説明

感光性フィルム及びその製造方法、並びに永久パターン形成装置及び永久パターン形成方法

【課題】ソルダーレジストのような永久パターンの形成を目的として、感光層中に適正な沸点の有機溶媒を含有し、表面のタック性が良好な感光性フィルム、並びに該感光性フィルムを備えたパターン形成装置及び前記感光性フィルムを用いた永久パターン形成方法の提供。
【解決手段】支持体と、該支持体上に、バインダー、重合性化合物、光重合開始剤、熱架橋剤、及び有機溶媒を含む感光性組成物からなる感光層と、を有してなり、
前記感光層における前記有機溶媒の沸点が50〜160℃である感光性フィルムである。前記有機溶媒が、沸点の異なる2種以上の有機溶媒である態様が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護膜、層間絶縁膜、ソルダーレジスト等の高精細な永久パターンの形成などに好適な感光性フィルム及び該感光性フィルムの製造方法、並びに該感光性フィルムを備えたパターン形成装置及び前記感光性フィルムを用いた永久パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
保護膜、層間絶縁膜、ソルダーレジスト等の永久パターンを形成するに際して、支持体上に感光性組成物を塗布、乾燥することにより感光層を形成させた感光性フィルムが用いられている。
この場合、感光層に含有される有機溶媒量が多いと、塗布後の乾燥では、除去されずに残ってしまい、感光層のタック性(粘着性、べたつき)が強く、取り扱いにくいという問題がある。
【0003】
このため、本発明者により、例えば、感光層中に適正な量の有機溶媒を含有し、表面のタック性が小さく、ラミネート性及び取扱い性が良好で、基板への追従性に優れた感光性フィルム、並びに該感光性フィルムを備えたパターン形成装置及び前記感光性フィルムを用いた永久パターン形成方法が提案されている(特願2005−01168参照)。
しかし、含有量を問わず、有機溶媒の沸点により、感光層中に含有する有機溶媒を選択し、タック性を小さくした技術は未だ提案されていない。また、タック性が小さくなりすぎた場合にも、基板への追従性が悪くなることがあるが、これを考慮した技術も未だ提案されていない。
【0004】
したがって、保護膜、層間絶縁膜、ソルダーレジスト等の永久パターンの形成を目的として、感光層中に適正な沸点の有機溶媒を含有し、表面のタック性が良好な感光性フィルム、並びに該感光性フィルムを備えたパターン形成装置及び前記感光性フィルムを用いた永久パターン形成方法は未だ提供されておらず、更なる改良開発が望まれているのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ソルダーレジストのような永久パターンの形成を目的として、感光層中に適正な沸点の有機溶媒を含有し、表面のタック性が良好な感光性フィルム、並びに該感光性フィルムを備えたパターン形成装置及び前記感光性フィルムを用いた永久パターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 支持体と、該支持体上に、バインダー、重合性化合物、光重合開始剤、熱架橋剤、及び有機溶媒を含む感光性組成物からなる感光層と、を有してなり、
前記感光層における前記有機溶媒の沸点が50〜160℃であることを特徴とする感光性フィルムである。
<2> 有機溶媒が、沸点の異なる2種以上の有機溶媒である前記<1>に記載の感光性フィルムである。
<3> 有機溶媒が、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、芳香族炭化水素類、及びハロゲン炭化水素類から選択される少なくとも1種である前記<1>から<2>のいずれかに記載の感光性フィルムである。
<4> 有機溶媒が、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸−n−プロピル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、及びテトラヒドロフランから選択される少なくとも1種である前記<1>から<3>のいずれかに記載の感光性フィルムである。
<5> 有機溶媒が、メチルエチルケトンと、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸−n−プロピル、酢酸イソブチル、及びテトラヒドロフランから選択される少なくとも1種との組合わせである前記<2>から<4>のいずれかに記載の感光性フィルムである。
<6> バインダーが、エポキシ化合物に、エチレン性不飽和二重結合と酸性基とを導入した化合物からなる前記<1>から<5>のいずれかに記載の感光性フィルムである。
<7> バインダーが、側鎖に(メタ)アクリロイル基、及び酸性基を有するビニル共重合体を含む前記<6>に記載の感光性フィルムである。
<8> バインダーが、(a)無水マレイン酸と、(b)芳香族ビニル単量体と、(c)ビニル単量体であって、該ビニル単量体のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が80℃未満であるビニル単量体と、からなる共重合体の無水物基に対して0.1〜1.0当量の1級アミン化合物を反応させて得られる前記<1>から<5>のいずれかに記載の感光性フィルムである。
<9> 重合性化合物が、(メタ)アクリル基を有するモノマーから選択される少なくとも1種を含む前記<1>から<8>のいずれかに記載の感光性フィルムである。
<10> 光重合開始剤が、ハロゲン化炭化水素誘導体、ホスフィンオキサイド、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、及びケトオキシムエーテルから選択される少なくとも1種を含む前記<1>から<9>のいずれかに記載の感光性フィルムである。
<11> 熱架橋剤が、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物にブロック剤を反応させて得られる化合物、及びメラミン誘導体から選択される少なくとも1種である前記<1>から<10>のいずれかに記載の感光性フィルムである。
<12> 熱硬化促進剤を含み、該熱硬化促進剤が、アミン化合物、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩化合物、リン化合物、グアナミン化合物、S−トリアジン誘導体、芳香族酸無水物、脂肪族酸無水物、及びポリフェノールから選択される少なくとも1種である前記<1>から<11>のいずれかに記載の感光性フィルムである。
<13> 支持体上に、バインダー、重合性化合物、光重合開始剤、熱架橋剤、及び沸点が50〜160℃である有機溶媒を含む感光性組成物を塗布し、乾燥させて、有機溶媒を含有する感光層を形成する感光層形成工程を少なくとも含むことを特徴とする感光性フィルムの製造方法である。
<14> 乾燥が、80〜200℃で30秒間以上行われる前記<13>に記載の感光性フィルムの製造方法である。
<15> 前記<1>から<12>のいずれかに記載の感光性フィルムを備えており、
光を照射可能な光照射手段と、該光照射手段からの光を変調し、前記感光性フィルムにおける感光層に対して露光を行う光変調手段とを少なくとも有することを特徴とするパターン形成装置である。
<16> 前記<1>から<12>のいずれかに記載の感光性フィルムにおける該感光層に対し、露光を行うことを少なくとも含むことを特徴とする永久パターン形成方法である。
<17> 露光が、形成するパターン情報に基づいて制御信号を生成し、該制御信号に応じて変調させた光を用いて行われる前記<16>に記載の永久パターン形成方法である。
<18> 露光が、光変調手段により光を変調させた後、前記光変調手段における描素部の出射面の歪みによる収差を補正可能な非球面を有するマイクロレンズを配列したマイクロレンズアレイを通して行われる前記<16>から<17>のいずれかに記載の永久パターン形成方法である。
<19> 非球面が、トーリック面である前記<18>に記載の永久パターン形成方法である。
<20> 露光が、395〜415nmの波長のレーザ光を用いて行われる前記<16>から<19>のいずれかに記載の永久パターン形成方法である。
<21> 露光が行われた後、感光層の現像を行う前記<16>から<20>のいずれかに記載の永久パターン形成方法である。
<22> 現像が行われた後、感光層に対して硬化処理を行う前記<21>に記載の永久パターン形成方法である。
<23> 保護膜、層間絶縁膜、及びソルダーレジストパターンの少なくともいずれかを形成する前記<16>から<22>のいずれかに記載の永久パターン形成方法である。
【0007】
本発明の感光性フィルムは、支持体と、該支持体上に、バインダー、重合性化合物、光重合開始剤、熱架橋剤、及び有機溶媒を含む感光性組成物からなる感光層と、を有してなり、前記感光層における前記有機溶媒の沸点が50〜160℃であるので、表面のタック性が良好で、保護膜、層間絶縁膜、ソルダーレジスト等の高精細な永久パターンの形成などに好適なものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、ソルダーレジストのような永久パターンの形成を目的として、感光層中に適正な沸点の有機溶媒を含有してなり、表面のタック性が良好な感光性フィルム、並びに該感光性フィルムを備えたパターン形成装置及び前記感光性フィルムを用いた永久パターン形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(感光性フィルム)
本発明の感光性フィルムは、支持体と、該支持体上に、感光性組成物からなる感光層を有してなり、保護フィルム、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0010】
<感光層>
前記感光層は、バインダー、重合性化合物、光重合開始剤、熱架橋剤及び有機溶媒を含み、必要に応じて増感剤、熱硬化促進剤、その他の成分を含んでいてもよい。
【0011】
−有機溶媒−
前記有機溶媒としては、沸点が50〜160℃であるものを用いる。前記沸点が50℃未満の有機溶媒を含むと、有機溶媒の蒸散が起こり易く、前記感光層中の含有量が著しく減少し、タック性が著しく小さくなり、基板に追従しにくくなることがある。前記沸点が160℃を超える有機溶媒を含むと、有機溶媒の蒸散が起こりにくく、前記感光層中の含有量が著しく多くなり、タック性が大きくなり、取り扱いにくく、ラミネートの際に気泡が入りやすく、ラミネートしにくくなることがある。いずれも得られる感光性フィルムのタック性が大きく変化し、影響が大きい。
ここで、前記感光層中における有機溶媒の沸点は、蒸気圧測定法(有機合成研究会編、“新版 溶剤ポケットブック”、p.48、オーム社(1994))により測定することができる。本発明における有機溶媒の沸点は、有機合成研究会編、“新版溶剤ポケットブック” 第III編データ編、p.197〜819、オーム社(1994)に記載のデータを引用する。
【0012】
沸点が50〜160℃の有機溶媒としては、沸点がこの範囲内であれば特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、芳香族炭化水素類、ハロゲン炭化水素類、エーテル類、などが挙げら挙げられる。
前記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、n−ヘキサノール、などが挙げられる。
前記ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジイソプロピルケトン、などが挙げられる。
前記エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−n−アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、メトキシプロピルアセテート、などが挙げられる。
前記芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、などが挙げられる。
前記ハロゲン化炭化水素類としては、例えば、四塩化炭素、トリクロロエチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、モノクロロベンゼン、などが挙げられる。
前記エーテル類としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、などが挙げられる。
また、前記沸点が50〜160℃の有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、なども挙げられる。
以上例示した有機溶媒の中でも、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸−n−プロピル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフランが特に好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよく、特に2種以上を混合して使用することが好適である。
前記有機溶媒は、50〜160℃の間で沸点の異なる2種以上であることが、溶媒の蒸散量を調整し、良好な塗布面状を得ることができる点で好ましい。このような沸点の異なる2種以上の溶媒の組み合わせとしては、例えば、メチルエチルケトンと、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸-n-プロピル、酢酸イソブチル、及びテトラヒドロフランから選択される少なくとも1種との組合わせ、などが挙げられる。
前記沸点の異なる2種以上の有機溶媒における沸点の温度差は5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。
【0013】
前記有機溶媒の前記感光層における合計含有量は、0.01〜3質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましく、0.1〜1質量%が特に好ましい。前記含有量が0.01質量%未満であると、タック性が著しく小さくなり、基板に追従しにくくなることがあり、3質量%を超えると、タック性が大きくなり、取り扱いにくく、ラミネートの際に気泡が入りやすく、ラミネートしにくくなることがある。なお、有機溶媒の合計含有量は、該有機溶媒の総含有量を意味し、有機溶媒が2種以上の場合には、該有機溶媒の合計含有量を意味する。
ここで、前記感光層中における有機溶媒の含有量は、前記感光性フィルムを一定面積サンプリングし、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。具体的には、感光性フィルムの一定面積をスクリュー管式ガラス製ビンに入れ、有機溶媒含有量の測定用サンプルとし、ガスクロマトグラフ装置を用いて測定することができる。
前記感光層における有機溶媒の合計含有量の範囲は、後述する感光性フィルムの製造方法において、感光性組成物の乾燥条件(乾燥温度、乾燥時間)を調節することにより達成することができる。
【0014】
−バインダー−
前記バインダーとしては、アルカリ性水溶液に対して膨潤性を示す化合物が好ましく、アルカリ性水溶液に対して可溶性である化合物がより好ましい。
アルカリ性水溶液に対して膨潤性又は溶解性を示すバインダーとしては、例えば、酸性基を有するものが好適に挙げられ、具体的には、エチレン性不飽和二重結合と酸性基とを有する化合物が挙げられ、エポキシ樹脂にエチレン性不飽和二重結合と酸性基とを導入した化合物が好適である。また、側鎖に(メタ)アクリロイル基、及び酸性基を有するビニル共重合体を含んでいることがより好ましい。
【0015】
−−エポキシ樹脂にエチレン性不飽和二重結合と酸性基とを導入した化合物−−
前記エポキシ樹脂にエチレン性不飽和二重結合と酸性基とを導入した化合物としては、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシ基含有重合性化合物と不飽和カルボン酸とを反応させた反応生成物、及びエポキシ基含有重合性化合物と不飽和カルボン酸とを反応させ、更に多塩基酸無水物を付加させた反応生成物などが挙げられる。
【0016】
前記エポキシ基含有重合性化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ノボラック型ビフェニル型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等の多官能グリシジルアミン樹脂;テトラフェニルグリシジルエーテルエタン等の多官能性グリシジルエーテル樹脂;フェノール、o−クレゾール、ナフトール等のフェノール化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合反応により得られるポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応物;フェノール化合物とジビニルベンゼンやジシクロペンタジエン等のジオレフィン化合物との付加反応によって得られるポリフェノール化合物と、エピクロルヒドリンとの反応物;4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイドの開環重合物を過酢酸等でエポキシ化したもの;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環を有するエポキシ樹脂;などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
前記不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、α−シアノ桂皮酸、β−スチルアクリル酸、β−アクリロキシプロピオン酸、及び1個の水酸基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物と二塩基酸無水物との反応物などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
前記多塩基酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニルコハク酸無水物、無水クロレンド酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、及びベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記エポキシ化合物にエチレン性不飽和二重結合と酸性基とを導入した化合物の中でも、下記構造式(1)及び(2)で表されるエポキシアクリレート化合物が好ましい。
【化1】

ただし、前記構造式(1)中、Xは、水素原子、又は少なくとも酸性基を含む置換基を表す。Yは、メチレン基、イソプロピリデン基、又はスルホニル基を表す。nは、1〜20の整数を表す。
【0020】
【化2】

ただし、前記構造式(2)中、nは、1〜20の整数を表す。
【0021】
また、前記構造式(1)で表されるエポキシアクリレート化合物としては、具体的には、下記構造式(3)で表されるビスフェノールF型エポキシアクリレート化合物、及び下記構造式(4)で表されるビスフェノールA型エポキシアクリレート化合物がより好ましい。
【化3】

【化4】

【0022】
前記エポキシ樹脂にエチレン性不飽和二重結合と酸性基とを導入した化合物の分子量としては、200〜1,500が好ましく、300〜1,000がより好ましい。該分子量が200未満であると、感光層表面のタック性が強くなることがあり、後述する感光層の硬化後において、膜質が脆くなる、あるいは、表面硬度が劣化することがあり、1,000を超えると、現像性が悪化することがある。
【0023】
また、前記バインダーとしては、例えば、不飽和−塩基酸共重合樹脂とエポキシ基含有不飽和化合物との反応により得られる不飽和樹脂、エポキシ基含有共重合樹脂と酸基含有不飽和化合物との反応により得られる不飽和樹脂、などが挙げられる。
これら不飽和樹脂としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
該市販品としては、例えば、サイクロマーPシリーズ(ダイセル社製)、などが挙げられる。
【0024】
−−側鎖に(メタ)アクリロイル基、及び酸性基を有するビニル共重合体−−
前記側鎖に(メタ)アクリロイル基、及び酸性基を有するビニル共重合体としては、例えば(1)酸性基を有するビニルモノマー、(2)必要に応じて後述する高分子反応に利用可能な官能基を有するビニルモノマー、及び(3)必要に応じてその他の共重合可能なビニルモノマーのビニル(共)重合で得られた(共)重合体を合成し、更に(4)該(共)重合体中の酸性基、又は高分子反応に利用可能な官能基の少なくとも1種に対して反応性を有する官能基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを高分子反応させることによって得られる。
前記(1)酸性基を有するビニルモノマーの酸性基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられ、これらの中でもカルボキシル基が好ましい。カルボキシル基を有するビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマー、水酸基を有する単量体(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等)と環状無水物(例えば、無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物)との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、共重合性やコスト、溶解性などの観点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。またこれらのモノマーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、カルボキシル基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の無水物を有するモノマーを用いてもよい。
前記(2)の高分子反応に利用可能な官能基を有するビニルモノマーにおける、高分子反応に利用可能な官能基としては水酸基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、酸ハライド基、活性ハライド基、などが挙げられる。また前述(1)のカルボシキル基や酸無水物基も利用可能な官能基として挙げられる。
【0025】
前記水酸基を有するビニルモノマーとしては、例えば、下記構造式(5)〜(13)で表される化合物が挙げられる。
【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
【化7】

【0029】
【化8】

【0030】
【化9】

【0031】
【化10】

【0032】
【化11】

【0033】
【化12】

【0034】
【化13】

【0035】
但し、前記構造式(5)〜(13)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、n、n1及びn2は1以上の整数を表す。
【0036】
前記アミノ基を有するビニルモノマーとしては、例えば、ビニルベンジルアミン、アミノエチルメタクリレート、などが挙げられる。
【0037】
前記イソシアネート基を有するモノマーとしては、例えば、下記構造式(14)〜(16)で表される化合物が挙げられる。
【0038】
【化14】

【0039】
【化15】

【0040】
【化16】

【0041】
但し、前記構造式(14)〜(16)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。
【0042】
前記エポキシ基を有するビニルモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、下記構造式(17)で表される化合物などが挙げられる。
【0043】
【化17】

但し、前記構造式(17)中、RはH及びMeのいずれかを表す。
【0044】
前記酸ハライド基を有するビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸クロリド、などが挙げられる。
前記活性ハライド基を有するビニルモノマーとしては、例えば、クロロメチルスチレン、などが挙げられる。
これらの市販品としては、例えば、「カネカレジンAXE;鐘淵化学工業(株)製」、「サイクロマー(CYCLOMER) A−200;ダイセル化学工業(株)製」、「サイクロマー(CYCLOMER) M−200;ダイセル化学工業(株)製」、「SPCP1X、SPCP2X、SPCP3X;昭和高分子(株)製」などを用いることができる。
また、前記各モノマーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記(3)の必要に応じて用いられるその他の共重合可能なモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルアルコールのエステル類、スチレン類(例えば、スチレン、スチレン誘導体等)、(メタ)アクリロニトリル、ビニル基が置換した複素環式基(例えば、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール等)、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクトン、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、リン酸モノ(2―アクリロイルオキシエチルエステル)、リン酸モノ(1−メチル−2―アクリロイルオキシエチルエステル)、官能基(例えば、ウレタン基、ウレア基、スルホンアミド基、イミド基)を有するビニルモノマーなどが挙げられる。
【0046】
前記(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、アセトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、β−フェノキシエトキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、オクタフロロペンチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニルオキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0047】
前記クロトン酸エステル類としては、例えば、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシルなどが挙げられる。
【0048】
前記ビニルエステル類としては、例えば、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、安息香酸ビニルなどが挙げられる。
【0049】
前記マレイン酸ジエステル類としては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0050】
前記フマル酸ジエステル類としては、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどが挙げられる。
【0051】
前記イタコン酸ジエステル類としては、例えば、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0052】
前記(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチルアクリル(メタ)アミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミドなどが挙げられる。
【0053】
前記スチレン類としては、例えば、前記スチレン、前記スチレン誘導体(例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えば、t-Boc等)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン等)、などが挙げられる。
【0054】
前記ビニルエーテル類としては、例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0055】
前記官能基としてウレタン基又はウレア基を有するビニルモノマーの合成方法としては、例えば、イソシアナート基と水酸基又はアミノ基の付加反応が挙げられ、具体的には、イソシアナート基を有するモノマーと、水酸基を1個含有する化合物又は1級若しくは2級アミノ基を1個有する化合物との付加反応、水酸基を有するモノマー又は1級若しくは2級アミノ基を有するモノマーと、モノイソシアネートとの付加反応が挙げられる。
【0056】
前記イソシアナート基を有するモノマーとしては、例えば、前述の(2)に示したものと同様に、前記構造式(10)〜(12)で表される化合物が挙げられる。
前記モノイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシルイソシアネート、n−ブチルイソシアネート、トルイルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、フェニルイソシアネート等が挙げられる。
前記水酸基を有するモノマーとしては、例えば、前述の(2)に示したものと同様に、前記構造式(1)〜(9)で表される化合物が挙げられる。
【0057】
前記水酸基を1個含有する化合物としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、n−デカノール、n−ドデカノール、n−オクタデカノール、シクロペンタノール、シクロへキサノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等)、フェノール類(例えば、フェノール、クレゾール、ナフトール等)、更に置換基を含むものとして、フロロエタノール、トリフロロエタノール、メトキシエタノール、フェノキシエタノール、クロロフェノール、ジクロロフェノール、メトキシフェノール、アセトキシフェノール等が挙げられる。
【0058】
前記1級又は2級アミノ基を有するモノマーとしては、例えば、ビニルベンジルアミンなどが挙げられる。
【0059】
前記1級又は2級アミノ基を1個含有する化合物としては、例えば、アルキルアミン(メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、t−ブチルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン)、環状アルキルアミン(シクロペンチルアミン、シクロへキシルアミン等)、アラルキルアミン(ベンジルアミン、フェネチルアミン等)、アリールアミン(アニリン、トルイルアミン、キシリルアミン、ナフチルアミン等)、更にこれらの組合せ(N−メチル−N−ベンジルアミン等)、更に置換基を含むアミン(トリフロロエチルアミン、ヘキサフロロイソプロピルアミン、メトキシアニリン、メトキシプロピルアミン等)などが挙げられる。
【0060】
また、これらのモノマーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらをビニル(共)重合させることにより酸性基、酸無水物基および必要に応じて水酸基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、酸ハライド基、活性ハライド基などを含有する(共)重合体が得られる。前記ビニル(共)重合体は、それぞれ相当するモノマーを公知の方法により常法に従って共重合させることで調製することができる。例えば、前記モノマーを適当な溶媒中に溶解し、ここにラジカル重合開始剤を添加して溶液中で重合させる方法(溶液重合法)を利用することにより調製することができる。また、水性媒体中に前記モノマーを分散させた状態でいわゆる乳化重合等で重合を利用することにより調製することができる。
このようにして得られた(共)重合体に対して、前記(4)として、これらの共重合体中の酸性基、および必要に応じて水酸基、アミノ基、イソシアネート基、グリシジル基、酸ハライド基の少なくとも1種に対して反応性を有する官能基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを高分子反応させることによって得られる。
【0061】
前記該(4)の(共)重合体中の酸性基、又は高分子反応に利用可能な官能基の少なくとも1種に対して反応性を有する官能基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、前述の(2)に示した化合物などが利用できる。
これらの高分子反応を行なう場合の官能基の組合せの例としては、例えば、酸性基(カルボキシル基など)を有する共重合体とエポキシ基を有するビニルモノマーの組合せ、アミノ基を有する共重合体とエポキシ基を有するビニルモノマーの組合せ、アミノ基を有する共重合体とイソシアネート基を有するビニルモノマーの組合せ、水酸基を有する共重合体とイソシアネート基を有するビニルモノマーの組合せ、水酸基を有する共重合体と酸ハライド基を有するビニルモノマーの組合せ、アミノ基を有する共重合体と活性ハライド基を有するビニルモノマーの組合わせ、酸無水物基を有する共重合体と水酸基を有するビニルモノマーの組合せ、イソシアネート基を有する共重合体とアミノ基を有するビニルモノマーの組合せ、イソシアネート基を有する共重合体と水酸基を有するビニルモノマーの組合せ、活性ハライド基を有する共重合体とアミノ基を有するビニルモノマーの組合わせ、などが挙げられる。またこれらの組合せは2種以上を併用しても構わない。
【0062】
−−その他のバインダー−−
前記バインダーは、その他のバインダーを用いてもよい。
前記その他のバインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、マレアミド酸系共重合体、などが挙げられる。
前記マレアミド酸系共重合体は、無水マレイン酸共重合体の無水物基に対して1級アミン化合物を1種以上反応させて得られる共重合体である。該共重合体は下記構造式(VII)で表される、マレイン酸ハーフアミド構造を有するマレアミド酸ユニットBと、前記マレイン酸ハーフアミド構造を有しないユニットAと、を少なくとも含むマレアミド酸系共重合体であるのが好ましい。
前記ユニットAは1種であってもよいし、2種以上であってもよい。例えば、前記ユニットBが1種であるとすると、前記ユニットAが1種である場合には、前記マレアミド酸系共重合体が2元共重合体を意味することになり、前記ユニットAが2種である場合には、前記マレアミド酸系共重合体が3元共重合体を意味することになる。
前記ユニットAとしては、置換基を有していてもよいアリール基と、後述するビニル単量体であって、該ビニル単量体のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が80℃未満であるビニル単量体(c)との組合せが好適に挙げられる。
【0063】
【化18】

ただし、前記構造式(18)中、R及びRは水素原子及び低級アルキル基のいずれかを表す。x及びyは繰り返し単位のモル分率を表し、例えば、前記ユニットAが1種の場合、xは85〜50モル%であり、yは15〜50モル%である。
【0064】
前記構造式(18)中、Rとしては、例えば、(−COOR10)、(−CONR1112)、置換基を有していてもよいアリール基、(−OCOR13)、(−OR14)、(−COR15)などの置換基が挙げられる。ここで、前記R10〜R15は、水素原子(−H)、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基及びアラルキル基のいずれかを表す。該アルキル基、アリール基及びアラルキル基は、環状構造又は分岐構造を有していてもよい。
前記R10〜R15としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、アリル、n−ヘキシル、シクロへキシル、2−エチルヘキシル、ドデシル、メトキシエチル、フェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、ベンジル、フェネチル、ナフチル、クロロフェニルなどが挙げられる。
前記Rの具体例としては、例えば、フェニル、α−メチルフェニル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル等のベンゼン誘導体;n−プロピルオキシカルボニル、n−ブチルオキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、n−ブチルオキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル、メチルオキシカルボニルなどが挙げられる。
【0065】
前記Rとしては、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。これらは、環状構造又は分岐構造を有していてもよい。前記Rの具体例としては、例えば、ベンジル、フェネチル、3−フェニル−1−プロピル、4−フェニル−1−ブチル、5−フェニル−1−ペンチル、6−フェニル−1−ヘキシル、α−メチルベンジル、2−メチルベンジル、3−メチルベンジル、4−メチルベンジル、2−(p−トリル)エチル、β―メチルフェネチル、1−メチル−3−フェニルプロピル、2−クロロベンジル、3−クロロベンジル、4−クロロベンジル、2−フロロベンジル、3−フロロベンジル、4−フロロベンジル、4−ブロモフェネチル、2−(2−クロロフェニル)エチル、2−(3−クロロフェニル)エチル、2−(4−クロロフェニル)エチル、2−(2−フロロフェニル)エチル、2−(3−フロロフェニル)エチル、2−(4−フロロフェニル)エチル、4−フロロ−α,α−ジメチルフェネチル、2−メトキシベンジル、3−メトキシベンジル、4−メトキシベンジル、2−エトキシベンジル、2−メトキシフェネチル、3−メトキシフェネチル、4−メトキシフェネチル、メチル、エチル、プロピル、1−プロピル、ブチル、t−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ラウリル、フェニル、1−ナフチル、メトキシメチル、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、3−メトキシプロピル、2−ブトキシエチル、2−シクロへキシルオキシエチル、3−エトキシプロピル、3−プロポキシプロピル、3−イソプロポキシプロピルアミンなどが挙げられる。
【0066】
前記バインダーは、特に、(a)無水マレイン酸と、(b)芳香族ビニル単量体と、(c)ビニル単量体であって、該ビニル単量体のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が80℃未満であるビニル単量体と、からなる共重合体の無水物基に対して1級アミン化合物を反応させて得られる共重合体であるのが好ましい。該(a)成分と、該(b)成分と、からなる共重合体では、後述する感光層の高い表面硬度を得ることはできるものの、ラミネート性の確保が困難になることがある。また、該(a)成分と、該(c)成分と、からなる共重合体では、ラミネート性は確保することができるものの、前記表面硬度の確保が困難になることがある。
【0067】
<<(b)芳香族ビニル単量体>>
前記芳香族ビニル単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明の感光性組成物を用いて形成される感光層の表面硬度を高くすることができる点で、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が80℃以上である化合物が好ましく、100℃以上である化合物がより好ましい。
前記芳香族ビニル単量体の具体例としては、例えば、スチレン(ホモポリマーのTg=100℃)、α−メチルスチレン(ホモポリマーのTg=168℃)、2−メチルスチレン(ホモポリマーのTg=136℃)、3−メチルスチレン(ホモポリマーのTg=97℃)、4−メチルスチレン(ホモポリマーのTg=93℃)、2,4−ジメチルスチレン(ホモポリマーのTg=112℃)などのスチレン誘導体が好適に挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
<<(c)ビニル単量体>>
前記ビニル単量体は、該ビニル単量体のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が80℃未満であることが必要であり、40℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましい。
前記ビニル単量体としては、例えば、n−プロピルアクリレート(ホモポリマーのTg=−37℃)、n−ブチルアクリレート(ホモポリマーのTg=−54℃)、ペンチルアクリレート、あるいはヘキシルアクリレート(ホモポリマーのTg=−57℃)、n−ブチルメタクリレート(ホモポリマーのTg=−24℃)、n−ヘキシルメタクリレート(ホモポリマーのTg=−5℃)などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
<<1級アミン化合物>>
前記1級アミン化合物としては、例えば、ベンジルアミン、フェネチルアミン、3−フェニル−1−プロピルアミン、4−フェニル−1−ブチルアミン、5−フェニル−1−ペンチルアミン、6−フェニル−1−ヘキシルアミン、α−メチルベンジルアミン、2−メチルベンジルアミン、3−メチルベンジルアミン、4−メチルベンジルアミン、2−(p−トリル)エチルアミン、β−メチルフェネチルアミン、1−メチル−3−フェニルプロピルアミン、2−クロロベンジルアミン、3−クロロベンジルアミン、4−クロロベンジルアミン、2−フロロベンジルアミン、3−フロロベンジルアミン、4−フロロベンジルアミン、4−ブロモフェネチルアミン、2−(2−クロロフェニル)エチルアミン、2−(3−クロロフェニル)エチルアミン、2−(4−クロロフェニル)エチルアミン、2−(2−フロロフェニル)エチルアミン、2−(3−フロロフェニル)エチルアミン、2−(4−フロロフェニル)エチルアミン、4−フロロ−α,α−ジメチルフェネチルアミン、2−メトキシベンジルアミン、3−メトキシベンジルアミン、4−メトキシベンジルアミン、2−エトキシベンジルアミン、2−メトキシフェネチルアミン、3−メトキシフェネチルアミン、4−メトキシフェネチルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、1−プロピルアミン、ブチルアミン、t−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、アニリン、オクチルアニリン、アニシジン、4−クロルアニリン、1−ナフチルアミン、メトキシメチルアミン、2−メトキシエチルアミン、2−エトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2−ブトキシエチルアミン、2−シクロヘキシルオキシエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−プロポキシプロピルアミン、3−イソプロポキシプロピルアミンなどが挙げられる。これらの中でも、ベンジルアミン、フェネチルアミンが特に好ましい。
前記1級アミン化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
前記1級アミン化合物の反応量としては、前記無水物基に対して0.1〜1.2当量であることが必要であり、0.1〜1.0当量が好ましい。該反応量が1.2当量を超えると、前記1級アミン化合物を1種以上反応させた場合に、溶解性が著しく悪化することがある。
【0071】
前記(a)無水マレイン酸の前記バインダーにおける含有量は、15〜50mol%が好ましく、20〜45mol%がより好ましく、20〜40mol%が特に好ましい。該含有量が15mol%未満であると、アルカリ現像性の付与ができず、50mol%を超えると、耐アルカリ性が劣化し、また、前記共重合体の合成が困難になり、正常な永久パターンの形成を行うことができないことがある。また、この場合における、前記(b)芳香族ビニル単量体、及び(c)ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が80℃未満であるビニル単量体の前記バインダーにおける含有量は、それぞれ20〜60mol%、15〜40mol%が好ましい。該含有量が該数値範囲を満たす場合には、表面硬度及びラミネート性の両立を図ることができる。
【0072】
前記マレアミド酸系共重合体の分子量は、3,000〜500,000が好ましく、8,000〜150,000がより好ましい。該分子量が3,000未満であると、後述する感光層の硬化後において、膜質が脆くなり、表面硬度が劣化することがあり、500,000を超えると、前記感光性組成物の加熱積層時の流動性が低くなり、適切なラミネート性の確保が困難になることがあり、また、現像性が悪化することがある。
【0073】
また、特開平5−70528号公報記載のフルオレン骨格を有するエポキシアクリレートに酸無水物を付加させて得られる化合物、特開平11−288087号公報記載のポリアミド(イミド)樹脂、特開平2−097502号公報や特開2003−20310号公報記載のアミド基を含有するスチレン又はスチレン誘導体と酸無水物共重合体、特開平11−282155号公報記載のポリイミド前駆体などを用いることができる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0074】
前記フルオレン骨格を有するエポキシアクリレートに酸無水物を付加させて得られる化合物、ポリアミド(イミド)、アミド基含有スチレン/酸無水物共重合体、あるいは、ポリイミド前駆体などのバインダーの分子量は、3,000〜500,000が好ましく、5,000〜100,000がより好ましい。該分子量が3,000未満であると、感光層表面のタック性が強くなることがあり、後述する感光層の硬化後において、膜質が脆くなる、あるいは、表面硬度が劣化することがあり、500,000を超えると、現像性が劣化することがある。
【0075】
前記バインダーの前記感光性組成物固形分中の固形分含有量は、5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。該固形分含有量が、5質量%未満であると、後述する感光層の膜強度が弱くなりやすく、該感光層の表面のタック性が悪化することがあり、70質量%を超えると、露光感度が低下することがある。
【0076】
−重合性化合物−
前記重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、分子中に少なくとも1個の付加重合可能な基を有し、沸点が常圧で100℃以上である化合物が好ましく、例えば、(メタ)アクリル基を有するモノマーから選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。
【0077】
前記(メタ)アクリル基を有するモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単官能アクリレートや単官能メタクリレート(例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等)、多官能アルコールに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加反応した後で(メタ)アクリレート化したもの(例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンやグリセリン、ビスフェノール等)、ウレタンアクリレート類(例えば、特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号等の各公報に記載されているもの)、ポリエステルアクリレート類(例えば、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号等の各公報に記載されているもの)、多官能アクリレートやメタクリレート(例えば、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等)などが挙げられる。これらの中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0078】
前記重合性化合物の前記感光性組成物固形分中の固形分含有量は、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。該固形分含有量が5質量%未満であると、現像性の悪化、露光感度の低下などの問題を生ずることがあり、50質量%を超えると、感光層の粘着性が強くなりすぎることがあり、好ましくない。
【0079】
−光重合開始剤−
前記光重合開始剤としては、前記重合性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができるが、例えば、紫外線領域から可視の光線に対して感光性を有するものが好ましく、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、モノマーの種類に応じてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。
また、前記光重合開始剤は、約300〜800nm(より好ましくは330〜500nm)の範囲内に少なくとも約50の分子吸光係数を有する成分を少なくとも1種含有していることが好ましい。
【0080】
前記光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有するもの、オキサジアゾール骨格を有するもの、オキサジアゾール骨格を有するもの等)、ホスフィンオキサイド、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテルなどが挙げられる。
【0081】
前記トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許第1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許第3337024号明細書記載の化合物、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.;29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物、特開平5−34920号公報記載化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されている化合物、などが挙げられる。
【0082】
前記若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物としては、例えば、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−クロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−トリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジクロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロルエチル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0083】
前記英国特許第1388492号明細書記載の化合物としては、例えば、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロルメチル−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
前記特開昭53−133428号公報記載の化合物としては、例えば、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、及び2−(アセナフト−5−イル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0084】
前記独国特許第3337024号明細書記載の化合物としては、例えば、2−(4−スチリルフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−(4−メトキシスチリル)フェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(1−ナフチルビニレンフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−クロロスチリルフェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−チオフェン−2−ビニレンフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−チオフェン−3−ビニレンフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−フラン−2−ビニレンフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、及び2−(4−ベンゾフラン−2−ビニレンフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0085】
前記F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.;29、1527(1964)記載の化合物としては、例えば、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−メチル−6−トリ(ブロモメチル)−1,3,5−トリアジン、及び2−メトキシ−4−メチル−6−トリクロロメチル−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0086】
前記特開昭62−58241号公報記載の化合物としては、例えば、2−(4−フェニルエチニルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−ナフチル−1−エチニルフェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−(4−トリルエチニル)フェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−(4−メトキシフェニル)エチニルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−(4−イソプロピルフェニルエチニル)フェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−(4−エチルフェニルエチニル)フェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0087】
前記特開平5−281728号公報記載の化合物としては、例えば、2−(4−トリフルオロメチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,6−ジフルオロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,6−ジクロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,6−ジブロモフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0088】
前記特開平5−34920号公報記載化合物としては、例えば、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4−(N,N−ジエトキシカルボニルメチルアミノ)−3−ブロモフェニル]−1,3,5−トリアジン、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−s−トリアジン化合物、更に2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジンなどが挙げられる。
【0089】
前記米国特許第4212976号明細書に記載されている化合物としては、例えば、オキサジアゾール骨格を有する化合物(例えば、2−トリクロロメチル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−クロロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(2−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリブロモメチル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリブロモメチル−5−(2−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール;2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−クロルスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−n−ブトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリプロメメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール等)などが挙げられる。
【0090】
前記オキシム誘導体としては、例えば、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−(4−トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン−2−オン、及び2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オンなどが挙げられる。
【0091】
また、上記以外の光重合開始剤として、アシルホスフィンオキサイド類が用いられ、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルホスフィンオキサイド、LucirinTPOなどが挙げられる。
【0092】
更に、上記以外の光重合開始剤として、アクリジン誘導体(例えば、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9、9’−アクリジニル)ヘプタン等)、N−フェニルグリシン等、ポリハロゲン化合物(例えば、四臭化炭素、フェニルトリブロモメチルスルホン、フェニルトリクロロメチルケトン等)、クマリン類(例えば、3−(2−ベンゾフロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−(1−ピロリジニル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−メトキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジ−n−プロポキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(2−フロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−メトキシ−3−(3−ピリジルカルボニル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン、7−ベンゾトリアゾール−2−イルクマリン、また、特開平5-19475号、特開平7-271028号、特開2002-363206号、特開2002-363207号、特開2002-363208号、特開2002-363209号公報等に記載のクマリン化合物など)、アミン類(例えば、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸n−ブチル、4−ジメチルアミノ安息香酸フェネチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−フタルイミドエチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−メタクリロイルオキシエチル、ペンタメチレンビス(4−ジメチルアミノベンゾエート)、3−ジメチルアミノ安息香酸のフェネチル、ペンタメチレンエステル、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、2−クロル−4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−ジメチルアミノベンジルアルコール、エチル(4−ジメチルアミノベンゾイル)アセテート、4−ピペリジノアセトフェノン、4−ジメチルアミノベンゾイン、N,N−ジメチル−4−トルイジン、N,N−ジエチル−3−フェネチジン、トリベンジルアミン、ジベンジルフェニルアミン、N−メチル−N−フェニルベンジルアミン、4−ブロム−N,N−ジメチルアニリン、トリドデシルアミン、アミノフルオラン類(ODB,ODBII等)、クリスタルバイオレットラクトン、ロイコクリスタルバイオレット等)、メタロセン類(例えば、ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフロロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、η−シクロペンタジエニル−η−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフロロホスフェート(1−)等)、特開昭53−133428号公報、特公昭57−1819号公報、同57−6096号公報、及び米国特許第3615455号明細書に記載された化合物などが挙げられる。
【0093】
前記ケトン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン、2−エトキシカルボニルベンゾルフェノン、ベンゾフェノンテトラカルボン酸又はそのテトラメチルエステル、4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン類(例えば、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビスジシクロヘキシルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジヒドロキシエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノアセトフェノン、ベンジル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、フェナントラキノン、キサントン、チオキサントン、2−クロル−チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、フルオレノン、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシー2−メチル−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパノールオリゴマー、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類(例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール)、アクリドン、クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−ブチル−クロロアクリドンなどが挙げられる。
【0094】
前記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’─テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−フェノキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−フェノキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−フェノキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−シアノフェニル)−4,4’,5.5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−シアノフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−フェノキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−フェノキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−エチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−エチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−エチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−フェノキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−フェニルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−フェニルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−フェニルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−フェノキシカルボニルフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’─テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−シアノフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジシアノフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリシアノフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−エチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジエチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリエチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−フェニルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジフェニルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリフェニルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾールが挙げられる。
【0095】
前記光重合開始剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記光重合開始剤の特に好ましい例としては、後述する露光において、波長が405nmのレーザ光に対応可能である、前記ホスフィンオキサイド類、前記α−アミノアルキルケトン類、前記トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物と後述する増感剤としてのアミン化合物とを組合せた複合光開始剤、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、あるいは、チタノセンなどが挙げられる。
【0096】
前記光重合開始剤の前記感光性組成物における含有量としては、0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましく、0.5〜15質量%が特に好ましい。
【0097】
また、後述する感光層への露光における露光感度や感光波長を調整する目的で、前記光重合開始剤に加えて、増感剤を添加することが可能である。
前記増感剤は、後述する光照射手段としての可視光線や紫外光・可視光レーザなどにより適宜選択することができる。
前記増感剤は、活性エネルギー線により励起状態となり、他の物質(例えば、ラジカル発生剤、酸発生剤等)と相互作用(例えば、エネルギー移動、電子移動等)することにより、ラジカルや酸等の有用基を発生することが可能である。
【0098】
前記増感剤としては、特に制限はなく、公知の増感剤の中から適宜選択することができるが、例えば、公知の多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、インドカルボシアニン、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、アクリドン類(例えば、アクリドン、クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−ブチル−クロロアクリドン等)、クマリン類(例えば、3−(2−ベンゾフロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−(1−ピロリジニル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−メトキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジ−n−プロポキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(2−フロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−メトキシ−3−(3−ピリジルカルボニル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン等があげられ、他に特開平5-19475号、特開平7-271028号、特開2002-363206号、特開2002-363207号、特開2002-363208号、特開2002-363209号等の各公報に記載のクマリン化合物など)が挙げられる。
【0099】
前記光重合開始剤と前記増感剤との組合せとしては、例えば、特開2001−305734号公報に記載の電子移動型開始系[(1)電子供与型開始剤及び増感色素、(2)電子受容型開始剤及び増感色素、(3)電子供与型開始剤、増感色素及び電子受容型開始剤(三元開始系)]などの組合せが挙げられる。
【0100】
前記増感剤の含有量としては、前記感光性フィルム中の全成分に対し、0.05〜30質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましく、0.2〜10質量%が特に好ましい。該含有量が、0.05質量%未満であると、活性エネルギー線への感度が低下し、露光プロセスに時間がかかり、生産性が低下することがあり、30質量%を超えると、保存時に前記感光層から前記増感剤が析出することがある。
【0101】
−熱架橋剤−
前記熱架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記感光性組成物を用いて形成される感光層の硬化後の膜強度を改良するために、現像性等に悪影響を与えない範囲で、例えば、1分子内に少なくとも2つのオキシラン基を有するエポキシ化合物、1分子内に少なくとも2つのオキセタニル基を有するオキセタン化合物を用いることができる。
前記1分子中に少なくとも2つのオキシラン環を有するエポキシ化合物としては、例えば、ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂(「YX4000、ジャパンエポキシレジン社製」等)又はこれらの混合物、イソシアヌレート骨格等を有する複素環式エポキシ樹脂(「TEPIC;日産化学工業社製」、「アラルダイトPT810;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製」等)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾ−ルノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂(例えば、低臭素化エポキシ樹脂、高ハロゲン化エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂など)、アリル基含有ビスフェノールA型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジフェニルジメタノール型エポキシ樹脂、フェノールビフェニレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(「HP−7200,HP−7200H;大日本インキ化学工業社製」等)、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジグリシジルアニリン、トリグリシジルアミノフェノール等)、グリジジルエステル型エポキシ樹脂(フタル酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等)ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルー3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタジエンジエポキシド、「GT−300、GT−400、ZEHPE3150;ダイセル化学工業製」等、)、イミド型脂環式エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、グリシジルフタレート樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、ナフタレン基含有エポキシ樹脂(ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、市販品としては「ESN−190,ESN−360;新日鉄化学社製」、「HP−4032,EXA−4750,EXA−4700;大日本インキ化学工業社製」等)、フェノール化合物とジビニルベンゼンやジシクロペンタジエン等のジオレフィン化合物との付加反応によって得られるポリフェノール化合物と、エピクロルヒドリンとの反応物、4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイドの開環重合物を過酢酸等でエポキシ化したもの、線状含リン構造を有するエポキシ樹脂、環状含リン構造を有するエポキシ樹脂、α―メチルスチルベン型液晶エポキシ樹脂、ジベンゾイルオキシベンゼン型液晶エポキシ樹脂、アゾフェニル型液晶エポキシ樹脂、アゾメチンフェニル型液晶エポキシ樹脂、ビナフチル型液晶エポキシ樹脂、アジン型エポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂(「CP−50S,CP−50M;日本油脂社製」等)、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートとの共重合エポキシ樹脂、ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン型エポキシ樹脂、ビス(グリシジルオキシフェニル)アダマンタン型エポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0102】
また、1分子中に少なくとも2つのオキシラン環を有する前記エポキシ化合物以外に、β位にアルキル基を有するエポキシ基を少なくとも1分子中に2つ含むエポキシ化合物を用いることができ、β位がアルキル基で置換されたエポキシ基(より具体的には、β−アルキル置換グリシジル基など)を含む化合物が特に好ましい。
前記β位にアルキル基を有するエポキシ基を少なくとも含むエポキシ化合物は、1分子中に含まれる2個以上のエポキシ基のすべてがβ−アルキル置換グリシジル基であってもよく、少なくとも1個のエポキシ基がβ−アルキル置換グリシジル基であってもよい。
【0103】
前記β位にアルキル基を有するエポキシ基を含むエポキシ化合物は、室温における保存安定性の観点から、前記感光性組成物中に含まれる前記エポキシ化合物全量中における、全エポキシ基中のβ−アルキル置換グリシジル基の割合が、70%以上であることが好ましい。
前記β−アルキル置換グリシジル基としては、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、β−メチルグリシジル基、β−エチルグリシジル基、β−プロピルグリシジル基、β−ブチルグリシジル基、などが挙げられ、これらの中でも、前記感光性樹脂組成物の保存安定性を向上させる観点、及び合成の容易性の観点から、β−メチルグリシジル基が好ましい。
【0104】
前記β位にアルキル基を有するエポキシ基を含むエポキシ化合物としては、例えば、多価フェノール化合物とβ−アルキルエピハロヒドリンとから誘導されたエポキシ化合物が好ましい。
【0105】
前記β−アルキルエピハロヒドリンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、β−メチルエピクロロヒドリン、β−メチルエピブロモヒドリン、β−メチルエピフロロヒドリン等のβ−メチルエピハロヒドリン;β−エチルエピクロロヒドリン、β−エチルエピブロモヒドリン、β−エチルエピフロロヒドリン等のβ−エチルエピハロヒドリン;β−プロピルエピクロロヒドリン、β−プロピルエピブロモヒドリン、β−プロピルエピフロロヒドリン等のβ−プロピルエピハロヒドリン;β−ブチルエピクロロヒドリン、β−ブチルエピブロモヒドリン、β−ブチルエピフロロヒドリン等のβ−ブチルエピハロヒドリン;などが挙げられる。これらの中でも、前記多価フェノールとの反応性及び流動性の観点から、β−メチルエピハロヒドリンが好ましい。
【0106】
前記多価フェノール化合物としては、1分子中に2以上の芳香族性水酸基を含有する化合物であれば、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール化合物、ビフェノール、テトラメチルビフェノール等のビフェノール化合物、ジヒドロキシナフタレン、ビナフトール等のナフトール化合物、フェノール−ホルムアルデヒド重縮合物等のフェノールノボラック樹脂、クレゾール−ホルムアルデヒド重縮合物等の炭素数1〜10のモノアルキル置換フェノール−ホルムアルデヒド重縮合物、キシレノール−ホルムアルデヒド重縮合物等の炭素数1〜10のジアルキル置換フェノール−ホルムアルデヒド重縮合物、ビスフェノールA−ホルムアルデヒド重縮合物等のビスフェノール化合物−ホルムアルデヒド重縮合物、フェノールと炭素数1〜10のモノアルキル置換フェノールとホルムアルデヒドとの共重縮合物、フェノール化合物とジビニルベンゼンの重付加物などが挙げられる。これらの中でも、例えば、流動性及び保存安定性を向上させる目的で選択する場合には、前記ビスフェノール化合物が好ましい。
【0107】
前記β位にアルキル基を有するエポキシ基を含むエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAのジ−β−アルキルグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジ−β−アルキルグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジ−β−アルキルグリシジルエーテル等のビスフェノール化合物のジ−β−アルキルグリシジルエーテル;ビフェノールのジ−β−アルキルグリシジルエーテル、テトラメチルビフェノールのジ−β−アルキルグリシジルエーテル等のビフェノール化合物のジ−β−アルキルグリシジルエーテル;ジヒドロキシナフタレンのジ−β−アルキルグリシジルエーテル、ビナフトールのジ−β−アルキルグリシジルエーテル等のナフトール化合物のβ−アルキルグリシジルエーテル;フェノール−ホルムアルデヒド重縮合物のポリ−β−アルキルグリシジルエーテル;クレゾール−ホルムアルデヒド重縮合物のポリ−β−アルキルグリシジルエーテル等の炭素数1〜10のモノアルキル置換フェノール−ホルムアルデヒド重縮合物のポリ−β−アルキルグリシジルエーテル;キシレノール−ホルムアルデヒド重縮合物のポリ−β−アルキルグリシジルエーテル等の炭素数1〜10のジアルキル置換フェノール−ホルムアルデヒド重縮合物のポリ−β−アルキルグリシジルエーテル;ビスフェノールA−ホルムアルデヒド重縮合物のポリ−β−アルキルグリシジルエーテル等のビスフェノール化合物−ホルムアルデヒド重縮合物のポリ−β−アルキルグリシジルエーテル;フェノール化合物とジビニルベンゼンの重付加物のポリ−β−アルキルグリシジルエーテル;などが挙げられる。
これらの中でも、下記構造式(I)で表されるビスフェノール化合物、及びこれとエピクロロフドリンなどから得られる重合体から誘導されるβ−アルキルグリシジルエーテル、及び下記構造式(II)で表されるフェノール化合物−ホルムアルデヒド重縮合物のポリ−β−アルキルグリシジルエーテルが好ましい。
【化19】

ただし、前記構造式(I)中、Rは水素原子及び炭素数1〜6のアルキル基のいずれかを表し、nは0〜20の整数を表す。
【化20】

ただし、前記構造式(II)中、Rは水素原子及び炭素数1〜6のアルキル基のいずれかを表し、R”は水素原子、及びCHのいずれかを表し、nは0〜20の整数を表す。
【0108】
これらβ位にアルキル基を有するエポキシ基を含むエポキシ化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また1分子中に少なくとも2つのオキシラン環を有するエポキシ化合物、及びβ位にアルキル基を有するエポキシ基を含むエポキシ化合物を併用することも可能である。
【0109】
前記オキセタン化合物としては、例えば、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート又はこれらのオリゴマーあるいは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタン基を有する化合物と、ノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、シルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂など、とのエーテル化合物が挙げられ、この他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0110】
また、前記エポキシ化合物や前記オキセタン化合物の熱硬化を促進するため、例えば、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミンなどのアミン化合物;トリエチルベンジルアンモニウムクロリドなどの4級アンモニウム塩化合物;ジメチルアミンなどのブロックイソシアネート化合物;イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール誘導体二環式アミジン化合物又はその塩;トリフェニルホスフィンなどのリン化合物;メラミン、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどのグアナミン化合物;2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物などのS−トリアジン誘導体;などを用いることができる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、前記エポキシ化合物や前記オキセタン化合物の硬化触媒、あるいは、これらとカルボキシル基の反応を促進することができるものであれば、特に制限はなく、上記以外の熱硬化を促進可能な化合物を用いてもよい。
前記エポキシ化合物、前記オキセタン化合物、及びこれらとカルボン酸との熱硬化を促進可能な化合物の前記感光性組成物固形分中の固形分含有量としては、通常0.01〜15質量%である。
【0111】
また、前記熱架橋剤としては、特開平5−9407号公報記載のポリイソシアネート化合物を用いることができ、該ポリイソシアネート化合物は、少なくとも2つのイソシアネート基を含む脂肪族、環式脂肪族又は芳香族基置換脂肪族化合物から誘導されていてもよい。具体的には、2官能イソシアネート(例えば、1,3−フェニレンジイソシアネートと1,4−フェニレンジイソシアネートとの混合物、2,4−及び2,6−トルエンジイソシアネート、1,3−及び1,4−キシリレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアネート−フェニル)メタン、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)、該2官能イソシアネートと、トリメチロールプロパン、ペンタリスルトール、グリセリン等との多官能アルコール;該多官能アルコールのアルキレンオキサイド付加体と、前記2官能イソシアネートとの付加体;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート又はその誘導体等の環式三量体やビュレット体;ノルボルナンジイソシアネート;などが挙げられる。
【0112】
更に、本発明の感光性組成物の保存性を向上させることを目的として、前記ポリイソシアネート及びその誘導体のイソシアネート基にブロック剤を反応させて得られる化合物を用いてもよい。
前記イソシアネート基ブロック剤としては、アルコール類(例えば、イソプロパノール、tert.−ブタノール等)、ラクタム類(例えば、ε−カプロラクタム等)、フェノール類(例えば、フェノール、クレゾール、p−tert.−ブチルフェノール、p−sec.−ブチルフェノール、p−sec.−アミルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール等)、複素環式ヒドロキシル化合物(例えば、3−ヒドロキシピリジン、8−ヒドロキシキノリン等)、活性メチレン化合物(例えば、ジアルキルマロネート、メチルエチルケトキシム、アセチルアセトン、アルキルアセトアセテートオキシム、アセトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等)などが挙げられる。これらの他、特開平6−295060号公報記載の分子内に少なくとも1つの重合可能な二重結合及び少なくとも1つのブロックイソシアネート基のいずれかを有する化合物などを用いることができる。
【0113】
また、前記熱架橋剤として、メラミン誘導体を用いることができる。該メラミン誘導体としては、例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン(メチロール基を、メチル、エチル、ブチルなどでエーテル化した化合物)などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、保存安定性が良好で、感光層の表面硬度あるいは硬化膜の膜強度自体の向上に有効である点で、アルキル化メチロールメラミンが好ましく、ヘキサメチル化メチロールメラミンが特に好ましい。
【0114】
また、その他の熱架橋剤として、メラミン以外のアルデヒド縮合生成物、樹脂前駆体などを用いることができる。具体的には、N,N’−ジメチロール尿素、N,N’−ジメチロールマロンアミド、N,N’−ジメチロールスクシンイミド、1,3−N,N’−ジメチロールテレフタルアミド、2,4,6−トリメチロールフェノール、2,6−ジメチロール−4−メチロアニソール、1,3−ジメチロール−4,6−ジイソプロピルベンゼン、などが挙げられる。また、これらのメチロール化合物の代わりに、対応するエチルもしくはブチルエーテル、又は酢酸あるいはプロピオン酸のエステルを使用してもよい。
【0115】
前記熱架橋剤の前記感光性組成物固形分中の固形分含有量は、1〜50質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましい。該固形分含有量が1質量%未満であると、硬化膜の膜強度の向上が認められず、50質量%を超えると、現像性の低下や露光感度の低下を生ずることがある。
【0116】
−熱硬化促進剤−
前記熱硬化促進剤は、前記エポキシ樹脂化合物や前記多官能オキセタン化合物の熱硬化を促進する機能があり、前記感光性樹脂に好適に添加される。
前記熱硬化促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミンなどのアミン化合物;トリエチルベンジルアンモニウムクロリドなどの4級アンモニウム塩化合物;ジメチルアミンなどのブロックイソシアネート化合物;イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール誘導体二環式アミジン化合物及びその塩;トリフェニルホスフィンなどのリン化合物;メラミン、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどのグアナミン化合物;2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物などのS−トリアジン誘導体、三フッ化ホウ素−アミンコンプレックス、有機ヒドラジド累、無水フタル酸、無水トリメリット酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物などの芳香族酸無水物、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの脂肪族酸無水物類、ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール臭素化物、フェノールノボラック、アルキルフェノールノボラックなどのポリフェノール類などを用いることができる。これらの中でも、ジシアンジアミド、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物などが好ましい。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、前記エポキシ樹脂化合物や前記多官能オキセタン化合物の硬化触媒、あるいは、これらとカルボキシル基の反応を促進することができるものであれば、特に制限はなく、上記以外の熱硬化を促進可能な化合物を用いてもよい。
前記熱硬化促進剤の前記感光性組成物溶液の固形分中の固形分含有量は、特に制限はないが、0.1〜3質量%であることが好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。該固形分含有量が0.1質量%未満であると、熱による硬化の促進ができないことがあり、3質量%を超えると、塗布液の粘度が増加して好適な塗布がなされず、感光層の安定した面状が得られないことがある。
【0117】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、例えば、熱重合禁止剤、可塑剤、着色剤(着色顔料あるいは染料)、体質顔料、などが挙げられ、更に基材表面への密着促進剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を併用してもよい。これらの成分を適宜含有させることにより、目的とする感光性フィルムの安定性、写真性、膜物性などの性質を調整することができる。
【0118】
−−熱重合禁止剤−−
前記熱重合禁止剤は、前記重合性化合物の熱的な重合又は経時的な重合を防止するために添加してもよい。
前記熱重合禁止剤としては、例えば、4−メトキシフェノール、ハイドロキノン、アルキル又はアリール置換ハイドロキノン、t−ブチルカテコール、ピロガロール、2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−メトキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、塩化第一銅、フェノチアジン、クロラニル、ナフチルアミン、β−ナフトール、2,6−ジ−t−ブチル−4−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ピリジン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ピクリン酸、4−トルイジン、メチレンブルー、銅と有機キレート剤反応物、サリチル酸メチル、及びフェノチアジン、ニトロソ化合物、ニトロソ化合物とAlとのキレート等が挙げられる。
【0119】
前記熱重合禁止剤の含有量としては、前記重合性化合物に対して0.001〜5質量%が好ましく、0.005〜2質量%がより好ましく、0.01〜1質量%が特に好ましい。該含有量が、0.001質量%未満であると、保存時の安定性が低下することがあり、5質量%を超えると、活性エネルギー線に対する感度が低下することがある。
【0120】
−−着色顔料−−
前記着色顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フタロシアニングリーン、ビクトリア・ピュアーブルーBO(C.I.42595)、オーラミン(C.I.41000)、ファット・ブラックHB(C.I.26150)、モノライト・エローGT(C.I.ピグメント・エロー12)、パーマネント・エローGR(C.I.ピグメント・エロー17)、パーマネント・エローHR(C.I.ピグメント・エロー83)、パーマネント・カーミンFBB(C.I.ピグメント・レッド146)、ホスターバームレッドESB(C.I.ピグメント・バイオレット19)、パーマネント・ルビーFBH(C.I.ピグメント・レッド11)ファステル・ピンクBスプラ(C.I.ピグメント・レッド81)モナストラル・ファースト・ブルー(C.I.ピグメント・ブルー15)、モノライト・ファースト・ブラックB(C.I.ピグメント・ブラック1)、カーボン、C.I.ピグメント・レッド97、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド149、C.I.ピグメント・レッド168、C.I.ピグメント・レッド177、C.I.ピグメント・レッド180、C.I.ピグメント・レッド192、C.I.ピグメント・レッド215、C.I.ピグメント・グリーン7、C.I.ピグメント・グリーン36、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:4、C.I.ピグメント・ブルー15:6、C.I.ピグメント・ブルー22、C.I.ピグメント・ブルー60、C.I.ピグメント・ブルー64などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、必要に応じて、公知の染料の中から、適宜選択した染料を使用することができる。
【0121】
前記着色顔料の前記感光性組成物固形分中の固形分含有量は、永久パターン形成の際の感光層の露光感度、解像性などを考慮して決めることができ、前記着色顔料の種類により異なるが、一般的には0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
【0122】
−−体質顔料−−
前記感光性フィルムには、必要に応じて、永久パターンの表面硬度の向上、あるいは線膨張係数を低く抑えること、あるいは、硬化膜自体の誘電率や誘電正接を低く抑えることを目的として、無機顔料や有機微粒子を添加することができる。
前記無機顔料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、カオリン、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、気相法シリカ、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、マイカなどが挙げられる。
前記無機顔料の平均粒径は、10μm未満が好ましく、3μm以下がより好ましい。該平均粒径が10μm以上であると、光錯乱により解像度が劣化することがある。
前記有機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、架橋ポリスチレン樹脂などが挙げられる。また、平均粒径1〜5μm、吸油量100〜200m/g程度のシリカ、架橋樹脂からなる球状多孔質微粒子などを用いることができる。
【0123】
前記体質顔料の添加量は、5〜60質量%が好ましい。該添加量が5質量%未満であると、十分に線膨張係数を低下させることができないことがあり、60質量%を超えると、感光層表面に硬化膜を形成した場合に、該硬化膜の膜質が脆くなり、永久パターンを用いて配線を形成する場合において、配線の保護膜としての機能が損なわれることがある。
【0124】
−−密着促進剤−−
各層間の密着性、又は感光層と基材との密着性を向上させるために、各層に公知のいわゆる密着促進剤を用いることができる。
【0125】
前記密着促進剤としては、例えば、特開平5−11439号公報、特開平5−341532号公報、及び特開平6−43638号公報などに記載の密着促進剤が好適挙げられる。具体的には、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンズチアゾール、3−モルホリノメチル−1−フェニル−トリアゾール−2−チオン、3−モルホリノメチル−5−フェニル−オキサジアゾール−2−チオン、5−アミノ−3−モルホリノメチル−チアジアゾール−2−チオン、2−メルカプト−5−メチルチオ−チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、アミノ基含有ベンゾトリアゾール、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0126】
前記密着促進剤の含有量としては、前記感光性組成物中の全成分に対して0.001質量%〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.1質量%〜5質量%が特に好ましい。
【0127】
前記感光層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、3〜100μmが好ましく、5〜70μmがより好ましい。
【0128】
<支持体>
前記支持体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記感光層を剥離可能であり、かつ光の透過性が良好であるものが好ましく、更に表面の平滑性が良好であることがより好ましい。
【0129】
前記支持体となる合成樹脂製フィルムは、透明であるものが好ましく、例えば、ポリエステル樹脂製フィルムが好ましく、二軸延伸ポリエステルフィルムであることが特に好ましい。
【0130】
前記ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレン−2,6−ナフタレート等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0131】
前記ポリエステル樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、三酢酸セルロース、二酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、セロファン、ポリ塩化ビニリデン共重合体、ポリアミド、ポリイミド、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフロロエチレン、ポリトリフロロエチレン、セルロース系樹脂、ナイロン樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0132】
前記合成樹脂製フィルムは1層からなるものであってもよく、2層以上の層からなるものであってもよい。2層以上の層からなる場合、感光層から最も遠くに位置する層に前記不活性微粒子を含有させることが好ましい。
【0133】
また、前記合成樹脂製フィルムは、機械的強度特性及び光学的特性の観点から二軸延伸ポリエステルフィルムであることが好ましい。
前記二軸延伸ポリエステルフィルムの二軸配向方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記ポリエステル樹脂をシート状に溶融押出し、急冷して未延伸フィルムをつくり、該未延伸フィルムを二軸延伸する際に延伸温度を85〜145℃、縦方向及び横方向の延伸倍率を2.6〜4.0倍とし、必要に応じて二軸延伸した後のフィルムを150〜210℃で熱固定することにより調製することができる。
前記二軸延伸は、未延伸フィルムを縦方向又は横方向に延伸して一軸延伸フィルムとし、次いで該一軸延伸フィルムを横方向又は縦方向に延伸することによる逐次二軸延伸法であってもよく、該未延伸フィルムを縦方向及び横方向に同時に延伸する同時二軸延伸法であってもよい。また、前記二軸延伸フィルムは必要に応じて縦方向及び横方向の少なくともいずれかの方向に更に延伸することができる。
【0134】
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、2〜150μmが好ましく、5〜100μmがより好ましく、8〜50μmが特に好ましい。
【0135】
前記支持体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、長尺状が好ましい。前記長尺状の支持体の長さとしては、特に制限はなく、例えば、10〜20,000mの長さのものが挙げられる。
【0136】
<保護フィルム>
前記感光性フィルムは、前記感光層上に保護フィルムを形成してもよい。
前記保護フィルムとしては、例えば、前記支持体に使用されるもの、シリコーン紙、ポリエチレン、ポリプロピレンがラミネートされた紙、ポリオレフィン又はポリテトラフルオルエチレンシート、などが挙げられ、これらの中でも、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムが好ましい。
前記保護フィルムの厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、5〜100μmが好ましく、8〜30μmがより好ましい。
前記保護フィルムを用いる場合、前記感光層及び前記支持体の接着力Aと、前記感光層及び保護フィルムの接着力Bとが、接着力A>接着力Bの関係であることが好ましい。
前記支持体と保護フィルムとの組合せ(支持体/保護フィルム)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリ塩化ビニル/セロフアン、ポリイミド/ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。また、支持体及び保護フィルムの少なくともいずれかを表面処理することにより、上述のような接着力の関係を満たすことができる。前記支持体の表面処理は、前記感光層との接着力を高めるために施されてもよく、例えば、下塗層の塗設、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、高周波照射処理、グロー放電照射処理、活性プラズマ照射処理、レーザ光線照射処理などを挙げることができる。
【0137】
また、前記支持体と前記保護フィルムとの静摩擦係数としては、0.3〜1.4が好ましく、0.5〜1.2がより好ましい。
前記静摩擦係数が、0.3未満であると、滑り過ぎるため、ロール状にした場合に巻ズレが発生することがあり、1.4を超えると、良好なロール状に巻くことが困難となることがある。
【0138】
前記感光性フィルムは、例えば、円筒状の巻芯に巻き取って、長尺状でロール状に巻かれて保管されるのが好ましい。前記長尺状の感光性フィルムの長さとしては、特に制限はなく、例えば、10〜20,000mの範囲から適宜選択することができる。また、ユーザーが使いやすいようにスリット加工し、100m〜1,000mの範囲の長尺体をロール状にしてもよい。なお、この場合には、前記支持体が一番外側になるように巻き取られるのが好ましい。また、前記ロール状の感光性フィルムをシート状にスリットしてもよい。保管の際、端面の保護、エッジフュージョンを防止する観点から、端面にはセパレーター(特に防湿性のもの、乾燥剤入りのもの)を設置するのが好ましく、また梱包も透湿性の低い素材を用いるのが好ましい。
【0139】
前記保護フィルムは、前記保護フィルムと前記感光層との接着性を調整するために表面処理してもよい。前記表面処理は、例えば、前記保護フィルムの表面に、ポリオルガノシロキサン、フッ素化ポリオレフィン、ポリフルオロエチレン、ポリビニルアルコール等のポリマーからなる下塗層を形成させる。該下塗層の形成は、前記ポリマーの塗布液を前記保護フィルムの表面に塗布した後、30〜150℃(特に50〜120℃)で1〜30分間乾燥させることにより形成させることができる。
また、前記感光層、前記支持体、前記保護フィルムの他に、クッション層、酸素遮断層(PC層)、剥離層、接着層、光吸収層、表面保護層などの層を有してもよい。
前記クッション層は、常温ではタック性が無く、真空・加熱条件で積層した場合に溶融し、流動する層である。
前記PC層は、通常ポリビニルアルコールを主成分として形成された0.5〜5μm程度の被膜である。
【0140】
(感光性フィルムの製造方法)
本発明の感光性フィルムの製造方法は、支持体上に、バインダー、重合性化合物、光重合開始剤、熱架橋剤、及び沸点が50〜160℃である有機溶媒を含む感光性組成物を塗布し、乾燥させて、感光層を形成する感光層形成工程を少なくとも含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
前記塗布及び乾燥の方法としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記支持体の表面に、前記感光性組成物を、水又は溶剤に、溶解、乳化、又は分散させて感光性組成物を調製し、該溶液を塗布し、乾燥させる方法が好ましい。
前記乾燥は、前記感光層中における有機溶媒の含有量を0.01〜3質量%に調節する点から、80〜200℃で、30秒間以上行われることが好ましく、100〜130℃で1分間〜5分間行うことがより好ましい。
【0141】
前記塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコーター、スリットスピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーターなどを用いて、塗布する方法が挙げられる。
【0142】
<積層体の形成>
本発明の感光性フィルムを用いてパターン形成を行う際には、該感光性フィルムの感光層を基材上へ積層して積層体を形成する。
【0143】
前記基材としては、特に制限はなく、公知の材料の中から表面平滑性の高いものから凸凹のある表面を有するものまで適宜選択することができるが、板状の基材(基板)が好ましく、具体的には、公知のプリント配線板形成用基板(例えば、銅張積層板)、ガラス板(例えば、ソーダガラス板等)、合成樹脂性のフィルム、紙、金属板などが挙げられる。
【0144】
前記積層体における層構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記基材と前記感光層と前記支持体とをこの順有する層構成が好ましい。なお、前記感光性フィルムが前述する保護フィルムを有する場合には、該保護フィルムを剥離し、前記基材に感光層が重なるようにして積層するのが好ましい。
【0145】
該積層体の形成方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、前記基材上に前記感光性フィルムを加熱及び加圧の少なくともいずれかを行いながら積層することが好ましい。
前記加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、70〜130℃が好ましく、80〜110℃がより好ましい。
前記加圧の圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.01〜1.0MPaが好ましく、0.05〜1.0MPaがより好ましい。
【0146】
前記加熱及び加圧の少なくともいずれかを行う装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒートプレス、ヒートロールラミネーター(例えば、大成ラミネータ社製、VP−II)、真空ラミネーター(例えば、名機製作所製、MVLP500)などが好適に挙げられる。
【0147】
本発明の感光性フィルムは、前記感光層の感度低下を抑制できるため、より小さいエネルギー量の光で露光することができ、露光スピードが上がるため処理スピードが上がる点で有利である。
【0148】
<用途>
本発明の感光性フィルムは、得られるレジスト面形状が良好で、かつ、より高精細なパターンを形成可能であるため、プリント配線版、カラーフィルタや柱材、リブ材、スペーサー、隔壁などのディスプレイ用部材、ホログラム、マイクロマシン、プルーフなどの永久パターン形成用として広く用いることができ、本発明の永久パターン形成方法に好適に用いることができる。
【0149】
(パターン形成装置及び永久パターン形成方法)
本発明のパターン形成装置は、本発明の前記感光性フィルムを備えており、光照射手段と光変調手段とを少なくとも有する。
【0150】
本発明の永久パターン形成方法は、露光工程を少なくとも含み、更に、現像工程、硬化処理工程を含むことが好ましい。なお、本発明の前記パターン形成装置は、本発明の前記永久パターン形成方法の説明を通じて明らかにする。
【0151】
<露光工程>
前記露光工程は、本発明の感光性フィルムにおける感光層に対し、露光を行う工程である。本発明の前記感光性フィルム、及び基材の材料については上述の通りである。
【0152】
前記露光の対象としては、前記感光性フィルムにおける感光層である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、上述のように、基材上に感光性フィルムを加熱及び加圧の少なくともいずれかを行いながら積層して形成した積層体に対して行われることが好ましい。
【0153】
前記露光としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光照射手段からの光を受光し出射する描素部をn個(ただし、nは2以上の自然数を表す)有する光変調手段により、前記光照射手段からの光を変調させた後に、マイクロレンズが配列されたマイクロレンズアレイを通過させた光によって行われることが好ましい。
【0154】
前記露光工程において、前記光照射手段から照射される光としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、光重合開始剤や増感剤を活性化する電磁波、紫外から可視光、電子線、X線、レーザ光などが挙げられ、これらの中でも、光のオンオフ制御が短時間で行え、光の干渉制御が容易なレーザ光が好適に挙げられる。
前記紫外光から可視光の波長としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、感光性組成物の露光時間の短縮を図る目的から、330〜650nmが好ましく、395〜415nmがより好ましく、405nmであることが特に好ましい。
前記光照射手段による光の照射方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高圧水銀灯、キセノン灯、カーボンアーク灯、ハロゲンランプ、複写機用冷陰極管、LED、半導体レーザなどの公知の光源によって照射する方法が挙げられる。また、これらの光源からの光を2以上合成して照射することが好適であり、2以上の光を合成したレーザ光(以下、「合波レーザ光」ということがある。)を照射することが特に好適に挙げられる。
前記合波レーザ光の照射方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、複数のレーザ光源と、マルチモード光ファイバと、該複数のレーザ光源から照射されるレーザ光を集光して前記マルチモード光ファイバに結合させる集合光学系とにより合波レーザ光を構成して照射する方法が挙げられる。
【0155】
前記露光工程において、光を変調する方法としては、前記光照射手段からの光を受光し出射する描素部をn個有する光変調手段により変調する方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、n個の描素部の中から連続的に配置された任意のn個未満の描素部をパターン情報に応じて制御する方法が好適に挙げられる。
前記描素部の数(n)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記光変調手段における描素部の配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、2次元的に配列されることが好ましく、格子状に配列されることがより好ましい。
また、前記光の変調方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記光変調手段が、空間光変調素子による方法が好適に挙げられる。
前記空間光変調素子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)タイプの空間光変調素子(SLM;Special Light Modulator)、電気光学効果により透過光を変調する光学素子(PLZT素子)、液晶光シャッタ(FLC)などが好適に挙げられ、これらの中でもDMDが特に好適に挙げられる。
【0156】
前記露光工程において、前記変調手段により変調された光は、マイクロレンズが配列されたマイクロレンズアレイを通過させられる。
前記マイクロレンズアレイに配置されるマイクロレンズとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、描素部における出射面の歪みによる収差を補正可能な非球面を有するマイクロレンズが配置されたマイクロレンズであってもよく、前記非球面がトーリック面であるマイクロレンズを用いることもできる。
更に、前記露光工程において、前記変調手段により変調された光は、アパーチャアレイ、結合光学系、適宜選択されるその他の光学系などを通過させられることが好ましい。
【0157】
前記露光工程において、感光層を、露光する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、デジタル露光、アナログ露光などが挙げられるが、デジタル露光が好適である。
前記デジタル露光の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、所定のパターン情報に基づいて生成される制御信号に応じて変調されたレーザ光を用いて行われることが好適である。
更に、前記露光工程において、感光層を、露光する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、短時間、かつ高速露光を可能とする観点から、露光光と感光層とを相対的に移動させながら行うことが好ましく、前記デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)と併用されることが特に好ましい。
【0158】
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法に好適に用いられるパターン形成装置を図面を参照しながら説明する。
【0159】
図7は、本発明のカラーフィルタの製造方法に好適に用いられるパターン形成装置の外観を示す概略斜視図である。
前記光変調手段を含むパターン形成装置は、図7に示すように4本の脚部154に支持された厚い板状の設置台156の上面に、シート状のカラーフィルタ形成材料150を表面に吸着して保持する平板状のステージ152を備えている。
ステージ152は、その長手方向がステージ移動方向を向くように配置されると共に、前記設置台156の上面に形成されたガイド158によって往復移動可能に支持されている。なお、前記パターン形成装置には、ステージ152をガイド158に沿って駆動するための図示しない駆動装置を有している。
【0160】
設置台156の中央部には、ステージ152の移動経路を跨ぐように下向きC字状のゲート160が設けられている。ゲート160の各々の端部は、設置台156の長手方向中央部における両側面に固定されている。このゲート160の一方の側面側には、スキャナ162が設けられ、他方の側面側には、カラーフィルタ形成材料150の先端及び後端を検知する複数(例えば、2個)の検知センサ164が設けられている。スキャナ162及び検知センサ164は、ゲート160に各々取り付けられて、ステージ152の移動経路の上方に固定配置されている。なお、スキャナ162及び検知センサ164は、これらを制御する図示しないコントローラに接続されている。
【0161】
図8は、スキャナの構成を示す概略斜視図である。また、図9(A)は、感光層に形成される露光済み領域を示す平面図であり、図9(B)は、露光ヘッドによる露光エリアの配列を示す図である。
スキャナ162は、図8及び図9(B)に示すように、m行n列(例えば、3行5列)の略マトリックス状に配列された複数(例えば、14個)の露光ヘッド166を備えている。この例では、カラーフィルタ形成材料150の幅との関係で、3行目には4個の露光ヘッド166を配置した。なお、m行目のn列目に配列された個々の露光ヘッドを示す場合は、露光ヘッド166mnと表記する。
露光ヘッド166による露光エリア168は、副走査方向を短辺とする矩形状である。従って、ステージ152の移動に伴い、カラーフィルタ形成材料150には露光ヘッド166毎に帯状の露光済み領域170が形成される。なお、m行目のn列目に配列された個々の露光ヘッドによる露光エリアを示す場合は、露光エリア168mnと表記する。
【0162】
また、図9(A)及び(B)に示すように、帯状の露光済み領域170が副走査方向と直交する方向に隙間無く並ぶように、ライン状に配列された各行の露光ヘッドの各々は、配列方向に所定間隔(露光エリアの長辺の自然数倍、本例では2倍)ずらして配置されている。このため、1行目の露光エリア16811と露光エリア16812との間の露光できない部分は、2行目の露光エリア16821と3行目の露光エリア16831とにより露光することができる。
【0163】
図10は、露光ヘッドの概略構成を示す斜視図である。
露光ヘッド16611〜166mn各々は、図10に示すように、光ビームをパターン情報に応じて光変調する前記光変調手段(各描素毎に変調する空間光変調素子)としての、米国テキサス・インスツルメンツ社製のデジタル・マイクロミラー・デバイス(以下「DMD」ということがある。)50と、DMD50の光入射側に配置され、光ファイバの出射端部(発光点)が露光エリア168の長辺方向と対応する方向に沿って一列に配列されるレーザ出射部68を備えた光照射手段66としてのファイバアレイ光源66と、ファイバアレイ光源66から出射されたレーザ光を補正してDMD上に集光させるレンズ系67と、レンズ系67を透過したレーザ光をDMD50に向けて反射するミラー69と、DMD50で反射されたレーザ光Bを、カラーフィルタ形成材料150上に結像する結像光学系51とを備えている。なお、図10では、レンズ系67を概略的に示してある。
【0164】
図12は、パターン情報に基づいて、DMDの制御を行うコントローラである。
DMD50は、図12に示すように、データ処理部、ミラー駆動制御部などを有するコントローラ302に接続されている。このコントローラ302のデータ処理部では、入力されたパターン情報に基づいて、露光ヘッド166毎にDMD50の制御すべき領域内の各マイクロミラーを駆動制御する制御信号を生成する。なお、制御すべき領域については後述する。また、ミラー駆動制御部では、パターン情報処理部で生成した制御信号に基づいて、露光ヘッド166毎にDMD50の各マイクロミラーの反射面の角度を制御する。
【0165】
図1は、前記光変調手段としてのデジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)の構成を示す部分拡大図である。
図1に示すように、DMD50は、SRAMセル(メモリセル)60上に、各々描素(ピクセル)を構成する多数(例えば、1024個×768個)の微小ミラー(マイクロミラー)62が格子状に配列されてなるミラーデバイスである。各ピクセルにおいて、最上部には支柱に支えられたマイクロミラー62が設けられており、マイクロミラー62の表面にはアルミニウム等の反射率の高い材料が蒸着されている。なお、マイクロミラー62の反射率は90%以上であり、その配列ピッチは縦方向、横方向とも一例として13.7μmである。また、マイクロミラー62の直下には、ヒンジ及びヨークを含む支柱を介して通常の半導体メモリの製造ラインで製造されるシリコンゲートのCMOSのSRAMセル60が配置されており、全体はモノリシックに構成されている。
【0166】
図2(A)及び(B)は、DMDの動作を説明する図である。
DMD50のSRAMセル60にデジタル信号が書き込まれると、支柱に支えられたマイクロミラー62が、対角線を中心としてDMD50が配置された基板側に対して±α度(例えば±12度)の範囲で傾けられる。図2(A)は、マイクロミラー62がオン状態である+α度に傾いた状態を示し、図2(B)は、マイクロミラー62がオフ状態である−α度に傾いた状態を示す。
従って、パターン情報に応じて、DMD50の各ピクセルにおけるマイクロミラー62の傾きを制御することによって、DMD50に入射したレーザ光は、それぞれのマイクロミラー62の傾き方向へ反射される。
なお、図1では、マイクロミラー62が、+α度又は−α度に制御されている状態の一例を示す。それぞれのマイクロミラー62のオンオフ制御は、DMD50に接続された前記コントローラ302によって行われる。また、オフ状態のマイクロミラー62で反射したレーザ光Bが進行する方向には、図示しない光吸収体が配置されている。
【0167】
DMD50は、その短辺が副走査方向と所定角度θ(例えば、0.1°〜5°)を成すように僅かに傾斜させて配置するのが好ましい。
図3(A)は、DMD50を傾斜させない場合の各マイクロミラーによる反射光像(露光ビーム)53の走査軌跡を示し、図3(B)はDMD50を傾斜させた場合の露光ビーム53の走査軌跡を示している。
図3(B)に示すように、DMD50には、長手方向にマイクロミラーが多数個(例えば、1024個)配列されたマイクロミラー列が、短手方向に多数組(例えば、756組)配列されているが、DMD50を傾斜させることにより、各マイクロミラーによる露光ビーム53の走査軌跡(走査線)のピッチPが、DMD50を傾斜させない場合の走査線のピッチPより狭くなり、解像度を大幅に向上させることができる。一方、DMD50の傾斜角は微小であるので、DMD50を傾斜させた場合の走査幅Wと、DMD50を傾斜させない場合の走査幅Wとは略同一である。
【0168】
次に、前記光変調手段における変調速度を速くさせる方法(以下「高速変調」と称する)について説明する。
ファイバアレイ光源66からDMD50にレーザ光Bが照射されると、ファイバアレイ光源66から出射されたレーザ光が描素毎にオンオフされて、カラーフィルタ形成材料150がDMD50の使用描素数と略同数の描素単位(露光エリア168)で露光される。また、カラーフィルタ形成材料150がステージ152と共に一定速度で移動されることにより、カラーフィルタ形成材料150がスキャナ162によりステージ移動方向と反対の方向に副走査され、露光ヘッド166毎に帯状の露光済み領域170が形成される。
ここで、DMD50全体のデータ処理速度には、限界があり、使用する描素数に比例して1ライン当りの変調速度が決定されるので、一部のマイクロミラー列だけを使用することで1ライン当りの変調速度が速くなる。一方、連続的に露光ヘッドを露光面に対して相対移動させる露光方式の場合には、副走査方向の描素を全部使用する必要はない。
DMD50は、主走査方向にマイクロミラーが1024個配列されたマイクロミラー列が、副走査方向に768組配列されているが、コントローラ302により一部のマイクロミラー列(例えば、1024個×256列)だけが駆動するように制御される。
図4(A)及び(B)は、DMDの使用領域を示す図である。
図4(A)に示すように、DMDの使用領域としては、DMD50の中央部に配置されたマイクロミラー列を使用してもよく、図4(B)に示すように、DMD50の端部に配置されたマイクロミラー列を使用してもよい。また、一部のマイクロミラーに欠陥が発生した場合は、欠陥が発生していないマイクロミラー列を使用するなど、状況に応じて使用するマイクロミラー列を適宜変更してもよい。
例えば、768組のマイクロミラー列の内、384組だけ使用する場合には、768組全部使用する場合と比較すると1ライン当り2倍速く変調することができる。また、768組のマイクロミラー列の内、256組だけ使用する場合には、768組全部使用する場合と比較すると1ライン当り3倍速く変調することができる。
【0169】
以上説明した通り、本発明のカラーフィルタの製造方法によれば、主走査方向にマイクロミラーが1,024個配列されたマイクロミラー列が、副走査方向に768組配列されたDMDを備えているが、コントローラにより一部のマイクロミラー列だけが駆動されるように制御することにより、全部のマイクロミラー列を駆動する場合に比べて、1ライン当りの変調速度が速くなる。
【0170】
また、DMDのマイクロミラーを部分的に駆動する例について説明したが、所定方向に対応する方向の長さが前記所定方向と交差する方向の長さより長い基板上に、各々制御信号に応じて反射面の角度が変更可能な多数のマイクロミラーが2次元状に配列された細長いDMDを用いても、反射面の角度を制御するマイクロミラーの個数が少なくなるので、同様に変調速度を速くすることができる。
【0171】
前記露光の方法としては、図5に示すように、スキャナ162によるX方向への1回の走査でカラーフィルタ形成材料150の全面を露光してもよい。
また、前記露光の方法としては、図6(A)及び(B)に示すように、スキャナ162によりカラーフィルタ形成材料150をX方向へ走査した後、スキャナ162をY方向に1ステップ移動し、X方向へ走査を行うというように、走査と移動を繰り返して、複数回の走査でカラーフィルタ形成材料150の全面を露光するようにしてもよい。
【0172】
前記露光は、前記感光層の一部の領域に対してされることにより該一部の領域が硬化され、後述の現像工程において、前記硬化させた一部の領域以外の未硬化領域が除去され、パターンが形成される。
【0173】
次に、レンズ系67及び結像光学系51を説明する。
図11は、図10における露光ヘッドの構成の詳細を示す光軸に沿った複走査方向の断面図である。
図11に示すように、レンズ系67は、ファイバアレイ光源66から出射した照明光としてのレーザ光Bを集光する集光レンズ71、集光レンズ71を通過した光の光路に挿入されたロッド状オプティカルインテグレータ(以下、ロッドインテグレータという)72、及びロッドインテグレータ72の前方つまりミラー69側に配置された結像レンズ74を備えている。
集光レンズ71、ロッドインテグレータ72及び結像レンズ74は、ファイバアレイ光源66から出射したレーザ光を、平行光に近くかつビーム断面内強度が均一化された光束としてDMD50に入射させる。
【0174】
レンズ系67から出射したレーザ光Bは、ミラー69で反射し、TIR(全反射)プリズム70を介してDMD50に照射される。なお、図10では、このTIRプリズム70は省略してある。
【0175】
図11に示すように、結像光学系51は、レンズ系52,54からなる第1結像光学系と、レンズ系57,58からなる第2結像光学系と、これらの結像光学系の間に挿入されたマイクロレンズアレイ55と、アパーチャアレイ59とを備えている。
【0176】
マイクロレンズアレイ55は、DMD50の各描素に対応する多数のマイクロレンズ55aが2次元状に配列されてなるものである。本例では、後述するようにDMD50の1024個×768列のマイクロミラーのうち1024個×256列だけが駆動されるので、それに対応させてマイクロレンズ55aは1024個×256列配置されている。
マイクロレンズ55aの配置ピッチは、縦方向、横方向とも41μmである。マイクロレンズ55aの焦点距離は、0.19mm、NA(開口数)は0.11である。
また、マイクロレンズ55aは、光学ガラスBK7から形成されている。
各マイクロレンズ55aの位置におけるレーザ光Bのビーム径としては、41μmである。
【0177】
アパーチャアレイ59は、マイクロレンズアレイ55の各マイクロレンズ55aに対応する多数のアパーチャ(開口)59aが形成されている。各アパーチャ59aの径は、10μmである。
【0178】
第1結像光学系は、DMD50による像を3倍に拡大してマイクロレンズアレイ55上に結像する。
第2結像光学系は、マイクロレンズアレイ55を経た像を1.6倍に拡大してカラーフィルタ形成材料150上に結像、投影する。
従って、光学系全体では、DMD50による像が、4.8倍に拡大されてカラーフィルタ形成材料150上に結像、投影される。
【0179】
なお、前記第2結像光学系とカラーフィルタ形成材料150との間にプリズムペア73が配設され、該プリズムペア73を図11において、上下方向に移動させることにより、カラーフィルタ形成材料150上における像のピントを調節可能となっている。なお同図中において、カラーフィルタ形成材料150は矢印F方向に副走査送りされる。
【0180】
次に、前記マイクロレンズアレイ、前記アパーチャアレイ、及び前記結像光学系等について図面を参照しながら説明する。
【0181】
図13(A)は、前記露光ヘッドの構成を示す光軸に沿った断面図である。
図13(A)に示すように、前記露光ヘッドは、DMD50にレーザ光を照射する光照射手段144、DMD50で反射されたレーザ光を拡大して結像するレンズ系(結像光学系)454、458、DMD50の各描素部に対応して多数のマイクロレンズ474が配置されたマイクロレンズアレイ472、マイクロレンズアレイ472の各マイクロレンズに対応して多数のアパーチャ478が設けられたアパーチャアレイ476、アパーチャを通過したレーザ光を被露光面56に結像するレンズ系(結像光学系)480、482で構成される。
【0182】
図14は、DMD50を構成するマイクロミラー62の反射面の平面度を測定した結果を示す図である。
図14において、反射面の同じ高さ位置を等高線で結んで示してあり、等高線のピッチは5nmである。図中x方向及びy方向は、マイクロミラー62の2つ対角線方向であり、マイクロミラー62はy方向に延びる回転軸を中心として前述のように回転する。
図15(A)及び(B)は、それぞれ、図14におけるx方向、y方向に沿ったマイクロミラー62の反射面の高さ位置変位を示す。
図14及び図15に示した通り、マイクロミラー62の反射面には歪みが存在し、そして特にミラー中央部に注目してみると、1つの対角線方向(y方向)の歪みが、別の対角線方向(x方向)の歪みよりも大きくなっている。このため、マイクロレンズアレイ55のマイクロレンズ55aで集光されたレーザ光Bの集光位置における形状が歪むという問題が発生し得る。
【0183】
図16(A)及び(B)は、それぞれ、マイクロレンズアレイ55全体の正面形状及び側面形状を示す図である。
図16(A)に示すように、マイクロレンズアレイ55は、DMD50のマイクロミラー62に対応して、マイクロレンズ55aを横方向に1024列、縦方向に256列並設して構成される。
マイクロレンズアレイ55の長辺の寸法は、50mmであり、短辺の寸法は20mmである。
なお、同図(A)では、マイクロレンズ55aの並び順を、横方向についてはjで、縦方向についてはkで示す。
【0184】
図17(A)及び(B)は、マイクロレンズアレイ構成するマイクロレンズの正面形状及び側面形状を示す図である。なお、図17(A)には、マイクロレンズ55aの等高線を併せて示す。
図17(A)及び(B)に示すように、マイクロレンズ55aの光出射側の端面は、マイクロミラー62の反射面の歪みによる収差を補正する非球面形状とされる。
非球面形状のマイクロレンズ55aは、具体的には、x方向における曲率半径Rxが−0.125mmであり、y方向における曲率半径Ryが−0.1mmとされるトーリックレンズである。
図18は、マイクロレンズによる集光状態を1つの断面内(A)と別の断面内(B)について示す概略図である。
図18に示すように、マイクロレンズアレイ構成するマイクロレンズ55aとして、光出射側の端面が非球面形状であるトーリックレンズが用いられているため、x方向及びy方向に平行断面内におけるレーザ光Bの集光状態は、x方向に平行断面内とy方向に平行断面内とを比較すると、後者の断面内の方がマイクロレンズ55aの曲率半径がより小であって、焦点距離がより短くなる。
【0185】
マイクロレンズ55aの形状としては、2次の非球面形状であってもよく、より高次(4次、6次・・・)の非球面形状であってもよい。前記高次の非球面形状を採用することにより、ビーム形状をさらに高精細にすることができる。
また、マイクロレンズ55aの光出射側の端面形状をトーリック面とすることの他、2つの光通過端面の一方を球面とし、他方をシリンドリカル面としたマイクロレンズからマイクロレンズアレイを構成することも可能である。
【0186】
図19a、b、c、及びdは、マイクロレンズ55aの集光位置(焦点位置)近傍におけるビーム径を計算機によってシミュレーションした結果を示す図である。
また、比較のために、マイクロレンズが、曲率半径Rx=Ry=−0.1mmの球面形状である場合について、同様のシミュレーションを行った結果を、図20a、b、c及びdに示す。なお、各図におけるzの値は、マイクロレンズ55aのピント方向の評価位置を、マイクロレンズ55aのビーム出射面からの距離で示している。
また、前記シミュレーションに用いたマイクロレンズ55aの面形状は、下記計算式で計算される。
【0187】
【数1】

但し、前記計算式において、Cxは、x方向の曲率(=1/Rx)、Cyは、y方向の曲率(=1/Ry)、Xは、x方向に関するレンズ光軸Oからの距離、Yは、y方向に関するレンズ光軸Oからの距離、をそれぞれ示す。
【0188】
図19a〜dと図20a〜dとを比較すると明らかなように、本発明のカラーフィルタの製造方法ではマイクロレンズ55aを、y方向に平行断面内の焦点距離がx方向に平行断面内の焦点距離よりも小さいトーリックレンズとしたことにより、その集光位置近傍におけるビーム形状の歪みが抑制される。このため、歪みの無い、より高精細な画像をカラーフィルタ形成材料150に露光可能となる。
【0189】
なお、マイクロミラー62のx方向及びy方向に関する中央部の歪の大小関係が、上記と逆になっている場合は、x方向に平行断面内の焦点距離がy方向に平行断面内の焦点距離よりも小さいトーリックレンズからマイクロレンズを構成すれば、同様に、歪みの無い、より高精細な画像をカラーフィルタ形成材料150に露光可能となる。
【0190】
アパーチャアレイ59は、マイクロレンズアレイ55の集光位置近傍に配置される。アパーチャアレイ59に備えられた各アパーチャ59aには、対応するマイクロレンズ55aを経た光のみが入射する。従って、1のマイクロレンズ55aに対応する1のアパーチャ59aには、それと対応しない隣接のマイクロレンズ55aからの光が入射することが防止され、消光比を高めることが可能となる。
アパーチャ59aの径をある程度小さくすれば、マイクロレンズ55aの集光位置におけるビーム形状の歪みを抑制する効果が得られが、アパーチャアレイ59で遮断される光量がより多くなり、光利用効率が低下する。この場合に、マイクロレンズ55aを前記非球面形状とすることにより、光の遮断が防止され、光利用効率が高く保たれる。
【0191】
また、前記マイクロレンズアレイ55及びアパーチャアレイ59により、DMD50を構成するマイクロミラー62の反射面の歪みによる収差を補正しているが、DMD以外の空間光変調素子を用いる本発明のカラーフィルタの製造方法においても、その空間光変調素子の描素部の面に歪みが存在する場合は、本発明を適用してその歪みによる収差を補正し、ビーム形状に歪みが生じることを防止可能である。
【0192】
図13(A)に示すように、前記結像光学系は、レンズ480、482を備え、アパーチャアレイ59を通過した光は、該結像光学系により被露光面56上に結像される。
【0193】
以上説明したとおり、前記パターン形成装置は、DMD50により反射されたレーザ光が、レンズ系の拡大レンズ454、458により数倍に拡大されて被露光面56に投影されるので、全体の画像領域が広くなる。このとき、マイクロレンズアレイ472及びアパーチャアレイ476が配置されていなければ、図13(B)に示すように、被露光面56に投影される各ビームスポットBSの1描素サイズ(スポットサイズ)が露光エリア468のサイズに応じて大きなものとなり、露光エリア468の鮮鋭度を表すMTF(Modulation Transfer Function)特性が低下する。
一方、前記パターン形成装置では、マイクロレンズアレイ472及びアパーチャアレイ476を備えているので、DMD50により反射されたレーザ光は、マイクロレンズアレイ472の各マイクロレンズによりDMD50の各描素部に対応して集光される。これにより、図13(C)に示すように、露光エリアが拡大された場合でも、各ビームスポットBSのスポットサイズを所望の大きさ(例えば、10μm×10μm)に縮小することが可能となり、MTF特性の低下を防止して、高精細な露光を行うことができる。
なお、露光エリア468が傾いているのは、描素間の隙間を無くす為に、DMD50を傾けて配置しているからである。
また、マイクロレンズの収差によるビームの太りがあっても、アパーチャアレイによって被露光面56上でのスポットサイズが一定の大きさになるようにビームを整形することができると共に、各描素に対応して設けられたアパーチャアレイを通過させることにより、隣接する描素間でのクロストークを防止することができる。
更に、光照射手段144に高輝度光源を使用することにより、レンズ458からマイクロレンズアレイ472の各マイクロレンズに入射する光束の角度が小さくなるので、隣接する描素の光束の一部が入射するのを防止することができる。即ち、高消光比を実現することができる。
【0194】
図22(A)及び(B)は、他のマイクロレンズアレイの正面形状及び側面形状を示す図である。
図22に示すとおり、他のマイクロレンズアレイとしては、各マイクロレンズに、マイクロミラー62の反射面の歪みによる収差を補正する屈折率分布を持たせたものである。
図示の通り、他のマイクロレンズ155aの外形形状は平行平板状である。なお、同図におけるx、y方向は、既述した通りである。
図23は、図22のマイクロレンズ155aによる上記x方向及びy方向に平行断面内におけるレーザ光Bの集光状態を示す概略図である。
図23に示すように、マイクロレンズ155aは、光軸Oから外方に向かって次第に増大する屈折率分布を有するものであり、同図においてマイクロレンズ155a内に示す破線は、その屈折率が光軸Oから所定の等ピッチで変化した位置を示している。図示の通り、x方向に平行断面内とy方向に平行断面内とを比較すると、後者の断面内の方がマイクロレンズ155aの屈折率変化の割合がより大であって、焦点距離がより短くなっている。このような屈折率分布型レンズから構成されるマイクロレンズアレイを用いても、前記マイクロレンズアレイ55を用いる場合と同様の効果を得ることが可能である。
なお、図17及び図18に示したマイクロレンズ55aにおいて、併せて、前記屈折率分布を与え、面形状と屈折率分布の双方によって、マイクロミラー62の反射面の歪みによる収差を補正することも可能である。
【0195】
本発明のカラーフィルタの製造方法では、公知の光学系の中から適宜選択したその他の光学系と併用してもよく、例えば、1対の組合せレンズからなる光量分布補正光学系などが挙げられる。
前記光量分布補正光学系は、光軸に近い中心部の光束幅に対する周辺部の光束幅の比が入射側に比べて出射側の方が小さくなるように各出射位置における光束幅を変化させて、光照射手段からの平行光束をDMDに照射するときに、被照射面での光量分布が略均一になるように補正する。以下、前記光量分布補正光学系について図面を参照しながら説明する。
【0196】
図24は、光量分布補正光学系による補正の概念を示す説明図である。
図24(A)に示すように、入射光束と出射光束とで、その全体の光束幅(全光束幅)H0、H1が同じである場合について説明する。なお、図24(A)において、符号51、52で示した部分は、前記光量分布補正光学系における入射面及び出射面を仮想的に示したものである。
前記光量分布補正光学系において、光軸Z1に近い中心部に入射した光束と、周辺部に入射した光束とのそれぞれの光束幅h0、h1が、同一であるものとする(h0=hl)。前記光量分布補正光学系は、入射側において同一の光束幅h0,h1であった光に対し、中心部の入射光束については、その光束幅h0を拡大し、逆に、周辺部の入射光束に対してはその光束幅h1を縮小するような作用を施す。即ち、中心部の出射光束の幅h10と、周辺部の出射光束の幅h11とについて、h11<h10となるようにする。光束幅の比率で表すと、出射側における中心部の光束幅に対する周辺部の光束幅の比「h11/h10」が、入射側における比(h1/h0=1)に比べて小さくなっている((h11/h10)<1)。
【0197】
このように光束幅を変化させることにより、通常では光量分布が大きくなっている中央部の光束を、光量の不足している周辺部へと生かすことができ、全体として光の利用効率を落とさずに、被照射面での光量分布が略均一化される。均一化の度合いは、例えば、有効領域内における光量ムラが30%以内、好ましくは20%以内となるようにする。
【0198】
前記光量分布補正光学系による作用、効果は、入射側と出射側とで、全体の光束幅を変える場合(図24(B),(C))においても同様である。
【0199】
図24(B)は、入射側の全体の光束幅H0を、幅H2に“縮小”して出射する場合(H0>H2)を示している。このような場合においても、前記光量分布補正光学系は、入射側において同一の光束幅h0、h1であった光を、出射側において、中央部の光束幅h10が周辺部に比べて大きくなり、逆に、周辺部の光束幅h11が中心部に比べて小さくなるようにする。光束の縮小率で考えると、中心部の入射光束に対する縮小率を周辺部に比べて小さくし、周辺部の入射光束に対する縮小率を中心部に比べて大きくするような作用を施している。この場合にも、中心部の光束幅に対する周辺部の光束幅の比「H11/H10」が、入射側における比(h1/h0=1)に比べて小さくなる((h11/h10)<1)。
【0200】
図24(C)は、入射側の全体の光束幅H0を、幅Η3に“拡大”して出射する場合(H0<H3)を示している。このような場合においても、前記光量分布補正光学系は、入射側において同一の光束幅h0、h1であった光を、出射側において、中央部の光束幅h10が周辺部に比べて大きくなり、逆に、周辺部の光束幅h11が中心部に比べて小さくなるようにする。光束の拡大率で考えると、中心部の入射光束に対する拡大率を周辺部に比べて大きくし、周辺部の入射光束に対する拡大率を中心部に比べて小さくするような作用を施している。この場合にも、中心部の光束幅に対する周辺部の光束幅の比「h11/h10」が、入射側における比(h1/h0=1)に比べて小さくなる((h11/h10)<1)。
【0201】
このように、前記光量分布補正光学系は、各出射位置における光束幅を変化させ、光軸Z1に近い中心部の光束幅に対する周辺部の光束幅の比を入射側に比べて出射側の方が小さくなるようにしたので、入射側において同一の光束幅であった光が、出射側においては、中央部の光束幅が周辺部に比べて大きくなり、周辺部の光束幅は中心部に比べて小さくなる。これにより、中央部の光束を周辺部へと生かすことができ、光学系全体としての光の利用効率を落とさずに、光量分布の略均一化された光束断面を形成することができる。
【0202】
次に、前記光量分布補正光学系として使用する1対の組合せレンズの具体的なレンズデータの1例を示す。この例では、前記光照射手段がレーザアレイ光源である場合のように、出射光束の断面での光量分布がガウス分布である場合のレンズデータを示す。なお、シングルモード光ファイバの入射端に1個の半導体レーザを接続した場合には、光ファイバからの射出光束の光量分布がガウス分布になる。本発明のカラーフィルタの製造方法では、このような場合の適用も可能である。また、マルチモード光ファイバのコア径を小さくしてシングルモード光ファイバの構成に近付ける等により光軸に近い中心部の光量が周辺部の光量よりも大きい場合にも適用可能である。
下記表1に基本レンズデータを示す。
【0203】
【表1】

【0204】
表1から分かるように、1対の組合せレンズは、回転対称の2つの非球面レンズから構成されている。光入射側に配置された第1のレンズの光入射側の面を第1面、光出射側の面を第2面とすると、第1面は非球面形状である。また、光出射側に配置された第2のレンズの光入射側の面を第3面、光出射側の面を第4面とすると、第4面が非球面形状である。
【0205】
表1において、面番号Siはi番目(i=1〜4)の面の番号を示し、曲率半径riはi番目の面の曲率半径を示し、面間隔diはi番目の面とi+1番目の面との光軸上の面間隔を示す。面間隔di値の単位はミリメートル(mm)である。屈折率Niはi番目の面を備えた光学要素の波長405nmに対する屈折率の値を示す。
下記表2に、第1面及び第4面の非球面データを示す。
【0206】
【表2】

【0207】
上記の非球面データは、非球面形状を表す下記式(A)における係数で表される。
【0208】
【数2】

【0209】
上記式(A)において各係数を以下の通り定義する。
Z:光軸から高さρの位置にある非球面上の点から、非球面の頂点の接平面(光軸に垂直な平面)に下ろした垂線の長さ(mm)
ρ:光軸からの距離(mm)
K:円錐係数
C:近軸曲率(1/r、r:近軸曲率半径)
ai:第i次(i=3〜10)の非球面係数
表2に示した数値において、記号“E”は、その次に続く数値が10を底とした“べき指数″であることを示し、その10を底とした指数関数で表される数値が“E”の前の数値に乗算されることを示す。例えば、「1.0E−02」であれば、「1.0×10−2」であることを示す。
【0210】
図26は、前記表1及び表2に示す1対の組合せレンズによって得られる照明光の光量分布を示す。ここで、横軸は光軸からの座標を示し、縦軸は光量比(%)を示す。なお、比較のために、図25に、補正を行わなかった場合の照明光の光量分布(ガウス分布)を示す。
図25及び図26に示すように、光量分布補正光学系で補正を行うことにより、補正を行わなかった場合と比べて、略均一化された光量分布が得られている。これにより、光の利用効率を落とさずに、均一なレーザ光でムラなく露光を行うことができる。
【0211】
次に、光照射手段としてのファイバアレイ光源66を説明する。
図27a(A)は、ファイバアレイ光源の構成を示す斜視図であり、図27a(B)は、(A)の部分拡大図であり、図27a(C)及び(D)は、レーザ出射部における発光点の配列を示す平面図である。また、図27bは、ファイバアレイ光源のレーザ出射部における発光点の配列を示す正面図である。
【0212】
図27aに示すように、ファイバアレイ光源66は、複数(例えば、14個)のレーザモジュール64を備えており、各レーザモジュール64には、マルチモード光ファイバ30の一端が結合されている。マルチモード光ファイバ30の他端には、コア径がマルチモード光ファイバ30と同一でかつクラッド径がマルチモード光ファイバ30より小さい光ファイバ31が結合されている。図27bに詳しく示すように、マルチモード光ファイバ31の光ファイバ30と反対側の端部は副走査方向と直交する主走査方向に沿って7個並べられ、それが2列に配列されてレーザ出射部68が構成されている。
【0213】
図27bに示すように、レーザ出射部68は、表面が平坦な2枚の支持板65に挟み込まれて固定されている。また、マルチモード光ファイバ31の光出射端面には、その保護のために、ガラス等の透明な保護板が配置されるのが望ましい。マルチモード光ファイバ31の光出射端面は、光密度が高いため集塵し易く劣化し易いが、上述のような保護板を配置することにより、端面への塵埃の付着を防止し、また劣化を遅らせることができる。
【0214】
また、クラッド径が小さい光ファイバ31の出射端を隙間無く1列に配列するために、クラッド径が大きい部分で隣接する2本のマルチモード光ファイバ30の間にマルチモード光ファイバ30を積み重ね、積み重ねられたマルチモード光ファイバ30に結合された光ファイバ31の出射端が、クラッド径が大きい部分で隣接する2本のマルチモード光ファイバ30に結合された光ファイバ31の2つの出射端の間に挟まれるように配列されている。
【0215】
このような光ファイバは、図28に示すように、クラッド径が大きいマルチモード光ファイバ30のレーザ光出射側の先端部分に、長さ1〜30cmのクラッド径が小さい光ファイバ31を同軸的に結合することにより得ることができる。2本の光ファイバは、光ファイバ31の入射端面が、マルチモード光ファイバ30の出射端面に、両光ファイバの中心軸が一致するように融着されて結合されている。上述した通り、光ファイバ31のコア31aの径は、マルチモード光ファイバ30のコア30aの径と同じ大きさである。
【0216】
また、長さが短くクラッド径が大きい光ファイバにクラッド径が小さい光ファイバを融着させた短尺光ファイバを、フェルールや光コネクタ等を介してマルチモード光ファイバ30の出射端に結合してもよい。コネクタ等を用いて着脱可能に結合することで、クラッド径が小さい光ファイバが破損した場合等に先端部分の交換が容易になり、露光ヘッドのメンテナンスに要するコストを低減できる。なお、以下では、光ファイバ31を、マルチモード光ファイバ30の出射端部と称する場合がある。
【0217】
マルチモード光ファイバ30及び光ファイバ31としては、ステップインデックス型光ファイバ、グレーテッドインデックス型光ファイバ、及び複合型光ファイバの何れでもよい。例えば、三菱電線工業株式会社製のステップインデックス型光ファイバを用いることができる。本実施の形態では、マルチモード光ファイバ30及び光ファイバ31は、ステップインデックス型光ファイバであり、マルチモード光ファイバ30は、クラッド径=125μm、コア径=50μm、NA=0.2、入射端面コートの透過率=99.5%以上であり、光ファイバ31は、クラッド径=60μm、コア径=50μm、NA=0.2である。
【0218】
一般に、赤外領域のレーザ光では、光ファイバのクラッド径を小さくすると伝搬損失が増加する。このため、レーザ光の波長帯域に応じて好適なクラッド径が決定されている。しかしながら、波長が短いほど伝搬損失は少なくなり、GaN系半導体レーザから出射された波長405nmのレーザ光では、クラッドの厚み{(クラッド径−コア径)/2}を800nmの波長帯域の赤外光を伝搬させる場合の1/2程度、通信用の1.5μmの波長帯域の赤外光を伝搬させる場合の約1/4にしても、伝搬損失は殆ど増加しない。従って、クラッド径を60μmと小さくすることができる。
【0219】
但し、光ファイバ31のクラッド径は60μmには限定されない。従来のファイバアレイ光源に使用されている光ファイバのクラッド径は125μmであるが、クラッド径が小さくなるほど焦点深度がより深くなるので、マルチモード光ファイバのクラッド径は80μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましく、40μm以下が更に好ましい。一方、コア径は少なくとも3〜4μm必要であることから、光ファイバ31のクラッド径は10μm以上が好ましい。
【0220】
レーザモジュール64は、図29に示す合波レーザ光源(ファイバアレイ光源)によって構成されている。この合波レーザ光源は、ヒートブロック10上に配列固定された複数(例えば、7個)のチップ状の横マルチモード又はシングルモードのGaN系半導体レーザLD1,LD2,LD3,LD4,LD5,LD6,及びLD7と、GaN系半導体レーザLD1〜LD7の各々に対応して設けられたコリメータレンズ11,12,13,14,15,16,及び17と、1つの集光レンズ20と、1本のマルチモード光ファイバ30と、から構成されている。なお、半導体レーザの個数は7個には限定されない。例えば、クラッド径=60μm、コア径=50μm、NA=0.2のマルチモード光ファイバには、20個もの半導体レーザ光を入射することが可能であり、露光ヘッドの必要光量を実現して、かつ光ファイバ本数をより減らすことができる。
【0221】
GaN系半導体レーザLD1〜LD7は、発振波長が総て共通(例えば、405nm)であり、最大出力も総て共通(例えば、マルチモードレーザでは100mW、シングルモードレーザでは30mW)である。なお、GaN系半導体レーザLD1〜LD7としては、350nm〜450nmの波長範囲で、上記の405nm以外の発振波長を備えるレーザを用いてもよい。
【0222】
前記合波レーザ光源は、図30及び図31に示すように、他の光学要素と共に、上方が開口した箱状のパッケージ40内に収納されている。パッケージ40は、その開口を閉じるように作成されたパッケージ蓋41を備えており、脱気処理後に封止ガスを導入し、パッケージ40の開口をパッケージ蓋41で閉じることにより、パッケージ40とパッケージ蓋41とにより形成される閉空間(封止空間)内に上記合波レーザ光源が気密封止されている。
【0223】
パッケージ40の底面にはベース板42が固定されており、このベース板42の上面には、前記ヒートブロック10と、集光レンズ20を保持する集光レンズホルダー45と、マルチモード光ファイバ30の入射端部を保持するファイバホルダー46とが取り付けられている。マルチモード光ファイバ30の出射端部は、パッケージ40の壁面に形成された開口からパッケージ外に引き出されている。
【0224】
また、ヒートブロック10の側面にはコリメータレンズホルダー44が取り付けられており、コリメータレンズ11〜17が保持されている。パッケージ40の横壁面には開口が形成され、この開口を通してGaN系半導体レーザLD1〜LD7に駆動電流を供給する配線47がパッケージ外に引き出されている。
【0225】
なお、図31においては、図の煩雑化を避けるために、複数のGaN系半導体レーザのうちGaN系半導体レーザLD7にのみ番号を付し、複数のコリメータレンズのうちコリメータレンズ17にのみ番号を付している。
【0226】
図32は、前記コリメータレンズ11〜17の取り付け部分の正面形状を示すものである。コリメータレンズ11〜17の各々は、非球面を備えた円形レンズの光軸を含む領域を平行平面で細長く切り取った形状に形成されている。この細長形状のコリメータレンズは、例えば、樹脂又は光学ガラスをモールド成形することによって形成することができる。コリメータレンズ11〜17は、長さ方向がGaN系半導体レーザLD1〜LD7の発光点の配列方向(図32の左右方向)と直交するように、上記発光点の配列方向に密接配置されている。
【0227】
一方、GaN系半導体レーザLD1〜LD7としては、発光幅が2μmの活性層を備え、活性層と平行方向、直角な方向の拡がり角が各々例えば10°、30°の状態で各々レーザビームB1〜B7を発するレーザが用いられている。これらGaN系半導体レーザLD1〜LD7は、活性層と平行方向に発光点が1列に並ぶように配設されている。
【0228】
各発光点から発せられたレーザビームB1〜B7は、上述のように細長形状の各コリメータレンズ11〜17に対して、拡がり角度が大きい方向が長さ方向と一致し、拡がり角度が小さい方向が幅方向(長さ方向と直交する方向)と一致する状態で入射することになる。つまり、各コリメータレンズ11〜17の幅が1.1mm、長さが4.6mmであり、それらに入射するレーザビームB1〜B7の水平方向、垂直方向のビーム径は各々0.9mm、2.6mmである。また、コリメータレンズ11〜17の各々は、焦点距離f1=3mm、NA=0.6、レンズ配置ピッチ=1.25mmである。
【0229】
集光レンズ20は、非球面を備えた円形レンズの光軸を含む領域を平行平面で細長く切り取って、コリメータレンズ11〜17の配列方向、つまり水平方向に長く、それと直角な方向に短い形状に形成されている。この集光レンズ20は、焦点距離f=23mm、NA=0.2である。この集光レンズ20も、例えば、樹脂又は光学ガラスをモールド成形することにより形成される。
【0230】
前記ファイバアレイ光源は、DMDを照明する光照射手段に、合波レーザ光源の光ファイバの出射端部をアレイ状に配列した高輝度のファイバアレイ光源を用いているので、高出力でかつ深い焦点深度を備えたパターン形成装置を実現することができる。更に、各ファイバアレイ光源の出力が大きくなることで、所望の出力を得るために必要なファイバアレイ光源数が少なくなり、パターン形成装置の低コスト化が図られる。
また、光ファイバの出射端のクラッド径を入射端のクラッド径よりも小さくしているので、発光部径がより小さくなり、ファイバアレイ光源の高輝度化が図られる。これにより、より深い焦点深度を備えたパターン形成装置を実現することができる。例えば、ビーム径1μm以下、解像度0.1μm以下の超高解像度露光の場合にも、深い焦点深度を得ることができ、高速かつ高精細な露光が可能となる。したがって、高解像度が必要とされる薄膜トランジスタ(TFT)の露光工程に好適である。
【0231】
前記光照射手段としては、前記合波レーザ光源を複数備えたファイバアレイ光源に限定されず、例えば、1個の発光点を有する単一の半導体レーザから入射されたレーザ光を出射する1本の光ファイバを備えたファイバ光源をアレイ化したファイバアレイ光源を用いることができる。
【0232】
複数の発光点を備えた光照射手段としては、例えば、図33に示すように、ヒートブロック100上に、複数(例えば、7個)のチップ状の半導体レーザLD1〜LD7を配列したレーザアレイを用いることができる。また、図34(A)に示す、複数(例えば、5個)の発光点110aが所定方向に配列されたチップ状のマルチキャビティレーザ110を用いることも可能である。マルチキャビティレーザ110は、チップ状の半導体レーザを配列する場合と比べ、発光点を位置精度よく配列できるので、各発光点から出射されるレーザビームを合波し易い。但し、発光点が多くなるとレーザ製造時にマルチキャビティレーザ110に撓みが発生し易くなるため、発光点110aの個数は5個以下とするのが好ましい。
【0233】
前記光照射手段としては、このマルチキャビティレーザ110や、図34(B)に示すように、ヒートブロック100上に、複数のマルチキヤビティレーザ110が各チップの発光点110aの配列方向と同じ方向に配列されたマルチキャビティレーザアレイを、レーザ光源として用いることができる。
【0234】
また、合波レーザ光源は、複数のチップ状の半導体レーザから出射されたレーザ光を合波するものには限定されない。
例えば、図21に示すように、複数(例えば、3個)の発光点110aを有するチップ状のマルチキャビティレーザ110を備えた合波レーザ光源を用いることができる。この合波レーザ光源は、マルチキャビティレーザ110と、1本のマルチモード光ファイバ130と、集光レンズ120と、を備えて構成されている。マルチキャビティレーザ110は、例えば、発振波長が405nmのGaN系レーザダイオードで構成することができる。
【0235】
前記構成では、マルチキャビティレーザ110の複数の発光点110aの各々から出射したレーザビームBの各々は、集光レンズ120によって集光され、マルチモード光ファイバ130のコア130aに入射する。コア130aに入射したレーザ光は、光ファイバ内を伝搬し、1本に合波されて出射する。
【0236】
マルチキャビティレーザ110の複数の発光点110aを、上記マルチモード光ファイバ130のコア径と略等しい幅内に並設すると共に、集光レンズ120として、マルチモード光ファイバ130のコア径と略等しい焦点距離の凸レンズや、マルチキャビティレーザ110からの出射ビームをその活性層に垂直な面内のみでコリメートするロッドレンズを用いることにより、レーザビームBのマルチモード光ファイバ130への結合効率を上げることができる。
【0237】
また、図35に示すように、複数(例えば、3個)の発光点を備えたマルチキャビティレーザ110を用い、ヒートブロック111上に複数(例えば、9個)のマルチキャビティレーザ110が互いに等間隔で配列されたレーザアレイ140を備えた合波レーザ光源を用いることができる。複数のマルチキヤビティレーザ110は、各チップの発光点110aの配列方向と同じ方向に配列されて固定されている。
【0238】
この合波レーザ光源は、レーザアレイ140と、各マルチキヤピティレーザ110に対応させて配置した複数のレンズアレイ114と、レーザアレイ140と複数のレンズアレイ114との間に配置された1本のロッドレンズ113と、1本のマルチモード光ファイバ130と、集光レンズ120と、を備えて構成されている。レンズアレイ114は、マルチキヤピティレーザ110の発光点に対応した複数のマイクロレンズを備えている。
【0239】
上記の構成では、複数のマルチキヤビティレーザ110の複数の発光点110aの各々から出射したレーザビームBの各々は、ロッドレンズ113により所定方向に集光された後、レンズアレイ114の各マイクロレンズにより平行光化される。平行光化されたレーザビームLは、集光レンズ120によって集光され、マルチモード光フアイバ130のコア130aに入射する。コア130aに入射したレーザ光は、光フアイバ内を伝搬し、1本に合波されて出射する。
【0240】
更に、他の合波レーザ光源としては、図36(A)及び(B)に示すように、略矩形状のヒートブロック180上に光軸方向の断面がL字状のヒートブロック182が搭載され、2つのヒートブロック間に収納空間が形成されている。L字状のヒートブロック182の上面には、複数の発光点(例えば、5個)がアレイ状に配列された複数(例えば、2個)のマルチキャビティレーザ110が、各チップの発光点110aの配列方向と同じ方向に等間隔で配列されて固定されている。
【0241】
略矩形状のヒートブロック180には凹部が形成されており、ヒートブロック180の空間側上面には、複数の発光点(例えば、5個)がアレイ状に配列された複数(例えば、2個)のマルチキャビティレーザ110が、その発光点がヒートブロック182の上面に配置されたレーザチップの発光点と同じ鉛直面上に位置するように配置されている。
【0242】
マルチキャビティレーザ110のレーザ光出射側には、各チップの発光点110aに対応してコリメートレンズが配列されたコリメートレンズアレイ184が配置されている。コリメートレンズアレイ184は、各コリメートレンズの長さ方向とレーザビームの拡がり角が大きい方向(速軸方向)とが一致し、各コリメートレンズの幅方向が拡がり角が小さい方向(遅軸方向)と一致するように配置されている。このように、コリメートレンズをアレイ化して一体化することで、レーザ光の空間利用効率が向上し合波レーザ光源の高出力化が図られると共に、部品点数が減少し低コスト化することができる。
【0243】
また、コリメートレンズアレイ184のレーザ光出射側には、1本のマルチモード光ファイバ130と、このマルチモード光ファイバ130の入射端にレーザビームを集光して結合する集光レンズ120と、が配置されている。
【0244】
前記構成では、レーザブロック180、182上に配置された複数のマルチキヤビティレーザ110の複数の発光点110aの各々から出射したレーザビームBの各々は、コリメートレンズアレイ184により平行光化され、集光レンズ120によって集光されて、マルチモード光フアイバ130のコア130aに入射する。コア130aに入射したレーザ光は、光フアイバ内を伝搬し、1本に合波されて出射する。
【0245】
前記合波レーザ光源は、上記の通り、マルチキャビティレーザの多段配置とコリメートレンズのアレイ化とにより、特に高出力化を図ることができる。この合波レーザ光源を用いることにより、より高輝度なファイバアレイ光源やバンドルファイバ光源を構成することができるので、本発明のパターン形成装置のレーザ光源を構成するファイバ光源として特に好適である。
【0246】
なお、前記各合波レーザ光源をケーシング内に収納し、マルチモード光ファイバ130の出射端部をそのケーシングから引き出したレーザモジュールを構成することができる。
【0247】
また、合波レーザ光源のマルチモード光ファイバの出射端に、コア径がマルチモード光ファイバと同一でかつクラッド径がマルチモード光ファイバより小さい他の光ファイバを結合してファイバアレイ光源の高輝度化を図る例について説明したが、例えば、クラッド径が125μm、80μm、60μm等のマルチモード光ファイバを、出射端に他の光ファイバを結合せずに使用してもよい。
【0248】
スキャナ162の各露光ヘッド166において、ファイバアレイ光源66の合波レーザ光源を構成するGaN系半導体レーザLD1〜LD7の各々から発散光状態で出射したレーザビームB1,B2,B3,B4,B5,B6,及びB7の各々は、対応するコリメータレンズ11〜17によって平行光化される。平行光化されたレーザビームB1〜B7は、集光レンズ20によって集光され、マルチモード光ファイバ30のコア30aの入射端面に収束する。
【0249】
集光光学系は、コリメータレンズ11〜17及び集光レンズ20によって構成される。また、集光光学系とマルチモード光ファイバ30とによって合波光学系が構成される。
集光レンズ20によって上述のように集光されたレーザビームB1〜B7が、マルチモード光ファイバ30のコア30aに入射して光ファイバ内を伝搬し、1本のレーザビームBに合波されてマルチモード光ファイバ30の出射端部に結合された光ファイバ31から出射する。
【0250】
各レーザモジュールにおいて、レーザビームB1〜B7のマルチモード光ファイバ30への結合効率が0.85で、GaN系半導体レーザLD1〜LD7の各出力が30mWの場合には、アレイ状に配列された光ファイバ31の各々について、出力180mW(=30mW×0.85×7)の合波レーザビームBを得ることができる。従って、6本の光ファイバ31がアレイ状に配列されたレーザ出射部68での出力は約1W(=180mW×6)である。
【0251】
ファイバアレイ光源66のレーザ出射部68には、高輝度の発光点が主走査方向に沿って一列に配列されている。単一の半導体レーザからのレーザ光を1本の光ファイバに結合させる従来のファイバ光源は低出力であるため、多数列配列しなければ所望の出力を得ることができなかったが、前記合波レーザ光源は高出力であるため、少数列、例えば1列でも所望の出力を得ることができる。
【0252】
例えば、半導体レーザと光ファイバを1対1で結合させた従来のファイバ光源では、通常、半導体レーザとしては出力30mW(ミリワット)程度のレーザが使用され、光ファイバとしてはコア径50μm、クラッド径125μm、NA(開口数)0.2のマルチモード光ファイバが使用されているので、約1W(ワット)の出力を得ようとすれば、マルチモード光ファイバを48本(8×6)束ねなければならず、発光領域の面積は0.62mm(0.675mm×0.925mm)であるから、レーザ出射部68での輝度は1.6×10(W/m)、光ファイバ1本当りの輝度は3.2×10(W/m)である。
【0253】
これに対し、前記光照射手段が合波レーザを照射可能な手段である場合には、マルチモード光ファイバ6本で約1Wの出力を得ることができ、レーザ出射部68での発光領域の面積は0.0081mm(0.325mm×0.025mm)であるから、レーザ出射部68での輝度は123×10(W/m)となり、従来に比べ約80倍の高輝度化を図ることができる。また、光ファイバ1本当りの輝度は90×10(W/m)であり、従来に比べ約28倍の高輝度化を図ることができる。
【0254】
ここで、図37(A)及び(B)を参照して、従来の露光ヘッドと本実施の形態の露光ヘッドとの焦点深度の違いについて説明する。従来の露光ヘッドのバンドル状ファイバ光源の発光領域の副走査方向の径は0.675mmであり、露光ヘッドのファイバアレイ光源の発光領域の副走査方向の径は0.025mmである。図37(A)に示すように、従来の露光ヘッドでは、光照射手段(バンドル状ファイバ光源)1の発光領域が大きいので、DMD3へ入射する光束の角度が大きくなり、結果として走査面5へ入射する光束の角度が大きくなる。このため、集光方向(ピント方向のずれ)に対してビーム径が太りやすい。
【0255】
一方、図37(B)に示すように、本発明のパターン形成装置における露光ヘッドでは、ファイバアレイ光源66の発光領域の副走査方向の径が小さいので、レンズ系67を通過してDMD50へ入射する光束の角度が小さくなり、結果として走査面56へ入射する光束の角度が小さくなる。即ち、焦点深度が深くなる。この例では、発光領域の副走査方向の径は従来の約30倍になっており、略回折限界に相当する焦点深度を得ることができる。従って、微小スポットの露光に好適である。この焦点深度への効果は、露光ヘッドの必要光量が大きいほど顕著であり、有効である。この例では、露光面に投影された1描素サイズは10μm×10μmである。なお、DMDは反射型の空間光変調素子であるが、図37(A)及び(B)は、光学的な関係を説明するために展開図とした。
【0256】
<現像工程>
前記現像工程は、前記露光工程により前記感光層を露光し、該感光層の露光した領域を硬化させた後、未硬化領域を除去することにより現像し、永久パターンを形成する工程である。
【0257】
前記未硬化領域の除去方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、現像液を用いて除去する方法などが挙げられる。
【0258】
前記現像液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物若しくは炭酸塩、炭酸水素塩、アンモニア水、4級アンモニウム塩の水溶液などが好適に挙げられる。これらの中でも、炭酸ナトリウム水溶液が特に好ましい。
【0259】
前記現像液は、界面活性剤、消泡剤、有機塩基(例えば、ベンジルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、ジエチレントリアミン、トリエチレンペンタミン、モルホリン、トリエタノールアミン等)や、現像を促進させるため有機溶媒(例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、ラクトン類等)などと併用してもよい。また、前記現像液は、水又はアルカリ水溶液と有機溶媒を混合した水系現像液であってもよく、有機溶媒単独であってもよい。
【0260】
<硬化処理工程>
前記硬化処理工程は、前記現像工程が行われた後、形成された永久パターンにおける感光層に対して硬化処理を行う工程である。
【0261】
前記硬化処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、全面露光処理、全面加熱処理などが好適に挙げられる。
【0262】
前記全面露光処理の方法としては、例えば、前記現像工程の後に、前記永久パターンが形成された前記積層体上の全面を露光する方法が挙げられる。該全面露光により、前記感光層を形成する感光性フィルム中の樹脂の硬化が促進され、前記永久パターンの表面が硬化される。
前記全面露光を行う装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、超高圧水銀灯などのUV露光機が好適に挙げられる。
【0263】
前記全面加熱処理の方法としては、前記現像工程の後に、前記永久パターンが形成された前記積層体上の全面を加熱する方法が挙げられる。該全面加熱により、前記永久パターンの表面の膜強度が高められる。
前記全面加熱における加熱温度としては、120〜250℃が好ましく、120〜200℃がより好ましい。該加熱温度が120℃未満であると、加熱処理による膜強度の向上が得られないことがあり、250℃を超えると、前記感光性フィルム中の樹脂の分解が生じ、膜質が弱く脆くなることがある。
前記全面加熱における加熱時間としては、10〜120分間が好ましく、15〜60分間がより好ましい。
前記全面加熱を行う装置としては、特に制限はなく、公知の装置の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ドライオーブン、ホットプレート、IRヒーターなどが挙げられる。
【0264】
なお、前記基材が多層配線基板などのプリント配線板である場合には、該プリント配線板上に本発明の永久パターンを形成し、更に、以下のように半田付けを行うことができる。
即ち、前記現像工程により、前記永久パターンである硬化層が形成され、前記プリント配線板の表面に金属層が露出される。該プリント配線板の表面に露出した金属層の部位に対して金メッキを行った後、半田付けを行う。そして、半田付けを行った部位に、半導体や部品などを実装する。このとき、前記硬化層による永久パターンが、保護膜あるいは絶縁膜(層間絶縁膜)としての機能を発揮し、外部からの衝撃や隣同士の電極の導通が防止される。
【0265】
本発明の永久パターン形成方法においては、保護膜、層間絶縁膜、及びソルダーレジストパターンの少なくともいずれかを形成するのが好ましい。前記永久パターン形成方法により形成される永久パターンが、前記保護膜、前記層間絶縁膜、及びソルダーレジストパターンであると、配線を外部からの衝撃や曲げから保護することができ、特に、前記層間絶縁膜である場合には、例えば、多層配線基板やビルドアップ配線基板などへの半導体や部品の高密度実装に有用である。
【0266】
本発明の永久パターン形成方法は、感光層上に結像させる像の歪みを抑制することにより、永久パターンを高精細に、かつ、効率よく形成可能であるため、高精細な露光が必要とされる各種パターンの形成などに好適に使用することができ、特に高精細な永久パターンの形成に好適に使用することができる。
【実施例】
【0267】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0268】
(実施例1)
−感光性組成物の調製−
下記組成に基づいて、感光性組成物(溶液)を調製した。
・バインダーとしての下記構造式(A)で表される化合物・・・38質量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート・・・15質量部
・熱架橋剤としての下記構造式(B)で表される化合物・・・11質量部
・IRGACURE369(チバ・スペシャリティ・ケミカル社製)・・・6質量部
・NBCA(黒金化成社製)・・・0.3質量部
・ハイドロキノンモノメチルエーテル・・・0.056質量部
・硫酸バリウム分散液・・・85質量部
・F780F(大日本インキ化学工業株式会社製)・・・0.01質量部
・メチルエチルケトン・・・49質量部
なお、上記硫酸バリウム分散液は、硫酸バリウム(堺化学工業社製、B30)30質量部と、ジシアンジアミド0.42質量部、2MA−OK**(四国化成工業(株)製)0.56質量部、下記構造式(A)で表される化合物 26質量部、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート50質量部と、を予め混合した後、モーターミルM−200(アイガー社製)で、直径1.0mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sにて3時間分散して調製した。
*NBCA:10−n−ブチル−2−クロロアクリドン
**2MA−OK:2,4−ジアミノ−6−{2’−メチルイミダゾリル−(1’)}−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物
【0269】
【化21】

ただし、nは6〜7を表す。
【化22】

【0270】
<有機溶媒の沸点の測定>
本発明における有機溶媒の沸点は、有機合成研究会編、“新版溶剤ポケットブック” 第III編データ編、p.197〜819、オーム社(1994)に記載のデータを引用した。
【0271】
−感光性フィルムの作製−
得られた感光性組成物溶液を、前記支持体としての厚み16μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(東レ社製、16FB50)上に、塗布し、表3に示す乾燥条件で、熱風対流式乾燥機(株式会社カトー製、トランスジャンプオーブンTRO−22)を用いて乾燥させて、膜厚30μmの感光層を形成した。次いで、該感光層の上に、前記保護フィルムとして20μm厚のポリプロピレンフィルムをラミネートで積層し、感光性フィルムを製造した。
【0272】
<タック性の評価>
作製した感光性フィルムにおける感光層の表面のタック性について下記基準に基づいて評価した。結果を表3に示す。
〔評価基準〕
○:感光層の表面のタック性が良好であり、基板への追従やラミネートが良好であった。
△:感光層の表面のタック性にやや強弱があったが、基板への追従やラミネートに問題はなかった。
×:感光層の表面のタック性が弱すぎて基板に追従しにくかった。または、感光層の表面のタック性が強すぎてラミネートしにくかった。
【0273】
−永久パターンの形成−
−−積層体の調製−−
次に、前記基材として、配線形成済みの銅張積層板(スルーホールなし、銅厚み12μm)の表面に化学研磨処理を施して調製した。該銅張積層板上に、前記感光性フィルムの感光層が前記銅張積層板に接するようにして前記感光性フィルムにおける保護フィルムを剥がしながら、真空ラミネーター(名機製作所製、MVLP500)を用いて積層させ、前記銅張積層板と、前記感光層と、前記ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)とがこの順に積層された積層体を調製した。
圧着条件は、圧着温度90℃、圧着圧力0.4MPa、ラミネート速度1m/分とした。
【0274】
−−露光工程−−
前記調製した積層体における感光層に対し、ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)側から、以下に説明するパターン形成装置を用いて、波長が405nmのレーザ光を、直径の異なる穴部が形成されるパターンが得られるように照射して露光し、前記感光層の一部の領域を硬化させた。
【0275】
[パターン形成装置]
前記光照射手段として図27〜32に示す合波レーザ光源と、前記光変調手段として図4に示す主走査方向にマイクロミラーが1024個配列されたマイクロミラー列が、副走査方向に768組配列された内、1024個×256列のみを駆動するように制御したDMD50と、図13に示した一方の面がトーリック面であるマイクロレンズ474をアレイ状に配列したマイクロレンズアレイ472及び該マイクロレンズアレイを通した光を前記感光層に結像する光学系480、482とを有するパターン形成装置を用いた。
【0276】
また、前記マイクロレンズにおけるトーリック面は以下に説明するものを用いた。
まず、DMD50の前記描素部としてのマイクロレンズ474の出射面における歪みを補正するため、該出射面の歪みを測定した。結果を図14に示した。図14においては、反射面の同じ高さ位置を等高線で結んで示してあり、等高線のピッチは5nmである。なお、同図に示すx方向及びy方向は、マイクロミラー62の2つ対角線方向であり、マイクロミラー62はy方向に延びる回転軸を中心として回転する。また、図15の(A)及び(B)にはそれぞれ、上記x方向、y方向に沿ったマイクロミラー62の反射面の高さ位置変位を示した。
【0277】
図14及び図15に示した通り、マイクロミラー62の反射面には歪みが存在し、そして特にミラー中央部に注目してみると、1つの対角線方向(y方向)の歪みが、別の対角線方向(x方向)の歪みよりも大きくなっていることが判る。このため、このままではマイクロレンズアレイ55のマイクロレンズ55aで集光されたレーザ光Bの集光位置における形状が歪んでしまうことが判る。
【0278】
図16の(A)及び(B)には、マイクロレンズアレイ55全体の正面形状及び側面形状をそれぞれ詳しく示した。これらの図には、マイクロレンズアレイ55の各部の寸法も記入してあり、それらの単位はmmである。先に図4を参照して説明したようにDMD50の1024個×256列のマイクロミラー62が駆動されるものであり、それに対応させてマイクロレンズアレイ55は、横方向に1024個並んだマイクロレンズ55aの列を縦方向に256列並設して構成されている。なお、同図(A)では、マイクロレンズアレイ55の並び順を横方向についてはjで、縦方向についてはkで示している。
【0279】
また、図17の(A)及び(B)には、マイクロレンズアレイ55における1つのマイクロレンズ55aの正面形状及び側面形状をそれぞれ示した。なお、同図(A)には、マイクロレンズ55aの等高線を併せて示してある。各マイクロレンズ55aの光出射側の端面は、マイクロミラー62の反射面の歪みによる収差を補正する非球面形状とされている。より具体的には、マイクロレンズ55aはトーリックレンズとされており、前記x方向に光学的に対応する方向の曲率半径Rx=−0.125mm、前記y方向に対応する方向の曲率半径Ry=−0.1mmである。
【0280】
したがって、前記x方向及びy方向に平行断面内におけるレーザ光Bの集光状態は、概略、それぞれ図18の(A)及び(B)に示す通りとなる。つまり、x方向に平行断面内とy方向に平行断面内とを比較すると、後者の断面内の方がマイクロレンズ55aの曲率半径がより小であって、焦点距離がより短くなっていることが判る。
【0281】
なお、マイクロレンズ55aを前記形状とした場合の、該マイクロレンズ55aの集光位置(焦点位置)近傍におけるビーム径を計算機によってシミュレーションした結果を図19a、b、c、及びdに示す。また比較のために、マイクロレンズ55aが曲率半径Rx=Ry=−0.1mmの球面形状である場合について、同様のシミュレーションを行った結果を図20a、b、c及びdに示す。なお、各図におけるzの値は、マイクロレンズ55aのピント方向の評価位置を、マイクロレンズ55aのビーム出射面からの距離で示している。
【0282】
また、前記シミュレーションに用いたマイクロレンズ55aの面形状は、下記計算式で計算される。
【数3】

【0283】
ただし、前記計算式において、Cxは、x方向の曲率(=1/Rx)を意味し、Cyは、y方向の曲率(=1/Ry)を意味し、Xは、x方向に関するレンズ光軸Oからの距離を意味し、Yは、y方向に関するレンズ光軸Oからの距離を意味する。
【0284】
図19a〜dと図20a〜dとを比較すると明らかなように、マイクロレンズ55aを、y方向に平行断面内の焦点距離がx方向に平行断面内の焦点距離よりも小さいトーリックレンズとしたことにより、その集光位置近傍におけるビーム形状の歪みが抑制される。この結果、歪みの無い、より高精細なパターンを感光層150に露光可能となる。また、図19a〜dに示す本実施形態の方が、ビーム径の小さい領域がより広い、すなわち焦点深度がより大であることが判る。
【0285】
また、マイクロレンズアレイ55の集光位置近傍に配置されたアパーチャアレイ59は、その各アパーチャ59aに、それと対応するマイクロレンズ55aを経た光のみが入射するように配置されたものである。すなわち、このアパーチャアレイ59が設けられていることにより、各アパーチャ59aに、それと対応しない隣接のマイクロレンズ55aからの光が入射することが防止され、消光比が高められる。
【0286】
−−現像工程−−
室温にて10分間静置した後、前記積層体からポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)を剥がし取り、銅張積層板上の感光層の全面に、アルカリ現像液として、1質量%炭酸ソーダ水溶液を用い、30℃にて60秒間シャワー現像し、未硬化の領域を溶解除去した。その後、水洗し、乾燥させ、永久パターンを形成した。
【0287】
−−硬化処理工程−−
前記永久パターンが形成された積層体の全面に対して、160℃で30分間、加熱処理を施し、永久パターンの表面を硬化し、膜強度を高めた。
また、前記永久パターン形成済みのプリント配線基板に対して、常法に従い金メッキを行った後、水溶性フラックス処理を行った。次いで、260℃に設定された半田槽に5秒間にわたって、3回浸漬し、フラックスを水洗で除去した。
【0288】
実施例1の感光性フィルムは、良好な永久パターンを効率よく形成することができた。
【0289】
(実施例2)
実施例1において、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート50質量部をメチルエチルケトン50質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、感光性フィルムを製造し、有機溶媒の沸点の測定及びタック性の評価を行った。結果を表3に示す。また、実施例1と同様にして、永久パターンを形成したところ、良好な永久パターンを効率よく形成することができた。
【0290】
(実施例3)
実施例1において、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート50質量部をエチレングリコールモノメチルエーテル50質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、感光性フィルムを製造し、有機溶媒の沸点の測定及びタック性の評価を行った。結果を表3に示す。また、実施例1と同様にして、永久パターンを形成したところ、良好な永久パターンを効率よく形成することができた。
【0291】
(実施例4)
実施例1において、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート50質量部を酢酸−n−プロピル50質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、感光性フィルムを製造し、有機溶媒の沸点の測定及びタック性の評価を行った。結果を表3に示す。また、実施例1と同様にして、永久パターンを形成したところ、良好な永久パターンを効率よく形成することができた。
【0292】
(比較例1)
実施例2において、メチルエチルケトン99質量部を塩化メチレン99質量部に変え、た以外は、実施例1と同様にして、感光性フィルムを製造し、有機溶媒の沸点の測定及びタック性の評価を行った。結果を表3に示す。また、実施例1と同様にして、永久パターンを形成したところ、タック性が低いため、良好な永久パターンを形成することができなかった。
【0293】
(比較例2)
実施例2において、メチルエチルケトン99質量部をエチレングリコールモノブチルエーテル99質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、感光性フィルムを製造し、有機溶媒の沸点の測定及びタック性の評価を行った。結果を表3に示す。また、実施例1と同様にして、永久パターンを形成したところ、感光性フィルムのタック性が高いため、良好な永久パターンを形成することができなかった。
【0294】
(比較例3)
実施例1において、メチルエチルケトン49質量部をエチレングリコールモノブチルエーテル49質量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、感光性フィルムを製造して、有機溶媒の沸点の測定及びタック性の評価を行った。結果を表3に示す。また、実施例1と同様にして、永久パターンを形成したところ、感光性フィルムのタック性が高いため、良好な永久パターンを形成することができなかった。
【0295】
【表3】

表3に示すように、実施例1〜4の感光性フィルムでは、有機溶媒として、沸点が50〜160℃のものを用いたため、タック性が低すぎずも高すぎずもなく、良好であることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0296】
本発明の感光性フィルムは、タック性が良好であり、高精細なパターンを形成可能であるため、プリント配線版、カラーフィルタや柱材、リブ材、スペーサー、隔壁などのディスプレイ用部材、ホログラム、マイクロマシン、プルーフなどの永久パターン形成用として広く用いることができ、本発明の永久パターン形成方法に好適に用いることができる。
また、本発明の永久パターン形成方法は、本発明の前記感光性フィルムを用いるため、プリント配線版、カラーフィルタや柱材、リブ材、スペーサー、隔壁などのディスプレイ用部材、ホログラム、マイクロマシン、プルーフなどの永久パターンの製造などに好適に用いることができ、特に高精細な配線パターンの形成に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0297】
【図1】図1は、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)の構成を示す部分拡大図の一例である。
【図2】図2(A)及び(B)は、DMDの動作を説明するための説明図の一例である。
【図3】図3(A)及び(B)は、DMDを傾斜配置しない場合と傾斜配置する場合とで、露光ビームの配置及び走査線を比較して示した平面図の一例である。
【図4】図4(A)及び(B)は、DMDの使用領域の例を示す図の一例である。
【図5】図5は、スキャナによる1回の走査でカラーフィルタ形成材料を露光する露光方式を説明するための平面図の一例である。
【図6】図6(A)及び(B)は、スキャナによる複数回の走査でカラーフィルタ形成材料を露光する露光方式を説明するための平面図の一例である。
【図7】図7は、パターン形成装置の一例の外観を示す概略斜視図の一例である。
【図8】図8は、パターン形成装置のスキャナの構成を示す概略斜視図の一例である。
【図9】図9(A)は、カラーフィルタ形成材料に形成される露光済み領域を示す平面図の一例であり、図9(B)は、各露光ヘッドによる露光エリアの配列を示す図の一例である。
【図10】図10は、光変調手段を含む露光ヘッドの概略構成を示す斜視図の一例である。
【図11】図11は、図10に示す露光ヘッドの構成を示す光軸に沿った副走査方向の断面図の一例である。
【図12】図12は、パターン情報に基づいて、DMDの制御をするコントローラの一例である。
【図13】図13(A)は、結合光学系の異なる他の露光ヘッドの構成を示す光軸に沿った断面図の一例であり、図13(B)は、マイクロレンズアレイ等を使用しない場合に被露光面に投影される光像を示す平面図の一例であり、図13(C)は、マイクロレンズアレイ等を使用した場合に被露光面に投影される光像を示す平面図の一例である。
【図14】図14は、DMDを構成するマイクロミラーの反射面の歪みを等高線で示す図の一例である。
【図15】図15(A)及び(B)は、前記マイクロミラーの反射面の歪みを、該ミラーの2つの対角線方向について示すグラフの一例である。
【図16】図16は、パターン形成装置に用いられたマイクロレンズアレイの正面図(A)と側面図(B)の一例である。
【図17】図17は、マイクロレンズアレイを構成するマイクロレンズの正面図(A)と側面図(B)の一例である。
【図18】図18は、マイクロレンズによる集光状態を1つの断面内(A)と別の断面内(B)について示す概略図の一例である。
【図19a】図19aは、本発明のマイクロレンズの集光位置近傍におけるビーム径をシミュレーションした結果を示す図の一例である。
【図19b】図19bは、図19aと同様のシミュレーション結果を、別の位置について示す図の一例である。
【図19c】図19cは、図19aと同様のシミュレーション結果を、別の位置について示す図の一例である。
【図19d】図19dは、図19aと同様のシミュレーション結果を、別の位置について示す図の一例である。
【図20a】図20aは、従来のカラーフィルタの製造方法において、マイクロレンズの集光位置近傍におけるビーム径をシミュレーションした結果を示す図の一例である。
【図20b】図20bは、図20aと同様のシミュレーション結果を、別の位置について示す図の一例である。
【図20c】図20cは、図20aと同様のシミュレーション結果を、別の位置について示す図の一例である。
【図20d】図20dは、図20aと同様のシミュレーション結果を、別の位置について示す図の一例である。
【図21】図21は、合波レーザ光源の他の構成を示す平面図の一例である。
【図22】図22は、マイクロレンズアレイを構成するマイクロレンズの正面図(A)の一例と側面図(B)の一例である。
【図23】図23は、図22のマイクロレンズによる集光状態を1つの断面内(A)の一例と別の断面内(B)について示す概略図の一例である。
【図24】図24は、光量分布補正光学系による補正の概念についての説明図の一例である。
【図25】図25は、光照射手段がガウス分布で且つ光量分布の補正を行わない場合の光量分布を示すグラフの一例である。
【図26】図26は、光量分布補正光学系による補正後の光量分布を示すグラフの一例である。
【図27a】図27a(A)は、ファイバアレイ光源の構成を示す斜視図であり、図27a(B)は、(A)の部分拡大図の一例であり、図27a(C)及び(D)は、レーザ出射部における発光点の配列を示す平面図の一例である。
【図27b】図27bは、ファイバアレイ光源のレーザ出射部における発光点の配列を示す正面図の一例である。
【図28】図28は、マルチモード光ファイバの構成を示す図の一例である。
【図29】図29は、合波レーザ光源の構成を示す平面図の一例である。
【図30】図30は、レーザモジュールの構成を示す平面図の一例である。
【図31】図31は、図30に示すレーザモジュールの構成を示す側面図の一例である。
【図32】図32は、図30に示すレーザモジュールの構成を示す部分側面図である。
【図33】図33は、レーザアレイの構成を示す斜視図の一例である。
【図34】図34(A)は、マルチキャビティレーザの構成を示す斜視図の一例であり、図34(B)は、(A)に示すマルチキャビティレーザをアレイ状に配列したマルチキャビティレーザアレイの斜視図の一例である。
【図35】図35は、合波レーザ光源の他の構成を示す平面図の一例である。
【図36】図36(A)は、合波レーザ光源の他の構成を示す平面図の一例であり、図36(B)は、(A)の光軸に沿った断面図の一例である。
【図37】図37(A)及び(B)は、従来のパターン形成装置における焦点深度と本発明のカラーフィルタの製造方法(パターン形成装置)による焦点深度との相違を示す光軸に沿った断面図の一例である。
【符号の説明】
【0298】
LD1〜LD7 GaN系半導体レーザ
10 ヒートブロック
11〜17 コリメータレンズ
20 集光レンズ
30〜31 マルチモード光ファイバ
30a コア
40 パッケージ
41 パッケージ蓋
42 ベース板
44 コリメータレンズホルダー
45 集光レンズホルダー
46 ファイバホルダー
50 デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)
52 レンズ系
53 反射光像(露光ビーム)
54 第2結像光学系のレンズ
55 マイクロレンズアレイ
56 被露光面(走査面)
55a マイクロレンズ
57 第2結像光学系のレンズ
58 第2結像光学系のレンズ
59 アパーチャアレイ
64 レーザモジュール
66 ファイバアレイ光源
67 レンズ系
68 レーザ出射部
69 ミラー
70 プリズム
71 集光レンズ
72 ロッドインテグレータ
73 組合せレンズ
74 結像レンズ
100 ヒートブロック
110 マルチキャビティレーザ
111 ヒートブロック
113 ロッドレンズ
114 レンズアレイ
120 集光レンズ
130 マルチモード光ファイバ
130a コア
140 レーザアレイ
144 光照射手段
150 カラーフィルタ形成材料
152 ステージ
155a マイクロレンズ
156 設置台
158 ガイド
160 ゲート
162 スキャナ
164 センサ
166 露光ヘッド
168 露光エリア
170 露光済み領域
180 ヒートブロック
184 コリメートレンズアレイ
302 コントローラ
304 ステージ駆動装置
454 レンズ系
468 露光エリア
472 マイクロレンズアレイ
474 マイクロレンズ
476 アパーチャアレイ
478 アパーチャ
480 レンズ系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に、バインダー、重合性化合物、光重合開始剤、熱架橋剤、及び有機溶媒を含む感光性組成物からなる感光層と、を有してなり、
前記感光層における前記有機溶媒の沸点が50〜160℃であることを特徴とする感光性フィルム。
【請求項2】
有機溶媒が、沸点の異なる2種以上の有機溶媒である請求項1に記載の感光性フィルム。
【請求項3】
有機溶媒が、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、芳香族炭化水素類、及びハロゲン炭化水素類から選択される少なくとも1種である請求項1から2のいずれかに記載の感光性フィルム。
【請求項4】
有機溶媒が、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸−n−プロピル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、及びテトラヒドロフランから選択される少なくとも1種である請求項1から3のいずれかに記載の感光性フィルム。
【請求項5】
有機溶媒が、メチルエチルケトンと、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸−n−プロピル、酢酸イソブチル、及びテトラヒドロフランから選択される少なくとも1種との組合わせである請求項2から4のいずれかに記載の感光性フィルム。
【請求項6】
バインダーが、エポキシ化合物に、エチレン性不飽和二重結合と酸性基とを導入した化合物からなる請求項1から5のいずれかに記載の感光性フィルム。
【請求項7】
バインダーが、側鎖に(メタ)アクリロイル基、及び酸性基を有するビニル共重合体を含む請求項6に記載の感光性フィルム。
【請求項8】
重合性化合物が、(メタ)アクリル基を有するモノマーから選択される少なくとも1種を含む請求項1から7のいずれかに記載の感光性フィルム。
【請求項9】
光重合開始剤が、ハロゲン化炭化水素誘導体、ホスフィンオキサイド、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、及びケトオキシムエーテルから選択される少なくとも1種を含む請求項1から8のいずれかに記載の感光性フィルム。
【請求項10】
熱架橋剤が、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物にブロック剤を反応させて得られる化合物、及びメラミン誘導体から選択される少なくとも1種である請求項1から9のいずれかに記載の感光性フィルム。
【請求項11】
熱硬化促進剤を含み、該熱硬化促進剤が、アミン化合物、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩化合物、リン化合物、グアナミン化合物、S−トリアジン誘導体、芳香族酸無水物、脂肪族酸無水物、及びポリフェノールから選択される少なくとも1種である請求項1から10のいずれかに記載の感光性フィルム。
【請求項12】
支持体上に、バインダー、重合性化合物、光重合開始剤、熱架橋剤、及び沸点が50〜160℃である有機溶媒を含む感光性組成物を塗布し、乾燥させて、感光層を形成する感光層形成工程を少なくとも含むことを特徴とする感光性フィルムの製造方法。
【請求項13】
請求項1から11のいずれかに記載の感光性フィルムを備えており、
光を照射可能な光照射手段と、該光照射手段からの光を変調し、前記感光性フィルムにおける感光層に対して露光を行う光変調手段とを少なくとも有することを特徴とするパターン形成装置。
【請求項14】
請求項1から11のいずれかに記載の感光性フィルムにおける該感光層に対し、露光を行うことを少なくとも含むことを特徴とする永久パターン形成方法。
【請求項15】
露光が、光変調手段により光を変調させた後、前記光変調手段における描素部の出射面の歪みによる収差を補正可能な非球面を有するマイクロレンズを配列したマイクロレンズアレイを通して行われる請求項14に記載の永久パターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図21】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27a】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図4】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19a】
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【図19b】
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【図19c】
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【図19d】
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【図20a】
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【図20b】
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【図20c】
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【図20d】
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【図22】
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【図23】
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【図27b】
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【図28】
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【公開番号】特開2007−93994(P2007−93994A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283060(P2005−283060)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】