患者モニタリングシステムを用いる患者自己管理鎮痛法
患者が鎮痛剤を自己投与している間に患者の生理学的パラメータをモニタリングする患者ケアシステム。ディスプレイは患者の生理学的パラメータを鎮痛剤の自己投与(“PCA”−patient controlled analgestic:患者自己管理鎮痛法)の時点とともに表示して、生理学的パラメータに鎮痛剤が与える影響を選択可能な期間に渡って見ることができるようにする。生理学的パラメータはETCO2またはSpO2、或いは他のパラメータとすることができる。また、ポンプに関する許容パラメータを有する薬物ライブラリが含まれる、すなわち、許容範囲から外れると、または患者が許容範囲が許可する量よりも多い量の鎮痛剤を自己投与しようとすると、或いは患者の生理学的パラメータが注入の間に、ポンプに関するパラメータが許容範囲から外れる形で変化すると、このような事象に関する表示が行なわれ、そしてポンプを停止するといった処置が採られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して患者ケアシステム及び方法に関し、特に患者の生理学的パラメータまたはパラメータ群をモニタリングし、そしてこのようなモニタリングに関する情報を提供して、鎮痛剤投与に関連する中枢神経系及び呼吸の機能低下を防止しながら、患者に対する鎮痛剤の自己投与を制御するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プログラム可能な投与システムは、広範囲の種類の薬剤及び薬液を患者に種々の現場において投与するために医療分野において広く使用される。例えば、シリンジポンプ、大容量ポンプ(large volume pumps:ここでは「LVP」と記載する)、及び流量制御機器は、非経口的液体、抗生物質、化学療法薬剤、麻酔薬、鎮痛剤、鎮静剤、または他の薬剤のような医療用薬液を投与するために、病院、診療所、及び他の臨床現場において使用される。シングルシステムまたはマルチチャネルシステムを利用することができ、そして種々のシステムが、薬剤計算を自動で行なう計算機、薬物ライブラリ、及び複雑な投与プロトコルを含む種々のレベルの高性能を備える。更に別のタイプの薬剤投与システムは患者が自己管理する鎮痛剤(patient controlled analgesia:ここではPCAと記載する)ポンプである。PCAポンプの場合、患者が麻薬性鎮痛剤の投与を制御する。その理由は、患者は通常、疼痛管理を更に行なうための必要性を判断する最適な立場に置かれているからである。PCAは通常、PCAを使用する場合のみの専用のポンプスタンドアローン型注入装置を通して投与される。PCA注入装置の例は、ボイマン(Boydman)による米国特許第5069668号及びゼッブ(Zdeb)による米国特許第5232448号に開示されている。
【0003】
使用するポンプシステムのタイプに関係なく、特に麻酔薬、鎮痛剤、または鎮静剤のような薬剤の投与による重篤な副作用は、中枢神経系及び呼吸の機能低下を誘発し、これによって重篤な脳障害が残る、または死に至るような事態が起こり得る。例えば、シリンジポンプまたはLVPを使用して麻酔薬、鎮痛剤、または鎮静剤を注入するためには、高度に訓練された医療専門家が注意深く監視を行なって過剰投与を防止する必要がある。薬物治療過誤を最小限にするように設計される、高性能の自動プログラミング機能及び計算機能を有する投与システムの場合でも、入院患者または外来患者の臨床診断を行なっている間の麻薬性鎮痛剤または鎮静剤の投与の間に、患者に呼吸機能低下または他の有害な効果が生じるのは珍しいことではない。
【0004】
通常、患者が睡眠中であり、従って投与ボタンを作動させることができないことによって過剰投与が防止されるPCA(患者自己管理鎮痛法)の適用形態においても、PCA(患者が自己管理する鎮痛剤)の投与に関連して呼吸及び中枢神経系の機能低下が生じる、更には死さえも招く場合が起こっている。これらの原因として、PCA(患者が自己管理する鎮痛剤)注入装置をプログラミングする際の臨床過誤、鎮痛剤の混合またはラベル表示に際する過誤、機器の誤作動、及び力が入り過ぎた親類が患者の投与リクエストコード線を押すことにより鎮痛剤を余分に投与してしまう現象を挙げることができる。
【0005】
麻薬性鎮痛剤の過剰投与の危険があるため、ナロキソン(Narcan(商標))のような麻薬拮抗薬は、呼吸及び中枢神経系の機能低下を回復させるために院内で広く利用することができ、かつ使用される。しかしながら、このような麻薬拮抗薬の有効性は、呼吸及び中枢神経系の機能低下に対する迅速な判断及び治療に大きく依存するので、機能低下によって酸素欠乏に起因する脳障害が生じ得る、または死さえ招き得る。従って、呼吸及び中枢神経系の機能低下を迅速に判断し、治療して、機能低下が無事に回復する確率が確実に高くなるようにする必要がある。従って、患者の実際の健康状態を監視して呼吸または中枢神経系の機能低下を確認し、直ちに治療上の処置を採る必要がある。
【0006】
麻薬性鎮痛剤、鎮静剤、または麻酔薬の投与に関連する呼吸機能低下の危険が検出される場合、患者の呼吸状態及び心臓状態を、患者の血液を非侵襲的に測定する、または血液のサンプル採取を行なう必要を生じることなく通知するシステムが特に望ましく、かつ有用である。非侵襲的終末呼気二酸化炭素濃度(end tidal carbon dioxide:ETCO2)モニター及びパルスオキシメータによるモニタリングは上に記載したような2つの方法であり、これらの方法は、患者の生理学的パラメータをモニタリングするために使用される。ETCO2測定法では、呼気及び吸気のCO2の濃度、呼吸数、及び無呼吸(ゼロの呼吸数)をモニタリングし、パルスオキシメータは患者の血液の酸素飽和度及び患者の脈拍数をモニタリングする。ETCO2濃度、呼吸数、及び無呼吸の組み合わせ、または血中酸素飽和度及び脈拍数の組み合わせは、患者の呼吸及び心臓の全体的な状態を表わす重要な表示手段と成り得る。パルスオキシメータを使用して血中酸素飽和度を測定する場合、SpO2(動脈血酸素飽和度)という項目が一般的に使用され、そして本明細書においては酸素飽和度を示すために使用される。
【0007】
パルスオキシメータによる酸素濃度の非侵襲的な計測に関する一つの一般的なアプローチでは、患者の指のような静脈組織部分に跨って装着される2波長センサを使用して動脈血中の酸化ヘモグロビンの割合を測定し、それによって患者の酸素飽和レベルを測定する。更に、特定の組織部位における酸化ヘモグロビンは本質的に脈動を表わし、かつ循環器系全体と同期するので、システムは患者の脈拍数を間接的に測定する。同様のパルスオキシメータセンサの例は、アムンセン(Amundsen)らによる米国特許第5437275号及びベーカー(Baker)らによる米国特許第5431159号に開示されている。
【0008】
患者の呼吸状態をモニタリングする別の手段では、ETCO2を測定し、そして図表化して表わすが、これはカプノグラフ(capnography)として知られる手法である。特に、現在のカプノグラフモニターでは、分光法、例えば赤外分光法、質量分光法、ラーマン分光法、または光音響分光法を使用して、患者に非侵襲的に装着するノーズピース及び/又はマウスピースを通過する空気のCO2濃度を測定する(例えば、オリディオン(ORIDION)社、http://oridion.comや、ノバメトリクス・メティカル・システムズ(NOVAMETRIX Medical Systems)社、http://www.novametrix.comや、オトゥール(O’Toole)による米国特許出願公開第2001/0031929号を参照)。カプノグラフメーターによるETCO2波形、及び終末呼気二酸化炭素濃度、または吸気直前の二酸化炭素濃度であるFICO2のような指標が、手術室及び集中治療現場の患者の状態をモニタリングするために現在使用されている。
【0009】
PCA(患者が自己管理する鎮痛剤)注入ユニットを含むことができ、かつ複数のポンプユニットを集中制御する患者ケアシステムは医学分野では公知である。このようなシステムの例は、カーンズ(Kerns)らによる米国特許第4756706号、ルバルカバ・ジュニア(Rubalcaba,Jr.)による米国特許第4898578号及びサミオテス(Samiotes)らによる米国特許第5256157号に開示されている。これらの先行技術によるシステムの各々は、複数の個別ポンプとインターフェース接続して種々の制御機能を提供するコントローラを提供する。改良型患者ケアシステムはエッガース(Eggers)らによる米国特許出願第08/403503(米国特許第5713856)号に開示されている。エッガースらによるシステムの中央管理ユニットは、例えば特定の注入ユニットの注入パラメータを臨床医から取得し、そしてインターフェースとして機能して注入速度を設定し、速度に従って注入を制御し、各機能ユニットの内部設定及びプログラムを個々に制御し、そして各機能ユニットからの情報を受信し、そして表示することができる。エッガースらによる患者ケアシステムはまた、パルスオキシメータ及び心臓モニターのような種々のモニタリング装置を集中制御する。
【0010】
しかしながら、上に記載した先行技術による多くのシステムは、PCA注入装置をパルスオキシメータ及び/又はETCO2モニターと共に統合制御することができない。このようなシステムでは、医療関係者が専属の形で常にモニタリングを行なって麻薬性鎮痛剤の投与に関連して生じる恐れのある呼吸機能低下の副作用を迅速に検出し、そして治療する必要がある。従って、これらのシステムはコスト効率が高くない。その理由は、医療関係者が常にモニタリングを行なうことによって費用が増大するからである。
【0011】
更に、上に説明したシステムは呼吸機能低下が生じた場合にPCA注入ユニットの動作を自動的に中止することができない。PCA注入ユニットの動作を自動的に中止することができないので、これらのシステムでは実際に、麻薬性鎮痛剤の投与が更に行なわれ、適切な医療関係者が到着して治療介入するまで、呼吸機能低下を更に悪化させる。医療関係者が到着し、そして医療介入するために要する時間によって、麻薬拮抗剤の投与が遅れるので、麻薬拮抗剤の作用が減弱する恐れがある。
【0012】
既存のPCA注入システムに関連する不具合があるので、このような不具合が無いとした場合にPCA治療法から便利さを享受することができたはずの所定の患者はPCA(患者自己管理鎮痛法)を利用しようとはしない。その理由は、呼吸機能低下が気になるからである。患者が先行技術によるシステムを用いてPCA(患者自己管理鎮痛)治療を行なうのが適すると思われる場合でも、これらのシステムによって、患者は不注意による呼吸機能低下の危険があるので更に積極的な治療を受けることができず、従って患者は迅速かつ一層効果的な痛みからの解放を更に積極的な治療によって得るということができない。
【0013】
ボリッシュ(Bollish)らによる米国特許第5957885号、及びバンダビーン(Vanderveen)による米国特許出願公開第2003/0106553号に開示されているようなこの技術分野に大きな利点をもたらしている更に高性能のシステムでは、PCA(患者自己管理鎮痛)に対する制御を、患者の生理学的パラメータまたはパラメータ群のモニタリングと連動しながら行なう。米国特許第5957885号の場合においては、オキシメータシステムが開示され、そして米国特許出願公開第2003/0106553号の場合においては、CO2システムが提供される。これらのシステムは両方ともに、先行技術に大きな改善をもたらした。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、更なる改善が望まれる。例えば、鎮痛剤を重複投与することに伴なう呼吸または心拍の傾向を提供して、患者の生理学的パラメータ及び反応の傾向が明瞭かつ迅速に分かるようにすることができれば明らかに有利である。更に、薬物ライブラリを拡張して、特に種々のPCA(患者自己管理鎮痛剤)注入パラメータ限界値を取り込むことができれば利点が得られる。
【0015】
従って、この技術分野の当業者であれば、患者の健康状態をモニタリングすることができ、かつ患者へのPCA(患者自己管理鎮痛剤)の注入を解析に基づいて制御することができる患者ケアシステム及び方法が必要であることが理解し得る。更に、この技術分野の当業者であれば、臨床医にグラフ情報を提供して患者の状態、及び薬液の投与に対する患者の反応を判断し易くして、必要に応じて治療上の処置をできる限り迅速に採ることができる患者ケアシステム及び方法が必要であることが理解し得る。本発明はこれらの要求及び他の要求を満たすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
簡単に概要を説明すると、本発明は、医療用薬液を患者に投与するポンプと、ポンプと通信してポンプの動作を制御するコントローラと、患者の生理学的パラメータをモニタリングし、そして生理学的パラメータの選択部分の測定値をコントローラに送信するモニターユニットと、そしてコントローラの接続先となるメモリと、を備える患者ケアシステムに関わる装置及び方法を提供するものであり、メモリは生理学的パラメータの選択部分に関する許容値の保存範囲を含み、コントローラはモニターユニットから受信する選択生理学的パラメータ部分の測定値を、メモリに保存される前記部分に関する許容値の範囲と比較し、そして測定値がメモリに保存される前記範囲から外れる場合に、コントローラはPCA注入の停止のような所定の処置を実施する。
【0017】
別の態様では、モニターユニットは患者を生理学的パラメータに関してモニタリングし、そして生理学的パラメータの測定値をコントローラに送信する。コントローラは医療用薬液の投与速度を生理学的パラメータに従って自動的に調整し、そして更に詳細な態様では、コントローラは、患者の生理学的パラメータの測定値が許容値の保存範囲から外れる場合に、ポンプによる患者への医療用薬液の投与を自動的に一時停止する。
【0018】
本発明による更に別の態様では、生理学的パラメータのグラフ表示を含むグラフ形式の傾向表示を行ない、グラフ表示には患者による鎮痛剤自己投与の実行を示す表示が重なる。詳細には、前記傾向表示では、鎮痛剤自己投与の実行時間の表示を患者の生理学的パラメータの波形表示に重ねる。生理学的パラメータはアイコン付きのETCO2またはSpO2の波形とすることができ、アイコンは鎮痛剤の自己投与が行なわれた時点を表わす波形に重なる。
【0019】
別の態様では、PCA投与の関連情報を含む表形式表示を行なう。更に詳細な態様では、表形式表示は、PCAの投与時間、及び測定済み患者生理学的パラメータのレベルを示す。更に詳細な態様では、投与量も表形式表示に含まれる。
【0020】
本発明による他の態様では、患者ケアシステムは更にPCA投与リクエストスイッチを備え、このスイッチを使用して、患者はポンプにリクエストして或る量の鎮痛剤を注入させ、ポンプによる前記量の鎮痛剤の注入を許可する前に、コントローラはモニターユニットから受信するETCO2の測定値を、メモリに保存されるETCO2モニタリングパラメータに関する許容値の範囲と比較する。測定値がメモリに保存される範囲から外れる場合、コントローラはポンプによるリクエスト量の鎮痛剤の患者への注入を許可しない。
【0021】
別の態様では、PCA投与リクエストスイッチを設け、このスイッチを使用して、患者はポンプにリクエストして或る量の鎮痛剤を注入させ、ポンプによる前記量の鎮痛剤の注入を許可する前に、コントローラはモニターユニットから受信するETCO2の変化速度をメモリに保存される許容値の範囲と比較し、変化速度が許容値に収まらない場合に、ポンプによるリクエスト量の鎮痛剤の患者への注入を許可しない。
【0022】
更に別の態様では、コントローラはまた、患者の呼吸数及び無呼吸域値を許容値の範囲と比較し、そしてこれらの範囲から外れる場合に、コントローラはポンプによるリクエスト量の薬剤の患者への注入を許可しない。
【0023】
更に詳細な態様では、患者ケアシステムは更にディスプレイを備え、このディスプレイには、モニターユニットが送信する一連の測定済み生理学的パラメータ値に基づいて生成される患者の生理学的パラメータの波形が表示される。更に、モニターユニットは患者の生理学的パラメータをモニタリングし、そして生理学的パラメータの測定値をコントローラに送信する。コントローラは、医療用薬液の投与速度を患者の生理学的パラメータに従って自動的に調整する。別の態様では、コントローラは、患者の生理学的パラメータの測定値が許容値の保存範囲から外れる場合に、ポンプによる患者への医療用薬液の投与を自動的に一時停止する。
【0024】
更に詳細な態様では、患者ケアシステムは更にディスプレイを備え、このディスプレイには、モニターユニットが送信する一連の測定済みETCO2値に基づいて生成される患者のETCO2波形が表示される。表示されるETCO2波形の形状は、臨床医が分析して問題が生じているかどうかを判断することができる。傾向を示す複数の波形を表示することもでき、そしてこれらの波形を互いに比較して、臨床医が複数の連続波形を分析し、そして互いに比較して問題が生じているかどうかを判断することができるようにする。更に、モニターユニットは患者の呼気のETCO2をモニタリングし、そしてETCO2の測定値をコントローラに送信する。コントローラは、医療用薬液の投与速度を患者の呼気に含まれる終末呼気二酸化炭素に従って自動的に調整する。
【0025】
別の態様では、コントローラは、患者の呼気に含まれる終末呼気二酸化炭素の測定値が許容値の保存範囲から外れる場合に、ポンプによる患者への医療用薬液の投与を自動的に一時停止する。
【0026】
更に詳細には、生理学的パラメータの許容値範囲を保存するメモリをポンプから離れた位置に配置する。別の態様では、生理学的パラメータの許容値範囲を保存するメモリをポンプの中に配置する。
【0027】
更に別の態様では、患者ケアシステムは更にコントローラに接続される酸素濃度測定ユニットを備え、このユニットは患者の血液をモニタリングし、そして患者の血液の酸素飽和度の測定値をコントローラに送信し、メモリは血液の酸素飽和度の許容値の保存範囲を含み、コントローラは、酸素濃度測定ユニットから受信する酸素飽和度の測定値を、メモリに保存される酸素飽和度に関する許容値範囲と比較し、そして測定値がメモリに保存される範囲から外れる場合に、コントローラは所定の処置を実施する。更に詳細には、コントローラは、薬剤の投与速度を、患者のETCO2または患者の血液の酸素飽和度のいずれかに従って自動的に調整する。
【0028】
一つの態様では、この調整において、患者への薬剤の投与を一時停止する。更に別の態様では、酸素濃度測定ユニットはまた、患者の脈拍数をモニタリングし、そして脈拍数の測定値をコントローラに送信し、メモリは脈拍数の許容値の保存範囲を含み、コントローラは、酸素濃度測定ユニットから受信する脈拍数の測定値を、メモリに保存される脈拍数に関する許容値範囲と比較し、そして測定値がメモリに保存される範囲から外れる場合に、コントローラは所定の処置を実施する。
【0029】
一つの態様では、この調整において、患者への薬剤の投与を一時停止する。更に、別の詳細な態様では、コントローラは、薬剤の投与速度を、ETCO2、FICO2、呼吸数、無呼吸アラーム、患者の血液の酸素飽和度、及び/又は患者の脈拍数のいずれかに従って自動的に調整する。
【0030】
本発明の更に別の態様では、PCAユニットと生理学的パラメータモニターとの間の通信及び相互作用を可能にする機能を備える患者モニタリングシステムを提供する。一つの態様では、パルス酸素濃度測定ユニットを使用し、そして別の詳細な態様では、EtCO2ユニットを使用する。システムは、パルス酸素濃度測定ユニット及び/又はEtCO2ユニットからの一つ以上の生理学的パラメータ値によって認識される呼吸機能低下の徴候を利用し、そしてこの徴候に基づいてPCAユニットを制御する。一つの態様では、PCAユニットをこのように制御する操作では、患者への薬剤の投与を一時停止する。
【0031】
方法を用いる態様によれば、患者によって薬液が体内に注入される自己投与を制御する方法が提供され、本方法では、患者の生理学的パラメータをモニタリングし、そしてモニタリングパラメータに関する患者の生理学的データを送信する。プロセッサはモニタリング生理学的データを、データベースまたはライブラリに含まれる患者限界値と比較する。前記比較の結果を示す比較信号を生成する。薬液注入は、モニタリングした患者の生理学的状態を表わす比較信号が患者状態限界値から外れる場合に終了させる。
【0032】
更に詳細な態様では、患者ケアシステムは更にディスプレイを備え、このディスプレイには、モニターユニットが送信する一連の測定済みETCO2値に基づいて生成される患者のETCO2波形が表示される。更に、モニターユニットは患者の呼気の呼気終末CO2をモニタリングし、そして呼気終末CO2の測定値をコントローラに送信する。コントローラは、医療用薬液の投与速度を患者の呼気に含まれる呼気終末CO2に従って自動的に調整する。
【0033】
別の態様では、コントローラは、患者の呼気に含まれる呼気終末CO2の測定値が許容値の保存範囲から外れる場合に、ポンプによる患者への医療用薬液の投与を自動的に一時停止する。
【0034】
装置を用いる更に別の態様では、所定の薬剤を含む容器を備える形で使用される注入ポンプが提供され、前記容器は、機械読み取り可能なラベルを含み、ラベルによって、所定の薬剤の識別情報及び薬剤濃度を、そして患者名、患者番号、及び患者位置のような所定の薬剤に関する利用可能な他の情報を指定する。ポンプはポンプ機構を備えることができ、ポンプ機構は作動状態では、所定の薬剤を患者に容器から投与し、ポンプ機構を制御するプログラム可能なコントローラを備えることができ、モニターユニットを備えることができ、このモニターユニットは患者の呼気のような生理学的パラメータをモニタリングして当該呼気の選択成分を測定し、そして測定成分を表わす測定値を送信し、薬物ライブラリを保存するメモリを備えることができ、前記薬物ライブラリは薬物に関する複数の記入項目を含み、この場合、薬物に関する各記入項目に、薬剤注入ポンプを構成するための関連する注入パラメータのデータセットを関連付け、メモリは患者の呼気の選択成分も保存し、この場合、選択成分に許容値範囲を関連付け、使用中に容器に貼り付けられるラベルの内容を読み取るラベルリーダを備えることができ、そしてラベルリーダに応答して所定の薬剤に対応する薬物ライブラリの記入項目を識別し、そして薬物ライブラリの中から識別された記入項目に関連する一連の薬剤注入パラメータを使用することによりプログラム可能なコントローラを構成する手段を備えることができ、プログラム可能なコントローラは測定値を受信し、測定値を選択成分の許容値範囲と比較し、そしてポンプ機構を比較に基づいて制御するように構成される。
【0035】
別の態様では、オペレータが薬剤注入パラメータを薬剤注入ポンプに書き込み、パラメータが薬物ライブラリのデータセットに含まれる薬剤注入パラメータの許容範囲から外れる場合においては、コントローラはオペレータに、書き込みパラメータがパラメータの許容範囲から外れていることを示す通知を送信し、更にオペレータに、薬物ライブラリに含まれるパラメータの実限界値または複数の実限界値を送信する。すなわち、実際には、オペレータに、どの値をパラメータとして書き込むべきかに関する指定値を通知する。このような薬剤注入パラメータ及び範囲は、これらには限定されないが、濃度限界値、PCA投与量限界値、連続注入限界値、負荷投与量限界値、ボーラス投与量限界値、ロックアウト時間限界値、及び最大蓄積量限界値を含む。
【0036】
別の態様では、コントローラが通知する指定値はデータセットの限界値、または複数の限界値とする必要はないが、範囲のいずれかに位置する値とすることができる。この値は「事前設定」パラメータ値または推奨パラメータ値、或いは他の初期値と見なすことができる。この値は、診療所において、範囲、薬剤名、及び他の情報のようなデータセットに書き込むことができる。他の情報は、薬物ライブラリのデータセットに含めることもできる臨床アドバイスを含むことができる。このようなアドバイスは、患者への投与に関してプログラムされた薬剤治療に関する臨床医に対する注意事項となる。
【0037】
本発明による更に別の更に詳細な態様では、PCAに使用される薬剤に関するデータセットを生成する。PCAデータセットは、これに限定されないがロックアウト時間を含む、特にPCAに関するパラメータを含む。
【0038】
更に詳細な態様では、コントローラは、患者の生理学的パラメータの値に基づいて、PCA注入を一時停止する、終了させる、調整する、そして再開することができる。更に詳細には、上記処置は、ETCO2、FICO2、呼吸数、無呼吸、及び脈拍数のうちの一つ以上の値が所定範囲から外れる場合に実施する必要がある。更に、患者がPCA投与を要求するリクエストに対する応答が一時停止されるロックアウト時間は、複数の上記パラメータのうちの一つ以上の値に従って変更することができる。
【0039】
更に別の態様では、患者の生理学的パラメータまたはパラメータ群をモニタリングするモニタリング機器を、注入が行なわれる前に、コントローラに直接、または間接的に接続する必要がある。
【0040】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明に関する以下の詳細な説明を、添付の図と関連させることにより一層明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
次の文献は、本明細書において参照することにより、文献の内容が本出願に組み込まれる。すなわち、これらの文献は、ボリッシュらによる米国特許第5957885号、バンダビーンによる米国特許出願公開第2003/0106553号、フォード(Ford)らによる米国特許第5681285号及びエッガースらによる米国特許出願第08/403503(米国特許第5713856)号である。
【0042】
本発明の次の好適な実施形態について、プログラム可能なモジュール式患者ケアシステムに主として関連する形で記載するが、この患者ケアシステムは、エッガースらによる「モジュール式患者ケアシステム」と題する1995年3月13日出願の米国特許出願第08/403503(米国特許第5713856)号、ボリッシュらによる「酸素濃度をモニタリングすることによる患者自己管理鎮痛システム」と題する1996年11月6日出願の米国特許第5957885号、及びバンダビーンによる「CO2をモニタリングすることによる薬剤投与システム」と題する米国特許出願公開第2003/0106553号に開示される。しかしながら、この技術分野の当業者であれば、開示する方法及び装置は、これらには限定されないが、他の患者ケアシステム及び薬剤投与ポンプシステムをも含む、より広範囲の適用形態に容易に適合させ得ることが理解し得る。更に、これも当業者であれば理解し得ることであるが、本発明によるETCO2をモニタリングすることによる薬剤投与システム、SpO2をモニタリングすることによる薬剤投与システム、及び他のシステムのうちのいずれかのシステムを、以下に詳細に説明し、かつ図16に示すように、スタンドアローン型統合ユニットとして提供することもできる。
【0043】
次に、種々の図の中の同様の参照番号が同様の、または対応する構成要素を指す図について更に詳細に参照する。図1は、本発明の好適な実施形態によるプログラム可能なモジュール式患者ケアシステム90の前面図を示していることが分かる。患者ケアシステム90は、中央インターフェースユニット100と、PCAポンプユニット92と、患者の呼気または吸気をモニタリングして、選択成分の濃度を求めてETCO2を測定する、ETCO2ユニットとしても知られるカプノグラフユニットのようなユニット94と、そして患者に装着される呼気サンプリングデバイス96と、を備える。図示しないが、PCAポンプユニット及びETCO2ユニットは共に患者に接続される。図1は2つの機能ユニット、すなわち中央インターフェースユニット100に取り付けられるPCAポンプユニット92及びETCO2モニタリングユニットしか示していないが、患者ケアシステム90は更に他の機能ユニットを備えることができ、どの機能ユニットを備えるかは、患者の特定のニーズによって変わる。例えば、一つ以上の更に別の機能ユニットをPCAポンプユニットまたはETCO2ユニットのいずれかに接続することができ、更に別の機能ユニットとしては、これらには限定されないが、大容量ポンプ、フローコントローラ、シリンジポンプ、他の大気分析用モニター、パルス酸素濃度モニター、心電計、侵襲及び非侵襲血圧モニター、意識のレベルをモニタリングする聴性誘発反応(AEP)モニター、脳血流量モニターまたは脳酸素化モニター、サーモメーターユニット、及び他の類似の機器を挙げることができる。
【0044】
中央インターフェースユニット100は通常、5つの機能を患者ケアシステム90において実行する。
(1)ユニット100によって、患者ケアシステム90をIVパワーポール及びベッドレールのような構造に物理的に取り付けることができる。
(2)ユニット100は電源を患者ケアシステム90に供給する。
(3)ユニット100は、患者ケアシステム90と外部機器との間のインターフェースとなる。
(4)或る特定の情報を除いて、ユニット100は患者ケアシステム90とのユーザインターフェースとなる。
(5)ユニット100は患者ケアシステム90の全体動作をモニタリングし、そして制御するが、このモニタリング及び制御では、モニターモジュール及び/又はポンプモジュールからの信号を統合して警告を通知する、及び/又は一つ以上のポンプモジュールの動作に影響を与える。
【0045】
中央インターフェースユニット100は情報ディスプレイ102を含み、このディスプレイをセットアップ手順及び操作手順の間に使用して、データ入力及び編集を容易にすることができる。情報ディスプレイ102はまた、操作中に、これらには限定されないが、薬剤名、投与量、注入速度、注入プロトコル情報、PCA(Patient Controlled Analgesia:患者自己管理鎮痛)用途に用いる患者ロックアウト期間、ETCO2限界値、FICO2限界値、呼吸数限界値、無呼吸時間、及び他のパラメータのような種々の操作パラメータを表示することができる。パルスオキシメータのような他の機能ユニットを取り付ける場合、情報ディスプレイ102は酸素飽和度、脈拍数限界値、及び/又は他の機能ユニット固有の情報を表示することができる。また、情報ディスプレイ102を使用して命令、催促、アドバイス、及びアラーム状態をユーザに対して表示する。
【0046】
中央インターフェースユニット100はまた、数字データを入力するための複数のハードキー104を含み、そしてこれらのハードキーをソフトキー106と一緒に用いて操作命令を入力する。また、中央インターフェースユニット100は更に、中央インターフェースユニットへの電源をオンまたはオフさせるPOWERハードキー108と、中央インターフェースユニットのオーディオ機能を一時的に使用不能にするSILENCEハードキー110と、そして利用可能システムまたは機能ユニットオプションへのユーザによるアクセスを可能にするOPTIONSハードキー112と、を含む。中央インターフェースユニットは更に、患者ケアシステム90が互換外部コンピュータシステムと通信していることを示す外部コンピュータインジケータ114と、中央インターフェースユニットが外部電源に接続され、かつ外部電源によって動作していることを示す外部電源インジケータ116と、そして中央インターフェースユニットがバッテリのような内部電源を使用して動作していることを示す内部電源インジケータ118と、を含むことができる。中央インターフェースユニットは改ざん防止機能(図示せず)を含むこともでき、この機能によって所定の一連の制御を不能にすることができる。例えば、一旦、注入が始まると、中央インターフェースユニットは、アクセスコードをまずポンプモジュールまたは中央インターフェースユニットに入力することがない限り、または臨床医以外は気付くことがないポンプモジュールの背面に位置するボタンのようなスイッチを起動することがない限り、注入速度または他の操作パラメータの変更を一切許可しない。これによって、注入パラメータが子供または他の権限の無い担当者によって変更されることを防止し易くなる。
【0047】
PCA(患者自己管理鎮痛剤)ポンプユニット92及びETCO2ユニット94はそれぞれ、チャネルポジションインジケータ126を含み、このインジケータは、文字「A」、「B」、「C」、及び「D」のうちの一つを表示して患者ケアシステム90に対する機能ユニットのチャネル位置を識別する。例えば、図1に示す患者ケアシステムは2つのチャネル位置A及びBを含み、Aは中央インターフェースユニット100の直ぐ左に位置することを示し(PCAポンプユニット92)、そしてBは中央インターフェースユニット100の直ぐ右に位置することを示す(ETCO2ユニット94)。チャネルAのPCAポンプユニット及びチャネルBのETCO2ユニットは共に、図1に示すように取り付けられるので、インターフェースユニットの情報ディスプレイ102はA及びBを示している(なお、本実施形態では、PCAポンプユニットは情報ディスプレイに「PCA/持続投与」として示され、そしてETCO2ユニットは情報ディスプレイに「CO2/モニター」として示される)。所望の機能ユニットを、対応する機能ユニットのSELECTキー128を押下することによって選択する場合、情報ディスプレイは選択機能ユニットのユーザインターフェースとして機能するように構成される。詳細には、以下の例に関する説明から明らかになるように、情報ディスプレイを機能独自ドメインに従って構成して、機能独自の表示及びソフトキーを提供する。
【0048】
図1の機能ユニット92及び94は共に、機能ユニットを選択するためのSELECTキー128を有する。PCAポンプ92は、機能ユニットがポンプであり、かつ注入が行われている場合に注入を中断するためのPAUSEキー130を含む。ETCO2ユニット94は機能をモニタリングするためのMONITORキー131を含む。PCAポンプユニットはまた、上に説明したように、既に中断している注入をポンプの全てのアクセス制御機能に従って再開するためのRESTARTキー132を含む。これらのモジュールは共に、チャネルの選択を解除するためと、そしてチャネルに位置する機能ユニットが唯一の作動中の機能ユニットであった場合に、患者ケアシステム90の電源を同時に遮断するためのOFFキー134も含む。更に、PCAポンプユニット及びETCO2ユニットはそれぞれ、アラーム状態を通知するためのアラームインジケータ136、及びスタンバイ状態を通知するためのスタンバイインジケータ138を含む。PCAポンプユニットは更に、注入状態を通知するための注入インジケータ140を含む。各インジケータは、対応する機能ユニットが対応する状態にあることが分かるように明るくなる。
【0049】
PCAポンプユニット92はチャネルメッセージディスプレイ152及び速度ディスプレイ154を含み、ディスプレイ152を使用して情報メッセージ、アドバイスメッセージ、アラームメッセージまたは誤動作メッセージを表示することができ、ディスプレイ154を使用して、例えばポンプユニットが作動している注入速度を表示することができる。PCAポンプユニットはまた、ドアロック(図示せず)の付いたドアを含むことができ、ドア内には、シリンジまたは薬剤容器が保持されて、注入する麻酔薬または他の薬剤の安全を確保する。先行技術において公知のように、ポンプユニットは体積型ポンプ、シリンジポンプシステム、経静脈的ポンプ注入タイプ、またはこの技術分野の当業者が容易に決定することができる他の適切な構成とすることができる。PCAポンプユニットは、ポンプ装置が行なう種々の機能を制御する標準のポンピング機構及び安全機構を含み、これらの機構としては、患者への薬液投与の制御、及び閉塞またはライン内エアに関する流路の監視を挙げることができる。
【0050】
ETCO2ユニット94及び患者に接続されるのは呼気サンプリングデバイス96であり、このデバイスは呼気を患者の鼻及び口から集め、そして時々酸素を患者に供給することが好ましい。呼気はETCO2ユニットにライン142を通って送り込まれ、呼気はETCO2濃度に関してETCO2ユニットによって、好適には赤外線分光分析法を使用してリアルタイムに解析される。しかしながら、この技術分野の当業者であれば理解し得るように、他のETCO2(終末呼気二酸化炭素濃度)解析法を使用することができる。別の構成として、サンプリングデバイス96はセンサ(図示せず)を含むことができ、センサは、呼気を直接解析し、そして信号をライン142または無線通信システム(図示せず)を通してETCO2モニターユニットに送信する。ETCO2ユニットは、データをユーザに対して表示する種々のディスプレイ160,162,及び164を含む。例えば、ETCO2ディスプレイ160は、呼気後及び吸気前のETCO2の数値を、好ましくはmmHg単位または%で表示する。呼吸数ディスプレイ162は、例えばETCO2波形を周波数解析して求まる患者の現在の呼吸数を表わす呼吸数値を表示する。ディスプレイ164は、患者の血液の中の吸気時CO2濃度またはFICO2濃度を表示する。ETCO2波形及び他の波形の表示は、中央インターフェースユニット100の情報ディスプレイ102に示すことができる。波形表示に示されるデータを選択的に拡大する、または圧縮することができ、これによって波形特性解析または傾向解析を行なうことが好ましい。情報ディスプレイ102に示される波形データを表示前に、平滑化し、補正し、時間平均解析を行なって、または操作して最適な臨床値をユーザに提供することができる。例えば、ETCO2ユニットは、移動平均を行ってETCO2波形を平滑化することができ、そして水平時間軸の進行を停止及び/又は調整してETCO2波形解析または傾向解析を行なう。
【0051】
以下に更に詳細に説明するように、ETCO2ユニット94が生成するデータは中央インターフェースユニット100に送信され、そしてこのデータを使用してアラームを起動してアドバイスを情報ディスプレイ102上で通知する、自動的にポンプユニット92の作動を停止する、またはポンプユニットによる薬剤または薬液の投与を調整する、または制御することもできる。例えば一つの実施形態では、インターフェースユニットをプログラムして、患者のETCO2値が許容値の所定範囲から外れる場合にポンプを自動的に停止する。別の構成として、ポンプ及びモニターは互いに直接通信して、この患者144への薬液の投与に、モニター済みパラメータに基づいて影響を与える。更に別の実施形態では、この技術分野において公知のように、ETCO2モニターまたはインターフェースユニットは、ETCO2波形を解析し、そしてポンプの動作に所定の波形特性に基づいて影響を与える波形解析アルゴリズムを含む。本発明の更に別の実施形態では、インターフェースユニットは、患者の状態を表わす一つ以上の指標を多数の異なる接続生理状態モニターのデータを使用して計算するマルチパラメトリックアルゴリズムを含み、そして計算済み指標を使用してポンプの制御に影響を与える。
【0052】
図1aは、中央インターフェースユニット100の情報ディスプレイ102に表示されるETCO2波形の一例である。この場合、モニタリングモジュールは患者のETCO2をモニタリングし、データを処理し、そして或るデータをテキスト形式及びグラフ形式で提示して情報ディスプレイ102に表示する。特に、患者のETCO2はmmHgの測定単位のテキスト数字「34」として表示される。呼吸数(Respiration Rate:RR)も「呼吸数/分」で測定されるテキスト数字「13」として表示される。更に、グラフ163は経時的なETCO2の傾向を示す形で表示される。この場合、時間軸は5秒間の区間を表わす。テキスト形式では、各パラメータの許容値範囲も示される。特に、ETCO2の許容範囲は35〜43mmHgである。呼吸数の値の許容範囲は5〜25回/分である。ETCO2のグラフを図1aに示すが、FICO2(吸気時二酸化炭素濃度)のグラフを別の実施形態では選択可能とすることもできる。更に、呼吸数は、無呼吸を示すことができるようにグラフ形式で示すことができる。FICO2自体をグラフ化してはならないようにFICO2に対する選択が行われる場合、別の実施形態では、FICO2が許容範囲から外れている箇所を、図1aに示すグラフのようなETCO2のグラフの上に表示することができる。これらの非許容値は、FICO2値が許容されない、ETCO2グラフの上の点に表示することができる、または他の場所に表示することができる。
【0053】
図2は患者ケアシステム90の別の実施形態を示し、PCAポンプユニット172は、LVPポンプではなくPCAシリンジポンプである。図示のPCAポンプユニットは、図1におけるものとほぼ同じインターフェースディスプレイ及びボタンを有するが、図2のPCAポンプユニットはシリンジプッシャー174及びシリンジ176も含む。PCAポンプユニットは更に、注入ポンプ装置をユニットの筐体内に含み、この筐体は、中央インターフェースユニット100からの命令に応答して、シリンジプッシャーを駆動してボーラス(bolus)投与のPCA薬剤をシリンジから患者に対して注入する。速度ディスプレイ154は、例えばPCAポンプが作動している注入速度、または患者ロックアウト時間(patient lockout interval)を表示する。PCAポンプは、携帯型PCA投与リクエストボタン180または他の作動デバイスに接続されて患者が使用するPCA患者投与リクエストコード線(patient dose request cord)178を含む。PCA薬剤は患者にIV投与ライン(IV administration line)182を通して投与される。
【0054】
次に図3を参照すると、中央インターフェースユニット100の背面には、少なくとも一つの外部通信インターフェース120、少なくとも一つのインターフェースポート122、及び少なくとも一つのPCAポート124が本実施形態において設けられることが示される。外部通信インターフェース120及びインターフェースポート122を使用して情報及びデータをダウンロード及びアップロードすることができ、そして更に、外部通信インターフェース120及びインターフェースポート122は、患者モニタリングネットワーク兼ナースコールシステムへのインターフェースとして、またはバーコードリーダのような外部機器とのインターフェースとして動作して、薬剤情報及び/又は患者情報を、薬剤治療レコードまたは患者レコードから、または患者、看護師、または臨床医、薬液バッグ、及び他の装置の上に位置するバーコードのような情報デバイス及び識別情報デバイスから入力する手段となる。これらの機能を外部通信インターフェース120及びインターフェースポート122によって実行することにより、機能及び適応性を広げ、コストを節減し、そして入力過誤を減らすことができる。特に、ポンプユニット172のプログラミングに関連する臨床検査過誤が減るので、ポンプユニット172の使用による鎮静剤、麻薬性鎮痛剤、麻酔薬、または他の薬剤の投与に関連する呼吸機能低下の危険を小さくすることができる。
【0055】
この特定の実施形態では、PCAポート124は、複数の搭載ポンプユニットのうちの一つがPCAポンプ172である場合に、中央インターフェースユニット100とPCA患者投与リクエストコード線178(図2に示すコード線)の一端との間の接続を可能にする。PCA患者投与リクエストコード線の他端には、携帯型投与リクエストPCAボタン180、または他のPCA作動デバイスが設けられ、このデバイスを作動させてPCA患者への鎮痛剤投与をリクエストすることができる。ここで、中央インターフェースユニットはPCAポート124を本実施形態において含むが、図2に示すような別の実施形態では、ポンプユニット172自体がPCAポートを含むことができる。このPCAポートは、ポンプユニットからPCA患者投与リクエストコード線を経由して投与リクエスト作動デバイスに至る同様の接続を可能にすることが理解し得る。更に、コネクタを、例えばモジュールの前面パネル、底面パネル、または他の箇所のようないずれか他の箇所に配置することができることが理解し得る。
【0056】
次に、本発明の態様による中央インターフェースユニット100のブロック図を示す図4によれば、マイクロプロセッサコントローラ264はユーザからデータ及び命令を受信し、そしてユーザからのデータ及び命令を処理し、更に機能ユニット及び他の外部機器と通信する。マイクロプロセッサコントローラ264は外部通信コントローラ274を直接制御し、このコントローラ274はPCAポート123及びインターフェースポート122及び/又は外部通信インターフェース120を介したデータを制御する。マイクロプロセッサコントローラ264はまた、内部通信コントローラ272を制御し、このコントローラは内部通信ポート280及び281を制御する。内部通信ポート280及び281は各機能ユニットだけでなく、中央インターフェースユニットにも組み込まれ、そして中央インターフェースユニット100と搭載機能ユニット150A,150Bとの間のデータインターフェース及び情報インターフェースとなる。
【0057】
図2に示す構成のような患者ケアシステム90が動作している間、投与リクエストPCA作動デバイス180を作動させると、マイクロプロセッサコントローラ264は投与リクエスト信号を患者投与リクエストコード線178及びPCAポート124を通して受信する。マイクロプロセッサコントローラ264が、麻薬性鎮痛剤の要求ボーラス投与を行なうために制限がないと判断すると、マイクロプロセッサ264は信号をPCAポンプユニット172に内部通信コントローラ272及び内部通信ポート280、及び/又はポート281を通して送信して、ポンプユニット172に指示して要求ボーラス投与を行なわせる。
【0058】
マイクロプロセッサコントローラ264はまた、PCAポンプユニット172及びETCO2ユニット94のような複数の機能ユニットの間のアクティビティを調整する。例えば、臨床医が、PCAポンプユニット172を備える患者ケアシステム90を設定してPCA(患者自己管理鎮痛剤)投与ユニット及びETCO2ユニットを設けてPCA患者のETCO2パラメータをモニタリングする。任意に、図12に示すようなパルス酸素濃度測定ユニット302のような一つ以上の更に別のモニター装置を患者ケアシステム90に直列に接続し、そして設定して、例えば以下に更に詳細に説明するように、血中酸素飽和度及び脈拍数をモニタリングすることができる。臨床医はETCO2、呼吸数、及び/又は他のモニタリング対象パラメータの最小値及び/又は最大値を指定して、これらのパラメータに関する許容値の範囲を効果的に設定することができる。患者のETCO2パラメータが選択許容範囲から外れて、例えばパラメータが臨床医が設定した最小レベルよりも小さい、または最大レベルよりも大きくなるような場合、ETCO2モニター94はトリガー信号をマイクロプロセッサコントローラ264に内部通信コントローラ272及び内部通信ポート280、及び/又はポート281を通して送信する。これに応答して、マイクロプロセッサコントローラ264は、例えばスピーカ278に向かう聴覚アラーム276を作動させ、視覚アラームを情報ディスプレイ102(図1及び2)に送信し、PCAポンプユニットの作動を一時停止し、PCAポンプユニットの流量を調整し、及び/又は別の所定機能を実行する。例えば、PCA患者のETCO2測定値が範囲から外れると、マイクロプロセッサコントローラ264は、例えば臨床医により治療介入される、または患者が変わる等によって、許容できないレベルの低い、または高いETCO2値、及び/又は呼吸数状態が許容範囲に収まるまで、鎮痛剤の更なる投与を中止する。別の構成として、マイクロプロセッサコントローラ264は単に、PCA作動デバイス180を使用不能にして、患者が更なる自己投与を行なうことができないようにする。従って、適切な値が設定された後、中央インターフェースユニット100は、PCAポンプユニットとETCO2ユニット94との間の通信を可能にし、そしてこれらのユニットの間の調整を行なって、確実に安全性を高め、かつ呼吸機能低下による障害の危険を小さくする。
【0059】
別の実施形態では、マイクロプロセッサコントローラ264が、ETCO2ユニット94からの、または別の機能モジュールからの範囲外信号のみに応答してPCAポンプユニット172の作動を一時停止するのではなく、マイクロプロセッサコントローラはプログラム命令を含み、このプログラムによって、ETCO2ユニットが生成するCO2濃度データまたは他のデータの変化をモニタリングし、そしてポンプモジュールに対する患者による制御を、モニタリング対象データの変化速度のような変化に基づいて停止させるかどうかについて判断を下す。
【0060】
次に、中央インターフェースユニット100、PCAポンプユニット172、及びETCO2ユニット94の相互作用及び機能について図5〜11を参照しながら記載する。これらの図は、患者ケアシステム90の設定及び動作の間の情報ディスプレイのステップごとの状態のうちの幾つかを示す。次の例では、1つのPCAポンプユニット172及び1つのETCO2モニター94を使用してPCA(患者自己管理鎮痛法)を実施する現場におけるシステム100の動作の設定について記載するが、この技術分野の当業者であれば、本発明は他のタイプの、かつ他の数の注入ポンプ及びモニターを使用するプログラムされた注入プロトコルを含むことが理解し得る。
【0061】
患者ケアシステム90の好適な実施形態を設定するために、臨床医はまず、図1及び2に示すように、呼気サンプリングデバイス96を患者に取り付ける。次に臨床医はETCO2ユニット94及びこのユニットの対応するチャネルを、ETCO2ユニット上のSELECTキー128を押下することにより選択する(図2)。ETCO2ユニットを選択することにより、情報ディスプレイ102は図5に示すように、ユーザインターフェースとして機能し、従ってETCO2機能固有の表示を可能にするように構成される。情報はディスプレイ102上に現われ(図1)、選択情報がディスプレイを取り囲むソフトキー106に隣接するようになるので、オペレータは表示情報から選択及び選定を行うことができるようになる。臨床医は最小値及び最大値のいずれをも、対応するソフトキーを押下し、そして関連する限界値数値をキーパッド104で直接入力することにより、またはディスプレイ上に表示される番号を、キーパッド及びENTERキーの上のアップダウン矢印を使用してスクロールすることにより入力することができる。図示の数よりも多い、または少ない数のパラメータを取り入れることができる。図5に示す実施形態では、ETCO2値、呼吸数値、FICO2値、及び無呼吸時間(NO_BREATH)値を入力することができる。しかしながら、別の実施形態では、これよりも少ない数のパラメータを列挙することができる。
【0062】
図6は、臨床医が値を入力した、または前回の値に戻した後の「アラーム限界値(ALARM_LIMITS)」情報ディスプレイ102を示している。START表示(STARTソフトキーの例を示す図15を参照)に関連するソフトキーを押下することによりETCO2モニタリングを開始する前に、臨床医は、PCAユニット172のような一つ以上の他の機能ユニットのPCA自動遮断オプションを選択して、中央インターフェースユニット100が、患者のETCO2、呼吸数、FICO2、無呼吸時間、またはこれらの或る組み合わせが指定最大レベル及び最小レベルから外れる場合に選択機能ユニット(群)を遮断するようにする。別の構成として、情報ディスプレイ102はパラメータ、または患者のETCO2波形を解析し、生成指標に対する限界値を設定するための選択可能なプロトコルを含むことができる。一旦、ETCO2モニタリングが始まると、患者のETCO2値、呼吸数、及びETCO2波形が、前に記載し、かつ図1及び2に示したように、中央情報ディスプレイ102に表示される。患者ケアシステム90の好適な実施形態は、例えば患者のETCO2または呼吸数が指定最大レベルを上回る、または指定最小レベルを下回る場合にナースコール282を作動させることによって、ローカルアラーム通知を行なうための聴覚276/278(図4)及び視覚アラーム102の両方を自動的に開始するだけでなく、医療関係者に対して離れた位置から通知を行なうが、患者ケアシステム90は、臨床医が医療関係者に対する特定のアラーム及び通知をこのようなイベントにおいて選択することもできるように構成することができる。酸素濃度測定ユニットを、以下に更に詳細に説明するように、ETCO2ユニットの代わりに、またはETCO2ユニットの他に使用することもできる。
【0063】
本発明の好適な実施形態では、ETCO2、呼吸数、及び他のパラメータの限界値をインターフェースユニット100のメモリ250(図4)のデータセットに、または患者ケアシステムのモニター94に保存する。別の実施形態では、データセットは他の場所に保存することができる。従って、値をユーザインターフェース100のキーパッド104(図2)の数字キーを使用して手動で入力するのではなく、ユーザは予めプログラムされた値及び/又は構成プロトコルを保存済みデータセットから呼び出して、時間を節約し、プログラミングエラーを最小化することができる。
【0064】
薬剤注入パラメータ、及びETCO2、FICO2の最大濃度及び最小濃度、呼吸数の最大値及び最小値、及び他の値のような生理学的パラメータ限界値に関する施設標準から成るデータセットを保存することによって、臨床現場におけるケア品質を標準化するのにも役立つ。或る実施形態では、注入パラメータ値または生理学的パラメータ限界値は、機械読み取り可能なラベルから、例えばバッグまたはシリンジ、或いは注入する医療用薬液を保存する他の医療用薬液容器に貼り付けられるバーコードラベルを読み取るバーコードリーダ(図示せず)を使用することにより自動的に入力することができる。容器に取り付けた無線周波数識別(RFID)タグを使用することもでき、PCAポンプユニット172の、またはユーザインターフェースユニット100のRFIDリーダによって読み取ることができる。このような注入パラメータ値及び生理学的パラメータ値は、院内サーバのような外部プロセッサとの接続を行なう、PDAまたは他の機器との接続を行なうといった他の手段を使用して入力することもできる。これらの機器との接続は、直接有線接続、赤外線リンク、RF、RF(無線周波数)でのRFIDチップの使用、bluetooth(商標)リンク、または他の手段のような種々の方法により行なうことができる。
【0065】
次に、臨床医はPCAユニット172及びこのユニットの対応するチャネルを、PCAポンプユニット172のSELECTキー128(図2)を押下することにより選択する。PCAポンプユニットを選択することにより、情報ディスプレイ102はユーザインターフェースとして機能するように構成されるので、図7〜9に示すように、PCAポンプ機能固有のディスプレイ及びソフトキーとなる。この例では、表示はPCAポンプ固有のものとなる。図7及び8に示すように、臨床医はまず、値を前回の投与単位及び鎮痛剤濃度に戻す、または、例えばmcg、mg、またはmlで表示される投与単位を選択し、そして鎮痛剤濃度を入力することができる。次に、図9に示すように、臨床医は、患者によるボーラス投与(PCA_DOSE)に関する前回のパラメータを入力する、または値を前回のパラメータに戻すことができる。呼吸機能低下及び中枢神経系機能低下を更に防止するための追加予防措置として、かつ本発明の別の実施形態として、患者ケアシステム90またはPCAポンプユニットは臨床医に対して、1時間当たりの、または24時間周期の、或いは本例では、4時間周期(20mg/4h)の最大投与量のような患者リクエスト投与限界値を入力するように要求することができる。
【0066】
患者によるボーラス注入パラメータ及び/又は他の薬剤注入パラメータを入力した後、臨床医は持続投与表示(CONT_DOSE表示)252(図9)に隣接するソフトキー106を押下することにより麻薬性鎮痛剤の基礎持続投与(CONT_DOSE)を選択することができる。基礎投与を患者リクエスト投与と組み合わせて使用することにより、患者が眠っているときのような低活動の時間帯に十分な量の麻薬性鎮痛剤を供給することができる。従って、患者が目覚め、そして活動量が増えるために追加の鎮痛剤を必要とするとき、患者は麻薬性鎮痛剤を自己投与してこの必要を満たすことができる。基礎持続投与が、持続投与表示252(図9)に隣接するソフトキー106(図2)を押下することにより選択されると、情報ディスプレイ102によって臨床医は所望の持続投与量を入力することができる。図9は、臨床医が、患者によるボーラス投与量(PCA_DOSE)及び持続投与量(CONT_DOSE)の両方の値を入力した後の情報ディスプレイ102を示している。
【0067】
PCAに関する(図9及び他の図に示す注入パラメータに関する)パラメータに関して、次の項目は一つの実施形態における薬物ライブラリのデータセットに含まれるパラメータリストである。
【0068】
薬剤名:図9の画面の先頭部分を参照。
濃度:mg/mlまたは他の任意の単位で示す。またはハード最小値及びハード最大値([Conc]として図9に示す)として示す。
【0069】
投与量限界値の種類:例えば、「ソフト(soft)」または「ハード(hard)」(図示せず))がある。
最大蓄積投与量範囲:例えば2時間に渡る最小値及び2時間に渡る最大値がある。この様子は図9に最大限界値として示される。
【0070】
PCA投与量*:最小値及び最大値がある。
ロックアウト時間*:最小値及び最大値がある。
持続投与速度:薬剤を正確な体積速度で取り込むことができるようにml/hで表される投与速度を含み、これらの投与速度はソフト最小値及び最大値、及びハード最小値及び最大値、及びデフォルト速度*を含む。
【0071】
負荷投与量*:最小値及び最大値がある。
ボーラス投与量:「使用不能」、「手で触れることができる」及び「手が自由に使える」のようなタイプを含む。投与単位を含む。投与限界値、ソフト最小値、ソフト最大値、及びハード最大値*、投与量デフォルト値、及び投与速度デフォルト値を含む。
【0072】
臨床アドバイス、アドバイス名*:薬剤選択の後に現われる。図23に関連して説明する。
保存される薬物ライブラリはポンプ172に、またはインターフェースユニット100に、或いは事前設定値を有する他の場所に配置することができる。これらの事前設定値は投与量パラメータ(dosing_parameters)及び他の薬剤注入パラメータに関する「ハード」及び「ソフト」限界値を含むことができる。これらの限界値は、患者ケアシステム90が設けられる診療所または施設によって設定されている。また、上のように星印(*)が付されたこれらのパラメータに関して、「事前設定(preset)」値または「開始投与量(starting_dose)」値は、診療所または施設によって薬物ライブラリデータベースまたはデータセットに入力することができる。このようなパラメータに注目すべきであることをオペレータが通知する場合、オペレータはこのパラメータを変更することができるが、事前設定値が、薬物ライブラリに設定されている限界値の内側に自動的に入力されることになる。
【0073】
図9の例に関して示すように、一旦、値が患者ケアシステム90に臨床医によって入力されてしまうと、マイクロプロセッサコントローラ264はコントローラのプログラムに従って与薬確認段階に入り、この段階では、コントローラはこれらの選択値の各々を保存薬物ライブラリと比較して、これらの選択値が許容範囲内に含まれることを確認する。選択値が「ハード」限界値から外れる場合、患者ケアシステム90の動作が始まる前に、マイクロプロセッサコントローラはアラームを送信し、値変更を要求する。選択値が「ソフト」限界値から外れる場合、マイクロプロセッサコントローラは臨床医に対して、彼または彼女が入力値がソフト限界値から外れていることを認識しているという彼または彼女による承認を要求し、この値をそれにも拘らず使用すべきであるという指示を要求することができる。
【0074】
現時点で好適な実施形態では、薬物ライブラリを患者ケアシステム90に保存するが、ライブラリまたはライブラリ群は別の場所に配置することができる。例えば、患者ケアシステムが院内サーバまたは他のサーバに接続される場合においては、このような薬物ライブラリまたはデータセット、或いはデータセット群はリモートサーバに配置することができ、そして患者ケアシステムは与薬確認段階の間にリモートサーバに保存される薬物ライブラリと通信して許容範囲を取得する。別の例として、薬物ライブラリは、Palm Pilot(商標)のような携帯情報端末(ここでは「PDA」と記載する)に、またはラップトップコンピュータのような携帯型コンピュータに、或いは患者ベッドサイドコンピュータまたはナースステーションコンピュータに、または他の位置、或いは機器に配置することができる。患者ケアシステムとリモート薬物ライブラリとの間の通信は、有線接続、または赤外線リンク、RF、bluetoothのような無線接続により、或いは他の手段により行なうことができる。臨床医は薬物ライブラリを有するPDAを携行することができ、そして患者ケアシステムが動作を開始する前に、システムはPDAと通信して、ハード限界値及びソフト限界値を入力値と比較する必要がある。他のライブラリ保存場所及び通信構成を用いることができる。
【0075】
一旦、上記ステップが完了すると、臨床医はPCA投与セット182(図2)を患者の血管内留置装置(図示せず)に取り付け、そして中央インターフェースユニット100のSTARTラベルに隣接するソフトキー106を押下する。このようにして、ポンプユニット172は、ETCO2ユニット94が患者のETCO2パラメータを継続的にモニタリングすることによって、及び/又はSpO2ユニット302が患者の酸素飽和度及び脈拍数を継続的にモニタリングすることによって作動することになる。PCAポンプユニットは、基礎持続投与をこの投与のプログラムが作成されている場合に開始する。更に、患者はこの時点で、麻薬性鎮痛剤のボーラス投与をいつの時点でも患者投与リクエスト作動デバイス180を使用してリクエストすることができる。リクエストした鎮痛剤投与を患者が実際に受けるかどうかは、臨床医が設定する限界値に対する、患者リクエスト投与量限界値があるとすればこの患者リクエスト投与量限界値だけでなく、患者の現時点でのETCO2パラメータによって変わる。
【0076】
次に図10を参照すると、中央インターフェースユニット100の情報ディスプレイ102の位置A及びBは、臨床医に対して、どの2つの機能ユニットをチャネル位置A及びBに配置するかについてアドバイスし、そしてこれらの機能ユニットが中央インターフェースユニットと通信することをアドバイスするように作用する。情報ディスプレイ102を更に使用して、患者ケアシステム90の対応する各チャネルを占有する各機能ユニットの状態を通知することができる。例えば、チャネルAを占有するPCAユニット172に対応するチャネルAの情報ディスプレイ102(図2)は、患者ボーラス投与量及び基礎持続投与量を通知するように構成することができる。更に、チャネルBを占有するETCO2ユニット94に対応するチャネルBの情報ディスプレイ102は、最小及び最大のETCO2レベル及び呼吸数を通知するように構成することができる。患者ケアシステム90はまた、中央インターフェースユニット100の情報ディスプレイ102が患者の現時点のETCO2値及び呼吸数を表示するように構成することができる。言うまでもないが、他のモニターまたはポンプを取り付ける場合、これらのユニットからの対応する情報を選択して中央情報ディスプレイ102に表示することもできる。
【0077】
患者のETCO2パラメータが、臨床医が設定する最大レベル及び最小レベルから外れる場合、中央インターフェースユニット100は即座に、PCAポンプユニット172の電源を遮断する、またはユニットの作動を一時中断して基礎投与及びボーラス投与の更なる実施は全て中止する。任意選択であるが、患者ケアシステム90をプログラムして、中止するのではなく、ETCO2データ、またはあるとすれば他の接続モニターから受信するデータに従って、基礎持続投与量またはボーラス投与量を調整することができる。図11に示すように、情報ディスプレイ102の位置AはPCAポンプユニットの「PCAモニタリングアラーム」状態を示している。更に、中央インターフェースユニット100は、聴覚アラーム276(図4)をスピーカ278または他の機器を通して作動させ、PCAポンプユニット172及び/又はETCO2ユニット94のアラームインジケータ136を明滅させ、そして緊急信号をインターフェースポート122及び外部通信コントローラ274を通して送信して、例えばナースコールによって適切な医療関係者に警告する。従って、麻薬性鎮痛剤投与による患者の呼吸機能低下に対する医療関係者による速やかなる処置及び医療介入が可能になる。
【0078】
次に、図12によれば、本発明の態様による患者ケアシステム300の別の実施形態は上述したインターフェースユニット100、PCAポンプユニット172、ETCO2ユニット94を含み、更に血中酸素飽和度及び脈拍数の非侵襲測定を行なうパルス酸素濃度測定ユニット302を含む。パルス酸素濃度測定ユニット302は、パルスオキシメータセンサ322、例えば静脈還流を含む指324または耳たぶのような患者144の一部分に装着される2波長センサを含む。パルス酸素濃度測定ユニットは信号をセンサから接続ケーブル326を通して受信し、そしてこの技術分野の当業者であれば理解し得るように、信号をパルスオキシメータの標準動作に従って解釈する。パルスオキシメータセンサの例は、アムンセンらによる米国特許第5437275号及びベーカーらによる米国特許第5431159号に開示されている。これらのセンサ信号から、パルス酸素濃度測定ユニットは、患者の血中酸素飽和度、SpO2、及び脈拍数の%表示値を求めることができる。パルス酸素濃度測定ユニットは、患者の血中酸素飽和度の%表示値を表示するSpO2ディスプレイ310、及び患者の脈拍数を表示する脈拍数ディスプレイ320を含む。
【0079】
ユーザは患者ケアシステム300を、例えば図5〜10を参照しながら記載したものと同様のプログラムステップを使用してプログラムして、ETCO2値、呼吸数値、FICO2値、SpO2値、及び脈拍数値のうちの一つ以上、或いはこれらの数値の種々の組み合わせが、選択された許容値範囲を外れる場合に、アラームを通知する、アドバイスを表示する、PCAポンプユニット172の電源を遮断する、またはポンプユニットの動作を変更することができる。一つの実施形態では、機能モニターモジュール94及び302のうちの一つ以上による測定値によって、インターフェースユニット100のプログラムシーケンスを開始することができ、このプログラムシーケンスは、特定の薬液投与プロトコルを終了させ、そして新規の投与プロトコルをPCAポンプユニットまたは別の接続ポンプモジュール(図示せず)によって開始する、或いは単純にPCAポンプ動作を終了させる。
【0080】
次に、図13によれば、本発明の態様を取り入れた患者ケアシステム400の別の実施形態は、統合ETCO2/パルス酸素濃度測定ユニット402を含む。ETCO2/パルス酸素濃度測定ユニットはETCO2ユニット94(図1)及びパルス酸素濃度測定ユニット302(図12)の機能を上述のように組み合わせて一つの統合機能ユニットとする。ETCO2/パルス酸素濃度測定ユニット402はデータを中央インターフェースユニット100に送信して情報ディスプレイ102に、SpO2410、脈拍420、ETCO2430、呼吸数440、FICO2、及び他のパラメータ、またはこれらよりも少ないパラメータ及び波形450を表示して傾向解析を行なう。インジケータ136,138,及び126、及びスイッチ128,130,及び134は他の実施形態に関して上に記載したように構成される。統合ETCO2/パルス酸素濃度測定ユニットはユーザがプログラムすることができる、またはインターフェースユニット100のメモリ250(図4)に、またはETCO2/パルス酸素濃度測定ユニット自体に保存されるプログラム情報によってプログラムすることができる。図13は、インターフェースユニット100の左側に接続されるPCAポンプユニット、及びインターフェースユニット100の右側に接続される複合ETCO2モニタリング/パルス酸素濃度(SpO2)測定ユニット402を示している。従って、患者144は患者の手に、PCAポンプユニット172にケーブル178を通して接続されるPCA投与リクエストボタン180を持ち、このボタンによって、PCAポンプユニットから患者に対して薬液投与セット182を通して行なわれる鎮痛剤のボーラス投与を制御する。患者はまた、患者のETCO2レベル及び呼吸に関して、統合ユニット402の一部分を形成するETCO2ユニットによってモニタリングされる。呼気サンプリングデバイス96を患者の鼻及び口の正規の位置に装着し、そしてこのデバイスは呼気を統合ユニットのETCO2部分にライン142を通して送り込む。患者はまた、血中酸素飽和レベルに関して統合ユニットの一部分を形成するパルスオキシメータによってモニタリングされる。パルスオキシメータセンサ322は患者に接続され、そしてセンサ信号は統合ユニットのパルスオキシメータ部分にケーブル326を通して送信される。
【0081】
図14及び15は中央インターフェースユニット100の情報ディスプレイ102に表示される設定画面の2つの例を示しており、この画面によってユーザに指示して測定パラメータの各々に関する、注入を開始するための最大値及び最小値を入力させる。図14の場合、アラームを発するためのSpO2の%表示値及び脈拍数を選択することができる。図15の場合、ETCO2、SpO2、及び脈拍数は一つの画面で設定することができる。呼吸数、無呼吸、FICO2、及びETCO2は別の画面で設定することができる、または別の実施形態では、これらのパラメータは図15に示すように、同じ画面に取り込むこともできる。
【0082】
図16のブロック図によれば、本発明の態様による患者ケアシステム490の別の実施形態は、ポンプ駆動ユニット510を有するプログラム可能な統合PCA注入ポンプ500と、情報を入力し(520)、そして表示する(530)ユーザインターフェースと、ユーザインターフェース520,530及びポンプ駆動ユニット510の動作を制御し、そしてモニタリングするマイクロプロセッサコントローラ540と、そしてマイクロプロセッサコントローラ540と通信して患者ケアシステム490を動作させるプログラム命令を保存するメモリ550と、を備え、そして更に、薬物ライブラリまたはライブラリ群、ポンプに関するパラメータ、及びモニターが使用することができる生理学的パラメータを保存することができる。注入ポンプ500は、ダフィー(Duffy)らによる米国特許第5,800,387号明細書に開示される注入ポンプとほぼ同様であり、この文献をここで参照することにより文献の内容全体が本発明の開示に含まれる。しかしながら、患者ケアシステム490はまた、ETCO2ユニット560及びパルス酸素濃度測定ユニット570をシステム筺体580の内部に含む。上述のモジュール式システムの中央インターフェースユニット100と同様に、マイクロプロセッサコントローラ540は、ETCO2ユニット560及び/又はパルス酸素濃度測定ユニット570が生成する値をモニタリングし、そしてポンプ駆動ユニット510の動作に、測定値の所定の変化に応答して影響を与える。
【0083】
次に図17を参照しながら、一連のグラフ表示の最初の表示について説明する。このような表示は中央インターフェースユニット100の情報ディスプレイ102に、または別のディスプレイ機器に表示することができる。この場合、データのグラフ表示を対向する2つのY軸を用いて行ない、左側のY軸452はETCO2測定値(分圧)をmmHg単位で表わす。右側のY軸454は呼吸数を1分当たりの呼吸回数の単位で表わす。表示の中の凡例456は、実線がETCO2を表わし、破線が呼吸数を表わすことを示している。X軸458は時間軸であり、この場合、6時54分から始まる約5分の時間を含む。更に、PCAボーラス460の投与が十字または+記号として表示される。傾向を表わすこのようなグラフによって、PCAボーラスの効果を更に容易に見て取ることができる。例えば、ほぼ6時55分でのPCAボーラス投与の後、患者のETCO2分圧が約10mmHgだけ低下したが、約1分経過後に元の状態に戻った。この表示は、ズーム(ZOOM),ページUP(PAGE UP),ETCO2メイン(ETCO2 MAIN),及びページDOWN(PAGE DOWN)のような所定のソフトキー462も含む。ズーム機能は、長期間または短期間に渡る傾向を素早く選択し、そして分析することができるように複数の選択可能な期間463を含む。
【0084】
図18は図17と、ETCO2のグラフが中央インターフェースユニット100のディスプレイ102上の表示として提示される点で類似する。しかしながら、この図では、呼吸回数がPCA投与量と対比される形でプロットされる。左側のY軸464はPCA投与量をミリグラム(mg)単位で表示し、右側のY軸466は呼吸数を1分当たりの呼吸回数として表示する。X軸458は時間単位で表示を行ない、この場合は、図17に示すものと同じ約5分の期間で表示を行なう。約1mgの持続投与が行なわれ、同時にPCA投与が持続投与量を超えるピークとして認識される。PCA投与は実線で示され、呼吸数は破線で示される。呼吸数の低下は、2回のPCA投与が同じ1分の間に行われた後の6時56分になった直後に生じる。第1回目投与はほぼ4mgで行なわれ、そして第2回目投与はほぼ3mgで行なわれる。患者が再びPCA投与注入を6時56分に行なう場合でも、この注入は少ない投与量で、すなわち約2mgで長い期間に渡って行なわれるので患者の呼吸数は元に戻る。しかしながら、1回目が約4mgで、2回目が約2.5mgの別の2回の突発的な投与がほぼ6時58分に行なわれた後、呼吸数は6時59分から再度低下し始める。ソフトキー462は図17に示すものと同じものを利用することができる。
【0085】
図18aは患者のETCO2が時間と共に変化する傾向を示し、対向するY軸にはmg単位の投与量を表示する。従って、PCA投与が患者のETCO2に与える影響は、PCA投与の傾向を示す同じグラフに重なるETCO2の傾向グラフから分かる。
【0086】
中央インターフェースユニット100の情報ディスプレイ102の別のデータアレイを図18bに示す。この場合、投与量、ETCO2、呼吸数、及びFICO2に関する表形式データが示される。データは左欄に配置される時間によって体系化される。この場合、表形式データは8時00分〜8時06分の時間枠によって体系化される。
【0087】
図19は酸素飽和度に関するものであり、この場合は中央ディスプレイ102上のパルス酸素濃度グラフである。この表示では、SpO2曲線が実線で示され、そして患者の脈拍数が破線で示される。左側のY軸468は酸素飽和度の%表示値を表わし、右側のY軸470は1分当たりの脈動数(脈拍数)の単位で表示を行なう。X軸458は図17及び18に示すものと同じ5分の期間の表示を行ない、そしてPCA投与は十字として示される。ここでも同じように、傾向は表示のグラフ特性から判断することができる。例えば、2回のPCA投与がほぼ6時54分に行なわれ、その直後に、患者の酸素飽和度が約95%から80%に約1分内に下がった。同じ期間の患者の脈拍数は約80bpmから90bpmに増えた。酸素飽和度及び脈拍数は共に、1分以内に元に戻り始めたが、患者は別の3回のPCA自己投与を行なって、酸素飽和度及び脈拍数に同様の影響が出ている。図16,17,及び18の他のディスプレイにおけるものと同様のソフトキー462を利用することができる。
【0088】
図20はテキスト形式でSpO2472の範囲及び現時点での%表示読み取り値474を示している。この場合、プログラムされている許容範囲は90%以上であり、上限はない。テキストには、脈拍数の範囲476、すなわち1分当たり50〜150回の脈動数(beats per minute)または50〜150bpm、及び82bpmである現時点の読み取り値478も示される。
【0089】
次に図21及び21aを参照すると、薬物ライブラリエディタープログラムの動作が分かる。図21には、データ画面483が示され、この画面では、特定の薬剤、この場合はモルヒネに関するデータを入力してデータセットの一部分を構成することができる。この画面を使用してデータセットを、薬物ライブラリの中から識別された薬剤に関して設定する。フォーム483の上部に、「新規濃度...」または「新規薬剤...」に関する選択手段を設ける。ここで、薬剤名識別情報の真下の第1ボックスは濃度に関するものであることに留意されたい。上述の「新規濃度...」を選択する操作では、このボックスを使用する。他方、「新規薬剤...」を選択する操作では、異なる薬剤の選択を行なって一つのデータセットを全て設定する。下方に進むと、PCA投与タイプを選択することができる。この場合、選択は、「PCA投与」、「持続投与」、及び「PCA投与+持続投与」の中から行なわれる。他の投与固有情報は、「ボーラス投与」、「負荷投与」、「最大蓄積投与量範囲」のような他のボックスに入力することができる。mgの投与単位は画面の右側に示される。画面の左側下部では、「濃度限界値」を入力することができ、そしてこれらの限界値を指定することができる。臨床アドバイスを右側下部に入力することができ、そしてこのアドバイスをこの例において見ることができる。このドラッグエディタープログラムのユーザは、患者に注入することができる、または患者に投与することができる薬剤の大規模なライブラリを構築し、そして編集することができる。当該ライブラリは薬剤名の大規模なリストを含むことができるだけでなく、プログラムのユーザはこれらの薬剤の各々に関する大規模なデータアレイを作成し、そして編集することもできる。
【0090】
モルヒネのデータセットを、図21に関連して記載したようなエディタープログラムを通して構築した後、特定薬剤の構築データセットの仕様を分析することができる。このような仕様の例を図21aに示す。特に、医用「薬剤」モルヒネに関するデータセット情報を含む画面484を示す。
【0091】
薬物ライブラリに含まれる薬剤に関する更に別のデータを、上に説明した種々の態様に従って実施される生理学的モニタリングのような「患者固有」データに関連付けることもできる。例えば、薬物ライブラリは薬剤の別の最大投与量を含むことができ、この最大投与量は、当該患者の測定済みETCO2に従って、または当該患者の測定済みSpO2に従って、或いは患者の他の測定済み生理学的状態に従って高くなる、または低くなる。データは、薬剤が所定の生理学的測定値を有する患者には全く適さないことを示す表示を含むこともできる。薬剤に関するこのようなデータセットによって、臨床医は生理学的モニター装置を注入が始まる前に患者に接続する必要もある。PCA投与の例では、注入を始める前に、ETCO2のモニタリングがデータセットによって必要になる。このようなモニタリング要件は、一つの実施形態における特定薬剤のデータセットに入力することができる。
【0092】
更に別の「患者固有」データを薬物ライブラリに取り込むことができる。例えば、各薬剤のデータベースの別のフィールドを「アレルギー」フィールドとすることができる。このようなフィールドには、アレルギーコードまたはアレルギー名を入力することができる。患者が仮にこのようなアレルギーを持っているとすると、当該薬剤に関するデータは薬剤投与に関する異なる限界値を含むことができる、またはこのようなアレルギー患者に対する特定薬剤のいずれかの投与を禁止することができる。患者の過去の薬剤治療に関するデータは、薬物ライブラリがライブラリの薬剤記入項目に関連するこのようなデータを含む場合に関連してくる。例えば、薬物ライブラリの薬剤記入項目によって、薬剤を、別の特定の薬剤を過去12時間以内に摂取したばかりの患者に、投与量を低くした最大投与量でしか投与することができないように指定することができる。ヘルスケア施設における患者の薬剤投与歴は、このような総合薬物ライブラリの場合に考慮される。これまでの薬剤の投与方法は関連せず、患者が薬剤を摂取したという事実のみが関連することになる。
【0093】
薬物ライブラリは「ソフト」限界値及び「ハード」限界値も含む。薬剤の「ソフト」限界値は最大値及び/又は最小値であり、最大値及び/又は最小値から外れる値の薬剤投与は許可されるが、この薬剤投与に対しては質問が行なわれる。その理由は、この投与の値は標準の投与値よりも大きくなる、または小さくなる可能性があるからである。「ソフト」限界値の例は注入速度であり、この注入速度は注入期間の長さが正確に制御される場合、標準の注入速度よりも高いが、半永久的な障害が生じるほど高くはない。他方、「ハード」限界値は最大値及び/又は最小値であり、最大値及び/又は最小値から外れる薬剤投与は禁止される。「ハード」限界値の例は注入速度であり、この注入速度は半永久的な障害が生じ得るほど高い。「ハード」限界値の別の例は、患者の測定ETCO2が、特定薬剤をいずれの投与量で投与しても半永久的な障害が生じ得るような機能低下値を示す場合である。このような場合においては、特定薬剤の「ハード」限界値はゼロであり、薬剤のどのような投与処置も禁止される。従って、ライブラリは患者の生理学的測定値に対応する更に別のデータ記入項目を有する。他のライブラリデータは患者の体重に対するソフト最小限界値及び最大限界値に関するフィールドまたはフィールド群、ポンプ閉塞圧に関するアラーム限界値、及び滴定投与速度(volumetric infusion rates:ml/h)、例えば持続投与速度のハード最大値、及びボーラス投与量のハード最大値を含むことができる。ライブラリはシリンジリストを含むこともでき、このリストによって、品種/モデルを使用可能/使用不能にして不注意から間違ったタイプのポンプを選択する危険を最小化することができる。
【0094】
次に図21aを参照すると、薬剤データ画面484が表示され、この画面では、特定の薬剤に関するデータ、この場合はモルヒネ486が表示される。このデータセットは、図21に関連して説明したような適切な薬剤編集機能を使用することにより既に設定されている。投与制限は488で示される。この場合、PCA投与、初期投与、ボーラス投与、及び持続投与に関する制限が入力されている。濃度限界値は、最大投与量及び最小蓄積投与量494と共に、492で指定される。PCA投与量限界値496は、最短ロックアウト時間及び最長ロックアウト時間498と共に指定される。「ロックアウト」は或る期間であり、この期間内では、患者による追加のPCA投与が禁止される。持続投与502、負荷投与504、及びボーラス投与506のような他の投与が、この薬剤に関して指定されている。ここで、最大蓄積投与量範囲はこのデータセットの「ソフト」限界値508であることに注目されたい。別のデータセットは「ハード」限界値を含むことができる。「ハード」限界値及び「ソフト」限界値について上に説明してきた。臨床アドバイス512がこの薬剤に対して適用されている。或るポンプでは、インターフェースユニット、及び他の処理機器及び/又はモニタリング機器、臨床アドバイスがモニター画面に表示され、この表示を、医療機器をプログラムしている臨床医が参照して薬剤を患者に投与する。例えば図2によれば、臨床医がPCAポンプ172を中央インターフェースユニット100によってプログラムする場合、臨床医はシリンジ176に含まれる薬剤を識別する。臨床医が「モルヒネ」を当該薬剤として選択すると、インターフェースユニットはディスプレイ102に、「呼吸機能及び心機能を注入の間に継続的にモニタリングして下さい」という臨床アドバイスを表示する。このような臨床アドバイス及び他のデータを薬物ライブラリの各薬剤記入項目のデータセットに、薬剤追加(ADD Drug)キー,薬剤編集(Edit Drug)キー,薬剤消去(Remove Drug)キー514を使用して、追加する、編集する、またはデータセットから消去することができる。
【0095】
上に説明したエディタープログラムを使用して作成されるこのような薬物ライブラリは図4に示すメモリ250に転送し、そして保存することができる。プロセッサコントローラ264をプログラムしてコントローラに、コントローラが制御する対象となるいずれかの注入装置をプログラムしている間に、薬物ライブラリにアクセスさせる。薬剤投与に関する臨床医によるプログラミングでは、患者及び注入薬剤を識別する必要がある。一例として、臨床医がインターフェースユニット100をインターフェースユニットの左側に位置するPCAポンプ172のためにプログラムしている場合を挙げることができる。コントローラは、コントローラ自体の内部に含まれる、またはPCAポンプの内部に含まれる、或いは院内サーバ、ナースステーションコンピュータ、PDA、または別の位置に含まれる薬物ライブラリにアクセスし、ETCO2モニター装置94が測定するETCO2のような患者固有のパラメータの比較を行ない、そしてPCAポンプのプログラミングを可能にする、または場合によってはプログラミングの変更を要求する。
【0096】
一旦、プログラミングが行なわれ、そして薬剤投与が始まると、プロセッサコントローラ264は、ETCO2ユニット94、SpO2ユニット302(図12)、または血圧測定装置、体温測定装置、または他の装置のような他のモニタリングユニットが測定する患者44の生理学的データをモニタリングし続ける。当該生理学的データに基づいて、コントローラはPCAポンプ172のプログラミングを自動的に変更して患者が薬剤を自己投与する能力を制限することができる。このような変更では、PCAポンプを使用不能にして患者に対する更なる薬剤投与が絶対に行なわれることがないようにすることができる。別の変更では、PCAポンプによる複数回の薬剤のボーラス投与の間の期間を長くすることができる。
【0097】
次に図22を参照すると、上記方法のフローチャートが表示されている。プロセッサコントローラによって患者が識別され(516)、次に薬剤が識別される(518)。患者の識別情報は、年齢、体重、アレルギー、及び他のデータのような患者に関する種々の詳細を含むことができる。次に、プロセッサコントローラは患者に関する詳細を識別対象の薬剤の薬物ライブラリと比較する。次に、ポンプをプログラムし(522)、そしてプロセッサコントローラは、ポンプのプログラム値が、利用できるとすれば患者に関するあらゆる生理学的モニタリングデータを含む患者データも、このようなデータが利用できるとすれば考慮に入れながら薬物ライブラリの限界値に収まることを確認する(524)。プログラム値が限界値に収まることがない場合、臨床医は、彼または彼女が、「ソフト」限界値を超える注入を行なおうとしていることを確認する必要がある。臨床医が所望のプログラム値がソフト限界値から外れていることを確認すると、プログラム値は限界値に収まると見なされることになる。プログラム値が「ハード」限界値を超えると、臨床医はポンプをプログラムし直すように指示を受けることになる。プログラム値が限界値に収まる場合、薬剤を注入することができる(526)。
【0098】
注入の間、プロセッサは患者に関して測定される生理学的データの全てをモニタリングする(528)。プロセッサは患者に関する生理学的データの比較を行ない(532)、そしてプログラム値が生理学的データを考慮に入れた状態で限界値に収まっている場合、傾向を図17〜20に従ってグラフ化することができ(533)、そして注入を継続する(526)。他の傾向もグラフ化することができる。しかしながら、プロセッサが、プログラム値がこの時点で薬物ライブラリの限界値を外れていることを生理学的データが示していると判断すると、プロセッサは、ポンプをプログラムし直して、例えばPCAポンプのロックアウト時間を長くすることによりプログラム値が薬物ライブラリ限界値に収まるようにすることができるかどうかを判断する(534)。できるとの判断が行なわれる場合、ポンプをプログラムし直し(536)、そして注入を継続する(526)。ポンプのプログラム値が薬物ライブラリの限界値に収まるようにポンプをプログラムし直すことができない場合、ポンプを停止し(538)、そしてアラームを出す。
【0099】
薬物ライブラリエディタープログラムは、患者ケアシステムとは別のデスクトップまたはラップトップコンピュータのようなコンピュータで動作することができる。施設のバイオ技術スタッフ、または薬局を設ける場合の薬局スタッフは当該施設において使用される薬物ライブラリを作成することができる。薬物ライブラリエディターをPDAのような他の機器で動作させることもできる。「開始(starter)」データセットを利用することができるが、薬物ライブラリエディタープログラムを使用するヘルスケア施設は通常、全てのデータを当該施設の医療機器に使用される薬物ライブラリに入力する。このような開始データセットは、特定の国で使用される最も一般的な1千種類の薬剤から成るリストを含むことができる。更に、データセットは特定の国のほとんどのヘルスケア施設において使用される一般的な注入パラメータだけでなく、アレルギー情報、及びライブラリに含まれる薬剤に関する他のデータを含むことができる。
【0100】
薬剤のデータセットに取り込むことができる臨床アドバイスの別の例を図23に示す。このアドバイスはPCA投与に適用することができ、かつアドバイスに従った処置が行なわれるまで注入が許可されないことも示している。SpO2ユニットまたはETCO2ユニットは注入が始まる前に取り付ける必要がある。これによって、患者の生理学的パラメータを、注入を始める前にモニタリングする必要があるという点で患者の安全性が高まる。
【0101】
更に別の特徴として、薬液を注入ポンプでETCO2値に基づいて滴定し、薬剤拮抗薬をETCO2値に基づいて投与し、注入を、正常になったETCO2値に基づいて再開し、そして患者ロックアウト時間をETCO2値に基づいて長くする。更に、コントローラは、患者リクエスト信号、ポンプに関する動作パラメータ、及び患者モニター装置またはモニター装置群に関する全ての生理学的測定値のようなポンプに関する全てのイベントを保存し、そして保存信号を後の時点で解析するために送信することができる。更なる薬剤投与を要求する患者リクエストに対する制御を、他の生理学的測定機器を利用することにより考慮することもでき、これらの機器には、血圧モニター装置、ECGモニター、体温計、及び他の機器が含まれる。PCAポンプをこのような生理学的モニタリングによって制御することができるだけでなく、大容量ポンプ及び他の薬液投与装置を制御することができる。更に、上に説明したように、臨床検査結果、アレルギーテスト、及び緊急医療記録のような他の患者データソースからの入力をコントローラが考慮に入れて、患者が薬剤を自己投与するための患者PCAリクエストデバイスを使用不能にする、または使用可能にすることができる。このような他の情報は、他の施設情報システムから有線または無線接続を通して取得することができる。問題が生じる場合には、上に説明したように、警告を薬剤投与モジュール自体で生成することができるが、警告は離れた位置から有線または無線接続を通して生成することもできる。
【0102】
以上のようにして、患者に対する生理学的モニタリングを使用してPCAポンプを制御するPCAシステムについて提示してきた。或る実施形態では、システムは薬物ライブラリを含み、このライブラリに対して患者の生理学的データを比較して、行なうとすればどの変更をPCAポンプ注入パラメータに加える必要があるかについて判断する。総合薬物ライブラリを使用することができ、このライブラリは、PCAを実施する特定の患者によって変わるいずれの処置が必要であるかについて判断するための患者固有の考慮事項を含む。更に、PCA投与の傾向の表示を生理学的データを用いて行なって、PCAが患者の生理学的パラメータに選択可能な期間に渡って影響を与えるか、または与えないかについて更に容易に把握することができる。
【0103】
SpO2を本明細書において、血中酸素飽和度を説明するために使用してきたが、SpO2は一例として、または一実施形態として使用されるに過ぎない。血中酸素飽和度を測定し、かつ良好に機能する他の機器または方法を用いる、または開発することができる。同様に、ETCO2を本明細書において、二酸化酸素の濃度を説明するために使用してきた。患者に関するこの生理学的パラメータを測定する他の機器または方法を用いることもできる、または将来時点において開発することができる。
【0104】
本発明の種々の実施形態について記載し、そして示してきたが、本説明は単なる例示に過ぎないものである。この技術分野の当業者であれば、上記実施形態に、添付の特許請求の範囲に示す本発明の技術範囲から逸脱しない範囲において変更を加え得ることが理解し得る。従って、本発明は添付の特許請求の範囲によって規定されるものを除き、制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の態様による患者ケアシステムの一つの実施形態の前面図であり、大容量ポンプユニット、CO2モニタリングユニット、及び大容量ポンプユニット及びCO2モニタリングユニットを相互接続する中央インターフェースユニットを示す。
【図1a】表形式情報及びグラフ情報を示すETCO2波形の傾向の拡大表示であり、ETCO2波形は時間軸及び圧力軸で表わされ、そしてETCO2のレベル及び呼吸数測定値はこれらの対応する許容範囲と共にテキスト形式で表示される。
【図2】本発明の別の態様による患者ケアシステムの前面図であり、患者自己管理鎮痛剤注入ポンプ、ETCO2モニタリングユニット、及びPCAポンプ及びETCO2モニタリングユニットを相互接続する中央インターフェースユニットを示している。
【図3】図1及び2の患者ケアシステムの中央インターフェースユニットの背面図である。
【図4】図2の患者ケアシステムの中央インターフェースユニットのブロック図である。
【図5】CO2モニタリングユニットを設定している間の、図2の中央インターフェースユニットの情報ディスプレイを表わし、値の入力領域を示し、更に値を元に戻すために使用されるキーを示している。
【図6】或る値を入力してCO2モニタリングユニットを設定している間の、図2の中央インターフェースユニットの別の情報ディスプレイを表わしている。
【図7】PCAポンプを設定している間の、図2の中央インターフェースユニットの別の情報ディスプレイを表わし、薬剤を選択する様子を示している。
【図8】PCAポンプを設定している間の、図2の中央インターフェースユニットの別の情報ディスプレイを表わし、単位の選択が行われる様子を示している。
【図9】PCAポンプを設定している間の、図2の中央インターフェースユニットの別の情報ディスプレイを表わし、薬剤投与値が入力される様子を示している。
【図10】設定完了後であって、図2の構成を操作している間の、図2の中央インターフェースユニットの情報ディスプレイを表わす。
【図11】患者ケアシステムがアラームモードになっているときの図2の中央インターフェースユニットの情報ディスプレイを表わす。
【図12】PCAポンプ、CO2モニタリングユニット、及びパルス酸素濃度モニターユニットを有する、本発明の態様による患者ケアシステムの別の実施形態の前面図である。
【図13】共に中央インターフェースユニットに搭載されるPCAポンプ、及び複合CO2/パルス酸素濃度モニターユニットを有する、本発明の態様による患者ケアシステムの別の実施形態の前面図である。
【図14】SpO2パルス酸素濃度測定ユニットを設定している間の、図13の中央インターフェースユニットの情報ディスプレイを表わす。
【図15】CO2/パルス酸素濃度測定ユニットを設定している間の、図13の中央インターフェースユニットの別の情報ディスプレイを表わし、値をフィールドに入力して生理学的パラメータの許容値範囲を設定する様子を示している。
【図16】統合CO2モニター及びパルスオキシモニターを同じ筐体に含み、これらのモニターの両方がポンプのコントローラに接続される構成の、本発明の態様による注入ポンプのブロック図である。
【図17】十字または+記号として重複させたPCAのボーラス投与時におけるETCO2及び呼吸数値の傾向を表わす、図13の中央インターフェースユニットによる情報表示を示す。
【図18】PCA投与量及び患者の呼吸数の傾向を表わす、図13の中央インターフェースユニットによる情報表示を示す。
【図18a】PCA投与量及びETCO2の傾向を表わす、図13の中央インターフェースユニットによる情報表示を示す。
【図18b】経時的な投与量、ETCO2、及び呼吸数を表わす、図13の中央インターフェースユニットによる表形式情報表示を示す。
【図19】十字または+記号として重複させたPCAのボーラス投与時におけるSpO2及び脈拍値の傾向を表わす、図13の中央インターフェースユニットによる情報表示を示す。
【図20】或る測定値、これらの値の許容範囲、及びSpO2波形の傾向のテキスト表示を表わす、図13の中央インターフェースユニットによる情報表示を示す。
【図21】一例としての薬物ライブラリ編集画面を示し、この画面では、薬剤に関するパラメータをデータセットに入力してヘルスケア施設において使用する。
【図21a】薬物ライブラリ編集プログラムによって生成される特定薬剤の完成版データセットの一例を示し、薬剤名が薬剤投与データに関連付けられる様子を示し、このデータセットでは、薬剤を追加する、編集する、またはライブラリから消去することができ、投与データ及び他のデータを臨床アドバイスと一緒に薬剤名に関連付けることができる。
【図22】ポンプにプログラムを設定する方法のフローチャートを示し、この方法では、ポンプに設定されたプログラムを薬物ライブラリと比較し、傾向を図式化し、そして設定されたプログラムが患者の生理学的状態の変化によって薬物ライブラリの限界値から外れる場合に、プログラムを設定し直す。
【図23】薬物ライブラリのデータセットに含まれる臨床アドバイスであり、このアドバイスはPCAポンプをコントローラに接続する臨床医に送信される。
【技術分野】
【0001】
本発明は概して患者ケアシステム及び方法に関し、特に患者の生理学的パラメータまたはパラメータ群をモニタリングし、そしてこのようなモニタリングに関する情報を提供して、鎮痛剤投与に関連する中枢神経系及び呼吸の機能低下を防止しながら、患者に対する鎮痛剤の自己投与を制御するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プログラム可能な投与システムは、広範囲の種類の薬剤及び薬液を患者に種々の現場において投与するために医療分野において広く使用される。例えば、シリンジポンプ、大容量ポンプ(large volume pumps:ここでは「LVP」と記載する)、及び流量制御機器は、非経口的液体、抗生物質、化学療法薬剤、麻酔薬、鎮痛剤、鎮静剤、または他の薬剤のような医療用薬液を投与するために、病院、診療所、及び他の臨床現場において使用される。シングルシステムまたはマルチチャネルシステムを利用することができ、そして種々のシステムが、薬剤計算を自動で行なう計算機、薬物ライブラリ、及び複雑な投与プロトコルを含む種々のレベルの高性能を備える。更に別のタイプの薬剤投与システムは患者が自己管理する鎮痛剤(patient controlled analgesia:ここではPCAと記載する)ポンプである。PCAポンプの場合、患者が麻薬性鎮痛剤の投与を制御する。その理由は、患者は通常、疼痛管理を更に行なうための必要性を判断する最適な立場に置かれているからである。PCAは通常、PCAを使用する場合のみの専用のポンプスタンドアローン型注入装置を通して投与される。PCA注入装置の例は、ボイマン(Boydman)による米国特許第5069668号及びゼッブ(Zdeb)による米国特許第5232448号に開示されている。
【0003】
使用するポンプシステムのタイプに関係なく、特に麻酔薬、鎮痛剤、または鎮静剤のような薬剤の投与による重篤な副作用は、中枢神経系及び呼吸の機能低下を誘発し、これによって重篤な脳障害が残る、または死に至るような事態が起こり得る。例えば、シリンジポンプまたはLVPを使用して麻酔薬、鎮痛剤、または鎮静剤を注入するためには、高度に訓練された医療専門家が注意深く監視を行なって過剰投与を防止する必要がある。薬物治療過誤を最小限にするように設計される、高性能の自動プログラミング機能及び計算機能を有する投与システムの場合でも、入院患者または外来患者の臨床診断を行なっている間の麻薬性鎮痛剤または鎮静剤の投与の間に、患者に呼吸機能低下または他の有害な効果が生じるのは珍しいことではない。
【0004】
通常、患者が睡眠中であり、従って投与ボタンを作動させることができないことによって過剰投与が防止されるPCA(患者自己管理鎮痛法)の適用形態においても、PCA(患者が自己管理する鎮痛剤)の投与に関連して呼吸及び中枢神経系の機能低下が生じる、更には死さえも招く場合が起こっている。これらの原因として、PCA(患者が自己管理する鎮痛剤)注入装置をプログラミングする際の臨床過誤、鎮痛剤の混合またはラベル表示に際する過誤、機器の誤作動、及び力が入り過ぎた親類が患者の投与リクエストコード線を押すことにより鎮痛剤を余分に投与してしまう現象を挙げることができる。
【0005】
麻薬性鎮痛剤の過剰投与の危険があるため、ナロキソン(Narcan(商標))のような麻薬拮抗薬は、呼吸及び中枢神経系の機能低下を回復させるために院内で広く利用することができ、かつ使用される。しかしながら、このような麻薬拮抗薬の有効性は、呼吸及び中枢神経系の機能低下に対する迅速な判断及び治療に大きく依存するので、機能低下によって酸素欠乏に起因する脳障害が生じ得る、または死さえ招き得る。従って、呼吸及び中枢神経系の機能低下を迅速に判断し、治療して、機能低下が無事に回復する確率が確実に高くなるようにする必要がある。従って、患者の実際の健康状態を監視して呼吸または中枢神経系の機能低下を確認し、直ちに治療上の処置を採る必要がある。
【0006】
麻薬性鎮痛剤、鎮静剤、または麻酔薬の投与に関連する呼吸機能低下の危険が検出される場合、患者の呼吸状態及び心臓状態を、患者の血液を非侵襲的に測定する、または血液のサンプル採取を行なう必要を生じることなく通知するシステムが特に望ましく、かつ有用である。非侵襲的終末呼気二酸化炭素濃度(end tidal carbon dioxide:ETCO2)モニター及びパルスオキシメータによるモニタリングは上に記載したような2つの方法であり、これらの方法は、患者の生理学的パラメータをモニタリングするために使用される。ETCO2測定法では、呼気及び吸気のCO2の濃度、呼吸数、及び無呼吸(ゼロの呼吸数)をモニタリングし、パルスオキシメータは患者の血液の酸素飽和度及び患者の脈拍数をモニタリングする。ETCO2濃度、呼吸数、及び無呼吸の組み合わせ、または血中酸素飽和度及び脈拍数の組み合わせは、患者の呼吸及び心臓の全体的な状態を表わす重要な表示手段と成り得る。パルスオキシメータを使用して血中酸素飽和度を測定する場合、SpO2(動脈血酸素飽和度)という項目が一般的に使用され、そして本明細書においては酸素飽和度を示すために使用される。
【0007】
パルスオキシメータによる酸素濃度の非侵襲的な計測に関する一つの一般的なアプローチでは、患者の指のような静脈組織部分に跨って装着される2波長センサを使用して動脈血中の酸化ヘモグロビンの割合を測定し、それによって患者の酸素飽和レベルを測定する。更に、特定の組織部位における酸化ヘモグロビンは本質的に脈動を表わし、かつ循環器系全体と同期するので、システムは患者の脈拍数を間接的に測定する。同様のパルスオキシメータセンサの例は、アムンセン(Amundsen)らによる米国特許第5437275号及びベーカー(Baker)らによる米国特許第5431159号に開示されている。
【0008】
患者の呼吸状態をモニタリングする別の手段では、ETCO2を測定し、そして図表化して表わすが、これはカプノグラフ(capnography)として知られる手法である。特に、現在のカプノグラフモニターでは、分光法、例えば赤外分光法、質量分光法、ラーマン分光法、または光音響分光法を使用して、患者に非侵襲的に装着するノーズピース及び/又はマウスピースを通過する空気のCO2濃度を測定する(例えば、オリディオン(ORIDION)社、http://oridion.comや、ノバメトリクス・メティカル・システムズ(NOVAMETRIX Medical Systems)社、http://www.novametrix.comや、オトゥール(O’Toole)による米国特許出願公開第2001/0031929号を参照)。カプノグラフメーターによるETCO2波形、及び終末呼気二酸化炭素濃度、または吸気直前の二酸化炭素濃度であるFICO2のような指標が、手術室及び集中治療現場の患者の状態をモニタリングするために現在使用されている。
【0009】
PCA(患者が自己管理する鎮痛剤)注入ユニットを含むことができ、かつ複数のポンプユニットを集中制御する患者ケアシステムは医学分野では公知である。このようなシステムの例は、カーンズ(Kerns)らによる米国特許第4756706号、ルバルカバ・ジュニア(Rubalcaba,Jr.)による米国特許第4898578号及びサミオテス(Samiotes)らによる米国特許第5256157号に開示されている。これらの先行技術によるシステムの各々は、複数の個別ポンプとインターフェース接続して種々の制御機能を提供するコントローラを提供する。改良型患者ケアシステムはエッガース(Eggers)らによる米国特許出願第08/403503(米国特許第5713856)号に開示されている。エッガースらによるシステムの中央管理ユニットは、例えば特定の注入ユニットの注入パラメータを臨床医から取得し、そしてインターフェースとして機能して注入速度を設定し、速度に従って注入を制御し、各機能ユニットの内部設定及びプログラムを個々に制御し、そして各機能ユニットからの情報を受信し、そして表示することができる。エッガースらによる患者ケアシステムはまた、パルスオキシメータ及び心臓モニターのような種々のモニタリング装置を集中制御する。
【0010】
しかしながら、上に記載した先行技術による多くのシステムは、PCA注入装置をパルスオキシメータ及び/又はETCO2モニターと共に統合制御することができない。このようなシステムでは、医療関係者が専属の形で常にモニタリングを行なって麻薬性鎮痛剤の投与に関連して生じる恐れのある呼吸機能低下の副作用を迅速に検出し、そして治療する必要がある。従って、これらのシステムはコスト効率が高くない。その理由は、医療関係者が常にモニタリングを行なうことによって費用が増大するからである。
【0011】
更に、上に説明したシステムは呼吸機能低下が生じた場合にPCA注入ユニットの動作を自動的に中止することができない。PCA注入ユニットの動作を自動的に中止することができないので、これらのシステムでは実際に、麻薬性鎮痛剤の投与が更に行なわれ、適切な医療関係者が到着して治療介入するまで、呼吸機能低下を更に悪化させる。医療関係者が到着し、そして医療介入するために要する時間によって、麻薬拮抗剤の投与が遅れるので、麻薬拮抗剤の作用が減弱する恐れがある。
【0012】
既存のPCA注入システムに関連する不具合があるので、このような不具合が無いとした場合にPCA治療法から便利さを享受することができたはずの所定の患者はPCA(患者自己管理鎮痛法)を利用しようとはしない。その理由は、呼吸機能低下が気になるからである。患者が先行技術によるシステムを用いてPCA(患者自己管理鎮痛)治療を行なうのが適すると思われる場合でも、これらのシステムによって、患者は不注意による呼吸機能低下の危険があるので更に積極的な治療を受けることができず、従って患者は迅速かつ一層効果的な痛みからの解放を更に積極的な治療によって得るということができない。
【0013】
ボリッシュ(Bollish)らによる米国特許第5957885号、及びバンダビーン(Vanderveen)による米国特許出願公開第2003/0106553号に開示されているようなこの技術分野に大きな利点をもたらしている更に高性能のシステムでは、PCA(患者自己管理鎮痛)に対する制御を、患者の生理学的パラメータまたはパラメータ群のモニタリングと連動しながら行なう。米国特許第5957885号の場合においては、オキシメータシステムが開示され、そして米国特許出願公開第2003/0106553号の場合においては、CO2システムが提供される。これらのシステムは両方ともに、先行技術に大きな改善をもたらした。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、更なる改善が望まれる。例えば、鎮痛剤を重複投与することに伴なう呼吸または心拍の傾向を提供して、患者の生理学的パラメータ及び反応の傾向が明瞭かつ迅速に分かるようにすることができれば明らかに有利である。更に、薬物ライブラリを拡張して、特に種々のPCA(患者自己管理鎮痛剤)注入パラメータ限界値を取り込むことができれば利点が得られる。
【0015】
従って、この技術分野の当業者であれば、患者の健康状態をモニタリングすることができ、かつ患者へのPCA(患者自己管理鎮痛剤)の注入を解析に基づいて制御することができる患者ケアシステム及び方法が必要であることが理解し得る。更に、この技術分野の当業者であれば、臨床医にグラフ情報を提供して患者の状態、及び薬液の投与に対する患者の反応を判断し易くして、必要に応じて治療上の処置をできる限り迅速に採ることができる患者ケアシステム及び方法が必要であることが理解し得る。本発明はこれらの要求及び他の要求を満たすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
簡単に概要を説明すると、本発明は、医療用薬液を患者に投与するポンプと、ポンプと通信してポンプの動作を制御するコントローラと、患者の生理学的パラメータをモニタリングし、そして生理学的パラメータの選択部分の測定値をコントローラに送信するモニターユニットと、そしてコントローラの接続先となるメモリと、を備える患者ケアシステムに関わる装置及び方法を提供するものであり、メモリは生理学的パラメータの選択部分に関する許容値の保存範囲を含み、コントローラはモニターユニットから受信する選択生理学的パラメータ部分の測定値を、メモリに保存される前記部分に関する許容値の範囲と比較し、そして測定値がメモリに保存される前記範囲から外れる場合に、コントローラはPCA注入の停止のような所定の処置を実施する。
【0017】
別の態様では、モニターユニットは患者を生理学的パラメータに関してモニタリングし、そして生理学的パラメータの測定値をコントローラに送信する。コントローラは医療用薬液の投与速度を生理学的パラメータに従って自動的に調整し、そして更に詳細な態様では、コントローラは、患者の生理学的パラメータの測定値が許容値の保存範囲から外れる場合に、ポンプによる患者への医療用薬液の投与を自動的に一時停止する。
【0018】
本発明による更に別の態様では、生理学的パラメータのグラフ表示を含むグラフ形式の傾向表示を行ない、グラフ表示には患者による鎮痛剤自己投与の実行を示す表示が重なる。詳細には、前記傾向表示では、鎮痛剤自己投与の実行時間の表示を患者の生理学的パラメータの波形表示に重ねる。生理学的パラメータはアイコン付きのETCO2またはSpO2の波形とすることができ、アイコンは鎮痛剤の自己投与が行なわれた時点を表わす波形に重なる。
【0019】
別の態様では、PCA投与の関連情報を含む表形式表示を行なう。更に詳細な態様では、表形式表示は、PCAの投与時間、及び測定済み患者生理学的パラメータのレベルを示す。更に詳細な態様では、投与量も表形式表示に含まれる。
【0020】
本発明による他の態様では、患者ケアシステムは更にPCA投与リクエストスイッチを備え、このスイッチを使用して、患者はポンプにリクエストして或る量の鎮痛剤を注入させ、ポンプによる前記量の鎮痛剤の注入を許可する前に、コントローラはモニターユニットから受信するETCO2の測定値を、メモリに保存されるETCO2モニタリングパラメータに関する許容値の範囲と比較する。測定値がメモリに保存される範囲から外れる場合、コントローラはポンプによるリクエスト量の鎮痛剤の患者への注入を許可しない。
【0021】
別の態様では、PCA投与リクエストスイッチを設け、このスイッチを使用して、患者はポンプにリクエストして或る量の鎮痛剤を注入させ、ポンプによる前記量の鎮痛剤の注入を許可する前に、コントローラはモニターユニットから受信するETCO2の変化速度をメモリに保存される許容値の範囲と比較し、変化速度が許容値に収まらない場合に、ポンプによるリクエスト量の鎮痛剤の患者への注入を許可しない。
【0022】
更に別の態様では、コントローラはまた、患者の呼吸数及び無呼吸域値を許容値の範囲と比較し、そしてこれらの範囲から外れる場合に、コントローラはポンプによるリクエスト量の薬剤の患者への注入を許可しない。
【0023】
更に詳細な態様では、患者ケアシステムは更にディスプレイを備え、このディスプレイには、モニターユニットが送信する一連の測定済み生理学的パラメータ値に基づいて生成される患者の生理学的パラメータの波形が表示される。更に、モニターユニットは患者の生理学的パラメータをモニタリングし、そして生理学的パラメータの測定値をコントローラに送信する。コントローラは、医療用薬液の投与速度を患者の生理学的パラメータに従って自動的に調整する。別の態様では、コントローラは、患者の生理学的パラメータの測定値が許容値の保存範囲から外れる場合に、ポンプによる患者への医療用薬液の投与を自動的に一時停止する。
【0024】
更に詳細な態様では、患者ケアシステムは更にディスプレイを備え、このディスプレイには、モニターユニットが送信する一連の測定済みETCO2値に基づいて生成される患者のETCO2波形が表示される。表示されるETCO2波形の形状は、臨床医が分析して問題が生じているかどうかを判断することができる。傾向を示す複数の波形を表示することもでき、そしてこれらの波形を互いに比較して、臨床医が複数の連続波形を分析し、そして互いに比較して問題が生じているかどうかを判断することができるようにする。更に、モニターユニットは患者の呼気のETCO2をモニタリングし、そしてETCO2の測定値をコントローラに送信する。コントローラは、医療用薬液の投与速度を患者の呼気に含まれる終末呼気二酸化炭素に従って自動的に調整する。
【0025】
別の態様では、コントローラは、患者の呼気に含まれる終末呼気二酸化炭素の測定値が許容値の保存範囲から外れる場合に、ポンプによる患者への医療用薬液の投与を自動的に一時停止する。
【0026】
更に詳細には、生理学的パラメータの許容値範囲を保存するメモリをポンプから離れた位置に配置する。別の態様では、生理学的パラメータの許容値範囲を保存するメモリをポンプの中に配置する。
【0027】
更に別の態様では、患者ケアシステムは更にコントローラに接続される酸素濃度測定ユニットを備え、このユニットは患者の血液をモニタリングし、そして患者の血液の酸素飽和度の測定値をコントローラに送信し、メモリは血液の酸素飽和度の許容値の保存範囲を含み、コントローラは、酸素濃度測定ユニットから受信する酸素飽和度の測定値を、メモリに保存される酸素飽和度に関する許容値範囲と比較し、そして測定値がメモリに保存される範囲から外れる場合に、コントローラは所定の処置を実施する。更に詳細には、コントローラは、薬剤の投与速度を、患者のETCO2または患者の血液の酸素飽和度のいずれかに従って自動的に調整する。
【0028】
一つの態様では、この調整において、患者への薬剤の投与を一時停止する。更に別の態様では、酸素濃度測定ユニットはまた、患者の脈拍数をモニタリングし、そして脈拍数の測定値をコントローラに送信し、メモリは脈拍数の許容値の保存範囲を含み、コントローラは、酸素濃度測定ユニットから受信する脈拍数の測定値を、メモリに保存される脈拍数に関する許容値範囲と比較し、そして測定値がメモリに保存される範囲から外れる場合に、コントローラは所定の処置を実施する。
【0029】
一つの態様では、この調整において、患者への薬剤の投与を一時停止する。更に、別の詳細な態様では、コントローラは、薬剤の投与速度を、ETCO2、FICO2、呼吸数、無呼吸アラーム、患者の血液の酸素飽和度、及び/又は患者の脈拍数のいずれかに従って自動的に調整する。
【0030】
本発明の更に別の態様では、PCAユニットと生理学的パラメータモニターとの間の通信及び相互作用を可能にする機能を備える患者モニタリングシステムを提供する。一つの態様では、パルス酸素濃度測定ユニットを使用し、そして別の詳細な態様では、EtCO2ユニットを使用する。システムは、パルス酸素濃度測定ユニット及び/又はEtCO2ユニットからの一つ以上の生理学的パラメータ値によって認識される呼吸機能低下の徴候を利用し、そしてこの徴候に基づいてPCAユニットを制御する。一つの態様では、PCAユニットをこのように制御する操作では、患者への薬剤の投与を一時停止する。
【0031】
方法を用いる態様によれば、患者によって薬液が体内に注入される自己投与を制御する方法が提供され、本方法では、患者の生理学的パラメータをモニタリングし、そしてモニタリングパラメータに関する患者の生理学的データを送信する。プロセッサはモニタリング生理学的データを、データベースまたはライブラリに含まれる患者限界値と比較する。前記比較の結果を示す比較信号を生成する。薬液注入は、モニタリングした患者の生理学的状態を表わす比較信号が患者状態限界値から外れる場合に終了させる。
【0032】
更に詳細な態様では、患者ケアシステムは更にディスプレイを備え、このディスプレイには、モニターユニットが送信する一連の測定済みETCO2値に基づいて生成される患者のETCO2波形が表示される。更に、モニターユニットは患者の呼気の呼気終末CO2をモニタリングし、そして呼気終末CO2の測定値をコントローラに送信する。コントローラは、医療用薬液の投与速度を患者の呼気に含まれる呼気終末CO2に従って自動的に調整する。
【0033】
別の態様では、コントローラは、患者の呼気に含まれる呼気終末CO2の測定値が許容値の保存範囲から外れる場合に、ポンプによる患者への医療用薬液の投与を自動的に一時停止する。
【0034】
装置を用いる更に別の態様では、所定の薬剤を含む容器を備える形で使用される注入ポンプが提供され、前記容器は、機械読み取り可能なラベルを含み、ラベルによって、所定の薬剤の識別情報及び薬剤濃度を、そして患者名、患者番号、及び患者位置のような所定の薬剤に関する利用可能な他の情報を指定する。ポンプはポンプ機構を備えることができ、ポンプ機構は作動状態では、所定の薬剤を患者に容器から投与し、ポンプ機構を制御するプログラム可能なコントローラを備えることができ、モニターユニットを備えることができ、このモニターユニットは患者の呼気のような生理学的パラメータをモニタリングして当該呼気の選択成分を測定し、そして測定成分を表わす測定値を送信し、薬物ライブラリを保存するメモリを備えることができ、前記薬物ライブラリは薬物に関する複数の記入項目を含み、この場合、薬物に関する各記入項目に、薬剤注入ポンプを構成するための関連する注入パラメータのデータセットを関連付け、メモリは患者の呼気の選択成分も保存し、この場合、選択成分に許容値範囲を関連付け、使用中に容器に貼り付けられるラベルの内容を読み取るラベルリーダを備えることができ、そしてラベルリーダに応答して所定の薬剤に対応する薬物ライブラリの記入項目を識別し、そして薬物ライブラリの中から識別された記入項目に関連する一連の薬剤注入パラメータを使用することによりプログラム可能なコントローラを構成する手段を備えることができ、プログラム可能なコントローラは測定値を受信し、測定値を選択成分の許容値範囲と比較し、そしてポンプ機構を比較に基づいて制御するように構成される。
【0035】
別の態様では、オペレータが薬剤注入パラメータを薬剤注入ポンプに書き込み、パラメータが薬物ライブラリのデータセットに含まれる薬剤注入パラメータの許容範囲から外れる場合においては、コントローラはオペレータに、書き込みパラメータがパラメータの許容範囲から外れていることを示す通知を送信し、更にオペレータに、薬物ライブラリに含まれるパラメータの実限界値または複数の実限界値を送信する。すなわち、実際には、オペレータに、どの値をパラメータとして書き込むべきかに関する指定値を通知する。このような薬剤注入パラメータ及び範囲は、これらには限定されないが、濃度限界値、PCA投与量限界値、連続注入限界値、負荷投与量限界値、ボーラス投与量限界値、ロックアウト時間限界値、及び最大蓄積量限界値を含む。
【0036】
別の態様では、コントローラが通知する指定値はデータセットの限界値、または複数の限界値とする必要はないが、範囲のいずれかに位置する値とすることができる。この値は「事前設定」パラメータ値または推奨パラメータ値、或いは他の初期値と見なすことができる。この値は、診療所において、範囲、薬剤名、及び他の情報のようなデータセットに書き込むことができる。他の情報は、薬物ライブラリのデータセットに含めることもできる臨床アドバイスを含むことができる。このようなアドバイスは、患者への投与に関してプログラムされた薬剤治療に関する臨床医に対する注意事項となる。
【0037】
本発明による更に別の更に詳細な態様では、PCAに使用される薬剤に関するデータセットを生成する。PCAデータセットは、これに限定されないがロックアウト時間を含む、特にPCAに関するパラメータを含む。
【0038】
更に詳細な態様では、コントローラは、患者の生理学的パラメータの値に基づいて、PCA注入を一時停止する、終了させる、調整する、そして再開することができる。更に詳細には、上記処置は、ETCO2、FICO2、呼吸数、無呼吸、及び脈拍数のうちの一つ以上の値が所定範囲から外れる場合に実施する必要がある。更に、患者がPCA投与を要求するリクエストに対する応答が一時停止されるロックアウト時間は、複数の上記パラメータのうちの一つ以上の値に従って変更することができる。
【0039】
更に別の態様では、患者の生理学的パラメータまたはパラメータ群をモニタリングするモニタリング機器を、注入が行なわれる前に、コントローラに直接、または間接的に接続する必要がある。
【0040】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明に関する以下の詳細な説明を、添付の図と関連させることにより一層明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
次の文献は、本明細書において参照することにより、文献の内容が本出願に組み込まれる。すなわち、これらの文献は、ボリッシュらによる米国特許第5957885号、バンダビーンによる米国特許出願公開第2003/0106553号、フォード(Ford)らによる米国特許第5681285号及びエッガースらによる米国特許出願第08/403503(米国特許第5713856)号である。
【0042】
本発明の次の好適な実施形態について、プログラム可能なモジュール式患者ケアシステムに主として関連する形で記載するが、この患者ケアシステムは、エッガースらによる「モジュール式患者ケアシステム」と題する1995年3月13日出願の米国特許出願第08/403503(米国特許第5713856)号、ボリッシュらによる「酸素濃度をモニタリングすることによる患者自己管理鎮痛システム」と題する1996年11月6日出願の米国特許第5957885号、及びバンダビーンによる「CO2をモニタリングすることによる薬剤投与システム」と題する米国特許出願公開第2003/0106553号に開示される。しかしながら、この技術分野の当業者であれば、開示する方法及び装置は、これらには限定されないが、他の患者ケアシステム及び薬剤投与ポンプシステムをも含む、より広範囲の適用形態に容易に適合させ得ることが理解し得る。更に、これも当業者であれば理解し得ることであるが、本発明によるETCO2をモニタリングすることによる薬剤投与システム、SpO2をモニタリングすることによる薬剤投与システム、及び他のシステムのうちのいずれかのシステムを、以下に詳細に説明し、かつ図16に示すように、スタンドアローン型統合ユニットとして提供することもできる。
【0043】
次に、種々の図の中の同様の参照番号が同様の、または対応する構成要素を指す図について更に詳細に参照する。図1は、本発明の好適な実施形態によるプログラム可能なモジュール式患者ケアシステム90の前面図を示していることが分かる。患者ケアシステム90は、中央インターフェースユニット100と、PCAポンプユニット92と、患者の呼気または吸気をモニタリングして、選択成分の濃度を求めてETCO2を測定する、ETCO2ユニットとしても知られるカプノグラフユニットのようなユニット94と、そして患者に装着される呼気サンプリングデバイス96と、を備える。図示しないが、PCAポンプユニット及びETCO2ユニットは共に患者に接続される。図1は2つの機能ユニット、すなわち中央インターフェースユニット100に取り付けられるPCAポンプユニット92及びETCO2モニタリングユニットしか示していないが、患者ケアシステム90は更に他の機能ユニットを備えることができ、どの機能ユニットを備えるかは、患者の特定のニーズによって変わる。例えば、一つ以上の更に別の機能ユニットをPCAポンプユニットまたはETCO2ユニットのいずれかに接続することができ、更に別の機能ユニットとしては、これらには限定されないが、大容量ポンプ、フローコントローラ、シリンジポンプ、他の大気分析用モニター、パルス酸素濃度モニター、心電計、侵襲及び非侵襲血圧モニター、意識のレベルをモニタリングする聴性誘発反応(AEP)モニター、脳血流量モニターまたは脳酸素化モニター、サーモメーターユニット、及び他の類似の機器を挙げることができる。
【0044】
中央インターフェースユニット100は通常、5つの機能を患者ケアシステム90において実行する。
(1)ユニット100によって、患者ケアシステム90をIVパワーポール及びベッドレールのような構造に物理的に取り付けることができる。
(2)ユニット100は電源を患者ケアシステム90に供給する。
(3)ユニット100は、患者ケアシステム90と外部機器との間のインターフェースとなる。
(4)或る特定の情報を除いて、ユニット100は患者ケアシステム90とのユーザインターフェースとなる。
(5)ユニット100は患者ケアシステム90の全体動作をモニタリングし、そして制御するが、このモニタリング及び制御では、モニターモジュール及び/又はポンプモジュールからの信号を統合して警告を通知する、及び/又は一つ以上のポンプモジュールの動作に影響を与える。
【0045】
中央インターフェースユニット100は情報ディスプレイ102を含み、このディスプレイをセットアップ手順及び操作手順の間に使用して、データ入力及び編集を容易にすることができる。情報ディスプレイ102はまた、操作中に、これらには限定されないが、薬剤名、投与量、注入速度、注入プロトコル情報、PCA(Patient Controlled Analgesia:患者自己管理鎮痛)用途に用いる患者ロックアウト期間、ETCO2限界値、FICO2限界値、呼吸数限界値、無呼吸時間、及び他のパラメータのような種々の操作パラメータを表示することができる。パルスオキシメータのような他の機能ユニットを取り付ける場合、情報ディスプレイ102は酸素飽和度、脈拍数限界値、及び/又は他の機能ユニット固有の情報を表示することができる。また、情報ディスプレイ102を使用して命令、催促、アドバイス、及びアラーム状態をユーザに対して表示する。
【0046】
中央インターフェースユニット100はまた、数字データを入力するための複数のハードキー104を含み、そしてこれらのハードキーをソフトキー106と一緒に用いて操作命令を入力する。また、中央インターフェースユニット100は更に、中央インターフェースユニットへの電源をオンまたはオフさせるPOWERハードキー108と、中央インターフェースユニットのオーディオ機能を一時的に使用不能にするSILENCEハードキー110と、そして利用可能システムまたは機能ユニットオプションへのユーザによるアクセスを可能にするOPTIONSハードキー112と、を含む。中央インターフェースユニットは更に、患者ケアシステム90が互換外部コンピュータシステムと通信していることを示す外部コンピュータインジケータ114と、中央インターフェースユニットが外部電源に接続され、かつ外部電源によって動作していることを示す外部電源インジケータ116と、そして中央インターフェースユニットがバッテリのような内部電源を使用して動作していることを示す内部電源インジケータ118と、を含むことができる。中央インターフェースユニットは改ざん防止機能(図示せず)を含むこともでき、この機能によって所定の一連の制御を不能にすることができる。例えば、一旦、注入が始まると、中央インターフェースユニットは、アクセスコードをまずポンプモジュールまたは中央インターフェースユニットに入力することがない限り、または臨床医以外は気付くことがないポンプモジュールの背面に位置するボタンのようなスイッチを起動することがない限り、注入速度または他の操作パラメータの変更を一切許可しない。これによって、注入パラメータが子供または他の権限の無い担当者によって変更されることを防止し易くなる。
【0047】
PCA(患者自己管理鎮痛剤)ポンプユニット92及びETCO2ユニット94はそれぞれ、チャネルポジションインジケータ126を含み、このインジケータは、文字「A」、「B」、「C」、及び「D」のうちの一つを表示して患者ケアシステム90に対する機能ユニットのチャネル位置を識別する。例えば、図1に示す患者ケアシステムは2つのチャネル位置A及びBを含み、Aは中央インターフェースユニット100の直ぐ左に位置することを示し(PCAポンプユニット92)、そしてBは中央インターフェースユニット100の直ぐ右に位置することを示す(ETCO2ユニット94)。チャネルAのPCAポンプユニット及びチャネルBのETCO2ユニットは共に、図1に示すように取り付けられるので、インターフェースユニットの情報ディスプレイ102はA及びBを示している(なお、本実施形態では、PCAポンプユニットは情報ディスプレイに「PCA/持続投与」として示され、そしてETCO2ユニットは情報ディスプレイに「CO2/モニター」として示される)。所望の機能ユニットを、対応する機能ユニットのSELECTキー128を押下することによって選択する場合、情報ディスプレイは選択機能ユニットのユーザインターフェースとして機能するように構成される。詳細には、以下の例に関する説明から明らかになるように、情報ディスプレイを機能独自ドメインに従って構成して、機能独自の表示及びソフトキーを提供する。
【0048】
図1の機能ユニット92及び94は共に、機能ユニットを選択するためのSELECTキー128を有する。PCAポンプ92は、機能ユニットがポンプであり、かつ注入が行われている場合に注入を中断するためのPAUSEキー130を含む。ETCO2ユニット94は機能をモニタリングするためのMONITORキー131を含む。PCAポンプユニットはまた、上に説明したように、既に中断している注入をポンプの全てのアクセス制御機能に従って再開するためのRESTARTキー132を含む。これらのモジュールは共に、チャネルの選択を解除するためと、そしてチャネルに位置する機能ユニットが唯一の作動中の機能ユニットであった場合に、患者ケアシステム90の電源を同時に遮断するためのOFFキー134も含む。更に、PCAポンプユニット及びETCO2ユニットはそれぞれ、アラーム状態を通知するためのアラームインジケータ136、及びスタンバイ状態を通知するためのスタンバイインジケータ138を含む。PCAポンプユニットは更に、注入状態を通知するための注入インジケータ140を含む。各インジケータは、対応する機能ユニットが対応する状態にあることが分かるように明るくなる。
【0049】
PCAポンプユニット92はチャネルメッセージディスプレイ152及び速度ディスプレイ154を含み、ディスプレイ152を使用して情報メッセージ、アドバイスメッセージ、アラームメッセージまたは誤動作メッセージを表示することができ、ディスプレイ154を使用して、例えばポンプユニットが作動している注入速度を表示することができる。PCAポンプユニットはまた、ドアロック(図示せず)の付いたドアを含むことができ、ドア内には、シリンジまたは薬剤容器が保持されて、注入する麻酔薬または他の薬剤の安全を確保する。先行技術において公知のように、ポンプユニットは体積型ポンプ、シリンジポンプシステム、経静脈的ポンプ注入タイプ、またはこの技術分野の当業者が容易に決定することができる他の適切な構成とすることができる。PCAポンプユニットは、ポンプ装置が行なう種々の機能を制御する標準のポンピング機構及び安全機構を含み、これらの機構としては、患者への薬液投与の制御、及び閉塞またはライン内エアに関する流路の監視を挙げることができる。
【0050】
ETCO2ユニット94及び患者に接続されるのは呼気サンプリングデバイス96であり、このデバイスは呼気を患者の鼻及び口から集め、そして時々酸素を患者に供給することが好ましい。呼気はETCO2ユニットにライン142を通って送り込まれ、呼気はETCO2濃度に関してETCO2ユニットによって、好適には赤外線分光分析法を使用してリアルタイムに解析される。しかしながら、この技術分野の当業者であれば理解し得るように、他のETCO2(終末呼気二酸化炭素濃度)解析法を使用することができる。別の構成として、サンプリングデバイス96はセンサ(図示せず)を含むことができ、センサは、呼気を直接解析し、そして信号をライン142または無線通信システム(図示せず)を通してETCO2モニターユニットに送信する。ETCO2ユニットは、データをユーザに対して表示する種々のディスプレイ160,162,及び164を含む。例えば、ETCO2ディスプレイ160は、呼気後及び吸気前のETCO2の数値を、好ましくはmmHg単位または%で表示する。呼吸数ディスプレイ162は、例えばETCO2波形を周波数解析して求まる患者の現在の呼吸数を表わす呼吸数値を表示する。ディスプレイ164は、患者の血液の中の吸気時CO2濃度またはFICO2濃度を表示する。ETCO2波形及び他の波形の表示は、中央インターフェースユニット100の情報ディスプレイ102に示すことができる。波形表示に示されるデータを選択的に拡大する、または圧縮することができ、これによって波形特性解析または傾向解析を行なうことが好ましい。情報ディスプレイ102に示される波形データを表示前に、平滑化し、補正し、時間平均解析を行なって、または操作して最適な臨床値をユーザに提供することができる。例えば、ETCO2ユニットは、移動平均を行ってETCO2波形を平滑化することができ、そして水平時間軸の進行を停止及び/又は調整してETCO2波形解析または傾向解析を行なう。
【0051】
以下に更に詳細に説明するように、ETCO2ユニット94が生成するデータは中央インターフェースユニット100に送信され、そしてこのデータを使用してアラームを起動してアドバイスを情報ディスプレイ102上で通知する、自動的にポンプユニット92の作動を停止する、またはポンプユニットによる薬剤または薬液の投与を調整する、または制御することもできる。例えば一つの実施形態では、インターフェースユニットをプログラムして、患者のETCO2値が許容値の所定範囲から外れる場合にポンプを自動的に停止する。別の構成として、ポンプ及びモニターは互いに直接通信して、この患者144への薬液の投与に、モニター済みパラメータに基づいて影響を与える。更に別の実施形態では、この技術分野において公知のように、ETCO2モニターまたはインターフェースユニットは、ETCO2波形を解析し、そしてポンプの動作に所定の波形特性に基づいて影響を与える波形解析アルゴリズムを含む。本発明の更に別の実施形態では、インターフェースユニットは、患者の状態を表わす一つ以上の指標を多数の異なる接続生理状態モニターのデータを使用して計算するマルチパラメトリックアルゴリズムを含み、そして計算済み指標を使用してポンプの制御に影響を与える。
【0052】
図1aは、中央インターフェースユニット100の情報ディスプレイ102に表示されるETCO2波形の一例である。この場合、モニタリングモジュールは患者のETCO2をモニタリングし、データを処理し、そして或るデータをテキスト形式及びグラフ形式で提示して情報ディスプレイ102に表示する。特に、患者のETCO2はmmHgの測定単位のテキスト数字「34」として表示される。呼吸数(Respiration Rate:RR)も「呼吸数/分」で測定されるテキスト数字「13」として表示される。更に、グラフ163は経時的なETCO2の傾向を示す形で表示される。この場合、時間軸は5秒間の区間を表わす。テキスト形式では、各パラメータの許容値範囲も示される。特に、ETCO2の許容範囲は35〜43mmHgである。呼吸数の値の許容範囲は5〜25回/分である。ETCO2のグラフを図1aに示すが、FICO2(吸気時二酸化炭素濃度)のグラフを別の実施形態では選択可能とすることもできる。更に、呼吸数は、無呼吸を示すことができるようにグラフ形式で示すことができる。FICO2自体をグラフ化してはならないようにFICO2に対する選択が行われる場合、別の実施形態では、FICO2が許容範囲から外れている箇所を、図1aに示すグラフのようなETCO2のグラフの上に表示することができる。これらの非許容値は、FICO2値が許容されない、ETCO2グラフの上の点に表示することができる、または他の場所に表示することができる。
【0053】
図2は患者ケアシステム90の別の実施形態を示し、PCAポンプユニット172は、LVPポンプではなくPCAシリンジポンプである。図示のPCAポンプユニットは、図1におけるものとほぼ同じインターフェースディスプレイ及びボタンを有するが、図2のPCAポンプユニットはシリンジプッシャー174及びシリンジ176も含む。PCAポンプユニットは更に、注入ポンプ装置をユニットの筐体内に含み、この筐体は、中央インターフェースユニット100からの命令に応答して、シリンジプッシャーを駆動してボーラス(bolus)投与のPCA薬剤をシリンジから患者に対して注入する。速度ディスプレイ154は、例えばPCAポンプが作動している注入速度、または患者ロックアウト時間(patient lockout interval)を表示する。PCAポンプは、携帯型PCA投与リクエストボタン180または他の作動デバイスに接続されて患者が使用するPCA患者投与リクエストコード線(patient dose request cord)178を含む。PCA薬剤は患者にIV投与ライン(IV administration line)182を通して投与される。
【0054】
次に図3を参照すると、中央インターフェースユニット100の背面には、少なくとも一つの外部通信インターフェース120、少なくとも一つのインターフェースポート122、及び少なくとも一つのPCAポート124が本実施形態において設けられることが示される。外部通信インターフェース120及びインターフェースポート122を使用して情報及びデータをダウンロード及びアップロードすることができ、そして更に、外部通信インターフェース120及びインターフェースポート122は、患者モニタリングネットワーク兼ナースコールシステムへのインターフェースとして、またはバーコードリーダのような外部機器とのインターフェースとして動作して、薬剤情報及び/又は患者情報を、薬剤治療レコードまたは患者レコードから、または患者、看護師、または臨床医、薬液バッグ、及び他の装置の上に位置するバーコードのような情報デバイス及び識別情報デバイスから入力する手段となる。これらの機能を外部通信インターフェース120及びインターフェースポート122によって実行することにより、機能及び適応性を広げ、コストを節減し、そして入力過誤を減らすことができる。特に、ポンプユニット172のプログラミングに関連する臨床検査過誤が減るので、ポンプユニット172の使用による鎮静剤、麻薬性鎮痛剤、麻酔薬、または他の薬剤の投与に関連する呼吸機能低下の危険を小さくすることができる。
【0055】
この特定の実施形態では、PCAポート124は、複数の搭載ポンプユニットのうちの一つがPCAポンプ172である場合に、中央インターフェースユニット100とPCA患者投与リクエストコード線178(図2に示すコード線)の一端との間の接続を可能にする。PCA患者投与リクエストコード線の他端には、携帯型投与リクエストPCAボタン180、または他のPCA作動デバイスが設けられ、このデバイスを作動させてPCA患者への鎮痛剤投与をリクエストすることができる。ここで、中央インターフェースユニットはPCAポート124を本実施形態において含むが、図2に示すような別の実施形態では、ポンプユニット172自体がPCAポートを含むことができる。このPCAポートは、ポンプユニットからPCA患者投与リクエストコード線を経由して投与リクエスト作動デバイスに至る同様の接続を可能にすることが理解し得る。更に、コネクタを、例えばモジュールの前面パネル、底面パネル、または他の箇所のようないずれか他の箇所に配置することができることが理解し得る。
【0056】
次に、本発明の態様による中央インターフェースユニット100のブロック図を示す図4によれば、マイクロプロセッサコントローラ264はユーザからデータ及び命令を受信し、そしてユーザからのデータ及び命令を処理し、更に機能ユニット及び他の外部機器と通信する。マイクロプロセッサコントローラ264は外部通信コントローラ274を直接制御し、このコントローラ274はPCAポート123及びインターフェースポート122及び/又は外部通信インターフェース120を介したデータを制御する。マイクロプロセッサコントローラ264はまた、内部通信コントローラ272を制御し、このコントローラは内部通信ポート280及び281を制御する。内部通信ポート280及び281は各機能ユニットだけでなく、中央インターフェースユニットにも組み込まれ、そして中央インターフェースユニット100と搭載機能ユニット150A,150Bとの間のデータインターフェース及び情報インターフェースとなる。
【0057】
図2に示す構成のような患者ケアシステム90が動作している間、投与リクエストPCA作動デバイス180を作動させると、マイクロプロセッサコントローラ264は投与リクエスト信号を患者投与リクエストコード線178及びPCAポート124を通して受信する。マイクロプロセッサコントローラ264が、麻薬性鎮痛剤の要求ボーラス投与を行なうために制限がないと判断すると、マイクロプロセッサ264は信号をPCAポンプユニット172に内部通信コントローラ272及び内部通信ポート280、及び/又はポート281を通して送信して、ポンプユニット172に指示して要求ボーラス投与を行なわせる。
【0058】
マイクロプロセッサコントローラ264はまた、PCAポンプユニット172及びETCO2ユニット94のような複数の機能ユニットの間のアクティビティを調整する。例えば、臨床医が、PCAポンプユニット172を備える患者ケアシステム90を設定してPCA(患者自己管理鎮痛剤)投与ユニット及びETCO2ユニットを設けてPCA患者のETCO2パラメータをモニタリングする。任意に、図12に示すようなパルス酸素濃度測定ユニット302のような一つ以上の更に別のモニター装置を患者ケアシステム90に直列に接続し、そして設定して、例えば以下に更に詳細に説明するように、血中酸素飽和度及び脈拍数をモニタリングすることができる。臨床医はETCO2、呼吸数、及び/又は他のモニタリング対象パラメータの最小値及び/又は最大値を指定して、これらのパラメータに関する許容値の範囲を効果的に設定することができる。患者のETCO2パラメータが選択許容範囲から外れて、例えばパラメータが臨床医が設定した最小レベルよりも小さい、または最大レベルよりも大きくなるような場合、ETCO2モニター94はトリガー信号をマイクロプロセッサコントローラ264に内部通信コントローラ272及び内部通信ポート280、及び/又はポート281を通して送信する。これに応答して、マイクロプロセッサコントローラ264は、例えばスピーカ278に向かう聴覚アラーム276を作動させ、視覚アラームを情報ディスプレイ102(図1及び2)に送信し、PCAポンプユニットの作動を一時停止し、PCAポンプユニットの流量を調整し、及び/又は別の所定機能を実行する。例えば、PCA患者のETCO2測定値が範囲から外れると、マイクロプロセッサコントローラ264は、例えば臨床医により治療介入される、または患者が変わる等によって、許容できないレベルの低い、または高いETCO2値、及び/又は呼吸数状態が許容範囲に収まるまで、鎮痛剤の更なる投与を中止する。別の構成として、マイクロプロセッサコントローラ264は単に、PCA作動デバイス180を使用不能にして、患者が更なる自己投与を行なうことができないようにする。従って、適切な値が設定された後、中央インターフェースユニット100は、PCAポンプユニットとETCO2ユニット94との間の通信を可能にし、そしてこれらのユニットの間の調整を行なって、確実に安全性を高め、かつ呼吸機能低下による障害の危険を小さくする。
【0059】
別の実施形態では、マイクロプロセッサコントローラ264が、ETCO2ユニット94からの、または別の機能モジュールからの範囲外信号のみに応答してPCAポンプユニット172の作動を一時停止するのではなく、マイクロプロセッサコントローラはプログラム命令を含み、このプログラムによって、ETCO2ユニットが生成するCO2濃度データまたは他のデータの変化をモニタリングし、そしてポンプモジュールに対する患者による制御を、モニタリング対象データの変化速度のような変化に基づいて停止させるかどうかについて判断を下す。
【0060】
次に、中央インターフェースユニット100、PCAポンプユニット172、及びETCO2ユニット94の相互作用及び機能について図5〜11を参照しながら記載する。これらの図は、患者ケアシステム90の設定及び動作の間の情報ディスプレイのステップごとの状態のうちの幾つかを示す。次の例では、1つのPCAポンプユニット172及び1つのETCO2モニター94を使用してPCA(患者自己管理鎮痛法)を実施する現場におけるシステム100の動作の設定について記載するが、この技術分野の当業者であれば、本発明は他のタイプの、かつ他の数の注入ポンプ及びモニターを使用するプログラムされた注入プロトコルを含むことが理解し得る。
【0061】
患者ケアシステム90の好適な実施形態を設定するために、臨床医はまず、図1及び2に示すように、呼気サンプリングデバイス96を患者に取り付ける。次に臨床医はETCO2ユニット94及びこのユニットの対応するチャネルを、ETCO2ユニット上のSELECTキー128を押下することにより選択する(図2)。ETCO2ユニットを選択することにより、情報ディスプレイ102は図5に示すように、ユーザインターフェースとして機能し、従ってETCO2機能固有の表示を可能にするように構成される。情報はディスプレイ102上に現われ(図1)、選択情報がディスプレイを取り囲むソフトキー106に隣接するようになるので、オペレータは表示情報から選択及び選定を行うことができるようになる。臨床医は最小値及び最大値のいずれをも、対応するソフトキーを押下し、そして関連する限界値数値をキーパッド104で直接入力することにより、またはディスプレイ上に表示される番号を、キーパッド及びENTERキーの上のアップダウン矢印を使用してスクロールすることにより入力することができる。図示の数よりも多い、または少ない数のパラメータを取り入れることができる。図5に示す実施形態では、ETCO2値、呼吸数値、FICO2値、及び無呼吸時間(NO_BREATH)値を入力することができる。しかしながら、別の実施形態では、これよりも少ない数のパラメータを列挙することができる。
【0062】
図6は、臨床医が値を入力した、または前回の値に戻した後の「アラーム限界値(ALARM_LIMITS)」情報ディスプレイ102を示している。START表示(STARTソフトキーの例を示す図15を参照)に関連するソフトキーを押下することによりETCO2モニタリングを開始する前に、臨床医は、PCAユニット172のような一つ以上の他の機能ユニットのPCA自動遮断オプションを選択して、中央インターフェースユニット100が、患者のETCO2、呼吸数、FICO2、無呼吸時間、またはこれらの或る組み合わせが指定最大レベル及び最小レベルから外れる場合に選択機能ユニット(群)を遮断するようにする。別の構成として、情報ディスプレイ102はパラメータ、または患者のETCO2波形を解析し、生成指標に対する限界値を設定するための選択可能なプロトコルを含むことができる。一旦、ETCO2モニタリングが始まると、患者のETCO2値、呼吸数、及びETCO2波形が、前に記載し、かつ図1及び2に示したように、中央情報ディスプレイ102に表示される。患者ケアシステム90の好適な実施形態は、例えば患者のETCO2または呼吸数が指定最大レベルを上回る、または指定最小レベルを下回る場合にナースコール282を作動させることによって、ローカルアラーム通知を行なうための聴覚276/278(図4)及び視覚アラーム102の両方を自動的に開始するだけでなく、医療関係者に対して離れた位置から通知を行なうが、患者ケアシステム90は、臨床医が医療関係者に対する特定のアラーム及び通知をこのようなイベントにおいて選択することもできるように構成することができる。酸素濃度測定ユニットを、以下に更に詳細に説明するように、ETCO2ユニットの代わりに、またはETCO2ユニットの他に使用することもできる。
【0063】
本発明の好適な実施形態では、ETCO2、呼吸数、及び他のパラメータの限界値をインターフェースユニット100のメモリ250(図4)のデータセットに、または患者ケアシステムのモニター94に保存する。別の実施形態では、データセットは他の場所に保存することができる。従って、値をユーザインターフェース100のキーパッド104(図2)の数字キーを使用して手動で入力するのではなく、ユーザは予めプログラムされた値及び/又は構成プロトコルを保存済みデータセットから呼び出して、時間を節約し、プログラミングエラーを最小化することができる。
【0064】
薬剤注入パラメータ、及びETCO2、FICO2の最大濃度及び最小濃度、呼吸数の最大値及び最小値、及び他の値のような生理学的パラメータ限界値に関する施設標準から成るデータセットを保存することによって、臨床現場におけるケア品質を標準化するのにも役立つ。或る実施形態では、注入パラメータ値または生理学的パラメータ限界値は、機械読み取り可能なラベルから、例えばバッグまたはシリンジ、或いは注入する医療用薬液を保存する他の医療用薬液容器に貼り付けられるバーコードラベルを読み取るバーコードリーダ(図示せず)を使用することにより自動的に入力することができる。容器に取り付けた無線周波数識別(RFID)タグを使用することもでき、PCAポンプユニット172の、またはユーザインターフェースユニット100のRFIDリーダによって読み取ることができる。このような注入パラメータ値及び生理学的パラメータ値は、院内サーバのような外部プロセッサとの接続を行なう、PDAまたは他の機器との接続を行なうといった他の手段を使用して入力することもできる。これらの機器との接続は、直接有線接続、赤外線リンク、RF、RF(無線周波数)でのRFIDチップの使用、bluetooth(商標)リンク、または他の手段のような種々の方法により行なうことができる。
【0065】
次に、臨床医はPCAユニット172及びこのユニットの対応するチャネルを、PCAポンプユニット172のSELECTキー128(図2)を押下することにより選択する。PCAポンプユニットを選択することにより、情報ディスプレイ102はユーザインターフェースとして機能するように構成されるので、図7〜9に示すように、PCAポンプ機能固有のディスプレイ及びソフトキーとなる。この例では、表示はPCAポンプ固有のものとなる。図7及び8に示すように、臨床医はまず、値を前回の投与単位及び鎮痛剤濃度に戻す、または、例えばmcg、mg、またはmlで表示される投与単位を選択し、そして鎮痛剤濃度を入力することができる。次に、図9に示すように、臨床医は、患者によるボーラス投与(PCA_DOSE)に関する前回のパラメータを入力する、または値を前回のパラメータに戻すことができる。呼吸機能低下及び中枢神経系機能低下を更に防止するための追加予防措置として、かつ本発明の別の実施形態として、患者ケアシステム90またはPCAポンプユニットは臨床医に対して、1時間当たりの、または24時間周期の、或いは本例では、4時間周期(20mg/4h)の最大投与量のような患者リクエスト投与限界値を入力するように要求することができる。
【0066】
患者によるボーラス注入パラメータ及び/又は他の薬剤注入パラメータを入力した後、臨床医は持続投与表示(CONT_DOSE表示)252(図9)に隣接するソフトキー106を押下することにより麻薬性鎮痛剤の基礎持続投与(CONT_DOSE)を選択することができる。基礎投与を患者リクエスト投与と組み合わせて使用することにより、患者が眠っているときのような低活動の時間帯に十分な量の麻薬性鎮痛剤を供給することができる。従って、患者が目覚め、そして活動量が増えるために追加の鎮痛剤を必要とするとき、患者は麻薬性鎮痛剤を自己投与してこの必要を満たすことができる。基礎持続投与が、持続投与表示252(図9)に隣接するソフトキー106(図2)を押下することにより選択されると、情報ディスプレイ102によって臨床医は所望の持続投与量を入力することができる。図9は、臨床医が、患者によるボーラス投与量(PCA_DOSE)及び持続投与量(CONT_DOSE)の両方の値を入力した後の情報ディスプレイ102を示している。
【0067】
PCAに関する(図9及び他の図に示す注入パラメータに関する)パラメータに関して、次の項目は一つの実施形態における薬物ライブラリのデータセットに含まれるパラメータリストである。
【0068】
薬剤名:図9の画面の先頭部分を参照。
濃度:mg/mlまたは他の任意の単位で示す。またはハード最小値及びハード最大値([Conc]として図9に示す)として示す。
【0069】
投与量限界値の種類:例えば、「ソフト(soft)」または「ハード(hard)」(図示せず))がある。
最大蓄積投与量範囲:例えば2時間に渡る最小値及び2時間に渡る最大値がある。この様子は図9に最大限界値として示される。
【0070】
PCA投与量*:最小値及び最大値がある。
ロックアウト時間*:最小値及び最大値がある。
持続投与速度:薬剤を正確な体積速度で取り込むことができるようにml/hで表される投与速度を含み、これらの投与速度はソフト最小値及び最大値、及びハード最小値及び最大値、及びデフォルト速度*を含む。
【0071】
負荷投与量*:最小値及び最大値がある。
ボーラス投与量:「使用不能」、「手で触れることができる」及び「手が自由に使える」のようなタイプを含む。投与単位を含む。投与限界値、ソフト最小値、ソフト最大値、及びハード最大値*、投与量デフォルト値、及び投与速度デフォルト値を含む。
【0072】
臨床アドバイス、アドバイス名*:薬剤選択の後に現われる。図23に関連して説明する。
保存される薬物ライブラリはポンプ172に、またはインターフェースユニット100に、或いは事前設定値を有する他の場所に配置することができる。これらの事前設定値は投与量パラメータ(dosing_parameters)及び他の薬剤注入パラメータに関する「ハード」及び「ソフト」限界値を含むことができる。これらの限界値は、患者ケアシステム90が設けられる診療所または施設によって設定されている。また、上のように星印(*)が付されたこれらのパラメータに関して、「事前設定(preset)」値または「開始投与量(starting_dose)」値は、診療所または施設によって薬物ライブラリデータベースまたはデータセットに入力することができる。このようなパラメータに注目すべきであることをオペレータが通知する場合、オペレータはこのパラメータを変更することができるが、事前設定値が、薬物ライブラリに設定されている限界値の内側に自動的に入力されることになる。
【0073】
図9の例に関して示すように、一旦、値が患者ケアシステム90に臨床医によって入力されてしまうと、マイクロプロセッサコントローラ264はコントローラのプログラムに従って与薬確認段階に入り、この段階では、コントローラはこれらの選択値の各々を保存薬物ライブラリと比較して、これらの選択値が許容範囲内に含まれることを確認する。選択値が「ハード」限界値から外れる場合、患者ケアシステム90の動作が始まる前に、マイクロプロセッサコントローラはアラームを送信し、値変更を要求する。選択値が「ソフト」限界値から外れる場合、マイクロプロセッサコントローラは臨床医に対して、彼または彼女が入力値がソフト限界値から外れていることを認識しているという彼または彼女による承認を要求し、この値をそれにも拘らず使用すべきであるという指示を要求することができる。
【0074】
現時点で好適な実施形態では、薬物ライブラリを患者ケアシステム90に保存するが、ライブラリまたはライブラリ群は別の場所に配置することができる。例えば、患者ケアシステムが院内サーバまたは他のサーバに接続される場合においては、このような薬物ライブラリまたはデータセット、或いはデータセット群はリモートサーバに配置することができ、そして患者ケアシステムは与薬確認段階の間にリモートサーバに保存される薬物ライブラリと通信して許容範囲を取得する。別の例として、薬物ライブラリは、Palm Pilot(商標)のような携帯情報端末(ここでは「PDA」と記載する)に、またはラップトップコンピュータのような携帯型コンピュータに、或いは患者ベッドサイドコンピュータまたはナースステーションコンピュータに、または他の位置、或いは機器に配置することができる。患者ケアシステムとリモート薬物ライブラリとの間の通信は、有線接続、または赤外線リンク、RF、bluetoothのような無線接続により、或いは他の手段により行なうことができる。臨床医は薬物ライブラリを有するPDAを携行することができ、そして患者ケアシステムが動作を開始する前に、システムはPDAと通信して、ハード限界値及びソフト限界値を入力値と比較する必要がある。他のライブラリ保存場所及び通信構成を用いることができる。
【0075】
一旦、上記ステップが完了すると、臨床医はPCA投与セット182(図2)を患者の血管内留置装置(図示せず)に取り付け、そして中央インターフェースユニット100のSTARTラベルに隣接するソフトキー106を押下する。このようにして、ポンプユニット172は、ETCO2ユニット94が患者のETCO2パラメータを継続的にモニタリングすることによって、及び/又はSpO2ユニット302が患者の酸素飽和度及び脈拍数を継続的にモニタリングすることによって作動することになる。PCAポンプユニットは、基礎持続投与をこの投与のプログラムが作成されている場合に開始する。更に、患者はこの時点で、麻薬性鎮痛剤のボーラス投与をいつの時点でも患者投与リクエスト作動デバイス180を使用してリクエストすることができる。リクエストした鎮痛剤投与を患者が実際に受けるかどうかは、臨床医が設定する限界値に対する、患者リクエスト投与量限界値があるとすればこの患者リクエスト投与量限界値だけでなく、患者の現時点でのETCO2パラメータによって変わる。
【0076】
次に図10を参照すると、中央インターフェースユニット100の情報ディスプレイ102の位置A及びBは、臨床医に対して、どの2つの機能ユニットをチャネル位置A及びBに配置するかについてアドバイスし、そしてこれらの機能ユニットが中央インターフェースユニットと通信することをアドバイスするように作用する。情報ディスプレイ102を更に使用して、患者ケアシステム90の対応する各チャネルを占有する各機能ユニットの状態を通知することができる。例えば、チャネルAを占有するPCAユニット172に対応するチャネルAの情報ディスプレイ102(図2)は、患者ボーラス投与量及び基礎持続投与量を通知するように構成することができる。更に、チャネルBを占有するETCO2ユニット94に対応するチャネルBの情報ディスプレイ102は、最小及び最大のETCO2レベル及び呼吸数を通知するように構成することができる。患者ケアシステム90はまた、中央インターフェースユニット100の情報ディスプレイ102が患者の現時点のETCO2値及び呼吸数を表示するように構成することができる。言うまでもないが、他のモニターまたはポンプを取り付ける場合、これらのユニットからの対応する情報を選択して中央情報ディスプレイ102に表示することもできる。
【0077】
患者のETCO2パラメータが、臨床医が設定する最大レベル及び最小レベルから外れる場合、中央インターフェースユニット100は即座に、PCAポンプユニット172の電源を遮断する、またはユニットの作動を一時中断して基礎投与及びボーラス投与の更なる実施は全て中止する。任意選択であるが、患者ケアシステム90をプログラムして、中止するのではなく、ETCO2データ、またはあるとすれば他の接続モニターから受信するデータに従って、基礎持続投与量またはボーラス投与量を調整することができる。図11に示すように、情報ディスプレイ102の位置AはPCAポンプユニットの「PCAモニタリングアラーム」状態を示している。更に、中央インターフェースユニット100は、聴覚アラーム276(図4)をスピーカ278または他の機器を通して作動させ、PCAポンプユニット172及び/又はETCO2ユニット94のアラームインジケータ136を明滅させ、そして緊急信号をインターフェースポート122及び外部通信コントローラ274を通して送信して、例えばナースコールによって適切な医療関係者に警告する。従って、麻薬性鎮痛剤投与による患者の呼吸機能低下に対する医療関係者による速やかなる処置及び医療介入が可能になる。
【0078】
次に、図12によれば、本発明の態様による患者ケアシステム300の別の実施形態は上述したインターフェースユニット100、PCAポンプユニット172、ETCO2ユニット94を含み、更に血中酸素飽和度及び脈拍数の非侵襲測定を行なうパルス酸素濃度測定ユニット302を含む。パルス酸素濃度測定ユニット302は、パルスオキシメータセンサ322、例えば静脈還流を含む指324または耳たぶのような患者144の一部分に装着される2波長センサを含む。パルス酸素濃度測定ユニットは信号をセンサから接続ケーブル326を通して受信し、そしてこの技術分野の当業者であれば理解し得るように、信号をパルスオキシメータの標準動作に従って解釈する。パルスオキシメータセンサの例は、アムンセンらによる米国特許第5437275号及びベーカーらによる米国特許第5431159号に開示されている。これらのセンサ信号から、パルス酸素濃度測定ユニットは、患者の血中酸素飽和度、SpO2、及び脈拍数の%表示値を求めることができる。パルス酸素濃度測定ユニットは、患者の血中酸素飽和度の%表示値を表示するSpO2ディスプレイ310、及び患者の脈拍数を表示する脈拍数ディスプレイ320を含む。
【0079】
ユーザは患者ケアシステム300を、例えば図5〜10を参照しながら記載したものと同様のプログラムステップを使用してプログラムして、ETCO2値、呼吸数値、FICO2値、SpO2値、及び脈拍数値のうちの一つ以上、或いはこれらの数値の種々の組み合わせが、選択された許容値範囲を外れる場合に、アラームを通知する、アドバイスを表示する、PCAポンプユニット172の電源を遮断する、またはポンプユニットの動作を変更することができる。一つの実施形態では、機能モニターモジュール94及び302のうちの一つ以上による測定値によって、インターフェースユニット100のプログラムシーケンスを開始することができ、このプログラムシーケンスは、特定の薬液投与プロトコルを終了させ、そして新規の投与プロトコルをPCAポンプユニットまたは別の接続ポンプモジュール(図示せず)によって開始する、或いは単純にPCAポンプ動作を終了させる。
【0080】
次に、図13によれば、本発明の態様を取り入れた患者ケアシステム400の別の実施形態は、統合ETCO2/パルス酸素濃度測定ユニット402を含む。ETCO2/パルス酸素濃度測定ユニットはETCO2ユニット94(図1)及びパルス酸素濃度測定ユニット302(図12)の機能を上述のように組み合わせて一つの統合機能ユニットとする。ETCO2/パルス酸素濃度測定ユニット402はデータを中央インターフェースユニット100に送信して情報ディスプレイ102に、SpO2410、脈拍420、ETCO2430、呼吸数440、FICO2、及び他のパラメータ、またはこれらよりも少ないパラメータ及び波形450を表示して傾向解析を行なう。インジケータ136,138,及び126、及びスイッチ128,130,及び134は他の実施形態に関して上に記載したように構成される。統合ETCO2/パルス酸素濃度測定ユニットはユーザがプログラムすることができる、またはインターフェースユニット100のメモリ250(図4)に、またはETCO2/パルス酸素濃度測定ユニット自体に保存されるプログラム情報によってプログラムすることができる。図13は、インターフェースユニット100の左側に接続されるPCAポンプユニット、及びインターフェースユニット100の右側に接続される複合ETCO2モニタリング/パルス酸素濃度(SpO2)測定ユニット402を示している。従って、患者144は患者の手に、PCAポンプユニット172にケーブル178を通して接続されるPCA投与リクエストボタン180を持ち、このボタンによって、PCAポンプユニットから患者に対して薬液投与セット182を通して行なわれる鎮痛剤のボーラス投与を制御する。患者はまた、患者のETCO2レベル及び呼吸に関して、統合ユニット402の一部分を形成するETCO2ユニットによってモニタリングされる。呼気サンプリングデバイス96を患者の鼻及び口の正規の位置に装着し、そしてこのデバイスは呼気を統合ユニットのETCO2部分にライン142を通して送り込む。患者はまた、血中酸素飽和レベルに関して統合ユニットの一部分を形成するパルスオキシメータによってモニタリングされる。パルスオキシメータセンサ322は患者に接続され、そしてセンサ信号は統合ユニットのパルスオキシメータ部分にケーブル326を通して送信される。
【0081】
図14及び15は中央インターフェースユニット100の情報ディスプレイ102に表示される設定画面の2つの例を示しており、この画面によってユーザに指示して測定パラメータの各々に関する、注入を開始するための最大値及び最小値を入力させる。図14の場合、アラームを発するためのSpO2の%表示値及び脈拍数を選択することができる。図15の場合、ETCO2、SpO2、及び脈拍数は一つの画面で設定することができる。呼吸数、無呼吸、FICO2、及びETCO2は別の画面で設定することができる、または別の実施形態では、これらのパラメータは図15に示すように、同じ画面に取り込むこともできる。
【0082】
図16のブロック図によれば、本発明の態様による患者ケアシステム490の別の実施形態は、ポンプ駆動ユニット510を有するプログラム可能な統合PCA注入ポンプ500と、情報を入力し(520)、そして表示する(530)ユーザインターフェースと、ユーザインターフェース520,530及びポンプ駆動ユニット510の動作を制御し、そしてモニタリングするマイクロプロセッサコントローラ540と、そしてマイクロプロセッサコントローラ540と通信して患者ケアシステム490を動作させるプログラム命令を保存するメモリ550と、を備え、そして更に、薬物ライブラリまたはライブラリ群、ポンプに関するパラメータ、及びモニターが使用することができる生理学的パラメータを保存することができる。注入ポンプ500は、ダフィー(Duffy)らによる米国特許第5,800,387号明細書に開示される注入ポンプとほぼ同様であり、この文献をここで参照することにより文献の内容全体が本発明の開示に含まれる。しかしながら、患者ケアシステム490はまた、ETCO2ユニット560及びパルス酸素濃度測定ユニット570をシステム筺体580の内部に含む。上述のモジュール式システムの中央インターフェースユニット100と同様に、マイクロプロセッサコントローラ540は、ETCO2ユニット560及び/又はパルス酸素濃度測定ユニット570が生成する値をモニタリングし、そしてポンプ駆動ユニット510の動作に、測定値の所定の変化に応答して影響を与える。
【0083】
次に図17を参照しながら、一連のグラフ表示の最初の表示について説明する。このような表示は中央インターフェースユニット100の情報ディスプレイ102に、または別のディスプレイ機器に表示することができる。この場合、データのグラフ表示を対向する2つのY軸を用いて行ない、左側のY軸452はETCO2測定値(分圧)をmmHg単位で表わす。右側のY軸454は呼吸数を1分当たりの呼吸回数の単位で表わす。表示の中の凡例456は、実線がETCO2を表わし、破線が呼吸数を表わすことを示している。X軸458は時間軸であり、この場合、6時54分から始まる約5分の時間を含む。更に、PCAボーラス460の投与が十字または+記号として表示される。傾向を表わすこのようなグラフによって、PCAボーラスの効果を更に容易に見て取ることができる。例えば、ほぼ6時55分でのPCAボーラス投与の後、患者のETCO2分圧が約10mmHgだけ低下したが、約1分経過後に元の状態に戻った。この表示は、ズーム(ZOOM),ページUP(PAGE UP),ETCO2メイン(ETCO2 MAIN),及びページDOWN(PAGE DOWN)のような所定のソフトキー462も含む。ズーム機能は、長期間または短期間に渡る傾向を素早く選択し、そして分析することができるように複数の選択可能な期間463を含む。
【0084】
図18は図17と、ETCO2のグラフが中央インターフェースユニット100のディスプレイ102上の表示として提示される点で類似する。しかしながら、この図では、呼吸回数がPCA投与量と対比される形でプロットされる。左側のY軸464はPCA投与量をミリグラム(mg)単位で表示し、右側のY軸466は呼吸数を1分当たりの呼吸回数として表示する。X軸458は時間単位で表示を行ない、この場合は、図17に示すものと同じ約5分の期間で表示を行なう。約1mgの持続投与が行なわれ、同時にPCA投与が持続投与量を超えるピークとして認識される。PCA投与は実線で示され、呼吸数は破線で示される。呼吸数の低下は、2回のPCA投与が同じ1分の間に行われた後の6時56分になった直後に生じる。第1回目投与はほぼ4mgで行なわれ、そして第2回目投与はほぼ3mgで行なわれる。患者が再びPCA投与注入を6時56分に行なう場合でも、この注入は少ない投与量で、すなわち約2mgで長い期間に渡って行なわれるので患者の呼吸数は元に戻る。しかしながら、1回目が約4mgで、2回目が約2.5mgの別の2回の突発的な投与がほぼ6時58分に行なわれた後、呼吸数は6時59分から再度低下し始める。ソフトキー462は図17に示すものと同じものを利用することができる。
【0085】
図18aは患者のETCO2が時間と共に変化する傾向を示し、対向するY軸にはmg単位の投与量を表示する。従って、PCA投与が患者のETCO2に与える影響は、PCA投与の傾向を示す同じグラフに重なるETCO2の傾向グラフから分かる。
【0086】
中央インターフェースユニット100の情報ディスプレイ102の別のデータアレイを図18bに示す。この場合、投与量、ETCO2、呼吸数、及びFICO2に関する表形式データが示される。データは左欄に配置される時間によって体系化される。この場合、表形式データは8時00分〜8時06分の時間枠によって体系化される。
【0087】
図19は酸素飽和度に関するものであり、この場合は中央ディスプレイ102上のパルス酸素濃度グラフである。この表示では、SpO2曲線が実線で示され、そして患者の脈拍数が破線で示される。左側のY軸468は酸素飽和度の%表示値を表わし、右側のY軸470は1分当たりの脈動数(脈拍数)の単位で表示を行なう。X軸458は図17及び18に示すものと同じ5分の期間の表示を行ない、そしてPCA投与は十字として示される。ここでも同じように、傾向は表示のグラフ特性から判断することができる。例えば、2回のPCA投与がほぼ6時54分に行なわれ、その直後に、患者の酸素飽和度が約95%から80%に約1分内に下がった。同じ期間の患者の脈拍数は約80bpmから90bpmに増えた。酸素飽和度及び脈拍数は共に、1分以内に元に戻り始めたが、患者は別の3回のPCA自己投与を行なって、酸素飽和度及び脈拍数に同様の影響が出ている。図16,17,及び18の他のディスプレイにおけるものと同様のソフトキー462を利用することができる。
【0088】
図20はテキスト形式でSpO2472の範囲及び現時点での%表示読み取り値474を示している。この場合、プログラムされている許容範囲は90%以上であり、上限はない。テキストには、脈拍数の範囲476、すなわち1分当たり50〜150回の脈動数(beats per minute)または50〜150bpm、及び82bpmである現時点の読み取り値478も示される。
【0089】
次に図21及び21aを参照すると、薬物ライブラリエディタープログラムの動作が分かる。図21には、データ画面483が示され、この画面では、特定の薬剤、この場合はモルヒネに関するデータを入力してデータセットの一部分を構成することができる。この画面を使用してデータセットを、薬物ライブラリの中から識別された薬剤に関して設定する。フォーム483の上部に、「新規濃度...」または「新規薬剤...」に関する選択手段を設ける。ここで、薬剤名識別情報の真下の第1ボックスは濃度に関するものであることに留意されたい。上述の「新規濃度...」を選択する操作では、このボックスを使用する。他方、「新規薬剤...」を選択する操作では、異なる薬剤の選択を行なって一つのデータセットを全て設定する。下方に進むと、PCA投与タイプを選択することができる。この場合、選択は、「PCA投与」、「持続投与」、及び「PCA投与+持続投与」の中から行なわれる。他の投与固有情報は、「ボーラス投与」、「負荷投与」、「最大蓄積投与量範囲」のような他のボックスに入力することができる。mgの投与単位は画面の右側に示される。画面の左側下部では、「濃度限界値」を入力することができ、そしてこれらの限界値を指定することができる。臨床アドバイスを右側下部に入力することができ、そしてこのアドバイスをこの例において見ることができる。このドラッグエディタープログラムのユーザは、患者に注入することができる、または患者に投与することができる薬剤の大規模なライブラリを構築し、そして編集することができる。当該ライブラリは薬剤名の大規模なリストを含むことができるだけでなく、プログラムのユーザはこれらの薬剤の各々に関する大規模なデータアレイを作成し、そして編集することもできる。
【0090】
モルヒネのデータセットを、図21に関連して記載したようなエディタープログラムを通して構築した後、特定薬剤の構築データセットの仕様を分析することができる。このような仕様の例を図21aに示す。特に、医用「薬剤」モルヒネに関するデータセット情報を含む画面484を示す。
【0091】
薬物ライブラリに含まれる薬剤に関する更に別のデータを、上に説明した種々の態様に従って実施される生理学的モニタリングのような「患者固有」データに関連付けることもできる。例えば、薬物ライブラリは薬剤の別の最大投与量を含むことができ、この最大投与量は、当該患者の測定済みETCO2に従って、または当該患者の測定済みSpO2に従って、或いは患者の他の測定済み生理学的状態に従って高くなる、または低くなる。データは、薬剤が所定の生理学的測定値を有する患者には全く適さないことを示す表示を含むこともできる。薬剤に関するこのようなデータセットによって、臨床医は生理学的モニター装置を注入が始まる前に患者に接続する必要もある。PCA投与の例では、注入を始める前に、ETCO2のモニタリングがデータセットによって必要になる。このようなモニタリング要件は、一つの実施形態における特定薬剤のデータセットに入力することができる。
【0092】
更に別の「患者固有」データを薬物ライブラリに取り込むことができる。例えば、各薬剤のデータベースの別のフィールドを「アレルギー」フィールドとすることができる。このようなフィールドには、アレルギーコードまたはアレルギー名を入力することができる。患者が仮にこのようなアレルギーを持っているとすると、当該薬剤に関するデータは薬剤投与に関する異なる限界値を含むことができる、またはこのようなアレルギー患者に対する特定薬剤のいずれかの投与を禁止することができる。患者の過去の薬剤治療に関するデータは、薬物ライブラリがライブラリの薬剤記入項目に関連するこのようなデータを含む場合に関連してくる。例えば、薬物ライブラリの薬剤記入項目によって、薬剤を、別の特定の薬剤を過去12時間以内に摂取したばかりの患者に、投与量を低くした最大投与量でしか投与することができないように指定することができる。ヘルスケア施設における患者の薬剤投与歴は、このような総合薬物ライブラリの場合に考慮される。これまでの薬剤の投与方法は関連せず、患者が薬剤を摂取したという事実のみが関連することになる。
【0093】
薬物ライブラリは「ソフト」限界値及び「ハード」限界値も含む。薬剤の「ソフト」限界値は最大値及び/又は最小値であり、最大値及び/又は最小値から外れる値の薬剤投与は許可されるが、この薬剤投与に対しては質問が行なわれる。その理由は、この投与の値は標準の投与値よりも大きくなる、または小さくなる可能性があるからである。「ソフト」限界値の例は注入速度であり、この注入速度は注入期間の長さが正確に制御される場合、標準の注入速度よりも高いが、半永久的な障害が生じるほど高くはない。他方、「ハード」限界値は最大値及び/又は最小値であり、最大値及び/又は最小値から外れる薬剤投与は禁止される。「ハード」限界値の例は注入速度であり、この注入速度は半永久的な障害が生じ得るほど高い。「ハード」限界値の別の例は、患者の測定ETCO2が、特定薬剤をいずれの投与量で投与しても半永久的な障害が生じ得るような機能低下値を示す場合である。このような場合においては、特定薬剤の「ハード」限界値はゼロであり、薬剤のどのような投与処置も禁止される。従って、ライブラリは患者の生理学的測定値に対応する更に別のデータ記入項目を有する。他のライブラリデータは患者の体重に対するソフト最小限界値及び最大限界値に関するフィールドまたはフィールド群、ポンプ閉塞圧に関するアラーム限界値、及び滴定投与速度(volumetric infusion rates:ml/h)、例えば持続投与速度のハード最大値、及びボーラス投与量のハード最大値を含むことができる。ライブラリはシリンジリストを含むこともでき、このリストによって、品種/モデルを使用可能/使用不能にして不注意から間違ったタイプのポンプを選択する危険を最小化することができる。
【0094】
次に図21aを参照すると、薬剤データ画面484が表示され、この画面では、特定の薬剤に関するデータ、この場合はモルヒネ486が表示される。このデータセットは、図21に関連して説明したような適切な薬剤編集機能を使用することにより既に設定されている。投与制限は488で示される。この場合、PCA投与、初期投与、ボーラス投与、及び持続投与に関する制限が入力されている。濃度限界値は、最大投与量及び最小蓄積投与量494と共に、492で指定される。PCA投与量限界値496は、最短ロックアウト時間及び最長ロックアウト時間498と共に指定される。「ロックアウト」は或る期間であり、この期間内では、患者による追加のPCA投与が禁止される。持続投与502、負荷投与504、及びボーラス投与506のような他の投与が、この薬剤に関して指定されている。ここで、最大蓄積投与量範囲はこのデータセットの「ソフト」限界値508であることに注目されたい。別のデータセットは「ハード」限界値を含むことができる。「ハード」限界値及び「ソフト」限界値について上に説明してきた。臨床アドバイス512がこの薬剤に対して適用されている。或るポンプでは、インターフェースユニット、及び他の処理機器及び/又はモニタリング機器、臨床アドバイスがモニター画面に表示され、この表示を、医療機器をプログラムしている臨床医が参照して薬剤を患者に投与する。例えば図2によれば、臨床医がPCAポンプ172を中央インターフェースユニット100によってプログラムする場合、臨床医はシリンジ176に含まれる薬剤を識別する。臨床医が「モルヒネ」を当該薬剤として選択すると、インターフェースユニットはディスプレイ102に、「呼吸機能及び心機能を注入の間に継続的にモニタリングして下さい」という臨床アドバイスを表示する。このような臨床アドバイス及び他のデータを薬物ライブラリの各薬剤記入項目のデータセットに、薬剤追加(ADD Drug)キー,薬剤編集(Edit Drug)キー,薬剤消去(Remove Drug)キー514を使用して、追加する、編集する、またはデータセットから消去することができる。
【0095】
上に説明したエディタープログラムを使用して作成されるこのような薬物ライブラリは図4に示すメモリ250に転送し、そして保存することができる。プロセッサコントローラ264をプログラムしてコントローラに、コントローラが制御する対象となるいずれかの注入装置をプログラムしている間に、薬物ライブラリにアクセスさせる。薬剤投与に関する臨床医によるプログラミングでは、患者及び注入薬剤を識別する必要がある。一例として、臨床医がインターフェースユニット100をインターフェースユニットの左側に位置するPCAポンプ172のためにプログラムしている場合を挙げることができる。コントローラは、コントローラ自体の内部に含まれる、またはPCAポンプの内部に含まれる、或いは院内サーバ、ナースステーションコンピュータ、PDA、または別の位置に含まれる薬物ライブラリにアクセスし、ETCO2モニター装置94が測定するETCO2のような患者固有のパラメータの比較を行ない、そしてPCAポンプのプログラミングを可能にする、または場合によってはプログラミングの変更を要求する。
【0096】
一旦、プログラミングが行なわれ、そして薬剤投与が始まると、プロセッサコントローラ264は、ETCO2ユニット94、SpO2ユニット302(図12)、または血圧測定装置、体温測定装置、または他の装置のような他のモニタリングユニットが測定する患者44の生理学的データをモニタリングし続ける。当該生理学的データに基づいて、コントローラはPCAポンプ172のプログラミングを自動的に変更して患者が薬剤を自己投与する能力を制限することができる。このような変更では、PCAポンプを使用不能にして患者に対する更なる薬剤投与が絶対に行なわれることがないようにすることができる。別の変更では、PCAポンプによる複数回の薬剤のボーラス投与の間の期間を長くすることができる。
【0097】
次に図22を参照すると、上記方法のフローチャートが表示されている。プロセッサコントローラによって患者が識別され(516)、次に薬剤が識別される(518)。患者の識別情報は、年齢、体重、アレルギー、及び他のデータのような患者に関する種々の詳細を含むことができる。次に、プロセッサコントローラは患者に関する詳細を識別対象の薬剤の薬物ライブラリと比較する。次に、ポンプをプログラムし(522)、そしてプロセッサコントローラは、ポンプのプログラム値が、利用できるとすれば患者に関するあらゆる生理学的モニタリングデータを含む患者データも、このようなデータが利用できるとすれば考慮に入れながら薬物ライブラリの限界値に収まることを確認する(524)。プログラム値が限界値に収まることがない場合、臨床医は、彼または彼女が、「ソフト」限界値を超える注入を行なおうとしていることを確認する必要がある。臨床医が所望のプログラム値がソフト限界値から外れていることを確認すると、プログラム値は限界値に収まると見なされることになる。プログラム値が「ハード」限界値を超えると、臨床医はポンプをプログラムし直すように指示を受けることになる。プログラム値が限界値に収まる場合、薬剤を注入することができる(526)。
【0098】
注入の間、プロセッサは患者に関して測定される生理学的データの全てをモニタリングする(528)。プロセッサは患者に関する生理学的データの比較を行ない(532)、そしてプログラム値が生理学的データを考慮に入れた状態で限界値に収まっている場合、傾向を図17〜20に従ってグラフ化することができ(533)、そして注入を継続する(526)。他の傾向もグラフ化することができる。しかしながら、プロセッサが、プログラム値がこの時点で薬物ライブラリの限界値を外れていることを生理学的データが示していると判断すると、プロセッサは、ポンプをプログラムし直して、例えばPCAポンプのロックアウト時間を長くすることによりプログラム値が薬物ライブラリ限界値に収まるようにすることができるかどうかを判断する(534)。できるとの判断が行なわれる場合、ポンプをプログラムし直し(536)、そして注入を継続する(526)。ポンプのプログラム値が薬物ライブラリの限界値に収まるようにポンプをプログラムし直すことができない場合、ポンプを停止し(538)、そしてアラームを出す。
【0099】
薬物ライブラリエディタープログラムは、患者ケアシステムとは別のデスクトップまたはラップトップコンピュータのようなコンピュータで動作することができる。施設のバイオ技術スタッフ、または薬局を設ける場合の薬局スタッフは当該施設において使用される薬物ライブラリを作成することができる。薬物ライブラリエディターをPDAのような他の機器で動作させることもできる。「開始(starter)」データセットを利用することができるが、薬物ライブラリエディタープログラムを使用するヘルスケア施設は通常、全てのデータを当該施設の医療機器に使用される薬物ライブラリに入力する。このような開始データセットは、特定の国で使用される最も一般的な1千種類の薬剤から成るリストを含むことができる。更に、データセットは特定の国のほとんどのヘルスケア施設において使用される一般的な注入パラメータだけでなく、アレルギー情報、及びライブラリに含まれる薬剤に関する他のデータを含むことができる。
【0100】
薬剤のデータセットに取り込むことができる臨床アドバイスの別の例を図23に示す。このアドバイスはPCA投与に適用することができ、かつアドバイスに従った処置が行なわれるまで注入が許可されないことも示している。SpO2ユニットまたはETCO2ユニットは注入が始まる前に取り付ける必要がある。これによって、患者の生理学的パラメータを、注入を始める前にモニタリングする必要があるという点で患者の安全性が高まる。
【0101】
更に別の特徴として、薬液を注入ポンプでETCO2値に基づいて滴定し、薬剤拮抗薬をETCO2値に基づいて投与し、注入を、正常になったETCO2値に基づいて再開し、そして患者ロックアウト時間をETCO2値に基づいて長くする。更に、コントローラは、患者リクエスト信号、ポンプに関する動作パラメータ、及び患者モニター装置またはモニター装置群に関する全ての生理学的測定値のようなポンプに関する全てのイベントを保存し、そして保存信号を後の時点で解析するために送信することができる。更なる薬剤投与を要求する患者リクエストに対する制御を、他の生理学的測定機器を利用することにより考慮することもでき、これらの機器には、血圧モニター装置、ECGモニター、体温計、及び他の機器が含まれる。PCAポンプをこのような生理学的モニタリングによって制御することができるだけでなく、大容量ポンプ及び他の薬液投与装置を制御することができる。更に、上に説明したように、臨床検査結果、アレルギーテスト、及び緊急医療記録のような他の患者データソースからの入力をコントローラが考慮に入れて、患者が薬剤を自己投与するための患者PCAリクエストデバイスを使用不能にする、または使用可能にすることができる。このような他の情報は、他の施設情報システムから有線または無線接続を通して取得することができる。問題が生じる場合には、上に説明したように、警告を薬剤投与モジュール自体で生成することができるが、警告は離れた位置から有線または無線接続を通して生成することもできる。
【0102】
以上のようにして、患者に対する生理学的モニタリングを使用してPCAポンプを制御するPCAシステムについて提示してきた。或る実施形態では、システムは薬物ライブラリを含み、このライブラリに対して患者の生理学的データを比較して、行なうとすればどの変更をPCAポンプ注入パラメータに加える必要があるかについて判断する。総合薬物ライブラリを使用することができ、このライブラリは、PCAを実施する特定の患者によって変わるいずれの処置が必要であるかについて判断するための患者固有の考慮事項を含む。更に、PCA投与の傾向の表示を生理学的データを用いて行なって、PCAが患者の生理学的パラメータに選択可能な期間に渡って影響を与えるか、または与えないかについて更に容易に把握することができる。
【0103】
SpO2を本明細書において、血中酸素飽和度を説明するために使用してきたが、SpO2は一例として、または一実施形態として使用されるに過ぎない。血中酸素飽和度を測定し、かつ良好に機能する他の機器または方法を用いる、または開発することができる。同様に、ETCO2を本明細書において、二酸化酸素の濃度を説明するために使用してきた。患者に関するこの生理学的パラメータを測定する他の機器または方法を用いることもできる、または将来時点において開発することができる。
【0104】
本発明の種々の実施形態について記載し、そして示してきたが、本説明は単なる例示に過ぎないものである。この技術分野の当業者であれば、上記実施形態に、添付の特許請求の範囲に示す本発明の技術範囲から逸脱しない範囲において変更を加え得ることが理解し得る。従って、本発明は添付の特許請求の範囲によって規定されるものを除き、制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の態様による患者ケアシステムの一つの実施形態の前面図であり、大容量ポンプユニット、CO2モニタリングユニット、及び大容量ポンプユニット及びCO2モニタリングユニットを相互接続する中央インターフェースユニットを示す。
【図1a】表形式情報及びグラフ情報を示すETCO2波形の傾向の拡大表示であり、ETCO2波形は時間軸及び圧力軸で表わされ、そしてETCO2のレベル及び呼吸数測定値はこれらの対応する許容範囲と共にテキスト形式で表示される。
【図2】本発明の別の態様による患者ケアシステムの前面図であり、患者自己管理鎮痛剤注入ポンプ、ETCO2モニタリングユニット、及びPCAポンプ及びETCO2モニタリングユニットを相互接続する中央インターフェースユニットを示している。
【図3】図1及び2の患者ケアシステムの中央インターフェースユニットの背面図である。
【図4】図2の患者ケアシステムの中央インターフェースユニットのブロック図である。
【図5】CO2モニタリングユニットを設定している間の、図2の中央インターフェースユニットの情報ディスプレイを表わし、値の入力領域を示し、更に値を元に戻すために使用されるキーを示している。
【図6】或る値を入力してCO2モニタリングユニットを設定している間の、図2の中央インターフェースユニットの別の情報ディスプレイを表わしている。
【図7】PCAポンプを設定している間の、図2の中央インターフェースユニットの別の情報ディスプレイを表わし、薬剤を選択する様子を示している。
【図8】PCAポンプを設定している間の、図2の中央インターフェースユニットの別の情報ディスプレイを表わし、単位の選択が行われる様子を示している。
【図9】PCAポンプを設定している間の、図2の中央インターフェースユニットの別の情報ディスプレイを表わし、薬剤投与値が入力される様子を示している。
【図10】設定完了後であって、図2の構成を操作している間の、図2の中央インターフェースユニットの情報ディスプレイを表わす。
【図11】患者ケアシステムがアラームモードになっているときの図2の中央インターフェースユニットの情報ディスプレイを表わす。
【図12】PCAポンプ、CO2モニタリングユニット、及びパルス酸素濃度モニターユニットを有する、本発明の態様による患者ケアシステムの別の実施形態の前面図である。
【図13】共に中央インターフェースユニットに搭載されるPCAポンプ、及び複合CO2/パルス酸素濃度モニターユニットを有する、本発明の態様による患者ケアシステムの別の実施形態の前面図である。
【図14】SpO2パルス酸素濃度測定ユニットを設定している間の、図13の中央インターフェースユニットの情報ディスプレイを表わす。
【図15】CO2/パルス酸素濃度測定ユニットを設定している間の、図13の中央インターフェースユニットの別の情報ディスプレイを表わし、値をフィールドに入力して生理学的パラメータの許容値範囲を設定する様子を示している。
【図16】統合CO2モニター及びパルスオキシモニターを同じ筐体に含み、これらのモニターの両方がポンプのコントローラに接続される構成の、本発明の態様による注入ポンプのブロック図である。
【図17】十字または+記号として重複させたPCAのボーラス投与時におけるETCO2及び呼吸数値の傾向を表わす、図13の中央インターフェースユニットによる情報表示を示す。
【図18】PCA投与量及び患者の呼吸数の傾向を表わす、図13の中央インターフェースユニットによる情報表示を示す。
【図18a】PCA投与量及びETCO2の傾向を表わす、図13の中央インターフェースユニットによる情報表示を示す。
【図18b】経時的な投与量、ETCO2、及び呼吸数を表わす、図13の中央インターフェースユニットによる表形式情報表示を示す。
【図19】十字または+記号として重複させたPCAのボーラス投与時におけるSpO2及び脈拍値の傾向を表わす、図13の中央インターフェースユニットによる情報表示を示す。
【図20】或る測定値、これらの値の許容範囲、及びSpO2波形の傾向のテキスト表示を表わす、図13の中央インターフェースユニットによる情報表示を示す。
【図21】一例としての薬物ライブラリ編集画面を示し、この画面では、薬剤に関するパラメータをデータセットに入力してヘルスケア施設において使用する。
【図21a】薬物ライブラリ編集プログラムによって生成される特定薬剤の完成版データセットの一例を示し、薬剤名が薬剤投与データに関連付けられる様子を示し、このデータセットでは、薬剤を追加する、編集する、またはライブラリから消去することができ、投与データ及び他のデータを臨床アドバイスと一緒に薬剤名に関連付けることができる。
【図22】ポンプにプログラムを設定する方法のフローチャートを示し、この方法では、ポンプに設定されたプログラムを薬物ライブラリと比較し、傾向を図式化し、そして設定されたプログラムが患者の生理学的状態の変化によって薬物ライブラリの限界値から外れる場合に、プログラムを設定し直す。
【図23】薬物ライブラリのデータセットに含まれる臨床アドバイスであり、このアドバイスはPCAポンプをコントローラに接続する臨床医に送信される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者ケアシステムであって、
薬剤を患者に投与するように構成された薬剤投与装置と、
患者によって用いられ、患者が薬剤の投与を要求するためのリクエスト信号を送信する患者リクエストデバイスと、
患者の生理学的パラメータを測定し、測定された生理学的パラメータの値を示す生理学的信号を送信するように配置された生理学的モニター装置と、
前記リクエスト信号及び前記生理学的信号を受信し、前記リクエスト信号及び前記生理学的信号に従って、前記患者に薬剤を投与する前記薬剤投与装置の動作を制御するコントローラと、
を備える患者ケアシステム。
【請求項2】
請求項1記載の患者ケアシステムは更にディスプレイを備え、
前記コントローラは、前記ディスプレイ上に薬剤投与時点を示すことによって前記測定された生理学的パラメータの値の傾向を表示する、患者ケアシステム。
【請求項3】
請求項2記載の患者ケアシステムにおいて、
前記傾向は、前記傾向に関して示された前記薬剤投与時点を含む期間に渡って前記測定された生理学的パラメータの値をグラフ形式で表示したものである、患者ケアシステム。
【請求項4】
請求項2記載の患者ケアシステムにおいて、
前記傾向は、前記傾向に関して示された前記薬剤投与時点を含む期間に渡って前記測定された生理学的パラメータの値を表形式で表示したものである、患者ケアシステム。
【請求項5】
請求項2記載の患者ケアシステムにおいて、
前記傾向を表示する前記期間を選択可能である、患者ケアシステム。
【請求項6】
請求項1記載の患者ケアシステムにおいて、
前記生理学的モニター装置は患者のETCO2を測定してETCO2信号を送信し、
前記コントローラは前記患者への薬剤投与を前記ETCO2信号に基づいて制御する、患者ケアシステム。
【請求項7】
請求項1記載の患者ケアシステムにおいて、
前記生理学的モニター装置は患者のSpO2を測定してSpO2信号を送信し、
前記コントローラは前記患者への薬剤投与を前記SpO2信号に基づいて制御する、患者ケアシステム。
【請求項8】
請求項7記載の患者ケアシステムにおいて、
前記生理学的モニター装置は患者のETCO2を測定してETCO2信号を送信し、
前記コントローラは前記患者への薬剤投与を前記SpO2信号及び前記ETCO2信号の両方に基づいて制御する、患者ケアシステム。
【請求項9】
請求項6記載の患者ケアシステムにおいて、
前記測定されたETCO2の波形が表示される、患者ケアシステム。
【請求項10】
請求項7記載の患者ケアシステムにおいて、
前記測定されたSpO2の波形が表示される、患者ケアシステム。
【請求項11】
請求項1記載の患者ケアシステムにおいて、
前記コントローラは前記生理学的信号に応答して、
薬剤投与を中止すること、
薬剤投与を一時停止すること、
リクエスト信号に対する応答を不能にすること、
期間を設定して、その期間内における前記リクエスト信号に対する応答を不能にすること、
薬剤投与を再開すること、
からなる機能に従って前記投与装置の動作を制御する、患者ケアシステム。
【請求項12】
請求項1記載の患者ケアシステムにおいて、
前記薬剤投与装置は、薬剤をボーラス投与するように要求する患者リクエストによって制御されるPCAポンプを含み、
前記コントローラは、ディスプレイ上に、経時的にモニタリングされた生理学的パラメータの一連の値をグラフ形式で表示するとともに、それと同一のグラフ表示上に、PCAリクエスト信号が患者から生じた時点を表示する、患者ケアシステム。
【請求項13】
請求項12記載の患者ケアシステムは更に薬物ライブラリを備え、
前記薬物ライブラリには、鎮痛剤注入パラメータ及び患者の生理学的パラメータに関連するデータが保存され、
前記コントローラは、前記薬剤投与のリクエスト信号及び前記生理学的信号を前記薬物ライブラリに保存されたデータと比較するようにプログラムされる、患者ケアシステム。
【請求項14】
請求項6記載の患者ケアシステムにおいて、
前記コントローラは、ETCO2測定値に従ってポンプを制御して、薬剤を患者に滴定する、患者ケアシステム。
【請求項15】
請求項6記載の患者ケアシステムにおいて、
前記コントローラは、ETCO2測定値に従ってポンプを制御して、薬剤拮抗薬を患者に投与する、患者ケアシステム。
【請求項16】
請求項6記載の患者ケアシステムにおいて、
前記コントローラは、警告をETCO2測定値に基づいて送信する、患者ケアシステム。
【請求項17】
請求項14記載の患者ケアシステムは更にメモリを備え、
前記コントローラは、
前記測定された生理学的パラメータの値と、
前記リクエスト信号と、
を前記メモリに保存し、
前記コントローラは前記メモリに保存された信号を解析のために別の位置に転送する、患者ケアシステム。
【請求項18】
請求項1記載の患者ケアシステムは更に薬物ライブラリを備え、
前記薬物ライブラリには、薬剤投与に関する許容値範囲が保存され、
前記コントローラは、前記薬剤投与装置にプログラムされたポンプに関する注入パラメータを前記薬物ライブラリと比較し、許容値範囲から外れている場合に警告を送信する、患者ケアシステム。
【請求項19】
請求項18記載の患者ケアシステムにおいて、
前記薬物ライブラリは許容値のソフト範囲を含み、
前記コントローラは、前記薬剤投与装置にプログラムされたパラメータが、前記ソフト範囲から外れている場合には、警告を送信する一方で、リクエストされた薬剤投与の開始を許可し、
前記薬物ライブラリは許容値のハード範囲を含み、
前記コントローラは、前記薬剤投与装置にプログラムされたパラメータが、前記ハード範囲から外れている場合には、警告を送信し、薬剤投与の開始を許可しないとともに警告対象の注入パラメータをプログラムし直すように要求する、患者ケアシステム。
【請求項20】
請求項17記載の患者ケアシステムにおいて、
前記コントローラは、データソースにアクセスして患者固有の情報を求め、その情報を薬物ライブラリと比較し、前記薬物ライブラリと比較された患者情報が範囲から外れている場合に警告を送信する、患者ケアシステム。
【請求項21】
請求項17記載の患者ケアシステムにおいて、
データセットはエディタープログラムのオペレータにより設定可能である、患者ケアシステム。
【請求項22】
鎮痛剤の患者管理自己投与を行うための方法であって、
患者に鎮痛剤の投与を行う患者管理装置からリクエスト信号を受信すること、
前記患者の生理学的パラメータを測定するように配置されたモニター装置から生理学的パラメータデータを受信すること、
前記リクエスト信号と前記生理学的パラメータデータとに従って前記患者に対する前記鎮痛剤の自己投与を制御すること、
を備える方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法は更に、
前記測定された生理学的パラメータの値の傾向を薬剤投与時点を示すことによって表示することを備える方法。
【請求項24】
請求項23記載の方法において、
前記表示することは、前記傾向に関して示された前記薬剤投与時点を含む期間に渡って前記測定された生理学的パラメータの値をグラフ形式で表示することを含む、方法。
【請求項25】
請求項23記載の方法において、
前記表示することは、前記傾向に関して示された前記薬剤投与時点を含む期間に渡って前記測定された生理学的パラメータの値を表形式で表示することを含む、方法。
【請求項26】
請求項23記載の方法において、
前記表示することは、前記傾向を表示する前記期間を選択することを含む、方法。
【請求項27】
請求項22記載の方法は更に、
前記患者のETCO2を測定してETCO2信号を送信すること、
前記ETCO2信号に基づいて前記患者への薬剤投与を制御すること、
を備える方法。
【請求項28】
請求項22記載の方法は更に、
前記患者のSpO2を測定してSpO2信号を送信すること、
前記SpO2信号に基づいて前記患者への薬剤投与を制御すること、
を備える方法。
【請求項29】
請求項28記載の方法は更に、
前記患者のETCO2を測定してETCO2信号を送信すること、
前記ETCO2信号及び前記SpO2信号の両方に基づいて前記患者への薬剤投与を制御すること、
を備える方法。
【請求項30】
請求項22記載の方法において、
生理学的信号に応答して前記薬剤投与を制御することは、
薬剤投与を中止すること、
薬剤投与を一時停止すること、
前記リクエスト信号に対する応答を不能にすること、
期間を設定して、その期間内における前記リクエスト信号に対する応答を不能にすること、
薬剤投与を再開すること、
からなる機能に従って制御することを含む、方法。
【請求項31】
請求項22記載の方法は更に、
薬剤投与装置にプログラムされたパラメータを薬物ライブラリに保存された鎮痛剤注入パラメータ及び患者の生理学的パラメータに関連するデータと比較すること、
前記プログラムされたパラメータ及び前記薬物ライブラリに従って前記薬剤投与を制御すること、
を備える方法。
【請求項1】
患者ケアシステムであって、
薬剤を患者に投与するように構成された薬剤投与装置と、
患者によって用いられ、患者が薬剤の投与を要求するためのリクエスト信号を送信する患者リクエストデバイスと、
患者の生理学的パラメータを測定し、測定された生理学的パラメータの値を示す生理学的信号を送信するように配置された生理学的モニター装置と、
前記リクエスト信号及び前記生理学的信号を受信し、前記リクエスト信号及び前記生理学的信号に従って、前記患者に薬剤を投与する前記薬剤投与装置の動作を制御するコントローラと、
を備える患者ケアシステム。
【請求項2】
請求項1記載の患者ケアシステムは更にディスプレイを備え、
前記コントローラは、前記ディスプレイ上に薬剤投与時点を示すことによって前記測定された生理学的パラメータの値の傾向を表示する、患者ケアシステム。
【請求項3】
請求項2記載の患者ケアシステムにおいて、
前記傾向は、前記傾向に関して示された前記薬剤投与時点を含む期間に渡って前記測定された生理学的パラメータの値をグラフ形式で表示したものである、患者ケアシステム。
【請求項4】
請求項2記載の患者ケアシステムにおいて、
前記傾向は、前記傾向に関して示された前記薬剤投与時点を含む期間に渡って前記測定された生理学的パラメータの値を表形式で表示したものである、患者ケアシステム。
【請求項5】
請求項2記載の患者ケアシステムにおいて、
前記傾向を表示する前記期間を選択可能である、患者ケアシステム。
【請求項6】
請求項1記載の患者ケアシステムにおいて、
前記生理学的モニター装置は患者のETCO2を測定してETCO2信号を送信し、
前記コントローラは前記患者への薬剤投与を前記ETCO2信号に基づいて制御する、患者ケアシステム。
【請求項7】
請求項1記載の患者ケアシステムにおいて、
前記生理学的モニター装置は患者のSpO2を測定してSpO2信号を送信し、
前記コントローラは前記患者への薬剤投与を前記SpO2信号に基づいて制御する、患者ケアシステム。
【請求項8】
請求項7記載の患者ケアシステムにおいて、
前記生理学的モニター装置は患者のETCO2を測定してETCO2信号を送信し、
前記コントローラは前記患者への薬剤投与を前記SpO2信号及び前記ETCO2信号の両方に基づいて制御する、患者ケアシステム。
【請求項9】
請求項6記載の患者ケアシステムにおいて、
前記測定されたETCO2の波形が表示される、患者ケアシステム。
【請求項10】
請求項7記載の患者ケアシステムにおいて、
前記測定されたSpO2の波形が表示される、患者ケアシステム。
【請求項11】
請求項1記載の患者ケアシステムにおいて、
前記コントローラは前記生理学的信号に応答して、
薬剤投与を中止すること、
薬剤投与を一時停止すること、
リクエスト信号に対する応答を不能にすること、
期間を設定して、その期間内における前記リクエスト信号に対する応答を不能にすること、
薬剤投与を再開すること、
からなる機能に従って前記投与装置の動作を制御する、患者ケアシステム。
【請求項12】
請求項1記載の患者ケアシステムにおいて、
前記薬剤投与装置は、薬剤をボーラス投与するように要求する患者リクエストによって制御されるPCAポンプを含み、
前記コントローラは、ディスプレイ上に、経時的にモニタリングされた生理学的パラメータの一連の値をグラフ形式で表示するとともに、それと同一のグラフ表示上に、PCAリクエスト信号が患者から生じた時点を表示する、患者ケアシステム。
【請求項13】
請求項12記載の患者ケアシステムは更に薬物ライブラリを備え、
前記薬物ライブラリには、鎮痛剤注入パラメータ及び患者の生理学的パラメータに関連するデータが保存され、
前記コントローラは、前記薬剤投与のリクエスト信号及び前記生理学的信号を前記薬物ライブラリに保存されたデータと比較するようにプログラムされる、患者ケアシステム。
【請求項14】
請求項6記載の患者ケアシステムにおいて、
前記コントローラは、ETCO2測定値に従ってポンプを制御して、薬剤を患者に滴定する、患者ケアシステム。
【請求項15】
請求項6記載の患者ケアシステムにおいて、
前記コントローラは、ETCO2測定値に従ってポンプを制御して、薬剤拮抗薬を患者に投与する、患者ケアシステム。
【請求項16】
請求項6記載の患者ケアシステムにおいて、
前記コントローラは、警告をETCO2測定値に基づいて送信する、患者ケアシステム。
【請求項17】
請求項14記載の患者ケアシステムは更にメモリを備え、
前記コントローラは、
前記測定された生理学的パラメータの値と、
前記リクエスト信号と、
を前記メモリに保存し、
前記コントローラは前記メモリに保存された信号を解析のために別の位置に転送する、患者ケアシステム。
【請求項18】
請求項1記載の患者ケアシステムは更に薬物ライブラリを備え、
前記薬物ライブラリには、薬剤投与に関する許容値範囲が保存され、
前記コントローラは、前記薬剤投与装置にプログラムされたポンプに関する注入パラメータを前記薬物ライブラリと比較し、許容値範囲から外れている場合に警告を送信する、患者ケアシステム。
【請求項19】
請求項18記載の患者ケアシステムにおいて、
前記薬物ライブラリは許容値のソフト範囲を含み、
前記コントローラは、前記薬剤投与装置にプログラムされたパラメータが、前記ソフト範囲から外れている場合には、警告を送信する一方で、リクエストされた薬剤投与の開始を許可し、
前記薬物ライブラリは許容値のハード範囲を含み、
前記コントローラは、前記薬剤投与装置にプログラムされたパラメータが、前記ハード範囲から外れている場合には、警告を送信し、薬剤投与の開始を許可しないとともに警告対象の注入パラメータをプログラムし直すように要求する、患者ケアシステム。
【請求項20】
請求項17記載の患者ケアシステムにおいて、
前記コントローラは、データソースにアクセスして患者固有の情報を求め、その情報を薬物ライブラリと比較し、前記薬物ライブラリと比較された患者情報が範囲から外れている場合に警告を送信する、患者ケアシステム。
【請求項21】
請求項17記載の患者ケアシステムにおいて、
データセットはエディタープログラムのオペレータにより設定可能である、患者ケアシステム。
【請求項22】
鎮痛剤の患者管理自己投与を行うための方法であって、
患者に鎮痛剤の投与を行う患者管理装置からリクエスト信号を受信すること、
前記患者の生理学的パラメータを測定するように配置されたモニター装置から生理学的パラメータデータを受信すること、
前記リクエスト信号と前記生理学的パラメータデータとに従って前記患者に対する前記鎮痛剤の自己投与を制御すること、
を備える方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法は更に、
前記測定された生理学的パラメータの値の傾向を薬剤投与時点を示すことによって表示することを備える方法。
【請求項24】
請求項23記載の方法において、
前記表示することは、前記傾向に関して示された前記薬剤投与時点を含む期間に渡って前記測定された生理学的パラメータの値をグラフ形式で表示することを含む、方法。
【請求項25】
請求項23記載の方法において、
前記表示することは、前記傾向に関して示された前記薬剤投与時点を含む期間に渡って前記測定された生理学的パラメータの値を表形式で表示することを含む、方法。
【請求項26】
請求項23記載の方法において、
前記表示することは、前記傾向を表示する前記期間を選択することを含む、方法。
【請求項27】
請求項22記載の方法は更に、
前記患者のETCO2を測定してETCO2信号を送信すること、
前記ETCO2信号に基づいて前記患者への薬剤投与を制御すること、
を備える方法。
【請求項28】
請求項22記載の方法は更に、
前記患者のSpO2を測定してSpO2信号を送信すること、
前記SpO2信号に基づいて前記患者への薬剤投与を制御すること、
を備える方法。
【請求項29】
請求項28記載の方法は更に、
前記患者のETCO2を測定してETCO2信号を送信すること、
前記ETCO2信号及び前記SpO2信号の両方に基づいて前記患者への薬剤投与を制御すること、
を備える方法。
【請求項30】
請求項22記載の方法において、
生理学的信号に応答して前記薬剤投与を制御することは、
薬剤投与を中止すること、
薬剤投与を一時停止すること、
前記リクエスト信号に対する応答を不能にすること、
期間を設定して、その期間内における前記リクエスト信号に対する応答を不能にすること、
薬剤投与を再開すること、
からなる機能に従って制御することを含む、方法。
【請求項31】
請求項22記載の方法は更に、
薬剤投与装置にプログラムされたパラメータを薬物ライブラリに保存された鎮痛剤注入パラメータ及び患者の生理学的パラメータに関連するデータと比較すること、
前記プログラムされたパラメータ及び前記薬物ライブラリに従って前記薬剤投与を制御すること、
を備える方法。
【図1】
【図1a】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図18a】
【図18b】
【図19】
【図20】
【図21】
【図21a】
【図22】
【図23】
【図1a】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図18a】
【図18b】
【図19】
【図20】
【図21】
【図21a】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2007−518471(P2007−518471A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542840(P2006−542840)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/040718
【国際公開番号】WO2005/056087
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(598040422)カーディナル ヘルス 303、インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/040718
【国際公開番号】WO2005/056087
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(598040422)カーディナル ヘルス 303、インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
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