説明

感光性樹脂組成物、これを用いた感光性エレメント、画像表示装置の隔壁の形成方法及び画像表示装置の製造方法

【課題】 高温高湿下で電圧を印加した際、電極を構成する成分が感光性樹脂組成物中に拡散し電極が溶解するのを低下させることが可能な感光性樹脂組成物、これを用いた感光性エレメント、画像表示装置の隔壁の形成方法及び画像表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 画像表示装置において、画素を分離する隔壁を形成するための感光性樹脂組成物であって、上記感光性樹脂組成物が、(A)成分:分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するバインダーポリマー、(B)成分:光重合性化合物、(C)成分:光重合開始剤、(D)成分:カルボン酸と反応する官能基を有する化合物、(E)成分:メルカプト基を含まない複素環状化合物、(F)成分:無機系黒色顔料を含む感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、これを用いた感光性エレメント、画像表示装置の隔壁の形成方法及び画像表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙のように薄く、持ち運びが自由で、文字や画像が表示可能な画像表示装置(PLD:Paper Like Display)が注目を集めている。かかる画像表示装置は、通常の印刷物としての紙の長所である視認性、携帯性を有し、さらに、情報を電気的に書き換え可能であるため、環境やコストの面からも紙の代替品として実用化が試みられている。
【0003】
画像表示装置の表示技術としては、電気泳動などにより粒子を移動させるタイプ、液晶タイプ、電気化学タイプなど様々なタイプが考案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
特に粒子を移動させるタイプとしては、マイクロカプセル型電気泳動方式、マイクロカップ型電気泳動方式、電子粉流体方式、トナーディスプレイ等の方式が検討されている。これらの方式では、透明電極間に表示媒体である白と黒の粒子を封入し電場をかけ、これらの粒子を電気的に移動させることにより白/黒画像を形成し表示させる。また、画像表示装置の駆動方式としては、アクティブ駆動とパッシブ駆動があり、画像表示装置用の背面技術(パネル回路)の検討もなされている。
【0005】
上記粒子移動タイプの画像表示装置の場合、上述のように白/黒の粒子を封入するための隔壁が必要となる。かかる隔壁の形成方法としては、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。中でも、感光性樹脂組成物を用いて、活性光線の照射により高精細なパターンが効率よく形成できるフォトリソ法が注目されている。
【0006】
フォトリソ法を用いた画像表示装置の隔壁は、以下のようにして形成される。すなわち、基板上にブラックマトリックスと呼ばれる遮光層をフォトリソ技術により積層する工程、さらに前記遮光層上に感光性樹脂組成物を塗布、又は感光性フィルムを積層することにより感光性樹脂組成物層を形成する工程、前記感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化させる工程、未露光部を除去して光硬化物パターンを形成する工程を含む。従って、画像表示装置の隔壁を形成するための感光性樹脂組成物には、一般に、感度、解像性及び基板への密着性が要求される。
【0007】
画像表示装置を製造する場合、前記光硬化物パターンを熱処理する工程、前記工程で得たパターン内に粒子等の表示媒体を充填する工程、電極基板を貼り付ける工程などをさらに含む。これにより、感光性樹脂組成物層の硬化物を隔壁とする画像表示装置が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−178881号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】鈴木 明、“電子ペーパーの最新動向2007”、平成19年10月10日、日本画像学会誌 第46巻 第5号:372−384(2007)
【非特許文献2】田沼 逸夫、“電子粉流体を用いたフレキシブル電子ペーパー”、平成19年10月10日、日本画像学会誌 第46巻 第5号:396−400(2007)
【非特許文献3】田中直樹、 “電子ペーパー始動”、MICRODEVICES、平成20年4月1日、MICRODEVICES 第274号:31−45(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記画像表示装置を製造する工程においては、電極基板と感光性樹脂組成物が密着するため、高温高湿下で電圧を印加した際、感光性樹脂組成物中に電極の溶解があってはならない。しかし、透明電極であるITOを高温高湿下で電圧を印加した際、電極を構成する成分が感光性樹脂組成物中に拡散し電極が溶解するという問題があった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、電極基板の溶解を抑制し、低下させることが可能な感光性樹脂組成物、これを用いた感光性エレメント、画像表示装置の隔壁の形成方法及び画像表示装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、画像表示装置において、画素を分離する隔壁を形成するための感光性樹脂組成物であって、
上記感光性樹脂組成物が、
(A)成分:分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するバインダーポリマー、
(B)成分:光重合性化合物、
(C)成分:光重合開始剤、
(D)成分:カルボン酸と反応する官能基を有する化合物、すなわち、カルボン酸と反応性が良好な官能基を有する化合物、
(E)成分:メルカプト基を含まない複素環状化合物、
(F)成分:無機系黒色顔料を含む感光性樹脂組成物である。
本発明の上記感光性樹脂組成物は、隔壁構造を形成するための露光及び現像、硬化処理をした後、ITOなどの電極の溶解を防止可能な感光性樹脂組成物を提供する。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物は上記構成を有することにより、粒子の移動を妨げることのない隔壁を、簡便に作業性よく形成することができる。
【0013】
また、本発明の感光性樹脂組成物において前記(F)成分の無機系黒色顔料がチタンブラックであることが好ましい。これにより、本発明の効果を一層向上させることが可能となる。
【0014】
また、本発明は、支持体と、該支持体上に形成された前記感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層とを備える感光性エレメントを提供する。前記感光性樹脂組成物層の膜厚が10〜60μmであると好ましい。
【0015】
また、本発明は、画像表示装置の基板上に、前記感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を積層する積層工程と、前記感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化せしめる露光工程と、前記露光部以外の部分を除去して光硬化物パターンを形成する現像工程と、を有する、画像表示装置の隔壁の形成方法を提供する。画像表示装置の隔壁の形成方法により形成された光硬化物パターンを、60〜250℃で加熱処理して熱硬化せしめる加熱工程をさらに有すると好ましい。
【0016】
また、本発明は、表示媒体を、前記隔壁内に充填する工程と、その基板に対向するように隔壁の反対側に基板を貼り付ける工程と、を有する、画像表示装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
透明電極であるITOを高温高湿下で電圧を印加した際、電極を構成する成分が感光性樹脂組成物中に拡散し電極が溶解するという問題があったが、本発明の感光性樹脂組成物を用いることにより、電極の溶解を防止・抑制することができ、また、密着性、解像性も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本明細書における(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイルとはアクリロイル及びそれに対応するメタクリロイルを意味する。
【0019】
本発明の感光性樹脂組成物は(A)分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するバインダーポリマー、(B)光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)カルボン酸と反応する官能基を有する化合物、(E)メルカプト基を含まない複素環状化合物及び(F)成無機系黒色顔料を含有してなる。
【0020】
以下、各成分について詳細に説明する。
【0021】
(A)成分:分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するバインダーポリマー
本発明に用いることのできる(A)成分としては、分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有し、フィルム性を付与できるものであれば特に制限なく、例えばアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。中でも、アクリル系樹脂が、アルカリ現像性の観点からは好ましい。これらは単独で、又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。二種類以上のバインダーポリマーの組み合わせの例としては、異なる共重合成分からなる二種類以上のバインダーポリマー、異なる重量平均分子量の二種類以上のバインダーポリマー、異なる分散度の二種類以上のバインダーポリマー等が挙げられる。また、特開平11−327137号公報記載のマルチモード分子量分布を有するポリマーを用いることもできる。
【0022】
(A)成分は、例えば、カルボキシル基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体をラジカル重合させ、その後、重合性単量体にエチレン性不飽和結合を有する単量体を付加させることで製造することができる。重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン等の重合可能なスチレン誘導体;アクリルアミド;アクリロニトリル;ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸;マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノイソプロピルエステル等のマレイン酸モノエステル;フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸などが挙げられる。カルボキシル基を有する重合性単量体としては、現像性及び安定性の観点から(メタ)アクリル酸が好ましい。また、これらは単独でホモポリマーとして、又は二種類以上を組み合わせてコポリマーとして用いることができる。
【0023】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、及びこれらの構造異性体が挙げられる。
【0024】
上記エチレン性不飽和結合を有する単量体としては、例えばイソシアネート基含有アクリル酸エステル、イソシアネート基含有メタクリル酸エステル、グリシジル基含有アクリル酸エステル、グリシジル基含有メタクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0025】
(A)成分の酸価は、解像性に優れる点では、30mgKOH/g以上であることが好ましく、80mgKOH/g以上であることがより好ましく、130mgKOH/g以上であることがさらに好ましく、180mgKOH/以上であることが特に好ましい。耐現像液性及び密着性に優れる点では、250mgKOH/g以下であることが好ましく、240mgKOH/g以下であることがより好ましく、230mgKOH/g以下であることがさらに好ましく、220mgKOH/g以下であることが特に好ましい。なお、現像工程として溶剤による現像を行う場合は、カルボキシル基を有する重合性単量体の使用量を抑えて調製することが好ましい。
【0026】
(A)成分の重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算)は、耐現像液性に優れる点では、20,000以上であることが好ましく、23,000以上であることがより好ましく、25,000以上であることがさらに好ましい。現像時間を短くできる観点からは、300,000以下であることが好ましく、150,000以下であることがより好ましく、100,000以下であることがさらに好ましい。
【0027】
(B)成分:光重合性化合物
本発明に用いることのできる(B)成分の光重合性化合物としては、光架橋が可能であれば特に制限はないが、例えば、分子内にエチレン性不飽和基を有する化合物、多価アルコール又は/及びグリシジル基含有化合物にα、β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、分子内にエチレン性不飽和結合を1つ有する化合物等が挙げられる。
本発明における(B)成分は、(B1)化合物を含有すると好ましい。(B1)化合物は、ウレタン結合およびエチレン性不飽和基を分子内に有する化合物である。ウレタン結合およびエチレン性不飽和基を分子内に有する化合物としては、例えば、ポリカーボネート化合物及び/又はポリエステル化合物の末端のヒドロキシル基とジイソシアネート化合物のイソシアネート基との反応に由来するウレタン結合を有し且つ複数の末端にイソシアネート基を有するウレタン化合物と、ヒドロキシル基及びエチレン性不飽和基を有する化合物と、を縮合反応させることで得ることができる化合物が好ましい。
【0028】
(B1)化合物の合成に用いる上記ウレタン化合物は、両末端にヒドロキシル基を有するポリカーボネート化合物及び/又はポリエステル化合物(以下、場合によりポリカーボネート化合物及びポリエステル化合物をそれぞれ、「(1)ポリカーボネート化合物」及び「(2)ポリエステル化合物」と表記する。)とジイソシアネート化合物(以下、場合により「(3)ジイソシアネート化合物」と表記する。)とを反応させて得ることができる。特に、光硬化物の外観を良好にする観点から、(1)ポリカーボネート化合物と(3)ジイソシアネートとを反応させて得られるウレタン化合物を用いることが好ましい。
【0029】
(1)ポリカーボネート化合物は、アルキレン基がカーボネート結合を介して主鎖に並んだ構造を有し、公知の方法により得ることができ、例えば、ホスゲン法によりポリカーボネート化合物を得る場合は、ジオール化合物とホスゲンとを反応させる。ジオール化合物としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチルペンタンジオール、3−メチルペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、3,3,5−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2,3,5−トリメチル−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。また、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール、ヘプタントリオール、ペンタエリスリトール等のポリオール化合物が含まれてもよい。
【0030】
上記ポリカーボネート化合物のなかでも、1,6−ヘキサンジオール及び1,5−ペンタンジオールに由来する下記一般式(I)で表されるヘキサメチレンカーボネート及び下記一般式(II)で表されるペンタメチレンカーボネートを含むものが好ましい。
【0031】
【化1】

【0032】
また、ポリカーボネート化合物が含有する、ヘキサメチレンカーボネート及びペンタメチレンカーボネートのモル比率は、ヘキサメチレンカーボネート/ペンタメチレンカーボネート=1/9〜9/1であるものが好ましい。この含有比率が上記範囲外であると、光硬化物の伸び及び強度が低下する傾向がある。
【0033】
(2)ポリエステル化合物は、多塩基酸と多価アルコールとの重縮合による公知の方法により得ることができる。多塩基酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸などの芳香族や脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールのようなグリコール類が挙げられる。
【0034】
上記ポリカーボネート化合物及びポリエステル化合物の重量平均分子量(例えば、GPC測定し、ポリスチレン換算したもの)は600〜1000であるものが好ましい。この重量平均分子量が上記範囲外であると、光硬化物の伸び及び強度が低下する傾向がある。
【0035】
(3)ジイソシアネート化合物としては、例えば、アルキレン基等の2価の脂肪族基を有する脂肪族ジイソシアネート化合物、シクロアルキレン等の2価の脂環式基を有する脂環式ジイソシアネート化合物、及び芳香族ジイソシアネート化合物、並びに、これらのイソシアヌレート化変性物、カルボジイミド化変性物、及びビウレット化変性物が挙げられる。
【0036】
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。脂環式ジイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシル)ジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが挙げられる。芳香族ジイソシアネート化合物としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トリエンジイソシアネート又は2,6−トリエンジイソシアネートの2量化重合体、(o,p又はm)−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。また、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェイト等の2以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物が含まれていてもよい。これらのなかでも光硬化物の可とう性及び強靭性をより高水準に達成する観点から脂環式ジイソシアネート化合物が好ましく、イソホロンジイソシアネートがより好ましい。
【0037】
複数の末端にイソシアネート基を有するウレタン化合物(以下、場合により「(4)ウレタン化合物」と表記する。)は、(1)ポリカーボネート化合物及び/又は(2)ポリエステル化合物と(3)ジイソシアネート化合物とを反応させることで得られる。(4)ウレタン化合物は、両末端にイソシアナート基を有することが好ましく、この場合、上記の反応において(1)ポリカーボネート化合物及び(2)ポリエステル化合物の総量1モルに対して(3)ジイソシアネート化合物の配合量を1.01〜2.0モルとすることが好ましく、1.1〜2.0とすることがより好ましい。(3)ジイソシアネート化合物の配合量が1.01モル未満又は2.0モルを超えると、両末端にイソシアネート基を有するウレタン化合物を安定的に得られない傾向がある。なお、(4)ウレタン化合物を合成する反応では、触媒として、ジブチルチンジラウレートを加えることが好ましい。反応を十分に進める観点から、反応温度は60〜120℃とすることが好ましい。
【0038】
上記ウレタン化合物と反応させて(B1)化合物を得る反応において用いることのできる、分子中にヒドロキシル基及びエチレン性不飽和基を有する化合物(以下、場合により「(5)ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和化合物」という。)としては、例えば、分子中にヒドロキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げることできる。かかる化合物としては、例えば、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、これのカプロラクトン付加物又は酸化アルキレン付加物、グリセリン等の多価のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、及びグリシジル(メタ)アリレートアクリル酸付加物が挙げられる。
【0039】
ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのカプロラクトン付加物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・カプロラクトン付加物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・カプロラクトン付加物、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート・カプロラクトン付加物が挙げられ、酸化アルキレン付加物としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・酸化アルキレン付加物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・酸化プロピレン付加物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・酸化ブチレン付加物が挙げられる。エステル化合物としては、例えば、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの酸化エチレン付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの酸化プロピレン付加物のジ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0040】
(B1)化合物は、(4)ウレタン化合物に(5)ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和化合物を付加反応させることにより得られる。かかる付加反応においては、(4)ウレタン化合物1モルに対して(5)ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和化合物の配合量を2.0〜2.4モルとすることが好ましい。(5)ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和化合物の配合量が2.0モル未満であると、光重合性が不十分となる傾向があり、2.4モルを超えると、光硬化物の伸びおよび強度が低下する傾向がある。上記付加反応は、例えば、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−ヒドロキシ−トルエン等の存在下で行うことが好ましく、その他に、触媒として、ジブチルチンジラウレートを加えることが好ましい。反応温度としては、60〜90℃とすることが好ましい。60℃未満であると、反応が十分に進まない傾向があり、90℃を超えると、急激な発熱により、ゲル化する傾向がある。なお、反応の終点は、例えば、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基が消失する時点とすればよい。
【0041】
(B1)化合物の重量平均分子量は200〜100000であるが、1000〜50000であることが好ましく、2000〜20000であることがより好ましい。この重量平均分子量が2000未満であると、光硬化物の耐めっき性が不十分となることに加え、光硬化物の伸び及び強度が不十分となることに起因して可とう性が低下し、他方、100000を超えると、上述の(A)成分との相溶性が低下する。
【0042】
(B1)化合物は、常法によって合成してもよく、市販のものを入手してもよい。入手可能な(B1)化合物としては、例えば、UF−8003M、UF−TCB−50、UF−TC4−55(以上商品名、共栄社化学株式会社製)、ヒタロイド9082−95(商品名、日立化成工業株式会社製)が挙げられる。
【0043】
上述以外の(B1)化合物としては、例えば、下記一般式(III)で表されるイソシアヌル環構造を有する化合物を含有することが好ましい。
【0044】
【化2】

(一般式(III)中、R、R及びRは各々独立に、下記一般式(IV):
【0045】
【化3】

(一般式(IV)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、Zは単結合又は2価の有機基を示し、kは1〜30の整数を示す。)で表される基、或いは、下記一般式(V):
【0046】
【化4】

(一般式(V)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Zは単結合又は2価の有機基を示し、Yは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、mは1〜10の整数を示し、nは1〜10の整数を示し、lは0〜10の整数を示す。)で表される基を示し、R、R及びRのうちの少なくとも1つは前記一般式(V)で表される基を示す。)
【0047】
上記一般式(IV)及び(V)中、X及びYで示される炭素数2〜6のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ネオペンチレン基、へキシレン基等が挙げられるが、エチレン基又はプロピレン基であることが好ましい。
【0048】
上記一般式(IV)中、kは、電極の溶解及び耐現像液性の観点から、3〜20の整数であることが好ましく、4〜15の整数であることがより好ましく、5〜10の整数であることが特に好ましい。
【0049】
上記一般式(V)中、mは、得られる硬化膜の弾性率の観点から、2〜8であることが好ましく、4〜6であることがより好ましい。また、nは得られる硬化膜の弾性率の観点から、2〜10の整数であることが好ましく、3〜8の整数であることがより好ましく、4〜6の整数であることが特に好ましい。更に、lは得られる硬化膜の弾性率の観点から、1〜5の整数であることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましい。
【0050】
上記一般式(IV)中のXがエチレン基又はプロピレン基であり、上記一般式(V)中のmが4〜10であることが好ましい。
【0051】
一般式(IV)及び(V)のZ及びZが各々独立に、下記一般式(VI)で表される2価の基であることが好ましい。
【0052】
【化5】

(一般式(VI)中、pは1〜10の整数を示す。)
【0053】
ここで、上記一般式(VI)中、pは、得られる硬化膜の弾性率の観点から、2〜8であることが好ましく、4〜7であることがより好ましい。
【0054】
上記一般式(III)で表される化合物で入手可能なものとしては、例えば、R、R及びRが上記一般式(V)で表される基、Rがメチル基、Yがエチレン基、m=5、n=3、l=1、Zが上記一般式(VI)で表される基、p=6、である化合物(日本サイテックインダストリーズ株式会社製)等が挙げられる。
【0055】
上述以外の(B1)化合物としては、例えば、下記一般式(VII)で表される。
【0056】
【化6】


一般式(VII)中、Rは、各々独立に、一般式(VIII)、一般式(IX)、一般式(X)のいずれかを示す。
【0057】
【化7】

(一般式(VIII)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、mは1〜14の整数である)、
【0058】
【化8】

(一般式(IX)中、mは1〜14の整数である)、
【0059】
【化9】

(一般式(X)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、nは1〜9の整数であり、mは1〜14の整数である)を示す。
弾性率、密着性の観点から一般式(VII)中のRは、一般式(X)であることがより好ましい。
【0060】
一般式(VIII)、(IX)中、mは、1〜14の整数であり、1〜6であることが好ましい。mが、14を超えると、耐薬品性が低下する場合がある。また、一般式(X)中、mは、1〜14の整数であり、1〜6であることが好ましく、nは、1〜9の整数であり、3〜6であることが好ましい。mが、14を超えると、耐薬品性が低下する場合があり、nが、9を超えると、機械強度が低下する場合がある。
【0061】
上記一般式(VII)で表される化合物で、市販のものとしては、例えば、NKオリゴUA−21(新中村化学工業株式会社製)、M−315(東亜合成株式会社製)、M−215(東亜合成株式会社製)等が挙げられる。
【0062】
さらに、(B)成分の、上述以外の(B1)化合物としてNKオリゴUA−11(新中村化学工業株式会社製)、NKオリゴUA−13(新中村化学工業株式会社製)等も挙げられる。
【0063】
(B)成分は、(B2)化合物として、下記一般式(XI)、(XII)で表されるエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの総和が11〜100のエチレン性不飽和基を含むものが好ましい。
【0064】
【化10】

【0065】
(B2)化合物としては、例えば、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物に特に制限はないが、例えば、一般式(IX)で表される化合物であることが好ましい。
【0066】
【化11】

【0067】
前記一般式(XIII)中、R及びRは、各々独立に水素原子又はメチル基を示す。前記一般式(XIII)中、X及びYは各々独立に炭素数2〜6のアルキレン基を示し、エチレン基又はプロピレン基であることが好ましく、エチレン基であることがより好ましい。前記一般式(XIII)中、p及びqはp+q=11〜100となるように選ばれる正の整数であり、15〜90であることが好ましく、20〜50であることがより好ましく、25〜40であることが特に好ましい。p+qが11未満では、弾性率が高くなる傾向がある。
【0068】
また、前記一般式(XIII)中の芳香環は置換基を有していてもよく、それら置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、フェナシル基、アミノ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボニル基、メルカプト基、炭素数1〜10のアルキルメルカプト基、アリル基、水酸基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルキル基の炭素数が1〜10のカルボキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1〜10のアシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜10のアルキルカルボニル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のN−アルキルカルバモイル基又は複素環を含む基、これらの置換基で置換されたアリール基等が挙げられる。上記置換基は、縮合環を形成していてもよい。また、これらの置換基中の水素原子がハロゲン原子等の上記置換基などに置換されていてもよい。また、置換基の数がそれぞれ2以上の場合、2以上の置換基は各々同一でも相違していてもよい。
【0069】
前記一般式(XIII)で表される化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等のビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0070】
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられ、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(新中村化学工業株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。
【0071】
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビ__ス(4−((メタ)アクリロキシドデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0072】
上記2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0073】
また、上記(B2)成分としては、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートも好ましく使用できる。ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記一般式(XIV)、(XV)又は(XVI)で表される化合物が好ましい。
【0074】
【化12】

(一般式(XIV)中、R14及びR15はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、POはプロピレンオキシ基を示し、r+r+sの総数は11〜100の整数である。)
【0075】
【化13】

(一般式(XV)中、R16及びR17はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。EOはオキシエチレン基を示し、POはオキシプロピレン基を示し、s+s+rの総数は11〜100の整数である。)
【0076】
【化14】

【0077】
(一般式(XVI)中、R18及びR19はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、メチル基であることが好ましい。EOはオキシエチレン基を示し、POはオキシプロピレン基を示す。r+sの総数は11〜100の整数である。)
【0078】
上記一般式(XIV)、(XV)及び(XVI)におけるオキシエチレン単位およびオキシプロピレン単位の総数が11〜100であり、12〜50の整数であることが好ましく、13〜25であることがより好ましく、15〜20であることがさらに好ましい。総数が10より小さい場合、弾性率が高くなる傾向にある。
【0079】
上記一般式(XIV)で表される化合物の具体例としては、例えば、R14及びR15がメチル基、r+r=4(平均値)、s=12(平均値)であるビニル化合物(日立化成工業社製、商品名:FA−023M)等が挙げられる。
【0080】
上記一般式(XV)で表される化合物の具体例としては、例えば、R16及びR17がメチル基、r=6(平均値)、s+s=12(平均値)であるビニル化合物(日立化成工業社製、商品名:FA−024M)等が挙げられる。
【0081】
(B2)化合物としては、例えば、一般式(XVII)で表される化合物が好ましい。
【0082】
【化15】

(一般式(XVII)中、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メチロール基、アクリロイル基、又は、メタクリロイル基を示し、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示し、Yは炭素数2〜6のアルキレン基を示し、p、q及びrはp+q+r=10〜100を満たす整数であり、sは0又は1である。なお、一般式(XVII)中、複数存在するYはそれぞれ同一であっても異なってもよい。)
上記一般式(XVII)中、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基等)、炭素数1〜6のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等)、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メチロール基、アクリロイル基、メタクリロイル基のいずれかであるが、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、エチル基であることがより好ましい。また、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であるが、いずれも水素原子であることが好ましい。また一分子中に複数存在するYはそれぞれ独立に炭素数2〜6のアルキレン基(エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基等)であるが、貴金属めっき耐性及び解像度を良好にする観点から、Yはエチレン基又はプロピレン基(更にはイソプロピレン基)であることが好ましく、エチレン基であることがより好ましい。p、q及びrがそれぞれ2以上の場合、分子内で隣り合った2つ以上のYはそれぞれ同一であっても異なってもよい。また、Yが2種以上のアルキレン基である場合、−(Y−O)−の構造単位はランダムに存在してもよいし、ブロック的に存在してもよい。
【0083】
また、上記一般式(XVII)中、p、q及びrはp+q+r=11〜100を満たす整数であるが、p+q+r=13〜60であることが好ましく、p+q+r=15〜50であることがさらに好ましく、p+q+r=18〜40であることがより好ましい。(p+q+r)が11未満では、弾性率が高くなる傾向にある。
【0084】
上記一般式(XVII)で表される化合物の具体例としては、例えば、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリブトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンポリブトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリブトキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリルポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリルポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリルポリブトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリルポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、上記一般式(XVII)において、Rがエチル基、R〜Rがいずれも水素原子、Yがエチレン基、p、q及びrがそれぞれ7、sが0である化合物として、TMPT−21(日本化薬株式会社製)が商業的に入手可能である。
【0085】
また、(B)成分の光重合性化合物として、上記(B1)、(B2)成分の他に、分子内にエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物は、解像性を良好にする見地から、下記一般式(XVIII)又は(XIX)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0086】
【化16】

【0087】
ここで、一般式(XVIII)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。Rは水素原子、メチル基、ハロゲン化メチル基のいずれかを示し、メチル基又はハロゲン化メチル基であることが好ましく、ハロゲン化メチル基であることがより好ましい。Rは炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基のいずれかを示し、kは0〜4の整数を示す。なお、kが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
【0088】
上記一般式(XVIII)で表される化合物としては、例えば、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β′−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシエチル−β′−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、及びβ−ヒドロキシプロピル−β′−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート等が挙げられ、なかでも、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β′−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレートが好ましい。γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β′−メタクリロイルオキシエチル−o−フタレートはFA−MECH(日立化成工業株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0089】
一般式(XIX)で表される化合物、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートは、NKエステル702A(新中村化学工業株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。
【0090】
【化17】

【0091】
本発明における(C)成分の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンタラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンなどが挙げられる。中でも、解像性を良好にする観点から、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン及び2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンの双方を含むことが好ましい。また、2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は同一で対象な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせでもよい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0092】
本発明における(D)成分のカルボン酸と反応する官能基を有する化合物としては、例えば、オキシラン環、オキセタン環、イソシアネート等の官能基を有する化合物が挙げられる。これらの中でもオキシラン環が望ましく、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等があげられ、電極の溶解を防止する観点から、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0093】
(E)成分:メルカプト基を含まない複素環状化合物
メルカプト基を含まない複素環状化合物は、それを配合することにより金属配線や金属層等の銅及び銅合金、ITO、IZO等を腐食させることなく、優れた防錆効果、残膜防止効果、及び膜密着効果を有する感光性樹脂組成物が得られる。
複素環状化合物は、2種又はそれ以上の元素の原子(炭素のほか、窒素、酸素、硫黄など)から環が構成されてなる環式化合物をいう。複素環状化合物としては、トリアゾール環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、2H−ピラン環及び6H−ピラン環、トリアジン環を有する化合物等が挙げられ、中でも炭素原子と窒素原子を含むトリアゾール環、ピロール環、ピラゾール環、チアゾール環、イミダゾール環及びテトラゾール環を有する化合物が好ましい。
【0094】
(E)成分のメルカプト基を含まない複素環状化合物を例示すると、具体的には、ピロール、3−メチルピロール、2,4−ジメチルピロール、2,5−ジメチルピロール、2−エチルピロール、インドール、5−ヒドロキシインドール、ピラゾール、4−メチルピラゾール、3−アミノピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジイソプロピルピラゾール、3−アミノ−5−ヒドロキシピラゾール、インダゾール、5−アミノインダゾール、6−アミノインダゾール、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、4−イミダゾールカルボン酸、4−メチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、5−メチルベンズイミダゾール、2−アミノベンズイミダゾール、5,6−ジメチルベンズイミダゾール、2,5−ジメチル−1,3,4−チアジゾール、4−フェニル−1,2,3−チアジゾール、2−アミノ−1,3,4−チアジゾール、2−アミノ−5−エチル−1,3,4−オキサジアゾール、チアゾール、2−アミノチアゾール、2−メチルチアゾール、2−メトキシチアゾール、2−エトキシチアゾール、2−イソブチルチアゾール、2−トリメチルシリルチアゾール、5−トリメチルシリルチアゾール、4−メチルチアゾール、4,5−ジメチルチアゾール、2−エチルチアゾール、2,4−ジメチルチアゾール、2−アミノ−5−メチルチアゾール、2−アミノ−4−メチルチアゾール、2,4,5−トリメチルチアゾール、ベンゾチアゾール、2−メチルベンゾチアゾール、2,5−ジメチルベンゾチアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,5−トリアゾール、4−アミノ−3,5−ジメチル−4H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3,5−ジプロピル−4H−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−イソプロピル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1H−1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5,6−ジメチルベンゾトリアゾール、5−アミノ−1H−ベンゾトリアゾール、ベンゾトリゾール−4−スルホン酸、1H−テトラゾール、5−メチル−1H−テトラゾール、5−(メチルチオ)−1H−テトラゾール、5−(エチルチオ)−1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、5−ニトロ−1H−テトラゾール1−メチル−1H−テトラゾール、5,5′−ビス−1H−テトラゾール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0095】
前記(E)成分の複素環状化合物がテトラゾール環の場合、1H−テトラゾール、5置換−1H−テトラゾール、1置換−1H−テトラゾール及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であると好ましい。
前記(E)成分の複素環状化合物がトリアゾール環の場合、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール及びその誘導体、1,2,3−ベンゾトリアゾール、5置換−1H−ベンゾトリアゾール、6置換−1H−ベンゾトリアゾール、5,6置換−1H−ベンゾトリアゾール及びその誘導体からなる群から選択されると好ましい。
【0096】
本発明の(F)成分の無機系黒色顔料としては、例えば、チタンブラック、カーボンブラック、コバルトブラック等が挙げられ、熱処理時の退色をより抑制する観点から、チタンブラックが好ましく用いられる。
【0097】
上記(B)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の塗膜性および、光硬化物の機械的強度の観点から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、40〜80質量部とすることが好ましく、45〜70質量部とすることがより好ましい。
上記(B1)成分の含有量は、(B)成分の総量100質量部に対し20〜100質量部とすることが好ましく、30〜70質量部とすることがより好ましい。上記(B2)成分の含有量は、(B)成分の総量100質量部に対し10〜70質量部とすることが好ましく、10〜40質量部とすることがより好ましい。
【0098】
上記(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜10質量部であることがより好ましい。この含有量が0.1質量部未満では光感度が不充分となる傾向があり、20質量部を超えると露光の際に組成物の表面での吸収が増大して内部の光硬化が不充分となる傾向がある。
【0099】
上記(E)成分(複素環状化合物)の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、通常1種類につき、0.1〜10質量部、2種類以上を組み合わせる場合は合計で0.1〜10質量部である。より好ましくは0.2〜5質量部の範囲である。0.1質量部未満であると金属層への密着性の向上効果が低下する傾向があり、10質量部を超えるとそれ以上配合しても密着性の大きな向上が見込まれない。
【0100】
前記(F)成分の無機系黒色顔料の含有量は、感光性樹脂組成物の遮光性、分散安定性及び感光性エレメント形成時の塗膜外観の観点から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.2〜5質量部であることがより好ましい。
【0101】
以上のような成分を含む樹脂組成物は、さらに必要に応じて、マラカイトグリーン等の染料、トリブロモフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤などを、(A)成分および(B)成分の総量100質量部に対して各々0.01〜20質量部程度含有することができる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて使用される。
【0102】
以上のような成分を含む本発明の感光性樹脂組成物は、たとえば、含有成分をロールミル、ビーズミル等で均一に混練、混合することにより得ることができる。また、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤またはこれらの混合溶剤に溶解して、固形分30〜60質量%程度の溶液として用いることができる。
【0103】
得られた感光性樹脂組成物を用いて画像表示装置用基板上に感光物組成物層を形成する方法としては、特に制限はないが、前記基板上に感光性樹脂組成物を液状レジストとして塗布して乾燥することができる。また、必要に応じて感光性樹脂組成物層上に保護フィルムを被覆することができる。さらに、後に詳しく述べるが感光性樹脂組成物層を感光性エレメントの形態で用いることが好ましい。塗布される感光性樹脂組成物層の厚みは、用途により異なるが、乾燥後の厚みで1〜100μm程度、好ましくは10〜60μmである。液状レジストとして塗布後、保護フィルムを被覆して用いる場合の保護フィルムとしては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体フィルムが挙げられる。
【0104】
本発明の感光性エレメントは、支持体と、その上に形成された上記感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層とを備える。
【0105】
支持体としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の重合体フィルムを好ましく用いることができる。重合体フィルムの厚みは、1〜100μm程度とすることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましく、10〜30μmであることがさらに好ましい。
【0106】
支持体上への感光性樹脂組成物層の形成方法は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物の溶液を塗布、乾燥することにより好ましく実施できる。塗布される感光性樹脂組成物層の厚みは、用途により異なるが、乾燥後の厚みで1〜100μm程度であることが好ましい。画像表示装置の隔壁として用いる場合、感光性樹脂組成物層の厚みは、乾燥後の厚みで10〜90μmであることがより好ましく、10〜60μmであることがさらに好ましい。
塗布は、たとえば、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ等の公知の方法で行うことができる。乾燥は、70〜150℃、5〜30分間程度で行うことができる。また、感光性樹脂組成物層中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する点から、2質量%以下とすることが好ましい。
【0107】
支持体として用いられる上記重合体フィルムを保護フィルムとして用いて、感光性樹脂組成物層表面を被覆してもよい。保護フィルムとしては、感光性樹脂組成物層と支持体の接着力よりも、感光性樹脂組成物層と保護フィルムの接着力の方が小さいものが好ましく、また、低フィッシュアイのフィルムが好ましい。さらに、感光性フィルムは、感光性樹脂組成物層、支持体および任意の保護フィルムの他に、クッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層や保護層を有していてもよい。
【0108】
製造された感光性エレメントは、通常、円筒状の巻芯に巻きとって貯蔵される。なお、この際支持体が外側になるように巻き取られることが好ましい。上記ロール状の感光性エレメントロールの端面には、端面保護の見地から端面セパレータを設置することが好ましく、耐エッジフュージョンの見地から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。また、梱包方法として、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装することが好ましい。上記巻芯としては、たとえば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチックが挙げられる。
【0109】
次に、本発明の画像表示装置の隔壁の形成方法について説明する。すなわち、画像表示装置の基板上に、感光性樹脂組成物、又は感光性エレメントを用いて感光性樹脂組成物層を積層する積層工程と、前記感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化せしめる露光工程と、前記露光部以外の部分を除去して光硬化物パターンを形成する現像工程と、を有する。
【0110】
まず、上述した本発明の感光性樹脂組成物層を画像表示装置の基板上に積層する。前記基板としては、ガラス基板若しくはポリマー基板のような絶縁基板又はシリコン基板などの半導体基板若しくはITOのような電極が形成された半導体基板が挙げられる。積層方法としては、上述した塗布方法が用いられる他、感光性エレメントを用いることもできる。
【0111】
感光性エレメントを用いる積層方法は、感光性樹脂組成物層上に保護フィルムが存在している場合には、保護フィルムを除去しながら基板上へ積層する。前記積層条件としては、例えば、感光性樹脂組成物層を70〜130℃程度に加熱しながら、基板上に0.1〜1MPa程度(1〜10kgf/cm程度)の圧力で圧着することにより積層する方法などが挙げられ、減圧下で積層することも可能である。基板表面の形状は、通常は平坦であるが、必要に応じて凹凸や電極パターンが形成されていてもよい。
【0112】
感光性樹脂組成物の積層後、感光性樹脂組成物層に画像状に活性光線を照射して、露光部を光硬化させる。画像状に活性光線を照射させる方法としては、感光性樹脂組成物層上にマスクパターンを設置して画像状に活性光線を照射し、露光部の感光性樹脂組成物層を光硬化させる方法がある。マスクパターンは、ネガ型でもポジ型でもよく、一般に用いられているものを使用できる。活性光線の光源としては、公知の光源、たとえば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線、可視光などを有効に放射するものが用いられる。また、露光方法としては、マスクパターンを用いずにレーザーで直接パターンを描画する、直接描画露光法を用いることもできる。
【0113】
露光後に未露光部の感光性樹脂組成物層を現像により選択的に除去することにより、画像表示装置用の基板上に光硬化物パターンが形成される。なお現像工程は、支持体が存在する場合は、現像に先立ち、支持体を除去する。現像は、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の現像液によるウエット現像、ドライ現像等で未露光部を除去することにより行われる。本発明においては、アルカリ性水溶液を用いることが好ましい。アルカリ性水溶液としては、例えば、0.1〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液等が挙げられる。このアルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光性樹脂組成物層の現像性に合わせて調節される。また、アルカリ性水溶液中には、界面活性剤、消泡剤、有機溶剤等を混入させてもよい。上記現像の方式としては、たとえば、ディップ方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等が挙げられる。
【0114】
現像後の処理として、形成された前記光硬化物パターンを、必要に応じて60〜250℃程度の加熱処理によりさらに硬化してもよい。
【0115】
本発明の画像表示装置の製造方法は、粒子等の表示媒体を前記工程で得た隔壁内に充填する工程と、その基板に対向するように隔壁の反対側に基板を貼り付ける工程と、を有する。前記基板としては、ガラス基板若しくはポリマー基板のような絶縁基板又はシリコン基板などの半導体基板若しくはITOやIZOのような電極が形成された半導体基板が挙げられる。
【実施例】
【0116】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0117】
(実施例1、2及び比較例1〜3)
表1に示した成分を、溶剤を用いて溶解・分散させて感光性樹脂組成物を得た。次いで、この感光性樹脂組成物溶液を16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、商品名:FB−40)上に均一に塗布し、90℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥した後、ポリエチレン製保護フィルム(フィルム長手方向の引張強さ:16MPa、フィルム幅方向の引張強さ:12MPa、商品名:NF−15、タマポリ株式会社製)で保護して感光性エレメントを得た。感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚は、45μmであった。
【0118】
実施例で用いた各成分は、次のものである。
(A)成分:分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するバインダーポリマー
MIS−115:メタクリル酸−2-ヒドロキシエチル/メタクリル酸/N−シクロヘキシルマレイミド/ジシクロペンタニルメタクリレート共重合体(質量比39.5/15/13.5/32、2−イソシアネートエチルメタクリレート1.5mmol/g付加、綜研化学株式会社製、
樹脂A;メタクリル酸/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル共重合体(質量比30/35/35、重量平均分子量50,000、酸価196mgKOH/g)の48質量%メチルセロソルブ/トルエン(質量比6/4)溶液
(B)成分:光重合性化合物
JTX−039B:上記一般式(III)で表される化合物であって、R及びRが上記一般式(IV)で表される基、Rが上記一般式(V)で表される基、Rがメチル基、Xがエチレン基、k=7、Rがメチル基、Yがエチレン基、m=5、n=4、l=1、Z及びZが上記一般式(VI)で表される基、p=6、である化合物(日本サイテックインダストリーズ株式会社製)
FA−024M:(PO)(EO)(PO)変性ポリエチレングリコールジメタクリレート(日立化成工業株式会社製)
FA−MECH:γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β′−メタクリロイルオキシエチル−o−フタレート(日立化成工業株式会社製)
APG−400:プロピレングリコールジアクリレート(新中村化学工業社製)
TMCH−5R:トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート/1,4ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン/2−ヒドロキシエチルメタクリレート、日立化成工業株式会社製、ウレタン結合と脂環式炭化水素骨格とエチレン性不飽和基を有する2官能アクリレート
(C)成分:光重合開始剤
N−1717:(1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン、株式会社ADEKA社製、商品名)0.3g、フェノチアジン1.0g
(D)成分:カルボン酸と反応する官能基を有する化合物
エピクロンN−670−EXP−S:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC株式会社製、商品名 12.8g
(E)成分:メルカプト基を含まない複素環状化合物
BT:ベンゾトリアゾール
TA−268:4−メチル−1H−ベンゾトリアゾールアミン塩40質量%と5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールアミン塩60質量%の混合物(SEETEC TA−268、シプロ化成株式会社製)
MBI:メルカプトベンゾイミダゾール
MBT:メルカプトベンゾチアゾール
(F)成分:無機系黒色顔料
BT−1HCA(チタンブラック分散液、株式会社ジェムコ製、商品名)0.59g
(その他の成分)
フローレンDOPA−17HF(分散剤、共栄社化学株式会社製、商品名)0.25g、
SZ−6030(メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名)5g、トルエン12g、メタノール4gを配合し、溶液を得た。
【0119】
ITO付PET基材(東洋紡績株式会社製)のITO面上に、上記感光性エレメントを、感光性樹脂組成物層がITO付PET基材表面に接するように、ポリエチレン製保護フィルムを剥離しながら110℃に加熱したラミネートロールを通してラミネートした。できあがった積層物の構成は、下からITO付PET基材、感光性樹脂組成物層、ポリエチレンテレフタレートフィルムとなる。得られた積層物について、感度、密着性、解像度および表示特性の評価を行った。
【0120】
<感度の評価>
高圧水銀灯ランプを有する平行光露光機(株式会社オーク製作所製)EXM−1201を用いて、41段ステップタブレットを有するフォトツールを積層物のポリエチレンテレフタレートフィルム上に密着させ、露光を行った。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃で20秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去した。41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が29.0となるエネルギー量を感度(mJ/cm)とした。このエネルギー量の数値が小さい程、感度が高いことを示す。表1に評価結果を示した。
【0121】
<密着性の評価>
高圧水銀灯ランプを有する平行光露光機(株式会社オーク製作所製)EXM−1201を用いて、密着性評価用ネガとしてライン幅/スペース幅が10/300〜80/300(単位:μm、スペース幅一定)の配線パターンを有するフォトツールと、41段ステップタブレットを有するフォトツールを積層物のポリエチレンテレフタレートフィルム上に密着させ、41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が29.0となるエネルギー量で露光を行った。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃で20秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去して密着性を評価した。密着性は現像液により剥離されずに残ったラインの幅(μm)で表され、この数値が小さい程、細いラインでも基板から剥離せずに密着していることから、密着性が高いことを示す。表1に評価結果を示した。
【0122】
<解像度の評価>
41段ステップタブレットを有するフォトツールと、解像度評価用ネガとしてライン幅/スペース幅が30/30〜200/200(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールを積層物のポリエチレンテレフタレートフィルム上に密着させ、高圧水銀灯ランプを有する平行光露光機(株式会社オーク製作所製)EXM−1201を用いて、41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が29.0となるエネルギー量で露光を行った。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃で20秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去して解像度を評価した。解像度は現像処理によって未露光部が良好に除去された最も小さいスペース幅(μm)で表され、この数値が小さいほど解像度は良好である。表1に評価結果を示した。
【0123】
<電極の溶解性>
ITO-TEG基板を用いてITO面上に、上記感光性エレメントを、感光性樹脂組成物層がITO-TEG基板表面に接するように、ポリエチレン製保護フィルムを剥離しながら110℃に加熱したラミネートロールを通してラミネートした。できあがった積層物の構成は、下からITO-TEG基板、感光性樹脂組成物層、ポリエチレンテレフタレートフィルムとなる。得られた積層物を、高圧水銀灯ランプを有する平行光露光機(株式会社オーク製作所製)EXM−1201を用いて、現像後の残存ステップ段数が29.0となるエネルギー量で露光を行った。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、1質量重量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃で20秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去した。次いで、120℃に加熱した箱型乾燥機(三菱電機株式会社製、型番:NV50−CA)内に1時間静置した。次いで、60℃、90%RHの条件下で、80Vの直流電圧を印加し、200時間経過後の電極(陽極)の抵抗値を測定し、下記式より初期値からの抵抗値の上昇率を算出した。表1に評価結果を示した。

抵抗値の上昇率(%)=[(200時間経過後の陽極抵抗値)×100/(陽極抵抗値の初期値)]−100
【0124】
【表1】

配合量の単位:g
【0125】
本発明の(A)〜(F)成分を含有する感光性樹脂組成物を用いることで、高温高湿下で電圧を印加したITOの溶解を抑制・防止でき、密着性、解像性も良好である。
これに対し、(E)成分(メルカプト基を含まない複素環状化合物)を含まない比較例1、そして複素環状化合物でもメルカプト基を有する化合物を含有した比較例2、3の組成物では、電極の溶解を生じてしまう。(E)成分のメルカプト基を含まない複素環状化合物の配合が、ITOなどの電極の感光性樹脂組成物中への溶解・拡散防止に有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置において、画素を分離する隔壁を形成するための感光性樹脂組成物であって、上記感光性樹脂組成物が、
(A)成分:分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するバインダーポリマー、
(B)成分:光重合性化合物、
(C)成分:光重合開始剤、
(D)成分:カルボン酸と反応する官能基を有する化合物、
(E)成分:メルカプト基を含まない複素環状化合物、
(F)成分:無機系黒色顔料、を含む感光性樹脂組成物。
【請求項2】
上記(F)成分が、チタンブラックである請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
支持体と、該支持体上に形成された請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層とを備える感光性エレメント。
【請求項4】
前記感光性樹脂組成物層の膜厚が10〜60μmである請求項3に記載の感光性エレメント。
【請求項5】
画像表示装置の基板上に、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を積層する積層工程と、前記感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化せしめる露光工程と、前記露光部以外の部分を除去して光硬化物パターンを形成する現像工程と、を有する、画像表示装置の隔壁の形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載の画像表示装置の隔壁の形成方法により形成された光硬化物パターンを、60〜250℃で加熱処理して熱硬化せしめる加熱工程をさらに有する、画像表示装置の隔壁の形成方法。
【請求項7】
表示媒体を、請求項5又は6に記載の画像表示装置の隔壁の形成方法により形成された隔壁内に充填する工程と、その基板に対向するように隔壁の反対側に基板を貼り付ける工程と、を有する、画像表示装置の製造方法。

【公開番号】特開2013−3508(P2013−3508A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137265(P2011−137265)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】