説明

情報処理装置

【課題】STRからの復帰時に装置の状態が適正な状態でないとき、これを自動的に適正な状態にする処理を自動で行う。
【解決手段】装置が起動操作又はリセットにより起動し、STR移行要求によりSTR状態に移行した段階で、装置の状態を表すレジスタ値が期待値であるか否かを確かめる。その結果、期待値でなければ装置を自動的にリセットしてレジスタ値の設定処理を実行し、レジスタ値が期待値になるまで、即ち、装置が正常な状態になるまで上記動作を繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、情報処理装置、画像処理装置、画像形成装置を含む情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、年々と厳しくなる環境への対応としてMPF(マルチファンクションプリンタ)では、更なる低消費電力化を求められている。そのため、MPFにはさまざまな省エネルギー技術が搭載されているが、その中でも最も効果が期待される省エネルギー技術として、STR(Suspend To RAM)がある。これは、停止時に、現状の状態をメインメモリに一旦保存してCPUやHDDなどの殆どのデバイスへの電源供給を停止させ、復帰時には上記保存したメモリ状態を書き戻すことにより、OSなどの再起動を伴わず、サスペンド前の状態にそのまま低消費電力でかつ高速に復帰できるというものである。
【0003】
STRを使用するためには、マザーボードでメモリにだけ電源を供給できる配線が行われている必要があるため、設計レベルでSTRに対応したマザーボードを用意する必要がある。また、OS側もACPI(Advanced Configuration and Power Interface)に対応していることが要求される。
【0004】
ところで、このようなSTRによる低消費電力制御においては、低消費電力モードにおいて、電源をOFFした複数のデバイスを低消費電力モードからの復帰後に、不整合を起こすことなく問題なく使用することができるようにすることが課題になっている。
この課題に対し、本出願人は先に、各デバイスドライバの初期化時に、低消費電力制御モード毎に各デバイスドライバに設けられたコールバック関数を呼び出すパワーフック関数をパワーフックキューに登録し、低消費電力モードへの移行時及び低消費電力モードからの復帰時に、パワーフックキューに登録されたパワーフック関数を呼び出して、不整合をなくす処理を適宜に行わせることによって、上記課題の解決を図った画像処理装置を提案した(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、STR(低消費電力状態)への移行及びそこからの復帰時の課題は、上記各デバイスの不整合を解決するだけではなく、例えばノイズやハードウェア不良(故障)などの異常で装置の状態が適正でないとされたときに、どうやって適正な状態に移行させるかも重要な課題である。
以下その点について説明する。
即ち、STRの仕組みはプラットフォーム毎に異なり、例えば、「x86」と呼ばれるIntel(登録商標)CPUを採用したプラットフォームでは、STRへの移行、復帰のCPU停止やチップセットなどのレジスタ退避、復帰といった重要な部分をBIOS(Basic Input/Output System)と呼ばれるモジュールが受け持つ。
【0006】
BIOSはこれら機能以外にも、起動時のメモリ設定や各種デバイス初期化、OS(ブートローダー)の展開、起動といった機能がある。このようにBIOSは、ハードウエアに関する機能を多く持っており、その中でメモリの動作周波数やFSB(フロントサイドバス)等を設定する。
【0007】
しかし、BIOSがこれらの動作周波数を決める上記設定の元となるレジスタの設定値は、実際には所定の論理レベルに選択的に結び付けられるストラップ(strap)と呼ばれる抵抗などのハードウェアの組み合わせにより決定される信号の入力で決定されるため、ハードウエアに異常があるとレジスタ(後述のCLKCFGレジスタ)に不正な値が設定される。つまり、後述のASIC1にあるCLKCFGレジスタのbit0,1,2の値が決定されるが、このときハードウエアに異常があるとここに不正な値が設定される。
【0008】
ところで、BIOSがこれらの動作周波数を決めるタイミングというのは、起動時とSTR復帰時の2時点であり、その時点でこのストラップ信号がノイズやハードウェア不良(故障)などにより異常な状態になると、BIOSで不正な周波数が設定され、例えばMFPは正しく起動できない、又は起動してもSTRから正常に復帰できないといったことが起こり得る。
【0009】
このストラップ(メモリ動作信号)は、一旦決定されてしまうと、電源オン/オフ、又はSTR移行、復帰、ハードウェアリセットを行わないとハードウェアの状態が解除されず、BIOSにて強制的に正しい値に設定したり、PCI(Peripheral Component Interconnect)リセットなどのソフトリセット手段を用いても、正しいメモリ動作周波数にはならない。
そのため、このような状態(つまり、正常に起動できない或いは起動してもSTRから正常に復帰できない状態)になると、通常は電源オン/オフをする以外に復旧方法はなく、ユーザに対して、多大な不利益を与えることになる。
【0010】
その対策としては、ストラップ(メモリ動作信号)情報が不正な場合には、強制的にSTRへの移行、復帰を繰り返して、ストラップ情報が正しく読めるまでリトライし続けるといったことも可能であるが、この場合、リトライの回数によっては起動時間、STRからの復帰時間が延びることになり、ユーザに対して不利益が生じ、カタログスペックの詐称といった問題にもなりかねない。
【0011】
そこで、STRモードへの移行及び復帰時のCPUやチップセットなどのレジスタ内容の回避・復帰といった重要なオペレーションをBIOSが受け持つ情報処理装置において、正しく起動できない、若しくは起動してもSTRからの正常な復帰ができないといった情報処理層としての致命的な現象を回避することが喫緊の課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来技術における上記問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、低消費電力移行要求又は低消費電力状態からの復帰要求があったとき、装置が正常な状態でSTR(低消費電力状態)状態に移行又はSTR状態からの復帰ができるように、装置の状態が適正でない場合はそれを適正化する処理を自動で行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、低消費電力状態への移行及び前記低消費電力状態からの復帰を実行する低消費電力移行復帰手段と、自装置内部のハードウェアの状態が適正か否か確認する状態確認手段と、前記状態確認手段の結果を保持する状態保持手段と、自装置全体のリセットを実行するリセット手段と、前記状態保持手段に保持された結果に基づき、前記リセット手段を実行するか否かを判断するリセット実行判断手段と、を備えたことを特徴とする情報処理装置である。
請求項2の発明は、請求項1に記載された情報処理装置において、低消費電力状態からの復帰時間に関する値を保持する前記状態保持手段と、前記低消費電力状態からの復帰時間を設定する復帰時間設定手段と、前記復帰時間設定手段の実行時間を選択する復帰時間選択手段と、をさらに備え、前記復帰状態保持手段によって、前記保持された値に応じて前記実行時間を選択することを特徴とする情報処理装置である。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載された情報処理装置において、前記低消費電力状態からの復帰要因の発生を監視する監視手段をさらに備え、前記復帰時間選択手段により設定された時間前に、前記監視手段により復帰要因を検知したとき、前記リセット手段によりリセットすることを特徴とする情報処理装置である。
請求項4の発明は、請求項1に記載された情報処理装置において、前記リセット手段実行前に、前記状態保持手段により前記保持した情報をクリアする手段を備えたことを特徴とする情報処理装置である。
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかひとつに記載された情報処理装置において、前記リセット実行手段によるリセット実行前に、前記復帰状態保持手段によりリセット回数を保持する手段と、前記リセット回数が所定回数となったとき、故障している旨を通知する故障情報通知手段をさらに備えたことを特徴とする情報処理装置である。
請求項6の発明は、請求項1に記載された情報処理装置において、前記リセット手段は自装置に設けられた電源制御用のデバイスを制御し、当該自装置の主電源投入時と同じ処理を行うことを特徴とする情報処理装置である。
請求項7の発明は、請求項1又は2に記載された情報処理装置において、前記状態保持手段は、スクラッチパッドであることを特徴とする情報処理装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、STRからの復帰時に装置の状態が適正な状態でないとき、これを適正な状態にする処理を自動で行うことができる。また、これによって、ユーザは、従来のように手動による電源オン/オフの再起動を行う必要がなく、起動時間が遅延することがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る情報処理装置の構成である。
【図2】本発明の第1の実施形態の処理手順を示すフロー図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の処理手順を示すフロー図である。
【図4】本発明の第3及び第4の実施形態の処理手順をまとめて示したフロー図である。
【図5】本発明の第5の実施形態の処理手順を示すフロー図である。
【図6】本発明のスクラッチパッドの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る情報処理装置は、装置の状態の正常・異常を表すレジスタ値が期待値と合っていてもいなくても通常の起動を行い、低消費電力(STR)移行要求が出たときは低消費電力状態に移行し、ここでレジスタ値が期待値であるか否かを確かめ、期待値でなければリセットし、その際、リセット時は起動時と同じ処理を行うようにすることで、BIOSがリセットのタイミングで動作周波数を決め、上記レジスタ値を設定し直すようにする。他方、期待値であればそのまま低消費電力状態を継続するようにすることで、低消費電力状態に移行する際には、必ずレジスタ値が期待値の状態となるようにする。また、この一連の処理を全て自動で行う。
したがって、従来のように、強制的に低消費電力へ移行、復帰を繰り返して、ストラップ情報が正しく読めるまでリトライし続けることにより、起動時或いは低消費電力からの復帰に時間を要するという問題が生じないようにする。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る情報処理装置の構成である。
情報処理装置は、大きく分けてコントローラボード101とエンジンボード121からなるが、本発明にとって重要なのはコントローラボード101であり、エンジンボード121はオプションであってここではとくに必須なものではない。
また、本発明は、例えばIntel(登録商標)アーキテクチャのCPUとBIOSを搭載したシステムであることが前提である。以下、この前提のもとで本願発明の実施形態の説明を行う。
【0018】
コントローラボード101上には、本情報処理装置全体の制御を行うCPU102と、メモリコントローラを内蔵したASIC1 103、ASIC1 103が管理するレジスタ(CLKCFGレジスタ)104、ASIC1 103とエンジン107とを仲介するASIC3 105、主に画像データを保存するHDD106があり、エンジンボード121上には、画像データを処理するエンジン107、FAX108がある。
【0019】
コントローラボード101上のASIC1 103は以下で説明するレジスタ(CLKCFGレジスタ)104を有し、ASIC1は、BIOSがメモリの動作周波数を設定する前に、自装置内部のハードウェアの状態が正しいか否かを確認する状態確認手段として機能し、ASIC1のCPU102は、低消費電力状態へ移行及び前記低消費電力状態から復帰する低消費電力移行復帰手段として機能する。
【0020】
ASIC2 109は、ASIC1 103とASIC4 112を仲介しており、このASIC2 109のバスの下にBIOSが格納されたROM1 114がある。ASIC2 109は、これ以外にもUSB111、RTC(Real Time Clock)113、ボードの状態を表示するLED(Light Emitting Diode)1 110を持っている。
ASIC2 109は、RTC113により前記低消費電力状態からの復帰時間を設定する復帰時間設定手段として、また、設定された前記復帰時間を解除する復帰時間解除手段として機能し、また、BIOSにより、自装置内部のメモリの動作周波数を設定するメモリ周波数設定手段としても機能する。
【0021】
ASIC4 112は、各種設定情報を保存するNVRAM(Non-volatile memory)115やユーザからのインターフェースとなる操作パネル116やプログラム格納用ROM2 118やSDカード(インターフェース)119、ネットワーク(インターフェース)120をもっている。なお、操作パネル116にも各種状態を示すLED2 117がある。
ASIC4 112の中には、低消費電力中のネットワークやUSBなどによる復帰要因を監視するCPU112aがあり、このCPU112aからハードウエアのリセットを行うことができる。つまり、ASIC4のCPU112aは、自装置全体をリセットして電源投入時と同様の初期化を行うリセット手段として機能し、かつ、ASIC4 112のCPU112aは、前記低消費電力状態(STR)からの復帰要因の発生を監視する復帰要因監視手段として機能する。
また、ASIC4 112は内部にCPUと共に、スクラッチパッド112bを有し、そのスクラッチパッド112bは、前記状態確認手段の結果を保持する状態保持手段である。
ASIC4 112のCPU112aは、前記状態保持手段(スクラッチパッド112b)に保持された結果から、前記リセット手段を実行するか否かを判断するリセット実行判断手段として機能する。
【0022】
前記リセット実行判断手段(ASIC4 112)は、前記状態確認手段(ASIC1 103)により不正と判断された場合には、前記状態保持手段(スクラッチパッド112b)に前記不正の結果を保持するとともに、前記低消費電力移行復帰手段(ASIC1、CPU102)に対して前記低消費電力状態への移行を指示し、前記低消費電力状態からの復帰時に前記リセット実行判断手段(ASIC4のCPU112a)のリセットの実行可否判断に応じて、前記リセット手段(ASIC4のCPU112a)によるリセット制御を行う。
【0023】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る制御手順を示すフロー図であり、以下にその制御方法を説明する。
リセット実行判断手段であるASIC4のCPU112aによって、電源投入、又は(前回の)リセット実行による情報処理装置の起動処理が開始される(S101)。
ここで、状態確認手段(ASIC1 103)は、自装置内部のハードウェアの状態が正しいか否かレジスタ104の値で確認する(S102)。ここでは、レジスタはIntelアーキテクチャによるASIC1 103にあるCLKCFGレジスタであって、そのbit0,1,2が全て0(期待値)であることが期待されている。
このとき、レジスタ値が期待値(適正値)でない場合(つまり、bit0,1,2が全て0でない場合)は(S102、No)、レジスタ値をASIC4 112内部にある上記スクラッチパッド(レジスタ)へ保存してから(S103)、他方、レジスタ(CLKCFGレジスタ)の値が所定の期待値である場合はそのまま(S102、Yes)、次の通常の起動処理に移る(S104)。
【0024】
つまり、起動処理は自装置内部のハードウェアの状態が適正か不正かに関係なく行われ、起動処理がなされると、低消費電力モード移行要求があるか否かを確認する(S105)。ここで、低消費電力モード移行要求があれば(S105、Yes)、低消費電力状態へ移行する(S106)。低消費電力モード移行要求がなければ(S105、No)移行要求が出るまで待つ。
低消費電力モードに移行すると、ここで、ASIC4 112は、スクラッチパッド112bに保存されているレジスタ値が所定の期待値か否かを確認する(S107)。
スクラッチパッド112bに保存されているレジスタ値が所定の期待値でない場合は(S107、No)、ASIC4 112よってリセット処理を実行し(S108)、ステップS102、つまりこの処理のスタートに戻る。
所定の期待値であった場合には(S107、Yes)、低消費電力状態をそのまま継続する(S109)。
なお、リセット処理では、ASIC4 112のデバイス制御手段112cにより情報処理装置に設けられた電源制御用のデバイス(例えば電源用IC等)を制御し、電源投入時と同様のつまり電源投入時に行われる所定のリセットを全て行う。
【0025】
本実施形態によれば、起動時またはリセット時に必ず装置が起動し、低消費電力状態モード移行要求にしたがって低消費電力モードに移行する。その段階で自装置内部のハードウェアの状態が適正か不正か判断し、適正であればその状態を維持し、不正であれば自動的にリセットして起動時と同じ処理を行い、ハードウエアの状態が正常になるまで上記処理を繰り返す。したがって、自装置内部のハードウェアの状態が不正であっても装置が起動しないということがなく、また、ユーザがハードウエアの状態が正常になるまでスイッチのON/OFF操作を繰り返す必要もない。
【0026】
(第2の実施形態)
ところで、上記実施形態において、低消費電力移行後直ぐにリセットしてしまうと、ユーザから見ると低消費電力への移行に失敗したように見える。通常MFPは、電源を切る場合は、一旦低消費電力状態を含めた省電力状態へ移行し、その後に電源を切らないと、HDDなどに不良セクタが発生することがある。
そのため、ユーザが電源を切りたい場合は、リセットから再度低消費電力状態までの移行時間分ユーザを待たせることになる。また、低消費電力状態に移行したはずなのに、電源起動時と同じ動作になってしまい、ユーザに混乱を招くことになる。
【0027】
本実施形態は、これらの課題を解決するものであって、第1の実施形態の構成に、上記スクラッチパッド112bを複数の情報を保持する状態保持手段として機能させ、かつ前記ASIC2 109を前記低消費電力状態からの復帰時間を設定する復帰時間設定手段及び前記復帰時間設定手段の実行時間を選択する復帰時間選択手段として機能させる。
また、前記状態保持手段(スクラッチパッド112b)に前記保持された値に応じて前記実行時間を選択するようにしている。
【0028】
図3は、本発明の第2の実施形態の処理手順を示すフロー図である。
リセット実行判断手段であるASIC2 109によって、電源投入、又はリセット実行後から起動処理が開始される(S201)。
次に、自装置内部のハードウェアの状態が正しいか否かを確認する状態確認手段(ASIC1 103)によって、レジスタ104の値を確認する(S202)。
このとき、レジスタ104の値が所定の期待値でない場合は(S202、No)、その結果及びリセットが実行された時刻をスクラッチパッド(レジスタ)112bへ保存してから(S203)、また、所定の期待値であった場合はそのまま(S202、Yes)通常の起動処理を行う(S204)。
次に、低消費電力移行要求があるか否かを確認する(S205)。
低消費電力移行要求があった場合(S205、Yes)は、低消費電力状態へ移行する(S206)。
続いて、スクラッチパッド112bに保存されているレジスタ値が所定の期待値か否かを、ASIC4 112が確認する(S207)。
所定の期待値でない場合(S207、No)は、スクラッチパッド112bに保持されている時刻即ち予めセットされた時刻でASIC4 112(CPU112a)によってリセット処理を実行し(S208)、ステップS202へ戻る。所定の期待値であった場合(S207、Yes)には、低消費電力状態を継続する(S209)。
【0029】
ここで、状態保持用のレジスタであるクラッチパッド112bは、図6に示すように32bitデータを16個持つことができるのでかなりの量のデータを持つことができ、例えば‘2’ならば30分後、‘3’なら1時間後というように低消費電力移行後のリセットまでの時間をセットすることができる。
そのため、第2の実施形態によれば、低消費電力移行後直ぐにリセットしてしまい低消費電力への移行に失敗したように見えるようなことがなく、また、通常のMFPで電源を切る場合にも、低消費電力状態が短すぎてHDDなどに不良セクタが発生するなどのことがない。
【0030】
(第3の実施形態)
上記第2の実施形態では、復帰要因監視手段として機能するASIC4 112のCPU112aが、スクラッチパッド112bに保持されているリセット時刻前に復帰要因を検知した場合、そのまま低消費電力から復帰しようとしても低消費電力から復帰することができない。そのためユーザの利便性が損なわれる。
そこで、第3の実施形態は、レジスタの状態が不正でかつリセット時刻前でも、復帰要因を検出した場合はリセットできるようにしている。
具体的には、上記第1又は第2の実施形態において、復帰要因監視手段として機能するASIC4のCPU112aにより、前記低消費電力状態からの復帰要因の発生を監視し、前記復帰時間選択手段により設定された時間前に、復帰要因を検知した場合には、前記リセット手段として機能するASIC4 112のCPU112aによりリセットを行う。
【0031】
(第4の実施形態)
例えば図2に示すフローにおいて、レジスタ104(CLKCFGレジスタ)の値が期待値ではない、つまり不正なレジスタ値であるときは、その値がレジスタ(スクラッチパッド)112b)に保持されるので、リブート(リセット)した後もレジスタ112bの値が残ったままだと、ASIC4(CPU112a)はその値を確認して常にリブートし続けることになる。
そこで、第4の実施形態は、リセット実行前に、前記状態保持手段であるスクラッチパッド112bが保持した情報(不正なレジスタ値)をクリアできるようにしたものである。
具体的には、第1の実施形態に、前記リセット実行前に、前記状態保持手段により前記保持した情報をクリアする手段を付加したものである。
なお、リセット時にはリセット手段は自装置に設けられた電源制御用のデバイスを制御し、当該自装置の主電源投入時と全く同じ処理を行い、その際スクラッチパッド112bのレジスタ値は正常値にリセットされる。
【0032】
図4は、本発明の第3及び第4の実施形態の処理手順をまとめて示したフロー図である。
リセット実行判断手段であるASIC2 109によって、電源投入又はリセット実行後から起動処理が開始される(S301)。
次に、自装置内部のハードウェアの状態が正しいか否かを確認する状態確認手段(ASIC1 103)によって、レジスタ値を確認する(S302)。
このとき、レジスタ値が所定の期待値でない場合は(S302、No)、その結果及び上記リセットが実行された時刻をスクラッチパッド112bへ保存してから(S303)、また、所定の期待値であった場合はそのまま(S302、Yes)、通常の起動処理を行う(S304)。次に、低消費電力移行要求を待ち(S305)、低消費電力移行要求があったとき(S305、Yes)、低消費電力状態移行手段であるASIC1のCPU102により低消費電力状態へ移行する(S306)。
その後、低消費電力復帰要求があるか否かを確認し(S307)、低消費電力復帰要求がある場合はそのまま(S307、Yes)、他方、低消費電力復帰要求がない場合は(S307、No)、予めスクラッチパッド112bに設定した所定時刻になるまで待ち(S308)、所定時刻になったときに(S308、Yes)、それぞれASIC4 112がスクラッチパッド112bに保存されているレジスタ値が所定の期待値か否かを確認する(S309)。
【0033】
ここで、所定の期待値でない場合は(S309、No)、ASIC4 112がスクラッチパッド112bに保持されているレジスタ値をクリアし(S310)、リセット処理を実行して(S311)、ステップS302へ、つまりスタートへ戻る。
所定の期待値であった場合には(S309、Yes)、低消費電力移行復帰手段であるASIC1のCPU102により低消費電力状態から復帰して(S312)、通常動作へ移行する(S313)。
以上の第3の実施形態によれば、復帰要因検知時に、リセットすることができるので、ユーザの利便性が損なわれない。また、第4の実施形態によればリセットに先立ってレジスタの情報がクリアされるので、リブートし続けるようなことはなく、リセット時にはレジスタの情報が自動的に正常値にリセットされるので、その段階でレジスタ値が正常(期待値)になっていれば(S302、Yes)、通常動作へ移行することができる。
【0034】
(第5実施形態)
何回リブートしても正しい値が読めない場合は、ハードウエア不良が考えられるので、何らかの対応を行う必要がある。
そこで、この実施形態では、第1〜第4のいずれかの実施形態において、前記リセット実行手段(ASIC4)によるリセット実行前に、複数状態保持手段であるスクラッチパッド112bによりリセット回数を保持し、前記リセット回数が所定回数(n)となったとき、故障している旨を通知する故障情報通知手段を備えたものである。
【0035】
図5は、本発明の第5の実施形態の動作手順を示すフロー図である。
この処理フローのステップS409までは図4におけるステップS309までの処理と、また、ステップS415とS416は、同ステップS312、S313と同じである。
即ち、リセット実行判断手段であるASIC2 109によって、電源投入又はリセット実行後から起動処理が開始される(S401)。
次に、自装置内部のハードウェアの状態が正しいか否かを確認する状態確認手段によって、レジスタ値を確認する(S402)。このとき、レジスタ値が所定の期待値でない場合は(S402、No)、その結果及び上記リセットが実行された時刻をレジスタ(スクラッチパッド)112bへ保存し(S403)。その後、通常の起動処理を行う(S404)。また、期待値であった場合はそのまま(S402、Yes)、通常の起動処理を行う(S404)。
【0036】
次に、低消費電力移行要求があるか否かを確認する(S405)。低消費電力要求があった場合は(S405、Yes)、低消費電力状態へ移行する(S406)。
続いて、低消費電力復帰要求があったか否かを確認する(S407)。何らかの復帰要因による復帰要求がない場合は(S407、No)、所定時刻になったか否かを確認する(S408)。所定時刻になっていない場合は(S408、No)、そのまま低消費電力復帰要求を待つ。
低消費電力復帰要求があった場合(S407、Yes)、又は所定時刻になった場合は(S408、Yes)、ASIC4 112がスクラッチパッド112bに保存されているレジスタ値が所定の期待値か否かを確認する(S409)。所定の期待値であった場合には(S409、Yes)、低消費電力状態から復帰して(S415)、通常動作へ移行する(S416)。
【0037】
ステップS409において、スクラッチパッド112bに保存されているレジスタ値が所定の期待値でない場合は(S409、No)、ASIC4 112はリセット回数が所定回数をオーバーしているか否かを確認する(S410)。
所定回数がオーバーしていない場合には(S410、No)、ASIC4 112がリセット回数をスクラッチパッド112bに保存し(S411)、スクラッチパッド112bへ保存しているレジスタ値をクリアし(S412)、リセット処理を実行し(S413)、ステップS402へ戻る。
【0038】
所定回数が所定回数(n)を越えた(即ち、オーバーした)ときは(S410、Yes)、故障情報通知手段によりユーザへ故障を通知し、処理を終了する(S414)。
なお、故障情報通知手段は、メッセージ等の可視又は可聴表示装置等任意の装置を用いることができる。
第5の実施形態によれば、機器が致命的な場合(ハード不良、故障)になって、立ち上がれない場合には速やかにユーザに通知することができる。
【0039】
図6は、本発明のスクラッチパッドの構造を示す図である。
スクラッチパッドは、図示のように32bitの16個のレジスタ(スクラッチパッド)DATA00〜15からなり、例えばレジスタ1をリセット回数の保存用に使うなど、任意の使用方法を選択することができる。
【符号の説明】
【0040】
101・・・コントローラボード、102・・・CPU、103・・・ASIC1、104・・・レジスタ(CLKCFGレジスタ)、105・・・ASIC3、109・・・ASIC2、112・・・ASIC4、112a・・・CPU、112b・・・スクラッチパッド(レジスタ)、113・・・RTC、114・・・ROM、115・・・NVRAM、116・・・操作パネル、120・・・ネットワーク。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】特開2007−306143号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低消費電力状態への移行及び前記低消費電力状態からの復帰を実行する低消費電力移行復帰手段と、自装置内部のハードウェアの状態が適正か否か確認する状態確認手段と、前記状態確認手段の結果を保持する状態保持手段と、自装置全体のリセットを実行するリセット手段と、前記状態保持手段に保持された結果に基づき、前記リセット手段を実行するか否かを判断するリセット実行判断手段と、を備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載された情報処理装置において、
低消費電力状態からの復帰時間に関する値を保持する前記状態保持手段と、前記低消費電力状態からの復帰時間を設定する復帰時間設定手段と、前記復帰時間設定手段の実行時間を選択する復帰時間選択手段と、をさらに備え、前記復帰状態保持手段によって、前記保持された値に応じて前記実行時間を選択することを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された情報処理装置において、
前記低消費電力状態からの復帰要因の発生を監視する監視手段をさらに備え、前記復帰時間選択手段により設定された時間前に、前記監視手段により復帰要因を検知したとき、前記リセット手段によりリセットすることを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載された情報処理装置において、
前記リセット手段実行前に、前記状態保持手段により前記保持した情報をクリアする手段を備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかひとつに記載された情報処理装置において、
前記リセット実行手段によるリセット実行前に、前記復帰状態保持手段によりリセット回数を保持する手段と、前記リセット回数が所定回数となったとき、故障している旨を通知する故障情報通知手段をさらに備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載された情報処理装置において、
前記リセット手段は自装置に設けられた電源制御用のデバイスを制御し、当該自装置の主電源投入時と同じ処理を行うことを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載された情報処理装置において、
前記状態保持手段は、スクラッチパッドであることを特徴とする情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−219639(P2010−219639A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61129(P2009−61129)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】