説明

急性および慢性炎症性疾患治療用5−(4−メタンスルホニル−フェニル)−チアゾール誘導体

本発明は、TNF−アルファおよびIFN−ガンマから選択される少なくとも1種の炎症誘発性サイトカインの産生を阻害することによるか、あるいはIL−8ケモカインおよび/またはIL−10調節サイトカインを免疫調節することによる、式(I)の化合物:
【化8】


またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグおよび/もしくは溶媒和物の、急性または慢性炎症性疾患の治療用薬剤の調製における使用に関する。また、本発明は、式(I’) の新規化合物:
【化9】


またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグおよび/または溶媒和物、ならびに前記化合物を含んでなる医薬組成物に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−(4−メタンスルホニル−フェニル)−チアゾール由来の化合物の、急性および慢性炎症性疾患または状態、例えばリウマチ様関節炎を治療するための薬剤の調製における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫学は、自己と非自己との間の区別の科学的研究である。自己に対する許容の破壊が、自己免疫疾患の原因である。さらに、これまで自己免疫として考えられていなかった他の状態、例えば、移植、アムローム性動脈硬化症、敗血性および非敗血性の急性および慢性炎症性病状ならびに多くの他の疾病が、免疫細胞が介在した発症機序を示す。免疫炎症性エフェクター反応の活性化は、ほとんどの著者によれば、2つのシグナルに基づいていると考えられている:
−シグナル1は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に埋め込んだ同族抗原を認識するクローン抗原受容体(TCR−CD3 T細胞受容体複合体)のトリガーを意味する。B細胞において、細胞外可溶性または膜結合抗原が、免疫グロブリンCD79(Ig/CD79)クローン受容体複合体を架橋して、抗体分泌リンパ球系統にシグナル1を伝達する。
−アネルギーまたはクローン排除による寛容を回避するのには、抗原送達シグナル1の他に、第二のシグナルが必要である。シグナル2は、ヒト単球およびそれらの分裂系統後代のような、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)の表面で発現するCD86等の共刺激により伝達される。
【0003】
先天性免疫炎症反応において、危険信号が、パターン認識受容体(PRR)をトリガーする、微生物および自己改変抗原またはマイトジェンにより、促進される。PRRシグナル経路、例えばTLR4(グラム陰性壁バクテリアリポ多糖またはLPS)は、高レベルの共刺激表面分子(例えば、CD80またはCD86)の発現を伝達する。ひいては、共刺激リガンドCD80〜CD86は、ヘルパーT細胞の表面でCD28を架橋する。シグナル1(すなわち、抗CD3抗体架橋)+シグナル2(すなわち、特異的抗体によるCD28架橋)の組み合わせは、効率的な炎症性エフェクター免疫反応の自然条件に実験的に似ている。特に、認可された免疫抑制薬剤は、高レベルの共刺激の条件下での炎症誘発性サイトカインカスケードの活性化を阻害することから、多少問題がある。高レベルの共刺激の条件は、自己免疫疾患および数多くの他の重症急性および慢性炎症状態で生じる。
【0004】
APCは、エフェクター(すなわち、T細胞help、Th、細胞毒性、Th、抗体産生、B細胞)反応があるか、あるいは障害クローンにより介在された寛容反応(アネルギーまたはアポトーシスによる)があるかに強く影響するので、単に獲得した免疫系が免疫反応の種類を決定するのに不可欠なだけではない。また、APCは、それら自体がエフェクター即時免疫反応を送達できる。十分に裏付けされた例が、癌患者における単球による多量の腫瘍壊死因子アルファ(TNF−アルファ)の産生および放出である。これらの患者において、TNF−アルファは、インターロイキン8(IL−8)および他の炎症誘発性サイトカインの分泌にともなう血管内皮の増強反応および活性化ならびにプロコアギュラント活性を促進する。要するに、TNF−アルファは、癌壊死で血栓形成および虚血を促進する。これにより、カケクチンまたはTNF−アルファとして最初に定義されることとなった。しかしながら、TNF−アルファは、数多くの他の疾病状態に関与する多面的サイトカインである。単球で、LPSは、敗血症性ショックの発生に強く影響する多量のTNF−アルファの分泌をトリガーすることがあるという長年にわたる証拠がある。より最近では、不適切な多量のTNF−アルファの産生および分泌は、自己免疫炎症性疾患、例えば、リウマチ様関節炎、脊椎関節炎、クローン病、ブドウ膜炎および乾せんにおける治療標的として考えられる。したがって、抗TNF−アルファの使用は、これらの疾患を取り扱う最新の戦略(生物活性TNF−アルファの有効レベルが減少すると患者の状態を改善するのに役立つことがある)として現在広く考えられている。
【0005】
これに関連して、TNF−アルファ拮抗薬での治療から恩恵をうけることができる疾患の数が、急速に増加しており、例えば、アムローム性動脈硬化症、メタボリックシンドローム、脳炎、ウイルス肝炎、糸球体腎炎、他の例として、腫瘍および敗血症性ショックに対する不適切な炎症反応などがある。
【0006】
一部の体細胞により産生されるものの他に、TNF−アルファ産生には、単球およびTリンパ球の2つの主要源がある。獲得免疫反応の過程において、炎症誘発性指示的シナリオ下での危険信号に対するAPCの提示は、活性化Th細胞のサイトカイン分泌プロファイルをTh−1型に分極化する共刺激分子であるIL−12p70(p35およびp40のヘテロダイマー)の分泌をトリガーする。Th1細胞は、インターフェロンガンマ(IFN−ガンマ)分泌が真正のフットプリントである特徴的なサイトカインプロファイルを示す。これらの細胞は、多量のTNF−アルファも分泌する。
【0007】
Th1により産生されるIFN−ガンマは、炎症性疾患の理解において関連する数多くの効果を促進する。一方で、IFN−ガンマは、さらに単球を活性化し、そして一定の刺激によるTNF−アルファ分泌のレベルを増加する。他方で、IFN−ガンマは、TNF−アルファ受容体下流の強力なシグナル経路を促進する。要するに、IFN−ガンマは、抗ウイルス活性などのそれ自体の直接の効果の他に、MHC−IIにおける発現を増加し、そしてTNF−アルファのさらに強力な効果を増加することにより炎症および障害に寄与する。
【0008】
単球におけるTNF−アルファの産生またはTh1細胞におけるIFN−ガンマおよびTNF−アルファの産生により開始される炎症誘発性カスケードは、他の炎症誘発性サイトカイン経路、例えば、IL−8を介して増幅する。IL−8は、その最初の名称にもかかわらず、マクロファージおよび他の細胞型、例えば、上皮細胞により産生されるケモカインとして記載され、そして内皮細胞によっても合成され、したがって、CXCL8とも称される。好中性顆粒球はIL−8の主要な標的細胞であるが、比較的広範囲の細胞がこのケモカインに応答する(内皮細胞、マクロファージ、マスト細胞、ケラチン生成細胞)。IL−8の主要な機能は、その標的細胞(例えば、好中性顆粒球)における走化性を誘発することである。好中球において、移動および標的機能食作用に必要とされる一連の細胞−生理反応も、細胞内Ca2+、エクソサイトーシス(例えば、ヒスタミン放出)、呼吸バーストの増加のように誘発される。IL−8は、固有の免疫反応に関与するTLRを有する細胞により分泌されることができる。IL−8の主要な機能は、好中球を採用して抗原パターンTLRをトリガーする抗原を食菌することである。IL−8標的細胞を、内皮および他の標的組織に搬送することにより、IL−8は、生体防御における役割の他に、TNF−アルファ病原性の役割の多くを増殖および実行することに関与する。
【0009】
白血球遊走および帰還は、ケモカインおよびそれらの受容体だけでなく、多数の接着分子により調節される。それらのうち、セレクチンCD62Lは、リンパ節への白血球移動を防止するための治療標的として認められており、したがって、非ステロイド抗炎症性薬剤(NSAID)の生体内効果をランク付けするパラメータとして評価されている。
【0010】
数多くの免疫抑制剤および抗TNF−アルファ分子は、免疫細胞への細胞傷害効果を促進するか、または良好なエフェクター免疫反応に先立つクローン性増殖下にある増殖機構を阻害するので、正常免疫防御機構に影響する。
【0011】
細胞外空間分泌TNF−アルファ(細胞質膜挿入または分泌可溶性形態)の重要性に鑑みて、細胞外TNF−アルファと、TNF受容体Iおよび/またはTNF−受容体IIの両方との相互作用をブロックする治療剤を設計するために、多くの努力がなされた。ほとんどの関連する手法は、TNF−アルファを捕獲し、そして長期間の解離により、細胞受容体との炎症誘発性リガンド相互作用を防止する、可溶性デコイTNF−受容体の使用であった。
【0012】
第二の戦略は、同様に一定の疾病に関連する他の分子(リウマチ様関節炎における抗VEGF/抗TNF−アルファ)を標的とする、ヒト化抗ヒトTNF−アルファ抗体(通常のものまたはビス特異的単一鎖分子として生成されたもの)を産生することであった。上記した分子はTNF−アルファ拮抗薬であるが、それらは、細胞外分泌TNF−アルファの阻止に対する作用の機構を制限する。
【0013】
TNF−アルファ産生および分泌させる標的の、網羅的ではあるが完全ではないリストを示せば、以下のとおりである:a)TNF−アルファの転写発現を促進する分子;b)核から細胞質へのTNF−アルファ−RNA輸送およびRNAスプライシングを促進する分子;c)TNF−アルファ翻訳させるようにする分子;d)TNF−アルファ−mRNA安定性を調節する分子;e)プロ−TNF−アルファ表面形態が固定される膜へゴルジ小胞を向かわせる分子;f)TNF−アルファの分泌シェディングに関与するTNF−アルファ−転化酵素(TACE)などの分子;およびg)プロ−TNF−アルファの表面形態の内在化およびそのシグナル伝達を調節する分子。これらの全ては、TNF−アルファ産生および分泌の細胞標的を指す。
【0014】
TNF−アルファの産生をブロックする治療剤を設計する種々の手法が存在するが、TNF−アルファ産生だけではなく、IFN−ガンマである別の主要な炎症誘発性サイトカインの産生を選択的にブロックする新規な薬剤を提案することは非常に望ましいであろう。
【発明の概要】
【0015】
本発明者等は、驚くべきことに、式(I)の化合物が、急性および慢性炎症性疾患の病原性機構を制御するのに有効である可能性があり、したがって臨床に用いられる可能性のある、非常に興味深い免疫調節効果を複数示すことを見出した。特に、本発明において用いられる化合物は、リウマチ様関節炎などの慢性炎症性疾患を患う患者からの末梢血単核細胞(PBMC)によるTNF−アルファの産生を阻害する上に、T細胞刺激後の細胞によるIFN−ガンマ分泌を阻害することができた。さらに、式(I)の化合物は、ケモカイン(すなわち、IL−8)および調節サイトカイン(すなわち、IL−10)の分泌の生物反応プロファイルを調節することができ、それを健常と疾病において異なる方法でなすことができた。式(I)の化合物のこの免疫調節効果全体は、末梢血からの単核細胞に対する毒性効果と関連がなく、そしてさらに、増殖刺激後の活性化および増殖反応はこれらの化合物によって変化しなかった。
【0016】
唯一の小さな分子における、TNF−アルファおよびIFN−ガンマとしてのいくつかの炎症誘発サイトカインに対する阻害効果と、IL−8ケモカインおよび/またはIL−10調節サイトカインを変化させる可能性との組み合わせは、それらの全てが全身および器官特異的自己免疫疾患、移植、急性および慢性炎症性疾患、一部の代謝疾患および退行性疾患ならびにアムローム性動脈硬化症の病態生理に重要であることから、式(I)の化合物を、臨床および治療関連の種々の再プログラム化が可能であるレベルで、炎症誘発/調節サイトカインおよびケモカインのカスケードを標的とする免疫モジュレータの新しい分野に属するものとする。
【0017】
特に、免疫細胞は固着性であり、そして器官に入って生体組織を巡回し、疾病活動、標的器官および損傷の拡大に応じて、分布している病変部に濃縮して炎症状態に浸潤する。本発明において用いる化合物は、病態生理学的プロセスのある面を変えることが予想されるので、イメージング解析を使用して、受容体数、結合効率、受容体占有および薬剤プローブ濃度を特徴づけることができる。白血球の帰還特性を考えると、治療標的の検出は、同時に標的細胞の位置および病変部位についての情報をもたらたす。
【0018】
したがって、式(I)の化合物は、薬剤開発、臨床試験および個別化した医薬において、イメージングバイオマーカーとして使用される可能性もあり、これにより、薬物動態、分配および投薬についてだけでなく、臨床前および臨床試験において個別化反応パターンについての関連データの情報も提供することができる。後者により、臨床評価項目について有効で、信頼性があり、個別化した代理バイオマーカーを定義して、当業者に公知の明確なバイオイメージング技術用に最適化された、効果的な量の式(I)の化合物またはその医薬組成物の予後および個別化の評価を必要とする患者に投与することができる。
【0019】
第一の態様によれば、本発明は、式(I)の化合物:
【化1】

[式中、
は、水素、置換または未置換C〜Cアルキル、置換または未置換シクロアルキル、置換または未置換アリール、および置換または未置換ヘテロシクリルから選択されるものであり;
は、水素、置換または未置換C〜Cアルキル、置換または未置換シクロアルキルおよびN(R’R’’)(式中、R’およびR’’は、独立して、水素またはC〜Cアルキルである)から選択されるものであり;
はC〜Cアルキルラジカルである]
またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグおよび/もしくは溶媒和物の、TNF−アルファおよびIFN−ガンマから選択される少なくとも1種の炎症誘発性サイトカインの産生を阻害することによるか、あるいはIL−8ケモカインおよび/またはIL−10調節サイトカインを免疫調節することによる、急性または慢性炎症性疾患の治療用薬剤の調製における使用に関する。
【0020】
本発明の特定の態様によれば、急性または慢性炎症性疾患は、急性および慢性の血清陽性または血清陰性少関節炎および多発性関節炎、脊椎関節炎、糸球体腎炎、膠原病、尿細管間質性腎炎、メタボリックシンドローム、アムローム性動脈硬化症、変形性関節症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、多発性硬化症、脱髄疾患、髄膜炎、脳炎、髄膜脳炎、炎症性神経根障害および末梢神経障害、炎症性腸疾患、肝硬変、肝炎、心不全、虚血性疾患、腎不全、炎症性膀胱炎、良性前立腺過形成、前立腺炎、心筋炎、心膜炎、ブドウ膜炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、じんましん、乾せん、酒さ、アレルギー性鼻炎、敗血症、敗血症性ショック、多発器質不全、全身性自己免疫疾患、例えば、全身性エリテマトーデス、血管炎、皮膚筋炎、アミロイドシスもしくはサルコイドーシス、器官特異的自己免疫疾患、例えば、重症筋無力症、甲状腺炎もしくはインスリン症、臓器移植、感染および腫瘍誘発炎症、TNF−アルファ依存性細胞変性、壊死、アポプトーシス、移植片対宿主病、悪液質ならびにオートクリンおよびパラクリン病的細胞増殖から選択されるものである。
【0021】
これらの治療指標は、少なくとも異常免疫反応、免疫非調節、免疫性障害、免疫病因、免疫療法、免疫抑制または免疫調節生体反応の結果である。
【0022】
別の態様によれば、本発明は、式(I’)の化合物:
【化2】

[式中、
は、水素、置換または未置換C〜Cアルキル、置換または未置換シクロアルキル、置換または未置換アリールおよび置換または未置換ヘテロシクリルから選択されるものであり;
はC〜Cアルキルラジカルである]
またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグおよび/または溶媒和物に関する。
【0023】
第三の態様によれば、本発明により、前記で定義されている式(I’)の化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物ならびに少なくとも1種の薬学的に許容される担体、アジュバントおよび/またはビヒクルを含んでなる医薬組成物が提供される。
【0024】
本発明の別の態様は、薬剤として使用される、上で定義されている式(I’)の化合物に関する。
【0025】
最後に、本発明の別の態様は、上で定義されている式(I)の化合物の、免疫学的障害、標的細胞および標的分子を見つけるための、イメージング技術および薬理イメージング技術におけるイメージングバイオマーカーとしての使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】サイトメトリックビーズアレイ(CBA)の展開用の選択された微粒子の種々の蛍光特徴を示す。
【図2】化合物12による健常ボランティア(n=10)からのLPS刺激PBMCにおけるTNF−アルファ産生に対する影響を示す。カラムは、種々の実験条件で各試料においておこなわれた二重培養の中央値および標準誤差を表す。星印は、各実験条件についてのビヒクルに対する対応のデータの統計的に有意な差(p<0.05)を表す。
【図3】化合物12による健常ボランティア(n=13)からのLPS−刺激またはTCR/CD3+CD28刺激PBMCにおけるTNF−アルファ産生に対する影響を示す。カラムは、種々の実験条件で試料においておこなわれた二重培養の平均値および標準誤差を表す。星印は、種々の実験条件の各々についてのビヒクルに対する対応のデータの統計的に有意な差(p<0.05)を表す。
【図4】化合物12によるリウマチ様関節炎を患っている患者(n=7)からのPBMCにおけるTNF−アルファ産生に対する影響を示す。カラムは、種々の実験条件で各試料においておこなわれた二重培養の平均値および標準誤差を表す。星印は、各異なる実験条件についてのビヒクルに対する対応のデータの統計的に有意な差(p<0.05)を表す。
【図5】化合物12による健常ボランティア(n=13)からのPBMCにおけるIFN−ガンマ産生に対する影響を示す。カラムは、種々の実験条件で各試料においておこなわれた二重培養の平均値および標準誤差を表す。星印は、示された実験条件についてのビヒクルに対する対応のデータの統計的に有意な差(p<0.05)を表す。
【図6】化合物12によるリウマチ様関節炎を患っている患者(n=8)からのPBMCにおけるIFN−ガンマ産生に対する影響を示す。カラムは、種々の実験条件で各試料においておこなわれた二重培養の平均値および標準誤差を表す。星印は、種々の実験条件の各々についてのビヒクルに対する対応のデータの統計的に有意な差(p<0.05)を表す。
【図7】化合物12による健常ボランティア(n=13)からのPBMCにおけるIL−8産生に対する影響を示す。カラムは、種々の実験条件下での各試料においておこなわれた二重培養の平均値および標準誤差を表す。星印は、各実験条件についてのビヒクルに対する対応のデータの統計的に有意な差(p<0.05)を表す。
【図8】化合物12によるリウマチ様関節炎を患っている患者(n=8)からのPBMCにおけるIL−8産生に対する影響を示す。カラムは、種々の実験条件で各試料においておこなわれた二重培養の平均値および標準誤差を表す。星印は、各実験条件についてのビヒクルに対する対応のデータの統計的に有意な差(p<0.05)を表す。
【図9】化合物12による健常ボランティア(n=13)からのPBMCにおけるIL−10産生に対する影響を示す。カラムは、種々の実験条件下での各試料においておこなわれた二重培養の平均値および標準誤差を表す。統計的差はみられなかった。
【図10】化合物12によるリウマチ様関節炎を患っている患者(n=8)からのPBMCにおけるIL−10産生に対する影響を示す。カラムは、種々の実験条件で各試料においておこなわれた二重培養の平均値および標準誤差を表す。星印は、ビヒクルに対する対応の統計的に有意な差(p<0.05)を表す。
【図11】PHA、PHA+IL−2またはモノクローナル抗体抗CD3(T3)と抗CD28との組み合わせによる刺激の存在下または不存在下での健常ボランティア(n=8)からのPBMCの増殖反応に対する、化合物12(a)およびビヒクル(b)の影響を示す。
【図12】健常ボランティアからのPBMCのリンパ球(a)および単球(b)におけるCD62Lのシェディングに対する化合物12の影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に関連して使用する用語の意味を以下で詳細に説明する。
【0028】
用語「C〜Cアルキル」は、炭素原子および水素原子からなり、未飽和を含まず、そして単結合により分子の他の部分に結合した直鎖または分岐鎖炭化水素鎖ラジカルを指し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチルなどが挙げられる。C〜Cアルキルラジカルは、1つ以上の置換基、例えば、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、シアノ、アミノ、ニトロまたはアルキルチオで置換されていてもよい。
【0029】
用語「シクロアルキル」は、飽和または部分的に飽和しており、炭素原子と水素原子からのみなる安定な3員環または8員環ラジカルを指し、例えば、シクロヘキシルまたはシクロペンチルが挙げられる。明細書で特に断らない限り、用語「シクロアルキル」は、水素、C〜Cアルキルラジカル、ハロ、ヒドロキシル、−N(R)(R)(式中、RおよびRは独立して水素および直鎖または分岐鎖C〜Cアルキルラジカルからなる群から選択される)からなる群から独立的に選択される少なくとも1つの置換基により置換されていてもよいシクロアルキルラジカルを含むことを意味する。
【0030】
用語「アリール」は、炭素原子と水素原子のみからなる安定な5〜8員芳香族環ラジカルを指し、例えば、フェニルまたはシクロオクタテトラエンなどが挙げられる。明細書で特に断らない限り、用語「アリール」は、水素、C〜Cアルキルラジカル、ハロ、ヒドロキシル、−N(R)(R)(式中、RおよびRは独立して水素および直鎖または分岐鎖C〜Cアルキルラジカルからなる群から選択される)からなる群から独立的に選択される少なくとも1つの置換基により置換されていてもよいアリールラジカルを含むことを意味する。
【0031】
「ヘテロシクリル」は、炭素原子と、窒素、酸素およびイオウからなる群から選択される1〜5個のヘテロ原子とからなる安定な3〜8員環ラジカルを指す。本発明の目的のために、複素環は、部分的または完全に飽和または芳香族であることができる。このような複素環は、例えば、ピロリジン、ピリジン、チオフェン、フランなどがあるが、これらには限定されない。明細書で特に断らない限り、用語「ヘテロシクリル」は、水素、C〜Cアルキルラジカル、ハロ、ヒドロキシル、−N(R)(R)(式中、RおよびRは独立して水素および直鎖または分岐鎖C〜Cアルキルラジカルからなる群から選択される)からなる群から独立的に選択される少なくとも1個の置換基により置換されていてもよいヘテロシクリルラジカルを含むことを意味する。
【0032】
用語「ハロ」は、ブロモ、クロロ、ヨードまたはフルオロを指す。
【0033】
用語「急性および慢性血清陽性または血清陰性少関節炎および多発性関節炎」は、リウマチ性関節炎ならびに一次および二次シェーグレン症候群を含む陽性または陰性リウマチ因子を有する1〜数個の可動関節を含む滑膜炎をともなう疾患を指す。
【0034】
用語「脊椎関節症」は、仙腸関節および/または脊髄関節および/または末梢関節を含む、免疫病原的HLA−B27関連炎症性疾患を指し、ブドウ膜炎も含む。
【0035】
用語「糸球体腎炎」は、腎糸球体の炎症性障害を指す。
【0036】
用語「尿細管間質性腎炎」は、細管および腎間質を含む炎症性疾患を指す。
【0037】
用語「膠原病」は、全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚筋炎および強皮症を含む病原性免疫機構をともなう全身炎症性疾患を指す。
【0038】
用語「炎症性腸疾患」は、全身性であるか、あるいは全身性でない病原性免疫機構有する消化管の炎症性疾患を指し、クローン病および潰瘍性大腸炎などが挙げられる。
【0039】
用語「閉塞性肺疾患」は、フロー呼気ポリューム(FEV)の可逆性または不可逆性減少をともなう気管支疾患を指し、喘息および慢性閉塞性肺疾患などが挙げられる。
【0040】
用語「間質性肺疾患」は、肺間質を含む炎症性疾患を指す。
【0041】
用語「脱髄疾患」は、ミエリン溶解を引き起こす免疫病原性機構をともなう中枢神経系の炎症疾患を指し、多発性硬化症および眼性神経炎などが挙げられる。
【0042】
用語「髄膜炎、脳炎および髄膜脳炎」は、中枢神経系の髄膜および/または他の構造体の炎症性疾患を指す。
【0043】
用語「炎症性神経根障害および末梢神経障害」は、末梢神経系の炎症性疾患を指す。
【0044】
用語「炎症性膀胱炎」は、膀胱の炎症性疾患を指す。
【0045】
用語「良性前立腺過形成」は、前立腺の良性肥大および/または肥厚化を指す。
【0046】
用語「アトピー性皮膚炎、湿疹およびじんましん」は、IgEが関与するかあるいは関与しない免疫病原性機構を有するアレルギー性皮膚疾患を指す。
【0047】
用語「乾せん」は、免疫系病原性機構の過剰角化および紅斑性皮膚反応を指す。
【0048】
用語「酒さ」は、顔中央部上および頬、鼻または額の全域での紅斑(紅潮および赤み)により特徴付けられる、皮膚の一般的な炎症状態を指し、一般的ではないが頸部と胸部に影響することもある。
【0049】
用語「アレルギー性鼻炎」は、免疫過敏病原性機構の断続性(季節性とも称されることもある)または持続性(通年性とも称される)炎症性鼻粘膜疾患を指す。
【0050】
用語「敗血症、敗血症性ショックおよび多発器質不全」は、微生物因子および他の病因的因子に対する異常免疫反応により介在される全身炎症性疾患を指す。
【0051】
用語「サルコイドーシスおよびアミロイドシス」は、異常免疫反応が観察されることがある、器官および/または全身関与およびよく定義されていない病因の特発性免疫疾患を指す。
【0052】
用語「器官特異的自己免疫疾患」は、病因が明確でない器官の免疫系介在障害を指し、重症筋無力症、甲状腺炎、下垂体炎、副腎炎などが挙げられる。
【0053】
用語「臓器移植」は、移植細胞、組織および器官の拒絶の予防および治療を指す。
【0054】
「感染および腫瘍誘発炎症」は、微生物因子または癌刺激にともなう異常免疫反応を指す。
【0055】
用語「TNF−アルファ依存性細胞変性、アポトーシスまたは壊死」は、TNF−アルファにより誘発される組織変性または死を指す。
【0056】
用語「移植片対宿主病」は、移植細胞により誘発される炎症性免疫反応を指す。
【0057】
用語「悪液質」は、炎症性または腫瘍性疾患により誘発される全身食欲不振または栄養不良ならびに体重減少を指す。
【0058】
用語「アムローム性動脈硬化症」は、炎症細胞(ほとんどがマクロファージ細胞)および細胞破片(脂質含有)から構成されている動脈壁におけるアテロームまたは蓄積にともなう動脈の硬化を指す。
【0059】
用語「虚血性疾患」は、心臓および脳血管虚血を含む減少した組織酸素化および/または血液流にともなう器官の障害を指す。
【0060】
用語「オートクリンおよびパラクリン病的細胞増殖」は、サイトカイン調節活性化および細胞の増殖因子としてのTNF−アルファの細胞使用による悪性または良性疾患を指す。
【0061】
特に断らない限り、本発明において用いられる化合物は、1つ以上の同位体濃縮された原子が存在することだけが異なる化合物を含むことを意図している。例えば、水素がデューテリウムまたはトリチウムで置換されているか、または炭素が13Cまたは14C濃縮炭素または15N濃縮窒素で置換されていることを除いて、本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内のものである。
【0062】
用語「薬学的に許容される塩、溶媒和物またはそれらのプロドラッグ」は、レシピエントに投与したときに、本明細書に記載した化合物を直接的または間接的に提供できる塩、溶媒和物またはプロドラッグに関する。しかしながら、薬学的に許容されない塩も、薬学的に許容される塩の調製に有用であることがあることから、本発明の範囲内である。塩、プロドラッグおよび誘導体は、当該技術分野において公知の方法により調製できる。「薬学的に許容される」は、好ましくはヒトまたは動物に投与したときに、生理学的に許容され、典型的にはアレルギー反応または類似の好ましくない反応、例えば、胃疾患、めまいなど生じない分子成分および組成物にかかわる。用語「薬学的に許容される」は、連邦または州政府の監督官庁により承認されること、または動物およびより具体的にはヒトに使用するための米国薬局方または別の一般的に認識されている薬局方に含まれることを意味する。
【0063】
例えば、本明細書で上記した化合物の薬学的に許容される塩は、通常の科学的方法により、塩基性単位または酸性単位を含有する上記した化合物から合成される。このような塩は、一般的に、例えば、遊離酸または塩基形態のこれらの化合物を、化学量論量の好適な塩基または酸と、水中または有機溶媒中または水と有機溶媒との混合物中で反応させることにより調製する。非水性媒体、例えば、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルが、一般的に好ましい。酸付加塩として、例えば、鉱酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩が挙げられ、そして有機酸付加塩、例えば、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、りんご酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩およびp−トルエンスルホン酸塩が挙げられる。アルカリ性付加塩として、例えば、無機塩、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、マグネシウム、アルミニウムおよびリチウム、ならびに有機アルカリ塩、例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、N,N−ジアルキレンエタノールアミン、グルカミンおよび塩基性アミノ酸塩などが挙げられる。
【0064】
用語「プロドラッグ」は、本明細書にあっては、(医薬用途のために)物理化学的性質、例えば、溶解度またはバイオアベイラビリティを変化させるために、化学的誘導、例えば、被験者に投与後活性化合物自体を生じる活性化合物由来のエステルまたはエーテルなどの追加の化学基の置換または付加などの化学的誘導に附した化学的化合物として定義される。一定の活性化合物からプロドラッグを製造するための周知の方法の例は、当業者に知られており、例えば、Krogsgaard−Larsen等、薬剤設計および発見テキスト(Textbook of Drug Design and Discovery)、Taylor&Francis(April 2002)に記載されている。本発明によれば、用語「溶媒和物」は、別の分子(ほとんどの場合、極性溶媒)を非共有結合を介して結合して有しているいずれかの形態の本発明の化合物を意味すると理解される。溶媒和物としては、例えば、水和物およびアルコール和物、例えば、メタノール和物などが挙げられる。
【0065】
特に好ましいプロドラッグは、患者に投与(例えば、経口投与化合物はより迅速に血液に吸収できる)したときに本発明の化合物のバイオアベイラビリティを増加させるもの、または、生物学的区画(例えば、脳またはリンパ系)への初期化合物の分布を初期種に対して増加するものである。
【0066】
本発明で使用される化合物は、結晶形態、すなわち、遊離化合物または溶媒和物(例えば、水和物)などの多形体であってもよく、そして両方の形態が本発明の範囲内であることが理解される。溶媒化方法は、一般的に当該技術分野において公知である。好適な溶媒和物は、薬学的に許容される溶媒和物である。特定の実施態様によれば、溶媒和物は、水和物である。
【0067】
塩、溶媒和物およびプロドラッグは、当該技術分野において公知の方法により調製できる。薬学的に許容されない塩、溶媒和物またはプロドラッグも、薬学的に許容される塩、溶媒和物またはプロドラッグの調製に有用であることがあるので本発明の範囲内であることは分かるであろう。
【0068】
式(I)の化合物またはそれらの塩もしくは溶媒和物は、好ましくは薬学的に許容される形態または実質的に純粋な形態である。薬学的に許容される形態は、とりわけ希釈剤および賦形剤などの通常の医薬添加剤を除き、そして通常の投与量レベルで毒性であると考えられるいずれの物質も含むことなく、薬学的に許容される純度レベルを有するものとして理解される。薬剤用の純度レベルは、好ましくは50%超、より好ましくは70%超、さらに好ましくは90%超である。好ましい実施態様によれば、式(I)の化合物、またはその塩、溶媒和物またはプロドラッグは95%超である。
【0069】
上記した式(I)により示される本発明に使用される化合物は、キラル中心の存在による鏡像異性体または多重結合の存在による異性体(例えば、Z、E)を含むことができる。個々の異性体、鏡像異性体、ジアステレオ異性体およびそれらの混合物は、本発明の範囲内である。
【0070】
特定の実施態様によれば、式(I)の化合物を薬剤開発、臨床試験および個別化薬剤におけるイメージング技術および薬理イメージング技術またはバイオマーカーとしてそれらの代わりとして使用するために、式(I)の化合物を、蛍光または発光タグまたはフラグで標識することができ、このとき、当業者に公知の方法によりマーカーを導入することができる。
【0071】
本発明の特定の実施態様によれば、Rは置換または未置換C〜Cアルキルである。好ましくは、Rはメチルである。
【0072】
別の特定の実施態様によれば、Rは水素、置換または未置換C〜Cアルキル、置換または未置換シクロアルキルである。好ましくは、Rは置換または未置換シクロアルキルである。より好ましくは、Rはシクロペンチルである。
【0073】
さらに別の特定の実施態様によれば、Rはメチルである。
【0074】
別のさらに特定の実施態様によれば、本発明で使用される式(I)の化合物は、以下の化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグおよび/または溶媒和物から選択されるものである:
【化3】

【化4】

【化5】

【0075】
本発明において用いられる式(I)の化合物は、利用可能な合成手順により得ることができる。例えば、これらは、以下のスキームにまとめて示す方法により調製できる。
【化6】

【0076】
この方法は、まず化合物酢酸4−R−チオフェニルをエステル化して、そのメチルエステル誘導体を得ることを含んでなる。前記反応は、メチル化剤、例えば、MeIを使用して、塩、例えば、NaHCOの存在下で、あるいはメチル化剤としてMeOHを使用して、酸性媒体の存在下で実施できる。
【0077】
以下の工程において、メチルエステル誘導体(必要に応じて精製することなく)を、酸化剤、例えば、オキソンを用いてイオウ原子で酸化することにより、チオエーテル基からスルホン化合物を得る。
【0078】
続いてのNBSなどの薬剤によるハロゲン化により、エステル基のα位置でハロゲン化物を形成する。この化合物を種々のチオアミドにより加熱下で付加環化すると、高純度のR−置換5−(4−R−スルホニル−フェニル)−チアゾール−4−オールが得られる。
【0079】
付加環化に使用されるチオアミドは、J.Med.Chem(34)2158−2165、1991およびJ.Org.Chem.(65)、13、3973、2000に記載のLawesson試薬に対応するアミドから得られる。前記チオアミドには、Rが前記で定義されているような、水素、置換または未置換C〜Cアルキル、置換または未置換シクロアルキル、置換または未置換アリールおよび置換または未置換ヘテロシクリルから選択されるものである化合物などがある。
【0080】
ヒドロキシル基を介してRラジカルを導入することを、当業者に公知のいずれかの方法により実施して、本発明で使用される式(I)の化合物を得ることができる。特定の実施態様によれば、ヒドロキシル基を、式R−Hal、好ましくはR−Brのハロゲン化物と反応させて、式(I)の化合物を得る。
【0081】
上述した反応において使用される全ての反応剤は、市販されている。
【0082】
さらなる態様によれば、本発明により、式(I’)の化合物:
【化7】

[式中、
は、水素、置換または未置換C〜Cアルキル、置換または未置換シクロアルキル、置換または未置換アリール、および置換または未置換ヘテロシクリルから選択されるものであり;
は、C〜Cアルキルラジカルである]
またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグおよび/または溶媒和物が提供される。
【0083】
特定の実施態様によれば、Rは置換または未置換C〜Cアルキルである。好ましくは、Rはメチルである。
【0084】
別の特定の実施態様によれば、Rはメチルである。
【0085】
別の特定の実施態様によれば、本発明の式(I’)の化合物は、以下の化合物:
【化8】

またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグおよび/または溶媒和物から選択されるものである。
【0086】
さらに、本発明によれば、本発明による式(I’)の新規化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物ならびに少なくとも1種の薬学的に許容される担体、アジュバントおよび/またはビヒクルを含んでなる、患者への投与用医薬組成物が提供される。
【0087】
特定の実施態様によれば、急性または慢性炎症性疾患の予防および/または治療における投与のために、式(I)の化合物、それらの薬学的に許容される塩、プロドラッグおよび/または溶媒和物は、治療に有効な量で、1種以上の薬学的に許容される担体、アジュバントおよび/またはビヒクルとともに、好適な医薬組成物に製剤化される。
【0088】
用語「担体、アジュバントおよび/またはビヒクル」は、活性成分とともに投与する分子成分または物質を指す。このような医薬担体、アジュバントまたはビヒクルは、無菌液、例えば、水および油、例えば、石油由来のもの、または動物、植物または合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ごま油など、賦形剤、崩壊剤、湿潤剤または希釈剤であることができる。好適な医薬担体は、E.W. Martin、「Remingtonの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」に記載されている。
【0089】
医薬組成物は、いずれかの投与に好適な方法、例えば、経口投与、非経口投与(例えば、皮下投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与など)、直腸投与などにより投与でき、典型的には治療される疾患が慢性のため経口投与である。
【0090】
特定の実施態様によれば、前記医薬組成物は、固形状または液状の経口投与医薬形態であることができる。経口投与医薬形態の具体例として、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、溶液、懸濁剤などが挙げられ、通常の賦形剤、例えば、バインダー、希釈剤、崩壊剤、滑剤、湿潤剤などを含むことができ、そして通常の方法により調製できる。また、医薬組成物は、例えば、好適な剤形における無菌、凍結乾燥製品、懸濁剤また溶液の形態で、非経口投与用に適用させることもできる。この場合、前記医薬組成物は、好適な賦形剤、例えば、緩衝剤、界面活性剤などを含むであろう。いずれの場合においても、賦形剤は、選択された投与医薬形態に従って選択される。薬剤を投与するための種々の医薬形態が、C.Faulii Trillo、Tratado de Farmacia Galenica”、第10版、1993、Luzan 5、S.A. de Edicionesで検討されている。
【0091】
治療に適用するための式(I)の化合物は、好ましくは薬学的に許容されるまた実質的に純粋な医薬形態から選択される。すなわち、式(I)の化合物は、薬学的に許容される賦形剤を除いて薬学的に許容される純度レベルを有し、そして通常投与量レベルで毒性があると考えられる物質を含まない。式(I)の化合物についての純度レベルは、好ましくは50%超、より好ましくは70%超、より好ましくは90%超である。好ましい実施態様によれば、95%超である。
【0092】
投与される式(I)の化合物の治療に有効な量は、一般的に、とりわけ治療される個人、前記個人が患っている疾病の重症度、選択される投与方法などの因子により決まるであろう。このため、本発明において述べる投与量は、当業者の指針としてのみ考えなければならず、そしてその指針により、上記した変数により投与量を調整する必要がある。しかしながら、式(I)の化合物は、1日当たり1回以上、例えば、1日1回、2回、3回または4回で、1日の標準的な総投与量は0.1〜1000mg/kg体重/日、好ましくは10mg/kg体重/日であるように投与できる。
【0093】
式(I)の化合物、その薬学的に許容される塩、プロドラッグおよび/または溶媒和物ならびにそれらを含有する医薬組成物は、急性および慢性炎症性疾患を治療するのに有効である他のさらなる薬剤とともに使用することができる。前記さらなる薬剤は、同じ医薬組成物の一部を構成してもよいし、または式(I)の化合物またその薬学的に許容される塩、プロドラッグまた溶媒和物を含んでなる医薬組成物とは、別個の組成物の形態で提供して、同時または別個投与することもできる。
【0094】
本発明の範囲内において、表現「急性および慢性炎症性疾患」は、異常共刺激が発病機構である条件下で、炎症性/免疫細胞および炎症性サイトカインカスケードの活性化および病原性関与から生じる疾病、障害または状態に関する。関与する主要細胞は、治療のために提案された疾病に関与する、炎症性/免疫細胞、例えば、単球、マクロファージ、APC、T、Bおよびナチュラルキラー(NK)細胞、形質細胞、顆粒球およびマスト細胞、または上記細胞亜集団の組み合わせである。
【0095】
用語「サイトカイン」は、特に免疫系細胞または炎症性反応に関与する細胞間の相互作用の調節に関することから、他の細胞の機能に影響する分泌されたタンパク質を指す。前記サイトカインは、TNF−アルファ(腫瘍壊死因子−α)、IFN−ガンマ(インターフェロン−γ)、IL−8(インターロイキン−8)ケモカインおよび調節サイトカインIL−10(インターロイキン−10)である。IL−10産生は高TNF−アルファレベルにより誘発され、そしてTNF−アルファ産生、炎症誘発性サイトカイン転写の阻止による負のフィードバックを促進する。
【0096】
本発明の特定の態様によれば、急性または慢性炎症性疾患は、急性および慢性の血清陽性または血清陰性少関節炎および多発性関節炎、脊椎関節炎、糸球体腎炎、膠原病、尿細管間質性腎炎、メタボリックシンドローム、アムローム性動脈硬化症、変形性関節症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、多発性硬化症、脱髄疾患、髄膜炎、脳炎、髄膜脳炎、炎症性神経根障害および末梢神経障害、炎症性腸疾患、肝硬変、肝炎、心不全、虚血性疾患、腎不全、炎症性膀胱炎、良性前立腺過形成、前立腺炎、心筋炎、心膜炎、ブドウ膜炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、じんましん、乾せん、酒さ、アレルギー性鼻炎、敗血症、敗血症性ショック、多発器質不全、全身性自己免疫疾患、例えば、全身性エリテマトーデス、血管炎、皮膚筋炎、アミロイドシスもしくはサルコイドーシス、器官特異的自己免疫疾患、例えば、重症筋無力症、甲状腺炎もしくはインスリン症、臓器移植、感染および腫瘍誘発炎症、TNF−アルファ依存性細胞変性、壊死、アポプトーシス、移植片対宿主病、悪液質ならびにオートクリンおよびパラクリン病的細胞増殖から選択されるものである。
【0097】
好ましい実施態様によれば、急性または慢性炎症性疾患は、血清陽性または血清陰性慢性多発性関節炎、より好ましくはリウマチ様関節炎である。
【0098】
本発明の別の態様は、急性または慢性炎症性疾患を治療する方法であって、このような治療を必要とする患者に、治療に有効な量の上で定義されている式(I)の化合物またはその医薬組成物を投与することを含んでなる方法である。
【0099】
本明細書における用語「治療」または「治療する」は、疾病または前記疾病に関連した1つ以上の症状を予防、軽減または除去するための本発明による処方の化合物を投与することを意味する。また、「治療」は、疾病の生理学的続発症を予防、軽減または除去することを含む。
【0100】
本発明に関連する用語「軽減する」は、治療した患者の状況が、主観的(患者のまたは患者についての感じ)と客観的(測定されたパラメータ)の両方でのなんからの改善を意味すると理解される。
【0101】
本発明の別の態様は、上で定義された式(I)の化合物の、免疫学的障害、標的細胞および標的分子を見つけるための、イメージング技術および薬理イメージング技術におけるイメージングバイオマーカーとしての使用に関する。
【0102】
薬理イメージング技術は、急速に成長している適切な臨床前(分子、細胞、器官および動物全体トラッキング、および概念および機構、効力、評価等の証明の検討)および臨床(ヒト医療)生体内イメージング技術の組み合わせにより得られるバイオマーカーの範囲を、本明細書で記載され、薬剤として使用される化合物により得られる貴重な情報データに広げる。
【0103】
本発明を、さらに以下で実施例により説明する。実施例での説明は、特許請求の範囲で定義されている発明の範囲を限定するものであると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0104】
合成
実施例1:(4−メチルチオフェニル)−酢酸メチルエステルの合成
【化9】

【0105】
4−メチルチオフェニル酢酸1.82g(10mmol)を、DMF30mLに溶解した。次に、NaHCO1.34g(16mmol)を添加する。攪拌混合物を、約15分間攪拌する。次に、室温で24時間攪拌しながら、ICH 1.9mLを添加する。この時間が経過したら、混合物を水/氷に注ぐ。沈殿が生じなくなったら、エーテルを添加し、そして抽出する。有機相を、水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、有機相をロータリーエパポレーターで濃縮して、無色油状物を1.92g(9.7mmol,収率97%)得る。この生成物の分光分析データから、予測された構造が確認される。この生成物は、TLC(ジクロロメタン/メタノール=9/1で溶離)で単一の染色が得られるので、精製せずに、合成プロセスの次のステップで使用される。
【0106】
RMNH(CDCl):7.2(s,4H)3.7(s,3H)3.5(s,2H)2.4(s,3H HS)
RMN13C(CDCl):171.5,136.9 130.4 129.4 126.4 51.6 40.2 15.5
【0107】
実施例2:(4−メチルスルホニル−フェニル)−酢酸メチルエステルの合成
【化10】

【0108】
オキソン30.7g(50mmol)を水80mLに添加して調製した溶液を、メタノール100mLに実施例1で得られた化合物3.4g(17.3mmol)を添加して調製した溶液に、水/氷浴で反応させながら、少しずつ添加した。添加後、攪拌を5時間継続して、温度を室温とする。溶媒の一部分を減圧濃縮し、沈殿した固体を濾過し、水で繰り返し洗浄する。乾燥後、この固体を3g秤量する。濾液水をジクロロメタンで抽出する。有機相を水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエパポレーターで濃縮し、予想したよりもさらに1g多く得る(収量4g(17mmol、収率100%))。この固体を、57℃で分解しながら溶解する。その純度は、HPLCで分析すると99%である。分光分析データから、予測した構造であることが確認される。
【0109】
RMNH(CDCl):7.9(d,2H),7.5(d,2H),3.7(s,s3+2H),3.1(s,3H)
RMN13C(CDCl):170.80 140.13 139 130.33 127.63 52.31 44.49 40.82
【0110】
実施例3:ブロモ−(4−メチルスルホニル−フェニル)−酢酸メチルエステルの合成
【化11】

【0111】
前記エステル20g(87.62mmol)を、四塩化炭素300mLに溶解した。N−ブロモスクシンイミド19g(105mmol)、アゾビスイソブチロニトリル2g(12.18mmol)および臭素0.1mLを、分割して添加した。反応混合物を80℃で3時間加熱した後、冷却し、濾過し、ジクロロメタンで洗浄した。濾液を水洗した後、塩水で洗浄した。溶液を、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮して油状物28gを得た。それを、溶離剤としてヘプタン/酢酸エチル(1/1)を用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。より純粋な画分を濃縮して、ブロモ誘導体化合物19.63g(収率:72.94%)を得た。
【0112】
融点:81.8〜83.3℃
NMRH(CDCl):δ:7.9(d,2H),7.75(d,2H),5.4(s,1H),3.8(s,3H),3,1(s,3H)
NMR13C(CDCl),δ:168.0(C);141.6(C);141.1(C);129.8(CH);127.8(CH);53.7(CH);44.7(CH)および44.2(CH)ppm
【0113】
実施例4:2−メチル−5−(4−メチルスルホニル−フェニル)−チアゾール−4−オールの合成
【化12】

【0114】
実施例3で得られたエステル16.7g(54.3mmol)をトルエン400mLに溶解し、その後ピリジン19mLおよびチオアミド4.08g(54.34mmol)を添加した。反応混合物を、攪拌しながら80℃(浴温)で2時間加熱した。次に、混合物を放冷し、沈殿固体を濾取し、水洗(2x50mL)した後、エーテル(2x30mL)で洗浄した。生成物を真空乾燥して、融点216〜226℃のクリーム状固体7g(26mmol、収率47.86%)を得た。
【0115】
分光分析データから、生成物が、予想した生成物の構造であることが確認される。
【0116】
RMNH(dDMSO)δ:11.8(s,1H) 7.8(m,4H) 3.1(s,3H) 2.6(s,3H)ppm
RMN13C(dDMSO):162.9(C);159.4(C);146.2(C);143.0(C);128.0(CH);126.1(CH);104.4(C);44.2(CH);19.9(CH)ppm
【0117】
実施例5:4−シクロペンチルオキシ−5−(4−メチルスルホニル−フェニル)−2−メチル−チアゾールの合成
【化13】

【0118】
実施例4で得られたヒドロキシチアゾール7.0g(26mmol)および炭酸カリウム8.8g(63.67mmol)を、DMF200mLに溶解した。臭化シクロペンチル14mL(130mmol)を滴下し、反応混合物を80℃で3時間加熱した後、冷却し、氷/水混合物に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機相を、水洗(3x100mL)し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、粗製物質12gを得た。これを、ヘプタン/エーテル(1/1)で結晶化した。生成物をヘプタン/酢酸エチル(2/1)を溶離剤として使用してフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、化合物12を6.7g(19.85mmol、収率76.39%)得た。
【0119】
融点:124.6〜125.2℃
NMRH(CDCl),δ:7.9(dd,4H),5.4(m,1H),3.0(s,3H),2.6(s,3H),1.7〜2.0(m,8H)ppm
NMR13C(CDCl),δ:162.6(C);159.5(C);138.3(C);137.1(C);128.1(CH);126.8(CH);109.1(C);83.7(CH);45.0(CH3);33.5(CH);24.1(CH);20.4(CH)ppm
【0120】
生物学的分析
材料および方法
1 対象
【0121】
この研究は、健常ボランティアおよびリウマチ様関節炎を患っている患者からの静脈穿刺により得られたヘパリン化末梢血について実施した。
【0122】
健常ボランティアは、医療活動内の日常管理を受けている献血者であった。
【0123】
この研究に含まれるリウマチ様関節炎を患っている患者は、米国リウマチ学会の診断基準に準拠した患者であり、対象患者が1週間当たり20mgのMethrotexateを少なくとも6カ月間経口投与して処置するまでは、臨床的に活動性疾患を示した。疾患活動度は、以下のように定義された:a)DAS283,2および/またはb)6以上の腫脹関節および6以上の痛みを伴う関節。以下の除外基準が採用された:a)試験対象診断で活性感染疾患が判明したこと;b)試験対象前に腫瘍疾患を患っていたこと;3)試験対象診断の少なくとも1年前に完全寛解しなかった別の全身性または器官特異的自己免疫疾患を患っていたこと;d)主要疾患としてリウマチ様関節炎により誘発されたレベルでの変化と関連しない重度の腎臓疾患、心臓疾患または肝臓疾患を患っていること;e)主要疾患に関連しない疾患による全身状態の重度の悪化を患っていること;f)Methrotexateの指示投与量を除いて、試験対象診断前の年の間に免疫系について既知の活性を有するコルチコステロイド剤、免疫抑制剤、細胞増殖抑制剤または他の薬剤での治療を受けたこと;7)試験対象診断で妊娠または産褥期であることが判明したこと。
【0124】
この研究は、スペインのマドリッドにあるAlcala大学の調査委員会(Investigational Committee of the Alcala University)により承認された。
【0125】
器具
−組織培養プレート、96ウエル平底(低蒸発蓋付)、353073 Falcon、Becton Dickinson Labware社、米国ニュージャージー州Franlklin Lakes 07417−1886
−非殺菌プレート、96ウエルV底(Greiner社、スペイン マドリッドSoria Greiner)
−使い捨てパスツールピペット(ブランド社、ドイツ)
−容量調節式ピペット ピペットマンP 20、200、1000および5000μl用 (Gilson社、フランス)
−エッペンドルフ型マルチピペット4780(ドイツ、ハンブルク)
−無菌エッペンドルフ型チップ(ドイツ、ハンブルク)
−未使用プロピレン無菌チップ(Daslab社、スペイン マドリッド)
−5mlおよび10ml無菌プラスチック管(Daslab社、スペイン マドリッド)
−15mlおよび50ml遠心分離管(BD Falcon社、米国Franklin Lakes)
−5ml血球計算器ポリスチレン管(BD Falcon社、米国Franklin Lakes)
−10mlヘパリンによる血液抽出管(Venojet、テルモヨーロッパ、ベルギー)
−10ml血漿抽出管(BD Vacutainer、英国、プリマス)
−ピペットフィルター、Pipetboy plus(Flow Lab社、ドイツ)
−22μm無菌フィルターMillex−GS(Millipore社、フランス Molshein)
−クリスタルスライドカバー(Hirschman、ドイツ)
−血球計算盤Neubauer(Saaringia、ドイツ)
−縦型積層フラックスチャンバーHerasafeHS12(Heraeus、ドイツ)
−CO調節付細胞培養ストーブHeracell150(Heraeus、ドイツ)
−Beckman冷凍遠心器。Multifuge3SR(Heraeus、ドイツ)
−―70℃フリーザー(Selecta社、スペイン Tarrasa)
−顕微鏡OlympusCHS−2(オリンパス社、日本国東京)
−ソフトウエアおよびアナライザーBD Cellquest Pro v. 5.5.1を備えたフローサイトメーターFACScalibur(Becton Dickinson社、米国Mountain View)
−BD FACS アレイ バイオアナライザー
−酵素−免疫分析リーダー(Titertek Multiscan Plus、Flow laboratories)
−ベックマン放射能ベータカウンター
【0126】
細胞サブセットの分離および同定に使用された試薬
−単純塩化物食塩水(SSF)Apiroserum(Ibys社、スペイン マドリッド)
−Lymphoprep(Ficoll−Hypaque、Nyegaard社、ノルウエー、オスロ)
−Blue Trypan(Flucke社、ドイツ Buchs SG)
−PBS FACS FLOW(Becton Dickinson)
−HEPES緩衝液(Reactivos de Sigma y Panreac)
−メチル−Hチミジン([H]−T)。比活性60Ci/mmol(American Radiochemicals、ITISA、スペイン マドリッド)
【0127】
−免疫蛍光およびフラックスサイトメトリーの研究に使用されたモノクローナル抗体:表1
【表1】

【0128】
細胞培養で使用された試薬
−1%L−グルタミン200 mM y 25mMHepes(Flow Lab社、米国カリフォルニア州Irvine)添加RPMI−1640(Cambrex BioSciences B4800 Verviers、ベルギー)製完全培地
−ウシ胎仔血清(FCS)(Gibco社、米国ニューヨーク州Grand Island)
−培養培地:完全培地は、10%FCSを添加することにより使用した。45分間57℃に加熱することにより全ての血清から補体を除去した。
−フィトヘマグルチニンM(PHA)(Sigma Ref #L−8902, Lot#115K4132、Sigma社、スペイン マドリッド)
−LPS(大腸菌(E. coli)0111:B4株、InvivoGene社、米国San Diego CA92121)
−抗生物質混合物。ソジウムアンピシリン10mg/ml(Britapen, BeechamA、スペイン国トレド)、ゲンタマイシンスルフェート1.6mg/ml(Tamadit Lab.、Dr.EsteveSA.、スペイン、マドリッド)およびアンフォテリシンB0.5μg/ml(Fungizona、Squibb、Esplugues、スペイン バルセロナ)の混合物を、培養培地に添加した。
−抗CD3モノクローナル抗体(Orthoclone OKT3、Raritan、Orthopharmaceutical社、米国ニュージャージー州)
−抗CD28モノクローナル抗体(Clon15E8、Menarini、スペイン マドリッド)
【0129】
生体試料の取得
a)静脈血:単核細胞を、肘前静脈穿刺により採集した静脈血から得た。血液50mlを抽出し、リチウムヘパリン管(Venojet)に保存し、食塩水でさらに希釈1/1(容積/容積)した。これらの操作の全ては、無菌条件下で実施した。
b)ヒト細胞サブセットの採集。PBMCを単離するために、残存血液成分を、フィコールによる密度勾配により分離した。この方法は、血液細胞の密度差に基づくものである。希釈およびヘパリン化血液を入れた50ml遠心管に、フィコール−Hipaque(密度:1.077g/ml)15mlを注意深く配置した。45分の遠心分離(400xg)後、3層が得られ(赤血球、フィコールおよび血漿)、2界面により分離した:PBMCを、希釈血漿とフィコールとの間に位置しているところに入れる。これはパスツールピペットで吸い込むことにより採取できる。このようにして得られた細胞を、SSFに再懸濁し、そして遠心分離する(300xg、10分間);上清を捨て(洗い出しプロセス)、細胞ペレットを、10%PBSで、RPMI1640培地に再懸濁する。
【0130】
カウントおよび生存率の検討
全ての細胞懸濁液において、細胞濃度および生存率を、Blue Trypanの0.1%希釈およびNeubauerチャンバー顕微鏡カウントにより求めた。生存細胞百分率を、染色排除能により明らかとした。細胞生存率が95%を超えたときのみ、実験を継続した。
【0131】
ELISAによる血清サイトカインの定量化
血清サイトカイン濃度を定量化するために、採取した血液(肘前穿刺および動脈カテーテルにより採取)を、抗凝固剤添加と無添加の両方で管に保存した。血液を、実験室において室温で凝固させ、さらに血清を遠心分離により分離(600xgで20分間)した。上清を集め、濾過し、アリコットに分割し、−70℃で保存した。種々のサイトカインについての濃度アッセイを、表2に記載の市販のキットを用いることにより実施した。
【0132】
【表2】

【0133】
上清を解凍して室温とし、それらをプレート底に固定し、種々の時間でインキュベーションすることにより、それぞれの抗サイトカインと対向させた。続いて、洗浄をおこない、対応の会社により推薦されている物質を添加して、上清に存在するサイトカインの量に比例した比色反応をおこなった。結果を、酵素学的免疫分析リーダーMultititer plus(Tiertek Multiscan plus、Flow Laboratories)で評価した。これらの結果を、上記会社により提供された各サイトカインの既知濃度から得られた標準曲線と比較した。
【0134】
標準曲線の解析と続いての補間を、アップルのマッキントッシュコンピュータでソフトウエアDelta Soft II version4.1(Biometallics社)でおこなった。サイトカイン濃度をモル濃度に変換して、各場合のモル比および可溶性分子数を計算した。
【0135】
免疫表現型アッセイ
モノクローナル抗体フィコエリトリン標識(PE)の一色直接免疫蛍光法を使用した。PEは、570nmで放出する488nmレーザーで励起できる蛍光物質である。フローサイトメーターにより、検出でき且つ容易に区別できる。表1に記載した抗体を使用することにより、直接標識をおこなった:PBMC標識:このプロセスは、96ウエルV底プレートを使用して標識することからなるものであった。各ウエルにおいて、5x10細胞を配置し、その後、400xgで5分間遠心分離する。洗浄後、細胞を再懸濁し、対応のモノクローナル抗体5μlを添加する。再び細胞を再懸濁し、プレートを、4℃で20分間、暗闇でインキュベーションする。続いて、PBS150μlを添加し、そして2回洗浄する。最後に、PBS150μlに再懸濁し、そして血球計算管に集め、PBSを最終容積0.3mlまで添加する。
カウントするために、アルゴンレーザーを488nmに調整して備えたFACSCaliburフローサイトメーターを使用して、フィコエリトリン蛍光を誘発させた。蛍光チャンネルとは別に、装置により、サイズ(FSC)および細胞複雑性(SSC)についての情報も提供された。
【0136】
陰性対照として、標識なしの検討細胞、および検討(IgG1−FITC、PE y TC、IgG2a FITC、PE、TC)に使用したもの以外の等しいアイソタイプのモノクローナル抗体で標識した無関係の細胞を、使用した。
【0137】
細胞培養および機能性の検討
培養の一般的条件:全ての細胞培養を、無菌使い捨て材料を用いるか、または酸化エチレンまたは殺菌装置により殺菌した材料を用いた縦型積層フラックスチャンバー内で、無菌条件下でおこなった。培養を、ストーブ中、CO5%および相対湿度95%下、37℃で保持した。
【0138】
10 [H]−チミジンによる増殖についての検討
マイトジェン刺激させたリンパ球は、芽球化および細胞分化プロセスを受ける。細胞増殖の定量化に使用された方法は、デノボ合成したDNAへの[H]−チミジンの取込みのアッセイであり、そして細胞培養乾燥抽出物(トリチウム化した塩基を添加)からのベータ−放射線の放出を、終了および収穫前に検出した。増殖を検討するのにおこなった種々の実験において、精製した細胞製剤を、96マイクロウエル平底プレートにおいて、3重反復および4日間の培養で、種々の濃度の種々のマイトジェンの存在下で、5x10細胞/ウエル(最終容積:200μl)の濃度でインキュベーションした。
【0139】
特異的刺激に対する反応は、検討した密度および細胞型、ならびに培養時間および分裂促進剤濃度に依存した。
【0140】
細胞培養を終了する20〜24時間前に、1マイクロキューリ[H]−チミジンを各ウエルに添加した;培養を、特異的培養ハーベスターを用いて、ガラスフィルターによる吸引により収穫した。
【0141】
DNA合成を、カウント/分(cpm)で表した。各アッセイを、三重でおこない、技術的誤差または培養の汚染である可能性から、三重の結果の平均の10%より高い変動のデータを廃棄した。培養を、1ウエル当たり一定量の細胞(200μlの一定容積)を用いておこなった。全てのマイトジェンおよびサイトカインを、まず用量反応曲線および時間反応をおこなうことにより試験した。
【0142】
11 定量的マルチパラメトリックフローサイトメトリーによる分析決定のためのアッセイ(BD(商標)サイトメトリビーズアレイ(CBA)
CBAプロトコルは、製造業者の説明書に準じた。微粒子の選択は、図1の概要に準じておこなった。スペクトルの重なりの少ないものを、最終的に選択した。
【0143】
この実験開発に使用された各試薬のカタログ番号およびバッチは、表3および4に示す。試料をBD FACS Array Bioanalyser System (FACSArray、Becton Dickinson社、米国カリフォルニア州San Jose)から取得し、そして結果の分析はPCコンピュータ上でソフトウエアFCAP Array(Becton Dickinson社)でおこなった。
【0144】
簡単に述べると、実験プロトコルは、Wash Bufferで予め洗浄したプレートから構成されるものであった。デカンテーション後、取得した微粒子の混合物を、攪拌再懸濁した。標準および試料を、適切に希釈して添加した。1時間、十分に攪拌インキュベーション後、PE検出試薬を添加し、室温で2時間、再びインキュベーションした。洗浄後、得られたものをフローサイトメトリーに附した。
【0145】
【表3】

【0146】
【表4】

【0147】
統計分析
実験的試験の結果を、分布の種類に従って、平均値ならびに平均値の標準誤差および予測誤差として示した。
統計分析のために、分布の種類を、まずShapiro−Whilkの正規性のコントラストを用いることにより分析した。Mann−WhitneyUの非パラメトリックコントラストを使用して、比較した。全ての場合において、有意レベル5%未満のものを評価した(p<0.05)。
【0148】
統計分析は、ソフトウエアSPSS11.0(SPSS社(本社)、60606イリノイ州シカゴ、S.Wacker Drive233、11th floor)を用いておこなった。
【0149】
化合物12の免疫調節効果についての検討の結果
健常ボランティアおよびリウマチ様関節炎を患っている患者の末梢血単核細胞(PBMC)のTNF−アルファ、IFN−ガンマおよび他のサイトカインの産生についての化合物12の免疫調節効果
【0150】
実施例6:化合物12のTNF−アルファ産生への影響
まず、LPSの存在下または不存在下での健常ボランティアのPBMCによるTNF−アルファ産生に対する化合物12の影響を調査した。10人の健常ボランティアからのPBMC(5x10細胞/ウエル、200μl)を、二重並列で、96ウエル平底組織培養プレート(低蒸発蓋付)(米国ニュージャージー州07417−1886Falcon353072、Franklin Lakes社)で、ウシ胎仔血清(米国、Gibco ref.26140−079)添加および溶媒濃度10−6M単独または化合物12 10−6Mまたは10−7M添加完全培地(グルタミン含有RPMI−1640、Cat BE−12−70F、ベルギー国B4880 Verviers、Cambrex Biosciences社)において、LPS(10マイクログラム/ml;大腸菌(E.coli)LPS0111:B4株、米国サンディエゴCA92121、InvivoGene社)の存在下および不存在下で24時間培養した。培養の上清を−20℃で凍結させ、TNF−アルファの濃度を、種特異的ELISA(腫瘍壊死因子−アルファを定量検知用酵素連結免疫吸着アッセイ:ヒトTNF−アルファELISA BM S223/4TEUCE(Bender Med System社、94010カリフォルニア州Burlinghane)で定量化した。
【0151】
図2は、培養に化合物12が濃度10−6Mおよび10−7Mで存在すると、統計的に有意な方法で、LPS刺激PBMCの培養の上清で定量化したTNF−アルファ濃度が減少した(p<0.05)。さらに、濃度10−6Mの化合物12も、PMBCによる自然TNF−アルファ産生を低下させた。
【0152】
【表5】

【0153】
化合物12の免疫調節効果を、さらにLPSでの単球刺激後またはモノクローナル抗体抗CD3と抗CD28との組み合わせによるリンパ球活性化後のPBMCによるサイトカインパネルの産生について特徴付けした。この検討は、健常ボランティアおよびリウマチ様関節炎を患っている患者から得られたPBMCの培養における漸増投与量の化合物12の存在下または不存在下でおこなった。
【0154】
13人の健常ボランティアからのPBMC(5x10細胞/ウエル)は、二重で、最高濃度(10−6M)の溶媒または10−6Mおよび10−7M化合物12を添加した完全培地200μlにおいて、LPS(10μg/ml)の存在下および不存在下で、24時間培養した。培養の上清を−20℃で凍結させ、そして定量化を、表示サイトカイン濃度の同時アッセイ用の特定の試薬(CBA Flex Multiplex Set (BD(商標)Cytometric Bead Array,CBA:IL−8、IL−10、TNF−アルファおよびIFN−ガンマ、92121カリフォルニア州サンディエゴ Becton Dickinson Biosciences Pharmingen社)を使用することにより、BD FACS Array Bioanayliser(BD Biosciences Cat No.34012892121カリフォルニア州サンディエゴ)によりおこなった。
【0155】
培養において化合物12が濃度10−6Mおよび10−7Mで存在すると、統計的に有意な方法でLPSで刺激した健常ボランティアのPBMCによるTNF−アルファ産生が減少した(p<0.05)(図3)。これに対して、モノクローナル抗体抗CD3および抗CD28で刺激したPBMCによるTNF−アルファ分泌も、自然なもの(外からの刺激の不存在下で観察される)も、化合物12によっては変化しなかった。
【0156】
【表6】

【0157】
別の実験では、7人のリウマチ様関節炎を患っている患者からのPBMC(5x10細胞/ウエル)を、二重で、最高濃度(10−6M)の溶媒、および10−6M、10−7Mおよび10−8M化合物12を添加した完全培地200μlにおいて、LPS(10μg/ml)または抗CD3(12.5ng/ml)(Ortho Pharmaceutical社 Orthoclone OKT3 米国ニュージャージー州Raritan)+抗CD28(1/3x10)(Clon 15E8、Menarini、スペイン マドリッド)の存在下および不存在下で、24時間培養した。培養の上清を−20℃で凍結させ、そしてTNF−アルファの濃度を、製造業者の説明書に従ってサイトカインの濃度を測定するのに特異的なCBA Flex Set(Becton Dickinson)を用いることにより、BD FACS Array Bioanalyserにより定量化した。
【0158】
リウマチ様関節炎を患っている患者からのLPSで刺激したPBMCにおいて、TNF−アルファの産生は、10−6Mの濃度での化合物12により顕著に阻害された(p<0.05)(図4)。培養に化合物12が存在すると、自然TNF−アルファ産生も、リウマチ様関節炎を患っている患者からのPBMCにおけるモノクローナル抗体抗CD3および抗CD28での刺激後に得られるものも阻害しなかった。
【0159】
【表7】

【0160】
実施例7:化合物12のIFN−ガンマの産生に対する影響
13人の健常ボランティアからのPBMC(5x10細胞/ウエル)を、二重で、最高濃度(10−6M)の溶媒、および10−6M、10−7Mおよび10−8M化合物12を添加した完全培地200μlにおいて、LPS(10μg/ml)または抗CD3(12.5ng/ml)+抗CD28(1/3x10)の存在下および不存在下で、24時間培養した。培養の上清を−20℃で凍結させ、そしてIFN−ガンマの濃度を、製造業者の説明書に従って、IFN−ガンマの濃度を測定するのに特異的なCBA Flex Set(Becton Dickinson)を用いることにより、BD FACS Array Bioanalyserにより定量化した。
【0161】
化合物12(濃度10−6M)が存在すると、LPSで刺激したか、あるいはモノクローナル抗体抗CD3および抗CD28で刺激した健常ボランティアからのPBMCによるIFN−ガンマの産生が顕著に阻害された(p<0.05)(図5)。
【0162】
【表8】

【0163】
健常ボランティアからのPBMCによるIFN−ガンマの自然分泌は、化合物12により変化しなかった。
【0164】
8人のリウマチ様関節炎を患っている患者からのPBMC(5x10細胞/ウエル)を、二重で、最高濃度(10−6M)の溶媒、および10−6M、10−7Mおよび10−8M化合物12を添加した完全培地200μlにおいて、LPS(10μg/ml)または抗CD3(12.5ng/ml)+抗CD28(1/3x10)の存在下および不存在下で、24時間培養した。培養の上清を−20℃で凍結させ、そしてIFN−ガンマの濃度を、製造業者の説明書に従って、IFN−ガンマの濃度を測定するのに特異的なCBA Flex Setを用いることにより、BD FACS Array Bioanalyserにより定量化した。
【0165】
化合物12(濃度10−6M、10−7Mおよび10−8M)が存在すると、モノクローナル抗体抗CD3および抗CD28の刺激により誘発されたとき、リウマチ様関節炎を患っている患者からのPBMCによるIFN−ガンマの産生が顕著に低下した(p<0.05)(図6)。化合物12は、健常ボランティアからのPBMCによる自然IFN−ガンマ分泌も、LPS誘発も変化しなかった。
【0166】
【表9】

【0167】
実施例8:化合物12のインターロイキン8(IL−8)産生に対する影響
健常ボランティアからのPBMCによるIL−8産生に対する化合物12の影響を、LPS刺激ならびにモノクローナル抗体抗CD3および抗CD28の存在下と不存在下の両方で調査した。13人の健常ボランティアからのPBMC(5x10細胞/ウエル)を、二重で、最高濃度(10−6M)の溶媒、および10−6M、10−7Mおよび10−8M化合物12を添加した完全培地200μlにおいて、LPS(10μg/ml)または抗CD3(12.5ng/ml)+抗CD28(1/3x10)の存在下および不存在下で、24時間培養した。培養の上清を−20℃で凍結させ、そしてIL−8の濃度を、製造業者の説明書に従って、IL−8の濃度を測定するのに特異的なCBA Flex Setを用いることにより、BD FACS Array Bioanalyserにより定量化した。
【0168】
濃度10−6M、10−7Mおよび10−8Mで、化合物12は、IL−8の自然産生を顕著に阻害した(p<0.05)(図7)。モノクローナル抗体抗CD3および抗CD28により誘発したIL−8産生の顕著な阻害が、化合物12(濃度10−7および10−8M)で観察された。それにもかかわらず、PBMCのLPS刺激下でのIL−8産生に対しての影響は観察されなかった。
【0169】
【表10】

【0170】
また、リウマチ様関節炎を患っている患者からのPBMCによるIL−8産生に対する影響も検討した。8人のリウマチ様関節炎を患っている患者からのPBMC(5x10細胞/ウエル)を、二重で、最高濃度(10−6M)の溶媒、および10−6M、10−7Mおよび10−8M化合物12を添加した完全培地200μlにおいて、LPS(10μg/ml)または抗CD3(12.5ng/ml)+抗CD28(1/3x10)の存在下および不存在下で、24時間培養した。培養の上清を−20℃で凍結させ、そしてIL−8の濃度を、製造業者の説明書に従って、IL−8の濃度を測定するのに特異的なCBA Flex Setを用いることにより、BD FACS Array Bioanalyserにより定量化した。
培養に化合物12が濃度10−6Mおよび10−8Mで存在すると、リウマチ様関節炎を患っている患者からのPBMCにおけるIL−8のLPSによる誘発産生が顕著に変化したのに対して、自然IL−8産生も、モノクローナル抗体抗CD3と抗CD28との組み合わせにより誘発させたものも、変化しなかった(図8)。すなわち、結果から、化合物12によるIL−8の調節は、興味深いことに明確な健常状態および定義された疾病状態下で、明確な調節パターンを示すことが明らかである。
【0171】
【表11】

【0172】
実施例9:インターロイキン10(IL−10)産生に対する化合物12の影響
健常ボランティアおよびリウマチ様関節炎を患っている患者からのPBMCによるIL−10の産生に対する化合物12の影響を、LPS刺激およびモノクローナル抗体抗CD3と抗CD28との組み合わせでの刺激の存在下および不存在下で調査した。13人の健常ボランティアからのPBMC(5x10細胞/ウエル)を、二重で、最高濃度(10−6M)の溶媒、および10−6M、10−7Mおよび10−8M化合物12を添加した完全培地200μlにおいて、LPS(10μg/ml)または抗CD3(12.5ng/ml)+抗CD28(1/3x10)の存在下および不存在下で、24時間培養した。
【0173】
一方、8人のリウマチ様関節炎を患っている患者からのPBMC(5x10細胞/ウエル)を、二重で、最高濃度(10−6M)の溶媒、および10−6M、10−7Mおよび10−8M化合物12を添加した完全培地200μlにおいて、LPS(10μg/ml)または抗CD3(12.5ng/ml)+抗CD28(1/3x10)の存在下および不存在下で、24時間培養した。培養の上清を−20℃で凍結させ、そしてIL−10の濃度を、製造業者の説明書に従って、IL−10の濃度を測定するのに特異的なCBA Flex Setを用いることにより、BD FACS Array Bioanalyserにより測定した。
【0174】
化合物12は、両方の検討した刺激の存在下および不存在下での健常ボランティアからのPBMCによるIL−10の産生に対して影響はなかった(図9)。しかしながら、培養に化合物12が濃度10−8で存在すると、リウマチ様関節炎を患っている患者からのPBMCのLPSによる刺激後、IL−10産生が顕著に増加した(p< 0.05)。化合物12は、リウマチ様関節炎を患っている患者からのPBMCによる、IL−10の自然産生にも、モノクローナル抗体抗CD3および抗CD28での刺激後の産生にも、顕著な影響を示さなかった(図10)。
【0175】
【表12】

【0176】
【表13】

【0177】
免疫細胞に対する化合物12の他の影響
実施例10:化合物12のPBMCの増殖反応に対する影響
健常ボランティア(n=8)からのPBMCの増殖反応に対する化合物12の影響を、フィトヘマグルチニン(PHA)10μg/ml;PHA2μg/ml+外からのIL−2添加(25IU/ml)による刺激およびモノクローナル抗体抗CD3(12.5ng/ml)と抗CD28(1:320.000)との組み合わせによる刺激の存在下および不存在下で調査した。
【0178】
PBMCを、完全培地において、37℃で、5%CO雰囲気(細胞インキュベーターHERA Cell150,Thermoscientific、Thermoelectron、ドイツ 63505 Lagenselbold)で4日間培養した(50,000細胞/ウエル)。培養刺激は、フィトヘマグルチニン(PHA Sigma Ref #L−8902,スペイン マドリッド)10μg/ml;IL−2(25IU/ml、ヒト組み換えIL−2、Macrolin、Chiron Iberica、バッチ#SA753228/4、スペイン マドリッド)を外添したPHA2μg/mlならびにモノクローナル抗体抗CD3(12.5ng/ml)+抗CD28(1:320.000)の不存在下または存在下の条件でおこなった。培養の最後の8時間の間に、メチル−H−チミジンを添加した(American Radiochemical、60Ci/mmolメチル−H−チミジン、ITISA、スペイン マドリッド)。細胞を、ガラス繊維膜に採集し、シンチレーション媒体(1450−441 Meltilex A, de Wallac Oy、Ref#1450−441)に埋め込んだ。DNA組み込み放射能標識を、ベータ粒子カウンターWallac Oyを用いることにより定量化した。培養の細胞生存性の対照として、これらを、媒体の存在下で、他のシグナルなしで、細胞培養の密度および形態について、顕微鏡(Zeiss Axiovert 40CFL、Karl Zeiss Microimagen社、ドイツ Gottingen)で観察して、PBMCに対する検討分子の可能性のある分裂促進の直接作用を検出し且つ定量化し、そしてインキュベーション後の細胞生存性を測定した。
【0179】
培養に化合物12が存在しても、検討した種々の分裂促進刺激の不存在下および存在下での健常ボランティアからのPBMCの増殖反応は顕著には変化しなかった(図11aおよび図11b)。
【0180】
実施例11:PBMCによるCD62Lのシェディングに対する化合物12の影響
健常ボランティアからのPBMCのリンパ球および単球におけるCD62Lのシェディングに対する化合物12の影響を調査した。
【0181】
化合物の12(濃度0−6M)の存在下で、CD62Lシェディング(CD62L-Phycoerithryn(PE)、クローンBD SK11 Cat No.341012、BD Biosciences)が顕著に増加する(p<0.05)。特に、これにより、CD62Lのシェディングがリンパ球に選択的に生じた後に検出されるCD62L−PE標識の幾何平均蛍光強度(MFI)が減少するが、単球では顕著な差は観察されなかった(図12aおよび図12b)。
【0182】
【表14】

【0183】
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】

[式中、
は、置換または未置換C〜Cアルキル、置換または未置換シクロアルキル、置換または未置換アリール、および置換または未置換ヘテロシクリルから選択されるものであり;
は、水素、置換または未置換C〜Cアルキル、置換または未置換シクロアルキル、およびN(R’R’’)(式中、R’およびR’’は独立して水素またはC〜Cアルキルである)から選択されるものであり;
は、C〜Cアルキルラジカルである]
またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグおよび/もしくは溶媒和物の、TNF−アルファおよびIFN−ガンマから選択される少なくとも1種の炎症誘発性サイトカインの産生を阻害することによるか、あるいはIL−8ケモカインおよび/またはIL−10調節サイトカインを免疫調節することによる、急性または慢性炎症性疾患の治療用薬剤の調製における使用。
【請求項2】
前記急性または慢性炎症性疾患が、急性および慢性の血清陽性または血清陰性少関節炎および多発性関節炎、脊椎関節炎、糸球体腎炎、膠原病、尿細管間質性腎炎、メタボリックシンドローム、アムローム性動脈硬化症、変形性関節症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、多発性硬化症、脱髄疾患、髄膜炎、脳炎、髄膜脳炎、炎症性神経根障害および末梢神経障害、炎症性腸疾患、肝硬変、肝炎、心不全、虚血性疾患、腎不全、炎症性膀胱炎、良性前立腺過形成、前立腺炎、心筋炎、心膜炎、ブドウ膜炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、じんましん、乾せん、酒さ、アレルギー性鼻炎、敗血症、敗血症性ショック、多発器質不全、全身性自己免疫疾患、例えば、全身性エリテマトーデス、血管炎、皮膚筋炎、アミロイドシスもしくはサルコイドーシス、器官特異的自己免疫疾患、例えば、重症筋無力症、甲状腺炎もしくはインスリン症、臓器移植、感染および腫瘍誘発炎症、TNF−アルファ依存性細胞変性、壊死、アポプトーシス、移植片対宿主病、悪液質ならびにオートクリンおよびパラクリン病的細胞増殖から選択されるものである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記慢性炎症性疾患が、血清陽性または血清陰性慢性多発性関節炎である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記慢性多発性関節炎が、リウマチ様関節炎である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
が、置換または未置換C〜Cアルキルである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
が、メチルである、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
が、置換または未置換シクロアルキルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
が、シクロペンチルである、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
が、メチルである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記式(I)の化合物が、以下の化合物:
【化2】

【化3】

【化4】

から選択されるものであるか、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグおよび/もしくは溶媒和物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
式(I’)
の化合物:
【化5】

[式中、
は、置換または未置換C〜Cアルキル、置換または未置換シクロアルキル、置換または未置換アリール、および置換または未置換ヘテロシクリルから選択されるものであり;
はC〜Cアルキルラジカルである]
またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグおよび/または溶媒和物。
【請求項12】
が、置換または未置換C〜Cアルキルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
が、メチルである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
下式の化合物から選択される、請求項11に記載の化合物:
【化6】

【化7】

またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグおよび/または溶媒和物。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれかで定義されている式(I’)の化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグまたは溶媒和物ならびに少なくとも1種の薬学的に許容される担体、アジュバントおよび/またはビヒクルを含んでなる医薬組成物。
【請求項16】
薬剤として使用される、請求項11〜14のいずれか一項に定義されている式(I’)の化合物。
【請求項17】
請求項1に定義されている式(I)の化合物の、免疫学的障害、標的細胞および標的分子を見つけるための、イメージング技術および薬理イメージング技術におけるイメージングバイオマーカーとしての使用。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−524352(P2011−524352A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513001(P2011−513001)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057324
【国際公開番号】WO2009/153226
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(504389452)ファエス・ファルマ・ソシエダッド・アノニマ (3)
【氏名又は名称原語表記】FAES FARMA, S.A.
【Fターム(参考)】