感光性樹脂凸版の製造方法及び感光性樹脂凸版の製造装置
【課題】版厚を確実に制御しながら感光性樹脂凸版の連続製版を行う。
【解決手段】第1のフィルム層(カバーフィルム)24、感光性樹脂層25、及び第2のフィルム層(ベースフィルム)26を含む積層体を、下部硬質板14と上部硬質板15とにより挟んだ状態で、感光性樹脂層の露光を行うものであり、下記(a)工程〜(d)工程を有している感光性樹脂凸版の製造方法を提供する。
(a)上部硬質板及び/又は下部硬質板の温度、又は下部硬質板に積層される第1のフィルム層を介した下部硬質板の温度を、直接又は間接に計測する工程。
(b)前記下部硬質板に積層した前記第1のフィルム層の上に、液状感光性樹脂を塗布する工程。
(c)前記液状感光性樹脂の塗布厚みを調節する工程。
(d)下部硬質板と上部硬質板との間隔を調節する工程。
【解決手段】第1のフィルム層(カバーフィルム)24、感光性樹脂層25、及び第2のフィルム層(ベースフィルム)26を含む積層体を、下部硬質板14と上部硬質板15とにより挟んだ状態で、感光性樹脂層の露光を行うものであり、下記(a)工程〜(d)工程を有している感光性樹脂凸版の製造方法を提供する。
(a)上部硬質板及び/又は下部硬質板の温度、又は下部硬質板に積層される第1のフィルム層を介した下部硬質板の温度を、直接又は間接に計測する工程。
(b)前記下部硬質板に積層した前記第1のフィルム層の上に、液状感光性樹脂を塗布する工程。
(c)前記液状感光性樹脂の塗布厚みを調節する工程。
(d)下部硬質板と上部硬質板との間隔を調節する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール、フィルム、シール及びラベル等の印刷に用いられる感光性樹脂凸版の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液状感光性樹脂を用いて感光性樹脂凸版の製造を行うためには、図1に例示する構成に代表される、露光装置を備えた感光性樹脂凸版の製造装置が使用される(例えば、特許文献1〜4参照)。
図1は、液状感光性樹脂を用いて感光性樹脂凸版を製造する従来技術の感光性樹脂凸版の製造装置10の斜視図を示す。
感光性樹脂凸版の製造装置10は、上部光源11、上部硬質板13、下部硬質板14及び下部光源12を具備している。
また、感光性樹脂凸版の製造装置10は、下部硬質板14上のネガフィルム(図示せず)上に配されるカバーフィルムを供給するカバーフィルム収納部15と、上部硬質板13上に、マスクネガフィルムを介して配されるベースフィルムを供給するベースフィルムセット部16とを具備している。
さらに、カバーフィルムを介して下部硬質板14の上に液状感光性樹脂を供給する液状感光性樹脂コーティングバケット17を具備している。
キャリッジ18の移動により下部硬質板14上に液状感光性樹脂が塗布され、同時にベースフィルムセット部16から当該液状感光性樹脂上にベースフィルムが供給される。
【0003】
図2は、感光性樹脂凸版の製造工程を示す概略断面図である。
先ず、高い平面精度に処理された下部硬質板14の上に、ネガフィルム23、及びカバーフィルム収納部15から供給されたカバーフィルム24を、真空等の手段によりしわがないように密着して下部硬質板14上に固定する。
次に、図1に示すキャリッジ18を移動させて、カバーフィルム24の上に、液状感光性樹脂25を塗布する。
カバーフィルム24の平面上に塗布する液状感光性樹脂25の流出を抑制するために、カバーフィルム24の上に、塗布されるべき液状感光性樹脂25の厚さに応じた高さのダム材30を枠状に形成し、カバーフィルム24上に貼り付ける等により固定する。
ここで、ダム材30によって形成された枠内に液状感光性樹脂25を塗布した後、当該液状感光性樹脂25の上に、ベースフィルム26とマスクネガフィルム27とを重ねる。
その後、感光性樹脂版の厚みを決めるためにセットされたスペーサー28の上に置かれた上部硬質板13によって、下部硬質板14の上に積層された、ネガフィルム23、カバーフィルム24、ダム材30、液状感光性樹脂25、ベースフィルム26、及びマスクネガフィルム27を挟む。
【0004】
次に、上部硬質板13を通して、上部光源11からの活性光を照射し、目的とする印刷版のレリーフ部分の基部を形成させるためのマスキング露光を行う。
次に、レリーフ部分の画像を形成させるために、下部硬質板14上のネガフィルム23を介して、下部光源12からの活性光を照射してレリーフ露光を行い、露光工程を終了する。
【0005】
露光が終了した版からカバーフィルム24を引き剥がし、カバーフィルム24に付着している樹脂、及び活性光が照射されていないレリーフ面の未硬化樹脂をゴム製ブレード等により掻き取って除去する。
版面から未硬化樹脂を完全に除去するため、適当な洗剤で版面を洗い出して現像し、後露光及び乾燥処理を施すことにより、目的とする液状感光性樹脂凸版が製造される。
【0006】
【特許文献1】特開平8−305006号公報
【特許文献2】特開平8−314126号公報
【特許文献3】特開平11−84633号公報
【特許文献4】特開平11−151729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、感光性樹脂凸版を連続して製版を続けていくと、版厚が徐々に低下していくという問題が生じる。
第1の原因としては、露光時に発生する感光性樹脂の重合硬化熱が、上部硬質板や下部硬質板に伝わり、これらが熱変形することにより上下硬質板の間隔が狭くなることが挙げられる。
第2の原因としては、製版が連続して行われるに従って温度が上昇した上部硬質板及び下部硬質板から感光性樹脂に伝熱することにより、樹脂粘度が低下し流動することにより樹脂層が薄くなることが挙げられる。
実際の製版工程においては、第1及び第2の原因が複合しているものと考えられる。
版厚が低下すると、インキかすれ等の印刷不良の原因となり、又、刷替えにおいて版を印刷機の版胴にセットする度に印圧調整を行う必要がある等、調整に要する手間は印刷現場での生産効率を悪化させる。
【0008】
上記問題の解決を図る方法として、製版工程ごとに上部硬質板と下部硬質板との間隔を実測し、上下硬質版の変形度合いを算出し、さらには、樹脂流動による感光性樹脂層の厚さの変化を測定し、これらを考慮した上で、予め設定された版厚に補正する機構を設けることが挙げられる。
しかしながら、連続製版工程においては、上下硬質板や感光性樹脂の温度は常に変化しているため、その都度個々の状態を測定しながら補正を行うことは、操作が煩雑となり実質的に不可能である。
また、所定の冷却機構を設けて温度上昇を抑制する方法も考えられるが、コストやエネルギー消費の観点から実用上不利であり、また冷却に要する時間は歩留まりの低下を招来するという問題がある。
【0009】
そこで本発明においては、上記煩雑な操作を行うことなく、かつ低コストで、版厚を確実に制御しながら、感光性樹脂凸版の連続製版が可能な、感光性樹脂凸版の製造方法、及び製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明においては、第1のフィルム層、感光性樹脂層、及び第2のフィルム層を含む積層体を、下部硬質板と上部硬質板とにより挟み込んだ状態で露光を行う感光性樹脂凸版の製造方法であって、(a)上部硬質板及び/又は下部硬質板の温度、又は下部硬質板に積層される第1のフィルム層を介した下部硬質板の温度を、直接又は間接に計測する工程と、(b)前記下部硬質板に積層した前記第1のフィルム層の上に、液状感光性樹脂を塗布する工程と、(c)前記液状感光性樹脂の塗布厚みを調節する工程と、(d)前記下部硬質板と前記上部硬質板との間隔を調節する工程とを有する感光性樹脂凸版の製造方法を提供する。
【0011】
請求項2の発明においては、前記(c)工程における液状感光性樹脂の塗布厚みの調節は、前記(a)工程により計測された温度と、予め設定した温度とを比較し、その差分に応じて行う請求項1に記載の感光性樹脂凸版の製造方法を提供する。
【0012】
請求項3の発明においては、前記(d)工程における下部硬質板と上部硬質板との間隔の調節は、前記(a)工程により計測された温度と、予め設定した温度とを比較し、その差分に応じて行う請求項1又は2に記載の感光性樹脂凸版の製造方法を提供する。
【0013】
請求項4の発明においては、第1のフィルム層、感光性樹脂層、及び第2のフィルム層を含む積層体を、下部硬質板と上部硬質板とにより挟み込んだ状態で露光を行う感光性樹脂凸版の製造装置であって、露光光線を透過する下部硬質板と、前記下部硬質板と対向配置されている上部硬質板と、上部硬質板及び/又は下部硬質板の温度を、直接又は間接に計測する温度測定機構と、測定した温度を電子信号に変換する電子信号変換機構と、測定した温度の電子信号、及び予め設定した温度域に対応した任意の修正電子信号を記憶し、測定した温度に対応した任意の修正電子信号を出力する制御信号記憶出力機構と、前記下部硬質板に積層した前記第1のフィルム層の上に液状感光性樹脂を塗布する塗布機構と、前記下部硬質板を昇降させる第1昇降機構、又は、塗布機構走行レール及び上部硬質板受け台としての機能を有するスペーサー及び当該スペーサーを昇降させる第2昇降機構とを有している感光性樹脂凸版の製造装置を提供する。
【0014】
請求項5の発明においては、前記第1昇降機構及び前記第2昇降機構は、1/100mm単位で昇降量を調節するようになされている請求項4に記載の感光性樹脂凸版の製造装置を提供する。
【0015】
請求項6の発明においては、前記温度測定機構は、前記上部硬質板及び/又は下部硬質板の端部から20mm以上内側の位置において温度測定を行う請求項4又は5に記載の感光性樹脂凸版の製造装置を提供する。
【0016】
請求項7の発明においては、前記修正電子信号に従い、前記第1昇降機構により前記下部硬質板を昇降させる請求項4乃至6のいずれか一項に記載の感光性樹脂凸版の製造装置を提供する。
【0017】
請求項8の発明においては、前記修正電子信号に従い、前記第2昇降機構により前記スペーサーを昇降させる請求項4乃至6のいずれか一項に記載の感光性樹脂凸版の製造装置を提供する。
【0018】
請求項9の発明においては、前記修正電子信号に従い、前記第2昇降機構により前記上部硬質板を昇降させる請求項4乃至6、又は8のいずれか一項に記載の感光性樹脂凸版の製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、版厚を均一に維持しながら感光性樹脂凸版の連続製版が可能な感光性樹脂凸版の製造方法、及び製造装置が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、本実施形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できるものとする。
【0021】
〔感光性樹脂凸版の製造方法〕
本実施形態における感光性樹脂凸版の製造方法は、第1のフィルム層(カバーフィルム)、感光性樹脂層、及び第2のフィルム層(ベースフィルム)を含む積層体を、下部硬質板と上部硬質板とにより挟んだ状態で、感光性樹脂層の露光を行うものであり、下記(a)工程〜(d)工程を有している。
(a)上部硬質板及び/又は下部硬質板の温度、又は下部硬質板に積層される第1のフィルム層を介した下部硬質板の温度を、直接又は間接に計測する工程。
(b)前記下部硬質板に積層した前記第1のフィルム層の上に、液状感光性樹脂を塗布する工程。
(c)前記液状感光性樹脂の塗布厚みを調節する工程。
(d)下部硬質板と上部硬質板との間隔を調節する工程。
【0022】
〔第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置〕
第1のフィルム層(カバーフィルム)、感光性樹脂層、及び第2のフィルム層(ベースフィルム)を含む積層体を、下部硬質板と上部硬質板とにより挟み込んだ状態で感光性樹脂層の露光を行う機能を備えた感光性樹脂凸版の製造装置であり、露光光線を透過する下部硬質板と、前記下部硬質板と対向配置されている上部硬質板と、上部硬質板及び/又は下部硬質板の温度を、直接又は間接に計測する温度測定機構と、測定した温度を電子信号に変換する電子信号変換機構と、測定した温度の電子信号、及び予め設定した温度域に対応した任意の修正電子信号を記憶し、測定した温度に対応した任意の修正電子信号を出力する制御信号記憶出力機構と、前記下部硬質板に積層した前記第1のフィルム層の上に液状感光性樹脂を塗布する塗布機構と、前記下部硬質板を昇降させる第1昇降機構とを有している。
本実施の形態における感光性樹脂凸版の製造装置は、重要な機能として版厚の制御機能を有している。
これは、実際に測定した上部硬質板及び/又は下部硬質板の温度を、予め設定しておいた温度域と比較して、当該温度域に対応した修正電子信号を出力して第1昇降機構の作動量を制御することによって、連続製版における版厚の低下を抑制するものである。
【0023】
〔第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置〕
第1のフィルム層(カバーフィルム)、感光性樹脂層、及び第2のフィルム層(ベースフィルム)を含む積層体を、下部硬質板と上部硬質板とにより挟み込んだ状態で感光性樹脂層の露光を行う機能を備えた感光性樹脂凸版の製造装置であり、露光光線を透過する下部硬質板と、前記下部硬質板と対向配置されている上部硬質板と、上部硬質板及び/又は下部硬質板の温度を、直接又は間接に計測する温度測定機構と、測定した温度を電子信号に変換する電子信号変換機構と、測定した温度の電子信号、及び予め設定した温度域に対応した任意の修正電子信号を記憶し、測定した温度に対応した任意の修正電子信号として出力する制御信号記憶出力機構と、前記下部硬質板に積層した前記第1のフィルム層の上に液状感光性樹脂を塗布する塗布機構と、塗布機構走行レール及び上部硬質板受け台としての機能を有するスペーサーと、当該スペーサーを昇降させる第2昇降機構とを有している。
この第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置においても、上述した第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置と同様に、重要な機能として版厚の制御機能を具備している。
これは、実際に測定した上部硬質板及び/又は下部硬質板の温度を、予め設定しておいた温度域と比較して、当該温度域に対応した修正電子信号を出力して第2昇降機構の作動量を制御することによって、連続製版における版厚の低下を抑制するものである。
【0024】
本実施形態における感光性樹脂凸版の製造方法について、上記第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いた場合と、第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いた場合とに分けて説明する。
【0025】
〔第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いた場合の製造方法〕
図3、図4は、本実施形態における製造方法の、工程(a)の前段階を説明する概略断面図である。
先ず、図3に示すように、第1昇降機構28上に載置された下部硬質板14と、当該下部硬質板14の周囲であって隙間dを有するように配置された堰部材29とに、第1のフィルム層(カバーフィルム)24を密着させる。
なお、感光性樹脂凸版のレリーフ部を形付けるネガフィルム23は、予め下部硬質板14と第1のフィルム層(カバーフィルム)24との間に配置する。
【0026】
堰部材29は、下部硬質板14の周囲に配置される枠部材である。
堰部材29の材質は、特に限定されないが、上部硬質板11を載せても形状変化が殆ど生じない硬質材であるものとする。例えば、金属、非鉄金属、樹脂成形材等が好ましい。
なお、堰部材29の第1のフィルム層24との接触面は、平滑加工されていることが好ましい。
堰部材29自体が枠部材であることから、下部硬質板14の周囲に堰部材29を配置させ、堰部材29内に下部硬質板14が配置され、第1のフィルム層24は、下部硬質板14及び堰部材29の上面に配置される。
堰部材29の側面と下部硬質板14の側面との間である隙間dは、200mm以下であることが好ましく、5mm以下の隙間であることがより好ましい。これは、第1フィルム層24によって凹部が形成され、この凹部内に液状感光性樹脂が塗布されたとき、液状感光性樹脂の重さにより第1のフィルム層24がたるみ、液状感光性樹脂が成形範囲外に流出することを抑制するためである。
【0027】
図3に示すように、下部硬質板14及び堰部材29は、それぞれの上面に溝36、35を有していることが好ましい。溝36、35を介して真空手段等により空気を排気し、あるいは必要に応じて給気により第1のフィルム層24の位置を調節した後にさらに排気することにより、第1のフィルム層24を所望の位置に、しわを発生させずに密着させることができる。
なお、図3においては、下部硬質板14及び堰部材29の上面に溝36、35が形成されている構成としたが、溝の位置はこれらの上面に限定されるものではなく、第1のフィルム層24が、下部硬質板14及び堰部材29に密着されればよく、例えば、下部硬質板14及び堰部材29の側面であってもよい。
【0028】
次に、図4に示すように、第1昇降機構28により、下部硬質板14を下方に移動させ、第1のフィルム層24により凹部を形成する。
なお、堰部材29を上方へ移動させて、第1のフィルム層24により凹部を形成するようにしてもよい。
また、第1昇降機構28により下部硬質板14を移動させる際、溝35、36を介して真空を保持しながら、第1のフィルム層24を下部硬質板14及び堰部材29に密着させ、位置決めの精度を維持することが好ましい。
【0029】
ここで、下部硬質板14の上面と堰部材29の上面との距離は、第1のフィルム層24により形成される凹部の深さに相当し、最終的に露光硬化により得られる感光性樹脂層に相当し、感光性樹脂凸版の版厚に影響する。そのため、下部硬質板14の上面と堰部材29の上面との距離は、目的とする感光性樹脂凸版の版厚を考慮して、例えば、1〜10mmの範囲内で制御できるようになされている。
【0030】
(工程(a))
図5に示すように、温度測定機構50を具備する塗布機構(キャリッジ)51を、図中矢印A方向に移動させ、下部硬質板14の温度を第1のフィルム層24を介して計測する。
なお、図5においては下部硬質版14の温度を測定する状態を示しているが、温度測定機構50によって、下部硬質板14と対向配置されている上部硬質板(図示せず)の温度を測定してもよい。
温度測定は、直接又は間接に行うものとし、接触、非接触のいずれの状態で行ってもよい。
【0031】
感光性樹脂凸版の連続製版においては、下部硬質板14及び/又は上部硬質板15の温度が、最終的に目的とする感光性樹脂凸版の版厚に影響するため、連続製版中の設定温度(温度域)を予め決定しておく。
そして、上記のようにして測定した温度を、所定の電子信号変換機構(図示せず)によって電子信号に変換し、この測定温度と、予め決定しておいた設定温度(温度域)とを比較し、差分量を加味し、所定の制御信号出力機構(図示せず)により修正電子信号として出力する。
連続製版を行った場合には、工程の進行とともに上部及び下部硬質板の温度が上昇するに従い、版厚が低下していくが、硬質板の温度が一般的に常温(20℃程度)よりも低く保たれていれば、版厚低下は発生しない。
しかし、一旦、硬質板の温度が20℃を超えると、版厚低下が発生し、さらには連続して製版を行っていくと、硬質板温度は最大50℃近傍にまで上昇し、版厚低下はますます顕著になる。版厚の低下量は、硬質板の温度上昇量に対して比例的に推移することから、基準温度として例えば20.0℃を予め設定し、20.0℃未満の場合と20.0℃以上の場合に大別する。
具体的には、20.0℃未満の温度域と、20.0℃以上の温度域においては5℃刻み、より厳密には1℃刻みで最大60℃まで設定し、かつそれぞれの温度域に対応した修正電子信号を任意に設定する。
この修正電子信号を、制御信号記憶出力機構において記憶しておき、測定した温度を、予め設定しておいた温度域と比較して、温度域に対応した修正電子信号を出力する。
出力する修正電子信号は、直接的に版厚低下の修正を促すためのmm分量として標示データ信号として設定してもよいが、好ましくは前記昇降機構を駆動するパルスモータ、もしくはサーボモータ等の作動量を決定するパルス信号として設定してもよい。
【0032】
(工程(b))
図6に示すように、塗布機構(キャリッジ)51を、図中矢印B方向に移動させ、下部硬質板14に積層した第1のフィルム層24の上に、液状感光性樹脂25を塗布する。
液状感光性樹脂25は、特に限定されるものではなく、従来公知の材料を適用できる。例えば、オリゴマー又はポリマー成分、重合性モノマー成分、光開始剤、及び安定剤から構成される液状の感光性樹脂等が挙げられる。
液状感光性樹脂25の塗布を行う際、溝35、36を介して真空を保持しながら、カバーフィルム24を下部硬質板14及び堰部材29に密着させることが、感光性樹脂凸版の位置決め精度を高く維持する観点から好ましい。
液状感光性樹脂25の塗布方法は特に限定されるものではないが、図1にて例示したように、塗布機構(キャリッジ)51を下部硬質板14上で移動させる際、液状感光性樹脂コーティングバケット17から液状感光性樹脂を流出させ、第1のフィルム層24で形成された凹部に塗布することが好ましい。
【0033】
(工程(c))
上述した液状感光性樹脂25の塗布の際には塗布厚みの調整を行う。液状感光性樹脂の塗布厚みは、最終的に目的とする感光性樹脂凸版の版厚に影響するからである。
連続製版においては、下部硬質板14又は上部硬質板(図示せず)の温度が上昇していき、熱変形により上下硬質板の間隔が狭くなる傾向がある。
また、上部硬質板及び下部硬質板から感光性樹脂に伝熱し、粘度が低下して流動し、樹脂層が薄くなる傾向がある。
これら温度影響によって、版厚の低下を引き起こす問題を解決するため、上記工程(a)により得られた修正電子信号に従って、第1昇降機構28によって下部硬質板14の高さを調節する。具体的には、下部硬質板14を1/100mm単位で下降させることにより、下部硬質板14とコーティングバケット17との間隔を微増し、樹脂の塗布厚みの微増が図られる。そして、最終的に上部硬質板と下部硬質板との間隔、すなわち版の成型厚みを微増させることができる。
これにより、版厚の低下を抑制し、安定した版厚の版が連続して製造できる。例えば、パルス信号によって第1昇降機構28の作動量の補正を行い、製造しようとする版厚に一括して加味することで版厚の低下が抑制される。
また、液状感光性樹脂の塗布厚みを補正する方法として、例えば上記工程(a)により得られた修正電子信号に従って、工程(b)においてコーティングバケット17の開度を調整する方法や、修正電子信号に従って塗布機構(キャリッジ)51の移動する速度を調整することにより液状感光性樹脂の塗布厚みを補正する方法等も有効である。
なお、版厚の低下量は、製造しようとする版厚によって若干異なるが、硬質板温度が20.0℃〜60.0℃の範囲においては概ね1/100mm〜最大15/100mmである。
【0034】
また、上述した液状感光性樹脂25の塗布の際には、液状感光性樹脂25上に、第2のフィルム層(ベースフィルム)26を積層する。
第2のフィルム26を積層する方法は特に限定されるものではないが、図1にて例示したような、ベースフィルムセット部16により、液状感光性樹脂25上に供給することが好ましい。
なお、第2のフィルム層26の積層の際、溝35、36を介して真空を保持しながら行うことが、位置決め精度の観点から好ましい。
また、第2のフィルム26を積層する際、ラミネートロール53により押圧することが好ましい。
【0035】
(工程(d))
図7は、成形及び露光を行う工程の概略断面図である。
下部硬質板14上に塗布した液状感光性樹脂層25の上方から、マスクネガフィルム27及び上部硬質板13を配置する。
下部硬質板14及び堰部材29の溝36、35を介して真空を保持しながら、第1のフィルム層24を下部硬質板14及び堰部材29に密着させ、マスクネガフィルム27及び上部硬質板13を液状感光性樹脂層25に積層し、圧縮する。
【0036】
続いて、上部硬質板13を通して、上部光源11からの活性光線を照射し、目的とする感光性樹脂凸版のレリーフ部分の基部を形成させるマスキング露光を行う。
次に、レリーフ部分の画像を形成させるために、下部硬質板14上のネガフィルム23を介して、下部光源12からの活性光線を照射してレリーフ露光を行い、成形及び露光工程を終了する。
上部及び下部光源11、12としては、特に限定されないが、活性光線の一例である紫外線等を放射する光源が好ましい。具体的には、高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、メタルハライドランプ、UV−LED等が挙げられる。液状感光性樹脂に照射される光は300〜400nmの波長を有することが好ましい。
【0037】
露光工程後、上部硬質板13及びマスクネガフィルム27を除去し、溝35、36に空気を給気して、下部硬質板14及び堰部材29に真空密着していた第1のフィルム層24を離脱し、第1のフィルム層(カバーフィルム)24、液状感光性樹脂25、第2のフィルム層(ベースフィルム)26からなる積層体を得る。
その後、第1のフィルム層24を剥がし、付着樹脂、及び活性光が照射されていないレリーフ面の未硬化樹脂をゴム製ブレード等で除去する。
未硬化樹脂を完全に除去するためには、適当な洗剤を用いることができる。例えば、現像剤W−13(商標・旭化成ケミカルズ(株)製、アニオン界面活性剤水溶液)を2.0質量%、表面処理剤A−10(商標・旭化成ケミカルズ(株)製、ベンゾフェノン含有ノニオン界面活性剤水溶液)を0.33質量%、消泡剤SH−4(商標・旭化成ケミカルズ(株)製、シリコン系消泡剤)を0.3質量%加えた水溶液が挙げられ、これにより版面を洗い、現像し、後露光及び乾燥処理を行うことにより、目的とする感光性樹脂凸版が得られる。
【0038】
〔第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いた場合の製造方法〕
図8、図9は、本実施形態における製造方法の、工程(a)の前段階を説明する概略断面図である。
この実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置は、塗布機構(キャリッジ)走行レール及び上部硬質版受け台としての機能を有するスペーサー41が、図8の紙面上、手前側と奥側とで平行に配置されており、スペーサー間に下部硬質板14が配置されている。なおスペーサー41は、第2昇降機構40により昇降可能に支持されている。
図8に示すように、下部硬質板14に、第1フィルム層(カバーフィルム)24を密着させる。
なお、感光性樹脂凸版のレリーフ部を形付けるネガフィルム23は、予め下部硬質板14と第1のフィルム層(カバーフィルム)24との間に配置する。
【0039】
図8に示すように、下部硬質板14は、上面に溝36を有していることが好ましい。
溝36を介して、真空手段等により空気を排気し、あるいは必要に応じて、給気により第1フィルム層(カバーフィルム)24の位置を調整した後にさらに排気することにより、第1フィルム層(カバーフィルム)24を下部硬質板14の所定の位置に、しわがないように密着させることができる。
次に、図9に示すように、第2昇降機構40によりスペーサー41を上方に移動させ、塗布機構(キャリッジ)51がカバーフィルム24面上を走行するための間隔を確保する。
【0040】
(工程(a))
図10に示すように、温度測定機構50を具備する塗布機構(キャリッジ)51を、図中矢印A方向に移動させ、下部硬質板14の温度を第1のフィルム層24を介して計測する。
なお、図10においては下部硬質版14の温度を測定する状態を示しているが、温度測定機構50によって、下部硬質板14と対向配置されている上部硬質板(図示せず)の温度を測定してもよい。温度測定は、直接又は間接に行うものとし、接触、非接触のいずれの状態で行ってもよい。
【0041】
感光性樹脂凸版の連続製版においては、下部硬質板14及び/又は上部硬質板15の温度が、最終的に目的とする感光性樹脂凸版の版厚に影響するため、連続製版中の設定温度を予め決定しておく。
そして、上記のようにして測定した温度を、所定の電子信号変換機構(図示せず)によって電子信号に変換し、この測定温度と、予め決定しておいた設定温度(温度域)とを比較し、差分量を加味し、所定の制御信号出力機構(図示せず)により修正電子信号として出力する。
連続製版を行った場合には、工程の進行とともに上部及び下部硬質板の温度が上昇するに従い、版厚が低下していくが、硬質板の温度が一般的に常温(20℃程度)よりも低く保たれていれば、版厚低下は発生しない。
しかし、一旦、硬質板の温度が20℃を超えると、版厚低下が発生し、さらには連続して製版を行っていくと、硬質板温度は最大50℃近傍にまで上昇し、版厚低下はますます顕著になる。版厚の低下量は、硬質板の温度上昇量に対して比例的に推移することから、基準温度として例えば20.0℃を予め設定し、20.0℃未満の場合と20.0℃以上の場合に大別する。
具体的には、20.0℃未満の温度域と、20.0℃以上の温度域においては5℃刻み、より厳密には1℃刻みで最大60℃まで設定し、かつそれぞれの温度域に対応した修正電子信号を任意に設定する。
この修正電子信号を、制御信号記憶出力機構において記憶しておき、測定した温度を、予め設定しておいた温度域と比較して、当該温度域に対応した修正電子信号を出力する。
出力する修正電子信号は、直接的に版厚低下の修正を促すためのmm分量として標示データ信号に設定してもよいが、好ましくは前記昇降機構を駆動するパルスモータ、もしくはサーボモータ等の作動量を決定するパルス信号として設定してもよい。
【0042】
なお、第1のフィルム層24上には、予め液状感光性樹脂25の流出を抑制するための液状感光性樹脂25の厚さに応じた高さのダム材30を枠状に固定しておく。
【0043】
(工程(b))
図11に示すように、塗布機構(キャリッジ)51を、図中矢印B方向に移動させ、下部硬質板14に積層した第1のフィルム層24の上に、液状感光性樹脂25を塗布する。
液状感光性樹脂25は、特に限定されるものではなく、従来公知の材料を適用できる。
例えば、オリゴマー又はポリマー成分、重合性モノマー成分、光開始剤及び安定剤から構成される液状の感光性樹脂等が挙げられる。
液状感光性樹脂25の塗布を行う際、溝36を介して真空を保持しながら、第1のフィルム層24を下部硬質板14に密着させることが、感光性樹脂凸版の位置決め精度を高く維持する観点から好ましい。
液状感光性樹脂25の塗布方法は、特に限定されるものではないが、図1にて例示したように、塗布機構(キャリッジ)51を下部硬質板14上を移動させる際、液状感光性樹脂コーティングバケット17から液状感光性樹脂を流出させ、上記ダム材30により囲まれた領域に塗布することが好ましい。
【0044】
(工程(c))
上述した液状感光性樹脂25の塗布の際には、塗布厚みの調整を行う。
液状感光性樹脂の塗布厚みは、最終的に目的とする感光性樹脂凸版の版厚に影響するからである。
連続製版においては、下部硬質板14又は上部硬質板(図示せず)の温度が上昇していき、熱変形により上下硬質板の間隔が狭くなる傾向がある。
また、上部硬質板及び下部硬質板から感光性樹脂に伝熱し、粘度が低下して流動し、樹脂層が薄くなる傾向がある。
これら温度影響による版厚低下の問題を解決するため、第2昇降機構40によりスペーサー41を、上述した修正電子信号に従って調節する。具体的には、スペーサー41を1/100mm単位で上昇させることにより、下部硬質板14とコーティングバケット17との間隔を微増し、樹脂の塗布厚みを微増することができる。これにより、版厚の低下を抑えて安定した版厚の版の連続製版を行うことができる。
すなわち、例えば、上述したパルス信号によって第2昇降機構40の作動量の補正を行い、製造しようとする版厚に一括して加味することで版厚の低下を抑制する。
また、液状感光性樹脂の塗布厚みを補正する方法としては、例えば上記工程(a)により得られた修正電子信号に従って、工程(b)においてコーティングバケット17の開度を調整する方法や、修正電子信号に従って塗布機構(キャリッジ)51の移動する速度を調整することにより液状感光性樹脂の塗布厚みを補正する方法等も有効である。
なお、版厚の低下量は、製造しようとする版厚によって若干異なるが、硬質板温度が20.0℃〜60.0℃の範囲において、概ね1/100mm〜最大15/100mmである。
【0045】
また、上述した液状感光性樹脂25の塗布の際には、液状感光性樹脂25上に、第2のフィルム層(ベースフィルム)26を積層する。
第2のフィルム26を積層する方法は特に限定されるものではないが、図1にて例示したような、ベースフィルムセット部16により、液状感光性樹脂25上に供給することが好ましい。
なお、第2のフィルム層26の積層の際、溝36を介して真空を保持しながら行うことが、位置決め精度の観点から好ましい。
また、第2のフィルム26を積層する際、ラミネートロール53により押圧することが好ましい。
【0046】
(工程(d))
図12は、成形及び露光を行う工程の概略断面図である。
下部硬質板14上に塗布した液状感光性樹脂層25の上方から、マスクネガフィルム27とともに上部硬質板13を配置する。
上部硬質板13は、図11に示すスペーサー41が受け台となって支持される。
下部硬質板14の溝36を介して真空を保持しながら、第1のフィルム層24を下部硬質板14に密着させ、マスクネガフィルム27及び上部硬質板13を液状感光性樹脂層25に積層し圧縮する。
このとき、上述した修正電子信号に従って、第2昇降機構40によりスペーサー41を1/100mm単位で上昇することにより、上部硬質板13と下部硬質板14との間隔を微増させ、版を成型する厚みを微増させることができる。これにより、版厚の低下を抑えて安定した版厚の版の連続製版を行うことができる。
【0047】
続いて、上部硬質板13を通して、上部光源11からの活性光線を照射し、目的とする感光性樹脂凸版のレリーフ部分の基部を形成させるマスキング露光を行う。
次に、レリーフ部分の画像を形成させるために、下部硬質板14上のネガフィルム23を介して、下部光源12からの活性光線を照射してレリーフ露光を行い、成形及び露光工程を終了する。
上部及び下部光源11、12としては、特に限定されないが、活性光線の一例である紫外線等を放射する光源が好ましい。具体的には、高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、メタルハライドランプ、UV−LED等が挙げられる。液状感光性樹脂に照射される光は300〜400nmの波長を有することが好ましい。
【0048】
露光工程後、上部硬質板13及びマスクネガフィルム27を除去し、溝36に空気を給気して、下部硬質板14に真空密着していた第1のフィルム層24を離脱し、第1のフィルム層(カバーフィルム)24、液状感光性樹脂25、第2のフィルム層(ベースフィルム)26からなる積層体を得る。
その後、第1のフィルム層24を剥がし、付着樹脂、及び活性光が照射されていないレリーフ面の未硬化樹脂をゴム製ブレード等で除去する。
版面から未硬化樹脂を完全に除去するためには、適当な洗剤を用いることができる。例えば、現像剤W−13(商標・旭化成ケミカルズ(株)製、アニオン界面活性剤水溶液)を2.0質量%、表面処理剤A−10(商標・旭化成ケミカルズ(株)製、ベンゾフェノン含有ノニオン界面活性剤水溶液)を0.33質量%、消泡剤SH−4(商標・旭化成ケミカルズ(株)製、シリコン系消泡剤)を0.3質量%加えた水溶液が挙げられ、これにより版面を洗い、現像し、後露光及び乾燥処理を行うことにより、目的とする感光性樹脂凸版が得られる。
【0049】
〔感光性樹脂凸版の製造装置の第1の実施形態〕
第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置について説明する。
図13に示す感光性樹脂凸版の製造装置100は、下部硬質板14と、下部硬質板と対向する上部硬質板13とにより、液状感光性樹脂を挟み込んだ状態で露光を行う感光性樹脂凸版の製造装置である。
露光光線を透過する下部硬質板14と、下部硬質板と対向配置されている上部硬質板13と、上部硬質板13及び/又は下部硬質板14の温度を、直接又は間接に計測する温度測定機構50を備えており、液体感光性樹脂を塗布する塗布機構51と、測定した温度を電子信号に変換する電子信号変換機構(図示せず)と、測定した温度と予め設定された温度との比較を行い、差分量を修正電子信号として出力する制御信号出力機構(図示せず)と、前記下部硬質板14を昇降させる第1昇降機構(図示せず)を有している。
設定温度は、ユーザーの任意により適宜変更でき、測定温度は所定のモニター55により適宜観察することができるようになされている。
【0050】
図14は、第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置の要部の概略分解図を示す。
図14に示すように、感光性樹脂凸版の製造装置100は、対向した上部硬質板13及び下部硬質板14を備え、下側に配置した下部硬質板14の上方に、堰部材29、ネガフィルム23、第1のフィルム層(カバーフィルム)24、液状感光性樹脂25、第2のフィルム層(ベースフィルム)26、マスクネガフィルム27の順に積層し、上側に配置した上部硬質板13で挟んで圧縮し、その後、露光を行う機能を有している。
上部硬質板13及び下部硬質板14の双方とも活性光線を透過する板部材であることが好ましい。
【0051】
堰部材29は、下部硬質板14の周囲であって、下部硬質板14と隙間をおいて配置される。この隙間とは、堰部材29と下部硬質板14との間であって、両者の近接する辺同士が、一定の隙間を有して配置される(前述の図3のdに相当)。
なお、図14には例示していないが、本実施形態における製造装置100は、図13に示すカバーフィルム収納部15、ベースフィルムセット部16、液状感光性樹脂コーティングバケット17及び塗布機構(キャリッジ)51を備えている。
【0052】
塗布機構(図5の符号51)は、上部硬質板13及び/又は下部硬質板14の温度を、直接又は間接に計測する温度測定機構(図5の符号50)を具備しており、本実施形態における製造装置は、上記温度測定機構により測定された温度を電子信号に変換する電子信号変換機構(図示せず)と、当該測定した温度と、予め設定された温度との比較を行い、差分量を修正電子信号として出力する制御信号出力機構(図示せず)を具備している。
【0053】
図15は、感光性樹脂凸版の製造装置100が備える、下部硬質板14及び堰部材29と、下部硬質板14を昇降させる機能を有する第1昇降機構28の関係を示す概略斜視図である。
感光性樹脂凸版の製造装置100は、下部硬質板14が第1昇降機構28により昇降自在になされており、この第1昇降機構28の制御により、図6及び図7に示して説明したように、液状感光性樹脂の塗布厚すなわち下部硬質板14と上部硬質板13との間隔を調整できる。
具体的には、上記制御信号に従って、第1昇降機構28の移動量が制御されるようになされている。
第1昇降機構28は、図15に例示するいわゆる矢板式のものが、下部硬質板14上方又は下方に移動させる量を連続的に可変制御できる点から好ましいが、第1昇降機構28の形状はこの例に限定されるものではない。
下部硬質板14を上方又は下方に連続的に移動させる方法としては、前記矢板式のもの以外に、ボールネジを用いた方法が挙げられる。
【0054】
〔感光性樹脂凸版の製造装置の第2の実施形態〕
第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置について説明する。
この実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置は、図13に示すように、下部硬質板14と、下部硬質板15と対向する上部硬質板13とにより、液状感光性樹脂を挟み込んだ状態で露光を行う感光性樹脂凸版の製造装置である。
露光光線を透過する下部硬質板14と、前記下部硬質板14と対向配置されている上部硬質板13と、上部硬質板13及び/又は下部硬質板14の温度を、直接又は間接に計測する温度測定機構50を具備する塗布機構51と、測定した温度を電子信号に変換する電子信号変換機構(図示せず)と、測定した温度と、予め設定された温度との比較を行い、差分量を修正電子信号として出力する制御信号出力機構(図示せず)と、塗布機構走行レール及び上部硬質板受け台としての機能を有するスペーサー41と、当該スペーサー41を昇降させる第2昇降機構(図示せず)を有している。
【0055】
図16は、第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置の、要部の概略分解図を示す。
図16に示すように、感光性樹脂凸版の製造装置100は、対向した2枚の上部硬質板13及び下部硬質板14を備え、下側に配置した下部硬質板14の上方に、ネガフィルム23、第1のフィルム層(カバーフィルム)24、液状感光性樹脂25、第2のフィルム層(ベースフィルム)26、マスクネガフィルム27の順に積層し、上側に配置した上部硬質板13で挟んで圧縮し、露光を行う機能を有している。
なお、第1のフィルム層24の面上には、液状感光性樹脂25の流出を防止する機能を有する、液状感光性樹脂25の厚さに対応した高さを具備するダム材(図10参照)が枠状に固定されている。
上部硬質板13及び下部硬質板14の双方とも活性光線を透過する板部材であることが好ましい。
【0056】
なお、図16には例示していないが、本実施形態における製造装置100は、図13に示すカバーフィルム収納部15、ベースフィルムセット部16、液状感光性樹脂コーティングバケット17及び塗布機構(キャリッジ)51を備えている。
【0057】
塗布機構(キャリッジ:図10の符号51)は、図16中、塗布機構走行レール及び上部硬質板受け台としての機能を有するスペーサー41に沿って、第1のフィルム層24の面上を移動するようになされており、塗布機構(キャリッジ)は、スペーサー41を昇降させる第2昇降機構40によって、第1のフィルム層24との距離が自在に調整できるようになされている。
【0058】
塗布機構(キャリッジ:図10の符号51)は、スペーサー41に沿って、第1のフィルム層上を移動するに伴い、上部硬質板13及び/又は下部硬質板14の温度を、直接又は間接に計測する温度測定機構(図10の符号50)を具備している。
本実施形態における製造装置は、上記温度測定機構により測定された温度を電子信号に変換する電子信号変換機構(図示せず)と、当該測定した温度と、予め設定された温度(温度域)との比較を行い、差分量を修正電子信号として出力する制御信号出力機構(図示せず)を具備している。
【0059】
図17は、第2の実施形態における製造装置100が備える、上部硬質板13と、スペーサー41との関係を示す概略斜視図である。
本実施形態における製造装置100は、上部硬質板13が、第2昇降機構40により昇降自在になされており、この第2昇降機構40の制御により、図12に示して説明したように、下部硬質板14と上部硬質板13との間隔を調整できる。
具体的には、上記修正電子信号に従って、第2昇降機構40の移動量が制御されるようになされている。
第2昇降機構40の形状については特に限定されないが、上部硬質板13を昇降させる量を連続的に制御できるものであるとする。
【実施例】
【0060】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
〔実施例〕(版厚補正あり)
(装置)
図5、図6に示す温度測定機構を具備する塗布機構(キャリッジ)を備え、測定温度を電子信号に変換する電子信号変換機構を備え、予め設定されている温度との比較を行い、差分量を所定の制御信号記憶出力機構により修正電子信号として出力する機能を備えた感光性樹脂凸版の製造装置を用いた。
(操作)
最終的に目的とするベースフィルムと感光性樹脂層との積層体(感光性樹脂凸版)の厚さが7.2mmに設定される「7mm版」を連続製版した。
図5に示すように、温度測定機構を具備する塗布機構(キャリッジ)を下部硬質板上で移動させ、カバーフィルム(旭化成ケミカルズ(株)製、CF−87)を介して温度を測定した。
測定した温度は、電子信号変換機構により所定の電子信号に変換し、この測定温度と、予め設定された温度(19.9℃以下、20.0〜24.5℃、25〜29.9℃、30〜34.9℃、35〜39.9℃、40℃以上)との比較を行い、これらの温度域に対応した修正電子信号を制御信号記憶出力機構により出力し、下部硬質板を1/100mm単位で下降させた。
図6に示すように、塗布機構(キャリッジ)を、図中矢印B方向に移動させ、カバーフィルム上に液状感光性樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、TENAFLEX F−600B)を塗布した。
上記修正電子信号に従って下部硬質板を下降させたことにより、下部硬質板14とコーティングバケット17との間隔を微増させ、液状感光性樹脂25の塗布厚みが微増するよう調整し、図6に示すように、液状感光性樹脂上にベースフィルム(旭化成ケミカルズ(株)製、BF−6A6 膜厚295μm)を積層し、ラミネートローラにより圧着した。
続いて、図7に示すように成形及び露光を行なった。
液状感光性樹脂層の上にマスクネガフィルム(OYO社製サーマルネガフィルム、膜厚130μm)と上部硬質板を配置した。
ここで、上記時点にて下部硬質板を下降させたことにより、上下硬質板の間隔は当初設定した間隔より微増しており、すなわち、版を成型する厚みは1/100mm単位で微増された状態に調節してある。
その後、上部光源(中心波長365nmの紫外線蛍光灯を複数配置した光源)により上部硬質板を通して、平均照度4〜5mW/cm2の紫外線を照射し、マスキング露光を行った。
次に、下部硬質板上のネガフィルムを介して、下部光源(中心波長365nmの紫外線蛍光灯ランプを複数配置した光源)により、平均照度4〜5mW/cm2の紫外線を照射してレリーフ露光を行い、成形及び露光工程を終了した。
その後、上部硬質板及びマスクネガフィルムを除去し、カバーフィルム、感光性樹脂、ベースフィルムからなる積層体を得た。
後工程において、カバーフィルムを引き剥がし、その後、カバーフィルム上に付着している樹脂や未硬化樹脂を除去した後、ベースフィルムと感光性樹脂が積層されている感光性樹脂凸版が得られた。
(結果)
図18に示すように、4枚の連続製版工程中、下部硬質板の温度は24.1℃から35.6℃まで上昇したが、感光性樹脂凸版の平均版厚の変動幅は、1/100mm以内に抑えられており、連続して均一な版厚に製版できたことが確かめられた。
【0062】
〔比較例〕(版厚補正なし)
(装置)
図5、図6に示す感光性樹脂凸版の製造装置であって、上記実施例において用いたものと同一の装置を用いた。
(操作)
最終的に目的とするベースフィルムと感光性樹脂層との積層体(感光性樹脂凸版)の厚さが7.2mmに設定される「7mm版」を連続製版した。
下部硬質板の温度を測定せず、図6に示すように、塗布機構(キャリッジ)を、図中矢印B方向に移動させ、カバーフィルム上に液状感光性樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、F−600B)を塗布した。
図6に示すように、液状感光性樹脂上にベースフィルム(旭化成ケミカルズ(株)製、BF−6A6)を積層し、ラミネートローラにより圧着した。
続いて、図7に示すように成形及び露光を行なった。
液状感光性樹脂層の上にマスクネガフィルム(OYO社製サーマルネガフィルム、膜厚130μm)と上部硬質板を配置した。
上下硬質板の間隔に対して補正を加えず、上部光源(中心波長365nmの紫外線蛍光灯を複数配置した光源)により、上部硬質板を通して平均照度4〜5mW/cm2の紫外線を照射し、マスキング露光を行った。
次に、下部硬質板上のネガフィルムを介して、下部光源(中心波長365nmの紫外線蛍光灯を複数配置した光源)により、平均照度4〜5mW/cm2の紫外線を照射してレリーフ露光を行い、成形及び露光工程を終了した。
その後、上部硬質板及びマスクネガフィルムを除去し、カバーフィルム、感光性樹脂、ベースフィルムからなる積層体を得た。
後工程において、カバーフィルムを引き剥がし、その後、カバーフィルム上に付着している樹脂や未硬化樹脂を除去した後、ベースフィルムと感光性樹脂が積層されている感光性樹脂凸版が得られた。
(結果)
図19に示すように、7枚の連続製版工程中、下部硬質板の温度は20.1℃から33.6℃まで上昇するとともに、最終的に平均版厚は6/100mmも薄くなってしまい、連続して均一な版厚に製版できなかったことが確かめられた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、感光性樹脂凸版の連続製版を行う分野において、特に、精密な印刷精度を要求される技術分野で産業上の利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】従来技術における液状感光性樹脂を用いて感光性樹脂凸版を製造する露光装置の斜視図を示す。
【図2】従来技術における露光装置を用いて液状感光性樹脂凸版を製造する一工程の概略断面図を示す。
【図3】第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いて感光性樹脂凸版を製造する一工程の概略断面図を示す。
【図4】第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いて感光性樹脂凸版を製造する一工程の概略断面図を示す。
【図5】第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いて温度測定機構により硬質版の温度を測定する工程の概略断面図を示す。
【図6】第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いて液状感光性樹脂を塗布する工程の概略断面図を示す。
【図7】第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いて上下硬質版による成形と露光を行う工程の概略断面図を示す。
【図8】第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いて感光性樹脂凸版を製造する一工程の概略断面図を示す。
【図9】第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いて感光性樹脂凸版を製造する一工程の概略断面図を示す。
【図10】第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いて温度測定機構により硬質版の温度を測定する工程の概略断面図を示す。
【図11】第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いて液状感光性樹脂を塗布する工程の概略断面図を示す。
【図12】第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いて上下硬質板による成形と露光を行う工程の概略断面図を示す。
【図13】感光性樹脂凸版の製造装置の概略斜視図を示す。
【図14】第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置の要部の概略分解図を示す。
【図15】下部硬質板、堰部材、及び第1昇降機構の関係を表す概略斜視図を示す。
【図16】第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置の要部の概略分解図を示す。
【図17】上部硬質板、スペーサー、及び第2昇降機構の関係を表す概略斜視図を示す。
【図18】実施例における連続製版時の版厚変動の状態を示す。
【図19】比較例における連続製版時の版厚変動の状態を示す。
【符号の説明】
【0065】
10,100:感光性樹脂凸版の製造装置
11:上部光源
12:下部光源
13:上部硬質板
14:下部硬質板
15:カバーフィルム収納部
16:ベースフィルムセット部
17:液状感光性樹脂コーティングバケット
18:キャリッジ
23:ネガフィルム
24:第1のフィルム層(カバーフィルム)
25:液状感光性樹脂
26:第2のフィルム層(ベースフィルム)
27:マスクネガフィルム
28:第1昇降機構
29:堰部材
30:ダム材
40:第2昇降機構
41:スペーサー
35,36:溝
50:温度測定機構
51:塗布機構(キャリッジ)
53:ラミネートロール
55:モニター
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール、フィルム、シール及びラベル等の印刷に用いられる感光性樹脂凸版の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液状感光性樹脂を用いて感光性樹脂凸版の製造を行うためには、図1に例示する構成に代表される、露光装置を備えた感光性樹脂凸版の製造装置が使用される(例えば、特許文献1〜4参照)。
図1は、液状感光性樹脂を用いて感光性樹脂凸版を製造する従来技術の感光性樹脂凸版の製造装置10の斜視図を示す。
感光性樹脂凸版の製造装置10は、上部光源11、上部硬質板13、下部硬質板14及び下部光源12を具備している。
また、感光性樹脂凸版の製造装置10は、下部硬質板14上のネガフィルム(図示せず)上に配されるカバーフィルムを供給するカバーフィルム収納部15と、上部硬質板13上に、マスクネガフィルムを介して配されるベースフィルムを供給するベースフィルムセット部16とを具備している。
さらに、カバーフィルムを介して下部硬質板14の上に液状感光性樹脂を供給する液状感光性樹脂コーティングバケット17を具備している。
キャリッジ18の移動により下部硬質板14上に液状感光性樹脂が塗布され、同時にベースフィルムセット部16から当該液状感光性樹脂上にベースフィルムが供給される。
【0003】
図2は、感光性樹脂凸版の製造工程を示す概略断面図である。
先ず、高い平面精度に処理された下部硬質板14の上に、ネガフィルム23、及びカバーフィルム収納部15から供給されたカバーフィルム24を、真空等の手段によりしわがないように密着して下部硬質板14上に固定する。
次に、図1に示すキャリッジ18を移動させて、カバーフィルム24の上に、液状感光性樹脂25を塗布する。
カバーフィルム24の平面上に塗布する液状感光性樹脂25の流出を抑制するために、カバーフィルム24の上に、塗布されるべき液状感光性樹脂25の厚さに応じた高さのダム材30を枠状に形成し、カバーフィルム24上に貼り付ける等により固定する。
ここで、ダム材30によって形成された枠内に液状感光性樹脂25を塗布した後、当該液状感光性樹脂25の上に、ベースフィルム26とマスクネガフィルム27とを重ねる。
その後、感光性樹脂版の厚みを決めるためにセットされたスペーサー28の上に置かれた上部硬質板13によって、下部硬質板14の上に積層された、ネガフィルム23、カバーフィルム24、ダム材30、液状感光性樹脂25、ベースフィルム26、及びマスクネガフィルム27を挟む。
【0004】
次に、上部硬質板13を通して、上部光源11からの活性光を照射し、目的とする印刷版のレリーフ部分の基部を形成させるためのマスキング露光を行う。
次に、レリーフ部分の画像を形成させるために、下部硬質板14上のネガフィルム23を介して、下部光源12からの活性光を照射してレリーフ露光を行い、露光工程を終了する。
【0005】
露光が終了した版からカバーフィルム24を引き剥がし、カバーフィルム24に付着している樹脂、及び活性光が照射されていないレリーフ面の未硬化樹脂をゴム製ブレード等により掻き取って除去する。
版面から未硬化樹脂を完全に除去するため、適当な洗剤で版面を洗い出して現像し、後露光及び乾燥処理を施すことにより、目的とする液状感光性樹脂凸版が製造される。
【0006】
【特許文献1】特開平8−305006号公報
【特許文献2】特開平8−314126号公報
【特許文献3】特開平11−84633号公報
【特許文献4】特開平11−151729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、感光性樹脂凸版を連続して製版を続けていくと、版厚が徐々に低下していくという問題が生じる。
第1の原因としては、露光時に発生する感光性樹脂の重合硬化熱が、上部硬質板や下部硬質板に伝わり、これらが熱変形することにより上下硬質板の間隔が狭くなることが挙げられる。
第2の原因としては、製版が連続して行われるに従って温度が上昇した上部硬質板及び下部硬質板から感光性樹脂に伝熱することにより、樹脂粘度が低下し流動することにより樹脂層が薄くなることが挙げられる。
実際の製版工程においては、第1及び第2の原因が複合しているものと考えられる。
版厚が低下すると、インキかすれ等の印刷不良の原因となり、又、刷替えにおいて版を印刷機の版胴にセットする度に印圧調整を行う必要がある等、調整に要する手間は印刷現場での生産効率を悪化させる。
【0008】
上記問題の解決を図る方法として、製版工程ごとに上部硬質板と下部硬質板との間隔を実測し、上下硬質版の変形度合いを算出し、さらには、樹脂流動による感光性樹脂層の厚さの変化を測定し、これらを考慮した上で、予め設定された版厚に補正する機構を設けることが挙げられる。
しかしながら、連続製版工程においては、上下硬質板や感光性樹脂の温度は常に変化しているため、その都度個々の状態を測定しながら補正を行うことは、操作が煩雑となり実質的に不可能である。
また、所定の冷却機構を設けて温度上昇を抑制する方法も考えられるが、コストやエネルギー消費の観点から実用上不利であり、また冷却に要する時間は歩留まりの低下を招来するという問題がある。
【0009】
そこで本発明においては、上記煩雑な操作を行うことなく、かつ低コストで、版厚を確実に制御しながら、感光性樹脂凸版の連続製版が可能な、感光性樹脂凸版の製造方法、及び製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明においては、第1のフィルム層、感光性樹脂層、及び第2のフィルム層を含む積層体を、下部硬質板と上部硬質板とにより挟み込んだ状態で露光を行う感光性樹脂凸版の製造方法であって、(a)上部硬質板及び/又は下部硬質板の温度、又は下部硬質板に積層される第1のフィルム層を介した下部硬質板の温度を、直接又は間接に計測する工程と、(b)前記下部硬質板に積層した前記第1のフィルム層の上に、液状感光性樹脂を塗布する工程と、(c)前記液状感光性樹脂の塗布厚みを調節する工程と、(d)前記下部硬質板と前記上部硬質板との間隔を調節する工程とを有する感光性樹脂凸版の製造方法を提供する。
【0011】
請求項2の発明においては、前記(c)工程における液状感光性樹脂の塗布厚みの調節は、前記(a)工程により計測された温度と、予め設定した温度とを比較し、その差分に応じて行う請求項1に記載の感光性樹脂凸版の製造方法を提供する。
【0012】
請求項3の発明においては、前記(d)工程における下部硬質板と上部硬質板との間隔の調節は、前記(a)工程により計測された温度と、予め設定した温度とを比較し、その差分に応じて行う請求項1又は2に記載の感光性樹脂凸版の製造方法を提供する。
【0013】
請求項4の発明においては、第1のフィルム層、感光性樹脂層、及び第2のフィルム層を含む積層体を、下部硬質板と上部硬質板とにより挟み込んだ状態で露光を行う感光性樹脂凸版の製造装置であって、露光光線を透過する下部硬質板と、前記下部硬質板と対向配置されている上部硬質板と、上部硬質板及び/又は下部硬質板の温度を、直接又は間接に計測する温度測定機構と、測定した温度を電子信号に変換する電子信号変換機構と、測定した温度の電子信号、及び予め設定した温度域に対応した任意の修正電子信号を記憶し、測定した温度に対応した任意の修正電子信号を出力する制御信号記憶出力機構と、前記下部硬質板に積層した前記第1のフィルム層の上に液状感光性樹脂を塗布する塗布機構と、前記下部硬質板を昇降させる第1昇降機構、又は、塗布機構走行レール及び上部硬質板受け台としての機能を有するスペーサー及び当該スペーサーを昇降させる第2昇降機構とを有している感光性樹脂凸版の製造装置を提供する。
【0014】
請求項5の発明においては、前記第1昇降機構及び前記第2昇降機構は、1/100mm単位で昇降量を調節するようになされている請求項4に記載の感光性樹脂凸版の製造装置を提供する。
【0015】
請求項6の発明においては、前記温度測定機構は、前記上部硬質板及び/又は下部硬質板の端部から20mm以上内側の位置において温度測定を行う請求項4又は5に記載の感光性樹脂凸版の製造装置を提供する。
【0016】
請求項7の発明においては、前記修正電子信号に従い、前記第1昇降機構により前記下部硬質板を昇降させる請求項4乃至6のいずれか一項に記載の感光性樹脂凸版の製造装置を提供する。
【0017】
請求項8の発明においては、前記修正電子信号に従い、前記第2昇降機構により前記スペーサーを昇降させる請求項4乃至6のいずれか一項に記載の感光性樹脂凸版の製造装置を提供する。
【0018】
請求項9の発明においては、前記修正電子信号に従い、前記第2昇降機構により前記上部硬質板を昇降させる請求項4乃至6、又は8のいずれか一項に記載の感光性樹脂凸版の製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、版厚を均一に維持しながら感光性樹脂凸版の連続製版が可能な感光性樹脂凸版の製造方法、及び製造装置が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、本実施形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できるものとする。
【0021】
〔感光性樹脂凸版の製造方法〕
本実施形態における感光性樹脂凸版の製造方法は、第1のフィルム層(カバーフィルム)、感光性樹脂層、及び第2のフィルム層(ベースフィルム)を含む積層体を、下部硬質板と上部硬質板とにより挟んだ状態で、感光性樹脂層の露光を行うものであり、下記(a)工程〜(d)工程を有している。
(a)上部硬質板及び/又は下部硬質板の温度、又は下部硬質板に積層される第1のフィルム層を介した下部硬質板の温度を、直接又は間接に計測する工程。
(b)前記下部硬質板に積層した前記第1のフィルム層の上に、液状感光性樹脂を塗布する工程。
(c)前記液状感光性樹脂の塗布厚みを調節する工程。
(d)下部硬質板と上部硬質板との間隔を調節する工程。
【0022】
〔第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置〕
第1のフィルム層(カバーフィルム)、感光性樹脂層、及び第2のフィルム層(ベースフィルム)を含む積層体を、下部硬質板と上部硬質板とにより挟み込んだ状態で感光性樹脂層の露光を行う機能を備えた感光性樹脂凸版の製造装置であり、露光光線を透過する下部硬質板と、前記下部硬質板と対向配置されている上部硬質板と、上部硬質板及び/又は下部硬質板の温度を、直接又は間接に計測する温度測定機構と、測定した温度を電子信号に変換する電子信号変換機構と、測定した温度の電子信号、及び予め設定した温度域に対応した任意の修正電子信号を記憶し、測定した温度に対応した任意の修正電子信号を出力する制御信号記憶出力機構と、前記下部硬質板に積層した前記第1のフィルム層の上に液状感光性樹脂を塗布する塗布機構と、前記下部硬質板を昇降させる第1昇降機構とを有している。
本実施の形態における感光性樹脂凸版の製造装置は、重要な機能として版厚の制御機能を有している。
これは、実際に測定した上部硬質板及び/又は下部硬質板の温度を、予め設定しておいた温度域と比較して、当該温度域に対応した修正電子信号を出力して第1昇降機構の作動量を制御することによって、連続製版における版厚の低下を抑制するものである。
【0023】
〔第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置〕
第1のフィルム層(カバーフィルム)、感光性樹脂層、及び第2のフィルム層(ベースフィルム)を含む積層体を、下部硬質板と上部硬質板とにより挟み込んだ状態で感光性樹脂層の露光を行う機能を備えた感光性樹脂凸版の製造装置であり、露光光線を透過する下部硬質板と、前記下部硬質板と対向配置されている上部硬質板と、上部硬質板及び/又は下部硬質板の温度を、直接又は間接に計測する温度測定機構と、測定した温度を電子信号に変換する電子信号変換機構と、測定した温度の電子信号、及び予め設定した温度域に対応した任意の修正電子信号を記憶し、測定した温度に対応した任意の修正電子信号として出力する制御信号記憶出力機構と、前記下部硬質板に積層した前記第1のフィルム層の上に液状感光性樹脂を塗布する塗布機構と、塗布機構走行レール及び上部硬質板受け台としての機能を有するスペーサーと、当該スペーサーを昇降させる第2昇降機構とを有している。
この第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置においても、上述した第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置と同様に、重要な機能として版厚の制御機能を具備している。
これは、実際に測定した上部硬質板及び/又は下部硬質板の温度を、予め設定しておいた温度域と比較して、当該温度域に対応した修正電子信号を出力して第2昇降機構の作動量を制御することによって、連続製版における版厚の低下を抑制するものである。
【0024】
本実施形態における感光性樹脂凸版の製造方法について、上記第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いた場合と、第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いた場合とに分けて説明する。
【0025】
〔第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いた場合の製造方法〕
図3、図4は、本実施形態における製造方法の、工程(a)の前段階を説明する概略断面図である。
先ず、図3に示すように、第1昇降機構28上に載置された下部硬質板14と、当該下部硬質板14の周囲であって隙間dを有するように配置された堰部材29とに、第1のフィルム層(カバーフィルム)24を密着させる。
なお、感光性樹脂凸版のレリーフ部を形付けるネガフィルム23は、予め下部硬質板14と第1のフィルム層(カバーフィルム)24との間に配置する。
【0026】
堰部材29は、下部硬質板14の周囲に配置される枠部材である。
堰部材29の材質は、特に限定されないが、上部硬質板11を載せても形状変化が殆ど生じない硬質材であるものとする。例えば、金属、非鉄金属、樹脂成形材等が好ましい。
なお、堰部材29の第1のフィルム層24との接触面は、平滑加工されていることが好ましい。
堰部材29自体が枠部材であることから、下部硬質板14の周囲に堰部材29を配置させ、堰部材29内に下部硬質板14が配置され、第1のフィルム層24は、下部硬質板14及び堰部材29の上面に配置される。
堰部材29の側面と下部硬質板14の側面との間である隙間dは、200mm以下であることが好ましく、5mm以下の隙間であることがより好ましい。これは、第1フィルム層24によって凹部が形成され、この凹部内に液状感光性樹脂が塗布されたとき、液状感光性樹脂の重さにより第1のフィルム層24がたるみ、液状感光性樹脂が成形範囲外に流出することを抑制するためである。
【0027】
図3に示すように、下部硬質板14及び堰部材29は、それぞれの上面に溝36、35を有していることが好ましい。溝36、35を介して真空手段等により空気を排気し、あるいは必要に応じて給気により第1のフィルム層24の位置を調節した後にさらに排気することにより、第1のフィルム層24を所望の位置に、しわを発生させずに密着させることができる。
なお、図3においては、下部硬質板14及び堰部材29の上面に溝36、35が形成されている構成としたが、溝の位置はこれらの上面に限定されるものではなく、第1のフィルム層24が、下部硬質板14及び堰部材29に密着されればよく、例えば、下部硬質板14及び堰部材29の側面であってもよい。
【0028】
次に、図4に示すように、第1昇降機構28により、下部硬質板14を下方に移動させ、第1のフィルム層24により凹部を形成する。
なお、堰部材29を上方へ移動させて、第1のフィルム層24により凹部を形成するようにしてもよい。
また、第1昇降機構28により下部硬質板14を移動させる際、溝35、36を介して真空を保持しながら、第1のフィルム層24を下部硬質板14及び堰部材29に密着させ、位置決めの精度を維持することが好ましい。
【0029】
ここで、下部硬質板14の上面と堰部材29の上面との距離は、第1のフィルム層24により形成される凹部の深さに相当し、最終的に露光硬化により得られる感光性樹脂層に相当し、感光性樹脂凸版の版厚に影響する。そのため、下部硬質板14の上面と堰部材29の上面との距離は、目的とする感光性樹脂凸版の版厚を考慮して、例えば、1〜10mmの範囲内で制御できるようになされている。
【0030】
(工程(a))
図5に示すように、温度測定機構50を具備する塗布機構(キャリッジ)51を、図中矢印A方向に移動させ、下部硬質板14の温度を第1のフィルム層24を介して計測する。
なお、図5においては下部硬質版14の温度を測定する状態を示しているが、温度測定機構50によって、下部硬質板14と対向配置されている上部硬質板(図示せず)の温度を測定してもよい。
温度測定は、直接又は間接に行うものとし、接触、非接触のいずれの状態で行ってもよい。
【0031】
感光性樹脂凸版の連続製版においては、下部硬質板14及び/又は上部硬質板15の温度が、最終的に目的とする感光性樹脂凸版の版厚に影響するため、連続製版中の設定温度(温度域)を予め決定しておく。
そして、上記のようにして測定した温度を、所定の電子信号変換機構(図示せず)によって電子信号に変換し、この測定温度と、予め決定しておいた設定温度(温度域)とを比較し、差分量を加味し、所定の制御信号出力機構(図示せず)により修正電子信号として出力する。
連続製版を行った場合には、工程の進行とともに上部及び下部硬質板の温度が上昇するに従い、版厚が低下していくが、硬質板の温度が一般的に常温(20℃程度)よりも低く保たれていれば、版厚低下は発生しない。
しかし、一旦、硬質板の温度が20℃を超えると、版厚低下が発生し、さらには連続して製版を行っていくと、硬質板温度は最大50℃近傍にまで上昇し、版厚低下はますます顕著になる。版厚の低下量は、硬質板の温度上昇量に対して比例的に推移することから、基準温度として例えば20.0℃を予め設定し、20.0℃未満の場合と20.0℃以上の場合に大別する。
具体的には、20.0℃未満の温度域と、20.0℃以上の温度域においては5℃刻み、より厳密には1℃刻みで最大60℃まで設定し、かつそれぞれの温度域に対応した修正電子信号を任意に設定する。
この修正電子信号を、制御信号記憶出力機構において記憶しておき、測定した温度を、予め設定しておいた温度域と比較して、温度域に対応した修正電子信号を出力する。
出力する修正電子信号は、直接的に版厚低下の修正を促すためのmm分量として標示データ信号として設定してもよいが、好ましくは前記昇降機構を駆動するパルスモータ、もしくはサーボモータ等の作動量を決定するパルス信号として設定してもよい。
【0032】
(工程(b))
図6に示すように、塗布機構(キャリッジ)51を、図中矢印B方向に移動させ、下部硬質板14に積層した第1のフィルム層24の上に、液状感光性樹脂25を塗布する。
液状感光性樹脂25は、特に限定されるものではなく、従来公知の材料を適用できる。例えば、オリゴマー又はポリマー成分、重合性モノマー成分、光開始剤、及び安定剤から構成される液状の感光性樹脂等が挙げられる。
液状感光性樹脂25の塗布を行う際、溝35、36を介して真空を保持しながら、カバーフィルム24を下部硬質板14及び堰部材29に密着させることが、感光性樹脂凸版の位置決め精度を高く維持する観点から好ましい。
液状感光性樹脂25の塗布方法は特に限定されるものではないが、図1にて例示したように、塗布機構(キャリッジ)51を下部硬質板14上で移動させる際、液状感光性樹脂コーティングバケット17から液状感光性樹脂を流出させ、第1のフィルム層24で形成された凹部に塗布することが好ましい。
【0033】
(工程(c))
上述した液状感光性樹脂25の塗布の際には塗布厚みの調整を行う。液状感光性樹脂の塗布厚みは、最終的に目的とする感光性樹脂凸版の版厚に影響するからである。
連続製版においては、下部硬質板14又は上部硬質板(図示せず)の温度が上昇していき、熱変形により上下硬質板の間隔が狭くなる傾向がある。
また、上部硬質板及び下部硬質板から感光性樹脂に伝熱し、粘度が低下して流動し、樹脂層が薄くなる傾向がある。
これら温度影響によって、版厚の低下を引き起こす問題を解決するため、上記工程(a)により得られた修正電子信号に従って、第1昇降機構28によって下部硬質板14の高さを調節する。具体的には、下部硬質板14を1/100mm単位で下降させることにより、下部硬質板14とコーティングバケット17との間隔を微増し、樹脂の塗布厚みの微増が図られる。そして、最終的に上部硬質板と下部硬質板との間隔、すなわち版の成型厚みを微増させることができる。
これにより、版厚の低下を抑制し、安定した版厚の版が連続して製造できる。例えば、パルス信号によって第1昇降機構28の作動量の補正を行い、製造しようとする版厚に一括して加味することで版厚の低下が抑制される。
また、液状感光性樹脂の塗布厚みを補正する方法として、例えば上記工程(a)により得られた修正電子信号に従って、工程(b)においてコーティングバケット17の開度を調整する方法や、修正電子信号に従って塗布機構(キャリッジ)51の移動する速度を調整することにより液状感光性樹脂の塗布厚みを補正する方法等も有効である。
なお、版厚の低下量は、製造しようとする版厚によって若干異なるが、硬質板温度が20.0℃〜60.0℃の範囲においては概ね1/100mm〜最大15/100mmである。
【0034】
また、上述した液状感光性樹脂25の塗布の際には、液状感光性樹脂25上に、第2のフィルム層(ベースフィルム)26を積層する。
第2のフィルム26を積層する方法は特に限定されるものではないが、図1にて例示したような、ベースフィルムセット部16により、液状感光性樹脂25上に供給することが好ましい。
なお、第2のフィルム層26の積層の際、溝35、36を介して真空を保持しながら行うことが、位置決め精度の観点から好ましい。
また、第2のフィルム26を積層する際、ラミネートロール53により押圧することが好ましい。
【0035】
(工程(d))
図7は、成形及び露光を行う工程の概略断面図である。
下部硬質板14上に塗布した液状感光性樹脂層25の上方から、マスクネガフィルム27及び上部硬質板13を配置する。
下部硬質板14及び堰部材29の溝36、35を介して真空を保持しながら、第1のフィルム層24を下部硬質板14及び堰部材29に密着させ、マスクネガフィルム27及び上部硬質板13を液状感光性樹脂層25に積層し、圧縮する。
【0036】
続いて、上部硬質板13を通して、上部光源11からの活性光線を照射し、目的とする感光性樹脂凸版のレリーフ部分の基部を形成させるマスキング露光を行う。
次に、レリーフ部分の画像を形成させるために、下部硬質板14上のネガフィルム23を介して、下部光源12からの活性光線を照射してレリーフ露光を行い、成形及び露光工程を終了する。
上部及び下部光源11、12としては、特に限定されないが、活性光線の一例である紫外線等を放射する光源が好ましい。具体的には、高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、メタルハライドランプ、UV−LED等が挙げられる。液状感光性樹脂に照射される光は300〜400nmの波長を有することが好ましい。
【0037】
露光工程後、上部硬質板13及びマスクネガフィルム27を除去し、溝35、36に空気を給気して、下部硬質板14及び堰部材29に真空密着していた第1のフィルム層24を離脱し、第1のフィルム層(カバーフィルム)24、液状感光性樹脂25、第2のフィルム層(ベースフィルム)26からなる積層体を得る。
その後、第1のフィルム層24を剥がし、付着樹脂、及び活性光が照射されていないレリーフ面の未硬化樹脂をゴム製ブレード等で除去する。
未硬化樹脂を完全に除去するためには、適当な洗剤を用いることができる。例えば、現像剤W−13(商標・旭化成ケミカルズ(株)製、アニオン界面活性剤水溶液)を2.0質量%、表面処理剤A−10(商標・旭化成ケミカルズ(株)製、ベンゾフェノン含有ノニオン界面活性剤水溶液)を0.33質量%、消泡剤SH−4(商標・旭化成ケミカルズ(株)製、シリコン系消泡剤)を0.3質量%加えた水溶液が挙げられ、これにより版面を洗い、現像し、後露光及び乾燥処理を行うことにより、目的とする感光性樹脂凸版が得られる。
【0038】
〔第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いた場合の製造方法〕
図8、図9は、本実施形態における製造方法の、工程(a)の前段階を説明する概略断面図である。
この実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置は、塗布機構(キャリッジ)走行レール及び上部硬質版受け台としての機能を有するスペーサー41が、図8の紙面上、手前側と奥側とで平行に配置されており、スペーサー間に下部硬質板14が配置されている。なおスペーサー41は、第2昇降機構40により昇降可能に支持されている。
図8に示すように、下部硬質板14に、第1フィルム層(カバーフィルム)24を密着させる。
なお、感光性樹脂凸版のレリーフ部を形付けるネガフィルム23は、予め下部硬質板14と第1のフィルム層(カバーフィルム)24との間に配置する。
【0039】
図8に示すように、下部硬質板14は、上面に溝36を有していることが好ましい。
溝36を介して、真空手段等により空気を排気し、あるいは必要に応じて、給気により第1フィルム層(カバーフィルム)24の位置を調整した後にさらに排気することにより、第1フィルム層(カバーフィルム)24を下部硬質板14の所定の位置に、しわがないように密着させることができる。
次に、図9に示すように、第2昇降機構40によりスペーサー41を上方に移動させ、塗布機構(キャリッジ)51がカバーフィルム24面上を走行するための間隔を確保する。
【0040】
(工程(a))
図10に示すように、温度測定機構50を具備する塗布機構(キャリッジ)51を、図中矢印A方向に移動させ、下部硬質板14の温度を第1のフィルム層24を介して計測する。
なお、図10においては下部硬質版14の温度を測定する状態を示しているが、温度測定機構50によって、下部硬質板14と対向配置されている上部硬質板(図示せず)の温度を測定してもよい。温度測定は、直接又は間接に行うものとし、接触、非接触のいずれの状態で行ってもよい。
【0041】
感光性樹脂凸版の連続製版においては、下部硬質板14及び/又は上部硬質板15の温度が、最終的に目的とする感光性樹脂凸版の版厚に影響するため、連続製版中の設定温度を予め決定しておく。
そして、上記のようにして測定した温度を、所定の電子信号変換機構(図示せず)によって電子信号に変換し、この測定温度と、予め決定しておいた設定温度(温度域)とを比較し、差分量を加味し、所定の制御信号出力機構(図示せず)により修正電子信号として出力する。
連続製版を行った場合には、工程の進行とともに上部及び下部硬質板の温度が上昇するに従い、版厚が低下していくが、硬質板の温度が一般的に常温(20℃程度)よりも低く保たれていれば、版厚低下は発生しない。
しかし、一旦、硬質板の温度が20℃を超えると、版厚低下が発生し、さらには連続して製版を行っていくと、硬質板温度は最大50℃近傍にまで上昇し、版厚低下はますます顕著になる。版厚の低下量は、硬質板の温度上昇量に対して比例的に推移することから、基準温度として例えば20.0℃を予め設定し、20.0℃未満の場合と20.0℃以上の場合に大別する。
具体的には、20.0℃未満の温度域と、20.0℃以上の温度域においては5℃刻み、より厳密には1℃刻みで最大60℃まで設定し、かつそれぞれの温度域に対応した修正電子信号を任意に設定する。
この修正電子信号を、制御信号記憶出力機構において記憶しておき、測定した温度を、予め設定しておいた温度域と比較して、当該温度域に対応した修正電子信号を出力する。
出力する修正電子信号は、直接的に版厚低下の修正を促すためのmm分量として標示データ信号に設定してもよいが、好ましくは前記昇降機構を駆動するパルスモータ、もしくはサーボモータ等の作動量を決定するパルス信号として設定してもよい。
【0042】
なお、第1のフィルム層24上には、予め液状感光性樹脂25の流出を抑制するための液状感光性樹脂25の厚さに応じた高さのダム材30を枠状に固定しておく。
【0043】
(工程(b))
図11に示すように、塗布機構(キャリッジ)51を、図中矢印B方向に移動させ、下部硬質板14に積層した第1のフィルム層24の上に、液状感光性樹脂25を塗布する。
液状感光性樹脂25は、特に限定されるものではなく、従来公知の材料を適用できる。
例えば、オリゴマー又はポリマー成分、重合性モノマー成分、光開始剤及び安定剤から構成される液状の感光性樹脂等が挙げられる。
液状感光性樹脂25の塗布を行う際、溝36を介して真空を保持しながら、第1のフィルム層24を下部硬質板14に密着させることが、感光性樹脂凸版の位置決め精度を高く維持する観点から好ましい。
液状感光性樹脂25の塗布方法は、特に限定されるものではないが、図1にて例示したように、塗布機構(キャリッジ)51を下部硬質板14上を移動させる際、液状感光性樹脂コーティングバケット17から液状感光性樹脂を流出させ、上記ダム材30により囲まれた領域に塗布することが好ましい。
【0044】
(工程(c))
上述した液状感光性樹脂25の塗布の際には、塗布厚みの調整を行う。
液状感光性樹脂の塗布厚みは、最終的に目的とする感光性樹脂凸版の版厚に影響するからである。
連続製版においては、下部硬質板14又は上部硬質板(図示せず)の温度が上昇していき、熱変形により上下硬質板の間隔が狭くなる傾向がある。
また、上部硬質板及び下部硬質板から感光性樹脂に伝熱し、粘度が低下して流動し、樹脂層が薄くなる傾向がある。
これら温度影響による版厚低下の問題を解決するため、第2昇降機構40によりスペーサー41を、上述した修正電子信号に従って調節する。具体的には、スペーサー41を1/100mm単位で上昇させることにより、下部硬質板14とコーティングバケット17との間隔を微増し、樹脂の塗布厚みを微増することができる。これにより、版厚の低下を抑えて安定した版厚の版の連続製版を行うことができる。
すなわち、例えば、上述したパルス信号によって第2昇降機構40の作動量の補正を行い、製造しようとする版厚に一括して加味することで版厚の低下を抑制する。
また、液状感光性樹脂の塗布厚みを補正する方法としては、例えば上記工程(a)により得られた修正電子信号に従って、工程(b)においてコーティングバケット17の開度を調整する方法や、修正電子信号に従って塗布機構(キャリッジ)51の移動する速度を調整することにより液状感光性樹脂の塗布厚みを補正する方法等も有効である。
なお、版厚の低下量は、製造しようとする版厚によって若干異なるが、硬質板温度が20.0℃〜60.0℃の範囲において、概ね1/100mm〜最大15/100mmである。
【0045】
また、上述した液状感光性樹脂25の塗布の際には、液状感光性樹脂25上に、第2のフィルム層(ベースフィルム)26を積層する。
第2のフィルム26を積層する方法は特に限定されるものではないが、図1にて例示したような、ベースフィルムセット部16により、液状感光性樹脂25上に供給することが好ましい。
なお、第2のフィルム層26の積層の際、溝36を介して真空を保持しながら行うことが、位置決め精度の観点から好ましい。
また、第2のフィルム26を積層する際、ラミネートロール53により押圧することが好ましい。
【0046】
(工程(d))
図12は、成形及び露光を行う工程の概略断面図である。
下部硬質板14上に塗布した液状感光性樹脂層25の上方から、マスクネガフィルム27とともに上部硬質板13を配置する。
上部硬質板13は、図11に示すスペーサー41が受け台となって支持される。
下部硬質板14の溝36を介して真空を保持しながら、第1のフィルム層24を下部硬質板14に密着させ、マスクネガフィルム27及び上部硬質板13を液状感光性樹脂層25に積層し圧縮する。
このとき、上述した修正電子信号に従って、第2昇降機構40によりスペーサー41を1/100mm単位で上昇することにより、上部硬質板13と下部硬質板14との間隔を微増させ、版を成型する厚みを微増させることができる。これにより、版厚の低下を抑えて安定した版厚の版の連続製版を行うことができる。
【0047】
続いて、上部硬質板13を通して、上部光源11からの活性光線を照射し、目的とする感光性樹脂凸版のレリーフ部分の基部を形成させるマスキング露光を行う。
次に、レリーフ部分の画像を形成させるために、下部硬質板14上のネガフィルム23を介して、下部光源12からの活性光線を照射してレリーフ露光を行い、成形及び露光工程を終了する。
上部及び下部光源11、12としては、特に限定されないが、活性光線の一例である紫外線等を放射する光源が好ましい。具体的には、高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、メタルハライドランプ、UV−LED等が挙げられる。液状感光性樹脂に照射される光は300〜400nmの波長を有することが好ましい。
【0048】
露光工程後、上部硬質板13及びマスクネガフィルム27を除去し、溝36に空気を給気して、下部硬質板14に真空密着していた第1のフィルム層24を離脱し、第1のフィルム層(カバーフィルム)24、液状感光性樹脂25、第2のフィルム層(ベースフィルム)26からなる積層体を得る。
その後、第1のフィルム層24を剥がし、付着樹脂、及び活性光が照射されていないレリーフ面の未硬化樹脂をゴム製ブレード等で除去する。
版面から未硬化樹脂を完全に除去するためには、適当な洗剤を用いることができる。例えば、現像剤W−13(商標・旭化成ケミカルズ(株)製、アニオン界面活性剤水溶液)を2.0質量%、表面処理剤A−10(商標・旭化成ケミカルズ(株)製、ベンゾフェノン含有ノニオン界面活性剤水溶液)を0.33質量%、消泡剤SH−4(商標・旭化成ケミカルズ(株)製、シリコン系消泡剤)を0.3質量%加えた水溶液が挙げられ、これにより版面を洗い、現像し、後露光及び乾燥処理を行うことにより、目的とする感光性樹脂凸版が得られる。
【0049】
〔感光性樹脂凸版の製造装置の第1の実施形態〕
第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置について説明する。
図13に示す感光性樹脂凸版の製造装置100は、下部硬質板14と、下部硬質板と対向する上部硬質板13とにより、液状感光性樹脂を挟み込んだ状態で露光を行う感光性樹脂凸版の製造装置である。
露光光線を透過する下部硬質板14と、下部硬質板と対向配置されている上部硬質板13と、上部硬質板13及び/又は下部硬質板14の温度を、直接又は間接に計測する温度測定機構50を備えており、液体感光性樹脂を塗布する塗布機構51と、測定した温度を電子信号に変換する電子信号変換機構(図示せず)と、測定した温度と予め設定された温度との比較を行い、差分量を修正電子信号として出力する制御信号出力機構(図示せず)と、前記下部硬質板14を昇降させる第1昇降機構(図示せず)を有している。
設定温度は、ユーザーの任意により適宜変更でき、測定温度は所定のモニター55により適宜観察することができるようになされている。
【0050】
図14は、第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置の要部の概略分解図を示す。
図14に示すように、感光性樹脂凸版の製造装置100は、対向した上部硬質板13及び下部硬質板14を備え、下側に配置した下部硬質板14の上方に、堰部材29、ネガフィルム23、第1のフィルム層(カバーフィルム)24、液状感光性樹脂25、第2のフィルム層(ベースフィルム)26、マスクネガフィルム27の順に積層し、上側に配置した上部硬質板13で挟んで圧縮し、その後、露光を行う機能を有している。
上部硬質板13及び下部硬質板14の双方とも活性光線を透過する板部材であることが好ましい。
【0051】
堰部材29は、下部硬質板14の周囲であって、下部硬質板14と隙間をおいて配置される。この隙間とは、堰部材29と下部硬質板14との間であって、両者の近接する辺同士が、一定の隙間を有して配置される(前述の図3のdに相当)。
なお、図14には例示していないが、本実施形態における製造装置100は、図13に示すカバーフィルム収納部15、ベースフィルムセット部16、液状感光性樹脂コーティングバケット17及び塗布機構(キャリッジ)51を備えている。
【0052】
塗布機構(図5の符号51)は、上部硬質板13及び/又は下部硬質板14の温度を、直接又は間接に計測する温度測定機構(図5の符号50)を具備しており、本実施形態における製造装置は、上記温度測定機構により測定された温度を電子信号に変換する電子信号変換機構(図示せず)と、当該測定した温度と、予め設定された温度との比較を行い、差分量を修正電子信号として出力する制御信号出力機構(図示せず)を具備している。
【0053】
図15は、感光性樹脂凸版の製造装置100が備える、下部硬質板14及び堰部材29と、下部硬質板14を昇降させる機能を有する第1昇降機構28の関係を示す概略斜視図である。
感光性樹脂凸版の製造装置100は、下部硬質板14が第1昇降機構28により昇降自在になされており、この第1昇降機構28の制御により、図6及び図7に示して説明したように、液状感光性樹脂の塗布厚すなわち下部硬質板14と上部硬質板13との間隔を調整できる。
具体的には、上記制御信号に従って、第1昇降機構28の移動量が制御されるようになされている。
第1昇降機構28は、図15に例示するいわゆる矢板式のものが、下部硬質板14上方又は下方に移動させる量を連続的に可変制御できる点から好ましいが、第1昇降機構28の形状はこの例に限定されるものではない。
下部硬質板14を上方又は下方に連続的に移動させる方法としては、前記矢板式のもの以外に、ボールネジを用いた方法が挙げられる。
【0054】
〔感光性樹脂凸版の製造装置の第2の実施形態〕
第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置について説明する。
この実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置は、図13に示すように、下部硬質板14と、下部硬質板15と対向する上部硬質板13とにより、液状感光性樹脂を挟み込んだ状態で露光を行う感光性樹脂凸版の製造装置である。
露光光線を透過する下部硬質板14と、前記下部硬質板14と対向配置されている上部硬質板13と、上部硬質板13及び/又は下部硬質板14の温度を、直接又は間接に計測する温度測定機構50を具備する塗布機構51と、測定した温度を電子信号に変換する電子信号変換機構(図示せず)と、測定した温度と、予め設定された温度との比較を行い、差分量を修正電子信号として出力する制御信号出力機構(図示せず)と、塗布機構走行レール及び上部硬質板受け台としての機能を有するスペーサー41と、当該スペーサー41を昇降させる第2昇降機構(図示せず)を有している。
【0055】
図16は、第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置の、要部の概略分解図を示す。
図16に示すように、感光性樹脂凸版の製造装置100は、対向した2枚の上部硬質板13及び下部硬質板14を備え、下側に配置した下部硬質板14の上方に、ネガフィルム23、第1のフィルム層(カバーフィルム)24、液状感光性樹脂25、第2のフィルム層(ベースフィルム)26、マスクネガフィルム27の順に積層し、上側に配置した上部硬質板13で挟んで圧縮し、露光を行う機能を有している。
なお、第1のフィルム層24の面上には、液状感光性樹脂25の流出を防止する機能を有する、液状感光性樹脂25の厚さに対応した高さを具備するダム材(図10参照)が枠状に固定されている。
上部硬質板13及び下部硬質板14の双方とも活性光線を透過する板部材であることが好ましい。
【0056】
なお、図16には例示していないが、本実施形態における製造装置100は、図13に示すカバーフィルム収納部15、ベースフィルムセット部16、液状感光性樹脂コーティングバケット17及び塗布機構(キャリッジ)51を備えている。
【0057】
塗布機構(キャリッジ:図10の符号51)は、図16中、塗布機構走行レール及び上部硬質板受け台としての機能を有するスペーサー41に沿って、第1のフィルム層24の面上を移動するようになされており、塗布機構(キャリッジ)は、スペーサー41を昇降させる第2昇降機構40によって、第1のフィルム層24との距離が自在に調整できるようになされている。
【0058】
塗布機構(キャリッジ:図10の符号51)は、スペーサー41に沿って、第1のフィルム層上を移動するに伴い、上部硬質板13及び/又は下部硬質板14の温度を、直接又は間接に計測する温度測定機構(図10の符号50)を具備している。
本実施形態における製造装置は、上記温度測定機構により測定された温度を電子信号に変換する電子信号変換機構(図示せず)と、当該測定した温度と、予め設定された温度(温度域)との比較を行い、差分量を修正電子信号として出力する制御信号出力機構(図示せず)を具備している。
【0059】
図17は、第2の実施形態における製造装置100が備える、上部硬質板13と、スペーサー41との関係を示す概略斜視図である。
本実施形態における製造装置100は、上部硬質板13が、第2昇降機構40により昇降自在になされており、この第2昇降機構40の制御により、図12に示して説明したように、下部硬質板14と上部硬質板13との間隔を調整できる。
具体的には、上記修正電子信号に従って、第2昇降機構40の移動量が制御されるようになされている。
第2昇降機構40の形状については特に限定されないが、上部硬質板13を昇降させる量を連続的に制御できるものであるとする。
【実施例】
【0060】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
〔実施例〕(版厚補正あり)
(装置)
図5、図6に示す温度測定機構を具備する塗布機構(キャリッジ)を備え、測定温度を電子信号に変換する電子信号変換機構を備え、予め設定されている温度との比較を行い、差分量を所定の制御信号記憶出力機構により修正電子信号として出力する機能を備えた感光性樹脂凸版の製造装置を用いた。
(操作)
最終的に目的とするベースフィルムと感光性樹脂層との積層体(感光性樹脂凸版)の厚さが7.2mmに設定される「7mm版」を連続製版した。
図5に示すように、温度測定機構を具備する塗布機構(キャリッジ)を下部硬質板上で移動させ、カバーフィルム(旭化成ケミカルズ(株)製、CF−87)を介して温度を測定した。
測定した温度は、電子信号変換機構により所定の電子信号に変換し、この測定温度と、予め設定された温度(19.9℃以下、20.0〜24.5℃、25〜29.9℃、30〜34.9℃、35〜39.9℃、40℃以上)との比較を行い、これらの温度域に対応した修正電子信号を制御信号記憶出力機構により出力し、下部硬質板を1/100mm単位で下降させた。
図6に示すように、塗布機構(キャリッジ)を、図中矢印B方向に移動させ、カバーフィルム上に液状感光性樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、TENAFLEX F−600B)を塗布した。
上記修正電子信号に従って下部硬質板を下降させたことにより、下部硬質板14とコーティングバケット17との間隔を微増させ、液状感光性樹脂25の塗布厚みが微増するよう調整し、図6に示すように、液状感光性樹脂上にベースフィルム(旭化成ケミカルズ(株)製、BF−6A6 膜厚295μm)を積層し、ラミネートローラにより圧着した。
続いて、図7に示すように成形及び露光を行なった。
液状感光性樹脂層の上にマスクネガフィルム(OYO社製サーマルネガフィルム、膜厚130μm)と上部硬質板を配置した。
ここで、上記時点にて下部硬質板を下降させたことにより、上下硬質板の間隔は当初設定した間隔より微増しており、すなわち、版を成型する厚みは1/100mm単位で微増された状態に調節してある。
その後、上部光源(中心波長365nmの紫外線蛍光灯を複数配置した光源)により上部硬質板を通して、平均照度4〜5mW/cm2の紫外線を照射し、マスキング露光を行った。
次に、下部硬質板上のネガフィルムを介して、下部光源(中心波長365nmの紫外線蛍光灯ランプを複数配置した光源)により、平均照度4〜5mW/cm2の紫外線を照射してレリーフ露光を行い、成形及び露光工程を終了した。
その後、上部硬質板及びマスクネガフィルムを除去し、カバーフィルム、感光性樹脂、ベースフィルムからなる積層体を得た。
後工程において、カバーフィルムを引き剥がし、その後、カバーフィルム上に付着している樹脂や未硬化樹脂を除去した後、ベースフィルムと感光性樹脂が積層されている感光性樹脂凸版が得られた。
(結果)
図18に示すように、4枚の連続製版工程中、下部硬質板の温度は24.1℃から35.6℃まで上昇したが、感光性樹脂凸版の平均版厚の変動幅は、1/100mm以内に抑えられており、連続して均一な版厚に製版できたことが確かめられた。
【0062】
〔比較例〕(版厚補正なし)
(装置)
図5、図6に示す感光性樹脂凸版の製造装置であって、上記実施例において用いたものと同一の装置を用いた。
(操作)
最終的に目的とするベースフィルムと感光性樹脂層との積層体(感光性樹脂凸版)の厚さが7.2mmに設定される「7mm版」を連続製版した。
下部硬質板の温度を測定せず、図6に示すように、塗布機構(キャリッジ)を、図中矢印B方向に移動させ、カバーフィルム上に液状感光性樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、F−600B)を塗布した。
図6に示すように、液状感光性樹脂上にベースフィルム(旭化成ケミカルズ(株)製、BF−6A6)を積層し、ラミネートローラにより圧着した。
続いて、図7に示すように成形及び露光を行なった。
液状感光性樹脂層の上にマスクネガフィルム(OYO社製サーマルネガフィルム、膜厚130μm)と上部硬質板を配置した。
上下硬質板の間隔に対して補正を加えず、上部光源(中心波長365nmの紫外線蛍光灯を複数配置した光源)により、上部硬質板を通して平均照度4〜5mW/cm2の紫外線を照射し、マスキング露光を行った。
次に、下部硬質板上のネガフィルムを介して、下部光源(中心波長365nmの紫外線蛍光灯を複数配置した光源)により、平均照度4〜5mW/cm2の紫外線を照射してレリーフ露光を行い、成形及び露光工程を終了した。
その後、上部硬質板及びマスクネガフィルムを除去し、カバーフィルム、感光性樹脂、ベースフィルムからなる積層体を得た。
後工程において、カバーフィルムを引き剥がし、その後、カバーフィルム上に付着している樹脂や未硬化樹脂を除去した後、ベースフィルムと感光性樹脂が積層されている感光性樹脂凸版が得られた。
(結果)
図19に示すように、7枚の連続製版工程中、下部硬質板の温度は20.1℃から33.6℃まで上昇するとともに、最終的に平均版厚は6/100mmも薄くなってしまい、連続して均一な版厚に製版できなかったことが確かめられた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、感光性樹脂凸版の連続製版を行う分野において、特に、精密な印刷精度を要求される技術分野で産業上の利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】従来技術における液状感光性樹脂を用いて感光性樹脂凸版を製造する露光装置の斜視図を示す。
【図2】従来技術における露光装置を用いて液状感光性樹脂凸版を製造する一工程の概略断面図を示す。
【図3】第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いて感光性樹脂凸版を製造する一工程の概略断面図を示す。
【図4】第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いて感光性樹脂凸版を製造する一工程の概略断面図を示す。
【図5】第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いて温度測定機構により硬質版の温度を測定する工程の概略断面図を示す。
【図6】第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いて液状感光性樹脂を塗布する工程の概略断面図を示す。
【図7】第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いて上下硬質版による成形と露光を行う工程の概略断面図を示す。
【図8】第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いて感光性樹脂凸版を製造する一工程の概略断面図を示す。
【図9】第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いて感光性樹脂凸版を製造する一工程の概略断面図を示す。
【図10】第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いて温度測定機構により硬質版の温度を測定する工程の概略断面図を示す。
【図11】第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いて液状感光性樹脂を塗布する工程の概略断面図を示す。
【図12】第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置を用いて上下硬質板による成形と露光を行う工程の概略断面図を示す。
【図13】感光性樹脂凸版の製造装置の概略斜視図を示す。
【図14】第1の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置の要部の概略分解図を示す。
【図15】下部硬質板、堰部材、及び第1昇降機構の関係を表す概略斜視図を示す。
【図16】第2の実施形態における感光性樹脂凸版の製造装置の要部の概略分解図を示す。
【図17】上部硬質板、スペーサー、及び第2昇降機構の関係を表す概略斜視図を示す。
【図18】実施例における連続製版時の版厚変動の状態を示す。
【図19】比較例における連続製版時の版厚変動の状態を示す。
【符号の説明】
【0065】
10,100:感光性樹脂凸版の製造装置
11:上部光源
12:下部光源
13:上部硬質板
14:下部硬質板
15:カバーフィルム収納部
16:ベースフィルムセット部
17:液状感光性樹脂コーティングバケット
18:キャリッジ
23:ネガフィルム
24:第1のフィルム層(カバーフィルム)
25:液状感光性樹脂
26:第2のフィルム層(ベースフィルム)
27:マスクネガフィルム
28:第1昇降機構
29:堰部材
30:ダム材
40:第2昇降機構
41:スペーサー
35,36:溝
50:温度測定機構
51:塗布機構(キャリッジ)
53:ラミネートロール
55:モニター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフィルム層、感光性樹脂層、及び第2のフィルム層を含む積層体を、下部硬質板と上部硬質板とにより挟み込んだ状態で露光を行う感光性樹脂凸版の製造方法であって、
(a)上部硬質板及び/又は下部硬質板の温度、又は下部硬質板に積層される第1のフィルム層を介した下部硬質板の温度を、直接又は間接に計測する工程と、
(b)前記下部硬質板に積層した前記第1のフィルム層の上に、液状感光性樹脂を塗布する工程と、
(c)前記液状感光性樹脂の塗布厚みを調節する工程と、
(d)前記下部硬質板と前記上部硬質板との間隔を調節する工程と、
を有する感光性樹脂凸版の製造方法。
【請求項2】
前記(c)工程における液状感光性樹脂の塗布厚みの調節は、前記(a)工程により計測された温度と、予め設定した温度とを比較し、その差分に応じて行う請求項1に記載の感光性樹脂凸版の製造方法。
【請求項3】
前記(d)工程における下部硬質板と上部硬質板との間隔の調節は、前記(a)工程により計測された温度と、予め設定した温度とを比較し、その差分に応じて行う請求項1又は2に記載の感光性樹脂凸版の製造方法。
【請求項4】
第1のフィルム層、感光性樹脂層、及び第2のフィルム層を含む積層体を、下部硬質板と上部硬質板とにより挟み込んだ状態で露光を行う感光性樹脂凸版の製造装置であって、
露光光線を透過する下部硬質板と、
前記下部硬質板と対向配置されている上部硬質板と、
上部硬質板及び/又は下部硬質板の温度を、直接又は間接に計測する温度測定機構と、
測定した温度を電子信号に変換する電子信号変換機構と、
測定した温度の電子信号、及び予め設定した温度域に対応した任意の修正電子信号を記憶し、測定した温度に対応した任意の修正電子信号を出力する制御信号記憶出力機構と、
前記下部硬質板に積層した前記第1のフィルム層の上に液状感光性樹脂を塗布する塗布機構と、
前記下部硬質板を昇降させる第1昇降機構、又は、塗布機構走行レール及び上部硬質板受け台としての機能を有するスペーサー及び当該スペーサーを昇降させる第2昇降機構と、
を有している感光性樹脂凸版の製造装置。
【請求項5】
前記第1昇降機構及び前記第2昇降機構は、1/100mm単位で昇降量を調節するようになされている請求項4に記載の感光性樹脂凸版の製造装置。
【請求項6】
前記温度測定機構は、前記上部硬質板及び/又は下部硬質板の端部から20mm以上内側の位置において温度測定を行う請求項4又は5に記載の感光性樹脂凸版の製造装置。
【請求項7】
前記修正電子信号に従い、前記第1昇降機構により前記下部硬質板を昇降させる請求項4乃至6のいずれか一項に記載の感光性樹脂凸版の製造装置。
【請求項8】
前記修正電子信号に従い、前記第2昇降機構により前記スペーサーを昇降させる請求項4乃至6のいずれか一項に記載の感光性樹脂凸版の製造装置。
【請求項9】
前記修正電子信号に従い、前記第2昇降機構により前記上部硬質板を昇降させる請求項4乃至6、又は8のいずれか一項に記載の感光性樹脂凸版の製造装置。
【請求項1】
第1のフィルム層、感光性樹脂層、及び第2のフィルム層を含む積層体を、下部硬質板と上部硬質板とにより挟み込んだ状態で露光を行う感光性樹脂凸版の製造方法であって、
(a)上部硬質板及び/又は下部硬質板の温度、又は下部硬質板に積層される第1のフィルム層を介した下部硬質板の温度を、直接又は間接に計測する工程と、
(b)前記下部硬質板に積層した前記第1のフィルム層の上に、液状感光性樹脂を塗布する工程と、
(c)前記液状感光性樹脂の塗布厚みを調節する工程と、
(d)前記下部硬質板と前記上部硬質板との間隔を調節する工程と、
を有する感光性樹脂凸版の製造方法。
【請求項2】
前記(c)工程における液状感光性樹脂の塗布厚みの調節は、前記(a)工程により計測された温度と、予め設定した温度とを比較し、その差分に応じて行う請求項1に記載の感光性樹脂凸版の製造方法。
【請求項3】
前記(d)工程における下部硬質板と上部硬質板との間隔の調節は、前記(a)工程により計測された温度と、予め設定した温度とを比較し、その差分に応じて行う請求項1又は2に記載の感光性樹脂凸版の製造方法。
【請求項4】
第1のフィルム層、感光性樹脂層、及び第2のフィルム層を含む積層体を、下部硬質板と上部硬質板とにより挟み込んだ状態で露光を行う感光性樹脂凸版の製造装置であって、
露光光線を透過する下部硬質板と、
前記下部硬質板と対向配置されている上部硬質板と、
上部硬質板及び/又は下部硬質板の温度を、直接又は間接に計測する温度測定機構と、
測定した温度を電子信号に変換する電子信号変換機構と、
測定した温度の電子信号、及び予め設定した温度域に対応した任意の修正電子信号を記憶し、測定した温度に対応した任意の修正電子信号を出力する制御信号記憶出力機構と、
前記下部硬質板に積層した前記第1のフィルム層の上に液状感光性樹脂を塗布する塗布機構と、
前記下部硬質板を昇降させる第1昇降機構、又は、塗布機構走行レール及び上部硬質板受け台としての機能を有するスペーサー及び当該スペーサーを昇降させる第2昇降機構と、
を有している感光性樹脂凸版の製造装置。
【請求項5】
前記第1昇降機構及び前記第2昇降機構は、1/100mm単位で昇降量を調節するようになされている請求項4に記載の感光性樹脂凸版の製造装置。
【請求項6】
前記温度測定機構は、前記上部硬質板及び/又は下部硬質板の端部から20mm以上内側の位置において温度測定を行う請求項4又は5に記載の感光性樹脂凸版の製造装置。
【請求項7】
前記修正電子信号に従い、前記第1昇降機構により前記下部硬質板を昇降させる請求項4乃至6のいずれか一項に記載の感光性樹脂凸版の製造装置。
【請求項8】
前記修正電子信号に従い、前記第2昇降機構により前記スペーサーを昇降させる請求項4乃至6のいずれか一項に記載の感光性樹脂凸版の製造装置。
【請求項9】
前記修正電子信号に従い、前記第2昇降機構により前記上部硬質板を昇降させる請求項4乃至6、又は8のいずれか一項に記載の感光性樹脂凸版の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図17】
【図18】
【図19】
【図14】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図17】
【図18】
【図19】
【図14】
【図16】
【公開番号】特開2010−91867(P2010−91867A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263023(P2008−263023)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】
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