/D変換部14により変換された心電信号の特徴を抽出する特徴抽出部15と、該特徴抽出部15により抽出された心電信号の特徴に基づいてA/D変換部14のサンプリング周波数を変更するサンプリング制御部18と、A/D変換部14により変換された心電信号を記憶する記憶部22とを備える心電信号検出装置7を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電信号検出装置、心臓治療装置および心電信号検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、心電信号に含まれるR波の鋭さ値を演算してR波を精度よく特定するための心拍間隔計測装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、R波の位置を割り出すためにR波の前後の心電信号を使用して近似演算を行う心拍間隔検出装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−212006号公報
【特許文献2】特開平8−336502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の装置では、心電波形の内で、先鋭なピークを有することとなるR波を鋭さ値によって検出することに主眼をおいており、心電波形全体を正確に取得することはできないという不都合がある。
また、特許文献2の装置においても心拍間隔を検出することに主眼をおいているため、心電波形全体を正確に取得することはできない。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、正確な心電波形を記録することができるとともに、データ量を削減して消費電力を低減することができる心電信号検出装置、心臓治療装置および心電信号検出システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、心臓に配置された電極を介して検出された心電信号をディジタル信号に変換するA/D変換部と、該A/D変換部により変換された心電信号の特徴を抽出する特徴抽出部と、該特徴抽出部により抽出された心電信号の特徴に基づいて前記A/D変換部のサンプリング周波数を変更するサンプリング制御部と、前記A/D変換部により変換された心電信号を記憶する記憶部とを備える心電信号検出装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、心臓に配置された電極を介して検出された心電信号をA/D変換部によって、サンプリング制御部により設定されたサンプリング周波数に基づいてディジタル信号に変換し、変換された心電信号の特徴を特徴抽出部により抽出する。心電信号の特徴としては、心電信号のピーク位置や、ピーク間隔、ピークレベル等を挙げることができる。特徴抽出部が特定の心電信号の特徴を抽出すると、サンプリング制御部がその特徴に応じてサンプリング周波数を変更するので、心電信号が変化する重要な特徴部分については高いサンプリング周波数によってサンプリングを行い、不要な特徴部分については低いサンプリング周波数によってサンプリングを行うことで、正確な心電波形を得ながらデータ量を削減することができる。特にバッテリ駆動式の場合には、バッテリの消耗を抑えて、長時間にわたる検出を行うことができる。
【0008】
上記発明においては、前記特徴抽出部が、検出された心電信号のピークを抽出し、前記サンプリング制御部が、前記特徴抽出部により抽出された心電信号のピーク間隔に基づいて前記A/D変換部のサンプリング周波数を変更することとしてもよい。
心臓が正常な状態であるときには、R波のような心電信号のピークは、等間隔に発生するので、次に発生する心電信号のピークをある程度予測することができる。また、ピークを抽出するための閾値を小さく設定することで、細かい振動のピークを検出して、心電波形の異常を検出することもできる。
【0009】
また、上記発明においては、前記特徴抽出部が、検出された心電信号におけるR波の特徴を抽出し、該特徴抽出部により抽出されたR波の特徴に基づいてR波の発生タイミングを予測するR波予測部を備え、前記サンプリング制御部が、前記R波予測部により予測されたR波の発生タイミングに基づいて前記A/D変換部のサンプリング周波数を変更することとしてもよい。
【0010】
このようにすることで、R波予測部により予測されたR波の発生タイミングに合わせて、サンプリング周波数を変更するので、R波が正常に発生している時にはR波の心電信号を詳細に検出し、R波が遅れて発生するときにも、R波が本来発生するであろう発生タイミングにおける心電波形を詳細に検出することが可能となる。
【0011】
また、上記発明においては、前記サンプリング制御部が、R波の発生タイミングの近傍におけるサンプリング周波数を、その他の時期におけるサンプリング周波数よりも高くなるように変更することとしてもよい。
このようにすることで、R波の発生タイミングにおけるサンプリング周波数をそれ以外の時期よりもサンプリング周波数を高めるように変更し、R波周辺の心電信号を詳細に検出し、それ以外の心電信号を粗く検出することができる。その結果、変化の大きなR波周辺の心電信号を細かく検出することで、心電波形を正確に検出し、変化の小さな期間の心電信号を粗く検出することで、データ量を減らして消費電力を低減することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記特徴抽出部により抽出された心電信号の特徴に基づいて、心電信号の異常を判別する異常判別部を備え、前記サンプリング制御部が、前記異常判別部により異常が判別された時点以降のサンプリング周波数をそれ以前よりも高くなるように変更することとしてもよい。
このようにすることで、異常が検出された時点以降の心電信号を詳細に検出して、心臓の診断の精度向上を図ることができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記特徴抽出部が、所定の閾値を超える心電信号を抽出し、前記異常判別部が、前記特徴抽出部により抽出された所定の閾値を超える心電信号によって心電信号が異常であると判別することとしてもよい。
このようにすることで、平常時より大きな心電信号の振動によって異常を判別することができ、異常時における心電信号を詳細に検出することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記記憶部が、前記A/D変換部により変換された心電信号と、該心電信号をディジタル信号に変換した際のサンプリング周波数に関する情報とを対応づけて記憶することとしてもよい。
このようにすることで、サンプリング周波数が変更されても、記憶部に記憶された心電信号を、対応づけて記憶されているサンプリング周波数に関する情報を用いて、時系列に並べて心電波形を正確に復元することが可能となる。
【0015】
また、上記発明においては、前記記憶部に記憶された心電信号とサンプリング周波数に関する情報とを外部に送信するデータ送信部を備えていてもよい。
このようにすることで、データ送信部によって外部に送信された心電信号とサンプリング周波数に関する情報とに基づいて、外部において心電波形を正確に復元することが可能となる。体内植え込み式の心電信号検出装置の場合に有効である。
【0016】
また、本発明は、上記いずれかの心電信号検出装置と、該心電信号検出装置により検出された心電信号に基づいて、心臓の状態を診断する診断部と、該診断部による診断結果に基づいて、心臓に刺激を与える刺激信号発生部とを備える心臓治療装置を提供する。
このようにすることで、心電信号検出装置によって精度よく検出された心電信号に基づいて、診断部が適切な診断を行うことができ、刺激信号発生部が適切な刺激を心臓に与えて、治療を施すことができる。
【0017】
上記発明においては、前記刺激信号発生部が、周期的なペーシング刺激信号または除細動刺激信号を出力することとしてもよい。
このようにすることで、診断部が、心臓の頻脈等の不整脈と診断した場合には心臓に周期的なペーシング刺激信号を与えて、脈拍を正常化することができる。また、診断部が、心臓が細動状態であると診断した場合には、心臓に除細動刺激信号を与えて、脈拍を回復させることができる。
【0018】
また、本発明は、上記心電信号検出装置と、外部装置とを備え、該外部装置が、前記心電信号検出装置のデータ送信部により心電信号検出装置の外部に送信された心電信号を受信するデータ受信部と、該データ受信部により受信した心電信号およびサンプリング周波数に関する情報に基づいて、心電波形を復元する心電波形復元部を備える心電信号検出システムを提供する。
【0019】
本発明によれば、心電信号検出部によって検出された心電信号およびサンプリング周波数に関する情報がデータ送信部によって外部に送信されると、外部装置に設けられたデータ受信部によってそれらの信号および情報が受信され、心電波形復元部によって心電波形に復元される。サンプリング周波数が変化するために検出時期が不定期になるが、心電信号に対応づけて送られたサンプリング周波数に関する情報に基づいて、心電信号を正しく時系列に並べることができ、正確な心電波形を復元することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、正確な心電波形を記録することができるとともに、データ量を削減して消費電力を低減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の一実施形態に係る心電信号検出装置、心臓治療装置および心電信号検出システムについて、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る心電信号検出システム1は、図1および図2に示されるように、体内に植え込まれる心臓治療装置2と、体外に配置される外部装置3とを備えている。
【0022】
心臓治療装置2は、図1に示されるように心臓Aの内部および心臓Aの外部に配置される電極4a,4b,4cと、該電極4a,4b,4cに配線5によって接続された装置本体6とを備えている。
心臓Aの内部に配置される電極4b,4cは、先端に配置され、心電信号を検出する一方ペーシング刺激信号を出力するためのペーシング電極4cと、除細動刺激信号を出力するための除細動電極4bとを備えている。
【0023】
装置本体6は、図2(a)に示されるように、電極4a〜4cからの心電信号を検出する本実施形態に係る心電信号検出装置7と、該心電信号検出装置7により検出された心電信号のピーク間隔に基づいて心臓Aの状態を診断する診断部8と、該診断部8による診断結果に応じて心臓刺激信号を発生する刺激信号発生部9と、心電信号検出装置7により検出された心電信号の電位レベルとサンプリング周波数に関する情報とを対応づけて記憶するメモリ10と、該メモリ10に記憶されたデータを送信する送信部11とを備えている。符号12はアンテナである。なお、装置本体6には図示しないバッテリが備えられており、各部に電力を供給するようになっている。
【0024】
心電信号検出装置7は、図3に示されるように、アンプ13、A/D変換部14、ピーク検出部15、ピーク間隔計測部16、メモリ17、サンプリング周波数発生部18、クロック19、間隔予測部20、信号レベル計測部21およびデータ生成部22を備えている。
アンプ13は、ペーシング電極4cにより検出された心電信号を増幅するようになっている。
A/D変換部14は、アンプ13により増幅された心電信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてディジタル信号に変換するようになっている。
【0025】
ピーク検出部15は、A/D変換部14によりサンプリングされた心電信号に現れるピークを検出するようになっている。
ピーク間隔計測部16は、ピーク検出部15により検出された心電信号のピーク間隔を計測するようになっている。
メモリ17は、ピーク間隔計測部16により計測されたピーク間隔の履歴を記憶するようになっている。
【0026】
サンプリング周波数発生部18は、後述する間隔予測部20および信号レベル計測部21からの指令に基づいて、A/D変換部14のサンプリング周波数を発生するようになっている。間隔予測部20および信号レベル計測部21からの指令が異なる場合には、いずれか高いほうのサンプリング周波数指令が優先されるようになっている。
クロック19は、サンプリング周波数発生部18により発生するサンプリング周波数の基本となるクロック信号を発生するようになっている。
【0027】
間隔予測部20は、メモリ17に記憶されたピーク間隔の履歴に基づいて、次のピーク間隔を予測し、サンプリング周波数発生部18により発生するサンプリング周波数を指令するようになっている。具体的には、メモリ17に記憶された過去のピーク間隔の履歴から複数回のピーク間隔を平均して次のピーク間隔を予測し、次のピークの所定時間前からピークによる信号レベルの変動が終了する期間にわたってサンプリング周波数を高く(例えば5ms)設定し、それ以外の期間においてはサンプリング周波数を低く(例えば20ms)に設定するようになっている。また、間隔予測部20は、予測されたピーク間隔で次のピークが現れない場合に、サンプリング周波数を高く設定する期間を延長するようになっている。
【0028】
信号レベル計測部21は、A/D変換部14によりサンプリングされた心電信号のレベル変化を計測し、サンプリング周波数が低く設定されている期間内において、所定の閾値を超えて変化する場合に、サンプリング周波数を高く設定するようになっている。
データ生成部22は、A/D変換部14により出力された心電信号と、間隔予測部20または信号レベル計測部21により出力されたサンプリング周波数とを対応づけて出力するようになっている。
【0029】
診断部8は、ピーク間隔計測部16により計測されたピーク間隔に基づいて、頻脈等の不整脈であるか、あるいは細動状態であるか等の心臓Aの状態を診断するようになっている。
刺激信号発生部9は、診断部8による診断結果に応じてペーシング刺激信号あるいは除細動刺激信号を発生し、ペーシング電極4cあるいは除細動電極4bを介して心臓Aに出力するようになっている。
【0030】
外部装置3は、図2(b)に示されるように、装置本体6の送信部11から送られてきたデータを受信する受信部23と、受信部23により受信されたデータを記憶するメモリ24と、該メモリ24に記憶されたデータに基づいて心電波形を復元する心電波形復元部25と、該心電波形復元部25により復元された心電波形を表示あるいは印刷する表示部26とを備えている。符号27はアンテナである。
【0031】
このように構成された本実施形態に係る心電信号検出装置7、心臓治療装置2および心電信号検出システム1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る心臓治療装置2を使用するには、ペーシング電極4cおよび除細動電極4aを心臓内に配置し電極4cを心臓外に配置し、装置本体6を患者の体内に植え込む。
【0032】
まず、本実施形態に係る心電信号検出装置による心電信号の検出シーケンスについて図4および図5を参照して説明する。
初期状態において、サンプリング周波数は高く設定されている(ステップS1)。
心臓Aの拍動によって変動する心電信号は、ペーシング電極4cを介して心電信号検出装置7により検出される(ステップS2)。ペーシング電極4cを介して取得された心電信号は、アンプ13によって増幅された後、A/D変換部14によってサンプリングされディジタル信号に変換される(ステップS3)。
【0033】
ここで、サンプリング周波数が高く(例えば、5ms)設定されているか否かが判定され(ステップS4)、高く設定されている場合には、サンプリングされディジタル信号となった心電信号は、ピーク検出部15によって検出された心電信号がピークが否かが判定される(ステップS5)。ピークである場合には、ピーク間隔計測部16において、そのピークの時刻が記憶される(ステップS6)とともに、前回のピークとの時間間隔が計測される(ステップS7)。そして、計測されたピーク間隔に基づいて、間隔予測部20において次回のピーク時刻が予測され、そのピーク時刻から所定時間だけ先だつ時刻に次回の高サンプリング周波数でのサンプリング開始タイミングが設定される(ステップS8)。
【0034】
次いで、高サンプリング周波数でのサンプリング期間が終了したか否かが判定され(ステップS9)、終了した場合には、サンプリング期間中にピークが存在したか否かが判定され(ステップS10)、存在していなかった場合には、サンプリング期間が延長される(ステップS11)。
【0035】
サンプリング期間中にピークが存在していた場合には、信号レベル計測部21により前回の心電信号との差分が算出され(ステップS12)、算出された信号レベルの変化が所定の閾値以上であるか否かが判定される(ステップS13)。変化が小さい場合にはサンプリング周波数が低く(例えば,20ms)設定され(ステップS14)、変化が大きい場合にはサンプリング周波数が高く設定される(ステップS15)。
その後、心電信号の信号レベルとサンプリング周波数とがデータ生成部により対応づけられる(ステップS16)。そして、ステップS2からのステップが繰り返される。
【0036】
一方、ステップS4において、サンプリング周波数が低く設定されていると判定された場合には、高サンプリング周波数によるサンプリング開始タイミングか否かが判定され(ステップS17)、開始タイミングである場合には、サンプリング周波数が高く設定されるとともに、高サンプリング周波数でのサンプリング期間が設定される(ステップS18)。そして、ステップS15に進行する。
【0037】
ステップS17において、高サンプリング周波数によるサンプリング開始タイミングではないと判定された場合には、信号レベル計測部21により前回の心電信号との差分が算出され(ステップS19)、算出された信号レベルの変化が所定の閾値以上であるか否かが判定される(ステップS20)。変化が小さい場合にはサンプリング周波数はそのまま維持され、変化が大きい場合にはステップS18に進む。
【0038】
図6は、上記フローチャートに従って2つのサンプリング周波数を切り替えてサンプリングされた心電信号を示すグラフである。この図によれば、信号レベルの変動の少ない期間においては、低サンプリング周波数でのサンプリングが行われ、高サンプリング周波数でのサンプリング開始タイミングから所定の期間(例えば、200ms)にわたって高サンプリング周波数でのサンプリングが行われている。その間に、次回の高サンプリング周波数でのサンプリング開始タイミングが計算され、期間終了後は低サンプリング周波数でのサンプリングが所定の期間(例えば、600ms)にわたって行われている様子が示されている。
【0039】
心電信号検出装置7からは、ピーク間隔計測部16において計測されたピーク間隔が診断部8に出力され、診断部8において、ピーク間隔に基づいて心臓Aの状態が診断され、刺激信号発生部9が、診断結果に応じて、ペーシング刺激あるいは除細動刺激を出力する。
【0040】
図7は、上記フローチャートに従って、設定された高サンプリング周波数でのサンプリング中にピークが存在しないと判定された場合に、高サンプリング周波数でのサンプリング期間が延長された心電信号を示すグラフである。図7では、さらに心電信号検出装置7から出力されたピーク間隔が予測されたピーク間隔より十分に大きい場合に診断部8がペーシング刺激を指令してペーシング刺激信号が出力された心電信号を示している。
【0041】
また、図8は、上記フローチャートに従って、設定された低サンプリング周波数でのサンプリング期間中に、信号レベル計測部21により前回の心電信号との差分が所定の閾値より大きいと判定された場合に、予測された高サンプリング周波数でのサンプリング期間よりも前に高サンプリング周波数でサンプリングされた心電信号を示している。
【0042】
心電信号検出装置7からは、サンプリングされた心電信号とサンプリング周波数とが関連づけられたデータがメモリ10に出力され、メモリ10において、診断部8から出力された診断結果と対応づけて記憶される。そして、このようにして対応づけられたデータは送信部11を介して体外に送信され、体外に配置されている外部装置3によって受信される。
【0043】
外部装置3において受信されたデータにはサンプリングされた心電信号とサンプリング周波数とが関連づけられているので、心電波形復元部25において、受信した心電信号を対応するサンプリング周波数に従って時系列に並べることにより、心電波形を簡易かつ精度よく復元することができる。復元された心電波形は表示部26に表示される。
【0044】
このように、本実施形態に係る心電信号検出装置7、心臓治療装置2および心電信号検出システム1によれば、心電信号のピーク間隔に基づいてA/D変換部14のサンプリング周波数が変更されるので、変動の大きなR波の周辺のみを細かくサンプリングし、それ以外の期間を粗くサンプリングして、データ量を削減し、かつ、心電波形を精度よく復元することを可能にしている。サンプリングするデータ量の削減により、A/D変換部14および送信部11における電力消費量を低減し、バッテリの消耗を抑制することができるという利点がある。
【0045】
なお、本実施形態においては、心電信号とサンプリング周波数とを対応づけて記憶することとしたが、これに代えて、サンプリング周波数と関連する情報、例えば、図9に示されるようにサンプリング周波数に対応づけられた制御コードを対応づけて記憶することにしてもよい。制御コードとしては、図9に示す例では1ビットのデータを採用しているが、2ビット以上でもよい。
【0046】
図10に1ビットの制御コードでサンプリング周波数を変化させて心電信号を取得した場合の心電波形、図11に2ビットの制御コードでサンプリング周波数を段階的に変化させて心電信号を取得した場合の心電波形を示す。さらに、図12には、1ビットの制御コードで、サンプリング周波数が変化する毎に5回のサンプリングずつサンプリング周波数を切り替えた場合の心電波形を示す。
【0047】
また、本実施形態においては、心臓治療装置2として、体内植え込み式のものを例示したが、これに代えて、体外装着式のポータブルな心臓治療装置に適用することにしてもよい。
また、本実施形態においては、心電信号検出装置が送信データを一時的に記憶する記憶部と、該記憶部に記憶された送信データを外部に送信する送信部11を備えることにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係る心電信号検出システムを示す模式図である。
【図2】図1の心電信号検出システムを示すブロック図であり、(a)本実施形態に係る心臓治療装置、(b)外部装置をそれぞれ示している。
【図3】図1の心電信号検出システムに備えられる心電信号検出装置を示すブロック図である。
【図4】図3の心電信号検出装置による心電信号の検出シーケンスを示す部分的なフローチャートである。
【図5】図4に続く検出シーケンスを示す部分的なフローチャートである。
【図6】図3の心電信号検出装置により検出された心電信号に基づいて復元された正常時の心電波形を示すグラフである。
【図7】図3の心電信号検出装置により検出された心電信号に基づいて復元されたピーク間隔が広がった場合の心電波形を示すグラフである。
【図8】図3の心電信号検出装置により検出された心電信号に基づいて復元された細動状態の心電波形を示すグラフである。
【図9】サンプリング周波数に関する情報として割り付けた1ビットの制御コードとサンプリング周波数との関係を示す図である。
【図10】1ビットの制御コードで2つのサンプリング周波数を切り替えて検出された心電信号に基づいて復元された正常時の心電波形を示すグラフである。
【図11】2ビットの制御コードで4つのサンプリング周波数を切り替えて検出された心電信号に基づいて復元された正常時の心電波形を示すグラフである。
【図12】1ビットの制御コードで4つのサンプリング周波数を段階的に切り替えて検出された心電信号に基づいて復元された正常時の心電波形を示すグラフである。
【符号の説明】
【0049】
A 心臓
1 心電信号検出システム
2 心臓治療装置
3 外部装置
4a〜4c 電極
7 心電信号検出装置
8 診断部
9 刺激信号発生部
11 送信部(データ送信部)
14 A/D変換部
15 ピーク検出部(特徴抽出部)
18 サンプリング周波数発生部(サンプリング制御部)
21 信号レベル計測部(異常判別部)
22 データ生成部(記憶部)
23 受信部(データ受信部)
25 心電波形復元部
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電信号検出装置、心臓治療装置および心電信号検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、心電信号に含まれるR波の鋭さ値を演算してR波を精度よく特定するための心拍間隔計測装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、R波の位置を割り出すためにR波の前後の心電信号を使用して近似演算を行う心拍間隔検出装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−212006号公報
【特許文献2】特開平8−336502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の装置では、心電波形の内で、先鋭なピークを有することとなるR波を鋭さ値によって検出することに主眼をおいており、心電波形全体を正確に取得することはできないという不都合がある。
また、特許文献2の装置においても心拍間隔を検出することに主眼をおいているため、心電波形全体を正確に取得することはできない。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、正確な心電波形を記録することができるとともに、データ量を削減して消費電力を低減することができる心電信号検出装置、心臓治療装置および心電信号検出システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、心臓に配置された電極を介して検出された心電信号をディジタル信号に変換するA/D変換部と、該A/D変換部により変換された心電信号の特徴を抽出する特徴抽出部と、該特徴抽出部により抽出された心電信号の特徴に基づいて前記A/D変換部のサンプリング周波数を変更するサンプリング制御部と、前記A/D変換部により変換された心電信号を記憶する記憶部とを備える心電信号検出装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、心臓に配置された電極を介して検出された心電信号をA/D変換部によって、サンプリング制御部により設定されたサンプリング周波数に基づいてディジタル信号に変換し、変換された心電信号の特徴を特徴抽出部により抽出する。心電信号の特徴としては、心電信号のピーク位置や、ピーク間隔、ピークレベル等を挙げることができる。特徴抽出部が特定の心電信号の特徴を抽出すると、サンプリング制御部がその特徴に応じてサンプリング周波数を変更するので、心電信号が変化する重要な特徴部分については高いサンプリング周波数によってサンプリングを行い、不要な特徴部分については低いサンプリング周波数によってサンプリングを行うことで、正確な心電波形を得ながらデータ量を削減することができる。特にバッテリ駆動式の場合には、バッテリの消耗を抑えて、長時間にわたる検出を行うことができる。
【0008】
上記発明においては、前記特徴抽出部が、検出された心電信号のピークを抽出し、前記サンプリング制御部が、前記特徴抽出部により抽出された心電信号のピーク間隔に基づいて前記A/D変換部のサンプリング周波数を変更することとしてもよい。
心臓が正常な状態であるときには、R波のような心電信号のピークは、等間隔に発生するので、次に発生する心電信号のピークをある程度予測することができる。また、ピークを抽出するための閾値を小さく設定することで、細かい振動のピークを検出して、心電波形の異常を検出することもできる。
【0009】
また、上記発明においては、前記特徴抽出部が、検出された心電信号におけるR波の特徴を抽出し、該特徴抽出部により抽出されたR波の特徴に基づいてR波の発生タイミングを予測するR波予測部を備え、前記サンプリング制御部が、前記R波予測部により予測されたR波の発生タイミングに基づいて前記A/D変換部のサンプリング周波数を変更することとしてもよい。
【0010】
このようにすることで、R波予測部により予測されたR波の発生タイミングに合わせて、サンプリング周波数を変更するので、R波が正常に発生している時にはR波の心電信号を詳細に検出し、R波が遅れて発生するときにも、R波が本来発生するであろう発生タイミングにおける心電波形を詳細に検出することが可能となる。
【0011】
また、上記発明においては、前記サンプリング制御部が、R波の発生タイミングの近傍におけるサンプリング周波数を、その他の時期におけるサンプリング周波数よりも高くなるように変更することとしてもよい。
このようにすることで、R波の発生タイミングにおけるサンプリング周波数をそれ以外の時期よりもサンプリング周波数を高めるように変更し、R波周辺の心電信号を詳細に検出し、それ以外の心電信号を粗く検出することができる。その結果、変化の大きなR波周辺の心電信号を細かく検出することで、心電波形を正確に検出し、変化の小さな期間の心電信号を粗く検出することで、データ量を減らして消費電力を低減することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記特徴抽出部により抽出された心電信号の特徴に基づいて、心電信号の異常を判別する異常判別部を備え、前記サンプリング制御部が、前記異常判別部により異常が判別された時点以降のサンプリング周波数をそれ以前よりも高くなるように変更することとしてもよい。
このようにすることで、異常が検出された時点以降の心電信号を詳細に検出して、心臓の診断の精度向上を図ることができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記特徴抽出部が、所定の閾値を超える心電信号を抽出し、前記異常判別部が、前記特徴抽出部により抽出された所定の閾値を超える心電信号によって心電信号が異常であると判別することとしてもよい。
このようにすることで、平常時より大きな心電信号の振動によって異常を判別することができ、異常時における心電信号を詳細に検出することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記記憶部が、前記A/D変換部により変換された心電信号と、該心電信号をディジタル信号に変換した際のサンプリング周波数に関する情報とを対応づけて記憶することとしてもよい。
このようにすることで、サンプリング周波数が変更されても、記憶部に記憶された心電信号を、対応づけて記憶されているサンプリング周波数に関する情報を用いて、時系列に並べて心電波形を正確に復元することが可能となる。
【0015】
また、上記発明においては、前記記憶部に記憶された心電信号とサンプリング周波数に関する情報とを外部に送信するデータ送信部を備えていてもよい。
このようにすることで、データ送信部によって外部に送信された心電信号とサンプリング周波数に関する情報とに基づいて、外部において心電波形を正確に復元することが可能となる。体内植え込み式の心電信号検出装置の場合に有効である。
【0016】
また、本発明は、上記いずれかの心電信号検出装置と、該心電信号検出装置により検出された心電信号に基づいて、心臓の状態を診断する診断部と、該診断部による診断結果に基づいて、心臓に刺激を与える刺激信号発生部とを備える心臓治療装置を提供する。
このようにすることで、心電信号検出装置によって精度よく検出された心電信号に基づいて、診断部が適切な診断を行うことができ、刺激信号発生部が適切な刺激を心臓に与えて、治療を施すことができる。
【0017】
上記発明においては、前記刺激信号発生部が、周期的なペーシング刺激信号または除細動刺激信号を出力することとしてもよい。
このようにすることで、診断部が、心臓の頻脈等の不整脈と診断した場合には心臓に周期的なペーシング刺激信号を与えて、脈拍を正常化することができる。また、診断部が、心臓が細動状態であると診断した場合には、心臓に除細動刺激信号を与えて、脈拍を回復させることができる。
【0018】
また、本発明は、上記心電信号検出装置と、外部装置とを備え、該外部装置が、前記心電信号検出装置のデータ送信部により心電信号検出装置の外部に送信された心電信号を受信するデータ受信部と、該データ受信部により受信した心電信号およびサンプリング周波数に関する情報に基づいて、心電波形を復元する心電波形復元部を備える心電信号検出システムを提供する。
【0019】
本発明によれば、心電信号検出部によって検出された心電信号およびサンプリング周波数に関する情報がデータ送信部によって外部に送信されると、外部装置に設けられたデータ受信部によってそれらの信号および情報が受信され、心電波形復元部によって心電波形に復元される。サンプリング周波数が変化するために検出時期が不定期になるが、心電信号に対応づけて送られたサンプリング周波数に関する情報に基づいて、心電信号を正しく時系列に並べることができ、正確な心電波形を復元することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、正確な心電波形を記録することができるとともに、データ量を削減して消費電力を低減することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の一実施形態に係る心電信号検出装置、心臓治療装置および心電信号検出システムについて、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る心電信号検出システム1は、図1および図2に示されるように、体内に植え込まれる心臓治療装置2と、体外に配置される外部装置3とを備えている。
【0022】
心臓治療装置2は、図1に示されるように心臓Aの内部および心臓Aの外部に配置される電極4a,4b,4cと、該電極4a,4b,4cに配線5によって接続された装置本体6とを備えている。
心臓Aの内部に配置される電極4b,4cは、先端に配置され、心電信号を検出する一方ペーシング刺激信号を出力するためのペーシング電極4cと、除細動刺激信号を出力するための除細動電極4bとを備えている。
【0023】
装置本体6は、図2(a)に示されるように、電極4a〜4cからの心電信号を検出する本実施形態に係る心電信号検出装置7と、該心電信号検出装置7により検出された心電信号のピーク間隔に基づいて心臓Aの状態を診断する診断部8と、該診断部8による診断結果に応じて心臓刺激信号を発生する刺激信号発生部9と、心電信号検出装置7により検出された心電信号の電位レベルとサンプリング周波数に関する情報とを対応づけて記憶するメモリ10と、該メモリ10に記憶されたデータを送信する送信部11とを備えている。符号12はアンテナである。なお、装置本体6には図示しないバッテリが備えられており、各部に電力を供給するようになっている。
【0024】
心電信号検出装置7は、図3に示されるように、アンプ13、A/D変換部14、ピーク検出部15、ピーク間隔計測部16、メモリ17、サンプリング周波数発生部18、クロック19、間隔予測部20、信号レベル計測部21およびデータ生成部22を備えている。
アンプ13は、ペーシング電極4cにより検出された心電信号を増幅するようになっている。
A/D変換部14は、アンプ13により増幅された心電信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングしてディジタル信号に変換するようになっている。
【0025】
ピーク検出部15は、A/D変換部14によりサンプリングされた心電信号に現れるピークを検出するようになっている。
ピーク間隔計測部16は、ピーク検出部15により検出された心電信号のピーク間隔を計測するようになっている。
メモリ17は、ピーク間隔計測部16により計測されたピーク間隔の履歴を記憶するようになっている。
【0026】
サンプリング周波数発生部18は、後述する間隔予測部20および信号レベル計測部21からの指令に基づいて、A/D変換部14のサンプリング周波数を発生するようになっている。間隔予測部20および信号レベル計測部21からの指令が異なる場合には、いずれか高いほうのサンプリング周波数指令が優先されるようになっている。
クロック19は、サンプリング周波数発生部18により発生するサンプリング周波数の基本となるクロック信号を発生するようになっている。
【0027】
間隔予測部20は、メモリ17に記憶されたピーク間隔の履歴に基づいて、次のピーク間隔を予測し、サンプリング周波数発生部18により発生するサンプリング周波数を指令するようになっている。具体的には、メモリ17に記憶された過去のピーク間隔の履歴から複数回のピーク間隔を平均して次のピーク間隔を予測し、次のピークの所定時間前からピークによる信号レベルの変動が終了する期間にわたってサンプリング周波数を高く(例えば5ms)設定し、それ以外の期間においてはサンプリング周波数を低く(例えば20ms)に設定するようになっている。また、間隔予測部20は、予測されたピーク間隔で次のピークが現れない場合に、サンプリング周波数を高く設定する期間を延長するようになっている。
【0028】
信号レベル計測部21は、A/D変換部14によりサンプリングされた心電信号のレベル変化を計測し、サンプリング周波数が低く設定されている期間内において、所定の閾値を超えて変化する場合に、サンプリング周波数を高く設定するようになっている。
データ生成部22は、A/D変換部14により出力された心電信号と、間隔予測部20または信号レベル計測部21により出力されたサンプリング周波数とを対応づけて出力するようになっている。
【0029】
診断部8は、ピーク間隔計測部16により計測されたピーク間隔に基づいて、頻脈等の不整脈であるか、あるいは細動状態であるか等の心臓Aの状態を診断するようになっている。
刺激信号発生部9は、診断部8による診断結果に応じてペーシング刺激信号あるいは除細動刺激信号を発生し、ペーシング電極4cあるいは除細動電極4bを介して心臓Aに出力するようになっている。
【0030】
外部装置3は、図2(b)に示されるように、装置本体6の送信部11から送られてきたデータを受信する受信部23と、受信部23により受信されたデータを記憶するメモリ24と、該メモリ24に記憶されたデータに基づいて心電波形を復元する心電波形復元部25と、該心電波形復元部25により復元された心電波形を表示あるいは印刷する表示部26とを備えている。符号27はアンテナである。
【0031】
このように構成された本実施形態に係る心電信号検出装置7、心臓治療装置2および心電信号検出システム1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る心臓治療装置2を使用するには、ペーシング電極4cおよび除細動電極4aを心臓内に配置し電極4cを心臓外に配置し、装置本体6を患者の体内に植え込む。
【0032】
まず、本実施形態に係る心電信号検出装置による心電信号の検出シーケンスについて図4および図5を参照して説明する。
初期状態において、サンプリング周波数は高く設定されている(ステップS1)。
心臓Aの拍動によって変動する心電信号は、ペーシング電極4cを介して心電信号検出装置7により検出される(ステップS2)。ペーシング電極4cを介して取得された心電信号は、アンプ13によって増幅された後、A/D変換部14によってサンプリングされディジタル信号に変換される(ステップS3)。
【0033】
ここで、サンプリング周波数が高く(例えば、5ms)設定されているか否かが判定され(ステップS4)、高く設定されている場合には、サンプリングされディジタル信号となった心電信号は、ピーク検出部15によって検出された心電信号がピークが否かが判定される(ステップS5)。ピークである場合には、ピーク間隔計測部16において、そのピークの時刻が記憶される(ステップS6)とともに、前回のピークとの時間間隔が計測される(ステップS7)。そして、計測されたピーク間隔に基づいて、間隔予測部20において次回のピーク時刻が予測され、そのピーク時刻から所定時間だけ先だつ時刻に次回の高サンプリング周波数でのサンプリング開始タイミングが設定される(ステップS8)。
【0034】
次いで、高サンプリング周波数でのサンプリング期間が終了したか否かが判定され(ステップS9)、終了した場合には、サンプリング期間中にピークが存在したか否かが判定され(ステップS10)、存在していなかった場合には、サンプリング期間が延長される(ステップS11)。
【0035】
サンプリング期間中にピークが存在していた場合には、信号レベル計測部21により前回の心電信号との差分が算出され(ステップS12)、算出された信号レベルの変化が所定の閾値以上であるか否かが判定される(ステップS13)。変化が小さい場合にはサンプリング周波数が低く(例えば,20ms)設定され(ステップS14)、変化が大きい場合にはサンプリング周波数が高く設定される(ステップS15)。
その後、心電信号の信号レベルとサンプリング周波数とがデータ生成部により対応づけられる(ステップS16)。そして、ステップS2からのステップが繰り返される。
【0036】
一方、ステップS4において、サンプリング周波数が低く設定されていると判定された場合には、高サンプリング周波数によるサンプリング開始タイミングか否かが判定され(ステップS17)、開始タイミングである場合には、サンプリング周波数が高く設定されるとともに、高サンプリング周波数でのサンプリング期間が設定される(ステップS18)。そして、ステップS15に進行する。
【0037】
ステップS17において、高サンプリング周波数によるサンプリング開始タイミングではないと判定された場合には、信号レベル計測部21により前回の心電信号との差分が算出され(ステップS19)、算出された信号レベルの変化が所定の閾値以上であるか否かが判定される(ステップS20)。変化が小さい場合にはサンプリング周波数はそのまま維持され、変化が大きい場合にはステップS18に進む。
【0038】
図6は、上記フローチャートに従って2つのサンプリング周波数を切り替えてサンプリングされた心電信号を示すグラフである。この図によれば、信号レベルの変動の少ない期間においては、低サンプリング周波数でのサンプリングが行われ、高サンプリング周波数でのサンプリング開始タイミングから所定の期間(例えば、200ms)にわたって高サンプリング周波数でのサンプリングが行われている。その間に、次回の高サンプリング周波数でのサンプリング開始タイミングが計算され、期間終了後は低サンプリング周波数でのサンプリングが所定の期間(例えば、600ms)にわたって行われている様子が示されている。
【0039】
心電信号検出装置7からは、ピーク間隔計測部16において計測されたピーク間隔が診断部8に出力され、診断部8において、ピーク間隔に基づいて心臓Aの状態が診断され、刺激信号発生部9が、診断結果に応じて、ペーシング刺激あるいは除細動刺激を出力する。
【0040】
図7は、上記フローチャートに従って、設定された高サンプリング周波数でのサンプリング中にピークが存在しないと判定された場合に、高サンプリング周波数でのサンプリング期間が延長された心電信号を示すグラフである。図7では、さらに心電信号検出装置7から出力されたピーク間隔が予測されたピーク間隔より十分に大きい場合に診断部8がペーシング刺激を指令してペーシング刺激信号が出力された心電信号を示している。
【0041】
また、図8は、上記フローチャートに従って、設定された低サンプリング周波数でのサンプリング期間中に、信号レベル計測部21により前回の心電信号との差分が所定の閾値より大きいと判定された場合に、予測された高サンプリング周波数でのサンプリング期間よりも前に高サンプリング周波数でサンプリングされた心電信号を示している。
【0042】
心電信号検出装置7からは、サンプリングされた心電信号とサンプリング周波数とが関連づけられたデータがメモリ10に出力され、メモリ10において、診断部8から出力された診断結果と対応づけて記憶される。そして、このようにして対応づけられたデータは送信部11を介して体外に送信され、体外に配置されている外部装置3によって受信される。
【0043】
外部装置3において受信されたデータにはサンプリングされた心電信号とサンプリング周波数とが関連づけられているので、心電波形復元部25において、受信した心電信号を対応するサンプリング周波数に従って時系列に並べることにより、心電波形を簡易かつ精度よく復元することができる。復元された心電波形は表示部26に表示される。
【0044】
このように、本実施形態に係る心電信号検出装置7、心臓治療装置2および心電信号検出システム1によれば、心電信号のピーク間隔に基づいてA/D変換部14のサンプリング周波数が変更されるので、変動の大きなR波の周辺のみを細かくサンプリングし、それ以外の期間を粗くサンプリングして、データ量を削減し、かつ、心電波形を精度よく復元することを可能にしている。サンプリングするデータ量の削減により、A/D変換部14および送信部11における電力消費量を低減し、バッテリの消耗を抑制することができるという利点がある。
【0045】
なお、本実施形態においては、心電信号とサンプリング周波数とを対応づけて記憶することとしたが、これに代えて、サンプリング周波数と関連する情報、例えば、図9に示されるようにサンプリング周波数に対応づけられた制御コードを対応づけて記憶することにしてもよい。制御コードとしては、図9に示す例では1ビットのデータを採用しているが、2ビット以上でもよい。
【0046】
図10に1ビットの制御コードでサンプリング周波数を変化させて心電信号を取得した場合の心電波形、図11に2ビットの制御コードでサンプリング周波数を段階的に変化させて心電信号を取得した場合の心電波形を示す。さらに、図12には、1ビットの制御コードで、サンプリング周波数が変化する毎に5回のサンプリングずつサンプリング周波数を切り替えた場合の心電波形を示す。
【0047】
また、本実施形態においては、心臓治療装置2として、体内植え込み式のものを例示したが、これに代えて、体外装着式のポータブルな心臓治療装置に適用することにしてもよい。
また、本実施形態においては、心電信号検出装置が送信データを一時的に記憶する記憶部と、該記憶部に記憶された送信データを外部に送信する送信部11を備えることにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係る心電信号検出システムを示す模式図である。
【図2】図1の心電信号検出システムを示すブロック図であり、(a)本実施形態に係る心臓治療装置、(b)外部装置をそれぞれ示している。
【図3】図1の心電信号検出システムに備えられる心電信号検出装置を示すブロック図である。
【図4】図3の心電信号検出装置による心電信号の検出シーケンスを示す部分的なフローチャートである。
【図5】図4に続く検出シーケンスを示す部分的なフローチャートである。
【図6】図3の心電信号検出装置により検出された心電信号に基づいて復元された正常時の心電波形を示すグラフである。
【図7】図3の心電信号検出装置により検出された心電信号に基づいて復元されたピーク間隔が広がった場合の心電波形を示すグラフである。
【図8】図3の心電信号検出装置により検出された心電信号に基づいて復元された細動状態の心電波形を示すグラフである。
【図9】サンプリング周波数に関する情報として割り付けた1ビットの制御コードとサンプリング周波数との関係を示す図である。
【図10】1ビットの制御コードで2つのサンプリング周波数を切り替えて検出された心電信号に基づいて復元された正常時の心電波形を示すグラフである。
【図11】2ビットの制御コードで4つのサンプリング周波数を切り替えて検出された心電信号に基づいて復元された正常時の心電波形を示すグラフである。
【図12】1ビットの制御コードで4つのサンプリング周波数を段階的に切り替えて検出された心電信号に基づいて復元された正常時の心電波形を示すグラフである。
【符号の説明】
【0049】
A 心臓
1 心電信号検出システム
2 心臓治療装置
3 外部装置
4a〜4c 電極
7 心電信号検出装置
8 診断部
9 刺激信号発生部
11 送信部(データ送信部)
14 A/D変換部
15 ピーク検出部(特徴抽出部)
18 サンプリング周波数発生部(サンプリング制御部)
21 信号レベル計測部(異常判別部)
22 データ生成部(記憶部)
23 受信部(データ受信部)
25 心電波形復元部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓に配置された電極を介して検出された心電信号をディジタル信号に変換するA/D変換部と、
該A/D変換部により変換された心電信号の特徴を抽出する特徴抽出部と、
該特徴抽出部により抽出された心電信号の特徴に基づいて前記A/D変換部のサンプリング周波数を変更するサンプリング制御部と、
前記A/D変換部により変換された心電信号を記憶する記憶部とを備える心電信号検出装置。
【請求項2】
前記特徴抽出部が、検出された心電信号のピークを抽出し、
前記サンプリング制御部が、前記特徴抽出部により抽出された心電信号のピーク間隔に基づいて前記A/D変換部のサンプリング周波数を変更する請求項1に記載の心電信号検出装置。
【請求項3】
前記特徴抽出部が、検出された心電信号におけるR波の特徴を抽出し、
該特徴抽出部により抽出されたR波の特徴に基づいてR波の発生タイミングを予測するR波予測部を備え、
前記サンプリング制御部が、前記R波予測部により予測されたR波の発生タイミングに基づいて前記A/D変換部のサンプリング周波数を変更する請求項1に記載の心電信号検出装置。
【請求項4】
前記サンプリング制御部が、R波の発生タイミングの近傍におけるサンプリング周波数を、その他の時期におけるサンプリング周波数よりも高くなるように変更する請求項3に記載の心電信号検出装置。
【請求項5】
前記特徴抽出部により抽出された心電信号の特徴に基づいて、心電信号の異常を判別する異常判別部を備え、
前記サンプリング制御部が、前記異常判別部により異常が判別された時点以降のサンプリング周波数をそれ以前よりも高くなるように変更する請求項1に記載の心電信号検出装置。
【請求項6】
前記特徴抽出部が、所定の閾値を超える心電信号を抽出し、
前記異常判別部が、前記特徴抽出部により抽出された所定の閾値を超える心電信号によって心電信号が異常であると判別する請求項5に記載の心電信号検出装置。
【請求項7】
前記記憶部が、前記A/D変換部により変換された心電信号と、該心電信号をディジタル信号に変換した際のサンプリング周波数に関する情報とを対応づけて記憶する請求項1に記載の心電信号検出装置。
【請求項8】
前記記憶部に記憶された心電信号とサンプリング周波数に関する情報とを外部に送信するデータ送信部を備える請求項7に記載の心電信号検出装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の心電信号検出装置と、
該心電信号検出装置により検出された心電信号に基づいて、心臓の状態を診断する診断部と、
該診断部による診断結果に基づいて、心臓に刺激を与える刺激信号発生部とを備える心臓治療装置。
【請求項10】
前記刺激信号発生部が、周期的なペーシング刺激信号または除細動刺激信号を出力する請求項9に記載の心臓治療装置。
【請求項11】
請求項8に記載の心電信号検出装置と、外部装置とを備え、
該外部装置が、前記心電信号検出装置のデータ送信部により心電信号検出装置の外部に送信された心電信号を受信するデータ受信部と、該データ受信部により受信した心電信号およびサンプリング周波数に関する情報に基づいて、心電波形を復元する心電波形復元部を備える心電信号検出システム。
【請求項1】
心臓に配置された電極を介して検出された心電信号をディジタル信号に変換するA/D変換部と、
該A/D変換部により変換された心電信号の特徴を抽出する特徴抽出部と、
該特徴抽出部により抽出された心電信号の特徴に基づいて前記A/D変換部のサンプリング周波数を変更するサンプリング制御部と、
前記A/D変換部により変換された心電信号を記憶する記憶部とを備える心電信号検出装置。
【請求項2】
前記特徴抽出部が、検出された心電信号のピークを抽出し、
前記サンプリング制御部が、前記特徴抽出部により抽出された心電信号のピーク間隔に基づいて前記A/D変換部のサンプリング周波数を変更する請求項1に記載の心電信号検出装置。
【請求項3】
前記特徴抽出部が、検出された心電信号におけるR波の特徴を抽出し、
該特徴抽出部により抽出されたR波の特徴に基づいてR波の発生タイミングを予測するR波予測部を備え、
前記サンプリング制御部が、前記R波予測部により予測されたR波の発生タイミングに基づいて前記A/D変換部のサンプリング周波数を変更する請求項1に記載の心電信号検出装置。
【請求項4】
前記サンプリング制御部が、R波の発生タイミングの近傍におけるサンプリング周波数を、その他の時期におけるサンプリング周波数よりも高くなるように変更する請求項3に記載の心電信号検出装置。
【請求項5】
前記特徴抽出部により抽出された心電信号の特徴に基づいて、心電信号の異常を判別する異常判別部を備え、
前記サンプリング制御部が、前記異常判別部により異常が判別された時点以降のサンプリング周波数をそれ以前よりも高くなるように変更する請求項1に記載の心電信号検出装置。
【請求項6】
前記特徴抽出部が、所定の閾値を超える心電信号を抽出し、
前記異常判別部が、前記特徴抽出部により抽出された所定の閾値を超える心電信号によって心電信号が異常であると判別する請求項5に記載の心電信号検出装置。
【請求項7】
前記記憶部が、前記A/D変換部により変換された心電信号と、該心電信号をディジタル信号に変換した際のサンプリング周波数に関する情報とを対応づけて記憶する請求項1に記載の心電信号検出装置。
【請求項8】
前記記憶部に記憶された心電信号とサンプリング周波数に関する情報とを外部に送信するデータ送信部を備える請求項7に記載の心電信号検出装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の心電信号検出装置と、
該心電信号検出装置により検出された心電信号に基づいて、心臓の状態を診断する診断部と、
該診断部による診断結果に基づいて、心臓に刺激を与える刺激信号発生部とを備える心臓治療装置。
【請求項10】
前記刺激信号発生部が、周期的なペーシング刺激信号または除細動刺激信号を出力する請求項9に記載の心臓治療装置。
【請求項11】
請求項8に記載の心電信号検出装置と、外部装置とを備え、
該外部装置が、前記心電信号検出装置のデータ送信部により心電信号検出装置の外部に送信された心電信号を受信するデータ受信部と、該データ受信部により受信した心電信号およびサンプリング周波数に関する情報に基づいて、心電波形を復元する心電波形復元部を備える心電信号検出システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−94236(P2010−94236A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266544(P2008−266544)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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