説明

情報処理装置、情報処理装置の制御方法、情報処理装置の制御プログラム、および情報処理装置の制御プログラムを記録した記録媒体

【課題】 所定領域にともに出入りする監視対象の組み合せを確度よく判定することができる情報処理装置を実現することにある。
【解決手段】 本発明の監視装置10は、複数の物品あるいはユーザそれぞれに設けられたRFIDタグ1の位置情報を算出するリーダライタ2から位置情報を受信する外部通信部11および情報抽出部12と、受信した位置情報に基づき保管室内に共に出入りするユーザと物品との組み合せを特定する特定部14とを備えているので、精度よく保管室を出入りするユーザと物品との組み合せを特定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定領域において共に出入りする監視対象を特定する情報処理装置、情報処理装置の制御方法、情報処理装置の制御プログラム、および情報処理装置の制御プログラムを記録した記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency Identification)タグ(無線タグ)の利用が普及しつつあり、例えば工程管理、物品管理、品質管理、または販売管理など幅広い分野での利用が期待されている。例えば、このようなRFIDタグの利用例として、所定領域内にある物品または人の動向を監視する技術がある。
【0003】
例えば特許文献1では、人体や物体の、室内への入退室を検知する際に、このRFIDタグを利用して人体または物体の同定を行う行動情報特定装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、陳列棚に陳列される各物品に貼付したRFIDタグと、利用者(ユーザ)に携帯されるRFIDタグとから得た応答波に基づき、利用者が物品を持ち出したか否かを判定する物品持ち出し管理システムが開示されている。
【特許文献1】特開2001−74855号公報(2001年3月23日公開)
【特許文献2】特開2001−52054号公報(2001年2月23日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示す構成では、人の退室を精度よく管理することができないといった問題が生じる。すなわち、特許文献1の構成では、赤外線センサによって人の退室を検知する構成であるが、複数の人が同時に退室したり、入室者と退室者とが同時に上記赤外線センサの前を横切ったりした場合、人の退室を正確に検出することができない。
【0006】
また、上記特許文献2に示す構成では、物品を持ち出したユーザを正確に把握することができないといった問題が生じる。すなわち、特許文献2の構成では、RFIDタグとの通信可能な範囲(通信エリア)からユーザが、物品を所持し出て行ったことは分かるが、複数のユーザが同時に通信可能な範囲から退出した場合、どのユーザが物品を持ち出したのかが分からない。すなわち、通信可能な範囲から出て行ったユーザのうち物品を所持しているユーザを特定することができないのである。
【0007】
このため、複数のユーザが同時に通信エリアを出入りすることを防ぐために、例えばゲートなどによって、ユーザの出入り可能な範囲を制限する必要がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、監視対象の所定領域への出入りを可能とする範囲を制限することなく、該所定領域にともに出入りする監視対象の組み合せを確度よく特定することができる情報処理装置、情報処理装置の制御方法、情報処理装置の制御プログラム、および情報処理装置の制御プログラムを記録した記録媒体を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る情報処理装置は、上記した課題を解決するために、複数の監視対象それぞれに設けられた識別装置との通信により、該識別装置の、通信エリアにおける位置情報を算出する通信装置から情報を受付け処理する情報処理装置であって、上記通信装置から上記算出された位置情報を受付ける受付け手段と、上記受付け手段により受付けた位置情報に基づき、所定領域に共に出入りする監視対象の組み合せを特定する特定手段とを備えていることを特徴とする。なお、上記監視対象とは、例えば人、物品、車、動物など様々なものが含まれる。
【0010】
上記構成によると、本発明に係る情報処理装置は、位置情報を受付ける受付け手段を備えているため、各識別装置が設けられた各監視対象の位置を把握することができる。また、特定手段を備えているため、各監視対象の位置情報に基づき、所定領域を共に出入りする該監視対象の組み合せを特定することができる。
【0011】
すなわち、本発明に係る情報処理装置では、上記特定手段が、通信エリアにおける各監視対象の位置情報を確認して、所定領域を共に出入りする監視対象の組み合せを特定することができる。例えば、相互に近接した位置のまま移動し所定領域を出入りする監視対象の組み合せがある場合、これらの監視対象は共に所定領域を出入りするものと判断できる。
【0012】
また、複数の監視対象がほぼ同時に所定領域を出入りする場合であっても、上記特定手段は、位置情報に基づき所定領域への出入りを判定しているため、共に出入りする監視対象の組み合せを特定することができる。すなわち、本発明に係る情報処理装置では、所定領域を共に出入りする監視対象の組み合せを特定できるように、ほぼ同時に所定領域を出入り可能とする監視対象の数を制限する必要がない。
【0013】
このため、本発明に係る情報処理装置では、所定領域を共に出入りする監視対象の組み合せを特定するために、例えばゲートなどによって、監視対象の出入り可能な範囲を制限する必要がない。
【0014】
よって、本発明に係る情報処理装置は、各監視対象の通信エリアにおける位置情報に基づき、監視対象の所定領域への出入りを可能とする範囲を制限することなく、該所定領域に共に出入りする監視対象の組み合せを確度よく特定することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る情報処理装置は、上記した構成において、上記位置情報に基づき、上記複数の監視対象のうちの少なくとも1つの監視対象の所定領域への出入りの有無を判定する出入判定手段をさらに備え、上記出入判定手段が、所定領域を出入りする監視対象があると判定した場合、上記特定手段は、該監視対象とともに上記所定領域に出入りする他の監視対象を、上記位置情報に基づき特定するように構成されていることが好ましい。
【0016】
上記構成によると出入判定手段を備えているため、上記位置情報に基づき、監視対象の位置を確認して、所定領域を出入りしている監視対象を特定することができる。
【0017】
このため、上記特定手段は、全ての監視対象に関する位置情報を参照する必要がなく、上記特定された監視対象のみの位置情報を参照すればよいため、該監視対象とともに出入りする他の監視対象を効率的に特定することができる。
【0018】
また、本発明に係る情報処理装置は、上記した構成において、上記出入判定手段により、所定領域に対してほぼ同時に複数の監視対象が出入りしていると判定された場合、上記特定手段は、該監視対象それぞれについて上記所定領域を共に出入りする監視対象同士の組み合せを、上記監視対象それぞれの位置情報に基づき特定するように構成されていてもよい。
【0019】
上記構成によると、所定領域をほぼ同時に出入りする監視対象それぞれについて、上記監視対象それぞれの位置情報に基づき、この所定領域を共に出入りする監視対象同士の組み合せをそれぞれ特定することができる。
【0020】
このように、複数の監視対象がほぼ同時に所定領域を出入りする場合であっても、所定領域を共に出入りする監視対象同士の組み合せを特定することができるため、例えばゲートなどによって、所定領域における出入り可能な範囲を制限し、出入りする監視対象の数を制限させる必要がない。
【0021】
したがって、本発明に係る情報処理装置は、各監視対象の通信エリアにおける位置情報に基づき、監視対象が所定領域への出入りを可能とする範囲を制限することなく、該所定領域に共に出入りする監視対象の組み合せを確度よく特定することができる。
【0022】
また、本発明に係る情報処理装置は、上記した構成において、上記出入判定手段により所定領域への出入りがあると判定された監視対象を第1の監視対象とすると、上記特定手段は、上記第1の監視対象から所定の距離範囲内にある第2の監視対象を、上記第1監視対象とともに所定領域を出入りする監視対象であると特定するように構成されている。
【0023】
ところで、所定領域を共に出入りすると認められる第1の監視対象と第2の監視対象とでは、第2の監視対象は、第1の監視対象から所定の距離範囲内に存在することとなる。例えば、上記第1の監視対象が人であり、第2の監視対象が前記人に保持される物であり、両者が共に所定領域を出入りする場合、第2の監視対象は、常に第1の監視対象である人によって所持され得る距離の範囲内にあることとなる。
【0024】
なお、この所定の距離範囲とは例えば監視対象の一方が人であり、他方が人により把持できるような物品である場合、物品を把持したユーザが該物品を自身の上下左右前後に移動可能とする範囲である。
【0025】
上記構成によると、上記特定手段を備えているため、上記出入り判定手段により出入りが確認された第1の監視対象から所定の距離範囲にある第2の監視対象を、該第1の監視対象とともに所定領域を共に出入りする監視対象であると特定することができる。
【0026】
以上のように、本発明に係る情報処理装置では、所定領域を出入りする第1の監視対象を基準にして所定の距離範囲にある監視対象である第2の監視対象を、該第1の監視対象と共に出入りする監視対象であると特定できる。このように、本発明に係る情報処理装置は、所定領域を共に出入りする監視対象同士を容易に特定することができる。
【0027】
また、本発明に係る情報処理装置は、上記した構成において、上記受付け手段により通信装置から受付けた位置情報の履歴である履歴情報を記録する履歴記録装置をさらに備え、上記出入判定手段が、上記履歴情報に基づき上記監視対象の所定領域への出入りを判定するように構成されていてもよい。
【0028】
上記構成によると、履歴記憶装置をさらに備えているため、監視対象の時系列の変位を把握することができる。このように監視対象の時系列の変位を把握することができるため、監視対象が所定領域を出入りする過程における位置の変位をそれぞれ知ることができる。そして、略同様な位置で互いが変位する監視対象同士をともに所定領域において出入りするものとして特定することができる。
【0029】
このため、本発明に係る情報処理装置は、偶発的に所定領域の類似する位置から出入りした、他の監視対象を、ともに出入りする監視対象であると誤って特定してしまうことを防ぐことができる。
【0030】
したがって、本発明に係る情報処理装置は、各監視対象の通信エリアにおける位置情報の履歴である履歴情報に基づき、監視対象が所定領域への出入りを可能とする範囲を制限することなく、該所定領域にともに出入りする監視対象の組み合せを確度よく特定することができる。
【0031】
また、本発明に係る情報処理装置は、上記した構成において、上記位置情報が、上記識別装置から上記通信装置までの距離を示す情報であってもよい。
【0032】
上記位置情報が距離情報であるため、この距離情報の変位に応じて、上記特定手段が共に所定領域を出入りする監視対象の組み合せを特定することができる。
【0033】
例えば、所定領域の出入り口に上記通信装置を備え、該所定領域内の識別装置とのみ通信可能となっている場合、以下のようにして共に出入りする監視対象の組み合せを特定することができる。
【0034】
すなわち、上記識別装置を備えた監視対象が上記出入り口を通過する際に取り得る、該識別装置と通信装置との間の距離範囲内において、識別装置との通信が途切れたら、この識別装置を備えた監視対象が所定領域を退出したと分かる。
【0035】
また、この通信が途切れるタイミングが略同じタイミングであり、通信が途切れた距離が上記監視対象と同様な距離にある他の監視対象が存在する場合、該他の監視対象を、上記特定手段は、上記監視対象とともに退出するものと特定することができる。
【0036】
また、本発明に係る情報処理装置は、上記した構成において、上記位置情報が、所定領域における上記識別装置の2次元座標あるいは3次元座標であることが好ましい。
【0037】
上記位置情報が所定領域における、上記識別装置の2次元座標あるいは3次元座標である。すなわち、上記識別装置の位置を所定領域空間の座標点で特定できるため、上記特定手段は、所定領域への監視対象の出入りを、該所定領域のいずれの位置から出たのか、あるいは、いずれの位置から入ってきたのかなど詳細に把握できる。
【0038】
したがって、本発明に係る情報処理装置では、上記特定手段が略同様な位置から略同様なタイミングで所定領域を出入りした監視対象同士を確度よく特定することができる。このため上記情報処理装置は、上記位置情報を参照して、複数の監視対象が同時期に所定領域を出入りした場合であっても、共に出入りする監視対象の組み合せを確度よく特定することができる。
【0039】
また、本発明に係る情報処理装置は、上記した構成において、上記所定領域を出入りする監視対象同士の組あわせの適否を示す組み合せ情報を記憶した組み合せ情報記憶装置と、上記組み合せ情報に基づき、上記特定手段により特定された監視対象の組み合せにおいて、両者がともに出入り可能であるか否かを判定する適否判定手段とを備える構成であることが好ましい。
【0040】
上記構成によると、適否判定手段を備えているため特定手段により所定領域の出入りを共に行うと特定された監視対象の組み合せが適切であるか否かを判定することができる。
【0041】
すなわち、予め監視対象同士がともに所定領域を出入りできる組み合せが制限されている場合、この制限された組み合せの適否を適否判定手段により判定することができる。
【0042】
このため、所定領域の出入りが認められている監視対象の組み合せのみ、出入り可能とするように適切に制限することができる。
【0043】
また、本発明に係る情報処理装置は、上記した構成において、上記適否判定手段による判定結果を示す情報を出力する出力手段を備えている構成であってもよい。
【0044】
上記構成によると、出力手段を備えているため、上記適否判定手段による判定結果を出力し、例えば情報処理装置を管理する管理者などに、所定領域を出入りする監視対象の組み合せの適否を知らせることができる。
【0045】
また、本発明に係る情報処理装置は、上記した構成において、上記識別装置が、RFIDタグであることが好ましい。上記識別装置がRFIDタグである場合、識別装置が設けられる監視対象に関する情報を記憶させておくことができるため、該監視対象に関する情報を読み出すことができ、各監視対象を個別に監視することができる。
【0046】
本発明に係る監視システムは、上記した課題を解決するために、上記した情報処理装置と、複数の監視対象それぞれに設けられた識別装置から送信された信号に基づき、該識別装置それぞれの位置情報を算出する位置情報算出手段、および算出した位置情報を上記情報処理装置に送信する送信手段を有する通信装置とを備えることを特徴とする。
【0047】
上記構成によると、通信装置が位置測定手段を備えているため、識別装置それぞれの位置情報を算出することができる。また、情報処理装置は、通信装置によって算出された位置情報を取得することができる。
【0048】
このため、本発明に係る監視システムは、各監視対象の通信エリアにおける位置情報に基づき、監視対象が所定領域への出入りを可能とする範囲を制限することなく、該所定領域にともに出入りする監視対象の組み合せを確度よく特定することができるという効果を奏する。
【0049】
本発明に係る情報処理装置の制御方法は、上記した課題を解決するために、複数の監視対象それぞれに設けられた識別装置との通信により、該識別装置の、通信エリアにおける位置情報を算出する通信装置から情報を受付け処理する情報処理装置の制御方法であって、上記通信装置から上記算出された位置情報を受付けるステップと、受付けた位置情報に基づき、所定領域に共に出入りする監視対象の組み合せを特定するステップとを含むことを特徴とする。
【0050】
上記方法によると、算出された位置情報を受付けるステップを含むため、識別装置を備えた各監視対象の位置を把握することができる。また、所定領域に、ともに出入りする監視対象の組み合せを特定するステップを含むため、各監視対象の位置情報に基づき、所定領域を共に出入りする該監視対象を特定することができる。
【0051】
このように、本発明に係る情報処理装置の制御方法では、通信エリアにおける各監視対象の位置情報を確認して、所定領域に共に出入りする監視対象の組み合せを特定することができる。例えば、相互に近接した位置のまま移動し所定領域を出入りする監視対象の組み合せがある場合、これらの監視対象はともに所定領域を出入りするものと判断できる。
【0052】
したがって、本発明に係る情報処理装置の制御方法では、各監視対象の通信エリアにおける位置情報に基づき、監視対象が所定領域への出入りを可能とする範囲を制限することなく、該所定領域をともに出入りする監視対象の組み合せを確度よく特定することができるという効果を奏する。
【0053】
なお、上記情報処理装置が備える各手段は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記情報処理装置をコンピュータにて実現させる情報処理装置の制御プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0054】
本発明に係る情報処理装置は、以上のように、複数の監視対象それぞれに設けられた識別装置との通信により、該識別装置の、通信エリアにおける位置情報を算出する通信装置から情報を受付け処理する情報処理装置であって、上記通信装置から上記算出された位置情報を受付ける受付け手段と、上記受付け手段により受付けた位置情報に基づき、所定領域に共に出入りする監視対象の組み合せを特定する特定手段とを備えていることを特徴とする。
【0055】
したがって、本発明に係る情報処理装置は、各監視対象の通信エリアにおける位置情報に基づき、監視対象が所定領域への出入りを可能とする範囲を制限することなく、該所定領域にともに出入りする監視対象の組み合せを確度よく特定することができるという効果を奏する。
【0056】
本発明に係る監視システムは、以上のように、上記した情報処理装置と、複数の監視対象それぞれに設けられた識別装置から送信された信号に基づき、該識別装置それぞれの位置情報を算出する位置情報算出手段、および算出した位置情報を上記情報処理装置に送信する送信手段を有する通信装置とを備えることを特徴とする。
【0057】
このため、本発明に係る監視システムは、各監視対象の通信エリアにおける位置情報に基づき、監視対象が所定領域への出入りを可能とする範囲を制限することなく、該所定領域にともに出入りする監視対象の組み合せを確度よく特定することができるという効果を奏する。
【0058】
本発明に係る情報処理装置の制御方法は、以上のように、複数の監視対象それぞれに設けられた識別装置との通信により、該識別装置の、通信エリアにおける位置情報を算出する通信装置から情報を受付け処理する情報処理装置の制御方法であって、上記通信装置から上記算出された位置情報を受付けるステップと、受付けた位置情報に基づき、所定領域に共に出入りする監視対象の組み合せを特定するステップとを含むことを特徴とする。
【0059】
したがって、本発明に係る情報処理装置の制御方法では、各監視対象の通信エリアにおける位置情報に基づき、監視対象が所定領域への出入りを可能とする範囲を制限することなく、該所定領域をともに出入りする監視対象の組み合せを確度よく特定することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
(実施形態1)
本発明の一実施形態について図1ないし図16に基づいて説明すると以下の通りである。すなわち、本実施の形態に係る監視システム90は、図2に示すように、物品および該物品を所持するユーザの保管室100におけるユーザの出入りを監視するものである。より具体的には、この監視システム90では、物品およびユーザの変位を記録し、該ユーザの物品の保管室100からの持ち出しの適否を判断する。
【0061】
この監視システム90では、各物品それぞれにRFIDタグ(識別装置)1aが備えられており、また、保管室100に入室する各ユーザも、例えばRFIDタグ(識別装置)1bが組み込まれた入室許可証などを所持している。
【0062】
そして、物品を保持したユーザがゲート80を通過すると、ゲート80に設置されたリーダライタ(通信装置)2によって上記物品に備えられたRFIDタグ1aおよびユーザが備えるRFIDタグ1bそれぞれの位置情報が算出される。そして、この算出された位置情報に基づき監視装置(情報処理装置)10が上記ユーザの上記物品の持ち出しの適否を判定するように構成されている。
【0063】
また、本実施形態ではユーザによって、持ち出しできる物品の種類が限定されている。そこで、上記監視システム90では、物品を所持したユーザにおいて、該物品の、保管室(所定領域)100内からの持ち出し許可を得ているか否かを判定する。なお、この図2は、本実施の形態に係る監視システム90の一例を示す図である。
【0064】
ここで図1を参照して、本実施の形態に係る監視システム90の構成についてより詳細に説明する。なお、この図1は、本実施の形態に係る監視システム90の要部構成を示すブロック図である。
【0065】
(監視システムの構成)
本実施の形態に係る監視システム90は、図1に示すように、1つ以上のRFIDタグ1a…、1つ以上のRFIDタグ1b…、リーダライタ2、および監視装置10を備えた構成となっている。
【0066】
RFIDタグ1aおよびRFIDタグ1bは、各種物品や人に取り付けられるものであり、取り付けられている物品あるいは人に関連する情報を保持するものである。なお、本実施形態では、説明の便宜上、物品に備えられているRFIDタグをRFIDタグ1aとし、人が備えているRFIDタグは、RFIDタグ1bとするが、特に区別する必要がない場合は単にRFIDタグ1と称する。
【0067】
また、RFIDタグ1は、図示しないが、無線通信用IC(Integrated Circuit)、記憶部、およびアンテナなどを備えた構成となっている。なお、本実施形態では、RFIDタグ1として、電池などの電源を有しておらず、リーダライタ2から電波で送電された電力によって回路が動作し、リーダライタ2と無線通信を行うパッシブタイプのRFIDタグ1を用いている。
【0068】
しかしながら、本実施形態において用いられるRFIDタグ1は、上記のようなパッシブタイプのRFIDタグに限定されるものではなく、電池などの電源を有するアクティブタイプのRFIDタグであっても構わない。
【0069】
リーダライタ2は、各RFIDタグ1との間で無線通信を行い、RFIDタグ1に記憶されている情報の読み書きを行う装置である。なお、本実施形態では、リーダライタ2は、RFIDタグ1に記憶されている情報の読み書きを行うものとしているが、これに限定されるものではなく、RFIDタグ1に記憶されている情報の読み出しのみを行うRFIDリーダであってもよい。
【0070】
本実施形態では、リーダライタ2が送受信する電波の周波数帯域は、800MHz〜960MHz前後のいわゆるUHF帯としている。このような周波数帯域の電波を用いることにより、リーダライタ2は、数m〜数10m程度の距離範囲内に位置するRFIDタグ1と通信可能となる。なお、本実施形態においては、UHF帯を用いた通信を想定しているが、これに限定されるものではなく、RFIDタグ向けの周波数帯域としての、13.56MHz帯、2.45GHz帯などの周波数帯域を用いてもよく、さらには、無線による通信を行うことが可能なその他の周波数帯による通信が行われても構わない。
【0071】
なお、上記リーダライタ2の詳細な構成の説明については後述する。
【0072】
上記監視装置10は、リーダライタ2を介してRFIDタグ1から読取った情報および位置情報に基づき、ユーザの保管室100外への物品の持ち出し許可を判定する装置である。なお、この監視装置10の詳細な構成の説明については後述する。
【0073】
(リーダライタの構成)
まず、以下において図1を参照してリーダライタ2の構成について説明する。
【0074】
上記リーダライタ2は、送信アンテナ3、受信アンテナ4、通信処理部5、位置測定部(位置情報算出手段)6、および外部通信部7を備えた構成となっている。
【0075】
送信アンテナ3は、RFIDタグ1に対して電波を送信するアンテナであり、受信アンテナ4は、RFIDタグ1から送られてきた電波を受信するアンテナである。この送信アンテナ3および受信アンテナ4は、例えばパッチアンテナやアレーアンテナなどによって構成される。なお、本構成例では、送信アンテナ3と受信アンテナ4とをそれぞれ別に設けているが、1つのアンテナを送信アンテナ3および受信アンテナ4の両方の機能を有するものとして用いる構成としてもよい。
【0076】
通信処理部5は、本実施の形態に係るリーダライタ2とRFIDタグ1との間の通信に係る各種制御を行うブロックである。具体的には、通信処理部5は、送信アンテナ3から送信される送信信号の変調、増幅などの処理を行ったり、受信アンテナ4において受信された受信信号の増幅、復調などの処理を行ったりする。
【0077】
また、通信処理部5は、通信対象となるRFIDタグ1に対して、送信アンテナ3および/または受信アンテナ4を介して情報の読み出しおよび/または書き込み制御を行うブロックでもある。なお、このRFIDタグ1に対する、情報の読み出しおよび/または書き込み制御は、監視装置10から、外部通信部7を介して受信した指示に応じて実行される。
【0078】
位置測定部6は、RFIDタグ1から受信した受信信号に基づいて、該RFIDタグ1の位置を測定するブロックである。詳細は後述するが、RFIDタグ1の位置の測定としては、リーダライタ2とRFIDタグ1との距離の測定、リーダライタ2から見た際のRFIDタグ1の方向の測定、および、RFIDタグ1の空間的な位置の測定などが挙げられる。
【0079】
なお、リーダライタ2とRFIDタグ1との距離とは、厳密には、リーダライタ2における送信アンテナ3とRFIDタグ1との距離と、RFIDタグ1と受信アンテナ4との距離の加算平均に相当する。なお、RFIDタグ1がアクティブタイプの場合には、受信アンテナ4とRFIDタグ1との距離に相当する。
【0080】
外部通信部7は、リーダライタ2において読み出されたRFIDタグ1の情報を監視装置10に送信したり、監視装置10からのRFIDタグ1に対する書き込み情報を受信したりするブロックである。監視装置10と外部通信部7との間は、有線によって通信接続されているが無線で接続される構成であってもよい。また、リーダライタ2によるRFIDタグ1に対する読み書き処理に基づいて動作する監視装置10が、該リーダライタ2を内蔵する構成であっても構わない。
【0081】
(距離測定に関する構成)
次に、上記リーダライタ2において、RFIDタグ1と当該リーダライタ2との間の距離を測定するための構成の一例について図3を参照しながら説明する。同図に示すように、通信処理部5は、周波数調整部としてのPLL(Phase Locked Loop)部5A、変調部5B、電力増幅部5C、増幅部5D、周波数変換部5E、周波数制御部5F、送信制御部5G、および受信制御部5Hを備えている。また、位置測定部6は、位相情報取得部6A、および距離算出部6Bを備えている。
【0082】
通信処理部5において、PLL部5Aは、送信アンテナ3から送信される送信信号の搬送周波数を設定するブロックであり、PLL回路によって構成される。変調部5Bは、PLL部5Aによって生成された搬送信号に変調を加えて送信信号にデータを重畳させる処理を行う。
【0083】
本実施形態においては、変調部5Bは、ASK(Amplitude Shift Keying)変調によって送信信号を生成する。なお、送信信号の変調方式としては、上記のASK変調に限定されるものではなく、FSK(Frequency Shift Keying)変調、PSK(Phase Shift Keying)変調など、その他のデジタル変調方式を採用してもよい。電力増幅部5Cは、送信信号の増幅を行うブロックである。
【0084】
また、増幅部5Dは、受信アンテナ4において受信された受信信号の増幅を行うブロックである。周波数変換部5Eは、増幅部5Dにおいて増幅された受信信号の周波数を変換して、より低周波の信号に変換する処理を行うブロックである。
【0085】
また、周波数制御部5Fは、PLL部5Aによって設定される搬送信号の周波数を制御するブロックである。送信制御部5Gは、変調部5Bに対して、送信信号を変調すべきデータを入力するブロックである。受信制御部5Hは、距離算出部6Bによって算出された距離情報を受信する処理を行うブロックである。
【0086】
また、位置測定部6において、位相情報取得部6Aは、周波数変換部5Eによって周波数変換された受信信号の位相の変化量を検出し、これを位相の変化量情報として取得するブロックである。なお、受信信号の位相の変化量とは、該受信信号が所定の距離を伝播することによって生じる位相の変化量を示している。
【0087】
距離算出部6Bは、位相情報取得部6Aによって取得された位相の変化量情報に基づいて、RFIDタグ1とリーダライタ2との距離を算出するブロックである。この距離の算出方法の一例について、以下に図4(a)〜図4(c)、および図5を参照して説明する。
【0088】
(距離測定の詳細)
本実施形態では、リーダライタ2がRFIDタグ1に対してR/W要求信号(要求信号)を送信し、RFIDタグ1がこれに応じてタグ応答信号を返信するようになっている。この様子を図4(a)〜図4(c)に示す。
【0089】
リーダライタ2は、常に特定の信号を送信している一方、RFIDタグ1に対してタグ応答信号を送信することを要求する時に、図4(b)に示すように、タグ応答信号の返信を要求するR/W要求信号を送信する。
【0090】
すなわち、リーダライタ2おける送信制御部5Gは、定常状態では定常状態を示すデータを送信するように変調部5Bを制御し、タグ応答信号を要求する際には、R/W要求信号を構成するデータを送信するように変調部5Bを制御する。
【0091】
RFIDタグ1は、常にリーダライタ2から送られてくる信号を監視し、R/W要求信号を受信したことを検知すると、それに応答する形でタグ応答信号を送信する。
【0092】
タグ応答信号は、図4(c)に示すように、プリアンブル部とデータ部とによって構成されている。プリアンブル部は、タグ応答信号の始まりを示すデータを示しており、同一規格(例えばISO/IEC 180000−6)内であれば、全てのRFIDタグ1に共通の所定のデータとなっている。データ部は、プリアンブル部に引き続いて送信されるものであり、RFIDタグ1から送信される実質的な情報を示すデータを示している。このデータ部に含まれる情報としては、例えば各RFIDタグ1に固有のID情報などが挙げられるが、RFIDタグ1から送信すべき情報、例えばRFIDタグ1内の記憶部に格納されている各種情報などを含んでいてもよい。
【0093】
そして、リーダライタ2は、R/W要求信号を2回送信するとともに、各R/W要求信号の送信における搬送周波数を互いに異ならせている。すなわち、リーダライタ2における周波数制御部5Fは、1回目のR/W要求信号の送信時には、第1の周波数fで搬送信号を出力するようにPLL部5Aを制御し、2回目のR/W要求信号の送信時には、第1の周波数fとは異なる第2の周波数fで搬送信号を出力するようにPLL部5Aを制御する。この状態を、図5に示す。
【0094】
同図に示すように、第1の周波数fで送信されたR/W要求信号をRFIDタグ1が受信すると、同じく第1の周波数fでタグ応答信号が返信される。そして、リーダライタ2では、位相情報取得部6Aが受信したタグ応答信号のプリアンブル部を解析することによって、タグ応答信号の位相の変化量を示すφを検出する。同様に、第2の周波数fで送信されたR/W要求信号をRFIDタグ1が受信すると、同じく第2の周波数fでタグ応答信号が返信される。そして、リーダライタ2では、位相情報取得部6Aが受信したタグ応答信号のプリアンブル部を解析することによって、タグ応答信号の位相の変化量を示すφを検出する。
【0095】
なお、上記の例では、タグ応答信号の位相の変化量は、プリアンブル部を解析することによって検出するようになっているが、これに限定されるものではなく、データ部をも含めて位相の変化量を検出してもよいし、データ部において位相の変化量を検出してもよい。ただし、変調方式がPSKである場合には、内容が変化しうるデータ部に基づいて、距離に伴う位相の変化量を検出することは困難となるので、内容が固定であるプリアンブル部において位相の変化量を検出することが好ましい。
【0096】
また、上記リーダライタ2は、この位相の変化量の検出を、本実施形態では50msecごとに行うように設定されている。すなわち、上記リーダライタ2は、50msec間隔でRFIDタグ1に対してR/W要求信号を2回送信するようになっている。なお、この位相の変化量の検出のタイミングは50msec間隔に限定されるものではなくもっと短い時間間隔であってもよいし、さらに長い時間間隔であてもよい。物品の移動速度とリーダライタ2の通信可能な範囲に応じて適切に決められることが好ましい。
【0097】
以上のようにして、位相情報取得部6Aが位相の変化量φおよびφを検出すると、この位相の変化量の情報が距離算出部6Bに伝送される。距離算出部6Bは、φおよびφに基づいて、RFIDタグ1とリーダライタ2との距離を以下のように算出する。
【0098】
まず、受信アンテナ4からRFIDタグ1までの距離を距離rとすると、第1の周波数fおよび第2の周波数fによって搬送される信号が往復2rの距離を伝搬することによって生じる位相の変化量φおよびφは、次の式で表される。
【0099】
【数1】

【0100】
上式において、cは光速を表している。上記の2つの式に基づいて、距離rは、次の式で求められる。
【0101】
【数2】

【0102】
以上のようにして、位相の変化量φおよびφに基づいて、送信アンテナ3からRFIDタグ1までの距離rを求めることができる。なお、RFIDタグ1において、R/W要求信号を受信してからタグ応答信号を送信する間に、位相のずれが生じることが予想されるが、この位相のずれは、第1の周波数fおよび第2の周波数fによって搬送される信号のどちらにおいても同じ量となる。よって、RFIDタグ1における信号の送受信時に生じる位相のずれは、上記の距離の算出に影響を与えることはない。
【0103】
また、上記したように、リーダライタ2は、RFIDタグ1に対して50msec間隔でR/W要求信号を2回送信する構成である。このため、リーダライタ2は、RFIDタグ1と自装置との間の距離を50msecごとに測定することができる。
【0104】
なお、数2において、Δφが2π以上となっている場合には、距離rを的確に算出することができない。すなわち、測定可能な距離rの最大値rmaxは、Δφ=2πの時であり、次の式で表される。
【0105】
【数3】

【0106】
ここで、例えば第1の周波数fと第2の周波数fとの差を5MHzとした場合、数3より最大距離rmaxは30mとなる。また、同様に、第1の周波数fと第2の周波数fとの差を2MHzとした場合、数3より最大距離rmaxは75mとなる。UHF帯を利用した場合では、想定される最大通信距離は10m程度であるので、上記のような測定は実用上問題がないことがわかる。
【0107】
なお、ユーザが出入りするゲート80の幅が大きくなり、上記の最大距離rmax以上の測定が必要となる場合は、例えば受信信号の受信強度の測定を併用することによって、距離rの測定を行うことが可能である。
【0108】
具体的には、Δφが2π以上となる可能性がある場合、距離rの候補r’は、r’=r+n・rmax(nは0以上の整数)となる。よって、受信信号の受信強度は、距離rが長くなる程小さくなることを利用することによって、上記のnの値を特定することが可能となる。
【0109】
なお、上記した「距離測定に関する構成」および「距離測定の詳細」に示す測定方法はリーダライタ2とRFIDタグ1との距離を測定するための一例であって、本実施の形態に係るリーダライタ2の構成はこれに限定されるものではない。すなわち、上記リーダライタ2は、自装置とRFIDタグ1との間の距離を、RFIDタグ1から受信した信号から測定することができる構成であればよい。
【0110】
また、アクティブタイプのRFIDタグを用いる場合には、リーダライタ2側からR/W要求信号を送信せずに、RFIDタグ1側から能動的に送られるタグ応答信号に基づいて、距離の測定を行うようになっていてもよい。
【0111】
以上の距離測定においては、受信信号の位相を検出する処理が行われているが、この位相の変化量の検出を行うことを可能とする具体的な構成について、図6を参照しながら以下に説明する。この具体例では、通信処理部5は、受信信号をI信号とQ信号とに分離して位置測定部6に入力することによって、位置測定部6における位相の変化量の検出処理を可能とさせるものとなっている。同図に示すように、通信処理部5は、増幅部5Dとしての2つの増幅部5D1・5D2、周波数変換部5Eとしてのミキサ5E1・5E2、および90°移相部5E3を備えている。
【0112】
受信アンテナ4で受信された受信信号は、2つの経路に分岐し、一方は増幅部5D1に入力され、他方は増幅部5D2に入力される。増幅部5D1は、入力された受信信号を増幅してミキサ5E1に入力する。増幅部5D2は、入力された受信信号を増幅してミキサ5E2に入力する。
【0113】
ミキサ5E1は、増幅部5D1から入力された受信信号と、PLL部5Aから出力された搬送信号とを足し合わせることによってI信号を出力し、このI信号を位相情報取得部6Aに入力する。ミキサ5E2は、増幅部5D2から入力された受信信号と、PLL部5Aから出力され、90°移相部5E3を介して位相が90°変化させられた搬送信号とを足し合わせることによってQ信号を出力し、このQ信号を位相情報取得部6Aに入力する。
【0114】
以上の構成において行われる受信処理および距離rの算出処理の詳細について以下に説明する。
【0115】
往復2rの距離を伝搬してリーダライタ2において受信される信号は、搬送信号の周波数をfとすると、次の式で表される。
【0116】
【数4】

【0117】
上式において、tは時間、s(t)は周波数fの搬送信号によって伝送される信号の状態、D(t)は変調部5BにおいてASK変調が行われた場合のベースバンド信号、Aは搬送信号自体の振幅、φは往復2rの距離を伝搬することによる位相の変化量をそれぞれ示している。この場合、ミキサ5E1によって出力されるI信号の状態を示すI(t)、および、ミキサ5E2によって出力されるQ信号の状態を示すQ(t)は、次の式で表される。
【0118】
【数5】

【0119】
【数6】

【0120】
以上より、I信号およびQ信号に基づいて、周波数fの搬送信号による信号の位相の変化量φは、次の式で求められる。
【0121】
【数7】

【0122】
同様に、周波数fの搬送信号による信号の位相の変化量φは、次の式で求められる。
【0123】
【数8】

【0124】
以上のようにして、位相情報取得部6Aは、入力されたI信号およびQ信号に基づいて、位相の変化量φおよびφを取得する。そして、距離算出部6Bは、距離rを次の式によって算出する。
【0125】
【数9】

【0126】
(距離測定処理の流れ)
次に、図7に示すフローチャートを参照しながら、リーダライタ2における上記の距離測定処理の流れについて説明する。
【0127】
まず、距離測定処理が開始されると、ステップ1(以降、S1のように称する)において、周波数制御部5Fが、R/W要求信号を送信する際の搬送信号の周波数を第1の周波数となるようにPLL部5Aを制御する。
【0128】
次に、送信制御部5Gが、R/W要求信号を示すデータを搬送信号に重畳させるように変調部5Bを制御する。そして、変調部5Bによって変調された送信信号が、電力増幅部5Cによって増幅された後に送信アンテナ3から出力される(S2)。
【0129】
その後、RFIDタグ1がR/W要求信号を検出すると、タグ応答信号を返信する。このタグ応答信号を受信アンテナ4が受信し、通信処理部5が受信処理を行う(S3)。
【0130】
その後、受信制御部5Hは、受信すべき全ての周波数の受信信号を受信したか否かを判定し、全て受信していないと判定された場合(S4においてNO)には、S1からの処理に戻る。ここで、上記の例では、受信信号の周波数としては、第1および第2の周波数が想定されているので、受信制御部5Hは、第1および第2の周波数の受信信号をともに受信したか否かを判定することになる。
【0131】
この時点では、第1の周波数の受信信号のみを受信しているので、S1からの処理が行われることになる。そして、2回目のS1の処理において、周波数制御部5Fが、R/W要求信号を送信する際の搬送信号の周波数を第2の周波数となるようにPLL部5Aを制御する。その後、S2、S3の処理が行われ、受信すべき全ての周波数の受信信号を受信したと判定され(S4においてYES)、S5の処理に移行する。
【0132】
S5では、位相情報取得部6Aが受信信号の位相情報を取得し、S6において、取得された位相情報に基づいて、距離算出部6BがRFIDタグ1とリーダライタ2との距離を上記した手法によって算出する。算出された距離情報は、受信制御部5Hに伝送される。以上により、距離測定処理が完了する。
【0133】
(監視装置の構成)
次に、本実施の形態に係る監視装置10の構成について、再度図1を参照して説明する。
【0134】
図1に示すように、上記監視装置10は、外部通信部(受付け手段)11、情報抽出部(受付け手段)12、入退室監視部(出入判定手段)13、特定部(特定手段)14、認証判定部(適否判定手段)15、出力指示部(出力手段)16、および情報格納部(履歴記録装置、組み合せ情報記憶装置)17を備えてなる構成である。
【0135】
外部通信部11は、リーダライタ2において読み出されたRFIDタグ1の情報を受信したり、RFIDタグ1に対する書き込みをリーダライタ2に指示する情報を送信したりするブロックである。外部通信部11は、リーダライタ2から受信した情報を情報抽出部12に送信する。また、外部通信部11は、上記書き込み指示する情報を、出力指示部16からの指示に応じて行う。
【0136】
情報抽出部12は、外部通信部11を介してリーダライタ2から受信した情報の中から、RFIDタグ1の距離情報(RFIDタグ1とリーダライタ2との間の距離)を抽出するものである。この情報抽出部12は、抽出した距離情報を情報格納部17に記憶させる。
【0137】
すなわち、上述したように本実施形態では、リーダライタ2が、自装置とRFIDタグ1との間の距離を例えば50msecという非常に短い時間間隔で常時算出するように構成されている。また、RFIDタグ1から取得する応答信号には、上記したように各RFIDタグ1に固有のID情報(RFIDタグ1aの場合は物品ID、RFIDタグ1bの場合はユーザIDを含む)が含まれている。
【0138】
そこで、上記情報抽出部12は、受信した距離情報に割り当てられているID情報に応じて、RFIDタグ1ごとの距離情報の履歴を情報格納部17に記録する。つまり、この情報抽出部12は、RFIDタグ1aの距離情報を第2履歴情報19として、また、RFIDタグ1bの距離情報を第1履歴情報18として情報格納部17に記録する。
【0139】
なお、上記外部通信部11と情報抽出部12とによって受付け手段を実現する。
【0140】
本実施形態では、上記第1履歴情報18は、例えば図8(a)に示すように、各ユーザIDに対応する距離情報が、該距離情報が算出された時間ごとに記録されている。また、第2履歴情報19は、例えば図8(b)に示すように、各物品IDに対応する距離情報が、該距離情報が算出された時間ごとに記録されている。
【0141】
なお、本実施形態では、RFIDタグ1aまたはRFIDタグ1bまでの距離情報の履歴をそれぞれ第1履歴情報18と第2履歴情報19とに分けて別々に管理する構成であるが、1つの履歴情報として管理する構成であってもよい。すなわち、各距離情報の履歴には、ユーザIDまたは物品IDが対応付けられている。このため、監視装置10が、第1履歴情報18と第2履歴情報19とを1つの履歴情報として情報格納部17に記憶している場合であって、記録されている距離情報の履歴がどのユーザまたは物品に備えられたRFIDタグ1との距離情報を示しているのか特定することができる。
【0142】
入退室監視部13は、情報格納部17に記録された第1履歴情報18を参照して、このRFIDタグ1bを備えたユーザの、保管室100における出入りを監視するものである。具体的には、この入退室監視部13は、上記ユーザが退室あるいは入室するタイミングを判定する。そして、入退室監視部13は、この判定した結果を特定部14に通知する。
【0143】
つまり、本実施形態では、上記入退室監視部13は、定期的に情報格納部17に記録された第1履歴情報を確認するように構成されている。そして、上記入退室監視部13は、第1履歴情報18を参照して、ユーザに備えられたRFIDタグ1bの変位を監視する。
【0144】
ここで、RFIDタグ1bの変位の監視とは、距離情報の記録開始時刻、該距離情報の記録終了時刻(距離情報が途切れた時刻)、所定時間あたりの距離情報の変化量などを確認し退室のタイミングを特定することである。なお、この保管室100におけるRFIDタグ1bを備えたユーザの退室時の判定処理についての詳細は後述する。
【0145】
特定部14は、入退室監視部13からユーザの退室を示す判定を受けると、情報格納部17に記録された第1履歴情報18と第2履歴情報19とを参照して、退室したと判定されたユーザが持ち出す物品を特定する。すなわち、上記特定部14は、ゲート80を通過して退室するユーザのRFIDタグ1bと物品のRFIDタグ1aとの組み合せを特定する。そして、特定部14は、特定した組み合せを認証判定部15に通知する。
【0146】
認証判定部15は、特定部14から受信した判定結果に基づき、退室したと判定されたユーザと物品との組み合せにおいて、ユーザがこの物品を所持して退室できる権限を有しているか否かを認証情報20を参照して判定する。すなわち、本実施形態では、ユーザごとに保管室100から持ち出せる物品と持ち出せない物品とが決められている。そして、上記認証情報20には、例えば図9に示すように、ユーザ(ユーザID)と物品(物品ID)との対応関係において、退室が許可されているか否かを示す情報が記録されている。なお、認証情報20は、図9に示す情報に限定されるものではなく、保管室100からの出入りを制限したい内容に応じて適切に設定される。
【0147】
出力指示部16は、認証判定部15からの通知に応じて、該認証判定部15による判定結果を表示装置21に表示させるものである。なお、本実施形態では、認証判定部15からの通知を表示装置21に表示させることにより、ユーザによる物品の持ち出しが適切であるか否か、もしくは物品を所持したユーザの入室が適切であるか否かを、本実施形態に係る監視システム90の管理者に示すことができ構成である。
【0148】
しかし管理者への提示方法はこれに限定されるものではなく、例えば音声によってなされてもよいし、表示灯などの点灯によってなされる構成であってもよい。例えば、音声による提示方法の場合、監視システム90は、上記表示装置21の代わりにスピーカを備え、出力指示部16が音声としてユーザが認識できるように出力データを変換し、該スピーカに出力することで実現できる。
【0149】
(入退室の判定処理)
次に、図10(a)、図10(b)、図11および図12を参照して、本実施の形態に係る監視システム90における、ユーザおよび物品それぞれの入退室の判定処理について説明する。
【0150】
まず、前提として本実施の形態に係る監視システム90では、受信アンテナ4が指向性を有しており、保管室100内の所定領域にあるRFIDタグ1とのみ通信できるように配置されている。すなわち、受信アンテナ4の通信は、図10(a)および図10(b)に示すように、保管室100内におけるの所定領域として、受信アンテナ4の通信可能な距離範囲に限定されるように構成されている。
【0151】
なお、本実施形態では、RFIDタグ1bを備えたユーザと、RFIDタグ1aが備えられた物品との出入りを確認するための基準として、ゲート通過判断範囲を設けている。そして、監視装置10は、予めこのゲート通過判断範囲と受信アンテナ4との間の最大距離および最小距離とを示す情報(不図示)を記憶している。
【0152】
このゲート通過判断範囲とは、ユーザが保管室100を出入りしたか否かを判定するための位置範囲であり、ゲート80を出入りするユーザが必ず通過する領域である。本実施形態では、図10(a)および図10(b)に示すように、上下方向では、保管室100内の床面とほぼ垂直となり、かつ受信アンテナ4の先端と結ぶ範囲であり、さらに上下方向と略垂直に交わる水平面では、ゲート80と並行となる方向の範囲である。
【0153】
なお、ゲート通過判断範囲と受信アンテナ4との間の最大距離および最小距離とを示す情報(不図示)を、ここでは通過判断距離情報と称する。
【0154】
このように、本実施形態に係る受信アンテナ4は、保管室100の所定領域にあるRFIDタグ1からの信号のみを受信できるようになっている。なお、この図10は、本実施の形態に係るリーダライタの通信可能範囲(通信エリア)と、ユーザおよび物品との位置関係の一例を模式的に示す図であり、同図(a)は、保管室100の所定領域における空間の側面図であり、同図(b)は、保管室100の所定領域における空間の平面図である。
【0155】
なお、受信アンテナ4の取り付け位置は図10(a)および図10(b)に示す位置に限定されるものではない。例えば、この受信アンテナ4の取り付け位置を、退室方向側を通信エリアとする向きとしてもよい。このように受信アンテナ4が取り付けられる場合、該受信アンテナ4は、保管室100外にあるRFIDタグ1からの信号のみ受信可能となっている。
【0156】
つまり、本実施形態に係るリーダライタ2が備える受信アンテナ4は、少なくとも保管室100側または保管室100外側いずれか一方の領域に存在するRFIDタグ1からの信号のみ受信が可能となっていればよい。
【0157】
上記した前提において、図12に示す処理フローに従って、本実施の形態に係る監視システム90は、保管室100を出入りするユーザと物品との組み合せを特定することができる。
【0158】
まず、監視システム90では、リーダライタ2がRFIDタグ1(RFIDタグ1aおよび/またはRFIDタグ1b)の検出処理を行う(S11)。
【0159】
本実施形態では、リーダライタ2が通信エリア内にあるRFIDタグ1b…に対してR/W要求信号(要求信号)をブロードキャストで送信し、この信号に応じて、RFIDタグ1bそれぞれから、タグ応答信号を受信するようになっている。なお、このとき、物品に備えられたRFIDタグ1a…もリーダライタ2の通信エリア内にあれば、RFIDタグ1b…と同様にして応答信号を返信する。
【0160】
そこで、リーダライタ2は、要求信号を所定時間間隔で送信させておき、RFIDタグ1bを備えたユーザそれぞれが、リーダライタ2の通信エリア内に達した際、上記したようにしてRFIDタグ1b…およびRFIDタグ1a…の応答信号を受信することができる。
【0161】
そして、リーダライタ2がこの要求信号に応じた応答信号を受信した場合、監視装置10は、応答信号を送信したRFIDタグ1を検出したと判定する(S12において「YES」)。
【0162】
逆に、リーダライタ2がこの要求信号に応じた応答信号の返信を受信しなかった場合、監視装置10は、RFIDタグ1の検出がないものと判定する(S12において「NO」)。
【0163】
ここで、リーダライタ2では、RFIDタグ1aおよび/またはRFIDタグ1bそれぞれから応答信号を受信すると(S12において「YES」)、通信処理部5がこれらの応答信号に基づき、RFIDタグ1aおよび/またはRFIDタグ1bそれぞれの記憶部に記憶されている情報を読取る(S13)。すなわち、リーダライタ2は、RFIDタグ1aからは物品情報を、RFIDタグ1bからはユーザ情報それぞれを読取る。
【0164】
また、リーダライタ2は、上記物品情報および/またはユーザ情報の読取りを行うと、当該リーダライタ2により検出された各RFIDタグ1までの距離をそれぞれ算出する(S14)。
【0165】
すなわち、上記したようにリーダライタ2は、RFIDタグ1それぞれに対して要求信号を互いに異なる搬送周波数で2回送信する。そして、リーダライタ2では、これら要求信号それぞれに応じてRFIDタグ1から返信された応答信号の位相の変化量をそれぞれ検出し、この位相の変化量の情報に基づき、位置測定部6が、各RFIDタグ1とリーダライタ2との距離を算出する。そして、位置測定部6によって算出された距離情報は、読み出されたRFIDタグ1それぞれの情報とともに外部通信部7を介して監視装置10に送信される。
【0166】
一方、監視装置10では、リーダライタ2によりRFIDタグ1それぞれの情報を、外部通信部11を介して受信し、そして、情報抽出部12が、上記外部通信部11を介して受信した情報の中から距離情報を抽出し情報格納部17に履歴情報として記録する(S15)。
【0167】
なお、本実施形態では、RFIDタグ1aから受信した情報から抽出した距離情報は、第2履歴情報19として情報格納部17に記憶される。一方、RFIDタグ1bから受信した情報から抽出した距離情報は、第1履歴情報18として情報格納部17に記憶される。このように上記監視装置10では、上記RFIDタグ1a・1bそれぞれの距離情報を取得し、情報格納部17に第1履歴情報18および第2履歴情報19をそれぞれ記録することができる。
【0168】
ここで既に、第1履歴情報18、あるいは第2履歴情報19として複数回にわたり距離情報が記憶されている場合、情報抽出部12は、今回算出された距離情報と過去に算出された距離情報とを対応づけて、第1履歴情報18、あるいは第2履歴情報19に追加して情報格納部17に記憶させる。
【0169】
一方、RFIDタグ1aまたはRFIDタグ1bから距離情報を今回初めて取得した場合、情報格納部17では、RFIDタグ1aまたはRFIDタグ1bの距離情報に関する履歴(第1履歴情報18、第2履歴情報19)がまだ存在していない。この場合、監視システム90では、新たな第1履歴情報18、あるいは第2履歴情報19として情報格納部17に、検出したRFIDタグ1の距離情報を記憶させ、再度このRFIDタグ1の検出処理を所定時間間隔で継続していくこととなる。
【0170】
以上のようにして、本実施形態に係る監視システム90では、所定時間間隔でRFIDタグ1に対する検出処理が行われ、検出されたRFIDタグ1の履歴情報を情報格納部17に記録させることができる。
【0171】
次に、監視システム90では、監視装置10がRFIDタグ1bの履歴情報(第1履歴情報18…)の中で、未検出となった履歴情報の有無を確認する(S16)。すなわち、上記監視装置10では、入退室監視部13が、所定時間間隔で情報格納部17に記憶された第1履歴情報18…を監視するように構成されている。そして、入退室監視部13は、情報格納部17に記録された第1履歴情報18…において、該第1履歴情報18の記録が途絶えたRFIDタグ1bが存在しないか監視している。
【0172】
なお、このステップS16の処理は、上記ステップS12におけるRFIDタグ1の検出の有無に関わらず行われる。これは、現在検出中であるRFIDタグ1が存在する、あるいは現在検出中であるRFIDタグ1が存在しない何れの場合であっても、先に検出されていたRFIDタグ1が保管室100外に出て検出されなくなっている可能性があるからである。
【0173】
そして、未検出となったRFIDタグ1の履歴情報が無い場合(S16において「NO」)、RFIDタグ1の検出処理を行い、リーダライタ2から該RFIDタグ1までの距離情報を算出し、情報格納部17に記録する上記したステップS12〜ステップS15までの処理を繰り返す。
【0174】
一方、未検出となったRFIDタグ1の履歴情報が存在する場合(S16において「YES」)、未検出となったRFIDタグ1bを備えたユーザの入退室判定処理を行う。
【0175】
具体的にはまず、上記入退室監視部13は、未検出となったRFIDタグ1bの第1履歴情報18に基づき、RFIDタグ1bまでの距離と時間との関係において条件1を満たすか否かを判定する(S17)。
【0176】
ここで、ステップS17において「YES」の場合とは、算出された時間と距離との関係において、記録開始時における距離の大きさよりも、距離情報の記録が途絶えた時点における距離の方が小さくなる。そして、距離情報の記録が途絶えた時点における距離の大きさが、リーダライタ2からゲート通過判断範囲までの間の距離範囲、すなわち通過判断距離情報の範囲に含まれるという条件(条件1)を満たす場合である。
【0177】
この条件1を満たす場合、監視装置10では入退室監視部13が、RFIDタグ1bを備えたユーザが保管室100からゲート80に向かって移動し、上記記録が途絶えた時点でこのユーザがゲート80を通過して退室したと判定する。すなわち、入退室監視部13は、ユーザが退室したと判定する(S18)。
【0178】
以上のように、本実施形態では、受信アンテナ4が、保管室100の所定領域にあるRFIDタグ1からの電波のみ受信できるようにゲート80に設置されている。したがって、保管室100から外に向かってユーザが移動する場合、時間の経過とともにユーザに備えられたRFIDタグ1bは、ゲート80に設置されたリーダライタ2に接近することとなる。
【0179】
このため、ユーザの退室時における時間と距離との関係はそれぞれ、例えば図11のユーザA、B,Cに示すように減少傾向となる。そして、図11における例えば点イ´の位置でユーザCが受信アンテナ4の略真下に位置することとなり、この点イ´においてユーザCがゲート80を通過したと判定することができる。
【0180】
なお、この図11は、本実施形態に係るリーダライタとRFIDタグとの間の距離と時間との関係の一例を示すグラフである。
【0181】
一方、ステップS17において「NO」の場合、入退室監視部13は、RFIDタグ1bまでの距離と時間との関係が条件2を満たすか否かを判定する(S19)。すなわち、この条件2とは、距離情報の記録開始時における距離の大きさよりも、記録終了時における距離の方が大きくなる。そして、距離情報の記録開始時点における距離の大きさが、リーダライタ2からゲート通過判断範囲までの間の距離範囲、すなわち通過判断距離情報の範囲に含まれるという条件(条件2)を満たす場合である。
【0182】
このステップS19の判定において「YES」の場合、入退室監視部13は、検出しているRFIDタグ1bを備えたユーザがゲート80から保管室100内(入室方向)に移動しており、上記増加の開始時点においてゲート80を通過したと判定する。すなわち、入退室監視部13は、このRFIDタグ1bを備えたユーザが入室したと判定する(S20)。
【0183】
すなわち、本実施形態では、上記受信アンテナ4が保管室100内にあるRFIDタグ1とのみ通信可能となるように設置されていた。このため、この時間と距離との関係において、距離情報の記録開始位置がゲート通過判断範囲にあり、この開始位置から時間の経過とともにRFIDタグ1までの距離が大きくなる傾向にある場合、ユーザがゲート80を通過し保管室100に移動したと判定することができる。
【0184】
一方、ステップS19において「NO」の場合、入退室監視部13は、ステップS11に戻りRFIDタグ1bの検出処理から繰り返す。つまり、ステップS18において「NO」の場合とは、RFIDタグ1bを備えたユーザがゲート80周辺をうろうろしている状態で退室をしていない状態と考えられる。そこで、継続してRFIDタグ1とリーダライタ2との間の距離を測定し、入退室監視部13によって該RFIDタグ1の変位を監視させ、ユーザの入退室を判定させるためにステップS11に戻る。
【0185】
以上のように、本実施の形態に係る監視システム90では、RFIDタグ1bとリーダライタ2との間の距離を時系列に記録した第1履歴情報18に基づき、監視装置10の入退室監視部13が該RFIDタグ1bの保管室100への入退室を判定することができる。
【0186】
なお、上記入退室の判定(S18またはS19)の終了後は、再度RFIDタグ1…の検出処理を行い、検出したRFIDタグ1の距離情報を算出し、履歴情報として情報格納部17に記録させる、上記ステップS11〜ステップS15までの処理を繰り返す。
【0187】
このように、ユーザの入退室が判定されると、上記入退室監視部13は、この判定した結果を特定部14に通知する。そして、この特定部14は、入退室監視部13からの通知に応じて、入退室が判定されたユーザによる物品所持の有無を特定する。
【0188】
ここで以下において、退室するユーザが物品を保持しているか否かを特定する処理について上記した図11および図13〜図15を参照して説明する。
【0189】
(ユーザの物品保持の特定処理)
まず、図11を参照して物品を保持するユーザが退出する場合、該ユーザが備えるRFIDタグ1bとリーダライタ2との間の距離、該ユーザに保持される物品のRFIDタグ1aとリーダライタ2との間の距離それぞれの関係について説明する。
【0190】
例えばユーザが常に自身と所定間隔だけ離した位置に物品を保持しゲート80を通過して退室する場合、図11に示す物品βとユーザCとの関係のようになる。
【0191】
すなわち、RFIDタグ1aとRFIDタグ1bとでは、リーダライタ2の受信アンテナ4までの距離が異なるため、RFIDタグ1aとRFIDタグ1bとのリーダライタ2による検出タイミングは異なることとなる。つまり、図11に示すように物品βが先に検知され、所定期間(ア−ア´間)経過後にユーザCのRFIDタグ1bが検出される。また、常にユーザと物品とが所定間隔を保って退室しており、両者における、リーダライタ2までの距離の時系列変化を示すグラフは、略同じ傾きで減少し、リーダライタ2と先に通信を確立した物品βの方が先にリーダライタ2との通信が途絶える。
【0192】
一方、ユーザの手によって把持されている物品が、ユーザの例えば手の動きなどに応じて、該ユーザよりもリーダライタ2までの距離が近くなったり遠くなったりする場合、両者とリーダライタ2までの距離の時系列変化は、図11におけるユーザAと物品α、またはユーザBと物品γなどのような関係となる。
【0193】
すなわち、ユーザと物品とにおいて、リーダライタ2までの距離がユーザの方が近くなったり、逆に遠くなったりするため、両者の上記距離の時系列変化は交差したりする。ユーザAと物品α、またはユーザBと物品γの関係のように、この両者の上記距離の時系列変化を示すグラフが異なる場合であっても、同一時刻における両者の間の距離は、所定の距離範囲に収まる。
【0194】
つまり、図13に示すように、例えば、物品がユーザの手によって把持されるものであり、該ユーザが所定位置にいるとすると、ユーザの手の移動範囲に応じて、把持されている物品のRFIDタグ1aとリーダライタ2との間の距離は異なることとなる。
【0195】
例えば、図13ではユーザが退室方向に向かって斜め前方に物品を突き出したときリーダライタ2とRFIDタグ1aとの間の距離が最も短くなる(r1)。一方、ユーザ自身を軸にして対象となる位置に移動させた位置で物品を保持しているとき、リーダライタ2とRFIDタグ1aとの間の距離が最も長くなる(r2)。
【0196】
したがって、ここで、リーダライタ2とユーザが備えるRFIDタグ1bとの間の距離をr3とすると、同一時刻におけるユーザと物品との間の距離は、r3−r1と、r2−r3とを包含する範囲の値とすることができる。なお、ユーザによって物品が保持されている場合、このユーザから離れることが可能なこの物品の範囲を、ここでは保持範囲と定義する。
【0197】
なお、この保持範囲は予め決められており、情報格納部17に記憶されている。また、この保持範囲は、上記では、人の腕を可動できる範囲を基準に定めているが、これに限定されるものではなく、例えば、上記r3−r1と、最大通信可能距離−r3とを包含する範囲の値としてもよい。ただしこの保持範囲が広くなればなるほど、ユーザが保持する物品を他のユーザが所持する物品と誤って特定する可能性が大きくなり、特定精度が落ちることとなる。そこで、ユーザによる物品の搬送方法、物品の形状、ゲート80のゲート幅、保管室100を利用するユーザ数などを考慮し適切に保持範囲を設定することが好ましい。
【0198】
ここで、ユーザの位置を基準に該ユーザと物品との間の距離の時系列変化をグラフで表すと例えば図14に示すようになる。
【0199】
すなわち、ユーザAの移動と同様なタイミングで物品α、β、γが移動しているとする。また、ユーザAが保持している物品は、この物品α、β、γのうちいずれか1物品であり、図14には図示していないが、残りの物品については他のユーザが保持し移動しているものとする。つまり、この図14では説明の便宜上、ユーザAの移動を基準に他の物品との間の距離の時系列変化を示している。
【0200】
ここで、上記したように本実施形態では、ユーザが保持する物品のRFIDタグ1aと該ユーザが保持するRFIDタグ1bとの間の距離は、常に上記保持範囲内である。このため、図14に示す物品α〜物品γにおいて、常にユーザAまでの距離が保持範囲内にある物品が、ユーザAにより保持されている物品(物品α)であることが分かる。したがって、入退室監視部13によって退室が判定されたユーザについて、該ユーザとの間の距離が常に保持範囲内にある物品が、該ユーザが保管室100から持ち出した物品であると特定することができる。
【0201】
すなわち、特定部14は、入退室監視部13から退室したと判定されたユーザの第1履歴情報18と、検出している物品それぞれの第2履歴情報19とに基づき、該ユーザと各物品との同時刻における距離が、常に保持距離の範囲(保持範囲)内となる物品を、上記ユーザが保持する物品と特定する。
【0202】
以上のようにして、退出するユーザの保持する物品を特定すると、特定部14は、この特定した結果を認証判定部15に通知する。そして、この特定部14からの通知に応じて、認証判定部15は、特定されたユーザと物品との組み合せが許可されているか否かを、認証情報20を参照して判定する。すなわち、以下図15に示す処理フローによって、本実施形態に係る監視装置10は、「ユーザの物品保持の特定処理」および「ユーザによる物品の持ち出しの可否判定処理」を行う。
【0203】
まず、ユーザの退出が判定されると、特定部14は、退出が判定されたユーザに関する保持範囲内に物品があるか否かを判定する(S21)。ここで、保持範囲内に物品がない場合(S21において「NO」)は、ユーザだけの退出であると判定し、そのままユーザの退出を許可する(S26)。
【0204】
一方、特定部14は、保持範囲内に物品があると判定した場合(S21において「YES」)、この判定された物品と、上記ユーザとの距離が常時保持範囲内にあったか否かを判定する(S22)。そして、上記ユーザとの距離が常時保持範囲内となる物品があった場合(S22において「YES」)、この物品をユーザの持ち出し物品であると特定する(S23)。
【0205】
一方、上記ユーザとの距離が常時保持範囲内となる物品がない場合(S22において「NO」の場合)、特定部14は、ユーザだけの退出であると判定し、そのままユーザの退出を許可する(S26)。
【0206】
例えば、図14に示すように、ユーザAの退出時において、保持範囲内には物品αおよび物品βが存在する。そこで、この図14の場合では、ステップS21において特定部14は、保持範囲内に物品αおよび物品βがあると特定する。そして、上記特定された物品αおよび物品βについて、上記ユーザの距離情報の記録期間において、該ユーザとの距離が保持距離の範囲内に常にあったか否かを判定する。図14では、物品αに関しては常に保持範囲内にあるが、物品βに関しては保持範囲内からはずれている期間が存在する。したがって、特定部14は、物品αをユーザの持ち出し物品であると特定する。
【0207】
以上のように、特定部14が、退出したと判定されたユーザにより、保管室100から持ち出された物品を特定すると、この特定した結果を認証判定部15に通知する。認証判定部15は、特定部14からの通知に応じて、通知されたユーザと物品との組み合せにおいて、該ユーザがこの物品を持ち出すことが許可されているか否かを、認証情報20を参照して判定する(S24)。そして、認証判定部15が、物品の持ち出しが許可されていると判定した場合(S24において「YES」の場合)、出力指示部16に対して、このユーザの退室がOKである旨出力するように指示する(S25)。
【0208】
出力指示部16は、この認証判定部15からの指示に応じて、表示装置21に上記ユーザの物品を保持したままの退出をOKする旨表示させるように表示制御する。
【0209】
そして、物品の持ち出しが許可されたユーザは物品を保持したまま保管室100から退出する(S26)。
【0210】
一方、認証判定部15が、上記物品のユーザによる持ち出しが許可されていないと判定した場合(S24において「NO」の場合)、物品の持ち出し不可を出力するように、出力指示部16に指示する。
【0211】
この出力指示部16は、認証判定部15からの指示に応じて、表示装置21に上記ユーザによる物品の持ち出しが許可されていない旨表示するように制御する(S27)。また、出力指示部16は、この表示装置21において、持ち出しが認められていない物品名を表示させ、ユーザに該物品を元の保管位置に返却するように指示する(S28)。そして、ユーザにより物品の返却が完了して初めてユーザの退出を認める(S26)。
【0212】
以上のように、本実施の形態に係る監視システム90では、特定部14がユーザの退出時に、保持範囲にある物品の有無を判定することにより、該ユーザが持ち出している物品があるか否かを判定することができる。特に、特定部14が、第1履歴情報18および第2履歴情報19を参照して、退出時に保持範囲にあると判定された物品のうち、上記ユーザとの距離が常時保持範囲にあった物品を、ユーザと共に保管室100を出入りする物品であると特定することができる。
【0213】
このため、本実施形態に係る監視システム90では、精度よく保管室100を共に出入りするユーザと物品との組み合せを特定することができる。
【0214】
また、上記したように上記監視システム90では、常時ユーザの保持範囲に存在する物品の有無を判定することにより、保管室100を共に出入りするユーザと物品との組み合せを特定することができる構成であった。
【0215】
このため、物品を保持した複数のユーザが保管室100を出入りする場合であっても、保管室100を出入りするユーザと物品との組み合せを特定することができる。例えば、図16に示すように、ユーザX1とユーザX2とが保管室100をほぼ同時に退出したとする。
【0216】
なお、この図16は、複数のユーザそれぞれの距離と、該ユーザそれぞれによって保持される物品の距離との時系列変化の一例を示す図であり、各ユーザは一定の速度でゲート80に向かっているものとする。
【0217】
この場合、退出時点だけを見ると、例えば、ユーザX1の保持範囲には物品Y1および物品Y2とが含まれており、ユーザX1と共に保管室100を退出した物品を特定することができない。
【0218】
ところが、本実施形態では、第1履歴情報18および第2履歴情報19を情報格納部17に記憶させているため、ユーザと物品との位置関係を時系列に知ることができる。そこで、図16に示すように、常にユーザX1の保持範囲内に存在する物品は物品Y1であり、常にユーザX2の保持範囲に存在する物品は物品Y2であるため、保管室100を共に出入りする組み合せは、ユーザX1および物品Y1、もしくはユーザX2および物品Y2であると特定できる。
【0219】
なお、図16では2人のユーザが同時に退出する例を示しているが、一方が入室し他方が退室する場合であっても第1履歴情報18…と第2履歴情報19…とを参照して、入室するユーザと物品との組み合せ、あるいは退室するユーザと物品との組み合せを特定することができる。また、同時に出入りするユーザの数はこの2人に限定されるものではない。
【0220】
したがって、上記ゲート80のゲート幅を例えばユーザが1人ずつ出入りするように制限する必要がなく、リーダライタ2が備える送信アンテナ3および受信アンテナ4の通信可能な範囲に応じて自由に設計することができる。
【0221】
また、本実施の形態に係る監視システム90では、監視装置10が、認証判定部15を備えている。このため、例えばユーザにより保管室100から物品の持ち出しがなされる場合、該ユーザに対してこの物品の持ち出しが許可されているか否かを判定することができる。
【0222】
したがって、本実施の形態に係る監視システム90では、ユーザごとに割り当てられている持ち出し可能な物品の情報に応じて、ユーザの物品の持ち出しを制限することができる。
【0223】
なお、本実施の形態に係る監視システム90では、上記したように、第1履歴情報18…としてユーザ…の距離情報の履歴を、第2履歴情報19…として物品…の距離情報の履歴を情報格納部17に記憶し、第1履歴情報18に基づきユーザの出入りを入退室監視部13が判定し、第1履歴情報18および第2履歴情報19に基づき、特定部14が上記入退室監視部13により保管室100を出入りしたと判定されたユーザが保持する物品を特定するように構成されていた。
【0224】
ここで本実施の形態に係る監視システム90では、上記第1履歴情報18および第2履歴情報19を記録させず、RFIDタグ1bからの応答信号の返信が途絶えた時点で、該RFIDタグ1bの保持範囲内にあったRFIDタグ1aの物品を、ユーザにより保持されたものであると特定するように構成してもよい。
【0225】
このように構成する場合、上記監視装置10は、情報格納部17に第1履歴情報18…および第2履歴情報19…としてRFIDタグ1aおよびRFIDタグ1bそれぞれの距離情報を時系列に記録しておく必要がない。このため、情報格納部17に記憶させておくデータ量を低減させることができる。
【0226】
しかしながら、第1履歴情報18…および第2履歴情報19…を情報格納部17に記録しない上記構成では、ユーザの退出が判定された際に、該ユーザの保持範囲内にある物品をすべて、このユーザにより持ち出された物品であると判定してしまう。このため、例えば上記した図14あるいは図16に示すように、ユーザの保持範囲内に複数の物品が存在する場合、ユーザにより持ち出された物品を確度よく特定することができない。
【0227】
このため、ユーザにより持ち出された物品を確度よく特定するためには、上記した本実施形態のように情報格納部17に第1履歴情報18…および第2履歴情報19…を記憶する構成であることが好ましい。
【0228】
また、上記実施形態1では、リーダライタ2とRFIDタグ1との間の距離情報を利用して、退出するユーザと該ユーザにより持ち出される物品を特定する構成であった。しかし、距離ではなく、保管室100内における二次元座標位置にユーザと物品の所在位置を示し、時系列でその変位を監視し、退出するユーザと該ユーザにより持ち出される物品を特定する構成とすることもできる。以下、実施形態2として、本発明の別の実施形態に係る監視システム90について説明する。なお、この実施形態2において、実施形態1に示す同じ部材には同じ符号を付しその説明は省略するものとする。
【0229】
(実施形態2)
本実施の形態に係る監視システム90は、上記した実施形態1と同様に、保管室100内に少なくとも1以上の物品が保管されており、各物品には、RFIDタグ1aが備えられている。また、この保管室100に入室し上記物品を利用するユーザそれぞれにはRFIDタグ1bを含む入室許可書を所持するようになっている。そして、この保管室100には、外部への出入り口にゲート80が配置されている。
【0230】
上記保管室100内にはリーダライタ2が少なくとも1以上備えられており、該リーダライタ2は監視装置10に接続されている。
【0231】
なお、この保管室100内に備えられるリーダライタ2は、上記した図2では1台であるが、図17に示すように、保管室100全体を通信エリアに設定することによって、ゲートを設けることなくユーザが出入りすることを可能とする構成であってもよい。このように構成される場合は、リーダライタ2の数は、保管室100内の広さに応じて複数設置されることとなる。
【0232】
ここで、図18を参照して本実施の形態に係る監視システム90の要部構成について説明する。図18に示すように、本実施の形態に係る監視システム90では、実施形態1に示す監視システム90と比較してリーダライタ2が、エリア判定部8およびエリア情報記憶部9をさらに備える点で異なる。
【0233】
また、実施形態1に示す位置測定部6は、検知しているRFIDタグ1の距離情報のみを算出する構成であったが、本実施の形態に係る位置測定部6は、距離情報に加えて上記RFIDタグ1の在位置方向情報を算出する点が異なる。なお、この存在位置方向情報の算出方法の詳細については後述する。
【0234】
つまり、上記エリア判定部8は、位置測定部6において測定されたRFIDタグ1の距離情報および存在位置方向情報に基づいて、該RFIDタグ1が保管室100内の通信エリアにおいて、いずれの位置に存在しているかを特定するブロックである。
【0235】
すなわち、保管室100内における通信エリアの領域を規定するエリア情報は、エリア情報記憶部9に記憶されている。このエリア情報とは具体的には図21に示すようにリーダライタ2の通信可能領域である通信エリアの2次元領域を示す情報であり、該エリア領域内における位置は、2次元座標によって特定できるようになっている。なお、この図21はエリア情報の一例を模式的に示すものであり、エリア情報はこれに限定されるものではない。例えば、上記エリア情報では、座標軸が通信エリアに対応する領域に対して設定されていたが、保管室100全体に対してこの座標軸が設定されていてもよい。また、本実施形態では、通信エリアにおけるRFIDタグ1を特定する位置情報として2次元座標で表すようにしているが、RFIDタグ1の位置情報を3次元座標で表す構成であってもよい。なお、この図21に示す丸はユーザが保持するRFIDタグ1bを示しており、△は物品に備えられたRFIDタグ1aを示している。
【0236】
なお、RFIDタグ1の位置情報を3次元座標によって示す場合は、本実施の形態に係るリーダライタ2において送信アンテナ3および受信アンテナ4のセットを3セット備え、保管室100の高さ方向におけるRFIDタグ1の存在位置方向と、保管室100の水平方向におけるRFIDタグ1の存在位置方向とを算出することにより実現できる。
【0237】
そして、エリア判定部8は、位置測定部6において測定された情報に基づき、RFIDタグ1が、上記エリア情報で規定される通信エリア内のいずれに存在するかを特定し2次元座標によって表現された位置情報に変換する。
【0238】
なお、本実施形態では、検知されたRFIDタグ1の位置を、通信エリア内における2次元座標情報にエリア判定部8により変換される構成であるが、これに限定されるものではない。
【0239】
例えば、3つ以上の、送信アンテナ3および受信アンテナ4のセットを備えたリーダライタ2から取得した位置情報に基づき、上記エリア判定部8が検知されたRFIDタグ1の位置を3次元座標の情報に変換する構成としてもよい。
【0240】
なお、エリア情報記憶部9に記憶されているエリア情報は、リーダライタ2が設置される環境に応じて設定されることになる。このエリア情報の設定は、例えば外部通信部7を介して監視装置10から行われるようになっていてもよいし、リーダライタ2に、エリア情報を入力するためのユーザインターフェースが備えられていてもよい。
【0241】
上記エリア判定部8によって特定されたRFIDタグ1の2次元座標の情報は、位置情報として通信処理部5により外部通信部7を介して監視装置10に送信される。
【0242】
また、上記した実施形態1に示す監視装置10では、情報格納部17に記憶する第1履歴情報18および第2履歴情報19が、リーダライタ2とRFIDタグ1との間の距離情報であった。これに対して本実施形態では、第1履歴情報18および第2履歴情報19が、リーダライタ2からみた保管室100内の通信エリアにおける、2次元座標によって表現された位置情報である点が異なる。
【0243】
また、上記実施形態1では、入退室監視部13がRFIDタグ1bの距離情報の履歴である第1履歴情報18に基づきユーザの保管室100からの入退室を判定する構成であった。これに対して、本実施形態に係る入退室監視部13は、RFIDタグ1bの位置を2次元座標によって示した位置情報の履歴である第1履歴情報18に基づき、ユーザの保管室100からの入退室を判定する点で異なる。
【0244】
また、上記実施形態1では、特定部14が、RFIDタグ1bの距離情報の履歴である第1履歴情報18と、RFIDタグ1aの距離情報の履歴である第2履歴情報19に基づき、退室されたと判定されたユーザが物品を持ち出したか否かを特定する構成であった。しかしながら本実施形態では、特定部14が、RFIDタグ1bの上記位置情報の履歴である第1履歴情報18と、RFIDタグ1aの上記位置情報の履歴である第2履歴情報19とに基づき、退室されたと判定されたユーザが物品を持ち出したか否かを特定する構成である点が異なる。その他の構成については図1に示す構成と同様であるのでここではその説明を省略する。
【0245】
(位置推定処理)
上記実施形態1では、各RFIDタグ1の距離を測定することについて説明したが、本実施の形態に係る監視システム90では、さらに、リーダライタ2から見た際の各RFIDタグ1の存在位置方向も測定するように構成されている。すなわち、上述したように本実施形態では、各RFIDタグ1との距離および方向を特定し、各RFIDタグ1の存在位置を特定することができる。
【0246】
このRFIDタグ1の存在位置方向を推定する方法として、本実施形態に係る監視システム90では、受信アンテナ4のアンテナ素子を複数アレー状に並べて、各アンテナ素子で受信される信号の位相の差異を検出する。以下に、このRFIDタグ1の存在位置方向の推定処理について説明する。
【0247】
図19は、RFIDタグ1の存在位置方向の推定処理を模式的に示す図である。同図において、受信アンテナ4は、第1アンテナ素子4A、および第2アンテナ素子4Bの2つのアンテナ素子によって構成されている。また、θは、RFIDタグ1の存在位置方向を示す角度である。このθは、第1アンテナ素子4A、および第2アンテナ素子4Bにおける電波受信ポイントをともに含む平面の法線方向を0°とした場合の角度となっている。
【0248】
第1アンテナ素子4A、および第2アンテナ素子4Bにおける電波受信ポイント同士の間隔をdとすると、第1アンテナ素子4A、および第2アンテナ素子4Bで受信される信号の位相差Δφは次の式で表される。
【0249】
【数10】

【0250】
ここで、d=λ/2とすれば、位相差Δφは次の式で表される。
【0251】
【数11】

【0252】
よって、位相差Δφに基づいて、存在位置方向θは次の式で表される。
【0253】
【数12】

【0254】
すなわち、位相差Δφを求めることによって、存在位置方向θを求めることができる。
【0255】
図20は、方向算出を行う場合のリーダライタ2の構成を示している。同図に示す構成は、前記した図6に示す構成において、位置測定部6に方向算出部6Cが設けられている点、および、通信処理部5にセレクタ5D3が設けられている点で異なっている。その他の構成については図6に示す構成と同様であるのでここではその説明を省略する。
【0256】
セレクタ5D3は、受信アンテナ4における第1アンテナ素子4Aにおいて受信された信号と第2アンテナ素子4Bにおいて受信された信号とを選択的に切り替えて増幅部5D1および増幅部5D2に伝送する。このセレクタ5D3の選択の制御は、受信制御部5Hによって行われる。
【0257】
方向算出部6Cは、第1アンテナ素子4Aにおいて受信された信号と、第2アンテナ素子4Bにおいて受信された信号との位相差についての情報を位相情報取得部6Aから取得し、これに基づいて上記の処理によってRFIDタグ1の存在位置方向θを算出する。そして、受信制御部5Hは、距離算出部6Bによって算出された距離情報、および方向算出部6Cによって算出された存在位置方向情報を取得し、この情報をエリア判定部8に伝送する。
【0258】
エリア判定部8は、位置情報としての上記距離情報および存在位置方向情報に基づいて、該RFIDタグ1が保管室100内の通信エリアにおけるいずれの位置に存在しているかを特定する。この際に、エリア判定部8は、エリア情報記憶部9に記憶されているエリア情報に基づいて、RFIDタグ1が保管室100の通信エリア内におけるいずれの位置に存在しているか特定し2次元座標情報を算出する。すなわち、図21に示すように、エリア判定部8は、上記算出したRFIDタグ1までの距離情報と存在位置情報とを2次元座標上の点として特定する
なお、RFIDタグ1の存在位置方向θを求める手法としては、上記の手法に限定されるものではなく、公知の様々な手法を用いることができる。例えば、電波の到来方向(DOA(Direction Of Arrival))を推定する技術としては、Beamformer法、Capon法、LP(Linear Prediction)法、Min-Norm法、MUSIC法、およびESPRIT法などが挙げられる。
【0259】
(位置推定処理の流れ)
次に、図22および図23に示すフローチャートを参照しながら、リーダライタ2における上記の位置推定処理の流れについて説明する。
【0260】
まず、位置推定処理が開始されると、ステップS31において、周波数制御部5Fが、R/W要求信号を送信する際の搬送信号の周波数を第1の周波数となるようにPLL部5Aを制御する。
【0261】
次に、送信制御部5Gが、R/W要求信号を示すデータを搬送信号に重畳させるように変調部5Bを制御する。そして、変調部5Bによって変調された送信信号が、電力増幅部5Cによって増幅された後に送信アンテナ3から出力される(S32)。
【0262】
その後、RFIDタグ1がR/W要求信号を検出すると、タグ応答信号を返信する。このタグ応答信号を受信アンテナ4が受信する。この時点では、セレクタ5D3は、第1アンテナ素子4Aを選択しており、第1アンテナ素子4Aで受信された信号に基づいて、通信処理部5が受信処理を行う(S33)。
【0263】
その後、受信制御部5Hは、受信すべき全ての周波数の受信信号を受信したか否かを判定し、全て受信していないと判定された場合(S34において「NO」)には、ステップS31からの処理に戻る。一方、受信すべき全ての周波数の受信信号を受信したと判定された場合(S34において「YES」)、ステップS35の処理に移行する。
【0264】
ステップS35では、セレクタ5D3が、第2アンテナ素子4Bを選択するように切り替えられる。そして、ステップS36において、送信制御部5Gの制御に基づいてR/W要求信号が送信される。RFIDタグ1がR/W要求信号を検出すると、タグ応答信号を返信する。このタグ応答信号を受信アンテナ4が受信する。この時点では、セレクタ5D3は、第2アンテナ素子4Bを選択しており、第2アンテナ素子4Bで受信された信号に基づいて、通信処理部5が受信処理を行う(S37)。
【0265】
次に、距離算出処理に関してS38およびS39の処理が行われ、方向算出処理に関してS40およびS41の処理が並行して行われる。S38では、位相情報取得部6Aが、第1アンテナ素子4Aによって受信された信号に基づいて、周波数毎の位相情報を算出し、距離算出部6Bが距離を算出する(S39)。なお、位置測定部6は、距離の算出を位相情報に基づいて行うだけでなく、例えばMUSIC法を応用した手法によって距離を算出してもよい。
【0266】
一方、S40では、位相情報取得部6Aが、第1アンテナ素子4Aによって受信された信号と、第2アンテナ素子4Bによって受信された信号との位相差を検出し、これに基づいて方向算出部6CがRFIDタグ1の存在位置方向(存在方向)を算出する(S41)。なお、上記のようにアンテナ素子間の位相差に基づいて方向推定を行う際には、ある(同一の)周波数での位相差を比較することが必要である。
【0267】
その後、受信制御部5Hは、距離算出部6Bによって算出された距離情報、および方向算出部6Cによって算出された存在位置方向情報を取得し、この情報をエリア判定部8に伝送する。エリア判定部8は、上記距離情報および存在位置方向情報に基づいて、該RFIDタグ1の位置を算出する。以上により、位置測定処理が完了する。
【0268】
(ユーザの物品保持の特定処理)
続いて、本実施形態における、ユーザの退室時における物品保持の特定処理について説明する。
【0269】
本実施形態に係る監視システム90では、通信エリアにおいて、位置情報として、RFIDタグ1の2次元座標位置を特定することができる構成である。そして、RFIDタグ1aの位置情報の履歴は第2履歴情報19として、また、RFIDタグ1bの位置情報の履歴は第1履歴情報18として情報格納部17に記憶する構成である。
【0270】
このため、入退室監視部13は、第1履歴情報18を参照して、通信エリア内で検知されてからのRFIDタグ1bの変位が、次のようになる場合、ユーザが退室したと判定することができる。すなわち、検知しているRFIDタグ1bがゲート80に近づき、該ゲート80におけるゲート通過判断範囲を通過し上記RFIDタグ1bの位置情報が途絶えた場合、該RFIDタグ1bを備えたユーザが退室したと判定することができる。
【0271】
逆に、検知されたRFIDタグ1bが上記ゲート通過判断範囲を通過し、ゲート80から遠ざかる方向に移動している場合、該RFIDタグ1bを備えたユーザが入室したと判定することができる。
【0272】
以上のようにして、上記入退室監視部13が、ユーザの入退室を判定すると、その旨を特定部14に通知する。上記特定部14は、この通知を受信すると、入退室が判定されたユーザのRFIDタグ1bの保持範囲内に、物品のRFIDタグ1aが存在するか否かを判定する。この保持範囲とは、実施形態1で定義したように、ユーザによって物品が保持されている場合、このユーザから離れることが可能な範囲である。本実施形態では検知されたRFIDタグ1bの2次元座標位置から所定の範囲の2次元座標範囲がこの保持範囲として規定されている。
【0273】
これ以降の処理の詳細は、図15に示す実施形態1の「ユーザの物品保持の特定処理」(S22〜S26)と基本的には同様である。すなわち、ユーザの退出が判定されると、特定部14は、退出が判定されたユーザのRFIDタグ1bの保持範囲内に物品のRFIDタグ1aがあるか否かを判定する。ここで、保持範囲内に物品のRFIDタグ1aがない場合は、ユーザだけの退出であると判定し、そのままユーザの退出を許可する。
【0274】
一方、特定部14は、保持範囲内に物品のRFIDタグ1aがあると判定した場合、この判定された物品のRFIDタグ1aと、上記ユーザのRFIDタグ1bとの位置座標が常時保持範囲内にあったか否かを判定する。そして、上記ユーザのRFIDタグ1aの保持範囲内に位置座標が常時存在する物品のRFIDタグ1aがあった場合、この物品をユーザの持ち出し物品であると特定する。
【0275】
一方、上記物品のRFIDタグ1aの位置座標が常時保持範囲内にない場合、特定部14は、ユーザだけの退出であると判定し、そのままユーザの退出を許可する。
【0276】
すなわち、例えユーザの退出時に該ユーザの保持範囲内にある物品が存在したとしても、該物品のRFIDタグ1aの位置座標が、上記ユーザのRFIDタグ1bの保持範囲内から外れる場合は、このRFIDタグ1aの物品はユーザによって保持されたものとは判定されない。
【0277】
以上のようにして、特定部14が、退出したと判定されたユーザが保管室100の持ち出した物品を特定すると、この特定した結果を認証判定部15に通知する。認証判定部15は、特定部14からの通知に応じて、通知されたユーザと物品との組み合せにおいて、該ユーザがこの物品を持ち出すことが許可されているか否かを認証情報20を参照して判定する。そして、認証判定部15が、上記ユーザによる上記物品の持ち出しが許可されていると判定した場合、出力指示部16に対して、このユーザの退室がOKである旨出力するように指示する。
【0278】
出力指示部16は、この認証判定部15からの指示に応じて、表示装置21に上記ユーザの物品を保持したままの退出をOKする旨表示させるように表示制御するとともに、外部通信部7を介してリーダライタ2に対して、上記持ち出された物品のRFIDタグ1aに、持ち出しが許可済みである旨の情報、および許可されたユーザID情報を書込むように指示する。
【0279】
なお、この指示を受けて、リーダライタ2は、上記物品のRFIDタグ1aに、持ち出しが許可済みである旨の情報、および許可されたユーザID情報を書込む。なお、書込まれる情報はこれらだけに限定されるものではなく、例えば持ち出し許可の有効期限を示す情報などがさらに書込まれてもよい。
【0280】
そして、物品の持ち出しが許可されたユーザは物品を保持したまま保管室100から退出する。
【0281】
一方、認証判定部15が、上記物品のユーザによる持ち出しが許可されていないと判定した場合(S24において「NO」の場合)、物品の持ち出し不可を出力するように、出力指示部16に指示する。
【0282】
この出力指示部16は、認証判定部15からの指示に応じて、表示装置21に上記ユーザの物品の持ち出しが許可されていない旨表示するように制御する。また、出力指示部16は、この表示装置21において、持ち出しが認められていない物品名を表示させユーザに該物品を元の保管位置に返却するように指示する。そして、ユーザにより物品の返却が完了して初めてユーザの退出を認める。
【0283】
以上のように、本実施の形態に係る監視システム90では、特定部14がユーザの退出時に、保持範囲にある物品の有無を判定することにより、該ユーザが持ち出している物品があるか否かを判定することができる。さらに、特定部14が、第1履歴情報18および第2履歴情報19を参照して、退出時に保持範囲にあると判定された物品のうち、上記ユーザとの位置関係が常時保持範囲にある物品を特定することができる。
【0284】
このため、退出時にたまたまユーザの近く(保持範囲内)にあった物品を該ユーザが持ち出した物品と誤認識することを防ぐことができる。したがって、上記特定部14は、さらに高精度に、退出したユーザに持ち出された物品を特定することができる。
【0285】
また、上記したように上記監視システム90では、ユーザの保持範囲内に常時存在する物品があるか否かを、RFIDタグ1bとRFIDタグ1aとの位置情報の時系列変化、すなわち、第1履歴情報18および第2履歴情報19を参照することにより判定できる構成であった。そして、上記監視システム90では、物品がユーザの保持範囲内に常時存在するか否かに応じて、保管室100を共に出入りするユーザと物品との組み合せを特定することができる構成であった。
【0286】
このため、物品を保持した複数のユーザがほぼ同時に保管室100を出入りする場合であっても、この出入りするユーザと物品との組み合せを特定することができる。
【0287】
したがって、上記ゲート80のゲート幅を例えばユーザが1人ずつ出入りするように制限する必要がなく、リーダライタ2が備える送信アンテナ3および受信アンテナ4の通信可能な範囲に応じて自由に設計することができる。
【0288】
また、本実施の形態に係る監視システム90では、監視装置10が、認証判定部15を備えている。このため、退出するユーザにより物品の持ち出しがなされる場合、該物品の持ち出しが許可されているか否かを判定することができる。したがって、本実施の形態に係る監視システム90では、ユーザごとに割り当てられている持ち出し可能な物品に応じて、ユーザの物品の持ち出しを制限することができる。
【0289】
なお、本実施の形態に係る監視システム90では、上記したように、ユーザの退出時において、保持範囲内に物品があるか否かに応じて、特定部14が該ユーザにより持ち出された物品を特定する構成であった。
【0290】
さらに、この特定部14は、第1履歴情報18および第2履歴情報19を参照してこの特定した物品の中で常時上記ユーザの保持範囲内にあった物品があるか否かに応じて、上記ユーザにより持ち出された物品を特定する構成であった。
【0291】
ここで本実施の形態に係る監視システム90では、上記第1履歴情報18および第2履歴情報19を記録させず、RFIDタグ1bからの応答信号の返信が途絶えた時点で、該RFIDタグ1bの保持範囲内にあったRFIDタグ1aの物品を、ユーザにより保持されたものであると特定するように構成してもよい。
【0292】
このように構成する場合、上記監視装置10は、情報格納部17に第1履歴情報18…および第2履歴情報19…としてRFIDタグ1aおよびRFIDタグ1bそれぞれの位置情報を時系列に記録しておく必要がない。このため、情報格納部17に記憶させておくデータ量を低減させることができる。
【0293】
しかしながら、第1履歴情報18…および第2履歴情報19…を情報格納部17に記録しない上記構成では、ユーザの退出が判定された際に、該ユーザの保持範囲内にある物品をすべて、このユーザにより持ち出された物品であると判定してしまう。このため、例えば上記した図14あるいは図16に示すように、ユーザの保持範囲内に複数の物品が存在する場合、ユーザにより持ち出された物品を確度よく特定することができない。
【0294】
このため、ユーザにより持ち出された物品を確度よく特定するためには、上記した本実施形態のように情報格納部17に、RFIDタグ1b…の位置情報の時系列データとして第1履歴情報18…を、RFIDタグ1aの位置情報の時系列データとして第2履歴情報19…を記憶する構成であることが好ましい。
【0295】
また、上記した実施形態1および実施形態2において、RFIDタグ1が、ユーザと物品とに備えられ、それぞれの位置情報に基づき、保管室100における出入りを監視する構成であった。しかしながら、RFIDタグ1を備え、監視される対象はこの組み合せに限定されるものではなく、人と人との組み合せであってもよいし、人と動物の組み合せであってもよいし、車と荷物の組み合せであってもよい。
【0296】
なお、上記した実施形態1および実施形態2に係るリーダライタ2が備える通信処理部5、位置測定部6、エリア判定部8、および外部通信部7は、ハードウェアロジックによって構成されていてもよいし、CPUなどの演算手段が、ROM(Read Only Memory)やRAMなどの記憶手段に記憶されたプログラムを実行することにより実現する構成となっていてもよい。
【0297】
また、上記実施形態1および実施形態2に係る監視装置10が備える外部通信部11、情報抽出部12、入退室監視部13、特定部14、認証判定部15、および出力指示部16もまた、ハードウェアロジックによって構成されていてもよいし、CPUなどの演算手段が、ROM(Read Only Memory)やRAMなどの記憶手段に記憶されたプログラムを実行することにより実現する構成となっていてもよい。
【0298】
CPUなどの演算手段および記憶手段によって上記の各部を構成する場合、これらの手段を有するコンピュータが、上記プログラムを記録した記録媒体を読み取り、当該プログラムを実行することによって、通信処理部5、位置測定部6、エリア判定部8、および外部通信部7の各種機能および各種処理を実現することができる。また、上記プログラムをリムーバブルな記録媒体に記録することにより、任意のコンピュータ上で上記の各種機能および各種処理を実現することができる。
【0299】
この記録媒体としては、コンピュータで処理を行うために図示しないメモリ、例えばROMのようなものがプログラムメディアであっても良いし、また、図示していないが外部記憶装置としてプログラム読取り装置が設けられ、そこに記録媒体を挿入することにより読取り可能なプログラムメディアであっても良い。
【0300】
また、何れの場合でも、格納されているプログラムは、マイクロプロセッサがアクセスして実行される構成であることが好ましい。さらに、プログラムを読み出し、読み出されたプログラムは、マイクロコンピュータのプログラム記憶エリアにダウンロードされて、そのプログラムが実行される方式であることが好ましい。なお、このダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
【0301】
また、インターネットを含む通信ネットワークを接続可能なシステム構成であれば、通信ネットワークからプログラムをダウンロードするように流動的にプログラムを担持する記録媒体であることが好ましい。
【0302】
さらに、このように通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納しておくか、あるいは別の記録媒体からインストールされるものであることが好ましい。
【0303】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合せて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0304】
本発明に係る情報処理装置およびこれを備えた監視システムは、例えば上記したユーザによる物品の持ち出し制限を行うシステム、保管室などにおける物品の盗難監視、不正持ち出しを取り締まるシステムに適用可能である。さらには、店舗内の物品とユーザとの動きとの関係を記録して単品管理を行い、客層に応じた品揃えやレイアウトを実現するシステムにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0305】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、監視システムの要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態を示すものであり、入出庫管理システムの一例を模式的に示す図である。
【図3】本実施形態に係る監視システムが備えるリーダライタにおいて、RFIDタグと当該リーダライタとの距離を測定するための構成の概略を示すブロック図である。
【図4】同図(a)は、リーダライタとRFIDタグとの間でR/W要求信号およびタグ応答信号の送受信が行われる状態を示す図であり、同図(b)は、R/W要求信号の送信状態を示す図であり、同図(c)は、タグ応答信号の送信状態を示す図である。
【図5】2つの異なる周波数によるR/W要求信号およびタグ応答信号の送受信が行われた際の位相の変化量を示す図である。
【図6】位相の検出を行うことを可能とする受信処理部の具体的な構成を含むリーダライタの概略構成を示すブロック図である。
【図7】距離測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】本実施形態に係る情報格納部に記憶される履歴情報の一例を示すものであり、同図(a)は、各ユーザが備えるRFIDタグの距離情報の履歴を示し、同図(b)は、各物品が備えるRFIDタグの距離情報の履歴を示す図である。
【図9】本実施形態に係る情報格納部に記憶される認証情報の一例を示す図である。
【図10】本実施形態に係るリーダライタの通信可能範囲と、ユーザおよび物品との位置関係の一例を模式的に示す図であり、同図(a)は、保管室の所定領域における空間の側面図であり、同図(b)は、保管室の所定領域における空間の平面図である。
【図11】本実施形態に係るリーダライタとRFIDタグとの間の距離と時間との関係の一例を示すグラフである。
【図12】本実施の形態に係る監視システムにおける、入退室の判定処理の処理を示すフローチャートである。
【図13】本実施形態に係るリーダライタの通信可能範囲と、ユーザおよび物品との位置関係の一例を模式的に示す図である。
【図14】ユーザの位置を基準に該ユーザと物品との間の距離の時系列変化の一例を示す図である。
【図15】本実施の形態に係る監視システムにおける、ユーザの物品保持の特定処理およびユーザによる物品の持ち出しの可否判定処理を示すフローチャートである。
【図16】複数のユーザそれぞれの距離と、該ユーザそれぞれによって保持される物品の距離との時系列変化の一例を示す図である。
【図17】保管室内全体を通信可能範囲として本実施の形態に係る監視システムを適用した場合の例を示す図である。
【図18】本発明の他の実施形態を示すものであり、監視システムの要部構成を示すブロック図である。
【図19】RFIDタグの存在位置方向の推定処理を模式的に示す図である。
【図20】方向算出を行う場合のリーダライタの構成を示す図である。
【図21】エリア情報の一例を模式的に示す図である。
【図22】位置推定処理の流れの前半を示すフローチャートである。
【図23】位置推定処理の流れの後半を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0306】
1a RFIDタグ(識別装置)
1b RFIDタグ(識別装置)
2 リーダライタ(通信装置)
6 位置測定部(位置情報算出手段)
10 監視装置(情報処理装置)
11 外部通信部(受付け手段)
12 情報抽出部(受付け手段)
13 入退室監視部(出入判定手段)
14 特定部(特定手段)
15 認証判定部(適否判定手段)
16 出力指示部(出力手段)
17 情報格納部(履歴記録装置、組み合せ情報記憶装置)
18 第1履歴情報(履歴情報)
19 第2履歴情報(履歴情報)
20 認証情報(組み合せ情報)
90 監視システム
100 保管室(所定領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の監視対象それぞれに設けられた識別装置との通信により、該識別装置の、通信エリアにおける位置情報を算出する通信装置から情報を受付け処理する情報処理装置であって、
上記通信装置から上記算出された位置情報を受付ける受付け手段と、
上記受付け手段により受付けた位置情報に基づき、所定領域に共に出入りする監視対象の組み合せを特定する特定手段とを備えていることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
上記位置情報に基づき、上記複数の監視対象のうちの少なくとも1つの監視対象の所定領域への出入りの有無を判定する出入判定手段をさらに備え、
上記出入判定手段が、所定領域を出入りする監視対象があると判定した場合、上記特定手段は、該監視対象とともに上記所定領域に出入りする他の監視対象を、上記位置情報に基づき特定することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
上記出入判定手段により、所定領域に対してほぼ同時に複数の監視対象が出入りしていると判定された場合、上記特定手段は、該監視対象それぞれについて上記所定領域を共に出入りする監視対象同士の組み合せを、上記監視対象それぞれの位置情報に基づき特定することを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
上記出入判定手段により所定領域への出入りがあると判定された監視対象を第1の監視対象とすると、
上記特定手段は、上記第1の監視対象から所定の距離範囲内にある第2の監視対象を、上記第1監視対象とともに所定領域を出入りする監視対象であると特定することを特徴とする請求項2または3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
上記受付け手段により通信装置から受付けた位置情報の履歴である履歴情報を記録する履歴記録装置をさらに備え、
上記出入判定手段が、上記履歴情報に基づき上記監視対象の所定領域への出入りを判定することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
上記位置情報が、上記識別装置から上記通信装置までの距離を示す情報であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
上記位置情報が、所定領域における上記識別装置の2次元座標あるいは3次元座標であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
上記所定領域を出入りする監視対象同士の組あわせの適否を示す組み合せ情報を記憶した組み合せ情報記憶装置と、
上記組み合せ情報に基づき、上記特定手段により特定された監視対象の組み合せにおいて、両者がともに出入り可能であるか否かを判定する適否判定手段とを備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
上記適否判定手段による判定結果を示す情報を出力する出力手段を備えていることを特徴とする請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
上記識別装置が、RFIDタグであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
上記請求項1〜10のいずれか1項に記載の情報処理装置と、
複数の監視対象それぞれに設けられた識別装置から送信された信号に基づき、該識別装置それぞれの位置情報を算出する位置情報算出手段、および算出した位置情報を上記情報処理装置に送信する送信手段を有する通信装置とを備えることを特徴とする監視システム。
【請求項12】
複数の監視対象それぞれに設けられた識別装置との通信により、該識別装置の、通信エリアにおける位置情報を算出する通信装置から情報を受付け処理する情報処理装置の制御方法であって、
上記通信装置から上記算出された位置情報を受付けるステップと、
受付けた位置情報に基づき、所定領域に共に出入りする監視対象の組み合せを特定するステップとを含むことを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【請求項13】
請求項1〜10いずれか1項に記載の情報処理装置を動作させるための制御プログラムであって、コンピュータを上記各手段として機能させるための情報処理装置の制御プログラム。
【請求項14】
請求項13に記載の情報処理装置の制御プログラムを記録したコンピュータの読取り可能な記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2006−301704(P2006−301704A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118536(P2005−118536)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】