説明

急性腎不全に適応可能な方法とカテーテルシステム

【解決手段】 一時的な髄質低酸素の合併傷害から腎臓を保護するための方法および装置。治療は、腎盂における液体の圧力あるいは腎静脈圧を一時的およびリバース可能に上昇させることにより達成される。上昇した圧力は治療中、安全な値に保たれる。前記方法の工程は、患者の少なくとも一つの腎臓の尿路圧力を人工的に上昇させる工程と、上昇させた圧力を維持することにより腎臓の機能を低下させる工程と、尿路圧を低下させて低下した腎機能よりも腎機能を上昇させる工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この継続出願は、2003年2月24日に提出された米国仮出願第60/449174号明細書と、2002年2月24日に提出された米国仮出願第60/449263号明細書に対して優先権を主張し、これらの全体はこの参照により組み込まれる。
【0002】
この発明は、造影剤腎症や低血圧のような原因からの急性腎不全の予防と治療のための方法に関する。本発明は、腎静脈圧あるいは腎盂血圧の上昇による腎臓の酸素消費量を減少することにも関連する。さらに本発明は、また体腔への液体の血圧調整した注入の分野にも関連する。
【背景技術】
【0003】
健康維持における腎臓の役割
腎臓は一対の組織であり後腹部に位置し、例えば人間のような哺乳類の患者の脊柱の両側にある。腎臓の機能は、3つの広い分類、すなわち、a)血液の濾過と体内代謝により生じた老廃物の排出、b)塩、水、電解質、および酸−塩基のバランスの調整、c)重要器官の血流を維持するためのホルモンの分泌、にまとめられる。腎臓が正常に機能していなければ、患者は水分維持、尿量減少、および血中と体内とにおける老廃物の蓄積に苦しむことになる。
【0004】
尿形成に関与する腎臓の最初の機能単位は、「ネフロン」と呼ばれる。各腎臓は、約100万のネフロンからなる。ネフロンは、糸球体と尿細管からなり、それらは多くの部分、すなわち、近位尿細管、髄質ループ(ヘンレ係蹄)、及び遠位尿細管に分けられている。各ネフロンは、異なったタイプの細胞に囲まれ、それら細胞は数種の物質やホルモン(レニン、エリスロポエチンなど)を分泌する能力がある。尿は複雑な過程を経た結果として作られ、その過程は、血液から糸球体への血漿の濾過により始まる。糸球体壁は、水、小分子は自由に通過するが、蛋白質や大分子はほとんど通過しない。それゆえ、健常な腎臓では、濾過液は事実上、蛋白質や細胞成分を含まない。前記濾過液は、最終的に尿となり、尿細管を通過する。尿の最終化学組成物は、恒常性維持のために必要とされる尿への分泌と、尿からの物質の再吸収により決定される。二つの腎臓は心拍出量(全身血液供給)の約20%、または約毎分800mlの血液量を受け取る。二つの腎臓は、毎分約120mlの血漿水を血液から濾過する。この濾過の流量は、糸球体濾過量(GFR)と呼ばれ、腎機能の標準測定値である。
【0005】
急性腎不全
腎臓は、いくつかのタイプの生理的損傷に対して脆弱である。腎臓に対する損傷は、急性腎不全(ARF)と呼ばれる深刻な病状を導く。ARFは、急速な腎機能の低下として定義される。原因に関係なく、腎機能障害は、高い死亡率、高い費用、およびほとんど効果のない治療選択肢と、一様に関連する。ARFは、主に低血圧により生じる。それはまた先天性心疾患、敗血症、毒性薬剤、手術の合併症、既存の腎疾患の悪化と関連する。これらすべての状況において、腎臓の酸素供給の減少は、最終的に虚血(酸素の需要と供給の不一致)や腎臓の細胞死を導く。この最初の虚血侵襲は、正常の血流量に回復した後でさえも細胞障害を引き起こし続ける酸素フリーラジカルや酵素の産生を誘発する。尿細管の細胞の障害は、細胞間の密着結合の破壊をもたらし、糸球体濾過の後漏れ、さらなる腎機能の消退を許す。さらに死につつある細胞は尿細管へと剥がれ落ち、閉塞円柱を形成し、それらはさらなるGFRを減少し乏尿(尿産生量低下)を引き起こす。
【0006】
一度正常腎血流量が回復すると、残りの機能しているネフロンは、個々の濾過量を上昇し、失われたネフロンを補う。正常の各腎臓には、約100万のネフロンがある。腎機能の回復は、残りのネフロンの合計の大きさに依存している。もし、残存するネフロンの数がある一定の数より少なければ、継続する過大濾過は、ネフロンの消失の継続という悪循環引き起こし、完全な腎不全にいたるまでさらなる過大濾過を引き起こす。この機序によってなぜ進行性の腎不全がARFから明らかに回復した後でさえしばしば観察されるかということを説明される。ARFの治療ならびに慢性腎不全への進行の予防の鍵は、最初の損傷後におこる腎虚血の縮小と、腎細胞(ネフロン)の消失の予防と縮小である。
【0007】
現在の治療の選択肢と結果
1997年、ARFによる360,000以上の入院が報告されている。この数字は前年比12%の上昇を反映している。約245,000人の入院患者が、二次診断として腎不全を抱えている。入院が必要なARFは、全入院における4%に生じ、救命救急入院の20%に生じる。ほとんどのARF患者は、医大付属病院で治療を受けている(61%)。この上昇している入院を必要とするARFの件数はさまざまな要因による。それはARFのリスクが上昇している老齢人口と関係があるし、病院において可能性がある腎毒性の暴露の高い有病率、および病気の重篤さの増加に関連する。一度発症すると、ARFを治療する方法は存在しない。腎機能の回復は最初に引き起こされた事象の逆転、および腎血流量の回復に依存している。ARFに対する現在の治療はすべて、「補助的」で、害のある可能性がある。それら、a)薬剤による心機能および血圧の補助。b)透析によって液体と腎臓の老廃物除去機能の置換。治療(aとb)は、実際には、ARFの発症の重篤性を悪化させることがある(薬剤誘発性腎血管収縮、透析誘発性低血圧発症)。
【0008】
ARFは治療するのに難しく危険な病気である。現在、入院が必要なARFの致死率は、ARFのタイプや患者の共存症により25〜90%の間で変化する。一般病床では致死率は40〜50%であり、集中治療では70〜80%である。ほとんどの死因はARF自体ではなく潜在する病気あるいは合併症である。透析の出現以来ARFの致死率はほとんど変わっていない。興味深いことに、ARFを抱えている患者で80歳以上の患者と若年成年患者では、致死率がほぼ同じである。ARFを持つ小児の患者は別の病因により、致死率は平均25%である。
【0009】
ARFは単なる病気の指標ではない。放射性染色物質を用いたCT検査を受けた患者16,000人の追跡調査では、ARFを抱えた患者の致死率が34%だったのに対し、同様に暴露されたグループからの匹敵するコホートにおいては7%に過ぎなかった。最近の報告では透析を必要としないARF患者では31%の死亡率であったのに対し、ARFのない対象患者群では8%に過ぎなかったことが言及された。共存症を調整した後でさえ、ARFで死亡するオッズ比はARFの無い患者群と比較して4.9であった。ARFから生き延びた人の中でおよそ50%は完全に腎機能が回復し、別の40%は不完全な回復を有する。およそ5〜10%は最終段階の腎疾患に進行し、血液透析の維持を残りの生涯において必要とする。高い死亡率に加えて、ARFは医療制度の高い費用と関連している。2次診断としてARFを有する患者の30%しか7日以内に退院しなかった。ARFの約10%の患者が30日以上の入院をした。ARFを発現した患者1人あたりの平均費用は18,000ドルである。
【0010】
明らかに、最初の原因や期間に関わらず、ARFを予防および治療する方法に対する臨床治療上の必要性が十分に満たされていない。理想的には、新しい治療方法は、あらゆるネフロンの消失を予防するのにも十分な早期に行われるだろう。ARFの期間は継続するネフロンの消失と直接的に関係するので、実施される治療において、ARFは発症が開始した後でさえ、慢性腎不全への進行が確信される重篤なレベルに到達する前にネフロンの消失を制限するのに有効であろう。最後に疾患の重篤性は、死亡率、罹患率、および医療制度に対する費用の両方の観点からより積極的な治療の発展および推進の必要性を証明している。特に新しいARFの治療の理想的な目標は、病因に関わらず切迫したARFを予防することであり、既存のARFからの障害を最小限にすることであり、ICUや病院の滞在日数を減らすことであり、死亡率及び罹患率を減らし、医療費を削減することである。
【0011】
髄質の低酸素状態を引き起こす腎臓侵襲のタイプ
入院が必要なARFの発症はいくつかのタイプの初期侵襲により始まり、異なった進行のシナリオをたどる。すべての場合において、腎臓への障害の共通の系路は、腎髄質の虚血である。虚血は、腎臓における酸素需要が有効な酸素供給を上回った状態である。
【0012】
虚血、または低酸素(酸素欠乏)ともよばれるが、この役割はARFの進行においてMayer Brezisの「Hypoxia of the renal medulla − its implications for disease(腎髄質の低酸素―疾患へのその意義)」(New England Journal of Medicine,Vol.322,No 10, March 9,1995 pp.647〜654)の中で記述されている。Brezisは、地上の動物において、腎臓の主要な仕事は水を再吸収して、乾燥した環境で生きていけるようにすることであると強調する。水の保存は腎髄質で行われ、そこでは血漿が濾過されて尿に濃縮される。腎臓では、血液の濾過は比較的透過性の高い膜を通して起こり、動脈血の静水圧によって行われる。対照的に水と塩の再吸収は小分子を受け入れない非常にきつい膜を通して起こる。水が再吸収されると尿は腎尿細管で濃縮される。尿中の可溶性小分子の濃度は血漿中に比べて何十倍も高くなりうる。結果として、腎臓は水と電解質の再吸収に多大なエネルギーを費やす。水の再吸収は浸透圧と呼ばれる浸透勾配に反対される。この独特な浸透勾配は腎臓の高い酸素需要(エネルギー源)に大きな責任を持っている。科学文献では、腎臓による酸素需要は直接的、および直線的にGFRに比例すると示している。このことは、ほとんどすべての(95%以上)のGFRが再吸収され血中に戻るため、容易に説明できる。
【0013】
人体は腎血流量から独立してGFRを調節する機序を有している。正常状態の腎臓は、尿を濃縮するための生理的必要性に基づいてGFRを一定に保とうとする。同時に、ある生理的状況は腎臓を通る血流とは独立してGFRの減少を引き起こす。GFR(酸素需要決定因子)に対する血流量(酸素供給決定因子)が上昇する場合、腎臓の低酸素、および結果として生じるARFを防ぐことができる。
【0014】
主に髄質低酸素の機序によって起こる腎臓の侵襲を引き起こすさまざまなタイプの急性侵襲から腎臓を予防すること、および酸素需要を減らすことにより腎臓を予防することが長い間切実な要求とされてきた。さらに、酸素需要において腎臓のかん流圧と血流とは独立して減らされることが可能であり、a)濾過の再吸収速度、b)腎臓に集められる尿中の溶質の濃度、を減らすことにより可能となる。再吸収速度は実質的にはGFRと同値であり、従ってGFRを減らす生理的機序はいずれも腎臓の酸素需要を減らすことにもなるであろう。以下3つのタイプの急性腎侵襲が急性および虚血として同定された。これら3つはすべて一般的にARFになる。
【0015】
1.血管および心臓手術中の低血圧
動脈瘤修復のような外科的治療、心臓手術、および腎動脈を含む手術は、しばしば腎臓への血流の妨害あるいは低下に陥る。患者、特に老人で慢性の腎障害があり糖尿病の患者は、そのような手術の結果としてARFをよく患う。
【0016】
2.造影剤腎症
血管内ヨウ素標識造影剤(単純撮影との比較)は、X線に不透明で循環系動脈および静脈を認識できるようにする。ヨウ素標識された造影剤は、診断的血管造影および経皮経管冠動脈形成術(PTCA)のような一般的な医療手技に使われる。残念なことに、造影剤の使用は、造影剤腎症と呼ばれるARFの重大な発生と関連付けられる。造影剤腎症の正確な性質はわかっていない。それにもかかわらず、酸素の需要と供給の不均衡と、それにより起こる髄質の低酸素による造影剤腎症の重要な役割を果たす。造影剤腎症の低酸素の性質は、Heymanらによる「Pathophysiology Of Radiocontrast Nephrophaty:A Role For Medullary Hypoxia(造影剤腎症の病態生理:髄質低酸素に対する役割)」(Investigative Radiology,Volume 34(1).November1999,page685)に記述されている。
【0017】
3.心不全、ショックによる低血圧
健常人における安静時動脈血圧は120/80mmHgである。血圧が低すぎると、心臓、脳、腎臓、およびその他の重要臓器の不十分な灌流となる。低い血圧は低血圧と呼ばれるが、通常血圧が90/60mgHg以下のいかなる状態として定義される。もし低血圧が重篤であるか、または長く続きさらに重要な臓器の機能不全を伴っている場合、この患者はその後「ショック状態(shock)」であると呼ばれる。病院では、重篤で長く続く低血圧は、腎臓における低灌流(血流低下)、およびARFを引き起こし得る。集中治療における患者では、そのような低血圧の発症は血液の減少(血流量減少)、心不全、および敗血症の結果として起こる血管拡張によって引き起こされうる。通常、髄質低酸素は、ARFの進行における重要な役割を果たす。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記に記述したように入院が必要なARFは、例えば血管内造影剤注入、術中の腎臓への血液供給または血圧の妨害若しくは減少、あるいは急性全身性血流低下のような障害により引き起こされる。すべての場合において、腎臓への障害の共通の系路は腎髄質の虚血である。虚血は腎臓による酸素需要が有効な酸素供給を上回った状態である。合理的に機能している心臓および肺を有する患者では、腎臓への酸素供給は腎血流量により決定される。従来の装置に基づいたARFへの治療の方針は、虚血不均衡の供給側に焦点を当てている。伝統的に、集中治療室(ICU)におけるARFの治療の目標は、腎血流および動脈圧を高めることにより腎臓への酸化された血液の供給を高めることである。新しい方法およびシステムは従来の考え方とは異なり、腎臓の酸素に対する代謝的な需要を減らすことによって、細胞の障害および損失を予防あるいは制限する発明になっている。
【0019】
上述した腎臓に対する3つの侵襲のいずれか1つから生じるARFを治療するために、いくつかの臨床的に有用で実用的な実施形態を本明細書に開示しており、それは腎臓の酸素需要を一時的に減らすことができる。前記治療は、主に前記需要を減らすことにより、腎血流量を上昇させ、腎臓の酸素需要に対する供給の比を上昇させる。前記腎臓の酸素需要は、少なくとも部分的、一時的、およびリバース可能に腎臓の血液を濾過する切迫した能力により(測定可能なGFRと濃縮尿により示されるように)減らされてもよい。前記治療の間、GFR自体は、腎静脈圧の上昇、あるいは腎盂における尿圧の上昇によって一時的に減らされうる。通常、動物や人間ではこのような干渉治療はGFRの有意な減少を引き起こす。もしある適正な期間を超えて長くなったり、またはある適正な「生理的な」範囲を超えてしまうと、これらの治療は腎臓に障害を与える可能性がある。しかし、もし厳格に管理され、比較的短時間の適応であれば、これらの診療はARFから腎臓を守ることができる。
【0020】
腎静脈圧の上昇
「Effect of increased renal venous pressure on renal function(腎機能に対する腎静脈圧の上昇の効果)」(Journal of Trauma:Injury,Infection and Critical Care 1999,Dec;47(6):1000〜3)の中で、Dotyらは腎静脈の圧上昇の効果と腎臓のGFRについて記述している。Dotyは、実験的な20Kgの豚において、腎静脈圧(RVP)が基準から0〜30mmHg上昇すると、対象群に比べて、腎動脈血流(RBF)指数が1グラム(腎質量)1分あたり2.7から1.5mLに有意に減少し、GFRが1分あたり26から8mLに減少すると結論づけている。重要なことは、これらの変化は,RVP基準の方向へ戻ったときに、部分的あるいは完全にリバース可能であったことである。RBFがほんの45%減少したのに対し、前記治療を受けた腎臓のGFRは70%まで減少した。GFR(酸素消費指数)に対するRBF(酸素分配指数)の比は0.10から0.18とほぼ2倍であった。
【0021】
急性腹部コンパートメント症候群(AACS)として知られる病気の臨床治験研究によって、同様の結論に達することができる。AACSの患者は、腎静脈の部分的閉塞あるいは圧迫によってしばしば腎静脈圧が上昇している。腎静脈圧が基準値より30〜60mmHg上昇している患者において、腎臓が尿の製造を停止しているが、一般的には永続的に障害が与えられていないということが観察された。このような患者において、外科医が腹部の圧迫を取り除けば、腎機能は速やかに回復する。コンパートメント症候群の結果として、腎静脈圧の上昇が60mmHg以上ある患者では、前記腎臓はしばしば一時的あるいは永続的にな障害を受けた。
【0022】
健常人において腎静脈圧の正常値は、0〜5mmHgである。右心不全のある患者は慢性的に20〜30mmHgの静脈圧の上昇があり、しばしば腎機能の減退と腎血流量の減少を示す。しかしながら、例えこの上昇した圧力の暴露が数週または数ヶ月にわたる長期であっても、前記腎静脈圧が減少すれば、前記腎静脈圧は60mmHgを超えていない限り、前記腎機能は回復することが知られている。
【0023】
前記腎静脈圧の上昇に対する腎臓の生理的反応に基づくと、通常治療というよりは病気とみなされるが、直感に反する方法およびシステムは、人間の腎臓を髄質の低酸素から守るために発明された。この方法は、一時的、部分的、および制御可能に少なくとも1つの腎臓からの静脈血の流出を遮り、ARFの重篤度を予防あるいは和らげることを含む。
【0024】
腎盂における尿圧の上昇
腎盂(pelvis)は腎臓の中心にある腔であって尿管の延長である。腎臓のネフロンで形成された尿は、腎盂へと排出される。腎盂から尿は、尿管を経て膀胱へと排出される。前記腎盂、尿管、膀胱は、ひとつの腔を形成する。正常な対象者において、腎臓の腎盂の圧力は、約大気レベルかその少し上である。排尿中、膀胱は収縮し、膀胱圧は100cmの水の高さの頂点に達する。尿管に閉塞がなければ、腎盂圧は膀胱が満杯のときにのみ、長期にわたり有意に上昇する。
【0025】
上昇した腎盂圧に対する腎臓の生理的反応は、「閉塞性腎症」と呼ばれる疾患との関連で研究された。閉塞性腎症という用語は、尿流の閉塞、腎盂の上昇、および最終的には腎臓内の圧力がかなり高い値であることの結果により生じる、腎臓の機能的かつ病理的変化を表すために使われる。尿の流れの閉塞は尿路のどこにでも生じ、多くの異なった原因を有する可能性がある。長期間(1日から数週)にわたる尿流の顕著な閉塞は腎不全になり、手術的矯正が必要になる可能性がある。閉塞性腎症は、最終段階の腎不全の原因の約4%である。
【0026】
同時に、短期間(数時間から1日まで)の尿流の閉塞、および関連した腎盂圧の上昇は害がないように思われる。「Reflux and Obstructive Nephrophathy(逆流性および閉塞性腎症)」James M.GloorとVincente E.Torresは、さまざまな期間の完全な片側尿管閉塞を除去した後、腎機能が回復したことを報告した。片側の完全な尿管閉塞除去後の、同側の糸球体濾過速度の回復については、犬で最も研究されており、それは閉塞期間による。完全な回復は1週間の閉塞後はいつも起こるが、閉塞が長く続くほど腎機能が完全に戻るまでの期間も長くなる。永続的な腎臓の障害を生じるまでには閉塞が数日から数週続く。このデータに基づくと、1つあるいは2つの腎臓の尿流出の数時間の閉塞は、腎臓において長期的な影響を及ぼすものではない。
【0027】
腎盂圧の上昇の腎機能に対する急性的な作用は、動物において研究された。Hvistendahlらは尿圧上昇の腎機能に対する作用を「Renal hemodynamic response to gradated ureter obstruction in the pig(豚における経時的尿路閉塞に対する腎の血流力学的反応)」(Nephron 1996;74(1):168〜74)の中で記載している。10mmHgから最大80mmHgまでの段階で尿管圧が上昇すると、同側の腎血流(RBF)(つまり前記処置が行われた同側の腎臓への減少した血流)が45%まで、1分あたり300から168mlまで減少することをHvistendahlは報告した。同側(体の反対側、あるいは治療が行われていない腎臓)のRBFは有意に変化しなかった。動脈圧の中間値は、実験手順の間一定だった。このことは前記RBFの減少は、同側の腎静脈抵抗性の有意な上昇によることを示唆している。これらの変化と付随して、同側のGFRは75%まで、1分あたり40から10mlまで減少した。
【0028】
特に、本発明の目的に合わせて前記治療された腎臓のGFRは、75%まで減少するが、RBFは44%までの減少である。RBF(酸素運搬指数)のGFR(酸素消費指数)に対する比率は120%、7.5から16.8まで上昇した。Hvistendahlの尿管閉塞の文献における数値は、Dotyの先に引用された腎静脈血の実験と異なるが、これはDotyがRBFを腎臓の重さで標準化し、Hvistendahlはしなかったためであり、両実験の最終的な効果は極めて類似いる。特に、GFRに対するRBFの比率は本発明の結果の約2倍である。反対側の腎臓においてGFRは実験期間中変化しなかった。
【0029】
Lelargeらは「Acute unilateral renal failure and contralateral ureteral obstruction(急性片側性腎不全と対側尿路閉塞)」(American Journal of Kidney Diseases.20(3):286〜8,1992 Sep)の中で、本発明を支持する事例の臨床証拠を報告している。産科手術後、ある女性患者が1つの腎臓の急性不全を発現した。前記もう一方の腎臓の尿管は、術中何かの事情で結紮された。驚くことに、ARFを発症したのは結紮されていない腎臓であった。おそらくは前記腎臓の尿管の結紮が腎盂圧の上昇をもたらし、結紮された腎臓を手術による損傷から守ったのであろう。
【0030】
これらの生理的データの趣旨に基づくと、低血圧、手術、または造影剤注入のような持続した急性的な腎臓への損傷の間、腎盂圧が約10から80mmHgまで上昇することが、腎髄質における酸素需要に対する酸素供給の比率を上昇させることによって腎臓をARFから守るのであろう。
【0031】
治療への付属
高い圧力により膀胱または尿管の拡張が患者に対して痛みとなる場合、鎮痛剤または抗痙攣剤が膀胱、尿管、および腎盂に注入された液体に加えられてもよく、全身的に与えられてもよい。前記薬剤の効果を高めるために、電動の薬剤投与が使用されうる。電動薬物投与(EMDA)は、強力な局所麻酔薬であるリドカインのようなイオン化された薬剤を電流の適用により能動輸送することを含む。Rosamiliaらは女性においてEMDAを使用した無痛膀胱拡張の成功を記述した(「Electromotive drug administration of lidocaine and dexamethasone followed by cystodistension in women with interstitial cystitis(間質性膀胱炎の女性におけるリドカインとデキサメタゾンの電動薬剤投与とそれに続く膀胱拡張)」International Urogynecological Journal Pelvic Floor Pelvic Floor Dysfunction 1997;8(3):142〜5)。腎臓を圧力から保護することに加えて、本発明は低温液体による腎盂の洗浄により補足され得る。腎臓を冷却することで腎臓の代謝、さらに酸素需要を減らすことになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
提案された臨床の使用に対して、腎虚血、腎髄質低酸素、およびARFを引き起こしうる損傷から、患者の腎臓を保護するために新しいシステムおよび方法が使用されうる。このシステムおよび方法は、損傷前、損傷中、または損傷後に直接使用される場合、腎臓への損傷を減らすことによって、ARFの結果を改善するためにも使用され得る。前記損傷は、低動脈圧または造影剤注入器109の使用などによる血中への造影剤の注入でありうる。前記システムおよび方法は、少なくとも一つの腎臓のGFRに対するRBFの比率の上昇と同時に、腎臓の酸素消費とGFRを一時的に減少させるという同じ目標を実質的に達成するということが理解される。例えば、腎臓の酸素需要は、腎臓を低酸素から保護するために一時的に実質上減少する。本発明の治療方法およびシステムの期間中および直後、腎臓は尿を濃縮できず、ナトリウムをろ液から再吸収して血中に戻すことが出来ないであろうということが予想される。通常は腎機能の低下の兆候であるが、これらの効果は、調節可能でリバース可能な方法で比較的短時間の適応ならば、より深刻な危険にさらされている腎臓を保護すると期待される。
【0033】
図1は腎静脈圧を上昇させるシステムを用いて、ARFから腎臓107を保護するために患者101の1つの治療を示す。前記患者は、造影剤注入を受けたグループから選択されてもよい。前記患者は、慢性腎疾患、糖尿病、および高齢、あるいは前記患者が造影剤の注入の間、特に危険性を示す他の基準からなる疾患の群の1もしくはそれ以上から患っているので、前記患者は前記グループから選択されてもよい。このシステムは腎静脈を部分的に遮断することにより高い腎静脈圧を達成する。前記システムは最も基本的な形では、血管カテーテル111、カテーテルの遠位末端の(術者から遠く離れた)膨張性のバルーン112、およびカテーテルの近位末端(術者に最も近くまたは近く)に結合した膨張性のバルーン装置114より成る。
【0034】
前記システムは腎静脈に除去可能な閉塞物を作ることにより、一時的に腎静脈圧を上昇させる。前記システムは、正常値以上、および例えば部分的に閉塞することにより30〜60mmHgの範囲で腎動脈補助圧力を作るが、完全には腎静脈血流を遮断しないために、閉塞は調節可能である。この明細書の範囲内の遮断、阻害、または閉塞という用語は、体内の液体の通過に適用されている場合は同じ意味を有する。
【0035】
実施例のために、本発明のカテーテル111は、鼠径部に切開あるいは穿刺して患者の大腿静脈に挿入される。前記カテーテルは外径が9フレンチまであるが、5フレンチまたはそれ以下が好ましい。前記カテーテルは下口(心臓に向かって)に進められ、最初に大腿静脈に、さらに下大静脈(IVC)103に進められる。前記カテーテルの挿入中、バルーン112は、血流を妨害せずに小さな穴の中と血管を経た通過を可能にするために、収縮且つ虚脱されている。例えば誘導線、誘導カテーテル外筒などの一般的な透視装置、超音波操縦、または介入用具を用いて、前記カテーテル111の遠位末端は腎静脈106に挿入され、そこで拡張する。
【0036】
図1のパネル113は、腎静脈造影(造影剤を用いて増強したX線像)を用いた腎臓107の腎静脈106におけるカテーテルバルーンの位置を示す。ヒトの腎静脈は、下大静脈との接合部で直径約8〜12mmである。それゆえバルーン112膨張する際、直径が約5〜8cmまで拡張すべきであり、効果的に部分的に腎静脈106を遮断する。この部分的遮断が腎臓107から下大静脈に向かう血流への抵抗を生み出す。この上昇した抵抗の結果として、腎臓とバルーン(腎静脈上流の圧)の間の腎静脈部分の圧が上昇する。上昇した腎静脈圧の上昇のため、腎臓の片側、あるいは両方のGFRは減少し、ARFの重篤度を予防若しくは減少する。バルーン以下の圧力(腎静脈の下流の圧力)は下大静脈圧とおおむね等しい。
【0037】
反対側の腎臓108は、図1に示される実施形態では保護されないかもしれない。この手技において、反対側の腎臓は尿を生成し、GFRは正常であることが予想される。もし保護されていない腎臓が傷害を受けると、自発的に時間をかけて回復するだろうが、保護された腎臓107は正常の腎機能を示す。代替策では、両側の腎臓が、カテーテル11を使用して同様に保護されうる。
【0038】
カテーテル111の近位端は、バルーン膨張装置114に弾性チューブによってつながれる。カテーテル111は腎静脈圧測定のため、バルーン膨張管、圧伝道管を含む。注射器114バルーン膨張装置は、バルーン112を膨張させる装置の一つの例である。Merit Medical Inc.(South Jordan、ユタ州)はバルーンの先端に付けられるカテーテルのためのさまざまなこのようなタイプの膨張装置を提供しており、それらは容易に腎静脈閉塞システムに採用されうる。例えば、Merit Medicalはバルーンカテーテルのためのインテリシステム膨張注射器を製作しており、それはインターベンショナル心臓学に用いられ、心臓の冠動脈の中で血管形成バルーンを膨張する。
【0039】
膨張注射器は圧測定器115を備えており、腎静脈圧を表示する。バルーン112が膨張しているとき、部分的に腎静脈を遮断し、腎静脈から下大静脈への血流を遮断する。カテーテル111の遠位端は腎臓の小静脈の一つを貫通し、静脈血の流動によってバルーンが下大静脈に移動するのを防ぐ。経験のあるカテーテル技師によってカテーテルを他の位置に留置することが考案されることは考えられる。バルーン112は、腎静脈106と下大静脈103の接合部付近に置かれる。バルーンは部分的にあるいは完全に下大静脈の傍におかれ、接合部からの血液の流出を防ぐと理解される。
【0040】
図2は、腎侵襲に侵された患者101が、カテーテル204を膀胱203に挿入して治療されているのを図式的に示している。本発明の別の実施形態に従って、患者の膀胱203はカテーテルからの液体の調節された注入により上昇している。膀胱203は最初の腎臓107の腎盂201に尿管202によって結合しており、第2の腎臓108の腎盂211には尿管205により結合している。膀胱203、腎盂201、尿管202はともに腎臓の尿路を形成し、液体の接触の中にある。
【0041】
腎盂201の圧力を上昇するために、カテーテル204は膀胱203に留置される。カテーテルは標準的なものあるいはいわゆるフォーリーカテーテルでも良い。注入装置214は滅菌生理食塩水などの液体を膀胱への圧力のもとに注入するために使用され、膀胱(それから尿管と腎盂)の圧力を望む値に保つ。カテーテルは、例えば、尿路圧を人工的な増加の前と比べて少なくとも10から20cmHO上昇させる。カテーテル204は液体注入管に加えて、閉塞バルーン、圧測定管、放出管、を備える。さまざまな適切なカテーテルがBard Medical Division of C.R.Bard Inc.から利用可能で、それは泌尿器科領域のドレナージシステムのマーケットリーダーである。例えば、Bardex(登録商標)Lubricath(登録商標)3方向カテーテルは患者の膀胱への圧力の下で、液体を分配し、安全を確保するために圧力を測定するのに採用されうる。カテーテル204のバルーン膨張管は、そとにあるバルーン膨張装置207に結合される。
【0042】
単に膀胱の出口を塞ぎ、尿路圧をそれ自体で上昇させることにより、患者の膀胱203の圧力を有意に上昇させることは可能である。膀胱内圧の上昇を加速させるため、滅菌液をポンプ214からカテーテルの管を通して、膀胱に注入することもできる。圧測定器215は、管と膀胱の圧力を測定するために使用される。膀胱圧を希望の値、例えば、60mmHgに維持するために技師はある量の液体を膀胱に定期的に加えたり放出したりする。
【0043】
腎静脈圧に関してすでに議論した治療と同様に、膀胱圧(あるいは片方あるいは両方の尿管圧)は人工的に上昇させ、腎機能に影響を与える。それから、造影剤が患者の血中に注射される。造影剤が患者内に拡散した後(あるいは所定の前もって決められた時間の後)膀胱あるいは尿管の圧力は正常値まで減少させられ、腎機能が回復するようにする。これらの段階は順次行われるか、または膀胱圧は造影剤が注入されるとき若しくは直後に上昇される。
【0044】
膀胱内の圧力を上昇させるこの方法は、単純性という利点がある。さらに、膀胱内の圧力の上昇が両方の腎臓に影響を与えるので、この方法は両方の腎臓においてAFTを予防あるいは最小限にとどめる。しかしながら、膀胱から尿管への流れが遮断されているので、患者は治療中に排尿できない。それゆえ、この実施形態は比較的短時間(例えば、24時間まで)にしか適応できない。代わりに、例えば、透析器と呼ばれるいわゆる人口腎臓が腎機能の停止の代わりとして使用されうる。例えば、Gambro AB(ストックホルム、スウェーデン)のPrisma CRRTのような人口装置において、患者の腎臓が傷害から保護されている間、余計な液体や毒素を患者の体内から除去するために使用されうる。
【0045】
図3は選択的に片方の腎盂の圧力を上昇させることにより、片方の腎臓のみ保護する尿管カテーテル301の実施形態である。尿管カテーテル301は腎臓107の尿管202に留置される。カテーテルを尿管に留置することは、尿道を通して膀胱に留置するよりもいくらか難しい。それは特別な手術的技術と泌尿器科医に使われている道具を必要とする。カテーテルを尿管に留置する内視鏡的手技は、米国特許番号第4,813,925号のSpiral Ureteral Stent(らせん状尿管ステント)に記述されている。カテーテル301は、膀胱203へと横切り導入鞘を通って尿道303に留置されるのが示されている。カテーテルはその先端を腎盂201にありながら、さらに尿管へと導入される。カテーテル301は閉塞バルーン302を備えている。バルーン302は尿管202(図示)、あるいは保護されている方の腎臓の腎盂201に留置される。部分的あるいは完全な尿管閉塞のためのバルーンカテーテルシステムは実質上、発明による他のカテーテル使用の設計と同じである。保護されていない方の腎臓108は尿を作り続け膀胱に排出される。シース304は排出系路を備えており、それにより尿は膀胱203から尿集積袋305へと排出される。腎臓の腎盂を閉塞したり圧力を加える同じ基本的な機能を満たすために、他のカテーテル設計が想像されるのは理解できる。膀胱の上昇した圧力がそれゆえ両方の腎臓に伝わり、希望するGFRの減少、GFRに対する腎血流量の比率の上昇、両側の腎臓の腎髄質において低酸素の緩和を引き起こす。
【0046】
図4はカテーテルの膀胱への挿入の単純で安価な実施形態を示し、それは自動的に腎盂の圧力を希望する値に維持する。カテーテル204の遠位端には穴がついていて、腎臓107の腎盂201と液体袋401の間における液体の伝達が可能になる。その袋401は滅菌食塩水のような水硬注入液402で満たされる。患者の腎臓107と袋の液体の高さの違いが、腎盂における水力学的な圧力を決定する。例えば、水硬液が水の比重を持っている場合、100mmの高さの違い403は7.35mmHgの水力学的圧を生み出す。腎臓の効果的で安全な保護のために、10〜100mmHgの範囲の腎盂圧が望まれると予想される。腎盂圧の希望する上昇を達成するために、袋104の患者からの高さは13cm〜140cmの範囲であろう。持ち上げられた液体袋を用いた腎盂圧の調整方法は、図2と3に示された膀胱と片方の尿管閉塞の実施形態にも使用されうる。
【0047】
図5は、より複雑な実施形態を示す。この実施形態は、図4で示したシステムで可能なものよりも、腎盂圧のより長時間にわたってより正確な調節が必要なときに望まれる。カテーテル204は液体貯留器401にチューブ505と506を満たす液体を通して結合する。液体は、電動により調節されるポンプ501により膀胱203に注入され排出される。ポンプは、IV medicineを注入したり、血液を循環させるのに使用される普通のタイプのもので良い。ふさわしい蠕動回転ポンプは、たとえば米国特許番号第4,229,299号に記述されている。ポンプの回転は、調節操作台504の中にあるマイクロプロセッサーに基づいた調節システム508によって調節される。操作台は、ポンプの回転を受け取る圧力の信号507に基づいて調節する。圧信号は、カテーテル管の圧力に影響を与える膀胱あるいは尿路系の圧力を示す。センサー502は、広く使われている侵襲性血圧測定に用いられる使い捨て血圧計(米国、ユタ州のMerit Medicalが製造しているような血圧計)あるいは米国特許番号第6,171,253号と第6,272,930号に記載されているコンパクトチューブ埋め込み型圧センサーに似たようなものでありうる。
【0048】
図6はコントローラー508に埋め込まれたソフトウェアアルゴリズムを示し、例としては、調節操作台システム504のためのマイクロプロセッサーである(図5)。コントローラーと調節操作台はここに開示されたどの実施形態とも結び付けられ、それは腎動脈、膀胱、尿管へ挿入される先端を有するカテーテルを含む実施形態を含む。液体の圧力は圧センサー503、増幅器、アナログーデジタル変換機(図示せず)を用いて継続的に測定される(601)。これらはデジタル圧測定器の標準的な構成要素であり、詳細な説明は必要がない。プロセッサーは内臓時計を備えている。デジタル形式での情報は、1000分の5〜10秒ごとにプロセッサーに供給される。ソフトウェアアルゴリズム602は、測定された圧力と技師によって設定されたプロセッサーにより計算された目標値と比較する。アルゴリズムは膀胱203の膨張(液体の注入)603あるいは収縮(液体の排出)604を指示するが、それは希望の圧力を達成する目標値に圧力を持った自動制御に基づいている。一般的に、アルゴリズムは腎盂の圧力を10mmHg以上、100mmHg以下に達成する。図6に示されているアルゴリズムの実行は、調節工学の分野で知られている方法を適応することにより容易に達成できる。プロポーショナルインテグラルコントローラーのような古典的なプロセスコントロールアルゴリズムは、目標値に圧力を維持するのに使用される。コントロールシグナルは継続的に、周期的に、膀胱にある液体の量を調節するために適応される。術中、膀胱が拡張したり収縮したり、液が漏れたりあるいは患者の容態が変化することが予想される。このような変化に応じて、腎盂圧の目標値は変更し修正を要求するかもしれない。修正は圧力液の読みに基づいて自動的にあるいは技師によってなされるが、それはしばしば時間の節約と安全性を高めるために自動に調節されることが好まれると想像される。
【0049】
図7は、他の開示された実施形態の付属として、あるいは腎臓による代謝エネルギー消費を減らすことにより腎臓を虚血から守る独立した方法としての、腎臓冷却の使用を示している。冷却による腎臓の保護はよく知られている。手術において可能なときは、腎臓はARFになる可能性を減らすために氷に詰められる。腎移植の経験によると、腎臓は冷却によりよく保護され、再び暖められるとよく回復することが確かめられている。腎臓107は、冷却された食塩水あるいは他の滅菌溶液を腎盂201に継続的に注入あるいは洗浄することにより、冷却される。尿道カテーテル701は、遠位端を腎盂にもつ。提案された実施形態において、カテーテル701は尿管202を閉塞せず、腎盂に注入された冷却溶液は膀胱203に排出される。冷却溶液は袋702に保存され、氷水槽703に浸され温度を凍る温度より少し上に保つ。
【0050】
ここに開示された実施形態は患者の腎臓を虚血傷害から保護し、あるいは腎臓を例えば、GFRに対する腎血流量の比率によって表される酸素需要に対する供給の割合を改善することにより治療する。この目標は正常では病的状態に結び付けられる腎臓の生理的反応を活性化、あるいは誘発することにより達成される。この反応の結果として、腎臓のGFR(腎機能)は腎臓を通る血流量よりも少ない程度に減少するかもしれない。一つあるいは二つの腎臓におけるGFRに対する腎血流量の比率は、数時間から数週続く可能性のある受傷中、人工的に増加させられうる。
【0051】
本発明は、現在最も実践的且つ好ましい実施形態であると考慮されるものと関連して説明してきたが、当然のことながら、本発明は開示された実施形態に限定されるものではなく、むしろ付属の請求の範囲の要旨及び範囲を逸脱しない範囲の様々な修正及び同等の処置を含むことを目的としているものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
本発明の好ましい実施形態および最良の態様は、以下で説明される付属の図面で説明されている。
【図1】図1は、腎静脈圧の上昇による患者の治療を示す。
【図2】図2は、膀胱圧の上昇による治療を示す。
【図3】図3は、腎盂圧の上昇による治療を示す。
【図4】図4は、膀胱圧の調節の仕方を示す。
【図5】図5は、閉環ポンプシステムによる膀胱圧の能動調節示す。
【図6】図6は、膀胱圧を調節するアルゴリズムを示している。
【図7】図7は、冷たい液体による腎盂の洗浄による腎臓の冷却を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の患者の腎臓を保護する方法であって、
a.前記患者の少なくとも1つの腎臓の尿路における圧力を人工的に上昇する工程と、
b.前記上昇させた圧力を維持することにより前記腎臓の腎機能を減少させる工程と、
c.前記尿路における前記圧力を減少させ、前記減少させた腎機能以上に前記腎機能を増加させる工程とを有する、方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、前記尿路における圧力の上昇は、一時的である。
【請求項3】
請求項1の方法において、前記尿路における圧力の上昇は、リバース可能である。
【請求項4】
請求項1の方法において、前記尿路の圧力は、圧力を人工的に上昇する前の前記尿路における圧力レベルから、少なくとも10〜20cmHOの圧力まで上昇させるものである。
【請求項5】
請求項1の方法において、前記尿路の圧力は、患者への造影剤の投与の前に上昇させるものである。
【請求項6】
請求項1の方法において、前記尿路の圧力は、侵襲から腎臓を保護するために上昇させるものである。
【請求項7】
請求項1の方法において、前記尿路の圧力は、低血圧の手術の前に上昇させ、前記上昇された圧力は、前記手術の後に減少されるものである。
【請求項8】
請求項1の方法において、前記尿路の圧力は、少なくとも1時間上昇させるものである。
【請求項9】
請求項1の方法において、前記尿路の圧力は、患者の膀胱へ液体を人工的に注入することにより上昇させるものである。
【請求項10】
請求項9の方法において、前記注入された液は、最初に腎臓を通って流れずに、患者の膀胱へ流れるものである。
【請求項11】
請求項9の方法において、前記注入された液は、膀胱へ流れる前に、患者の尿道を通って膀胱へ流れるものである。
【請求項12】
請求項9の方法において、さらに、
膀胱へ注入した液体に上昇させた圧力を適応することにより、膀胱における上昇させた圧力を維持する工程を有するものである。
【請求項13】
請求項12の方法において、前記注入された液の上昇した圧力は、重力によって適応されるものである。
【請求項14】
請求項12の方法において、前記注入された液は、前記患者より上に持ち上げられた容器から流れ、その容器から膀胱へ流れるものである。
【請求項15】
請求項14の方法において、前記容器は、患者より上に13センチメーター(cm)〜140cmの範囲での距離で持ち上げられるものである。
【請求項16】
請求項14の方法において、前記注入された液は、重力によって前記容器から膀胱へ流れるものである。
【請求項17】
請求項1の方法において、前記尿路の圧力を上昇させる工程は、さらに、前記患者の膀胱を人工的に拡張する工程を有するものである。
【請求項18】
請求項17の方法において、前記人工的に膀胱を拡張する工程は、さらに、膀胱へ液を人工的に注入する工程を有するものである。
【請求項19】
請求項1の方法において、前記尿路の圧力を上昇させる工程は、さらに、腎臓から尿路を通る尿の流れを少なくとも部分的に妨害する工程を有するものである。
【請求項20】
請求項1の方法において、前記尿路の圧力を上昇させる工程は、さらに、膀胱からの尿の流れを少なくとも部分的に妨害する工程を有するものである。
【請求項21】
放射線手技を受けている哺乳類の患者における造影剤腎症を予防あるいは治療する方法であって、
a.前記患者の少なくとも1つの腎臓の尿路における圧力を人工的に上昇させる工程と、
b.前記患者の血管へ造影剤を注入する工程と、
c.腎臓の尿路における圧力を減少させる工程とを有する、方法。
【請求項22】
請求項21の方法において、さらに、
前記造影剤が患者の血中にある期間の腎機能を減少させる工程を有するものである。
【請求項23】
請求項21の方法において、さらに、
前記工程(a)の前に、慢性腎不全、糖尿病、および高齢からなる疾患群の1もしくはそれ以上を患っている患者群から前記患者を同定する工程を有し、
前記同定された患者は、造影剤の注入のの間は特に危険であると決定されるものである。
【請求項24】
請求項21の方法において、前記圧力を減少させる工程は、前記造影剤の注入前の圧力へ尿路を戻すものである。
【請求項25】
請求項21の方法において、前記尿路における圧力の上昇は、一時的である。
【請求項26】
請求項21の方法において、前記尿路における圧力の上昇は、リバース可能である。
【請求項27】
請求項21の方法において、前記工程(a)、(b)、および(c)は、順次に行われるものである。
【請求項28】
請求項21の方法において、前記尿路の圧力は、前記工程(a)の前の尿路における圧力レベルから、少なくとも10〜20cmHOの圧力まで上昇させるものである。
【請求項29】
請求項21の方法において、前記尿路の圧力は、患者への造影剤の投与の前に上昇させるものである。
【請求項30】
請求項29の方法において、前記尿路の圧力は、患者の膀胱における圧力である。
【請求項31】
請求項21の方法において、前記尿路の圧力は、少なくとも1時間上昇させるものである。
【請求項32】
請求項21の方法において、前記尿路の圧力は、前記患者の膀胱へ液を人工的に注入することにより上昇させるものである。
【請求項33】
請求項32の方法において、前記注入された液は、最初に腎臓を通って流れずに、患者の膀胱へ流れるものである。
【請求項34】
請求項32の方法において、前記注入された液は、膀胱に入る前に、患者の尿道を通って膀胱へ流れるものである。
【請求項35】
請求項33の方法において、さらに、
膀胱へ注入した液体に上昇させた圧力を適応することにより、膀胱における上昇させた圧力を維持する工程を有するものである。
【請求項36】
請求項35の方法において、前記注入された液の上昇された圧力は、重力によって適応されるものである。
【請求項37】
請求項36の方法において、前記注入された液は、前記患者より上に持ち上げられた容器から流れ、その容器から膀胱へ流れるものである。
【請求項38】
請求項37の方法において、前記容器は、患者より上に13センチメーター(cm)〜140cmの範囲での距離で持ち上げられるものである。
【請求項39】
請求項37の方法において、前記注入された液は、重力によって前記容器から膀胱へ流れるものである。
【請求項40】
請求項37の方法において、さらに、
調節可能なポンプによる、膀胱へ注入された液の流量を制御する工程を有するものである。
【請求項41】
請求項35の方法において、前記尿路の圧力を上昇させる工程は、さらに、前記患者の膀胱を人工的に拡張する工程を有するものである。
【請求項42】
請求項41の方法において、前記膀胱を人工的に拡張する工程は、さらに、膀胱へ液を人工的に注入する工程を有するものである。
【請求項43】
請求項35の方法において、前記尿路の圧力を上昇させる工程は、さらに、腎臓から尿路を通る尿の流れを少なくとも部分的に妨害する工程を有するものである。
【請求項44】
請求項35の方法において、前記尿路の圧力を上昇させる工程は、さらに、膀胱からの尿の流れを少なくとも部分的に妨害する工程を有するものである。
【請求項45】
手術中、患者の腎臓の自然な機能を阻害する方法であって、
a.前記患者の少なくとも1つの腎臓の尿路における圧力を人工的に上昇させる工程と、
b.前記患者に手術を行う工程と、
c.前記腎臓の尿路における圧力を、実質的に、前記工程(a)の前の圧力レベルまで減少させる工程とを有する、方法。
【請求項46】
請求項45の方法において、前記尿路における圧力の上昇は、一時的である。
【請求項47】
請求項45の方法において、前記尿路における圧力の上昇は、リバース可能である。
【請求項48】
請求項45の方法において、前記尿路の圧力は、前記工程(a)の前の尿路における圧力レベルから、少なくとも10〜20cmHOの圧力まで上昇させるものである。
【請求項49】
請求項45の方法において、前記尿路の圧力は、前記患者の膀胱における圧力である。
【請求項50】
請求項45の方法において、前記尿路の圧力は、少なくとも1時間上昇されるものである。
【請求項51】
請求項45の方法において、前記尿路の圧力は、前記患者の膀胱へ液を人工的に注入することにより上昇されるものである。
【請求項52】
請求項51の方法において、前記注入された液は、膀胱に入る前に、患者の尿道を通って膀胱に流れるものである。
【請求項53】
請求項51の方法において、さらに、
膀胱へ注入された液体に上昇された圧力を適応することにより、膀胱における上昇された圧力を維持する工程を有するものである。
【請求項54】
請求項53の方法において、前記注入された液の上昇した圧力は、重力によって適応されるものである。
【請求項55】
請求項54の方法において、前記注入された液は、前記患者より上に持ち上げられた容器から流れ、その容器から膀胱へ流れるものである。
【請求項56】
請求項55の方法において、前記容器は、患者より上に13センチメーター(cm)〜140cmの範囲での距離で持ち上げられるものである。
【請求項57】
請求項51の方法において、さらに、
調節可能なポンプによる、膀胱へ注入された液の流量を制御する工程を有するものである。
【請求項58】
請求項45の方法において、前記尿路の圧力を上昇させる工程は、さらに、前記患者の膀胱を人工的に拡張する工程を有するものである。
【請求項59】
請求項58の方法において、前記膀胱を人工的に拡張する工程は、さらに、膀胱へ液を人工的に注入する工程を有するものである。
【請求項60】
請求項45の方法において、前記尿路の圧力を上昇させる工程は、さらに、腎臓から尿路を通る尿の流れを少なくとも部分的に妨害工程を有するものである。
【請求項61】
請求項45の方法において、前記尿路の圧力を上昇させる工程は、膀胱からの尿の流れを少なくとも部分的に妨害する工程を有するものである。
【請求項62】
請求項45の方法において、前記尿路の圧力を上昇させる工程は、さらに、前記尿路における圧力を15からcmHO〜150cmHOの範囲で上昇する工程を有するものである。
【請求項63】
請求項45の方法において、前記尿路の圧力を上昇させる工程は、さらに、圧力の回復の工程の前に、少なくとも30分以上、しかし24時間以下で、前記尿路における圧力を上昇する工程を有するものである。
【請求項64】
請求項45の方法において、前記工程(a)、(b)、および(c)は、順次に行われるものである。
【請求項65】
請求項45の方法において、前記手術は、前記尿路における圧力を上昇させる工程の前に始まるものである。
【請求項66】
請求項45の方法において、前記手術は、前記尿路における圧力を減少させる工程の前に実質的に終わるものである。
【請求項67】
哺乳類の患者の急性腎不全を予防あるいは治療するシステムであって、
腎臓の腎機能を減少させるための、少なくとも1つの腎臓の尿路における圧力を人工的に上昇させる手段と、
圧力を人工的に上昇させる手段における前記圧力に関連した圧力を検出し、表示するモニタリング手段と、
前記圧力を回復し、前記腎機能を回復するための手段とを有する、システム。
【請求項68】
請求項67のシステムにおいて、さらに、
前記上昇した圧力を、規定された圧力で維持する手段を有するものである。
【請求項69】
請求項67のシステムにおいて、前記上昇させた圧力を維持する手段は、さらに、規定された圧力を調節する手段を有するものである。
【請求項70】
請求項67のシステムにおいて、前記圧力を人工的に上昇させる手段は、さらに、圧力を人工的に上昇させる手段と、膀胱圧力を上昇させる手段とを有するものである。
【請求項71】
請求項67のシステムにおいて、前記圧力を人工的に上昇させる手段は、さらに、前記患者の膀胱へ液を人工的に注入する手段を有するものである。
【請求項72】
請求項71のシステムにおいて、前記圧力を人工的に上昇させる手段は、その遠位端に拡張可能な装置を持つカテーテルを有するものである。
【請求項73】
請求項72のシステムにおいて、前記拡張可能な装置は、前記患者の膀胱に挿入可能である。
【請求項74】
哺乳類の患者の少なくとも一つの腎臓を治療するシステムであって、
少なくとも一つの腎臓から通じる尿路に留置可能なカテーテルと、
閉塞装置と圧力検出ポートを有する遠位端を持つ前記カテーテルであって、前記閉塞装置は、閉塞モードと受動モードを有するものである、前記カテーテルと、
前記圧検出ポートとの液体伝達における圧力センサーと、
前記尿路における圧力を、腎機能を阻害するのに十分な圧力まで上昇させるために、前記閉塞モードで作動する前記閉塞装置とを有する、システム。
【請求項75】
請求項74のシステムにおいて、前記閉塞装置は、バルーンを有し、さらに、
前記バルーンを有する液体伝達中のバルーン液体注入器と、
前記閉塞装置を前記閉塞モードへ切り替えるための、前記バルーン液体の前記バルーンへの注入を調節するための作動装置とを有する、システム。
【請求項76】
請求項74のシステムにおいて、さらに、
前記閉塞装置を閉塞モードと受動モードの間で切り替える調節器を有するものである。
【請求項77】
請求項74のシステムにおいて、前記閉塞装置は、閉塞モードにある場合、尿の排出を少なくとも部分的に妨害するものである。
【請求項78】
請求項77のシステムにおいて、前記閉塞装置は、閉塞モードにある場合、前記患者の膀胱から尿の排出を少なくとも部分的に妨害するものである。
【請求項79】
請求項74のシステムにおいて、さらに、
放射線造影剤注入器を有し、前記閉塞装置は、放射線造影剤注入の間、閉塞モードで作動されるものである。
【請求項80】
請求項74のシステムにおいて、前記閉塞装置は、手術の間、閉塞モードで作動されるものである。
【請求項81】
哺乳類の患者の少なくとも1つの腎臓の自然な機能を一時的に減少させるシステムであって、
前記患者の膀胱に留置可能なカテーテルであって、前記カテーテルは、閉塞装置を有する遠位端と、注入液体ポートとを持つ、カテーテルと、
注入液体供給源と連結し、前記液体ポートへ供給するための注入された液体の圧力を上昇する、圧力装置であって、前記閉塞装置は、閉塞モードと受動モードを有するものである、圧力装置と、
前記カテーテルの近接部分に連結可能で、前記液体ポートとの液体伝達における注入液体供給源とを有し、
前記閉塞装置は、前記注入液体が膀胱に注入されている間、膀胱を閉塞するための閉塞モードと、膀胱が前記注入された液体を排出することを可能にする放出モードとを有するものである。
【請求項82】
請求項81のシステムにおいて、さらに、
前記液体注入ポートとの液体伝達における圧力センサーを有し、前記センサーは、膀胱における圧力を示す信号を生み出すものである。
【請求項83】
請求項81のシステムにおいて、前記閉塞装置は、バルーンである。
【請求項84】
請求項81のシステムにおいて、前記圧力装置は、前記液体供給源から前記カテーテルへ延びた液体チューブと連結したポンプである。
【請求項85】
請求項81のシステムにおいて、前記圧力装置は、前記容器の支持部材であり、前記補助部材は、前記患者の上に持ち上げられるものである。
【請求項86】
請求項81のシステムにおいて、前記注入液体供給源は、さらに、
前記カテーテルの近接部分と連結している前記注入液体のための、前記液体ポートとの液体伝達における、容器と、
前記容器から前記カテーテルの近接部分へ延びた導線と、
持ち上げられた液体容器支持部材であって、前記容器は、前記患者の上で保持されているものである、液体容器支持部材とを有するものである。
【請求項87】
請求項86のシステムにおいて、前記容器は保持され、規定された距離は、前記患者の上から13センチメートル(cm)〜140cmの範囲である。
【請求項88】
請求項86のシステムにおいて、前記容器は、前記カテーテルに供給された重力である。
【請求項89】
請求項86のシステムにおいて、さらに、
前記容器中の液体を前記カテーテルへ運ぶために操作的に連結されたポンプを有するものである。
【請求項90】
請求項86のシステムにおいて、さらに、
前記容器中の液体を前記カテーテルへ運ぶためのポンプを有するものである。
【請求項91】
哺乳類の患者の少なくとも1つの腎臓で尿の圧力を上昇させるための方法であって、前記方法は、
a.前記患者の尿管へカテーテル先端を挿入する工程と、
b.腎臓から尿管を通る流量を前記先端によって妨害する工程と、
c.前記妨害された流量によって尿管にある液体圧力を上昇させる工程と、
d.前記上昇された液体圧力によって腎臓の機能に影響を与える工程と、
e.前記カテーテル先端を不活化あるいは除去することによって、前記妨害された液体を尿管を通して放出する工程と、
f.前記妨害された液体を放出した後、前記腎臓機能を回復させる工程とを有するものである。
【請求項92】
請求項91の方法において、前記上昇させた液体圧力は、さらに、前記カテーテを通って尿管へ液体を注入し、尿管と腎臓の出口での前記液体圧力を上昇させる工程を有し、前記方法は、さらに、前記液体が尿管に注入され続ける間、腎臓を通って尿管に注入される前記液体を排出する工程を有するものである。
【請求項93】
請求項92の方法において、前記カテーテル先端は、尿管における液体圧力を検出する圧力センサーに連結されており、前記方法は、さらに、
前記閉塞装置が働いている間、尿管における前記液体圧力をモニタリングする工程と、
尿管における前記液体圧力が、規定された低圧力閾値より下である場合、前記液を尿管に注入する工程と、
膀胱おける前記圧力が、規定された高圧力閾値よりも上である場合、尿管から前記液体を放出する工程を有するものである。
【請求項94】
請求項91の方法において、前記工程(b)、(c)、および(d)は、前記患者への造影剤の注入と同時である。
【請求項95】
請求項92の方法において、前記液体は、重力により前記患者の上に持ち上げられている液体袋から尿管へ注入されるものである。
【請求項96】
請求項95の方法において、前記液体袋は、患者の上に130cm〜140cmの範囲で持ち上げられるものである。
【請求項97】
請求項91の方法において、さらに、
尿管に注入されるために前記液体を冷却させる工程と、
尿管へ注入された冷却液体で、腎臓を冷却させる工程とを有するものである。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2006−518758(P2006−518758A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503811(P2006−503811)
【出願日】平成16年2月24日(2004.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/005327
【国際公開番号】WO2004/075948
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(505318927)ピーエルシー システムズ インク. (2)
【Fターム(参考)】