情報記録方法、情報再生方法及び光ディスク装置
【課題】空間記録を行う際に記録領域の利用効率を高めることにより空間記録密度若しくはディスクの記録容量を増大させる。
【解決手段】深さオフセットaで隣接トラックとの記録深さを交互に変え、隣接トラックとの半径方向の距離である実効トラックピッチqをトラックピッチpよりも小さくする。このトラック配置では、隣接トラックが記録されている深さが異なっているためにトラッククロストーク成分は、再生系のフォトダイオード上ではデフォーカス状態になる。そこで、再生方式にホモダイン検出を用いると、フォトディテクタ上におけるクロストーク成分光の波面形状は参照光の波面形状と異なるので干渉が弱く、出力が小さくなる。一方、再生トラックからの反射光の波面形状は参照光の波面形状と一致するので強く干渉する結果、大きな出力が得られる。よって、トータルの出力からトラッククロストーク成分が抑圧される。
【解決手段】深さオフセットaで隣接トラックとの記録深さを交互に変え、隣接トラックとの半径方向の距離である実効トラックピッチqをトラックピッチpよりも小さくする。このトラック配置では、隣接トラックが記録されている深さが異なっているためにトラッククロストーク成分は、再生系のフォトダイオード上ではデフォーカス状態になる。そこで、再生方式にホモダイン検出を用いると、フォトディテクタ上におけるクロストーク成分光の波面形状は参照光の波面形状と異なるので干渉が弱く、出力が小さくなる。一方、再生トラックからの反射光の波面形状は参照光の波面形状と一致するので強く干渉する結果、大きな出力が得られる。よって、トータルの出力からトラッククロストーク成分が抑圧される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクを用いた情報記録方法及び情報再生方法、並びにそれを体現する光ディスク装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
以下における説明中の用語の一部は、Blu-ray Disc(BD)で使用されるものを基本とする。ただし、本発明の適用範囲は、BDに限定されるものではない。
【0003】
光ディスクの記録容量の拡大は、光源の短波長化と対物レンズの開口比(NA)の増大に加えてディスク1枚当たりの記録層数を増やすことにより実現されてきた。BDでは青色レーザダイオードと、NAが0.85という高NA対物レンズを用いて2層で50GBの記録容量を実現している。更に、2010年には、記録層の数を3乃至4に増やすと同時に面記録密度も高めることにより100GB以上の記録容量を有するBD XLの実用化に至った。
【0004】
記録波長の短波長化や対物レンズの高NA化は限界に近く、今後、面記録容量を大幅に向上させるのは容易でない。よって、上記以上の記録容量を実現するためには、記録層の数をさらに増大させるのが有力な解決手段の一つである。しかし、従来の多層光ディスクと同様の構成で記録層数を増大させようとすると記録容量当たりのコスト低減が実現しにくい可能性が高い。何故なら、現行の多層光ディスクの製造コスト及び歩留まりは、専ら記録層の形成プロセスに関わるからである。即ち、層数の増大は工程数の増大に直結し、最終的な歩留まりは、1層当たりのスタンパ工程の歩留まりの層数の冪乗で概ね決定される。
【0005】
そこで、従来の多層ディスクのように物理的に定義された記録層を有さない光ディスク及びその記録技術が検討されている。一例として、特許文献1に記載されている技術では、フォトリフラクティブ材料からなる記録領域中にマイクロホログラム、即ち微小な干渉縞を記録している。上記記録領域の中には、物理的に記録位置を規定する構造が無いので各マイクロホログラムの記録位置は、記録に用いる光(記録光)の焦点位置を間接的に制御することにより決定される。また、別の一例を挙げると、特許文献2の記述にあるように記録領域中にボイド(空隙)を形成することにより記録を行うものもある。これらの記録方法によれば、仮想的な記録層を比較的自由に増やすことが可能であり、ディスク1枚当たりの記録容量増大を図りやすい。尚、本明細書中では、以上のように記録領域中に物理的に記録位置を規定する層が無い方式について便宜上、空間記録と総称することとする。
【0006】
上記の空間記録を含め、記録層の数を増大させた場合に問題となるのが再生している層からの反射光量の減少である。記録用光源の出力は有限であるから、多数の記録層を有するディスクで再生光の入射面から見て最も奥に有る層に対して記録を行うためには、途中の各記録層の透過率が十分に高いことが要求される。逆に言うと、各層の光反射率及び吸収率は十分に小さい必要がある。また、吸収率が小さい記録層に対して記録を行うために記録膜の記録感度が高く設定されているため、再生時のピックアップの出射光(再生光)のパワーを大きくすることには限界がある。このため、一般的に再生時に記録層から返ってくる光量は記録層数が多いほど小さくなる。従って、再生信号の信号対雑音比(SNR)の低下が課題となる。
【0007】
再生信号のSNR低下に対抗する技術として、特許文献3に記載のあるような光学干渉を応用した信号振幅増幅技術がある。即ち、再生光と共通の光源から得た参照光を記録層からの反射光と光検出器上で干渉させることにより再生信号を増幅するものである。尚、本明細書中では、このような再生光と共通の光源から得た参照光と再生光を光検出器上で干渉させる方式及びその再生光学系をそれぞれホモダイン検出及びホモダイン検出系と総称することとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−97723号公報
【特許文献2】特開2009−238285号公報
【特許文献3】特開2009−252337号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Japanese Journal of Applied Physics 48 (2009) 03A054
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、空間記録を行う際に記録領域の利用効率を高めることにより空間記録密度若しくはディスクの記録容量を増大させることである。
【0011】
空間記録によって仮想的な記録層数を増やすことに関しては制限がある。仮想的な記録層を増やすためには使用する記録領域の厚さを増やす必要がある。しかし、そのために必要な対物レンズの球面収差補正が可能な範囲を大幅に増やすことは容易でない。よって、空間記録を用いて記録容量の増大を図るにあたっては、記録領域を効率的に使用する必要がある。
【0012】
また、記録領域の利用効率を制限する主要な要因の一つに、トラッククロストークがある。これは、再生に用いる光のスポットが有限の大きさを持つため隣接するトラックにも光が当たり、その反射光が再生系のフォトダイオードに入射することにより起こる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明では再生時にホモダイン検出を用いる。また、ホモダイン検出を用いた場合に隣接トラックからのトラッククロストークを低減することができる配置にトラックを配置して空間記録を行う。
【0014】
本発明による情報記録方法は、内部に記録位置を規定する層を持たない均質な記録領域に情報を保持する記録トラックを整列させて空間記録することにより記録層を形成する光ディスクへの情報記録方法であり、記録領域の所定の深さ位置にメインビームを集光して情報を記録しながら記録トラックを形成することにより、複合記録層を構成する第1の記録層を形成する工程と、第1の記録層からメインビームの波長の1/6よりも大きな深さオフセットで深さ方向に隔てられた深さ位置にメインビームを集光して情報を記録しながら記録トラックを形成することにより、複合記録層を構成する第2の記録層を形成する工程とを有する。
【0015】
深さオフセットは、メインビームを集光する対物レンズの焦点深度以上とするのが好ましい。また、深さオフセットは、深さ方向に隣接する2つの複合記録層の間隔の1/4より小さいのが好ましい。
【0016】
本発明では、上記情報記録方法によって情報が記録された光ディスクを、ホモダイン検出法を用いて再生する。
【0017】
すなわち、本発明による情報再生方法は、再生に使われるメインビームの波長の1/6よりも大きな深さオフセットで深さ方向に隔てられた2つの深さ位置に情報を保持する記録トラックを整列させて第1の記録層と第2の記録層からなる複合記録層が空間記録された光ディスクの情報再生方法であり、光源から出射されたメインビームを第1のビームと第2のビームに分割し、第1のビームを所望の記録層に集光する工程と、所望の記録層から反射された第1のビームと反射鏡によって反射された第2のビームとを光検出器上で光学干渉させ、再生信号を得て所望の記録層に記録された情報を再生する工程とを有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、記録領域の利用効率を向上させることが可能となり、空間記録密度、若しくは、ディスクの記録容量を増大させることが可能となる。
上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を実施した一例の説明図。
【図2】ホモダイン検出の原理説明のための図。
【図3】再生光と参照光の干渉条件のうち波面形状の影響を説明する模式図。
【図4】シミュレーション結果を示す図。
【図5】隣接トラックからの反射光量変化の計算結果のグラフ。
【図6】A層の記録の様子を説明する模式図。
【図7】B層の記録の様子を説明する模式図。
【図8】光ディスク装置の構成例を示す図。
【図9】A層へのメインビーム焦点位置調整の説明図。
【図10】B層へのメインビーム焦点位置調整の説明図。
【図11】B層へのメインビーム焦点位置調整に使用するFES曲線を示す図。
【図12】光ディスク装置の構成例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
初めに、ホモダイン検出について説明する。但し、当業者であれば、ホモダイン検出及びそれを用いた光ディスク装置の構造及び動作に関しては特許文献3を参照することで容易に理解できるので、以下においては本発明の説明に必要な概要のみを説明する。
【0021】
図2は、ホモダイン検出系の原理説明のための図である。レーザダイオード2から出射したレーザ光は、コリメータレンズ4によって平行光束に変換され、偏光ビームスプリッタ5に達する。偏光ビームスプリッタは、分離面に入射するP偏光を透過し、S偏光を反射させる機能を有しているので、入射したレーザ光のうちP偏光成分はそのまま通過する。以後、通過したP偏光成分光を参照光と呼ぶ。偏光ビームスプリッタ5を通過した参照光は、1/4波長板6を通過した後、反射鏡7によって反射される。反射された参照光は、再び1/4波長板6を通過し、偏光ビームスプリッタ5に至る。往路と復路とでそれぞれ1/4波長板を通過しているのでS偏光となっているから、参照光は、偏光ビームスプリッタ5で反射されて収束レンズ8によってフォトダイオード9の上に焦点を結ぶ。
【0022】
一方、偏光ビームスプリッタ5に入射したレーザ光のS偏光成分は、反射されて1/4波長板6を経て対物レンズ3へと導かれる。そして、このレーザ光は、対物レンズ3により光ディスク1の記録層上に焦点を結び、その一部は反射される。この記録層で反射されたレーザ光を以後、再生光と呼ぶ。再生光は、往路と同じ経路を偏光ビームスプリッタ5まで遡る。再生光は、往路と復路とでそれぞれ1/4波長板を通過してP偏光となっているので偏光ビームスプリッタ5を通過し、収束レンズ8によってフォトダイオード9の上に焦点を結ぶ。
【0023】
ここで、参照光と記録層からの反射光それぞれのレーザダイオード2からフォトダイオード9までの光学的距離の差が十分に小さい場合、参照光と再生光は、フォトダイオード9上で光学干渉を起こす。この時、両者の位相差が小さいと光の強度を強めあい、記録層からの反射光を単独でフォトダイオードで受光した時よりも大きな信号振幅が得られる。
【0024】
なお、偏光ビームスプリッタ5に入射するレーザダイオードの出力レーザ光は直線偏光であるから、その偏光面の角度を適当に定めることにより再生光と参照光の強度比を選択することが可能である。
【0025】
ここで、フォトダイオード上で記録層からの反射光が参照光と光学干渉することにより、再生信号強度を十分に増幅するためには、両者が強く干渉する必要がある。その最も基本的な条件は、前述のように両者の位相差が小さいことである。しかし、両者が完全に干渉するためには、位相整合だけでは不十分で両者の波面形状も一致する必要がある。その様子を説明する模式図を図3に示す。図3(a)には、波面形状の与える影響が解り易いように、極端な例として球面波と平面波の干渉を描いている。これらの球面波と平面波の進行方向は一致しているものとする。また、球面波の波面は立体的なものであり、紙面上に表記するのは容易でないので、図3には球面波の光軸を含む平面における両者の断面形状を示している。
【0026】
図3(a)では、平面波及び球面波の波面形状をそれぞれ破線と実線で表している。また、球面波の光軸上において両者の位相が整合しているものとしている。図3(a)から明らかなように、球面波の近軸成分は位相が平面波と合致するのに対し、光軸を外れた成分は位相が一致しない。つまり、球面波の殆どの成分は平面波と干渉しない。更に言えば、2つの光波の波面形状が空間的に一致していないと強い干渉は生じないと言うことである。例えば、球面波同士であっても図3(b)のように両者の焦点位置が一致していない場合には、強い干渉を生じないことは明らかである。即ち、再生にホモダイン検出を用いる場合、トラッククロストーク成分光の波面形状と参照光の波面形状を不一致にさせることができれば、信号成分が増幅される一方でクロストーク成分は増幅されないので、結果としてクロストーク成分に対する再生信号成分の比が向上する。即ち、クロストーク成分を抑圧したのと同等である。
【0027】
ホモダイン検出を用いた再生系では、フォトダイオード上において参照光の波面形状と再生トラックからの再生光成分の波面形状がなるべく一致するように設計されている。よって、上記の指針によりフォトダイオード出力中のトラッククロストーク成分を抑圧しようとした場合、トラッククロストーク成分光の波面形状を再生トラックからの反射光の波面形状と異なるようにできればよいことになる。
【0028】
再生トラックからの反射光の波面形状と隣接トラックからのクロストーク成分の波面形状を相違させる一手段として、隣接するトラック相互のディスク厚み方向の距離(記録深さ)を十分に大きく変えることが考えられる。これにより、トラッククロストーク成分がデフォーカス状態となり、図3(b)に相当する状態を作り出すことができる。空間記録においては、このように隣接するトラック相互のディスク厚み方向の距離(記録深さ)を十分に大きくすること可能である。
【0029】
空間記録における記録マークからの反射光によるフォトダイオード出力のデフォーカス及びトラックオフセット依存性の計算結果を図4(a)及び図4(b)に示す。図4(a)は、従来の光ディスク再生系を用いた場合で、図4(b)がホモダイン検出系を用いた場合である。計算は、空間記録を想定し、記録マークの反射率を有限な値とする一方、マーク以外は全て反射率0としている。即ち、透明な物質中に有限な反射率と有限な面積を有する記録マークからなるトラックが存在しているものとした。また、光の波長は、BDと同じ405nmとし、レンズのNAも同じく0.85とした。トラックピッチは320nmとし、隣接トラックにも同じマークが存在するものと仮定した。また、マークの幅は、トラックピッチの1/3とし、マークとスペースの長さは、共に596nmとした。
【0030】
図4(a)及び図4(b)の横軸は、トラックオフセットで、縦軸は反射光量を表す。また、デフォーカス量毎にトラックオフセット方向の反射光量変化をプロットしてある。
【0031】
図4(a)のマーク直上(トラックオフセット0nm)での変化に着目すると、従来の光ディスク方式では、デフォーカス量が大きくなるに連れてマーク部からの反射光量が徐々に減り、スペース部からの光量が増えていくように見える。そして、デフォーカスが甚だしい場合にはマークとスペースを平均化されていく。これは、当業者であれば容易に理解できる現象である。
【0032】
一方、図4(b)のホモダイン検出の場合のマーク直上(トラックオフセット0nm)での変化に着目すると、図4(a)の場合と同様にデフォーカス量が大きくなるに連れてマーク部からの反射光量が減少していく。ただし、その減少速度は、従来方式の場合よりも急速である。これは、先に述べたようにデフォーカスが大きくなると再生光と参照光の波面形状の差が大きくなるために振幅増幅率が低下するためである。
【0033】
次に、トラックとトラックの中間(トラックオフセット160nm)直上での変化に着目すると、図4(a)の従来の再生系の例では、スペース部からの反射光量が増えていくように見える。一方、図4(b)のホモダイン検出の場合は、従来方式の場合とは反対にデフォーカス量が大きくなるに連れて反射光量は減少していく。減少する理由は、マーク直上における場合と同じで、参照光との波面形状の相違が大きくなって行くためである。
【0034】
つまり、ホモダイン検出を用いれば、隣接するトラック相互のディスク厚み方向の距離(記録深さ)を十分に大きくすることにより、隣接トラックからのクロストークを減らすことが出来る。この特性を用いることによりトラックピッチを狭めることが可能になる。
【0035】
以上の現象は、特定の計算条件下で得られたものである。しかし、その原因を考えると、上記の議論は一般性を有しており、常識の範囲内で計算条件であるトラックピッチやマーク幅などのパラメータを変更したとしても概ね成立する。
【0036】
図1(a)に、本発明を実施した一例の説明図を示す。また、図1(b)に、比較の為に従来の再生光学系を用いた場合の例を示す。図1(a)及び図1(b)は、物理的に定義された記録層を有さない光ディスクの記録領域に空間記録によって記録されたトラック10の配置を、ディスクの半径方向に切断した断面から観測したものを表す説明図である。即ち、横軸は、ディスクの半径方向を表し、縦軸がディスク表面からの深さ方向を表している。特許文献1などで開示されている空間記録においては、ディスク中に設けられた基準面にガイドビームのフォーカスを掛けた状態で記録を行う。また、基準面には螺旋状の案内溝が設けられているので、ディスクの半径方向の断面から見ると、図1(b)に図示したように、記録マーク列からなるトラックは、仮想的な記録層(以後、単に記録層11と呼ぶ)を構成しているように見える。
【0037】
従来技術に対して、本発明では図1(a)に示したように、記録層11中のトラックは単一平面上に配置されているのではなく、互いに隣り合うトラック同士の記録深さが異なる。この例では、一定の深さオフセットaをもって、隣接トラックとの記録深さが交互に変えられている。この時、記録深さが異なる隣接トラックとの半径方向の距離qを実効トラックピッチと呼ぶことにする。図3(a)に関連して述べたように、深さオフセットaは、ホモダイン検出法を用いて再生することで隣接トラックからのクロストークを十分に抑圧するのに必要な深さに設定されている。
【0038】
図5は、深さオフセットの効果を示す計算例である。図5は、図1(a)に示すようなトラック配置をした場合に、あるトラックの中央において観測される隣接トラックからの反射光(クロストーク成分光)によるフォトダイオード出力変化をそのトラック中央における出力で規格化し、プロットしたものである。横軸は、デフォーカス量で、比較の為に従来方式の再生光学系を用いた場合とホモダイン検出系を用いた場合とを示す。実線がホモダイン検出系を用いた場合を示している。再生光学系やトラックピッチなどの計算条件は、図4と同じである。
【0039】
図5から、従来の再生光学系では深さオフセットによるトラッククロストーク抑圧効果はなく、むしろ大きな深さオフセットに対してはトラッククロストークの影響が大きくなることが解る。一方、ホモダイン検出を用いた場合には、深さオフセットが大きくなるに連れて隣接トラックからの反射光による影響は単調に減少していることが解る。図5に示したグラフが再生信号中のトラッククロストーク成分のトップレベルに相当するとものと考えることができる。すると、深さオフセット0では、再生信号中のトラッククロストークの比率は、およそ−8dBにも相当する。これは、今日の実用化されている光ディスク信号処理技術をもってしても実用的なエラーレートを実現するのは困難なレベルである。それに対し、深さオフセットを、使用している再生光学系の焦点深度560nmに概ね匹敵する600nmにすると、−17dBにまで大幅に低下する。これは、現行の光ディスクと比較して良い条件とは言えないものの、エラー訂正符号の高度化により十分に実用化可能な範囲である。
【0040】
次に、図1(a)及び図1(b)を参照して、記録領域(記録空間)中の単位断面積当たりのトラック数(以後、単にトラック密度と呼ぶ)について述べる。まず、従来の場合について考える。簡単のために、記録層の間隔は一定値dであるとする。また、トラックピッチをpとすると、トラック密度mは、m=1/(pd)で与えられる。一方、本発明に基づく場合については、実効的な層間隔がd+2aに増加しているので、記録領域中の単位断面積当たりのトラック数nは、n=1/(q(d+2a))で与えられる。よって、例えばBD XLと同程度の例としてd=10000nm、p=320nmに対してq=p/2=160nm、a=1000nmとするとn/m=1.67となり、従来に比べておよそ1.67倍のトラック密度を実現できる。また、n>mとなる条件をq=p/2について求めるとa<d/4となる。尚、層間隔が一定でない場合については、平均の層間隔を用いて上記の議論を適用すればよい。
【0041】
従来、同一記録層中のトラックは、同一面内に形成されていた。DVD−RAMのようなランドグルーブ記録方式の光ディスクでは、ランドとグルーブの両方に記録されているので厳密には幾何学的に同一平面内にはない。しかし、DVD−RAMの場合、グルーブの深さは再生光の焦点深度よりも浅く、再生光の波長のおよそ1/6であるので、ランドもグルーブも光学的には同一平面内にあることになる。つまり、ランド、グルーブどちらからの反射光の波面形状も同じと見なすことができる。
【0042】
次に、記録動作について図6を用いて説明する。光ディスク1は、基板22の上に記録材料からなる記録領域20が形成されている。記録材料は、ニトロセルロース系樹脂である。基板22の成型時にその表面に案内溝が同時形成され、その上に反射膜を付着させることによりリファレンス面21が形成されている。リファレンス面21の上に記録領域20が形成される。初期状態では記録領域20は均質であり、内部に物理的に記録位置を規定する層を有さない。図6は、記録中の様子を半径方向に切った断面から観測したものに相当する。対物レンズ3により、ガイドビーム23は、リファレンス面21上に焦点を結んでいる。ガイドビーム23は、赤色のレーザ光である。ガイドビーム23は、リファレンス面21を用いてフォーカス信号とトラッキング信号を得る。メインビーム24は、対物レンズ3により予め指定された記録深さに焦点を結んでいる。指定した記録深さに記録光の焦点を結ばせるためには、ディスク表面からの距離に応じて球面収差を補正する必要があることと、その方法に関しては当業者であれば容易に理解できることなので、ここでは説明を省略する。
【0043】
以下の説明においては、本発明に基づいて記録された記録層のうち、リファレンス面21に近い側のトラックの集合を便宜上A層25と呼び、遠い側をB層26と呼ぶこととする。リファレンス面21に形成されている案内溝はシングルスパイラルである。A層を記録する際には、ガイドビームをリファレンス層のグルーブに対してトラッキングを掛け、グルーブの直上にボイド列からなるトラックを内周から外周へと形成していく。
【0044】
最外周までA層を記録し終えたらB層を記録する。その様子の模式図を図7に示す。B層を記録する際には、再び内周からガイドビーム23がランドに対してトラッキングを掛け、ランドの直上にトラックを形成していく。尚、上記の例では記録の方向を内周から外周へとしたが、スパイラルとディスク回転の向きによっては外周から内周である場合もあり得ることは勿論である。また、上記の例ではリファレンス層が基板と記録領域の境界に設けられているが、ディスクの光入射面近傍に設けてもよいことは勿論である。
【0045】
尚、実際には、複数の複合記録層が形成されることになるが、簡単のために図1には、2つの複合記録層のみが記載されている。ある複合記録層に次いで別の複合記録層を記録するには、記録光焦点のリファレンス面からの記録深さをdだけ変位させ、再度、上記と同様の工程を経ることにより行う。
【0046】
記録済みのトラックを再生する場合、リファレンス層を用いたフォーカス及びトラッキング制御を行うことは勿論可能である。非特許文献1にあるように、リファレンス層を用いずに記録済みの記録層及びトラックから直接フォーカスエラー信号及びトラックエラー信号を検出することも可能である。
【0047】
記録中途の層に追記をする場合、リファレンス制御方式ではドライブの個体差や設計の違いにより記録光の焦点の深さが記録済みのトラックと異なることがあり得る。これは、互換性低下の原因となる。これを解決する一つの方法としては、記録済みの記録層中のトラックからフォーカスエラー信号及びトラックエラー信号を検出して記録済みトラックとリファレンス層から検出したフォーカスエラー信号及びトラックエラー信号を校正する方法がある。この方法による場合、追記を行うのがA層かB層かで手順が異なる。
【0048】
図8は、本発明に基づく光ディスク装置の構成図である。ただし、再生時あるいは追記前にメインビームの焦点位置を校正する手順を説明する為のものなので、その説明に不要な構成要素は概ね省略されている。ホモダイン検出、及びそのために必要な再生光と参照光の干渉もここでの説明とは無関係なため図示及び説明を省略している。この例の特徴は、フォーカシング及びトラッキングのフィードバック制御に用いるエラー信号の検出にリファレンスビームを用いるのかメインビームを用いるのかを選択することができることである。
【0049】
メインビームの光源は、青色レーザダイオード31で、これを発した青色レーザ光は、コリメータレンズ4aで平行光に変換され、リレーレンズ33で球面収差補正を受けたのちに偏光ビームスプリッタ5aを透過し、1/4波長板6aで円偏光に変えられる。そして、ダイクロイックプリズム32によって反射された後に、対物レンズ3によって光ディスク1の記録領域内に焦点を結ぶ。ここで、メインビームの焦点が記録済みの記録層にあれば、記録マークによりメインビーム光の一部が反射され、偏光ビームスプリッタ5aまで戻っていく。その間、再度1/4波長板6aを通過するために偏光の向きが往路とは90°異なっているので、偏光ビームスプリッタ5aによって反射されて、非対称収束レンズ35aにより4分割フォトダイオード34a上に集光される。非対称収束レンズ35aでは故意に非点収差を発生させ、4分割フォトダイオード34aとの組み合わせにより非点収差方式にてフォーカスエラー信号を得る。非対称収束レンズは、球面レンズと円柱レンズの組み合わせでも同等の機能を実現できる。また、トラックエラー信号も同時に4分割フォトダイオード出力から得られることは当業者には周知のことである。
【0050】
ガイドビームの光源は、赤色レーザダイオード36で、これを発した赤色レーザ光は、コリメータレンズ4bで平行光に変換され、偏光ビームスプリッタ5bを透過し、1/4波長板6bで円偏光に変えられる。そして、ダイクロイックプリズム32を透過した後に、対物レンズ3によって光ディスク1のリファレンス面に焦点を結ぶ。リファレンス面でガイドビーム光の一部が反射され、偏光ビームスプリッタ5bまで戻っていく。その間、再度1/4波長板6bを通過して偏光の向きが往路とは90°異なっているので、偏光ビームスプリッタ5bによって反射されて、非対称収束レンズ35bにより4分割フォトダイオード34b上に集光される。非対称収束レンズ35bは故意に非点収差を発生させ、4分割フォトダイオード34bとの組み合わせにより非点収差方式にてフォーカスエラー信号を得る。
【0051】
青系または赤系で検出されたエラー信号から必要に応じてセレクタ37によっていずれかを選択し、制御装置38に送る。制御装置38は、入力されたエラー信号を用いてアクチュエータ39を駆動することによりレンズのフォーカス及びトラッキングのフィードバック制御を行う。
【0052】
次に図8に示した例で、記録中途のA層に追記する場合について図8と図9を用いて説明する。前述のように、追記を開始する前に記録光として使用されるメインビームの焦点の深さを当該A層中の記録済みトラックの深さと一致させる必要がある。まず、セレクタ37で赤系から検出したフォーカスエラー信号を選択した上で、そのフォーカスエラー信号が極小になるようにアクチュエータ39によって対物レンズ3を駆動し、図9に示したように当該A層の記録済みの領域にシークする。この時、メインビーム24のパワーは、当然、再生時のレベルに設定する。この時にメインビームで検出されたフォーカスエラー信号もエラーが0であればメインビーム24の焦点位置が当該A層中の記録済みトラックと同じであるから、ガイドビーム23を用いてフォーカスを制御しながら追記しても問題を生じない。しかし、両者に無視できない不一致がある場合は、メインビームで検出したフォーカスエラー信号が極小、典型的には0になるまでリレーレンズ33を調整してメインビームのフォーカス位置を補正する。この調整が終了した段階で、ガイドビームによるリファレンス面に対するフォーカス制御のみで記録済みのA層のトラックと同じ深さにメインビームの焦点を維持できるようになった。
【0053】
トラッキングエラーに関しても、ガイドビームで検出したものとメインビームで検出したものとの間に差異があるかを確認し、違いがある場合にはガイドビームで検出したトラッキングエラー信号に対して電気的にオフセット信号を加算して補正する。その後、ガイドビームによる制御を行いながらメインビームが追記トラック位置27に差し掛かった時点で追記を開始する。追記開始のタイミングは、メインビームで記録済みのトラックからアドレスとフレーム情報を再生することにより取得する。また、リファレンス面の表面構造から取得する方式も用いることができる。こうして、A層と同じ深さ位置に情報を記録しながら記録トラックを形成することにより、記録中途のA層への追記を行う。
【0054】
以上は、A層へ追記する場合について述べたが、A層の再生時にも同様な操作によってメインビームの焦点をA層に合わせることができる。
【0055】
次に、記録中途のB層に追記する場合について図10を用いて説明する。A層に追記する場合と同様に、追記を開始する前にメインビームの焦点の深さを当該B層中の記録済みトラックの深さと一致させる必要がある。ただし、記録途中のB層に追記を行う場合、A層とB層の間隔が層間隔dよりも著しく小さい場合、図11に示したように、フォーカスエラー信号上でA層とB層は分離して観測されないことがある。その場合、メインビームの焦点深さを記録済みのB層の記録深さに一致させるためには以下に述べるような方法を用いる必要がある。
【0056】
図11は、記録中途のB層が存在する記録層で得られるフォーカスエラー信号(FES)を模式的に示したものである。A層のみが記録されている個所では、FES曲線としてA層FES曲線40が観測される。B層単独では存在しないので、B層FES曲線42は、直接観測することはできない仮想的なFES曲線である。しかし、その形状は、A層FES曲線とほぼ同じ形状で深さオフセットの分、横軸との交差位置が異なる。そして、A層とB層が共に記録されている個所では、FES曲線として、A層FES曲線とB層FES曲線が合わさって観測されたものに相当する合成FES曲線41が観測される。
【0057】
従って、実際に観測可能なA層FES曲線を用いてメインビームの焦点位置を調整した場合には、図11中のA点に調整される。或いは、やはり実際に観測可能な合成FES曲線41を用いてメインビームの焦点位置を調整した場合には、図11中のC点に調整される。いずれにしても、本来調整されるべきB点とは異なる。
【0058】
目標とすべきB点は、直接観測できない曲線上にある。先に述べたように、B層FES曲線の形状及び振幅は、A層FES曲線とほぼ同じものであることが期待される。そこで、両者の形状及び振幅が同一であると仮定し、実際に観測可能なA層FES曲線及び合成FES曲線を用いてB点の位置を推定する。即ち、セレクタ37で赤系から検出したフォーカスエラー信号を選択した上で、当該記録層でA層のみ記録済みの領域にシークする。このとき、アクチュエータ39は、ガイドビーム23がリファレンス面21に焦点合わせされるように対物レンズ3を駆動する。そして、セレクタ37を青系に切り替え、メインビームで検出したフォーカスエラー信号が0になるまでリレーレンズ33を調整してメインビームのフォーカス位置を補正する。この調整が終了した段階で、記録済みのA層のトラックと同じ深さにメインビームの焦点があることになる。即ち、A点が求まった。この時のリレーレンズ33の位置を記憶する。
【0059】
次に、図10に示したように、セレクタ37で赤系の4分割フォトダイオード34bによって検出されたエラー信号を選択して、当該記録層でリファレンスビームを用いたフォーカス制御をしながらA層及びB層共に記録済みの領域にシークし、メインビームで検出したフォーカスエラーが0になるまでリレーレンズ33を調整してメインビームのフォーカス位置を補正する。この調整が終了した段階でC点が求まった。この時のリレーレンズ33の位置を記憶する。
【0060】
B層FES曲線の形状及び振幅をA層FES曲線と同じと仮定しているので、図11でB点とC点の距離はA点とC点との距離に等しいはずである。以上から、B層に記録する際に設定すべきリレーレンズの位置を推定することができる。すなわち、A点に対応するリレーレンズ33の位置と、C点に対応するリレーレンズ33の位置から、B層に記録する際に設定すべきリレーレンズの位置を求め、求めた位置にリレーレンズ33を調整する。この調整により、メインビームはB層と同じ深さ位置に焦点合わせされるので、メインビームが追記トラック位置27に差し掛かった時点で情報を記録しながらトラックを形成することにより、B層への追記を行うことができる。
【0061】
以上は、B層へ追記する場合について述べたが、再生時にも同様な操作が必要なことがある。即ち、A層、B層共に記録済みの記録層を再生する場合、メインビームでフォーカスエラーを検出して制御すると、その際に検出されるFES曲線は合成FES曲線41であるのでA層とB層の中間に焦点が合ってしまう。メインビームの焦点を正しく目的とする層に合わせる方法には、再生信号の品質を調べながらフォーカス信号に電気的なオフセットを加える方法が考えられる。ただし、この方法は時間がかかる。
【0062】
そこで、B層の一部を未記録のままにしておき、まず、A層のみ記録されている領域においてメインビームでフォーカスエラーを検出して、フォーカスエラー信号が極小なるようにアクチュエータ39を駆動して対物レンズ3の焦点位置を制御する。その時のアクチュエータ駆動電圧の時間平均値を記憶する。これは、図11のA点に相当する。次に、A層、B層共に記録済みの領域に移動し、メインビームでフォーカスエラーを検出して、フォーカスエラー信号が極小なるようにアクチュエータ39を駆動して対物レンズ3の焦点位置を制御する。そして、その時のアクチュエータ駆動電圧の時間平均値を記憶する。これは、図11のC点に相当する。この2点の値からB点の位置を推定し、B層を再生する際に電気的オフセットとしてアクチュエータ制御信号に加える。同様に、A層を再生する場合には、図11のA点とC点の距離に相当するオフセットをアクチュエータ制御信号に加える。
【0063】
図12は、光ディスク装置の構成の一例を示したものである。光ディスク1は、スピンドルモータ52によって回転される。ピックアップ51には、例えば図8に示したような記録再生に用いる光源、対物レンズをはじめとする光学系などが搭載されている。本発明に基づく装置であるので、再生光学系にホモダイン検出方式を用いている。ピックアップ51は、スライダ53によりシークを行う。シーク及びスピンドルモータの回転などはメイン回路54からの指示によって行う。メイン回路には、信号処理回路やフィードバック調節計などの専用回路及びマイクロプロセッサ、メモリなどが搭載されている。光ディスク装置全体の動作を制御するのはファームウェア55である。ファームウェア55は、メイン回路中のメモリに格納されている。先に述べた、追記時のメインビームの焦点位置調整もファームウェアの指示に従って行う。
【0064】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1:光ディスク、2:レーザダイオード、3:対物レンズ、4:コリメータレンズ、5:偏光ビームスプリッタ、6:1/4波長板、7:反射鏡、8:収束レンズ、9:フォトダイオード、10:トラック、11:記録層、
20:記録領域、21:リファレンス面、22:基板、23:ガイドビーム、24:メインビーム、25:A層、26:B層、27:追記トラック位置、
31:青色レーザダイオード、32:ダイクロイックプリズム、33:リレーレンズ、34:4分割フォトダイオード、35:非対称収束レンズ、36:赤色レーザダイオード、37:セレクタ、38:制御装置、39:アクチュエータ、40:A層FES曲線、41:合成FES曲線、42:B層FES曲線、
51:ピックアップ、52:スピンドルモータ、53:スライダ、54:メイン回路、55:ファームウェア、
a:深さオフセット、d:基本層間隔、p:基本トラックピッチ、q:実効トラックピッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクを用いた情報記録方法及び情報再生方法、並びにそれを体現する光ディスク装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
以下における説明中の用語の一部は、Blu-ray Disc(BD)で使用されるものを基本とする。ただし、本発明の適用範囲は、BDに限定されるものではない。
【0003】
光ディスクの記録容量の拡大は、光源の短波長化と対物レンズの開口比(NA)の増大に加えてディスク1枚当たりの記録層数を増やすことにより実現されてきた。BDでは青色レーザダイオードと、NAが0.85という高NA対物レンズを用いて2層で50GBの記録容量を実現している。更に、2010年には、記録層の数を3乃至4に増やすと同時に面記録密度も高めることにより100GB以上の記録容量を有するBD XLの実用化に至った。
【0004】
記録波長の短波長化や対物レンズの高NA化は限界に近く、今後、面記録容量を大幅に向上させるのは容易でない。よって、上記以上の記録容量を実現するためには、記録層の数をさらに増大させるのが有力な解決手段の一つである。しかし、従来の多層光ディスクと同様の構成で記録層数を増大させようとすると記録容量当たりのコスト低減が実現しにくい可能性が高い。何故なら、現行の多層光ディスクの製造コスト及び歩留まりは、専ら記録層の形成プロセスに関わるからである。即ち、層数の増大は工程数の増大に直結し、最終的な歩留まりは、1層当たりのスタンパ工程の歩留まりの層数の冪乗で概ね決定される。
【0005】
そこで、従来の多層ディスクのように物理的に定義された記録層を有さない光ディスク及びその記録技術が検討されている。一例として、特許文献1に記載されている技術では、フォトリフラクティブ材料からなる記録領域中にマイクロホログラム、即ち微小な干渉縞を記録している。上記記録領域の中には、物理的に記録位置を規定する構造が無いので各マイクロホログラムの記録位置は、記録に用いる光(記録光)の焦点位置を間接的に制御することにより決定される。また、別の一例を挙げると、特許文献2の記述にあるように記録領域中にボイド(空隙)を形成することにより記録を行うものもある。これらの記録方法によれば、仮想的な記録層を比較的自由に増やすことが可能であり、ディスク1枚当たりの記録容量増大を図りやすい。尚、本明細書中では、以上のように記録領域中に物理的に記録位置を規定する層が無い方式について便宜上、空間記録と総称することとする。
【0006】
上記の空間記録を含め、記録層の数を増大させた場合に問題となるのが再生している層からの反射光量の減少である。記録用光源の出力は有限であるから、多数の記録層を有するディスクで再生光の入射面から見て最も奥に有る層に対して記録を行うためには、途中の各記録層の透過率が十分に高いことが要求される。逆に言うと、各層の光反射率及び吸収率は十分に小さい必要がある。また、吸収率が小さい記録層に対して記録を行うために記録膜の記録感度が高く設定されているため、再生時のピックアップの出射光(再生光)のパワーを大きくすることには限界がある。このため、一般的に再生時に記録層から返ってくる光量は記録層数が多いほど小さくなる。従って、再生信号の信号対雑音比(SNR)の低下が課題となる。
【0007】
再生信号のSNR低下に対抗する技術として、特許文献3に記載のあるような光学干渉を応用した信号振幅増幅技術がある。即ち、再生光と共通の光源から得た参照光を記録層からの反射光と光検出器上で干渉させることにより再生信号を増幅するものである。尚、本明細書中では、このような再生光と共通の光源から得た参照光と再生光を光検出器上で干渉させる方式及びその再生光学系をそれぞれホモダイン検出及びホモダイン検出系と総称することとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−97723号公報
【特許文献2】特開2009−238285号公報
【特許文献3】特開2009−252337号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Japanese Journal of Applied Physics 48 (2009) 03A054
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、空間記録を行う際に記録領域の利用効率を高めることにより空間記録密度若しくはディスクの記録容量を増大させることである。
【0011】
空間記録によって仮想的な記録層数を増やすことに関しては制限がある。仮想的な記録層を増やすためには使用する記録領域の厚さを増やす必要がある。しかし、そのために必要な対物レンズの球面収差補正が可能な範囲を大幅に増やすことは容易でない。よって、空間記録を用いて記録容量の増大を図るにあたっては、記録領域を効率的に使用する必要がある。
【0012】
また、記録領域の利用効率を制限する主要な要因の一つに、トラッククロストークがある。これは、再生に用いる光のスポットが有限の大きさを持つため隣接するトラックにも光が当たり、その反射光が再生系のフォトダイオードに入射することにより起こる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明では再生時にホモダイン検出を用いる。また、ホモダイン検出を用いた場合に隣接トラックからのトラッククロストークを低減することができる配置にトラックを配置して空間記録を行う。
【0014】
本発明による情報記録方法は、内部に記録位置を規定する層を持たない均質な記録領域に情報を保持する記録トラックを整列させて空間記録することにより記録層を形成する光ディスクへの情報記録方法であり、記録領域の所定の深さ位置にメインビームを集光して情報を記録しながら記録トラックを形成することにより、複合記録層を構成する第1の記録層を形成する工程と、第1の記録層からメインビームの波長の1/6よりも大きな深さオフセットで深さ方向に隔てられた深さ位置にメインビームを集光して情報を記録しながら記録トラックを形成することにより、複合記録層を構成する第2の記録層を形成する工程とを有する。
【0015】
深さオフセットは、メインビームを集光する対物レンズの焦点深度以上とするのが好ましい。また、深さオフセットは、深さ方向に隣接する2つの複合記録層の間隔の1/4より小さいのが好ましい。
【0016】
本発明では、上記情報記録方法によって情報が記録された光ディスクを、ホモダイン検出法を用いて再生する。
【0017】
すなわち、本発明による情報再生方法は、再生に使われるメインビームの波長の1/6よりも大きな深さオフセットで深さ方向に隔てられた2つの深さ位置に情報を保持する記録トラックを整列させて第1の記録層と第2の記録層からなる複合記録層が空間記録された光ディスクの情報再生方法であり、光源から出射されたメインビームを第1のビームと第2のビームに分割し、第1のビームを所望の記録層に集光する工程と、所望の記録層から反射された第1のビームと反射鏡によって反射された第2のビームとを光検出器上で光学干渉させ、再生信号を得て所望の記録層に記録された情報を再生する工程とを有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、記録領域の利用効率を向上させることが可能となり、空間記録密度、若しくは、ディスクの記録容量を増大させることが可能となる。
上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を実施した一例の説明図。
【図2】ホモダイン検出の原理説明のための図。
【図3】再生光と参照光の干渉条件のうち波面形状の影響を説明する模式図。
【図4】シミュレーション結果を示す図。
【図5】隣接トラックからの反射光量変化の計算結果のグラフ。
【図6】A層の記録の様子を説明する模式図。
【図7】B層の記録の様子を説明する模式図。
【図8】光ディスク装置の構成例を示す図。
【図9】A層へのメインビーム焦点位置調整の説明図。
【図10】B層へのメインビーム焦点位置調整の説明図。
【図11】B層へのメインビーム焦点位置調整に使用するFES曲線を示す図。
【図12】光ディスク装置の構成例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
初めに、ホモダイン検出について説明する。但し、当業者であれば、ホモダイン検出及びそれを用いた光ディスク装置の構造及び動作に関しては特許文献3を参照することで容易に理解できるので、以下においては本発明の説明に必要な概要のみを説明する。
【0021】
図2は、ホモダイン検出系の原理説明のための図である。レーザダイオード2から出射したレーザ光は、コリメータレンズ4によって平行光束に変換され、偏光ビームスプリッタ5に達する。偏光ビームスプリッタは、分離面に入射するP偏光を透過し、S偏光を反射させる機能を有しているので、入射したレーザ光のうちP偏光成分はそのまま通過する。以後、通過したP偏光成分光を参照光と呼ぶ。偏光ビームスプリッタ5を通過した参照光は、1/4波長板6を通過した後、反射鏡7によって反射される。反射された参照光は、再び1/4波長板6を通過し、偏光ビームスプリッタ5に至る。往路と復路とでそれぞれ1/4波長板を通過しているのでS偏光となっているから、参照光は、偏光ビームスプリッタ5で反射されて収束レンズ8によってフォトダイオード9の上に焦点を結ぶ。
【0022】
一方、偏光ビームスプリッタ5に入射したレーザ光のS偏光成分は、反射されて1/4波長板6を経て対物レンズ3へと導かれる。そして、このレーザ光は、対物レンズ3により光ディスク1の記録層上に焦点を結び、その一部は反射される。この記録層で反射されたレーザ光を以後、再生光と呼ぶ。再生光は、往路と同じ経路を偏光ビームスプリッタ5まで遡る。再生光は、往路と復路とでそれぞれ1/4波長板を通過してP偏光となっているので偏光ビームスプリッタ5を通過し、収束レンズ8によってフォトダイオード9の上に焦点を結ぶ。
【0023】
ここで、参照光と記録層からの反射光それぞれのレーザダイオード2からフォトダイオード9までの光学的距離の差が十分に小さい場合、参照光と再生光は、フォトダイオード9上で光学干渉を起こす。この時、両者の位相差が小さいと光の強度を強めあい、記録層からの反射光を単独でフォトダイオードで受光した時よりも大きな信号振幅が得られる。
【0024】
なお、偏光ビームスプリッタ5に入射するレーザダイオードの出力レーザ光は直線偏光であるから、その偏光面の角度を適当に定めることにより再生光と参照光の強度比を選択することが可能である。
【0025】
ここで、フォトダイオード上で記録層からの反射光が参照光と光学干渉することにより、再生信号強度を十分に増幅するためには、両者が強く干渉する必要がある。その最も基本的な条件は、前述のように両者の位相差が小さいことである。しかし、両者が完全に干渉するためには、位相整合だけでは不十分で両者の波面形状も一致する必要がある。その様子を説明する模式図を図3に示す。図3(a)には、波面形状の与える影響が解り易いように、極端な例として球面波と平面波の干渉を描いている。これらの球面波と平面波の進行方向は一致しているものとする。また、球面波の波面は立体的なものであり、紙面上に表記するのは容易でないので、図3には球面波の光軸を含む平面における両者の断面形状を示している。
【0026】
図3(a)では、平面波及び球面波の波面形状をそれぞれ破線と実線で表している。また、球面波の光軸上において両者の位相が整合しているものとしている。図3(a)から明らかなように、球面波の近軸成分は位相が平面波と合致するのに対し、光軸を外れた成分は位相が一致しない。つまり、球面波の殆どの成分は平面波と干渉しない。更に言えば、2つの光波の波面形状が空間的に一致していないと強い干渉は生じないと言うことである。例えば、球面波同士であっても図3(b)のように両者の焦点位置が一致していない場合には、強い干渉を生じないことは明らかである。即ち、再生にホモダイン検出を用いる場合、トラッククロストーク成分光の波面形状と参照光の波面形状を不一致にさせることができれば、信号成分が増幅される一方でクロストーク成分は増幅されないので、結果としてクロストーク成分に対する再生信号成分の比が向上する。即ち、クロストーク成分を抑圧したのと同等である。
【0027】
ホモダイン検出を用いた再生系では、フォトダイオード上において参照光の波面形状と再生トラックからの再生光成分の波面形状がなるべく一致するように設計されている。よって、上記の指針によりフォトダイオード出力中のトラッククロストーク成分を抑圧しようとした場合、トラッククロストーク成分光の波面形状を再生トラックからの反射光の波面形状と異なるようにできればよいことになる。
【0028】
再生トラックからの反射光の波面形状と隣接トラックからのクロストーク成分の波面形状を相違させる一手段として、隣接するトラック相互のディスク厚み方向の距離(記録深さ)を十分に大きく変えることが考えられる。これにより、トラッククロストーク成分がデフォーカス状態となり、図3(b)に相当する状態を作り出すことができる。空間記録においては、このように隣接するトラック相互のディスク厚み方向の距離(記録深さ)を十分に大きくすること可能である。
【0029】
空間記録における記録マークからの反射光によるフォトダイオード出力のデフォーカス及びトラックオフセット依存性の計算結果を図4(a)及び図4(b)に示す。図4(a)は、従来の光ディスク再生系を用いた場合で、図4(b)がホモダイン検出系を用いた場合である。計算は、空間記録を想定し、記録マークの反射率を有限な値とする一方、マーク以外は全て反射率0としている。即ち、透明な物質中に有限な反射率と有限な面積を有する記録マークからなるトラックが存在しているものとした。また、光の波長は、BDと同じ405nmとし、レンズのNAも同じく0.85とした。トラックピッチは320nmとし、隣接トラックにも同じマークが存在するものと仮定した。また、マークの幅は、トラックピッチの1/3とし、マークとスペースの長さは、共に596nmとした。
【0030】
図4(a)及び図4(b)の横軸は、トラックオフセットで、縦軸は反射光量を表す。また、デフォーカス量毎にトラックオフセット方向の反射光量変化をプロットしてある。
【0031】
図4(a)のマーク直上(トラックオフセット0nm)での変化に着目すると、従来の光ディスク方式では、デフォーカス量が大きくなるに連れてマーク部からの反射光量が徐々に減り、スペース部からの光量が増えていくように見える。そして、デフォーカスが甚だしい場合にはマークとスペースを平均化されていく。これは、当業者であれば容易に理解できる現象である。
【0032】
一方、図4(b)のホモダイン検出の場合のマーク直上(トラックオフセット0nm)での変化に着目すると、図4(a)の場合と同様にデフォーカス量が大きくなるに連れてマーク部からの反射光量が減少していく。ただし、その減少速度は、従来方式の場合よりも急速である。これは、先に述べたようにデフォーカスが大きくなると再生光と参照光の波面形状の差が大きくなるために振幅増幅率が低下するためである。
【0033】
次に、トラックとトラックの中間(トラックオフセット160nm)直上での変化に着目すると、図4(a)の従来の再生系の例では、スペース部からの反射光量が増えていくように見える。一方、図4(b)のホモダイン検出の場合は、従来方式の場合とは反対にデフォーカス量が大きくなるに連れて反射光量は減少していく。減少する理由は、マーク直上における場合と同じで、参照光との波面形状の相違が大きくなって行くためである。
【0034】
つまり、ホモダイン検出を用いれば、隣接するトラック相互のディスク厚み方向の距離(記録深さ)を十分に大きくすることにより、隣接トラックからのクロストークを減らすことが出来る。この特性を用いることによりトラックピッチを狭めることが可能になる。
【0035】
以上の現象は、特定の計算条件下で得られたものである。しかし、その原因を考えると、上記の議論は一般性を有しており、常識の範囲内で計算条件であるトラックピッチやマーク幅などのパラメータを変更したとしても概ね成立する。
【0036】
図1(a)に、本発明を実施した一例の説明図を示す。また、図1(b)に、比較の為に従来の再生光学系を用いた場合の例を示す。図1(a)及び図1(b)は、物理的に定義された記録層を有さない光ディスクの記録領域に空間記録によって記録されたトラック10の配置を、ディスクの半径方向に切断した断面から観測したものを表す説明図である。即ち、横軸は、ディスクの半径方向を表し、縦軸がディスク表面からの深さ方向を表している。特許文献1などで開示されている空間記録においては、ディスク中に設けられた基準面にガイドビームのフォーカスを掛けた状態で記録を行う。また、基準面には螺旋状の案内溝が設けられているので、ディスクの半径方向の断面から見ると、図1(b)に図示したように、記録マーク列からなるトラックは、仮想的な記録層(以後、単に記録層11と呼ぶ)を構成しているように見える。
【0037】
従来技術に対して、本発明では図1(a)に示したように、記録層11中のトラックは単一平面上に配置されているのではなく、互いに隣り合うトラック同士の記録深さが異なる。この例では、一定の深さオフセットaをもって、隣接トラックとの記録深さが交互に変えられている。この時、記録深さが異なる隣接トラックとの半径方向の距離qを実効トラックピッチと呼ぶことにする。図3(a)に関連して述べたように、深さオフセットaは、ホモダイン検出法を用いて再生することで隣接トラックからのクロストークを十分に抑圧するのに必要な深さに設定されている。
【0038】
図5は、深さオフセットの効果を示す計算例である。図5は、図1(a)に示すようなトラック配置をした場合に、あるトラックの中央において観測される隣接トラックからの反射光(クロストーク成分光)によるフォトダイオード出力変化をそのトラック中央における出力で規格化し、プロットしたものである。横軸は、デフォーカス量で、比較の為に従来方式の再生光学系を用いた場合とホモダイン検出系を用いた場合とを示す。実線がホモダイン検出系を用いた場合を示している。再生光学系やトラックピッチなどの計算条件は、図4と同じである。
【0039】
図5から、従来の再生光学系では深さオフセットによるトラッククロストーク抑圧効果はなく、むしろ大きな深さオフセットに対してはトラッククロストークの影響が大きくなることが解る。一方、ホモダイン検出を用いた場合には、深さオフセットが大きくなるに連れて隣接トラックからの反射光による影響は単調に減少していることが解る。図5に示したグラフが再生信号中のトラッククロストーク成分のトップレベルに相当するとものと考えることができる。すると、深さオフセット0では、再生信号中のトラッククロストークの比率は、およそ−8dBにも相当する。これは、今日の実用化されている光ディスク信号処理技術をもってしても実用的なエラーレートを実現するのは困難なレベルである。それに対し、深さオフセットを、使用している再生光学系の焦点深度560nmに概ね匹敵する600nmにすると、−17dBにまで大幅に低下する。これは、現行の光ディスクと比較して良い条件とは言えないものの、エラー訂正符号の高度化により十分に実用化可能な範囲である。
【0040】
次に、図1(a)及び図1(b)を参照して、記録領域(記録空間)中の単位断面積当たりのトラック数(以後、単にトラック密度と呼ぶ)について述べる。まず、従来の場合について考える。簡単のために、記録層の間隔は一定値dであるとする。また、トラックピッチをpとすると、トラック密度mは、m=1/(pd)で与えられる。一方、本発明に基づく場合については、実効的な層間隔がd+2aに増加しているので、記録領域中の単位断面積当たりのトラック数nは、n=1/(q(d+2a))で与えられる。よって、例えばBD XLと同程度の例としてd=10000nm、p=320nmに対してq=p/2=160nm、a=1000nmとするとn/m=1.67となり、従来に比べておよそ1.67倍のトラック密度を実現できる。また、n>mとなる条件をq=p/2について求めるとa<d/4となる。尚、層間隔が一定でない場合については、平均の層間隔を用いて上記の議論を適用すればよい。
【0041】
従来、同一記録層中のトラックは、同一面内に形成されていた。DVD−RAMのようなランドグルーブ記録方式の光ディスクでは、ランドとグルーブの両方に記録されているので厳密には幾何学的に同一平面内にはない。しかし、DVD−RAMの場合、グルーブの深さは再生光の焦点深度よりも浅く、再生光の波長のおよそ1/6であるので、ランドもグルーブも光学的には同一平面内にあることになる。つまり、ランド、グルーブどちらからの反射光の波面形状も同じと見なすことができる。
【0042】
次に、記録動作について図6を用いて説明する。光ディスク1は、基板22の上に記録材料からなる記録領域20が形成されている。記録材料は、ニトロセルロース系樹脂である。基板22の成型時にその表面に案内溝が同時形成され、その上に反射膜を付着させることによりリファレンス面21が形成されている。リファレンス面21の上に記録領域20が形成される。初期状態では記録領域20は均質であり、内部に物理的に記録位置を規定する層を有さない。図6は、記録中の様子を半径方向に切った断面から観測したものに相当する。対物レンズ3により、ガイドビーム23は、リファレンス面21上に焦点を結んでいる。ガイドビーム23は、赤色のレーザ光である。ガイドビーム23は、リファレンス面21を用いてフォーカス信号とトラッキング信号を得る。メインビーム24は、対物レンズ3により予め指定された記録深さに焦点を結んでいる。指定した記録深さに記録光の焦点を結ばせるためには、ディスク表面からの距離に応じて球面収差を補正する必要があることと、その方法に関しては当業者であれば容易に理解できることなので、ここでは説明を省略する。
【0043】
以下の説明においては、本発明に基づいて記録された記録層のうち、リファレンス面21に近い側のトラックの集合を便宜上A層25と呼び、遠い側をB層26と呼ぶこととする。リファレンス面21に形成されている案内溝はシングルスパイラルである。A層を記録する際には、ガイドビームをリファレンス層のグルーブに対してトラッキングを掛け、グルーブの直上にボイド列からなるトラックを内周から外周へと形成していく。
【0044】
最外周までA層を記録し終えたらB層を記録する。その様子の模式図を図7に示す。B層を記録する際には、再び内周からガイドビーム23がランドに対してトラッキングを掛け、ランドの直上にトラックを形成していく。尚、上記の例では記録の方向を内周から外周へとしたが、スパイラルとディスク回転の向きによっては外周から内周である場合もあり得ることは勿論である。また、上記の例ではリファレンス層が基板と記録領域の境界に設けられているが、ディスクの光入射面近傍に設けてもよいことは勿論である。
【0045】
尚、実際には、複数の複合記録層が形成されることになるが、簡単のために図1には、2つの複合記録層のみが記載されている。ある複合記録層に次いで別の複合記録層を記録するには、記録光焦点のリファレンス面からの記録深さをdだけ変位させ、再度、上記と同様の工程を経ることにより行う。
【0046】
記録済みのトラックを再生する場合、リファレンス層を用いたフォーカス及びトラッキング制御を行うことは勿論可能である。非特許文献1にあるように、リファレンス層を用いずに記録済みの記録層及びトラックから直接フォーカスエラー信号及びトラックエラー信号を検出することも可能である。
【0047】
記録中途の層に追記をする場合、リファレンス制御方式ではドライブの個体差や設計の違いにより記録光の焦点の深さが記録済みのトラックと異なることがあり得る。これは、互換性低下の原因となる。これを解決する一つの方法としては、記録済みの記録層中のトラックからフォーカスエラー信号及びトラックエラー信号を検出して記録済みトラックとリファレンス層から検出したフォーカスエラー信号及びトラックエラー信号を校正する方法がある。この方法による場合、追記を行うのがA層かB層かで手順が異なる。
【0048】
図8は、本発明に基づく光ディスク装置の構成図である。ただし、再生時あるいは追記前にメインビームの焦点位置を校正する手順を説明する為のものなので、その説明に不要な構成要素は概ね省略されている。ホモダイン検出、及びそのために必要な再生光と参照光の干渉もここでの説明とは無関係なため図示及び説明を省略している。この例の特徴は、フォーカシング及びトラッキングのフィードバック制御に用いるエラー信号の検出にリファレンスビームを用いるのかメインビームを用いるのかを選択することができることである。
【0049】
メインビームの光源は、青色レーザダイオード31で、これを発した青色レーザ光は、コリメータレンズ4aで平行光に変換され、リレーレンズ33で球面収差補正を受けたのちに偏光ビームスプリッタ5aを透過し、1/4波長板6aで円偏光に変えられる。そして、ダイクロイックプリズム32によって反射された後に、対物レンズ3によって光ディスク1の記録領域内に焦点を結ぶ。ここで、メインビームの焦点が記録済みの記録層にあれば、記録マークによりメインビーム光の一部が反射され、偏光ビームスプリッタ5aまで戻っていく。その間、再度1/4波長板6aを通過するために偏光の向きが往路とは90°異なっているので、偏光ビームスプリッタ5aによって反射されて、非対称収束レンズ35aにより4分割フォトダイオード34a上に集光される。非対称収束レンズ35aでは故意に非点収差を発生させ、4分割フォトダイオード34aとの組み合わせにより非点収差方式にてフォーカスエラー信号を得る。非対称収束レンズは、球面レンズと円柱レンズの組み合わせでも同等の機能を実現できる。また、トラックエラー信号も同時に4分割フォトダイオード出力から得られることは当業者には周知のことである。
【0050】
ガイドビームの光源は、赤色レーザダイオード36で、これを発した赤色レーザ光は、コリメータレンズ4bで平行光に変換され、偏光ビームスプリッタ5bを透過し、1/4波長板6bで円偏光に変えられる。そして、ダイクロイックプリズム32を透過した後に、対物レンズ3によって光ディスク1のリファレンス面に焦点を結ぶ。リファレンス面でガイドビーム光の一部が反射され、偏光ビームスプリッタ5bまで戻っていく。その間、再度1/4波長板6bを通過して偏光の向きが往路とは90°異なっているので、偏光ビームスプリッタ5bによって反射されて、非対称収束レンズ35bにより4分割フォトダイオード34b上に集光される。非対称収束レンズ35bは故意に非点収差を発生させ、4分割フォトダイオード34bとの組み合わせにより非点収差方式にてフォーカスエラー信号を得る。
【0051】
青系または赤系で検出されたエラー信号から必要に応じてセレクタ37によっていずれかを選択し、制御装置38に送る。制御装置38は、入力されたエラー信号を用いてアクチュエータ39を駆動することによりレンズのフォーカス及びトラッキングのフィードバック制御を行う。
【0052】
次に図8に示した例で、記録中途のA層に追記する場合について図8と図9を用いて説明する。前述のように、追記を開始する前に記録光として使用されるメインビームの焦点の深さを当該A層中の記録済みトラックの深さと一致させる必要がある。まず、セレクタ37で赤系から検出したフォーカスエラー信号を選択した上で、そのフォーカスエラー信号が極小になるようにアクチュエータ39によって対物レンズ3を駆動し、図9に示したように当該A層の記録済みの領域にシークする。この時、メインビーム24のパワーは、当然、再生時のレベルに設定する。この時にメインビームで検出されたフォーカスエラー信号もエラーが0であればメインビーム24の焦点位置が当該A層中の記録済みトラックと同じであるから、ガイドビーム23を用いてフォーカスを制御しながら追記しても問題を生じない。しかし、両者に無視できない不一致がある場合は、メインビームで検出したフォーカスエラー信号が極小、典型的には0になるまでリレーレンズ33を調整してメインビームのフォーカス位置を補正する。この調整が終了した段階で、ガイドビームによるリファレンス面に対するフォーカス制御のみで記録済みのA層のトラックと同じ深さにメインビームの焦点を維持できるようになった。
【0053】
トラッキングエラーに関しても、ガイドビームで検出したものとメインビームで検出したものとの間に差異があるかを確認し、違いがある場合にはガイドビームで検出したトラッキングエラー信号に対して電気的にオフセット信号を加算して補正する。その後、ガイドビームによる制御を行いながらメインビームが追記トラック位置27に差し掛かった時点で追記を開始する。追記開始のタイミングは、メインビームで記録済みのトラックからアドレスとフレーム情報を再生することにより取得する。また、リファレンス面の表面構造から取得する方式も用いることができる。こうして、A層と同じ深さ位置に情報を記録しながら記録トラックを形成することにより、記録中途のA層への追記を行う。
【0054】
以上は、A層へ追記する場合について述べたが、A層の再生時にも同様な操作によってメインビームの焦点をA層に合わせることができる。
【0055】
次に、記録中途のB層に追記する場合について図10を用いて説明する。A層に追記する場合と同様に、追記を開始する前にメインビームの焦点の深さを当該B層中の記録済みトラックの深さと一致させる必要がある。ただし、記録途中のB層に追記を行う場合、A層とB層の間隔が層間隔dよりも著しく小さい場合、図11に示したように、フォーカスエラー信号上でA層とB層は分離して観測されないことがある。その場合、メインビームの焦点深さを記録済みのB層の記録深さに一致させるためには以下に述べるような方法を用いる必要がある。
【0056】
図11は、記録中途のB層が存在する記録層で得られるフォーカスエラー信号(FES)を模式的に示したものである。A層のみが記録されている個所では、FES曲線としてA層FES曲線40が観測される。B層単独では存在しないので、B層FES曲線42は、直接観測することはできない仮想的なFES曲線である。しかし、その形状は、A層FES曲線とほぼ同じ形状で深さオフセットの分、横軸との交差位置が異なる。そして、A層とB層が共に記録されている個所では、FES曲線として、A層FES曲線とB層FES曲線が合わさって観測されたものに相当する合成FES曲線41が観測される。
【0057】
従って、実際に観測可能なA層FES曲線を用いてメインビームの焦点位置を調整した場合には、図11中のA点に調整される。或いは、やはり実際に観測可能な合成FES曲線41を用いてメインビームの焦点位置を調整した場合には、図11中のC点に調整される。いずれにしても、本来調整されるべきB点とは異なる。
【0058】
目標とすべきB点は、直接観測できない曲線上にある。先に述べたように、B層FES曲線の形状及び振幅は、A層FES曲線とほぼ同じものであることが期待される。そこで、両者の形状及び振幅が同一であると仮定し、実際に観測可能なA層FES曲線及び合成FES曲線を用いてB点の位置を推定する。即ち、セレクタ37で赤系から検出したフォーカスエラー信号を選択した上で、当該記録層でA層のみ記録済みの領域にシークする。このとき、アクチュエータ39は、ガイドビーム23がリファレンス面21に焦点合わせされるように対物レンズ3を駆動する。そして、セレクタ37を青系に切り替え、メインビームで検出したフォーカスエラー信号が0になるまでリレーレンズ33を調整してメインビームのフォーカス位置を補正する。この調整が終了した段階で、記録済みのA層のトラックと同じ深さにメインビームの焦点があることになる。即ち、A点が求まった。この時のリレーレンズ33の位置を記憶する。
【0059】
次に、図10に示したように、セレクタ37で赤系の4分割フォトダイオード34bによって検出されたエラー信号を選択して、当該記録層でリファレンスビームを用いたフォーカス制御をしながらA層及びB層共に記録済みの領域にシークし、メインビームで検出したフォーカスエラーが0になるまでリレーレンズ33を調整してメインビームのフォーカス位置を補正する。この調整が終了した段階でC点が求まった。この時のリレーレンズ33の位置を記憶する。
【0060】
B層FES曲線の形状及び振幅をA層FES曲線と同じと仮定しているので、図11でB点とC点の距離はA点とC点との距離に等しいはずである。以上から、B層に記録する際に設定すべきリレーレンズの位置を推定することができる。すなわち、A点に対応するリレーレンズ33の位置と、C点に対応するリレーレンズ33の位置から、B層に記録する際に設定すべきリレーレンズの位置を求め、求めた位置にリレーレンズ33を調整する。この調整により、メインビームはB層と同じ深さ位置に焦点合わせされるので、メインビームが追記トラック位置27に差し掛かった時点で情報を記録しながらトラックを形成することにより、B層への追記を行うことができる。
【0061】
以上は、B層へ追記する場合について述べたが、再生時にも同様な操作が必要なことがある。即ち、A層、B層共に記録済みの記録層を再生する場合、メインビームでフォーカスエラーを検出して制御すると、その際に検出されるFES曲線は合成FES曲線41であるのでA層とB層の中間に焦点が合ってしまう。メインビームの焦点を正しく目的とする層に合わせる方法には、再生信号の品質を調べながらフォーカス信号に電気的なオフセットを加える方法が考えられる。ただし、この方法は時間がかかる。
【0062】
そこで、B層の一部を未記録のままにしておき、まず、A層のみ記録されている領域においてメインビームでフォーカスエラーを検出して、フォーカスエラー信号が極小なるようにアクチュエータ39を駆動して対物レンズ3の焦点位置を制御する。その時のアクチュエータ駆動電圧の時間平均値を記憶する。これは、図11のA点に相当する。次に、A層、B層共に記録済みの領域に移動し、メインビームでフォーカスエラーを検出して、フォーカスエラー信号が極小なるようにアクチュエータ39を駆動して対物レンズ3の焦点位置を制御する。そして、その時のアクチュエータ駆動電圧の時間平均値を記憶する。これは、図11のC点に相当する。この2点の値からB点の位置を推定し、B層を再生する際に電気的オフセットとしてアクチュエータ制御信号に加える。同様に、A層を再生する場合には、図11のA点とC点の距離に相当するオフセットをアクチュエータ制御信号に加える。
【0063】
図12は、光ディスク装置の構成の一例を示したものである。光ディスク1は、スピンドルモータ52によって回転される。ピックアップ51には、例えば図8に示したような記録再生に用いる光源、対物レンズをはじめとする光学系などが搭載されている。本発明に基づく装置であるので、再生光学系にホモダイン検出方式を用いている。ピックアップ51は、スライダ53によりシークを行う。シーク及びスピンドルモータの回転などはメイン回路54からの指示によって行う。メイン回路には、信号処理回路やフィードバック調節計などの専用回路及びマイクロプロセッサ、メモリなどが搭載されている。光ディスク装置全体の動作を制御するのはファームウェア55である。ファームウェア55は、メイン回路中のメモリに格納されている。先に述べた、追記時のメインビームの焦点位置調整もファームウェアの指示に従って行う。
【0064】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1:光ディスク、2:レーザダイオード、3:対物レンズ、4:コリメータレンズ、5:偏光ビームスプリッタ、6:1/4波長板、7:反射鏡、8:収束レンズ、9:フォトダイオード、10:トラック、11:記録層、
20:記録領域、21:リファレンス面、22:基板、23:ガイドビーム、24:メインビーム、25:A層、26:B層、27:追記トラック位置、
31:青色レーザダイオード、32:ダイクロイックプリズム、33:リレーレンズ、34:4分割フォトダイオード、35:非対称収束レンズ、36:赤色レーザダイオード、37:セレクタ、38:制御装置、39:アクチュエータ、40:A層FES曲線、41:合成FES曲線、42:B層FES曲線、
51:ピックアップ、52:スピンドルモータ、53:スライダ、54:メイン回路、55:ファームウェア、
a:深さオフセット、d:基本層間隔、p:基本トラックピッチ、q:実効トラックピッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に記録位置を規定する層を持たない均質な記録領域に情報を保持する記録トラックを整列させて空間記録することにより記録層を形成する光ディスクへの情報記録方法において、
前記記録領域の所定の深さ位置にメインビームを集光して情報を記録しながら記録トラックを形成することにより、複合記録層を構成する第1の記録層を形成する工程と、
前記第1の記録層から前記メインビームの波長の1/6よりも大きな深さオフセットで深さ方向に隔てられた深さ位置に前記メインビームを集光して情報を記録しながら記録トラックを形成することにより、前記複合記録層を構成する第2の記録層を形成する工程と
を有することを特徴とする情報記録方法。
【請求項2】
請求項1に記載の情報記録方法において、
前記複合記録層に対して前記深さオフセットよりも大きな層間隔をあけて、別の複合記録層を形成する工程を有することを特徴とする情報記録方法。
【請求項3】
請求項1に記載の情報記録方法において、前記複合記録層の実効トラックピッチが前記第1又は第2の記録層のトラックピッチの1/2であることを特徴とする情報記録方法。
【請求項4】
請求項1に記載の情報記録方法において、前記深さオフセットは前記メインビームを集光する対物レンズの焦点深度以上であることを特徴とする情報記録方法。
【請求項5】
請求項2に記載の情報記録方法において、前記深さオフセットが深さ方向に隣接する2つの複合記録層の間隔の1/4より小さいことを特徴とする情報記録方法。
【請求項6】
請求項1に記載の情報記録方法において、
前記光ディスクは案内溝を有するリファレンス面を有し、
前記メインビームの波長と異なる波長を有するガイドビームを前記リファレンス面に集光し、反射されたガイドビームから第1のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第1のフォーカスエラー信号を用いて前記メインビームのフォーカス位置を制御する工程と、
前記複合記録層の前記第1の記録層が形成された領域に前記メインビームを集光し、反射されたメインビームから第2のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第2のフォーカスエラー信号が極小になるように前記メインビームのフォーカス位置を補正する工程と、
続いて、前記メインビームにより前記複合記録層の前記第1の記録層の深さ位置に情報を追記しながら記録トラックを形成する工程と
を有することを特徴とする情報記録方法。
【請求項7】
請求項1に記載の情報記録方法において、
前記光ディスクは案内溝を有するリファレンス面を有し、
前記メインビームの波長と異なる波長を有するガイドビームを前記リファレンス面に集光し、反射されたガイドビームから第1のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第1のフォーカスエラー信号を用いて前記メインビームのフォーカス位置を制御する工程と、
前記複合記録層の前記第1の記録層のみが形成された領域に前記メインビームを集光し、反射されたメインビームから第2のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第2のフォーカスエラー信号が極小になるように前記メインビームのフォーカス位置を第1の調整値に調整する工程と、
前記複合記録層の前記第1の記録層と第2の記録層が共に形成された領域に前記メインビームを集光し、反射されたメインビームから第3のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第3のフォーカスエラー信号が極小になるように前記メインビームのフォーカス位置を第2の調整値に調整する工程と、
前記第1の調整値と第2の調整値から前記メインビームを前記第2の記録層にフォーカスさせるときの調整値を算出する工程と、
前記メインビームのフォーカス位置を前記算出された調整値に設定して、前記メインビームにより前記第2の記録層の深さ位置に情報を追記しながら記録トラックを形成する工程と
を有することを特徴とする情報記録方法。
【請求項8】
請求項1に記載の情報記録方法において、
前記複合記録層の前記第1の記録層のみが形成された領域に対物レンズによって前記メインビームを集光し、反射されたメインビームから第1のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第1のフォーカスエラー信号が極小になるように前記対物レンズを駆動し、当該駆動のための信号を第1の駆動信号として記憶する工程と、
前記複合記録層の前記第1の記録層と前記第2の記録層が共に形成された領域に前記メインビームを集光し、反射されたメインビームから第2のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第2のフォーカスエラー信号が極小になるように前記対物レンズを駆動し、当該駆動のための信号を第2の駆動信号として記憶する工程と、
前記第1の駆動信号と前記第2の駆動信号から、前記第1の記録層と第2の記録層が共に形成された領域で、前記メインビームを前記第1の記録層又は前記第2の記録層に集光する際に適用すべきフォーカスオフセットの値を決定する工程と
を有することを特徴とする情報記録方法。
【請求項9】
再生に使われるメインビームの波長の1/6よりも大きな深さオフセットで深さ方向に隔てられた2つの深さ位置に情報を保持する記録トラックを整列させて第1の記録層と第2の記録層からなる複合記録層が空間記録された光ディスクの情報再生方法において、
光源から出射された前記メインビームを第1のビームと第2のビームに分割し、前記第1のビームを所望の記録層に集光する工程と、
前記所望の記録層から反射された前記第1のビームと反射鏡によって反射された前記第2のビームとを光検出器上で光学干渉させ、再生信号を得て前記所望の記録層に記録された情報を再生する工程と
を有することを特徴とする情報再生方法。
【請求項10】
請求項9に記載の情報再生方法において、前記深さオフセットが前記メインビームを集光する対物レンズの焦点深度以上であることを特徴とする情報再生方法。
【請求項11】
請求項9に記載の情報再生方法において、前記深さオフセットが深さ方向に隣接する2つの複合記録層の間隔の1/4より小さいことを特徴とする情報再生方法。
【請求項12】
請求項9に記載の情報記録再生において、
前記光ディスクは案内溝を有するリファレンス面を有し、
前記メインビームと異なる波長を有するガイドビームを前記リファレンス面に集光し、反射されたガイドビームから第1のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第1のフォーカスエラー信号を用いて前記メインビームのフォーカス位置を制御する工程と、
前記複合記録層の前記第1の記録層のみが形成された領域に前記メインビームを集光し、反射されたメインビームから第2のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第2のフォーカスエラー信号が極小になるように前記メインビームのフォーカス位置を調整する工程と、
前記第1の記録層に記録された情報を再生する工程と
を有することを特徴とする情報再生方法。
【請求項13】
請求項9に記載の情報再生方法において、
前記光ディスクは案内溝を有するリファレンス面を有し、
前記メインビームと異なる波長を有するガイドビームを前記リファレンス面に集光し、反射されたガイドビームから第1のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第1のフォーカスエラー信号を用いて前記メインビームのフォーカス位置を制御する工程と、
前記複合記録層の前記第1の記録層のみが形成された領域に前記メインビームを集光し、反射されたメインビームから第2のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第2のフォーカスエラー信号が極小になるように前記メインビームのフォーカス位置を第1の調整値に調整する工程と、
前記複合記録層の前記第1の記録層と第2の記録層が共に形成された領域に前記メインビームを集光し、反射されたメインビームから第3のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第3のフォーカスエラー信号が極小になるように前記メインビームのフォーカス位置を第2の調整値に調整する工程と、
前記第1の調整値と第2の調整値から前記メインビームを前記第2の記録層にフォーカスさせるときのフォーカス位置の調整値を算出する工程と、
前記メインビームのフォーカス位置を前記算出された調整値に設定する工程と、
前記第2の記録層に記録された情報を再生する工程と
を有することを特徴とする情報再生方法。
【請求項14】
請求項9に記載の情報再生方法において、
前記複合記録層の前記第1の記録層のみが形成された領域に対物レンズによって前記メインビームを集光し、反射されたメインビームから第1のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第1のフォーカスエラー信号が極小になるように前記対物レンズを駆動し、当該駆動のための信号を第1の駆動信号として記憶する工程と、
前記複合記録層の前記第1の記録層と前記第2の記録層が共に形成された領域に前記メインビームを集光し、反射されたメインビームから第2のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第2のフォーカスエラー信号が極小になるように前記対物レンズを駆動し、当該駆動のための信号を第2の駆動信号として記憶する工程と、
前記第1の駆動信号と前記第2の駆動信号から、前記第1の記録層と第2の記録層が共に形成された領域で前記第1の記録層又は前記第2の記録層を再生する際に前記メインビームに適用すべきフォーカスオフセットの値を決定する工程と
を有することを特徴とする情報再生方法。
【請求項15】
第1の波長の光を出射する第1の光源と、
前記第1の光源から出射された光束を第1の光束と第2の光束に分割する光分岐素子と、
対物レンズによって光ディスクの記録層に集光する集光光学系と、
前記対物レンズによって集光される光の焦点位置を可変する可変焦点機構と、
第1の光検出器と、
前記光ディスクから反射された前記第1の光束と、反射鏡によって反射された前記第2の光束とを前記第1の光検出器上で光学的に干渉させる光学系と、
前記第1の光検出器の出力からフォーカスエラー信号と再生信号を検出する手段と、
第2の波長の光を出射する第2の光源と、
前記第2の光源から出射された光を前記光ディスクのリファレンス層に照射する光学系と、
前記リファレンス層からの反射光を受光する第2の光検出器と、
前記第2の光検出器の出力からフォーカスエラー信号を検出する手段と、
前記対物レンズのフォーカス制御を行う調節系と、
前記第1の光検出器により検出された第1のフォーカスエラー信号と前記第2の光検出器により検出された第2のフォーカスエラー信号のいずれかを選択する選択手段と、
前記第1のフォーカスエラー信号と前記第2のフォーカスエラー信号をもとに前記光ディスクの記録層に前記第1の光束の焦点位置を一致させる手段と
を有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項1】
内部に記録位置を規定する層を持たない均質な記録領域に情報を保持する記録トラックを整列させて空間記録することにより記録層を形成する光ディスクへの情報記録方法において、
前記記録領域の所定の深さ位置にメインビームを集光して情報を記録しながら記録トラックを形成することにより、複合記録層を構成する第1の記録層を形成する工程と、
前記第1の記録層から前記メインビームの波長の1/6よりも大きな深さオフセットで深さ方向に隔てられた深さ位置に前記メインビームを集光して情報を記録しながら記録トラックを形成することにより、前記複合記録層を構成する第2の記録層を形成する工程と
を有することを特徴とする情報記録方法。
【請求項2】
請求項1に記載の情報記録方法において、
前記複合記録層に対して前記深さオフセットよりも大きな層間隔をあけて、別の複合記録層を形成する工程を有することを特徴とする情報記録方法。
【請求項3】
請求項1に記載の情報記録方法において、前記複合記録層の実効トラックピッチが前記第1又は第2の記録層のトラックピッチの1/2であることを特徴とする情報記録方法。
【請求項4】
請求項1に記載の情報記録方法において、前記深さオフセットは前記メインビームを集光する対物レンズの焦点深度以上であることを特徴とする情報記録方法。
【請求項5】
請求項2に記載の情報記録方法において、前記深さオフセットが深さ方向に隣接する2つの複合記録層の間隔の1/4より小さいことを特徴とする情報記録方法。
【請求項6】
請求項1に記載の情報記録方法において、
前記光ディスクは案内溝を有するリファレンス面を有し、
前記メインビームの波長と異なる波長を有するガイドビームを前記リファレンス面に集光し、反射されたガイドビームから第1のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第1のフォーカスエラー信号を用いて前記メインビームのフォーカス位置を制御する工程と、
前記複合記録層の前記第1の記録層が形成された領域に前記メインビームを集光し、反射されたメインビームから第2のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第2のフォーカスエラー信号が極小になるように前記メインビームのフォーカス位置を補正する工程と、
続いて、前記メインビームにより前記複合記録層の前記第1の記録層の深さ位置に情報を追記しながら記録トラックを形成する工程と
を有することを特徴とする情報記録方法。
【請求項7】
請求項1に記載の情報記録方法において、
前記光ディスクは案内溝を有するリファレンス面を有し、
前記メインビームの波長と異なる波長を有するガイドビームを前記リファレンス面に集光し、反射されたガイドビームから第1のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第1のフォーカスエラー信号を用いて前記メインビームのフォーカス位置を制御する工程と、
前記複合記録層の前記第1の記録層のみが形成された領域に前記メインビームを集光し、反射されたメインビームから第2のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第2のフォーカスエラー信号が極小になるように前記メインビームのフォーカス位置を第1の調整値に調整する工程と、
前記複合記録層の前記第1の記録層と第2の記録層が共に形成された領域に前記メインビームを集光し、反射されたメインビームから第3のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第3のフォーカスエラー信号が極小になるように前記メインビームのフォーカス位置を第2の調整値に調整する工程と、
前記第1の調整値と第2の調整値から前記メインビームを前記第2の記録層にフォーカスさせるときの調整値を算出する工程と、
前記メインビームのフォーカス位置を前記算出された調整値に設定して、前記メインビームにより前記第2の記録層の深さ位置に情報を追記しながら記録トラックを形成する工程と
を有することを特徴とする情報記録方法。
【請求項8】
請求項1に記載の情報記録方法において、
前記複合記録層の前記第1の記録層のみが形成された領域に対物レンズによって前記メインビームを集光し、反射されたメインビームから第1のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第1のフォーカスエラー信号が極小になるように前記対物レンズを駆動し、当該駆動のための信号を第1の駆動信号として記憶する工程と、
前記複合記録層の前記第1の記録層と前記第2の記録層が共に形成された領域に前記メインビームを集光し、反射されたメインビームから第2のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第2のフォーカスエラー信号が極小になるように前記対物レンズを駆動し、当該駆動のための信号を第2の駆動信号として記憶する工程と、
前記第1の駆動信号と前記第2の駆動信号から、前記第1の記録層と第2の記録層が共に形成された領域で、前記メインビームを前記第1の記録層又は前記第2の記録層に集光する際に適用すべきフォーカスオフセットの値を決定する工程と
を有することを特徴とする情報記録方法。
【請求項9】
再生に使われるメインビームの波長の1/6よりも大きな深さオフセットで深さ方向に隔てられた2つの深さ位置に情報を保持する記録トラックを整列させて第1の記録層と第2の記録層からなる複合記録層が空間記録された光ディスクの情報再生方法において、
光源から出射された前記メインビームを第1のビームと第2のビームに分割し、前記第1のビームを所望の記録層に集光する工程と、
前記所望の記録層から反射された前記第1のビームと反射鏡によって反射された前記第2のビームとを光検出器上で光学干渉させ、再生信号を得て前記所望の記録層に記録された情報を再生する工程と
を有することを特徴とする情報再生方法。
【請求項10】
請求項9に記載の情報再生方法において、前記深さオフセットが前記メインビームを集光する対物レンズの焦点深度以上であることを特徴とする情報再生方法。
【請求項11】
請求項9に記載の情報再生方法において、前記深さオフセットが深さ方向に隣接する2つの複合記録層の間隔の1/4より小さいことを特徴とする情報再生方法。
【請求項12】
請求項9に記載の情報記録再生において、
前記光ディスクは案内溝を有するリファレンス面を有し、
前記メインビームと異なる波長を有するガイドビームを前記リファレンス面に集光し、反射されたガイドビームから第1のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第1のフォーカスエラー信号を用いて前記メインビームのフォーカス位置を制御する工程と、
前記複合記録層の前記第1の記録層のみが形成された領域に前記メインビームを集光し、反射されたメインビームから第2のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第2のフォーカスエラー信号が極小になるように前記メインビームのフォーカス位置を調整する工程と、
前記第1の記録層に記録された情報を再生する工程と
を有することを特徴とする情報再生方法。
【請求項13】
請求項9に記載の情報再生方法において、
前記光ディスクは案内溝を有するリファレンス面を有し、
前記メインビームと異なる波長を有するガイドビームを前記リファレンス面に集光し、反射されたガイドビームから第1のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第1のフォーカスエラー信号を用いて前記メインビームのフォーカス位置を制御する工程と、
前記複合記録層の前記第1の記録層のみが形成された領域に前記メインビームを集光し、反射されたメインビームから第2のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第2のフォーカスエラー信号が極小になるように前記メインビームのフォーカス位置を第1の調整値に調整する工程と、
前記複合記録層の前記第1の記録層と第2の記録層が共に形成された領域に前記メインビームを集光し、反射されたメインビームから第3のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第3のフォーカスエラー信号が極小になるように前記メインビームのフォーカス位置を第2の調整値に調整する工程と、
前記第1の調整値と第2の調整値から前記メインビームを前記第2の記録層にフォーカスさせるときのフォーカス位置の調整値を算出する工程と、
前記メインビームのフォーカス位置を前記算出された調整値に設定する工程と、
前記第2の記録層に記録された情報を再生する工程と
を有することを特徴とする情報再生方法。
【請求項14】
請求項9に記載の情報再生方法において、
前記複合記録層の前記第1の記録層のみが形成された領域に対物レンズによって前記メインビームを集光し、反射されたメインビームから第1のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第1のフォーカスエラー信号が極小になるように前記対物レンズを駆動し、当該駆動のための信号を第1の駆動信号として記憶する工程と、
前記複合記録層の前記第1の記録層と前記第2の記録層が共に形成された領域に前記メインビームを集光し、反射されたメインビームから第2のフォーカスエラー信号を検出する工程と、
前記第2のフォーカスエラー信号が極小になるように前記対物レンズを駆動し、当該駆動のための信号を第2の駆動信号として記憶する工程と、
前記第1の駆動信号と前記第2の駆動信号から、前記第1の記録層と第2の記録層が共に形成された領域で前記第1の記録層又は前記第2の記録層を再生する際に前記メインビームに適用すべきフォーカスオフセットの値を決定する工程と
を有することを特徴とする情報再生方法。
【請求項15】
第1の波長の光を出射する第1の光源と、
前記第1の光源から出射された光束を第1の光束と第2の光束に分割する光分岐素子と、
対物レンズによって光ディスクの記録層に集光する集光光学系と、
前記対物レンズによって集光される光の焦点位置を可変する可変焦点機構と、
第1の光検出器と、
前記光ディスクから反射された前記第1の光束と、反射鏡によって反射された前記第2の光束とを前記第1の光検出器上で光学的に干渉させる光学系と、
前記第1の光検出器の出力からフォーカスエラー信号と再生信号を検出する手段と、
第2の波長の光を出射する第2の光源と、
前記第2の光源から出射された光を前記光ディスクのリファレンス層に照射する光学系と、
前記リファレンス層からの反射光を受光する第2の光検出器と、
前記第2の光検出器の出力からフォーカスエラー信号を検出する手段と、
前記対物レンズのフォーカス制御を行う調節系と、
前記第1の光検出器により検出された第1のフォーカスエラー信号と前記第2の光検出器により検出された第2のフォーカスエラー信号のいずれかを選択する選択手段と、
前記第1のフォーカスエラー信号と前記第2のフォーカスエラー信号をもとに前記光ディスクの記録層に前記第1の光束の焦点位置を一致させる手段と
を有することを特徴とする光ディスク装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−113786(P2012−113786A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262820(P2010−262820)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]