説明

感光性樹脂組成物、感光性フィルム及び永久レジスト

【課題】高い光感度(高感度)と解像性を両立できる感光性樹脂組成物及び、耐めっき性や、はんだ耐熱性の優れた永久レジストの提供。
【解決手段】(a)バインダーポリマーと、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、(c)光重合開始剤と、(d)メルカプト基を少なくとも1つ以上有する化合物と、を含み、(c)光重合開始剤が、下記式(1)で表されるアルコキシヘキサアリールビスイミダゾール化合物を含む、感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、感光性フィルム及び永久レジストに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造業界では、従来、プリント配線板上に永久レジストを形成することが行われている。この永久レジストは、実装部品をプリント配線板に接合するためのはんだ付け工程において、プリント配線板の導体層の不要な部分にはんだが付着することを防ぐ役割を有している。また、永久レジストは、実装部品接合後のプリント配線板の使用時においては導体層の腐食を防止したり導体層間の電気絶縁性を保持したりする永久マスクとしての役割も有している。
【0003】
永久レジストの形成方法としては、例えば、プリント配線板の導体層上に熱硬化性樹脂をスクリーン印刷する方法が知られている。しかし、このような方法ではレジストパターンの高解像度化に限界があるため、近年のプリント配線板の高密度化に対応させることが困難になってきている。
【0004】
そこで、レジストパターンの高解像度化を達成するために、フォトレジスト法が盛んに用いられるようになってきている。このフォトレジスト法は、基板上に感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層を形成し、この感光性樹脂組成物層を所定パターンの露光により硬化させ、未露光部分を現像により除去して所定パターンの硬化膜を形成する方法である。
【0005】
フォトレジスト法に使用される感光性樹脂組成物は、作業環境保全、地球環境保全の点から、炭酸ナトリウム水溶液等の希アルカリ水溶液で現像可能なアルカリ現像型のものが主流になってきている。
【0006】
アルカリ現像型の感光性樹脂組成物としては、液状レジストインキ組成物(例えば、特許文献1参照)や、感光性熱硬化性樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−243869号公報
【特許文献2】特開平01−141904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、さらなるプリント配線板の高密度化の観点から、マスクを必要とせず、CAD(computer−aided design)で作成したパターンをレーザー光により直接描画する方法である、LDI(laser direct imaging)方式へ適用可能な感光性樹脂組成物が望まれている。
【0009】
LDIで使用する光源には主波長として、365nm付近のもの、405nm付近のもの、あるいはその両方を含むものがある。特に405nm付近の波長のみを光源として用いることで、レーザー光のエネルギーによる装置の劣化を抑えることができる。このため405nm付近の波長のみを光源とした直接描画方式へ適用可能な高感度感光性樹脂組成物が望まれている。
【0010】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載されている従来の感光性樹脂組成物では、LDI方式に対応し得る十分な光感度を有しておらず、LDI方式へ適用が困難であった。
【0011】
また、基板上に感光性樹脂組成物層を形成する場合、感光性樹脂組成物が希釈剤を含む場合は乾燥工程で、溶剤を含まない場合はラミネート工程等で熱がかかる。従来の感光性樹脂組成物において比較的光感度の高いものは、熱安定性が低く、こうした加熱工程で樹脂が反応して現像液への溶解性が低下し、目的のレジストパターンが得られない等の問題があった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高い光感度(高感度)及び解像性を両立できる感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、当該感光性樹脂組成物を用いた感光性フィルム及び永久レジストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、(a)バインダーポリマーと、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、(c)光重合開始剤と、(d)メルカプト基を少なくとも1つ以上有する化合物と、を含み、(c)光重合開始剤が、下記式(1)で表されるアルコキシヘキサアリールビスイミダゾール化合物を含む、感光性樹脂組成物を提供する。
【0014】
【化1】

【0015】
式(1)中、Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は有機基を示し、複数存在するXのうち少なくとも1つはアルコキシ基である。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記構成を有することにより、高い光感度(高感度)及び解像性を両立できる。このような効果を発揮する理由としては、本発明の感光性樹脂組成物は熱安定性が高く、高感度化した場合であっても、解像性が低下しないことが考えられるが、理由はこれに限定されるものではない。また、本発明の感光性樹脂組成物は、感度及び解像性に優れることから、直接描画方式において、より少ない露光量でのパターン形成が可能であり、優れたスループットを実現可能である。さらに、上記感光性樹脂組成物は熱安定性に優れ、乾燥工程や保存中の安定性が良好であり、長期保管が可能である。
【0017】
ところで、一般的に、永久レジスト形成用の感光性樹脂組成物には、感度、解像性に加え、現像性に優れることが要求される。また、永久レジストには、通常、耐めっき性、はんだ耐熱性、温度サイクル試験(TCT)に対する耐熱衝撃性や、超加速高温高湿寿命試験(HAST)に対する微細配線間でのHAST耐性及び硬化膜強度等の特性が要求される。本発明の感光性樹脂組成物は、現像性にも優れ、かつ、耐めっき性、はんだ耐熱性、温度サイクル試験(TCT)に対する耐熱衝撃性や、超加速高温高湿寿命試験(HAST)に対する微細配線間でのHAST耐性及び硬化膜強度に優れる永久レジストを形成可能である。
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物においては、式(1)中に複数存在するXのうち少なくとも1つがハロゲン原子であることが好ましい。
【0019】
式(1)で表される化合物がこのようなものであると、感光性樹脂組成物の感度がより向上する。
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物は、(d)メルカプト基を少なくとも1つ以上有する化合物が、メルカプト基を2つ以上有する化合物を含むことが好ましい。
【0021】
(d)メルカプト基を少なくとも1つ以上有する化合物が、このような化合物を含むと、感光性樹脂組成物の感度、熱安定性及び硬化後の膜強度が向上する。
【0022】
本発明の感光性樹脂組成物は、(a)バインダーポリマーが、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位を有する共重合体を含むことが好ましい。
【0023】
(a)バインダーポリマーが、このような化合物を含むと、感光性樹脂組成物の現像性がより向上する。
【0024】
本発明の感光性樹脂組成物は、(e)熱硬化剤を更に含むことが好ましい。
【0025】
感光性樹脂組成物がこのような化合物を含むと、感光性樹脂組成物を光硬化させた後、さらに熱硬化させることができ、得られる硬化膜のHAST耐性(絶縁信頼性)をより向上させることができる。
【0026】
ここで、(e)熱硬化剤は、イソシアネート化合物にブロック剤を反応させて得られる化合物及びメラミン誘導体の少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0027】
(e)熱硬化剤がこのような化合物を含むと、硬化膜のHAST耐性(絶縁信頼性)がより一層向上する。
【0028】
また、本発明は、支持体と、該支持体上に形成された上記感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備える感光性フィルムを提供する。
【0029】
このような感光性フィルムによれば、本発明の感光性樹脂組成物からなるドライフィルムタイプの永久レジストを容易に形成することができ、かつ、耐めっき性、はんだ耐熱性、耐熱衝撃性及びHAST耐性に優れた永久レジストを形成可能である。また、当該感光性フィルムは、長期保管が可能であり、かつ直接描画方式において優れたスループットでパターンを形成可能である。
【0030】
また、本発明は、プリント配線板用の基板上に形成され、上記感光性樹脂組成物の光硬化物からなる、永久レジストを提供する。
【0031】
このような永久レジストは、上記感光性樹脂組成物の光硬化物からなるため、優れた耐めっき性、はんだ耐熱性、耐熱衝撃性及びHAST耐性を有する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、高い光感度(高感度)及び解像性を両立できる感光性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、上記感光性樹脂組成物を用いた感光性フィルム及び永久レジストを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の感光性フィルムの好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明における(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基及びそれに対応するメタクリロイル基を意味する。
【0035】
(感光性樹脂組成物)
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(a)バインダーポリマーと、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、(c)光重合開始剤と、(d)メルカプト基を少なくとも1つ以上有する化合物と、を含み、(c)光重合開始剤が、下記式(1)で表されるアルコキシヘキサアリールビスイミダゾール化合物を含む。このような感光性樹脂組成物は、高い光感度(高感度)及び解像性を両立できる。また、このような感光性樹脂組成物は、感度及び解像性に優れることから、直接描画方式において、より少ない露光量でのパターン形成が可能であり、優れたスループットを実現可能である。さらに、上記感光性樹脂組成物は熱安定性に優れ、乾燥工程や保存中の安定性が良好であり、長期保管が可能である。また、このような感光性樹脂組成物は、現像性にも優れ、かつ、耐めっき性、はんだ耐熱性、温度サイクル試験(TCT)に対する耐熱衝撃性や、超加速高温高湿寿命試験(HAST)に対する微細配線間でのHAST耐性及び硬化膜強度に優れる永久レジストを形成可能である。
【0036】
【化2】

【0037】
式(1)中、Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は有機基を示し、複数存在するXのうち少なくとも1つはアルコキシ基である。
【0038】
以下、本実施形態の感光性樹脂組成物に含まれる成分について、より詳細に説明する。
【0039】
[(a)バインダーポリマー]
上述のとおり、本実施形態の感光性樹脂組成物は、(a)バインダーポリマー(以下、場合により「(a)成分」という)を含む。
【0040】
(a)成分としては、アルカリ水溶液に可溶で皮膜形成可能であれば特に制限はないが、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド及びポリオキシベンゾイル等の樹脂、アクリル樹脂、ビニル基含有エポキシ樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、メラミン樹脂、並びにこれらの樹脂を酸変性させた酸変性樹脂が挙げられる。
【0041】
(a)成分は、アルカリ現像性をより向上させる観点から、分子内にカルボキシル基を有するポリマーを含むことが好ましい。当該分子内にカルボキシル基を有するポリマーは、得られる硬化膜の耐めっき性及び耐熱衝撃性をより向上させる観点から、(a1)カルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する重合性化合物(以下、場合により「(a1)成分」という)を含むことが好ましい。
【0042】
(a1)成分は、熱硬化剤等と併用することにより、重合反応及び/又は架橋反応をするものであることが好ましい。(a1)成分としては、感光性樹脂組成物の高感度化、すなわち、より少ない活性光線エネルギー量での硬化に対応する観点から、2つ以上の水酸基及びエチレン性不飽和基を有する(メタ)アクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物と、を反応させることにより得られるポリウレタン化合物が好ましい。このようなポリウレタン化合物としては、例えば、下記式(2)で表される構造を有する化合物が挙げられる。なお、上記(メタ)アクリレート化合物は、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物等のエポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させて得られる化合物であることが好ましい。
【0043】
【化3】

【0044】
ここで、一般式(2)中、R11は(メタ)アクリレート化合物の残基、R12はジイソシアネート化合物の残基、R13は炭素数1〜5のアルキル基、R14は水素原子又はメチル基を示す。なお、残基とは、原料成分から結合に供された官能基を除いた部分の構造をいう。具体的には、R11としては、例えば、ビス(4−オキシフェニル)−メタン、2,2−ビス(4−オキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(4−オキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のビスフェノールA型及びビスフェノールF型骨格,ノボラック骨格、フルオレン骨格が挙げられ、R12としては、例えば、フェニレン、トリレン、キシリレン、テトラメチルキシリレン、ジフェニルメチレン、ヘキサメチレン、トリメチルヘキサメチレン、ジシクロヘキシルメチレン、イソホロンが挙げられる。また、炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、アミル基等が挙げられる。
【0045】
なお、式(2)中に複数存在する基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、式(2)においては、(メタ)アクリレートに由来する構造単位と、ジオールに由来する構造単位とが、ジイソシアネートに由来する構造単位を介して交互に重合された構造となっているが、(メタ)アクリレートに由来する構造単位と、ジオールに由来する構造単位とが、ジイソシアネートに由来する構造単位を介してブロック的に重合された構造であってもよい。
【0046】
式(2)で表されるポリウレタン化合物としては、UXE−3011、UXE−3012、UXE−3024(以上、日本化薬株式会社製、サンプル名)等が入手可能である。
【0047】
上記ポリウレタン化合物の酸価は、20〜130mgKOH/gであることが好ましく、40〜110mgKOH/gであることがより好ましく、50〜100mgKOH/gであることがさらに好ましい。これにより、感光性樹脂組成物のアルカリ現像性が良好となり、優れた解像性が得られるようになる。
【0048】
ここで、酸価は、次のようにして測定することができる。すなわち、まず、酸価を測定すべき樹脂の溶液約1gを精秤した後、この樹脂溶液にアセトンを30g添加し、これを均一に溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1NのKOH水溶液を用いて滴定を行う。そして、下記式(α)により酸価を算出する。
A=10×Vf×56.1/(Wp×I) …(α)
【0049】
式(α)中、Aは酸価(mgKOH/g)を示し、Vfは0.1NのKOH水溶液の滴定量(mL)を示し、Wpは測定した樹脂溶液の質量(g)を示し、Iは測定した樹脂溶液中の不揮発分の割合(質量%)を示す。
【0050】
また、上記ポリウレタン化合物の重量平均分子量は、感光性樹脂組成物による塗膜性や、その硬化膜の耐熱衝撃性及びHAST耐性を良好に得る観点から、3000〜200000であることが好ましく、5000〜100000であることがより好ましく、7000〜50000であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値から求めた値をいう。なお、GPCにおける測定条件は以下のとおりである。
カラム:Gelpack GL−R440+GL−R450+GL−R400M
検出器:L3300 RI(日立製作所製)
流量 :2.05mL/min
濃度 :120mg/mL
注入量:200μL
圧力 :45gf/cm
【0051】
また、上記以外の(a1)成分としては、エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸のエステル化物に、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を付加した付加反応物を用いることもできる。永久レジストに、硬さが必要とされる場合には、これらの(a1)成分を用いることが好ましい。
【0052】
上記エポキシ化合物としては、特に制限はないが、例えば、ビスフェノール型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、多官能エポキシ化合物が挙げられる。
【0053】
上記不飽和モノカルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸及び飽和若しくは不飽和多塩基酸無水物と、1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート類又は飽和若しくは不飽和二塩基酸と、不飽和モノグリシジル化合物との半エステル化合物類との反応物が挙げられる。また、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、へキサヒドロフタル酸、マレイン酸、コハク酸等のジカルボン酸と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートを常法により等モル比で反応させて得られる反応物などが挙げられる。これらの不飽和モノカルボン酸は単独、又は混合して用いることができる。これらの中でも、アクリル酸が好ましい。
【0054】
上記飽和又は不飽和多塩基酸無水物としてはフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、コハク酸、トリメリット酸等の無水物が用いられる。
【0055】
また、市販品の(a1)成分としては、日本化薬社製ZAR−1035、CCR−1171H、PCR−1050(いずれもサンプル名)等が挙げられる。
【0056】
また、感度と熱安定性を同時に満足させるためには、(a)成分は、(a2)(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位を含む共重合体(以下、場合により「(a2)成分」という)を含むことが好ましい。
【0057】
(a2)成分は、例えば(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を共重合成分としてラジカル重合させることにより得ることができる。
【0058】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。
【0059】
(a2)成分としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルや(メタ)アクリル酸とともに、これらと共重合し得るビニルモノマーを共重合させて得られる化合物を用いることもできる。このようなビニルモノマーとしては、例えば、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド;アクリロニトリル及びビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類;(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、及びβ−スチリル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸系単量体;マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、及びマレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸系単量体;フマル酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸、スチレン、及びビニルトルエンが挙げられる。これらは単独で、又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸と共重合し得るビニルモノマー共重合体の側鎖及び/又は末端に、エチレン性不飽和結合を導入した共重合体も好適である。ビニルモノマー共重合体としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、ケイヒ酸、クロトン酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有するビニル重合性単量体と、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ビニルトルエン、N−ビニルピロリドン、α−メチルスチレン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート等のビニル重合性単量体を、有機溶剤中でアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、過酸化ベンゾイル等の重合開始剤を用いて一般的な溶液重合により得られるものを用いることができる。
【0061】
(a2)成分において、(メタ)アクリル酸に基づく構成単位の含有量(使用する全重合性単量体に対する(メタ)アクリル酸の割合)は、アルカリ現像性に優れる点では、12質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。この含有量は、現像液耐性に優れる点では、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましく、25質量%以下が特に好ましい。
【0062】
また、(a2)成分における(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構成単位の含有量(使用する全重合性単量体に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合)は、アルカリ現像後に充分な解像性及び密着性を得るためには、88質量%以下が好ましく、86質量%以下がより好ましく、84質量%以下が更に好ましい。
【0063】
上記ポリウレタン化合物以外の(a)成分の酸価は、アルカリ現像性を良好にする観点から、40〜170mgKOH/gであることが好ましく、50〜150mgKOH/gであることがより好ましく、60〜120mgKOH/gであることがさらに好ましい。また、上記ポリウレタン化合物以外の(a)成分の重量平均分子量(Mw)は、感光性樹脂組成物の塗膜性及びアルカリ現像性を良好にする観点から、5000〜200000であることが好ましく、10000〜200000であることがより好ましく、20000〜200000であることがより好ましい。
【0064】
(a)成分の含有量は、感光性樹脂組成物中の有機不揮発分全量を基準として20〜70質量%が好ましく、30〜50質量%がより好ましい。
【0065】
(a)成分は、単独で、又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
[(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性モノマー]
上述のとおり、本実施形態の感光性樹脂組成物は、(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性モノマー(以下、場合により「(b)成分」という)を含む。
【0067】
(b)成分は、エチレン性不飽和基を有し、光架橋可能であれば特に制限はないが、例えば、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物;多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマーが挙げられる。また、これら以外にも、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物;ノニルフェノキシポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。なお、環境への不可低減の観点より、上記(b)成分の中でもハロゲンフリーの化合物を用いることが好ましい。
【0068】
(b)成分は、感度、アルカリ現像性、解像性、密着性をバランス良く満たす点では、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0069】
中でも2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンを含むことが好ましい。2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン、及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0070】
上記化合物のうち、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、FA−321M(日立化成工業株式会社製、商品名)又はBPE−500(新中村化学工業株式会社製、商品名)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)は、BPE−1300(新中村化学工業株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0071】
上記多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。中でも、感度に優れる点では、EO変性構造を持つ化合物が好ましい。なお、「EO」とは「エチレンオキシド」のことをいい、「PO」とは「プロピレンオキシド」のことをいう。また、「EO変性」とはエチレンオキシドユニット(−CH−CH−O−)のブロック構造を有することを意味し、「PO変性」とはプロピレンオキシドユニット(−CH−CH−CH−O−、−CH(CH)CH−O−)のブロック構造を有することを意味する。
【0072】
(b)成分は、単独で、又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
(b)成分の含有量は、解像性及び難燃性に優れる点では、感光性樹脂組成物中の有機不揮発分全量を基準として7〜45質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。(b)成分の含有量を7質量%以上にすることにより解像性がより良好となる傾向があり、45質量%以下とすることで難燃性がより良好となる傾向がある。
【0074】
[(c)光重合開始剤]
上述のとおり、本実施形態の感光性樹脂組成物は、(c)光重合開始剤(以下、場合により「(c)成分という」)を含む。また、本実施形態の感光性樹脂組成物は、(c)成分が、下記式(1)で表されるアルコキシヘキサアリールビスイミダゾール化合物を含む。
【0075】
【化4】

【0076】
式(1)中、Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は有機基を示し、複数存在するXのうち少なくとも1つはアルコキシ基である。ここでアルコキシ基とはアルキル基が酸素原子に結合した構造を示す。なお、式(1)中、イミダゾール環同士の結合は共有結合を示す。
【0077】
アルコキシ基を形成するアルキル基としては、特に制限はないが、例えば、炭素原子数1〜12のアルキル基が挙げられる。炭素原子数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基及びこれらの構造異性体が挙げられる。これらの中でも、感度、熱安定性に優れる点では、炭素原子数4以下のものであることが好ましい。
【0078】
このようなアルキル基から形成されるアルコキシ基としては、例えば、炭素原子数1〜12のアルコキシ基が挙げられる。炭素原子数1〜12のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、が挙げられる。
【0079】
また、感度に優れる点では、式(1)中のXのうち少なくとも2つ以上がアルコキシ基であることが好ましい。この場合、複数のアルコキシ基は同一でも異なっていてもよいが、合成の容易さからは、同一であることが好ましい。
【0080】
Xのうちアルコキシ基でないものは、水素原子、ハロゲン原子又はアルコキシ基以外の有機基である。
【0081】
アルコキシ基以外の有機基としては、例えば、ジアルキルアミノ基等の電子供与性基が挙げられる。
【0082】
感度により優れる点では、アルコキシ基でないXのうち、少なくとも1つ以上がハロゲン原子であることが好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられるが、環境負荷低減の観点から、フッ素原子であることが好ましい。
【0083】
式(1)で表される化合物は、市販品としても入手可能である。例えば、WJ−HABI(常州強力化工社製、商品名)、TCDM−HABI(Hanmpford Research,Inc社製、サンプル名)、TCTM−HABI(Hanmpford Research,Inc社製、サンプル名)、MeO−HABI(黒金化成社製、サンプル名)、EtO−HABI(黒金化成社製、サンプル名)がある。
【0084】
(c)成分は、式(1)以外の光重合開始剤を含んでもよい。式(1)以外の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−モルホリノフェノン)−ブタノン−1,2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン;アルキルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル;メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体;クマリン系化合物が挙げられる。これらは単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
(c)成分の合計含有量は、感光性樹脂組成物中の有機不揮発分全量を基準として、感度に優れる点では、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上が更に好ましい。また、硬化膜の耐めっき性、はんだ耐熱性に優れる点では、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、4質量%以下が更に好ましく、2質量%以下が特に好ましい。
【0086】
[(d)メルカプト基を少なくとも1つ以上有する化合物]
上述のとおり、本実施形態の感光性樹脂組成物は、(d)メルカプト基を少なくとも1つ以上有する化合物(以下、場合により「(d)成分」という)を含む。(d)成分の具体例としては、例えば、各種のチオール化合物が挙げられる。チオール化合物としては、例えば、トリメチレンプロパントリスメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)等の脂肪鎖上にメルカプト基が結合した化合物;メルカプトベンゾオキサゾール等の複素環上にメルカプト基が結合した化合物;チオビスベンゼンチオール等の芳香環上にメルカプト基が結合した化合物が挙げられる。
【0087】
感光性樹脂組成物の感度、熱安定性及び硬化膜強度をバランス良く満たす観点から、(d)成分は、メルカプト基を一分子中に2つ以上有するものを含むことが好ましく、メルカプト基を一分子中に3つ以上有するものを含むことがより好ましい。メルカプト基を一分子中に3つ以上有する化合物としては、例えば、下記式(d−1)で表される化合物及び下記式(d−2)で表される化合物が挙げられる。
【0088】
【化5】

【0089】
【化6】

【0090】
式(d−1)中、YOはオキシアルキレン基を示し、Zはエチレン基又は置換基を有したエチレン基を示す。ここで、当該エチレン基が有する置換基としては、例えば、メチル基が挙げられる。また、rは0〜48の数を示す。なお、式(d−1)中に複数存在するYO及びZは、それぞれ異なってもよい。
【0091】
式(d−2)中、YO、r、及びZは上記と同義である。式(d−2)中に複数存在するYO及びZは、それぞれ異なってもよい。
【0092】
YOで表されるオキシアルキレン基としては、例えば、EO(エチレンオキシド)、PO(プロピレンオキシド)が挙げられる。高感度化の観点からは、YOはEOであることが好ましい。
【0093】
上記式(d−1)で表される化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリスメルカプトプロピオネート(堺化学工業株式会社製、商品名:ポリチオールTMMP)が挙げられる。なお、トリメチロールプロパントリスメルカプトプロピオネートの構造式を以下に示す。
【0094】
【化7】

【0095】
上記式(d−2)で表される化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製、商品名:カレンズMT PE1)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(堺化学工業社製、商品名:ポリチオールPEMP)が挙げられる。なお、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)の構造式を以下に示す。
【0096】
【化8】

【0097】
感光性樹脂組成物の感度、熱安定性及び硬化膜強度をバランス良く満たす観点からは、(d)成分として、トリメチロールプロパントリスメルカプトプロピオネート(堺化学工業株式会社製、商品名:ポリチオールTMMP)及びペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製、商品名:カレンズMT PE1)ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(堺化学工業社製、商品名:ポリチオールPEMP)の少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0098】
(d)成分の含有量は、感光性樹脂組成物中の有機不揮発分全量を基準として、感度に優れる点では、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が更に好ましい。硬化膜の強度に優れる点では、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0099】
[(e)熱硬化剤]
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(e)熱硬化剤(以下、場合により「(e)成分」という)を更に含むことが好ましい。感光性樹脂組成物が(e)成分を更に含むと、感光性樹脂組成物を光硬化させた後、さらに熱硬化させることができ、得られる硬化膜のHAST耐性(絶縁信頼性)をより向上させることができる。(e)成分としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性の化合物、及びこれらの誘導体が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型三級脂肪酸変性ポリオールエポキシ樹脂、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のジグリシジルエステル類;ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン等のジグリシジルアミン類;が挙げられる。
【0100】
硬化膜のHAST耐性(絶縁信頼性)の観点からは、(e)成分はイソシアネート化合物にブロック剤を反応させて得られる化合物(以下、場合により「ブロックイソシアネート化合物」という)及びメラミン誘導体の少なくとも1種を含むことが好ましい。保存安定性に優れる点では、潜在性の熱硬化剤であるブロックイソシアネート化合物を用いることが好ましい。
【0101】
ブロックイソシアネート化合物としては、例えば、アルコール化合物、フェノール化合物、ε−カプロラクタム、オキシム化合物、活性メチレン化合物等のブロック剤によりブロック化されたポリイソシアネート化合物が挙げられる。ブロック化されるポリイソシアネート化合物としては、4,4−ジフェニルメタンジシソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン1,5−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;が挙げられ、耐熱性の観点からは芳香族ポリイソシアネートが、着色防止の観点からは脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが好ましい。(e)成分は単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0102】
ブロックイソシアネート化合物の中でも、保存安定性及びHAST耐性に優れる点では、スミジュールBL−3175(住友バイエルウレタン社製、商品名)を(e)成分として用いることが最も好ましい。
【0103】
メラミン誘導体としては、例えば、メチロールメラミンなどのアルキロールメラミンやメチル化メラミンなどのアルキルメラミン、が挙げられる。反応性の観点からは、メチロールメラミン(ダイセル工業社製、商品名:サイメル C−300)が好ましい。
【0104】
感光性樹脂組成物が(e)成分を含む場合、その含有量は、感光性樹脂組成物中の有機不揮発分全量を基準として、5〜40質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましい。(e)成分の含有量を5質量%以上にすることで、感光性樹脂組成物の絶縁信頼性がより良好となる傾向があり、40質量%以下にすることで難燃性が良好となる傾向がある。
【0105】
[(f)無機フィラー]
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(f)無機フィラー(以下、場合により「(f)成分」という)を更に含んでもよい。(f)成分としては、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、粉状酸化珪素、無定形シリカ、タルク、クレー、焼成カオリン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母粉等が挙げられ、中でも硫酸バリウムが好ましい。
【0106】
(f)成分は、市販のものを用いてもよい。市販の(f)成分としては、例えば、硫酸バリウムではバリエースB−30(堺化学工業社製、商品名)、水酸化アルミニウムではハイジライトH−42M(昭和電工社製、商品名)、シリカではSFP−30M(電気化学工業社製、製品名)が挙げられる。無機フィラーは、粉体を上記樹脂中に直接混錬させてもよいし、溶剤等に分散させ上記樹脂中へ添加してもよい。
【0107】
感光性樹脂組成物及び感光性フィルムに用いた際の信頼性の見地から、(f)成分の80質量%以上は、その粒子径が10μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、0.2μm以下であることが更に好ましい。粒子径の微細化により、解像性や、より薄い塗膜での外観及び耐熱衝撃性が向上する傾向がある。
【0108】
(f)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、5〜90質量%であることが好ましく、15〜60質量%であることがより好ましい。5〜70質量%の無機フィラーを含むことにより、硬化膜の耐熱衝撃性を保ちつつ、難燃性を向上させることができる。めっき耐性の観点からバリエースB−30をビーズミル等により分散させたものを用いることが好ましい。
【0109】
[その他の成分]
本実施形態の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、マラカイトグリーン等の染料、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系又はアゾ系等の有機顔料、二酸化チタン等の無機顔料、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム又は硫酸バリウム等の無機顔料からなる充填剤、及び、上記した充填剤や有機顔料、無機顔料等の湿潤分散剤、消泡剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤などを含むことができる。これらの成分は、感光性樹脂組成物中の有機不揮発分全量を基準として、各々0.01〜70質量%程度含有させることが好ましい。またこれらの成分は、単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0110】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解し、固形分30〜70質量%程度の溶液として塗布することができる。
【0111】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、例えば、銅、銅系合金、鉄、鉄系合金等の金属面上に、液状レジストとして塗布してから乾燥後、必要に応じて保護フィルムを被覆して用いることができる。本実施形態の感光性樹脂組成物はまた、後述する感光性フィルムの形態で用いることもできる。
【0112】
(感光性フィルム)
次に、上記感光性樹脂組成物を用いた感光性フィルム(感光性エレメント)について説明する。
【0113】
図1は、本発明の感光性フィルムの好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示す感光性フィルム1は、支持体10と、支持体10上に設けられた感光性樹脂組成物層20と、感光性樹脂組成物層20上の支持体10とは反対側の面上に設けられた保護フィルム30と、を備える。感光性樹脂組成物層20は、本実施形態に係る感光性樹脂組成物からなる層である。感光性樹脂組成物層20は、本実施形態の感光性樹脂組成物からなる層を備えるため、高い光感度(高感度)及び解像性を両立できる。また、このような感光性樹脂組成物は、感度及び解像性に優れることから、直接描画方式において、より少ない露光量でのパターン形成が可能であり、優れたスループットを実現可能である。また、このような感光性樹脂組成物は、現像性にも優れ、かつ、耐めっき性、はんだ耐熱性、温度サイクル試験(TCT)に対する耐熱衝撃性や、超加速高温高湿寿命試験(HAST)に対する微細配線間でのHAST耐性及び硬化膜強度に優れる永久レジストを形成可能である。なお、図1に示す感光性フィルム1は保護フィルム30を備えるが、当該保護フィルム30はあってもなくてもよい。このような感光性フィルム1によれば、ドライフィルムタイプの永久レジストを容易に形成することができ、かつ、耐めっき性、はんだ耐熱性、耐熱衝撃性及びHAST耐性に優れた永久レジストを形成可能である。また、このような感光性フィルム1は、長期保管が可能であり、直接描画方式において優れたスループットでパターンを形成可能である。
【0114】
感光性樹脂組成物層20は、本実施形態に係る感光性樹脂組成物を、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解して固形分30〜70質量%程度の溶液とした後に、当該溶液を支持体10上に塗布して形成することが好ましい。
【0115】
感光性樹脂組成物層20の厚みは、用途により異なるが、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶剤を除去した乾燥後の厚みで、10〜100μmであることが好ましく、20〜60μmであることがより好ましい。感光性樹脂組成物層20の厚みを10μm以上であると、工業的な塗工がより容易になる傾向があり、100μm以下であると本発明の効果がより大きくなるとともに可とう性及び解像性がより良好となる傾向がある。
【0116】
支持体10としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムが挙げられる。
【0117】
支持体10の厚みは、5〜100μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。この厚みが5μm以上であると現像前に支持体を剥離する際に当該支持体が破れにくくなる傾向があり、また、100μm以下であると解像性及び可撓性がより良好となる傾向がある。
【0118】
保護フィルム3としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0119】
保護フィルム30の厚みは、5〜55μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましく、15〜35μmであることが更に好ましい。この厚みが5μm未満であるとラミネートの際、保護フィルム30が破れやすくなる傾向にあり、55μmを超えると廉価性に劣る傾向にある。
【0120】
支持体10と感光性樹脂組成物層20との2層からなる感光性フィルム又は支持体10と感光性樹脂組成物層20と保護フィルム30との3層からなる感光性フィルムは、例えば、そのまま貯蔵してもよく、又は保護フィルム30を介在させた上で巻芯にロール状に巻き取って保管することができる。
【0121】
感光性フィルム1は、例えば、プリント配線板用の基板上へのレジストパターンの形成に用いることができる。この場合、レジストパターンは、例えば、必要に応じて感光性フィルム1から保護フィルム30を除去する除去工程と、回路形成用基板上に、保護フィルム30が除去された感光性フィルムを、感光性樹脂組成物層20が回路形成用基板と隣接するように積層する積層工程と、活性光線を、必要に応じて支持体10を通して、感光性樹脂組成物層20の所定部分に照射して、感光性樹脂組成物層20に光硬化部を形成させる露光工程と、光硬化部以外の感光性樹脂組成物層20を除去する現像工程とを含む方法によって形成される。なお、回路形成用基板とは、絶縁層と、絶縁層上に形成された導電体層(銅、銅系合金、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス等の鉄系合金、好ましくは銅、銅系合金、鉄系合金からなる)とを備えた基板をいう。
【0122】
上記積層工程における積層方法としては、感光性樹脂組成物層20を加熱しながら回路形成用基板に圧着することにより積層する方法等が挙げられる。なお、積層の際の雰囲気は特に制限されないが、密着性及び追従性等の見地から減圧下で積層することが好ましい。また、積層される表面は、通常、回路形成用基板の導電体層の面であるが、当該導電体層以外の面であってもよい。
【0123】
積層工程においては、感光性樹脂組成物層20の加熱温度は50〜130℃とすることが好ましく、圧着圧力は0.1〜1.0MPa程度とすることが好ましく、周囲の気圧は4000Pa以下とすることがより好ましいが、これらの条件には特に制限はない。また、感光性樹脂組成物層20を上述のとおり50〜130℃に加熱すれば、予め回路形成用基板を予熱処理することは必要ではないが、積層性をさらに向上させるために、回路形成用基板の予熱処理を行うこともできる。
【0124】
積層工程後の露光工程においては、感光性樹脂組成物層20の所定部分に活性光線を照射して光硬化部を形成させる。光硬化部の形成方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像状に照射する方法が挙げられる。また、LDI方式、DLP(Digital Light Processing)露光法等のマスクパターンを有さない直接描画法による露光も可能である。この際、感光性樹脂組成物層20上に存在する支持体10が透明の場合には、そのまま活性光線を照射することができるが、不透明の場合には、支持体10を除去した後に感光性樹脂組成物層20に活性光線を照射する。
【0125】
活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、YAGレーザー、半導体レーザー等の紫外線を有効に放射するものを用いることができる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものを用いることもできる。
【0126】
上記露光工程後、感光性樹脂組成物層20上に支持体10が存在している場合には、支持体10を除去する。そして、現像工程を施す。現像工程においては、例えば、ウエット現像、ドライ現像等で光硬化部以外の感光性樹脂組成物層を除去して現像し、レジストパターンを形成させる。
【0127】
ウエット現像の場合は、アルカリ性水溶液等の現像液を用いて、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の方法により現像する。現像液としては、安全かつ安定であり、操作性が良好なものが好ましく用いられる。このような現像液としては、例えば、20〜50℃の炭酸ナトリウムの希薄溶液(1〜5質量%水溶液)等が挙げられる。
【0128】
上述の形成方法により得られたレジストパターンは、例えば、プリント配線板の永久レジストとして用いることができる。この場合、上記現像工程終了後に、高圧水銀ランプによる紫外線照射やオーブンにより加熱することが好ましい。これにより、永久レジストとしてのはんだ耐熱性、耐薬品性等を向上させることができる。
【0129】
紫外線を照射させる場合は必要に応じてその照射量を調整することが好ましい。例えば0.2〜10J/cm程度の照射量で照射を行うことができる。また加熱する場合の温度及び時間は、それぞれ、100〜170℃程度及び15〜90分程度の範囲が好ましい。さらに、紫外線照射と加熱とを両方実施してもよい。この場合、いずれか一方を実施した後、他方を実施することもできる。
【0130】
また、上記形成方法により得られたレジストパターン、すなわち上記感光性樹脂組成物の光硬化物からなるレジストパターンは、プリント配線板上に形成される永久レジスト(永久マスク)として使用されると好ましい。本実施形態に係る感光性樹脂組成物から形成される硬化膜は、優れた難燃性及び耐めっき性を有するので、基板にはんだ付けを施した後の配線の保護膜を兼ねる、プリント配線板の永久レジストとして有効である。また、このような永久レジストは、上記感光性樹脂組成物の光硬化物からなるため、耐めっき性に加え、優れたはんだ耐熱性、耐熱衝撃性及びHAST耐性を有する。
【0131】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0132】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0133】
(実施例1〜8、比較例1〜5)
[感光性フィルムの作製]
まず、表1及び表2に示す固形分の配合量(質量部)で、希釈剤としてのメチルエチルケトン20質量部とともに混合することにより、感光性樹脂組成物の溶液を得た。なお、表中の各成分は以下の通りである。
【0134】
(a)成分:バインダーポリマー
樹脂(i):メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチルの共重合体(メタクリル酸:メタクリル酸メチル:アクリル酸ブチル=17質量%:62質量%:21質量%、重量平均分子量100000、酸価110mgKOH/g)
【0135】
(b)成分:エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物
FA−321M:ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート(日立化成工業株式会社製、商品名)
TMPT:トリメチロールプロパントリメタクリレート(新中村化学株式会社製、商品名TMPT)
【0136】
(c)成分:光重合開始剤
HABI(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)は、アリール上にアルコキシ基を有するヘキサアリールビイミダゾールであり、HABI(vi)、(vii)、(viii)及び(ix)は、アリール上にアルコキシ基を有さないヘキサアリールビイミダゾールである。
【0137】
【化9】

【0138】
【化10】

【0139】
【化11】

【0140】
【化12】

【0141】
【化13】

【0142】
【化14】

【0143】
【化15】

【0144】
【化16】

【0145】
【化17】

【0146】
EAB:ビス(ジエチルアミノフェニル)ケトン(日本化薬株式会社製、商品名)
【0147】
(d)成分:メルカプト基を少なくとも1つ以上有する化合物
TMMP:トリメチロールプロパントリスメルカプトプロピオネート(堺化学工業株式会社、商品名:ポリチオールTMMP)
【0148】
(e)成分:熱硬化剤
BL−3175:ブロック型イソシアネート(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名スミジュールBL−3175)
【0149】
(その他の成分)
B−30:硫酸バリウム(堺化学工業株式会社製、商品名バリエースB−30)
NPG:N−フェニルグリシン(和光純薬、商品名:N−フェニルグリシン)
AW−500:フェノール系重合禁止剤(川口化学工業株式会社製、商品名:アンテージ黄色系顔料:ピグメントイエロー
【0150】
【表1】

【0151】
【表2】

【0152】
なお、表中の(c)成分において、HABI(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)は、式(1)で表されるアルコキシヘキサアリールビスイミダゾール化合物であり、HABI(vi)、(vii)、(viii)及び(ix)並びにEABは、式(1)で表されるアルコキシヘキサアリールビスイミダゾール化合物以外の光重合開始剤である。
【0153】
次に、これらの感光性樹脂組成物の溶液を、それぞれ支持体である16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人株式会社製、商品名G2−16)上に均一に塗布し、熱風対流式乾燥機を用いて100℃で10分間乾燥することにより、支持体上に感光性樹脂組成物層を形成した。感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚は、30μmであった。
【0154】
続いて、感光性樹脂組成物層の支持体と接している側と反対側の表面上に、保護フィルムであるポリエチレンフィルム(タマポリ株式会社製、商品名NF−15、厚み21μm)を貼り合わせ、感光性フィルムを得た。
【0155】
[特性評価]
実施例1〜9及び比較例1〜6で作製した感光性フィルムを用いて、それぞれ以下の各試験を行い、ラミネート裕度、感度、解像性、耐めっき性、はんだ耐熱性、耐熱衝撃性、HAST耐性について評価した。評価結果をまとめて表3及び表4に示す。
【0156】
(感度)
上述のようにして得られた感光性フィルムを用いて、以下のとおりに評価用基板を作製した。まず、12μm厚の銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント配線板用基板(E−679、日立化成工業株式会社製、商品名)の銅表面を砥粒ブラシで研磨し、水洗した後、乾燥した。このプリント配線板用基板上に連続プレス式真空ラミネータ(名機製作所製、商品名MVLP−500)を用いて、プレス熱盤温度100℃、真空引き時間20秒、ラミネートプレス時間30秒、真空チャンバー内最低到達気圧4hPa以下、圧着圧力0.4MPaの条件の下、感光性フィルムのポリエチレンフィルムを剥離して、感光性樹脂組成物層が回路形成用基板と隣接するように積層し、評価用積層体を得た。
【0157】
ラミネート後の評価用積層体を、常温(25℃)で1時間静置した後、405nmの青紫色レーザダイオードを光源とする直描露光機(日立ビアメカニクス株式会社製、製品名「DE−1AH」)を用いて、上記評価用積層体の上から、ライン幅/スペース幅が40/400(単位:μm)の配線パターンを有する描画データを使用し、それぞれの積層体につき5〜200mJ/cmの範囲で5mJ/cmずつ40段階のエネルギー量で露光を行った。
【0158】
露光後の評価用積層体を常温(25℃)で1時間静置した後、評価用積層体上のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、最小現像時間(未露光部が現像される最小時間)の1.7倍の時間でスプレー現像を行い、未露光部を除去して感度の評価を行った。感度の値は現像後に感光性樹脂組成物層が硬化されてなる40μm幅のラインがよれたり、下地から浮いていたり、折れたりせず、またラインの幅が40±5μmの範囲内となるエネルギー量(mJ/cm)のうち、もっとも小さい値とした。直描露光に好適な感光性樹脂組成物の感度は30mJ/cm以下が好ましいとされ、この値が小さいほど高感度であり、より好ましい。
【0159】
(解像性)
上記「感度」試験と同様にして得られた評価用積層体を、常温で1時間静置した後、405nmの青紫色レーザダイオードを光源とする直描露光機(日立ビアメカニクス株式会社製、製品名「DE−1AH」)を用いて、上記評価用積層体の上から、ライン幅/スペース幅が10/10〜150/150(単位:μm)の配線パターンを有する描画データを使用し、それぞれの感光性樹脂組成物の感度と同じ値のエネルギー量で露光した。
【0160】
露光後の評価用積層体上のポリエチレンテレフタレートを剥離し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、最小現像時間(未露光部が除去される最小時間)の1.7倍の時間でスプレー現像を行い、未露光部を除去して解像性の評価を行った。解像性の値は、現像処理によって未露光部を完全に除去できたスペース幅(μm)のうち最も小さい値で表され、この値が小さい程、解像性が高いことを示す。
【0161】
(ラミネート裕度)
ラミネート後の評価用積層体を、常温(25℃)で1時間静置した後、405nmの青紫色レーザダイオードを光源とする直描露光機(日立ビアメカニクス株式会社製、製品名「DE−1AH」)を用いて、上記評価用積層体の上から、格子状のパターンを有する描画データを使用し、各感光性樹脂組成物の感度の値と同じエネルギー量で露光を行った。
【0162】
露光後、評価用積層体上のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、最小現像時間(未露光部が現像される最小時間)の1.5倍の時間でスプレー現像を行った。これにより、感光性樹脂組成物層が硬化されてなる格子パターンを形成した。形成した格子パターンの未露光部分を観察してラミネート裕度を評価した。具体的には、未露光部分に樹脂組成分が目視で確認できず、下地の銅が露出しているものを「良好」とし、樹脂成分が確認できるものを「不良」として評価した。
【0163】
(耐めっき性)
続いて、株式会社オーク製作所製の紫外線照射装置を使用して1J/cmのエネルギー量で紫外線照射を行い、さらに160℃で60分間加熱処理を行うことにより、プリント配線板用基板上に永久レジストが形成された評価用基板を得た。
【0164】
上記評価用基板に対し、無電解ニッケルめっき(上村工業株式会社製、商品名ニムデンNPR−4)を施し(15分間処理)、さらに無電解金めっき(上村工業株式会社製、商品名ゴブライトTAM−54)を施した(10分間処理)。
【0165】
このようにしてめっきが施された評価用基板に対し、永久レジスト底部へのめっき液の染み込み、並びに、基板からの永久レジストの浮き及び剥離を100倍の金属顕微鏡により観察して耐めっき性を評価した。具体的には、永久レジスト底部への染み込みが認められず、永久レジストの浮き及び剥離も認められないものを「良好」とし、それらのいずれかが認められるものを「不良」として評価した。
【0166】
(はんだ耐熱性)
上記「耐めっき性」試験と同様にして得られた永久レジストを有する評価用基板を用い、以下のようにしてはんだ耐熱性の評価を行った。すなわち、評価用基板に対し、ロジン系フラックス(タムラ化研株式会社製、商品名MH−820V)を塗布した後、288℃のはんだ浴中に30秒間浸漬するはんだ処理を行った。
【0167】
このようにしてはんだを施された評価用基板上の永久レジストのクラック発生状況、並びに、基板からの永久レジストの浮き程度及び剥離を100倍の金属顕微鏡により観察してはんだ耐熱性を評価した。具体的には、永久レジストのクラックの発生が認められず、永久レジストの浮き及び剥離も認められないものを「良好」とし、それらのいずれかが認められるものを「不良」として評価した。
【0168】
(耐熱衝撃性)
上記「耐めっき性」試験と同様にして得られた永久レジストを有する評価用基板に対し、−55℃の大気中に15分間晒した後、180℃/分の昇温速度で昇温し、次いで、125℃の大気中に15分間晒した後、180℃/分の降温速度で降温する熱サイクルを200回繰り返す試験を行った。
【0169】
試験後、評価用基板の永久レジスト(永久レジスト膜)のクラック及び剥離を100倍の金属顕微鏡により観察して耐熱衝撃性を評価した。具体的には、永久レジストのクラック及び剥離を観察できなかったものを「良好」とし、それらのいずれかを確認できたものを「不良」として評価した。
【0170】
(HAST耐性)
まず、30μm厚の銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント配線板用基板(日立化成工業株式会社製、商品名E−679)の銅表面を、エッチングによりライン/スペースが50μm/50μmのくし型電極に加工した。これを、評価用配線板とした。
【0171】
この評価用配線板におけるくし型電極上に、上記「耐めっき性」試験と同様にしてレジストの硬化物からなる永久レジストを形成し、これを評価用基板とした。この評価用基板を、130℃/85%RH/5Vの条件で超加速高温高湿寿命試験(HAST)槽内に100時間晒した。試験後、各評価用基板におけるマイグレーションの発生の程度を、100倍の金属顕微鏡により観察してHAST耐性を評価した。すなわち、永久レジスト(永久レジスト膜)にマイグレーションが発生しなかったものを「良好」とし、マイグレーションが発生したものを「不良」として評価した。なお、マイグレーションとは、銅電極から永久レジストへ銅が溶出し、析出することにより、電極周辺の永久レジストの変色や絶縁抵抗の低下が起こる現象である。
【0172】
【表3】

【0173】
【表4】

【0174】
表3及び表4に示されるように、本発明の感光性樹脂組成物を用いた場合(実施例1〜9)は、優れた感度及び解像性のほか、十分なはんだ耐熱性、耐熱衝撃性、HAST耐性、及び解像性が得られることが確認された。これに対し、比較例1〜6では、感度及び解像性の両立ができなかった。また、比較例5及び6では、ラミネート裕度も不十分であった。
【符号の説明】
【0175】
1…感光性フィルム、10…支持体、20…感光性樹脂組成物層、30…保護フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)バインダーポリマーと、
(b)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物と、
(c)光重合開始剤と、
(d)メルカプト基を少なくとも1つ以上有する化合物と、を含み、
前記(c)光重合開始剤が、下記式(1)で表されるアルコキシヘキサアリールビスイミダゾール化合物を含む、感光性樹脂組成物。
【化1】


[式(1)中、Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は有機基を示し、複数存在するXのうち少なくとも1つはアルコキシ基である。]
【請求項2】
式(1)中に複数存在するXのうち少なくとも1つがハロゲン原子である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(d)メルカプト基を少なくとも1つ以上有する化合物が、メルカプト基を2つ以上有する化合物を含む、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(a)バインダーポリマーが、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位を有する共重合体を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(e)熱硬化剤を更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(e)熱硬化剤が、イソシアネート化合物にブロック剤を反応させて得られる化合物及びメラミン誘導体の少なくとも1種を含む、請求項5に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
支持体と、該支持体上に形成された請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備える感光性フィルム。
【請求項8】
プリント配線板用の基板上に形成され、請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の光硬化物からなる、永久レジスト。

【図1】
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【公開番号】特開2011−237736(P2011−237736A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111339(P2010−111339)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】