説明

情報処理装置、その制御方法、および制御プログラム

【課題】省電力モードから通常電力モードに復帰する際、ネットワーク接続を断とすることなく、受信パケットの整合性を保つ。
【解決手段】コントローラ3はメモリを有しており、メモリには受信パケットを格納する第1および第2のバッファが存在する。コントローラは通常電力モードの際、受信パケットに応じた応答処理を行う。通常電力モードよりも電力供給を低減する省電力モードの際、LAN I/F8は受信パケットに応じた応答処理を行う。省電力モードから通常電力モードに復帰させる復帰要因があると、LAN I/Fは受信パケットを第1のバッファに格納して、復帰処理の際、受信パケットを第2のバッファに格納する切り替え処理を行い、第1のバッファに格納された受信パケットに対する応答処理が完了すると、コントローラは受信パケットを第1のバッファに格納する切り替え処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを介して受信情報を受信して、当該受信情報に対する応答処理を実行する情報処理装置、その制御方法、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理装置において、所謂省電力モードを備えたものが普及している。例えば、主制御部と副制御部とを有する情報処理装置であって、省電力モードでは、主制御部に対する電力供給を通常状態より低減(あるいは遮断)した状態にして、主制御部に対する電力供給を通常状態に戻すことなく、副制御部によってネットワーク応答を実行するようにしたものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−151537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1においては、省電力モードになると、副制御部に対するクロックの供給を最小限としている。ところが、クロック供給を低減してしまうと、副制御部は、ネットワークを介して受信した全ての受信パケット(受信データ又は受信情報)に対して応答することが困難となってしまう。
【0005】
このため、副制御部において対応困難な受信パケットを受信すると、主制御部に対する電力供給を、通常状態(通常電力モード)に復帰させて、その後、主制御部がネットワーク応答を行うようにしている。
【0006】
そして、主制御部が通常電力モードに復帰する際、副制御部では対応困難な受信パケットが副制御部から主制御部に渡される。これによって、パケット送信元がパケットを再送するのを待つことなく、主制御部は通常電力モードに復帰すると直ちに受信パケットに対する応答を行うことができる。
【0007】
この際、主制御部に渡した受信パケットを後続の受信パケットで上書きしないように、通常電力モードへの復帰が完了するまで、副制御部による受信バッファへの受信パケットの書き込みを停止する必要がある。このため、ネットワーク接続を一旦切断して、通常電力モードへの復帰が行われると、ネットワーク接続(リンク)を確立するようにしている。
【0008】
この結果、通常電力モードに復帰しても、再度リンクが確立されるまでの間、主制御部は一切ネットワーク通信を行うことができず、ネットワーク応答が遅延してしまという問題がある。
【0009】
従って、本発明の目的は、ネットワーク接続を切断することなく受信パケットの上書きを防ぎ、ネットワーク応答が遅延することのない情報処理装置、その制御方法、および制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明による情報処理装置は、ネットワークを介して受信情報を受信して、前記受信情報に対する応答処理を実行する情報処理装置であって、前記受信情報を格納する第1及び第2の記憶手段と、前記受信情報に対する応答処理を実行する制御手段と、前記制御手段が前記応答処理を実行できない省電力状態から前記制御手段が前記応答処理を実行可能な状態に移行させる要因となる前記受信情報を前記第1の記憶手段に格納した後、前記受信情報を記憶する記憶手段を前記第1の記憶手段から前記第2の記憶手段に切り替える第1の切り替え手段と、前記制御手段が前記第1の記憶手段に格納された前記受信情報に対する応答処理を実行した後、前記受信情報を格納する記憶手段を前記第2の記憶手段から前記第1の記憶手段に切り替える第2の切り替え手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ネットワーク接続を切断することなく受信パケットの上書きを防ぎ、しかもネットワーク応答が遅延することがないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態による情報処理装置の1つである画像形成装置の一例を示すブロック図である。
【図2】図1に示すコントローラの構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図1および図2に示すLAN I/Fの構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示すメモリに配置された受信ディスクリプタおよび受信バッファの一例を示す図である。
【図5】省電力モードから通常電力モードへの復帰処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明が適用された画像形成装置における、図1に示すメモリに配置された受信ディスクリプタおよび受信バッファの例を示す図である。
【図7】本発明が適用された画像処理装置における、省電力モードから通常電力モードへの復帰処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態による情報処理装置の一例について図面を参照して説明する。なお、ここでは、情報処理装置の1つである画像形成装置を例に挙げて説明するが、画像形成装置以外の情報処理装置においても、ネットワークに接続可能で、省電力モードと通常電力モードとの切替が可能なものであれば、同様にして適用することができる。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態による情報処理装置の1つである画像形成装置の一例を示すブロック図である。
【0015】
図1を参照して、画像形成装置1は、コントローラ(制御装置)3、スキャナ装置2、およびプリンタ装置4を有している。そして、コントローラ3には、走査部5およびハードディスク装置などの補助記憶装置6が接続されるとともに、FAX装置7およびネットワークインタフェース(LAN I/F)8(インタフェース部)が接続されている。
【0016】
図示の例では、LAN I/F8はLAN10を介してコンピュータ(PC)9(外部機器)に接続され、FAX装置7は電話回線に接続されている。なお、図1にはおいては、説明の便宜上PC9は一台のみ示されているが、実際には、複数のPC9がlAN10に接続されている。
【0017】
図示のように、スキャナ装置2は原稿給紙ユニット(DFユニット)21およびスキャナユニット22を有している。原稿給紙ユニット21は原稿束がセットされ、原稿給紙ユニット21からスキャナユニット22に原稿が送られる。スキャナユニット22は原稿を光学的に走査して、画像信号を得る。そして、この画像信号はスキャナユニット22からコントローラ3に送られ、コントローラ3は画像信号に対して所定の画像処理が行って、画像データを得る。
【0018】
プリンタ装置4はマーキングユニット41、給紙ユニット42、および排紙ユニット43を有している。画像形成(印刷)を行う際には、給紙ユニット42から記録紙がマーキングユニット41に送られる。マーキングユニット41は、コントローラ3の制御下で、画像データに応じて記録紙に画像を印刷する。そして、印刷後の記録紙は排紙ユニット43によって画像形成装置1の外部に排紙される。
【0019】
なお、操作部5は、ユーザがコントローラ3に各種入力を行うために用いられるとともに、コントローラ3から与えられる各種情報を表示する。また、補助記憶装置6には画像データおよびコントローラ3で実行される制御プログラム等が記憶される。図示の画像形成装置1は、PC9からLAN10を介して受信した画像データに応じた印刷を行う。
【0020】
図2は、図1に示すコントローラ3の構成の一例を示すブロック図である。
【0021】
図2を参照すると、コントローラ3は、メインボード200およびサブボード220を備えている。メインボード200は、所謂汎用的なCPUシステムである。
【0022】
メインボード200はCPU201を有しており、CPU201はメインボード全体の制御を司る。ブートROM202にはブートプログラムが格納され、メモリ203はCPU201によってワークメモリとして使用される。図示のように、CPU201には、バスコントローラ204、不揮発性メモリ205、ディスクコントローラ206、およびUSBコントローラ208が接続されている。なお、前述の操作部5およびLAN I/F8はCPU201に接続されている。
【0023】
バスコントローラ204は外部バスとのブリッジ機能を有しており、バスコントローラ204によってCPU201はサブボード220に接続される。ディスクコントローラ206には前述の補助記憶装置6が接続されるとともに、小容量のストレージ装置であるフラッシュディスク(SSD等)207が接続される。また、USBコントローラ208には必要に応じてUSBメモリ209が接続される。
【0024】
サブボード220は小さな汎用CPUシステムと画像処理ハードウェアとによって構成される。サブボード220はCPU221を有しており、CPU221はサブボード全体の制御を司る。メモリ223はCPU201によってワークメモリとして使用される。図示のように、CPU201には、バスコントローラ224、不揮発性メモリ225、イメージプロセッサ227接続されるとともに、前述のFAX装置7が接続される。
【0025】
バスコントローラ224は外部バスとのブリッジ機能を有しており、バスコントローラ224によってCPU221はメインボード200に接続される。画像処理を行うためのイメージプロセッサ227はデバイスコントローラ206を介して前述のプリンタ装置4に接続されるとともに、デバイスコントローラ228を介してスキャナ装置2に接続されている。
【0026】
なお、図2に示す例は簡略化されており、例えば、CPU201および221等にはチップセット、バスブリッジ、およびクロックジェネレータ等のCPU周辺ハードウェアが含まれているが、本実施の形態の説明の便宜上省略されている。
【0027】
ここで、記録紙に画像複写する際のコントローラ3の動作について説明する。
【0028】
いま、ユーザが操作部5から画像複写を指示すると、CPU201はバスコントローラ204および224を介してCPU221に画像複写指示を送る。これによって、CPU221は、イメージプロセッサ227およびデバイスコントローラ228を介してスキャナ装置2に対して画像読み取り命令を与える。
【0029】
画像読み取り命令に応じて、スキャナ装置2は原稿を光学的にスキャンし、スキャンによって得られた画像信号を、デバイスコントローラ228を介してイメージプロセッサ227に入力する。そして、イメージプロセッサ227は所定の画像処理を行って画像信号を画像データとし、CPU221を介してメモリ223に画像データをDMA転送する。これによって、メモリ223に画像データが一時的に保存される。
【0030】
CPU201は、メモリ223に所定量の画像データが記録されるか又は全ての画像データが記録されたことを確認すると、CPU221に対して画像出力指示を送る。これによって、CPU221はイメージプロセッサ227およびデバイスコントローラ226を介してプリンタ装置4に画像出力命令を送る。
【0031】
この際、CPU221はイメージプロセッサ227に対してメモリ223上の画像データの位置を教示する。そして、CPU221はプリンタ装置4から送られる同期信号に従ってメモリ223上の画像データをイメージプロセッサ227およびデバイスコントローラ226を介してプリンタ装置4に送信する。これによって、プリンタ装置4は、画像データに応じて画像を記録紙に印刷する。
【0032】
なお、複数部の印刷を行う場合には、CPU201はメモリ223上の画像データを補助記憶装置6に保存する。そして、2部目以降の印刷においては、CPU201は補助記憶装置6から画像データを読み出して、プリンタ装置4に当該画像データを送る。
【0033】
ところで、図1に示す画像形成装置1は、省電力モードおよび通常電力モードを有し、省電力モードと通常電力モードとが切り替えられる。通常電力モードにおいては、少なくともコントローラ3およびLAN I/F8の双方に電力が供給される。通常電力モードは、コントローラ3が受信パケットに対する応答処理を実行可能な状態である。一方、省電力モードにおいては、コントローラ3に対する電力供給は少なくとも通常電力モードよりも低減される。よって、画像処理装置100の消費電力は低減する。つまり、省電力モードは、通常電力モードよりも消費電力を低減するモードである。省電力モードは、コントローラ3が受信パケットに対する応答処理を実行できない省電力状態である。
【0034】
図3は、図1および図2に示すLAN I/F8の構成を示すブロック図である。
【0035】
図3を参照すると、LAN I/F8は、I/F部801を有しており、このI/F部801によって、LAN I/F208はコントローラ3(つまり、CPU201)に接続される。通常電力モードにおいて、LAN10から受信パケット(受信情報)を受信する際には、LAN10から物理層部(PHY)810を介してMAC(メディアアクセス制御部又はネットワークパケット受信部)809が受信パケット(受信情報)を受ける。MAC809は、受信パケットを受信先入れ先出しメモリ(Rx FIFO)804にセットする。そして、Rx FIFO804にセットされた受信パケットは、I/F部801を介して、コントローラ3に送られる。
【0036】
通常電力モードにおいて、送信パケット又は応答パケットをLAN10に送信する際には、コントローラ3からI/F部801を介して送信先入れ先出しメモリ(Tx FIFO)805に送信パケット又は応答パケットがセットされる。MAC309は送信パケット又は応答パケットをTx FIFO805にからPHY810に渡して、当該送信パケット又は応答パケットをLAN10に送出する。
【0037】
省電力モードの場合には、LAN10からPHY810を介してMAC809が受信パケット(受信情報)を受ける。MAC809は、当該受信パケットをRx FIFO806(第3の記憶手段)にセットする。そして、マイクロプロセッサ808は省電力モードを維持した状態で当該受信パケットに対する応答が可能であるか否かについて判断する。
【0038】
省電力モードを維持した状態で応答可能であると判断すると、マイクロプロセッサ808は受信パケットに対応する応答パケット(応答情報)を生成し、当該応答パケットをTx FIFO807にセットする。Tx FIFO807にセットされた応答パケット(応答情報)は、MAC809によってPHY810を介してLAN10に送出される。
【0039】
一方、省電力モードを維持した状態で応答不可能であると判断すると、マイクロプロセッサ808は、後述するように、省電力モードから通常電力モードへの変更を行う。これによって、コントローラ3のハードウェアリソースによって受信パケットの応答が行われる。
【0040】
フラッシュメモリ(Flash)802は不揮発メモリであり、I/F部801を介してコントローラ3と情報の送受が行われる。コントローラ3は、マイクロプロセッサ808に情報を通知するために、その情報をFlash802に格納する。レジスタ群(Registers)803は、LAN I/F8の制御の際のステータスを反映するためのレジスタ群である。マイクロプロセッサ808は、MAC809の設定を変更するために、レジスタ群803に記憶されている値を変更する。
【0041】
ここで、本実施の形態による画像処理装置1における省電力モードから通常電力モードへの復帰処理の理解を容易にするため、省電力モードから通常電力モードへの復帰処理の一例を説明する。
【0042】
図4は、図1に示すメモリ203に配置された受信ディスクリプタおよび受信バッファの一例を示す図である。
【0043】
いま、メモリ203において、受信ディスクリプタ(受信記述子)A300がアドレス”0x1000_0000”、受信ディスクリプタB301がアドレス”0x1000_0004”、受信ディスクリプタC302がアドレス”0x1000_0008”にそれぞれマッピングされているものとする。
【0044】
図2には示されていないが、メインボード200には複数の受信バッファが備えられている。例えば、これら受信バッファはメモリ203上に配置される。図4において、受信ディスクリプタA300には、受信バッファA310に対するアドレス”0x1000_1000”が格納されている。また、受信ディスクリプタB301には、受信バッファB311に対するアドレス”0x1000_1800”が格納されており、受信ディスクリプタC302には、受信バッファC312に対するアドレス”0x1000_2000”が格納されているものとする。
【0045】
図5は、省電力モードから通常電力モードへの復帰処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0046】
LAN I/F8が応答不能な受信パケット(ネットワークパケットともいう:受信情報)をLAN10から受信すると、マイクロプロセッサ808は、省電力モードから通常電力モードへの復帰を指示する信号を電力制御部(図1において不図示)に送信する(ステップS401)。電力制御部はその信号に従って、コントローラ3が通常電力モードへ復帰するよう、コントローラ3への電力供給を制御する。そして、マイクロプロセッサ808は、LAN10とのリンクを一旦切断する(ステップS402)。その後、マイクロプロセッサ808は、I/F部801を介して受信バッファA310、受信バッファB311、および受信バッファC312のいずれかに、通常電力モードへ復帰する要因となった受信パケット(以下、復帰要因パケットと呼ぶ)を格納する(ステップS403)。続いて、マイクロプロセッサ808は、LAN10とのリンクを確立するためのリンク確立処理を行う(ステップS404)。
【0047】
次に、CPU201は、LAN10とのリンクが確立されたか否かを確認する(ステップS405)。リンクが確立しないと(ステップS405において、NO)、CPU201は再度、LAN10とのリンクが確立された否かを確認する。
【0048】
一方、リンクが確立すると(ステップS405において、YES)、CPU201はメモリ203上の受信ディスクリプタを参照して、受信バッファA310、受信バッファB311、および受信バッファC312のメモリ203上の位置を確認し、受信バッファA310、受信バッファB311、および受信バッファC312のいずれかに格納された復帰要因パケットに対する応答パケットを生成して、この応答パケットをLAN I/F8を介してLAN10に送出する(ステップS406)。そして、CPU201は通常のネットワーク処理を開始する(ステップS407)。これによって、通常電力モードへの復帰が完了する。
【0049】
なお、復帰処理の際に、復帰要因パケットを受信バッファA310、受信バッファB311、および受信バッファC312のいずれかに格納することによって、CPU201は通常電力モードに復帰後、復帰要因パケットに対する応答を素早く行うことができる。つまり、受信バッファA310、受信バッファB311、および受信バッファC312のいずれかに復帰要因パケットを一旦格納しないと、復帰処理の際、CPU201は復帰要因パケットが存在したか否か分からない。仮に復帰要因パケットを受信バッファに格納しないと、パケット送信元が復帰要因パケットを再度送信した場合にのみ、CPU201は復帰要因パケットに対する応答を行う。このことは、CPU201における応答処理がパケット送信元のリトライの間隔に依存することになり、パケット送信元がリトライを行わなければ、応答自体が行われないことになる。
【0050】
上述のステップS402において、リンク切断処理を行わないと、復帰処理の過程で受信バッファA310、受信バッファ311、および受信バッファC312に、復帰要因パケット以外の別の受信パケットが格納されることがある。この場合、受信バッファA310、受信バッファB311、および受信バッファC312のいずれかに格納された復帰要因パケットに別の受信パケットが上書きされてしまう可能性があり、CPU201は復帰要因パケットに対する応答処理を実行できなくなる。このため、ステップS402において、リンク切断処理を行う必要がある。
【0051】
ところが、図5の通常電力モードへの復帰処理においては、リンク切断処理とリンク確立処理を行わなければならず、その分、復帰要因パケットに対する応答が遅延することになる。
【0052】
図6は、本発明が適用された画像形成装置における、図1に示すメモリ203に配置された受信ディスクリプタおよび受信バッファの例を示す図である。
【0053】
図6に示す例では、図4で説明した受信ディスクリプタおよび受信バッファに加えて、受信ディスクリプタD320、受信ディスクリプタE321、および受信ディスクリプタF322と、受信バッファD330、受信バッファE331、および受信バッファF332がメモリ203に配置される。
【0054】
図6において、受信ディスクリプタD320はアドレス”0x2000_0000”に、受信ディスクリプタE321はアドレス”0x2000_0004”に、そして、受信ディスクリプタF322はアドレス”0x1000_0008”にそれぞれマッピングされているものとする。
【0055】
また、受信ディスクリプタD320には、受信バッファD330に対するアドレス”0x2000_1000”が格納されている。また、受信ディスクリプタE321には、受信バッファB331に対するアドレス”0x2000_1800”が格納されており、受信ディスクリプタF322には、受信バッファF332に対するアドレス”0x2000_2000”が格納されているものとする。
【0056】
図6に示す例では、受信バッファA310、受信バッファB311、および受信バッファC312が、受信情報を格納する第1の記憶手段(又は第1のメモリ)として用いられ、受信バッファD330、受信バッファE331、および受信バッファF332が、受信情報を格納する第2の記憶手段(又は第2のメモリ)として用いられる。なお、この例では、3つの受信バッファを1組として配置する場合について説明するが、受信バッファは各組に少なくとも1つあればよい。
【0057】
各受信ディスクリプタは各受信バッファに対応付けられていて、各受信バッファが配置されているメモリ上のアドレスを格納する第1のアドレス記憶手段又は第2のアドレス記憶手段として機能する。
【0058】
ここで、受信ディスクリプタD320、受信ディスクリプタE321、および受信ディスクリプタF322と、受信バッファD330、受信バッファE331、および受信バッファF332とは、後述のように、省電力モードから通常電力モードに復帰する際にのみ使用される。
【0059】
一方、受信ディスクリプタA300、受信ディスクリプタB301、および受信ディスクリプタC302と、受信バッファA310、受信バッファB311、および受信バッファC312とは、通常電力モードの際に使用される。
【0060】
図7は、本発明が適用された画像形成装置における、省電力モードから通常電力モードへの復帰処理を説明するためのフローチャートである。
【0061】
LAN I/F8が応答不能な受信パケット(つまり、復帰要因パケット)をLAN10から受信すると、マイクロプロセッサ808は省電力モードから通常電力モードへの復帰を指示する信号を電力制御部に送信する(ステップS501)。これによって、コントローラ3の状態は省電力モードから通常電力モードに移行する。そして、マイクロプロセッサ808は、受信バッファA310、受信バッファB311、および受信バッファC312のいずれか(つまり、第1の記憶手段)に、復帰要因パケットを格納する(ステップS502)。この際、マイクロプロセッサ808は、復帰要因パケットを格納した受信バッファに対応する受信ディスクリプタに当該受信バッファのアドレスを格納する。
【0062】
なお、復帰要因パケットが格納されていない受信バッファに対応する受信ディスクリプタにはアドレスは格納されない。
【0063】
その後、マイクロプロセッサ808は、MAC809の設定を変更して、使用する受信ディスクリプタを受信ディスクリプタD320、受信ディスクリプタE321、および受信ディスクリプタF322に切り替える処理を行う(ステップS503)。つまり、復帰処理の際には、受信バッファD330、受信バッファE331、および受信バッファF332(つまり、第2の記憶手段)のいずれかに受信パケットが書き込まれる(受信ディスクリプタの切り替えを行う)。つまり、MAC809は、受信バッファD330、受信バッファE331、および受信バッファF332のいずれかに、受信パケットを格納するようI/F部801を制御する。この際、MAC809は、受信パケットを格納した受信バッファに対応する受信ディスクリプタに当該受信バッファのアドレスを格納する。
【0064】
次に、復帰処理の際には、CPU201はメモリ203上の受信ディスクリプタを参照して、受信バッファA310、受信バッファB311、および受信バッファC312のメモリ203上の位置を確認し、受信バッファA310、受信バッファB311、および受信バッファC312のいずれかに格納された復帰要因パケットに対する応答パケット(応答情報)を生成して、この応答パケットをLAN I/F8を介してLAN10に送出する(ステップS504)。
【0065】
復帰要因パケットに対する応答が完了すると、CPU201は、使用する受信ディスクリプタを受信ディスクリプタA300、受信ディスクリプタB301、および受信ディスクリプタC302に切り替える処理を行う(ステップS505)。このとき、CPU201は、使用する受信ディスクリプタを受信ディスクリプタA300、受信ディスクリプタB301、および受信ディスクリプタC302に切り替えるよう、マイクロプロセッサ808に通知する。マイクロプロセッサ808は、MAC809の設定を変更して、使用する受信ディスクリプタを受信ディスクリプタA300、受信ディスクリプタB301、および受信ディスクリプタC302に切り替える処理を行う。これ以降は、受信バッファA310、受信バッファB311、および受信バッファC312のいずれかに受信パケットが書き込まれる。そして、CPU201は通常のネットワーク処理を開始する(ステップS506)。これによって、通常電力モードへの復帰が完了する。
【0066】
このようにして、省電力モードから通常電力モードへの切り替えを行う際、復帰要因パケットを通常電力モードで用いられる受信バッファに格納した後、復帰用に用いられる受信バッファに切り替える。さらに、復帰要因パケットに応答をした後、通常電力モードで用いられる受信バッファに切り替える。これによって、復帰途中で受信パケットを受信すれば、復帰用の受信バッファに受信パケットが格納されることになる。
【0067】
従って、復帰処理の過程で受信パケットを受信したとしても、当該受信パケットは受信バッファD330、受信バッファE331、および受信バッファF332のいずれかに格納されることになる。受信バッファD330、受信バッファE331、および受信バッファF332のいずれかに受信パケットが格納されていれば、CPU201はその受信パケットも処理する。
【0068】
この結果、受信バッファA310、受信バッファB311、および受信バッファC312のいずれかに格納された復帰要因パケットが失われることがない。よって、CPU201は受信バッファA310、受信バッファB311、および受信バッファC312に格納された復帰要因パケットに対する応答を直ちに行うことができる。
【0069】
さらに、リンク切断処理およびリンク確立処理を行う必要がないから、復帰要因パケットに対する応答が遅延することがない。
【0070】
以上のように、本実施の形態によれば、省電力モードから通常電力モードに復帰の際、リンク切断処理およびリンク確立処理を行うことなく、復帰要因パケットに対して確実に応答を行うことができ、しかも受信パケットが失われることがないからその整合性を保つこともできる。
【0071】
上述の説明から明らかなように、図2および図3において、CPU201が制御手段および第2の切り替え手段として機能する。また、マイクロプロセッサ308が第1の切り替え手段および格納制御手段として機能する。
【0072】
以上、本発明について実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【0073】
例えば、上記の実施の形態の機能を制御方法として、この制御方法を、情報処理装置に実行させるようにすればよい。また、上述の実施の形態の機能を有する制御プログラムを、情報処理装置が備えるコンピュータに実行させるようにしてもよい。
【0074】
この際、制御方法及び制御プログラムの各々は、少なくとも第1の制御ステップ、第2の制御ステップ、第1の切り替えステップ、および第2の切り替えステップを有することになる。なお、制御プログラムは、例えば、コンピュータに読み取り可能な記録媒体に記録される。
【0075】
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)をネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムコードを読み出して実行する処理である。この場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【符号の説明】
【0076】
2 スキャナ装置
3 コントローラ(制御装置)
4 プリンタ装置
8 LAN I/F(ネットワークインタフェース部)
201,221 CPU
203 メモリ
801 I/F部
808 マイクロプロセッサ
804〜807 FIFO
809 MAC(メディアアクセス制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して受信情報を受信して、前記受信情報に対する応答処理を実行する情報処理装置であって、
前記受信情報を格納する第1及び第2の記憶手段と、
前記受信情報に対する応答処理を実行する制御手段と、
前記制御手段が前記応答処理を実行できない省電力状態から前記制御手段が前記応答処理を実行可能な状態に移行させる要因となる前記受信情報を前記第1の記憶手段に格納した後、前記受信情報を記憶する記憶手段を前記第1の記憶手段から前記第2の記憶手段に切り替える第1の切り替え手段と、
前記制御手段が前記第1の記憶手段に格納された前記受信情報に対する応答処理を実行した後、前記受信情報を格納する記憶手段を前記第2の記憶手段から前記第1の記憶手段に切り替える第2の切り替え手段とを有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記第1の記憶手段に対応付けられた、メモリ上のアドレスを格納する第1のアドレス記憶手段と、
前記第2の記憶手段に対応付けられた、メモリ上のアドレスを格納する第2のアドレス記憶手段とを有し、
前記第1の記憶手段と前記第2の記憶手段は前記メモリに配置され、
前記第1の切り替え手段は、前記第2の記憶手段が配置された前記メモリ上のアドレスを前記第2のアドレス記憶手段に格納するよう制御し、
前記第2の切り替え手段は、前記第1の記憶手段が配置された前記メモリ上のアドレスを前記第1のアドレス記憶手段に格納するよう制御することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
ネットワークを介して前記受信情報を受信して、前記第1の記憶手段及び前記第2の記憶手段のいずれかに前記受信情報を格納するインタフェース部と、
前記インタフェース部と接続している制御部とを有し、
前記制御部は、前記制御手段とメモリを有し、
前記第1および前記第2の記憶手段の各々は受信バッファであって、前記受信バッファは前記メモリに存在することを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記インタフェース部は、前記省電力状態の際、前記受信情報を一旦格納する第3の記憶手段を備えていることを特徴とする請求項2記載の情報処理装置。
【請求項5】
ネットワークを介して受信情報を受信して、前記受信情報に対する応答処理を実行する情報処理装置であって、
前記受信情報を格納する第1及び第2の記憶手段と、
前記受信情報に対する応答処理を実行する制御手段と、
前記制御手段が前記応答処理を実行できない省電力状態から前記制御手段が前記応答処理を実行可能な状態に移行させる要因となる前記受信情報を前記第1の記憶手段に格納した後は、新たに受信した前記受信情報を前記第2の記憶手段に格納し、前記制御手段が前記第1の記憶手段に格納された前記受信情報に対する応答処理を実行したあとは、新たに受信した前記受信情報を前記第1の記憶手段に格納する格納制御手段とを有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
ネットワークを介して受信情報を受信して、前記受信情報に対する応答処理を実行する情報処理装置の制御方法であって、
前記受信情報に対する応答処理を実行する応答ステップと、
前記応答ステップを実行できない省電力状態から前記応答ステップを実行可能な状態に移行させる要因となる前記受信情報を第1のメモリに格納した後、前記受信情報を記憶するメモリを前記第1のメモリから第2のメモリに切り替える第1の切り替えステップと、
前記応答ステップで前記第1のメモリに格納された前記受信情報に対する応答処理を実行した後、前記受信情報を格納するメモリを前記第2のメモリから前記第1のメモリに切り替える第2の切り替えステップとを有することを特徴とする制御方法。
【請求項7】
ネットワークを介して受信情報を受信して、前記受信情報に対する応答処理を実行する情報処理装置で用いられる制御プログラムであって、
前記情報処理装置が備えるコンピュータに、
前記受信情報に対する応答処理を実行する応答ステップと、
前記コンピュータが前記応答ステップを実行できない省電力状態から前記コンピュータが前記応答ステップを実行可能な状態に移行させる要因となる前記受信情報を第1のメモリに格納した後、前記受信情報を格納するメモリを前記第1のメモリから前記第2のメモリに切り替える第1の切り替えステップと、
前記応答ステップで前記第1のメモリに格納された前記受信情報に対する応答処理を実行した後、前記受信情報を格納するメモリを前記第2のメモリから前記第1のメモリに切り替える第2の切り替えステップとを実行させることを特徴とする制御プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−155532(P2012−155532A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14042(P2011−14042)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】