説明

意図的なマルチパス信号による測位システム

測位システムは、アンテナと該アンテナに近接している既知の位置を有するリフレクタとを有するデバイスであって、搬送波周波数を有する少なくとも電磁パルスを送信する、デバイスを備える。このデバイスは、或る期間にわたってリターン信号を受信する。このリターン信号は、デバイスのレーダ検出エリア内の物体からのリターンパルス、及び、少なくとも1つのマルチパスパルスを含む。デバイスは、リターンパルス及び少なくとも1つのマルチパスパルスをリターン信号から分離するようにリターン信号を処理する。デバイスは、当該デバイスから物体までの距離及び物体を基準としたデバイスの位置を求める。距離は、リターンパルスの到達時間に従って求められ、位置は、少なくとも1つのマルチパスパルスの到達時間に従って求められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、測位システムに関し、より具体的には、1又は複数の意図的なマルチパス(マルチ経路)信号を使用して複数の物体を基準とした移動デバイスの位置を求めるためのシステム及び方法に関する。
本願は、2003年7月3日に出願された米国特許出願第10/614,097号の部分継続出願である。この米国特許出願は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
ローカル測位システムは、特に、自律走行車の用途及び精密施工ツールの用途で、ナビゲーション能力を必要とする移動デバイスを実現するために重要な存在となってきている。GPS等のグローバル測位システムは、通例、10cm程の中程度の精度の位置情報しか提供せず、水平線近くまで空の澄んだ視界を必要とする。能動コンポーネント又は受動コンポーネントのいずれかが作業範囲(ボリューム)に分散されているローカル測位システムは、はるかに高い精度(<1cm)の測位を可能にすることができ、最も複雑な閉鎖形状(enclosed geometry)であっても動作の必要があるときは、ユーザによるシステムの拡張を可能にする。
【0003】
従来のローカル測位システムは、アコースティック(音波)測距システム及びレーザ測距システムを含む。アコースティックシステムは、通常、トランスポンダビーコンを使用して、デバイスのネットワーク内における距離を測定する。それらのデバイスのいくつかは、固定されてローカル座標系を形成する。あいにく、空気中の音波伝播特性のために、アコースティックシステムは、1cm以上の精度までの距離しか測定することができず、比較的短い距離間隔にわたってしか測定することができない。レーザに基づくローカル測位システムは、デバイスとプリズム等の1又は複数の反射物体との間の角度及び距離の双方の測定値を利用して、デバイスの位置を三角測量又は三辺測量(trilateralate)する。しかしながら、レーザシステムは、現在、システムコストを3万ドル以上にすることがある高価なポインティングメカニズム(pointing mechanism)を使用している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2次元(2D)の位置又は3次元(3D)の位置を数ミリメートルの精度まで求めることができる比較的低コスト(たとえば、2000ドル未満)のローカル測位システムは、屋内での精密施工及び屋外での精密施工、採鉱、精密農業、並びにスタジアムフィールドの草刈り及び処置のような応用分野で大きな一組の見込みのある製品の可能性を与える。本発明は、従来のローカル測位システムのコストの限界及び制度の限界を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
低コストであるが高精度のローカル測位システムを提供するシステム及び方法が提供される。一実施の形態では、アンテナとこのアンテナに近接している既知の位置を有するリフレクタとを備えるデバイスが、搬送波周波数を有する少なくとも電磁パルスを送信する。このデバイスは、或る期間にわたってリターン信号を受信する。このリターン信号は、デバイスのレーダ検出エリア内の物体からのリターンパルス、及び、少なくとも1つのマルチパスパルスを含む。デバイスは、リターンパルス及び少なくとも1つのマルチパスパルスをリターン信号から分離するようにリターン信号を処理する。デバイスは、当該デバイスから物体までの距離及び物体を基準としたデバイスの位置を求める。距離は、リターンパルスの到達時間に従って求められ、位置は、少なくとも1つのマルチパスパルスの到達時間に従って求められる。
【0006】
いくつかの実施の形態では、送信されるパルスは偏波され、優先的に受信されるリターン信号は、同じ偏波を有する。
いくつかの実施の形態では、リフレクタは受動リフレクタである。他の実施の形態では、リフレクタは能動リフレクタである。いくつかの実施の形態では、物体は受動リフレクタである。他の実施の形態では、物体は能動ランドマークである。
いくつかの実施の形態では、デバイスは、プロセッサと、メモリと、少なくとも1つのプログラムモジュールとを備える。少なくとも1つのプログラムモジュールは、メモリに記憶されてプロセッサにより実行される。少なくとも1つのプログラムモジュールは、リターンパルス及び少なくとも1つのマルチパスパルスをリターン信号から分離するようにリターン信号を処理するための命令を含む。また、少なくとも1つのプログラムモジュールは、デバイスから物体までの距離及び物体を基準としたデバイスの位置を求めるための命令も含む。距離は、リターンパルスの到達時間に従って求められ、位置は、少なくとも1つのマルチパスパルスの到達時間に従って求められる。
いくつかの実施の形態では、アンテナは、偏波を有するパルスを優先的に送信すること、及び、偏波を有するリターン信号を優先的に受信することの双方を行うように構成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下の説明において、同様の参照符号は、図面のいくつかの図を通じて対応する部分を示している。
本発明の実施形態を詳細に説明する。実施形態の例は、添付図面に示されている。以下の詳細な説明では、本発明の徹底した理解を提供するために、多数の具体的な詳細が述べられている。しかしながら、本発明は、これらの具体的な詳細がなくても実施できることが当業者には明らかであろう。それ以外の場合には、本発明の態様を不必要に分かりにくくしないように、既知の方法、手順、コンポーネント、及び回路を詳細には説明しないい。
【0008】
一般に、マルチパス(マルチ経路)伝播は、携帯電話ネットワークや無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)等の通信システムの性能を劣化させるだけでなく、グローバル測位システム(GPS)等の測位システムの性能も劣化させる。マルチパス伝播は、たとえば、無線周波数信号が、送信機から受信機への伝播時に異なるパス(経路)を取る場合に発生する。信号が伝播している間、壁、椅子、机及び他のアイテム等の物体が、信号を1又は複数の異なる方向に反射させる。たとえば、直接パス信号として知られている信号の一部は、受信機へ直接伝播することができ、別の部分は、椅子から天井へ、さらに天井から受信機へ反射する場合がある。その結果、信号の一部は、遅延を受け、受信機まで1又は複数のより長いパスを進むことになる。信号のこの部分は、マルチパス信号として知られている。
【0009】
受信機では、1又は複数のマルチパス信号は、直接パス信号と重なり合って、符号間干渉を引き起こす場合がある。通信システムでは、この干渉によって、信号に符号化されている情報を復調する際にエラーが生じて、ビットエラーにつながるおそれがある。測位システムでは、この干渉によって、GPSの擬似距離等、求められたデバイスの位置にエラーが生じるおそれがある。結果として、既存のシステムでは、マルチパス信号は、(互いに物理的に隔てられたロケーションの2つ以上の受信アンテナを含む)ダイバーシティやマルチパス緩和(multi-path mitigation)(たとえば、米国特許第6,370,207号参照)等の技法を使用して回避されるか又は最小にされる。これらの手法によって、これらの既存のシステムは、より複雑になるとともに費用が増大する。
【0010】
低コストであるが、高精度のローカル測位システムを提供するシステム及び方法の実施形態が、本明細書で説明する本発明の実施形態によって提供される。これらの実施形態は、通例、望ましくないものと考えられるマルチパス信号を好都合な方法で使用する。詳細には、1又は複数のマルチパス信号が、ローカル測位システムにおいて意図的に生成される。デバイスのアンテナに近接している既知の位置を有するリフレクタが、それらの1又は複数のマルチパス信号を生成する。(直接パス信号に対する)1又は複数のマルチパス信号の到達時間の遅延を、リフレクタの既知の位置に対応する最大遅延と比較することによって、デバイスのレーダ検出エリア内の物体を基準としたデバイスの位置を求めることができる。
【0011】
図1は、1又は複数の意図的なマルチパス信号を有する測位システムの一実施形態100を示している。デバイス110は、少なくとも1つのアンテナ112を使用して1又は複数の信号118を送信するように構成されている。これらの信号118のそれぞれは、搬送波信号周波数を有する少なくとも1つの電磁パルスを含む。いくつかの実施形態では、デバイス110は、複数の電磁パルスを有する1又は複数の信号118を送信するように構成されている。例示的な一実施形態では、パルスは、継続時間が1ナノ秒(ns)であり、6ギガヘルツ(GHz)の搬送波信号周波数を有する。パルスの通常の繰り返し周期は、1マイクロ秒ごとである。他の実施形態は、パルス継続時間及び搬送波信号周波数の組み合わせとして、1ns及び24GHz、5ns及び6GHz、並びに、1ns及び77GHzの組み合わせを使用することができる。パルス継続時間を短くし且つ搬送波信号周波数を高くすることから入手できる距離見積もりの精度の向上は、いくつかの実施形態では、関連する回路部のコスト及び複雑さの増大を犠牲にして得られる。
いくつかの実施形態では、送信信号118は偏波されている。偏波には、直線偏波、楕円偏波、右旋楕円偏波、左旋楕円偏波、右旋円偏波、又は左旋円偏波が含まれ得る。
【0012】
また、デバイス110は、アンテナ112に近接しているリフレクタ114も含む。リフレクタ114は、アンテナ112から間隔116を有する。例示的な一実施形態では、間隔116は、アンテナ112からリフレクタ114までの2ns、すなわち約0.6mの伝播遅延に対応する。送信信号118の1又は複数の一部は、リフレクタ114から反射され、その結果、送信中に1又は複数のマルチパス信号が生じる。いくつかの実施形態では、リフレクタ114は受動リフレクタである。他の実施形態では、リフレクタ114は能動リフレクタである。能動リフレクタでは、送信信号118の一部は、リフレクタ114によって受信されて再送信される。各再送信信号は、少なくとも1つの電磁パルスを含む。いくつかの実施形態では、再送信信号の電磁パルスは、第2の搬送波信号周波数を有することができる。いくつかの実施形態では、再送信信号を、振幅変調又は周波数変調を使用して変調することができ、且つ/又は、符号化することができる。いくつかの実施形態では、再送信信号を偏波することができる。いくつかの実施形態では、再送信信号の偏波は、送信信号118と同じとすることができる。能動リフレクタは、送信信号118の一部が受信される時とその一部が再送信される時との間の時間に関連する時間遅延を追加して発生させる場合がある。この遅延は、較正手順で求めることができ、デバイス110に記憶することができる。デバイス110の位置をその後求めたものを、この遅延について訂正することができる。特に言及のない限り、この解説の残りの部分における例示の実施形態では、リフレクタ114は受動リフレクタとみなされる。
【0013】
マルチパス信号を含む信号118は、測位システム100のレーダ検出エリア内の受動リフレクタ120、木の葉124、及び/又は126を含む1又は複数の物体から反射される。たとえば、木の葉124は、信号118_2によって照射されると、信号122_2を反射する。同様に、建物126は、信号118_3によって照射されると、信号122_3を反射する。リターン信号122のそれぞれは、少なくとも1つの電磁リターンパルスを含む。いくつかの実施形態では、リターン信号122は、複数の電磁リターンパルスを含む。いくつかの実施形態では、受動リフレクタ120はダイヘデラル(二面)リフレクタである。いくつかの実施形態では、受動リフレクタ120はコーナキューブリフレクタである。
【0014】
いくつかの実施形態では、測位システム100は、1又は複数のオプションの能動ランドマーク128を備える。能動ランドマーク128では、送信信号118_4が受信され、能動ランドマーク128により信号130として再送信される。信号130は、少なくとも1つの電磁リターンパルスを含む。いくつかの実施形態では、信号130は、複数の電磁リターンパルスを含む。いくつかの実施形態では、信号130の電磁リターンパルスは、第2の搬送波信号周波数を有することができる。いくつかの実施形態では、信号130を、振幅変調若しくは周波数変調を使用して変調することができ、且つ/又は、符号化することができる。いくつかの実施形態では、信号130を偏波することができる。いくつかの実施形態では、信号130の偏波は、送信信号118_4と同じとすることができる。能動ランドマーク128は、送信信号118_4が受信される時と信号130が再送信される時との間の時間に関連する時間遅延を追加して発生させる場合がある。この遅延は、較正手順で求めることができるとともにデバイス110に記憶することができる。デバイス110の位置をその後求めたものは、この遅延について較正することができる。
【0015】
デバイス110は、或る期間にわたって、1又は複数のリターン信号122を受信し、オプションとして、信号130も受信するようにさらに構成されている。いくつかの実施形態では、デバイス110は、信号118の偏波を有するリターン信号122及びオプションとして信号130を優先的に受信するように構成されている。リターン信号122及び/又は信号130の一部は、アンテナ112に直接伝播する。リターン信号122及び/又は信号130の別の部分は、リフレクタ114から反射して、その結果、受信中に1又は複数のマルチパス信号が生じる。また、デバイスは、リターン信号122_1等の各リターン信号の各直接パスリターンパルス及び少なくとも1つのマルチパスパルスを各リターン信号から分離するように、1又は複数のリターン信号を処理するようにも構成されている。
【0016】
測位システム100のいくつかの実施形態では、デバイス110等の2つ以上の追加デバイス、受動リフレクタ120等の2つ以上の追加受動リフレクタ、並びに/又は能動ランドマーク128等の2つ以上の能動ランドマークが存在する場合がある。いくつかの実施形態では、受動リフレクタ120及び/又は能動ランドマーク128の位置を固定することができる。他の実施形態では、受動リフレクタ120及び/又は能動ランドマーク128の平均位置を固定することができる。受動リフレクタ120及び/又は能動ランドマーク128は、測定された所定ロケーションに配置することができる。或いは、受動リフレクタ120及び/又は能動ランドマーク128は、初期システム自己較正手順の期間中に自動的に求められて、たとえばデバイス110に記憶される任意の位置に配置することもできる。いずれの場合も、デバイス110の位置は、1又は複数の距離を求めることによって、受動リフレクタ120等の1つ若しくは2つ以上の受動リフレクタ、及び/又は、能動ランドマーク128等の能動ランドマークの位置を基準として求められる。各距離は、デバイス110と、受動リフレクタ120又は能動ランドマーク128との間の間隔に関係する。
【0017】
デバイス110から受動リフレクタ120等の各物体までの距離は、対応する直接パスリターンパルスの到達時間に従って求められる。デバイス110から或る間隔r離れている各物体について、到達時間(ToA)は、
ToA=2r/c (式1)
となる。ここで、cは、電磁信号の伝播速度である。電磁信号の伝播速度cは、真空では約3.0*10m/sであることが分かっている。通常の大気条件では、電磁信号の伝播速度は、この値から300ppm(百万分の1)未満の値だけずれる。高度及び他の環境因子についての情報を使用することによって、測位システム100の環境における電磁信号の伝播速度を100ppm以内まで求めることができる。前述したように、オプションの能動ランドマーク128からのリターンパルス、及び/又は、(リフレクタ114が能動リフレクタである実施形態における)能動リフレクタからのリターンパルスの場合、能動ランドマーク128及び/又は能動リフレクタの信号の処理に関連する付加的遅延Δが存在する場合がある。能動ランドマーク128とともに使用する到達時間の修正式は、
ToA=2r/c+Δ (式2)
となる。遅延Δは、すべての能動ランドマーク及び/又はすべての能動リフレクタについて同じでない場合がある。到達時間を遅延Δについて訂正することにより、デバイス110から各物体までの距離を正確に求めることができる。
【0018】
後述するように、測位システム100において送信中及び受信中に意図的なマルチパス信号を追加することにより、受動リフレクタ120等の各物体に対応する角度を求めることを可能にする追加情報が提供される。デバイス110と各物体との間の角度及び距離は、各物体を基準としたデバイス110の位置を規定する。
【0019】
いくつかの実施形態では、この位置情報は、デバイス110の位置を明確に求めるのに十分である。他の実施形態では、2つ以上の受動リフレクタ120及び/又は2つ以上の能動ランドマーク128を使用することができる。たとえば、同一直線上にない3つの受動リフレクタ及び/又は能動ランドマークを組み合わせたものの位置が、たとえば、それらの位置を事前に測量することにより分かっており、且つ、デバイス110並びに受動リフレクタ及び/又は能動ランドマークが、ほぼ2次元平面内に位置する場合、デバイス110から受動リフレクタ及び/又は能動ランドマークのそれぞれまでの距離の知識から、デバイス110の位置を明確に求めることが可能である。或いは、能動ランドマーク112が同一平面上にない場合、既知の位置を有する4つの受動リフレクタ及び/又は能動ランドマークの組み合わせを使用することによって、デバイス110から受動リフレクタ及び/又は能動ランドマークのそれぞれまでの距離の知識から、デバイス110の位置を明確に求めることが可能になる。1又は複数の距離に基づいて位置を求めるためのアルゴリズムは、当業者に既知である。これについては、たとえば、Proceedings of 32nd Annual Symposium on Foundations of Computer Science(1991, San Juan, Puerto Rico)の第441〜423ページのH. Edelsbruneer及びT. S. Tan著「Quadratic time algorithm for the minmax length triangulation」を参照されたい。この文献は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0020】
図2は、1又は複数の意図的なマルチパス信号を有する測位システムの一実施形態200を示している。物体210は、直線212と、アンテナ112(したがって、図1のデバイス110)と物体210との間の方向216等の方向とに関する角度214を有する位置に存在する。アンテナ112は、搬送波信号周波数を有する少なくとも1つの電磁パルスを含む直接パス信号を方向216に沿って送信する。また、アンテナは、搬送波信号周波数を有する少なくとも1つの電磁パルスを含む信号を方向218に沿って送信する。リフレクタ114は、少なくとも1つの電磁マルチパスパルスを含む第1のリターンマルチパス信号を方向226に沿って反射する。この第1のリターンマルチパス信号の総伝播時間は十分に短いので、物体210の位置を求める目的では、第1のリターンマルチパスパルスは無視することができる。リフレクタ114は、方向220に沿ってもマルチパス信号を反射する。
【0021】
方向216に沿って伝播する直接パス信号は、物体210から反射する。方向222に沿って伝播する、少なくとも1つの電磁リターンパルスを含む直接パス信号が存在することになる。また、方向224に沿って伝播するマルチパス信号も存在することになる。このマルチパス信号は、リフレクタ114から反射し、方向226に沿う少なくとも1つの電磁マルチパスパルスを含む第2のリターンマルチパス信号を生成する。
【0022】
方向220に沿って伝播するマルチパス信号は、物体210から反射し、方向222に沿う少なくとも1つの電磁マルチパスパルスを含む第3のリターンマルチパス信号を生成する。加えて、方向224に沿って伝播するマルチパス信号も存在することになる。このマルチパス信号は、フレクタ114から反射し、方向226に沿う少なくとも1つの電磁マルチパスパルスを含む第4のリターンマルチパス信号を生成する。マルチパス信号を生成するより高次の反射は、この解説では無視されることに留意されたい。
【0023】
デバイスによって受信されたリターン信号は、方向222に沿うリターン信号、方向226に沿う第2のリターンマルチパス信号、方向222に沿う第3のリターンマルチパス信号、及び方向226に沿う第4のリターンマルチパス信号を含む。第2のリターンマルチパス信号の総伝播時間及び第3のリターンマルチパス信号の総伝播時間は同じであることに留意されたい。その結果、これらの信号のマルチパスパルスは、互いにほぼ重なり合う。
【0024】
各角度214について、デバイス110(図1)におけるリターン信号300を、時間312の関数としての大きさ310として図3Aに示す。リターン信号300は、直接パスリターン信号に対応するパルス314、第2のリターンマルチパス信号と第3のリターンマルチパス信号との重なり合ったマルチパスパルスに対応するパルス316、及び第4のリターンマルチパス信号に対応するパルス318を含む。パルス316は、パルス314に対して遅延320を有し、パルス318は、パルス314に対して遅延322を有する。角度214(図2)が0度又は180度に近づくにつれて、遅延320及び322は減少し、0に近づく。これを、リターン信号324のパルス間の遅延326及び遅延328によって図3Bに示す。角度214(図2)の値が実質的に0度及び180度に等しくない場合、意図的なマルチパス信号によって、追加情報が提供され、デバイス110(図1)の位置を求めることが可能になる。
【0025】
図2を再び参照する。角度214が0度又は180度に等しい場合、リターン信号のリターンパルス及びマルチパスパルスは重なり合う。信号の全損失を防止するために、リフレクタ114の断面積又は利得プロファイルは、リフレクタ114から反射される各マルチパス信号の振幅が直接パス信号の振幅よりも小さくなるように選ばれる。例示的な一実施形態では、リフレクタ114から反射される各マルチパス信号の振幅は、直接パス信号の振幅の半分よりも小さい(それによって、リターンパルスは、図3Aのリターン信号300等の各リターン信号で確実にピークの振幅を有するようにされる)。これは、パルス314からパルス316への電力の少なくとも4倍の低減に相当する。例示的な一実施形態では、リフレクタ114は、形状が球形であり、マイクロ波領域の搬送波信号周波数に適している伝導性(したがって、表皮深さ)を有する金等の金属でコーティングされている。別の例示的な実施形態では、リフレクタ114は、ピラミッドの形状を有し、金属でコーティングされている。さらに別の例示的な実施形態では、リフレクタ114の適切な断面積は、リフレクタ114の表面積によって決まる。
【0026】
アンテナ112に対する、間隔116を含むリフレクタ114の位置は分かっているので、パルス316や318(図3A)等のマルチパスパルスとリターンパルス314(図3A)等のリターンパルスとの間の遅延320(図3A)等の遅延によって、角度214を求めることが可能になる。詳細には、前述したように、リターンパルス316の到達時間によって、物体210とデバイス110(図1)との間の距離を求めることが可能になる。遅延320(図3A)等の遅延によって、間隔116及び間隔228の合計に対応する追加されるパスの長さを求めることが可能になる。間隔116は分かっているので、これによって、間隔228を求めることが可能になる。距離、間隔116、及び間隔228によって、角度214を求めることが可能になる。したがって、1又は複数のマルチパスパルスの到達時間に従い、各物体を基準としたデバイス110(図1)の位置を求めることができる。
【0027】
たとえば、角度214が90度に等しい場合において、間隔116が、アンテナ112とリフレクタ114との間の3nsの伝播遅延に対応し、物体210とアンテナ112との間の距離が4nsに対応するとき、間隔228は(ピタゴラスの定理を使用して)5nsに対応し、遅延320(図3)は4nsであり、遅延322(図3)は8nsである。角度214が45度に等しい場合において、間隔116が、アンテナ112とリフレクタ114との間の3nsの伝播遅延に対応し、物体210とアンテナ112との間の距離が4nsに対応する場合、間隔218は(余弦の法則を使用して)2.8336nsに対応し、遅延320(図3)は1.8336nsであり、遅延322(図3)は3.6672nsである。
【0028】
角度214の上記計算は、例示にすぎない。より効率的な他の計算手順が存在する。遅延320(図3A)等の遅延は角度214の関数であるので、既知の間隔116(図1)について、角度214の異なる値に対応する遅延を表形式にすることができる。遅延が測定され、且つ、リフレクタ114の既知の利得プロファイルが与えられると、パルス振幅を使用して、角度214に対応する値を検索することができる。
【0029】
図4は、1又は複数の意図的なマルチパス信号を有する測位システムの代替的な一実施形態400を示している。測位システム400は、複数のアンテナ112を有し、リフレクタ114はアンテナ112と同一直線上にない。例示的な一実施形態では、リフレクタ114は、同一直線上から10度〜15度の角度(図示せず)にある。この実施形態400は、角度214(図2)が0度及び180度にほぼ等しい場合の前述した問題の影響を受けにくい。
【0030】
角度214(図2)が0度及び180度にほぼ等しい場合の問題に対する別の可能性のある解決法は、1又は複数の意図的なマルチパス信号を有する測位システムからの位置情報を、合成開口レーダ(SAR)によって提供される追加位置情報と組み合わせることである。これを図5Aに示す。ローカル測位システム500において、デバイス110は、デバイス110から1又は複数の物体522までの距離を求めることに加えて、特定の方向512に速度v510で移動して、1又は複数の信号118(図1)を送信する。1又は複数の物体522のそれぞれは、受動リフレクタ120(図1)とすることができる。1又は複数の信号118のそれぞれは、搬送波信号周波数を有する少なくとも1つの電磁パルスを含む。
【0031】
デバイス110は、或る期間にわたって1又は複数のリターン信号122(図1)を受信する。デバイス110によって受信される、物体522_1等の各物体からのリターンパルス及びマルチパスパルスは、周波数が、
f=f(1+v・cosθ/c) (式3)
に従うドップラーシフトを受けることになる。ここで、fは、搬送波信号周波数であり、fは、デバイス110によって受信されたリターンパルス及び1又は複数のマルチパスパルスの受信搬送波信号周波数であり、cは、デバイス110と物体522_1との間の環境を満たす大気における電磁信号の伝播速度であり、θは、デバイスの移動方向512と、デバイス110と物体522_1との間の直線516との間の角度514である。(角度θ514は、図2の角度214の余角であることに留意されたい。)デバイス110の速度v510又は少なくともデバイス110の速度の少なくとも大きさが分かっている場合、1つ若しくは2つ以上のリターンパルス及び/又は1つ若しくは2つ以上のリターンマルチパスパルスの受信搬送波信号周波数から、角度θ514を求めることができる。しかしながら、各受信搬送波信号周波数fについて、式3を満たす少なくとも2つの角度が存在することに留意されたい。このように2つの角度が存在する理由は、式3の解となるどの角度θについても、角度−θも式3の解となるからである。図5Aでは、これらの2つの角度は、角度θ514及び角度−θ520に対応する。角度θ514は、方向512と、デバイス110と物体522_1との間の直線516との間の角度であり、角度−θ520は、方向512と直線518との間の角度である。図5Bに示すように、実施形態524等のいくつかの実施形態では、物体522_1は、移動の結果生じるドップラーシフトから角度θ514を求めることを可能にする平均固定位置の周囲を特定の方向512に速度v526で移動する。これらの実施形態では、ドップラーシフトは、角度θ514の余角、すなわち角度214(図2)、についての情報を提供することに留意されたい。
【0032】
図6は、測位システムの一実施形態における、デバイス110(図1)等の一般的なデバイス610のコンポーネントの図である。このデバイスは、少なくとも1つのアンテナ112及び少なくとも1つのリフレクタ114を含む。いくつかの実施形態では、デバイス610は、少なくとも1つの円偏波アンテナを備えることができる。いくつかの実施形態では、デバイス610は、少なくとも1つの直線偏波アンテナを備えることができる。いくつかの実施形態では、デバイス610は、送信及び受信に使用される少なくとも1つの偏波アンテナを備えることができる。いくつかの実施形態では、アンテナ112は、双円錐アンテナ、接地面を有する双円錐アンテナ、螺旋アンテナ、水平無指向性アンテナ、無指向性アンテナ、半指向性アンテナ、又は等方性アンテナとすることができる。
【0033】
デバイス610は、フロントエンド回路612及び1又は複数の信号を変更するための信号プロセッサ614を備える。この変更は、変調符号の増幅、フィルタリング、及び/又は除去を含むことができる。デバイス610は、1又は複数の処理ユニット(CPU)616、メモリ620、及びこれらのコンポーネントを接続するための1又は複数の通信バス618を備える。デバイス610は、デバイス610を特定の方向に或る速度で移動させるためのオプションの電気機械インターフェース636及びオプションの移動メカニズム638を含むことができる。代替的な実施形態では、デバイス610の機能の一部又は全部は、1又は複数の特定用途向け集積回路(ASIC)で実施することができ、それによって、処理ユニット616の必要性をなくすことができるか、又は処理ユニット616の役割を削減することができる。メモリ620は、高速ランダムアクセスメモリを含むことができ、また、1又は複数の磁気ディスクストレージデバイス等の不揮発性メモリも含むことができる。メモリ620は、処理ユニット620から遠隔に配置されている大容量記憶装置を含むことができる。
【0034】
メモリ620は、ハードウェア依存タスクを実行するためのさまざまな基本システムサービスをハンドリングするプロシージャを含んだオペレーティングシステム622を記憶する。メモリ620は、オプションの移動制御プログラムモジュール624を記憶することができる。また、メモリ620は、1又は複数のプログラムモジュール626も記憶する。プログラムモジュール626は、搬送波信号周波数を有する少なくとも電磁パルスを含む1又は複数の信号をデバイス610から送信するための命令、及び、或る期間にわたって1又は複数のリターン信号を受信するための命令を含む。プログラムモジュール626は、1又は複数のリターン信号からリターンパルス及び1又は複数マルチパスパルスを分離するパルス分離モジュール628を含む。また、プログラムモジュール626は、距離求めモジュール630及び位置求めモジュール632も含む。プログラムモジュール626は、オプションとして、ドップラー計算モジュール634を含むことができる。
上記特定されたモジュール及びアプリケーションのそれぞれは、上述した1又は複数の機能を実行するための一組の命令に対応する。これらのモジュール(すなわち、数組の命令)は、別々のソフトウェアプログラム、プロシージャ、又はモジュールとして実施される必要はなく、したがって、これらのモジュールのさまざまなサブセットを組み合わせることもできるし、又はそれ以外に、さまざまな実施形態で配列しなおすこともできる。
【0035】
メモリ620のモジュールすなわち数組のインストラクション(命令)は、処理ユニット616によって実行される。加えて、デバイス610は、実行可能プロシージャ(1又は複数の能動ランドマーク及び図1のリフレクタ114等の能動リフレクタを有する実施形態の時間遅延訂正計算等)、サブモジュール、テーブル、及び他のデータ構造体(図示せず)を含むことができる。他のデータ構造体には、たとえば、1又は複数の受動リフレクタ120(図1)の位置、能動ランドマーク128(図1)の位置、並びに/若しくは、1又は複数の能動ランドマーク及び/又は能動リフレクタに対応する時間遅延が含まれる。いくつかの実施形態では、追加のモジュール及びデータ構造体、又は、異なるモジュール及びデータ構造体を使用することができ、上記に列挙したモジュール及び/又はデータ構造体のいくつかは、使用されない場合がある。いくつかの実施形態では、当該技術分野で知られているように、デバイス610の能力は、ハードウェアにおける実施を多くして、ソフトウェアにおける実施を少なくすることもできるし、ハードウェアにおける実施を少なくして、ソフトウェアにおける実施を多くすることもできる。
【0036】
図7を参照すると、ローカル測位システム700の一実施形態における、能動ランドマーク128(図1)等の能動ランドマーク710は、電磁パルスを受信してパルスを再送信するための少なくとも1つのアンテナ712を備える。また、能動ランドマーク710は、送受信アイソレータ714、オプションの帯域通過フィルタ716、及び増幅器718も備える。能動ランドマーク710は、ミキサ等の変調器720、信号ジェネレータ722、及び制御ロジック726を備える。能動ランドマーク710は、オプションの遅延線724を備えることができる。また、能動ランドマーク710は、能動ランドマーク710を特定の方向に或る速度で移動させるためのオプションの電気機械インターフェース回路728及びオプションの移動メカニズム730も備えることができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、能動ランドマーク710は静止している。デバイス610(図6)によって送信されたパルスに対応する受信信号は、アンテナ712を使用して受信される。デバイス610(図6)によって送信されたパルスが偏波を有する場合、アンテナ712は、この偏波を有する信号を優先的に受信するように構成することができる。受信信号は、送受信回路部を分離する送受信アイソレータ714、受信信号を帯域制限するオプションの帯域通過フィルタ716、及び受信信号を増幅する増幅器718を通過する。いくつかの実施形態では、受信信号は、変調器720において、信号ジェネレータ722により生成される変調信号で変調されるか又は符号化信号で符号化され、送信被変調信号が生成される。変調は、振幅変調又は周波数変調とすることができる。送信被変調信号は、オプションの遅延線724及び送受信アイソレータ714を通ってアンテナ712に渡される。アンテナ712は、送信被変調信号に対応する戻り電磁被変調パルスを送信する。
【0038】
いくつかの実施形態では、送受信アイソレータ714は送受信スイッチである。他の実施形態では、送受信アイソレータ714は回折格子(grating)であり、遅延線724は、回折格子が送信被変調信号をアンテナ712へ送るように送信被変調信号の位相を変更する。他の実施形態では、能動ランドマーク710は、バッテリ(図示せず)等の着脱可能エネルギ源を備える。
他の実施形態では、能動ランドマーク710は、受信アンテナ及び送信アンテナを別々に有し、各アンテナは、デバイス610(図6)によって送信されたパルスの偏波を有し、送受信アイソレータ714及び遅延線724は備えられない。
【0039】
いくつかの実施形態では、信号ジェネレータ722によって生成された変調信号をプログラミングすることができ、それによって、変調信号又は変調信号の符号化を変更することができる。信号ジェネレータ722の変更に対応する制御情報は、デバイス610(図6)によって送信されたパルスに符号化することができる。或いは、制御情報は、デバイス610(図6)と能動ランドマーク710との間の別個の無線信号で送信することができる。制御ロジック726は、この制御情報を識別して、これらの命令に基づき信号ジェネレータ722の設定を変更する。
【0040】
いくつかの実施形態では、能動ランドマーク710は、平均固定ロケーションの周囲を移動可能である。制御ロジック726は、シグナリングインターフェース728によってこの能力を実施する。シグナリングインターフェース728は、次に、移動メカニズム730を起動する。いくつかの実施形態では、メカニズム730は、電子モータを備え、その速度は、インターフェース728によって提供されるDC電圧のレベルによって制御される。いくつかの実施形態では、制御ロジック726が、デバイス610(図6)からの送信パルス又は別個の無線リンクに符号化されている、デバイス610(図6)からのコマンド信号に応答してこの機能を実行する。デバイス610(図6)が、移動の結果生じたリターンパルス及び/又はマルチパスパルスにおけるドップラーシフトから角度情報を求めるために、デバイス610(図6)は、能動ランドマーク710が移動している方向512(図5B)並びに速度v526(図5B)を知る必要がある。
【0041】
図8は、1又は複数の意図的なマルチパス信号を有する測位システムのオペレーションの一実施形態を示すフローチャートである。搬送波周波数を有する1又は複数のパルスを含む信号が送信される(ステップ812)。いくつかの実施形態では、ステップ812における送信信号は特定の偏波を有する。リターンパルス及び1又は複数のマルチパスパルスを含むリターン信号が、或る期間にわたって受信される(ステップ814)。いくつかの実施形態では、ステップ814において優先的に受信されるリターン信号は、偏波を有する。リターンパルス及び1又は複数のマルチパスパルスは、リターン信号から分離される(ステップ816)。パルス群が識別される(ステップ818)。角度214(図2)が0度にも180度にも実質的に等しくない実施形態では、通常、各群に3つのパルスが存在する。各群のパルス間の遅延が求められる(ステップ820)。受動リフレクタ120(図1)等の各物体を基準としたデバイス110(図1)の位置が求められる(822)。
【0042】
上記の説明は、説明のためのものであり、具体的な用語を使用して本発明の徹底した理解を提供している。しかしながら、これらの具体的な詳細は、本発明を実施するために必要とされないことが当業者には明らかであろう。実施形態は、本発明の原理及びその実用的な用途を最も良く説明し、それによって、他の当業者が、本発明及びさまざまな変更を有するさまざまな実施形態を、検討した特定の使用に適するように最も良く利用することを可能にするために選ばれて説明されたものである。したがって、上記開示は、網羅的であることを目的とするものでもなければ、開示した正確な形に本発明を限定することを目的とするものでもない。上記教示を鑑みて多くの変更及び変形が可能である。
本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって規定されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】1又は複数の意図的なマルチパス信号を有する測位システムの一実施形態を示すブロック図である。
【図2】測位システムの一実施形態を示すブロック図である。
【図3A】測位システムの一実施形態における直接パス信号及びマルチパス信号の到達時間を示す図である。
【図3B】測位システムの一実施形態における直接パス信号及びマルチパス信号の到達時間を示す図である。
【図4】測位システムの一実施形態を示すブロック図である。
【図5A】測位システムの一実施形態を示すブロック図である。
【図5B】測位システムの一実施形態を示すブロック図である。
【図6】測位システムの一実施形態における一般的なデバイスのコンポーネント(構成要素)を示すブロック図である。
【図7】測位システムの一実施形態における一般的な能動ランドマークのコンポーネントを示すブロック図である。
【図8】1又は複数の意図的なマルチパス信号を使用するプロシージャの一実施形態における動作を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスの位置を求める方法であって、
搬送波信号周波数を有する少なくとも電磁パルスを前記デバイスから送信する送信ステップと、
所定の期間にわたってリターン信号を受信するステップであって、前記リターン信号は、前記デバイスのレーダ検出エリア内の物体からのリターンパルス、及び、該デバイスに近接している既知の位置のリフレクタに関連する少なくとも1つのマルチパスパルスを含んでいる、受信ステップと、
前記リターンパルス及び前記少なくとも1つのマルチパスパルスを前記リターン信号から分離して、前記デバイスから前記物体までの距離及び該物体を基準とした該デバイスの前記位置を求めるように前記リターン信号を処理するステップであって、前記距離を、前記リターンパルスの到達時間に基づいて決定し、前記位置を、前記少なくとも1つのマルチパスパルスの到達時間に基づいて決定する、処理ステップと
を含む、デバイスの位置を決定する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、送信中の前記パルスは偏波され、前記受信ステップは、該偏波を有する前記リターン信号を優先的に受信するよう構成されていることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、前記偏波は、直線偏波、楕円偏波、右旋楕円偏波、左旋楕円偏波、右旋円偏波、及び左旋円偏波から成る群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、該方法は更に、前記送信ステップ及び前記受信ステップの双方において同じ偏波アンテナを使用していることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記物体は受動リフレクタであることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記物体は能動ランドマークであることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記リフレクタは能動リフレクタであることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記リフレクタは受動リフレクタであることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、該方法はさらに、前記受信ステップの間、特定の方向に或る速度で前記デバイスを移動させるステップと、
前記リターン信号の前記リターンパルスにおけるドップラーシフトを検出するステップと、
前記特定の方向と、前記デバイスと前記物体との間の直線との間の角度を、前記検出されたドップラーシフトに基づいて決定するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、該方法はさらに、
前記受信ステップの間、特定の方向に或る速度で前記物体を移動させるステップと、
前記リターン信号の前記リターンパルスにおけるドップラーシフトを検出するステップと、
前記特定の方向と、前記デバイスと前記物体との間の直線との間の角度を、前記検出されたドップラーシフトに基づいて決定するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
測位システムであって、アンテナと該アンテナに近接している既知の位置を有するリフレクタとを有するデバイス備え、前記デバイスは、搬送波周波数を有する少なくとも電磁パルスを送信し、受信機において或る期間にわたり、該デバイスのレーダ検出エリア内の物体からのリターンパルス、及び、前記リフレクタに関連する少なくとも1つのマルチパスパルスを含むリターン信号を受信し、前記リターンパルス及び前記少なくとも1つのマルチパスパルスを前記リターン信号から分離するように該リターン信号を処理し、並びに該デバイスから前記物体までの距離及び該物体を基準とした該デバイスの前記位置を求めることを行うように構成されており、
前記距離は、前記リターンパルスの到達時間に基づいて決定され、前記位置は、前記少なくとも1つのマルチパスパルスの到達時間に基づいて決定される
ことを特徴とする測位システム。
【請求項12】
請求項11記載の側位システムにおいて、前記送信されたパルスは偏波されており、前記デバイスは、該偏波を有する前記リターン信号を優先的に受信するように構成されている、ことを特徴とする測位システム。
【請求項13】
請求項12記載の側位システムにおいて、前記偏波は、直線偏波、楕円偏波、右旋楕円偏波、左旋楕円偏波、右旋円偏波、及び左旋円偏波から成る群から選択されることを特徴とする測位システム。
【請求項14】
請求項11記載の側位システムにおいて、前記アンテナは、前記偏波を有する前記パルスを優先的に送信し、かつ、前記偏波を有する前記リターン信号を優先的に受信するように構成されていることを特徴とする測位システム。
【請求項15】
請求項11記載の側位システムにおいて、前記アンテナは、直線偏波アンテナ及び円偏波アンテナから成る群から選択されることを特徴とする測位システム。
【請求項16】
請求項11記載の側位システムにおいて、前記アンテナは、双円錐アンテナ、接地面を有する双円錐アンテナ、螺旋アンテナ、水平無指向性アンテナ、無指向性アンテナ、半指向性(hemi-directional)アンテナ、又は等方性アンテナから成る群から選択されることを特徴とする測位システム。
【請求項17】
請求項11記載の側位システムにおいて、前記デバイスは、
プロセッサと、
メモリと、
前記メモリに記憶されて前記プロセッサにより実行される少なくとも1つのプログラムモジュールであって、
前記リターンパルス及び前記少なくとも1つのマルチパスパルスを前記リターン信号から分離するように該リターン信号を処理するためのインストラクションと、
前記デバイスから前記物体までの距離及び該物体を基準とした該デバイスの位置を求めるためのインストラクションと
を含み、前記距離は、前記リターンパルスの到達時間に基づいて決定され、前記位置は、前記少なくとも1つのマルチパスパルスの到達時間に基づいて決定される、少なくとも1つのプログラムモジュールと
を備えることを特徴とする測位システム。
【請求項18】
請求項11記載の側位システムにおいて、前記デバイスは、
該デバイスを特定の方向に或る速度で移動させるための車両移動メカニズムと、
プロセッサと、
メモリと、
前記メモリに記憶されて前記プロセッサにより実行される少なくとも1つのプログラムモジュールであって、
前記リターン信号の前記リターンパルスにおけるドップラーシフトを検出するためのインストラクションと、
前記特定の方向と、該デバイスと前記物体との間の直線との間の角度を、前記検出されたドップラーシフトに基づいて決定するインストラクションと
を含む、少なくとも1つのプログラムモジュールと
を備えることを特徴とする測位システム。
【請求項19】
請求項11記載の側位システムにおいて、前記物体は、該物体を特定の方向に或る速度で移動させるための移動メカニズムをさらに備え、
前記デバイスは、
プロセッサと、
メモリと、
前記メモリに記憶されて前記プロセッサにより実行される少なくとも1つのプログラムモジュールであって、
前記リターン信号の前記リターンパルスにおけるドップラーシフトを検出するためのインストラクションと、
前記特定の方向と、前記デバイスと前記物体との間の直線との間の角度を、前記検出されたドップラーシフトに基づいて決定するインストラクションと
を含む少なくとも1つのプログラムモジュールと
を備えることを特徴とする測位システム。
【請求項20】
請求項11記載の側位システムにおいて、前記物体は受動リフレクタであることを特徴とする測位システム。
【請求項21】
請求項11記載の側位システムにおいて、前記物体は能動ランドマークであることを特徴とする測位システム。
【請求項22】
請求項11記載の側位システムにおいて、前記リフレクタは能動リフレクタであることを特徴とする測位システム。
【請求項23】
請求項11記載の側位システムにおいて、前記リフレクタは受動リフレクタであることを特徴とする測位システム。
【請求項24】
測位システムであって、搬送波周波数を有する少なくとも電磁パルスを送信するための送信手段と、リターン信号を或る期間にわたって受信するための受信手段であって、該リターン信号は、デバイス手段のレーダ検出エリア内の物体からのリターンパルス及び前記デバイス手段によって生成された少なくとも1つのマルチパスパルスを含む、受信手段と、前記リターンパルス及び前記少なくとも1つのマルチパスパルスを前記リターン信号から分離するように該リターン信号を処理するための信号処理手段と、前記デバイス手段から前記物体までの距離及び該物体を基準とした該デバイス手段の位置を求めるための距離求め手段とを備えた側位システムにおいて、
前記距離は、前記リターンパルスの到達時間に基づいて決定され、前記位置は、前記少なくとも1つのマルチパスパルスの到達時間に基づいて決定される
ことを特徴トス測位システム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−536118(P2008−536118A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505331(P2008−505331)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/009832
【国際公開番号】WO2006/110260
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(504278123)ナヴコム テクノロジー インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】