説明

感光性樹脂組成物およびそれを用いたフレキシブル回路基板、ならびにその回路基板の製法

【課題】ソルダーレジストに要求される各種特性(絶縁性,半田耐熱性,アルカリ現像性等)を備えるとともに、IRリフロー工程を経た後においても耐折曲げ性の良好な膜を実現することができる感光性樹脂組成物およびそれを用いたフレキシブル回路基板、ならびにその回路基板の製法を提供する。
【解決手段】下記の(A)〜(D)成分を含有する感光性樹脂組成物であって、その硬化物の引張り破断伸び率が10%以上で、かつ2%重量減少温度が260℃以上である感光性樹脂組成物とする。
(A)カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和化合物の線状重合体。
(B)エポキシ樹脂。
(C)エチレン性不飽和基含有重合性化合物。
(D)光重合開始剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物およびそれを用いて得られるフレキシブル回路基板、ならびにその回路基板の製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半田付けによって半導体素子等の電子部品を実装するフレキシブル回路基板には、その配線回路基板の導体パターン形成面上に、カバーレイフィルムと称される、接着剤層が形成されたポリイミドフィルムを所定の形状に打ち抜いたものを貼り付けることにより、表面保護層(カバー絶縁層)が設けられる。また、より細かい開口形状(基板に設けられる開口に対応する形状)が必要な箇所には、ソルダーレジストと呼ばれる耐熱性材料をスクリーン印刷法や露光現像法によって上記導体パターン形成面上の必要な部分に膜状に設けて硬化させ、これによりカバー絶縁層を形成している。上記カバー絶縁層には、半田による部品実装時の半田耐熱性,絶縁性等が要求される。
【0003】
このようなフレキシブル回路基板は、電子部品を実装した後、携帯電話等の電子機器に組み込まれるが、狭いスペースにうまく収めるためには、例えば、フレキシブル回路基板を折曲げて組み込む場合がある。このとき、その折曲げ部のカバー絶縁層としては、耐折曲げ性に優れるカバーレイフィルムが選択され、耐折曲げ性に劣るソルダーレジスト膜が選択されることはほとんどない。
【0004】
このように、フレキシブル回路基板のカバー絶縁層は、耐折曲げ性や微細開口性等、要求される特性に応じて、適宜に、カバーレイフィルムとソルダーレジストとが部分的に選択使用される。そのため、従来は、カバーレイフィルムとソルダーレジストとを併用することが一般的である。
【0005】
しかしながら、このような、カバーレイフィルムとソルダーレジストとの併用は、製造プロセス数の増加を伴うため、製造コスト削減が困難となる。
【0006】
そこで、このような問題を解決するために、本出願人は、柔軟性に優れ、かつソルダーレジストとしての使用にも適した感光性樹脂組成物を、既にいくつか提案している(特許文献1または2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−235371公報
【特許文献2】特開2006−301186公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献に開示の感光性樹脂組成物は、熱分解温度が低いためか、IRリフロー(遠赤外線による半田リフロー)後の耐折曲げ性が充分でなく、この点においては未だ改善の余地がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ソルダーレジストに要求される各種特性(絶縁性,半田耐熱性,アルカリ現像性等)を備えるとともに、IRリフロー工程を経た後においても耐折曲げ性の良好な膜を実現することができる感光性樹脂組成物およびそれを用いたフレキシブル回路基板、ならびにその回路基板の製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、下記の(A)〜(D)成分を含有する感光性樹脂組成物であって、その硬化物の引張り破断伸び率が10%以上で、かつ2%重量減少温度が260℃以上である感光性樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和化合物の線状重合体。
(B)エポキシ樹脂。
(C)エチレン性不飽和基含有重合性化合物。
(D)光重合開始剤。
【0011】
また、本発明は、配線回路基板の導体回路パターン形成面上に、上記感光性樹脂組成物からなるカバー絶縁層が形成されてなるフレキシブル回路基板を第2の要旨とする。
【0012】
また、本発明は、上記フレキシブル回路基板の製法であって、配線回路基板の導体回路パターン形成面上に、上記感光性樹脂組成物の層を形成し、この層を所定のパターンに露光した後現像することにより、カバー絶縁層を形成するフレキシブル回路基板の製法を第3の要旨とする。
【0013】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するために一連の研究を重ねた。その結果、前記特殊な線状重合体(A成分)と、エポキシ樹脂(B成分)と、エチレン性不飽和基含有重合性化合物(C成分)とを併用し、かつ、その光重合による硬化物の引張り破断伸び率が10%以上で、2%重量減少温度が260℃以上となるよう、上記各成分の割合を設定した感光性樹脂組成物とすると、ソルダーレジストに通常要求される特性(絶縁性,半田耐熱性,アルカリ現像性等)を備えるとともに、その硬化膜が、カバーレイフィルムのように柔軟性に優れるようになり、特にIRリフロー工程を経た後においても耐折曲げ性が良好となるという作用を奏することを突き止めた。このように、上記感光性樹脂組成物がIRリフロー工程を経た後においても良好な耐折曲げ性を示すのは、引張り破断伸び率が高いために、折曲げ試験時の歪みによるクラックが発生しにくいことと、2%重量減少温度が高いために、IRリフロー工程後においても樹脂組成物の熱劣化が小さく良好な耐折曲げ性が維持されていることによるものと考えられる。したがって、導体回路パターン形成面上に、上記感光性樹脂組成物を用いてソルダーレジスト膜を形成することにより、IRリフロー工程後においても耐折曲げ性の良好な表面保護層(カバー絶縁層)が付与されたフレキシブル回路基板が得られるようになる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明の感光性樹脂組成物は、前記特殊な線状重合体(A成分)と、エポキシ樹脂(B成分)と、エチレン性不飽和基含有重合性化合物(C成分)とを併用し、かつ、その硬化物の引張り破断伸び率が10%以上で、2%重量減少温度が260℃以上となるよう設定された感光性樹脂組成物である。このため、ソルダーレジストに要求される各種特性(絶縁性,半田耐熱性,アルカリ現像性等)を備えるとともに、柔軟性に優れるようになり、特にIRリフロー工程を経た後においても良好な耐折曲げ性を備えるようになる。したがって、導体回路パターン形成面上に、本発明の感光性樹脂組成物を用いてソルダーレジスト膜を形成することにより、IRリフロー工程後においても耐折曲げ性の良好な表面保護層(カバー絶縁層)が付与されたフレキシブル回路基板を得ることができる。さらに、このことから、フレキシブル回路基板の折曲げ部の表面保護層として従来から使用されていたカバーレイフィルムに代えて、上記感光性樹脂組成物からなるソルダーレジスト膜を形成することが可能となり、以前からの課題であった、カバーレイフィルムとソルダーレジストの併用による製造プロセス数の増加を解消し、製造コスト削減を達成することができる。また、このようなフレキシブル回路基板に、電子部品を実装して実装基板としたものは、折曲げが容易であり、狭いスペースにうまく収めることができるため、例えば、携帯電話等の小型機器等の実装基板として特に好ましく用いられる。
【0015】
そして、前記特殊な線状重合体(A成分)のカルボン酸当量が400〜1000であると、柔軟性、アルカリ現像性等のバランスにより優れたものとなる。
【0016】
また、前記エポキシ樹脂(B成分)が、エポキシ当量450〜2300であり、25℃において固体であると、柔軟性、アルカリ現像性等のバランスにより優れたものとなる。
【0017】
さらに、前記エポキシ樹脂(B成分)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂またはビスフェノールF型エポキシ樹脂であると、柔軟性と耐熱性とのバランスにより優れたものとなる。
【0018】
そして、本発明の感光性樹脂組成物の特性から、「導体回路パターン形成面上に感光性樹脂組成物の層を形成した後、これを所定のパターンに露光して現像することにより、その露光個所を硬化させてカバー絶縁層を形成する。」といった露光現像法による製法を適用することにより、上記フレキシブル回路基板を効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例におけるIRリフロー炉内の温度プロファイルを示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物は、カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和化合物の線状重合体(A成分)と、エポキシ樹脂(B成分)と、エチレン性不飽和基含有重合性化合物(C成分)と、光重合開始剤(D成分)とを用いて得られるものであり、その硬化物の引張り破断伸び率が10%以上で、2%重量減少温度が260℃以上となるよう、上記各成分の割合が設定されている。
【0021】
すなわち、本発明に要求される耐折曲げ性(特にIRリフロー後における耐折曲げ性)を得るためには、上記のように、その硬化物の引張り破断伸び率が10%以上で、2%重量減少温度が260℃以上である必要がある。より良好な耐折曲げ性を得るためには、引張り破断伸び率は20%以上であることが好ましい。また、IRリフロー後においても良好な耐折曲げ性を得るためには、2%重量減少温度は270℃以上であることが好ましい。
【0022】
なお、本発明における、感光性樹脂組成物の硬化物の引張り破断伸び率(EB)は、JIS K 6251に準拠して、測定される。また、本発明における、感光性樹脂組成物の硬化物の2%重量減少温度とは、感光性樹脂組成物の硬化物を加熱して、その重量が2%減少するのに要する加熱温度(℃)である。このとき、感光性樹脂組成物の硬化物の吸水による重量減少分は相殺する必要がある。そのため、水分の蒸発温度である100℃における感光性樹脂組成物の硬化物の重量減少が、例えばX%であった場合、この重量減少により感光性樹脂組成物の硬化物中の水分の揮散が達成されるため、感光性樹脂組成物の硬化物が(2+X)%重量減少したときの加熱温度が「2%重量減少温度」となる。
【0023】
上記特殊な線状重合体(A成分)は、カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物をその重合材料(モノマー)とするものである。したがって、線状重合物のカルボン酸当量を容易に制御でき、原料モノマー種が豊富にあることから、ガラス転移温度(Tg)等の物性設計が容易である。そして、上記カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシル基を含有するスチレン誘導体等が用いられる。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸あるいはメタアクリル酸を意味する。また、上記特殊な線状重合体(A成分)は、カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物のみを、その重合材料とするものであってもよいが、通常、カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物以外のエチレン性不飽和化合物も、その重合材料として併用する。このような化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル,(メタ)アクリル酸エチルエステル,(メタ)アクリル酸ブチルエステル等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、スチレン、α−スチレン、ビニルトルエン、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェノキシエチルアクリレート等があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。そして、上記特殊な線状重合体(A成分)においては、そのカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物の割合が、A成分全体の7〜80重量%であることが、アルカリ現像性が良好となり、好ましい。
【0024】
なお、上記特殊な線状重合体(A成分)は、例えば、上記重合材料(モノマー)に、適宜、触媒(アゾビスイソブチロニトリル等)および有機溶剤を加え、窒素雰囲気下で加熱し(約100℃で5時間程度)、重合反応させることにより得ることができる。
【0025】
上記特殊な線状重合体(A成分)のカルボン酸当量は、400〜1000の範囲であることが好ましく、より好ましくは500〜950の範囲、さらに好ましくは600〜900の範囲である。すなわち、上記カルボン酸当量が400末満では、硬化物の架橋点密度が高くなることに起因するためか破断伸び率が大きくならないため好ましくなく、逆に上記カルボン酸当量が1000を超えると、アルカリ現像性が悪くなる傾向がみられるからである。
【0026】
また、上記特殊な線状重合体(A成分)の重量平均分子量は、5000〜100000の範囲であることが好ましく、より好ましくは6000〜90000、特に好ましくは7000〜80000の範囲である。すなわち、重量平均分子量が5000未満では、半田耐熱性等の物性が悪くなる傾向がみられ、100000を超えると、アルカリ現像性が悪くなる傾向がみられるからである。なお、上記重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のポリスチレン換算により測定される。
【0027】
上記特殊な線状重合体(A成分)とともに用いられるエポキシ樹脂(B成分)は、上記特殊な線状重合体(A成分)のカルボキシル基と反応して三次元架橋することにより、硬化物の耐熱性等といった諸物性を向上させるために含有する。そして、上記エポキシ樹脂のエポキシ当量が450〜2300であることが、硬化物の柔軟性と耐熱性の両特性を良好に保ちやすい点で好ましく、25℃において固体であることが、硬化前組成物のタック性が小さくなり、作業性が良好になる点で好ましい。なお、上記エポキシ樹脂のエポキシ当量が450未満であると硬化物の引張り破断伸び率が小さくなりやすく、逆にエポキシ当量が2300を超えるとアルカリ現像性が悪くなりやすい。また、上記エポキシ樹脂の種類としては、硬化物の柔軟性と耐熱性の両特性を良好に保てる点でビスフェノールA型エポキシ樹脂またはビスフェノールF型エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0028】
上記A成分およびB成分とともに用いられるエチレン性不飽和基含有重合性化合物(C成分)は、例えば、下記の一般式(1)で表されるビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート化合物であることが、半田耐熱性、耐折曲げ性、アルカリ現像性等の特性バランスに優れる点から好ましい。
【0029】
【化1】

【0030】
上記式(1)中、炭素数2〜6のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ネオペンチレン基、ヘキシレン基等があげられる。特にエチレン基であることが好ましい。
【0031】
上記イソプロピレン基は、−CH(CH3 )CH2 −で表される基であり、上記一般式(1)中の−(O−Y1 )−および−(Y2 −O)−において結合方向は、メチレン基が酸素と結合している場合とメチレン基が酸素に結合していない場合の2種類があり、1種類の結合方向でもよいし、2種類の結合方向が混在していてもよい。
【0032】
上記−(O−Y1 )−および−(Y2 −O)−の繰り返し単位がそれぞれ2以上のとき、2以上のY1 および2以上のY2 は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。そして、Y1 およびY2 が2種以上のアルキレン基で構成される場合、2種以上の−(O−Y1 )−および−(Y2 −O)−は、ランダムに存在してもよいし、ブロック的に存在してもよい。
【0033】
また、上記一般式(1)中の、2個のベンゼン環は、置換基を有していてもよいし、置換基を有していなくてもよい。すなわち、ベンゼン環の置換可能な位置には、1個以上の置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それら置換基は互いに同じであっても異なっていてもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、アリル基、炭素数1〜10のアルキルメルカプト基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1〜10のカルボキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1〜10のアシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基または複素環を含む基等があげられる。
【0034】
上記一般式(1)中の、繰り返し数p,qは、p+qが4〜40となるよう選ばれる正の整数であり、より好ましくはp+qが4〜15となるよう選ばれる正の整数であり、特に好ましくはp+qが5〜13となるよう選ばれる正の整数である。すなわち、p+qが4未満では、得られる膜の反りが増加するほか、耐折曲げ性が低下する傾向がみられ、p+qが40を超えると、感光性樹脂組成物全体の系が親水性を示し、得られる膜が、高温高湿下での絶縁信頼性に劣る傾向がみられるからである。
【0035】
上記一般式(1)で表されるビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート化合物としては、具体的には、2,2′−ビス〔4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル〕プロパン、2,2′−ビス〔4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル〕プロパン、2,2′−ビス〔4−(メタ)アクリロキシペンタエトキシフェニル〕プロパン、2,2′−ビス〔4−(メタ)アクリロキシジエトキシオクタプロポキシフェニル〕プロパン、2,2′−ビス〔4−(メタ)アクリロキシトリエトキシオクタプロポキシフェニル〕プロパン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0036】
上記A〜C成分とともに用いられる光重合開始剤(D成分)としては、例えば、置換または非置換の多核キノン類(2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等)、α−ケタルドニルアルコール類(ベンゾイン、ピバロン等)、エーテル類、α−炭化水素置換芳香族アシロイン類(α−フェニル−ベンゾイン、α,α−ジエトキシアセトフェノン類等)、芳香族ケトン類(ベンゾフェノン、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン等の4,4′−ビスジアルキルアミノベンゾフェノン等)、チオキサントン類(2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−エチルチオキサントン等)、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−モルホリノプロパン−1−オン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0037】
本発明の感光性樹脂組成物では、先にも述べたように、その硬化物の引張り破断伸び率が10%以上で、2%重量減少温度が260℃以上となるよう、上記A〜D成分の割合が設定される。したがって、本発明においては、この観点から各成分の割合が設定される必要があり、上記A成分の含有量は、感光性樹脂組成物全体の20〜70重量%の範囲に設定されることが好ましく、より好ましくは30〜60重量%である。同様の観点から、上記B成分の含有量は、感光性樹脂組成物全体の3〜40重量%の範囲に設定されることが好ましく、より好ましくは5〜30重量%である。また、上記C成分の含有量は、感光性樹脂組成物全体の3〜40重量%の範囲に設定されることが好ましく、より好ましくは5〜30重量%である。また、上記D成分の含有量は、感光性樹脂組成物全体の0.1〜10重量%の範囲に設定されることが好ましく、より好ましくは0.2〜8重量%である。
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物には、上記各成分以外に必要に応じて、他の添加剤、すなわち、フタロシアニングリーン,フタロシアニンブルー等の顔料、シリカ,硫酸バリウム,タルク等の充填剤、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、安定剤、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾールや5−アミノ−1−H−テトラゾール等の密着性付与剤、ベンゾトリアゾール等の防錆剤等を適宜配合することができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、これら他の添加剤は、感光性樹脂組成物全体の0.01〜30重量%の範囲内で用いることが好ましい。
【0039】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記各成分を所定の含有量となるように配合し混合することにより得られる。そして、必要に応じて有機溶剤と混合して用いることができる。上記有機溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ソルベントナフサ、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メシチレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の溶剤またはこれらの混合溶剤を用いることができる。
【0040】
上記有機溶剤を用いる場合の使用量は、例えば、感光性樹脂組成物100重量部に対して0〜200重量部程度混合して用いることができる。
【0041】
本発明の感光性樹脂組成物は、例えば、フレキシブルプリント配線板等の配線回路基板用のソルダーレジスト材料として有用である他、塗料、コーティング剤、接着剤等の用途としても使用することができる。
【0042】
上記配線回路基板用のソルダーレジスト材料として用いる際には、例えば、つぎのようにして使用される。以下、フレキシブルプリント配線板を例に順を追って説明する。
【0043】
まず、フレキシブルプリント配線板の導体回路パターン形成面に、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、静電塗装法により、乾燥後の厚みが5〜50μmとなるように本発明の感光性樹脂組成物を塗布し、50〜160℃で1〜60分間程度乾燥させた後、ネガまたはポジマスクパターンフィルムを塗膜に直接接触させ、あるいは接触させずに設置し、ついで活性光線を照射し、膜化する。
【0044】
または、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明支持フィルム上に、本発明の感光性樹脂組成物を、乾燥後の厚みが5〜50μmとなるように塗布・乾燥し、乾燥した感光性樹脂組成物膜の上にポリエチレン等の保護フィルムを貼り合わせることにより、本発明の感光性樹脂組成物(膜)を含む積層体を作製する。そして、その積層体の保護フィルムを剥離した後、フレキシブルプリント配線板の導体回路パターン形成面に貼り合わせ、マスクパターンフィルムを透明支持フィルムに直接接触させ、あるいは接触させずに設置し、ついで活性光線を照射した後、透明支持フィルムを剥離する。
【0045】
上記活性光線の光源としては、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に照射するものが用いられる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に照射するものも用いられる。
【0046】
そして、上記活性光線照射後の感光性樹脂膜に対し、アルカリ性水溶液等の現像液を用いて、例えば、スプレー,揺動浸漬,ブラッシング,スクラッピング等の方法により未露光部を除去して現像し、レジストパターンを製造する。
【0047】
上記現像に用いるアルカリ性水溶液としては、0.1〜5重量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5重量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5重量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5重量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液等を用いることができる。
【0048】
また、現像後、半田耐熱性,耐薬品性等を向上させる目的で、加熱による架橋反応を行う。加熱は100〜260℃程度の範囲で1〜120分間程度行うことが好ましい。また、必要に応じて、高圧水銀ランプや低圧水銀ランプによる紫外線照射を、加熱の前または後に行うことができる。このとき、上記紫外線の照射量は、0.2〜10J/cm2 程度に設定することが好ましい。
【0049】
このようにしてソルダーレジスト膜が形成されたフレキシブルプリント配線板は、その後、半田付け等によって、LSI、ダイオード、トランジスタ、コンデンサ等の電子部品を実装して実装基板とし、例えば、携帯電話等の小型機器等に装着されることになる。
【0050】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0051】
〔ポリマー(カルボキシル基含有線状重合体)aの合成〕
まず、メタクリル酸メチル9g、メタクリル酸21g、フェノキシエチルアクリレート70g、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(溶媒)100 g、アゾビスイソブチロニトリル(触媒)1. 0gを窒素雰囲気下で300ミリリットルのセパラブルフラスコに入れ、攪拌しながら加温し、100℃で5時間反応させて、カルボキシル基含有線状重合体溶液(固形分50重量%)を得た。このとき、得られた溶液における固形分(ポリマーa)のカルボン酸当量(計算値)は410であり、重量平均分子量(Mw)は15000であった。
【0052】
〔ポリマー(カルボキシル基含有線状重合体)b〜dの合成〕
下記の表1に示す組成割合に変更した以外は上記ポリマーaの合成方法に従って合成し、カルボキシル基含有線状重合体溶液(固形分50重量%)を得た。このとき、得られた溶液における固形分(ポリマーb〜d)のカルボン酸当量および重量平均分子量を下記の表1に併せて示す。
【0053】
【表1】

【0054】
つぎに、下記に示す各成分を準備した。
【0055】
〔エポキシ樹脂(I)〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量=480)(ジャパンエポキシレジン社製、JER1001)
【0056】
〔エポキシ樹脂(II)〕
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量=880)(ジャパンエポキシレジン社製、JER4004P)
【0057】
〔エポキシ樹脂(III )〕
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量=2280)(ジャパンエポキシレジン社製、JER4007P)
【0058】
〔エポキシ樹脂(IV)〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量=2850)(ジャパンエポキシレジン社製、JER1009)
【0059】
〔エチレン性不飽和基含有重合性化合物〕
エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型メタクリレート(前記式(1)中のp+q=10)(新中村化学社製、BPE500)
【0060】
〔光重合開始剤〕
チバガイギー社製、Irgacure369
【0061】
〔難燃剤〕
ホスファゼンオリゴマー(大塚化学社製、SPB−100)
【0062】
〔顔料〕
フタロシアニンブルー
【0063】
〔密着性付与剤〕
5−アミノ−1−H−テトラゾール
【0064】
〔実施例1〜4、比較例1,2〕
後記の表2に示す各成分を同表に示す割合(重量部)で配合することにより、感光性樹脂組成物を調製した(なお、ポリマーa〜dにおける表中の部数は、固形分重量部である)。
【0065】
このようにして得られた感光性樹脂組成物に対し、その硬化物の引張り破断伸び率、および2%重量減少温度を、以下の基準で測定し、その結果を後記の表2に併せて示す。
【0066】
〔引張り破断伸び率〕
厚み16μmのPETフィルムの片面に、上記調製した感光性樹脂組成物(溶液)を、乾燥後の厚みが25μmになるように塗布し、ついで乾燥(80℃×30分)し、その上に厚み30μmのポリプロレン製カバーフィルムを密着させ、250Wの超高圧水銀灯で、ポリプロピレン製カバーフィルム側から500mJ/cm2 の露光量で紫外線を照射した。その後、カバーフィルムを剥離し、30℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて圧力0.2MPaで90秒間現像し、さらに水道水にて30秒間洗浄した後、熱風循環式乾燥機にて150℃で8時間熱処理を行った。このようにして形成された感光性樹脂組成物の硬化フィルムをPETフィルムから取り除き、幅5mm,長さ50mmに切り出したものを試料とした。そして、上記試料を、JIS K 6251に準拠し、引張り試験機(ミネベア社製、テクノグラフTG−1kN)を用いて、チャック間距離=20mmで固定した後、速度=5mm/minで引張り、破断するまでの伸び率(%)を引張り破断伸び率とした。
【0067】
〔2%重量減少温度〕
厚み16μmのPETフィルムの片面に、上記調製した感光性樹脂組成物(溶液)を、乾燥後の厚みが25μmになるように塗布し、ついで乾燥(80℃×30分)し、その上に厚み30μmのポリプロレン製カバーフィルムを密着させ、250Wの超高圧水銀灯で、ポリプロピレン製カバーフィルム側から500mJ/cm2 の露光量で紫外線を照射した。その後、カバーフィルムを剥離し、30℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて圧力0.2MPaで90秒間現像し、さらに水道水にて30秒間洗浄した後、熱風循環式乾燥機にて150℃で8時間熱処理を行った。このようにして形成された感光性樹脂組成物の硬化フィルムをPETフィルムから取り除き、重さ約10mg分に切り出したものを試料とした。そして、上記試料を、差動型示差熱天秤(理学電機社製、TG8120)にセットし、窒素気流下で、室温から350℃まで昇温速度10℃/minにて昇温しながら、試料の重量変化を測定した。なお、試料の吸水による重量減少分を相殺するために、100℃における重量減少が、例えばX%であった場合、(2+X)%重量が減少した温度を、「2%重量減少温度」と定義した。
【0068】
そして、このようにして得られた各感光性樹脂組成物を用いて、下記に示す方法に従って各特性の評価を行った。その結果を後記の表2に併せて示す。
【0069】
〔耐折曲げ回数〕
厚み25μmのポリイミドフィルムの片面に、上記調製した感光性樹脂組成物溶液を、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、乾燥(80℃×30分間)して、さらにその上に厚み30μmのポリプロピレン製カバーフィルムを密着させ、250Wの超高圧水銀灯で、ポリプロピレン製カバーフィルム側から500mJ/cm2 の露光量で紫外線照射した。その後、上記カバーフィルムを剥離し、30℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて圧力0.2MPaで90秒間現像し、さらに水道水にて30秒間洗浄し、熱風循環式乾操機にて150℃で8時間熱処理を行った後、図1に示す温度プロファイルに設定したIRリフロー炉を3回通した。このようにして得られた感光性樹脂組成物層が設けられたポリイミドフィルムを、幅10mm,長さ70mmに切り出し、試料とした。そして、上記試料の感光性樹脂組成物層側を外に向けて180°折曲げて、直径30mm,重さ1kgの荷重を10秒間乗せた後、荷重を取り除き、折曲げた部分を約40倍の光学顕微鏡で観察し、感光性樹脂組成物に亀裂が発生しているかどうか確認した。亀裂が発生していない場合、試料を広げた状態で、直径30mm,重さ1kgの荷重を10秒間乗せた後、再び試料の感光性樹脂組成物側を外に向けて180°折曲げ、直径30mm,重さ1kgの荷重を10秒間乗せた後、荷重を取り除き、折曲げた部分を約40倍の光学顕微鏡で観察し、感光性樹脂組成物に亀裂が発生しているかどうか確認した。感光性樹脂組成物に亀裂が入るまで、本手順を繰り返し、感光性樹脂組成物に亀製が入るまでに折曲げた回数から1引いた回数を、耐折曲げ回数とした。なお、10回折曲げても感光樹脂組成物に亀裂が入らなかった場合、耐折曲げ回数を「10<」と表記した。また、本発明においては、耐折曲げ回数が少なくとも1回以上であることが要求される。
【0070】
〔アルカリ現像性〕
厚み18μmの銅箔層がポリイミドフィルム上に直接形成されたフレキシブルプリント配線板用2層基材を、脱脂し、ソフトエッチングして銅表面を整面した。その後、上記基材の銅箔層上に、上記調製した感光性樹脂組成物溶液を、乾操後の厚みが25μmになるように塗布し、乾燥(80℃×30分間)して、さらにその上に厚み30μmのポリプロピレンフィルムを密着させ、一辺5mmの正方形ネガパターンが設けられたガラスマスクを通して高圧水銀灯で、500mJ/cm2 の露光量で紫外線照射した後、ポリプロピレンフィルムを剥離し、30℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて圧力0.2MPaで90秒間現像した。そして、現像後の未露光部を目視で観察し、感光性樹脂組成物の残渣が残っているものを×、残渣が残っていないものを○と評価した。
【0071】
【表2】

【0072】
上記結果から、実施例品は、耐折曲げ性が良好であるとともに、アルカリ現像性にも優れており、良好な表面保護層を設けたフレキシブル回路基板が得られることが明らかである。
【0073】
これに対して、比較例1品は、2%重量減少温度の値が規定よりも小さく、耐折曲げ性に劣るものとなっている。比較例2品は、硬化物の引張り破断伸び率が規定よりも小さ過ぎ、耐折曲げ性に劣るとともに、アルカリ現像性にも劣る結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(D)成分を含有する感光性樹脂組成物であって、その硬化物の引張り破断伸び率が10%以上で、かつ2%重量減少温度が260℃以上であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
(A)カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和化合物の線状重合体。
(B)エポキシ樹脂。
(C)エチレン性不飽和基含有重合性化合物。
(D)光重合開始剤。
【請求項2】
上記(A)成分の線状重合体のカルボン酸当量が400〜1000である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
上記(B)成分のエポキシ樹脂が、エポキシ当量450〜2300であり、25℃において固体である請求項1または2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
上記(B)成分のエポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
配線回路基板の導体回路パターン形成面上に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなるカバー絶縁層が形成されてなることを特徴とするフレキシブル回路基板。
【請求項6】
請求項5記載のフレキシブル回路基板の製法であって、配線回路基板の導体回路パターン形成面上に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の層を形成し、この層を所定のパターンに露光した後現像することにより、カバー絶縁層を形成することを特徴とするフレキシブル回路基板の製法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−256718(P2010−256718A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108237(P2009−108237)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】