説明

情報処理システム

【課題】音声認識技術を利用して安全に認証データを特定することが可能な情報処理システムを提供する。
【解決手段】この情報処理システムは、ユーザの音声情報に基づいてユーザを認証するための認証データ100を生成する情報処理システムであって、所定のアルゴリズムに従って、認証データ100とは異なる語句である複数の回答語句のいずれかを選択して回答させる形式の質問を生成する質問生成部20と、複数の回答語句に対応する回答語句特定情報が記憶された回答語句特定情報記憶部30と、質問に対するユーザの回答音声と、回答語句特定情報130とに基づいてユーザの回答を識別し、回答識別情報140を生成する回答識別部40と、回答識別情報140に基づいて、認証データ100を特定する処理を行う認証データ特定部50と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
音声を利用して個人を認証する技術が知られている。この技術では、音声認識技術を利用して認証データを特定し、ユーザを特定するする方法が知られている。あるいは、生体の持つ個体差(いわゆる声紋)を利用してユーザを特定する方法が知られている。
【特許文献1】特開2002−312328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
音声認識技術を利用して認証データを特定する場合、公共の場所でユーザが認証データ(暗証番号などのID情報)を発声すれば、認証データを第三者に知られてしまう危険性がある。
【0004】
生体の個体差に基づく音声の特徴(いわゆる声紋)を利用した音声認識技術によると、予めユーザの声紋を登録しておく必要があることから不特定のユーザに対応することが困難で、また、音声認識のために必要なデータが大きくなり、システムの規模が大きくなることがある。また、風邪などにより音声が変調しているときにユーザを認証できない事態が発生しうる。また、録音装置によりユーザ発声を盗用されてしまう可能性もある。
【0005】
本発明の目的は、不特定話者に対する単語音声認識技術を利用して安全に認証データを特定することが可能な情報処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る情報処理システムは、
ユーザの音声情報に基づいて前記ユーザを認証するための認証データを生成する情報処理システムであって、
所定のアルゴリズムに従って、前記認証データとは異なる語句である複数の回答語句のいずれかを選択して回答させる形式の質問を生成する質問生成手段と、
前記複数の回答語句に対応する回答語句特定情報が記憶された回答語句特定情報記憶部と、
前記質問に対する前記ユーザの回答音声と、前記回答語句特定情報とに基づいて前記ユーザの回答を識別し、回答識別情報を生成する回答識別手段と、
前記回答識別情報に基づいて、前記認証データを特定する処理を行う認証データ特定手段と、
を含む。
【0007】
本発明の情報処理システムによると、質問生成手段で、回答が認証データと異なる語句となる質問を生成する。そのため、第三者が質問に対するユーザの回答音声を聞いた場合であっても、当該第三者が認証データを特定することを防止することができる。
【0008】
また、本発明では、質問が、予め設定された複数の回答語句のいずれかになるように設定される。すなわち、本発明によると、回答語句が限られるため、ユーザの回答(回答音声)の識別に必要な情報(回答語句特定情報)の情報量を小さくすることができるとともに、回答音声語句の識別処理の処理負担を軽減することができる。また、ユーザ固有の生体情報に依存せず、不特定話者むけの単語音声認識技術を応用することができる。
【0009】
なお、本発明では、回答識別手段は、ユーザの回答音声を電気信号に変換して得られる回答情報と、複数の回答語句特定情報とを比較することによって類似度を算出し、回答情報に最も類似する回答語句特定情報を選択し、これをユーザの回答と認識(識別)し、回答識別情報を生成してもよい。
【0010】
回答語句特定情報は、例えば、音声の波形情報であってもよい。詳しくは、回答語句特定情報は、音声の強度と時間との相関関係を示す波形情報であってもよい。言い換えると、回答語句特定情報は、音声の強度の経時変化を示す波形情報であってもよい。あるいは、回答語句特定情報は、音声の波形情報を解析処理(例えばフーリエ解析処理)して得られるいずれかの情報であってもよい。また、回答語句特定情報は、テキスト情報であってもよい。
【0011】
なお、回答情報と回答語句特定情報とが同じ形式のデータであれば、両者を容易に比較することができ、回答音声の識別処理を効率よく行うことができる。そのため、本発明では、回答音声を回答語句特定情報と同じデータ形式に変換してから、回答音声の識別処理を行うようにしてもよい。
【0012】
(2)この情報処理システムにおいて、
質問生成手段は、
前記所定のアルゴリズムに従って質問を生成するための質問生成プログラムを実行することにより質問を生成してもよい。
【0013】
(3)この情報処理システムにおいて、
前記質問生成プログラムの初期情報を設定する初期情報設定手段を含んでいてもよい。
【0014】
初期情報設定手段は、常に一定の初期情報を設定してもよい。あるいは、初期情報設定手段は、初期情報として、所定の規則に従って、又は、ランダムに変化する値を設定してもよい。初期情報設定手段は、外部からの情報に従って初期情報を設定してもよく、内部に設定されたアルゴリズムに従って初期情報を設定してもよい。
【0015】
(4)この情報処理システムにおいて、
前記認証データは数値データであり、
前記質問生成手段は、
前記認証データを含む検索範囲を複数の連続した数値範囲に分割し、前記認証データが属する前記数値範囲を特定するための質問を生成する処理と、
特定された前記数値範囲を新たな検索範囲とした新たな質問を生成する処理とを、
前記検索範囲が所定の条件を満たすまで繰り返してもよい。
【0016】
(5)この情報処理システムにおいて、
前記初期情報設定手段は、
前記検索範囲の初期情報を設定してもよい。
【0017】
(6)この情報処理システムにおいて、
前記認証データに基づいて、前記ユーザの認証を行う認証手段をさらに含んでいてもよい。
【0018】
(7)この情報処理システムにおいて、
ユーザ端末と、
ホストコンピュータとを含み、
前記ユーザ端末は、少なくとも前記回答識別手段として機能し、
前記ホストコンピュータは、少なくとも前記認証手段として機能してもよい。
【0019】
なお、この情報処理システムでは、質問生成手段、回答語句特定情報記憶部、認証データ特定手段の各機能は、ユーザ端末及びホストコンピュータのいずれで実現されてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を適用した実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。また、本発明は、以下の内容を自由に組み合わせたものを含むものとする。
【0021】
図1〜図5は、本発明を適用した実施の形態に係る情報処理システムについて説明するための図である。この情報処理システム10は、ユーザの音声情報に基づいて、ユーザを認証するための認証データ100(例えばIDや暗証番号等)を特定(生成)する情報処理システムである。なお、本実施の形態の情報処理システムは、不特定のユーザを対象とする情報処理システムであってもよい。
【0022】
1.本実施の形態に係る情報処理システム10の機能及び構成
(1)情報処理システム10の機能及び構成
はじめに、図1を参照して、情報処理システム10の機能及び構成について説明する。なお、図1は、情報処理システム10の機能ブロック図である。
【0023】
本実施の形態に係る情報処理システム10は、質問生成部20を含む。質問生成部20は、認証データ100を特定するための質問120を生成する。質問生成部20は、認証データ100とは異なる語句である複数の回答語句のいずれかを選択して回答させる形式の質問を生成する。すなわち、質問生成部20で生成される質問120は、回答が、予め設定された複数の回答語句のいずれかとなる質問であり、当該複数の回答語句は認証データ100と異なる語句である。
【0024】
本実施の形態では、質問生成部20は、所定のアルゴリズムに従って質問120を生成する。質問生成部20は、所定のアルゴリズムに従って質問を生成するための質問生成プログラムを実行することによって、質問120を生成してもよい。
【0025】
本実施の形態に係る情報処理システム10は、質問生成プログラムの初期情報を設定する初期情報設定部25を含んでいてもよい。ここで、質問生成プログラムの初期情報とは、質問120に現れるパラメータの初期値を設定するための情報であってもよい。初期情報設定部25は、常に一定の初期情報を設定するように構成されていてもよい。あるいは、初期情報設定部25は、初期情報として、所定の規則に従って、又は、ランダムに変化する情報を設定するように構成されていてもよい。このとき、初期情報設定部25は、外部からの信号に基づいて初期情報が変化するように構成されていてもよく、内部に設定されたアルゴリズム(プログラム)に基づいて初期情報が変化するように構成されていてもよい。
【0026】
本実施の形態に係る情報処理システム10は、質問生成部20で生成された質問120を音声データに変換する音声データ生成部22を含んでいてもよい。この場合、質問生成部20で生成された質問(質問情報)は、音声データ生成部22で音声データに変換され、当該音声データに基づいて、発声装置が質問音声を出力する。
【0027】
本実施の形態に係る情報処理システム10は、質問生成部20で生成された質問120を表示データに変換する表示データ生成部26を含んでいてもよい。この場合、質問生成部20で生成された質問(質問情報)は、表示データ生成部26で表示データに変換され、該表示データに基づいて、表示装置に質問が表示される。
【0028】
なお、本実施の形態に係る情報処理システム10は、音声データ生成部22と表示データ生成部26のいずれか一方のみを備えていてもよく、双方を備えていてもよい。
【0029】
本実施の形態に係る情報処理システム10は、回答語句特定情報記憶部30を含む。回答語句特定情報記憶部30には、複数の回答語句に対応する回答語句特定情報130が記憶されている。情報処理システム10は、この回答語句特定情報130に基づいて、ユーザの回答の識別処理を行う。
【0030】
なお、回答語句特定情報130のデータ形式は、特に限られるものではない。回答語句特定情報130は、例えば、音声(回答語句に対応する音声)の波形情報であってもよい。詳しくは、回答語句特定情報130は、音声の強度と時間との相関関係を示す波形情報であってもよい。言い換えると、回答語句特定情報130は、音声の強度の経時変化を示す波形情報であってもよい。あるいは、回答語句特定情報130は、音声の波形情報を解析処理(例えばフーリエ解析処理)して得られるいずれかの情報であってもよい。ただし、回答語句特定情報130は、テキスト情報であってもよい。
【0031】
回答語句特定情報記憶部30は、既に公知になっているいずれかの記憶装置を利用して実現してもよい。回答語句特定情報記憶部30は、DRAM、SRAM等の書き換え可能なメモリで構成してもよい。あるいは、回答語句特定情報記憶部30は、書き換え不可能なメモリ(ROM等)で構成してもよい。
【0032】
本実施の形態に係る情報処理システム10は、回答識別部40を含む。回答識別部40は、質問120に対するユーザの回答音声と、回答語句特定情報130とに基づいてユーザの回答を識別し、回答識別情報140を生成する。なお、ユーザの回答音声は、図示しない集音器(マイク)によって取得することができる。
【0033】
本実施の形態では、回答識別部40は、ユーザの回答音声を電気的な信号に変換(例えばAD変換)し、回答情報を生成する回答情報生成部を含んでいてもよい。回答情報生成部で生成される回答情報は、回答語句特定情報130と対比可能な形式のデータ(例えば、回答語句特定情報130と同じ形式のデータ)であってもよい。
【0034】
そして、本実施の形態では、回答識別部40は、回答情報を回答語句特定情報130と対比することによって、ユーザの回答を識別(認識)してもよい。詳しくは、回答情報(ユーザの回答)を、回答語句特定情報記憶部30に格納された複数の情報(回答語句特定情報130)のそれぞれと比較して類似度を算出し、算出された類似度を対比することによって、回答情報に最も類似した回答語句特定情報130を選択し、選択された回答語句特定情報130をユーザの回答と識別してもよい。そして、回答識別部40は、選択された回答語句特定情報を示すテキストデータ(回答識別情報140)を生成してもよい。
【0035】
先に説明したように、本実施の形態では、質問生成部20で、回答が複数の回答語句のいずれかになるように質問を生成する。すなわち、本実施の形態では、識別しなければならない語句が予め明らかになっている。そのため、回答語句特定情報130として用意すべき情報を限定することができ、その情報量を小さくすることができる。また、回答語句の認識処理に必要な演算処理の負担を小さくすることができる。
【0036】
本実施の形態に係る情報処理システム10は、認証データ特定部50を含む。認証データ特定部50は、少なくとも回答識別情報140に基づいて、認証データ100を特定する。認証データ特定部50は、質問120(質問120に現れるパラメータ)、及び、回答識別情報140に基づいて、認証データ100を特定してもよい。
【0037】
本実施の形態に係る情報処理システム10は、認証処理部70をさらに含んでいてもよい。認証処理部70は、認証データ特定部50で特定された認証データ100に基づいて、ユーザを認証する処理を行う。認証処理部70は、例えば、生成された認証データ100が予め登録された登録データと一致していることを確認することによって、ユーザの認証を行ってもよい。
【0038】
(2)本実施の形態に係る情報処理システムを実現するための装置構成について
以下、上述した情報処理システム10を実現するための具体的な装置構成の一例を説明する。図2は、情報処理システム10の装置構成を説明するためのブロック図である。
【0039】
情報処理システム10は、図2に示すように、ユーザ端末2とホストコンピュータ3とを含む構成をなしていてもよい。ここで、ユーザ端末2は、少なくとも回答識別部40及び回答語句特定情報記憶部30を含んでいてもよい。また、ホストコンピュータ3は、少なくとも認証処理部70を含んでいてもよい。ただし、本発明はこれに限られるものではなく、情報処理システム10をすべてユーザ端末で実現してもよい。
【0040】
ユーザ端末2は、CPU(中央制御装置)210を含む。CPU210は、質問生成処理、回答識別処理、ユーザ端末2とホストコンピュータ3との通信等の制御を行う。例えば、CPU210とメモリ220とによって、質問生成部20、及び、回答識別部40、回答語句特定情報記憶部30を実現してもよい。また、通信処理部230を介して、ユーザ端末2とホストコンピュータ3との通信を制御してもよい。
【0041】
なお、先に説明したとおり、本実施の形態に係る情報処理システム10によると、回答語句特定情報130の情報量を小さくすることができる。そのため、ユーザ端末2のメモリ220として、容量の小さなメモリを利用することが可能になる。また、回答語句が予め設定されているため、回答語句の特定に要する演算量が小さくて済む。そのため、低速のCPUを利用した場合であっても、高い処理速度を実現することができる。
【0042】
そして、ホストコンピュータ3は、認証処理部70を含んでいてもよい。すなわち、ホストコンピュータ3は、通信制御部230を介してユーザ端末2と通信を行い、ユーザ端末2から認証データ100を取得し、ユーザを認証する処理を行ってもよい。
【0043】
なお、質問生成部20及び認証データ特定部50は、ユーザ端末2及びホストコンピュータ3のいずれで実現してもよい。これらをホストコンピュータ3で実現すれば、ユーザ端末2の処理負担を小さくすることができる。
【0044】
2.本実施の形態に係る情報処理システム10の情報処理手順
(1)情報処理手順
次に、本実施の形態に係る情報処理システム10の情報処理手順について、図3を参照して説明する。図3は、情報処理システム10の情報処理手順を示すフローチャート図である。
【0045】
はじめに、質問生成プログラムの初期情報を設定する(ステップS12)。なお、質問生成プログラムとは、所定のアルゴリズムに従って質問を生成するためのプログラムである。また、質問生成プログラムの初期情報とは、質問に現れるパラメータの初期値を設定するための情報であってもよい。なお、質問生成プログラムの初期情報は、初期情報設定部25によって設定してもよい。
【0046】
そして、質問生成プログラム(質問生成プログラム及びその初期情報)に基づいて質問生成部20で質問120を生成し(ステップS14)、質問120をユーザに向けて出力する(ステップS16)。質問120は、ユーザが受信可能な媒体を介して出力する。質問120は、音声によって出力してもよく、表示装置に表示することによって出力してもよい。
【0047】
次に、質問120に対するユーザの回答情報を取得し(ステップS18)、ユーザの回答を識別して回答識別情報140を生成する(ステップS20)。
【0048】
そして、認証データ100を特定することが可能か否かを判定する(ステップS22)。例えば、質問120及び回答識別情報140に基づいて、認証データ100を特定することの可否を判定してもよい。
【0049】
認証データ100を特定することが可能な条件を満たしている場合(ステップS22においてYesの場合)、認証データ100を特定し(ステップS24)、認証処理(ステップS26)を行う。
【0050】
認証データ100を特定することが可能な条件を満たしていない場合(ステップS22においてNoの場合)、質問生成パラメータを変更する(ステップS28)。なお、質問生成パラメータとは、質問に現れるパラメータの値を決定するための情報である。すなわち、質問生成パラメータが変化すると、パラメータの値が異なる質問が生成される。そして、新たな質問生成パラメータに基づいて、新たな質問120を生成する(ステップS14)。
【0051】
(2)具体的な質問内容と、認証データ特定処理の一例
以下、本発明に適用可能な質問内容と、これを利用した認証データ特定処理の一例について説明する。ここでは、数値データである認証データ100を、二分探索法(二分法)を利用して特定する手順について説明する。具体的には、質問生成部20において、認証データ100を含む検索範囲を2以上の複数の連続した数値範囲に分割し、認証データ100が属する数値範囲を特定するための質問を生成するステップと、特定された数値範囲を新たな検索範囲とする新たな質問を生成するステップとを、検索範囲が所定の条件(認証データ100を特定することが可能な条件)を満たすまで繰り返す。
【0052】
図4は、認証データ特定処理手順の具体例を示すフローチャート図である。
【0053】
はじめに、検索区間(検索範囲)の初期値を設定する(ステップS30)。検索区間の初期値は、当該検索区間内に認証データ100が含まれるように設定する。本ステップでは、検索区間のU−lim(上限値)及びL−lim(下限値)の初期値を設定してもよい。なお、本ステップでは、検索区間の上限値を認証データ100よりも大きい値に、下限値を認証データ100よりも小さい値に、それぞれ設定する。U−lim(上限値)及びL−lim(下限値)の初期値は、初期情報設定部25によって設定してもよい。初期情報設定部25は、U−lim(上限値)及びL−lim(下限値)の初期値が常に一定の値となるように構成されていてもよく、これらの初期値を任意に(ランダムに)変えることができるように構成されていてもよい。なお、初期情報設定部25は、U−lim(上限値)及びL−lim(下限値)の初期値を、隣り合った値とならないように、かつ、同じ値とならないように設定する。
【0054】
そして、U−limとL−limとを比較して、両者が隣り合った値、又は、同じ値であるか否かを判断する(ステップS32)。
【0055】
U−lim及びL−limが隣り合った値ではなく、かつ、両者が同じ値でない場合(ステップS32でNoの場合)、基準値を設定する(ステップS34)。当該基準値は、U−limとL−limとの間の数とする。基準値は、検索区間(U−limとL−limとによって区画された区間)を二分した数値であってもよい。あるいは、基準値は、検索区間のいずれかの値を、乱数を利用して選択して決定してもよい。
【0056】
そして、認証データ100と基準値との大小関係を明らかにする(ステップS36)。例えば、ユーザに対して認証データ100と基準値との大小関係を問い合わせ、ユーザの回答を識別することによって、認証データ100と基準値との大小関係を明らかにしてもよい。
【0057】
詳しくは、認証データ100と基準値との大小関係を問い合わせる質問を生成し(ステップS14)、ユーザへの問いかける(ステップS16)。すなわち、基準値は、パラメータとして質問に現れる。そして、この質問に対するユーザの回答情報を識別処理(ステップS20)することによって、認証データ100と基準値との大小関係を明らかにすることができる。
【0058】
そして、認証データ100が基準値よりも小さい場合、基準値をU−lim(上限値)に変更して(ステップS38)、ステップS32以降の手順を繰り返す。
【0059】
認証データ100が基準値よりも大きい場合には、基準値をL−lim(下限値)に変更して(ステップS40)、ステップS32以降の手順を繰り返す。
【0060】
そして、U−lim及びL−limが隣り合った値であるか、又は、同じ値である場合(ステップS32でYesの場合)、認証データ100を特定する処理を行う(ステップS42〜ステップS46)。
【0061】
例えば、ユーザに対し、認証データ100がL−limであるか否かを問い合わせる(ステップS42)。これに対するユーザの回答がYesの場合、L−limの値を認証データ100と特定する(ステップS44)。逆に、ユーザの回答がNoの場合、U−limの値を認証データ100と特定する(ステップS46)。
【0062】
以上の手順によって、認証データ100を特定してもよい。この方法で認証データ100を特定する場合、質問に対するユーザの回答は、はい/いいえ、大きい/小さいなどの、直接的には認証データ100と無関係な語句とすることができる。そのため、ユーザの回答が第三者に聞かれた場合であっても、質問内容が第三者に明らかにならない限り、当該第三者に認証データ100を知られることを防止することができる。
【0063】
また、この方法によると、回答を「はい/いいえ・大きい/小さい」との語句に限定することができる。そのため、回答語句特定情報記憶部30には、回答語句特定情報130として、「はい/いいえ・大きい/小さい」との音声を特定(識別)するための情報(波形情報又はテキスト情報)を記憶しておけば足る。そのため、回答語句を特定するために用意する回答語句特定情報の情報量を小さくすることができる。
【0064】
図5には、認証データ100を二分探索法(二分法)を利用して特定する手順に適用可能なプログラムの一例を示す。図5の下線部4を「定数2」とすれば一般的な二分検索となるが、図5のように乱数を導入することで、検索系列が一意に決定されることを防止することができる。また、L−lim,U−limに設定される初期値も毎回異なる値に設定することもでき、これによっても検索系列が一意に決定されることを防止することができる。この2つの方法を組み合わせて用いることにより、認証データ100が第三者に知られることを防止することができる。
【0065】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0066】
以下、図6及び図7を参照して、認証データを特定する手順の具体的な変形例について説明する。なお、図6は本変形例に係る認証データ特定処理手順のフローチャート図であり、図7は対照テーブルの一例を示す図である。
【0067】
はじめに、認証データ100と回答語句との対照テーブル300(図7参照)を用意し(ステップS50)、認証データ100を回答語句によって回答するように問い合わせる質問を生成し出力する(ステップS52)。
【0068】
次に、回答情報を取得し(ステップS54)、当該回答情報に基づいて回答識別処理を行って回答識別情報を生成し(ステップS56)、当該回答識別情報及び対照テーブル300に基づいて、認証データ100を特定する(ステップS58)。
【0069】
図7には、対照テーブル300の一例を示す。この例では、対照テーブル300は、認証データ100(数値データ)を特定するための語句である数字の0〜9が、回答語句である動物に割り当てられている。例えば、「うし・とら・うさぎ・たつ」との回答音声に基づいて回答を識別し(ステップS56)、対照テーブル300に基づいて、「1・2・3・4」との認証データを特定する(ステップS58)。
【0070】
以上の手順によって、認証データ100を特定してもよい。ここで利用される対照テーブル300は、回答語句が、認証データ100と異なる語句となるように設定される。そのため、回答音声を聞いた第三者が、当該回答音声から認証データ100を認識することを防止することができる。特に、質問を生成するたびに回答語句と数字との対応関係を変更することで(対照テーブルを変更することで)、さらに安全性の高い情報処理システムを提供することができる。
【0071】
なお、対照テーブル300では回答語句を動物としているが、対照テーブルはこれに限られるものではない。例えば、回答語句を、ひらがな、アルファベット、ギリシャ記号等の一文字、あるいは、文字列としてもよい。
【0072】
そして、回答語句特定情報記憶部30には、回答語句特定情報として、これらの動物や、文字(文字列)を識別するための情報を記憶させておけば足ることから、回答語句特定情報の情報量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】情報処理システムの機能ブロック図。
【図2】情報処理システムの構成の一例を示すブロック図。
【図3】情報処理システムの情報処理手順を示すフローチャート図。
【図4】認証データの特定手順を示すフローチャート図。
【図5】認証データを特定する手順のプログラムの一例。
【図6】変形例に係る認証データの特定手順を示すフローチャート図。
【図7】対照テーブルの一例。
【符号の説明】
【0074】
2…ユーザ端末、 3…ホストコンピュータ、 10…情報処理システム、 20…質問生成部、 22…音声データ生成部、 25…初期情報設定部、 26…表示データ生成部、 30…回答語句特定情報記憶部、 40…回答識別部、 50…認証データ特定部、 70…認証処理部、 100…認証データ、 120…質問、 130…回答語句特定情報、 140…回答識別情報、 210…CPU、 220…メモリ、 230…通信制御部、 300…対照テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの音声情報に基づいて前記ユーザを認証するための認証データを生成する情報処理システムであって、
所定のアルゴリズムに従って、前記認証データとは異なる語句である複数の回答語句のいずれかを選択して回答させる形式の質問を生成する質問生成手段と、
前記複数の回答語句に対応する回答語句特定情報が記憶された回答語句特定情報記憶部と、
前記質問に対する前記ユーザの回答音声と、前記回答語句特定情報とに基づいて前記ユーザの回答を識別し、回答識別情報を生成する回答識別手段と、
前記回答識別情報に基づいて、前記認証データを特定する処理を行う認証データ特定手段と、
を含む情報処理システム。
【請求項2】
請求項1記載の情報処理システムにおいて、
質問生成手段は、
前記所定のアルゴリズムに従って質問を生成するための質問生成プログラムを実行することにより前記質問を生成する情報処理システム。
【請求項3】
請求項2記載の情報処理システムにおいて、
前記質問生成プログラムの初期情報を設定する初期情報設定手段を含む情報処理システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の情報処理システムにおいて、
前記認証データは数値データであり、
前記質問生成手段は、
前記認証データを含む検索範囲を複数の連続した数値範囲に分割し、前記認証データが属する前記数値範囲を特定するための質問を生成する処理と、
特定された前記数値範囲を新たな検索範囲とした新たな質問を生成する処理とを、
前記検索範囲が所定の条件を満たすまで繰り返す情報処理システム。
【請求項5】
請求項3を引用する請求項4に記載の情報処理システムにおいて、
前記初期情報設定手段は、
前記検索範囲の初期情報を設定する情報処理システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の情報処理システムにおいて、
前記認証データに基づいて、前記ユーザの認証を行う認証手段をさらに含む情報処理システム。
【請求項7】
請求項6記載の情報処理システムにおいて、
ユーザ端末と、
ホストコンピュータとを含み、
前記ユーザ端末は前記回答識別手段として機能し、
前記ホストコンピュータは前記認証手段として機能する情報処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−59306(P2008−59306A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235809(P2006−235809)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】