説明

患者位置決め装置及びその方法

【課題】放射線治療の際に患者を短時間で正確に位置決めすることが可能な患者位置決め装置を提供する。
【解決手段】治療計画を立てるための3次元CT画像に基づき、一定の場所から一定の方向で患者を透視した場合の2次元変換画像情報を生成する第2画像生成部39と、治療時に患者を撮像した2次元の基準透視画像情報を取得する基準画像情報取得部43と、変換画像と基準透視画像との類似度を算出する第2比較部45と、類似度が閾値以下であるか否かを判定する判定部49と、類似度が閾値以下である場合、変換画像を生成した場所及び方向に基づき、予め決定した照射部位に予め決定した照射方向から治療用の放射線を照射できる患者の位置を算出するずれ量算出部50とを備え、第2画像生成部39は、類似度が閾値より大きい場合、類似度が閾値以下であると判定されるまで、上記場所及び上記方向の少なくとも一方を変えて変換画像の生成を繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の位置決めをするための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌等の治療方法の1つに放射線治療がある。放射線治療では、治療用の放射線を照射する前に、最適な照射中心(アイソセンタ)、照射範囲、照射方向、照射量等の照射条件を決定するための治療計画が行われる。治療計画には、X線撮像装置、X線断層撮像(Computed Tomography)等の画像診断装置を利用したシミュレータが用いられる。このようなシミュレータで撮像された画像を基に、医師は治療計画を立てる。治療計画に従って正確に放射線を照射するには、治療用の照射装置に対する患者の位置が、治療計画時に想定した位置と同じであることが望ましい。
【0003】
特に、近年、粒子線治療、ガンマナイフ治療、IMRT(Intensity Modulated Radiotherapy)等の癌細胞に集中的に放射線を照射できる技術が進歩している。これによって、癌細胞周辺の正常な細胞が被爆する二次発癌の危険を抑えられる。癌となっている部位によっては、癌細胞に集中的に強い放射線を照射することで、優れた治療効果が得られることがある。この場合、もし照射部位がずれると、治療効果が得られないだけでなく、二次発癌の危険が生じるという危険もある。そのため、二次発癌の危険を抑え、治療効果を挙げるために、放射線照射時の患者の位置を精度よく決めることが特に重要になる。
【0004】
患者の位置を精度よく決めるために、治療用の放射線を照射する前、位置決め用X線画像が撮像して、患者の位置ずれを自動的に修正して位置決めする技術が提案されている。例えば、特許文献1には、治療計画を立てるために用いた治療計画画像の一部であってアイソセンタを含む基準画像と、位置決め用X線画像の一部であって治療用の荷電粒子ビーム進路に対応する位置を含む治療領域画像と、位置決め用X線画像より狭く治療領域画像よりも広い探索範囲とを設定し、探索範囲の中で基準画像に最も類似する治療領域画像を抽出し、抽出した治療領域画像に基づいて患者の位置決めに関する情報を生成する技術が記載されている。
【特許文献1】特開2006−61711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の患者位置決め装置では、患者の位置の修正量を1回で確実に算出できないという問題がある。従来の技術によって生成された位置決め情報に基づいて患者の位置を修正しても、患者の向きが変わっている場合には基準画像と探索範囲とで撮像された方向が異なる。患者の向きの修正は、操作者の技量に頼ることになり、1回の修正で患者を正確に位置付けることは難しい。そのため、通常は、位置決めに関する情報の生成を何度か繰り返す必要がある。その結果、患者は位置決めのために何度もX線を浴びることとなり、また治療時間がかかる。さらに、従来の方法では、患者の向きの修正は、上述のように操作者の技量に依存するため、その精度は不安定である。
【0006】
そこで、本発明は、放射線治療の際に患者を短時間で正確に位置決めすることが可能な患者位置決め装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る患者位置決め装置は、
治療計画を立てるための3次元のCT画像を示す情報を記憶している画像情報記憶手段と、
上記CT画像に基づいて、一定の場所から一定の方向で患者を透視した場合に得られる2次元の変換画像を示す情報を生成する変換画像生成手段と、
治療時に患者を撮像して得られる2次元の基準透視画像を示す情報を取得する基準画像取得手段と、
上記変換画像を示す情報と上記基準透視画像を示す情報とを参照して、上記変換画像と上記基準透視画像との類似度を算出する比較手段と、
上記比較手段で算出された上記類似度が閾値以下であるか否かを判定する判定手段と、
上記判定手段により類似度が閾値以下であると判定された場合、上記変換画像を生成した上記場所及び上記方向に基づいて、上記予め決定した照射部位に上記予め決定した照射方向から治療用の放射線を照射できる患者の位置を算出するずれ量算出手段とを備え、
上記変換画像生成手段は、上記判定手段により類似度が閾値より大きいと判定された場合、上記判定手段により類似度が閾値以下であると判定されるまで、上記場所及び上記方向の少なくとも一方を変えて上記変換画像の生成を繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、治療時の患者の位置のずれ量を精度良く算出できる。そのため、短時間で正確な患者の位置決めが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
本発明に係る実施の形態1の患者位置決め装置11は、図1に示すように、放射線治療システムに備えられ、患者の治療計画を立てるための治療計画装置17と、治療時に患者を撮像し、撮像した画像情報を出力するX線撮像装置25と、治療時に患者が横たわる治療台29の移動を制御する移動制御装置27とに情報通信可能に接続している。
【0010】
治療計画装置17は、例えばX線源とX線センサを有するドーナツ型の撮影機器19が患者21を撮影するCT撮影装置に接続される画像処理装置である。治療計画装置17は、撮影装置19のX線センサが検知した信号を取得して、画像処理する。これにより、治療計画装置17は、患者21の任意の位置の断面画像など3次元の患者透視画像(CT画像)を示す情報を生成する。このようなCT画像を判断資料の1つにして、医師は、患者21に放射線を照射する照射中心(アイソセンタ)、照射範囲、照射方向、照射量等を含む照射条件を決定する。
【0011】
X線撮像装置25は、治療用X線照射部26と所定の位置関係にあるX線源23とX線センサ等のX線受容部24とにより治療台29に横たわる治療時の患者(図示せず)を撮像し、2次元の患者の透視画像(基準透視画像)を示す情報を生成する。X線撮像装置25は、生成した基準透視画像情報を患者位置決め装置11に出力する。治療台29は、モータ等を含む移動機構を備え、XYZ方向および各軸の回転方向の計6方向に移動可能である。移動制御装置29は、治療台29の上記6方向の移動を制御する。これにより、並進方向と回転方向とを含む患者の位置を自動的に修正することができる。
【0012】
図2を参照して、患者位置決め装置11の構成について説明する。患者位置決め装置11は、予め決定された上記照射条件に従って患者に放射線を照射するために患者の位置決めをする。患者位置決め装置11は、CT画像情報を取得するCT画像情報取得部33と、CT画像情報を記憶しているCT画像情報記憶部(画像情報記憶手段)35と、CT画像情報記憶部35からCT画像情報を取得して第1画像情報を生成する第1画像情報生成部41と、CT画像情報記憶部35からCT画像情報を取得して第2画像(変換画像)情報を生成する第2画像情報生成部(変換画像生成手段)39と、X線撮像装置25から基準透視画像情報を取得する基準画像情報取得部(基準画像取得手段)43と、基準透視画像をディスプレイなどの表示部13に表示させる表示制御部37と、第1画像情報と基準透視画像情報とを参照して、第1画像と基準透視画像との類似度を算出する第1比較部47と、第2画像情報と基準透視画像情報とを参照して、第2画像と基準透視画像との類似度を算出する第2比較部(比較手段)45と、第1比較部47および第2比較部47のそれぞれで算出された類似度が閾値以下であるか否かを判定する判定部49と、第1画像から第2画像への変換条件に基づいて、患者を移動させるべき量であるずれ量を算出するずれ量算出部50と、ずれ量算出部50で算出されたずれ量を移動制御装置27に送信する移動量送信部51とを備える。
【0013】
第1画像情報生成部41は、CT画像情報に基づいて2次元の透視画像を第1透視画像として生成する。具体的には、第1画像情報生成部41が生成する画像は、例えば、一定の場所から一定の方向でX線を照射した場合のX線透過経路に沿って3次元のCT画像情報を加算して得られる2次元の画像であり、レイキャスティングアルゴリズム等を用いて生成されるDRR(Digitally Reconstructed Radiograph)画像である。第1画像情報生成部41は、予め設定された場所から予め設定された方向でX線を照射した場合(透視した場合)に得られる2次元の透視画像を生成する。
【0014】
第2画像情報生成部39は、第1画像情報生成部41と同様に、CT画像情報に基づいて2次元の透視画像を第2透視画像として生成する。第2画像情報生成部39は、第1画像情報生成部41と異なり、任意の場所から任意の方向でX線を照射した場合に得られる2次元の透視画像を生成できる。第2画像情報生成部39は、基準透視画像が透視画像に類似したものとなるように、場所及び方向を内容とする画像生成パラメータを順次変更する。
【0015】
第1比較部47及びは、例えば、第1画像情報と透視画像情報に含まれる対応する位置の画素値の差分(残差)の絶対値和を類似度として算出する。第2比較部45は、例えば、第2画像情報と透視画像情報の残差の絶対値和を類似度として算出する。なお、これらの類似度は、画像特徴量に基づいて算出される指標である。画像特徴量は、例えば輝度値、周波数成分等を含む。指標は、正規化相関、相互情報量、分割領域毎の濃淡値の均一性を示す指標、相関比等を含む。
【0016】
判定部49は、第1比較部47及び第2比較部45で算出された類似度が閾値以下であるか否かを判定する。判定部49により類似度が閾値以下であると判定された場合、その判定が第1比較部47で算出された類似度に基づくとき、その判定の基礎となった画像情報が第1画像情報であることを示す情報をずれ量算出部50に出力し、また、その判定が第2比較部45で算出された類似度に基づくとき、その判定の基礎となった第2画像情報の生成に利用された画像生成パラメータを示す情報をずれ量算出部50に出力する。判定部49により類似度が閾値より大きいと判定された場合、判定部49は、類似度が閾値より大きいと判定されたことを示す情報を第2画像情報生成部39に送信し、その情報を受けた画像情報生成部39は、直前の画像よりも類似度が高い画像を生成できる画像生成パラメータで第2画像を生成する。判定部49により類似度が閾値以下であると判定されるまで、画像情報生成部39は、画像生成パラメータを変えて第2画像を生成する。直前の画像よりも類似度が高い画像生成パラメータを得るために、例えば、最急降下法、Powel法などが利用できる。
【0017】
ずれ量算出部50は、判定部49から取得した情報に基づいて、第1画像情報を基準として第2画像情報を生成するためのずれ量を算出する。ずれ量は、並進量及び回転量を含む。移動制御装置29は、ずれ量算出部50が算出したずれ量を取得し、治療用X線照射部26とX線源23のそれぞれが固定されている位置関係を考慮して、治療台29の上記6方向の移動を制御する。
【0018】
次に、患者位置決め装置11が実行する処理について、図3を参照して説明する。ステップS1において、基準画像情報取得部43は、基準透視画像(例えば図4参照)をX線撮像装置25から取得する。ステップS2において、第1画像情報生成部41は、CT画像情報記憶部35からCT画像情報を取得し、固定の画像生成パラメータでX線を照射した場合、すなわち予め設定された場所から予め設定された方向でX線を照射した場合に得られる2次元の第1画像情報(例えば図5参照)を生成する。ステップS3において、第1比較部47は、基準透視画像情報と第1画像情報とを参照し、残差の絶対値和を類似度として算出する。ステップS4において、判定部49は、第1比較部47で算出された類似度が閾値以下であるか否かを判定する。例えば、基準透視画像及び第1画像がそれぞれ、図4及び図5に示す画像である場合、頭部の上下左右の位置と、向きが異なっており、治療計画に従って放射線を照射するには、患者の位置を移動させる必要がある。そのため、このような場合に、類似度が閾値より大きいと判定されるように、閾置は設定される。すなわち、閾置は、治療計画に従って放射線を患者に照射するために許容される患者の位置ずれの範囲で、採用された類似度の種類に応じて予め決められる。
【0019】
判定部49により類似度が閾置以下ではない(判定処理S4において、No)と判定された場合、ステップS5において、第2画像情報生成部39は、CT画像情報記憶部35からCT画像情報を取得し、第1画像情報よりも基準透視画像に類似する画像を生成できる画像生成パラメータで第2画像を生成する。ステップS6において、第2比較部45は、基準透視画像情報と第2画像情報とを参照し、取得した基準透視画像情報と第2画像情報から残差の絶対値和を類似度として算出する。ステップS4に戻り、判定部49は、第2比較部45で算出された類似度が閾値以下であるか否かを判定する。ここで、再び、判定部49により類似度が閾値以下ではないと判定された場合、ステップS5において、第2画像情報生成部39は、直前よりも基準透視画像に類似する画像を生成できる画像生成パラメータで第2画像を生成し、ステップS6において、第2比較部45は生成された第2画像と基準透視画像情報との類似度を算出する。各処理部は、ステップS5における第2画像情報生成処理とステップS6における類似度算出処理を、判定部49により類似度が閾値以下であると判定されるまで、繰り返す。
【0020】
判定部49により類似度が閾値以下であると判定された場合(判定処理S4において、Yes)、ステップS7において、ずれ量算出部50は、判定部49が閾値以下であると判定した第2画像を生成した画像生成パラメータに基づいて、基準となる患者の位置に対するX線撮像装置25が撮像した患者、すなわち現在の患者の位置のずれ量を算出する。
【0021】
ここで、ずれ量算出部50によるずれ量の算出方法ついて、詳細に説明する。患者の位置の基準には、予め決定した照射部位に予め決定した照射方向で治療用の放射線を照射できる患者の位置が設定される。すなわち、ずれ量が0の場合、現在の患者の位置が基準となる患者の位置と一致するように設定しておく。また、ずれ量が0の場合に、第1画像が基準透視画像と一致するように、第1画像の生成に利用する画像生成パラメータを設定しておく。このような設定を前提として、ずれ量算出部50は、第1画像の生成に利用した画像生成パラメータと、判定部49が閾値以下であると判定した第2画像の生成に利用した画像生成パラメータとの違いを、患者の位置に対応付けて変換する。この変換は、X線照射部23及び治療用X線照射部26の位置関係を示す情報を予め登録又は取得しておくことで、これらの位置情報を条件に加えることで計算可能である。
【0022】
ステップS8において、ずれ量送信部51は、ずれ量算出部50が算出したずれ量を示す情報を患者移動制御装置27に送信して、患者位置決め装置11は、処理を終了する。
【0023】
なお、ずれ量算出部50が、患者の位置のずれ量を算出するとしたが、ずれ量算出部50は、判定部49が閾値以下であると判定した第2画像の生成に利用した画像生成パラメータと、第1画像の生成に利用した画像生成パラメータとの違いをずれ量として算出し、ずれ量送信部51は、このずれ量を患者移動制御装置27に送信してもよい。この場合、患者移動制御装置27が、受信したずれ量に含まれる画像生成パラメータを、患者の位置のずれ量に変換する。
【0024】
このように、本発明に係る患者位置決め装置は、患者の3次元のCT画像を元に、治療時に患者を撮像して得られる2次元の基準透視画像に類似する2次元の画像を生成する。そして、生成した類似画像に基づいて患者の位置を決めるため、治療台29に横たわる患者の位置と、予め決定した照射部位に予め決定した照射方向で治療用の放射線を照射できる患者の位置とのずれ量を正確に算出することができる。また、ずれ量は、X線撮像装置25による1つの基準透視画像によって算出できるため、短時間で患者の位置の修正ができ、また撮像のための被爆も低減できる。したがって、短時間で正確な、かつ少ない被爆での患者の位置決めが可能になる。
【0025】
実施の形態2.
本発明に係る実施の形態2の患者位置決め装置111は、図6に示すように、概ね、実施の形態1に係る患者位置決め装置11と同様であり、同じ機能の処理部には同じ符号を付している。患者位置決め装置111は、入力部15から利用者の指定に係る基準透視画像の一部の領域を特定するための指定領域情報を取得する指定情報取得部153と、指定領域情報に対応する基準透視画像(指定領域画像)と類似度が最も高い部分領域を示す第1領域情報を、第2画像情報から抽出し、指定領域画像と第1領域画像の類似度を算出する第1抽出比較部147と、指定領域画像と類似度が最も高い第2画像の部分領域を示す第2領域(変換領域)情報を、を示す情報から抽出し、指定領域画像と第2領域画像の類似度を算出する第2抽出比較部145とを備える。表示制御部137は、基準透視画像に加えて、指定領域を表示部13に表示させて、指定領域の入力を支援する。
【0026】
次に、患者位置決め装置111が実行する処理について、図7を参照して説明する。ステップS11において、実施の形態1と同様に、基準画像情報取得部43は、基準透視画像情報をX線撮像装置25から取得する。ステップS12において、第1抽出比較部147は、指定領域情報を取得するとともに基準透視画像情報を取得し、指定領域に対応する指定領域画像情報を抽出する。ステップS13において、実施の形態1と同様に、第1画像情報生成部41は、CT画像情報記憶部35からCT画像情報を取得し、第1画像情報を生成する。ステップS14において、第1抽出比較部147は、ステップS12の指定領域情報が示す画像と類似度が最も高い第1画像の部分領域を示す第1領域情報を抽出する。ステップS15において、第1抽出比較部147は、指定領域画像情報と、ステップS14において抽出した第1領域情報との類似度を算出する。ステップS16において、判定部49は、第1抽出比較部147で算出された類似度が閾値以下であるか否かを判定する。
【0027】
判定部49により類似度が閾値以下ではないと判定された場合(判定処理S16において、No)、ステップS17において、第2画像情報生成部39は、CT画像情報記憶部35からCT画像情報を取得し、第1画像よりも類似度が高い画像を生成できる画像生成パラメータの第2画像を生成する。ステップS18において、第2抽出比較部145は、ステップS12の指定領域情報が示す画像と類似度が最も高い第2画像の部分領域を示す第2領域情報を抽出する。ステップS19において、第2抽出比較部145は、指定領域情報と、ステップS18において抽出した第2領域情報との類似度を算出する。
【0028】
ステップS16に戻り、判定部49は、第2抽出比較部145で算出された類似度が閾値以下であるか否かを判定する。ここで、再び、判定部49により類似度が閾値以下ではないと判定された場合、ステップS17において、第2画像情報生成部39は、直前よりも基準透視画像に類似する画像を生成できる画像生成パラメータで第2画像生成処理を実行し、ステップS18において、第2抽出比較部145は、第2領域情報抽出処理を実行し、ステップS19において、第2抽出比較部145は、類似度算出処理を実行する。各処理部は、判定部49により類似度が閾値以下であると判定されるまで、ステップS17における第2画像生成処理と、ステップS18における第2領域情報抽出処理と、ステップS19における類似度算出処理とを繰り返す。
【0029】
判定部49により類似度が閾値以下であると判定された場合(判定処理S16において、Yes)、ステップS20において、ずれ量算出部50は、実施の形態1と同様に、判定部49が閾値以下であると判定した第2画像の生成に利用したパラメータに基づいて、基準となる患者の位置に対するX線撮像装置25が撮像した現在の患者の位置のずれ量を算出する。ステップS21において、ずれ量送信部51は、実施の形態1と同様に、ずれ量算出部50が算出したずれ量を示す情報を患者移動制御装置27に送信して、患者位置決め装置11は、処理を終了する。
【0030】
このように、実施の形態2の患者位置決め装置111は、利用者の指定に係る領域について、患者の3次元の断面画像と治療時に患者を撮像して得られる2次元の透視画像とを比較して、2次元透視画像に類似する画像を3次元断面画像から生成する。このように比較する画像の領域が限定されているため、短時間で類似画像を得ることが可能になる。また、利用者は、例えば照射部位近傍のような重要な領域を選択するため、精度も維持できる。
【0031】
実施の形態3.
本発明に係る実施の形態3の患者位置決め装置211は、図8に示すように、概ね、実施の形態1に係る患者位置決め装置11又は実施の形態2に係る患者位置決め装置111と同様であり、同じ機能の処理部には同じ符号を付している。患者位置決め装置211は、入力部15から利用者の指定に係る基準透視画像の中の複数の部分領域を特定するための指定領域情報群を取得する指定情報取得部253と、指定領域情報群に対応する基準透視画像の部分領域群(基準領域群)を抽出するとともに、基準領域群と類似度が最も高い第1画像の部分領域群を示す情報(基準領域情報群)を抽出し、基準領域群と第1領域群の類似度を算出する第1抽出比較部247と、指定領域情報群に対応する基準透視画像の部分領域群(基準領域群)を抽出するとともに、基準領域群と類似度が最も高い第2画像情報の部分領域群を示す第2領域情報群から抽出し、基準領域群と第2領域群の類似度を算出する第2抽出比較部245と、第1抽出比較部247又は第2抽出比較部245が算出した類似度の中に異常値がある場合に、異常な類似度に対応する領域を指定領域群から排除して新たな指定領域情報群を設定する異常領域排除部255とを備える。
【0032】
第1抽出比較部147と第2抽出比較部145とは、指定領域群と第1領域群のそれぞれの類似度を算出し、算出された類似度群の合計が最大となる第1領域群を類似度が最も高い領域群として抽出する。なお、類似度が最も高い領域群を抽出する方法は、これに限られない。例えば、指定領域群と第1領域群のそれぞれの類似度を算出し、算出した類似度群のそれぞれに、対応する第1領域の面積を第1領域の面積の合計で除した数を掛けることによって重み付けして得られる値を類似度としてもよい。また、異常領域排除部255は、予め設定される類似度の下限値及び/又は上限値と、第1領域群の各々の類似度とを比較して、上限値及び/又は下限値を超える類似度を異常値とする。
【0033】
次に、患者位置決め装置211が実行する処理について、図9を参照して説明する。ステップS31において、実施の形態1と同様に、基準画像情報取得部43は、基準透視画像情報をX線撮像装置25から取得する。ステップS32において、第1抽出比較部247は、指定領域群を取得するとともに基準透視画像情報を取得し、指定領域に対応する指定領域情報群を抽出する。ステップS33において、実施の形態1と同様に、第1画像情報生成部41は、CT画像情報記憶部35からCT画像情報を取得し、第1画像情報を生成する。ステップS34において、第1抽出比較部247は、ステップS22の指定領域情報群が示す画像群と類似度が最も高い第1画像の部分領域群を示す第1領域情報群を抽出する。ステップS35において、第1抽出比較部247は、指定領域情報群と、ステップS24において抽出した第1領域情報群との類似度を算出する。ステップS36において、異常領域排除部255は、第1領域情報群の各々の類似度と予め設定された閾値とを比較し、閾値を超える類似度がある場合、閾値を超える類似度に対応する第1領域情報を第1領域情報群から排除して第1領域情報群の類似度を再計算するとともに、閾値を超える類似度に対応する指定領域情報を指定領域情報群から排除して新たな指定領域情報群を設定する。ステップS37において、判定部49は、第1抽出比較部247で算出された類似度が閾値以下であるか否かを判定する。
【0034】
判定部49により類似度が閾値以下ではないと判定された場合(判定処理S37において、No)、ステップS38において、第2画像情報生成部39は、CT画像情報記憶部35からCT画像情報を取得し、第1画像よりも類似度が高い画像を生成できる画像生成パラメータで第2画像を生成する。ステップS39において、第2抽出比較部245は、ステップS36で設定された指定領域情報群が示す画像群と類似度が最も高い第2画像の部分領域群を示す第2領域情報群を抽出する。ステップS40において、第2抽出比較部245は、新たに設定された指定領域情報群と、ステップS39において抽出した第2領域情報群との類似度を算出する。
【0035】
続いて、ステップS36の異常領域排除処理が実行された後、ステップS37に戻り、判定部49は、第2抽出比較部245で算出された類似度が閾値以下であるか否かを判定する。ここで、再び、判定部49により類似度が閾値以下ではないと判定された場合、ステップS38において、第2画像情報生成部39は、直前よりも基準透視画像に類似する画像を生成できる画像生成パラメータで第2画像生成処理を実行し、ステップS39において、第2抽出比較部245は、第2領域情報群抽出処理を実行し、ステップS40において、第2抽出比較部245は、類似度算出処理を実行する。各処理部は、判定部49により類似度が閾値以下であると判定されるまで、ステップS38における第2画像生成処理と、ステップS39における第2領域情報群抽出処理と、ステップS40における類似度算出処理とを繰り返す。
【0036】
判定部49により類似度が閾値以下であると判定された(判定処理S37において、Yes)、ステップS41において、ずれ量算出部50は、実施の形態1と同様に、判定部49が閾値以下であると判定した第2画像を生成した画像生成パラメータに基づいて、基準となる患者の位置に対するX線撮像装置25が撮像した患者の位置のずれ量を算出する。ステップS42において、ずれ量送信部51は、実施の形態1と同様に、ずれ量算出部50が算出したずれ量を示す情報を患者移動制御装置27に送信して、患者位置決め装置11は、処理を終了する。
【0037】
このように、実施の形態3の患者位置決め装置211は、利用者の指定に係る領域群について、3次元のCT画像と治療時に患者を撮像して得られる2次元の透視画像とを比較し、2次元透視画像に類似する画像を3次元断面画像から生成する。このように比較する画像の領域が限定されているため、短時間で類似画像を得ることが可能になる。また、利用者は、例えば照射部位近傍、画像のコントラストが明瞭な領域など複数の重要な領域を選択できるため、精度向上も可能になる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。例えば、本発明に係る治療用の放射線は、X線に限らず、粒子線、ガンマ線、電子線、中性子線等のあらゆる放射線が利用され得る。また、本発明に係る患者位置決め装置は、放射線治療だけでなく、コンピュータ支援外科治療、コンピュータ支援内視鏡治療等でも利用できる。これらの治療においても、コンピュータで処理された3次元画像に基づいて治療計画を立てた後に施術する場合には、治療計画時の3次元画像と施術時の画像とを利用することによって、本発明に係る患者位置決め装置が患者の位置決めをすることができる。また例えば、X線撮像装置25は、1台としたが、複数台備えられてもよい。その場合、各X線撮像装置25が、基準透視画像情報を患者位置決め装置11に出力し、患者位置決め装置11は各基準透視画像に類似する2次元の第2画像を生成して、患者の位置のずれ量を算出する。これによって、患者の位置決めの精度を向上させることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、放射線治療をするための患者の位置決め装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る患者位置決め装置を備える治療放射線治療システムの概要を示す。
【図2】本発明に係る実施の形態1の患者位置決め装置のブロック図。
【図3】本発明に係る実施の形態1の患者位置決め装置が実行する処理のフローチャート。
【図4】基準透視画像の一例を示す図。
【図5】第1画像の一例を示す図。
【図6】本発明に係る実施の形態2の患者位置決め装置のブロック図。
【図7】本発明に係る実施の形態2の患者位置決め装置が実行する処理のフローチャート。
【図8】本発明に係る実施の形態3の患者位置決め装置のブロック図。
【図9】本発明に係る実施の形態3の患者位置決め装置が実行する処理のフローチャート。
【符号の説明】
【0041】
11・111・211 患者位置決め装置、17 治療計画装置、23 X線照射部、24 X線受容部、25 X線撮像装置、27 移動制御装置、33 CT画像取得部、35 CT画像情報記憶部、37・137 表示制御部、39 第2画像情報生成部、41 第1画像情報生成部、43 基準画像情報取得部、45 第2比較部、47 第1比較部、49 判定部、50 ずれ量算出部、51 ずれ量送信部、145・245 第2抽出比較部、147・247 第1抽出比較部、153・253 指定領域情報取得部、255 異常領域排除部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め決定した照射部位に予め決定した照射方向から治療用の放射線を照射するために患者の位置決めをする患者位置決め装置であって、
治療計画を立てるための3次元のCT画像を示す情報を記憶している画像情報記憶手段と、
上記CT画像に基づいて、一定の場所から一定の方向で患者を透視した場合に得られる2次元の変換画像を示す情報を生成する変換画像生成手段と、
治療時に患者を撮像して得られる2次元の基準透視画像を示す情報を取得する基準画像取得手段と、
上記変換画像を示す情報と上記基準透視画像を示す情報とを参照して、上記変換画像と上記基準透視画像との類似度を算出する比較手段と、
上記比較手段で算出された上記類似度が閾値以下であるか否かを判定する判定手段と、
上記判定手段により類似度が閾値以下であると判定された場合、上記変換画像を生成した上記場所及び上記方向に基づいて、上記予め決定した照射部位に上記予め決定した照射方向から治療用の放射線を照射できる患者の位置を算出するずれ量算出手段とを備え、
上記変換画像生成手段は、上記判定手段により類似度が閾値より大きいと判定された場合、上記判定手段により類似度が閾値以下であると判定されるまで、上記場所及び上記方向の少なくとも一方を変えて上記変換画像の生成を繰り返すことを特徴とする患者位置決め装置。
【請求項2】
利用者の指定に係る上記基準透視画像の部分領域を特定するための指定領域情報を取得する指定情報取得手段を備え、
上記比較手段は、上記指定領域情報が示す画像と類似度が最も高い変換画像の部分領域を示す変換領域情報を抽出し、上記指定領域情報及び上記変換領域情報の類似度を算出することを特徴とする請求項1に記載の患者位置決め装置。
【請求項3】
上記指定情報取得手段は、複数の部分領域のそれぞれを特定するための指定領域情報群を取得し、
上記比較手段は、上記指定領域情報群が示す画像群と類似度が最も高い変換画像の部分領域群を示す変換領域情報群を抽出し、上記指定領域情報群および上記変換領域情報群の類似度を算出し、
上記患者位置決め装置は、上記類似度の中に異常値がある場合に、異常な類似度に対応する部分領域を上記指定領域群から排除して指定領域情報群を再設定する異常領域排除手段を更に備え、
上記判定手段は、上記異常領域排除手段が再設定した指定領域群の類似度を算出し、算出した類似度が閾値以下であるか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載の患者位置決め装置。
【請求項4】
予め決定した照射部位に予め決定した照射方向から治療用の放射線を照射するために患者の位置決めをする患者位置決め方法であって、
画像情報記憶手段が記憶している治療計画を立てるための3次元のCT画像に基づいて、一定の場所から一定の方向で患者を透視した場合に得られる2次元の変換画像を示す情報を生成するステップと、
治療時に患者を撮像して得られる2次元の基準透視画像を示す情報を取得するステップと、
上記変換画像を示す情報と上記基準透視画像を示す情報とを参照して、上記変換画像と上記基準透視画像との類似度を算出するステップと、
上記類似度が閾値以下であるか否かを判定するステップと、
上記類似度が閾値以下であると判定された場合、上記変換画像を生成した上記場所及び上記方向に基づいて、上記予め決定した照射部位に上記予め決定した照射方向から治療用の放射線を照射できる患者の位置を算出するステップとを含み、
上記判定ステップにおいて、上記類似度が閾値より大きいと判定された場合、上記類似度が閾値以下であると判定されるまで、上記場所及び上記方向の少なくとも一方を変えて上記変換画像の生成を繰り返すことを特徴とする患者位置決め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−189461(P2009−189461A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31392(P2008−31392)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】