説明

情報処理装置、及びモード切り替え方法

【課題】受信信号から抽出されるクロック成分を利用してデータ伝送する受信側からパワーセーブモードの解除を行えるようにすること。
【解決手段】直流成分を含まず、かつ、クロックの半周期毎に極性が反転する波形に第1データを符号化し、第2部分に送信する第1信号送信部、信号線に流れる電流量を検出する電流検出部、第1モードで第1データの信号を第2部分に送信させ、第2モードで第1データの信号送信を停止させ、第2モードで検出される電流量の変化に応じて第1モードに切り替える送信制御部を有する第1部分と第1データの信号の極性反転周期からクロックを検出するクロック検出部、そのクロックを用いて直流成分を含まない波形に第2データを符号化し、当該クロックに同期して送信する第2信号送信部、第2モードで電流量を変化させる負荷制御部を有する第2部分を備える情報処理装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、及びモード切り替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等に代表される携帯端末は、ユーザが操作する操作部分と、情報が表示される表示部分との接続部分に可動部材が用いられていることが多い。例えば、折り畳み式の携帯電話の開閉構造等が代表的なものである。さらに、最近の携帯電話は、通話機能やメール機能の他にも、映像の視聴機能や撮像機能等が搭載されており、ユーザの用途に応じて上記の接続部分が複雑に可動することが求められる。例えば、映像の視聴機能を利用する場合、ユーザは、表示部分を自身の側に向け、視聴に不要な操作部分を収納したいと考えるであろう。このように、携帯電話を通常の電話として利用する場合や、デジタルカメラとして利用する場合、或いは、テレビジョン受像機として利用する場合等において、その用途毎に表示部分の向きや位置を簡単に変更出来る構造が求められている。
【0003】
ところが、操作部分と表示部分との間の接続部分には、多数の信号線や電力線が配線されている。例えば、表示部分には、数十本の配線がパラレルに接続されている(図1を参照)。そのため、上記のように複雑な動きができる可動部材を接続部分に用いると、こうした配線の信頼性等が著しく低下してしまう。こうした理由から、接続部分の信号線を減らすため、パラレル伝送方式からシリアル伝送方式(図2を参照)に技術がシフトしてきている。もちろん、同様の理由による技術的なシフトは、携帯電話の世界に限らず、複雑な配線が求められる様々な電子機器の世界において生じている。なお、シリアル化する理由としては、上記の他、放射電磁雑音(EMI;Electro Magnetic Interference)を低減したいというものである。
【0004】
さて、上記のようなシリアル伝送方式においては、伝送データが所定の方式で符号化されてから伝送される。この符号化方式としては、例えば、NRZ(Non Return to Zero)符号方式やマンチェスター符号方式、或いは、AMI(Alternate Mark Inversion)符号方式等が利用される。例えば、下記の特許文献1には、バイポーラ符号の代表例であるAMI符号を利用してデータ伝送する技術が開示されている。また、同文献には、データクロックを信号レベルの中間値で表現して伝送し、受信側で信号レベルに基づいてデータクロックを再生する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平3−109843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の符号化方式のうち、NRZ符号方式の信号は直流成分を含んでしまう。そのため、NRZ符号方式の信号は、電源等の直流成分と一緒に伝送することが難しい。一方、マンチェスター符号方式やAMI符号方式の信号は直流成分を含まない。そのため、電源等の直流成分と一緒に伝送することができる。また、本件発明者は、直流成分を含まず、かつ、受信信号からクロック成分を容易に抽出することが可能な符号化技術を開発した。この技術は、互いに異なる第1及び第2のビット値を含む入力データに対し、前記第1のビット値を複数の第1の振幅値で表現し、前記第2のビット値を前記第1の振幅値とは異なる第2の振幅値で表現し、連続して同じ振幅値をとらず、かつ、一周期毎に振幅値の極性が反転するように符号化するというものである。この技術を用いることにより、受信信号から抽出したクロック成分に基づいてクロックを再生することが可能になる。また、この技術を用いつつ、受信側から送信側へと逆方向にデータを伝送することが可能な双方向伝送の技術も開発された。なお、ここではクロック再生が可能な上記の符号を送信する側を送信側と呼ぶことにする。
【0007】
当該双方向伝送技術は、上記の送信側から受信側へと伝送されたデータ信号から検出されたクロックを用いて上記の受信側から送信側へと逆方向に時分割又は同時刻にデータ伝送するというものである。しかしながら、パワーセーブモード等の所定の動作モードにおいては、送信側から受信側へのデータ伝送が停止されてしまう。そのため、このような動作モードに移行すると、受信側においてクロックの再生ができないため、受信側から送信側への逆方向のデータ伝送ができなくなる。その結果、受信側に設けられたスイッチ等の操作に応じて送信側から受信側へのデータ伝送を再開させる信号を受信側から送信側へと逆方向に伝送することができなくなってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、直流成分を含まず、かつ、受信信号からクロック成分を容易に抽出することが可能な符号を用いる構成において、送信側から受信側へのデータ伝送が停止される動作モードのときに、受信側から当該動作モードを解除することが可能な、新規かつ改良された情報処理装置、及びモード切り替え方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、次のような第1のモジュールと、第2のモジュールとを備える情報処理装置が提供される。
【0010】
第1のモジュールは、直流成分を含まず、かつ、クロックの半周期毎に極性が反転する波形に第1の送信データを符号化し、所定の信号線を通じて第2のモジュールに送信する第1の信号送信部と、前記所定の信号線に流れる電流量を検出する電流検出部と、第1のモードの場合に前記第1の送信データの信号を前記第2のモジュールに送信させ、第2のモードの場合に前記第1の送信データの信号の送信を停止させ、前記第2のモードの場合に前記電流検出部で検出される電流量の変化に応じて前記第1のモードに切り替える送信制御部と、を有する。
【0011】
第2のモジュールは、前記所定の信号線を通じて送信された前記第1の送信データの信号の極性反転周期に基づいて前記クロックを検出するクロック検出部と、前記クロック検出部で検出されたクロックを用いて直流成分を含まない波形に第2の送信データを符号化し、当該クロックに同期して前記第1のモジュールに送信する第2の信号送信部と、前記第2のモードの場合に前記所定の信号線に流れる電流量を変化させる負荷制御部と、を有する。
【0012】
また、上記の情報処理装置は、以下のような構成にされていてもよい。例えば、前記負荷制御部は、前記所定の信号線に流れる電流量を所定のパターンで変化させる。
【0013】
また、前記所定の信号線は、直流電源から供給される電力信号を送信するための電源線で構成される。この場合、前記第1のモジュールは、前記電力信号を前記第1の送信データの信号に重畳して重畳信号を生成する信号重畳部をさらに有する。さらに、前記第1の信号送信部は、前記重畳信号を前記第2のモジュールに送信する。そして、前記第2のモジュールは、前記重畳信号を前記電力信号と前記第1の送信データの信号とに分離する信号分離部をさらに有する。
【0014】
また、前記第1の信号送信部から信号が送信される第1の時間帯と、前記第2の信号送信部から信号が送信される第2の時間帯とが時間軸上で分割されていてもよい。
【0015】
また、前記第2の信号送信部は、前記所定の信号線を通じて送信される前記第1の送信データの信号に同期して前記第2の送信データの信号を送信するように構成されていてもよい。この場合、前記第1のモジュールは、前記所定の信号線において多重された信号から、前記第1の送信データの信号を減算して前記第2の送信データの信号を抽出する第1の信号抽出部をさらに有する。そして、前記第2のモジュールは、前記所定の信号線において多重された信号から、前記第2の送信データの信号を減算して前記第1の送信データの信号を抽出する第2の信号抽出部をさらに有する。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、第1のモードの場合に、第1のモジュールが、直流成分を含まず、かつ、クロックの半周期毎に極性が反転する波形に第1の送信データを符号化し、所定の信号線を通じて第2のモジュールに送信する第1の信号送信ステップと、前記第2のモジュールが、前記第1のモジュールから送信された前記第1の送信データの信号の極性反転周期に基づいて前記クロックを検出するクロック検出ステップと、前記クロック検出ステップで検出されたクロックを用いて直流成分を含まない波形に第2の送信データを符号化し、当該クロックに同期して前記第1のモジュールに送信する第2の信号送信ステップと、が実行され、前記第1のモードから第2のモードにモード変更された場合に、前記第1のモジュールが前記第1の送信データの信号送信を停止させるステップが実行され、前記第2のモードの場合に、前記第2のモジュールが前記所定の信号線に流れる電流量を変化させる負荷制御ステップと、前記第1のモジュールが、前記所定の信号線に流れる電流量を検出する電流検出ステップと、前記電流検出ステップで電流量の変化が検出された場合に前記第2のモードから前記第1のモードに切り替える制御ステップと、が実行される、モード切り替え方法が提供される。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記の情報処理装置が有する機能をコンピュータに実現させるためのプログラムが提供されうる。さらに、このプログラムが記録されたコンピュータで読み取り可能な記録媒体が提供されうる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、直流成分を含まず、かつ、受信信号からクロック成分を容易に抽出することが可能な符号を用いる構成において、送信側から受信側へのデータ伝送が停止される動作モードのときに、受信側から当該動作モードを解除することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
[説明の流れについて]
ここで、以下に記載する本発明の実施形態に関する説明の流れについて簡単に述べる。まず、図1を参照しながら、パラレル伝送方式を採用した携帯端末等が抱える技術的課題について簡単に説明する。次いで、図2〜図6を参照しながら、シリアル伝送方式を採用した信号伝送技術が抱える課題について説明する。次いで、図7〜図13を参照しながら、シリアル伝送方式を採用した信号伝送技術が抱える課題を解決するために考案された新規な信号伝送技術について説明する。また、このような新規な信号伝送技術が抱える技術的課題についても説明する。
【0021】
上記の新規な信号伝送技術が有する技術的特徴及び課題を踏まえ、図14〜図16を参照しながら、新方式に係る技術を双方向伝送に拡張する技術(以下、拡張方式)について説明する。次いで、図17及び図18を参照しながら、拡張方式における技術的課題について説明する。次いで、図19及び図20を参照しながら、上記の各技術的課題を解決することが可能な同実施形態に係る携帯端末の機能構成、及びモード切り替え方法について説明する。最後に、同実施形態の技術的思想について纏め、当該技術的思想から得られる作用効果について簡単に説明する。
【0022】
(説明項目)
1:課題の整理
1−1:パラレル伝送方式について
1−2:シリアル伝送方式について
1−3:電源線を利用したデータ伝送方式について
2:基盤技術1(新方式について)
3:基盤技術2(新方式の双方向伝送への拡張;拡張方式について)
4:実施形態
4−1:携帯端末500の機能構成
4−2:パワーセーブモードからの復帰方法について
4−3:まとめ
【0023】
<1:課題の整理>
まず、本発明の一実施形態に係る技術について詳細な説明をするに先立ち、同実施形態が解決しようとする課題について簡単に纏める。
【0024】
[1−1:パラレル伝送方式について]
まず、図1を参照しながら、パラレル伝送方式を採用した携帯端末100の構成例について簡単に説明する。図1は、パラレル伝送方式を採用した携帯端末100の構成例を示す説明図である。なお、図1には、携帯端末100の一例として携帯電話が模式的に描画されている。しかし、以下の説明に係る技術の適用範囲は、携帯電話に限定されるものではない。
【0025】
図1に示すように、携帯端末100は、主に、表示部102と、液晶部104(LCD)と、接続部106と、操作部108と、ベースバンドプロセッサ110(BBP)と、パラレル信号線路112とにより構成される。但し、LCDは、Liquid Crystal Displayの略である。なお、表示部102を表示側(D)、操作部108を本体側(M)と呼ぶ場合がある。また、以下の説明の中で、映像信号が本体側から表示側へと伝送される場合を例に挙げて説明する。もちろん、以下の技術は、これに限定されるものではない。
【0026】
図1に示すように、表示部102には、液晶部104が設けられている。そして、液晶部104には、パラレル信号線路112を介して伝送された映像信号が表示される。また、接続部106は、表示部102と操作部108とを接続する部材である。この接続部106を形成する接続部材は、例えば、表示部102をZ−Y平面内で180度回転できる構造を有する。また、この接続部材は、X−Z平面内で表示部102が回転可能に形成され、携帯端末100を折り畳みできる構造を有する。なお、この接続部材は、自由な方向に表示部102を可動にする構造を有していてもよい。
【0027】
ベースバンドプロセッサ110は、携帯端末100の通信制御、及びアプリケーションの実行機能を提供する演算処理部である。ベースバンドプロセッサ110から出力されるパラレル信号は、パラレル信号線路112を通じて表示部102の液晶部104に伝送される。パラレル信号線路112には、多数の信号線が配線されている。例えば、携帯電話の場合、この信号線数nは50本程度である。また、映像信号の伝送速度は、液晶部104の解像度がQVGAの場合、130Mbps程度となる。そして、パラレル信号線路112は、接続部106を通るように配線されている。
【0028】
つまり、接続部106には、パラレル信号線路112を形成する多数の信号線が配線されている。上記のように、接続部106の可動範囲を広げると、その動きによりパラレル信号線路112に損傷が発生する危険性が高まる。その結果、パラレル信号線路112の信頼性が損なわれてしまう。一方で、パラレル信号線路112の信頼性を維持しようとすると、接続部106の可動範囲が制約されてしまう。こうした理由から、接続部106を形成する可動部材の自由度、及びパラレル信号線路112の信頼性を両立させる目的で、シリアル伝送方式が携帯電話等に採用されることが多くなってきている。また、放射電磁雑音(EMI)の観点からも、伝送線路のシリアル化が進められている。
【0029】
[1−2:シリアル伝送方式について]
そこで、図2を参照しながら、シリアル伝送方式を採用した携帯端末130の構成例について簡単に説明する。図2は、シリアル伝送方式を採用した携帯端末130の構成例を示す説明図である。なお、図2には、携帯端末130の一例として携帯電話が模式的に描画されている。しかし、以下の説明に係る技術の適用範囲は、携帯電話に限定されるものではない。また、図1に示したパラレル伝送方式の携帯端末100と実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する。
【0030】
図2に示すように、携帯端末130は、主に、表示部102と、液晶部104(LCD)と、接続部106と、操作部108とを有する。さらに、携帯端末130は、ベースバンドプロセッサ110(BBP)と、パラレル信号線路132、140と、シリアライザ134と、シリアル信号線路136と、デシリアライザ138とを有する。
【0031】
携帯端末130は、上記の携帯端末100とは異なり、接続部106に配線されたシリアル信号線路136を通じてシリアル伝送方式により映像信号を伝送している。そのため、操作部108には、ベースバンドプロセッサ110から出力されたパラレル信号をシリアル化するためのシリアライザ134が設けられている。一方、表示部102には、シリアル信号線路136を通じて伝送されるシリアル信号をパラレル化するためのデシリアライザ138が設けられている。
【0032】
シリアライザ134は、ベースバンドプロセッサ110から出力され、かつ、パラレル信号線路132を介して入力されたパラレル信号をシリアル信号に変換する。シリアライザ134により変換されたシリアル信号は、シリアル信号線路136を通じてデシリアライザ138に入力される。そして、デシリアライザ138は、入力されたシリアル信号を元のパラレル信号に復元し、パラレル信号線路140を通じて液晶部104に入力する。
【0033】
シリアル信号線路136には、例えば、NRZ符号方式で符号化されたデータ信号が単独で伝送されるか、或いは、データ信号とクロック信号とが一緒に伝送される。シリアル信号線路136の配線数kは、図1の携帯端末100が有するパラレル信号線路112の配線数nよりも大幅に少ない(1≦k≪n)。例えば、配線数kは、数本程度まで削減することができる。そのため、シリアル信号線路136が配線される接続部106の可動範囲に関する自由度は、パラレル信号線路112が配線される接続部106に比べて非常に大きいと言える。同時に、シリアル信号線路136の信頼性も高いと言える。なお、シリアル信号線路136を流れるシリアル信号には、通常、LVDS等の差動信号が用いられる。但し、LVDSは、Low Voltage Differential Signalの略である。
【0034】
(機能構成)
ここで、図3を参照しながら、シリアル伝送方式を採用した携帯端末130の機能構成について説明する。図3は、シリアル伝送方式を採用した携帯端末130の機能構成の一例を示す説明図である。但し、図3は、シリアライザ134、及びデシリアライザ138の機能構成を中心に描画した説明図であり、他の構成要素に関する記載を省略している。
【0035】
(シリアライザ134)
図3に示すように、シリアライザ134は、P/S変換部152と、エンコーダ154と、LVDSドライバ156と、PLL部158と、タイミング制御部160とにより構成される。
【0036】
図3に示すように、シリアライザ134には、ベースバンドプロセッサ110から、パラレル信号(P−DATA)と、パラレル信号用クロック(P−CLK)とが入力される。シリアライザ134に入力されたパラレル信号は、P/S変換部152によりシリアル信号に変換される。P/S変換部152により変換されたシリアル信号は、エンコーダ154に入力される。エンコーダ154は、シリアル信号にヘッダ等を付加してLVDSドライバ156に入力する。LVDSドライバ156は、入力されたシリアル信号をLVDSによる差動伝送方式でデシリアライザ138に伝送する。
【0037】
一方、シリアライザ134に入力されたパラレル信号用クロックは、PLL部158に入力される。PLL部158は、パラレル信号用クロックからシリアル信号用クロックを生成し、P/S変換部152、及びタイミング制御部160に入力する。タイミング制御部160は、入力されるシリアル信号用クロックに基づいてエンコーダ154によるシリアル信号の送信タイミングを制御する。
【0038】
(デシリアライザ138)
図3に示すように、デシリアライザ138は、主に、LVDSレシーバ172と、デコーダ174と、S/P変換部176と、クロック再生部178と、PLL部180と、タイミング制御部182とにより構成される。
【0039】
図3に示すように、デシリアライザ138には、LVDSによる差動伝送方式でシリアライザ134からシリアル信号が伝送される。このシリアル信号は、LVDSレシーバ172により受信される。LVDSレシーバ172により受信されたシリアル信号は、デコーダ174、及びクロック再生部178に入力される。デコーダ174は、入力されたシリアル信号のヘッダを参照してデータの先頭部分を検出し、S/P変換部176に入力する。S/P変換部176は、入力されたシリアル信号をパラレル信号(P−DATA)に変換する。S/P変換部176で変換されたパラレル信号は液晶部104に出力される。
【0040】
一方、クロック再生部178は、外部から入力されるリファレンスクロックを参照し、内蔵するPLL部180を用いてシリアル信号用クロックからパラレル信号用クロックを再生する。クロック再生部178により再生されたパラレル信号用クロックは、デコーダ174、及びタイミング制御部182に入力される。タイミング制御部182は、クロック再生部178から入力されたパラレル信号用クロックに基づいて受信タイミングを制御する。また、タイミング制御部182に入力されたパラレル信号用クロック(P−CLK)は、液晶部104に出力される。
【0041】
このように、ベースバンドプロセッサ110からシリアライザ134に入力されたパラレル信号(P−DATA)、及びパラレル信号用クロック(P−CLK)は、シリアル信号に変換されてデシリアライザ138に伝送される。そして、入力されたシリアル信号は、デシリアライザ138により元のパラレル信号、及びパラレル信号用クロックに復元され、液晶部104に出力される。
【0042】
以上説明した携帯端末130のように、パラレル信号をシリアル信号に変換して伝送することにより、その伝送線路がシリアル化される。その結果、シリアル信号線路が配置される部分の可動範囲が拡大し、表示部102の配置に関する自由度が向上する。そのため、例えば、携帯端末130を利用してテレビジョン放送等を視聴する場合において、表示部102の配置がユーザから見て横長になるように携帯端末130を変形させることができるようになる。こうした自由度の向上に伴い、携帯端末130の用途が広がり、通信端末としての各種機能に加えて、映像や音楽の視聴等、様々な利用形態が生まれている。
【0043】
[1−3:電源線を利用したデータ伝送方式について]
上記の携帯端末130においては、符号化方式として直流成分を含まないマンチェスター符号方式(図5を参照)やAMI符号化方式(図6を参照)を利用することができる。このように、直流成分を含まない符号化信号は、電源に重畳して伝送することが可能である。そこで、上記の携帯端末130に対し、この電源線伝送方式を応用する技術について説明する。携帯端末230は、この技術を用いた構成例である。
【0044】
(機能構成)
まず、図4を参照しながら、電源線を利用してデータ伝送することが可能な携帯端末230の機能構成について説明する。図4は、電源線を利用してデータ伝送することが可能な携帯端末230の機能構成の一例を示す説明図である。但し、図4は、シリアライザ134、及びデシリアライザ138の機能構成を中心に描画した説明図であり、他の構成要素に関する記載を省略している。また、携帯端末230が有する各構成要素のうち、既に述べた携帯端末130と実質的に同一の機能構成を有する構成要素については同一の符号を付することにより詳細な説明を省略した。
【0045】
(シリアライザ134)
図4に示すように、シリアライザ134は、P/S変換部152と、エンコーダ154と、LVDSドライバ156と、PLL部158と、タイミング制御部160と、重畳部232とにより構成される。
【0046】
図4に示すように、シリアライザ134には、ベースバンドプロセッサ110から、パラレル信号(P−DATA)と、パラレル信号用クロック(P−CLK)とが入力される。シリアライザ134に入力されたパラレル信号は、P/S変換部152によりシリアル信号に変換される。P/S変換部152により変換されたシリアル信号は、エンコーダ154に入力される。エンコーダ154は、シリアル信号にヘッダ等を付加し、マンチェスター符号方式等の直流成分の無い(又は少ない)方式で符号化してLVDSドライバ156に入力する。
【0047】
LVDSドライバ156は、入力されたシリアル信号をLVDSにして重畳部232に入力する。重畳部232は、LVDSドライバ156から入力された信号を電源ラインに重畳させてデシリアライザ138に伝送する。例えば、重畳部232は、信号をコンデンサで、電源をチョークコイルで結合させる。なお、電源ラインには、例えば、伝送線路として同軸ケーブルが用いられる。また、この電源ラインは、操作部108から表示部102に電源を供給するために設けられた線路である。
【0048】
ところで、シリアライザ134に入力されたパラレル信号用クロックは、PLL部158に入力される。PLL部158は、パラレル信号用クロックからシリアル信号用クロックを生成し、P/S変換部152、及びタイミング制御部160に入力する。タイミング制御部160は、入力されるシリアル信号用クロックに基づいてエンコーダ154によるシリアル信号の送信タイミングを制御する。
【0049】
(デシリアライザ138)
図4に示すように、デシリアライザ138は、主に、LVDSレシーバ172と、デコーダ174と、S/P変換部176と、クロック再生部178と、PLL部180と、タイミング制御部182と、分離部234とにより構成される。
【0050】
図4に示すように、デシリアライザ138には、電源ライン(同軸ケーブル)を通じて電源とシリアル信号とが重畳された信号が伝送される。この重畳信号の周波数スペクトラムは、図5のようになる。図5に示すように、マンチェスター符号の周波数スペクトラムは、直流成分を持たないので、電源(DC)と一緒に伝送できることが分かる。
【0051】
再び図4を参照する。上記の重畳信号は、分離部234によりシリアル信号と電源とに分離される。例えば、分離部234は、コンデンサで直流成分をカットしてシリアル信号を取り出し、チョークコイルで高周波成分をカットして電源を取り出す。分離部234により分離されたシリアル信号は、LVDSレシーバ172により受信される。
【0052】
LVDSレシーバ172により受信されたシリアル信号は、デコーダ174、及びクロック再生部178に入力される。デコーダ174は、入力されたシリアル信号のヘッダを参照してデータの先頭部分を検出し、マンチェスター符号方式等で符号化されたシリアル信号を復号してS/P変換部176に入力する。S/P変換部176は、入力されたシリアル信号をパラレル信号(P−DATA)に変換する。S/P変換部176で変換されたパラレル信号は、液晶部104に出力される。
【0053】
一方、クロック再生部178は、外部から入力されるリファレンスクロックを参照し、内蔵するPLL部180を用いてシリアル信号用クロックからパラレル信号用クロックを再生する。クロック再生部178により再生されたパラレル信号用クロックは、デコーダ174、及びタイミング制御部182に入力される。タイミング制御部182は、クロック再生部178から入力されたパラレル信号用クロックに基づいて受信タイミングを制御する。また、タイミング制御部182に入力されたパラレル信号用クロック(P−CLK)は、液晶部104に出力される。
【0054】
このように、上記の携帯端末230は、電源とシリアル信号(映像信号等)とを同軸ケーブル1本で伝送することができる。そのため、操作部108と表示部102との間を繋ぐ配線は1本だけとなり、表示部102の可動性が向上し、複雑な形状に携帯端末230を変形させることが可能になる。その結果、携帯端末230の用途が広がると共に、ユーザの利便性が向上する。
【0055】
(課題の整理1)
上記の通り、操作部108と表示部102との相対的な位置関係を自由に変化させるには、上記の携帯端末100のようにパラレル伝送方式には不都合があった。そこで、上記の携帯端末130のように、シリアライザ134、及びデシリアライザ138を設けることで、映像信号等のシリアル伝送を可能にし、表示部102の可動範囲を広げた。さらに、携帯端末130で利用される符号化方式の特性を生かして、電源ラインに信号を重畳させて伝送する方式を用いて表示部102の可動性をさらに向上させた。
【0056】
ところが、図3、図4に示すように、携帯端末130、230において、受信したシリアル信号のクロックを再生するためにPLL部180(以下、PLL)が用いられていた。このPLLは、マンチェスター符号方式等により符号化された信号からクロックを抽出するために必要なものである。しかしながら、PLL自体の電力消費量が少なくないため、PLLを設けることにより、その分だけ携帯端末130、230の消費電力が大きくなってしまう。こうした電力消費量の増大は、携帯電話等の小さな装置にとって非常に大きな問題となる。
【0057】
こうした問題を背景に、デシリアライザ138の側でPLLを設けずに済むような技術が求められている。そこで、このような技術的課題に鑑み、直流成分を含まず、かつ、クロック再生時にPLL回路が不要な符号を用いて信号を伝送する新規な信号伝送方式が考案された。以下の説明において、この信号伝送方式のことを単に新方式と呼ぶ場合がある。
【0058】
<2:基盤技術1(新方式について)>
以下、直流成分を含まず、かつ、PLLを利用せずにクロックを再生することが可能な符号により信号を伝送する新規な信号伝送方式(新方式)について説明する。まず、新方式の符号化方法を説明する上で基本となるAMI(Alternate Mark Inversion)符号について簡単に説明する。その後、新方式に係る携帯端末300の機能構成、及び符号化方法について説明する。
【0059】
(AMI符号の信号波形について)
まず、図6を参照しながら、AMI符号の信号波形、及びその特徴について簡単に説明する。図6は、AMI符号の信号波形の一例を示す説明図である。但し、以下の説明において、Aは任意の正数であるとする。
【0060】
AMI符号は、データ0を電位0で表現し、データ1を電位A又は−Aで表現する符号である。但し、電位Aと電位−Aとは交互に繰り返される。つまり、電位Aでデータ1が表現された後、次にデータ1が現れた場合、そのデータ1は電位−Aで表現されるというものである。このように、極性反転を繰り返してデータが表現されるため、AMI符号には直流成分が含まれない。なお、AMI符号と同じ種類の特性を持つ符号としては、例えば、PR(1,−1)、PR(1,0,−1)、PR(1,0,…,−1)等で表現されるパーシャル・レスポンス方式がある。このように極性反転を利用した伝送符号はバイポーラ符号と呼ばれる。また、ダイコード方式等も利用可能である。ここでは、デューティ100%のAMI符号を例に挙げて説明する。
【0061】
図6には、ビット間隔T1、T2、…、T14のAMI符号が模式的に記載されている。図中において、データ1は、ビット間隔T2、T4、T5、T10、T11、T12、T14に現れている。ビット間隔T2において電位Aである場合、ビット間隔T4では電位−Aとなる。また、ビット間隔T5では電位Aとなる。このように、データ1に対応する振幅は、プラスとマイナスとが交互に反転する。これが上記の極性反転である。
【0062】
一方、データ0に関しては全て電位0で表現される。こうした表現によりAMI符号は直流成分を含まないが、図6のビット間隔T6、…、T9に見られるように電位0が連続することがある。このように電位0が連続すると、PLLを用いずに、この信号波形からクロック成分を取り出すことが難しい。そこで、新方式においては、AMI符号(及びこれと同等の特性を有する符号)にクロック成分を含ませて伝送する技術が用いられている。
【0063】
(機能構成)
ここで、図7を参照しながら、新方式に係る携帯端末300の機能構成について説明する。図7は、新方式に係る携帯端末300の機能構成例を示す説明図である。但し、図7は、シリアライザ134、及びデシリアライザ138の機能構成を中心に描画した説明図であり、他の構成要素に関する記載を省略している。また、携帯端末300が有する各構成要素のうち、既に述べた携帯端末130と実質的に同一の機能構成を有する構成要素については同一の符号を付することにより詳細な説明を省略した。
【0064】
(シリアライザ134)
図7に示すように、シリアライザ134は、P/S変換部152と、LVDSドライバ156と、PLL部158と、タイミング制御部160と、エンコーダ312とにより構成される。上記の携帯端末130との主な相違点はエンコーダ312の機能にある。
【0065】
図7に示すように、シリアライザ134には、ベースバンドプロセッサ110から、パラレル信号(P−DATA)と、パラレル信号用クロック(P−CLK)とが入力される。シリアライザ134に入力されたパラレル信号は、P/S変換部152によりシリアル信号に変換される。P/S変換部152により変換されたシリアル信号は、エンコーダ312に入力される。エンコーダ312は、シリアル信号にヘッダ等を付加し、所定の符号化方式で符号化する。
【0066】
ここで、図8を参照しながら、エンコーダ312における符号化信号の生成方法について説明する。図8は、新方式に係る符号化方法の一例を示す説明図である。なお、図8には、AMI符号をベースとする符号の生成方法が記載されている。但し、新方式はこれに限定されず、AMI符号と同等の特性を有する符号に対しても同様に適用される。例えば、バイポーラ符号やパーシャル・レスポンス方式の符号等にも適用できる。
【0067】
図8の(C)に示された信号が新方式の符号化方法で符号化された信号である。この信号は、データ1を複数の電位A1(−1、−3、1、3)で表現し、データ0を電位A1とは異なる複数の電位A2(−2、2)で表現したものである。但し、この信号は、極性反転するように構成されており、さらに、連続して同じ電位とならないように構成されている。例えば、ビット間隔T6、…、T9においてデータ0が続く区間を参照すると、電位が−2、2、−2、2となっている。このような符号を利用することで、同じデータ値が連続して現れても、立ち上がり、立ち下がりの両エッジを検出してクロック成分を再生することが可能になる。
【0068】
さて、エンコーダ312は、上記のような符号を生成するため、加算器ADDを備えている。図8に示すように、エンコーダ312は、例えば、入力されたシリアル信号をAMI符号(A)に符号化して加算器ADDに入力する。さらに、エンコーダ312は、AMI符号の伝送速度Fbの半分の周波数(2/Fb)を持つクロック(B)を生成して加算器ADDに入力する。但し、クロックの振幅は、AMI符号のN倍(N>1;図8の例ではN=2)とする。そして、エンコーダ312は、加算器ADDによりAMI符号とクロックとを加算して符号(C)を生成する。このとき、AMI符号とクロックとはエッジを揃えて同期加算される。
【0069】
再び図7を参照する。エンコーダ312により符号化されたシリアル信号は、LVDSドライバ156に入力される。LVDSドライバ156は、入力されたシリアル信号をLVDSによる差動伝送方式でデシリアライザ138に伝送する。一方、シリアライザ134に入力されたパラレル信号用クロックは、PLL部158に入力される。PLL部158は、パラレル信号用クロックからシリアル信号用クロックを生成し、P/S変換部152、及びタイミング制御部160に入力する。タイミング制御部160は、入力されるシリアル信号用クロックに基づいてエンコーダ312によるシリアル信号の送信タイミングを制御する。
【0070】
(デシリアライザ138)
図7に示すように、デシリアライザ138は、主に、LVDSレシーバ172と、S/P変換部176と、タイミング制御部182と、クロック検出部332と、デコーダ334とにより構成される。上記の携帯端末130が備えるデシリアライザ138との主な相違点は、PLLを持たないクロック検出部332の存在にある。
【0071】
図7に示すように、デシリアライザ138には、LVDSによる差動伝送方式でシリアライザ134からシリアル信号が伝送される。このシリアル信号は、LVDSレシーバ172により受信される。LVDSレシーバ172により受信されたシリアル信号は、デコーダ334、及びクロック検出部332に入力される。デコーダ334は、入力されたシリアル信号のヘッダを参照してデータの先頭部分を検出し、エンコーダ312が用いた符号化方式に従って符号化されたシリアル信号を復号する。
【0072】
ここで、図8を参照しながら、デコーダ334による復号方法について説明する。上記の通り、シリアル信号は、エンコーダ312により、図8の(C)に示す形式に符号化されている。そこで、デコーダ334は、この信号の振幅がA1であるか、A2であるかを判定することで、元のシリアル信号を復号することができる。
【0073】
データ1に対応する振幅A1(−1、−3、1、3)と、データ0に対応する振幅A2(−2、2)とを判定するためには、図8の(C)に示す4つの閾値(L1、L2、L3、L4)が用いられる。そこで、デコーダ334は、入力された信号の振幅と上記の4つの閾値とを比較して振幅がA1であるか、或いは、A2であるかを判定し、元のシリアル信号を復号する。この復号処理については後段(図10〜図13を参照)において説明する。
【0074】
再び図7を参照する。デコーダ334により復号されたシリアル信号はS/P変換部176に入力される。S/P変換部176は、入力されたシリアル信号をパラレル信号(P−DATA)に変換する。S/P変換部176で変換されたパラレル信号は、液晶部104に出力される。
【0075】
一方、クロック検出部332は、入力された信号からクロック成分を検出する。既に述べた通り、図8の(C)に示された符号を用いることで、クロック成分は、振幅と閾値L0(電位0)とを比較して振幅の極性を判定し、極性反転の周期に基づいてクロック成分を検出することができる。従って、クロック検出部332は、信号のクロック成分を検出する際にPLLを用いないで済む。その結果、デシリアライザ138の消費電力を低減させることが可能になる。
【0076】
さて、クロック検出部332により検出されたクロックは、デコーダ334、及びタイミング制御部182に入力される。タイミング制御部182は、クロック検出部332から入力されたクロックに基づいて受信タイミングを制御する。また、タイミング制御部182に入力されたクロック(P−CLK)は液晶部104に出力される。
【0077】
このように、直流成分を含まず(図9を参照)、極性反転周期からクロック成分を再生することが可能な符号を利用する。この符号を利用することで、デシリアライザ138において実行されるクロックの検出にPLLを用いずに済み、携帯端末の消費電力を大きく低減させることが可能になる。なお、新方式で用いる符号の周波数スペクトラムは、例えば、図9に示すような形状になる。エンコーダ312の加算器ADDで加算されたクロックの周波数Fb/2に線スペクトルが現れ、それに加えてAMI符号のブロードな周波数スペクトラムが現れている。なお、この周波数スペクトラムには、周波数Fb、2Fb、3Fb、…にヌル点が存在する。
【0078】
(復号処理の詳細について)
次に、図10〜図13を参照しながら、新方式における復号処理の詳細について説明する。図10は、クロック検出部332の回路構成例を示す説明図である。図11は、デコーダ334の回路構成例を示す説明図である。図12は、データ判定用の判定テーブルの構成例を示す説明図である。図13は、新方式を適用した場合の受信信号波形(図中には、アイパターンが示されている。)を示す説明図である。
【0079】
(クロック検出部332の回路構成例)
まず、図10を参照する。図10に示すように、クロック検出部332の機能は、コンパレータ352により実現される。
【0080】
コンパレータ352には、新方式で符号化された信号の振幅値が入力データとして入力される。入力データが入力されると、コンパレータ352は、入力された振幅値と所定の閾値とを比較する。例えば、コンパレータ352は、入力データが所定の閾値よりも大きい値であるか否かを判定する。このコンパレータ352は、新方式の符号(図8の(C)を参照)からクロックを抽出するためのものである。そのため、所定の閾値としては閾値L0を用いる。
【0081】
例えば、入力データが所定の閾値よりも大きい値である場合、コンパレータ352は、入力データが所定の閾値よりも大きい値であることを示す判定値(例えば、1)を出力する。一方、入力データが所定の閾値よりも小さい値である場合、コンパレータ352は、入力データが所定の閾値よりも大きい値でなかったことを示す判定値(例えば、0)を出力する。コンパレータ352の出力結果は、クロックとしてデコーダ334及びタイミング制御部182に入力される。
【0082】
(デコーダ334の回路構成例)
次に、図11を参照する。図11に示すように、デコーダ334の機能は、複数のコンパレータ354、356、358、360、及びデータ判定部362により実現される。また、データ判定部362には、記憶部364が設けられている。記憶部364には、図12に示すデータ判定用の判定テーブルが格納されている。
【0083】
複数のコンパレータ354、356、358、360には、互いに異なる閾値が設定されている。例えば、コンパレータ354には閾値L1が、コンパレータ356には閾値L2が、コンパレータ358には閾値L3が、コンパレータ360には閾値L4が設定されている。但し、図8の(C)に示したように、閾値L1、L2、L3、L4は、L1>L2>L3>L4の関係を満たすものである。
【0084】
まず、複数のコンパレータ354、356、358、360には、新方式で符号化された信号の振幅値が入力データとして入力される。このとき、複数のコンパレータ354、356、358、360には、同じ入力データが並行して入力される。
【0085】
入力データが入力されると、コンパレータ354は、入力データと閾値L1とを比較し、入力データが閾値L1よりも大きい値であるか否かを判定する。入力データが閾値L1よりも大きい値である場合、コンパレータ354は、入力データが閾値L1よりも大きい値であることを示す判定値(例えば、1)を出力する。一方、入力データが閾値L1よりも大きい値でない場合、コンパレータ354は、入力データが閾値L1よりも大きい値でないことを示す判定値(例えば、0)を出力する。
【0086】
同様に、コンパレータ356は、入力データと閾値L2とを比較し、入力データが閾値L2よりも大きい値であるか否かを判定する。また、コンパレータ358は、入力データと閾値L3とを比較し、入力データが閾値L3よりも大きい値であるか否かを判定する。さらに、コンパレータ360は、入力データと閾値L4とを比較し、入力データが閾値L4よりも大きい値であるか否かを判定する。複数のコンパレータ354、356、358、360から出力された判定値は、データ判定部362に入力される。
【0087】
データ判定部362は、複数のコンパレータ354、356、358、360から出力された判定値に基づいて入力データが示すビット値を判定する。このとき、データ判定部362は、記憶部364に格納されたデータ判定用の判定テーブル(図12を参照)を参照し、この判定テーブルに基づいて入力データが示すビット値を判定する。データ判定用の判定テーブルとしては、例えば、図12に示すようなものが用いられる。図12に例示するように、この判定テーブルにおいては、複数のコンパレータ354、356、358、360から出力された値の各組み合わせに対してビット値(0又は1)が対応付けられている。
【0088】
例えば、コンパレータ354の出力値が1の場合について考えてみる。この場合、入力データが閾値L1よりも大きい値である。上記の通り、閾値には、L1>L2>L3>L4の関係が規定されている。この関係から、コンパレータ356、358、360の出力値も1になるはずである。図8の(C)を参照すると、閾値L1よりも大きい値をもつ振幅に対応するビット値は1である。そのため、判定テーブルには、コンパレータ354、356、358、360の出力値が全て1の組み合わせとビット値1とが対応付けて記載されている。
【0089】
他の条件についても考えてみる。ここでは、説明の都合上、コンパレータ354、356、358、360の出力値をそれぞれd1、d2、d3、d4と表現し、その組み合わせを(d1,d2,d3,d4)と表記する。例えば、(d1,d2,d3,d4)=(0,1,1,1)の組み合わせは、入力データdがL1>d>L2であることを意味している。図8の(C)を参照すると、入力データdがL1>d>L2の場合、ビット値は0である。
【0090】
同様に、(d1、d2、d3、d4)=(0,0,1,1)の組み合わせは、入力データdがL2>d>L3であることを意味している。図8の(C)を参照すると、入力データdがL2>d>L3の場合、ビット値は1である。また、(d1、d2、d3、d4)=(0,0,0,1)の組み合わせは、入力データdがL3>d>L4であることを意味している。図8の(C)を参照すると、入力データdがL3>d>L4の場合、ビット値は0である。さらに、(d1、d2、d3、d4)=(0,0,0,0)の組み合わせは、入力データdがL4>dであることを意味している。図8の(C)を参照すると、入力データdがL4>dの場合、ビット値は1である。
【0091】
このように、コンパレータ354、356、358、360から各々出力された出力値の組み合わせとビット値とを対応付けることが可能であり、そのような組み合わせとビット値との対応関係をテーブル形式に纏めたものが図12に例示した判定テーブルである。データ判定部362は、このような判定テーブルを参照し、複数のコンパレータ354、356、358、360から出力された出力値の組み合わせに基づいてビット値を判定する。データ判定部362により判定されたビット値は、S/P変換部176に入力される。
【0092】
(課題の整理2)
上記の通り、新方式の符号は、直流成分を含まず、かつ、PLL回路を用いずにクロックを再生することが可能である点で非常に優れている。そのため、上記の携帯端末230のように信号を直流電源に重畳して伝送することができると共に、上記の携帯端末300のように受信側でPLLを設ける必要がない。ところで、携帯端末300の構成を例に挙げて説明した新方式の技術は、片方向の信号伝送に関するものである。
【0093】
しかし、最近の携帯端末等を構成する表示部102には、液晶部104の他に様々なデバイスが設けられている。例えば、液晶部104にタッチパネルが設けられていたり、カメラや操作用のスイッチ等が設けられていたりすることがある。そのため、こうした携帯機器等においては、液晶部104に画像データが伝送されるだけでなく、表示部102から操作部108に種々のデータが伝送される。つまり、このような携帯端末等においては、表示部102と操作部108との間でデータの双方向伝送ができることが必要である。
【0094】
しかしながら、上記の新方式の符号を用いて操作部108のPLL回路を省略すると、操作部108から表示部102へデータを伝送する際に、表示部102の側でデータ伝送に用いるクロックが生成できない。一方、操作部108にPLL回路を設けると、上記の(課題の整理1)において述べた消費電力の増大や回路規模の拡大といった問題が発生してしまう。そこで、上記の新方式の符号を用いることを前提に、操作部108にPLL回路を設けることなく、操作部108から表示部102へのデータ伝送を可能にする技術が考案された。
【0095】
<3:基盤技術2(新方式の双方向伝送への拡張;拡張方式について)>
以下、上記の新方式に係るデータ伝送方法を双方向伝送に拡張する技術について説明する。なお、以下の説明において、当該技術に係るデータ伝送方式のことを拡張方式と呼ぶことにする。この拡張方式は、操作部108から表示部102に伝送された信号からPLL回路を用いずにクロックを抽出し、そのクロックを用いて表示部102から操作部108に信号を伝送する双方向伝送技術に関する。
【0096】
(携帯端末400の構成例)
まず、図14〜図16を参照しながら、拡張方式に係る携帯端末400の機能構成について説明する。図14は、拡張方式に係る携帯端末400の外観を示す説明図である。図15は、拡張方式に係る携帯端末400の構成例を示す説明図である。図16は、拡張方式に係る携帯端末400の機能構成例を示す説明図である。但し、上記の携帯端末130、230、300と実質的に同一の機能構成については同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0097】
(双方向伝送の必要性について)
まず、図14を参照する。図14に示す携帯端末400は、主に、表示部102と、接続部106と、操作部108とにより構成されている。また、表示部102には、撮像部402と、操作スイッチ404とが設けられている。携帯端末400は、表示部102と操作部108との間でデータの双方向伝送が求められる構成の一例である。なお、表示部102にタッチパネル等が設けられている場合においても同様である。
【0098】
図2に示した携帯端末130と同様に、携帯端末400の表示部102には、液晶部104が設けられており画像等が表示される。このような画像のデータは、操作部108から表示部102に伝送される。また、表示部102に設けられた撮像部402は、被写体を撮影するためのカメラ機能を提供する。そして、表示部102に設けられた操作スイッチ404は、例えば、携帯端末400を音楽プレーヤとして利用する際に楽曲の選択やシャッフル機能の切り替え等に用いる操作手段である。また、操作スイッチ404は、マナーモードへの切り替えスイッチやシャッタースイッチ等として利用されることもある。
【0099】
撮像部402により撮影された画像のデータは、表示部102から操作部108に伝送される。同様に、操作スイッチ404の操作により出力された操作信号は、表示部102から操作部108に伝送される。このように、携帯端末400のような電子機器においては、表示部102と操作部108との間で双方向のデータ伝送が行われる。そのため、本実施形態に係る携帯端末400は、接続部106を通る伝送線路をシリアル化して接続部106の可動範囲を十分に確保しながら、双方向のデータ伝送を実現するものである。
【0100】
(機能構成)
次に、図15、及び図16を参照しながら、拡張方式に係る携帯端末400の機能構成について説明する。図15は、拡張方式に係る携帯端末400の全体的な構成を示す説明図である。図16は、拡張方式に係る携帯端末400の機能構成の中で、上記の双方向伝送を実現するために必要とされる主な機能構成について示した説明図である。
【0101】
(全体的な構成について)
まず、図15を参照する。図15に示すように、携帯端末400の表示部102には、液晶部104と、撮像部402と、操作スイッチ404と、シリアライザ/デシリアライザ408(SER/DES)とが設けられている。また、携帯端末400の操作部108には、ベースバンドプロセッサ110と、シリアライザ/デシリアライザ406(SER/DES)とが設けられている。
【0102】
図2に示した携帯端末130との相違点の1つは、表示部102に撮像部402及び操作スイッチ404設けられたことである。さらに、他の相違点は、携帯端末130のシリアライザ134、デシリアライザ138が、それぞれシリアライザ/デシリアライザ406、408に置き換えられたことである。なお、以下の説明の中で、操作部108に設けられたシリアライザ/デシリアライザ406をSER/DES(M)と表記することがある。また、表示部102に設けられたシリアライザ/デシリアライザ408をSER/DES(D)と表記することがある。
【0103】
(操作部108から表示部102へ)
まず、操作部108から表示部102に向かう信号の流れについて説明する。液晶部104に表示される画像データのパラレル信号は、ベースバンドプロセッサ110により生成される。ベースバンドプロセッサ110により生成されたパラレル信号は、シリアライザ/デシリアライザ406によりシリアル信号に変換される。シリアライザ/デシリアライザ408によりシリアル化された信号は、接続部106を通るシリアル信号線路を介して表示部102に設けられたシリアライザ/デシリアライザ408に入力される。シリアライザ/デシリアライザ408は、シリアル信号線路を介して入力されたシリアル信号をパラレル信号に変換して液晶部104に入力する。
【0104】
(表示部102から操作部108へ)
次に、表示部102から操作部108に向かう信号の流れについて説明する。上記の通り、表示部102から操作部108に向かう信号としては、例えば、撮像部402により撮影された画像データの信号や操作スイッチ404の操作により出力された操作信号等がある。ここでは、一例として、撮像部402により撮影された画像データの信号が伝送される場合について説明する。撮像部402から出力されたパラレル信号は、シリアライザ/デシリアライザ408によりシリアル信号に変換され、接続部106を通るシリアル伝送線路を介して操作部108のシリアライザ/デシリアライザ406に入力される。シリアライザ/デシリアライザ406は、シリアル伝送線路を介して入力されたシリアル信号をパラレル信号に変換し、ベースバンドプロセッサ110に入力する。
【0105】
上記のような流れで、携帯端末400は、表示部102と操作部108との間における双方向のデータ伝送を実現している。以下、このような双方向伝送を実現するためのシリアライザ/デシリアライザ406、408の機能構成について、より詳細に説明する。
【0106】
(機能構成の詳細)
ここで、図16を参照する。図16には、シリアライザ/デシリアライザ406、408を中心とする携帯端末400の機能構成が示されている。但し、図7(携帯端末300)等に描画されていたP/S変換部152等の一部構成については、その記載を省略している。さらに、携帯端末400は、図4に示した携帯端末230と同様に、信号を直流電源に重畳して伝送する形態を採用している。もちろん、拡張方式に係る技術の適用範囲は、伝送手段を電源ラインとするものに限定されない。
【0107】
上記の通り、携帯端末400は、シリアライザ/デシリアライザ406(SER/DES(M))と、シリアライザ/デシリアライザ408(SER/DES(D)とを有する。また、シリアライザ/デシリアライザ406、408は、1本の信号ライン(例えば、同軸ケーブル等)により接続されている。この信号ラインは、操作部108から表示部102に直流電源を供給するための電源線路としても用いられる。なお、以下の説明においては、SER/DES(M)を単に(M)と表記し、SER/DES(D)を単に(D)と表記する場合がある。
【0108】
図16に示すように、シリアライザ/デシリアライザ406(M)は、エンコーダ412と、ドライバ414と、合成分配器416と、重畳部418と、レシーバ420と、デコーダ422とを有する。シリアライザ/デシリアライザ408(D)は、分離部432と、合成分配器434と、レシーバ436と、クロック検出部438と、デコーダ440と、バンドパスフィルタ442(BPF)と、エンコーダ444と、ドライバ446とを有する。
【0109】
(SER/DES(M)→SER/DES(D))
まず、シリアライザ/デシリアライザ406(M)からシリアライザ/デシリアライザ408(D)にデータ(TX DATA1)を伝送する処理について説明する。
【0110】
図16に示すように、シリアライザ/デシリアライザ406(M)には、送信データ(TX DATA1)と送信クロック(TX CLK1)とが入力される。送信データ(TX DATA1)は、エンコーダ412に入力される時点でシリアル化されているものとする。また、送信クロック(TX CLK1)は、エンコーダ412、及びデコーダ422に入力される。送信データ(TX DATA1)及び送信クロック(TX CLK1)が入力されると、エンコーダ412は、上記の新方式と同様に、送信データ(TX DATA1)に送信クロック(TX CLK1)を加算して送信データを符号化する。
【0111】
送信データ(TX DATA1)がAMI符号により表現され、その伝送速度がFbである場合、エンコーダ412により、図8の(C)と同様に新方式の符号が生成される。エンコーダ412により生成された符号は、ドライバ414を介して合成分配器416に入力される。合成分配器416は、双方向伝送を実現するために、エンコーダ412に通じる信号線路とデコーダ422に通じる信号線路とを分配する手段である。データ送信時のため、合成分配器416に入力された符号は、重畳部418に入力される。
【0112】
また、重畳部418には直流電源も入力される。重畳部418に入力された符号は、直流電源に重畳される。そして、重畳部418により生成された重畳信号は、同軸ケーブルを介してシリアライザ/デシリアライザ408(D)の分離部432に入力される。分離部432は、入力された重畳信号を直流電源と符号とに分離する。分離部432により分離された直流電源は、表示部102に供給される。
【0113】
一方、分離部432により分離された符号は、合成分配器434に入力される。合成分配器434は、双方向伝送を実現するために、デコーダ440に通じる信号線路とエンコーダ444に通じる信号線路とを分配する手段である。データ受信時のため、合成分配器434に入力された符号は、レシーバ436を介してクロック検出部438、及びデコーダ440に入力される。クロック検出部438は、入力された符号からクロックを検出する。このとき、クロック検出部438は、上記の携帯端末300が有するクロック検出部332と同じ方法を用いてクロックを検出する。
【0114】
クロック検出部438により検出されたクロックは、液晶部104に供給されると共に、デコーダ440に入力される。但し、クロック検出部438により検出されたクロック(RX CLK2)の周波数はFb/2である。デコーダ440は、クロック検出部438から入力されたクロック(RX CLK2)を利用し、入力された符号に復号処理を施して受信データ(RX DATA2)を生成する。この受信データ(RX DATA2)は、クロック検出部438により検出されたクロック(RX CLK2)に同期した2ビットのパラレル受信データである。このようにしてデコーダ440により生成された受信データ(RX DATA2)は、液晶部104に入力される。
【0115】
以上、シリアライザ/デシリアライザ406(M)からシリアライザ/デシリアライザ408(D)にデータ(TX DATA1)を伝送する処理について説明した。次に、シリアライザ/デシリアライザ408(D)からシリアライザ/デシリアライザ406(M)にデータ(TX DATA2)を伝送する処理について説明する。
【0116】
(SER/DES(D)→SER/DES(M))
既に述べた通り、シリアライザ/デシリアライザ408(D)からシリアライザ/デシリアライザ406(M)にデータ(TX DATA2)を伝送するためには、シリアライザ/デシリアライザ408(D)の側で送信クロックが必要になる。しかしながら、送信クロックを生成するためにシリアライザ/デシリアライザ408(D)の側にPLL回路を設けると、消費電力が増大してしまう。
【0117】
そこで、拡張方式においては、シリアライザ/デシリアライザ406(M)からシリアライザ/デシリアライザ408(D)に送信クロックが供給されるように工夫が施される。なお、シリアライザ/デシリアライザ406、408の間のデータ伝送には、時分割伝送(TDD;Time Division Duplex)方式が用いられる。従って、シリアライザ/デシリアライザ406(M)からシリアライザ/デシリアライザ408(D)に対して順方向にデータが伝送される場合と逆方向にデータが伝送される場合とでタイムスロットが分けられる。
【0118】
シリアライザ/デシリアライザ406(M)からシリアライザ/デシリアライザ408(D)へのデータ伝送には、図8の(C)に示す符号が用いられる。また、シリアライザ/デシリアライザ406(M)は、自身がデータを送信しない時間帯であっても、図8の(B)に示したクロック信号をシリアライザ/デシリアライザ408(D)に伝送し続ける。つまり、シリアライザ/デシリアライザ408(D)がデータ伝送する時間帯においても、周波数(Fb/2)、振幅(2、−2)のクロック信号がシリアライザ/デシリアライザ408(D)に伝送され続けるのである。
【0119】
そこで、シリアライザ/デシリアライザ408(D)は、データを伝送する際、シリアライザ/デシリアライザ406(M)から受信したクロック信号を利用してデータを伝送する。シリアライザ/デシリアライザ406(M)から送信されたクロック信号は、分離部432、合成分配器434、レシーバ436を介してクロック検出部438に入力される。そこで、クロック検出部438は、入力された信号からクロックを検出し、バンドパスフィルタ442に入力する。通常、クロック検出部438により検出されたクロックには、ジッタが多く含まれている。そのため、クロック検出部438により検出されたクロックは、ジッタを抑圧するためにバンドパスフィルタ442に入力される。
【0120】
バンドパスフィルタ442によりジッタが抑圧されたクロックは、エンコーダ444に入力される。エンコーダ444には、送信データ(TX DATA2)が入力される。この送信データ(TX DATA2)は、エンコーダ444により所定の方式で符号化される。但し、送信データ(TX DATA2)が伝送される伝送線路は、シリアライザ/デシリアライザ406からクロック信号が伝送される伝送線路と共通である。そのため、送信データ(TX DATA2)は、バンドパスフィルタ442から出力されたクロックと同期するように符号化される必要がある。図8の(B)に示すクロック信号が入力されている場合、送信データ(TX DATA2)は、周波数Fb/2の成分がクロック信号に同期するように符号化される。
【0121】
エンコーダ444は、例えば、送信データ(TX DATA2)が1の場合に振幅(1,−1)を持つ上に凸のパルスを1周期分だけ出力し、0の場合に振幅(1,−1)を持つ下に凸のパルスを1周期分だけ出力する。このとき、送信データ(TX DATA2)に対応するパルス列の周波数はFb/2である。送信データ(TX DATA2)は、このようにして振幅(1,−1)をもつパルス列に符号化される。エンコーダ444により符号化された送信データ(TX DATA2)は、ドライバ446を介して合成分配器434に入力される。
【0122】
合成分配器434は、エンコーダ444から入力された振幅(1,−1)をもつ符号と、シリアライザ/デシリアライザ406(M)から伝送された振幅(2,−2)のクロックとを足し合わせる。このようにして合成分配器434により足し合わされた符号は、送信データ(TX DATA2)が1の場合に振幅(3,−3)を有し、0の場合に振幅(1,−1)を有するものとなる。合成分配器434により生成された符号は、分離部432を介して同軸ケーブルに送出されて、シリアライザ/デシリアライザ406(M)に伝送される。
【0123】
シリアライザ/デシリアライザ406(M)においては、同軸ケーブルを通じて伝送された送信データ(TX DATA2)の符号が重畳部418、合成分配器416、レシーバ420を介してデコーダ422に入力される。デコーダ422は、入力された符号の振幅値に基づいてデータを復号する。例えば、振幅値が(3,−3)の場合にデータのビット値が1と判定され、振幅値が(1,−1)の場合にデータのビット値が0と判定される。このとき、デコーダ422は、送信データ(TX DATA1)の送信に用いる送信クロック(TX CLK1)を用いてデータを復号する。
【0124】
そもそも、シリアライザ/デシリアライザ408(D)がデータ伝送に用いたクロックは、シリアライザ/デシリアライザ406(M)から伝送された送信用クロック(TX CLK1)である。そのため、デコーダ422は、入力された符号からクロックを検出する必要がない。デコーダ422により復号されたデータ(RX DATA1)、及びクロック(RX CLK1)は、ベースバンドプロセッサ110に入力される。
【0125】
以上、シリアライザ/デシリアライザ408(D)からシリアライザ/デシリアライザ406(M)にデータ(TX DATA2)を伝送する処理について説明した。このようにしてPLLを用いずにシリアライザ/デシリアライザ408(D)からシリアライザ/デシリアライザ406(M)へのデータ伝送が実現される。
【0126】
(データの伝送方法について)
次に、図17を参照しながら、拡張方式に係るデータの伝送方法について説明する。図17は、拡張方式に係るデータの伝送方法の一例を示す説明図である。
【0127】
図17には、シリアライザ/デシリアライザ406、408の間でTDD(Time Division Duplex)方式により伝送されるデータフレームFLが示されている。また、データフレームFLは、シリアライザ/デシリアライザ406(M)からシリアライザ/デシリアライザ408(D)にデータを伝送するためのタイムスロット1(SL1;M→D)を含む。さらに、データフレームFLは、シリアライザ/デシリアライザ408(D)からシリアライザ/デシリアライザ406(M)にデータを伝送するためのタイムスロット2(SL2;D→M)を含む。
【0128】
また、データフレームFLのフレーム長はTfである。このフレーム長Tfは、それぞれの伝送方向(M→D、D→M)において必要とされる伝送速度に基づいて決定される。さらに、タイムスロット1(SL1;M→D)には時間帯T1が割り当てられ、タイムスロット2(SL2;D→M)には時間帯T2が割り当てられている。例えば、液晶部104に表示される画像データよりも、撮像部402で撮影された画像データの方が少ないデータ量である場合、T1>T2の関係になる。
【0129】
図17には、タイムスロット1、2の一部(a)(b)において伝送される符号が拡大してされている。タイムスロット1の一部(a)においては、シリアライザ/デシリアライザ406(M)からシリアライザ/デシリアライザ408(D)に符号D1が伝送される。そのため、時間帯(a)に伝送される符号D1は、図8の(C)に示した新方式の符号であり、6つの振幅値を有する。また、符号D1における各ビット間隔の振幅値に対応したビット値が符号D1の下段に示されている。
【0130】
一方、タイムスロット2の一部(b)においては、シリアライザ/デシリアライザ408(D)からシリアライザ/デシリアライザ406(M)に符号D2が伝送される。図中には、符号D2と共にクロックCLKが示されている。このクロックCLKは、シリアライザ/デシリアライザ406(M)から伝送されてきたものである。従って、このクロックCLKは、伝送速度Fb/2のクロックである。上記の通り、符号D2は、互いに凸方向の異なる振幅(1,−1)のパルスで表現された符号にクロックCLKを同期して加算することにより生成されたものである。また、このとき加算されるクロックCLKは、バンドパスフィルタ442によりジッタが抑圧されたものである。
【0131】
シリアライザ/デシリアライザ406(M)からシリアライザ/デシリアライザ408(D)へのデータ伝送速度はFbであった。しかし、エンコーダ444が取得するクロックの伝送速度がFb/2であるため、シリアライザ/デシリアライザ408(D)からシリアライザ/デシリアライザ406(M)へのデータ伝送速度はFb/2となる。符号D2の下段に、各ビット間隔に対応するビット値が示されている。このビット値とクロックCLKとを併せて参照することで、符号D2の伝送速度がFb/2であることが分かる。
【0132】
但し、タイムスロット2の時間帯において、シリアライザ/デシリアライザ406(M)から伝送されるクロックの伝送速度をFbにすることで、符号D2の伝送速度をFbにすることも可能である。上記の例でクロックの伝送速度がFb/2である理由は、タイムスロット1の時間帯に送信される符号D1の生成処理に用いるクロックをそのまま継続してシリアライザ/デシリアライザ408(D)に伝送するように構成したことにある。このような構成にすることで、シリアライザ/デシリアライザ406(M)において発生させるクロックの周波数をタイムスロット毎に変更せずに済む。従って、実施の態様に応じて、タイムスロット2のデータ伝送に用いるクロック速度は適宜変更されうる。
【0133】
(課題の整理3)
以上、拡張方式に係る信号伝送方法について説明した。ここで、図18及び図19を参照しながら、拡張方式が抱える技術的課題について説明する。図18は、図16に示した拡張方式に係る携帯端末400の全体的な構成を概略的に示したものである。図19は、パワーセーブモードへの移行方法の一例を示す説明図である。
【0134】
まず、図18を参照する。携帯端末400の機能構成については、図16を参照しながら詳細に説明した。ここでは、携帯端末400が抱える課題の説明に必要な部分のみを概略的に説明する。なお、説明の都合上、シリアライザ/デシリアライザ406(M)と重畳部418とを分けて記載している。同様に、シリアライザ/デシリアライザ408(D)と分離部432とを分けて記載している。
【0135】
上記の通り、携帯端末400には、操作部108と表示部102とが設けられている。
【0136】
操作部108においては、ベースバンドプロセッサ110(BBP)で生成されたデータがシリアライザ/デシリアライザ406(M)で符号化される。このとき、PLL部158からシリアライザ/デシリアライザ406(M)にクロックが入力されて上記の符号化処理に用いられる。但し、PLL部158においては、クロック発生器で発生されたクロックの周波数が所望の周波数に変換される。シリアライザ/デシリアライザ406(M)による符号化処理で生成されたデータ信号は、重畳部418で電源に重畳され、1本の同軸ケーブルを通じて表示部102に伝送される。
【0137】
一方、表示部102においては、分離部432により、上記の重畳部418で電源が重畳された信号から電源が分離され、データ信号が抽出される。分離部432により抽出されたデータ信号は、シリアライザ/デシリアライザ408(D)に入力される。シリアライザ/デシリアライザ408では、クロック検出部438によりデータ信号からクロックが検出され、そのクロックを用いてデータが復号される。シリアライザ/デシリアライザ408(D)で復号されたデータは、液晶部104に入力される。
【0138】
また、表示部102には、撮像部402や操作スイッチ404等の操作手段が設けられている。撮像部402で撮影された画像のデータや操作スイッチ404の操作により発生する制御データ等は、シリアライザ/デシリアライザ408(D)に入力される。上記の通り、拡張方式においては、双方向伝送が可能であり、これらのデータを表示部102から操作部108に伝送することが可能である。例えば、撮像部402、操作スイッチ404からデータが入力されると、シリアライザ/デシリアライザ408(D)は、クロック検出部438で検出されたクロックを用いてデータを符号化し、操作部108から伝送されるクロック信号に同期して逆方向に伝送する。
【0139】
このように、表示部102から操作部108にデータが伝送される場合、そのデータは、クロック検出部438で検出されたクロックを用いて符号化される。そのため、拡張方式においては、操作部108が表示部102に対して常にクロック信号(又はクロック成分を含むデータ信号)を伝送するということが前提とされている。従って、操作部108から表示部102にクロック信号が伝送されなくなると、表示部102から操作部108へのデータ伝送ができなくなる。
【0140】
操作部108から表示部102へのデータ伝送が停止される条件としては、例えば、パワーセーブモードへの移行が考えられる。通常、携帯端末400が折り畳まれた場合や一定時間ユーザ操作が行われない場合にパワーセーブモードへと移行するように設定されていることが多い。パワーセーブモードにおいては、携帯端末400の電力消費を低減させるため、例えば、液晶部104のバックライトが消灯され、画面表示が行われなくなる。そのため、操作部108から表示部102へのデータ伝送が停止される。しかしながら、パワーセーブモードのときに操作スイッチ404の操作が行われることもある。このような場合において、操作スイッチ404の操作に応じて出力される制御データを表示部102から操作部108に伝送することができなくなる。
【0141】
例えば、携帯端末400が音楽プレーヤ機能付きの携帯電話である場合、携帯端末400には、操作スイッチ404として、音楽の再生制御に用いる操作ボタン等が設けられている。このような携帯端末400を音楽プレーヤとして使う場合、ユーザは、携帯端末400を折り畳んで利用することが多い。このとき、携帯端末400がパワーセーブモードに移行してしまうと、ユーザは、音楽プレーヤの再生制御を行うことができなくなってしまう。このような問題に対し、例えば、操作スイッチ404を表示部102に設けず、操作部108に設けることが考えられる。しかし、携帯端末400を折り畳んだ状態にした際、表側に位置するのは表示部102であり、ユーザの操作性やデザイン性を考慮すると、表示部102に操作スイッチ404を設ける方が好ましい。
【0142】
なお、拡張方式におけるパワーセーブモードへの移行は、図19のように行われる。図19は、図17に示す双方向伝送の処理が進行している途中でパワーセーブモードへの移行処理が発生した場合のモード切り替え動作を示す説明図である。図19に示すように、時間帯T1、T2に割り当てられたタイムスロット1、2においては、それぞれシリアライザ/デシリアライザ406(M)とシリアライザ/デシリアライザ408(D)との間でデータ伝送が行われている。
【0143】
このとき、携帯端末400が折り畳まれたり、パワーセーブモードへの移行操作が行われたりすると、シリアライザ/デシリアライザ406(M)からシリアライザ/デシリアライザ408(D)に向けてパワーセーブモードへの移行通知が伝達される。図19の例では、時間帯T3に対応するタイムスロット1において、この移行通知が伝達されている。シリアライザ/デシリアライザ408(D)にパワーセーブモードへの移行通知を伝達すると、シリアライザ/デシリアライザ406(D)は、動作モードをパワーセーブモードに切り替え、シリアライザ/デシリアライザ408(D)へのクロック供給を停止する。
【0144】
上記の通り、シリアライザ/デシリアライザ408(D)へのクロック供給が停止されると、シリアライザ/デシリアライザ408(D)は、シリアライザ/デシリアライザ406(M)に対してデータを伝送することができない。そのため、操作スイッチ404が操作されても、その操作に応じて出力される制御信号を操作部108に伝送することができない。例えば、操作スイッチ404の操作に応じてパワーセーブモードを解除することができない。その結果、パワーセーブモードにおいて、表示部102の側で一切の操作を行うことができなくなってしまう。
【0145】
上記の通り、拡張方式を採用した場合、パワーセーブモードのように操作部108から表示部102へ供給されるクロックが停止されるモード(以下、単にパワーセーブモードと呼ぶ。)において、表示部102から入力されたデータを操作部108に伝送することができないという問題がある。そこで、後述する実施形態においては、パワーセーブモードにおいて表示部102の操作スイッチ404が操作された場合に当該操作に応じてパワーセーブモードを解除できるようにする技術が提案される。
【0146】
なお、ここでは音楽プレーヤ機能を例に挙げて説明したが、表示部102に設けられる操作スイッチ404の種類は音楽プレーヤの再生制御ボタンに限定されない。例えば、マナーモードへの設定を行うためのマナーモード設定ボタン等を一例として挙げることができる。また、上記の新方式及び拡張方式は、表示部102にPLLを用いずに済むようにして消費電力の低減を目的とするものであった。しかしながら、上記の新方式及び拡張方式で用いられる符号は、直流電源に重畳できる点、及び受信信号からクロック成分を容易に抽出できる点に特徴を有するものである。従って、上記の新方式及び拡張方式の符号が有する当該特徴をうまく応用し、他の目的に用いることも可能である。後述する実施形態は、このような他の目的を有する応用も視野に入れて開発された技術であり、その目的や応用範囲が上記の新方式及び拡張方式のものに限定されない点に注意されたい。さらに、上記説明の通り、同実施形態において課題とする内容は、直流成分を含まず、かつ、クロック成分を含む符号で符号化された信号を用いて双方向伝送する方式において現れるものである点にも注意されたい。
【0147】
<4:実施形態>
以下、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態は、上記(課題の整理3)で説明した技術的課題を解決するために、パワーセーブモードの状態で表示部102の側で行われた操作に応じてパワーセーブモードを解除できるようにする技術を提供するものである。なお、本実施形態においても上記の新方式で送信データを符号化する技術、及び拡張方式に係る双方向伝送技術を一例として採用する。但し、本実施形態に係る技術は、以下に示す例に限定されず、直流成分を含まず、かつ、クロック成分を含む符号で符号化された信号を用いて双方向伝送する方式に広く応用される。
【0148】
[4−1:携帯端末500の機能構成]
まず、図20を参照しながら、本実施形態に係る携帯端末500の機能構成について説明する。但し、上記の図18に示した携帯端末400と実質的に同一の機能を有する構成要素については同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する。
【0149】
図20に示すように、携帯端末500には、操作部108と表示部102とが設けられている。操作部108には、ベースバンドプロセッサ110と、PLL部158と、シリアライザ/デシリアライザ406(M)と、電流検出部502とが設けられている。一方、表示部102には、液晶部104と、撮像部402と、操作スイッチ404と、シリアライザ/デシリアライザ408(D)と、負荷制御部504とが設けられている。上記の携帯端末400との間の主な相違点は、電流検出部502、及び負荷制御部504の有無にある。
【0150】
まず、操作部108から表示部102にクロックが供給されるデータ伝送モードにおける携帯端末500の動作について説明する。操作部108においては、ベースバンドプロセッサ110(BBP)で生成されたデータがシリアライザ/デシリアライザ406(M)で符号化される。このとき、PLL部158からシリアライザ/デシリアライザ406(M)にクロックが入力されて符号化処理に用いられる。但し、PLL部158においては、クロック発生器で発生されたクロックの周波数が所望の周波数に変換される。シリアライザ/デシリアライザ406(M)による符号化処理で生成されたデータ信号は、重畳部418で電源に重畳され、1本の同軸ケーブルを通じて表示部102に伝送される。
【0151】
一方、表示部102においては、分離部432により、上記の重畳部418で電源が重畳された信号から電源が分離され、データ信号が抽出される。分離部432により抽出されたデータ信号は、シリアライザ/デシリアライザ408(D)に入力される。シリアライザ/デシリアライザ408では、クロック検出部438によりデータ信号からクロックが検出され、そのクロックを用いてデータが復号される。シリアライザ/デシリアライザ408(D)で復号されたデータは、液晶部104に入力される。また、撮像部402で撮影された画像のデータや操作スイッチ404の操作により発生する制御データ等は、シリアライザ/デシリアライザ408(D)に入力され、操作部108に向けて伝送される。
【0152】
次に、パワーセーブモードにおける動作について説明する。上記の通り、パワーセーブモードにおいては、シリアライザ/デシリアライザ406(M)からシリアライザ/デシリアライザ408(D)にクロックが供給されない。そのため、操作スイッチ404が操作されても、その操作に応じて出力される制御信号をシリアライザ/デシリアライザ406(M)に伝送することができない。そこで、本実施形態においては、操作スイッチ404が操作された場合に、操作部108から表示部102に流れる微弱な電流の量を変化させてパワーセーブモードの解除制御を行う。この解除制御に係る手段が負荷制御部504、及び電流検出部502である。
【0153】
なお、パワーセーブモードにおいても操作部108から表示部102へと微弱な電流iが供給されている。また、その電流iは、データ伝送モードに比べて非常に少ないものである。通常、パワーセーブモードにおける電流iは、μAオーダの電流量になる。そして、パワーセーブモードにおいては、操作部108のクロック発生器、PLL部158の動作も停止される。さて、パワーセーブモードにおいて、操作スイッチ404が操作されると、操作スイッチ404から負荷制御部504に制御信号が入力される。そこで、負荷制御部504は、操作スイッチ404から入力された制御信号に応じて電流iを電流Δiだけ変化させる。例えば、負荷制御部504は、制御信号に応じて電流Δiを所定時間Toの間だけ流す。
【0154】
負荷制御部504から電流Δiが流されると、操作部108に設けられた電流検出部502により電流Δiが検出される。なお、電流検出部502には、電流検出用の抵抗Rdが設けられている。また、電流iの供給元は操作部108にあるため、負荷制御部504により電流Δiが流されると、抵抗Rdの両端に電圧降下ΔVが発生する。このとき発生する電圧降下ΔVは、ΔV=Rd・Δiである。例えば、To=10(msec)、Δi=20(mA)、Rd=0.5(Ω)とすると、ΔV=10(mV)となる。この電圧降下ΔVは、電流検出部502により検出される。
【0155】
上記の通り、パワーセーブモードにおいて流れる電流iはμAオーダであるから、Δi=20(mA)程度の電流が流れると、その電流変化を電流検出部502により明確に検知することができる。但し、抵抗Rdによる電圧降下ΔVはデータ伝送モードにおいても発生するため、電流Δi、及び抵抗Rdの値は、パワーセーブモード及びデータ伝送モードにおける携帯端末500の消費電流量に応じて適宜決定される方が好ましい。また、電流Δiの誤検出を避けるため、図20に示すように電流Δiを所定のパターンに符号化する方が好ましい。
【0156】
電流検出部502により電流Δiに起因する電圧降下ΔVが検出されると、電流検出部502からベースバンドプロセッサ110に電流Δiの検出通知が割り込み信号として入力される。この検出通知が入力されると、ベースバンドプロセッサ110は、クロック発生器、及びPLL部158の動作を再開させ、データ伝送モードに移行する。データ伝送モードに移行すると、シリアライザ/デシリアライザ406(M)からシリアライザ/デシリアライザ408(D)に向けて再びクロック成分を含むデータ信号が伝送される。その結果、表示部102から操作部108に向けて再びデータ伝送することが可能になる。なお、電流検出部502、及び負荷制御部504の動作は、パワーセーブモードにおいてのみ行われる。
【0157】
[4−2:パワーセーブモードからの復帰方法について]
上記の通り、本実施形態に係る携帯端末500は、負荷制御部504、及び電流検出部502の動作により、パワーセーブモードにおいても、表示部102に設けられた操作スイッチ404の操作に応じてパワーセーブモードを解除することができる。ここでは、この解除処理の全体的な流れについて、図21を参照しながら簡単に説明する。図21は、本実施形態に係るパワーセーブモードからデータ伝送モードへの復帰処理の流れを示す説明図である。
【0158】
図21に示すように、操作部108から表示部102に向けてパワーセーブモードへの移行通知が伝達され、表示部102に対するクロックの供給が停止される(S0)。その後、パワーセーブモードとなり、操作部108から表示部102へのクロック供給が停止された状態が維持される。この状態において、ある時点で操作スイッチ404が操作されると(S1)、負荷制御部504により電流Δiが流され、操作部108の電流検出部502により電流Δiが検出される(S2)。その検出結果を受けて、パワーセーブモードが解除され、再び操作部108から表示部102へのクロック供給が開始される(S3)。クロック供給が開始されると、操作部108と表示部102との間で双方向伝送が再開される。
【0159】
以上説明したように、本実施形態においては、パワーセーブモードに移行することで操作部108から表示部102へのクロック供給が停止された状態の中で表示部102の操作に応じたパワーセーブモードの解除を実現する技術が提供される。特に、当該技術は、表示部102においてPLLを設けずにクロックを再生することが可能な符号を用い、1本の同軸ケーブルを用いて当該符号で符号化されたデータ信号を伝送する上記の拡張方式に適用されるものである。上記の通り、本実施形態に係る技術は、表示部102の操作に応じて電流量を変化させ、当該電流量の変化を操作部108において検知し、その検知結果に応じてパワーセーブモードを解除するというものである。このような構成にすることで、モード切り替え等の用いる特別な制御線路を設けずとも上記のモード切り替えが可能になる。
【0160】
[4−3:まとめ]
最後に、本実施形態の携帯端末が有する機能構成と、当該機能構成により得られる作用効果について簡単に纏める。
【0161】
まず、本実施形態に係る携帯端末の機能構成は次のように表現することができる。当該携帯端末は、操作部108に相当する第1のモジュールと、表示部102に相当する第2のモジュールとを有する。
【0162】
第1のモジュールは、直流成分を含まず、かつ、クロックの半周期毎に極性が反転する波形に第1の送信データを符号化し、所定の信号線を通じて第2のモジュールに送信する第1の信号送信部を有する。上記の通り、第1の送信データの信号は、直流成分を含まないため、直流電源から供給される電力信号に重畳して伝送することができる。また、第1の送信データの信号には、極性反転の形でクロック成分が含まれている。そのため、第1の送信データの信号に含まれる極性反転周期を検出することにより、クロックを再生することが可能になる。
【0163】
また、第1のモジュールは、前記所定の信号線に流れる電流量を検出する電流検出部を有する。第1のモジュールは、第1のモードの場合に第1の送信データの信号を第2のモジュールに送信させ、第2のモードの場合に第1の送信データの信号の送信を停止させる送信制御部を有する。この送信制御部は、前記第2のモードの場合に前記電流検出部で検出される電流量の変化に応じて前記第1のモードに切り替える。上記のように、第1のモードにおいては、第2のモジュールに対して第1の送信データの信号が送信される。一方、第2のモードにおいては、第2のモジュールに対して第1の送信データの信号が送信されない。
【0164】
後述するように、第2のモジュールは、第1のモジュールから送信される第1の送信データの信号からクロックを再生するように構成されている。そのため、第2のモジュールにおいては、第1の送信データの信号が送信されないと、クロックを再生することができない。そのため、第2のモードにおいては、第2のモジュールから第1のモジュールにデータを伝送することができない。しかし、第1のモジュールから第2のモジュールに対して所定の信号線を通じて電流が供給されている。そこで、第2のモジュールは、後述するように、所定の信号線を流れる電流量を変化させてモード切り替えを促す信号を伝送する。この電流変化を検出するのが上記の電流検出部である。さらに、電流検出部により電流変化が検出されると、上記の送信制御部によりモードの切り替え制御が実行される。このような構成にすることで、第2のモードにおいても、第2のモジュールの側からモードの切り替え制御ができるようになる。
【0165】
さて、第2のモジュールは、前記所定の信号線を通じて送信された前記第1の送信データの信号の極性反転周期に基づいて前記クロックを検出するクロック検出部を有する。上記の通り、第1の送信データの信号にはクロック成分が含まれている。そのため、クロック検出部により、第1の送信データの信号からクロックを再生することができる。また、第2のモジュールは、前記クロック検出部で検出されたクロックを用いて直流成分を含まない波形に第2の送信データを符号化し、当該クロックに同期して前記第1のモジュールに送信する第2の信号送信部を有する。このように、第2のモジュールは、第1の送信データの信号から検出されたクロックを用いて第2の送信データを送信するように構成されている。しかし、上記の第2のモードにおいては、第2の送信データを送信するために用いるクロックが再生できない。そこで、第2のモジュールは、前記第2のモードの場合に前記所定の信号線に流れる電流量を変化させる負荷制御部を有し、電流量の変化を利用してモードの切り替え制御を実行する。その結果、モード切り替えのために余分な信号線を用いずにモードの切り替え制御を行うことが可能になる。
【0166】
また、前記負荷制御部は、前記所定の信号線に流れる電流量を所定のパターンで変化させるように構成されていてもよい。このような構成にすることで、上記の電流検出部による誤検出を抑制し、より確実にモード切り替え制御用の電流変化を検知できるようになる。
【0167】
また、前記第1のモジュールは、直流電源から供給される電力信号を前記第1の送信データの信号に重畳して重畳信号を生成する信号重畳部をさらに有していてもよい。この場合、前記第1の信号送信部は、電源線を通じて前記重畳信号を前記第2のモジュールに送信する。さらに、前記第2のモジュールは、前記重畳信号を前記電力信号と前記第1の送信データの信号とに分離する信号分離部をさらに有する。このような構成にすることで、1本の電源線で電力供給とデータ伝送とを行うことが可能になり、電源供給及びデータ伝送のために第1及び第2モジュールを物理的に接続する部分に配線されるケーブル数を1本に低減させることができる。なお、モードの切り替え制御にも、この電源線を流れる電力信号が用いられる点に注意されたい。
【0168】
また、前記第1の信号送信部から信号が送信される第1の時間帯と、前記第2の信号送信部から信号が送信される第2の時間帯とが時間軸上で分割されていてもよい。上記の拡張方式と同様に、時分割伝送方式に基づいて双方向のデータ伝送を実現するように構成されていてもよい。
【0169】
一方、前記第2の信号送信部は、前記所定の信号線を通じて送信される前記第1の送信データの信号に同期して前記第2の送信データの信号を送信するように構成されていてもよい。この場合、前記第1のモジュールは、前記所定の信号線において多重された信号から、前記第1の送信データの信号を減算して前記第2の送信データの信号を抽出する第1の信号抽出部をさらに有する。そして、前記第2のモジュールは、前記所定の信号線において多重された信号から、前記第2の送信データの信号を減算して前記第1の送信データの信号を抽出する第2の信号抽出部をさらに有する。このような構成にすることで、第1の送信データの信号と第2の送信データの信号とを同時間帯に伝送することが可能になる。
【0170】
(備考)
上記のシリアライザ/デシリアライザ406(M)は、第1の信号送信部の一例である。上記の電流検出部502、抵抗Rdは、電流検出部の一例である。上記のベースバンドプロセッサ110は、送信制御部の一例である。上記のシリアライザ/デシリアライザ408(D)は、第2の信号送信部の一例である。上記の同軸ケーブルは、所定の信号線の一例である。上記の重畳部418は、信号重畳部の一例である。上記の分離部432は、信号分離部の一例である。後述する信号減算部は、第1及び第2の信号抽出部の一例である。上記の携帯端末500は、情報処理装置の一例である。但し、当該情報処理装置の形態としては、例えば、携帯電話、携帯ゲーム機、撮像装置、ノート型PC、電子辞書、プリンタ、ファクシミリ、その他情報家電等が含まれる。とりわけ、可動部分を含み、当該可動部分で接続された2つ以上の構成部材の間で電力供給、及びデータ伝送が発生するような電子機器において上記の技術が好適に用いられる。
【0171】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0172】
例えば、上記の実施形態においては、加算器ADDに入力される符号として、AMI符号を例に挙げて説明したが、本発明の技術はこれに限定されない。既に述べたように、各種のバイポーラ符号やパーシャル・レスポンス方式の符号PR(1,−1)、PR(1,0,−1)、PR(1,0,…,0,−1)等が利用される。このように、極性反転を利用した符号形式が好適に用いられる。こうした符号はビットシフト等により生成することもできる。このように、符号の生成方法に関しては、いくつかの変形例が想定されうる。
【0173】
また、上記の実施形態においては、双方向伝送を実現する技術として、時分割で双方向伝送を実現する上記の拡張方式を例に挙げて説明した。しかしながら、同実施形態の適用範囲はこれに限定されない。例えば、表示部102から操作部108にデータ伝送を行う時刻と、操作部108から表示部102にデータ伝送を行う時刻とが重なることを許容する全二重伝送方式が採用されてもよい。この方式を適用する場合、信号線路内で両方向のデータ信号が多重される。そのため、表示部102及び操作部108に多重信号を各方向向けのデータ信号に分離する構成要素が設けられる。例えば、当該構成要素としては、自身が送信したデータ信号を減算して相手が送信したデータ信号を抽出する信号減算部が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】携帯端末の一構成例を示す説明図である。
【図2】携帯端末の一構成例を示す説明図である。
【図3】シリアル伝送に係る携帯端末の機能構成例を示す説明図である。
【図4】シリアル伝送に係る携帯端末の機能構成例を示す説明図である。
【図5】マンチェスター符号の周波数スペクトラムの一例を示す説明図である。
【図6】AMI符号の信号波形の一例を示す説明図である。
【図7】新方式に係る携帯端末の機能構成例を示す説明図である。
【図8】新方式に係る信号生成方法を示す説明図である。
【図9】新方式に係る信号の周波数スペクトラムの一例を示す説明図である。
【図10】クロック検出部の回路構成例を示す説明図である。
【図11】デコーダの回路構成例を示す説明図である。
【図12】データ判定用判定テーブルの構成例を示す説明図である。
【図13】受信信号波形とデータ判定用閾値との関係を示す説明図である。
【図14】拡張方式に係る携帯端末の一構成例を示す説明図である。
【図15】拡張方式に係る携帯端末の一構成例を示す説明図である。
【図16】拡張方式に係る携帯端末の機能構成例を示す説明図である。
【図17】拡張方式に係る信号伝送方法の一例を示す説明図である。
【図18】拡張方式に係る携帯端末の概略的な構成例を示す説明図である。
【図19】拡張方式に係るパワーセーブモードへの移行方法を示す説明図である。
【図20】本発明の一実施形態に係る携帯端末の一構成例を示す説明図である。
【図21】同実施形態に係るパワーセーブモードの解除方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0175】
100 携帯端末
102 表示部
104 液晶部
106 接続部
108 操作部
110 ベースバンドプロセッサ
112、132、140 パラレル信号線路
130 携帯端末
134 シリアライザ
136 シリアル信号線路
138 デシリアライザ
152 P/S変換部
154、312、412、444 エンコーダ
156 LVDSドライバ
158、180 PLL部
160 タイミング制御部
172、420、436 レシーバ
174、334、422、440 デコーダ
176 S/P変換部
178 クロック再生部
182 タイミング制御部
230 携帯端末
232 重畳部
234 分離部
300 携帯端末
332 クロック検出部
352、354、356、358、360 コンパレータ
362 データ判定部
364 記憶部
400 携帯端末
402 撮像部
404 操作スイッチ
406、408 シリアライザ/デシリアライザ
414、446 ドライバ
416、434 合成分配器
418 重畳部
432 分離部
438 クロック検出部
442 バンドパスフィルタ
500 携帯端末
502 電流検出部
504 負荷制御部
Rd 抵抗
ADD 加算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流成分を含まず、かつ、クロックの半周期毎に極性が反転する波形に第1の送信データを符号化し、所定の信号線を通じて第2のモジュールに送信する第1の信号送信部と、
前記所定の信号線に流れる電流量を検出する電流検出部と、
第1のモードの場合に前記第1の送信データの信号を前記第2のモジュールに送信させ、第2のモードの場合に前記第1の送信データの信号の送信を停止させ、前記第2のモードの場合に前記電流検出部で検出される電流量の変化に応じて前記第1のモードに切り替える送信制御部と、
を有する第1のモジュールと;
前記所定の信号線を通じて送信された前記第1の送信データの信号の極性反転周期に基づいて前記クロックを検出するクロック検出部と、
前記クロック検出部で検出されたクロックを用いて直流成分を含まない波形に第2の送信データを符号化し、当該クロックに同期して前記第1のモジュールに送信する第2の信号送信部と、
前記第2のモードの場合に前記所定の信号線に流れる電流量を変化させる負荷制御部と、
を有する前記第2のモジュールと;
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記負荷制御部は、前記所定の信号線に流れる電流量を所定のパターンで変化させる、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記所定の信号線は、直流電源から供給される電力信号を送信するための電源線であり、
前記第1のモジュールは、前記電力信号を前記第1の送信データの信号に重畳して重畳信号を生成する信号重畳部をさらに有し、
前記第1の信号送信部は、前記重畳信号を前記第2のモジュールに送信し、
前記第2のモジュールは、前記重畳信号を前記電力信号と前記第1の送信データの信号とに分離する信号分離部をさらに有する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第1の信号送信部から信号が送信される第1の時間帯と、前記第2の信号送信部から信号が送信される第2の時間帯とが時間軸上で分割されている、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第2の信号送信部は、前記所定の信号線を通じて送信される前記第1の送信データの信号に同期して前記第2の送信データの信号を送信し、
前記第1のモジュールは、前記所定の信号線において多重された信号から、前記第1の送信データの信号を減算して前記第2の送信データの信号を抽出する第1の信号抽出部をさらに有し、
前記第2のモジュールは、前記所定の信号線において多重された信号から、前記第2の送信データの信号を減算して前記第1の送信データの信号を抽出する第2の信号抽出部をさらに有する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
第1のモードの場合に、
第1のモジュールが、
直流成分を含まず、かつ、クロックの半周期毎に極性が反転する波形に第1の送信データを符号化し、所定の信号線を通じて第2のモジュールに送信する第1の信号送信ステップと、
前記第2のモジュールが、
前記第1のモジュールから送信された前記第1の送信データの信号の極性反転周期に基づいて前記クロックを検出するクロック検出ステップと、
前記クロック検出ステップで検出されたクロックを用いて直流成分を含まない波形に第2の送信データを符号化し、当該クロックに同期して前記第1のモジュールに送信する第2の信号送信ステップと、
が実行され、
前記第1のモードから第2のモードにモード変更された場合に、前記第1のモジュールが前記第1の送信データの信号送信を停止させるステップが実行され、
前記第2のモードの場合に、
前記第2のモジュールが前記所定の信号線に流れる電流量を変化させる負荷制御ステップと、
前記第1のモジュールが、
前記所定の信号線に流れる電流量を検出する電流検出ステップと、
前記電流検出ステップで電流量の変化が検出された場合に前記第2のモードから前記第1のモードに切り替える制御ステップと、
が実行される、モード切り替え方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−114636(P2010−114636A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285251(P2008−285251)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】